液体状の前記冷却媒体(特に水)は、エンジンの本体を構成するエンジンブロックよりも比熱が大きい。よって、この冷却媒体は、所定の熱的状態をより長く保持し得るものである。かかる冷却媒体の特性は、通常運転時、及び高負荷運転時の、前記エンジンブロックの冷却の際に有利である。
また、かかる冷却媒体の特性は、特開2005−351173号公報等に記載されているような、「プレヒート」を行う際にも有利である。このプレヒートは、以下のようにして行われる。(1)前回運転時に高温となった前記冷却媒体を蓄熱タンク内に貯留しておく。(2)次回の冷間始動前に、蓄熱タンク内の比較的高温の前記冷却媒体を前記エンジンブロックに流す。これにより、始動前に、前記エンジンブロックが、前記冷却媒体によって温められる。
しかしながら、かかる冷却媒体の特性は、逆に、プレヒート後のさらなる暖機の際、すなわち、始動後の暖機(暖機運転:warm-up operation)の際には、不利となる。なぜなら、かかる冷却媒体は昇温しにくいため、始動後の暖機の際にも、当該冷却媒体が前記エンジンブロック(特にシリンダブロック)から熱を奪い続けるからである。
本発明は、エンジンの暖機がよりいっそう早期に行われ得るエンジンの冷却装置を提供するものである。
本発明のエンジンの冷却装置は、エンジンブロックと、冷却媒体循環路と、蓄熱タンクと、循環状態制御部と、を備えている。
前記エンジンブロックは、エンジンの本体を構成する部材である。このエンジンブロックには、冷却媒体ジャケット(coolant jacket)が形成されている。この冷却媒体ジャケットは、液体状の冷却媒体が通過し得る空間である。
このエンジンブロックは、シリンダブロックと、シリンダヘッドと、を備え得る。前記シリンダブロックには、シリンダと、前記冷却媒体ジャケットとしての第1の冷却媒体ジャケットと、が形成されている。前記シリンダヘッドは、前記シリンダブロックと接合されている。このシリンダヘッドには、吸気通路と、排気通路と、前記冷却媒体ジャケットとしての第2の冷却媒体ジャケットと、が形成されている。前記吸気通路及び排気通路は、前記シリンダと連通するように設けられている。
前記冷却媒体循環路は、前記冷却媒体ジャケットに接続されている。
前記蓄熱タンクは、前記冷却媒体循環路に接続されている。この蓄熱タンクは、前記冷却媒体を保温しながら貯留するように構成されている。
前記循環状態制御部は、前記冷却媒体循環路における前記冷却媒体の循環状態を制御するように構成されている。
本発明の特徴は、前記循環状態制御部が、以下のように動作するように構成されたことにある:前記循環状態制御部は、当該エンジンの始動の際に、前記蓄熱タンクから前記冷却媒体ジャケットに、前記冷却媒体を導入する。その後、前記循環状態制御部は、前記冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクに前記冷却媒体を排出する。そして、前記循環状態制御部は、始動に引き続く暖機運転中に、前記冷却媒体ジャケット内を、前記冷却媒体が収容されていない状態に設定する。
具体的には、前記蓄熱タンクから前記冷却媒体ジャケットへの前記冷却媒体の導入は、例えば、始動前に行われ得る。また、前記冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクへの前記冷却媒体の排出は、始動前、始動時、あるいは始動後の暖機運転中に行われ得る。
前記循環状態制御部は、前記エンジンブロックの温度に対応する出力を生じるブロック温度出力部を備えていてもよい。この場合、前記循環状態制御部は、前記ブロック温度出力部の出力に応じて、前記冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクに前記冷却媒体を排出するように構成されている。
また、前記循環状態制御部は、前記冷却媒体ジャケット内の前記冷却媒体の温度に対応する出力を生じる冷却媒体温度出力部をさらに備えていてもよい。この場合、前記循環状態制御部は、前記ブロック温度出力部及び前記冷却媒体温度出力部の出力に応じて、前記冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクに前記冷却媒体を排出するように構成されている。
ここで、前記ブロック温度出力部は、前記エンジンブロックの温度に応じた出力を生じる温度センサであってもよい。あるいは、前記ブロック温度出力部は、前記エンジンブロックの温度以外の他のパラメータ(例えば、前記冷却媒体の温度、エンジン始動からの経過時間、等)に基づいて前記エンジンブロックの温度の推定値に対応する出力を生じるように構成されていてもよい。
同様に、前記冷却媒体温度出力部も、温度センサであってもよいし、他のパラメータに基づいて前記冷却媒体の温度の推定値に対応する出力を生じるように構成されていてもよい。
あるいは、前記循環状態制御部は、エンジン始動からの経過時間に応じて、前記冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクに前記冷却媒体を排出するように構成されていてもよい。
かかる構成を備えた本発明のエンジンにおいては、まず、始動の際に(例えば始動前に)、前記蓄熱タンクから前記冷却媒体ジャケットに、前記冷却媒体が導入される。すると、当該冷却媒体ジャケット内に導入された前記冷却媒体によって、前記エンジンブロックが加温される。
続いて、前記エンジンブロックが所定の程度まで加温された後、前記冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクに、前記冷却媒体が排出される。この冷却媒体の排出は、少なくとも暖機運転の完了前に行われる。例えば、この冷却媒体の排出は、始動前に行われ得る。あるいは、この冷却媒体の排出は、始動後に行われ得る。
具体的には、例えば、前記冷却媒体の排出は、エンジン始動からの経過時間に基づいて行われ得る。
あるいは、前記冷却媒体の排出は、Te(前記エンジンブロックの温度あるいはその推定値)及び/又はTw(前記冷却媒体の温度あるいはその推定値)に基づいて行われ得る。すなわち、例えば、Te及び/又はTwが所定の値に到達した場合、Te及び/又はTwの上昇の割合が所定値以下となった場合、TeとTwとがほぼ等しくなった場合、あるいは、Tw−Teの値が所定値となった場合に、前記冷却媒体の排出が行われ得る。
このように、少なくとも暖機運転の完了前には、前記冷却媒体ジャケット内から、前記冷却媒体が抜かれる。すなわち、少なくとも暖機運転の完了前には、前記冷却媒体ジャケット内は、前記冷却媒体が収容されていない状態とされる。この状態で暖機運転が行われることで、前記エンジンブロックが速やかに昇温する。
本発明によれば、以下の(A)(B)2つが同時に達成される:(A)前記蓄熱タンク内の比較的高温の前記冷却媒体によって前記エンジンブロックが良好に温められる、(B)前記冷却媒体が前記冷却媒体ジャケット内に収容され続けることに起因する暖機性能の低下が効果的に抑制される。したがって、本発明によれば、暖機がよりいっそう早期に行われ得る。
・暖機運転の終了後に前記冷却媒体ジャケットに前記冷却媒体が再び導入されるように、前記循環状態制御部が構成されていてもよい。
かかる構成においては、前記冷却媒体ジャケットから前記冷却媒体が抜かれた状態で、暖機運転が進行する。そして、暖機運転の終了後に、前記冷却媒体ジャケットに前記冷却媒体が再び導入される。
かかる構成によれば、暖機運転終了後(特に高負荷運転時)の前記エンジンブロックの冷却が、適切に行われ得る。
・前記循環状態制御部は、前記冷却媒体ジャケット内を減圧する減圧ポンプを備えていてもよい。この場合、前記循環状態制御部は、前記蓄熱タンクから前記冷却媒体ジャケットに前記冷却媒体を導入する際に、前記冷却媒体が排出された状態の前記冷却媒体ジャケット内を減圧するように構成されている。
