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JP4923332B2 - 非水電解質二次電池用電極材組成物の製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池用電極材組成物の製造方法 Download PDF

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  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高充放電容量を発揮することが可能なリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池用電極材組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子技術の発達にはめざましいものがある。その中で、電子機器の小型化、軽量化が要求項目として挙げられる。それに伴い移動用電源としての電池に対しても益々小型、軽量かつ高エネルギー密度であることが求められるようになり、リチウムイオン二次電池の使用が拡大されてきた。
【0003】
上記に示したリチウムイオン二次電池の負極材用炭素材としては、特開平5−74457号公報記載の黒鉛を使用しているものが挙げられる。黒鉛は、サイクル性が非常によいことが特長であるが、理論充放電容量が372mAh/gであるため、これ以上の充放電容量は望めないという欠点がある。また、黒鉛材料以外では、特開平5−28996号公報、特開平7−73868号公報に示されるピッチコークスを使用した負極材が挙げられる。この材料は易黒鉛化炭素材であるが、焼成温度が2000℃を超える領域では黒鉛化が進行する。黒鉛になってしまうと充放電容量が決定されてしまう。また黒鉛化される前の温度域(1000〜1800℃)においては充放電容量の高い炭素材が得られている。しかしながら、サイクル性が乏しく、ピッチコークスは不純物を多く含んでおり、電池特性に悪影響を及ぼす。
【0004】
また、熱処理温度が500℃〜700℃程度の低温で処理された炭素負極は、次世代の高容量型炭素負極の有力候補の一つである。可逆容量で850mAh/gと、重量あたりの容量で黒鉛をこえる。また、低温処理であるため、エネルギーメリットも高い。しかしながら、電位が高く、充放電での電位のヒステリシスが大きいのが難点である。
炭素以外のリチウムイオン負極材として注目されているのが特開平5−166536号公報に示される金属酸化物含有炭素材、及び特開平6−290782号公報に示される窒素含有炭素材である。しかしながら、これらの炭素材では充放電容量800mAh/gと非常に大容量ではあるが、瞬間放電量が非常に高いことからその制御が困難であるとされている。
【0005】
また、リチウムイオンのインターカレーション能が非常に高い材料としてケイ素含有炭素材があり、その製法として、特開平7−315822に気相での化学蒸着による製法や、再表98/024135にケイ素粉末あるいはケイ素化合物と有機材料又は炭素材料を配合し炭化処理する製法が開示されている。しかしながら、特開平7−315822では、気相での化学蒸着法は製法及び原材料の安全性に問題があり、ケイ素含有量にバラツキが生じ、含有するケイ素量も少なく、充放電特性を向上することが難しい。また、再表98/024135では、不可逆容量が大きく、ケイ素の高容量が活かされていない。この理由は、この製法では直接ケイ素又はケイ素化合物を炭素前駆体に配合するためケイ素が炭素材の表面に露出する量が多くなるためと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高充放電容量を発揮することができるリチウムイオン二次電池用電極材組成物に関し、高エネルギー密度で且つ安全性の高い電極材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、ケイ素を含み炭素化できる炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体を配合し炭化処理することで得られるケイ素含有量が3〜25%のケイ素含有炭素材を負極材に用いることにより、高エネルギー密度で、かつ安全性の高いリチウムイオン二次電池の負極材が得られることを見出した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) ケイ素又はケイ素化合物と炭素前駆体又は炭素前駆体及び炭素材とを配合したものであるケイ素を含む炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体とを配合して炭化処理し、炭素材全体に対するケイ素含有量が3〜25重量%であるケイ素含有炭素材を得ることを特徴とする非水電解質二次電池用電極材組成物の製造方法、
