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JP4996236B2 - スチレン系樹脂押出発泡体 - Google Patents

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Description

本発明は、スチレン系樹脂押出発泡体に関し、特に良好な断熱性を有し、環境性能に優れたスチレン系樹脂押出発泡体に関する。
スチレン系樹脂押出発泡体は、良好な施工性や断熱特性から、例えば構造物の断熱材として用いられている。スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法として、押出発泡成形が公知である。この押出発泡成形は、押出機などを用いてスチレン系樹脂組成物を加熱溶融し、次いで発泡剤を添加して所定の樹脂温度に冷却し、これを低圧領域に押し出すことによりスチレン系樹脂押出発泡体を連続的に製造する。
前述された押出発泡成形に用いられる発泡剤として、フロン類や炭化水素が公知である。フロン類として、例えば、クロロフルオロカーボン(以下、「CFC」とも称される。)があげられる。CFCは、熱伝導率が低く、押出発泡体に残存しやすい性質を有する。したがって、CFCを用いた押出発泡体は優れた断熱性能を発揮する。
しかし、CFCがオゾン層を破壊する原因物質であることから、CFCに代替する発泡剤の使用が試みられている。CFCの代替品として、例えば、ハイドロクロロフルオロカーボン(以下、「HCFC」とも称される。)やハイドロフルオロカーボン(以下、「HFC」とも称される。)が提案されている。しかしながら、HCFCやHFCはオゾン層への影響は少ない一方、地球温暖化への影響は依然として大きい。したがって、HCFCやHFCの使用量も削減することが望まれている。
特許文献1には、イソブタン及びノルマルブタンを組み合わせた発泡剤が開示されている。イソブタン及びノルマルブタンは、スチレン系樹脂に対して透過性が小さく、オゾン破壊係数がゼロである。したがって、これらを発泡剤とするスチレン系樹脂押出発泡体は環境適合性に優れている。
特許文献2には、発泡剤に水を用いて、添加剤の種類や押出発泡成形の条件などを調整することにより、小気泡と大気泡とが海島状に混在する気泡構造を有する押出発泡体を得ることが開示されている。これにより、発泡剤として炭化水素を使用しても、断熱性に優れ、軽量であり、押出発泡成形性が良好な押出発泡体が得られる。
特許文献3には、小気泡と大気泡とが海島状に混在する気泡構造を有する押出発泡体において、厚み方向の気泡径が0.10mm以下の小気泡と、厚み方向の気泡径が0.15mm以上0.30mm未満の大気泡とから構成され、押出発泡体の切断面において、小気泡及び大気泡の示す総面積の比率が85%以上であり、かつ、小気泡及び大気泡の占める総面積に対する小気泡の占める総面積の比率が30〜80%であり、押出発泡体に1.5重量%以上3.0重量%未満のブタン量が含まれることにより、さらに断熱性が向上されることが開示されている。
特許文献4及び特許文献5には、小気泡と大気泡とが分布したマルチモーダルの押出発泡体、又は2種類以上のセルサイズを有する押出発泡体が開示されている。
特開平1−174540号公報 特開2001−200087号公報 特開2004−175862号公報 特表2004−512406号公報 特表2005−514506号公報
特許文献1に発泡剤として開示されているイソブタン及びノルマルブタンは、CFCやHCFCと比較して熱伝導率が高い。したがって、発泡剤としてCFCやHCFCを用いた押出発泡体と比較すると、断熱性に劣るという問題があった。
特許文献2に開示される気泡構造により押出発泡体の断熱性が向上されるが、押出発泡体の用途などを考慮すると、さらなる断熱性の向上が望まれる。
特許文献3では、0.10mm超0.15未満の気泡、及び0.30mm以上の気泡は、面積比率で切断面の15%未満となり、気泡径の範囲が狭くかつ面積比が大きい。これにより、押出発泡体の成形性や機械物性などとのバランスがとり難く、また、前述された数値範囲を満たす押出発泡体を安定的に製造することが難しい傾向にあった。さらには、気泡径の分布について詳細な規定がなく、どの程度の気泡径を有する気泡が、どの程度の割合で分布することにより、押出発泡体の断熱性能が良好となるかについて不明であった。
特許文献4では、確定された大気泡と小気泡を含有するマルチモーダル気泡サイズ分布を有する旨が記載されているのみであり、好ましい数値範囲については開示がない。例えば、実施例の図2に示されている気泡径分布図では、0.00〜0.15mm(横軸)における気泡径の分布が示されているが、この範囲は狭くかつ小さいため、軽量かつ断熱性に優れた押出発泡体を得ることは難しいと予想される。
特許文献5では、セルサイズが0.2〜2mmの第1セルと、0.2mm未満の第2セルとが多数のセルに含まれることが開示されているほかは、すべてのセルがどのようなセルサイズに分布しているかが開示されておらず、好ましいセル分布は不明である。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、断熱性及び環境適合性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述された課題を解決するために鋭意研究した結果、スチレン系樹脂押出発泡体が特定の気泡径分布を有することにより、優れた断熱性及び環境適合性が発現されることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1) 本発明は、スチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られるスチレン系樹脂押出発泡体であって、上記スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面における所定範囲をサンプリングし、得られたサンプル断面における各気泡の気泡径及び面積を求め、横軸を0.00mmから最大気泡径まで0.02mm毎の区間に区分された気泡径とし、縦軸を下記式(1)で求められる区間毎の面積比とした気泡径分布図において、以下の条件(a)条件(b)、及び条件(d)を満たし、独立気泡率が80%以上である
式(1):区間毎の面積比=区間に属する気泡径を有する気泡の面積の和/全気泡の面積の和
条件(a):気泡径の全区間における面積比が複数のピークをなす。
条件(b):上記複数のピークのうち、気泡径が0.00mm以上0.02mm未満の第1区間から、最も気泡径が小さい区間に存在する第1ピークと該第1ピークに最も近接する第2ピークとの間に存在する最も低い面積比を有する第2区間までに含まれる各区間の面積比の総和が、0.55〜0.95である。
条件(d):上記スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面における所定範囲をサンプリングし、得られた各サンプル断面における気泡の平均気泡径を求め、下記式(2)で求められる気泡異方化率が0.5〜1.5である。
式(2):気泡異方化率=厚み方向の平均気泡径/押出方向の平均気泡径
(2) 上記スチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(c)を満たすものであってもよい。
条件(c):上記第2区間より気泡径が大きい各区間に存在する気泡の平均気泡径が0.26mm以上である。
(3) 上記スチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(e)を満たすものであってもよい。
条件(e):上記複数のピークが、気泡径が0.00mm以上0.20mm未満の区間に存在する少なくとも1つのピークと、気泡径が0.20mm以上0.42mm未満の区間に存在する少なくとも1つのピークを含む。
(4) 上記スチレン系樹脂組成物は、発泡剤として少なくとも非ハロゲン系発泡剤を含むものが好適である。
(5) 上記非ハロゲン系発泡剤として、少なくとも水を含むものがあげられる。
(6) 上記非ハロゲン発泡剤として、更に、炭素数が3〜5の飽和炭化水素を含むものがあげられる。
(7) 上記飽和炭化水素として、更に、プロパン、n(ノルマル)−ブタン、i(イソ)−ブタンよりなる群から選ばれる少なくとも1つを含むものがあげられる。
(8) 上記非ハロゲン発泡剤として、更に、エーテルを含むものがあげられる。
(9) JIS A9511に規定される方法に従って測定された上記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が、0.025W/mK以下であることが好ましい。
(10) JIS A9511に規定される方法に準じて平均温度0℃で測定された上記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が、0.023W/mK以下であることが好ましい。
(11) 上記スチレン系樹脂押出発泡体の押出発泡体密度が25〜65kg/mであることが好ましい。
(12) 上記スチレン系樹脂押出発泡体の厚みが10〜150mmであることが好ましい。
