以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態として、マルチヘッドを用いた磁気記録再生方式における記録装置と再生装置について説明する。この実施形態の記録装置は、テープ状の磁気記録メディアにトラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録する装置であり、再生装置は、その磁気記録メディアからトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生する装置である。記録ヘッドの数をM、再生ヘッドの数をNとする。この実施形態では、M<Nとする。
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100の構成を示す図である。
同図に示すように、この記録装置100は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150、及びガードバンド記録部160で構成される。
マルチトラック化部110は、マルチトラック化のために記録データ1をM個分のデータに振り分けるデータ分配器111で構成される。
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−Mで構成される。
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、データ再生の制御に必要なプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−Mで構成される。
マルチトラック記録部140は、プリアンブルが付加された各トラックの記録符号列を記録媒体に記録する手段であり、より詳細には、プリアンブルが付加された記録符号列に所望のタイミングを与えるM個の出力タイミング設定部141−1,141−2,・・・,141−Mと、記録補償処理を行うM個の記録補償部144−1,144−2,・・・,144−Mと、記録補償処理後の記録符号列をもとに個々の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−Mを駆動するM個の記録アンプ147−1,147−2,・・・,147−Mとで構成される。
記録ヘッドアレイ150は、磁気記録メディア2にデータを含むトラックを記録するために用いられるM個の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−Mと、データを含まないトラックをガードバンドとして記録するために用いられる1個の記録ヘッドW−0とを有している。
ガードバンド記録部160は、ガードバンド記録用の記録ヘッドW−0を使って、同期パターン及び識別パターンなどを含むプリアンブルが付加されたガードバンドを磁気記録メディア2に記録する手段である。
このガードバンド記録部160は、消去信号発生部161、プリアンブル付加部131−0、出力タイミング設定部141−0、記録補償部144−0、及び記録アンプ147−0を有している。
消去信号発生部161は、ガードバンドに記録する消去信号を発生する手段である。消去信号には、例えば、最短記録波長以下の記録波長の繰り返し信号や、直流信号など、データの符号列に用いられない符号列が用いられる。
プリアンブル付加部131−0は、消去信号発生部161より出力された消去信号の符号列に、同期パターン及び識別パターンなどを含むガードバンド用のプリアンブルを付加する。
出力タイミング設定部141−0は、プリアンブルが付加された消去信号の記録符号列に所望のタイミングを与える。記録補償部144−0は、出力タイミング設定部141−0の出力に対する記録補償処理を行う。記録アンプ147−0は、記録補償処理後のガードバンド用の記録符号列をもとに記録ヘッドW−0を駆動する。
図2は、この記録装置100によるユニット及びガードバンド記録の動作を示すフローチャートである。この記録装置100では、データを含むM本のトラックを記録する動作と1本のガードバンドを記録する動作とが切り替えて実行される。まず、これから行う記録の対象がガードバンドかトラックかを判断する(ステップS101)。
これから行う記録の対象がトラックである場合には、次のように動作を行うように制御する。まず、入力された記録データ1をマルチトラック化部110にて、トラック記録用の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−Mの数のデータ、すなわちユニットを構成するトラック数分のデータに分配する(ステップS102)。
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−Mにて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このときデータの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS103)。
次に、符号化されたそれぞれの記録データに、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−Mによって、再生時に再生ヘッドによって複数のトラックのプリアンブルが同時に再生されないように、少なくとも隣り合う各トラックの間で互いにトラックの進行する方向にずれた位置関係で、データ再生の制御のために必要なプリアンブルが付加され、記録符号列が得られる(ステップS104)。
ここで、データを再生する制御のために必要なプリアンブルのパターンとしては、例えば、再生信号に対するゲイン制御のための学習に用いられるゲイン制御パターン、ビット同期処理などのための同期検出に用いられる同期パターン、トラックを識別するための識別パターン、及び、複数の再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとのトラック幅方向の位置関係に相当するチャネル行列を演算するために必要な分離パターンなどがある。1ユニット分の複数のトラックとは、データ再生のための信号処理の一単位であるユニットを構成する複数のトラックである。同期パターンはトラックごとの分離パターンやデータの先頭位置を特定するための情報としても用いられる。これらのパターンは、マルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−Mで生成される符号列の規則を考慮して作成されたものである。
トラックごとの記録符号列は、マルチトラック記録部140の出力タイミング設定部141−1,141−2,・・・,141−Mにてそれぞれ所望のタイミングが与えられた後、記録補償部144−1,144−2,・・・,144−Mにて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。記録補償処理が施されたトラックごとの記録符号列は、記録アンプ147−1,147−2,・・・,147−Mにおいて電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−Mに送られ、記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−Mによって磁気記録メディア2に記録される(ステップS105)。
一方、ステップS101で、これから行う記録の対象がガードバンドである場合には次のように動作を行うように制御する。まず、ガードバンド記録部160の消去信号発生部161から所定の単位分の消去信号が出力される(ステップS106)。次に、プリアンブル付加部131−0にて、消去信号の符号列にガードバンド用のプリアンブルが付加される(ステップS107)。
プリアンブル付加部131−0より出力された消去信号の記録符号列は、ガードバンド記録部160内の出力タイミング設定部141−0にて所望のタイミングが与えられた後、ガードバンド記録部160内の記録補償部144−0にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施される。記録補償処理が施された消去信号の記録符号列は、ガードバンド記録部160内の記録アンプ147−0において電圧から電流に変換されて記録ヘッドW−0に送られ、記録ヘッドW−0によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS108)。
記録装置100は、以上のように、ユニットを構成するM本のトラックと1本のガードバンドを記録した後、記録ヘッドアレイ150を磁気記録メディア2のテープ幅方向に一定量移動して、同様に、次のユニットを構成するM本のトラックと1本のガードバンドを記録し、これを一定回数(s回)繰り返す。最終的には、例えば、図6に示すように、個々のユニット51の両側にガードバンド52が配置されてユニット51間にガードバンド52が介在するように、ガードバンド52の記録がユニット51の記録より一回多く実行される。すなわち、図6の例では、磁気記録メディア2の幅方向における一端からガードバンド#1、ユニット#1、ガードバンド#2、ユニット#2、ガードバンド#3、・・・、ガードバンド#s、ユニット#s、ガードバンド#s+1の順に記録が行われる。ここで、ガードバンド#s+1は、記録ヘッドアレイ150をトラック幅方向へ最後に移動した位置で、ガードバンド記録部160によってガードバンド52の記録のみを行うことによって作成されたものである。
次に、本発明の第1の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
図3は、この再生装置200の構成を示す図である。
同図に示すように、この再生装置200は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、復元部260、トラッキング制御部270を備える。
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出すN個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nを有する。それぞれの再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nは、磁気記録メディア2上で隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なように、そのヘッド幅及び配置が決められている。
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載されたN個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nによって再生された信号を増幅するN個の再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−Nと、N個の再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−Nの出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御するゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−Nと、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−Nの出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化するA/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nとを備える。
なお、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nの直前に、必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。