(2) ケイ素を含む炭素前駆体が、炭化処理により炭化ケイ素を生成することが出来る炭素前駆体であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用電極材料組成物の製造方法、
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のケイ素含有炭素材の製造方法は、ケイ素を含む炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体を配合し炭化処理することを特徴とするものである。
本発明で使用するケイ素を含む炭素前駆体とは炭化処理後ケイ素が確実に炭化物内に存在し、リチウムを吸蔵することができる炭素前駆体のことを言う。ケイ素を含む炭素前駆体の製法は種々あり限定はされない。例えば、ケイ素粉末をフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ピッチ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等から選ばれる単独あるいは2種以上を併用した樹脂と硬化剤等を粉砕混合し得たり、又、400℃の硬化処理をして得たケイ素を含む炭素前駆体や酸化ケイ素、ケイ酸ナトリウム等のケイ素化合物と上記記載樹脂類を溶融混合し得られるケイ素を含む炭素前駆体等である。
また、上記で得られたケイ素を含む炭素前駆体として、熱処理等することにより炭化ケイ素を生成するものを用いることもできる。
【0009】
本発明において、炭素前駆体とは、炭素含有物質で、炭素化処理して炭素材が得られるものであり、特に限定されないが、ピッチ、コークス、塩化ビニル樹脂、木材類、フェノール樹脂、フラン樹脂、イミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、砂糖等の残炭率の高いものが好ましい。また、ケイ素を含まない炭素前駆体とは、前記炭素前駆体のうち、実質的にケイ素を含まないものをいう。炭素材とは、炭素、黒鉛等であり、通常の意味で使用されるが、前記炭素前駆体を炭化処理して得られたものも含まれる。これらの炭素前駆体及び炭素材は単独あるは二種以上併用し使用しても良い。
【0010】
本発明のケイ素を含む炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体との配合方法は種々あり、特に限定されるものではない。例えば、V型ブレンダー等の混合機にて均一混合する方法や、パルペライザー、ボールミル等の粉砕混合機にて粉砕しながら混合する方法、押し出し機や混練機を用い混練又は溶融混合する方法、あるいは、表面改質機、複合化機を用いケイ素を含む炭素前駆体をケイ素を含まない炭素前駆体表面の改質剤として混合する方法等がある。
【0011】
本発明の特徴であるケイ素を含む炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体とを配合すると、ケイ素が炭素表面に露出する量が少なく、ケイ素の特徴を発揮することができ充放電特性が向上する。
つまり、電極材としてケイ素とリチウムイオンとの相互作用を考えた場合、Siは通常Liを4個吸蔵し高充電容量となるが、実際、充放電効率は小さい。これは、SiはLiの吸蔵力が大きく、Liの放出が起こりにくいためと考えられる。従来のケイ素含有炭素材、即ち、気相でのケイ素の化学蒸着、あるいはケイ素粉末やケイ素化合物と有機材料又は炭素材料との配合による製造では、Siが炭化材料に覆われることが少なく、炭化物表面にSiが露出している量が多くなる。そのため、SiとLiが直接吸蔵反応を行う結果となり、充放電効率の低下を改善することは困難である。これに対し、本発明の製造方法では、予めSiと炭素前駆体との混合・反応等によりケイ素を含む炭素前駆体を調製し、これにケイ素を含まない炭素前駆体を配合し、混合・反応等の後、炭化処理することでケイ素含有炭素材を得る。このようにして得られたケイ素含有炭素材は、Siの周りを炭素材で覆うことで、SiがLiと直接吸蔵反応をする量を押さえ、炭素材がSiとLiとの緩衝域となる。このため、 Liの吸蔵・脱離が可逆的に行われることから、高い充電容量を保ったまま、充放電効率も向上するものと考えられる。
