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JP4989842B2 - 塗装前処理方法 - Google Patents

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JP4989842B2 JP2003403688A JP2003403688A JP4989842B2 JP 4989842 B2 JP4989842 B2 JP 4989842B2 JP 2003403688 A JP2003403688 A JP 2003403688A JP 2003403688 A JP2003403688 A JP 2003403688A JP 4989842 B2 JP4989842 B2 JP 4989842B2
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Description

本発明は、塗装前処理方法に関する。
金属材料表面にカチオン電着塗装、粉体塗装等を施す場合、通常、耐食性、塗膜密着性等の性質を向上させる目的で、化成処理が施されている。塗膜の密着性や耐食性をより向上させることができる観点から化成処理において用いられてきたクロメート処理は、近年、クロムの有害性が指摘されるようになっており、クロムを含まない化成処理剤の開発が必要とされてきた。このような化成処理としては、リン酸亜鉛による処理が広く行われている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、リン酸亜鉛系処理剤は、金属イオン及び酸濃度が高く非常に反応性の強い処理剤であるため、排水処理における経済性、作業性が良好でない。更に、リン酸亜鉛系処理剤による金属表面処理に伴って、水に不溶な塩類が生成して沈殿となって析出する。このような沈殿物は、一般にスラッジと呼ばれ、このようなスラッジを除去し、廃棄することによるコストの発生等が問題とされている。また、リン酸イオンは、富栄養化によって環境に対して負荷を与えるおそれがあるため、廃液の処理に際して労力を要し、使用しないことが好ましい。更に、リン酸亜鉛系処理剤による金属表面処理においては、表面調整を行うことが必要とされており、工程が長くなるという問題もある。
このようなリン酸亜鉛系処理剤又はクロメート化成処理剤以外の金属表面処理剤として、ジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。このようなジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤は、スラッジの発生が抑制される点で上述したようなリン酸亜鉛系化成処理剤に比べて優れた性質を有している。
しかし、ジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤によって得られた化成皮膜は、特にカチオン電着塗装により得られる塗膜との密着性が悪く、通常、カチオン電着塗装の前処理工程として使用されることは少なかった。このようなジルコニウム化合物からなる金属表面処理剤においては、リン酸イオン等の成分を併用することによって、密着性の向上や耐食性を改善することが行われている。しかし、リン酸イオンを併用した場合、上述したような富栄養化という問題が生じる。また、このような金属表面処理剤による処理を、カチオン電着塗装等の各種塗装の前処理方法として使用することについての検討は一切なされていない。また、このような金属表面処理剤によって鉄系基材を処理する場合、充分な塗膜の密着性や塗装後の耐食性が得られないという問題があった。
ジルコニウム化合物及びアミノ基含有シランカップリング剤からなるノンクロメート金属表面処理剤も知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、このようなノンクロメート金属表面処理剤はいわゆるコイルコーティング分野用途の塗布型処理剤であり、これを用いた表面処理は、処理後水洗が不可能であって、さらに、複雑な形状を有する被処理物を想定したものではなかった。
更に、自動車車体や部品等の鉄、亜鉛、アルミニウム等の種々の金属素材からなる物品に対して一回の処理ですべての金属の表面処理を行わなければならない場合もあり、このような場合であっても問題なく化成処理を施すことができる塗装前処理方法の開発が望まれている。他方、粉体塗料、溶剤塗料、水性塗料等によるカチオン電着塗装以外の塗装においても、上述のような問題を生じることなく化成処理を行うことができる前処理方法の開発も望まれている。
特開平10−204649号公報 特開平7−310189号公報 特開2001−316845号公報
本発明は、上記に鑑み、塗装方法が限定されず、環境への負荷が少なく、かつ、鉄、亜鉛、アルミニウム等のすべての金属に対して良好な化成処理を行うことができる塗装前処理方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、化成処理剤によって被処理物を処理し、化成皮膜を形成する塗装前処理方法であって、上記化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、並びに、アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種からなることを特徴とする塗装前処理方法である。
上記アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の含有量は、固形分濃度で5〜5000ppmであることが好ましい。
上記化成処理剤は、金属換算で20〜10000ppmのジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有し、pHが1.5〜6.5であることが好ましい。