また、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−Nは、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nの前段ではなく後段に配置されてもよい。これは、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nのビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−Nの構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、信号分離演算部236、及び再生信号選択部238を有している。
同期信号検出部231は、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nより出力された再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号からプリアンブル内の同期パターンを検出し、その情報を出力する。
識別情報検出部232は、同期信号検出部231により得られた情報を用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターンの検出を行い、検出した識別パターンに対応する識別情報を出力する。
再生信号ゲイン制御処理部233は、識別情報検出部232を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出して、このゲイン制御パターンをもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号のレベルを制御する。
再生信号選択部238は、識別情報検出部232により検出された識別情報をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号から、所定の選択条件に従って、少なくともユニットを構成するトラック数の再生信号を選択して、チャネル推定演算部234及び信号分離演算部236にその選択結果の情報を通知する。
チャネル推定演算部234は、再生信号選択部238からの情報と、同期信号検出部231により得られた情報と、識別情報検出部232により得られた識別情報とを用いて、再生信号選択部238によって選択された各再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンを用いてチャネル推定演算によってチャネル行列を演算する。
再生位置制御処理部235は、同期信号検出部231により得られた情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。
信号分離演算部236は、再生信号選択部238からの情報と、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列とをもとに、所定の演算処理によって、再生位置制御処理部235を通過し、再生信号選択部238によって選択された各再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
マルチトラック復調部240は、図4に示すように、信号分離演算部236にて分離されたトラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,・・・,241−Mと、等化器241−1,241−2,・・・,241−Mの出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,・・・,242−Mと、PLL242−1,242−2,・・・,242−Mで生成されたビット同期信号を用いて各トラックの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出部などM個の検出部243−1,243−2,・・・,243−Mと、検出部243−1,243−2,・・・,243−Mの出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−Mと、同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−Mにより検出された同期パターンをもとにデータの先頭位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−Mとを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
図3に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−Mより出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
図5は、この再生装置200のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
この再生装置200では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nによって、磁気記録メディア2の1ユニット分のM本のトラックから信号を再生する(ステップS201)。
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−Nにて、各再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−Nの出力の振幅レベルが調整された後、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nにてディジタル値に変換されて同期信号検出部231に出力される(ステップS202)。
次に、同期信号検出部231により、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nより出力された各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号のプリアンブル内の同期パターンが検出される(ステップS203)。
次に、識別情報検出部232により、同期信号検出部231により検出された同期パターンを用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターンの検出を行い、検出した識別パターンに対応する識別情報を出力する(ステップS204)。
次に、再生信号ゲイン制御処理部233により、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出し、このゲイン制御パターンを用いて、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号に対するゲインを演算して、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号のレベルを制御する(ステップS205)。
次に、再生信号選択部238により、識別情報検出部232により検出された識別情報をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号から、所定の選択条件に従って、少なくともユニットを構成するトラック数の再生信号を選択して、チャネル推定演算部234及び信号分離演算部236にその選択結果の情報を通知する(ステップS206)。
次に、チャネル推定演算部234にて、再生信号選択部238からの情報と、同期信号検出部231により検出された同期パターンと、識別情報検出部232により検出された識別情報とを用いて、再生信号選択部238によって選択された各再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンを用いてチャネル推定演算によってチャネル行列を演算する(ステップS207)。
次に、再生位置制御処理部235により、同期信号検出部231により検出された同期パターンを用いて、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号の再生位置が合わせられる(ステップS208)。
次に、信号分離演算部236により、再生信号選択部238からの情報と、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列とをもとに、所定の演算処理によって、再生位置制御処理部235を通過し、再生信号選択部238によって選択された各再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS209)。
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS210)、復元部260にて各トラックのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS211)。
図6は、上記の記録装置100によって記録が行われた磁気記録メディア2上のデータフォーマットの概念図である。なお、トラック数であるMは6とする。
ここで、M個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録されたM本のトラック#1,#2,・・・,#6が1つのユニット51である。磁気記録メディア2には、このようなユニット51が、磁気記録メディア2のテープ幅方向に複数(s個)並べて記録されている。個々のユニット51の両側には、データが記録されていない領域であるガードバンド52が配置されている。ガードバンド52の目的は、再生中のユニットの隣のユニットからデータが再生されないようにすることにある。
各トラック#1,#2,・・・,#6にはそれぞれ、データ22を再生する制御のために必要な情報であるプリアンブル21と、その再生対象であるデータ22が配置されている。ガードバンド52にはデータは記録されていないが、同期パターン及び識別パターンなどを含むプリアンブルがトラックの進行する方向における所定の位置に記録されている。
図7は図6のデータフォーマットの詳細と再生ヘッドアレイ150の各再生ヘッドの配置を示す図であり、図6の全体のデータフォーマットから一つのユニット51とこのユニット51の両側に配置された2つのガードバンド52の部分をとりだして示したものである。なお、再生ヘッド数であるNは7とする。
同図に示すように、各トラック#1,#2,・・・,#6それぞれのプリアンブル21は第1のプリアンブル23と第2のプリアンブル24からなる。各トラック#1,#2,・・・,#6それぞれの第1のプリアンブル23は、ゲイン制御パターン41−1,41−2,・・・,41−6、同期パターン42−1,42−2,・・・,42−6、及び識別パターン43−1,43−2,・・・,43−6からなる。第2のプリアンブル24は分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6で構成されている。各々のトラック#1,#2,・・・,#6には、先頭側より、ゲイン制御パターン41−1,41−2,・・・,41−6、同期パターン42−1,42−2,・・・,42−6、識別パターン43−1,43−2,・・・,43−6の順に配置される。そして第2のプリアンブル24の後には再生対象であるデータ22が配置されている。
一方、ガードバンド52にはプリアンブルとして、第1のプリアンブル23の要素であるゲイン制御パターン41−0,41−7、同期パターン42−0,41−7、識別パターン43−0,43−7のみが記録されている。
トラック#1,#2,・・・,#6に記録された第1のプリアンブル23のパターンはそれぞれ、同一ユニット内の他のトラックのプリアンブル21のパターンに対してトラックの進行する方向での位置が重ならないように、互いにずらせて配置されている。すなわち、トラック#1のプリアンブル21のパターン(ゲイン制御パターン41−1,同期パターン42−1,識別パターン43−1)はt1区間に、トラック#2の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−2,同期パターン42−2,識別パターン43−2)はt2区間に、トラック#3の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−3,同期パターン42−3,識別パターン43−3)はt3区間に、トラック#4の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−4,同期パターン42−4,識別パターン43−4)はt4区間に、トラック#5の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−5,同期パターン42−5,識別パターン43−5)はt5区間に、トラック#6の第1のプリアンブル23のパターン(ゲイン制御パターン41−6,同期パターン42−6,識別パターン43−6)はt6区間に、それぞれ配置されている。これらのパターンの記録区間の間には、マージンのための隙間40が設けられている。
