JP4969505B2 - 走行車両のサスペンション装置 - Google Patents
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Description
ところで、前記車体は荷重、衝撃等を受けることにより、揺動フレームは後部の支持軸を中心に上下に揺動するものであり、前車軸ケースに対する前フレームの高さが変化し得るものであるので、前フレームが低位置にあるときと高位置にあるときとでは、前車軸ケースが左右揺動した時に被揺動規制部に対する揺動規制部の高さが大きく変化する。
また、受け面が略水平面である場合には、揺動規制部の高さ変化は被揺動規制部との当接角度にそのまま反映され、前フレームが高いとき、即ち、前フレームと前車軸ケースとの間隔が大きいときには前車軸ケースが大きく揺動可能になり、大きく揺動したときに前輪とボンネットとの間のクリアランスが減少して干渉を起こす可能性があり、また、前フレームが低く、前フレームと前車軸ケースとの間隔が小さいときには前車軸ケースの左右揺動範囲が極端に小さくなり、左右サスペンションシリンダの緩衝作用が制限されたり、その制限を回避するために車高を上げ、前フレームと前車軸ケースとの間隔を必要量確保するという調整が必要になったりする。
本発明は、揺動規制部の受け面と被揺動規制部の当接面とを下から上へ外向きに傾斜しさせることにより、前フレームと前車軸ケースとの間隔変化度合いよりも前車軸ケースの左右揺動の制限角度変化の度合いを小さくできるようにした走行車両のサスペンション装置を提供することを目的とする。
第1に、エンジンEの後部にミッションケースMを連結しかつエンジンEから前方へ前フレーム3を突設して車体2を構成し、この車体2の前部に揺動フレーム4の後部を左右方向の支持軸5廻り上下揺動自在に支持し、前記揺動フレーム4に前輪26を縣架した前車軸ケース6を前後方向のセンタ軸7廻り左右揺動自在に支持し、前記前フレーム3に前輪26用の左右サスペンションシリンダ8を設けており、
前記前フレーム3に受け面36Aを有する揺動規制部36を設け、前記前車軸ケース6に左右揺動した時に前記受け面36Aと当接する当接面37Aを有する被揺動規制部37を設けており、
前記受け面36Aと当接面37Aとを下から上へ左右方向外向きに傾斜した傾斜面に形成していることである。
第3に、前記前フレーム3の受け面36Aのセンタ軸7を通る左右水平の面に対する傾斜角度K1と前記前車軸ケース6の当接面37Aのセンタ軸7を通る左右水平の面に対する傾斜角度K2とを、前フレーム3が最上位にあるとき、当接面37Aの当接最上部位37uが受け面36Aの受け最下部位36dと当接し、前フレーム3が最下位にあるとき、当接面37Aと受け面36Aとが面接触する角度に設定していることである。
[作用]
前記特徴を有する走行車両のサスペンション装置は次のような作用を奏する。
前車軸ケース6は揺動フレーム4に前後方向のセンタ軸7廻り左右揺動自在に支持されており、凹凸路面走行時、左右偏荷重時等にセンタ軸7廻り左右揺動し、その過大な左右揺動を、前フレーム3に設けた揺動規制部36と前車軸ケース6に設けた被揺動規制部37とが当接することにより規制する。
前フレーム3と前車軸ケース6との上下間隔が大きいときと小さいときとでは受け面36Aと当接面37Aの相対高さが異なり、前フレーム3が最上位にあるとき、当接面37Aの当接最上部位37uが受け面36Aの受け最下部位36dと当接し、前フレーム3が最下位にあるとき、当接面37Aと受け面36Aとが略面接触し、大荷重を受けて前フレーム3と前車軸ケース6との上下間隔が小さいときに、大荷重を略面接触の広い面で受けることができ、前車軸ケース6の左右揺動制限だけでなく、揺動フレーム4の上方揺動の制限もすることができる。