(13) 上記スチレン系樹脂押出発泡体は、表面にスキン層を有するものが好ましい。
(14) 上記条件(b)において、上記第1区間から、上記第2区間までに含まれる各区間の面積比の総和が、0.76〜0.86であってもよい。
このように本発明によれば、前述された条件(a)及び条件(b)を満たす気泡径分布を有するので、断熱性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体が得られることができる。このようなスチレン系樹脂押出発泡体は、建築材料として、並びに保冷庫又は保冷車用の断熱材として特に有用である。また、非ハロゲン系発泡剤が用いられることにより、スチレン系樹脂押出発泡体の環境適応性が優れる。
本発明に用いられるスチレン系樹脂は、特に限定されない。スチレン系樹脂として、例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレンなどのスチレン系単量体(モノマー)の単独重合体または2種以上の単量体の組み合わせからなる共重合体や、このスチレン系単量体とジビニルベンゼン、ブタジエン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの単量体の1種または2種以上とを共重合させた共重合体などがあげられる。スチレン系単量体と共重合させるこれらの単量体は、スチレン系樹脂押出発泡体において圧縮強度などの物性を低下させない量が用いられる。なお、本発明に用いられるスチレン系樹脂は、前述されたスチレン系単量体の単独重合体または共重合体に限定されない。その他のスチレン系樹脂として、例えば、前述されたスチレン系単量体の単独重合体または共重合体と、前述された他の単量体の単独重合体または共重合体との混合物を用いることができ、さらにジエン系ゴム強化ポリスチレンやアクリル系ゴム強化ポリスチレンが混合されてもよい。また、本発明に用いられるスチレン系樹脂は、分岐構造を有するスチレン系樹脂であってもよい。分岐構造を有するスチレン系樹脂は、メルトフローレート(以下、「MFR」とも称される。)、成形加工時の溶融粘度、溶融張力などを調整する目的で用いられる。
本発明に用いられるスチレン系樹脂は、MFRが0.1〜50g/10分であることが好ましい。これにより、押出発泡成形を行う際の成形加工性が優れ、成形加工時の吐出量、得られた押出発泡体の厚みや幅、密度、独立気泡率の調整が容易であり、外観が良好な押出発泡体が得られる。また、押出発泡体の圧縮強度、曲げ強度、曲げたわみ量などの機械的強度や、靱性などの押出発泡体の物理的な特性のバランスが良好となる。この効果をさらに高めるには、スチレン系樹脂のMFRは、0.3〜30g/10分であることがさらに好ましく、0.5〜20g/10分であることが特に好ましい。なお、本発明において、MFRは、JIS K7210(1999年)のA法、試験条件Hにより測定される。
本発明において、経済性及び加工性の観点から、前述されたスチレン系樹脂のうちポリスチレン樹脂が特に好適である。また、押出発泡体により高い耐熱性が要求される場合には、スチレン系樹脂として、スチレン‐アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレンを用いることが好ましい。また、押出発泡体により高い耐衝撃性が求められる場合には、スチレン系樹脂として、ゴム強化ポリスチレンを用いることが好ましい。これらスチレン系樹脂は、単独で使用してもよく、共重合成分、分子量や分子量分布、分岐構造、MFRなどの異なるスチレン系樹脂を2種以上混合して使用してもよい。
本発明に用いられる発泡剤は、環境適合性の観点から非ハロゲン物質であることが好適である。具体的には、(イ)炭素数3〜5の飽和炭化水素から選ばれた1種以上の飽和炭化水素と、(ロ)ジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびメチルエチルエーテルから選ばれる化合物と(ハ)その他の非ハロゲン発泡剤とを含有してなるものが発泡剤として使用される。このような非ハロゲン系発泡剤が用いられることにより、押出発泡体又はその製造方法の環境適合性が向上される。また、上記(イ)、(ロ)、(ハ)の各発泡剤が組み合わされて用いられることにより、得られた押出発泡体の厚み、幅、密度、独立気泡率、熱伝導率、気泡径、表面性を所望の値に調整しやすくなる。つまり、押出発泡体の成形性が優れる。
炭素数3〜5の飽和炭化水素として、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタンなどがあげられる。これらのうち、発泡性が良好であることから、プロパン、n−ブタン、i−ブタンよりなる群から選ばれる1種以上のものが好ましい。また、押出発泡体の断熱性が良好となることから、n−ブタン、i−ブタンから選ばれる1種以上のものが好ましく、特に好ましくはi−ブタンである。
発泡剤としての炭素数3〜5の飽和炭化水素は、発泡剤全量100重量部 に対して、100〜20重量部とすることが好ましく、より好ましくは80〜30重量部、特に好ましくは60〜40重量部である。上記飽和炭化水素の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と難燃性とを併有させることができる。また、可塑性が適度な範囲となって、押出機内におけるスチレン系樹脂と発泡剤との混練が均一となり、押出機の圧力制御が容易となる。
発泡剤としてのジメチルエーテル、ジエチルエーテルおよびメチルエチルエーテルから選ばれる化合物は、発泡剤全量100重量部に対して、0〜80重量部とすることが好ましく、より好ましくは20〜70重量部、特に好ましくは40〜60重量部である。上記化合物の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と難燃性、成形性を併有させることができる。また、上記化合物と同様に発泡剤として用いられるその他のエーテルとして、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどがあげられる。
その他の非ハロゲン発泡剤としては、水、二酸化炭素、アルコールよりなる群から選ばれるものがあげられる。これらが、発泡剤として用いられることにより、(イ)炭素数3〜5の飽和炭化水素および(ロ)ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルから選ばれる化合物の使用量、すなわち可燃性の発泡剤の使用が減じられ、得られた発泡剤の難燃性が向上される。
その他の非ハロゲン発泡剤としては、水を、発泡剤全量100重量部に対して0〜80重量部とすることが好ましく、より好ましくは3〜70重量部、特に好ましくは3〜30重量部、最も好ましくは5〜20重量部である。水の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体に高い断熱性と成形性とを併有させ、その表面を好とすることができる。発泡剤として水が用いられることにより、発泡剤の種類、組成、使用量、後述される気泡径分布図において複数のピークをもつ気泡構造が得られる。これにより、単一のピークをもつ気泡構造と比較して断熱性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体を得ることができる。
その他の非ハロゲン系発泡剤として水が用いられる場合には、安定して押出発泡成形を行うために、吸水性物質が添加されことが好ましい。吸水性物質とは、それ自体が水を吸水するもの、吸収するもの、吸着するもの、水によって膨潤するもの、又は水と反応し水和物を形成する化合物をいう。吸水性物質は、スチレン系樹脂に対して相溶性の低い水を吸収、吸着、あるいは反応してゲルを形成し、ゲルの状態でスチレン系樹脂中に均一に分散するので、押出発泡体に気孔やボイドが生ずることなく、安定した押出発泡成形が実現されると考えられる。
その他の非ハロゲン系発泡剤として二酸化炭素が用いられる場合には、発泡剤全量100重量部に対して3〜40重量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜30重量部である。二酸化炭素の含有量を上記範囲とすることにより、押出発泡体の断熱性及び成形性が良好となるので好ましい。
炭素数3〜5の飽和炭化水素の量が前記範囲より少なければ、得られた押出発泡体の断熱性が劣るおそれがある。炭素数3〜5の飽和炭化水素以外の他の非ハロゲン系発泡剤の量が前記範囲を超えると、可塑性が高くなりすぎて、押出機内のスチレン系樹脂と発泡剤との混練状態が不均一となり、押出機の圧力制御が難しくなる傾向にある。
本発明においては、更に他の発泡剤が用いられてもよい。他の発泡剤としては、具体的には、蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールに例示されるアルコール類、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンに例示されるケトン類、塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどの有機発泡剤、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの無機発泡剤、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤があげられる。
スチレン系樹脂押出発泡体における他の発泡剤の添加量は、断熱性、発泡成形性、発泡体密度を考慮して適宜決めればよいが、スチレン系樹脂組成物100重量部に対して0〜4重量部が好ましく、より好ましくは0〜3重量部である。
スチレン系樹脂に対する発泡剤の全量は、スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、4.5〜10重量部とすることが好ましい。なお、スチレン系樹脂押出発泡体に含まれる発泡剤の含有量は、得られたスチレン系樹脂押出発泡体から、全ての表面を2mm以上切除した試験片を密閉容器中で加熱して、抽出される気体、又はスチレン系樹脂の種類によっては溶剤に溶解して抽出される気体を試料として、ガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
本発明に用いられる吸水性物質の具体例としては、表面にシラノール基を有する無水シリカ(酸化ケイ素)(例えば日本アエロジル(株)製AEROSILなどが市販されている。)などのように表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性あるいは水膨潤性の層状珪酸塩あるいはこれらの有機化処理品、ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカゲル、多孔質ガラス、活性白土、けい藻土などの多孔性物質、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸アンモニウム、などの硫酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、などのリン酸塩、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、乳酸カルシウム、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸カリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化バリウムなどの金属塩、酸化ホウ素、ホウ酸ナトリウムなどのホウ素化合物、ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール−アクリル酸塩系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ポリアクリロニトリル−メタクリル酸メチル−ブタジエン系共重合体、ポリエチレンオキサイド系共重合体およびこれらの誘導体などの吸水性高分子などがあげられる。吸水性物質は単独で使用してもよく、あるいは、2種以上の吸水性物質を併用することもできる。
前述された吸水性物質のうち、無水シリカ、ポリアクリル酸塩系重合体、スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性あるいは水膨潤性の層状珪酸塩、硫酸金属塩、炭酸金属塩、リン酸金属塩などの金属塩、ゼオライトなどの多孔性物質が、押出発泡成形時の安定性、気孔やボイドなどの発生を抑制し、小気泡と大気泡とが混在した海島構造を有する特徴的な気泡構造を形成させて、押出発泡体に所望の断熱性能を発現させるので好ましい。
本発明で用いられる吸水性物質の量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部とすることが好ましい。さらに好ましくは、0.1〜8重量部、特に好ましくは0.2〜7重量部である。吸水性物質の量が上記範囲とされることにより、押出機内における水の分散が良好となり、押出発泡成形が安定され、気孔やボイドなどの発生が抑制されるという利点がある。また、後述される特徴的な気泡径分布を有する気泡構造が形成され、所望の断熱性能が発現され、その品質が安定するという利点がある。
上記層状珪酸塩とは、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートとからなる。四面体シートと八面体シートとは単位層を形成する。各単位層は、単独であるいは単位層間に陽イオンなどが介在されて、複数層に積層される。この複数層が一次粒子、あるいは一次粒子の凝集体である二次粒子を形成して存在する。層状珪酸塩の例として、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などがあげられる。
スメクタイト族粘土は、化学式(1):X0.2〜0.62〜3410(OH)2・nH2O(式中、Xは、K、Na、1/2Caおよび1/2Mgよりなる群から選ばれる1種以上であり、Yは、Mg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、AlおよびCrよりなる群から選ばれる1種以上であり、Zは、SiおよびAlよりなる群から選ばれる1種以上である。なお、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表わし、n=0.5〜10程度であるが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動するため、この範囲に限定されない。)で表わされる天然または合成されたものである。スメクタイト族粘土の具体例として、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトおよびベントナイトなどのほか、これらの置換体、誘導体、またはこれらの混合物があげられる。
上記膨潤性雲母は、化学式(2):X0.5〜1.02〜3(Z410)(F、OH)2 (式中、Xは、Li、Na、K、Rb、Ca、BaおよびSrよりなる群から選ばれる1種以上であり、Yは、Mg、Fe、Ni、Mn、AlおよびLiよりなる群から選ばれる1種以上であり、Zは、Si、Ge、Al、FeおよびBよりなる群から選ばれる1種以上である)で表わされる天然または合成されたものである。これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、または水と極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する。膨潤性雲母の具体例として、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、およびナトリウム型四ケイ素雲母などのほか、これらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物があげられる。
膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、このようなバーミキュライト類相当品なども使用し得る。バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、化学式(3):(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4-xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+ 1/2x・nH2O(式中、MはNaおよびMgなどのアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表わされるものがあげられる。
層状珪酸塩は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前述された層状珪酸塩のうち、得られる押出発泡体中の分散性、水を用いた場合における押出発泡成形安定性の点などから、スメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく、さらに好ましくは、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイトなどのスメクタイト族粘土、膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母である。
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどがあげられる。また、有機化ベントナイトなども使用できる。ヘクトライトの代表例としては、合成ヘクトライトがあげられる。スメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物が含まれる。