かかる構成においては、前記蓄熱タンクから前記冷却媒体ジャケットに前記冷却媒体を導入する際に、前記減圧ポンプが作動する。この減圧ポンプの作動により、前記冷却媒体が排出された状態の前記冷却媒体ジャケット内が、減圧される。すなわち、前記冷却媒体ジャケット内が、負圧になる。この負圧により、前記蓄熱タンクから前記冷却媒体ジャケットへ前記冷却媒体が導入され得る。
かかる構成によれば、前記冷却媒体ジャケット内の負圧により、前記蓄熱タンクから前記冷却媒体ジャケットへの前記冷却媒体の導入が促進され得る。あるいは、前記蓄熱タンクから前記冷却媒体ジャケットへの前記冷却媒体の導入を行うためのポンプが、小型化、省力化、あるいは省略され得る。
・前記蓄熱タンクが、前記冷却媒体ジャケットよりも低い位置に配置されていてもよい。
かかる構成においては、前記冷却媒体ジャケットから、その下方の前記蓄熱タンクへの、前記冷却媒体の排出が、重力の作用によって促進され得る。よって、かかる構成によれば、前記冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクへの前記冷却媒体の排出が、より迅速に行われ得る。
・前記エンジンの冷却装置は、分離槽をさらに備えていてもよい。前記分離槽は、前記冷却媒体を貯留し得るように構成されている。この分離槽には、冷却媒体流入口(coolant inlet)と、冷却媒体排出口(coolant outlet)と、空気排出口(air outlet)と、が形成されている。前記冷却媒体排出口は、前記分離槽の底部に設けられている。前記冷却媒体流入口も、前記分離槽の底部に設けられ得る。前記空気排出口は、前記分離槽の上部に設けられている。
前記分離槽は、前記減圧ポンプと前記冷却媒体循環路との間に介装されている。具体的には、前記冷却媒体流入口及び前記冷却媒体排出口は、前記冷却媒体循環路と接続されている。また、前記空気排出口は、前記減圧ポンプと接続されている。
なお、前記分離槽に対応して、レベルセンサが備えられていてもよい。このレベルセンサは、前記分離槽内の前記冷却媒体の量に応じた出力を生じるように構成されている。この場合、前記循環状態制御部は、前記レベルセンサの出力に応じて、前記分離槽から前記蓄熱タンクに前記冷却媒体を送出するように構成されている。
かかる構成においては、前記減圧ポンプが作動すると、前記分離槽の上部、及び前記冷却媒体循環路を介して、前記冷却媒体ジャケット内部の空気が排出される。これにより、前記冷却媒体ジャケット内が負圧となる。
一方、液体状の前記冷却媒体は、前記分離槽の底部から前記蓄熱タンクに流入し得る。また、前記冷却媒体流入口が前記分離槽の底部に設けられている場合、前記冷却媒体循環路から前記分離槽の底部に前記冷却媒体が流入し得る。
かかる構成によれば、前記減圧ポンプによる前記冷却媒体の不用意な排出が抑制され得る。
・前記エンジンの冷却装置は、以下のように構成されていてもよい:前記第1の冷却媒体ジャケットと、前記第2の冷却媒体ジャケットとは、前記シリンダヘッドと前記シリンダブロックとの接合部にて互いに連通しないように、それぞれ独立して設けられている。前記循環状態制御部は、エンジン始動の際に、前記蓄熱タンクから前記第1の冷却媒体ジャケットに前記冷却媒体を導入した後に当該第1の冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクに前記冷却媒体を排出する一方、前記第2の冷却媒体ジャケット内には前記冷却媒体を常時存在させるように構成されている。
かかる構成においては、まず、始動の際に(例えば始動前に)、前記蓄熱タンク内の比較的高温の前記冷却媒体によって、前記エンジンブロックが加温される。
続いて、前記エンジンブロックが所定の程度まで加温された後、前記第1の冷却媒体ジャケットから前記蓄熱タンクに、前記冷却媒体が排出される。一方、前記第2の冷却媒体ジャケット内には、前記冷却媒体が収容されたままである。すなわち、前記第2の冷却媒体ジャケット内の前記冷却媒体は、全く排出されないか、あるいは一部が排出される。
かかる構成によれば、前記第2の冷却媒体ジャケット内の前記冷却媒体を用いて前記シリンダヘッドの冷却が良好に行われる。また、前記第1の冷却媒体ジャケット内から前記冷却媒体が排出されることで、前記シリンダブロックの迅速な暖機が行われる。
・前記エンジンの冷却装置は、冷却媒体噴射部をさらに備えていてもよい。前記冷却媒体噴射部は、前記冷却媒体ジャケットの内壁面に液体状の前記冷却媒体を噴射するように構成されている。この冷却媒体噴射部は、前記冷却媒体循環路に介装されている。例えば、前記冷却媒体噴射部は、前記第2の冷却媒体ジャケットの内壁面に液体状の前記冷却媒体を噴射するように構成されていてもよい。
かかる構成によれば、前記冷却媒体噴射部によって、前記冷却媒体ジャケット(前記第2の冷却媒体ジャケット)の内壁面に、液体状の前記冷却媒体が、勢いよく噴射され得る。これにより、前記エンジンブロック(前記シリンダヘッド)が良好に冷却され得る。
・前記エンジンが、さらに蒸気導出路と、蒸気加熱器と、膨張器と、凝縮器と、を備えていてもよい。
前記蒸気導出路は、前記冷却媒体噴射部によって噴射された後に気化した前記冷却媒体の蒸気を、前記エンジンブロックの外に導出するように構成されている。
前記蒸気加熱器は、前記蒸気導出路に介装されている。この蒸気加熱器は、前記排気通路内を通過する前記排気ガスと前記蒸気との熱交換によって当該蒸気を加熱するように構成されている。
前記膨張器は、前記蒸気導出路に介装されている。この膨張器は、前記蒸気加熱器を経た前記蒸気から機械的エネルギーを回収するように構成されている。
前記凝縮器は、前記膨張器を経た前記蒸気を凝縮するように構成されている。
かかる構成においては、前記冷却媒体噴射部によって、液体状の前記冷却媒体が、前記エンジンブロックに噴射される。これにより、当該エンジンブロックが冷却される。また、当該エンジンブロックの冷却に伴い、前記冷却媒体が吸熱する。これにより、前記冷却媒体の蒸気が発生する。
前記蒸気は、前記蒸気導出路を介して前記エンジンブロックから導出され、前記蒸気加熱器に達する。この蒸気加熱器において、前記蒸気は、前記排気通路内を通過する前記排気ガスと前記蒸気との熱交換によって加熱(過熱)される。
加熱された前記蒸気は、前記膨張器にて膨張する。これにより、前記蒸気から機械的エネルギーが回収される。この膨張器を経た前記蒸気は、前記凝縮器に達する。この凝縮器にて、前記蒸気が凝縮される。すなわち、当該凝縮器にて、前記冷却媒体が液体となる。液体となった前記冷却媒体は、再度前記冷却媒体噴射部に供給され得る。
かかる構成によれば、前記エンジンブロックの冷却効率、及び前記エンジンブロックにて発生する廃熱からのエネルギー回収効率が、いずれも、より高くされ得る。
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において取り敢えず出願人が最良と考えている実施形態)について図面を参照しつつ説明する。
<実施形態のエンジン冷却装置の概略構成>
図1は、本発明のエンジン冷却装置の一実施形態であるエンジン冷却システム100の概略構成図である。
図1を参照すると、エンジン冷却システム100は、エンジンブロック101を備えている。このエンジンブロック101は、エンジンの本体部を構成する部材である。
図2は、図1に示されているエンジンブロック101の側断面図である。図2を参照すると、エンジンブロック101は、シリンダブロック102を備えている。シリンダブロック102には、略円筒形状の貫通孔であるシリンダ102Aが形成されている。シリンダ102A内には、ピストン102Bが、シリンダ102Aの高さ方向(図中上下方向)に沿って往復運動可能に収容されている。
