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JP4920400B2 - 防水気密用粘着シート - Google Patents

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本発明は、実質的に溶剤を含まない架橋された固形タイプの粘着剤組成物と、これを基材上に加熱塗工してシート状やテープ状、フィルム状などの形態とした粘着シート、およびこの粘着シートを用いた防水気密用粘着シートに関する。
住宅品質確保促進法(品確法)の施行により、住宅の雨漏りを完全に阻止することが要望されており、種々の防水シートが使われている。また近年、省エネ効果の高い高気密高断熱住宅が要望されており、種々の気密シートも使われている。これら防水気密用粘着シートは、粘着剤としてゴムアスファルト、ブチルゴム、アクリルポリマーをベースにしたものが知られているが、ブチルゴム粘着剤は耐久性30年の実績があり、高温低温での接着性も比較的良好である。また防水機能として重要な被着体から剥がした時の破壊モードは、凝集破壊を示す。凝集破壊しないと被着体と粘着剤の間に隙間が生じ、この隙間に水が浸み込み防水できない恐れがあり好ましくない。これに対し、ゴムアスファルト粘着剤は耐久性が約10年と短く、高温低温での接着性に乏しい。さらにアクリル系粘着剤は近年商品化されたばかりであるが、被着体から剥がれた時の破壊モードが凝集破壊しにくく、長年に渡る防水機能が十分か否かは実績がない。
このようにブチルゴム粘着剤は他の防水気密用粘着剤として特性面で良好であるが、近年の新しい住宅建材のあらゆる被着体に接着し、防水気密を長年に渡り維持するように木板や合板、透湿防水シートなど色々な被着体に接着することが要求されている。また真夏や真冬といった高温や低温下でも被着することが望まれるなど、更なる性能向上が求められている。
従来、防水気密用粘着シートに固形タイプの粘着剤が用いられてきた。固形タイプの粘着剤組成物とは、環境汚染の原因となる有機溶剤を用いず、かつ乾燥に多大なエネルギーを必要とする水も使用しない、無溶剤でかつ非水系の粘着剤組成物であり、通常、天然ゴムをはじめとするゴム質ポリマーを主剤とし、これに粘着付与剤を配合し、また通常は炭酸カルシウム微粉末などの充填剤、オイルなどの軟化剤、老化防止剤などを適当な割合で配合し、この配合物を加熱しながらニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどで混練して、常温で固形の粘着剤組成物としたものである。
これらの固形タイプの粘着剤組成物は未架橋であって、特に高温での凝集力が乏しく、ズレも生じる場合が多かった。また防水気密テープは色々な被着体に接着する必要があり、特に糊厚を薄くすると低温での接着力の低下が顕著であることから、糊厚が約0.2〜0.5mmと厚いものが多かった。このため、粘着剤組成物の使用量を抑えることができるよう、糊厚が薄くても従来と同等の機能を発揮できるものが望まれていた。
本発明はこのような事情に照らし、有機溶剤や水を使用せずに塗工可能な架橋された固形タイプの粘着剤組成物および粘着シートであって、接着力とともに保持力にも優れ、特に低温下での接着力は糊厚を薄くした場合でも低下がない固形タイプの粘着剤組成物および粘着シートを提供することを目的とする。
ゴム質ポリマーを主剤とする固形タイプの粘着剤組成物は、通常のゴム製品の場合と同様に架橋剤を用いて架橋処理するとその凝集力を大きくでき、これにより上記のような問題を回避できると考えられる。ここで粘着剤以外のゴム製品では、架橋剤を予めゴム質ポリマーに混練しておきシートや目的の型に成型してから架橋させる方式がほとんどであるのに対し、固形タイプの粘着剤を用いた粘着シートの場合、粘着剤組成物を塗工後に加熱する工程を含まないため、ゴム質ポリマーと粘着付与剤、軟化剤等の材料を混練する工程で架橋できるものが工程上、最適と考えられる。この場合、混練時の混練温度は実用上180℃程度が上限であり、例えばブチルゴムの架橋に一般的に使われる硫黄による架橋反応に必要な200℃まで加熱する事はかなり困難である。さらに硫黄による架橋は通常20〜30分程度必要であるが、長時間にわたり加熱混練すると、ゴム質ポリマーの分子鎖が熱と剪断力で切断されて低分子量化し、却って凝集力を低下させかねない。従って、混練工程では5分から20分程度が限度であり、これらの理由から本発明においては、比較的低温でかつ短時間で架橋反応する架橋剤を用いるべきと考えた。
本発明者らは、上記思想に基づき、ゴム系粘着剤と混練中に反応しうる架橋剤を選択し、混練時のトルクを観察しながら混練温度と混練時間を適宜調節しながら加熱混練した時に、上記ゴム質ポリマーの分子鎖切断による低分子量化を引き起こすことなく、上記架橋剤を混練物中で均一に分散させることができ、その結果、期待した通りの架橋を実現できて、凝集力を高めることができ本発明を完成した。
すなわち本発明は、基材上に、少なくとも(a)ゴム質ポリマーとして再生ブチルゴム、(b)粘着付与剤、(c)キノイド加硫剤を含む架橋剤、およびゴム質ポリマー100重量部あたり50〜150重量部のポリブテン、からなる架橋された固形タイプの粘着剤組成物を粘着剤層として設けたことを特徴とする粘着シートからなる防水気密用粘着シート(請求項1)に係るものである。


以上のように、本発明ではゴム質ポリマーに粘着付与剤を加えて加硫剤で架橋処理して粘着剤組成物を構成したことにより、接着力とともに保持力にも優れ、特に低温下での接着力は糊厚を薄くした場合でも低下がない。また加熱により軟化して容易に成形できるので、有機溶剤や水を使用せずに粘着シートの製造が可能であり、さらに塗工後の乾燥工程が不要であって省エネルギー化に寄与でき、地球環境上も望ましいものである。