上記化成処理剤は、更に、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン及び銅イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の密着性及び耐食性付与剤を含有することが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、フッ素を含有し、リン酸イオンや、有害な重金属イオンを実質的に含有しない化成処理剤を用いて化成処理を行なう塗装前処理方法である。化成処理方法として汎用されているリン酸亜鉛処理に代えて、従来のジルコニウム等からなる化成処理剤により被処理物を処理すると、特に鉄系基材においては充分な塗膜密着性が得られない等の問題が生じる。本発明は、上記のような問題を解決し、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、フッ素からなる化成処理剤を用いて、鉄系基材に対しても充分な塗膜密着性を有する化成皮膜を形成する塗装前処理方法である。
上記化成処理剤に含まれるジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種は、化成皮膜形成成分であり、基材にジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む化成皮膜が形成されることにより、基材の耐食性や耐磨耗性を向上させ、更に、塗膜との密着性を高めることができる。
例えば、ジルコニウムを含有する化成処理剤を用いて金属基材の表面処理を行うと、金属の溶解反応により化成処理剤中に溶出した金属イオンがZrF 2−のフッ素を引き抜くことにより、又、界面pHの上昇により、ジルコニウムの水酸化物又は酸化物が生成され、このジルコニウムの水酸化物又は酸化物が基材表面に析出していると考えられる。上述のように、本発明における化成処理剤は反応型化成処理剤であるため、複雑な形状を有する被処理物の浸漬処理にも用いることができる。また、上記化成処理剤を用いて表面処理を行うと、化学反応により強固に被処理物に付着した化成皮膜が得られるため、処理後水洗を行うこともできる。
上記ジルコニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、KZrF等のアルカリ金属フルオロジルコネート;(NHZrF等のフルオロジルコネート;HZrF等のフルオロジルコネート酸等の可溶性フルオロジルコネート等;フッ化ジルコニウム;酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
上記チタンの供給源としては特に限定されず、例えば、アルカリ金属フルオロチタネート、(NHTiF等のフルオロチタネート;HTiF等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート等;フッ化チタン;酸化チタン等を挙げることができる。
上記ハフニウムの供給源としては特に限定されず、例えば、HHfF等のフルオロハフネート酸;フッ化ハフニウム等を挙げることができる。
上記ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の供給源としては、皮膜形成能が高いことからZrF 2−、TiF 2−、HfF 2−からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する化合物が好ましい。
上記化成処理剤に含まれるジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の含有量は、金属換算で下限20ppm、上限10000ppmの範囲内であることが好ましい。上記下限未満であると得られる化成皮膜の性能が不充分であり、上記上限を超えると、それ以上の効果は望めず経済的に不利である。上記下限は50ppmがより好ましく、上記上限は2000ppmがより好ましい。
上記化成処理剤に含まれるフッ素は、基材のエッチング剤としての役割を果たすものである。上記フッ素の供給源としては特に限定されず、例えば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩が挙げられ、その具体例としてケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。
上記化成処理剤は、アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有するものである。上記アミノ基含有シランカップリング剤は、分子中に少なくとも1つのアミノ基を有し、かつ、シロキサン結合を有する化合物である。上記アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が化成皮膜と塗膜の双方に作用することにより、両者の密着性が向上される。
このような効果は、加水分解してシラノールを生成する基が加水分解され金属基材の表面と水素結合的に吸着すること、及び、アミノ基の作用により化成皮膜と金属基材の密着性が高まるために生じると推測される。上述したように化成皮膜に含まれるアミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が、金属基材及び塗膜の両方に働きかけることによって、相互の密着性を向上させる作用を有すると考えられる。
上記アミノ基含有シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等の公知のシランカップリング剤等を挙げることができる。市販されているアミノ基含有シランカップリング剤であるKBM−602、KBM−603、KBE−603、KBM−903、KBE−9103、KBM−573(以上信越化学工業株式会社製)、XS1003(チッソ株式会社製)等も使用することができる。
