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JP4957586B2 - 熱延鋼板の製造方法、及び製造設備配列 - Google Patents

熱延鋼板の製造方法、及び製造設備配列 Download PDF

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JP4957586B2 JP2008050639A JP2008050639A JP4957586B2 JP 4957586 B2 JP4957586 B2 JP 4957586B2 JP 2008050639 A JP2008050639 A JP 2008050639A JP 2008050639 A JP2008050639 A JP 2008050639A JP 4957586 B2 JP4957586 B2 JP 4957586B2
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Description

本発明は熱延鋼板の製造方法、及び製造設備配列に関し、より詳しくは、熱延鋼板の巻き取り前平坦度を所望製品の平坦度とすることが可能であるとともに、熱延鋼板の品質不良を最小とすることが可能な熱延鋼板の製造方法、及び製造設備配列に関する。
熱延鋼板は、スラブを加熱炉にて加熱した後、粗圧延機にて粗圧延して粗圧延材とし、当該粗圧延材を粗圧延機から仕上げ圧延機まで搬送テーブルにより所定の搬送パターンで搬送し、仕上げ圧延機にて所定の寸法に圧延し、冷却工程にて所定の冷却指示を満足するように冷却され、最終的に巻き取り機にて巻き取られることで製造される。
この際、仕上げ圧延機出側での鋼板の平坦度(鋼板の平坦形状)が不良であると、冷却工程でさらに鋼板の平坦形状が崩れてしまい、最終製品の形状が不良となるという問題があった。そのような最終製品の形状不良を解消するため、以下の特許文献1、2のような熱延鋼板の製造方法が提案されている。
特許文献1には、仕上げ圧延機出側に平坦度計を設置し、その測定値に基づき、仕上げ圧延機のワークロールベンダーにフィードバック制御することで、仕上げ圧延機出側の鋼板の平坦度が目標とする平坦度となるように、鋼板を製造する方法が記載されている。また、特許文献2には、熱間圧延設備における鋼板の形状制御方法が記載されている。
特公平4−72603号公報 特開昭54−110158号公報
上記特許文献1によれば、仕上げ圧延機の各スタンドを制御することで、仕上げ圧延機出側の平坦度を目標とする平坦度とすることができるものの、その目標値の決め方については一切言及されていない。そのため、確実に鋼板の平坦度を目標とする平坦度とすることが可能であるとは言えなかった。また、仮に仕上げ圧延機出側の平坦度を目標とする平坦度とすることができても、鋼板が仕上げ圧延機を出てからコイラーで巻き取られるまでに実施される冷却工程において鋼板の形状が変化してしまうため、コイラーで巻き取る直前において、鋼板の平坦度がフラットにできるとは限らなかった。
この問題に対して、特許文献2では、鋼板の巻き取り直前にも平坦度計を設置し、巻き取り直前の平坦度が所望製品平坦度と等しくなるように、仕上げ圧延機出側の平坦度の目標値を変更することが提案されており、当該方法によって鋼板の巻き取り直前の平坦度を所望の平坦度へと調節している。しかしながら、特許文献2には、巻き取り直前の平坦度が所望の平坦度と等しくなる旨記載されているものの、具体的な鋼板巻き取り直前の平坦度の目標値の決め方については一切言及されていない。
コイラーによる巻き取り前における鋼板の平坦度が、製品の品質不良、例えば、エッジ疵、水乗りマーク、スリ疵に与える影響としては、以下のようなものがあると考えられる。
1.巻き取り直前における鋼板の形状が端伸び(鋼板幅方向センター部に比べ、鋼板幅方向エッジ部の方が圧延方向に伸びている状態)である場合、鋼板を巻き取り機に進入しやすいようにガイドする役目をもつサイドガイドと鋼板エッジとが接触しやすくなるため、鋼板エッジにエッジ疵が発生しやすくなる。従って、鋼板の巻き取り前形状が、端伸びよりも中伸び(鋼板幅方向エッジ部に比べ、鋼板幅方向センター部の方が圧延方向に伸びている状態)となるように設定することが好ましい。
2.巻き取り前で鋼板の形状が中伸びとなるように設定すると、巻き取り機までの冷却過程で中伸び部分に水が乗り、その部分が急冷されることで鋼板の結晶構造が変化し、変色する(これをいわゆる水乗りマークという。)。従って、水乗りマークを防ぐためには、鋼板の巻き取り前の形状が中伸びよりも端伸びとなるように設定することが好ましい。
3.鋼板をコイル状にして搬送するときに他設備と接触することで発生するスリ疵については、コイルがタイトに結束されていること、コイル状態での平坦度がフラットであることが好ましい。しかし、巻き取り直前では鋼板幅方向に温度が変化しているため、常温に冷やされる過程で鋼板平坦形状が複雑に変化し、コイル状態での平坦度をフラットにさせるためには、巻き取り直前での鋼板の平坦度を如何にするかは設定が容易ではない。
以上のように、巻き取り直前の鋼板の平坦度が、鋼板の品質不良に与える影響は様々である。
しかしながら、上述のように特許文献2には、具体的な巻き取り直前の鋼板平坦度の目標値の決め方について一切言及されていないため、上記品質不良を確実に抑制することは困難であった。
また、特許文献2には、仕上げ圧延機出側の目標平坦度形状Soを板厚h、板幅b、巻き取り温度CT、鋼種Mの関数である下記式(1)で決定し、巻き取り直前で測定した鋼板の平坦度が最終所望製品の平坦度と異なる場合は、式(1)で決定した値Soに加算する補正値を変化させることが提案されている。
So=f(h,b,CT,M)・・・(1)
ただし、仕上げ圧延機出側から巻き取り機までにおける鋼板の平坦形状の変化は、鋼板の板厚、板幅、巻き取り温度、鋼種等による影響以外にも、仕上げ圧延機出側の鋼板の平坦度、並びに巻き取り機までの冷却工程(冷却位置、冷却量等)が大きく影響する。そのため、鋼板当材と次材との仕上げ圧延機出側の平坦度並びに冷却工程の操業条件が異なるにもかかわらず、当材の結果をそのまま次材に反映させてしまうと、次材の仕上げ圧延機出側の平坦度の設定が不良となってしまい、巻き取り直前の鋼板平坦形状を精度よく制御して製造することが困難であった。
そこで本発明は、熱延鋼板の巻き取り前平坦度を確実に所望製品の平坦度とすることが可能であるとともに、熱延鋼板の品質不良を最小とすることが可能な熱延鋼板の製造方法、及び製造設備配列を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、熱延鋼板の製造方法に関して調査した結果、以下のことを突き止めた。
(知見1)
巻き取り直前に平坦度計を設置し、その実績(急峻度)と、鋼板平坦度不良に起因して発生すると考えられているスリ疵、水乗りマークが原因で鋼板をスクラップにした切下げ発生頻度と、を調査した結果、図5のような関係があることを突き止めた。つまり、材料の種類によっては、巻き取り前の鋼板の平坦形状を0(フラット)にするのではなく、若干端伸びに製造するほうが、切下げを最小とする観点からは好ましいということが分かった。また、このような調査を鋼板の材質毎、寸法毎に行ったところ、その最適値の範囲はそれぞれ異なることが判明した。
(知見2)
鋼板の種類、冷却工程の操業条件がほぼ同様であるものを対象に、鋼板の長手方向位置並びに幅方向位置の同一点について、仕上げ圧延機出側並びに巻き取り直前の平坦度計の測定値を調査した結果、図6のように、両者はほぼ直線の関係で近似できることを突き止めた。従って、上記特許文献2に記載されたように、巻き取り直前の平坦度測定値のみに基づき仕上げ圧延機出側の平坦の目標値を変更するのではなく、仕上げ圧延機出側の情報も活用することで、仕上げ圧延機出側から巻き取り前までの鋼板の平坦形状の変化を精度よく予測でき、それによって仕上げ圧延機出側の平坦度の目標値を精度よく設定できることが判明した。
(知見3)
鋼板の幅方向にも平坦形状が変化するため、仕上げ圧延機出側の平坦度測定位置と巻き取り前の平坦度測定位置とを幅方向に合わせる必要がある。しかし、鋼板は仕上げ圧延機を出てから巻き取り機に到達するまでは蛇行しながら搬送されるため、設置する平坦度計は、鋼板の蛇行に追従可能であることが好ましい。
(知見4)
知見2のように、冷却工程出側での鋼板平坦形状は、冷却工程入側の平坦形状と、冷却工程での操業条件(冷却位置、冷却量)によって影響を受ける。しかし、冷却工程は一般に、仕上げ圧延機出側から巻き取り直前まで約100mにも及ぶため、仕上げ圧延機出側から巻き取り前までの鋼板平坦形状について、まとめて数式化するのではなく、冷却工程の中間部分にも平坦度計を設置し、仕上げ圧延機出側から冷却工程中間部分、冷却工程中間部分から巻き取り前、のように数式化する対象範囲を分割することで、冷却工程中間部前後における冷却の操業条件をより明確に分離して設定できるため、鋼板平坦形状の変化を更に精度良く推定できるようになる。
(知見5)
冷却工程出側での鋼板平坦形状は、冷却工程入側の平坦形状及び冷却工程での操業条件の他に、鋼板の幅方向の温度分布によっても影響を受ける。従って、冷却工程の入側と出側の平坦形状の関係を数式化する際には、平坦度計設置近傍に幅方向の温度分布が測定可能である幅方向温度計も設置し、当該温度情報を活用することでより精度良く数式化可能となる。また、鋼板の裏面側の温度分布を測定する場合には、通常の温度計では測定ができないため、例えば、特公平3−69974号公報、特開2005−24303号公報、特開2003−185501号公報に記載されたような水環境でも測定可能な水環境温度計を使用する必要がある。
また、知見3のように鋼板の平坦形状は幅方向にも変化するため、測定した幅方向温度計の結果と平坦度との関係を比較するには、平坦度計が鋼板幅方向の少なくとも7点で平坦度を測定できることが好ましい。
以上の知見から、本発明者らは、品質不良が最小となるような巻き取り前鋼板平坦度を精度良く実現するため、鋼板の巻き取り前に設置した平坦度計の実績と鋼板平坦度起因の品質不良との関係を調査し、仕上げ圧延機出側から巻き取り前までの鋼板平坦度の変化を精度良く予測することで、仕上げ圧延機出側の鋼板平坦度の目標値を変更する熱延鋼板の製造方法、及び製造設備配列を完成するに至った。以下本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするため、添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
