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JP4930544B2 - 細胞培養用担体の製造方法 - Google Patents

細胞培養用担体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを兼ね備える細胞培養用担体の製造方法に関する。
近年、基板上のあらかじめ定められた位置に細胞を配置する技術、すなわち、細胞マイクロパターニング技術が注目を集めている。これまで、細胞マイクロパターニング技術は細胞生物学の基礎研究に利用されてきたが、最近では組織工学や再生医療、バイオセンサーの構築、細胞イメージング支援ツールなどへの応用も検討され始めている。細胞マイクロパターンを得る典型的な方法は、マイクロコンタクトプリンティング法(特許文献1、非特許文献1)、フォトリソグラフィ法(特許文献2、非特許文献2)、レーザーアブレーション法(特許文献3、非特許文献3)などを利用して細胞培養用担体に細胞接着性領域と細胞非接着性領域を設ける、というものである。
非特許文献4には、マイクロコンタクトプリンティング法を用いて、細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを備えた細胞培養用担体を作製する方法が記載されている。非特許文献4では金基板またはSi/SiO基板の表面に官能基を導入し、該官能基を起点として、側鎖のカルボキシル基にオリゴエチレングリコールが導入されたメタクリル酸誘導体を原子移動ラジカル重合法により重合させた櫛形状のポリマーであるポリ(オリゴ(エチレングリコール)メタクリレート)を導入し、各側鎖のオリゴエチレングリコールの末端のヒドロキシル基にN,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)を結合させて活性化する。こうして得られた基板に、ビオチン又はポリ−L−リジンを、微細パターンが形成されたスタンプを用いたマイクロコンタクトプリンティング法により接触させ、前記活性化されたヒドロキシル基に結合させる。最後に、基板上に残存する前記活性化されたヒドロキシル基にジグリコールアミンのアミノ基を結合させてブロッキングする。こうして、細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを備えた細胞培養用担体が得られる。
特開2002−355031 特開2007−312736 特開2003−033177
Langmuir,19,1493−1499(2003) Langmuir,19,9855−9862(2003) Biomaterials,26,5395−5404(2005) Biomacromolecules,8,3922−3929(2007)
しかしながら、細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを備える従来の細胞培養用担体は、細胞パターンの微細度や維持力、製造コストなどに問題があり、実用化が進んでいなかった。例えば、特許文献1では、微細な細胞パターンは構築可能であるが、細胞パターンの長期維持が困難であったり、高価な材料が必要であったりしていた。特許文献2では、製造コストが比較的低く、細胞パターンの長期維持も可能であるが、細胞パターンの微細度や細胞接着性領域の細胞親和性は不十分であった。特許文献3では、細胞パターンの長期維持は可能であるが、細胞接着性領域の細胞親和性は不十分であった。非特許文献4の方法では、メタクリル酸誘導体の重合のために原子移動ラジカル重合法を用いている。この重合法は従来のラジカル重合法と比較して重合条件や原料純度の制約が極めて厳しい。反応系中におけるわずかな酸素や不純物の存在が、原子移動ラジカル重合法における重合反応に大きな影響を与えるため反応の制御が困難である。従って、非特許文献4の方法は工業的な利用が困難であるという問題があった。また、この方法において基板として金基板を使用する場合には高コストとなるという問題もあった。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを備え、細胞パターンを長期間安定に維持することが可能である細胞培養用担体の簡便な製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、官能基を導入した支持体に親水性化合物を結合させ、前記親水性化合物を2段階の工程で活性化した後、マイクロコンタクトプリンティング法によって、活性カルボニル基と結合可能な官能基を有する細胞親和性物質を位置選択的に固定化することをその要旨とする。本発明は以下の発明群を包含する。
(1)
細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを含む表面を備える細胞培養用担体の製造方法であって、支持体の表面に官能基を導入する、官能基導入工程と、前記官能基と反応して共有結合を形成可能な結合性基とヒドロキシル基とを有する親水性化合物を、前記官能基に、前記官能基と前記結合性基との結合を介して結合させる、親水性化合物結合工程と、前記結合された親水性化合物上のヒドロキシル基に環状酸無水物を開環ハーフエステル化反応させることによりカルボキシル基を形成する、カルボキシル基形成工程と前記カルボキシル基形成工程において形成されたカルボキシル基を活性カルボニル基に変換する、活性化工程と、前記活性化工程において活性カルボニル基が形成された支持体表面のうちの一部の領域に、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有する細胞親和性物質を接触させ、該一部の領域内の活性カルボニル基と該細胞親和性物質の官能基との反応により共有結合を形成させて、該一部の領域に該細胞親和性物質を固定化する、細胞親和性物質固定化工程と、前記細胞親和性物質固定化工程の後に、前記支持体表面に、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有する低分子化合物を接触させ、該表面上に残存する活性カルボニル基と該低分子化合物の官能基との反応により共有結合を形成させて、該活性カルボニル基を、該低分子化合物を含む基に置換する、ブロッキング工程とを含むことを特徴とする、細胞培養用担体の製造方法。
