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JP5048752B2 - カーボン・ナノチューブ・トランジスタを用いる生物プローブ材料を有するセンサーを結合したマイクロアレイ用の装置 - Google Patents

カーボン・ナノチューブ・トランジスタを用いる生物プローブ材料を有するセンサーを結合したマイクロアレイ用の装置 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、2006年3月17日に出願された米国仮出願第60/743,524号の利益を主張する。
連邦政府支援研究に関する陳述
本発明に至る本研究は、少なくとも部分的には、助成H9823004C0470に基づくNSAによって援助された。それ自体、米国政府が、35U.S.C.203以下の規定により本発明における一定の権利を有し得る。
発明の分野
本発明は、カーボン・ナノチューブ・トランジスタを用いる生物プローブ材料を有するセンサーを結合したマイクロアレイを含む装置、および該装置への生物標的材料の結合を検出する種々の方法に関する。
背景の説明
DNAマイクロアレイは、分子生物学における強力なツールであり、概して、固体基板上にスポットされた数百〜数万個の遺伝子のアレイを含み、未知の遺伝子試料を同定および定量するために用いられている。マイクロアレイ技術は、核酸ハイブリダイゼーションが非常に特異的であり、即ち、シトシンがグアニンにのみ、チミンがアデニンにのみ結合するという特性に基づいている。このようにして、核酸の特異的な配列、例えば5’ATCATC3’は、その相補配列である3’TAGTAG5’に優先的に結合する。
DNAマイクロアレイは、ハイスループットに転写レベルで遺伝子発現をモニターし、ゲノム全般のDNAコピー数の変化を測定し、転写因子の標的を同定し、配列決定するための、ごく最近では、癌におけるマイクロRNA(miRNA)レベルをプロファイリングするための非常に有益な技術である。分子生物学におけるセントラルドグマは、DNAがリボ核酸(RNA)に転写され、翻訳と呼ばれるプロセスによってRNAの情報が用いられ、タンパク質を調製することである。細胞の機能および代謝作用は細胞に産生されるタンパク質によって調節されているため、癌などの遺伝子突然変異によって引き起こされる多くの疾患は、遺伝子発現をモニターすることによって調べることができる。このように、遺伝子の同定および定量化に対する関心は特に高い。ある種の表現型に寄与する特定の遺伝子、また、遺伝子の発現レベルを表す遺伝子の量を知ることが重要である。しかしながら、遺伝子の突然変異、つまりDNA配列の変化によっては必ずしも引き起こされないが、遺伝子の異常量、つまり遺伝子発現の異常レベルによって引き起こされる疾患がある。ハイスループットな遺伝子同定は、研究者が、ある種の疾患において突然変異を受けている遺伝子を迅速に同定できようにする。比較遺伝子発現は、例えば癌性細胞と健常な細胞との間の遺伝子の発現レベルを比較する。蛍光検出に頼る典型的なDNAマイクロアレイ実験では、比較遺伝子発現は、一色の蛍光レポーター分子で1つの細胞の遺伝子を標識し、別のもので他の細胞の遺伝子を標識することによってなされる。各色の相対強度は、2つの細胞からの遺伝子の存在量についての直接測定である。DNAマイクロアレイの多様性を考慮すると、DNAマイクロアレイを広くかつ安価で配置することができれば、医療に与えるその影響は、非常に重要であることが期待される。それは、疾患の迅速な診断を可能にし、ならびに各患者に対して調整される薬物を最高の効果がもたらせられるようにする。
最初に報告されたDNAマイクロアレイは、cDNAクローンを用いたナイロンメンブレン上で作製され、検出するために放射線標識した標的を利用した。それ以降、多数のラージスケールのDNAマイクロアレイプラットフォームが開発され、それには、二本鎖cDNA、一本鎖の短い25mer(Affymetrix)、中程度の大きさの30mer(Combimatrix)または長い50〜70mer(Nimblegen若しくはAgilent)オリゴヌクレオチドが含まれる。これらの全ての方法は、核酸の酵素的増幅と標的の蛍光標識の種々の組合せ、ハイブリダイゼーション、およびシグナルの増幅、続く光学スキャナによる検出に頼っている。
マイクロアレイ実験では、プローブと呼ばれる既知の一本鎖DNA配列のアレイが、基板に固定化され、その後、蛍光分子を化学的に付されている未知の一連の標的遺伝子(または一本鎖DNA配列)に晒される。プローブと標的配列が相補的であるアレイの場所で、ハイブリダイゼーションが起こり、これらの特異的な結合事象の位置が蛍光分子によって明らかにされる。
臨床ツールとしてDNAマイクロアレイを用いる主な障害は、技術が難解であり、複雑なプロトコールを必要とし、多量の試薬が必要であり、低シグナル対ノイズ比および急速な光学的劣化に悩まされるということである。蛍光に基づくDNAマイクロアレイ技術に有意義な前進がなされているものの、方法論は、多くの場合、時間の浪費であり、さらに、蛍光強度の測定に頼っていて、したがって、感度は、少数の光子を検出する能力によって制限されている。さらに、蛍光分子は、光退色を被り、それは、蛍光分子が一定量の励起を受けた後は発光を止めることを意味する。
様々なDNA検出スキームが文献に報告されている。検出メカニズムは、例えばラジオアイソトープ、フルオロフォア、量子ドット、金ナノ粒子、磁性ナノ粒子、または酵素などのレポーター分子またはタグの存在の検出を伴う。既知の蛍光に基づくDNAマイクロアレイ、および他の無標識の電子電界効果DNA検出スキームの概略は、下記のサブセクション1)および2)に記載されている。
1.蛍光に基づくマイクロアレイ
典型的には、マイクロアレイは、数千個の種々の遺伝子でスポットされた顕微鏡用ガラススライドである。このアレイは、組み込まれたリーダーを装備していない。検出は、蛍光を付した標的DNAとのハイブリダイゼーション後に蛍光スキャナを用いて行われる。マイクロアレイを作製するには2通りあって、(i)ロボットによるスポッターによって基板上にcDNAまたはオリゴヌクレオチドをスポットすること、または(ii)固体支持体上でオリゴヌクレオチドを直接的に合成することである。ロボットによるスポッターは、様々な種類の遺伝子を含むウェルに浸されている数千個のキャピラリーピンを使用し、官能化された固体基板に遺伝子を運搬して遺伝子スポットを作製する。Affymetrixにより採用されているアプローチなどの別のアプローチは、基板上での直接的なオリゴヌクレオチド合成を用いている。材料は、感光保護基を有する4つのヌクレオチド:アデニン、グアニン、シトシンおよびチミンの溶液である。このプロセスは石英ウエハーから開始し、このウエハーは、ウエハーとDNAプローブの最初のヌクレオチドとの間のカップリングが形成されるのを防ぐ光感受性化合物で被覆されている。リトグラフマスクは、ウエハー表面の特定の位置で光を遮断するかまたは透過するために用いられる。そこで、露出されたスポットがヌクレオチドとカップリングするように準備される。次に、この表面は、アデニン、チミン、シトシン、またはグアニンのいずれかを含む溶液に浸され、照射を通じて脱保護されたガラス上の領域でのみ、カップリングが起こる。また、カップリングしたヌクレオチドは、光感受性保護基を有し、そのようにして、プローブがそれらの全長、通常は25ヌクレオチドに到達するまで、脱保護とカップリングが繰り返される。
2.電界効果DNA検出
一般に、多くの電界効果に基づく生体分子の検出スキームは、1970年にBergveldによって最初に紹介されたISFET(イオン感受性電界効果型トランジスタ)の構造と似ている。IEEE Transactions on Biomedical Engineering,17(1):70−71(1970)。ISFETは、金属層がイオン感受性メンブレン、電解質溶液およびカウンター電極に置き換えられていることを除いては、従来のMOSFET(金属酸化物半導体電界効果型トランジスタ)に類似している。EISFET(電解質−絶縁体−シリコンFET)は、同構造に言及している別の頭字語である。ドレイン−ソース電流は、酸化物に到達可能なイオンを形成する電界効果によって調節される。ISFET技術は、非常に十分に開発されたものであるため、pHメーターとして市場に進出している。Souteyrandらは、シリコンISFETを用いて、標識無しのホモオリゴマーDNA(ポリ(dA)DNAの18merおよび1000mer)ハイブリダイゼーション検出を初めて示している。Journal Physical Chemistry B,101(15):2980−2985(1997)。彼らは、相補的なホモオリゴマー鎖間のハイブリダイゼーションによって誘導された表面電荷の増加に応答して下にある半導体のフラットバンド電位のシフトを観察した。シリコンISFET構造を用いて成功した電解効果DNA検出を紹介している他のいくつかの論文について以下に述べる。Pouthasらは、5μM、10μM、20μMの20merオリゴヌクレオチドの電界効果検出を示し、低イオンバッファーの必要性を強調した。Physical Review E,70(3):031906(2004)。Fritzらは、2nM程度に薄い12merオリゴヌクレオチドをリアルタイムで検出することができた。Proceedings of the National Academy of Science USA,99(22):14142−14146。彼らは、プローブDNAを固定化するためにポリL−リジン(PLL)を利用し、低イオンバッファー(23mMリン酸バッファー)でリアルタイムの高速ハイブリダイゼーションが、相補的なDNA鎖間の静電反発力を補填する正に帯電したPLL表面によって可能になったことを主張した。Peckerarらは、1fMの15mer DNAの検出を示した。IEEE Circuits & Davies Magazine 19(2):17−24(2003)。