トラクタTの前部を示す図5、6において、トラクタTはエンジンEの後部に前ミッションケースM及び後ミッションケースを連結し、かつエンジンEから前方へ前フレーム3を突出して車体2を構成しており、前フレーム3に左右前輪26を縣架する前車軸ケース6を支持している。
前記前フレーム3上にはラジエータR、バッテリ等が搭載され、ボンネットBによって覆われおり、また、前記車体2の後上部側には、ステアリングハンドル、操縦席等が設けられている。
前記前輪変速機構28は油圧切換え式であり、内部伝動軸27からの前輪動力を後輪と等速の状態と、後輪に対して1.3〜2.0倍の増速の状態とに切り換えて外部伝動軸29に伝達可能になっている。
図1〜8において、前記前車軸ケース6は左右外端が上下動可能になるように揺動フレーム4に支持されており、センタピンとなるセンタ軸7廻りに左右揺動自在であり、中央拡大部6aの前部にセンタ軸7のセンタ軸前部7Fが形成され、後部蓋兼軸受ケース6bの後部にセンタ軸後部7Rが形成されている。
前記前フレーム3と前車軸ケース6との間には、圃場、路面等からの衝撃や振動を緩衝するとともに、トラクタTの前部の高さ調整、傾動等を行うサスペンション機構1が設けられている。前記サスペンション機構1は前フレーム3及び前車軸ケース6とともにサスペンション装置を構成する。
図1、2、7において、前フレーム3の後部下面には取付台44が設けられ、この取付台44に板金又は鋳物で形成された支持ブラケット35が固着されており、この支持ブラケット35はエンジンEの直下に位置している。この支持ブラケット35は水平板で形成した固着部35aと、この固着部35aの左右下面に2枚の板材を下方突出状に固着して形成された左右一対の軸支持部35bとを有する。左右一対の軸支持部35bは二股形状になっていて、それぞれに支持軸5が貫通されている。
また、前記センタ軸7の軸心7Sも支持軸5の軸心及び十字継手30aの回転中心と上下方向において同心又は可及的同心になるように配置されており、支持軸5を中心に前部が上下するように揺動可能であり、即ち、揺動フレーム4及び前車軸ケース6は支持軸5を中心に上下揺動可能になっており、上下揺動しても前輪デフピニオン軸31が正常に回転できるようになっている。
後揺動フレーム4Rは、前記左右各支持軸5にそれぞれ嵌合する後部平面視二股形状の左右支持軸受部10と、この左右支持軸受部10の前側で前記前車軸ケース6のセンタ軸後部7Rに嵌合する後軸受部11と、左右支持軸受部10の前部から後軸受部11にかけてそれらの上面側に形成されていて平坦面を有する取付け部12とが形成されている。
揺動フレーム4は前揺動フレーム4Fと後揺動フレーム4Rとで前車軸ケース6の中央拡大部6aに跨る側面視コ字形状であり、揺動フレーム4の上部を形成する前揺動フレーム4Fの固定部13及び支持部14は前フレーム3の左右側壁3A間に侵入配置されている。前記前フレーム3には前車軸ケース6の中央拡大部6aに対向する窪み部3Dが形成されていて、中央拡大部6aの左右外側部分を侵入させることにより、揺動フレーム4をより上位まで上昇できるようになっている。
前記支持部14の前部には、図1、2、8に示すように、突起部14bが左右外側方に突出しており、この突起部14bに前フレーム3の左右側壁3Aと当接して揺動フレーム4の左右方向の揺動を規制するストッパ23が設けられている。このストッパ23は揺動フレーム4に螺合したボルトで形成されていて、支持部14から頭部までの左右方向の突出量が可変であり、揺動フレーム4の左右揺動量の調整と制限とができるようになっている。
前記上揺動規制体25Uには支持部14の上面に平坦に形成された当たり面14aが当接可能になっており、前輪26及び前車軸ケース6に対する前フレーム3の過剰な沈み込み(揺動フレーム4の過剰な浮き上がり)を防止している。