上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物は、従来公知の方法、例えば、上記アミノ基含有シランカップリング剤をイオン交換水に溶解し、任意の酸で酸性に調整する方法等により製造することができる。上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物の重合物としては、KBP−90(信越化学工業株式会社製:有効成分32%)等の市販の製品を使用することもできる。
上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物の重合物としては特に限定されず、例えば、サイラエースS−330(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン;チッソ株式会社製)、サイラエースS−320(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;チッソ株式会社製);KBP−90(信越化学工業株式会社製:有効成分32%)等の市販の製品の加水分解物の重合物を挙げることができる。
上記アミノ基含有シランカップリング剤及びその加水分解物は、特にカチオン電着塗料による塗装の前処理を行う際に好適に使用される。また、上記アミノ基含有シランカップリング剤の重合物は、上記カチオン電着塗料だけでなく、溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料等を用いた塗装の前処理を行う際に好適に使用することができる。
上記化成処理剤における上記アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の配合量は、固形分濃度で下限5ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。5ppm未満であると、充分な塗膜密着性を得ることができない。5000ppmを超えると、それ以上の効果は望めず、経済的に不利である。上記下限は、10ppmがより好ましく、50ppmが更に好ましい。上記上限は、1000ppmがより好ましく、500ppmが更に好ましい。
上記化成処理剤は、実質的にリン酸イオンを含有しないものであることが好ましい。実質的にリン酸イオンを含まないとは、リン酸イオンが化成処理剤中の成分として作用する程含まれていないことを意味し、本発明において使用する化成処理剤は、実質的にリン酸イオンを含まないことから、環境負荷の原因となるリンを実質的に使用することがなく、リン酸亜鉛系処理剤を使用する場合に発生するリン酸鉄、リン酸亜鉛等のようなスラッジの発生を抑制することができる。
上記化成処理剤は、pHが下限1.5、上限6.5の範囲内であることが好ましい。1.5未満であると、エッチング過剰となり充分な皮膜形成ができなくなる。6.5を超えると、エッチングが不充分となり良好な皮膜が得られない。上記下限は、2.0がより好ましく、上記上限は、5.5がより好ましい。上記下限は、2.5が更に好ましく、上記上限は、5.0が更に好ましい。上記化成処理剤のpHを調整するために、硝酸、硫酸等の酸性化合物、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用することができる。
上記化成処理剤は、更に、密着性及び耐食性付与剤としてマグネシウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン及び銅イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。上記密着性及び耐食性付与剤を含有することにより、より良好な密着性及び耐食性を有する化成皮膜を得ることができる。
上記化成処理剤における上記マグネシウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン及び銅イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の含有量は、下限1ppm、上限5000ppmの範囲内であることが好ましい。上記含有量が上記下限未満であると、充分な効果が得られず好ましくない。上記含有量が上記上限を超えると、それ以上の効果の向上はみられず経済的に不利であり、塗装後密着性が低下する場合もある。上記下限は、25ppmがより好ましく、上記上限は、3000ppmがより好ましい。
上記化成処理剤は、上記成分の他に必要に応じて、任意の成分を併用するものであってもよい。使用することができる成分としては、シリカ等を挙げることができる。このような成分を添加することで、塗装後耐食性を向上させることが可能である。
本発明の塗装前処理方法における化成処理は、特に限定されるものではなく、通常の処理条件によって化成処理剤と金属表面とを接触させることによって行うことができる。上記化成処理における処理温度は、下限20℃、上限70℃の範囲内であることが好ましい。上記下限は30℃であることがより好ましく、上記上限は50℃であることがより好ましい。上記化成処理における化成時間は、下限5秒、上限1200秒の範囲内であることが好ましい。上記下限は30秒がより好ましく、上記上限は120秒がより好ましい。化成処理方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法等を挙げることができる。
本発明の塗装前処理方法においては、上記化成処理を行う前に、金属基材の表面に対して脱脂処理、脱脂後水洗処理を行い、上記化成処理後に化成後水洗処理を行うことが好ましい。