シリンダブロック102には、本発明の第1の冷却媒体ジャケットとしての、ロアジャケット102Cが形成されている。ロアジャケット102Cは、シリンダ102Aを囲むように設けられている。ロアジャケット102Cは、平面視にて略リング状の空間である。このロアジャケット102Cは、その内部を冷却水及びその蒸気が通過し得るように構成されている。
エンジンブロック101は、また、シリンダヘッド103を備えている。シリンダヘッド103には、本発明の吸気通路の末端部を構成する吸気ポート103Aと、本発明の排気通路の始端部を構成する排気ポート103Bと、が形成されている。
吸気ポート103A及び排気ポート103Bは、燃焼室103Cと連通するように設けられている。この燃焼室103Cは、シリンダ102Aの上端部と連通する空間であって、本実施形態においては、シリンダヘッド103側に設けられた凹部によって形成されている。
シリンダヘッド103には、吸気弁103Dと、排気弁103Eと、が装着されている。吸気弁103Dは、吸気ポート103Aにおける、燃焼室103C側の開口部を開閉し得るように、構成及び配置されている。同様に、排気弁103Eは、排気ポート103Bにおける、燃焼室103C側の開口部を開閉し得るように、構成及び配置されている。
シリンダヘッド103の内部かつ下部には、本発明の第2の冷却媒体ジャケットとしてのアッパージャケット103Fが形成されている。アッパージャケット103Fは、その内部を、液体状の冷却水及びその蒸気が通過し得るように構成された空間である。このアッパージャケット103Fは、一対の吸気ポート103Aの間、一対の排気ポート103Bの間、及び吸気ポート103Aと排気ポート103Bとの間、に設けられている。
シリンダヘッド103の下端面は、シリンダブロック102の上端面と、ガスケット104を介して接合されている。本実施形態においては、ガスケット104には、ロアジャケット102Cとアッパージャケット103Fとを連通させるための貫通孔が形成されていない。すなわち、本実施形態においては、ロアジャケット102Cとアッパージャケット103Fとは、シリンダブロック102とシリンダヘッド103との接合部にて互いに直接的に連通しないように、それぞれ独立して設けられている。
再び図1を参照すると、エンジン冷却システム100は、ラジエータ105と、蓄熱タンク106と、を備えている。蓄熱タンク106は、冷却水を保温しながら貯留するように構成されている。本実施形態においては、蓄熱タンク106は、エンジンブロック101よりも低い位置に配置されている。すなわち、蓄熱タンク106は、ロアジャケット102C及びアッパージャケット103F(図2参照)よりも低い位置に配置されている。
蓄熱タンク106の頂部には、通気路106aが設けられている。通気路106aは、蓄熱タンク106内の冷却水の増減に対応して、当該蓄熱タンク106の上部への外気の出し入れを制御するように構成されている。また、この通気路106aは、エンジン停止時における蓄熱タンク106内の保温性を維持しつつ、上述の外気の出し入れが可能なように構成されている。
<冷却水循環路の構成>
シリンダブロック102、シリンダヘッド103、及びラジエータ105は、本発明の冷却媒体循環路の一部を構成するラジエータ側循環路110によって、互いに接続されている。このラジエータ側循環路110は、シリンダヘッド流入路111と、第1シリンダヘッド流出路112と、第2シリンダヘッド流出路113と、シリンダブロック流入路114と、シリンダブロック流出路115と、ラジエータ流入路116と、ラジエータ流出路117と、ラジエータバイパス流路118と、から構成されている。
シリンダヘッド流入路111の末端部は、シリンダヘッド103における、冷却水流入口と接続されている。第1シリンダヘッド流出路112及び第2シリンダヘッド流出路113の始端部は、シリンダヘッド103における、冷却水排出口と接続されている。
シリンダブロック流入路114の末端部は、シリンダブロック102における、冷却水流入口と接続されている。シリンダブロック流出路115の始端部は、シリンダブロック102の最低部に設けられた冷却水排出口と接続されている。
ラジエータ流入路116の末端部は、ラジエータ105における、冷却水流入口と接続されている。ラジエータ流入路116の始端部は、シリンダブロック流出路115の末端部と接続されている。また、ラジエータ流入路116の中途部には、第2シリンダヘッド流出路113の末端部が接続されている。
ラジエータ流出路117の始端部は、ラジエータ105における、冷却水排出口と接続されている。ラジエータ流出路117の末端部は、シリンダブロック流入路114の始端部と接続されている。また、ラジエータ流出路117の中途部には、シリンダヘッド流入路111の始端部が接続されている。
ラジエータバイパス流路118は、ラジエータ流入路116の末端部寄りの位置と、ラジエータ流出路117の始端部寄りの位置と、を接続するように設けられている。
すなわち、ラジエータ流入路116とラジエータバイパス流路118との接続部は、ラジエータ流入路116と第2シリンダヘッド流出路113との接続部よりも、ラジエータ流入路116の末端部寄りの位置に設けられている。また、ラジエータ流出路117とラジエータバイパス流路118との接続部は、ラジエータ流出路117とシリンダヘッド流入路111との接続部よりも、ラジエータ流出路117の始端部寄りの位置に設けられている。
このように、ラジエータ流入路116とラジエータ流出路117とは、ラジエータバイパス流路118によって、ラジエータ105をバイパスするように接続されている。また、ラジエータバイパス流路118の中途部には、第1シリンダヘッド流出路112の末端部が接続されている。
エンジンブロック101及び蓄熱タンク106は、本発明の冷却媒体循環路の一部を構成するタンク側循環路120によって、互いに接続されている。このタンク側循環路120は、タンク流入路121と、タンク流出路122と、ジャケット通気路123と、から構成されている。
タンク流入路121の始端部は、シリンダブロック流出路115の末端部、及びラジエータ流入路116の始端部と接続されている。タンク流入路121の末端部は、蓄熱タンク106の上部に設けられた冷却水流入口と接続されている。
タンク流出路122の始端部は、蓄熱タンク106の最低部に設けられた冷却水排出口と接続されている。タンク流出路122の末端部は、シリンダブロック流入路114の始端部、及びラジエータ流出路117の末端部と接続されている。
ジャケット通気路123の始端部は、シリンダブロック102に設けられたロアジャケット102C(図2参照)の最上部と接続されている。ジャケット通気路123の末端部は、外気に向けて開口している。
<冷却水循環制御部の構成>
エンジン冷却システム100は、本発明の循環状態制御部としての冷却水循環制御部130を備えている。冷却水循環制御部130は、本発明の冷却媒体循環路を構成するラジエータ側循環路110及びタンク側循環路120における、冷却水の循環状態を制御するように構成されている。この冷却水循環制御部130は、後述するような複数のポンプ及びバルブを備えるとともに、エンジンコントロールユニット130Aと、壁温センサ130Bと、冷却水温センサ130Cと、を備えている。
エンジンコントロールユニット130Aは、CPU、EEPROM、RAM等からなり、壁温センサ130B及び冷却水温センサ130Cの出力に基づいて、上述のポンプ及びバルブの少なくとも一部の作動を制御するための信号を発するように構成されている。
壁温センサ130Bは、シリンダブロック102の壁温(ブロック壁温te)に応じた出力を生じるように構成されている。冷却水温センサ130Cは、シリンダブロック102内(図2におけるロアジャケット102C内)の冷却水温(冷却水温Tw)に応じた出力を生じるように構成されている。