一方、各ガードバンド52に記録された第1のプリアンブル23のパターンであるゲイン制御パターン41−0,41−7、同期パターン42−0,42−7、識別パターン43−0,43−7もそれぞれ、トラック#1,#2,・・・,#6に記録されたプリアンブル21のパターンに対してトラックの進行する方向での位置が重ならない位置、例えば、トラック#6のプリアンブル21のパターンの後のt7区間に配置されている。
このように第1のプリアンブル23のパターンを配置したことによって、各トラック#1,#2,・・・,#6及びガードバンド52のチャネルクロック位置が合っていない場合でも、隣り合うトラック間や、トラックとガードバンド52との間でのパターン同士による打ち消し合いによる再生信号のレベル低下が発生することがなく、第1のプリアンブル23のパターンを用いた処理を良好に行うことができる。
また、各トラック#1,#2,・・・,#6の第2のプリアンブル24である分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6も、他のトラックの分離パターンに対して、トラックの進行する方向での位置が互いに重ならないように配置されている。すなわち、トラック#1の分離パターン44−1はT1区間に、トラック#2の分離パターン44−2はT2区間に、トラック#3の分離パターン44−3はT3区間に、トラック#4の分離パターン44−4はT4区間に、トラック#5の分離パターン44−5はT5区間に、トラック#6の分離パターン44−6はT6区間にそれぞれ記録されている。これにより分離パターンの種類は、トラック数に対応する6種類となる。隣り合うトラックの分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6どうしの間には、マージンのための所定の時間分の隙間40が設けられている。なお、ガードバンド52には分離パターンは記録されていない。
なお、分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6は、最小記録波長と同等か、あるいはそれ以上の所定の記録波長で記録されたものである。
各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターン41−0,41−1,・・・,41−7は、再生時に、再生装置200内のゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−Nによる再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−Nのゲイン制御のための学習信号として使用されるとともに、再生信号ゲイン制御処理部233による制御に用いられる。また、ゲイン制御パターン41−0,41−1,・・・,41−7は、必要に応じて、再生位置制御処理部235による制御のために使用される。さらにこのほか、ゲイン制御パターン41−0,41−1,・・・,41−7は、必要に応じて、再生装置200内の同期信号検出部231におけるビット同期検出の学習信号として使用される。
各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている同期パターン42−0,42−1,・・・,42−7は、再生装置200内の同期信号検出部231による同期信号の検出に使用され、再生信号からの識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7、分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6、及びデータ22の先頭位置を知るための情報として使用される。さらには、同期パターン42−0,42−1,・・・,42−7は、再生位置制御処理部235における各再生信号の再生位置の制御に使用される。
各トラック#1,#2,・・・,#6及びガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7は、再生装置200内の識別情報検出部232によって検出されて、トラック及びガードバンドの識別情報を得るために使用されるとともに、チャネル推定演算部234におけるチャネル推定演算のために使用される。さらには、この識別情報は、再生位置制御処理部235における再生位置制御のために使用される。
各トラック#1,#2,・・・,#6に第2のプリアンブル24として配置されている分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6は、チャネル推定演算部234でのチャネル行列を求めるためのチャネル推定演算のために使用される。このチャネル行列は、1ユニット内の各トラック#1,#2,・・・,#6に対する個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−7のトラック幅方向での位置情報に相当するもので、言い換えると、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−7がそれぞれ、ユニット内のどのトラックとどんな割合で位置的に重なるかを示した情報である。
なお、図7の例では、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−7の幅はトラック幅の1.5倍とする。すなわち、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−7の幅は、記録ヘッドのヘッド幅の1.5倍とされ、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−7はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。
図8は、図6のデータフォーマットの詳細と再生ヘッドアレイ150の各再生ヘッドの配置の他の例を示す図である。ここでは、トラック数であるMを6とし、再生ヘッド数であるNを8としている。
このデータフォーマットでは各トラック#1,#2,・・・,#6の第1のプリアンブル23がトラックの進行する方向において3つの区間t1,t2,t3に分けて配置されている。すなわち、トラック#1及びトラック#4のプリアンブル21のパターンはt1区間に、トラック#2及びトラック#5の第1のプリアンブル23のパターンはt2区間に、トラック#3及びトラック#6の第1のプリアンブル23のパターンはt3区間に、それぞれ配置されている。これらのパターンの記録区間の間には、マージンのための隙間40が設けられている。なお、このように、同じ区間に複数のトラックの第1のプリアンブル23を配置しても、1つの再生ヘッドによって、それら複数のトラックの第1のプリアンブル23が同時に再生されなければ問題は無い。
なお、第2のプリアンブル24の分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6の配置は図7と同様である。また、ガードバンド52における第1のプリアンブル23の配置も図7と同様であり、ユニット51を構成するトラック#1,#2,・・・,#6に記録された第1のプリアンブル23に対してトラックの進行する方向での位置が重ならない、例えば、トラック#3,#6の第1のプリアンブル23のパターンの後のt4区間に配置されている。
このようなデータフォーマットによれば、図7に示したデータフォーマットに比べ、第1のプリアンブル23のパターンによる磁気記録メディア2のトラックの進行する方向の消費量を低減することができ、記録効率の向上を図れる。
次に、図6に戻って、各トラック#1,#2,・・・,#6とガードバンド52の第1のプリアンブル23に配置されている識別パターン43−0,43−1,・・・,43−7の詳細を説明する。
図6に示すように、識別情報は、例えば、ユニットを識別する例えば"1"から"s"までの番号とユニット内のトラックを識別する例えば"1"から"6"までの番号との組み合わせによって表現されている。例えば、"1_2"は、1番目のユニットの2番目のトラックであることを示す。なお、識別情報の表現上、ガードバンド52は同時に記録が行われたユニットに属するトラックとして扱われ、このガードバンド52のトラックを識別する番号には"0"が与えられている。したがって、例えば、"2_0"なら、2番目のユニットのトラックと同時に記録が行われたガードバンドであることを示す。また、磁気記録メディア2のテープ幅方向における一方からガードバンド#1、ユニット#1、ガードバンド#2、ユニット#2、ガードバンド#3、・・・、ガードバンド#s、ユニット#s、ガードバンド#s+1の順に記録が行われるので、最後のガードバンド#s+1は、s+1番目の実際には存在しないユニットに属するトラックとなるので、識別情報として(s+1)_0が与えられる。
次に、図3の再生装置200における主要なブロックで行われる処理の詳細を説明する。
(識別情報検出部232について)
識別情報検出部232では、同期信号検出部231により検出された同期パターンをもとに、各再生ヘッドの再生信号における識別パターンの先頭位置を特定し、その識別パターンを検出して識別情報を出力する。
一つの再生ヘッドが複数のトラックを跨ぐ場合、同期信号検出部231によって、その再生ヘッドにより得られた再生信号からそれぞれのトラックの同期パターンが異なるタイミングで検出される。識別情報検出部232は、それぞれのトラックの同期パターンを用いて、それぞれのトラックの識別パターンの先頭位置を特定して、それぞれの識別情報を得ることができる。
(再生信号ゲイン制御処理部233について)
再生信号ゲイン制御処理部233は、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nのゲイン制御パターン41−0,41−1,・・・,41−Nの再生信号をもとに、例えば、以下のようにして、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号に対するゲインを演算し、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号のレベルを制御する。
例えば、再生信号ゲイン制御処理部233は、図7において、再生ヘッドR−1によってガードバンド#1とトラック#1よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターン41−0,41−1の信号を加算し、同様に、再生ヘッドR−2によってガードバンド#1とトラック#1とトラック#2よりそれぞれ再生されたゲイン制御パターン41−0,41−1,41−2の信号を加算する。このように、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとに、再生されたゲイン制御パターンの信号を加算する。
ゲイン制御パターンの再生信号の加算は、例えば、それぞれのトラックにおけるゲイン制御パターンの再生信号のピーク値を検出し、その平均値を求めることなどによって行われる。なお、この演算については、上記の方式に限らず、各再生信号の相関関係が成立つものであれば、別の方式でもかまわない。
再生信号ゲイン制御処理部233は、以上のようにして得られた6つの演算結果の中から最大のものを選び出し、これを全ての再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nに対する基準出力とする。そして再生信号ゲイン制御処理部233は、入力された再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号の値に1/(基準出力)を掛け合わせた値を制御結果として出力する。