上記脱脂処理は、基材表面に付着している油分や汚れを除去するために行われるものであり、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、通常30〜55℃において数分間程度の浸漬処理がなされる。所望により、脱脂処理の前に、予備脱脂処理を行うことも可能である。
上記脱脂後水洗処理は、脱脂処理後の脱脂剤を水洗するために、大量の水洗水によって1回又はそれ以上スプレー処理を行うことにより行われるものである。
上記化成後水洗処理は、その後の各種塗装後の密着性、耐食性等に悪影響を及ぼさないようにするために、1回又はそれ以上により行われるものである。この場合、最終の水洗は、純水で行われることが適当である。この化成後水洗処理においては、スプレー水洗又は浸漬水洗のどちらでもよく、これらの方法を組み合わせて水洗することもできる。
上記化成後水洗処理の後は、公知の方法に従って、必要に応じて乾燥され、その後、各種塗装を行うことができる。
本発明の塗装前処理方法は、従来より実用化されているリン酸亜鉛系化成処理剤を用いて処理する方法において、必要となっている表面調整処理を行わなくてもよいため、より少ない工程で金属基材の化成処理を行うことが可能である。
本発明において処理される金属基材は、鉄系基材、アルミニウム系基材、及び、亜鉛系基材等を挙げることができる。鉄、アルミニウム、及び、亜鉛系基材とは、基材が鉄及び/又はその合金からなる鉄系基材、基材がアルミニウム及び/又はその合金からなるアルミニウム基材、基材が亜鉛及び/又はその合金からなる亜鉛系基材を意味する。本発明の塗装前処理方法は、鉄系基材、アルミニウム系基材、及び、亜鉛系基材のうちの複数の金属基材からなる被処理物に対しても適用することができる。
本発明の塗装前処理方法は、通常のジルコニウム等からなる化成処理剤による処理によって充分な塗膜密着性を得ることが困難であった鉄系基材に対しても、充分な塗膜密着性を付与することができる点で好ましく、このため、特に少なくとも一部に鉄系基材を含む被処理物の処理にも適用することができる点で優れた性質を有するものである。
上記鉄系基材としては特に限定されず、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板等を挙げることができる。上記アルミニウム系基材としては特に限定されず、例えば、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金等を挙げることができる。上記亜鉛系基材としては特に限定されず、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板等の亜鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板等を挙げることができる。本発明においては、鉄、アルミニウム及び亜鉛系基材を同時に化成処理することができる。
本発明の塗装前処理方法により得られる化成皮膜は、皮膜量が化成処理剤に含まれる金属の合計量で下限0.1mg/m、上限500mg/mの範囲内であることが好ましい。0.1mg/m未満であると、均一な化成皮膜が得られず好ましくない。500mg/mを超えると、それ以上の効果は得られず、経済的に不利である。上記下限は、5mg/mがより好ましく、上記上限は、200mg/mがより好ましい。
本発明の塗装前処理方法により処理された金属基材に対して行うことができる塗装としては特に限定されず、カチオン電着塗料、溶剤塗料、水性塗料、粉体塗料等の従来公知の塗料を用いた塗装を行うことができる。例えば、上記カチオン電着塗料としては特に限定されず、アミノ化エポキシ樹脂、アミノ化アクリル樹脂、スルホニウム化エポキシ樹脂等からなる従来公知のカチオン電着塗料を塗布することができる。なかでも、化成処理剤にアミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を配合することから、電着塗膜と化成皮膜の密着性をより高めるために、アミノ基との反応性又は相溶性を示す官能基を有する樹脂からなるカチオン電着塗料が好ましい。
本発明の塗装前処理方法は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を化成皮膜形成成分として、更に、アミノ基含有シランカップリング剤、その加水分解物及びその重合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する化成処理剤を用いることで、従来リン酸亜鉛系処理剤による化成処理が一般的であった塗装前処理を好適に行うことができる。更に、従来ジルコニウム等からなる化成処理剤での前処理が不適であった鉄系基材に対しても塗膜密着性に優れた化成皮膜を形成することができるものである。
又、本発明で使用する化成処理剤は、リン酸イオンを実質的に含まないため、環境に対する負荷が少なく、スラッジも発生しない。更に、本発明の塗装前処理方法は、表面調整工程を必要としないため、より少ない工程で金属基材の化成処理を行うことが可能である。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
参考例1
市販の冷間圧延鋼板(SPCC−SD、日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を基材として、下記の条件で塗装前処理を施した。
(1)塗装前処理
脱脂処理:2質量%「サーフクリーナー53」(日本ペイント社製脱脂剤)で40℃、2分間浸漬処理した。
脱脂後水洗処理:水道水で30秒間スプレー処理した。