第1の本発明は、粗圧延機にて粗圧延された鋼板(1)を仕上げ圧延機(2)により仕上げ圧延する、仕上げ圧延工程(S1)と、仕上げ圧延された鋼板を冷却装置(3)にて冷却する、冷却工程(S3)と、冷却された鋼板を巻き取り機(5)により巻き取る、巻き取り工程(S5)と、を備える熱延鋼板の製造方法(100)であって、冷却工程の冷却装置と巻き取り工程の巻き取り機との間に設置された巻き取り前平坦度計(6b)を用いて、鋼板の巻き取り前平坦度を測定する、巻き取り前平坦度測定工程(S4)と、冷却工程から巻き取り工程までの間に鋼板の平坦度不良部分に水が乗って該部分が急冷されることにより生じる変色巻き取り前平坦度測定工程後において最小となるように、巻き取り前平坦度の目標値を設定する、巻き取り前目標値設定工程(S1’)と、を備えることを特徴とする、熱延鋼板の製造方法である。
ここに、「冷却工程の冷却装置と巻き取り工程の巻き取り機との間に設置された」とは、熱延鋼板製造ラインの冷却工程と巻き取り工程との間における製造ライン上に設置されることを意味し、特に巻き取り工程の巻き取り機直前に設置されることが好ましい。また、巻き取り機直前にサイドガイドが存在する場合は、当該サイドガイド直前に設置されることが好ましい。「平坦度」とは、鋼板の平坦形状にかかる一般的な平坦の度合いのことをいい、鋼板の急峻度や伸び差率といったものをいう
第1の本発明において、仕上げ圧延工程(S1)における仕上げ圧延機(2)と冷却工程(S3)における冷却装置(3)との間に圧延後平坦度計(6a)を設置し、当該圧延後平坦度計により、仕上げ圧延工程の仕上げ圧延機と冷却工程の冷却装置との間における鋼板(1)の圧延後平坦度を測定する、圧延後平坦度測定工程(S2)と、圧延後平坦度の目標値を設定する、圧延後目標値設定工程(S2’)と、をさらに備え、巻き取り前平坦度測定工程(S4)において測定された鋼板の巻き取り前平坦度が、巻き取り前目標値設定工程(S1’)において設定された目標値となるように、各平坦度計により測定された圧延後平坦度及び巻き取り前平坦度に基づいて、圧延後目標値設定工程における圧延後平坦度の目標値を修正することが好ましい。
第1の本発明において、圧延後平坦度と巻き取り前平坦度との関係を予め数式化するとともに、当該数式中のパラメータを、圧延後平坦度測定工程(S2)における圧延後平坦度の測定値と、巻き取り前平坦度測定工程(S4)における巻き取り前平坦度の測定値と、に基づき変更することで、圧延後目標値設定工程(S2’)における圧延後平坦度の目標値を修正することが好ましい。
第1の本発明において、圧延後平坦度計(6a)により測定された圧延後平坦度が、圧延後目標値設定工程(S2’)において設定された目標値又は修正された目標値となるように、仕上げ圧延機(2)のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つを設定することが好ましい。
ここに、「設定する」とは、仕上げ圧延を施す鋼板が仕上げ圧延機に到達するまでに、仕上げ圧延機のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つの設備位置が初期設定されることを意味する。
第1の本発明において、圧延後平坦度計(6a)により測定された圧延後平坦度が、圧延後目標値設定工程(S2’)において設定された目標値又は修正された目標値となるように、圧延後平坦度測定工程(S2)において測定された圧延後平坦度に基づいて、仕上げ圧延機のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つを圧延中に制御することが好ましい。
第1の本発明において、仕上げ圧延工程(S1)の仕上げ圧延機(2)と冷却工程(S3)の冷却装置(3)との間に圧延後平坦度計(6a)が設置されるとともに、圧延後平坦度計と巻き取り工程(S5)の巻き取り機(5)との間に、巻き取り前平坦度計(6b)を含む少なくとも2つの平坦度計(6c)が設置されることが好ましい。
第1の本発明において、平坦度計(6a、6b、6c)が蛇行追従型であることが好ましい。
第1の本発明において、平坦度計(6a、6b、6c)が、幅方向に少なくとも7点の平坦度を同時に測定できることが好ましい。
第1の本発明において、設置された平坦度計(6a、6b)の近傍に鋼板(1)の幅方向の温度分布が測定可能である幅方向温度計(11a、11b)を設置することが好ましい。
ここに、「設置された平坦度計の近傍に鋼板の幅方向温度分布が測定可能である幅方向温度計を設置する」とは、第1の本発明にかかる平坦度計の近傍に幅方向温度計を設置し、平坦度計による鋼板平坦度測定箇所と幅方向温度計による鋼板温度測定箇所とがそれぞれ対応していることを意味する。平坦度計が複数ある場合には、当該複数の平坦度計の少なくとも一つについて、好ましくは設置された複数の平坦度計全てについて、その近傍に幅方向温度計が備えられることを意味する。鋼板平坦度測定箇所と鋼板温度測定箇所とを対応させるためには、例えば、鋼板の同一点について鋼板平坦度と幅方向温度とを同時に測定することが挙げられるが、当該方法に限定されるわけではない。
「平坦度計の近傍に幅方向温度計を設置する」とは、上記のように鋼板平坦度測定箇所と鋼板幅方向温度測定箇所とを対応させることが可能なように平坦度計及び幅方向温度計を配置することはもちろんのこと、両測定器間での鋼板の平坦の変化が小さく無視しても差し支えない範囲内に設置することを意味する。両測定器間の距離は約15m以内に設置することが好ましい。
第1の本発明において、設置された平坦度計(6a、6b)の近傍に鋼板(1)裏側の幅方向の温度分布が測定可能である水環境温度計を設置することが好ましい。
ここに、「設置された平坦度計の近傍に鋼板裏側の幅方向温度分布が測定可能である水環境温度計を設置する」とは、第1の本発明にかかる平坦度計の近傍に水環境温度計を設置し、平坦度計による鋼板平坦度測定箇所と水環境温度計による鋼板裏側温度測定箇所とがそれぞれ対応していることを意味する。平坦度計が複数ある場合には、当該複数の平坦度計の少なくとも一つについて、好ましくは設置された複数の平坦度計全てについて、その近傍に水環境温度計が備えられることを意味する。鋼板平坦度測定箇所と鋼板温度測定箇所とを対応させるためには、例えば、鋼板同一点について鋼板表側平坦度と鋼板裏側温度とを同時に測定することが挙げられるが、当該方法に限定されるわけではない。
「鋼板裏側」とは、製造工程において鋼板を走行させる場合、水平面に対して鋼板下面側を意味する。
「平坦度計の近傍に水環境温度計を設置する」とは、上記のように鋼板平坦度測定箇所と鋼板温度測定箇所とを対応させることが可能なように平坦度計及び水環境温度計を配置することはもちろんのこと、両測定器間での鋼板の平坦の変化が小さく無視しても差し支えない範囲内に設置することを意味する。両測定器間の距離は約15m以内に設置することが好ましい。
第2の本発明は、仕上げ圧延機(2)と、冷却装置(3)と、巻き取り機(5)とを備える、熱延鋼板(1)の製造に用いられる設備配列(200)であって、冷却装置と巻き取り機との間に設置された、鋼板の巻き取り前平坦度を測定する巻き取り前平坦度計(6b)、及び、巻き取り前平坦度計に備えられた、巻き取り前平坦度の目標値を設定する巻き取り前目標値設定手段(9)、を備えるとともに、巻き取り前目標値設定手段が、冷却装置から巻き取り機までの間に鋼板の平坦度不良部分に水が乗って該部分が急冷されることにより生じる鋼板の変色巻き取り前平坦度計による平坦度測定後において最小となるように、巻き取り前平坦度計の平坦度目標値を設定する手段であることを特徴とする、製造設備配列である。
第2の本発明において、仕上げ圧延機(2)と冷却装置(3)との間に設置された、鋼板(1)の圧延後平坦度を測定する、圧延後平坦度計(6a)、及び、圧延後平坦度の目標値を設定する、圧延後目標値設定手段(10)、を備えるとともに、巻き取り前平坦度計(6b)により測定された鋼板の巻き取り前平坦度が、巻き取り前目標値設定手段(9)において設定された目標値となるように、各平坦度計により測定された圧延後平坦度及び巻き取り前平坦度に基づいて、圧延後目標値設定手段によって設定される圧延後平坦度の目標値が修正されることが好ましい。
第2の本発明において、圧延後平坦度と巻き取り前平坦度との関係を予め数式化するとともに、当該数式中のパラメータを、圧延後平坦度計(6a)による圧延後平坦度の測定値と、巻き取り前平坦度計(6b)による巻き取り前平坦度の測定値と、に基づき変更することで、圧延後目標値設定手段(10)により設定された圧延後平坦度の目標値が修正されることが好ましい。
第2の本発明において、圧延後平坦度計(6a)により測定された圧延後平坦度が、圧延後目標値設定手段(10)により設定された目標値又は修正された目標値となるように、仕上げ圧延機(2)のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つが設定されることが好ましい。
第2の本発明において、圧延後平坦度計(6a)により測定された圧延後平坦度が、圧延後目標値設定手段(10)により設定された目標値又は修正された目標値となるように、圧延後平坦度計により測定された圧延後平坦度に基づいて、仕上げ圧延機(2)のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つが圧延中に制御されることが好ましい。
第2の本発明において、仕上げ圧延機(2)と冷却装置(3)との間に圧延後平坦度計(6a)が設置されるとともに、圧延後平坦度計と巻き取り機(5)との間に、巻き取り前平坦度計(6b)を含む少なくとも2つの平坦度計(6c)が設置されることが好ましい。
第2の本発明において、平坦度計(6a、6b、6c)が蛇行追従型であることが好ましい。
第2の本発明において、平坦度計(6a、6b、6c)が幅方向に少なくとも7点の平坦度を同時に測定できることが好ましい。