したがって、DNAを検出するための現在の方法は、核酸の酵素的増幅および標的の蛍光標識の種々の組合せに頼り、それぞれ試験される核酸の酵素的操作および化学的標識を必要とする。これらの方法は、時間がかかり、かつ限定的な感度を与える。
さらに、より最近になって、DNAマイクロアレイ技術が、遺伝子の発現パターンをモニターし、正常な組織および癌性組織中のマイクロRNA(miRNA)をプロファイリングするためのツールとして開発されたが、変化の定量化は、典型的には、光学的であった。この技術は高感度であるが、光学的方法の使用は、システムの小型化およびデータ収集電子機器との直接的接続において進展を妨害している。
このため、これらの欠点を克服するDNAの検出法に対する必要性がある。
米国特許第4,358,535号 米国特許第5,861,479号 米国特許第6,093,547号 米国特許第6,905,685号 米国特許第5,789,163号 米国特許第5,556,752号 米国特許第6,953,551号 米国特許第6,656,725号 米国特許第6,544,698号 米国特許第6,594,432号 米国特許第6,407,692号 米国特許第6,456,223号 米国特許第5,582,985号 米国特許第5,773,571号 米国特許第6,015,710号 米国特許第5,786,461号 米国特許第6,472,209号 IEEE Transactions on Biomedical Engineering,17(1):70−71(1970) Journal Physical Chemistry B,101(15):2980−2985(1997) Physical Review E,70(3):031906(2004) Proceedings of the National Academy of Science USA,99(22):14142−14146 IEEE Circuits & Davies Magazine 19(2):17−24(2003)
発明の概要
したがって、カーボン・ナノチューブ・トランジスタを用いた生物プローブ材料を有するセンサーを結合したマイクロアレイ用の装置を提供することが本発明の目的である。
少なくとも1つのチップであって、各々が絶縁性基板上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタのアレイに配置され、露出された金属端子を有する薄い絶縁性酸化物または窒化物によって被覆されている該チップを含むこのような装置を提供することが、本発明のより具体的な目的である。
さらに、標的材料への生物プローブ材料の結合を電気的に検出する方法を提供することが、本発明の別の目的である。
オリゴヌクレオチド−オリゴヌクレオチド結合を電気的に検出する方法を提供することが、本発明の目的でもある。
さらに、カーボン・ナノチューブ成長のために鉄ナノ粒子触媒を形成するための方法を提供することが、本発明の目的である。
加えて、改良されたコンダクタンスを有するトランジスタを提供するための絶縁性ゲート材料の調製法を提供することが、本発明の目的である。
さらに、オリゴヌクレオチド固定化の方法を提供することが、本発明の目的である。
さらに、結合したアプタマーを用いて生物材料を電気的に検出する方法を提供することが、本発明の目的である。
加えて、標的材料濃度の関数としてシグナル変化を測定する方法、および特異的な標的材料の相対的存在量を電気的に測定する方法を提供することが、本発明の目的である。
上記目的および他の目的は、下記を含む装置によって提供される。
(a)絶縁性基板上にカーボン・ナノチューブ・トランジスタのアレイを組み込み、露出された金属端子を備える薄い絶縁性酸化物または窒化物によって被覆されている少なくとも1つのチップ、
(b)前記露出されたトランジスタ端子に導電性を付与するための導電性金属、
(c)前記絶縁性酸化物層または窒化物層に結合した多数の特異的な生物プローブ材料、
(d)生物材料を含む液体溶液の流れを方向付けるための前記絶縁性酸化物または窒化物層の上方のマイクロ流体チャネル、
(e)工程d)の生物材料中の標的材料への生物プローブ材料の結合に起因した電荷の変化を検出するために構成された電子回路、
(f)e)からの検出された電荷の変化を結合した標的材料の量に定量的に関連付けるように構成される手段、および
(g)e)の電子回路およびf)の手段を用いて、特異的な標的材料の相対的存在量を測定するために構成された自動化検出手段。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的には、生物プローブ−標的結合の電子的検出のためのカーボン・ナノチューブ・トランジスタに基づく高感度装置の提供に関して記載される。本発明によれば、単一のカーボン・ナノチューブ・トランジスタ(CNT)は、別個の生物プローブ材料と関連付けられ、それによって、感度、使用の容易性および小型化の性能において既存の技術を遥かに上回る。重要なことには、本発明の装置は、それとともに使用される方法が、検出される標的の化学的または酵素的操作を必要としないため、プロトコールの単純さにおいて有意な利点を提供する。
さらに、本発明は、光学的検出手段に頼らないため、本発明の装置を小型化することができる。むしろ、本発明は、部分的には、対象とする生物プローブ材料を用いて官能化された電界効果トランジスタ(FET)のゲート端子を装備したFET検出を用いて、製造したナノプラットフォームを提供する。カーボン・ナノチューブまたはシリコンナノワイヤーのいずれかがFETとして用いることができるが、カーボン・ナノチューブが好ましい。
したがって、本発明は、各々が電界効果トランジスタとして操作されたカーボン・ナノチューブ・トランジスタのアレイを用いる生物標的材料検出のための装置を提供する。電流対電圧特性、又はソース電極とドレイン電極との間の相互コンダクタンスは、生物プローブと標的材料との間の結合事象の前後で測定される。数学的関係を用いることによって、標的結合の正確な量を引き出すことができる。本発明の装置は、末梢の電子ネットワークと増幅器、および生物プローブ−標的材料の結合量の定量性の高い測定を行うための測定アルゴリズムを使用する。データは、分子生物学の分野における当業者に周知の方法を用いて較正される。このようにして、本発明は、従来のDNAマイクロアレイと同じ目的のために用いてもよいが、後述する利点を有し、例えば検出される核酸の化学的または酵素的な操作なしに感度を増大する。
ハイブリダイゼーション事象などの結合の前後での電流対電圧特性における相違、またはソース電極とドレイン電極との間の相互コンダクタンスにおける相違は、配列特異的な方法、例えば、標的DNAなどのオリゴヌクレオチドによる、プローブと呼ばれる核酸の別の鎖の相補配列への結合がプローブの全体の電荷の変化をもたらすという既知の事実から生じる。これは、塩基対(アデニン(A)−チミン(T)対の2つの水素結合、およびシトシン(C)−グアニン(G)対の3つの水素結合)における水素結合、およびリン酸骨格によって保持される負電荷の存在を示す図1から理解することができる。
本発明の装置は、装置を小型化することができるため有利であり、該装置を用いる方法論は、DNAを検出するための少なくとも5つの主要な利点を示す。
(i)該装置は電荷を検出するため、試料は、標識化工程を必要とせず、プロセスはあまり困難でない;
(ii)方法論は標識なしであるため、感度は、蛍光検出スキームよりも良好であり、それは、蛍光検出スキームでは、感度は光検出器と蛍光標的の完全性の両方に依存するからである;
(iii)方法論は、光退色を被らず、該装置は、時間平均化を必要とする場合、何度でも検出に用いることができる;
(iv)電界のアプリケーションは、ハイブリダイゼーション反応速度を増加させることができ、アッセイの処理能力を増大させる;および
(v)該方法論は、光学的検出手段を用いないので、小型化を促進する。
下記に詳細に記載される方法は、DNAまたはRNAの大規模な化学的または酵素的操作を必要とせずに、核酸ハイブリダイゼーションの高感度かつ特異的な検出を可能にする。本発明の装置および該装置を用いる方法論の応用は、広範囲に及ぶ。いくつかを言及することができる。
1.遺伝子発現のモニター:研究および診断用および予後を予測すること
2.マイクロRNA(miRNA)発現のモニター、(マイクロRNA(miRNA)は小さなRNA分子であり、植物および動物のゲノムにコードされている。これらの高度に保存された−21mer RNAは、mRNAのどの部分でもよいが、特に特異的なmRNAの3’−非翻訳領域(3’−UTR)への結合によって遺伝子発現を調節する。それらは、特定の種類の癌においては別々に発現されることが報告されており、ある種のプロファイルは癌における患者の予後を予測できるという証拠がある。
3.DNAのコピー数変化の検出、電子的比較的ゲノムハイブリダイゼーションの実行、染色体領域における欠失の検出。
4.遺伝子全体の配列決定、電流ゲルを基礎とした配列決定技術を置き換えることができる。
5.単一のヌクレオチド多型性検出。