化成処理:ジルコンフッ化水素酸及びアミノ基含有シランカップリング剤としてKBM−603(N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン:有効濃度100%:信越化学工業株式会社製)を使用し、ジルコニウム濃度100ppm、固形分としてアミノ基含有シランカップリング剤濃度100ppmの化成処理剤を調製した。pHは、水酸化ナトリウムを用いて4に調整した。化成処理剤の温度を40℃に調整し、基材を60秒間浸漬処理した。処理の初期段階における皮膜量は、10mg/mであった。
化成後水洗処理:水道水で30秒間スプレー処理した。更にイオン交換水で10秒間スプレー処理した。その後、ウェットな状態で電着塗装を行った。
なお、皮膜量は、水洗処理後の冷延鋼板を電気乾燥炉において、80℃で5分間乾燥したうえで「XRF1700」(島津製作所製蛍光X線分析装置)を用いて、化成処理剤に含まれる金属の合計量として分析した。
(2)塗装
化成処理剤1L当たり1mの冷間圧延鋼板を処理した後に、「パワーニクス110」(日本ペイント社製カチオン電着塗料)を用いて乾燥膜厚20μmになるように電着塗装し、水洗後、170℃で20分間加熱して焼き付け、試験板を作成した。
評価試験
〈スラッジ観察〉
化成処理剤1L当たり1mの金属基材を処理した後、化成処理剤中の濁りを目視観察した。
〇:濁りなし
×:濁りあり
〈二次密着性試験(SDT)〉
得られた試験板に、素地まで達する縦平行カットを2本入れた後、5%NaCl水溶液中において50℃で480時間浸漬した。その後、カット部をテープ剥離し、塗料の剥離を観察した。
◎:剥離なし
〇:若干剥離
×:剥離幅3mm以上
〈SST〉
得られた試験板に、素地まで達するクロスカットをいれた後、35℃に保たれた塩水噴霧試験器中で5%NaCl水溶液を240時間連続噴霧した。その後、カット部からのふくれ幅を測定した。
〈耐湿試験〉
得られた試験板を恒温恒湿試験機(湿度95%、温度50℃)に240時間放置した。次に、試験板を大気中で1時間放置後、クロスカット(1mm角×100個)をいれ、テープ剥離し、塗膜残存数を測定して塗膜密着性の指標とした。
参考例2
アミノ基含有シランカップリング剤として、KBM−903(3−アミノプロピルトリメトキシシラン:有効濃度100%:信越化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして試験板を作製した。
参考例3
アミノ基含有シランカップリング剤として、KBE−903(3−アミノプロピルトリエトキシシラン:有効濃度100%:信越化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして試験板を作製した。
参考例4
アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物の重合物として、KBP−90(3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解物の重合物:有効濃度32%:信越化学工業株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして試験板を作製した。
参考例5
アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物として、XS−1003(N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンのメタノール溶液:有効濃度50%:チッソ株式会社製)を用いたこと以外は、参考例1と同様にして試験板を作製した。
参考例6
アミノ基含有シランカップリング剤の濃度を5ppmに変更したこと以外は、参考例2と同様にして試験板を作製した。
参考例7
アミノ基含有シランカップリング剤の濃度を5000ppmに変更したこと以外は、参考例2と同様にして試験板を作製した。
参考例8
金属基材を、亜鉛系めっき鋼板(GA鋼板、日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)に変更したこと以外は、参考例2と同様にして試験板を作製した。
参考例9
金属基材を、5000系アルミニウム(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)に変更したこと以外は、参考例2と同様にして試験板を作製した。
参考例10〜25、実施例26〜31、参考例32〜35
密着性及び耐食性付与剤として硝酸マグネシウム及び硝酸亜鉛を使用し、アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物の重合物としてサイラエースS−330又はサイラエースS−320(いずれもチッソ株式会社製)を使用して表1及び2に示した組成を有する化成処理剤を調製し、基材として溶融亜鉛めっき鋼板(GI、日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)、電気めっき亜鉛鋼板(EG、日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)、黒皮鋼板(SS400、日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)又は6000系アルミニウム(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を使用したこと以外は参考例1と同様にして試験板を作製した。
比較例1
アミノ基含有シランカップリング剤を配合しなかったこと以外は、参考例1と同様にして試験板を作製した。
比較例2
ジルコンフッ化水素酸を配合しなかったこと以外は、参考例1と同様にして試験板を作製した。
比較例3