第2の本発明において、設置された平坦度計(6a、6b)の近傍に鋼板(1)の幅方向の温度分布が測定可能である幅方向温度計(11a、11b)を設置することが好ましい。
ここに、「設置された平坦度計の近傍に鋼板の幅方向温度分布が測定可能である幅方向温度計を設置する」とは、第2の本発明にかかる製造設備配列に備えられる平坦度計の近傍に幅方向温度計を設置し、平坦度計による鋼板平坦度測定箇所と幅方向温度計による鋼板温度測定箇所とがそれぞれ対応していることを意味する。平坦度計が複数ある場合には、当該複数の平坦度計の少なくとも一つについて、好ましくは設置された複数の平坦度計全てについて、その近傍に幅方向温度計が備えられることを意味する。鋼板平坦度測定箇所と鋼板温度測定箇所とを対応させるためには、例えば、鋼板の同一点について鋼板平坦度と幅方向温度とを同時に測定することが挙げられるが、当該方法に限定されるわけではない。
「平坦度計の近傍に幅方向温度計を設置する」とは、上記のように鋼板平坦度測定箇所と鋼板幅方向温度測定箇所とを対応させることが可能なように平坦度計及び幅方向温度計を配置することはもちろんのこと、両測定器間での鋼板の平坦の変化が小さく無視しても差し支えない範囲内に設置することを意味する。両測定器間の距離は約15m以内に設置することが好ましい。
第2の本発明において、設置された平坦度計(6a、6b)の近傍に鋼板(1)裏側の幅方向の温度分布が測定可能である水環境温度計を設置することが好ましい。
ここに、「設置された平坦度計の近傍に鋼板裏側の幅方向温度分布が測定可能である水環境温度計を設置する」とは、第2の本発明にかかる製造設備配列に備えられる平坦度計の近傍に水環境温度計を設置し、平坦度計による鋼板平坦度測定箇所と水環境温度計による鋼板裏側温度測定箇所とがそれぞれ対応していることを意味する。平坦度計が複数ある場合には、当該複数の平坦度計の少なくとも一つについて、好ましくは設置された複数の平坦度計全てについて、その近傍に水環境温度計が備えられることを意味する。鋼板平坦度測定箇所と鋼板温度測定箇所とを対応させるためには、例えば、鋼板同一点について鋼板表側平坦度と鋼板裏側温度とを同時に測定することが挙げられるが、当該方法に限定されるわけではない。
「鋼板裏側」とは、製造工程において鋼板を走行させる場合、水平面に対して鋼板下面側を意味する。
「平坦度計の近傍に水環境温度計を設置する」とは、上記のように鋼板平坦度測定箇所と鋼板温度測定箇所とを対応させることが可能なように平坦度計及び水環境温度計を配置することはもちろんのこと、両測定器間での鋼板の平坦の変化が小さく無視しても差し支えない範囲内に設置することを意味する。両測定器間の距離は約15m以内に設置することが好ましい。
第1の本発明によれば、鋼板の平坦形状に起因する、鋼板巻き取り時の品質不良(鋼板のスリ疵、水乗りマーク、コイラエッジ疵)のいずれかが最小となるように鋼板が製造されるので、鋼板の平坦形状起因の品質不良の発生を抑えることができ、安定的に製品を製造することができる。
第2の本発明によれば、第1の本発明にかかる熱延鋼板の製造方法を備える製造設備配列とされ、鋼板の平坦形状起因の品質不良の発生を抑えることができ、安定的に製品を製造することが可能な設備配列とすることができる。
以下、添付した図面とともに、本発明にかかる実施形態について説明する。
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかる製造方法100(以下、「製造方法100」という。)に備えられる各工程を示すフローチャートである。製造方法100は、仕上げ圧延工程S1、圧延後平坦度測定工程S2、冷却工程S3、巻き取り前平坦度測定工程S4、巻き取り工程S5、巻き取り前目標値設定工程S1’、及び圧延後目標値設定工程S2’を備えている。
図2は、本発明の第1実施形態にかかる製造ライン200(以下、「製造ライン200」という。)ついて示す模式図である。図2には、熱延鋼板1、連続仕上げ圧延機2、大きく2つから成る冷却装置3、サイドガイド4、巻き取り機5、圧延後平坦度計6a、及び巻き取り前平坦度計6bが示されており、平坦度計6a、6bは蛇行追従型であるとともに、鋼板幅方向7点について鋼板平坦度を測定可能である。製造ライン200にはさらに、仕上げ圧延機2のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのいずれかについて、その操作量を算出する演算装置7、鋼板1の製品品質不良等の実績を格納したデータベース8、巻き取り前の平坦度目標値を設定する演算装置9、及び仕上げ圧延機出側の平坦度目標値を変更する演算装置10が備えられている。以下、製造方法100、及び製造方法100の各工程と対応する製造ライン200について説明する。
(巻き取り前目標値設定工程S1’)
熱延鋼板1を製造するにあたり、第1実施形態においては、まず、データベース8から鋼板平坦形状起因で発生したスリ疵、水乗りマーク、コイラエッジ疵などの品質不良の実測値と、巻き取り前平坦度計6bにより測定した鋼板平坦度の実績値との相関を調査し、上記品質不良の少なくとも一つが最小となるような巻き取り前平坦度の最適値を見つけ、当該最適値を巻き取り前平坦度目標値(λCaim)として設定する。なお、どの品質不良を最小とするかは、鋼種、向け先、下工程などを考慮しながら、人間により決定されてもよいし、自動演算装置により決定されてもよい。製造ライン200においては、演算装置9が用いられている。このように巻き取り前目標値設定工程S1’では上記巻き取り前平坦度目標値λCaimを設定する。
(圧延後目標値設定工程S2’)
次に、仕上げ圧延機出側の圧延後平坦度(急峻度λF)と、巻き取り直前の巻き取り前平坦度(急峻度λC)とについて、下記式(2)のように数式化する。なお、A、Bは鋼種、寸法、冷却装置3の操業条件(具体的には、冷却装置の使用率、冷却水量)毎に区分された値とする。
λC = A×λF + B ・・・(2)
製造ライン200においては、熱延鋼板1を仕上げ圧延するたびに、平坦度計6a、6bにより、熱延鋼板1の長手方向位置並びに幅方向位置について同一箇所の急峻度を測定し、仕上げ圧延機出側の急峻度実績値λFactに基づいて、上記式(2)中の係数A、Bを演算装置10にて随時修正するものとする。修正方法としては、一般的な手法であれば特に限定されずに適用可能であり、例えば逐次最小二乗法を用いて逐次修正することができる。
また、演算装置10においては、熱延鋼板1を仕上げ圧延機2で仕上げ圧延する前に、鋼板材料の鋼種、寸法、及び予定されている冷却装置3の操業条件の情報に基づき、過去に修正された係数A、Bの情報を読み込み、更に、作業工程又は演算装置9にて決定された巻き取り前平坦度目標値λCaimに基づいて、仕上げ圧延機出側の圧延後平坦度目標値λFaimを下記式(3)のように演算する。
λFaim = (λCaim − B)/A・・・(3)
なお、演算装置7では、圧延後平坦度が演算装置10で設定された仕上げ圧延機2出側の圧延後平坦度目標値λFaimとなるように、仕上げ圧延機2の各スタンドにおいて、幅方向の板厚分布を変更する装置(ワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロス等)の操作量を演算する。当該演算方法としては、従来から用いられている演算方法であれば特に限定されずに適用可能である。また、演算装置7では、熱延鋼板1を仕上げ圧延機2で圧延中、仕上げ圧延機出側の圧延後平坦度計6aの測定値が、設定された圧延後平坦度目標値λFaimと異なる場合は、仕上げ圧延機2の装置の操作量にフィードバックすることで、仕上げ圧延機2出側の圧延後平坦度を目標値に修正する機能を有している。このように圧延後目標値設定工程S2’では、上記圧延後平坦度目標値λFaimを設定及び修正する。製造ライン200においては、下記仕上げ圧延工程S1を経た鋼板1の圧延後平坦度が圧延後平坦度目標値λFaimとなるように、仕上げ圧延機2を設定、制御する。
(仕上げ圧延工程S1)
製造方法100における仕上げ圧延工程S1は、粗圧延された熱延鋼板1を仕上げ圧延機により仕上げ圧延する工程である。仕上げ圧延機としては、鋼板の仕上げ圧延に一般的に用いられる仕上げ圧延機であれば特に限定されずに適用可能である。仕上げ圧延工程S1の仕上げ圧延機は、製造ライン200中の連続仕上げ圧延機2と対応している。仕上げ圧延工程S1においては、次工程である圧延後平坦度測定工程S2において測定された平坦度が、上記圧延後目標値設定工程S2’において設定された目標値となるように、熱延鋼板1を仕上げ圧延する。
(1.2.2.圧延後平坦度測定工程S2)
圧延後平坦度測定工程S2においては、製造ライン200中の圧延後平坦度計6aにより、仕上げ圧延機2出側における熱延鋼板1の圧延後平坦度が測定される。測定された当該圧延後平坦度実測値は、圧延後目標値設定工程S2’に供され、圧延後目標値が逐次修正される。
(冷却工程S3)
圧延後平坦度を測定した後、熱延鋼板1は次工程である冷却工程S3に供される。冷却工程S3においては、熱延鋼板1が冷却装置3により冷却される。冷却装置3としては、一般的に使用される冷却装置であれば特に限定されずに適用可能であり、製造ライン200においては、大きく二つに分けられた冷却装置を用いている。
(巻き取り前平坦度測定工程S4)
冷却工程S3において冷却された熱延鋼板1は、巻き取り前平坦度測定工程S4に供され、巻き取り前平坦度計6bにより、鋼板1の巻き取り前平坦度が測定される。測定された当該巻き取り前平坦度値は、圧延後目標値設定工程S2’に供され、予め設定された巻き取り前平坦度目標値と照らし合わせて、圧延後目標値設定工程S2’において圧延後目標値が逐次修正される。
(巻き取り工程S5)
巻き取り前平坦度が測定された熱延鋼板1は、サイドガイド4を通り、巻き取り工程S5においてコイル状に巻き取られる。巻き取り工程S5においては、一般的に使用されている巻き取り機5が使用される。また、巻き取り工程S5において巻き取られた熱延鋼板1の製品品質はデータベース8に送られ、巻き取り前目標値設定工程S1’における演算装置9の演算に供される。