層状珪酸塩の含有量は、水の添加量などによって適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部とすることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜7重量部である。層状珪酸塩の含有量が上記範囲にされることにより、水の添加量に対して層状珪酸塩の水の吸収量又は吸着量が十分に上回って水の分散性が良好となるので、押出発泡成形が安定され、気孔やボイドなどの発生が抑制されるという利点がある。また、過剰の層状珪酸塩による気泡むらが生じず、独立気泡が良好に形成されるという利点がある。また、後述される特徴的な気泡径分布を有する気泡構造が形成され、所望の断熱性能が発現されるという利点がある。水と層状珪酸塩の混合比率(重量比)は、好ましくは0.02〜20の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.15〜5、最も好ましくは0.25〜2の範囲である。
本発明において、例えば建築用断熱材のようなスチレン系樹脂押出発泡体の用途における要求に応えるために、スチレン系樹脂に難燃剤が添加されてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン酸エステル系化合物、窒素含有化合物などがあげられる。
ハロゲン難燃剤としては、具体的には、例えば、(a)テトラブロモエタン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ジブロモエチルジブロモシクロヘキサン、ジブロモジメチルヘキサン、2−(ブロモメチル)−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、ジブロモネオペンチルグリコール、トリブロモネオペンチルアルコール、ペンタエリスリチルテトラブロミド、モノブロモジペンタエリスリトール、ジブロモジペンタエリスリトール、トリブロモジペンタエリスリトール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモジペンタエリスリトール、ヘキサブロモトリペンタエリスリトール、ポリブロム化ポリペンタエリスリトール、などの臭素化脂肪族化合物あるいはその誘導体、あるいは臭素化脂環式化合物あるいはその誘導体、(b)ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ビス(2,4,6ートリブロモフェノキシ)エタン、テトラブロモ無水フタル酸、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ペンタブロモベンジルアクリレート、トリブロモフェニルアリルエーテル、2,3−ジブロモプロピルペンタブロモフェニルエーテルなどの臭素化芳香族化合物あるいはその誘導体、(c)テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAジアリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジメタリルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルのトリブロモフェノール付加物、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2−ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモ−2−メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールSビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、などの臭素化ビスフェノール類およびその誘導体、(d)テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルとブロモ化ビスフェノール付加物エポキシオリゴマーなどの臭素化ビスフェノール類誘導体オリゴマー、(e)ペンタブロモベンジルアクリレートポリマーなどの臭素化アクリル樹脂、(f)エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、2,4,6−トリス(2,4,6−トリブロモフェノキシ)1,3,5−トリアジン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートなどの臭素および窒素原子含有化合物、(g)トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、トリス(ブロモフェニル)ホスフェートなどの臭素および燐原子含有化合物、(h)塩素化パラフィン、塩素化ナフタレン、パークロロペンタデカン、塩素化芳香族化合物、塩素化脂環式化合物、などの塩素含有化合物、(i)臭化アンモニウムなどの臭素化無機化合物、などが挙げられる。これらの化合物は単独または2種以上を混合して使用できる。さらには、本発明におけるスチレン系樹脂の1種である臭素化ポリスチレン樹脂も、難燃剤として用いることができる。
これらの中でも、難燃性の観点から、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートのいずれかを含むことが好ましい。
ハロゲン系難燃剤のスチレン系樹脂発泡体中における含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対し、0.1〜20重量部が好ましい。但し、JIS A9511測定方法Aに規定される難燃性が得られるように、発泡剤添加量、発泡体密度、難燃相乗効果を有する添加剤などの種類あるいは添加量などにあわせて適宜調整されることがより好ましい。具体的には、ハロゲン系難燃剤のスチレン系樹脂発泡体中における含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜8重量部である。ハロゲン系難燃剤の含有量を上記範囲内とすることにより、目的とする難燃性などの良好な諸特性が得られる。また、押出発泡体の耐熱性や表面性、押出発泡体製造時の安定性が良好となる。
本発明において、スチレン系樹脂発泡体の難燃性を向上させる目的で、上述したハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤を添加してもよい。このようなハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤としては、含鉄化合物、含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物などが挙げられる。具体的には、酸化鉄や含燐化合物、含窒素化合物、含ホウ素化合物、含硫黄化合物(芳香族スルホン酸系化合物)などが使用できる。これらの中でも難燃性の観点から、含鉄化合物として酸化鉄、含燐化合物としてトリフェニルホスフェートやトリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、含窒素化合物としてシアヌル酸やイソシアヌル酸およびこれらの誘導体、含ホウ素化合物として酸化ホウ素、含硫黄化合物としてスルファニル酸およびこの誘導体が好ましい。なお、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体としては、例えば特開2002−30174号公報([0069]段落〜[0079]段落)記載のものが使用できる。このようなハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤のスチレン系樹脂発泡体中における含有量は、ハロゲン難燃剤と相乗効果を示す難燃助剤の種類にもよるが、スチレン系樹脂100重量部に対し、0.0001〜10重量部であることが好ましい。
本発明においては、さらに、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で種々のシリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有されてもよい。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、気泡径が小さい気泡(以下、「小気泡」とも称せられる。)と、大きな気泡(以下、「大気泡」とも称せられる。)とが海島状に混在する特徴的な気泡構造を有する。仮に、ほぼ均一な径の気泡のみからなる押出発泡体では、気泡径を小さくすることにより断熱性能が向上される一方、気泡径が小さくなると押出発泡体の厚みを増すには多くの樹脂が必要となる。その結果、押出発泡体の密度が高くなるうえ、押出時の圧力が高くなる、吐出量が少なくなるなど、押出発泡体の成形性が低下するという弊害が生ずる。これに対し、小気泡と大気泡とが海島状に混在する気泡構造によれば、小気泡により断熱性能が向上され、大気泡により押出発泡体の厚みを増すことが容易となり、断熱性が高く、かつ低密度の押出発泡体が得られる。
前述された大気泡と小気泡とが混在する気泡構造は、具体的には、以下に示される気泡径分布図により特定される。この気泡径分布図は、スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面における所定範囲をサンプリングし、得られたサンプル断面における各気泡の気泡径及び面積を求め、横軸を0.00mmから最大気泡径まで0.02mm毎の区間に区分された気泡径とし、縦軸を下記式(1)で求められる区間毎の面積比としたものである。