また、左右一対の下揺動規制体25Dには、前記支持部14の前部に形成した突起部14bが当接可能になっており、前フレーム3の過剰な浮き上がり(揺動フレーム4の過剰な沈み込み)を防止している。
前記揺動フレーム4は前後方向中途部が左右方向幅が細くなっており、前フレーム3の左右側壁3Aとの間にシリンダ配置空間を形成し、左右サスペンションシリンダ8を配置しており、前記後揺動フレーム4Rの前下部に左右方向に突出した連結部4Raが形成されている。
前記連結ピン41はセンタ軸7と上下方向において同一か又は若干低く位置し、左右方向においてセンタ軸7から略等距離の位置で、前後方向においてセンタ軸後部7Rの近傍でステアリングシリンダ34と干渉しないように配置されている。また、連結部4Raはサスペンションシリンダ8にストロークの長いものを適用できるように、後揺動フレーム4Rの下面から下方に突出している。
また、左右のサスペンションシリンダ8からの作動油の流動をロックすると、揺動フレーム4及び前車軸ケース6は支持軸5廻りの上下揺動がロックされる。
前記左右サスペンションシリンダ8と連通する油圧バルブ21及びアキュムレータ22は、前フレーム3の左右側壁3A間の前部内に配置されている。油圧バルブ21は前フレーム3に固定され、アキュムレータ22は油圧バルブ21の下面側に直付けされ、油圧バルブ21の上面側にサスペンションシリンダ8と連通する油圧配管24が接続されている。この油圧配管24は前記上下揺動規制手段25の上側に配置して、上下動する揺動フレーム4との干渉を回避しておくことが好ましい。
アキュムレータ22は左右一対のサスペンションシリンダ8のヘッド側に接続されたヘッド側アキュムレータ22Hと、ロッド側に接続されたロッド側アキュムレータ22Lとを有し、前フレーム3の前板3cに装着された保護板38によって前下方から障害物と接触するのを防止されている。
トラクタTは、駆動時や制動をかけたときに車体2の重心Pにピッチングモーメントが発生し、車体2の前部が上昇するノーズリフト又は車体2の前部が沈むノーズダイブが発生するようになるが、前記支持軸5は前後方向において、ノーズリフトとノーズダイブとが発生し難い位置に配置されている。
支持軸5をアンチピッチング平衡線Y2より後方に配置することもできるが、そのようにすると制動時のノーズダイブが発生しやすくなり、また支持軸5が低位置となり、トラクタTの地上高が採り難くなる、という問題が生じるので好ましくない。また、トラクタTでは過大な制動力が加わることが少ないので、前記アンチピッチング平衡線Y2に近い前側でも、実際的に加えられる中程度の制動力では十分なアンチピッチング状態が得られる。
なお、水平線に対するアンチピッチング平衡線Y1のアンチピッチング角λ1は例えば42〜49°又はその前後角度であり、アンチピッチング平衡線Y2のアンチピッチング角λ2は24〜30°又はその前後角度である。
図1〜6において、前記前フレーム3の外側板3aの外面には略三角ブロック形状の部材を固着して揺動規制部36が外方突出状に設けられ、前車軸ケース6の中央拡大部6aの左右外側部分上面には、略三角ブロック形状の部材を固着又は一体成形して被揺動規制部37が形成されており、これらによって左右揺動規制手段Sが構成されている。
前記前フレーム3の左右各揺動規制部36は、下から上へ左右方向外向きに傾斜した傾斜面の受け面36Aを有し、この受け面36Aのセンタ軸7を通る左右水平の面に対する傾斜角度K1は例えば61〜71°前後に設定されている(図3に図示)。
前記前車軸ケース6の左右各被揺動規制部37は、下から上へ左右方向外向きに傾斜した傾斜面の当接面37Aを有し、この当接面37Aのセンタ軸7を通る左右水平の面に対する傾斜角度K2は例えば50〜63°前後に設定されており、受け面36Aの傾斜角度K1が当接面37Aの傾斜角度K2より6〜10°前後大きく設定されている。