【0012】
本発明のケイ素含有炭素材のケイ素含有量は、充電容量が高く、不可逆容量が小さいために、炭素材全体に対して3〜25重量%であり、好ましくは8〜21重量%である。ケイ素含有量が3重量%より小さいとケイ素が炭素に覆われ、ケイ素本来の高充電容量特性が発揮されず、充放電容量特性が用いた炭素前駆体の炭素化後の性能と同程度で向上効果が小さい。25重量%より大きいとケイ素本来の高充電容量が得られるが、不可逆容量が増大する傾向がある。更に負極炭素材の膨張収縮が大きくなり、制御するのが難しくなるため、充放電容量のバラツキの大きい材料となる。
【0013】
本発明のケイ素を含む炭素前駆体作製時、あるいはケイ素含有炭素材作製時の炭素化処理前に、必要に応じて硬化工程を加えることができる。この硬化方法は炭素前駆体の種類により種々の方法があるが、例えば、ピッチ類の場合は空気中の熱酸化による架橋又はラジカル開始剤添加による架橋、フェノール系樹脂の場合は、熱硬化や酸硬化、エポキシ硬化、等が用いられ、硬化時、硬化剤として窒素含有物のイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、エポキシ硬化時のアミン系硬化促進剤を用いても差し支えない。エポキシ系樹脂の場合、イミダゾール、酸無水物、フェノール樹脂等の硬化剤にて熱硬化させる。この時、硬化促進剤等を併用してもよい。ウレタン系樹脂の場合は、硬化剤として三級アミンや水、フェノール樹脂等を用いて熱又は常温にて硬化させる。
【0014】
本発明でのケイ素含有炭素材を得る場合の炭化処理方法は特に限定されるものではない。例えば、ケイ素を含む炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体とを混合後、昇温速度10〜100℃/分あるいはこれ以上で1000℃程度まで昇温し、10時間以上ホールド処理し炭素材を得る。また、炭化処理時の雰囲気は窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、又は一酸化炭素雰囲気下等であるが、特に限定されるものではない。
このように、本発明のケイ素含有炭素材の製造方法は、原材料、製法ともに安全性が高く、更に、ケイ素含有量も任意に制御することができる。
【0015】
ケイ素含有炭素材の製造時、本発明の目的に反しない範囲内において、硬化や炭化時に窒素含有熱可塑性樹脂や金属、あるいは炭素材料となり得る材料等で変性したり、顔料、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤等、他の重合体を添加しても差し支え無い。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。しかし、本発明は実施例により限定されるものではない。また、実施例、比較例で示される「部」及び「%」は全て「重量部」及び「重量%」とする。
【0017】
実施例1
ケイ素粉末5部、ノボラック型フェノール樹脂(数平均分子量Mn=624)100部、ヘキサメチレンテトラミン10部を粉砕混合し、200℃にて3時間硬化処理を行いケイ素を含む炭素前駆体65部を得た。次に得られたケイ素を含む炭素前駆体100部にレゾール型フェノール樹脂(Mn=358)100部をメタノール中で溶液混合し、200℃にて5時間硬化処理を行った後、窒素雰囲気下にて100℃/時間で昇温し,1000℃にて3時間炭化処理を行いケイ素含有炭素材を得た。上記の方法で得られたケイ素含有炭素材のケイ素含有量は炭素材灰分が全てSiO2 となったと仮定し3.8%であった。
次に、得られたケイ素含有炭素材88重量部、結合剤としてテトラフルオロエチレン9重量部、及び導電剤としてアセチレンブラック3重量部からなる合剤を、20mmφに圧縮成形して負極ペレットを得た。
正極材料は、Li0.5Co0.5V0.5O2.5を84重量部、導電剤としてアセチレンブラック10重量部、結合剤としてテトラフルオロエチレン6重量部の混合比で用いた。これらを混合した合剤を乾燥後、圧縮成形して正極ペレット(20mmφ)を得た。電解液として1MのLiBF4 を用い、セパレーターとして微孔性のポリプロピレンを用い、前記電解液を含浸させリチウムイオン二次電池を作製した。