上記工程S1’、S2’及びS1〜S5、を備える第1実施形態の製造方法100によれば、鋼板の巻き取り前平坦度を精度よく目標値とすることができるとともに、熱延鋼板1の平坦形状に起因する、鋼板巻き取り時の品質不良(鋼板のスリ疵、水乗りマーク、コイラエッジ疵)のうち少なくとも一つが最小となるように熱延鋼板1を製造することができる。従って、鋼板の切下げ発生頻度を抑えることができ、安定的に製品を製造することができる。
<第2実施形態>
図3は本発明の第2実施形態にかかる製造ライン300について示した模式図である。図3において第1実施形態と同様の構成については、同符号を付し、説明を適宜省略する。第2実施形態について、第1実施形態との相違点は、大きく二つに分けられた冷却装置3a、3bの中間位置において、さらなる平坦度計6cを設置するとともに、演算装置10の処理方法に関してより高度化しているところにある。以下演算装置10に着目して説明する。
第2実施形態の演算装置10においては、仕上げ圧延機2出側の圧延後平坦度(急峻度λF)と、巻き取り直前の巻き取り前平坦度(急峻度λC)の他に、冷却装置中間の平坦度(λM)との関係を下記式(4)及び(5)のように数式化している。なお、A1、B1は、鋼種、寸法、及び冷却装置3bの操業条件毎に区分された値であり、A2、B2は、鋼種、寸法、冷却装置3aの冷却操業条件毎に区分された値である。第2実施形態にかかる製造ライン300は、第1実施形態にかかる製造ライン200ように冷却装置3を一体として取り扱うよりも、鋼板平坦形状変化の発生位置についてより細分化して分析できるところに特徴がある。
λC = A1×λM + B1・・・(4)
λM = A2×λF + B2・・・(5)
また、演算装置10では、仕上げ圧延機2出側の圧延後平坦度実績値(急峻度実績値λFact)、及び冷却装置中間の急峻度実績値λMactに基づいてA2、B2を修正するとともに、冷却装置中間の急峻度実績λMact、及び巻き取り直前の巻き取り前平坦度実績値(急峻度λCact)に基づいてA1、B1を修正する。
そして、演算装置10においては、熱延鋼板1を仕上げ圧延機2で仕上げ圧延する前に、鋼板材料の鋼種、寸法、及び予定されている冷却装置3a、3bの操業条件の情報に基づき、過去に修正された係数A1、B1、A2、B2の情報を読み込み、更に、演算装置9にて決定された巻き取り直前の巻き取り前平坦度目標値λCaimに基づいて、仕上げ圧延機2出側の圧延後平坦度目標値λFaimを下記式(6)のように演算する。
λFaim = (λCaim−B1−A1×B2)/(A1×A2)・・・(6)
このように、圧延後平坦度目標値λFaimを設定し、上記第1実施形態と同様に、仕上げ圧延機2を経た鋼板1の圧延後平坦度が圧延後平坦度目標値λFaimとなるように仕上げ圧延機2の装置操作量が設定、制御される。第2実施形態においては、鋼板1の圧延後平坦度目標値λFaimが、圧延後平坦度、巻き取り前平坦度、及び冷却装置間の平坦度によって逐次修正される。
第2実施形態の製造ライン300によれば、仕上げ圧延後及び巻き取り前のみならず、冷却装置中間点においても熱延鋼板1の平坦形状変化を測定し、当該データを仕上げ圧延機2の装置操作量にフィードバックしているので、より精度よく熱延鋼板1の巻き取り前平坦度を目標値へと近づけることができる。従って、鋼板1の品質不良を防ぎ、切下げ発生頻度を抑えることができ、より安定的に製品を製造することができる。
<第3実施形態>
図4は本発明の第3実施形態にかかる製造ライン400ついて示した模式図である。図4において第1、第2実施形態と同様の構成については、同符号を付し、説明を適宜省略する。第3実施形態について、第1実施形態との相違点は、平坦度計6a、6bの近傍に鋼板1の幅方向温度分布を測定できる幅方向温度計11a、11bを設置している点にある。即ち、幅方向温度計11aは平坦度計6aの鋼板平坦度測定箇所と対応する箇所について鋼板幅方向温度を測定し、幅方向温度計11bは平坦度計6bの鋼板平坦度測定箇所と対応する箇所について鋼板幅方向温度を測定するとともに、鋼板平坦度及び当該平坦度と対応する温度情報を演算条件として組み込むことで演算装置10の処理方法をより高度化したところにある。以下演算装置10の処理方法の相違点に着目して説明する。
第3実施形態においては、第1実施形態における式(2)が適用される。ただし、式(2)において、A、Bを区分する条件の中に、幅方向温度計11a、11bでの鋼板幅方向センター位置の温度を基準とした場合における幅方向エッジ位置(平坦度計6a、6bの幅方向の評価一と同じ位置)での温度の情報を取り込み、さらに条件を細分化する。図2、図4には図示されていないが、製造ライン200、400においては、鋼板1のエッジ部を加熱するエッジヒータの操業条件や、仕上げ圧延機2内のデスケーラー・スプレー・ワークロール冷却などの操業条件により、鋼板1の幅方向温度分布が変化する。そこで、数式化の際、当該温度分布情報も条件に盛り込むことで、鋼板平坦形状が変化する要因をより細分化することができる。
尚、上記説明では平坦度計が2つ設置される場合について説明したが、その他に平坦度計6c(図3参照)やそれ以外の平坦度計(不図示)が存在する場合には、当該平坦度計についても平坦度計6a、6bと同様に、幅方向温度計を近傍に設置することが好ましい。なお、平坦度計と幅方向温度計との距離については,両測定器間での鋼板の平坦の変化が小さく無視しても差し支えない範囲内であれば良い。好ましくは、約15m以内の近傍を意味する。
第3実施形態の製造ライン400によれば、鋼板平坦度情報のみならず、鋼板幅方向温度情報についても仕上げ圧延機2の装置操作量にフィードバックしているので、より精度よく熱延鋼板1の巻き取り前平坦度を目標値に近づけることができる。従って、鋼板1の品質不良を防ぎ、切下げ発生頻度を抑えることができ、より安定的に製品を製造することができる。
(その他構成:平坦度計6a、6b、6c)
本発明にかかる平坦度計6a、6b、6c(以下まとめて、単に「平坦度計」という。)は、蛇行追従型であることが好ましく、加えて、鋼板1の幅方向に対して少なくとも7点において鋼板平坦度を測定可能であることが好ましい。そのような平坦度計について以下説明する。
鋼板板材は、上述の通り、品質から平坦度が要求される。また、安定した生産からも平坦度が要求される。本発明においては、急峻度を測定することで鋼板平坦形状を特定している。一般的に、平坦度は急峻度の他、伸び差率といった値によっても特定される。伸び差率Δεは一定区間Lにおける板材中央部と板端近傍での伸びの差ΔLを用いて、次の式(7)で表される。
Δε=ΔL/L ・・・(7)
また、急峻度λは、板材の波高さδとそのピッチPを用いて、次の式(8)で表される。
λ=δ/P ・・・(8)
そして、伸び差率Δεと急峻度λとには、次の式(9)の関係がある。
λ=(2/π)(|Δε|)1/2×100 ・・・(9)
図7は、本発明に使用可能な平坦度計を示した図である。鋼板1は、紙面左右方向(鋼板長手方向)に長尺な形状である。鋼板1の上部には、鋼板1の表面に線状パターン12を投影する投影機13が設置されている。線状パターン12は、平行な複数の線14、14、…により構成されている。線状パターン12は、鋼板1の表面において、線14、14、…の長手方向が鋼板1の長手方向と直交する方向(鋼板幅方向)となるようにして投影されている。そして、線状パターン12を向いた2台のカメラ15a、15bが、鋼板1の上部に配置されている。なお、図の見易さのために、線14、14、…の一部の符号を省略している。
図8は、平坦度計における投影機13及びカメラ15a、15bの配置を示す図である。投影機13は、投影方向を鋼板1の圧延方向と逆方向の斜め下方とし、投影角度は鉛直方向に対してβである。一方、カメラ15a、15bは、撮影方向を鋼板1の圧延方向斜め下方とし、撮影角度は鉛直方向に対してαである。なお、カメラ15a、15bは、同一の撮影角度αで配置されている。そして、カメラ15a、15bは、PC16に接続されている。
かかる構成により、投影機13に線状パターン12を描いたスライド(図示省略)を被せることで、鋼板1の表面に線状パターン12(図7参照)が投影される。この線状パターン12を、カメラ15a、15bにより撮影し、その画像からPC16で平坦度が算出される。ここで、カメラ15a、15bは感度が異なるため、画像の輝度が異なる。そのため、後述するようにカメラ15a、15bの画像を使い分けることにより、明瞭な線状パターン12を得ることができる。
図9は、平坦度計の変形例を示す図である。なお、図7と同じ構成を採るものについては、図7にて使用した符号を付し、説明を省略する。カメラ15a、15bは、感度及び鋼板1の長手方向に対する撮影角度を変えて配置されている。かかる構成により、カメラ15a、15bでは、感度に加え、反射を受ける位置からも異なる輝度の画像を得ることができる。そのため、カメラ15a、15bの画像において輝度が飽和した部分や、輝度が弱い部分を有する画像があっても、後述するようにカメラ15a、15bの画像を使い分けることにより、明瞭な輝度分布を得ることが可能である。なお、平坦度計の変形例においては、鋼板1の長手方向に対する撮影角度を変えているが、幅方向の角度を変えても良い。また、状況に応じて撮影位置だけを変えて、カメラ15a、15bの感度を同一にしても良い。
平坦度計は、投影機13に波長360〜560nmを最大輝度とする光源を備え、カメラ15a、15bに波長360〜560nmである光の透過フィルタを備えることが好ましい。これによれば、板材が高温のため輻射光を発する場合であっても、輻射光の赤外領域での波長と異なる波長の光を光源に用い、カメラ15a、15bがフィルタによりその波長の光のみを撮影するようにすることで、明瞭に線状パターン12を撮影することが可能である。したがって、高温の板材でも平坦度の測定が可能となる。なお、光源としてはメタルハライドランプやキセノンランプを用いることができる。
図10は、鋼板の平坦度を測定するフローチャート40である。以下、図7の平坦度計を用いて鋼板1の平坦度を測定する場合について説明する。最初に、平坦度を測定する位置に鋼板1が存在するか否かについて判定する(工程S11)。判定は、線状パターン12が鋼板1に投影されると輝度が高いため、線状パターン12を撮影するカメラ15a、15bの画像の輝度を測定することで行われる。工程S11で肯定判断された場合(鋼板1が存在する場合)、工程S12〜S19により鋼板1の平坦度が測定される。工程S11で否定判断された場合(鋼板1が無い場合)、鋼板1の平坦度測定は終了する。以下、工程S12〜S19について詳述する。