本実施形態におけるエンジンコントロールユニット130Aに備えられたEEPROMには、以下のように動作するプログラムが記録されている:(1)エンジンの始動前に、蓄熱タンク106からシリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)に冷却水を導入する。(2)エンジン始動後、冷却水温Twがブロック壁温Teよりも低くなった時点で、シリンダブロック102から蓄熱タンク106に冷却水を排出する。(3)暖機運転終了後、蓄熱タンク106からシリンダブロック102に冷却水が再導入される。
冷却水循環制御部130は、循環ポンプ130P1と、送出ポンプ130P2と、を備えている。
循環ポンプ130P1は、ラジエータ流出路117の中途部とシリンダヘッド流入路111の始端部との接続部に設けられている。この循環ポンプ130P1は、ラジエータ流出路117の始端側から流れてきた冷却水を、シリンダブロック流入路114の始端部、及びシリンダヘッド流入路111の末端部に向けて送出し得るように構成されている。
送出ポンプ130P2は、タンク流出路122に介装されている。この送出ポンプ130P2は、蓄熱タンク106内の冷却水を、ラジエータ流出路117の末端部とシリンダブロック流入路114の始端部との接続部に向けて送出し得るように構成されている。
冷却水循環制御部130は、ラジエータバイパスバルブ130V1と、ブロック入口バルブ130V2と、ブロック出口バルブ130V3と、通気制御バルブ130V4と、減圧制御バルブ130V5と、流入側バルブ130V6と、排出側バルブ130V7と、ヘッド入口バルブ130V8と、を備えている。
ラジエータバイパスバルブ130V1は、三方向弁からなり、ラジエータ流出路117とラジエータバイパス流路118との接続部に設けられている。ブロック入口バルブ130V2は、三方向弁からなり、シリンダブロック流入路114の始端部と、ラジエータ流出路117の末端部と、タンク流出路122の末端部と、の接続部に設けられている。ブロック出口バルブ130V3は、三方向弁からなり、シリンダブロック流出路115の末端部と、ラジエータ流入路116の始端部と、タンク流入路121の始端部と、の接続部に設けられている。通気制御バルブ130V4は、開閉弁からなり、ジャケット通気路123に介装されている。
<実施形態の構成の動作及び効果>
図3は、図1に示されているエンジン冷却システム100の動作の様子を示すタイムチャートである。図4ないし図11は、図1に示されているエンジン冷却システム100の動作の様子を示す図である。以下、図3ないし図11を用いて、本実施形態の構成の動作、及びその効果について説明する。
ここで、図4ないし図11において、各バルブにおけるポートで黒塗りになっているものは、当該ポートが閉塞されていることを示すものとする。また、ポンプで黒塗りになっているものは、当該ポンプが停止していることを示すものとする。
図4に示されているように、前回のエンジン停止後しばらく経過した状態においては、シリンダブロック102から蓄熱タンク106に冷却水が排出されている。すなわち、蓄熱タンク106には、前回の運転時にシリンダブロック102によって暖められた温水が貯留されている。一方、シリンダヘッド103及びラジエータ105内には、冷却水が充填されている。この状態で、循環ポンプ130P1及び送出ポンプ130P2は停止し、ブロック入口バルブ130V2は閉弁している。
よって、今回の始動前の初期状態においては、図3の「(a)初期」によって示されているように、冷却水温Twの出力値及びブロック壁温Teは、外気温とほぼ等しい。
ここで、所定の条件により、エンジンが始動されようとしていることが検知される。この検知は、例えば、ドアカーテシ照明のスイッチ、着座スイッチ、イグニッションスイッチ、シートベルト装着センサ、等の、各種のスイッチ及びセンサの信号に基づいて行われ得る。
すると、図5に示されているように、ブロック入口バルブ130V2によって、タンク流出路122と、シリンダブロック流入路114とが連通される。また、ブロック出口バルブ130V3が閉弁し、通気制御バルブ130V4が開弁する。この状態で送出ポンプ130P2が作動することで、蓄熱タンク106内の温水が、シリンダブロック102に導入される。シリンダブロック102に対する温水の導入が終了すると、送出ポンプ130P2が停止し、ブロック入口バルブ130V2及び通気制御バルブ130V4は閉弁する。
このように、シリンダブロック102に温水が導入されることで、始動前にシリンダブロック102が温水によって暖められる。すなわち、「プレヒート」が行われる。
このプレヒートにおいては、図3の「(b)注水」によって示されているように、冷却水温Twの出力値は、いったん温水の温度になった後、シリンダ壁との熱交換によって、急激に低下する。一方、ブロック壁温Teは、温水からの熱伝達によって、徐々に上昇する。
プレヒート開始から30秒後に、エンジンが始動されたとする。エンジンの始動時は、図6に示されているように、ラジエータバイパスバルブ130V1によって、ラジエータバイパス流路118と循環ポンプ130P1とが連通される。また、ブロック入口バルブ130V2、ブロック出口バルブ130V3、及び通気制御バルブ130V4は閉弁する。
これにより、シリンダヘッド103内の冷却水は、第1シリンダヘッド流出路112及び第2シリンダヘッド流出路113から流出し、ラジエータバイパス流路118を通って循環ポンプ130P1に達し、循環ポンプ130P1によってシリンダヘッド103内に再度流入する。一方、シリンダブロック102内には、蓄熱タンク106から導入された温水が滞留している。ブロック壁温Teが冷却水温Twに達するまで、この状態が継続する(図3の「(c始動)」から「(d)排水」までの間を参照)。
図3に示されているように、ブロック壁温Teは、エンジン運転によってしだいに上昇し、ついには冷却水温Twに達する。これ以上冷却水がシリンダブロック102内に滞留していると、かえって暖機性能が悪化するおそれがある。そこで、ブロック壁温Teが冷却水温Twに達すると、シリンダブロック102内の冷却水が、蓄熱タンク106に排出される(図3の「(d)排水」参照)。
この排水の際には、図7に示されているように、ブロック出口バルブ130V3によって、シリンダブロック流出路115とタンク流入路121とが連通され、通気制御バルブ130V4は開弁する。これにより、重力の作用で、シリンダブロック102内の冷却水が、蓄熱タンク106に排出される。
その後、図8に示されているように、シリンダブロック102内から冷却水が排出された状態で、暖機運転が進行する(図3の「(d)排水」から「(e)再注水」までの間を参照)。この状態においては、シリンダブロック102内(図2におけるロアジャケット102C内)には冷却水が収容されていない。よって、シリンダブロック102の暖機が早期に行われる。
ブロック壁温Teが所定温度に到達すると、エンジンコントロールユニット130Aによって、暖機運転が終了したと判断される。すると、図9に示されているように、ブロック入口バルブ130V2によって、タンク流出路122と、シリンダブロック流入路114とが連通される。また、ブロック出口バルブ130V3が閉弁し、通気制御バルブ130V4が開弁する。この状態で送出ポンプ130P2が作動することで、蓄熱タンク106内の冷却水が、シリンダブロック102に再導入される。
なお、この再導入にあたっては、シリンダブロック102が冷却水によって急激に冷却されることで、歪等が生じないように、再導入の量が適宜調整される。この量の調整は、例えば、エンジン回転数NEや、ブロック壁温Te等に基づいて、ブロック入口バルブ130V2等のバルブの開度を調整することで行われ得る。