なお、基準出力は、チャネル推定演算部234におけるチャネル推定演算でも用いることができるし、信号分離演算部236においても用いることができる。
(再生信号選択部238について)
再生信号選択部238は、識別情報検出部232により検出された識別情報をもとに、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号からユニットを構成するトラック数の再生信号を選択して、信号分離演算部236にその選択結果の情報を通知する。
すなわち、再生信号選択部238は、まず、識別情報検出部232により検出された識別情報をもとに、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nの再生信号ごとに、これがどのドラックあるいはどのガードバンドの再生信号を含んだものであるかを判定する。次に、再生信号選択部238は、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号のなかで、所定の非選択条件を満足する再生信号を判定し、この非選択条件を満足する再生信号以外の再生信号を選択結果とする。所定の非選択条件としては、例えば、再生信号がガードバンドと再生対象であるユニット以外のユニットのトラックを含むこと、などが挙げられる。前述したように、識別情報は、ユニットを識別する番号とユニット内のトラック及びガードバンドを識別する番号との組み合わせにより表現されているので、識別情報をもとに上記の非選択条件を満足するかどうかの判断を行うことができる。
例えば、図7では、再生ヘッドR−1の出力である再生信号は非選択条件を満足しているので、再生信号選択部238によって選択されない。また、図8では、再生ヘッドR−1と再生ヘッドR−8の出力である各再生信号はそれぞれ非選択条件を満足しているので、再生信号選択部238によって選択されない。なお、選択される再生信号の数は、ユニットを構成するトラック数(N)以上とする。したがって、図7では、ユニットを構成するトラック数が6で、再生ヘッドの数が7であるから、再生ヘッドR−1以外の再生ヘッドR−2,・・・,R−Nの再生信号が再生信号選択部238によって選択される。図8では、ユニットを構成するトラック数が6で、再生ヘッドの数が8であるから、再生ヘッドR−1及び再生ヘッドR−8以外の再生ヘッドR−2,・・・,R−7の再生信号が再生信号選択部238によって選択される。
さらに、この再生信号選択部238の動作を図9乃至図11を用いて詳しく説明する。
図9は図8に示したデータフォーマットの構成をモデル化した図である。同図において、23−0,23−1,・・・,23−7は、例えば、ゲイン制御パターン、同期パターン、及び識別パターンなどからなる第1のプリアンブル、44−1,44−2,・・・,44−6は第2のプリアンブルつまり分離パターンである。
図10は、図9の記録データの再生信号を示した図であり、オフトラックが無い場合、つまり両端の再生ヘッド以外の各再生ヘッドR−2,R−3,・・・,R−8の中心が対応するトラックの中心と一致しているときの、各トラックR−1,R−2,・・・,R−8の再生信号を示した図である。
このとき、再生ヘッドR−1によって、ガードバンド#1の第1のプリアンブルの再生信号1a、トラック#1の第1のプリアンブルの小さい再生信号1b、及び隣ユニットの第1のプリアンブルの小さい再生信号1cが得られる。
再生ヘッドR−2によって、トラック#1の第1のプリアンブルの再生信号2aと、ガードバンド#1の第1のプリアンブルの小さい再生信号2bと、トラック#2の第1のプリアンブルの小さい再生信号2cが得られる。
再生ヘッドR−3によって、トラック#2の第1のプリアンブルの再生信号3aと、トラック#1の第1のプリアンブルの小さい再生信号3bと、トラック#3の第1のプリアンブルの小さい再生信号3cが得られる。
再生ヘッドR−4によって、トラック#3の第1のプリアンブルの再生信号4aと、トラック#2の第1のプリアンブルの小さい再生信号4bと、トラック#4の第1のプリアンブルの小さい再生信号4cが得られる。
再生ヘッドR−5によって、トラック#4の第1のプリアンブルの再生信号5aと、トラック#3の第1のプリアンブルの小さい再生信号5bと、トラック#5の第1のプリアンブルの小さい再生信号5cが得られる。
再生ヘッドR−6によって、トラック#5の第1のプリアンブルの再生信号6aと、トラック#4の第1のプリアンブルの小さい再生信号6bと、トラック#6の第1のプリアンブルの小さい再生信号6cが得られる。
再生ヘッドR−7によって、トラック#6の第1のプリアンブルの再生信号7aと、トラック#5の第1のプリアンブルの小さい再生信号7bと、ガードバンド#2の第1のプリアンブルの小さい再生信号7cが得られる。
再生ヘッドR−8によって、ガードバンド#2の第1のプリアンブルの再生信号8aと、トラック#6の第1のプリアンブルの小さい再生信号8bと、隣ユニットの第1のプリアンブルの小さい再生信号8cが得られる。
ところで、チャネル推定演算では、ユニットを構成する各トラックに配置された分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6を用いて行われるので、このチャネル推定演算によって求められたチャネル行列を用いて行われる信号分離処理において上記のような別のユニットの再生信号はノイズ相当となり、信号分離処理によって得られた再生信号の品質が低下する。そこで、この実施形態では、再生信号選択部238にて、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−8ごとの再生信号の中から、処理対象のユニット以外の再生信号を含まない再生信号のみを、信号分離処理の対象とすることを信号分離演算部236に通知する。例えば、図10の場合では、再生ヘッドR−1と再生ヘッドR−8の再生信号は隣ユニットの再生信号1c,8cを含むので、再生ヘッドR−2,R−3,R−4,R−5,R−6,R−7の各再生信号を信号分離処理の対象とすることが再生信号選択部238から信号分離演算部236に通知される。
図11は、再生ヘッドのオフトラック変動が発生しているときの各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−8の再生信号を示した図である。
このとき、再生ヘッドR−1によって、隣ユニットの第1のプリアンブルの再生信号1cとトラック#1の第1のプリアンブルの再生信号1aが得られる。
再生ヘッドR−2によって、ガードバンド#1の第1のプリアンブルの再生信号2bとトラック#1の第1のプリアンブルの再生信号2aが得られる。
再生ヘッドR−3によって、トラック#1の第1のプリアンブルの再生信号3bとトラック#2の第1のプリアンブルの再生信号3aが得られる。
再生ヘッドR−4によって、トラック#2の第1のプリアンブルの再生信号4bとトラック#3の第1のプリアンブルの再生信号4aが得られる。
再生ヘッドR−5によって、トラック#3の第1のプリアンブルの再生信号5bとトラック#4の第1のプリアンブルの再生信号5aが得られる。
再生ヘッドR−6によって、トラック#4の第1のプリアンブルの再生信号6bとトラック#5の第1のプリアンブルの再生信号6aが得られる。
再生ヘッドR−7によって、トラック#5の第1のプリアンブルの再生信号7bとトラック#6の第1のプリアンブルの再生信号7aが得られる。
再生ヘッドR−8によって、トラック#6の第1のプリアンブルの再生信号8bとガードバンド#2の第1のプリアンブルの再生信号8aが得られる。
この場合には、再生ヘッドR−1の再生信号が隣ユニットの再生信号1cを含むので、再生ヘッドR−1以外の再生ヘッドR−2,・・・,R−8の各再生信号を信号分離処理の対象とすることが再生信号選択部238から信号分離演算部236に通知される。
再生信号選択部238による再生信号の選択は、ユニットを構成する全てのトラックの再生信号が選択されるように行われる。図10の例では、ユニットを構成するトラック数より再生ヘッドの数が多い場合において、隣ユニットの再生信号を含むものを除いた再生信号の数がトラック数と一致する場合を説明したが、もし隣ユニットの再生信号を含むものを除いた再生信号の数がトラック数未満である場合には、隣ユニットの再生信号を含むものの中で、より外乱影響度の少ない再生信号、例えば出力レベルのより小さい再生信号を選択するなどして、トラック数を満たすようにすればよい。
また、図11の例では、7つの再生信号が選択されたが、別の選択条件を加えることで、トラック数である6つの再生信号まで絞り込んでもよい。例えば、再生信号が選択された再生ヘッドの中で両端の再生ヘッド、つまり再生ヘッドR−2と再生ヘッドR−8の各再生信号どうしを比較し、出力レベルが大きいほうの再生信号を選択する。あるいは、出力レベルが他と比べて著しく大きく異なった再生ヘッドの再生信号を非選択としてもよい。
また、上記では、識別パターンをもとに隣ユニットの信号を含む再生信号を判断したが、識別パターンに拠らず、第1のプリアンブルの再生信号のトラックの進行する方向での位置をもとに、隣ユニットの信号を含む再生信号を判断するようにしてもよい。
(チャネル推定演算部234について)
チャネル推定演算部234は、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6の先頭位置を特定して、これらの分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6の再生信号をもとにチャネル推定演算を行って、再生信号ゲイン制御処理部233にてレベルが制御された1ユニット分の再生信号からトラックごとの再生信号を分離するために必要となるチャネル行列を生成する。この際、チャネル推定演算部234は、識別情報検出部232によって検出されたトラックごとの識別情報をもとに、各トラックそれぞれの分離パターンの先頭がどの位置にあるかを知ることができるので、再生信号から分離パターンを精度良く判別することができ、チャネル推定演算を精度良く行うことができる。
さらに、チャネル推定演算部234は、再生信号選択部238によって選択された再生信号を対象に分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6の検出を行うこととしている。これにより、大きなオフトラック変動の発生によって隣ユニットの分離パターンが再生されても、これによるチャネル推定演算への悪影響を回避することができ、より適切なチャネル行列を信号分離演算部236に提供することができる。
ここで、識別情報をもとに各トラックの分離パターンの先頭位置を得る方法の具体例を図12を参照して説明する。なお、図12では、説明の簡単のため、再生ヘッド幅がトラック幅と同等で、トラック数を3、再生ヘッド数を3とし、ガードバンドは無視することとする。
図12において、51−1は再生ヘッドR−1によってトラック#1から再生された第1のプリアンブルの再生信号、51−2は再生ヘッドR−2によってトラック#2から再生された第1のプリアンブルの再生信号、51−3は再生ヘッドR−3によってトラック#3から再生された第1のプリアンブルの再生信号である。また、52−1は再生ヘッドR−1によってトラック#1から再生された第2のプリアンブルの再生信号、52−2は再生ヘッドR−2によってトラック#2から再生された第2のプリアンブルの再生信号、52−3は再生ヘッドR−3によってトラック#3から再生された第2のプリアンブルの再生信号である。
ここで、最初に、トラック#1の第1のプリアンブルが再生される。トラック#1の第1のプリアンブルに含まれる識別パターンから当該トラックの識別情報として、例えば、"1_1"が得られたこととする。これは、1番目のユニットの1番目のトラック#1を意味するので、この場合には、トラック#1の第1のプリアンブルの検出終了位置から、トラック#1に対して予め決められたデータ分後方の位置が、そのトラック#1の第2のプリアンブルの先頭位置であることを判定する。図8の例では、トラック#1の第1のプリアンブルの検出終了位置から90(10+30+10+30+10)データ分後方の位置がそのトラック#1の第2のプリアンブルの先頭位置となる。