6.空気中、血中および生体分泌物中の病原体の検出。
定義
本明細書中で使用するとき、下記の用語は、次のように定義される。
アプタマー:特定の標的分子に結合するオリゴヌクレオチド又はペプチド。これらのオリゴヌクレオチドおよび/またはペプチドは、小分子、タンパク質、核酸などの種々の分子標的、さらには細胞、組織および臓器に結合するように、インビトロ選択または同等にSELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの体系的進化(systematic evolution of ligands by exponential enrichment))を介して操作された。アプタマーは、多くの場合、抗体と匹敵する分子認識特性。
カーボン・ナノチューブ:ナノメーター(nm)オーダーの直径を有する継ぎ目のない円柱に巻かれている1原子厚のグラファイト(グラフェンと称される)。長さと直径との比率は、10,000を超えていてもよい。カーボン・ナノチューブ(CNT)は、単層(SWNT)または多層(MWNT)のいずれかであり得る。
マイクロアレイ:これは、例えば、DNAの場合には、ガラス、プラスチックまたはシリコンチップなどの固相表面に結合したDNAスポットの一群を意味する。取り付けられた(affixed)DNAスポットは、多くの場合、プローブまたはレポーターと呼ばれる。マイクロアレイは、インクジェットプリントを用いるフォトリソグラフィーなどの様々な技術を用いて組み立てられていてもよい。
オリゴヌクレオチド:DNAまたはRNAのいずれかのヌクレオチド配列。塩基配列の長さは、多くの場合、「mer」によって記される。このようにして、15塩基の断片は、15merと呼ばれる。
マイクロ流体チャネル:1nm未満の少なくとも1つの大きさを有するチャネル。マイクロ流体デバイスおよびそのチャネルに用いられる共通の流動体は、例えば、血液試料、細菌細胞懸濁液、およびタンパク質または抗体溶液である。これらのチャネル内の流動体の容積は、数ナノリットル(nl)のオーダーである。
プローブ(またはプローブ材料):標的材料に結合する能力を有する任意の生物材料。一般に、DNA、RNA、並びにオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドのセグメント;細胞受容体またはウイルスが例に含まれる。最も一般的に用いられるとき、この用語は、具体的には、大量の相補的でないDNAおよびRNAの存在下で、相補的な配列に結合またはハイブリダイズし、それによって検出される能力を有する、それぞれ、一本鎖DNAまたはRNAのセグメントを意味する。
標的(または標的材料):例えば、ハイブリダイゼーションによってプローブ材料に結合する能力を有する任意の生物材料。
図中の用語。
図9:
x:図の水平軸であって、電極−電解質に垂直に引かれ、接合面から離れた距離を示す。
ρ:図の垂直軸であって、固定化されたDNA分子およびバッファー溶液中のイオンの再配列から生じる、電荷密度のプロファイルを示す。
0:両軸の原点、酸化物−電解質接合面を示す。
σ:電解質−電極接合面に対する固定化されたDNA分子の表面電荷密度。
δ:溶媒和イオンが到達可能な電極−電解質接合面からの最接近距離。
図10:
x:図の水平軸であって、電極−電解質接合面に垂直に引かれ、接合面から離れた距離を示す。
ρ:図の垂直軸であって、固定化されたDNA分子およびバッファー溶液中のイオンの再配列から生じる電荷密度のプロファイルを示す。
0:x軸の原点、酸化物−電解質接合面を示す。
−hは、酸化物−電解質接合面からシリコン−酸化物接合面までの距離である。
h:酸化物の厚さを示す。
σ:電極−電解質接合面に対する固定化されたDNA分子の表面電荷密度。
δ:溶媒和イオンが到達可能な電極−電解質接合面からの最接近距離。
ρ:カーボン・ナノチューブ内で誘起される電荷密度。
σ:ゲート電極内で誘起される表面電荷密度。
φox:酸化物を横切る電圧降下。
φ:酸化物−電解質接合面を横切る電圧降下。
φ:電解質−ゲート接合面を横切る電圧降下。
app:固定された電流がカーボン・ナノチューブを通じて流れるように、カーボン・ナノチューブ上の固定化された電荷密度を維持すること要求されるゲートおよびシリコンに対する印加電圧。
図11:
ρ:固定化されたDNA分子およびバッファー溶液中のイオンの再配列から生じる、電荷密度のプロファイルを示すための図の垂直軸。
ρ:カーボン・ナノチューブ内で誘起される線形電荷密度。
ρDNA:固定化されたDNAの容積電荷密度であって、単純化モデルにおいて接合面に対して落とし込まれ、表面電荷密度として処理される代わりに、現実的な状況における電解質までの有限距離に対する全長について示される。
図12:
ρ:電荷密度のプロファイルを示すための図の垂直軸;ρion:溶液中の陰イオンの容積電荷密度;ρ:σを取り囲み、遮蔽する溶液中の陽イオンの容積電荷密度;ρ:カーボン・ナノチューブ内で誘起される線形電荷密度;σ;対象とする固定化された分子の表面電荷密度。図は、固定化された分子が、接合面に接近して位置付けられなければならず、そうでなければ、その変化は、電解質中の周囲のイオンによって遮蔽され、装置によって検出することはできないことを示す。電荷σの任意の変化は、周囲の拡散層によって遮蔽され、トランジスタに影響を与える。
図13:
ID:ドレイン電流;
VGS:ソースおよびゲートを横切る電圧;
ss:ゲートに固定化された一本鎖の15塩基オリゴマー;
ds:相補的オリゴマーにssを晒すことによって達成され、室温でハイブリダイズされる二本鎖DNA。
不適合hyb:相補的でない配列に晒され、dsと同じ条件下でハイブリダイズされるss。
図14:
Vは電圧であり;
Rは抵抗であり;
Sはソースであり;
Dはドレインであり;
Iは電流であり;
osはドレイン−ソース電圧であり;および
Gはゲートである。
図15:
Sはソースであり;
Dはドレインであり;
Gはゲートであり;
は絶縁性酸化物であり;および
G−Oはゲート酸化物である。
図16:
dsはドレイン−ソース電圧であり;および
gsはゲート−ソース電圧である。
本発明の装置
A.本装置の概要
半導体カーボン・ナノチューブは、2つの伝導体の間にあるチャネルとして機能し、チャネルコンダクタンスを調節することによってゲート電界に応答する。カーボン・ナノチューブは、非常に高感度の電荷検出器であり、したがって、例えば、高い感度のDNA検出の達成をもたらす。カーボン・ナノチューブ・トランジスタの作製は、容易であり、単純であり、フレキシブル基板に十分に適合可能である。ナノチューブの円筒形状は、ゲート酸化物厚に対する厳密な要求をより低減することを可能にする。本発明によれば、ナノチューブは、例えばシリコン酸化物または窒化物で絶縁され、プローブ材料は、該プローブ材料または電解質バッファーによるナノチューブの直接的な修飾を避けるために絶縁層に固定化される。
本発明の別の態様によれば、鉄ナノ粒子は、カーボン・ナノチューブ成長を達成するための触媒として用いられる。具体的には、ほぼ単層である薄い鉄フィルムは、10−10atm未満の圧力下で熱蒸着によって蒸着される。周囲大気圧に晒すと、鉄酸化物のナノ粒子が形成され、その後、カーボン・ナノチューブ成長中に高温で水素に晒されて還元される。
B.カーボン・ナノチューブ・トランジスタ
本装置は、各トランジスタへのアドレス信号を制御するスイッチの回路を格納するプラットフォームに容易に適合される回路基板にワイヤ結合された最大数十万個のカーボン・ナノチューブ・トランジスタを含むアレイを含む。各トランジスタは、DNA、RNA、ペプチドまたは細胞表面受容体ドメインなどの異なった生物プローブ材料とともにスポットされ、そのため、該装置は、このようなプローブ材料のマイクロアレイを模倣するが、これらのうち重要な例外は、特に、トランジスタリーダーがビルトインされていることである。例えば、DNA骨格は、溶解された場合のみ負に帯電し、電荷検出測定は、DNA電解質溶液と接触している装置を用いてなされる。このようにして、該装置は、電解質溶液によるリード線の間での短絡を避けるために十分に絶縁され、丈夫なパッケージにカプセル化される。
本発明の単純な装置の概略図は、プローブ材料としてDNAを用いて図2に図示される。ドレイン(D)、ソース(S)電極、およびこの2つをブリッジしているカーボン・ナノチューブ・チャネルは、酸化物層によって電解質溶液から絶縁されている。ゲート(G)電極だけが、電解質溶液と接触している。プローブDNAは、カーボン・ナノチューブ・チャネルの上部にある酸化物層に固定化された。該装置は、絶えずウェットである必要はない。電荷測定が行われるときだけ、DNAは溶解していることを必要とする。チャネルコンダクタンスは、吸着されたDNA電荷によって生じる電界の関数である。調製されたカーボン・ナノチューブは、通常、p型伝導を示し、DNAが負の電荷を保持しているため、チャネルコンダクタンスは、吸着した電荷数の増加を引き起こすハイブリダイゼーションに応じて増加する。ドレイン−ソース電位が固定されると、ドレイン−ソース電流(IDS)が増加するため、チャネルコンダクタンスの増加が示される。