(2)
前記細胞親和性物質固定化工程が、前記一部の領域に応じた形状の上面を有する凸部を備え、少なくとも該上面に前記細胞親和性物質が付着されたスタンプを用意し、前記凸部の上面を、活性カルボニル基が形成された支持体表面に当接させて、前記細胞親和性物質を前記一部の領域に接触させる工程を含む、(1)記載の方法。
(3)
前記支持体に導入される官能基がエポキシ基、アルデヒド基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)または(2)記載の方法。
(4)
前記官能基導入工程が、前記官能基を有するシランカップリング剤をゾル−ゲル法により支持体の表面に適用する工程を含む、(3)記載の方法。
(5)
前記親水性化合物が、エチレングリコール、エチレングリコールの重合体、および、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)
(1)〜(5)のいずれかに記載の方法により製造された、細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを含む表面を備える細胞培養用担体。
(7)
細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを含む表面を備える細胞培養用担体であって、表面に官能基を有する支持体と、前記官能基と反応して共有結合を形成可能な結合性基とヒドロキシル基とを有する親水性化合物と、2つのカルボン酸基を有するカルボン酸化合物と、カルボン酸基と共有結合を形成可能な官能基を有する細胞親和性物質と、カルボン酸基と共有結合を形成可能な官能基を有する低分子化合物とにより形成された、(a)細胞接着性領域においては、前記支持体上の官能基と前記親水性化合物の結合性基との間に結合が形成されており、前記親水性化合物成分のヒドロキシル基と前記カルボン酸化合物の一方のカルボン酸基との間でエステル結合が形成されており、前記カルボン酸化合物の他方のカルボン酸基と前記細胞親和性物質の官能基との間で共有結合が形成されており、(b)細胞非接着性領域においては、前記支持体上の官能基と前記親水性化合物の結合性基との間に結合が形成されており、前記親水性化合物成分のヒドロキシル基と前記カルボン酸化合物の一方のカルボン酸基との間でエステル結合が形成されており、前記カルボン酸化合物の他方のカルボン酸基と前記低分子化合物の官能基との間で共有結合が形成されていることを特徴とする、細胞培養用担体。
本発明の方法で製造された細胞培養用基板では、細胞非接着性領域が親水性ポリマーで高密度に覆われ、細胞非接着性領域の細胞接着阻害性が極めて高くなる。それと同時に、細胞接着性領域に細胞親和性物質が共有結合的に固定化されるので、細胞接着性領域の細胞親和性も極めて高くなる。これによって、細胞パターンを長期間安定に維持することが可能になる。
本発明の方法は、従来技術と比較して各工程の操作が簡便であるという点で有利である。
図1は、本発明の細胞培養用担体の製造方法における各工程を模式的に説明する図である。 図2は、マイクロコンタクトプリンティング法を用いて細胞親和性物質を位置選択的に固定化し、残りの領域を低分子化合物によりブロッキングする工程を模式的に説明する図である。 図3は、ガラス表面にエポキシ基を導入する工程を含む本発明の一実施形態を示す。 図4は、ガラス表面にアルデヒド基を導入する工程を含む本発明の一実施形態を示す。 図5は、実施例1で得られたライン状の細胞パターンの顕微鏡による観察像である。 図6は、実施例1で得られたドット状の細胞パターンの顕微鏡による観察像である。
本発明の細胞培養用担体の製造方法における各工程を図1に模式的に示す。以下、各工程について詳述する。
(官能基導入工程)
本発明において「官能基導入工程」とは、支持体の表面に官能基を導入する工程である。
本発明の支持体は、水に対して安定な表面を提供できるものあれば特に限定されない。支持体を構成する具体的な材料としては、金属、金属酸化物、ガラス、石英、シリコン、セラミックなどの無機材料、エラストマー、プラスチック、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂などの合成高分子、キチン、キトサン、セルロースなどの天然高分子を挙げることができる。支持体の形状は特に限定されず、例えば、平板、平膜、フィルム、多孔質膜などの平坦な形状や、シリンダ、スタンプ、ウェル、マイクロ流路、微粒子などの立体的な形状でもよい。特に、本発明の産業上の利用可能性を考慮すると、ガラス、石英またはシリコンからなる支持体が望ましい。
支持体の表面に導入される官能基は、後述する親水性化合物上の結合性基と共有結合することができるものであれば特に限定されない。ただし、支持体がガラス、石英またはシリコンの場合は、前記官能基は、汎用シランカップリング剤で容易に導入することのできるエポキシ基、アルデヒド基またはアミノ基であることが好ましく、エポキシ基又はアルデヒド基が特に好ましい。その他にも、N−ヒドロキシスクシンイミド基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、マレイミド基、チオール基、カルボキシル基、カルボジイミド基などが考えられるが、これらに限定されない。
本発明に使用することができる汎用シランカップリング剤としては、エポキシ基、アルデヒド基またはアミノ基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては例えば次の一般式(I):
Figure 0004930544
(式中、
、R、Rは互いに独立にメチル、メトキシまたはエトキシを示し、ただしR、RおよびRのうち少なくとも1つはメトキシまたはエトキシであり、Eはエポキシ基を含有する基、例えば3−グリシドキシプロピル基または2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基である)で表されるものが使用できる。具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、および2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