本発明の架橋された固形タイプの粘着剤組成物は、少なくとも(a)ゴム質ポリマー、(b)粘着付与剤、(c)チウラム加硫剤、キノイド加硫剤、キノンジオキシム加硫剤、マレイミド加硫剤から選択される少なくとも一種を含む架橋剤、からなることを特徴とする。本発明に用いられる(a)ゴム質ポリマーとしては、耐久性、耐候性の点でブチルゴムが好ましく用いられ、特に加工性に富む再生ブチルゴムが最も好ましい。またそのムーニー粘度ML1+4(100℃)は、20〜100であるものが好ましい。ブチルゴムのほか、場合によりブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリイソブチレンなどの合成ゴム、これらのブレンド系を用いても良い。
本発明に用いられる(b)粘着付与剤は、粘着性の付与とともに、熱により軟化させやすくするためのものであり、石油系樹脂、フェノール系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂など、ゴム質ポリマーと相溶する各種の樹脂が用いられる。このような粘着付与剤は、ゴム質ポリマー100重量部あたり、20〜200重量部、好ましくは30〜150重量部となる割合で用いられる。
本発明に用いられる(c)架橋剤は、チウラム加硫剤、キノイド加硫剤、キノンジオキシム加硫剤、マレイミド加硫剤から選択される少なくとも一種を含む架橋剤であって、具体的にはチウラム加硫剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどが、キノイド系加硫剤としてはポリ−p−ジニトロソベンゼンなどが、キノンジオキシム加硫剤としてはp−キノンジオキシム、p、p´−ジベンゾイルキノンジオキシムなどが、マレイミド加硫剤としてはN,N´−m−フェニレンジマレイミド、N,N´−p−フェニレンジマレイミド、N,N´−エチレンジマレイミドなどが用いられる。
これらの架橋剤は低温(例えば180℃以下)での架橋が可能であり、架橋速度が速いという共通の特性を有する。またこれら架橋剤は、ゴム質ポリマー100重量部あたり、通常0.5〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部の割合で用いられる。
本発明において、任意成分として用いられる配合剤には、炭酸カルシウム、タルク、酸化マグネシウムなどの充填剤、ポリブテン、プロセスオイルなどの軟化剤、老化防止剤、可塑剤などがある。使用量は、ゴム質ポリマー100重量部あたり、充填剤が200重量部以下、好ましくは10〜150重量部、軟化剤が150重量部以下、好ましくは5〜100重量部、老化防止剤が5重量部以下、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部であるのがよい。
本発明において、上記のゴム質ポリマー、粘着付与剤および架橋剤を必須成分とし、これに上記の任意成分を加えて、有機溶剤や水を全く使用することなく、加熱混練するとともに、これにさらに架橋剤を加えて加熱混練を続けることにより、上記架橋剤を混練物中に均一に分散させ、同時にこれと上記のゴム質ポリマーとの間で均一に反応させる。これにより上記のゴム質ポリマーが適度に架橋処理された構造の粘着剤組成物が得られる。
加熱混練は、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどのバッチ式混練機および2軸混練機などの連続式混練機を用いて行うことができ、その際、約100〜200℃の範囲で、ゴムなどの種類に応じて適宜の混練温度を選択する。混練時間は、混練温度に応じて各成分の合計の混練時間が3〜60分となる範囲で、混練時のトルクを観察しながらトルク上昇の終点を架橋反応の終点として判断し、適宜に時間を選択する。
このように架橋処理された固形タイプの粘着剤組成物は、これを加熱すると容易に軟化する、良好な成形性を有しているため、これを布類(綿、スフ、化繊、不織布等)、紙類(和紙、クラフト紙等)、プラスチック類(セロハン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アセテート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル等)、金属箔、あるいはこれらのプラスチックラミネート体等などの基材上にカレンダーロールや押出し機などで加熱塗工することで、上記の基材上に上記の粘着剤組成物からなる層を設けたシート状やテープ状、フィルム状などの粘着シートを製造することができる。この製造方式では、環境汚染の原因となる有機溶剤や乾燥に多大なエネルギーを必要とする水を使用していないため、基材塗工後に乾燥炉による加熱工程を設ける必要がなく、地球環境にやさしく、省エネルギー化にも大きく寄与させることができる。
また糊厚、つまり上記粘着剤組成物からなる層の厚さは、通常50〜500μm、好ましくは100〜300μmの広い範囲に設定でき、この範囲内で薄い糊厚としたときでも、従来のように低温下で粘着特性が急激に低下するような事はない。従って、糊厚を薄くすることができ、無駄な粘着剤組成物を塗布しなくてよいという効果がある。