式(1):区間毎の面積比=区間に属する気泡径を有する気泡の面積の和/全気泡の面積の和
以下に、気泡径分布図の詳細な作成方法が説明される。スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面の所定範囲がサンプリングされる。押出方向に沿った断面とは、スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向であって厚み方向に拡がる断面である。この断面の所定範囲がサンプリングされる。サンプリングされる位置は、特殊な気泡構造となるスチレン系樹脂押出発泡体の表裏面付近を除けば、断面の何処がサンプリングされてもよいが、各断面の幅中央の位置において、厚さの中心およびその中心に対して上下対称となる各位置の3点程度がサンプリングされることが好ましい。
サンプリングされた各試料が走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影されて、SEM画像が得られる。SEM画像の撮影倍率は30〜40倍程度とする。撮影範囲は、例えば、縦×横が数mm〜数cm程度とする。各SEM画像が、厚み方向を縦方向、押出方向を横方向として、画像処理装置(例えば、(株)ピアス製、PIAS−II型)により処理されて、SEM画像中の個々の気泡の面積(以下、「気泡面積」と称される。)(a)が求められる。また、同様にして、各気泡の縦方向(厚み方向:Zf)および横方向(押出方向:Xf)の最大径(Feret径)が求められる。なお、気泡面積および最大径の測定は、SEM画像中に気泡の全景が映し出された気泡のみが対象とされ、SEM画像の端部で気泡の一部が欠落しているものや、SEM画像の端部ではなくとも気泡壁の一部が欠落したり、隣の気泡等と一体化している気泡は除かれる。この除外した部分は測定全面積からも除外される。測定対象となる気泡は、少なくとも200個以上であることが好ましい。従って、1つのSEM画像において200個以上の気泡が測定できる場合もあるが、そうでない場合は、2つ以上のSEM画像が用いられてもよい。
SEM画像中の各気泡を楕円形と仮定して、次の式(3)および式(4)に従って、各気泡の押出方向気泡径(X)、厚み方向気泡径(Z)が求められる。
式(3):X=[{(4×a)/(π×Xf×Zf)}1/2]×Xf
式(4):Z=[{(4×a)/(π×Xf×Zf)}1/2]×Zf
求められた各気泡の厚み方向の気泡径Z、押出方向又は幅方向の気泡径Xが式(5)に従って相乗平均されることにより、各気泡の代表気泡径Dが求められる。
式(5):D=(X×Z)1/2
ゼロから最大気泡径までの範囲において、横軸を0.02mm毎に区間分けした代表気泡径Dとし、縦軸を上記式(1)で表される区間毎の面積比とした図が、本発明における気泡径分布図である。気泡径分布図における代表気泡径Dの区分けは、例えば、最も小さい区間は代表気泡径Dがゼロ以上0.02mm未満となる。なお、本明細書において、単に「気泡径」と記載している場合は、特に断りがない限り上記代表気泡径Dを示すものとする。また、気泡径分布図の横軸、つまり代表気泡径Dの個々の区間の範囲は、その区間の最小の代表気泡径Dを含み、最小の代表気泡径Dから0.02mm大きい気泡径は含まないものとする。すなわち区間に属する気泡径は、区間の最小気泡径以上で区間の最小気泡径+0.02mm未満である。
上記気泡径分布図において、気泡径がゼロから0.02mm未満の区間から、その区間における面積比を隣接する区間の面積比とが比較され、ある区間における面積比が、前後に隣接する2つの区間(気泡径が0.02mm小さい区間および0.02mm大きい区間)における面積比より大きい値を持つ場合に本発明においてピークが認定され、その区間の面積比がピーク面積比と称され、その区間がピーク区間と称される。前後に隣接する2つの区間のいずれか一方、あるいは両方における面積比が等しい場合には、等しい側の区間のさらに隣の区間の面積比が比較され、その面積比より大きい場合にはこの複数の区間を合わせてピーク区間とされる。隣接するいずれか一方又は、両方の区間における面積比の方が大きい場合はピークと判断されない。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、この気泡径分布図において、少なくとも以下の条件(a)及び条件(b)を満たす。
条件(a):気泡径の全区間における面積比が複数のピークをなす。
条件(b):上記複数のピークのうち、気泡径が0.00mm以上0.02mm未満の第1区間から、最も気泡径が小さい区間に存在する第1ピークと該第1ピークに最も近接する第2ピークとの間に存在する最も低い面積比を有する第2区間までに含まれる各区間の面積比の総和が、0.55〜0.95である。
条件(b)において、気泡径分布図における気泡径が0.00mm以上0.02mm未満の区間が、本発明において第1区間と称せられる。また、気泡径の全区間における面積比による複数のピークのうち、その他のいずれのピークより気泡径が小さい区間に存在するピークが、本発明において第1ピークと称せられる。第1ピークより気泡径が大きい区間にあり、かつ第1ピークと最も近接するピークが、本発明において第2ピークと称せられる。この第1ピークと第2ピークとの間に存在する面積比が最も低い区間が、本発明において第2区間と称される。第1区間から第2区間までに存在する気泡は、前述された小気泡である。以下、本明細書において単に「小気泡」と称される場合は、第1区間から第2区間までに存在する気泡をいうものとする。また、第2区間より気泡径が大きい区間に存在する気泡は、前述された大気泡である。以下、本明細書において単に「大気泡」と称される場合は、第2区間より気泡径が大きい区間に存在する気泡をいうものとする。
スチレン系樹脂押出発泡体が条件(a)を満たすことにより、つまり、気泡径の全区間における面積比が複数のピークをなすことにより、前述されたように、スチレン系樹脂押出発泡体が複数の気泡径からなる構造を有することになる。さらに、スチレン系樹脂押出発泡体が条件(b)を満たすことにより、その複数の径からなる気泡構造が、特定比率の小気泡と特定比率の大気泡とから構成されることとなり、押出発泡体の断熱性が向上されるとともに、押出発泡体の厚みを増すことが容易となる。スチレン系樹脂押出発泡体における第1区間から第2区間までの面積比の総和は、より好ましくは0.55〜0.90であり、特に好ましくは0.60〜0.85である。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(c)を満たすことが好ましい。
条件(c):上記第2区間より気泡径が大きい各区間に存在する気泡の平均気泡径が0.26mm以上である。
本発明において大気泡径の平均気泡径とは、大気泡の各気泡の代表気泡径Dを相加平均した値である。大気泡の平均気泡径が上記範囲とされることにより、押出発泡体の厚みを増すことが容易となる。この大気泡の平均気泡径は、より好ましくは0.27mm以上であり、特に好ましくは0.28mm以上である。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(d)を満たすことが好ましい。
条件(d):上記スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面における所定範囲をサンプリングし、得られたサンプル断面における気泡の平均気泡径を求め、下記式(2)で求められる気泡異方化率が0.5〜1.5である。
式(2):気泡異方化率=厚み方向の平均気泡径/押出方向の平均気泡径
本発明において、平均気泡径とは、各気泡の厚み方向気泡径Z、押出方向の気泡径Xを相加平均した値である。気泡異方化率が上記範囲とされることにより、押出発泡体の平面圧縮強度を低下させずに断熱性が向上される。この気泡異方化率は、より好ましくは0.6〜1.3であり、特に好ましくは0.7〜1.2である。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、更に、以下の条件(e)を満たすことが好ましい。
条件(e):上記複数のピークが、気泡径が0.00mm以上0.20mm未満の区間に存在する少なくとも1つのピークと、気泡径が0.20mm以上0.42mm未満の区間に存在する少なくとも1つのピークを含む。
複合セル構造のピークが上記範囲に存在することにより、押出発泡体の断熱性能と機械特性との双方がバランスよく向上される。複数のピークは、より好ましくは、気泡径が0.02mm以上0.16mm未満の区間に存在する少なくとも1つのピークと、気泡径が0.20mm以上0.38mm未満の区間に存在する少なくとも1つのピークとを含むものである。
本スチレン系樹脂押出発泡体は、スチレン系樹脂を溶融混練手段に供給するとともに、核剤を含む添加剤及び発泡剤を溶融混練手段に供給してスチレン系樹脂と混練することによりスチレン系樹脂組成物とし、このスチレン系樹脂組成物を高圧領域からダイリップを通して低圧領域に押出発泡することにより得られる。