次に、トラック#2の第1のプリアンブルが再生される。トラック#2の第1のプリアンブルに含まれる識別パターンから当該トラックの識別情報として、例えば、"1_2"が得られたこととする。これは、1番目のユニットの2番目のトラック#2を意味するので、この場合には、トラック#2の第1のプリアンブルの検出終了位置から、トラック#2に対して予め決められたデータ分後方の位置が、そのトラック#2の第2のプリアンブルの先頭位置であることを判定する。図8の例では、トラック#2の第1のプリアンブルの検出終了位置から120(10+30+10+60+10)データ分後方の位置がそのトラック#2の第2のプリアンブルの先頭位置となる。
次に、トラック#3の第1のプリアンブルが再生される。トラック#3の第1のプリアンブルに含まれる識別パターンから当該トラックの識別情報として、例えば、"1_3"が得られたこととする。これは、1番目のユニットの3番目のトラック#3を意味するので、この場合には、トラック#3の第1のプリアンブルの検出終了位置から、トラック#3に対して予め決められたデータ分後方の位置が、そのトラック#3の第2のプリアンブルの先頭位置であることを判定する。図8の例では、トラック#3の第1のプリアンブルの検出終了位置から150(10+60+10+60+10)データ分後方の位置がそのトラック#2の第2のプリアンブルの先頭位置となる。
このように、識別情報が得られれば、そのトラックあるいはガードバンドの第1のプリアンブルの後方に配置されている分離パターンの先頭位置を正確に特定することができ、後段の分離パターンの再生信号をもとにしたチャネル推定演算をより精度良く行うことが可能になる。
(再生位置制御処理部235について)
再生位置制御処理部235は、再生信号ゲイン制御処理部233にてレベル制御が行われた再生ヘッドごとの再生信号を入力し、同期信号検出部231によって検出された同期パターンをもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。これにより、各再生ヘッドより取り込まれた各再生信号のトラックの進行する方向における再生位置が一致していなくても、各再生信号の再生位置を揃えて信号分離演算部236に入力することができ、安定したデータ再生を行うことができる。
(信号分離演算部236について)
信号分離演算部236は、再生信号選択部238からの情報と、チャネル推定演算部234によって求められたチャネル行列とをもとに、所定の演算処理によって、再生位置制御処理部235を通過し、再生信号選択部238によって選択された各再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。これにより、大きなオフトラック変動の発生によって隣ユニットの記録データが再生されても、信号分離処理への影響を少なくすることができるので、データ再生の品質低下を少なくすることができる。
信号分離演算部236による信号分離処理の演算方法としては、例えば、チャネル行列に対する一般化逆行列を求める方法などが挙げられる。このチャネル行列に対して一般化逆行列を求める方法は、一般に、ゼロ・フォーシング(Zero・Forcing)法と呼ばれる。但し、信号分離処理の方法はこれに限定されるものではなく、例えば、MMSE(Minimum Mean Squared Error)法を用いることもできる。
以上説明したように、この実施形態によれば、データ再生時に、大きなオフトラック変動によって、例えば、隣ユニットのトラックの信号が再生されても、その隣ユニットのトラックを再生した再生ヘッド以外の再生ヘッドの再生信号を対象に、チャネル推定演算や信号分離演算などの演算処理を行うことによって、より安定してデータ再生を行うことができる。
また、この実施形態によれば、隣ユニットのトラックの信号を再生しても、データ再生の品質への影響を少なくすることができるので、再生ヘッドによるメディア上の再生幅を広く設定することができる。したがって、再生時に大きなオフトラック変動が発生しても、ユニット内の端のトラックの信号が再生から漏れたり十分なレベルで再生されないような不具合を回避でき、オフトラック変動に対する耐性を高めることができる。
また、上記の実施形態においては、ガードバンドに第1のプリアンブルを配置することとしたが、隣ユニットのトラックが再生されていることを検出することができれば、ガードバンドに必ずとも第1のプリアンブルを配置する必要はない。隣ユニットのトラックが再生されていることは、例えば、隣ユニットのトラックの第1のプリアンブルに含まれている識別パターンを検出することなどによって可能である。
また、上記の実施形態においては、第1のプリアンブルの識別パターンをもとにトラックを識別することとしたが、ゲイン制御パターン、同期パターンあるいは分離パターンの各トラック間での位置関係によってもユニット内のトラックを識別することが可能であるから、本発明の構成において、識別パターンは必ずしも必須ではない。また、ユニット内のトラックを識別できるように、同期パターンに複数の種類のパターンを用意しておき、この同期パターンの個々の種類に識別情報を対応付けておくようにしてもよい。
また、第1のプリアンブル23内に配置されているゲイン制御パターンを、同期パターンの後方に追加配置することによって、ゲイン制御のための情報量を増やしてもよい。
第1のプリアンブル23に配置されているゲイン制御パターンと、第2のプリアンブル24に配置されている分離パターンには同一のパターンを採用してもかまわない。
また、上記実施形態では、各再生ヘッドと1ユニット分の複数のトラックとの再生時のトラック幅方向の位置関係を検出するために必要なパターンとして、図7などに示した分離パターン44−1,44−2,・・・,44−6を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラッキングサーボ情報などを用いることも可能である。この場合には、トラッキングサーボ情報の各記録パターンと各再生ヘッドとの位置関係をユニット単位にまとめたものがチャネル推定情報として生成される。
また、分離パターンを用いて上記の位置関係を検出する手段と、トラッキングサーボ情報を用いて位置関係を検出する手段の両方を併用して、チャネル推定演算を行ってもよい。
さらに、上記の実施形態では6行6列のチャネル行列を算出する場合を説明したが、その他の正方行列であっても、その一般化逆行列を求めることによって信号分離処理を行うことが可能である。さらに、正方行列以外の行列でも、同様にしてその一般化逆行列を求めるようにすればよい。
なお、行列の一般化逆行列を求められるようにするために、分離パターンの種類はトラック数に対応させておく必要がある。
また、分離パターンは、互いに一次独立なトラック数のパターンとする。
上記の実施形態では、時間軸上で直交する分離パターンを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、周波数軸上で直交するような分離パターン、あるいは、直交符号を用いた分離パターンなどを用いてもよい。
上記の実施形態では、図1の記録装置では、ガードバンドとして記録するために1個の記録ヘッドW−0を有していたが、これを、記録ヘッドW−6のさらに外側に追加して、第2のガードバンドとして記録するための記録ヘッドを有するようにし、例えば図6のような記録において、ガードバンド#s+1の記録をより効率良く行ってもよい。
上記の実施形態では、磁気記録メディアにトラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録し、その磁気記録メディアからトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生する磁気記録再生方式について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、トラックごとに記録位置を揃えることなく信号を記録し、その磁気記録メディアから、トラックごとの再生位置を揃えて再生を行う磁気記録再生方式にも同様に適用できる。また、トラックごとに記録位置を揃えて信号を記録し、その磁気記録メディアから、トラックごとの再生位置を揃えることなく再生を行う磁気記録再生方式にも同様に適用できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、第1の実施形態の記録装置によって記録が行われた磁気記録メディア2からトラックごとに再生位置を揃えることなく信号を再生可能な他の再生装置について説明する。
図13は、この第2の実施形態の再生装置201の構成を示す図である。
同図に示すように、この再生装置201では、信号分離処理部230の構成のみが図3に示した第1の実施形態の再生装置200に対して異なる。
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、信号分離演算部236、再生信号選択部238、及びチャネル行列推定部239を有している。
チャネル行列推定部239は、再生信号選択部238からの情報と、トラック上でデータを挟んで連続する複数のプリアンブルを用いてチャネル推定演算によってそれぞれ求められた複数のチャネル行列とを用いて、そのデータの区間内で可変のチャネル行列を推定する。
図14は、この再生装置201のユニット再生の動作の流れを示すフローチャートである。
この再生装置201では、まず、それぞれ隣接する1以上のトラックから信号を再生することが可能なN個の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nによって、磁気記録メディア2の1ユニット分のM本のトラックから信号を再生する(ステップS301)。
次に、ゲイン調整部224−1,224−2,・・・,224−Nにて、各再生アンプ221−1,221−2,・・・,221−Nの出力の振幅レベルが調整された後、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nにてディジタル値に変換されて同期信号検出部231に出力される(ステップS302)。
次に、同期信号検出部231により、A/Dコンバータ225−1,225−2,・・・,225−Nより出力された再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号のプリアンブル内の同期パターンが検出される(ステップS303)。
次に、識別情報検出部232により、同期信号検出部231により検出された同期パターンを用いて、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターンの検出を行い、検出した識別パターンに対応する識別情報を出力する(ステップS304)。
次に、再生信号ゲイン制御処理部233により、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出し、このゲイン制御パターンを用いて、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号に対するゲインを演算して、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号のレベルを制御する(ステップS305)。
次に、再生信号選択部238により、識別情報検出部232により検出された識別情報をもとに、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号から、所定の選択条件に従って、少なくともユニットを構成するトラック数の再生信号を選択して、チャネル推定演算部234及び信号分離演算部236にその選択結果の情報を通知する(ステップS306)。
次に、チャネル推定演算部234にて、再生信号選択部238からの情報と、同期信号検出部231により検出された同期パターンと、識別情報検出部232により検出された識別情報とを用いて、再生信号選択部238によって選択された各再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンを用いてチャネル推定演算によってチャネル行列を演算する(ステップS307)。
次に、チャネル行列推定部239により、再生信号選択部238からの情報と、トラック上でデータを挟んで連続する複数のプリアンブル中の分離パターンを用いてチャネル推定演算によって求められた複数のチャネル行列とを用いて、そのデータの区間内で可変のチャネル行列を推定する(ステップS308)。