本装置またはデバイスは、ハイブリダイゼーションに基づいてゲート−ソース電位(VGS)を調節することによってIDSを固定するためのフィードバックモードにおいて作動する。このようにして、トランジスタ作用機構は、表面電荷吸着の静電学から切り離される。VGSシフトは、簡単な電気容量問題に帰着し、吸着された電荷数の変化に比例する。このようにして、例えば、標的DNAの存在量は、ハイブリダイゼーション事象の数を指示するVGSシフトを検討することによって定量化され得る。例えば、DNAを同定することが望まれる場合、本装置は、DNAマイクロアレイの2つの機能性:(i)アレイ中のどのトランジスタがチャネルコンダクタンス増加を示すのかを検討することによる遺伝子同定;および(ii)VGSシフトの量を検討することによる定量化を達成することができる。
C.本装置の組立て
カーボン・ナノチューブ(CNT)は、化学気相蒸着(CVD)を用いて、シリコン酸化物基板などの絶縁性酸化物基板上で成長される。一般に、基板は、p型シリコン基板上の数百ナノメートル(nm)厚の熱酸化物を有する。鉄粒子などの触媒粒子は、硝酸鉄滴によるかまたは基板上に鉄塵を生じるように鉄の短期間の蒸着によって基板に蒸着される。この成長は、メタン、エチレン、水素およびアルゴンガスの適切な気流とともに、約750℃を超える温度、好ましくは約900℃で加熱炉内で達成される。カーボン・ナノチューブは触媒の外側に成長し、基板上でマットを形成する。
二酸化シリコンまたは窒化シリコン基板上で調製されたCNTマットから、次の工程は、金フィルムを蒸着させることによってナノチューブ・チャネルをソース電極およびドレイン電極に接続することである。この基板は、まず、フォトレジストを用いてスピンコートし、次に、接触フォトリソグラフィーを用いてパターニングされる。次に、クロム付着層および金層は、熱蒸着によって基板上で蒸着され、その後フォトレジストの上部にある金層を除去するためにリフトオフする。典型的なソースとドレイン分離またはチャネル長は約5μmである。不要なナノチューブは、酸素プラズマ下でエッチング除去(etched out)される。
図3は、1つのセル中に38個のトランジスタのトランジスタアレイを図示し、全ては、空間を効率的に利用するための共通のソースを有する。各電極(ドレインまたはソース)は、ワイヤ結合のためにコンタクトパッドに接続されている。この場合、コンタクトパッドは、200×200μmである。この装置は、DNAがバッファー溶液に溶解されなければならいため、液体ゲート操作を対象とし、そのため、ゲート電圧を適用するための共通のゲートカウンター電極も存在する。
電解質バッファーからナノチューブに隔離を施すために、薄いシリコン酸化物層をこの装置に蒸着し、続いて酸化物層(最大約0.5μm)の厚いプラズマCVD(PECVD)によって蒸着される。この冗長さの理由は、プラズマ法がナノチューブマットを破壊することによる。活性領域での酸化物層は、約100nmの厚さを得るために、再びRIE(エッチングされた反応性イオン)が施され、他の部分では厚い酸化物のままである。
さらに、本発明はまた、絶縁性ゲート材料を形成するための設計およびプロセスを提供する。このプロセスは、原子気相蒸着によってアルミニウムゲート酸化物の蒸着を必要とする。シリコン窒化物の約10nm未満の薄い層は、上部層に蒸着され、水から下にあるカーボン・ナノチューブの保護を改良する。得られたトランジスタは、コンダクタンス曲線が有意に改良され、即ち、ヒステリシスが低下し、および良好な均一性を有する。
1.設計パラメータ
(a)酸化物の厚さ
ゲート酸化物の厚さに対して、2つの矛盾した要件がある。一方では、厚い酸化物は、電解質漏電を最少にすることが所望されるが、他方では、薄い酸化物は、ゲートカップリングを最大にすることが所望される。CNTの配置は、非常に薄い酸化物に対する要件を減らす。酸化物層の上部の表面電荷を備える酸化物層に埋められたナノチューブは、無限に長い導電柱と無限板との間の電気容量を考慮することによってモデル化されてもよい。したがって、無限の柱と接地された板の標準の教科書的な問題を考慮することによって適切な酸化物層厚を決定することができる。
無限に長い導電柱と無限板との間の電気容量の問題は、仮想的方法によって解決される。これは、半径aの平行な導電柱の軸からの距離dに位置した無限に長い線電荷ρi(C/m)の問題の延長である。円柱表面を等電位面にする仮想線電荷(ρi)が配置され、問題の寸法は図4に示されている。
ρi=d=adを指定することは、円柱表面を等電位にする。導電柱と板との間の電気容量を解くために、別の円柱が、図5に示されるように添加される。元々の線電荷および仮想線電荷は、各線電荷の周囲に等電位円柱を作り、円柱の軸はそれぞれの線電荷からのdに取って替わる。この板が2つの線電荷の間の中心で右に挿入される場合、該板上の各点が両方の線電荷から等距離であるために等電位板となる。
円柱表面(M)と板(P)との間の電位差は、下記のように記載することができる。
この単純なモデルは、電気容量が酸化物の厚さ(h)のスロー関数であり、したがって、最適なゲートカップリングを提供するための非常に薄いゲート酸化物を作るための要件が大幅に緩和される。このようにして、薄いゲート酸化物は、ゲートカップリングにおける大幅な損失なしに電解質漏電を避けるために用いることができる。典型的には、約50〜200μm、好ましくは約100nm厚の酸化物は、カーボン・ナノチューブ・チャネルがブリッジしている間のドレイン−ソースギャップの上部に用いられ、他のどの場所でも酸化物は約250〜750nm、好ましくは約500nm厚である。
(b)接触抵抗
カーボン・ナノチューブ・トランジスタの作用機構は調査中であるが、文献に見出される理論的根拠とそのための証拠があり、IDSは下記を介してゲート電圧によって調節されることを示唆する。(i)ナノチューブに誘導される電荷;(ii)半導体ナノチューブと金属ソースおよびドレイン電極との間のショットキーバリア接触の変更;または(iii)(i)と(ii)の両方の組合せ。ソースおよびドレインが高濃度ドープシリコンである従来のMOSFET(金属酸化物半導体電界効果型トランジスタ)と違って、本発明で使用されるカーボン・ナノチューブ・トランジスタ用のドレイン−ソース電極の材料は金であり、ナノチューブ・チャネルとは異なる材料である。したがって、ドレインとチャネル接合間、およびチャネルとソース接合間の接触抵抗は必然的である。特に、トランジスタ動作の背後にある物理学的機構に関わらず、好ましい実施は、アニーリングによる性能を改善することである。図6は、該装置の真空アニーリングによる接触抵抗の改良を示す。電流レベルは、同じドレイン−ソース電圧に対してより高く、曲線は、アニーリング後にはより小さな歪曲を示す。
2.装置I−V曲線
図2に示されるように、作動中の装置は、電解質溶液と接触してなければならない。ゲートは、VGSが適用されるゲート電極と接触している電解質を介してなされる。これは、電解質ゲートと呼ばれる。しかしながら、本発明者らがバックゲートと呼んでいる、即ち、熱酸化物の300nm厚までのナノチューブ・チャネルから絶縁されているシリコン本体の裏を介するゲートの別の方法もある。図7は、同じトランジスタに対するバックゲートと電解質ゲートとの間の比較を示す。電解質ゲートは、トランジスタを断続的に通過する、より少ない電圧範囲を必要とし、ヒステリシス効果は電解質ゲートにおいて顕著性が小さいことは明らかである。ヒステリシスは望ましくないが避けられず、印加ゲート電圧とともに周囲を動く、酸化物層内に捕捉された電荷によって引き起こされる。特に、この装置は、初期には、一方向だけに通過する同じヒステリシスブランチをいつも選択するために、一端に向けてバイアスをかけなければならない。
D.プローブ材料固定化およびハイブリダイゼーション
1.固定化
プローブ材料は、シラン官能化を通じて絶縁性酸化物または窒化物表面に固定化される。絶縁性酸化物または窒化物表面は、短時間の酸素プラズマに晒され、表面上にヒドロキシル基を生じ、その上では、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MPTMS)は重合可能である。ヒドロキシル化されたシリコン酸化物表面へのMPTMSのカップリングは、図8に示されている。MPTMSの水溶液を作ることはメトキシ基をヒドロキシル基に置換する。水分子は、カップリング反応中に放出され、そのため、乾燥した環境においてカップリングを行うことが重要である。しかし、他のシラン分子を用いたシラン分子の重合は避けられず、表面上で粗さおよび不均一性を誘導するポリマーの大きな球の形成へと導く。表面がメルカプタン基で官能化された後、例えば、アクリダイト(acrydite)修飾したプローブオリゴヌクレオチドは、容易に、シランのメルカプタン基と反応し、プローブオリゴヌクレオチドの一晩のインキュベーションによって共有結合を形成する。本発明者らは、例えば、15merのオリゴヌクレオチドを用いた。次に、表面を100mMのアクリル酸ナトリウムを用いて15分間処理し、未結合のMPTMSを保護する。
2.ハイブリダイゼーション
非標識またはタグ化されていない標的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションは、通常のハイブリダイゼーション条件、即ち、10mMリン酸緩衝溶液pH7、0.3M NaClで行う。塩は、ハイブリダイゼーションを達成するための2つの相補的な鎖の中での静電的反発を低下させるために非常に重要である。しかし、高い塩濃度またはイオン濃度は、装置感度を制限する。そのため、繰り返しの洗浄工程が、脱ハイブリダイゼーションを引き起こすことなしに塩を減らすのに必要である。塩濃度の段階的な減少である0.3M、0.1M、10mMを用いて少なくとも3回は洗浄を行い、最終的には、この装置は、塩を効果的に排除することが知られている、0.3M酢酸アンモニウム、pH7を用いて洗浄される。電解質ゲート測定は、ハイブリダイゼーションの前後で行われ、通常、1mMリン酸緩衝液、pH7で行われる。