スチレン系樹脂押出発泡体の気泡径分布を調整する手法としては、発泡剤に水を用い、他の発泡剤の種類及び使用量、吸水性物質の種類及び使用量、押出発泡の成形条件などにより調整できる。このような成形条件として、例えば、溶融されたスチレン系樹脂組成物を大気中へ吐出する際の厚み拡大率の調整、つまり、ダイリップのスリットの厚みの調整と成形金型の高さの調整があげられる。また、成形抵抗を調整する手法があげられる。
スチレン系樹脂に各種添加剤を添加する手順として、例えば、スチレン系樹脂に対して各種添加剤を添加して混合した後、押出気に供給して加熱溶融し、更に発泡剤を添加して混合する手順があげられるが、各種添加剤をスチレン系樹脂に添加するタイミングや混練時間は特に限定されない。
スチレン系樹脂の加熱温度は、使用されるスチレン系樹脂が溶融する温度以上であればよいが、添加剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜260℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間当たりのスチレン系樹脂の押出量や溶融混練手段として用いる押出機の種類により異なるので一義的に規定することはできず、スチレン系樹脂と発泡剤や添加剤とが均一に分散混合されるに要する時間として適宜設定される。
溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などがあげられるが、通常の押出発泡に用いられるものであれば特に制限されない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるためには、押出機のスクリュー形状を低せん断タイプのものとすることが好ましい。
発泡成形方法は、例えば、押出整形用に使用される開口部が直線のスリット形状を有するスリットダイを通じて、高圧領域から低圧領域へ開放して得られた押出発泡体を、スリットダイと密着又は接して設置された成形金型、及びこの成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する方法が用いられる。成形金型の流動面形状の調整および金型温度の調整によって、押出発泡体に所望の断面形状、表面性、その他の品質が得られる。
気泡異方化率を制御する方法として、例えば、押出発泡時に溶融樹脂を大気中へ発泡させるときの厚み拡大率を調整する方法、すなわちスリット厚みと、矩形化させるための成形金型の高さを調整する方法があげられる。また、押出発泡体を加熱しながら延伸する方法があげられる。詳細には、押出発泡体を加熱空気で加温しながらロールにより延伸処理を行う加熱延伸装置を用いて、引き取り機の回転速度より速くロールを回転させて、得られた押出発泡体を加熱しながら延伸処理を施す。これにより、押出発泡体が押出方向に延伸され、気泡異方化率が小さくなる。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として使用されることを考慮すると、製造後7日目のJIS A9511に従って測定される熱伝導率が0.025W/mK以下であることが好ましい。また、JIS A9511に規定される熱伝導率の測定方法のうち、平均温度のみを0℃とし、その他を準じて測定される熱伝導率が0.023W/mK以下であることが好ましい。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として使用されるに適した断熱性及び軽量性を考慮すると、発泡体の密度が25〜65kg/mであることが好ましく、より好ましくは30〜55kg/mである。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体における厚みは、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として使用されるに適した断熱性、曲げ強度及び圧縮強度を考慮すると、10〜150mmであることが好ましく、より好ましくは15〜120mmであり、特に好ましくは20〜100mmである。
本発明に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば建築用断熱材や保冷庫用又は保冷車用の断熱材として使用されるに適した断熱性を考慮すると、表面にスキン層を有するものが好適である。
このようにして、本発明によれば、断熱性に優れたスチレン系樹脂押出発泡体が得られることができる。このようなスチレン系樹脂押出発泡体は、建築材料として、並びに保冷庫又は保冷車用の断熱材として特に有用である。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは勿論である。また、以下の実施例においては、特に断られない限り、「%」は「重量%」を表すものとする。
実施例1から実施例4、比較例1から比較例2について、以下の手法に従って、発泡体密度、独立気泡率、残存発泡剤量、熱伝導率、気泡径分布を評価した。
(1)発泡体密度(kg/m
スチレン系樹脂押出発泡体を約200mm(押出方向)×900mm(幅方向)×押出厚み(厚み方向)の直方体形状に切り出して重量を測定するとともに、ノギスを用いて、縦寸法、横寸法、高さ寸法を測定した。測定された重量及び各寸法から以下の式に基づいて発泡体密度を求め、単位をkg/mに換算した。
発泡体密度(g/cm)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm
(2)独立気泡率(%)
マルチピクノメーター(湯浅アイオニクス株式会社)を用いて、ASTM D−2856に準じて独立気泡率を測定した。
(3)残存発泡剤量(重量部)
製造後7日経過したスチレン系樹脂押出発泡体から、全ての表面を2mm以上切除し、約1gの試験片とした。この試験片を密閉容器に入れて、200℃、15分間加熱した。その後、密閉容器中の気体を採取して、ガスクロマトグラフィー(島津製作所株式会社、商品名:GC−14A )を用いて発泡剤の含有量を測定した。
(4)熱伝導率(W/mK)
製造後7日経過したスチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率を、JIS A9511に従って測定した。また、JIS A9511における平均温度を0℃として、その他の測定条件をJIS A9511に準じて熱伝導率を測定した。
(5)気泡径分布
スチレン系樹脂押出発泡体の気泡径分布図を、前述された手法に従って作成した。この気泡径分布図を用いて、ピーク数、ピーク位置、第1区間から第2区間までの面積比の総和(以下、「小気泡面積比」とも称される。)を前述された手法に従って求めた。
(6)気泡異方化率
スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面において、前述された手法でSEM画像を得た。得られたSEM画像における各気泡の厚み方向の気泡径Z、押出方向の気泡径Xを、式(3)及び式(4)に基づいて求め、これらから式(5)に基づいて平均気泡径を求めた。さらに、式(2)に基づいて気泡異方化率を求めた。
(実施例1)
ポリスチレン(PSジャパン株式会社、商品名:G9401、MFR=2.5g/10分)100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロムシクロドデカン(アルベマール・コーポレーション、商品名:SAYTEX HP−900)3.5重量部、タルク(林化成株式会社、商品名:タルカンパウダー)0.15重量部、ステアリン酸バリウム(堺化学工業株式会社、商品名:ステアリン酸バリウム)0.5重量部、ベントナイト(株式会社ホージュン、商品名:ベンゲル23)1重量部、トリフェニルホスフェート(大八化学工業株式会社、商品名:TPP)1重量部、エポキシ樹脂(旭電化工業株式会社、商品名:EP−13)0.2重量部、リン酸3ナトリウム12水和物(太平洋化学株式会社、商品名:リン酸3ナトリウム(結晶))0.1重量部、含水非晶質二酸化ケイ素(DSLジャパン株式会社、商品名カープレックス)0.1重量部、安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社、商品名:IRGANOX B911(ヒンダードフェノール系坑酸化剤IRGANOX1076:オクタデシル−3−(3、5−ジ−t‐ブチル−フェニル)プロピオネートとリン系安定剤IRGAFOS1068:トリス(2、4−ジ−t‐ブチルフェニル)フォスファイトの1:1混合物)0.4重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とし、このスチレン系樹脂組成物を第1押出機と第2押出機とを直列に連結した2段式押出機へ750kg/時間で供給した。第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、約200℃に加熱して混練し、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、ポリスチレン樹脂100重量部に対して水(水道水)0.75重量部、i−ブタン(三井化学株式会社)4重量部、ジメチルエーテル(三井化学株式会社)1.5重量部を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。なお、使用した発泡剤の組成を発泡剤の全量に対する比率とすると、水12%、i−ブタン64% 、ジメチルエーテル24%となる。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は8〜20MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力を+0.5〜3MPaに設定した。第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を約120℃ に冷却し、第2押出機の先端に設けたダイリップより、スチレン系樹脂組成物を大気中へ押し出し、厚み約25〜35mm、幅約1000mmの直方体形状に押出発泡した。次いで、押し出された直方体形状の押出発泡体に対して、加熱延伸装置を用いて加熱延伸処理(ポストエキスパンション)を施して、スチレン系樹脂押出発泡体を得た。加熱延伸処理では、押出発泡体を90〜110℃に加熱し、ダイリップの下流側に設けられた成形ロールに対して、更に下流側に設けられた引き取りロールを0.5〜2.0m/分速く回転させた。
