本発明は、乗員の制動操作力に応じたストロークを吸収すると共に制動反力を発生させるストロークシミュレータ、並びに、ストロークシミュレータが適用されて乗員の制動操作に対して車両に制動力を付与する車両用制動装置に関するものである。
車両の制動装置として、ブレーキペダルから入力されたブレーキ操作力やブレーキ操作量などに対して、車両の制動力、つまり、制動力を発生されるホイールシリンダへ供給する油圧を電気的に制御する電子制御制動装置が知られている。この電子制御制動装置としては、ブレーキ操作量に応じて目標制動油圧を設定し、アキュムレータに蓄えられた油圧を調圧してから、ホイールシリンダへ供給することで、制動力を制御するECB(Electronically Controlled Brake)が知られている。
このECBは、運転者によるブレーキペダル操作に応じて作動するマスタシリンダと、このマスタシリンダに連結されたストロークシミュレータと、マスタシリンダとブレーキホイールシリンダとを連結する油圧経路に設けられたマスタカット弁と、油圧を蓄えられるアキュムレータと、このアキュムレータに蓄えられた油圧を調圧する調圧機構とを有している。従って、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、マスタシリンダがその操作量に応じた油圧を発生すると共に、作動油の一部がストロークシミュレータに流れ込み、ブレーキペダルストロークを吸収すると共に、ブレーキペダルにブレーキ反力を付与することで、ブレーキペダルの操作量が調整される。一方、ブレーキECUは、ブレーキ操作量に応じて車両の目標制動力、つまり、目標制動油圧を設定し、調圧機構によりアキュムレータの油圧を調圧して各ホイールシリンダに供給することで、乗員が所望する制動力が得られる。
ところで、上述したストロークシミュレータは、運転者が操作したブレーキペダルの操作量を吸収すると共に、ブレーキペダルに対してブレーキ反力を付与することで、ブレーキ操作量を調整する。このストロークシミュレータとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。
この特許文献1に記載されたストロークシミュレータでは、シミュレータハウジング内に、ブレーキペダルに連動するシミュレータピストンと、このシミュレータピストンに対してブレーキ操作力に応じたストロークを付与する第1弾性手段及び第2弾性部材を収容して構成し、第1弾性手段をゴムとし、第2弾性部材をスプリングとし、この第1弾性部材と第2弾性部材をシミュレータハウジング内に直列に配置し、第1弾性部材と第2弾性部材のそれぞれの初期荷重を実質的に等しい荷重に設定している。
ところで、乗員は、ブレーキペダルを踏み込むとき、一般に、所定の微小ストローク踏み込んでから、その後にその操作量を調整する。そのため、ストロークシミュレータは、乗員がブレーキペダルを踏み込んだとき、入力荷重に対して吸収ストローク(ブレーキ反力)が発生するが、この吸収ストロークは、操作初期時の第1吸収ストローク(第1ブレーキ反力)と、その後に制動力を調整するための第2吸収ストローク(第2ブレーキ反力)に分けることができる。
上述した従来のストロークシミュレータにあっては、乗員がブレーキペダルを踏み込むと、シミュレータピストンが前進し、第1弾性手段としてのゴムを押圧すると共に、第2弾性部材としてのスプリングを押圧する。すると、操作初期時の入力荷重に対してゴムとスプリングが同時に弾性変形し、ブレーキペダルに作用するブレーキ反力は、ブレーキペダルを踏み込んだ直後(第1吸収ストローク)から非線形となって増加する。そのため、ブレーキペダルの動き出しにスムーズさがなくなり、所定の踏み込み量で保持するときの安定感が乏しくなり、ブレーキペダルの操作フィーリングが悪化するという問題が発生する。
本発明は、このような問題を解決するためのものであって、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで制動操作フィーリングの向上を図るストロークシミュレータ及び車両用制動装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のストロークシミュレータは、制動操作力に応じたストロークを吸収すると共に反力を発生させるストロークシミュレータにおいて、中空形状をなすハウジング内で制動操作力により前進可能な第1ピストン及び該第1ピストンに移動自在に嵌合して押圧部を有する第2ピストンからなるピストンと、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に配置されて前記第1ピストンの前進により弾性変形可能な第1弾性部材と、前記ハウジングと前記押圧部との間で両者に密着するように配置されて前記第1ピストンが予め設定された初期ストロークだけ前進してから押圧されて前記第2ピストンにより弾性変形可能な第2弾性部材と、前記第1ピストンが初期ストロークだけ前進する間に該ピストンによる前記第2弾性部材の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段と、を備えることを特徴とするものである。