(工程S12)
工程S12では、鋼板1の高さを測定する。鋼板1は、熱間圧延ラインでの走行時に浮き上がりが生じるため、高さが変化する。フローチャート40では、後述する工程S17で鋼板1の高さを用い、表面角度分布を計算する。そのため、最初に鋼板1の高さを測定することが必要である。図11は、カメラにより撮影された鋼板1表面の線状パターン12を示す図である。紙面左右が鋼板1の幅方向である。線状パターン12は、複数の平行に並べられた線14、14、…と、スリット16a〜16fとを有している。それぞれの線14、14、…は、長手方向において中央部と左右部とに分割され、その間にスリット16a〜16fが配置されている。線状パターン12は、線14、14、…及びスリット16a〜16fの長手方向が鋼板1の幅方向となるように投影されている。なお、図の見易さのために、線14、14、…は、実際より本数を少なく示し、一部の符号を省略する。
かかる構成により、カメラ15a、15b(図7参照)で鋼板1に投影された線状パターン12を撮影し、画像におけるスリット16a〜16fの位置から鋼板1の高さを測定する。図12(a)にスリット16aの位置と、鋼板1の高さとの関係を示す。ここでは、カメラ15bの図示を省略し、以降カメラ15aのみについて説明するが、カメラ15bについても同様である。鋼板1の高さが△h変化すると、鋼板1表面のスリット16aの位置が△Y変化する。そのため、カメラ15aの画像におけるスリット16aの位置が変化する。これにより、スリット16aの位置から、鋼板1の高さを算出することができる。
図12(b)は、カメラ15aの画像におけるスリット16a〜16fの上下方向位置(以下「Y座標」という。)と、鋼板1の高さとの関係を示した図である。鋼板1の高さが変わると、それに伴いカメラ15aの画像における鋼板1表面のスリット16a〜16fのY座標が変化する。なお、Y座標は、カメラ15aの画像における画素位置で決まる。そのため、予め図12(b)の関係を求めておき、スリット16a〜16fのY座標を測定することにより、鋼板1の高さを測定することができる。
(工程S13)
工程S13では、鋼板1の幅方向端辺(以下単に「端辺」という。)を検出する。図11において、線状パターン12は、鋼板1の幅方向について、鋼板1より大きくなるように投影されている。これにより、鋼板1の表面では反射により線状パターン12は明るく、鋼板1の表面を外れた位置では、線状パターン12は反射しないため暗くなる。そのため、この輝度の差から鋼板1の端辺を検出することができる。検出方法の一例としては、カメラ15a、15bの画像から、複数の線14、14、…の輝度を鋼板1の長手方向に積算し、積算値を鋼板の幅方向に微分する。微分した結果から、輝度の変化が最大及び最小となる位置が、鋼板1の端辺17a、17bとなる。このように複数の線14、14、…を用いて鋼板1の端辺を検出することで、検出の精度を高めることができる。なお、上記方法によらず、例えば1本の線14について、長手方向の輝度変化から鋼板1の端辺を検出しても良い。
(工程S14)
工程S14では、鋼板1の形状測定線を決定する。この形状測定線に沿って、鋼板1の長手方向の表面形状が求められる。ここでは、工程S13で検出された鋼板1の端辺から、図11のとおり鋼板1の長手方向に形状測定線18a〜18eを設定する。形状測定線18a〜18eは線14、14、…の分割部以外に設定される。
鋼板1の急峻度λを計算するには、上記式(9)のΔεを求めるために、上記式(7)のとおり板幅中央部の形状測定線18aの他に、少なくとも1本の形状測定線を、形状を計る位置に設定すれば良い。ただし、実際の操業においては、少なくとも鋼板1の幅方向両端部で急峻度λを測定することから、形状測定線18a〜18cを設置することが好ましい。さらには、図11のとおり、形状測定線18aと、18b及び18cとの中間に形状測定線18d、18eを設定することが好ましい。これによれば、5箇所で鋼板の表面形状が測定されるため、表面形状の把握が容易となる。なお、鋼板1の幅方向の大きさに応じ、さらに形状測定線を設定することも可能であるが、形状測定線の本数に応じ計算量が増加するため、平坦度の測定時間が長くなる。
上記のように形状測定線18a〜18eを設定することにより、画像上の全ての線14、14、…の形状を計算するよりも大幅に計算量を減らすことができる。また、カメラ15a、15bの画像から検出した鋼板1の端辺を基準として、画像に形状測定線18a〜18eを設定することにより、蛇行時など鋼板1の端辺位置が変化するときでも、形状測定線18a〜18eを鋼板1の同じ位置に精度よく設定することができる。これにより、平坦度の測定精度を向上することができる。
(工程S15)
工程S15では、形状測定線18a〜18eで輝度分布を作成する。形状測定線18a〜18eは、複数の線14、14、…を横断する。そのため、各形状測定線18a〜18eには輝度の明暗が存在する。最初に、カメラ15a、15bの画像ごとに、この輝度分布を測定する。測定方法の一例としては、カメラ15a、15bの画像から、形状測定線18a〜18eの輝度分布を、PC16において輝度データ列として取り込む。この際、耐ノイズ性能を向上させるために、各形状測定線18a〜18eについて、近傍の幅方向データを測定し、平均化することが好ましい。
図13(a)はカメラ15a、図13(b)はカメラ15bの画像から測定された輝度分布の一例を示す図である。横軸はカメラ15a、15bの画像におけるY座標、縦軸は輝度であり、形状測定線18aの輝度分布19a、19a’及び形状測定線18bの輝度分布19b、19b’が示されている。ここでは、Y座標は画素数から、351まで測定されている。一方、カメラ感度範囲を越えて輝度が飽和することにより線状パターン間隔がつぶれてしまう場合や、輝度が低すぎてカメラの暗電流ノイズに線状パターンが埋もれてしまう場合は、輝度の測定が不可能となる。そのため、カメラ15a、15bの感度を変え、形状測定線18a〜18eごとに輝度分布の明瞭な画像を用いる。ここでは、カメラ15bの感度は、カメラ15aの感度の4倍に設定されている。
例えば、図13(b)の範囲Aでは、輝度分布19a’の輝度が飽和しており、輝度を測定不能となっている。そのため、形状測定線18aについては、輝度が飽和していない(飽和している部分の少ない)輝度分布19aを用いる。また、形状測定線18bの輝度分布19b、19b’は、いずれのも輝度が飽和していないが、図13(a)の範囲Bでは輝度が低いことから、輝度を測定不能となっている。そのため、形状測定線18bについては、輝度の高いカメラ15bの画像による輝度分布19b’を使用する。このようにして、各形状測定線18a〜18eについて明瞭な輝度分布を得ることで、平坦度の測定が可能となる。
(工程S16)
工程S16では、形状測定線18a〜18eの輝度分布から、線状パターン間隔Pm(y)を計算する。工程S16の詳細については、後述する。
(工程S17)
工程S17では、形状測定線18a〜18eにおける鋼板1の表面角度分布を計算する。図14は、鋼板1を幅方向から見た図であり、工程S16で求めた線状パターン間隔Pm(y)から、鋼板1の表面角度分布を計算する方法を示している。鋼板1の上部には、投影機13とカメラ15a、15bとが設置されている。ここでは、カメラ15bの図示を省略し、以降カメラ15aのみについて説明するが、カメラ15bについても同様である。鋼板1の表面には、投影機13から投影された線状パターン12のうち、2本の線14a、14b、およびこれらの間の暗部14cが図示されている。
カメラ15aは、撮影方向を鋼板1の一の長手方向斜め下方とし、撮影角度は鉛直方向に対してαである。一方、投影機13は投影方向を鋼板1の他の長手方向斜め下方とし、投影角度は鉛直方向に対してβである。線14a、14bの間隔を、線14a、14bの幅方向(鋼板の長手方向)における、線14aと暗部14cとを合わせた大きさとする。鋼板1が水平である場合における鋼板1の表面での線14a、14bの間隔をPsとし、カメラ15aの画像での線14a、14bの間隔をPs(y)とする。鋼板1の水平方向に対する表面角度がθである場合における鋼板1の表面での線14a、14bの間隔をPmとし、カメラ15aの画像での線14a、14bの間隔をPm(y)とする。このとき、幾何学的に、次の式(10)〜(12)が成立する。
Figure 0004957586
式(10)に、式(11)、(12)を代入することで、次の式(13)を導くことができる。
Figure 0004957586
ここで、α及びβは、設定値である。そのため、平坦な基準板で予め基準線状パターン間隔を測定し、これを線状パターン間隔Ps(y)とする。そして、工程S16により線14a、14bの間隔Pm(y)を測定することで、線14aと14bとの間における鋼板1の表面角度θを求めることができる。同様にして、全ての線14、14、…の間隔から鋼板1の表面角度θを求めることで、形状測定線18a〜18eにおける表面角度分布を求めることができる。
なお、線状パターン間隔Ps(y)は、基準板について、上記工程S12〜16を実施することで、測定することができる。線状パターン間隔Ps(y)は、鋼板1の高さにより変化するため、予め複数の鋼板1高さで測定することが必要である。そして、工程S12で測定した鋼板1の高さから、使用する線状パターン間隔Ps(y)を決定する。一の鋼板1高さにおけるPs(y)の測定結果の一例を図15に示す。図15では、基準板における画像のY座標と線状パターン間隔Ps(y)との関係が示されている。これにより、鋼板1の高さ及び鋼板1における位置(Y座標)が定まることで、線状パターン間隔Ps(y)を決定することができる。
(工程S18)
工程S18では、工程S17で求めた表面角度分布から、鋼板1の表面形状を計算する。鋼板1の表面形状は、工程S17で求めた表面角度を積分することにより、それぞれの形状測定線18a〜18eについて求めることができる。
(工程S19)