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の評価結果を表1に示す。また、スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面のSEM画像を図1に示す。更に、スチレン系樹脂押出発泡体の気泡径分布図を図2に示す。
図1に示されるSEM画像において、大径の気泡と小径の気泡とが海島状に形成されていることが確認された。また、図2に示されるように気泡径分布図において、4つのピークが確認されたので、条件(a)を満たす。また、表1に示されるように、小気泡面積比は0.81であり、0.55〜0.95の範囲内なので条件(b)を満たす。大気泡の平均径は0.28mmであり、0.26mm以上なので条件(c)を満たす。気泡異方化率は0.72であり、0.5〜1.5の範囲内なので条件(d)を満たす。確認された4つのピークのうち、気泡径が0.00mm以上0.20mm未満の区間に1つのピークが存在し、気泡径が0.20mm以上0.42mm未満の区間に3つのピークが存在するので、条件(e)を満たす。
なお、実施例1において、気泡径が0.06mm以上0.08mm未満の区間に存在するピークが本発明における第1ピークであり、気泡径が0.26mm以上0.28mm未満の区間に存在するピークが本発明における第2ピークである。また、気泡径が0mm以上0.02未満の区間が本発明における第1区間であり、気泡径が0.22mm以上0.24mm未満の区間が本発明における第2区間である。そして、第1区間から第2区間までに含まれる気泡が小気泡であり、第2区間より気泡径が大きい気泡が大気泡である。
表1に示されるように、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が39kg/mであり、JIS A9511に従って測定された熱伝導率が0.023W/mKであり、平均温度0℃で測定された熱伝導率が0.021W/mKであった。残存発泡剤量は、i−ブタンが3.0%、ジメチルエーテルが1.0%、空気が0.2%であった。独立気泡率は97%であった。
(実施例2)
ポリスチレン100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロムシクロドデカン4重量部、タルク0.2重量部、ステアリン酸バリウム0.5重量部、ベントナイト1重量部、トリス(トリブチルネオペンチル)ホスフェート(大八化学工業株式会社、商品名:CR−900)1重量部、エポキシ樹脂0.2重量部、含水非晶質二酸化ケイ素0.1重量部、安定剤0.2重量部、酸化チタン(堺化学工業株式会社、商品名:R−7E)3重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とし、このスチレン系樹脂組成物を2段式押出機へ900kg/時間で供給した。また、発泡剤として、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、水0.6重量部、i−ブタン4.5重量部、ジメチルエーテル2.5重量部を溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。その他を実施例1と同様にしてスチレン系樹脂押出発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において5つのピークが確認されたので、条件(a)を満たす。小気泡面積比は0.56であり、0.55〜0.95の範囲内なので条件(b)を満たす。大気泡の平均径は0.38mmであり、0.26mm以上なので条件(c)を満たす。気泡異方化率は0.58であり、0.5〜1.5の範囲内なので条件(d)を満たす。確認された5つのピークのうち、気泡径が0.00mm以上0.20mm未満の区間に1つのピークが存在し、気泡径が0.20mm以上0.42mm未満の区間に3つのピークが存在するので、条件(e)を満たす。
表1に示されるように、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が41kg/mであり、JIS A9511に従って測定された熱伝導率が0.024W/mKであり、平均温度0℃で測定された熱伝導率が0.022W/mKであった。残存発泡剤量は、i−ブタンが3.3%、ジメチルエーテルが0.8%、空気が0.2%であった。独立気泡率は90%であった。
(実施例3)
ポリスチレン100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロムシクロドデカン4重量部、タルク0.2重量部、ステアリン酸バリウム0.5重量部、ベントナイト1重量部、トリス(トリブチルネオペンチル)ホスフェート1重量部、エポキシ樹脂0.2重量部、含水非晶質二酸化ケイ素0.1重量部、安定剤0.2重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とし、このスチレン系樹脂組成物を2段式押出機へ800kg/時間で供給した。また、発泡剤として、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、水0.63重量部、i−ブタン4.5重量部、ジメチルエーテル2.5重量部を溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。その他を実施例1と同様にしてスチレン系樹脂押出発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において5つのピークが確認されたので、条件(a)を満たす。小気泡面積比は0.7であり、0.55〜0.95の範囲内なので条件(b)を満たす。大気泡の平均径は0.43mmであり、0.26mm以上なので条件(c)を満たす。気泡異方化率は0.95であり、0.5〜1.5の範囲内なので条件(d)を満たす。確認された5つのピークのうち、気泡径が0.00mm以上0.20mm未満の区間に1つのピークが存在し、気泡径が0.20mm以上0.42mm未満の区間に2つのピークが存在するので、条件(e)を満たす。
表1に示されるように、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が41kg/mであり、JIS A9511に従って測定された熱伝導率が0.024W/mKであり、平均温度0℃で測定された熱伝導率が0.022W/mKであった。残存発泡剤量は、i−ブタンが3.2%、ジメチルエーテルが0.8%、空気が0.1%であった。独立気泡率は92%であった。
(実施例4)
押出発泡後に加熱延伸処理(ポストエキスパンション)を行わなかったほかは、実施例1と同様にして、スチレン系樹脂押出発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、気泡径分布図において3つのピークが確認されたので、条件(a)を満たす。小気泡面積比は0.75であり、0.55〜0.95の範囲内なので条件(b)を満たす。大気泡の平均径は0.34mmであり、0.26mm以上なので条件(c)を満たす。気泡異方化率は1.35であり、0.5〜1.5の範囲内なので条件(d)を満たす。確認された3つのピークのうち、気泡径が0.00mm以上0.20mm未満の区間に1つのピークが存在し、気泡径が0.20mm以上0.42mm未満の区間に1つのピークが存在するので、条件(e)を満たす。
表1に示されるように、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が42kg/mであり、JIS A9511に従って測定された熱伝導率が0.024W/mKであり、平均温度0℃で測定された熱伝導率が0.022W/mKであった。残存発泡剤量は、i−ブタンが3.1%、ジメチルエーテルが0.9%、空気が0.2%であった。独立気泡率は98%であった。
(比較例1)