シリンダブロック102に対する冷却水の再導入が終了すると、図10に示されているように、送出ポンプ130P2が停止し、通気制御バルブ130V4は閉弁する。また、ブロック入口バルブ130V2によって、ラジエータ流出路117における循環ポンプ130P1よりも下流側の部分と、シリンダブロック流入路114と、が連通される。さらに、ブロック出口バルブ130V3によって、シリンダブロック流出路115と、ラジエータ流入路116の始端部と、が連通される。
すると、シリンダブロック102内の冷却水は、シリンダブロック流出路115から流出し、ラジエータ流入路116にて、シリンダヘッド103から流出した冷却水と合流する。そして、ラジエータバイパス流路118を経た冷却水の一部は、シリンダヘッド103内に流入し、残りはシリンダブロック102内に流入する。
その後、冷却水温Twのさらなる上昇に伴い、ラジエータバイパスバルブ130V1が、ラジエータバイパス流路118の末端部を遮断してラジエータ105の冷却水排出口と循環ポンプ130P1とを接続するように切り換わる。
すると、図11に示されているように、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103を経た冷却水が、ラジエータ105に供給されるようになる。このラジエータ105によって外気との熱交換によって冷却された冷却水は、循環ポンプ130P1によって、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103に送出される。
その後、エンジン停止直後に、シリンダブロック102内の、比較的高温となった冷却水は、蓄熱タンク106に回収される。このようにして蓄熱タンク106内に回収された温水は、上述のように、次回の始動の際のプレヒートに用いられる。
上述の通り、本実施形態の構成においては、始動前のプレヒート、及び暖機運転の前半における温水の貯留によって、シリンダブロック102が良好に暖められる。一方、暖機運転の後半においては、シリンダブロック102から冷却水が排出されることによって、暖機運転の進行が促進される。そして、暖機運転終了後には、シリンダブロック102内に冷却水が再導入される。この再導入された冷却水によって、シリンダブロック102の良好な冷却(特に高負荷運転時におけるオーバーヒートの防止)が行われる。
したがって、本実施形態によれば、エンジンブロック101の冷却が良好に行われつつ、エンジンブロック101暖機がよりいっそう早期に行われ得る。
本実施形態においては、蓄熱タンク106が、エンジンブロック101よりも低い位置に配置されている。そして、シリンダブロック102内(ロアジャケット102C内)の冷却水が、その自重によって、蓄熱タンク106に下降するようになっている。
よって、本実施形態によれば、ロアジャケット102Cから蓄熱タンク106への冷却水の排出が、簡略な装置構成によって、より迅速に行われ得る。
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。以下の変形例の説明において、上述の実施形態にて説明されているものと同様の構成及び機能を有する部材に対しては、上述の実施形態と同様の符号が付されているものとする。また、技術的に矛盾しない範囲内において、上述の実施形態における説明が、下記の変形例にて、適宜援用され得るものとする。
もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたもの限定されるものではない。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、複合的に適用され得る。
本発明(特に、本発明の課題を解決するための手段を構成する各構成要素における、作用的・機能的に表現されているもの)は、上述の実施形態や、下記変形例の記載に基づいて限定解釈されてはならない。このような限定解釈は、(先願主義の下で出願を急ぐ)出願人の利益を不当に害する反面、模倣者を不当に利するものであって、許されない。
(A)本発明の適用対象は、直列型エンジンに限定されない。例えば、本発明は、V型、W型、水平対向型のいずれにも好適に適用され得る。
また、本発明の適用対象は、ガソリンエンジンに限定されない。例えば、本発明は、ディーゼルエンジンにも適用され得る。
さらに、本発明において、バルブ数に限定はない。すなわち、吸気ポート103A及び排気ポート103Bの数に限定はない。
(B)上述の実施形態における各種のバルブは、そのすべてが、電磁弁や油圧弁等の、エンジンコントロールユニット130Aからの信号によって切換可能な構造であってもよい。あるいは、その一部(例えばラジエータバイパスバルブ130V1)が、サーモスタット弁等の、周囲温度によって自発的に切り換わる構造であってもよい。
(C)上述の実施形態における各種のバルブやポンプの作動は、冷却水温Twとブロック壁温Teとのうちのいずれか一方に基づいて行われてもよい。
また、これらのバルブやポンプの作動は、冷却水温Twやブロック壁温Teの推定値(計算値)に基づいて行われてもよい。この推定は、外気温等に基づいて、エンジンコントロールユニット130Aによって行われ得る。
また、冷却水温Twやブロック壁温Teは、シリンダヘッド103におけるものであってもよい。
あるいは、これらのバルブやポンプの作動は、エンジン始動からの経過時間に応じて行われてもよい。
(D)シリンダブロック102から蓄熱タンク106への冷却水の排出は、冷却水の自重によるものに限定されない。例えば、シリンダブロック102から蓄熱タンク106への冷却水の排出のために、タンク流入路121にポンプがさらに介装されていてもよい。
(E)図1及び図2を参照すると、ガスケット104には、シリンダブロック102(ロアジャケット102C)とシリンダヘッド103(アッパージャケット103F)とを連通させるための貫通孔が形成されていてもよい。
この場合、図3における「(a)初期」にて、シリンダブロック102(ロアジャケット102C)及びシリンダヘッド103(アッパージャケット103F)から、冷却水が蓄熱タンク106に排出された状態となっている。
続いて、図3における「(b)注水」にて、蓄熱タンク106内の温水が、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103に導入される。これにより、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103が良好にプレヒートされる。このプレヒートによるシリンダヘッド103の早期の暖機により、吸気ポート103Aや燃焼室103Cの内壁面の温度が早期に上昇する。これにより、燃料混合気中の燃料濃度がより適切に設定され、排気エミッションが改善される。
その後、図3における「(d)排水」にて、シリンダブロック102(ロアジャケット102C)及びシリンダヘッド103(アッパージャケット103F)内の冷却水が、蓄熱タンク106に排出される。
さらにその後、図3における「(e)再注水」にて、蓄熱タンク106から、冷却水が、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103に再導入される。そして、エンジン停止直後に、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103内の、比較的高温となった冷却水は、蓄熱タンク106に回収される。このようにして蓄熱タンク106内に回収された温水は、次回の始動の際のプレヒートに用いられる。
(F)図12は、図1に示されているエンジン冷却システム100の一つの変形例の概略構成図である。図13は、図12に示されている変形例のエンジン冷却システム100の動作の様子を示す図である。
図12に示されているように、本変形例においては、上述の実施形態の構成に加えて、ポンプ排気路124と、減圧ポンプ130P3と、減圧制御バルブ130V5と、が設けられている。