工程S19は、工程S18で求めた表面形状から鋼板1の急峻度λを計算する。それぞれの形状測定線18a〜18eの位置において表面形状の表面長さの計算を行うことで、伸び率εを計算する。そして、形状測定線18aでの伸び率ε18aと、他の形状測定線18b〜18eでの伸び率εから伸び差率△εを求め、鋼板1の急峻度λを計算する。ここで、添字mは18a〜18eであり、形状測定線mにおける値であることを表している。得られた伸び率から、次の式(15)により中心部との差(伸び差率)△εを計算する。
ここでは、形状測定線18a、18bの表面形状から鋼板1の急峻度λを求める場合を説明する。図16(a)は形状測定線18aでの表面形状20aを示す図であり、図16(b)は形状測定線18bでの表面形状20bを示す図である。表面形状20a、20bの表面長さと、その間の直線距離を計算して、伸び率を計算する。表面長さの計算は、対象区間を分割して折れ線近似して計算する方法などが用いられる。これによれば、微小な測定ノイズの影響を抑制することができる。ここでは、対象区間を12分割し、折れ線近似により表面長さを計算する。分割後のそれぞれの点をP(i=0〜12)とし、表面形状20a、20bの直線距離をP12とすると、伸び率εmは、次の式(14)で表される。
Figure 0004957586
得られた伸び率から、次の式(15)により中心部との差(伸び差率)△εを計算する。
△ε=ε18a−ε18b ・・・(15)
この△εから、式(9)により急峻度λを求めることができる。同様に、形状測定線18aと、形状測定線18c〜18eとによっても急峻度λを測定することが可能である。
以上の工程S11〜19により、鋼板1の急峻度λを計算することで、鋼板1の平坦度とすることが可能である。
図17は、上述した工程S16の詳細な工程を示す図である。工程S16a〜16cでは、形状測定線18a〜18eの各輝度分布を空間周波数領域へ変換する。工程S16d、16eでは、変換した空間周波数領域の関数を、空間領域へ逆変換する。工程S16f〜16hでは、逆変換した空間領域の空間周波数から線状パターン12の間隔Pm(y)を計算する。以下、工程S16a〜S16hについて詳述する。
(工程S16a)
工程S16aでは、形状測定線18a〜18eの輝度分布における輝度データ数が2(nは自然数。以下同じ。)でない場合に、輝度データ数を2の輝度分布k(x)に再サンプリングする。これにより、輝度分布k(x)に、離散フーリエ変換の高速な計算手法である高速フーリエ変換を適用することが可能となる。図18に、輝度データ数を、6から8に再サンプリングする一例を示す。図18(a)における6点の輝度データD1〜D6において、隣接するデータ同士を線で結ぶ。そして、D1〜D6の間を8等分し、この8等分する線と輝度データを結んだ線の交点を新たな輝度データD1’〜D8’とすると、図18(b)のとおり輝度データ数が8となる。ここで、再サンプリングにより、輝度データD1〜D6とD1’〜D8’では位置に差が生じる。しかし、鋼板1の平坦度測定に使用するのは、式(9)のとおり、線状パターン間隔Pm(y)と線状パターン間隔Ps(y)とであり、Pm(y)、Ps(y)ともに再サンプリングされるため、平坦度の値には影響しない。なお、輝度データの精度を低下させないため、再サンプリングでは、データ数を増やすことが好ましい。
(工程S16b)
工程S16bでは、再サンプリングした輝度分布k(y)を対称データ化する。離散フーリエ変換は、対象とする信号波形の外側にも同じ波形が繰り返していると仮定する。形状測定線18a〜18eの輝度分布k(y)は、両端において空間周波数(線状パターン間隔)、輝度ともに異なっているため、大きな不連続点を生じる。このことは、線状パターン間隔の計算結果において、輝度分布k(y)の端部に測定誤差を生じることになる。そこで、輝度分布k(y)について、対象とする輝度分布k(y)の輝度データ列を反転させて、元の輝度データ列の後につけくわえて、2倍のデータ点数の輝度分布g(y)とする。これにより、輝度分布g(y)の端部が不連続点でなくなるため、信号端部まで精度良く、線状パターン間隔を計算することが可能となる。図19は、輝度データの対称データ化を示す図である。図19(a)は、対称データ化前の輝度分布k(y)を離散フーリエ変換する場合を示している。k(y)の両端Cは、空間周波数(線状パターン間隔;横軸)、及び輝度(縦軸)の違いにより不連続点となっている。図19(b)では、k(y)を横軸方向に反転させてk(y)の後に結合したg(y)を用いて、離散フーリエ変換を行う。これにより、g(y)の両端Dが不連続点とならないため、端部Dで測定誤差が生じることを防ぐことができる。
(工程S16c)
工程S16cでは、対称データ化した輝度分布g(y)に対して、高速フーリエ変換
を行う。これにより、輝度の空間分布を空間周波数領域へ変換する。変換後の関数をG(
f)とし、高速フーリエ変換をF[ ]とすると、次の式(16)で表すことができる。
G(f)=F[g(y)] ・・・(16)
(工程S16d)
工程S16dでは、高速フーリエ変換を行った関数G(f)から空間周波数域を抽出する。抽出は、G(f)にW(f)を積算した後に、fSだけ低周波数側へ移動させる。W(f)は図20に示すように、線状パターン間隔Pm(y)の周波数帯域fL〜fHが1(単位は1/画素)で、それ以外は0の関数である。g(f)にW(f)を積算することにより、g(f)の負の空間周波数域の値は0となり、正の空間周波数帯域に存在する線状パターンのみを残すことができる。これにより、鋼板1表面のスケール生成むらにより生じる模様や、水乗りが、空間周波数に与える影響を抑制することができる。
W(f)における線状パターン間隔Pm(y)の周波数帯域f〜fは、次により求めることができる。図14におけるカメラ15aの撮影角度αと、投影機13の投影角度βとが定まれば、上述した式(13)より、図21のとおり鋼板1の表面角度θと、線状パターン間隔比Pm(y)/Ps(y)との関係を求めることができる。なお、カメラ15bについても同様である。ここで、実際の操業より表面角度θの測定範囲を決定する。表面角度θの測定範囲は、要求される急峻度測定範囲から求められる表面角度θの範囲と、測定時に発生しうる鋼板1全体の傾きから生じる表面角度θの範囲との和で決められる。ここでは、表面角度θの測定範囲を−10°≦θ≦10°とすると、図21のとおり、Pm(y)/Ps(y)は0.82〜1.20となる。
線状パターン間隔Ps(y)は、上述したとおり基準板で予め求められている。図15のとおり、Ps(y)を7〜13とすると、Pm(y)/Ps(y)にPs(y)を積算して、Pm(y)は5.74(=7×0.82)〜15.6(=13×1.2)と求めることができる。そのため、その逆数である空間周波数は0.064(=1/15.6)〜0.174(=1/5.74)となる。これにより、f=0.064、f=0.174と定めることができる。
次に、f≦fとなるようにfを設定する。そして、G(f)×W(f)をf
け低周波側へ移動させる。これにより、後述する工程S16gのアンラッピング処理において、位相角の変化量が大きいのか、不連続点なのか判断できない場合が抑制されるため、不連続点を安定して検出することが可能となる。
以上により、抽出後の空間周波数域における関数H(f)は、次の式(17)で表わすことができる。
H(f)=G(f+fs)・W(f+fs) ・・・(17)
なお、周波数fの移動は必ず行う必要はないが、線状パターン間隔Pm(y)が狭い(空間周波数が高い)場合は、後述する工程S16gのアンラッピング処理において、不連続点を安定して検出するために実施した方が好ましい。
(工程S16e)
工程S16eでは、関数H(f)を逆高速フーリエ変換により、空間周波数域のデータから輝度空間分布へ変換する。変換した結果をgan(y)とする。F−1[ ]は空間周波数領域から空間分布への変換である逆高速フーリエ変換を表す。これにより、gan(y)は、次の式(18)で表すことができる。
an(y)=F−1[H(f)] ・・・(18)
(工程S16f)
工程S16fでは、gan(y)の実数部Re[gan(y)]と虚数部Im[gan(y)]から位相角φ(y)を計算する。φ(y)は、次の式(19)で表すことができる。
φ(y)=tan−1[Im[gan(y)]/Re[gan(y)]] ・・・(19)
(工程S16g)
位相角φ(y)は、−π/2〜π/2に折り畳まれている。これをラッピングされているという。そのため、工程S16gでは、位相角φ(y)を微分しつつ、不連続点で滑らかにつながるよう、πを足したり引いたりするアンラッピング処理を行う。これにより、φ(y)を連続した波にする。位相角φ(y)の微分値は線状パターンの空間周波数−fSに比例する。そのため、次の式(20)により、線状パターンの空間周波数分布を得ることができる。
f(y)=−dφ/dx/(2π)+fS ・・・(20)
(工程S16h)
工程S16hでは、f(y)の逆数を計算して線状パターン間隔Pm(y)を算出する。Pm(y)は、次の式(21)で表すことができる。
Pm(y)=1/f(y) ・・・(21)
ここで、上述した工程S16bにより、データの後半分は反転したデータが結合された部分であるため、前半分を有効なデータとして用いる。
なお、上記形態では、急峻度を計算することで鋼板1の平坦度を求めたが、カメラ15a及び/又は15bの画像における線14の長手方向の形状を、一般に用いられている画像処理で測定することにより鋼板1の幅方向の表面形状を求め、良好な平坦度が得られるように圧延機などの装置を制御することも可能である。
また、上記形態において、カメラ15a、15bで撮影する線状パターン12の線14、14、…(図11参照)の本数は、40〜100本とすることが好ましい。これによれば、解析において線状パターンの画像からそれぞれの線を明瞭に分解することができる。そのため、板材の平坦度測定精度が向上する。例えば、図22のとおり、上述の工程S17で求める鋼材1(図7参照)の表面角度θのばらつきσを小さくすることができる。なお、図22における鋼材1の表面角度のばらつきσは、全面の表面角度が0°である完全に平坦な測定対象の表面角度分布を測定して、その角度分布の測定誤差(0°からの偏差)の標準偏差を計算することにより求めた。
上記形態では、鋼材1の圧延方向の測定範囲は1400mmである。また、線状パターン12(図7参照)間隔は、線14、14、…の幅方向における、1本の線14とこの線14に隣接する一方の暗部とを合わせた大きさとしている(図14参照)。そのため、次の下記式(22)により線状パターン12の間隔を求めることができる。