ポリスチレン100重量部に対して、ハロゲン系難燃剤としてヘキサブロムシクロドデカン3.5重量部、タルク0.15重量部、ステアリン酸バリウム0.5重量部、ベントナイト1重量部、トリフェニルホスフェート1重量部、エポキシ樹脂0.2重量部、含水非晶質二酸化ケイ素0.1重量部、安定剤0.2重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とし、このスチレン系樹脂組成物を2段式押出機へ900kg/時間で供給した。また、発泡剤として、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、水0.2重量部、i−ブタン4重量部、ジメチルエーテル1.5重量部を溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。その他を実施例1と同様にしてスチレン系樹脂押出発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、比較例1では、気泡径分布図において複数のピークを有しない単一気泡構造であり、その気泡は小気泡に相当する気泡であった。したがって、条件(a)を満たさない。また、小気泡面積比が1であるので、条件(b)を満たさず、大気泡が存在しないので、条件(c)を満たさない。また、複数のピークが存在しないので、条件(e)を満たさない。
表1に示されるように、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が34kg/mであり、JIS A9511に従って測定された熱伝導率が0.027W/mKであり、平均温度0℃で測定された熱伝導率が0.025W/mKであった。残存発泡剤量は、i−ブタンが3.3%、ジメチルエーテルが0.7%、空気が0.2%であった。独立気泡率は94%であった。
(比較例2)
ポリスチレン100重量部に対して、ヘキサブロムシクロドデカン4重量部、タルク1重量部、トリフェニルホスフェート0.75重量部、エポキシ樹脂0.3重量部、合成ヘクトライト(Rockwood社、商品名:Laponite)0.3重量部、アエロジル(日本アエロジル株式会社、商品名:AEROSIL)0.2重量部、安定剤0.4重量部、ステアリン酸カルシウム堺化学工業株式会社、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.2重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とし、このスチレン系樹脂組成物を2段式押出機へ900kg/時間で供給した。また、発泡剤として、ポリスチレン樹脂100重量部に対して、水0.4重量部、i−ブタン3.7重量部、ジメチルエーテル2重量部を溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。押し出された直方体形状の押出発泡体に対するポストエキスパンションは行わずに、その他を実施例1と同様にしてスチレン系樹脂押出発泡体を得た。
表1に示されるように、比較例2では、小気泡面積比が0.24であり、0.55〜0.95の範囲外であるので、条件(b)を満たさない。また、大気泡の平均径が0.22mmであり、0.26mm以上でないので、条件(c)を満たさない。
表1に示されるように、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の発泡体密度が35kg/mであり、JIS A9511に従って測定された熱伝導率が0.026W/mKであり、平均温度0℃で測定された熱伝導率が0.024W/mKであった。残存発泡剤量は、i−ブタンが3.0%、ジメチルエーテルが1.4%、空気が0.1%であった。独立気泡率は94%であった。
スチレン系樹脂押出発泡体が、例えば建築用断熱材として用いられる場合には、熱伝導率が0.025W/mK以下であることが好ましい。実施例1から実施例4では、このような断熱性能を満たし、比較例1及び比較例2では満たさないことが確認された。
図1は、実施例1における押出方向断面のSEM画像を示す図である。 図2は、実施例1における気泡径分布図である。

Claims (14)

  1. スチレン系樹脂組成物を押出発泡して得られるスチレン系樹脂押出発泡体であって、
    上記スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面における所定範囲をサンプリングし、得られたサンプル断面における各気泡の気泡径及び面積を求め、横軸を0.00mmから最大気泡径まで0.02mm毎の区間に区分された気泡径とし、縦軸を下記式(1)で求められる区間毎の面積比とした気泡径分布図において、以下の条件(a)条件(b)、及び条件(d)を満たし、独立気泡率が80%以上であるスチレン系樹脂押出発泡体。
    式(1):区間毎の面積比=区間に属する気泡径を有する気泡の面積の和/全気泡の面積の和
    条件(a):気泡径の全区間における面積比が複数のピークをなす。
    条件(b):上記複数のピークのうち、気泡径が0.00mm以上0.02mm未満の第1区間から、最も気泡径が小さい区間に存在する第1ピークと該第1ピークに最も近接する第2ピークとの間に存在する最も低い面積比を有する第2区間までに含まれる各区間の面積比の総和が、0.55〜0.95である。
    条件(d):上記スチレン系樹脂押出発泡体の押出方向に沿った断面における所定範囲をサンプリングし、得られた各サンプル断面における気泡の平均気泡径を求め、下記式(2)で求められる気泡異方化率が0.5〜1.5である。
    式(2):気泡異方化率=厚み方向の平均気泡径/押出方向の平均気泡径
  2. 更に、以下の条件(c)を満たす請求項1に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
    条件(c):上記第2区間より気泡径が大きい各区間に存在する気泡の平均気泡径が0.26mm以上である。
  3. 更に、以下の条件(e)を満たす請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
    条件(e):上記複数のピークが、気泡径が0.00mm以上0.20mm未満の区間に存在する少なくとも1つのピークと、気泡径が0.20mm以上0.42mm未満の区間に存在する少なくとも1つのピークを含む。
  4. 上記スチレン系樹脂組成物は、発泡剤として少なくとも非ハロゲン系発泡剤を含むものである請求項1からのいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  5. 上記非ハロゲン系発泡剤は、少なくとも水を含むものである請求項1からのいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  6. 上記非ハロゲン発泡剤は、更に、炭素数が3〜5の飽和炭化水素を含むものである請求項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  7. 上記飽和炭化水素は、更に、プロパン、n−ブタン、i−ブタンよりなる群から選ばれる少なくとも1つを含むものである請求項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  8. 上記非ハロゲン発泡剤は、更に、エーテルを含むものである請求項又はに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  9. JIS A9511に規定される方法に従って測定された上記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が、0.025W/mK以下である請求項1からのいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  10. JIS A9511に規定される方法に準じて平均温度0℃で測定された上記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が、0.023W/mK以下である請求項1からのいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  11. 上記スチレン系樹脂押出発泡体の押出発泡体密度が25〜65kg/mである請求項1から10のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  12. 上記スチレン系樹脂押出発泡体の厚みが10〜150mmである請求項1から11のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  13. 上記スチレン系樹脂押出発泡体は、表面にスキン層を有するものである請求項1から12のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
  14. 上記条件(b)において、上記第1区間から、上記第2区間までに含まれる各区間の面積比の総和が、0.76〜0.86である請求項1から13のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
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