ポンプ排気路124の始端部は、タンク流出路122における、送出ポンプ130P2とブロック入口バルブ130V2との間の位置に接続されている。この接続部には、三方向弁からなる減圧制御バルブ130V5が設けられている。ポンプ排気路124の末端部は、外気に向けて開口している。このポンプ排気路124には、減圧ポンプ130P3が介装されている。減圧ポンプ130P3は、例えば、ディーゼルエンジンを備えた機構(車両等)に搭載される機械式のポンプ(例えばブレーキブースター用ポンプ等)が用いられ得る。
図12を参照すると、かかる構成においては、ブロック入口バルブ130V2によって、シリンダブロック流入路114とタンク流出路122とが連通される。また、減圧制御バルブ130V5によって、ポンプ排気路124とタンク流出路122(減圧制御バルブ130V5よりも上流側も下流側も含む)とが連通される。さらに、ブロック出口バルブ130V3及び通気制御バルブ130V4は、閉弁される。
この状態で減圧ポンプ130P3が駆動されることで、タンク流出路122における送出ポンプ130P2よりも下流側の部分、及び、冷却水が排出された状態のシリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)が、減圧されて負圧となる。
シリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)及びタンク流出路122が負圧になった状態で、減圧制御バルブ130V5が切り換えられ、タンク流出路122と外気との連通が遮断される。これにより、シリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)及びタンク流出路122内の負圧が維持される。
その後、図13に示されているように、送出ポンプ130P2が駆動される。すると、シリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)及びタンク流出路122内の負圧により、蓄熱タンク106内の冷却水が、勢いよくタンク流出路122内に流入する。そして、この冷却水は、迅速にシリンダブロック102に流入する。
かかる構成によれば、シリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)及びタンク流出路122内の負圧により、蓄熱タンク106からシリンダブロック102への冷却水の導入が促進される。また、送出ポンプ130P2内に冷却水が良好に導入され、当該送出ポンプ130P2における空気の吸入が可及的に抑制される。よって、送出ポンプ130P2による、蓄熱タンク106内の冷却水の送出が良好に行われる。
したがって、かかる構成によれば、蓄熱タンク106からシリンダブロック102への冷却水の導入が、迅速に行われ得る。また、送出ポンプ130P2プが、小型化、省力化され得る。あるいは、送出ポンプ130P2が、省略され得る。
(G)図14は、図1に示されているエンジン冷却システム100の他の変形例の概略構成図である。図15及び図16は、図14に示されている変形例のエンジン冷却システム100の動作の様子を示す図である。
図14に示されているように、本変形例においては、上述の実施形態の構成に加えて、流入側バルブ130V6と、排出側バルブ130V7と、気液分離部140と、が設けられている。すなわち、本変形例においては、上述の変形例におけるポンプ排気路124及び減圧制御バルブ130V5に代えて、流入側バルブ130V6と、排出側バルブ130V7と、気液分離部140と、が設けられている。
流入側バルブ130V6は、タンク流入路121に介装されている。減圧ポンプ130P3及び排出側バルブ130V7は、気液分離部140に介装されている。
気液分離部140は、分離槽141を備えている。この分離槽141は、冷却水を保温しつつ貯留し得るように構成されている。
分離槽141と、タンク流入路121の上流側とは、冷却水流入路142によって接続されている。冷却水流入路142の始端部は、タンク流入路121と、三方向弁からなる流入側バルブ130V6を介して接続されている。冷却水流入路142の末端部である、本発明の冷却媒体流入口としての冷却水流入口142aは、分離槽141の底部にて開口するように設けられている。
分離槽141と、タンク流入路121の下流側とは、冷却水排出路143によって接続されている。冷却水排出路143の始端部である、本発明の冷却媒体排出口としての冷却水排出口143aは、分離槽141の底部にて開口するように設けられている。冷却水排出路143の末端部は、タンク流入路121における、流入側バルブ130V6と蓄熱タンク106との間の位置に接続されている。この冷却水排出路143には、開閉弁からなる排出側バルブ130V7が介装されている。
空気排出路144は、分離槽141の上部と外気とを連通し得るように設けられている。すなわち、空気排出路144の始端部である空気排出口144aは、分離槽141の上部にて開口するように設けられている。この空気排出路144には、減圧ポンプ130P3が介装されている。
分離槽141には、レベルセンサ145が設けられている。このレベルセンサ145は、分離槽141内の冷却水の量に応じた出力を生じるように構成されている。そして、本実施形態においては、レベルセンサ145の出力に応じて、分離槽141から蓄熱タンク106に冷却水が送出されるようになっている。
図15に示されているように、シリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)内の冷却水が排出されている状態で、以下のバルブ状態が設定される。
ブロック入口バルブ130V2により、タンク流出路122とシリンダブロック流入路114とが連通される。ブロック出口バルブ130V3により、シリンダブロック流出路115と流入側バルブ130V6とが連通される。
流入側バルブ130V6により、タンク流入路121におけるブロック出口バルブ130V3と流入側バルブ130V6との間の部分と、冷却水流入路142と、が連通される。また、流入側バルブ130V6により、タンク流入路121における、ブロック出口バルブ130V3と流入側バルブ130V6との間の部分と、流入側バルブ130V6と蓄熱タンク106との間の部分と、の連通が、遮断される。
さらに、排出側バルブ130V7が閉弁される。この状態で、減圧ポンプ130P3が駆動されると、シリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)内の空気が、シリンダブロック流出路115及び冷却水流入路142を介して、分離槽141に流入する。
このとき、シリンダブロック102内に残留していた少量の冷却水もまた、シリンダブロック流出路115及び冷却水流入路142を介して、分離槽141に流入することがあり得る。もっとも、分離槽141内に流入した空気及び冷却水は、当該分離槽141によって、気体と液体とに良好に分離される。すなわち、分離槽141の上部から、空気のみが、空気排出路144を介して外部に排出される。そして、分離槽141内には、液体状の冷却水が残留する。
その後、流入側バルブ130V6が閉弁され、減圧ポンプ130P3が停止する。これにより、シリンダブロック102(図2におけるロアジャケット102C)内の負圧が維持される。そして、図16に示されているように、送出ポンプ130P2が駆動される。これにより、蓄熱タンク106からシリンダブロック102に冷却水が迅速に送出される。
また、分離槽141内の冷却水のレベルが一定以上である場合に、排出側バルブ130V7が開弁される。これにより、分離槽141の底部から、蓄熱タンク106内に、冷却水が補充される。
かかる構成を有する本変形例によれば、上述の変形例による効果の他に、以下の効果が得られる。