線状パターン12間隔=圧延方向の測定範囲/線14、14、…の本数・・・(22)
これにより、線状パターン12間隔は、35mm〜14mmとなる。なお、さらに測定精度を向上させるためには、カメラ15a、15bで撮影する線状パターン12の線14、14、…の本数を50〜70本とすることが好ましい。
さらに、カメラ15a、15bの露光時間dtは、下記式(a)により求められ、設定されることが好ましい。
Figure 0004957586
ただし、Ps’は、板材が水平な場合に線の幅方向における、1本の線とこの線に隣接する一方の暗部とを合わせた大きさである。nは大きさPs’における暗部の割合、αは鉛直方向に対するカメラの撮影角度、βは鉛直方向に対する投影機の投影角度である。Vは板材の速度、θmaxは板材の水平方向に対する最大表面角度である。
図23(a)は、カメラ15a、15b(不図示)の露光時間dtを求める方法を示す図である。図23(b)は、図23(a)のA部拡大図である。カメラ15a、15bは撮影方向を鋼板1の一の長手方向斜め下方とし、撮影角度は鉛直方向に対してαである。以降カメラ15aのみについて説明するが、カメラ15bについても同様である。一方、投影機13は投影方向を鋼板1の他の長手方向斜め下方とし、投影角度は鉛直方向に対してβである。水平方向に対する鋼板1の長手方向の表面角度をθとする。水平である板材1において、線14a、14bの幅方向における、線14aと暗部14cとを合わせた大きさ(以下「線14aの大きさ」という。)をPs’とする。表面角度θである鋼板1aにおける線14aの大きさを、Pm(y)’とする。鋼板1a’は、鋼板1aが速度Vでカメラ15aの露光時間dtに移動した後の位置である。鋼板1a’は、鋼板1aの高さからdh上昇している。鋼板1a’において、線14aが露光時間dtにおいて増加した大きさを、dPm(y)’とする。
ここで、図23(b)のとおりdh’を設定すると、
dh’=dh+dh’・tanβ・tanθ
であることから、dh’は次の式(23)で表すことができる。
Figure 0004957586
これにより、dPm(y)’は、
dPm(y)’=dh’(tanα+tanβ)cosαであることから、次の式(24)で表すことができる。
Figure 0004957586
また、上記式(13)、式(11)を用いて、Pm(y)’は、次の式(25)で表すことができる。
Figure 0004957586
線状パターン12(図7参照)が認識されるためには、暗部14cが残っていることが必要である。そのためには、次の式(26)を満たすことが必要である。
n・Pm’(y)>dPm(y)’ ・・・(26)
ここで、nは、線14aの大きさPs’における暗部14cの割合である。上述した式(26)に、式(24)、式(25)を代入すると、次の式(27)のとおりとなる。
Figure 0004957586
一方、高さdhは、次の式(28)で表すことができる。
dh=V・dt・tanθ ・・・(28)
式(26)、式(28)から、カメラ15aの露光時間dtは、次の式(29)のとおりとなる。
Figure 0004957586
式(29)では、表面角度θが大きいほど露光時間dtを小さくする必要がある。そのため、露光時間dtを次の式(30)とする。
Figure 0004957586
ここで、θmaxは、表面角度θの最大値である最大表面角度である。この式(30)を用いてカメラ15a、15bの露光時間dtを求め、設定することにより、最大表面角度θmaxで鋼板1が移動しても線状パターンの隣接する線同士が干渉せず、良好な画像を撮影することができる。これにより、鋼板1の平坦度測定の精度を向上させることができる。
上記のような特徴を有する平坦度計が、本発明において好ましく使用される。このような平坦度計は蛇行追従型であり、且つ、鋼板幅方向の少なくとも7点において鋼板平坦度を測定可能であるから、鋼板1が蛇行していても鋼板幅方向に関して一定の正確な位置にて鋼板平坦度を測定でき、且つ、下記幅方向温度計の温度情報との対応関係についてより精度よく対応させることができる。従って、巻き取り前平坦度を目標値により精度よく近づけることができるとともに、鋼板1の品質不良を防ぎ、切下げ発生頻度を抑えることができ、より安定的に製品を製造することができる。
(その他:幅方向温度計)
本発明の第3実施形態においては、平坦度計とともに、幅方向温度計11a、11b(以下、単に「幅方向温度計」という。)が使用される。幅方向温度計は、平坦度計の近傍に設置され、当該平坦度計によって測定された鋼板1の幅方向平坦度と対応する幅方向温度を測定し、当該温度情報は仕上げ圧延機2の設定、制御のための条件として組み込まれる。
一方で、鋼板1の裏面側の幅方向温度を測定する場合には、通常の温度計では温度測定が困難である。従って、そのような場合には、幅方向温度計として水環境温度計を用いることが好ましい。水環境温度計としては、例えば、特公平03−069974号公報に記載されたような、下面中央部にガラス窓を有する防水構造の容器内に、ガラス窓に入射部を対向させた放射温度計を設け、この容器の下部を、下面に温度測定用水柱噴射口と高さ測定用水柱噴射口とを有する清浄水噴射口と高さ測定用水柱噴射口とを有する清浄水噴射ノズルヘッダー内に、ガラス窓を温度測定用水柱噴射口に対向させて装入固定し、かつノズルヘッダー内に超音波距離計の下部を高さ測定用水柱噴射口に対向させて装入固定し、水冷熱処理中の鋼板表面と、ガラス窓及び超音波距離計との間にそれぞれ清浄水柱を形成して、鋼板表面からの放射エネルギー吸収分の補正係数を求め、この補正係数により放射エネルギーの測定値を補正する補正器を設けた水冷熱処理中における鋼板の表面温度測定装置としてもよいし、
特開2005−024303号公報に記載されたような、被測温鋼材表面と対向する位置に配置された放射温度計と、被測温鋼材と放射温度計との間に光導波路としての水柱を形成するための水柱形成手段とを備え、水柱を介して被測温鋼材表面からの放射光を放射温度計で検出することにより、被測温鋼材の表面温度を測定する装置であって、水柱形成手段に水を供給するための経路に配置され、放射温度計で検出する放射光の波長帯域に対する前記水の透過率を測定する透過率測定手段と、透過率測定手段で測定した透過率を用いて放射温度計の出力値を補正することにより測温値を算出する演算手段と、を更に備えることを特徴とする鋼材の表面温度測定装置や、
特開2003−185501号公報に記載されたような、放射温度計と、被測温鋼板と対向する位置に先端が配置され、後端が前記放射温度計に接続された光ファイバと、被測温鋼板と光ファイバの先端との間に光導波路としての水柱を形成するべく、被測温鋼板表面に向けて温水を噴射するノズルと、ノズルに温水を供給するために水を昇温する昇温手段とを備え、水柱及び光ファイバを介して被測温鋼板表面からの放射光を放射温度計で受光することにより、被測温鋼板の表面温度を測定する表面温度測定装置であって、ノズルは、水柱を形成する温水の水圧を、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する水圧にして噴射し、昇温手段は、水柱を形成する温水の温度を、被測温鋼板表面の測温箇所における沸騰状態が膜沸騰状態を維持する温度に昇温することを特徴とする鋼板の表面温度測定装置としてもよい。
上記のような幅方向温度計が、本発明に好ましく使用される。平坦度計と幅方向温度計とを併用し、鋼板平坦度情報と鋼板温度情報とを対応させて演算条件に組み込むことで、巻き取り前平坦度を目標値により精度よく近づけることができるとともに、鋼板1の品質不良を防ぎ、切下げ発生頻度を抑えることができ、より安定的に製品を製造することができる。
本発明の第1〜第3実施形態の製造方法及び製造ラインと、従来法との効果を比較した結果を図24に示す。なお、対象材は、中炭素材の全製造寸法を対象にした。
従来法では、巻き取り直前の鋼板平坦度の目標値を0(フラット)に設定した結果であり、本発明では巻き取り直前の鋼板平坦度の目標値は0も含むが必ずしも0ではなく、製造寸法毎に製品品質不良が最小となるように予め設定した結果である。図24より明らかなように、巻き取り直前の鋼板平坦度の目標値を最適化することにより、鋼板切り下げ発生頻度が17.3%から9.0%にまで抑えることができており、本発明の第1実施形態が有効であることが確認された。
また、冷却装置の中間にも平坦度計を設置した第2実施形態によれば、仕上げ圧延機出側から巻き取り直前までの鋼板平坦形状の変化を精度よく推定できるため、第1実施形態よりもさらに効果が大きくなった。さらに、幅方向温度計も設置した第3実施形態によっても、第1実施形態より効果が大きくなった。以上より、本発明の有効性が証明された。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う熱延鋼板の製造方法、及び製造設備配列もまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明にかかる製造方法100について示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態にかかる製造ライン200について概略的に示す図である。 本発明の第2実施形態にかかる製造ライン300について概略的に示す図である。 本発明の第3実施形態にかかる製造ライン400について概略的に示す図である。 鋼板の巻き取り直前の平坦度と平坦形状が不良であることに起因して発生した切り下げ発生頻度との相関図である。 仕上げ圧延機出側の平坦度と巻き取り直前の平坦度との相関図である。 鋼板の製造方法に用いる平坦度計について概略的に示す図である。 投影機及びカメラの配置を概略的に示す図である。 平坦度計の変形例について概略的に示す図である。 鋼板の平坦度を測定するフローチャートである。 カメラにより撮影された鋼板表面の線状パターンを概略的に示す図である。 スリットの位置と、鋼板の高さとの関係を概略的に示す図である。 カメラの画像から測定された輝度分布の一例を示す図である。 線状パターン間隔から、鋼板の表面角度分布を計算する方法を示す図である。 一の鋼板高さにおける基準線状パターン間隔の測定結果の一例を示す図である。 形状測定線での表面形状を示す図である。 線状パターン間隔の計算(ステップS16)の詳細なステップを示す図である。 輝度データを再サンプリングする状況の一例を示す図である。 輝度分布の対称データ化について示す図である。 空間周波数領域の関数から、正の空間周波数帯域に存在する線状パターンのみを残す関数W(f)を示す図である。 鋼板の表面角度θと、基準板と鋼板とにおける線状パターン間隔比Pm(y)/Ps(y)との関係を示す図である。 線状パターンにおける線の本数と、鋼材表面角度のばらつきとの関係を示す図である。 カメラの露光時間dtを求める方法を示す図である。 鋼板平坦度の不良起因で発生した切り下げ発生頻度について従来法と本発明とを比較した図である。