本発明のストロークシミュレータでは、前記第1弾性部材は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、前記第2弾性部材は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすことを特徴としている。
本発明のストロークシミュレータでは、前記第1弾性部材は圧縮ばねにより構成され、前記第2弾性部材はゴム部材により構成されることを特徴としている。
本発明のストロークシミュレータでは、前記ピストンは、前記第2弾性部材を押圧する円錐部が設けられ、前記第2弾性部材は、前記ピストンの押圧により押圧方向と交差する方向に弾性変形する変形部が設けられることを特徴としている。
本発明のストロークシミュレータでは、前記円錐部と前記変形部が対向して設けられることを特徴としている。
本発明のストロークシミュレータでは、前記第2弾性部材が直列に複数設けられることを特徴としている。
本発明のストロークシミュレータでは、前記ピストンとして、ハウジングに直列に配置される第1ピストン及び第2ピストンを設け、前記第1ピストンは、前記ハウジング内に制動操作力により前進可能であり、前記第1弾性部材により前記ハウジングに対して後退位置に付勢支持され、前記第2ピストンは、前記ハウジング内に前記第1ピストンが初期ストロークだけ前進してから押圧されて前進可能であり、前記第2弾性部材により前記ハウジングに対して後退位置に付勢支持され、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に前記弾性変形抑制手段としての初期隙間が設けられることを特徴としている。
本発明のストロークシミュレータでは、前記ピストンとして、ハウジングに直列に配置される第1ピストン及び第2ピストンを設け、前記第1ピストンは、前記ハウジング内に制動操作力により前進可能であり、前記第1弾性部材により前記第2ピストンに対して後退位置に付勢支持され、前記第2ピストンは、前記ハウジング内に前記第1ピストンが初期ストロークだけ前進してから押圧されて前進可能であり、前記第2弾性部材により前記ハウジングに対して後退位置に付勢支持され、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に前記弾性変形抑制手段としての初期隙間が設けられると共に、前記第2ピストンを前記ハウジングに対して前記第1弾性部材と同じ弾性力により後退側に付勢する前記弾性変形抑制手段としての第3弾性部材が設けられることを特徴としている。
また、本発明の車両用制動装置は、乗員が制動操作可能な操作部材と、該操作部材の操作ストロークに応じてピストンが移動することで作動流体を加圧して所定の油圧を出力可能なマスタシリンダと、前記操作部材の操作ストロークに応じて油圧供給源の油圧を調圧して出力可能な調圧手段と、前記マスタシリンダまたは前記調圧手段からの油圧を受けて車輪に制動力を発生させるホイールシリンダと、前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとを接続する油圧経路に設けられるマスタカット弁と、制動操作力に応じたストロークを吸収すると共に反力を発生させるストロークシミュレータと、前記マスカット弁及び前記調圧手段を制御可能な制御手段とを備え、前記ストロークシミュレータは、前記ピストンが、中空形状をなすハウジング内で制動操作力により前進可能な第1ピストン及び該第1ピストンに移動自在に嵌合して押圧部を有する第2ピストンからなり、前記第1ピストンと前記第2ピストンとの間に配置されて前記第1ピストンの前進により弾性変形可能な第1弾性部材と、前記ハウジングと前記押圧部との間で両者に密着するように配置されて前記第1ピストンが予め設定された初期ストロークだけ前進してから押圧されて前記第2ピストンにより弾性変形可能な第2弾性部材と、前記第1ピストンが初期ストロークだけ前進する間に前記第2ピストンによる前記第2弾性部材の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段とを有する、ことを特徴とするものである。
本発明の車両用制動装置では、前記マスタシリンダは、シリンダ内に前記ピストンが移動自在に支持されることで前方圧力室及び後方圧力室が区画されると共に、前記操作部材により前記ピストンが前進することで前記前方圧力室の油圧を出力可能に構成され、前記第1弾性部材としての圧縮ばねが前記ハウジングと前記ピストンの基端部との間に張設され、前記第2弾性部材としてのゴム部材が前記ハウジングと前記ピストンの先端部との間に収容されることを特徴としている。
本発明の車両用制動装置では、前記マスタシリンダは、シリンダ内に前記ピストンが移動自在に支持されることで前方圧力室及び後方圧力室が区画されると共に、前記操作部材により前記ピストンが前進することで前記前方圧力室の油圧を出力可能に構成され、前記第1弾性部材としての圧縮ばねが前記ハウジングと前記ピストンの基端部との間に張設され、前記マスタカット弁より前記マスタシリンダ側の前記油圧経路の油圧により前進する補助ピストンが設けられ、前記第2弾性部材としてのゴム部材が前記補助ピストンの前進により弾性変形されることを特徴としている。