次に、再生位置制御処理部235により、同期信号検出部231により検出された同期パターンを用いて、再生信号ゲイン制御処理部233を通過した再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−Nごとの再生信号の再生位置が合わせられる(ステップS309)。
次に、信号分離演算部236により、再生信号選択部238からの情報と、チャネル行列推定部239によって求められたチャネル行列とを用いて、所定の演算処理によって、再生位置制御処理部235を通過し、再生信号選択部238によって選択された各再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS310)。
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS311、復元部260にて各トラックのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS312)。
図15は、図1に示した上記の記録装置100によって記録が行われた磁気記録メディア2上の他のデータフォーマットの概念図である。
このデータフォーマットは、記録装置100による磁気記録メディア2へのユニット単位の記録動作が、トラックの進行する方向に複数のユニットが連続して配置されるように繰り返されることによって得られたものである。なお、説明の簡単のため、1ユニットを構成するトラック数は3としてある。
トラック#1、トラック#2、トラック#3はそれぞれ、記録装置100のM(M=3)個の記録ヘッドによって磁気記録メディア2に記録されたトラックである。トラック#1、トラック#2、トラック#3にはそれぞれ、プリアンブル21(1),21(2),・・・とデータ22(1),22(2),・・・が記録されている。プリアンブル21(1)は、前述したように、データ22(1)を再生する制御のために必要な情報として、ゲイン制御パターン、同期パターン、識別パターン、及び分離パターンを含むものであり、プリアンブル21(2),・・・も同様である。
ここでM個のトラック#1、トラック#2、トラック#3それぞれの、M個のプリアンブル21とM個のデータ22とのまとまりが、データを再生するための信号処理の一単位としてのユニット51(1),51(2),・・・,51(E)である。また、M個のトラック#1、トラック#2、トラック#3のまとまりを、以降「ユニット構成トラック列」と呼び、符号として54を与える。
ユニット構成トラック列54には、複数のユニット51(1),51(2),・・・,51(E)がトラックの進行する方向に連続して配置されている。この実施形態では、トラック上でデータ22を挟んで連続する複数のプリアンブル21、例えば2つのプリアンブル21内の分離パターンの再生信号をもとに、チャネル推定演算によってそれぞれ求められた例えば2つのチャネル行列から、そのデータ22の区間内で可変のチャネル行列として、データ22の区間を分割した各区間にそれぞれ対応する複数のチャネル行列を推定することとしている。このため、M個のトラック#1、トラック#2、トラック#3それぞれの最後のデータ22(E)の後にもプリアンブル21(E+1)が追加されている。
また、磁気記録メディア2には、S個のユニット構成トラック列54が互いに平行に配置され、隣接する各ユニット構成トラック列54の間にはガードバンド52と呼ばれる、何も記録されていない領域が設けられている。
図16は本発明における課題を説明するために、図15に示すフォーマット上での各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−5のオフトラック変動の例を示す図である。
再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−5の移動方向を符号13の矢印方向とすると、各トラック#1,#2,#3及びガードバンド#1,#2からプリアンブルは、プリアンブル21(n)、プリアンブル21(n+1)の順で再生される。再生時に例えば外乱等によりトラッキングが不安定となった場合に、プリアンブル21(n)の位置では各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−5と各トラック#1,#2,#3との位置関係が適正であったのが、プリアンブル21(n+1)の位置では適正な位置関係から逸脱してしまうことが考えられる。図16の例では、プリアンブル21(n+1)の位置で、各再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−5と各トラック#1,#2,#3との位置関係は適正な状態から図中下方にトラック幅の100%分ずれた状態を示している。このような場合、プリアンブル21(n)内の分離パターンを用いて得られた分離信号は、データ22(n)区間の前半の限られた部分しか良好な品質が得られない。なお、ここでは再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−5が移動するものとして説明したが、再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−5が固定で、磁気記録メディア2が符号14の矢印方向に移動する場合も同様である。
そこで本実施形態では、2つのプリアンブル21(n),21(n+1)の間のデータ22(n)の区間をk分割する。この例ではk=3とする。データ22(n)の区間の最も前方の分割区間とこれと同じ長さのプリアンブル21(n)より前方のデータ22(n−1)の区間とを合わせた区間をT1区間とする。同様に、データ22(n)の区間の最も後方の分割区間とこれと同じ長さのプリアンブル21(n+1)より後方のデータ22(n+1)の区間とを合わせた区間をT3区間とする。そして、データ22(n)の区間の残りをT2区間とする。
チャネル行列推定部239は、2つのプリアンブル21(n),21(n+1)内の分離パターンからチャネル推定演算によってそれぞれ得られた2つのチャネル行列を用いて、例えば、直線補間などによって、上記の各区間T1,T2,T3それぞれに対応するチャネル行列を推定する。
この例において、チャネル行列を推定するための前提条件を示す。チャネル行列に用いられる値の最大値は1.0、最小値は0.0とする。例えば推定演算において、チャネル行列の値が0.0を下回る場合は0.0に固定し、1.0を上回る場合は1.0に固定する。また再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−5の幅はトラック幅の1.5倍とし、個々の再生ヘッドR−1,R−2,・・・,R−5はそれぞれ複数のトラックから信号を再生できるものとする。
チャネル行列推定部239は、プリアンブル21(n)の再生信号からチャネル推定演算によって求められたチャネル行列をそのままT1区間のチャネル行列34の推定結果とする。また、チャネル行列推定部239は、プリアンブル21(n+1)の再生信号からチャネル推定演算によって求められたチャネル行列をそのままT3区間のチャネル行列35の推定結果とする。そして、チャネル行列推定部239は、T1区間のチャネル行列34とT3区間のチャネル行列35とから直線補間によってT2区間のチャネル行列36を推定する。
信号分離演算部234による信号分離処理は、区間T1,T2,T3ごとに行われる。この際、T1,T2,T3のそれぞれ区間に対して推定された各々のチャネル行列において、再生信号選択部238によって選択された再生信号のみを有効することで、再生信号選択部238によって選択された各再生信号が各トラックに対してどのような位置関係にあるかを示すチャネル行列を生成し、このチャネル行列を用いて、再生信号選択部238によって選択された再生信号から、所定の演算処理によって、トラックごとの再生信号を分離する。
例えば、図16において、T1区間では、再生ヘッドR−3,R−4,R−5の再生信号が再生信号選択部238によって選択されて、これら再生ヘッドR−3,R−4,R−5の再生信号に対して信号分離処理が行われる。T2区間では、再生ヘッドR−2,R−3,R−4,R−5の再生信号が再生信号選択部238によって選択されて、これら再生ヘッドR−2,R−3,R−4,R−5の再生信号に対して信号分離処理が行われる。T3区間では、再生ヘッドR−2,R−3,R−4の再生信号が再生信号選択部238によって選択されて、これら再生ヘッドR−2,R−3,R−4の再生信号に対して信号分離処理が行われる。
以上説明したように、本実施形態によれば、データを挟んで連続する複数のプリアンブルの再生信号からそれぞれチャネル推定演算の結果として求められた複数のチャネル行列をもとに、そのデータの区間内で可変のチャネル行列を推定し、この可変のチャネル行列を用いて、1ユニット分の各再生ヘッドの再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行うことによって、各再生ヘッドと1ユニット分の各トラックとのトラック幅方向での位置関係が、外乱等によるオフトラック変動によって適正な状態から外れた場合においても、データ再生を良好に行うことが可能になる。さらに、この際にも、隣ユニットの再生信号を信号分離処理の対象から外すことによって、より安定してデータ再生を行うことができ、高トラック密度化を実現できる。
なお、上記では、連続する2つのユニット内のプリアンブル内の分離パターンの再生信号をもとにチャネル推定演算によって求められた2つのチャネル行列から、オフトラック変動の状況を反映した、データ区間で可変のチャネル行列を推定することとしたが、連続する3つ以上のユニット内のプリアンブル内の分離パターンの再生信号をもとにチャネル推定演算によって求められた3つ以上のチャネル行列から、各々のデータ区間ごとに可変のチャネル行列を推定して、信号分離処理に用いるようにしてもよい。また、チャネル行列推定部239によるチャネル行列の補間方法としては、直線補間以外の手法を用いても構わない。また、区間T1,T2,T3の長さは必ずしも均等である必要はない。区間の数は必ずしも3である必要はない。さらに、複数の参照するプリアンブルは、必ずしも連続していなくても良く、チャネル推定演算が行うための情報が得られることが出来れば良い。
さらに、2つのプリアンブル21(n),21(n+1)間のデータ区間を2分割し、前方の区間ではプリアンブル21(n)内の分離パターンより得られたチャネル行列を用いて信号分離処理を行い、後方の区間ではプリアンブル21(n+1)内の分離パターンより得られたチャネル行列を用いて信号分離処理を行うようにしてもよい。したがって、この方式では、チャネル行列推定部239によるチャネル行列の補間は不要である。
さらに、2つのプリアンブル21(n),21(n+1)間のデータ区間を分割せず、プリアンブル21(n)内の分離パターンの再生信号より得られたチャネル行列とプリアンブル21(n+1)内の分離パターンの再生信号より得られたチャネル行列とを所定の条件で選択して分離処理を行うようにしても構わない。この場合も、チャネル行列推定部239によるチャネル行列の補間は不要である。
本発明は、所定の複数のチャネル行列から、そのシステム及びその時の状況に適したチャネル行列を再生成し、これを用いることによって、よりデータ再生を良好に行うものである。
なお、本発明において、プリアンブル21の構成は図示したものに限定されるものではなく、チャネル行列の演算に使用できるものであれば何でもよい。
図17は、図15のデータフォーマットの変形例を示す図である。先に説明した図15のデータフォーマットでは、データ22(n)を挟んで連続する2つのプリアンブル21(n),21(n+1)内の分離パターンからチャネル推定演算によってそれぞれ得られた2のチャネル行列を用いて、データ22(n)の区間内で可変のチャネル行列を推定することとしたが、例えば、データ22(n+1)よりも前方に配置された複数のプリアンブル、すなわちプリアンブル21(n),21(n+1)内の分離パターンの再生信号からチャネル推定演算によって得られた2つのチャネル行列を用いて、データ22(n+1)の区間内で可変のチャネル行列を推定することによっても同様の効果を期待できる。このような場合には、図15における最後のデータ22(E)の後のプリアンブル21(E+1)は不要である。なお、この場合には、プリアンブル21とデータ22の再生信号を信号分離処理部230の記憶部内に記憶していなくても信号分離処理を行うことが可能である。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、シングルヘッドを用いた磁気記録再生方式を説明する。