符号の説明
S1 仕上げ圧延工程
S2 圧延後平坦度測定工程
S3 冷却工程
S4 巻き取り前平坦度測定工程
S5 巻き取り工程
S1’ 巻き取り前目標値設定工程
S2’ 圧延後目標値設定工程
1 鋼板
2 仕上げ圧延機
3 冷却装置
4 サイドガード
5 巻き取り機
6a、6b、6c 平坦度計
7 演算装置
8 データベース
9 演算装置(巻き取り前目標値設定手段)
10 演算装置(圧延後目標値設定手段)
11a、11b 幅方向温度計
100 製造方法
200、300、400 製造ライン(製造設備配列)

Claims (22)

  1. 粗圧延機にて粗圧延された鋼板を仕上げ圧延機により仕上げ圧延する、仕上げ圧延工程と、仕上げ圧延された前記鋼板を冷却装置にて冷却する、冷却工程と、冷却された前記鋼板を巻き取り機により巻き取る、巻き取り工程と、を備える熱延鋼板の製造方法であって、
    前記冷却工程の前記冷却装置と前記巻き取り工程の前記巻き取り機との間に設置された巻き取り前平坦度計を用いて、前記鋼板の巻き取り前平坦度を測定する、巻き取り前平坦度測定工程と、
    前記冷却工程から前記巻き取り工程までの間に鋼板の平坦度不良部分に水が乗って該部分が急冷されることにより生じる変色前記巻き取り前平坦度測定工程後において最小となるように、前記巻き取り前平坦度の目標値を設定する、巻き取り前目標値設定工程と、
    を備えることを特徴とする、熱延鋼板の製造方法。
  2. 前記仕上げ圧延工程の前記仕上げ圧延機と前記冷却工程の前記冷却装置との間に圧延後平坦度計を設置し、該圧延後平坦度計により、前記仕上げ圧延工程の前記仕上げ圧延機と前記冷却工程の前記冷却装置との間における前記鋼板の圧延後平坦度を測定する、圧延後平坦度測定工程と、前記圧延後平坦度の目標値を設定する、圧延後目標値設定工程と、をさらに備え、
    前記巻き取り前平坦度測定工程において測定された前記鋼板の巻き取り前平坦度が、前記巻き取り前目標値設定工程において設定された前記目標値となるように、各前記平坦度計により測定された前記圧延後平坦度及び前記巻き取り前平坦度に基づいて、前記圧延後目標値設定工程における前記圧延後平坦度の目標値を修正することを特徴とする、請求項1に記載の熱延鋼板の製造方法。
  3. 前記圧延後平坦度と前記巻き取り前平坦度との関係を予め数式化するとともに、該数式中のパラメータを、前記圧延後平坦度測定工程における前記圧延後平坦度の測定値と、前記巻き取り前平坦度測定工程における前記巻き取り前平坦度の測定値と、に基づき変更することで、前記圧延後目標値設定工程における前記圧延後平坦度の目標値を修正することを特徴とする、請求項2に記載の熱延鋼板の製造方法。
  4. 前記圧延後平坦度計により測定された前記圧延後平坦度が、前記圧延後目標値設定工程において設定された前記目標値又は修正された前記目標値となるように、前記仕上げ圧延機のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つを設定することを特徴とする、請求項2又は3に記載の熱延鋼板の製造方法。
  5. 前記圧延後平坦度計により測定された前記圧延後平坦度が、前記圧延後目標値設定工程において設定された前記目標値又は修正された前記目標値となるように、前記圧延後平坦度測定工程において測定された圧延後平坦度に基づいて、
    前記仕上げ圧延機のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つを圧延中に制御することを特徴とする、請求項2又は3に記載の熱延鋼板の製造方法。
  6. 前記仕上げ圧延工程の前記仕上げ圧延機と前記冷却工程の前記冷却装置との間に前記圧延後平坦度計が設置されるとともに、前記圧延後平坦度計と前記巻き取り工程の前記巻き取り機との間に、前記巻き取り前平坦度計を含む少なくとも2つの平坦度計が設置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱延鋼板の製造方法。
  7. 前記平坦度計が蛇行追従型であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱延鋼板の製造方法。
  8. 前記平坦度計が、幅方向に少なくとも7点の平坦度を同時に測定できることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱延鋼板の製造方法。
  9. 設置された前記平坦度計の近傍に前記鋼板の幅方向の温度分布が測定可能である幅方向温度計を設置することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱延鋼板の製造方法。
  10. 設置された前記平坦度計の近傍に前記鋼板裏側の幅方向の温度分布が測定可能である水環境温度計を設置することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の熱延鋼板の製造方法。
  11. 仕上げ圧延機と、冷却装置と、巻き取り機とを備える、熱延鋼板の製造に用いられる設備配列であって、
    前記冷却装置と前記巻き取り機との間に設置された、鋼板の巻き取り前平坦度を測定する巻き取り前平坦度計、及び、前記巻き取り前平坦度計に備えられた、前記巻き取り前平坦度の目標値を設定する巻き取り前目標値設定手段、を備えるとともに、
    前記巻き取り前目標値設定手段が、前記冷却装置から前記巻き取り機までの間に鋼板の平坦度不良部分に水が乗って該部分が急冷されることにより生じる前記鋼板の変色前記巻き取り前平坦度計による平坦度測定後において最小となるように、前記巻き取り前平坦度計の平坦度目標値を設定する手段であることを特徴とする、製造設備配列。
  12. 前記仕上げ圧延機と前記冷却装置との間に設置された、前記鋼板の圧延後平坦度を測定する、圧延後平坦度計、及び、前記圧延後平坦度の目標値を設定する、圧延後目標値設定手段、を備えるとともに、
    前記巻き取り前平坦度計により測定された前記鋼板の巻き取り前平坦度が、前記巻き取り前目標値設定手段において設定された目標値となるように、各前記平坦度計により測定された前記圧延後平坦度及び前記巻き取り前平坦度に基づいて、前記圧延後目標値設定手段によって設定される前記圧延後平坦度の目標値が修正されることを特徴とする、請求項11に記載の製造設備配列。
  13. 前記圧延後平坦度と前記巻き取り前平坦度との関係を予め数式化するとともに、該数式中のパラメータを、前記圧延後平坦度計による前記圧延後平坦度の測定値と、前記巻き取り前平坦度計による前記巻き取り前平坦度の測定値と、に基づき変更することで、前記圧延後目標値設定手段により設定された前記圧延後平坦度の目標値が修正されることを特徴とする、請求項12に記載の製造設備配列。
  14. 前記圧延後平坦度計により測定された前記圧延後平坦度が、前記圧延後目標値設定手段により設定された前記目標値又は修正された前記目標値となるように、前記仕上げ圧延機のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つが設定されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の製造設備配列。
  15. 前記圧延後平坦度計により測定された前記圧延後平坦度が、前記圧延後目標値設定手段により設定された前記目標値又は修正された前記目標値となるように、前記圧延後平坦度計により測定された前記圧延後平坦度に基づいて、
    前記仕上げ圧延機のワークロールベンダー、バックアップロールベンダー、ワークロールシフト、中間ワークロールシフト、ペアクロスのうちの少なくとも一つが圧延中に制御されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の製造設備配列。
  16. 前記仕上げ圧延機と前記冷却装置との間に前記圧延後平坦度計が設置されるとともに、前記圧延後平坦度計と前記巻き取り機との間に、前記巻き取り前平坦度計を含む少なくとも2つの平坦度計が設置されることを特徴とする、請求項11〜15のいずれか一項に記載の製造設備配列。
  17. 前記平坦度計が蛇行追従型であることを特徴とする、請求項11〜16のいずれか一項に記載の製造設備配列。
  18. 前記平坦度計が、幅方向に少なくとも7点の平坦度を同時に測定できることを特徴とする請求項11〜17のいずれか一項に記載の製造設備配列。
  19. 設置された前記平坦度計の近傍に前記鋼板の幅方向の温度分布が測定可能である幅方向温度計を設置することを特徴とする、請求項11〜18のいずれか一項に記載の製造設備配列。
  20. 設置された前記平坦度計の近傍に前記鋼板裏側の幅方向の温度分布が測定可能である水環境温度計を設置することを特徴とする、請求項11〜18のいずれか一項に記載の製造設備配列。
  21. それぞれの平坦度計間の平坦度の関係を予め数式化するとともに、該数式中のパラメータをそれぞれの前記平坦度計の測定実績に基づき修正する、請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
  22. それぞれの平坦度計間の平坦度の関係を予め数式化するとともに、該数式中のパラメータをそれぞれの前記平坦度計の測定実績に基づき修正する、請求項16に記載の製造設備配列。
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