このリチウムイオン二次電池について、充放電を行い、1回目の放電容量測定を行った。充電条件は、電流25mA/gの低電流で1mVになるまで保持し、その後、1.25mAh/g以下に電流が減衰するまでとした。また、放電条件のカットオフ電位は1.5Vとした。
【0018】
実施例2
ケイ素を含む炭素前駆体A100部と軟化点120℃のピッチ20部を粉砕混合し、らいかい機にて混練した後、実施例1と同法で炭化処理した。得られたケイ素含有炭素材のケイ素含有量は13.2%であった。以下,実施例1と同様な方法で評価を行った。
【0019】
実施例3
ケイ素粉末40部と軟化点120℃のピッチ100部をニーダーにて混練してケイ素を含む炭素前駆体130部を得た。得られたケイ素を含む炭素前駆体100部と軟化点240℃のピッチ90部をニーダーにて溶融混練し粉砕した後、実施例1と同法で炭化処理しケイ素含有量24.4%のケイ素含有炭素材を得た。以下、実施例1と同様な方法で評価を行った。
【0020】
比較例1
ケイ素粉末30部と軟化点120℃のピッチ100部を粉砕混合した後、実施例1と同法にて炭化処理を行いケイ素含有量32.8%のケイ素含有炭素材を得た。以下、実施例1と同様な方法で評価を行った。
【0021】
比較例2
ケイ素粉末9部とノボラック型フェノール樹脂(Mn=624)100部とヘキサメチレンテトラミン10部を粉砕混合し200℃にて3時間硬化処理した後は実施例1と同法で炭化処理を行い炭素材を得た。以下、実施例1と同様な方法で評価を行った。
【0022】
比較例3
ノボラック型フェノール樹脂(Mn=624)100部とヘキサメチレンテトラミン10部を粉砕混合し200℃にて3時間硬化処理した後は実施例1と同法で炭化処理を行い炭素材を得た。以下、実施例1と同様な方法で評価を行った。
【0023】
各実施例及び比較例で得られた炭素材について、電極材としての評価結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0004923332
【0024】
表1から明らかなように、ケイ素含有炭素材を主成分とする電極材は、ケイ素含有によりLiを吸蔵できることから高放電容量となっている。この中で、実施例で得られたケイ素含有炭素材は、放電容量が比較的大きく、充放電効率も優れている。これはケイ素を含む炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体とを配合しケイ素含有炭素材を得ているので、ケイ素の炭素材表面への露出が少ないためである。
一方、比較例1及び2は、炭素前駆体としてケイ素を含む炭素前駆体のみを使用したものである。比較例1はケイ素含有量が多いため放電容量は大きいが、炭素材料に覆われる部分が少なくケイ素の露出した部分が多くなるため充放電効率が大きく低下している。比較例2は、ケイ素含有量が実施例2と同程度であり、放電容量は実施例と同程度であるが、充放電効率は比較例1と同様に低下している。
比較例3はケイ素を含有していないため、放電容量が大きく低下している。
このように、実施例で得られた炭素材を使用することにより、優れた特性を有するリチウムイオン二次電池用電極材が得られた。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明によるケイ素含有炭素材を用いた電極材は、ケイ素が充放電容量を向上させ、ケイ素を含む炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体とを配合して得られるケイ素含有炭素材であるためケイ素が炭素材から露出した部分が小さく炭素材が緩衝域となるため、充放電効率が向上する。従って、高エネルギー密度で、且つ充放電効率の高い電極材を得ることができることから、 リチウムイオン二次電池の負極炭素材に好適である。

Claims (2)

  1. ケイ素又はケイ素化合物と炭素前駆体又は炭素前駆体及び炭素材とを配合したものであるケイ素を含む炭素前駆体とケイ素を含まない炭素前駆体とを配合して炭化処理し、炭素材全体に対するケイ素含有量が3〜25重量%であるケイ素含有炭素材を得ることを特徴とする非水電解質二次電池用電極材組成物の製造方法。
  2. ケイ素を含む炭素前駆体が、炭化処理により炭化ケイ素を生成することが出来る炭素前駆体であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池用電極材料組成物の製造方法。
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