固体基板上に前もって固定化されたプローブ−DNA上への標的−DNAハイブリダイゼーションは、ラングミュア吸着モデルに従うことが示唆されており、吸着体の高いバルク濃度で表面がこの吸着体によって十分に被覆されることを予測する。
ここで、I`はDNA表面被覆率であり、I`maxは最大のDNA表面被覆率であり、Cはバルク電解質におけるDNAの濃度であり、βは、通常、実験から導き出され、典型的には、蛍光または表面プラズモン共鳴実験からの10−1の範囲である。
E.電気測定
1.デバイス静電モデル
(a)電解質電気容量(Gudy−Chapman−Sternモデル)
表面電荷を保持する電極が電解質溶液に浸されると、反対の符号のイオン空間電荷が電解質溶液内で形成される。この空間電荷のイオンは、内部ヘルムホルツ層よりも近接して電極に接近することができず、したがって、それらは、ヘルムホルツ層または拡散層と呼ばれる。化学的に特異的に吸着した分子またはイオンだけが内部ヘルムホルツ層に残存することができる。
イオンは、電解質中で移動可能である。イオンの流れは、濃度勾配によるイオンの拡散と電界によるイオンの偏流からなる。イオン空間電荷は、帯電した電極に近接して形成され、該電極から距離が離れると減少することが想像し得る。溶液中にイオンの正味の流れがない熱平衡の場合には、電位差は、半導体p−n接合に設定される。
流束方程式j=DVc=qcμ(−Δφ)=0、およびポアソン方程式∂φ/∂x=−p/εを用いて、1:1の電解質(例えば、塩化ナトリウム、溶液中に同量のNaとClにイオン化される)のための一次元の場合におけるいくつかの重要な結果を記載することができる。
電解質における任意の位置での電界と電位と関係は、下記の通りである。
式中、電位は、x→∞にセットされる。
上記方程式は、積分して、
(式中、φは、x=0での電位である)
を得ることができる。
双曲正接の狭い議論に関しては、tanh(x)≒xとして概算することができる。
本発明者らは、
φは、x=0での電位であり、x=∞での電位はゼロであるように選択されるので、φは、電解質を横切る電位降下である。
Sternモデルに従って、イオンは、電極に近くで任意に移動することができない。イオンは、有限サイズであり、おそらくは溶媒和していて、または溶媒の層は、電極表面からイオンを分離してもよい。イオンが電極表面に対するδと同程度に近くに移動することだけは可能である。電解質を横切る電位降下と電極表面上の表面電荷との関係を決定するために、ガウスの法則から、本発明者らは、次のように記載することができる。
このセクションで得られた電圧降下は、熱平衡仮定に基づき、ナノチューブと電解質との間の良好な絶縁が存在する場合に達成される。漏電は、この分析では無視されるが、しかしながら、電解質の漏電は好ましくない。それは、電極がファラデープロセスによって分解していることを意味するためである。
ソースとゲートカウンター電極との間の印加電圧は、ナノチューブ・チャネル、酸化物層、酸化物−電解質界面、および電解質−ゲートカウンター電極界面を横切る電位降下の合計であり、即ち、Vapp=φトランジスタ+φox+φ+φである。熱平衡は、電解質中の正味のイオン流束がないところを推測する。ナノチューブ・チャネルを横切る電位降下の変化が見積もられる。
前のセクションで得られたGuoy−Chapman−Sternモデルからの電解質とゲートカウンター電極との間の電圧降下は、
によって提供され、ここで、σは、カウンター電極上の表面電荷密度である。この電位降下は、例えば、DNAハイブリダイゼーションの前後でほぼ同じものであることが期待されるが、それは、表面電荷密度が、ハイブリダイゼーションによって変化されない電解質およびカウンター電極の条件に依存するためである。
そこで、プローブDNAが結合される内部ヘルムホルツ層を考察すると、例えば、ガウスの法則がこの接合面で適用される。
式中、σは、固定化されたDNAの表面電荷密度であり、ハイブリダイゼーションに応じて増加し、最大2倍である。δは、数Åのオーダーであり、内部および外部ヘルムホルツ層の境界を示す。
酸化物および電解質の界面を横切る電圧降下は、次の通りである。
(b)吸着した電荷の関数としての電圧シフト
この装置は、IDS定数を維持するためにフィードバックモードで操作されていることが想定され、そのため、吸着した電荷の静電学をカーボン・ナノチューブ・トランジスタ作用機構から切り離すことができる。
IDS定数を固定することによって、固定される;したがって、φトランジスタおよびφoxも固定される。このフィードバック回路だけはハイブリダイゼーションによるφの変化を補うことを必要とする。典型的な数値の入力:h=100nm、a=2nm、εox=3.9ε0、εliq=80ε、T=300K、およびδ=5Å、次のように記載することができる。
典型的には、関与する全ての電圧は、1または2ボルトのオーダーである。電解質のイオン強度がc=1mMである場合、sinh−1の括弧内の分母は3.79×10−3であり、そのため第1項は支配的な項である。
DNAなどのプローブ材料は、内部ヘルムホルツ層に完全には定着することができない。典型的には、内部ヘルムホルツ層は、δ=5Å厚のオーダーであるが、15merのDNAの長さは51Åである。界面のより現実的な写真は、図11のもののように見える。遊離したイオン濃度は、エネルギーにおいてボルツマン分布する。本発明者らは、ポアソン方程式を次にように記載することができる。
不運なことに、上記の方程式は、閉形式表現には解くことができない。典型的には、2つの極端なケースは、教科書において解かれている。(i)準中性近似、および(ii)空乏近似。
準中性近似では、∂φ/∂xは、非常に小さいものであると仮定されるか、または電荷はほぼ中性である。陽イオンは、負のDNA電荷を補う。
他の極端な近似である空乏近似では、遊離イオンが枯渇し、DNA電荷を補うことができず、本発明者らは次のように記載する。
(c)デバイス感度
簡単な計算を実行して、相当の電圧シフトを誘導するのに必要とされる15merの標的DNAの最小限の濃度を予測することができる。本発明者らは、sinh−1項の前因子である51mVの変化を検出できることを仮定する。51mVは2k8T/eであるため、実際に、それは無難な仮定である。sinh−1括弧内の分母は、c=1mMである場合、3.79×10−3である。変化がσであり、3.79×10−3に等しい場合、φox項は無視することができ、φ変化は約51mVである。
φ変化において51mVを達成するために、本発明者らは、3.79×10−3coul/mの表面被覆率変化を必要とする。15merのオリゴヌクレオチドに関して、本発明者らは、各塩基が溶液中で1電子電荷を保持し、そのため、各分子は15×1.6×10−19coulを保持するものと仮定する。必要とされる表面被覆率は1.57×1015分子/mである。この表面濃度は、プローブ−DNA固定化の最小の表面密度に対する要件を課す。つまり、プローブDNAが十分に密集していない場合、標的DNAに対するハイブリダイゼーションによる表面電荷の変化は、所望の電圧変化を生じさせることができない。最大のDNA表面被覆率は、全てのDNA鎖が直立した鎖の配向で表面を満たす場合に達成される。鎖の半径が6Åであるとの仮定は、下記を与える。
ラングミュア吸着モデル、および10−1のβ値を用いて、本発明者らは、所望の電圧変化を達成するために必要とされるバルク中の標的濃度が約20nMであることを得る。
このモデルによって予測される感度は20nMのオーダーに過ぎないが、感度をfMにすることは電界効果検出を用いて達成し得ることが経験的に示された。これは、βの仮定が実際には感度を低く見積もっていることを示唆する。本発明者らのアプローチもfM感度に到達可能であると予想する。
しかし、電界は、次のようである。
DNAの長さ(l)を横切る電位降下は、下記の通りである。
準中性近似は、電位降下がDNA電荷の対数に比例することを予測し、枯渇近似は、電位降下がDNA電荷に直線的に比例することを予測する。現実的なケースは、2つの近似の間にあるだろう。これは、実際には、前に電位降下から誘導されたsinh−1関数の挙動と一致する。これは、xが小さなときにはsinh−1(x)≒x、およびxが大きなときにはsinh−1(x)=In(2x)であるためである。
図12は、検出されるべき電荷が酸化物−電解質界面の拡散層の届く距離を超える状態を図示する。電荷σのいずれかの変化は、周囲の拡散層によって遮蔽され、トランジスタへの効果はない。
検出されるべき電荷からの電界がカーボン・ナノチューブ・チャネルに到達可能であることを保証するために、測定中に電解質溶液において低イオン塩濃度が用いられる。図12を考慮すると、検出されるべき電荷は、デバイ長よりもさらに遠い。σの増加は、トランジスタ周辺の拡散層を調節するだけであるため、トランジスタに影響はなく、該トランジスタは、電界が拡散層によって遮蔽されたため、σからのどのような電界も感知しない。そのため、酸化物−電解質界面の拡散層は、帯電した生体分子と重なり合うことが非常に重要である。k−1は大きくなければならないという要件は、電解質のイオン強度(c)に制限を与え、これは、cの逆比例の
であるためである。本発明者らは、例えば15merのオリゴヌクレオチドを採用し、1モノマーの長さが3.4Åである場合、k−1>51Åであるかまたはc<3.6mMである。
2.ハイブリダイゼーションに応じたI−V曲線の変化:原理の予備的な証拠