すなわち本官能基導入工程において導入されたエポキシ基は次の構造を有する。
Figure 0004930544
[式中、R11およびR12の一方は支持体とエポキシ環とを連結する連結基、例えば:
Figure 0004930544
(式中*はエポキシ基への結合を示し、R、R、Rは上記で定義したとおりである)であり、他方は水素または他の置換基、好ましくは水素であり、或いは、R11とR12とが一緒になって、連結基を介して支持体と連結された環、例えば
Figure 0004930544
(式中*はそれぞれエポキシ基への結合を示し、R、R、Rは上記で定義したとおりである)を形成している]
アミノ基を有するシランカップリング剤としては例えば次の一般式(II):
Figure 0004930544
(式中、R、R、Rは上記で定義したとおりであり、Aはアミノ基を含有する基、例えば3−アミノプロピル基またはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基である)で表されるものが使用できる。具体的にはN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、および3−アミノプロピルジメチルエトキシシランが挙げられる。
すなわち本官能基導入工程において導入されたアミノ基は次の構造を有する。
Figure 0004930544
[R13は支持体とアミノ基とを連結する連結基、例えば
Figure 0004930544
(式中*はアミノ基への結合を示し、R、R、Rは上記で定義したとおりである)である]
支持体表面にアルデヒド基を導入する方法としては、アルデヒド基を有するシランカップリング剤を用いて直接導入する方法のほかに、支持体表面にエポキシ基またはアミノ基を導入した後、アルデヒド基を得る方法が挙げられる。
汎用シランカップリング剤等を用いて支持体表面にエポキシ基を導入した後、加水分解を行いジオールとし、次いで酸化開裂によりアルデヒド基に変換することができる。上記一般式(I)において基Eが3−グリシドキシプロピル基である場合のように、導入されたエポキシ基が非環構造中に存在する場合には、1つのエポキシ基から1つのアルデヒド基が発生する。
[スキーム1]
Figure 0004930544
[R11’は、R11およびR12について上記で定義した、支持体とエポキシ環とを連結する連結基であり、R12’は、R11またはR12について上記で定義した、水素または他の置換基である。]
上記一般式(I)において基Eが2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基である場合のように、導入されたエポキシ基が環構造中に形成されたものである場合、1つのエポキシ基から2つのアルデヒド基が発生する。
[スキーム2]
Figure 0004930544
[R11’’とR12’’とは一緒になって、R11およびR12について上記で定義した、連結基を介して支持体と連結された環を形成している。]
また、汎用シランカップリング剤等を用いて支持体表面にアミノ基を導入した後、導入されたアミノ基に2つのアルデヒド基を有する化合物(例えばグルタルアルデヒド)を反応させることによってもアルデヒド基を導入することができる。更に、必要に応じて水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)等の還元剤で炭素窒素二重結合(C=N)を還元することもできる。
[スキーム3]
Figure 0004930544
[R13は上記で定義したとおりである]
支持体表面への汎用シランカップリング剤の適用法としては、浸漬法、ゾル−ゲル法、気相堆積法、スプレー法、インテグラルブレンド法などが挙げられるがこれらに限定されない。本発明において最も望ましい方法はゾル−ゲル法である。ゾル−ゲル法によるシランカップリング剤の適用は、親水性化合物の結合量や対象物質の固定化量が増加するなどその後の工程に好適な結果をもたらす。ここで、ゾル−ゲル法とは金属アルコキシドを加水分解して得られるゾルを乾燥させて流動性を失ったゲルとし、このゲルを焼成することによって金属酸化物を得る方法をいう。ゾル−ゲル法においてゾル溶液の薄膜を基板表面に形成させる方法としてはスピンコーティング法とディップコーティング法がある。スピンコーティング法とは、基板上にゾル溶液を滴下し、基板を高速回転させることによってゾルを塗布する方法である。ディップコーティング法とは、ゾル溶液に基板を浸し、適当な速度で引き上げることによってゾルを塗布する方法である。ゾル−ゲル法によるシランカップリング剤の適用の典型的な手順を以下に記載する。まず、シランカップリング剤と弱酸性の水(pH2〜3)を適当な割合、例えば1:3(モル比)で混合し、15分〜24時間攪拌する。これをイソプロピルアルコール(IPA)で希釈し、0.1%〜1.0%のゾル溶液を調製する。これをスピンコーターを用いて基板表面に塗布する。回転数は500〜1500rpm、回転時間は1〜10秒の間で設定するとよい。乾燥後、80〜120℃のオーブンで15〜60分加熱する。最後に、純水中で超音波洗浄を実施する。
(親水性化合物結合工程)
本発明において「親水性化合物結合工程」とは、前記手順により支持体表面上に導入された官能基と反応して共有結合を形成可能な結合性基とヒドロキシル基とを有する親水性化合物を、前記官能基に、前記官能基と前記結合性基との結合を介して結合させる工程である。
