JP4964060B2 - 強度異方性と被削性に優れた機械構造用鋼および機械構造用部品 - Google Patents
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([Al]+[Ca])/[S]≦0.7 …(1)
但し、[Al]、[Ca]および[S]は、夫々Al、CaおよびSの鋼中の含有量(質量%)を示す。
Cは、機械構造用部品としての必要な芯部硬さを確保する上で重要な元素であり、こうした効果を発揮させるためには0.10%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cを過剰に含有させると鋼材の硬さが過度に高くなり過ぎて、被削性(特に、切削加工時の工具寿命)や冷間鍛造性が低下することになる。こうした観点から、C含有量は0.30%以下とする必要がある。尚、C含有量の好ましい下限は、0.13%であり、好ましい上限は0.25%である。
Siは、表面硬化層の軟化抵抗性の向上に大きく寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.03%以上含有させる必要がある。しかしながら、Si含有量が過剰になって1.5%を超えると、機械加工時の被削性や冷間鍛造性が著しく劣化することになる。尚、Si含有量の好ましい下限は0.1%であり、好ましい上限は1.0%である。
Mnは、脱酸剤として作用し、酸化部物系介在物を低減して鋼部材の内部品質を高めると共に、焼入れ性を向上させて鋼部品の芯部硬さや硬化層深さを高め、部品の強度を確保するのに有効な元素である。こうした作用を発揮させるためには、Mn含有量が0.3%以上とする必要があるが、1.8%を超えて過剰になると、Pの粒界への偏析を助長して粒界強度が低下する、疲労強度を低下させることになる。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.4%であり、好ましい上限は1.5%である。
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素(不純物)であり、熱間加工後の割れを助長するので、できるだけ低減する必要がある。こうした観点から、P含有量の上限は0.03%とした。尚、P含有量の好ましい上限は0.020%であり、より好ましくは0.010%以下とするのがよい。
Sは、鋼中でMnと反応してMnS系介在物を形成し、鋼部品の衝撃強度の異方性を誘発するので、できるだけ低減することが好ましい。こうした観点から、S含有量は0.03%以下とする必要がある。尚、S含有量の好ましい上限は0.02%である。
Crは、鋼材の焼入れ性を高め、安定した硬化層深さや必要な芯部硬さを与えることによって、歯車などの構造部品としての静的強度および疲労強度を確保する上で重要な元素である。こうした作用を発揮させるためには、Crは0.3%以上含有させる必要がある。しかしながら、Cr含有量が過剰になって2.5%を超えると、旧オーステナイト(γ)粒界に炭化物として偏析するため、疲労強度低下の原因となる。尚、Cr含有量の好ましい下限は0.8%であり、好ましい上限は2.0%である。
Alは溶製時に脱酸剤として有用に作用し、そのためには0.001%以上含有させる必要がある。Al含有量が増加するにつれて、酸化物(Al2O3)等の非金属介在物が生成し、切削時の工具摩耗を増大させてしまうので、その上限を0.009%とする必要がある。尚、好ましい上限は0.007%であり、より好ましくは0.005%以下とするのが良い。
Caは、鋼材中の硫化物の展伸を抑制して、衝撃特性の異方性を低減させると共に、切削時の工具表面にCa含有酸化物がベラーグとして付着し、工具摩耗を抑制する効果を発揮する。こうした効果を有効に発揮させるためには、Ca含有量は0.0005%以上とする必要があるが、0.005%を超えると、粗大なCa酸化物が生成し、強度を却って低下させる恐れがある上、Ca含有硫化物も硬くなって、工具寿命を低下させることになる。そのため、Ca含有量は0.005%以下とする必要があり、好ましくは0.003%以下とするのが良い。
Nは他の元素と窒化物を形成し、組織微細化に寄与するが、硬質窒化物を生成するため、工具寿命を劣化させることになる。しかも、熱間加工性および延性に悪影響を及ぼすので、0.009%以下に抑える必要があり、好ましくは0.007%以下に抑えるのが良い。
Oは、鋼材に不可避的に含まれる元素であり、他元素と反応して粗大な酸化物系介在物を生成して鋼材の熱間加工および延性に悪影響を及ぼすので、できるだけ少なくすることが好ましい。こうした観点から、O含有量は0.005%以下に抑制する必要がある。O含有量の好ましい上限は0.003%である。
Cuは、耐候性向上に有効な元素であり、こうした効果はその含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させると鋼材の熱間加工性および延性を低下させて割れや疵が発生しやすくなるので、0.5%以下とすることが好ましい。尚、Cuを含有させることによる効果をより有効に発揮させるためには、その含有量は0.1%以上とすることが好ましい。またCuを含有させるときには、熱間加工性の低下(熱間加工脆性)の劣化を発生させないという観点から、後述するNiとの同時添加が好ましい。