この実施形態の磁気記録再生方式は、1個、又はユニット当たりのトラック数より少ない個数の記録ヘッド及び再生ヘッドを有し、トラックごとに記録位置を揃えることなく記録されている記録媒体を、トラックごとに再生位置を揃えることなく再生する方式である。
図18は、この第3の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置300の構成を示す図である。
この記録装置300は、シングルヘッドでユニットの記録を行うものである。ここで、一つの記録ヘッドによってユニットの記録を行う所定の回数をMとし、また一つの再生ヘッドによってユニットの再生を行う所定の回数をNとする。この実施形態では、M<Nとする。
同図に示すように、この記録装置300は、マルチトラック化部110、マルチトラック記録符号化部120、マルチトラックプリアンブル付加部130、マルチトラック記録部140、記録ヘッドアレイ150、及びガードバンド記録部190で構成される。
マルチトラック記録符号化部120は、データ分配器111にてM個に振り分けられた記録データを符号化するM個の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−Mで構成される。
マルチトラックプリアンブル付加部130は、マルチトラック記録符号化部120によって符号化された各記録データに、データ再生の制御に必要なプリアンブルを付加するM個のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−Mと、トラックごとのプリアンブルが付加された記録データの符号列が記憶される記憶部132とで構成される。
ガードバンド記録部190は、消去信号を発生する消去信号発生部161と、消去信号発生部161より出力された消去信号の符号列に、同期パターン及び識別パターンを含むガードバンド用のプリアンブルを付加するプリアンブル付加部131−0と、ガードバンド用のプリアンブルが付加された消去信号を記憶する記憶部162とで構成される。
マルチトラック記録部140は、記憶部132及び記憶部162から読み出す記録符号列を選択する切替部148と、切替部148によって選択された記録符号列に所望のタイミングを与える1個の出力タイミング設定部141と、記録補償処理を行う1個の記録補償部144と、記録補償処理後の記録符号列をもとに記録ヘッドW−1を駆動する1個の記録アンプ147とで構成される。
図19は、この記録装置300のユニット及びガードバンク記録時の動作の流れを示すフローチャートである。
この記録装置300では、まず、トラック用の記録符号列の生成か、ガードバンド用の記録符号列の生成かによって処理を分岐させる(ステップS301)。これから行う処理がトラック用の記録符号列の生成である場合、入力された記録データ1をマルチトラック化部110にて、1ユニット分のトラック数のデータに分配する(ステップS302)。
分配された各データは、それぞれマルチトラック記録符号化部120の記録符号化部121−1,121−2,・・・,121−Mにて、磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列に符号化される。このとき符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報も付加される(ステップS303)。
次に、マルチトラックプリアンブル付加部130のプリアンブル付加部131−1,131−2,・・・,131−Mにて、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、データ再生の制御に必要なプリアンブルのパターンが付加されて、トラック用の記録符号列が得られる(ステップS304)。このようにして生成されたトラック用の記録符号列は記憶部132に記憶される(ステップS305)。
また、これから行う処理がガードバンド用の記録符号列の生成である場合、ガードバンド記録部190の消去信号発生部161より所定の単位分の消去信号が発生され(ステップS306)、プリアンブル付加部131−0によって、その消去信号に、同期パターン及び識別パターンを含むガードバンド用のプリアンブルが付加されて(ステップS307)、記憶部162にガードバンド用の記録符号列として記憶される(ステップS308)。
この後、切替部148によって、記憶部132に記憶されたトラックごとのトラック用の記録符号列及び記憶部162に記憶されたガードバンド用の記録符号列から、所定の順番で一つの記録符号列が読み出される(ステップS309)。次に、読み出されたトラック用の記録符号列またはガードバンド用の記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後(ステップS310)、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS311)。
この後、1ユニット分のトラックとガードバンドの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS312)、終了していなければ(ステップS312のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させる(ステップS313)。次に、ステップS309に戻って記憶部132または記憶部162からトラック用の記録符号列またはガードバンド用の記録符号列が読み出されて、同様に磁気記録メディア2に記録する処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
例えば、図6に示したデータフォーマットを用いた場合には、はじめにガードバンド#1の記録を行い、次に、トラック#1の位置に移動してトラック#1の記録を行い、この後、同様にトラック#2,・・・,#6の位置に移動してそのトラックの記録を行う。ガードバンド#2の記録は次のユニットの記録サイクルにて記録されることになる。
次に、この記録装置300の変形例を説明する。
図20は、図18の記録装置300の変形例である記録装置301の構成を示す図である。
同図に示すように、この記録装置301は、マルチトラック記録符号化部120及びマルチトラックプリアンブル付加部130の構成が、図18の記録装置300と異なる。マルチトラック記録符号化部120は、所定の単位の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データを記録符号化する一つの記録符号化部121で構成され、またマルチトラックプリアンブル付加部130は、トラックごとで符号化された記録データに、データ再生の制御のために必要なプリアンブルのパターンを付加する一つのプリアンブル付加部131と、プリアンブルが付加されたトラック用の記録符号列を記憶する記憶部132とで構成される。また、この記録装置301では、図18に示す記録装置300の構成から、マルチトラック化部110(データ分配器111)が省かれている。
図21は、この記録装置301のユニット及びガードバンド記録の動作の流れを示すフローチャートである。
この記録装置301では、まず、これから行う処理がトラックとして記録する記録符号列の生成か、ガードバンドとして記録する記録符号列の生成かによって処理を分岐させる(ステップS321)。これから行う処理がトラックとして記録する記録符号列の生成である場合、記録符号化部121にて、所定の単位分の記録データ、例えば所定のトラック数分の記録データを磁気記録メディア2の記録再生特性を考慮した符号列にそれぞれ符号化する。このとき記録データの符号列に、復調用同期パターンなどの、データ復調時に必要な情報もそれぞれ付加される(ステップS322)。
次に、符号化されたそれぞれの記録データの所定の位置に、プリアンブル付加部131にて、データ再生の制御に必要なプリアンブルのパターンが付加されて、所定の単位分のトラック用の記録符号列が得られる(ステップS323)。このようにしてプリアンブルが付加された所定の単位分のトラック用の記録符号列は記憶部132に記憶される(ステップS324)。
また、これから行う処理がガードバンドとして記録する記録符号列の生成である場合、ガードバンド記録部190の消去信号発生部161より所定の単位分の消去信号を発生させ(ステップS325)、プリアンブル付加部131−0によって、その消去信号の符号列に、同期パターン及び識別パターンを含むガードバンド用のプリアンブルが付加されて(ステップS326)、記憶部162にガードバンド用の記録符号列として記憶される(ステップS327)。
この後、切替部148によって、記憶部132に記憶されたトラックごとのトラック用の記録符号列及び記憶部162に記憶されたガードバンド用の記録符号列から、所定の順番で一つの記録符号列が読み出される(ステップS328)。次に、読み出されたトラック用の記録符号列またはガードバンド用の記録符号列に対して出力タイミング設定部141によって所望のタイミングが与えられた後(ステップS329)、記録補償部144にて、磁気記録メディア2への記録に最適化するための記録補償処理が施され、記録アンプ147にて電圧から電流に変換されて、記録ヘッドW−1によって磁気記録メディア2に記録される(ステップS330)。
この後、1ユニット分のトラックとガードバンドの記録が終了したかどうかを判定し(ステップS331)、終了していなければ(ステップS331のNO)、記録ヘッドW−1を次の位置に移動させる(ステップS332)。この後、ステップS328に戻って記憶部132または記憶部162からトラック用の記録符号列またはガードバンド用の記録符号列が読み出されて、同様に磁気記録メディア2に記録する処理を繰り返す。以上の動作を、1ユニット分のトラックの記録が終了するまで繰り返す。
例えば、図6に示すデータフォーマットを用いた場合には、はじめにガードバンド#1の記録を行い、次に、トラック#1の位置に移動してトラック#1の記録を行い、この後、同様にトラック#2,・・・,#6の位置に移動してそのトラックの記録を行う。ガードバンド#2の記録は次のユニットの記録サイクルにて記録されることになる。
次に、本発明の第3の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置について説明する。
図22は本発明の第3の実施形態である磁気記録再生方式における再生装置400の構成を示す図である。
同図に示すように、この再生装置400は、再生ヘッドアレイ210、チャネル再生部220、信号分離処理部230、マルチトラック復調部240、復元部260、トラッキング制御部270を備える。
再生ヘッドアレイ210は、磁気記録メディア2に記録された各トラックから信号を読み出す1個の再生ヘッドR−1を有する。
チャネル再生部220は、再生ヘッドアレイ210に搭載された再生ヘッドR−1によって再生された信号を増幅する1個の再生アンプ221と、再生アンプ221の出力の振幅レベルが所定の値になるようにゲインを制御する1個のゲイン調整部224と、ゲイン調整部224の出力を所定のビット幅のディジタル値に量子化する1個のA/Dコンバータ225とを備える。
信号分離処理部230は、同期信号検出部231、識別情報検出部232、再生信号ゲイン制御処理部233、チャネル推定演算部234、再生位置制御処理部235、信号分離演算部236、記憶部237、再生信号選択部238、及びチャネル行列推定部239を有している。
同期信号検出部231は、A/Dコンバータ225より出力された再生ヘッドR−1の再生信号からプリアンブル内の同期パターンを検出する。
識別情報検出部232は、同期信号検出部231により得られた情報を用いて、再生ヘッドR−1の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して検出し、識別情報を出力する。