本発明では支持体上の官能基に親水性化合物を直接結合させることから、非特許文献4に記載されている原子転移ラジカル重合法と比較して分子量の大きい親水性化合物を導入することができる。このため、本発明では、親水性化合物が、細胞親和性物質を固定化する領域(細胞接着性領域)では、支持体と細胞親和性物質との間に介在する親水性スペーサーとして良好に機能し、細胞親和性物質を固定化しない領域(細胞非接着性領域)では、タンパク質の非特異的吸着、および、細胞の接着を阻害する阻害物質として良好に機能する。ここで、親水性スペーサーとは、共有結合によって細胞親和性物質を支持体に繋ぎ留める機能を少なくとも有する水溶性の有機化学構造を意味する。鎖状構造を有する親水性化合物、とりわけ、後述するような、平均分子量が1000以上である鎖状構造を有する親水性化合物は、親水性スペーサー及び細胞の接着を阻害する物質の両方の機能が高いことから特に好ましい。当該鎖状の親水性化合物は、鎖状構造の一端に結合性基を有し、他端にヒドロキシル基を有するものであることが特に好ましい。支持体表面上に導入された官能基に結合可能な「結合性基」は、ヒドロキシル基であってもよいし、ヒドロキシル基とは異なる種類の官能基(例えばアミノ基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボキシル基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、イソシアネート基、マレイミド基、チオール基、カルボジイミド基など)であってもよいが、ヒドロキシル基であることがより好ましい。「結合性基」がヒドロキシル基である場合は、1分子の親水性化合物上には、結合性基として機能するためのヒドロキシル基と、後述する、環状酸無水物との開環ハーフエステル化反応に用いられるためのヒドロキシル基とがそれぞれ存在する(すなわちヒドロキシル基が2個存在する)こととなる。
製造コストの点を考慮すると、親水性化合物は両端に各1個のヒドロキシル基を有する鎖状の親水性化合物が好ましく、具体的には、エチレングリコール、エチレングリコールの重合体、ならびに、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレングリコールの重合体が最も好ましい。エチレングリコールの重合体は、エチレングリコールが2分子以上重合したもの、例えば数平均分子量が1000以上のもの、であれば特に限定されないが、数平均分子量が10000以下のものが好ましく、4000以下のものが特に好ましい。エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体は、ブロック共重合体であることが好ましく、なかでも、1単位以上のプロピレングリコール単位からなる(ポリ)プロピレングリコールブロックの両端にそれぞれ1単位以上のエチレングリコール単位からなる(ポリ)エチレングリコールブロックが共重合してなるブロック共重合体が好ましい。エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体の数平均分子量は1000以上であれば特に限定されないが、数平均分子量が12000以下のものが好ましく、4000以下のものが特に好ましい。なお、本発明において「プロピレングリコール」とは1,2−プロパンジオールを指す。
親水性化合物結合反応の例1
支持体表面に導入されたエポキシ基に、2個のヒドロキシル基を有する親水性化合物を結合させる場合には、1つのエポキシ基に対し1つの親水性化合物が結合する。
[スキーム4]
Figure 0004930544
[R11およびR12は上記で定義したとおりである。ただし、R11およびR12の一方が、支持体とエポキシ環とを連結する連結基であり、他方が水素である場合には、本スキームにおいては、R11が支持体とエポキシ環とを連結する連結基であり、R12が水素となる割合が多い。]
HO−R14−OHは2個のヒドロキシル基を有する親水性化合物、例えば上記のエチレングリコール、エチレングリコールの重合体、または、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体を示す。R14は、例えば、上記のエチレングリコール、エチレングリコールの重合体、または、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体から両端のヒドロキシル基を除いた構造を示す。]
親水性化合物結合反応の例2
支持体表面に導入されたアルデヒド基に、2個のヒドロキシル基を有する親水性化合物を結合させる場合には、1つのアルデヒド基に対し2つの親水性化合物が結合する。
[スキーム5]
Figure 0004930544
[HO−R14−OHおよびR14は上記で定義したとおりである。R15は上記で定義したR11’、R11’’とR12’’とが一緒になって形成する基、或いは、
Figure 0004930544
(R13は上記で定義した通りであり、*はアルデヒド基への結合を示す)を示す。]
(カルボキシル基形成工程)
本発明において「カルボキシル基形成工程」とは、前記親水性化合物結合工程により結合された親水性化合物上のヒドロキシル基(結合性基がヒドロキシル基である場合には、前記親水性化合物結合工程における反応に供されない方のヒドロキシル基を指す)に環状酸無水物を開環ハーフエステル化反応させることにより、環状酸無水物に由来するカルボキシル基を形成する工程である。
製造コストの点で、環状酸無水物は無水コハク酸または無水グルタル酸であることが望ましいが、これらに限定されない。環状酸無水物として無水コハク酸または無水グルタル酸を用いる場合の開環ハーフエステル化反応のスキームを以下に示す。
[スキーム6]
Figure 0004930544
(nは1または2を示す。R14は上記で定義したとおりである。)
なおスキーム4に沿って結合されたR14−OH基に本反応が適用される場合には、副次的に、スキーム4において発生するR11の結合炭素上のヒドロキシル基もまた開環ハーフエステル化反応を受ける。
開環ハーフエステル化反応に用いられる触媒としては本反応を促進するものであれば特に限定されないが、具体的にはトリエチルアミン、イソブチルエチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられ、トリエチルアミンまたは4−ジメチルアミノピリジンが好ましく、反応速度や収率の点で4−ジメチルアミノピリジンが最も好ましい。
開環ハーフエステル化反応は、上記触媒を添加したトルエン等の不活性有機溶媒中で行われることが好ましい。