図13は、ハイブリダイゼーションが適合しない一本鎖DNAの相互コンダクタンス曲線、および完全に適合したハイブリダイゼーション後の二本鎖DNAの相互コンダクタンス曲線を示す。調製されたように、カーボン・ナノチューブ・トランジスタは、一般に、p型伝導を示す。ゲートに吸着したDNA由来の負の電荷は、ナノチューブ・チャネルのコンダクタンスを増加する適用された過剰の負のバイアス電圧として役割を果たす。電流レベルが、吸着した電荷の増加数により、適合したハイブリダイゼーション後に引き上げられることは明らかである。電流の僅かな増加は、非特異的な結合により、適合していないハイブリダイゼーション後になお観察される。3つの相互コンダクタンス曲線の全ては、同じトランジスタから測定され、順次、一本鎖(ss):5’/アクリダイト//スペーサー18/ATC CTT ATC AAT ATT−3’、不適合配列:5’/ATC CTT ATC AAT ATT−3’(不適合hyb)とのハイブリダイゼーション、適合配列:5’/AAT ATT GAT AAG GAT−3’(適合ds)とのハイブリダイゼーションから採用された。
図13は、カーボン・ナノチューブ・トランジスタ(VDS=−0.1V)の相互コンダクタンス曲線を図示する。(ss)一本鎖DNAを用いた処理;(不適合hyb)適合していないDNAの配列とのインキュベーション;(適合ds)完全に適合したDNAとのハイブリダイゼーション。
三角は、掃引方向を示す。
F.マイクロアレイ応用に関する技術の概要
前述する検討は、ゲートに堆積された電荷の量の関数としてゲート電圧の期待される変化を関連付ける。デバイスの観点からは、いわゆる三極管領域下で操作しているPMOSとしてCNTトランジスタの作用を近似することができる。この仮定下で、ドレイン電流は、次のようにモデル化される。
式中、Kは、感度を決定するパラメータであり、vtは、有効な閾値電圧であり、vdsは、ドレインとソースとの間の印加電圧であり、vgsは、ゲートとソースとの間の印加電圧である。Kおよびvtは、各トランジスタに特異的な固有特性であり、トランジスタ間で異なってもよい。ハイブリダイゼーションの存在下では、正味の影響は、vgsの対応する変化によって補われる閾値電圧vの変化である。
電流が一定に保たれるようにフィードバック回路を用いる場合、得るために(7)をゼロにすることができる。言い換えれば、vgsの変化は、下記に等しい。
この関係は、トランジスタ特性と独立している。さらに、vgsの変化は、準中性近似または枯渇近似に対する、それぞれ方程式(5)および(6)によって与えられる結合DNA分子の電荷の直接的な測定として用いることができる。したがって、ハイブリダイゼーション後のゲート電圧の変化の測定は、結合した電荷量を直接的に定量するための手段を適用し得る。このアプローチは、標識を必要せずに、遺伝子発現実験に関して基本的に実行可能なものである。
マイクロアレイ使用の一般的な方法論は下記の通りである。カーボン・ナノチューブ・トランジスタのアレイを含むチップは、適切な基板上に作製される。ドレイン、ソースおよびゲート電極は、電気接触のために露出され、外部の多重回路が各トランジスタについて形成される。PDMSまたは適切なポリマーから作成されているマイクロ流体チャネルは、チップ表面に作製され、プローブ、およびDNAなどの標的オリゴヌクレオチド溶液の流れを指向する。DNA露出前に、相互コンダクタンス曲線の予備的スキャンは、各トランジスタについて測定され、作動しているトランジスタを同定し、ベースライン特性を確立するために役立つ。次に、標的遺伝子に相補的な配列と基板結合のための適切な末端修飾とを備える特異的なDNA溶液は、トランジスタ上に固定化される。自動化スポッターは、既存の蛍光に基づくマイクロアレイと全く同様にアレイを通じて種々のオリゴヌクレオチド配列を固定化する。次に、ハイブリダイゼーションが標的溶液で実行され、定電流での電圧シフトは、適切なプロトコールを用いた各トランジスタについて測定される。電流の動作基点は、同時に感度を増加させ、データ収集時間を減少させるために、相互コンダクタンス曲線の最急点で設定される。競合の遺伝子発現と同等の実験を行うために、第2のチップを作り、例えば、同じ相補的なDNA溶液をこの第2のチップに固定化する。ハイブリダイゼーションおよび電圧シフトの測定は、標的溶液が第2の試料を用いて調製されることを除いて、前回の場合と同様に行う。両者の試料に保存されていることが知られているDNA配列に対応する濃度標準化チップ。
G.トランジスタ特性由来の装置の感度試験
図21を参照すると、下記の手順を用いて、トランジスタ特性由来の本装置の感度を試験する。
相互コンダクタンスの傾き=1.93μA/V
電気容量=59fF、面積=132μm
1VのVGS変化を誘導するために、下記の表面電荷密度を必要とする。
表面密度を容積密度に関連付けるためにラングミュア吸着モデルを用いる。
Γmax(最大の表面被覆率)は、DNAが半径6Åの塩基であり、1塩基当たり3.4Åの高さである構造のような棒状であると仮定することによって得られる。そこで、全てのDNAが直立しているとした場合、Γmax≒9×1013分子/cmであるか、または全ての15merのDNAが水平に横になっているとした場合、Γmax≒3×1013分子/cmである。典型的なKは、6×10−1である。
全てのDNAが横になっているという最悪の場合のシナリオを想定して、本発明者らは、Γmax≒3×1013分子/cmを用いる。ドレイン−ソース電流における3V変化または3×1.93μA増加を誘導するために、Γ=3×18.6×10分子/cmを達成するため必要とされる容積濃度は約31pMである。
H.本装置の様々な使用
本装置は、非常に多様な分野において、様々な目的を達成するために用いることができる。例えば、この装置は、ある種の癌の形態を調べるための治療の臨床ツールの1点として用いることができ、ここで、mRNAおよびmiRNAのある種の遺伝子の発現の知見は、診断、予後および潜在的な治療の基礎を提供し得る。より重要なことには、本発明は、生産物、薬物およびさらに全細胞によって代謝的なある種のタンパク質などの過剰の生物学的材料の検出に潜在的に応用性がある。このシステムは、通常、アプタマーと呼ばれる人工的な核酸を取り込むには十分に適合性があり、それらは、前述の生物学的材料に感受性がある。したがって、一般に、本発明は、下記の領域で用いることができる。
医学的診断および予防スクリーニング
ドラッグデリバリー
遺伝学および遺伝学的スクリーニング
自国防衛&戦闘力のための病原体検出
科学調査および法的処置
本発明の装置は、1〜最大約100CNTを有する1つのチップを用いて構築され得るが、装置への複数のチップの封入は、明確に意図される。例えば、数個、数十個、数百個または数千個のチップを有する装置(apparatii)が意図される。1個のチップおよび複数のチップアレイについては、それぞれ図18および19を参照されたい。
例えば、約25〜50のCNT/チップを備えるアレイにおいて600〜700チップを提供することが明確に意図され、それにより、各CNTは、1個のヒト遺伝子でスポットされる。それによって、既知のヒトゲノムの遺伝子は、突然変異を検出するために適応されてもよい。これは、現在知られている遺伝子、およびすでに定義されている遺伝子を含む。
さらに、ウイルスに対するプローブとして細胞受容体表面配列を用いることが明確に意図される。例えば、ウイルス性エンベロープ糖タンパク質は、ある種の細胞表面受容体に結合することは周知である。
このようにして、本発明によれば、任意の生物プローブ材料は、試料中の標的材料を検出するために、マイクロアレイにおいて使用することができる。例えば、特徴的な病原体生成物に相補的であるヌクレオチドプローブが使用されてよい。全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,358,535号を参照されたい。別の例として、細胞表面受容体ドメインを有するプローブを使用してもよい。それらの全てが全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,861,479号;第6,093,547号および第6,905,685号を参照されたい。さらに、アプタマープローブは、種々の薬物の検出に用いることができる。全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,789,163号を参照されたい。
さらに、前記したように、チッププリンティングまたはスポッティングの任意の従来法を、本発明のマイクロアレイを調製するために用いてもよい。それらの全てが全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,556,752号;第6,953,551号;第6,656,725号;第6,544,698号および第6,594,432号を参照されたい。
ここで、ある種の実施例を参照されるが、例証を目的とするためだけに提供され、限定的であることは意図されない。
CNTを形成するための触媒の使用
少なくとも2つの方法が、CNT成長のための触媒として作用するFeナノ粒子を作るために用いることができる。a)0.5nm未満の厚さでのFeの超高真空蒸着;およびb)ミネソタ大学のPing Wangの「ナノクラスター銃」技術を用いたFePt粒子の形成。図24および25は、各触媒についてのCNTの成長を示す。生成CNT、およびより長いがまばらに分布したCNTの両方がFePTクラスター上に形成される。次に、Fe含有触媒を用いたCNTを形成するための任意の従来法を使用することができる。