再生信号ゲイン制御処理部233は、識別情報検出部232を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号からプリアンブル内のゲイン制御パターンを検出して、このゲイン制御パターンをもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する。
再生信号選択部238は、識別情報検出部232により検出された識別情報をもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号から、所定の選択条件に従って、少なくともユニットを構成するトラック数の再生信号を選択して、チャネル推定演算部234及び信号分離演算部236にその選択結果の情報を通知する。
チャネル推定演算部234は、再生信号選択部238からの情報と、同期信号検出部231により検出された同期パターンと、識別情報検出部232により検出された識別情報とを用いて、再生信号選択部238によって選択されたスキャンごとの再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンを用いてチャネル推定演算によってチャネル行列を演算する。
チャネル行列推定部239は、再生信号選択部238からの情報と、トラック上でデータを挟んで連続する複数のプリアンブルを用いてチャネル推定演算によってそれぞれ求められた複数のチャネル行列とを用いて、そのデータの区間内で可変のチャネル行列を推定する。
再生位置制御処理部235は、同期信号検出部231により得られた情報をもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う。
信号分離演算部236は、再生信号選択部238からの情報と、チャネル行列推定部239によって求められたチャネル行列とをもとに、所定の演算処理によって、再生位置制御処理部235を通過し、再生信号選択部238によって選択された各再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理を行う。
なお、信号分離処理部230は、処理を行うために必要な情報を記憶する図示しない記憶部を持っている。信号分離処理部230は、この記憶部に、例えば、プリアンブルとデータからなる所定のユニット分の情報を記憶して処理を行う。
記憶部237は、識別情報検出部232と再生信号ゲイン制御処理部233との間に配置され、少なくとも1ユニット分の再生信号を記憶する。
マルチトラック復調部240は、図4に示したように、信号分離演算部236にて分離された各トラックごとの再生信号に対して等化処理を行うM個の等化器241−1,241−2,・・・,241−Mと、等化器241−1,241−2,・・・,241−Mの出力からビット同期を行うM個のPLL242−1,242−2,・・・,242−Mと、PLL242−1,242−2,・・・,242−Mで生成されたビット同期信号を用いて各トラックごとの再生信号を二値化して符号列を生成する、たとえばビタビ検出部などM個の検出部243−1,243−2,・・・,243−Mと、検出部243−1,243−2,・・・,243−Mの出力である2値化された再生信号から符号列上の同期信号を検出するM個の同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−Mと、同期信号検出部244−1,244−2,・・・,244−Mにより検出された同期パターンをもとにデータの先頭位置を特定して符号列からデータ列を復号するM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−Mとを備える。なお、マルチトラック復調部240は、上記の処理を行うために必要なデータ等の情報を記憶する、図示しない記憶部を有している。
図22に戻って、復元部260は、マルチトラック復調部240内のM個の復号器245−1,245−2,・・・,245−Mより出力された各トラックのデータを、記録時と逆の動作により連結して再生データ3を復元するデータ結合器261を備える。
なお、シングルヘッドによる再生時のトラックのトレースは、少なくとも1ユニットの記録トラック数の回数だけ繰り返される。すなわち、トラック数以上の回数トレースを繰り返してもよい。その際、1ユニット分の全てのトラックが少なくとも1回はトレースされるようにする。記憶部237には、再生ヘッドR−1が移動した各位置で再生したユニット分の信号、すなわち再生ヘッドR−1が各位置で複数のトラックからそれぞれ再生した信号が記憶される。
図23は、この再生装置400のユニット再生の動作を示すフローチャートである。
この再生装置400では、まず、再生ヘッドR−1によって、最初の位置で1以上のトラックから信号が再生される(ステップS401)。次に、ゲイン調整部224にて、再生アンプ221の出力の振幅レベルが調整された後、その出力はA/Dコンバータ225にてディジタル値に変換されて同期信号検出部231に出力される(ステップS402)。
次に、同期信号検出部231により、A/Dコンバータ225より出力された再生信号に含まれる同期パターンの検出が行われた後(ステップS403)、識別情報検出部232にて、同期信号検出部231によって検出された同期パターンを用いて、再生ヘッドR−1の再生信号における識別パターンの先頭位置を特定して識別パターンの検出を行い、検出した識別パターンに対応する識別情報を出力する(ステップS404)。識別情報検出部232を通過した再生信号は記憶部237に記憶される(ステップS405)。
次に、1ユニット分の再生信号が記憶部237に記憶されたかどうかを判断し(ステップS406)、1ユニット分の再生信号が記憶部237にまだ記憶されていない場合には、再生ヘッドR−1をトラック幅方向の次の位置にずらし(ステップS407)、ステップS401からステップS405までの動作を繰り返す。
1ユニット分の再生信号が記憶部237に記憶された場合、再生信号ゲイン制御処理部233は、記憶部237に記憶された1ユニット分のプリアンブル内のゲイン制御パターンの再生信号をもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号に対するゲインを演算して、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号のレベルを制御する(ステップS408)。
次に、再生信号選択部238により、識別情報検出部232により検出された識別情報をもとに、スキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号から、所定の選択条件に従って、少なくともユニットを構成するトラック数の再生信号を選択して、チャネル推定演算部234及び信号分離演算部236にその選択結果の情報を通知する(ステップS409)。
次に、チャネル推定演算部234にて、再生信号選択部238からの情報と、同期信号検出部231により検出された同期パターンと、識別情報検出部232により検出された識別情報とを用いて、再生信号選択部238によって選択された各再生信号のプリアンブル内に含まれる分離パターンの先頭位置を特定し、これらの分離パターンを用いてチャネル推定演算によってチャネル行列を演算する(ステップS410)。
次に、チャネル行列推定部239により、再生信号選択部238からの情報と、トラック上でデータを挟んで連続する複数のプリアンブル中の分離パターンを用いてチャネル推定演算によってそれぞれ求められた、複数のチャネル行列とを用いて、そのデータの区間内で可変のチャネル行列を推定する(ステップS411)。
次に、再生位置制御処理部235にて、同期信号検出部231により検出された同期パターンをもとに、再生信号ゲイン制御処理部233を通過したスキャンごとの再生ヘッドR−1の再生信号の再生位置を合わせる処理を行う(ステップS412)。
次に、信号分離演算部236により、再生信号選択部238からの情報と、チャネル行列推定部239によって求められたチャネル行列とを用いて、所定の演算処理によって、再生位置制御処理部235を通過し、再生信号選択部238によって選択された各再生信号からトラックごとの再生信号を分離する処理が行われる(ステップS413)。
この後は、トラックごとに分離された再生信号からマルチトラック復調部240にてデータ列の復号が行われ(ステップS414)、復元部260にて各トラックごとのデータが連結されて再生データ3が得られる(ステップS415)。
なお、A/Dコンバータ225の直前には必要に応じて不要な高域成分を除去するローパス・フィルタが備えられていてもよい。また、ゲイン調整部224については、A/Dコンバータ225の後段に接続して量子化後にゲインを制御するようにしてもよい。これは、A/Dコンバータ225のビット幅をより有効に用いたり、ゲイン調整部224の構成を、プリアンプルに含まれる各パターンの検出を考慮した簡単なものとしたい場合に有効である。あるいは、同期信号検出部231において利得目標値との誤差をとった情報を用いてゲイン調整部224においてゲイン調整を行うようにしてもよい。
また、マルチトラック復調部240にて、トラックごとの出力タイミングを制御しながら復調処理を行うようにすれば、復元部260でのデータの連結処理は不要となる。したがって、この場合には復元部260は不要である。
本発明は、上記で説明したリニア記録方式、ノンアジマス記録方式の磁気記録再生に適用されることに限らず、ヘリカル記録方式、アジマス記録方式にも適用可能である。
その具体例を以下に示す。
図24は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,W−3を用いて、ノンアジマス方式とヘリカル・スキャン方式で磁気記録メディア2に記録されるデータフォーマットの概念図である。ヘリカル・スキャン方式においても、トラック#1,トラック#2,トラック#3で構成されるユニット構成トラック列54の間にはガードバンド52が配置される。
トラック#1,トラック#2,トラック#3に記録されるプリアンブル21は、例えば図7、図8に示したものと同様でよい。このようなヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
図25は、複数の記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6を用いて、ダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式により記録媒体に記録されるデータフォーマットの概念図である。
本例では、記録用と再生用のそれぞれに6つの記録ヘッドW−1,W−2,・・・,W−6が用いられる。これらの記録ヘッドのうち、連続する3つの記録ヘッドW−1,W−2,W−3と、残る連続する3つの記録ヘッドW−4,W−5,W−6は、互いにトラックの磁化方向であるアジマス方向が異なるようにしてある。すなわち、トラック#1−#3とトラック#4−#6とはアジマス方向が異なる。これらのトラック#1−#6が、データを再生するための処理の一単位であるユニットを複数含むユニット構成トラック列54となる。なお、このダブルアジマスの場合においては、ガードバンドは不要である。
なお、この例では、トラック#1−#6のまとまりを、データ再生のための信号処理の一単位(ユニット)としているが、アジマス方向が同一である3つの連続するトラック(例えばトラック#1−#3、トラック#4−#6)を、それぞれ一つのユニットとして信号処理を行うようにしてもよい。
各トラック#1−#6に記録されるプリアンブルは、例えば図7、図8に示したものと同様でよい。このようなダブルアジマス方式とヘリカル・スキャン方式の磁気記録再生方式においても、本発明は適用可能であり、第1の実施形態の磁気記録再生方式における記録装置100及び再生装置200の構成を採用することができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に示す構成のものに限定されるものではなく、請求項に記載した技術的範囲を逸脱しない範囲において種々に変更し変形することは勿論である。