環状酸無水物として無水コハク酸、触媒として4−ジメチルアミノピリジンを用いた場合、無水コハク酸および4−ジメチルアミノピリジンの濃度はそれぞれ1〜50mM、反応温度は4〜100℃、反応時間は2分〜16時間の範囲で設定されるのが望ましい。ここで、各種反応条件(試薬濃度,反応温度,反応時間)を調節することによって、前記親水性化合物へのカルボキシル基の導入率を制御することができる。すなわち、試薬濃度や反応温度を低く、あるいは反応時間を短く設定すると、活性化工程で形成される活性カルボニル基の表面密度が低くなり、逆に高く、あるいは長く設定すると、活性カルボニル基の表面密度は高くなる。活性カルボニル基の表面密度は固定化する細胞親和性物質の種類によって適宜調節するのが望ましい。例えば、ペプチドや炭化水素などの低分子化合物の場合は活性カルボニル基の表面密度はなるべく高い方がよく、逆にタンパク質などの高分子の場合は高すぎない方がよい。
(活性化工程)
本発明において「活性化工程」とは、前記カルボキシル基形成工程において形成されたカルボキシル基を活性カルボニル基に変換する工程である。
活性カルボニル基は、前記親水性化合物と細胞親和性物質とを共有結合によって結びつけるための官能基である。ここで、活性カルボニル基とはR−C(=O)−Xという化学構造を意味する。Xには、ハロゲンやN−ヒドロキシスクシンイミド基またはその誘導体、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール基またはその誘導体、ペンタフルオロフェニル基、パラニトロフェニル基などの脱離性基が該当するが、これらに限定されない。活性カルボニル基としては、反応性、安全性および製造コストの点で、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基が望ましい。前記カルボキシル基のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基への変換は、前記カルボキシル基にN−ヒドロキシスクシンイミドとカルボジイミドを同時に反応させることによって達成される。ここで、カルボジイミドとは−N=C=N−の化学構造を有する有機化合物を意味し、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などが考えられるが、これらに限定されない。N−ヒドロキシスクシンイミドおよびカルボジイミドの濃度は1〜100mM、反応温度は4〜100℃、反応時間は2分〜16時間の範囲で設定されるのが望ましい。反応溶媒としてはN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)やトルエンなどを使用することができる。
(細胞親和性物質固定化工程)
本発明において「細胞親和性物質固定化工程」とは、活性化工程において活性カルボニル基が形成された支持体表面のうちの一部の領域に、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有する細胞親和性物質を接触させ、該一部の領域内の活性カルボニル基と該細胞親和性物質の官能基との反応により共有結合を形成させて、該一部の領域に該細胞親和性物質を固定化する工程である。この工程において選択的に細胞親和性物質が固定化された領域が、細胞培養用担体における細胞接着性領域を構成する。
細胞親和性物質は、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有し、なおかつ細胞に対して直接的あるいは間接的に親和性をもつ物質であれば特に限定されない。ここで、「間接的に」とは、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成した物質が細胞と直接相互作用するのではなく、前記物質に細胞と直接相互作用する物質が物理化学的または生物学的に結合することによって、前記物質が細胞親和性を獲得する場合を指す。具体的には、ゼラチン、コラーゲン、ラミニン、マトリゲルTM、フィブロネクチン、ポリ−L−リシン、ポリエチレンイミン、抗体、抗原、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、ペプチド、炭化水素などが挙げられる。これらの細胞親和性物質は細胞の種類によって適宜選択されることが望ましい。例えば、血管内被細胞の培養では、ゼラチン、コラーゲン、マトリゲルTM、フィブロネクチンが、上皮細胞の培養では、ラミニン、マトリゲルTMが、神経細胞の培養では、ポリ−L−リシン、ポリエチレンイミン、ラミニン、マトリゲルTMが、繊維芽細胞の培養では、フィブロネクチン、ポリ−L−リシン、ポリエチレンイミンなどが適している。なお、固定化しようとする細胞親和性物質に、アミノ基等の、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基が存在しない場合であっても、これらの物質にアミノ基等を人為的に導入することにより固定化に供することができる。
細胞親和性物質上の「活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基」としては、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
活性カルボニル基と細胞親和性物質とを活性カルボニル基が形成された表面の一部の領域のみに位置選択的に接触させる方法としては、接触させようとする領域に応じた形状の上面を有する凸部を備え、少なくとも該上面に(典型的にはスタンプの全表面、又は凸部が形成された側の表面全体)細胞親和性物質が付着されたスタンプを用意し、前記凸部の上面を、活性カルボニル基が形成された支持体表面に当接させて、細胞親和性物質を前記領域に接触させ転写させる方法が好ましい。この方法は、マイクロコンタクトプリンティング(μCP)法として知られており、特に細胞マイクロパターニングへの適用例が多い。スタンプの凸部の上面は担体表面と接触するが、凹部は接触しないため、細胞親和性物質を位置選択的に固定化することができる。μCP法に用いられる、所望の凹凸パターンを備えるスタンプは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)により形成されることが通常である。μCP法以外の他の接触方法としては、インクジェットプリンティング法などが挙げられる。