まず、減圧ポンプ130P3側に冷却水が不用意に流入することが、効果的に抑制され得る。よって、減圧ポンプ130P3の作動状態が良好に維持され得る。また、不用意な冷却水の排出が、効果的に抑制され得る。
また、上述の実施形態のように、冷却水の自重を用いて、冷却水をシリンダブロック102から蓄熱タンク106に排出するような場合、少量の冷却水がシリンダブロック102内に残留しがちである。このような場合であっても、本変形例によれば、減圧ポンプ130P3によって分離槽141の上部を減圧することで、シリンダブロック102内の残留冷却水を空気と共に一旦分離槽141内に回収することができる。
なお、かかる変形例の構成においては、レベルセンサ145の出力に応じて、減圧ポンプ130P3の駆動状態を制御するようにしてもよい。
すなわち、例えば、レベルセンサ145により、分離槽141内の水位が所定レベル以上であることが判定されると、流入側バルブ130V6が閉弁され、減圧ポンプ130P3の駆動が停止される。そして、排出側バルブ130V7が開弁される。これにより、分離槽141内に貯留された冷却水が蓄熱タンク106に送り込まれる。
(H)図17は、図1及び図14に示されているエンジン冷却システム100のさらなる他の変形例の概略構成図である。
図17に示されているように、本変形例においては、タンク流出路122における、送出ポンプ130P2とブロック入口バルブ130V2との間の位置から分岐するように、シリンダヘッド供給路125が設けられている。シリンダヘッド供給路125の末端部は、シリンダヘッド103と接続されている。このシリンダヘッド供給路125には、開閉弁からなるヘッド入口バルブ130V8が介装されている。
かかる構成によれば、エンジン停止後にシリンダブロック102及びシリンダヘッド103内の温水を蓄熱タンク106に回収し、プレヒート時に温水をシリンダブロック102及びシリンダヘッド103内に供給し、その後にシリンダブロック102内の冷却水のみを蓄熱タンク106に再度回収することができる。これにより、始動時のシリンダブロック102及びシリンダヘッド103の良好な暖機と、始動後のシリンダヘッド103の良好な冷却と、暖機運転中のシリンダブロックの良好な暖機が、実現され得る。
(I)循環ポンプ130P1や送出ポンプ130P2等の、ポンプの動力源にも、限定はない。例えば、これらのうちの少なくとも一部は、エンジンの駆動軸と連結された機械式ポンプであってもよい(適宜クラッチ等の動力伝達機構が適用され得る。)。
あるいは、循環ポンプ130P1や送出ポンプ130P2等として、電動ポンプが用いられてもよい。さらには、後述するように、廃熱回収システムによって回収された機械的エネルギーが、駆動源として用いられてもよい。
(J)図18は、図1に示されているエンジン冷却システム100の他の変形例の概略構成図である。図19ないし図23は、図18に示されている変形例のエンジン冷却システム100の動作の様子を示す図である。
本変形例においては、シリンダブロック102とシリンダヘッド103とは、ガスケット104’を介して接続されている。このガスケット104’には、貫通孔が形成されている。この貫通孔によって、シリンダヘッド103におけるアッパージャケット103Fと、シリンダブロック102におけるウォータージャケット(図2におけるロアジャケット102C参照)とが、連通されている。
本変形例のエンジン冷却システム100は、廃熱回収部150を備えている。廃熱回収部150は、過熱器151と、排気通路152と、タービン153と、コンデンサ154と、冷却水噴射部155と、を備えている。
本発明の蒸気加熱器としての過熱器151は、排気ポート103B(図2参照)から排出された排気ガスの通路である排気通路152と接続されている。この過熱器151は、排気ガスと蒸気との熱交換によって、シリンダヘッド103から排出された蒸気を加熱し得るように構成されている。
本発明の膨張器としてのタービン153は、過熱器151を経て生成された過熱蒸気から、機械的エネルギーを回収し得るように構成されている。すなわち、タービン153は、回転羽根を備えていて、過熱器151から導入された過熱蒸気の膨張によって当該回転羽根が回転するように構成されている。
コンデンサ154は、タービン153を経た蒸気を、外気との熱交換によって冷却することで、凝縮し得るように構成されている。このコンデンサ154は、ラジエータと同様の構造に構成されている。
シリンダヘッド103には、本発明の冷却媒体噴射部としての冷却水噴射部155が装着されている。この冷却水噴射部155は、液体状の冷却水を、アッパージャケット103Fの内壁面に向けて噴射し得るように、構成及び配置されている。具体的には、本実施形態においては、冷却水噴射部155は、燃料噴射用ノズルと同様の構造を有していて、冷却水を細かい液滴状にして勢いよく噴射し得るように構成されている。
本変形例のエンジン冷却システム100は、本発明の冷却媒体循環路としての冷却水循環路160を備えている。冷却水循環路160は、第1シリンダヘッド接続路161と、第2シリンダヘッド接続路162と、シリンダブロック接続路163と、ラジエータ流入路164と、ラジエータ流出路165と、タンク流入路166と、タンク流出路167と、噴射部供給路168と、廃熱回収循環路169と、を備えている。
第1シリンダヘッド接続路161の一端部は、シリンダヘッド103(アッパージャケット103F)と接続されている。第2シリンダヘッド接続路162の一端部も、シリンダヘッド103と接続されている。第2シリンダヘッド接続路162の他端部は、シリンダブロック接続路163と接続されている。
シリンダブロック接続路163の一端部は、シリンダブロック102と接続されている。シリンダブロック接続路163の他端部は、第2シリンダヘッド接続路162と接続されている。
ラジエータ流入路164の始端部は、第2シリンダヘッド接続路162とシリンダブロック接続路163との接続部と接続されている。ラジエータ流入路164の末端部は、ラジエータ105における、冷却水流入口と接続されている。
ラジエータ流出路165の始端部は、ラジエータ105における、冷却水排出口と接続されている。ラジエータ流出路165の末端部は、第1シリンダヘッド接続路161の前記一端部と反対側の他端部と接続されている。ラジエータ流出路165と第1シリンダヘッド接続路161との接続部と、蓄熱タンク106とは、タンク流入路166によって接続されている。タンク流入路166は、蓄熱タンク106の上部に設けられた冷却水流入口と接続されている。
タンク流出路167の始端部は、蓄熱タンク106の最低部に設けられた冷却水排出口と接続されている。タンク流出路167の末端部は、第2シリンダヘッド接続路162と接続されている。
タンク流出路167から分岐するように、噴射部供給路168が設けられている。噴射部供給路168は、冷却水噴射部155に冷却水を供給し得るように、当該冷却水噴射部155と接続されている。
廃熱回収循環路169の始端部は、シリンダヘッド103(アッパージャケット103F)の最上部に設けられた蒸気排出口と接続されている。廃熱回収循環路169の末端部は、タンク流入路166と接続されている。この廃熱回収循環路169には、過熱器151と、タービン153と、コンデンサ154と、が介装されている。
本変形例のエンジン冷却システム100は、また、本発明の循環状態制御部としての冷却水循環制御部170を備えている。冷却水循環制御部170は、エンジンコントロールユニット170Aと、温度センサ170Dと、循環ポンプ170P1と、タンク貯留制御ポンプ170P2と、ラジエータバイパスバルブ170V1と、タンク貯留制御バルブ170V2と、切換バルブ170V3と、を備えている。