ジルコンフッ化水素酸を配合せず、アミノ基含有シランカップリング剤としてサイラエースS−330を使用したこと以外は、参考例1と同様にして試験板を作製した。
比較例4〜8
表2に示した基材を使用して、脱脂後水洗処理の後にサーフファイン5N−8M(日本ペイント社製)を用いて室温で30秒間表面調整を行い、サーフダインSD−6350(日本ペイント社製リン酸亜鉛系化成処理剤)を用いて35℃で2分間浸漬処理を行うことで化成処理を施したこと以外は参考例1と同様にして試験板を得た。
Figure 0004989842
Figure 0004989842
参考例36〜40
表3に示した組成を有する化成処理剤及び基材を使用し、「パワーニクス110」(日本ペイント社製カチオン電着塗料)に代えて「オルガセレクトOTS900ホワイト」(日本ペイント社製溶剤塗料)を乾燥膜厚35±2μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して焼き付けたこと以外は、参考例1と同様にして試験板を得た。
比較例9〜13
表3に示した基材を使用し、「パワーニクス110」(日本ペイント社製カチオン電着塗料)に代えて「オルガセレクトOTS900ホワイト」(日本ペイント社製溶剤塗料)を乾燥膜厚35±2μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して焼き付けたこと以外は、比較例4と同様にして試験板を得た。
参考例41〜45
表3に示した組成を有する化成処理剤及び基材を使用し、「パワーニクス110」(日本ペイント社製カチオン電着塗料)に代えて「オーデエコラインOEL100」(日本ペイント社製水性塗料)を乾燥膜厚35±2μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して焼き付けたこと以外は、参考例1と同様にして試験板を得た。
比較例14〜18
表3に示した基材を使用し、「パワーニクス110」(日本ペイント社製カチオン電着塗料)に代えて「オーデエコラインOEL100」(日本ペイント社製水性塗料)を乾燥膜厚35±2μmになるように塗装し、140℃で30分間加熱して焼き付けたこと以外は、比較例4と同様にして試験板を得た。
参考例46〜50
表3に示した組成を有する化成処理剤及び基材を使用し、「パワーニクス110」(日本ペイント社製カチオン電着塗料)に代えて「パウダックスP100」(日本ペイント社製粉体塗料)を乾燥膜厚100±5μmになるように塗装し、180℃で20分間加熱して焼き付けたこと以外は、参考例1と同様にして試験板を得た。
比較例19〜23
表3に示した基材を使用し、「パワーニクス110」(日本ペイント社製カチオン電着塗料)に代えて「パウダックスP100」(日本ペイント社製粉体塗料)を乾燥膜厚100±5μmになるように塗装し、180℃で20分間加熱して焼き付けたこと以外は、比較例4と同様にして試験板を得た。
Figure 0004989842
表1〜3より実施例で使用した化成処理剤中にスラッジは発生しないことが示された。更に、本発明の塗装前処理方法により得られた化成皮膜は、各種塗装による塗膜との良好な密着性を有することが示された。一方、比較例においては、化成処理剤中のスラッジの発生を抑え、かつ、塗膜との密着性に優れる化成皮膜を得ることはできなかった。
本発明により、環境に対する負荷が少なく、鉄、亜鉛、アルミニウム等のすべての金属に良好な化成処理を行なうことができる塗装前処理方法を得ることができた。また、本発明の塗装前処理方法は、表面調整を行わなくても良好な化成皮膜を形成することができることから、作業性及びコストの面でも優れている。

Claims (7)

  1. 鉄系基材にカチオン電着塗装を行うために、化成処理剤によって当該鉄系基材を処理して化成皮膜を形成した後、乾燥せずに水洗するカチオン電着塗装の前処理方法であって、
    前記化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、並びに、アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物の重合物を含み、実質的にリン酸を含有しないものであり、
    更に、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン及び銅イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の密着性及び耐食性付与剤を含有することを特徴とするカチオン電着塗装の前処理方法。
  2. アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物の重合物の含有量は、固形分濃度で5〜5000ppmである請求項1に記載のカチオン電着塗装の前処理方法。
  3. 化成処理剤は、金属換算で20〜10000ppmのジルコニウム、チタン、及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する請求項1、又は2記載のカチオン電着塗装の前処理方法。
  4. 前記化成処理剤のpHが、1.5〜5.5である請求項1、2、又は3記載のカチオン電着塗装の前処理方法。
  5. 前記密着性及び耐食性付与剤がマグネシウムイオン及び/又は亜鉛イオンである請求項1、2、3、又は4記載のカチオン電着塗装の前処理方法。
  6. 前記密着性及び耐食性付与剤がマグネシウムイオン及び/又は亜鉛イオンのみである請求項1、2、3、4、又は5記載のカチオン電着塗装の前処理方法。
  7. 前記水洗は、イオン交換水で行う請求項1、2、3、4、5、又は6記載のカチオン電着塗装の前処理方法。
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