μCP法を用いることにより、幅が1μm程度の非常に微細な細胞接着性領域のパターンを形成することが可能であり、特に、5μm程度以上の幅を有するパターンであれば、再現性良く作成することができる。
本発明におけるμCP法の典型的な適用方法を、図2を参照して説明する。まず、公知の方法で製造された所望の凹凸パターンを備えるPDMSスタンプを作製する(図2(a))。このスタンプを細胞親和性物質の溶液、例えば、ゼラチンのPBS溶液に浸漬し、5分以上放置する(図2(b))。ゼラチンの濃度は1〜5mg/mlに設定するとよい。これによってPDMSスタンプにゼラチン分子が吸着する。このスタンプを蒸留水で軽くすすぎ、窒素ブローで乾燥させる。このゼラチン分子が吸着したスタンプの凹凸パターン側の面を、活性化した担体表面(図1及び図2では「物質固体化用担体」と称する)の活性カルボニル側の面と接触させる(図2(c)及び(d))。その状態で10分以上放置した後、スタンプを担体表面から注意深く引き離す(図2(e))。以上の操作によって、ゼラチン分子がスタンプ表面から担体表面へ転写される。このとき、ゼラチンと担体表面の活性カルボニル基との間に共有結合が形成される。
(ブロッキング工程)
本発明において「ブロッキング工程」とは、細胞親和性物質固定化工程を行った後に、支持体表面に、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有する低分子化合物を接触させ、該表面上に残存する活性カルボニル基と該低分子化合物の官能基との反応により共有結合を形成させて、残存する活性カルボニル基を、該低分子化合物を含む基(通常は、該低分子化合物が結合したカルボニル基)に置換する工程である。本発明の工程では、担体表面のうち、細胞親和性物質が固定化されていない領域に残存する活性カルボニル基が低分子化合物を含む基に置換され、細胞非接着性領域が形成される。
低分子化合物上の「活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基」としては、アミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。
ブロッキング剤(低分子化合物)としては、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有する低分子化合物であれば特に限定されないが、「活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基」以外に親水性基(特に、水中で電気的に中性である親水性基)を更に有する低分子化合物を使用することが好ましい。そのようなブロッキング剤を用いると、細胞非接着性領域の親水性がより一層高まるため、生体関連物質の非特異的吸着を阻害する作用が更に高まるからである。水中において電気的に中性である親水性基としては、水酸基、チオール基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられる。
本発明において用いられる「低分子化合物」としては、炭素数が6以下、より好ましくは4以下である炭化水素化合物の一部の水素が前記官能基(及び必要に応じて更に前記親水性基)により置換された化合物が好ましく、特に好ましいものとしては、具体的には、エタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ジグリコールアミン(IUPAC名:2−(2−アミノエトキシ)エタノール)が挙げられ、ジグリコールアミンが最も好ましい。
これらの低分子化合物はPBSなどの緩衝液に10〜50mMとなるように溶解し、ここに所望の細胞親和性物質を固定化した担体を浸漬する(図2(f))。反応温度は4〜37℃、反応時間は1分〜1時間の範囲で設定するとよい。これによって、細胞親和性物質が固定化されていない領域(細胞非接着性領域)への細胞接着をほぼ完全に防ぐことができる(図2(g)及び(h))。
以下、具体的な実施例を用いて本発明を説明する。
実施例1
本実施例は、図3に示す実施形態の例であって、ガラス表面にエポキシ基を導入する工程、前記エポキシ基にポリエチレングリコール(PEG)を結合させる工程、前記PEGの自由末端に存在するヒドロキシル基に無水コハク酸(SuA)を反応させ、カルボキシル基を形成する工程、前記カルボキシル基を活性エステル基に変換する工程、前記活性エステル基にゼラチンをμCP法によって位置選択的に固定化する工程、未反応の活性エステル基をジグリコールアミン(DGA)でブロッキングする工程、からなる。以下、具体的な手順を説明する。
2205μlの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS、GE東芝シリコーン)と480μlの希塩酸(pH2.4)を混合し、1時間攪拌した。これをイソプロピルアルコール(IPA)で希釈し、0.5%のゾル溶液を調製した。これをスピンコーティングによってUV洗浄済みのガラス基板(100mm×100mm)に塗布した。乾燥後、基板を100℃のオーブンで15分間加熱した。この基板上に、触媒量の濃硫酸を含んだPEG4000(関東化学)を滴下し、80℃で1時間加熱した。反応後、基板をよく水洗し、窒素ブローで乾燥させた。次に、50mgの無水コハク酸(SuA、関東化学)と60mgの4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、和光純薬)を43.5gのトルエン(関東化学)に加熱溶解し、ここに前記基板を浸漬した。80℃で1時間加熱した後、基板をエタノールと純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。次に、58mgのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、和光純薬)と78μlのN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC、和光純薬)を43.5gのトルエンに加熱溶解し、ここに基板を浸漬した。80℃で1時間加熱した後、基板をエタノールと純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。基板を25mm×10mmの大きさに切断した後、μCP法によって基板表面にゼラチン(シグマ・アルドリッチ)を位置選択的に固定化した。