図4において、前車軸ケース6が上下中央位(前フレーム3も上下中央位)にあるときに左右揺動すると、6〜8°前後の揺動角度θ1で当接面37Aが受け面36Aと当接する。この上下中央位当接角度θ1を同一にして、当接面37Aと受け面36Aとが水平状態である場合と比較すると、次のようになる。
また、前車軸ケース6が最下位(前フレーム3が最上位)にあるときに左右揺動すると、11〜13°前後の揺動角度θ3で当接面37Aが受け面36Aと当接する。この最下位当接角度θ3は、当接面37Aと受け面36Aとが水平状態である場合には20°前後であり、それに比して十分小さくなっている。即ち、前フレーム3が高いときは前車軸ケース6の左右揺動過多を制限できる。
前記前車軸ケース6の受け面36Aは、受け最下部位36dから受け最上部位36uまでを連続した傾斜面に形成されており、前記当接面37Aも当接最下部位37dから当接最上部位37uまでを連続した傾斜面に形成されている。
前記当接面37Aと受け面36Aは、前車軸ケース6が最上位(前フレーム3が最下位)にあるときに当接面37Aの全面と受け面36Aの全面とが面接触すると、大荷重を広い面で受けることができ、前車軸ケース6の左右揺動制限だけでなく、揺動フレーム4の上方揺動の制限もすることができる。
例えば、当接面37Aと受け面36Aのそれぞれの傾斜角度を変更して、当接部位、当接状態等を変更してもよく、揺動フレーム4に設けているストッパ23を前フレーム3側に取付けて、そのストッパ23を揺動フレーム4に当接させるようにしてもよい。
2 車体
3 前フレーム
3A 側壁
4 揺動フレーム
4F 前揺動フレーム
4R 後揺動フレーム
5 支持軸
6 前車軸ケース
7 センタ軸
8 サスペンションシリンダ
26 前輪
36 揺動規制部
36A 受け面
37 被揺動規制部
37A 当接面
K1 受け面の水平線に対する傾斜角度
K2 当接面の水平線に対する傾斜角度
S 左右揺動規制手段
Claims (3)
- エンジン(E)の後部にミッションケース(M)を連結しかつエンジン(E)から前方へ前フレーム(3)を突設して車体(2)を構成し、この車体(2)の前部に揺動フレーム(4)の後部を左右方向の支持軸(5)廻り上下揺動自在に支持し、前記揺動フレーム(4)に前輪(26)を縣架した前車軸ケース(6)を前後方向のセンタ軸(7)廻り左右揺動自在に支持し、前記前フレーム(3)に前輪(26)用の左右サスペンションシリンダ(8)を設けており、
前記前フレーム(3)に受け面(36A)を有する揺動規制部(36)を設け、前記前車軸ケース(6)に左右揺動した時に前記受け面(36A)と当接する当接面(37A)を有する被揺動規制部(37)を設けており、
前記受け面(36A)と当接面(37A)とを下から上へ左右方向外向きに傾斜した傾斜面に形成していることを特徴とする走行車両のサスペンション装置。 - 前記前フレーム(3)の受け面(36A)のセンタ軸(7)を通る左右水平の面に対する傾斜角度(K1)を、前記前車軸ケース(6)の当接面(37A)の前後方向のセンタ軸(7)を通る左右水平の面に対する傾斜角度(K2)より大きく設定していることを特徴とする請求項1に記載の走行車両のサスペンション装置。
- 前記前フレーム(3)の受け面(36A)のセンタ軸(7)を通る左右水平の面に対する傾斜角度(K1)と前記前車軸ケース(6)の当接面(37A)のセンタ軸(7)を通る左右水平の面に対する傾斜角度(K2)とを、前フレーム(3)が最上位にあるとき、当接面(37A)の当接最上部位(37u)が受け面(36A)の受け最下部位(36d)と当接し、前フレーム(3)が最下位にあるとき、当接面(37A)と受け面(36A)とが面接触する角度に設定していることを特徴とする請求項1又は2に記載の走行車両のサスペンション装置。
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