NTチャネルをSおよびD電極に接続するための金蒸着
金コントラクトは、標準的な接触フォトリソグラフィー技術を用いてなされ、規定領域へ金を蒸着することは、物理的気相成長技術を用いてなされる。簡潔に、標準的な接触フォトリソグラフィーは、感光性材料、即ちフォトレジスト、で基板/試料を被覆することを伴い、光、および続く現像液への曝露に応じて型に依存して溶解するかまたは固まる。予め設定されたマスクのパターンは、マスクを通過した紫外光に晒すことによってフォトレジストに転移される。物理的気相成長技術は、対象とする固体材料を気化することを伴い、この特定の目的のためには金であり、抵抗加熱、電子ビーム加熱、プラズマスパッタリングなどの種々の方法を介してなされ、これにより、蒸気が基板/試料上で液化して、それにより基板/試料上に薄いフィルムが作られる。酸化物基板/試料への金付着は、ウェッティング層として作用するクロムまたはチタンの薄い被覆を始めに蒸着させることによって改善される。
酸化アルミニウムゲート材料の調製
酸化アルミニウム又は酸化ハフニウムなどの酸化物を作るための好ましい方法は、原子層成長法による。原子層成長法(ALD)は知られている蒸着法であり、適切な前駆体で表面の官能基を飽和させることによって、フィルムが一度に1つの原子層で構築される。酸化アルミニウムを蒸着するためのALDサイクル/段階は、空気中の水蒸気に起因してヒドロキシル基を必然的に含む表面をトリメチルアルミニウム(TMA)で飽和することによって開始する。過剰/未反応のトリメチルアルミニウムが除去された後、水蒸気が、TMAのメチル基をヒドロキシル基に変換するために導入され、副産物としてメタンが放出される。そこで、新たに変換されたヒドロキシル基は、TMA曝露の別のサイクルと反応するために準備される。TMAおよび水蒸気の導入サイクルは、所望の厚さが達成されるまで繰り返される。
絶縁性酸化物層へのプローブ結合
DNAプローブは、結合分子間の強力な共有結合によって絶縁性酸化物層に結合する。このプロセスのために使用されるプロトコールおよび化学物質は多くある。一つのアプローチでは、Acrydite(商標)分子は、DNA合成中に各DNAの5’末端に連結させることによって、プローブDNA配列に加えられる。他の調製では、鎖または炭素などのスペーサー分子が、プローブDNAとアクリダイトとの間に含まれる。DNA合成と一致して、酸化物表面は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)のチオール(硫黄)基を用いて官能化される。絶縁性酸化物層へのMPTMSの官能化は、気相中で行われ、少量のMPTMS溶液(約0.1mL)は、ガラス容器の底に置かれ、官能化されるべき試料は、ガラス容器の上部で逆さにして装備される。次に、容器の底を加熱(約60℃)し、約10分間試料に向けてMPTMS蒸気を吹き付ける。試料からの過剰/未反応の化合物は、温度勾配を用いて取り除かれ、即ち、容器の底部分は冷却され、上部は加熱される。DNAプローブ結合は、MPTMS官能化した酸化物層に結合分子を含む対象とするプローブの溶液をピペッティングし、インキュベートすることによってなされる。化学成分は下記に示される。
化学結合は、基板表面に依存するため、アミン基を用いて表面を官能化するなどの他の方法も用いることができる。
電荷の変化を検出するためのおよび自動化検出システム上の例示的な回路手段
生体分子の電荷は、センサーにおける見掛け上の閾値電圧シフトとして検出される。例えば、電解質−酸化物界面近くのDNAハイブリダイズの負電荷における増加は、n−チャネル電界効果トランジスタのドレイン電流の減少を引き起こす。フィードバック回路は、電解質(上部ゲート)に適用される電圧を調整することによってドレイン電流定数を維持するために使用される。DNAの場合には、電解質電位は、ハイブリダイズしたDNAの増加に応答して増加し、対象とする電気信号として機能する。
チップの実験:例えば、内蔵型の自動化DNAハイブリダイゼーション検出システムは、マイクロアレイの各エレメントで連続してセンサーシグナルを周期的に選択し測定するための回路を統合した個々に設計されたCMOS(相補型金属酸化物半導体)を用いる。初期には、生物分析物が存在しないバッファー電解質の下で、このシステムは、全アレイを通じてスキャンし、横列および縦列のデコーダを介して各エレメントのアドレスを指定する。分析物の導入後、続く適切なハイブリダイゼーションプロトコールにより、シグナルが周期的に測定される。適切に較正し、1つのセンサーから別のセンサーへのシグナル変化のより大きな程度は、入力試料におけるより程度の大きい配列発現を示す。既知の細菌、ウイルス、または遺伝病をフィンガープリントする特定の配列の発現レベルのプロファイルが与えられると、次に、このシステムは、遺伝病または病原体による感染の医療診断ともなり得る評価を提供する。
検出アルゴリズム
ユーザーがLCD読み出しの下のSTARTボタンを押すと、コンピュータは、固定メモリに組み込まれる制御配列を追跡する。続いて、コンピュータは、下記のように、各センサーに独特な電解質電位の値を記録する。
コンピュータは、横列語Rおよび縦列語Cをアウトプットすることによって、アレイエレメントであるRCを選択する。一時的な遅延後、検出器が、ラインX(R)およびY(C)上に論理素子1のみをアウトプットし、ラインに接続されたトランジスタにスイッチが入る。これは、センサーRCだけを通過して、電流インプット増幅器の負の末端(−)に電流を流すことを可能にする。センサーRCを通過した電流は、ダイオード接続したトランジスタMrefによって生じた参照電流と比較される。センサーRCを通過した電流が参照電流よりも高い(低い)場合、増幅器は、電解質電位を減少(増加)させ、参照電流と等しくなるまでセンサーを通過する電流を減少(増加)する。この平衡を可能にするプログラムされた遅延後、コンピュータは、アナログ−デジタル変換器(ADC)によって生じるデジタル数として電解質電位を記録する。自動化ベースライン測定は、標的分析に曝露する前に各トランジスタについて行われ、このデータは、コンピュータに保存される。そのため、ベースラインと検出シグナルとを比較することによって、標的捕捉による固定電流でのトランジスタの効果的閾値電圧シフトは正確に測定される。
同様にして、コンピュータは、全96ウェルを通じて、A1〜H12を順序付ける。最初に、ユーザーは、STARTボタンを押し、コンピュータによって得られた情報が参照値として貯蔵される。次に、ユーザーは、アッセイプレートに生物プロトコールを適用し、STARTを再び押す。新たに獲得した測定値は参照値と比較される。LCD読み出しは、どのウェルが測定された値の増加を示すのかを読み出す。この読み出しは、ユーザーによって生成された参照チャートと比較され、どのウェルが固定化を受けるのかを指示する。
アナログ−デジタル変換器(ADC)は、連続したシグナルを不連続なデジタル数に変換する電子回路である。ADS回路は周知である。例えば、その各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,407,692号および第6,456,223号を参照されたい。
結合した標的の抽出濃縮
電解質電位のシフトは、どの程度の標的分子がセンサーに吸着したかの指標である。特に、この電位シフトと標的分子の濃度との関係は、上述したセンサー較正実験を通じて実験的に得られる。本装置の応答を理解するために、非常に単純なモデルが提供され、それは、全ゲート電気容量を通じて吸着された電荷に電位シフトを相関させ、この電気容量は、一連のゲート酸化物電気容量であり、電解質二層電気容量である。本装置におけるカーボン・ナノチューブ・トランジスタの特定の配列に関して、全電気容量は、ゲート酸化物電気容量によって支配され、約5×50μmの有効領域全体で50fFの典型的な値を有する。次に、この試料電気容量モデルは、1mVの電位シフトが15塩基のDNAについて8.3×10分子/cmの表面濃度に対応することを予測する。センサーへの標的分子の吸着はラングミュアモデルに従うと仮定して、下記の式を介して表面密度を体積密度に関連付ける。
式中、Γは表面濃度であり、Γmaxは最大被覆率の表面濃度であり、Kは実験的比例定数である。理論的には、15塩基のDNAについては、Γmax≒6×1013分子/cmであり、また、理論的なΓmaxは、通常、Γよりも大きく、Kは、典型的には、6×107M−1であるように選ばれ、Kは、典型的には、6×10−1であるように選ばれる。これらの数値を用いて、本発明者らは、装置の感度は2.3ピコモル/mVであると推定する。
携帯デバイスまたは医療用PDA
本発明の装置はまた、医療用携帯情報端末(PDA)として小型化することができる。図26によると、ワイヤレスチャネルは、コンピュータとリモートPDAとの間で用いられる。したがって、例えば、実験室サイトで本装置から得られたデータは、適切なPDAに送信され得る。
上記で列挙されたプローブ生物材料に加えて、ペプチド核酸(PNA)も用いることができる。PNAは、診断アッセイおよび抗血清治療に幅広く用いられている。PNAは、DNA/DNA鎖よりもPNA/DNA鎖(一本鎖および二本鎖の両方)のより強い結合力により、このような使用のための長いPNAオリゴマーを設計する必要がなく、一方では、したがって、通常、20〜25merのオリゴヌクレオチドプローブが要求される。その各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,582,985号;第5,773,571号;第6,015,710号;第5,786,461号および第6,472,209号を参照されたい。