ここで、ポリジメチルシロキサン(PDMS)スタンプの鋳型は以下のように作製した。まず、ガラス基板(10cm角)にネガ型フォトレジスト、SU−8 2002(化薬マイクロケム)をスピンコートした後、基板を95℃で1分間加熱した。レジスト塗布面を、幅60μmの開口ラインが200μmピッチで形成されたストライプパターンを有する5インチサイズのフォトマスクと接触させ、フォトマスク側から水銀ランプを3秒間照射した。水銀ランプの照度は365nmの波長において20mW/cmであった。露光後、基板を95℃で1分間加熱した。最後に、露光パターンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(純正化学)で現像した。こうして得られた鋳型は、幅140μm、深さ約3μmの凹部が200μmピッチで形成されたストライプパターンを有していた。PDMSスタンプは、SYLPOT184(東レ・ダウコーニング)を上記の鋳型に塗布し、150℃のオーブンで15分間加熱した後、重合したPDMSを鋳型から丁寧に引き剥がすことによって得た。このPDMSスタンプは、幅140μm、高さ約3μmの凸部が200μmピッチで形成されたストライプパターンを有していた。このスタンプを1mg/mlのゼラチンを含むPBS溶液に浸漬し、5分間放置した後、蒸留水で軽くすすぎ、窒素ブローで乾燥させた。このゼラチン分子が吸着したスタンプの凹凸パターン側の面を、活性化した担体表面の活性カルボニル側の面と接触させた。その状態で10分間放置した後、スタンプを担体表面から注意深く引き離した。こうして得られた、ゼラチンが固定化された基板を、直ちにDGAのPBS溶液に浸漬し、ブロッキング処理を行った。ブロッキング処理におけるDGAの濃度は50mM、反応温度は室温、反応時間は5分とした。
以上のように製造した細胞培養用担体を70%エタノールで滅菌した後、ウシ血管内皮細胞を播種した。培地は10%ウシ胎児血清を含むDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地、シグマ・アルドリッチ)を用いた。その結果、図5に示すようなライン状の細胞パターンが得られた。ゼラチンの代わりにI型コラーゲン(新田ゼラチン)やマトリゲルTM(ベクトン・ディッキンソン)を用いた場合でも同様の細胞パターンが得られた(図5)。
また、同様の手順でドット状の細胞パターンを得た。この場合も、鋳型の作製に用いたフォトマスクのデザインが異なることを除けば上記と同一の手順である。鋳型の作製に用いたフォトマスクは、幅30μmの開口ラインからなる格子パターンを有しており、なおかつ開口ラインの間隔が30μm、40μmまたは50μmのものである。得られた鋳型は、一辺30μm、40μmまたは50μm、深さ約3μmの正方形の凹部がアレイ状に形成されたドット状パターンを有していた。また、この鋳型によって得られたPDMSスタンプは、一辺30μm、40μmまたは50μm、高さ約3μmの正方形の凸部がアレイ状に形成されたドット状パターンを有していた。このスタンプを用いたμCP法により形成されたドット状の細胞接着性領域のパターンを有する細胞培養用担体上で得られた、ドット状の細胞パターンを図6に示す。図6において、個々の細胞接着性領域の面積は左から900μm(30μm×30μm)、1600μm(40μm×40μm)、2500μm(50μm×50μm)である。
図5及び6に示す細胞パターンは少なくとも一週間維持された。
実施例2
本実施例は、図4に示す実施形態の例であって、ガラス表面にアルデヒド基を導入する工程、前記アルデヒド基にPEGを共有結合させる工程、前記PEGの自由末端に存在するヒドロキシル基に無水コハク酸を反応させ、カルボキシル基を形成する工程、前記カルボキシル基を活性エステル基に変換する工程、前記活性エステル基にゼラチンをμCP法によって位置選択的に固定化する工程、未反応の活性エステル基をDGAでブロッキングする工程、からなる。以下、具体的な手順を説明する。
2205μlのGPTSと480μlの希塩酸(pH2.4)を混合し,1時間攪拌した。これをIPAで希釈し、0.5%のゾル溶液を調製した。これをスピンコーティングによってUV洗浄済みのガラス基板(100mm×100mm)に塗布した。乾燥後、基板を100℃のオーブンで15分間加熱した。次に、基板を10mMの希硫酸に浸漬し、80℃で2時間加熱した。その後、基板を20mMの過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(関東化学)に浸漬し、室温で15分間放置した。この基板上に、触媒量の濃硫酸を含んだPEG4000を滴下し、80℃で1時間加熱した。反応後、基板をよく水洗し、窒素ブローで乾燥させた。次に、50mgのSuAと60mgのDMAPを43.5gのトルエンに加熱溶解し、ここに前記基板を浸漬した。80℃で1時間加熱した後、基板をエタノールと純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。次に、58mgのNHSと78μlのDICを43.5gのトルエンに加熱溶解し、ここに基板を浸漬した。80℃で1時間加熱した後、基板をエタノールと純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。基板を25mm×10mmの大きさに切断した後、μCP法によって基板表面にゼラチンを位置選択的に固定化した。μCP法に用いるスタンプとしては、実施例1と同様にラインパターンのものと、三種類のドット状パターンのものを使用し、実施例1に記載したのと同様の手順でゼラチンの基板表面への固定化を行った。ゼラチンが固定化された基板を、実施例1と同様の手順で直ちにDGA溶液に浸漬し、ブロッキング処理を行った。以上のように製造した細胞培養用担体を70%エタノールで滅菌した後、ウシ血管内皮細胞を播種した。培地は10%ウシ胎児血清を含むDMEMを用いた。その結果、実施例1と同様の細胞パターンが得られた。この細胞パターンは少なくとも一週間維持された。