また上記基材は粘着剤層との接着力(投錨力)を向上させるために、基材の粘着剤塗布面をコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を施したり、プライマー層を塗設するなど、公知の処理を適用しても良い。また基材の粘着剤組成物を塗布しない面には、シートをロール状に巻回した際、巻き戻しやすくするために、適宜シリコーン樹脂やフッ素樹脂等で代表される剥離剤を塗布しても良い。
このようにして製造される本発明の粘着シートは、適度な架橋による凝集力の向上により、接着力に優れるとともに、保持力にも優れており、高温に放置した時の保持力も高いものである。従って、本発明の粘着シートは種々の接着用途で用いることができるが、その高い防水性、耐久性、耐候性を活かして住宅用の防水気密用の防水シート、気密シートなどとして有用であり、また住宅以外の建築物用の防水用途に幅広く利用することができる。
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例1
再生ブチルゴム(ムーニー粘度ML1+4(100℃)44±6)1000gを150℃に加熱した3リットル加圧ニーダー中に投入し、これに炭酸カルシウム紛500gを投入して約5分間混練した。ここに、粘着付与剤として石油系樹脂であるエクソン社製『エスコレッツ1202』400gを投入して約10分間混練した。さらに軟化剤として日本石油(株)社製『ポリブテンHV300』500gを数回に分けて約10分間混練した。最後に架橋剤としてキノイド加硫剤である大内新興化学工業(株)社製『バルノックDNB』20gを投入し約5分間混練しながら架橋処理した。その後、ニーダーから取り出して粘着剤組成物を調整した。
次にこの粘着剤組成物を、8インチ4本カレンダーロールを用いて、基材(厚さ0.12mmの背面処理済の織り布)上に、糊厚が0.25mmとなるように、100℃で加熱塗工して粘着シートを作製した。
実施例2
糊厚を0.1mmとした以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
実施例3
架橋剤としてチウラム加硫剤である大内新興化学工業(株)社製『ノクセラーTT』20gを用いた以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
実施例4
架橋剤としてキノンジオキシム加硫剤である大内新興化学工業(株)社製『バルノックGM』20g用い、架橋剤投入後の混練を180℃で5分間行った以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
実施例5
架橋剤としてマレイミド加硫剤である大内新興化学工業(株)社製『バルノックPM』20g用い、架橋剤投入後の混練を180℃で5分間行った以外は実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
比較例1
架橋剤を投入せず、架橋処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして固形タイプの粘着剤組成物を調整した。これを用いて実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
比較例2
糊厚を0.1mmとした以外は比較例1と同様にして粘着シートを作製した。
比較例3
架橋剤として硫黄20gを投入した以外は、実施例1と同様にして固形タイプの粘着剤組成物を調整した。これを用いて実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
比較例4
粘着付与剤を添加しない以外は、実施例1と同様にして固形タイプの粘着剤組成物を調整した。これを用いて実施例1と同様にして粘着シートを作製した。
上記実施例1〜5および比較例1〜4の各粘着テープについて、下記の方法により、接着力試験および保持力試験を行った。これらの試験結果は、表1に示されるとおりであった。
<接着力試験>
ステンレス板と木板(ベイツガ材)に各々幅25mmの粘着シートを貼り合わせ、0℃および60℃において180度の引き剥がし角度、300mm/分の引き剥がし速度で、引き剥がした時の接着力(N/25mm幅)を測定した。
<保持力試験>
ステンレス板に25mm×25mmの大きさの粘着シートを貼り付けて、60℃の雰囲気中で、粘着シートの一端に500gの静荷重を垂直にかけ、粘着テープがずれて落下するまでの時間(分)を測定した。さらに粘着剤層の破壊モードも観察した。
Figure 0004920400
上記表1の結果から、本発明の実施例1〜5の各粘着シートは、糊厚に関わらず低温高温の接着力、保持力ともに優れていることが分かる。また破壊モードは凝集破壊であり、防水性も良好と判断できる。
これに対して、加硫剤による架橋処理を施さなかった比較例1、2の粘着シートでは、保持力が劣っており、また糊厚を薄くした比較例2の粘着シートでは、低温での接着力が著しく劣っている。また比較例3の粘着シートでは加硫剤として硫黄を添加しているが、実施例1記載のような低温、短時間の加硫条件では十分な加硫は進行せず、特性を改善するに至っていない。さらに粘着付与剤を添加しない比較例4では、粘着力、保持力とも低く特性は得られていない。

Claims (1)

  1. 基材上に、少なくとも(a)ゴム質ポリマーとして再生ブチルゴム、(b)粘着付与剤、(c)キノイド加硫剤を含む架橋剤、およびゴム質ポリマー100重量部あたり50〜150重量部のポリブテン、からなる架橋された固形タイプの粘着剤組成物を粘着剤層として設けたことを特徴とする粘着シートからなる防水気密用粘着シート。
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