Niはマトリックス中に固溶し、脆性を増大させる上で有効な元素であり。こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させるとベイナイトやマルテンサイト組織が発達し、靭性の劣化を招くのでその上限は2.0%とすることが好ましい。尚、Niを含有させることによる効果をより有効に発揮させるためには、その含有量は0.1%以上とすることが好ましい。
MoおよびBは、鋼材の焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。このうち、Moは鋼材の焼入れ性を確保して不完全焼入れ組織の生成を抑制するのに有効に作用する。しかしながら、その含有量が過剰になると、芯部の硬度が必要以上に硬くなって機械加工時における被削性や冷間鍛造性が劣化するので、1.0%以下(より好ましくは0.5%以下)とすることが好ましい。
Zr,V,TiおよびNbは、いずれも炭素や窒素を活発に反応し、微細な析出物を形成することによって、結晶粒粗大化防止特性を向上できるが、その含有量が過剰になると、硬質な窒化物や炭化物が多量に生成して工具寿命を低下させるので、いずれも0.1%以下(より好ましくは0.05%以下)とすることが好ましい。
Biは、鋼材の被削性を向上させる元素であり、必要によって含有させることも有効である。しかしながら、過剰に含有させると、強度が低下するので、その上限を0.1%とすることが好ましい。尚、その効果を有効に発揮させるための好ましい下限は0.02%であり、より好ましい上限は0.08%である。
SeおよびTeは、Mn(S,Se)、Mn(S,Te)等の化合物を形成し、硫化物の展伸抑制に働くことによって圧延方向に垂直な方向(T方向)の強度低下を抑えるのに有効な元素である。こうした効果性は、その含有量が増加するにつれて増大するが、過剰に含有させてもその効果が飽和するだけであるので、いずれも0.01%以下(より好ましくは0.004%以下)とすることが好ましい。
硫化物(CaO含有量が4〜50%である複合酸化物を核とする硫化物系介在物:「Ca複合酸化物含有硫化物」と呼ぶ)および酸化物系介在物(Al2O3含有量が50%以上である酸化物系介在物:「Al含有酸化物」と呼ぶ)の判定は、エネルギー分散型電子プルーブマイクロアナライザー(「JXA8100」JEOL製)にて、鋼材長手方向断面(圧延方向断面)の1/4半径位置を50mm2の視野で介在物の定性分析を行い、ZAFのよる定量補正法(但し、原子番号効果、吸収効果、蛍光励起効果による補正)を用いてX線スペクトル強度から定量分析をした。また、画像解析から各介在物(Ca複合酸化物含有硫化物およびAl含有酸化物)のサイズを測定して面積率を算出した。
被削性評価は、切削速度:200m/分、送り:0.25mm/rev、切り込み:1.5mmの乾式条件で超硬旋削加工を行い、逃げ面摩耗量が0.05mmになるまでの時間(分)によって工具寿命を測定した。
Claims (7)
- C:0.10〜0.30%(質量%の意味、化学成分組成について以下同じ)、Si:0.03〜1.5%、Mn:0.3〜1.8%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cr:0.3〜2.5%、Al:0.001〜0.009%、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.009%以下(0%を含まない)、O:0.005%以下(0%を含まない)を夫々含有すると共に、下記(1)式の関係を満足し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、且つ、圧延方向の断面を観察したときに、酸化物系介在物のうちAl2O3含有量が50%以上である酸化物系介在物が10面積%以下であり、硫化物系介在物のうちCaO含有量が4〜50%である複合酸化物を核とする硫化物系介在物が20面積%以上で存在するものであることを特徴とする強度異方性と被削性に優れた機械構造用鋼。
([Al]+[Ca])/[S]≦0.7 …(1)
但し、[Al]、[Ca]および[S]は、夫々Al、CaおよびSの鋼中の含有量(質量%)を示す。 - 更に、Cu:0.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の機械構造用鋼。
- 更に、Ni:2.0%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の機械構造用鋼。
- 更に、Mo:1.0%以下(0%を含まない)および/またはB:0.005%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の機械構造用鋼。
- 更に、Zr:0.1%以下(0%を含まない)、V:0.1%以下(0%を含まない)、Ti:0.1%以下(0%を含まない)およびNb:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以上を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の機械構造用鋼。
- 更に、Bi:0.1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の機械構造用鋼。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の機械構造用鋼からなる機械構造用部品。
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