比較例
特許文献2に記載された方法に従って細胞培養用担体を製造し、得られる細胞パターンについて本発明と比較した。以下にその具体的な手順を説明する。
39gのトルエンと13.5gのGPTSを混合し、攪拌しながら450μlのトリエチルアミン(和光純薬)を添加した。ここにUV洗浄済みのガラス基板(100mm×100mm)を浸漬し、室温で16時間放置した。その後、ガラス基板をエタノールと純水で洗浄し、窒素ブローで乾燥させた。この基板を、触媒量の濃硫酸を含むテトラエチレングリコールに浸漬し、80℃のオーブンで15分間加熱した。次に、光触媒付きフォトマスクを用いて基板表面の親水性薄膜を酸化分解した。ここで用いたフォトマスクは、成功すれば図6と同じ細胞パターンが得られるように設計したものである。すなわち、このフォトマスクは、幅30μmの遮光ラインからなる格子パターンを有しており、なおかつ遮光ラインの間隔が30μm、40μmまたは50μmのものである。水銀ランプの照度は20mW/cm、露光時間は100秒とした。この基板を25mm×15mmの大きさに切断した。以上のように製造した細胞培養用担体を70%エタノールで滅菌した後、ウシ血管内皮細胞を播種した。培地は10%ウシ胎児血清を含むDMEMを用いた。しかし、この担体では図6のようなドット状の細胞パターンを得ることはできなかった。その原因として、細胞接着性領域の細胞親和性が、微細な細胞パターンが得られるほど十分ではないことが考えられる。

Claims (6)

  1. 細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを含む表面を備える細胞培養用担体の製造方法であって、
    支持体の表面に官能基を導入する、官能基導入工程と、
    前記官能基と反応して共有結合を形成可能な結合性基を一端に有し、ヒドロキシル基を他端に有する鎖状構造の親水性化合物を、前記官能基に、前記官能基と前記結合性基との結合を介して結合させる、親水性化合物結合工程と、
    前記結合された親水性化合物上のヒドロキシル基に環状酸無水物を開環ハーフエステル化反応させることによりカルボキシル基を形成する、カルボキシル基形成工程と、
    前記カルボキシル基形成工程において形成されたカルボキシル基を活性カルボニル基に変換する、活性化工程と、
    前記活性化工程において活性カルボニル基が形成された支持体表面のうちの一部の領域に、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有する細胞親和性物質を接触させ、該一部の領域内の活性カルボニル基と該細胞親和性物質の官能基との反応により共有結合を形成させて、該一部の領域に該細胞親和性物質を固定化する、細胞親和性物質固定化工程と、
    前記細胞親和性物質固定化工程の後に、前記支持体表面に、活性カルボニル基と反応して共有結合を形成可能な官能基を有する炭素数が6以下である低分子化合物を接触させ、該表面上に残存する活性カルボニル基と該低分子化合物の官能基との反応により共有結合を形成させて、該活性カルボニル基を、該低分子化合物を含む基に置換する、ブロッキング工程と
    を含むことを特徴とする、細胞培養用担体の製造方法。
  2. 前記細胞親和性物質固定化工程が、前記一部の領域に応じた形状の上面を有する凸部を備え、少なくとも該上面に前記細胞親和性物質が付着されたスタンプを用意し、前記凸部の上面を、活性カルボニル基が形成された支持体表面に当接させて、前記細胞親和性物質を前記一部の領域に接触させる工程を含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記支持体に導入される官能基がエポキシ基、アルデヒド基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. 前記官能基導入工程が、前記官能基を有するシランカップリング剤をゾル−ゲル法により支持体の表面に適用する工程を含む、請求項3記載の方法。
  5. 前記親水性化合物が、エチレングリコール、エチレングリコールの重合体、および、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 細胞接着性領域と細胞非接着性領域とを含む表面を備える細胞培養用担体であって、
    表面に官能基を有する支持体と、
    前記官能基と反応して共有結合を形成可能な結合性基を一端に有し、ヒドロキシル基を他端に有する鎖状構造の親水性化合物と、
    2つのカルボン酸基を有するカルボン酸化合物と、
    カルボン酸基と共有結合を形成可能な官能基を有する細胞親和性物質と、
    カルボン酸基と共有結合を形成可能な官能基を有する炭素数が6以下である低分子化合物と
    により形成された、
    (a)細胞接着性領域においては、前記支持体上の官能基と前記親水性化合物の結合性基との間に結合が形成されており、前記親水性化合物成分のヒドロキシル基と前記カルボン酸化合物の一方のカルボン酸基との間でエステル結合が形成されており、前記カルボン酸化合物の他方のカルボン酸基と前記細胞親和性物質の官能基との間で共有結合が形成されており、
    (b)細胞非接着性領域においては、前記支持体上の官能基と前記親水性化合物の結合性基との間に結合が形成されており、前記親水性化合物成分のヒドロキシル基と前記カルボン酸化合物の一方のカルボン酸基との間でエステル結合が形成されており、前記カルボン酸化合物の他方のカルボン酸基と前記低分子化合物の官能基との間で共有結合が形成されている
    ことを特徴とする、細胞培養用担体。
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