上述の明細書は、例示を目的として提供された実施例を用いて、本発明の原理を教示するものであり、形態および詳細における種々の変化は、本発明の真の範囲から逸脱することなしになされることは、この開示を読んだ当業者に理解される。
水素結合によって結合した二本鎖DNAの構造を図示する。例えば、DNAのリン酸骨格が溶液中でイオン化されるか又は溶解されると帯電するため、DNAの電気的検出が可能である。 液体ゲートのための本発明のカーボン・ナノチューブ・トランジスタの図式である。ドレイン−ソース電流(IDS)は、酸化物層上に吸着したDNA電荷から電界効果によって調節される。 本発明のカーボン・ナノチューブ・トランジスタアレイの写真である。ナノチューブは、ソース電極とドレイン電極との間のギャップをブリッジする。(S)は、共通のソース電極のための結合パッドであり、(G)は、ゲートカウンター電極のための結合パッドである。(G)の他端の正方形は、溶液と接触している。マークなしの正方形は、ドレイン電極のための結合パッドである。3mm×3mmのセルには38個のトランジスタが示されている。 導電柱に隣接して線電荷を測定するための配置を図示する。 導電柱と平面との間の電気容量を測定するための配置を図示する。 バックゲートI−V特性はアニーリングによって改善されることを示す。(左)アニーリング前、および(右)アニーリング後。アニーリング温度は、真空中で1時間、500℃であった。 同じトランジスタ上のバックゲートおよび電解質ゲートの比較を図示する。マーカーの三角形は、ゲート電圧掃引方向を示す(VDS=−0.1v MPTMSによるヒドロキシル化されたシリコン酸化物表面へのカップリングメカニズムを図示する。 外部ヘルムホルツ層中の電極および拡散したイオンとして、正の表面電荷を示す電解質中の電極の接合面を図示する(x>δ)。 種々の接合面のうちで電荷分布を図示する。 酸化物−電解質接合面に吸着したDNAを図解する。15merのDNAの長さは、約51Åであり、内部ヘルムホルツ層の厚さは、典型的には約5Åである。適切な電解質濃度は、拡散層がDNAより大きいことを確実にするために仮定される。 検出されるべき電荷が酸化物−電解質接合面の拡散層の届く距離を超える場合を図示する。 カーボン・ナノチューブ・トランジスタの相互コンダクタンス曲線を図示する(VDS=−0.1v):(ss)一本鎖DNAで処理後;(不適合hyb)不適合配列のDNAとともにインキュベートした;(適合したds)完全に適合したDNAとハイブリダイズした。三角形は、掃引方向を示す。 ゲートに適用される電圧を調整することによってIDSを固定するためのフィードバック回路を図示する。 カーボン・ナノチューブ・トランジスタの断面図である。半導体カーボン・ナノチューブは、2つの電極、反対の端にある標識(S)およびドレイン(D)によって接触され、絶縁性酸化物バリアで被覆されている。ソース電極およびドレイン電極は、電子的接続(示されていない)を有し、酸化物バリアの外部からシグナルをもたらす。 相互コンダクタンス測定のための電圧接続を図示する。 DNA−DNAハイブリダイゼーションのためのスキームである。官能化されたプローブDNA(pr DNA)は、シラン−アクリダイト結合を用いて酸化物表面に固定化される。非修飾の標的DNA(tar DNA)を含む溶液は、相補的ハイブリダイゼーションのために導入される。 ドレインおよびCNT接続の余分なセットを含む、単一のオリゴマー配列のための単一ウェルトランジスタセットアップを図示する。 複数の標的配列に対するハイブリダイゼーション実験を実施するためのトランジスタウェルのアレイを図示する。 単一のトランジスタセンサーに対する最大電流対濃度のプロットを図示する。20μMのプローブDNAを用いた。100nM以上からのセンサー電流の単調増加。窒化物をゲートにしたトランジスタを使用した。 装置の感度がトランジスタ特性から推測される感度試験を図示する。 種々のバッファーおよび処置を用いた応答を図示する。コンダクタンスの増加は、処置の関数として観察される。コンダクタンスの最大変化は、2〜6.5のコンダクタンスを増加する相補的な結合に起因する。その後の洗浄および変性は、コンダクタンスを有意に減少させた。 ゲート材料として酸化アルミニウムを用いて作製したトランジスタの特徴を図示する。有意に改善されたパフォーマンスが記された。 超高真空の鉄蒸着技術の使用によるFeフィルムの非常に薄い層(1nm未満)を蒸着させることによって調製したFe触媒からのCNT成長を示す。 クラスター作製技術を用いて調製したFe Pt粒子からのCNT成長を示す。 一例として、96ウェルアッセイプレートを含む本発明の装置を図示する。

Claims (19)

  1. シリコン基板上の1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタであって、前記1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタの各々がゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、およびソース電極とドレイン電極とをブリッジするカーボン・ナノチューブ・チャネルを含み、前記ドレイン電極とカーボン・ナノチューブ・チャネルとが絶縁層によって被覆され、前記絶縁層がドレイン電極とカーボン・ナノチューブ・チャネルとを電解質溶液から絶縁し、ゲート電極が1つ以上の標的生物分子を含む電解質溶液と接触するよう構成される、カーボン・ナノチューブ・トランジスタ、
    前記絶縁層に固定化された1つ以上の特異的なプローブ材料、
    前記1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタの各々によって、前記1つ以上の特異的なプローブ材料と前記1つ以上の標的生物分子との結合に起因した電荷の変化を検出するための電子回路、
    合した標的生物分子の量を直接的に定量するための電荷の変化を検出する検出器、および
    電荷の変化に基づき、特異的な標的生物分子の相対的存在量を測定する自動化検出システム
    を含む装置。
  2. 前記1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタが、ナノチューブマットと電気的に接触され、電流がナノチューブマットを通じて流れるようにすることによって、印加電圧により電場が前記1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタのコンダクタンスに影響を及ぼすようにする絶縁性バリアによって分離された第3の電極に近接して作製される、請求項1に記載の装置。
  3. 露出された金属端子が前記1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタに電気的接続を形成する、請求項1に記載の装置。
  4. 前記基板が、ガラスまたは非導電性ポリマーである、請求項1に記載の装置。
  5. 記絶縁層が酸化物である、請求項1に記載の装置。
  6. 前記1つ以上のプローブ材料がDNA、RNAPNA、抗体、変性抗体、タンパク質、ペプチド、アプタマー、およびペプチドアプタマーから選択される、請求項1に記載の装置。
  7. 露出された金属端子の少なくとも1つが前記基板の裏側に位置している、請求項1に記載の装置。
  8. 前記電子回路が前記1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタの少なくとも1つの外側にある、請求項1に記載の装置。
  9. 前記自動化検出システムが前記1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタの少なくとも1つの外側にある、請求項1に記載の装置。
  10. 前記1つ以上のカーボン・ナノチューブ・トランジスタの少なくとも1つが約20〜50個のカーボン・ナノチューブ・トランジスタのアレイ上に構成されている、請求項1に記載の装置。
  11. 前記カーボン・ナノチューブ・チャネルが前記ソース電極と前記ドレイン電極との間のギャップをブリッジする、請求項1に記載の装置。
  12. 前記プローブ材料が細胞表面受容体配列を含む、請求項1に記載の装置。
  13. 前記ドレイン電極が金である、請求項1に記載の装置。
  14. 前記ソース電極とドレイン電極との間の分離距離が約5nmである、請求項1に記載の装置。
  15. 電解質漏電を回避するために、ドレイン−ソース間ギャップの上部にゲート酸化物をさらに含み、前記ゲート酸化物が絶縁性酸化物層または窒化物層によって絶縁されない、請求項1に記載の装置。
  16. 前記ゲート酸化物が酸化アルミニウムである、請求項15に記載の装置。
  17. 前記酸化アルミニウムが約100nm厚である、請求項16に記載の装置。
  18. 前記特異的なプローブ材料が、シラン官能化によって前記絶縁性酸化物層または窒化物層に固定化される、請求項1に記載の装置。
  19. 前記シラン官能化が、前記絶縁性酸化物層または窒化物層のヒドロキシル化表面に結合されたMPTMSを含む、請求項18に記載の装置。
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