エンジンコントロールユニット170Aは、上述の実施形態におけるエンジンコントロールユニット130A(図1参照)と同様に構成されている。温度センサ170Dは、本変形例においては、シリンダヘッド103内(アッパージャケット103F内)の冷却水の温度に応じた信号を生じるように構成されている。
シリンダブロック接続路163には、循環ポンプ170P1が介装されている。また、シリンダブロック接続路163とラジエータ流入路164との接続位置には、三方向弁からなるラジエータバイパスバルブ170V1が設けられている。すなわち、ラジエータバイパスバルブ170V1とシリンダブロック102との間に、循環ポンプ170P1が介装されている
噴射部供給路168がタンク流出路167から分岐する位置には、三方向弁からなるタンク貯留制御バルブ170V2が介装されている。また、タンク流出路167における、タンク貯留制御バルブ170V2と蓄熱タンク106との間には、タンク貯留制御ポンプ170P2が介装されている。
切換バルブ170V3は、三方向弁からなり、第1シリンダヘッド接続路161とタンク流入路166とが接続されている位置に介装されている。
かかる構成を備えた、本変形例のエンジン冷却システム100は、以下のように動作する。
まず、始動前の初期状態においては、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103内から冷却水が排出されている一方、温水が蓄熱タンク106内に貯留されている。
始動前のプレヒート時においては、図19に示されているように、ラジエータバイパスバルブ170V1によって、第2シリンダヘッド接続路162とシリンダブロック接続路163とが連通される一方、これらとラジエータ105との連通は遮断される。
また、タンク貯留制御バルブ170V2によって、タンク貯留制御ポンプ170P2と第2シリンダヘッド接続路162とが連通される一方、これらと噴射部供給路168との連通は遮断される。
さらに、切換バルブ170V3によって、第1シリンダヘッド接続路161とタンク流入路166とが連通される一方、これらとラジエータ流出路165との連通は遮断される。
この状態で、循環ポンプ170P1及びタンク貯留制御ポンプ170P2が駆動される。これにより、蓄熱タンク106内の温水が、タンク流出路167及び第2シリンダヘッド接続路162(タンク流出路167との接続部とラジエータバイパスバルブ170V1との間の部分)を通って循環ポンプ170P1に達し、シリンダブロック102内に流入する。
シリンダブロック102に流入した温水は、ガスケット104’に形成された貫通孔を通って、シリンダヘッド103(アッパージャケット103F)に流入する。シリンダヘッド103から第2シリンダヘッド接続路162に流出した温水は、循環ポンプ170P1により、当該第2シリンダヘッド接続路162及びシリンダブロック接続路163を通って、シリンダブロック102に再度流入する。
このようにして、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103がプレヒートされる。その後、図20に示されているように、循環ポンプ170P1及びタンク貯留制御ポンプ170P2が、プレヒート時とは逆方向に冷却水を送出するように駆動されることで、シリンダブロック102及びシリンダヘッド103内の冷却水が、蓄熱タンク106に回収される。この状態で暖機運転が行われることで、シリンダブロック102の暖機が早期に行われ得る。
シリンダヘッド103は、燃料混合気の燃焼による熱や、排気ガスの持つ熱により、シリンダブロック102よりも早期に昇温する。よって、シリンダブロック102が所定の温度に達すると、図21に示されているように、冷却水噴射部155によって、冷却水がシリンダヘッド103の内壁面(アッパージャケット103Fの内壁面)に対して勢いよく噴射される。これにより、シリンダヘッド103が良好に冷却されるとともに、アッパージャケット103F内に蒸気が発生する。
冷却水噴射部155による冷却水の噴射は、以下のようにして行われる。
ラジエータバイパスバルブ170V1及び切換バルブ170V3は閉弁される。タンク貯留制御バルブ170V2によって、タンク貯留制御ポンプ170P2と噴射部供給路168とが連通される一方、これらと第2シリンダヘッド接続路162との連通は遮断される。循環ポンプ170P1は停止される。
この状態でタンク貯留制御ポンプ170P2が駆動されることで、蓄熱タンク106内の冷却水が、噴射部供給路168に送出される。そして、この噴射部供給路168に送出された冷却水は、冷却水噴射部155によって、細かい液滴状に噴射される。
アッパージャケット103F内に発生した蒸気は、廃熱回収循環路169に導出される。この蒸気は、過熱器151にて、排気ガスとの熱交換によって加熱され、過熱蒸気となる。過熱器151にて発生した過熱蒸気は、タービン153にて、膨張により、前記回転羽根を回転させる。これにより、過熱蒸気の有する熱エネルギーが、タービン153の前記回転羽根の運動(回転)のエネルギーに変換される。すなわち、過熱蒸気から機械的エネルギーが回収される。
タービン153を経て低エネルギーとなった蒸気は、コンデンサ154にて冷却されることで、凝縮される。コンデンサ154にて凝縮された冷却水は、タンク流入路166を経て、蓄熱タンク106に還流する。
なお、冷却水噴射部155によって噴射された冷却水のうち、蒸気とならなかったものは、シリンダブロック102内に滞留する。
暖機運転終了の際には、図22に示されているように、ラジエータバイパスバルブ170V1によって、第2シリンダヘッド接続路162とシリンダブロック接続路163とが連通される一方、これらとラジエータ105との連通は遮断される。また、タンク貯留制御バルブ170V2は全方向に開弁される一方、切換バルブ170V3は閉弁される。そして、循環ポンプ170P1が駆動される。これにより、シリンダブロック102内の冷却水も循環される。
その後、冷却水温がさらに上昇すると、図23に示されているように、冷却水がラジエータ105に導入される。これにより、冷却水がラジエータ105によって冷却される。
本変形例の構成によれば、上述の実施形態や各変形例によって得られた効果に加えて、さらに以下の効果が得られる。
かかる構成によれば、液体状の冷却水が、冷却水噴射部155によって、アッパージャケット103Fの内壁面に、勢いよく噴射される。すなわち、アッパージャケット103Fの内壁面に対して、液体状の冷却水が、勢いよく衝突する。
これにより、アッパージャケット103Fの内壁面に付着している、冷却水の蒸気による気泡が、良好に弾き飛ばされる。よって、高負荷運転等により、シリンダヘッド103が高温になって、アッパージャケット103Fの内壁面にて大量の気泡が発生した場合であっても、膜沸騰現象の発生が、緩和又は抑制され得る。
したがって、かかる構成によれば、シリンダヘッド103の冷却が、良好に行われる。
また、シリンダヘッド103にて発生している廃熱による冷却水の昇温が、効率的に行われる。よって、廃熱からの機械的エネルギーの回収効率が良好となる。
また、かかる構成においては、冷却水噴射部155によって、細かい液滴状の冷却水が、アッパージャケット103Fの内壁面に噴射される。
これにより、アッパージャケット103Fの内壁面における、冷却効率、及び冷却水の気化効率が、向上し得る。よって、シリンダヘッド103の冷却が、良好に行われる。また、廃熱回収のための蒸気の発生が、安定的に行われ得る。
なお、タービン153に備えられた前記回転羽根の回転エネルギーは、電気に変換されてもよいし、他の回転駆動系の動力源として用いられてもよい。
また、タービン153に代えて、ピストンを備えた機構を用いてもよい。
(K)その他、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能な、いかなる構造をも含む。