本発明のストロークシミュレータによれば、制動操作力により前進するピストンにより弾性変形可能な第1弾性部材と、ピストンが予め設定された初期ストロークだけ前進してから押圧されて弾性変形可能な第2弾性部材と、ピストンが初期ストロークだけ前進する間にピストンによる第2弾性部材の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段を設けている。従って、初期制動操作力によりピストンが前進して第1弾性部材だけを弾性変形し、ピストンが初期ストロークだけ前進してから第2弾性部材を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
また、本発明の車両用制動装置によれば、マスタシリンダと調圧手段とホイールシリンダとマスタカット弁とストロークシミュレータと制御手段とを設け、ストロークシミュレータとして、ピストンの前進により弾性変形可能な第1弾性部材と、ピストンが予め設定された初期ストロークだけ前進してから押圧されて弾性変形可能な第2弾性部材と、ピストンが初期ストロークだけ前進する間にピストンによる第2弾性部材の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段とを設けている。従って、乗員が操作部材を制動操作すると、マスタシリンダのピストンが移動することで所定の油圧が出力され、ストロークシミュレータは、この制動操作力に応じたストロークを吸収すると共に反力を発生させる。このとき、初期制動操作力によりピストンが前進して第1弾性部材だけを弾性変形し、ピストンが初期ストロークだけ前進してから第2弾性部材を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
以下に、本発明に係るストロークシミュレータ及び車両用制動装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施例1に係るストロークシミュレータを表す概略断面図、図2は、実施例1のストロークシミュレータにおける入力荷重に対する吸収ストロークを表すグラフである。
実施例1において、図1に示すように、ストロークシミュレータ1は、制動(ブレーキ)操作力に応じたストロークを吸収すると共に、ブレーキ反力を発生させるものである。このストロークシミュレータ1において、中空円筒形状をなすハウジング2は、ハウジング本体2aと、蓋部2bとから構成されている。このハウジング2は、内部における軸方向の一端部側に第1ピストン3が軸方向に沿って移動自在に支持されている。この第1ピストン3は、外周部にハウジング2の内周面に摺接するシール部材3aが装着されている。また、第1ピストン3は、一端部に凹部3bが形成されることで、ハウジング2との間に油圧室4が形成されている。そして、ハウジング2(ハウジング本体2a)の端部に給排口2cが形成され、制動操作力としての制動油圧がこの給排口2cを通して油圧室4に作用するように構成されている。
ハウジング2は、内部における軸方向の他端部側に、中心部に貫通孔5aを有するケース5が段部2dに嵌合している。そして、第1ピストン3とケース5との間には、第1弾性部材としての圧縮コイルばね6が張設されている。第2ピストン7は、軸部7aと円板形状をなす押圧部7bとを有している。第2ピストン7の軸部7aは、ケース5の貫通孔5aを貫通し、端部が第1ピストン3の他端部に形成された嵌合孔3cに移動可能に嵌合している。ケース5内には、ハウジング2の蓋部2bに密着して第2弾性部材としてのゴム部材8が配置されており、ケース5の内周面とゴム部材8の外周面との間には微小隙間が確保されている。第2ピストン7は、押圧部7bがケース5内に位置し、先端部がゴム部材8に接触している。
この場合、本発明のピストンとして、ハウジング2内に直列に配置される第1ピストン3及び第2ピストン7が機能する。第1ピストン3は、油圧室4に作用する制動油圧(制動操作力)により前進可能であり、圧縮コイルばね6の付勢力によりハウジング2に対して後退位置、つまり、第1ピストン3の一端部がハウジング2の一端部に当接する位置に付勢支持されている。第1ピストン3と第2ピストン7との間には、初期隙間S1が確保されている。第2ピストン7は、ハウジング2内に第1ピストン3が初期ストローク(初期隙間S1)だけ前進してから押圧されて前進可能であり、ゴム部材8の付勢力によりハウジング2に対して後退位置、つまり、第2ピストン7の押圧部7bがケース5に当接する位置に付勢支持されている。
そして、本実施例では、第1ピストン3が初期ストロークだけ前進する間に第1ピストン3によるゴム部材8の弾性変形を抑制する、本発明の弾性変形抑制手段として、第1ピストン3と第2ピストン7との間の初期隙間S1が機能する。
また、本実施例のストロークシミュレータ1では、第1ピストン3が油圧室4に作用する制動油圧により前進することで、圧縮コイルばね6だけを弾性変形させ、第1ピストン3が第2ピストン7を押圧して前進することで、ゴム部材8を弾性変形させる。そのため、圧縮コイルばね6は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材8は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
即ち、ストロークシミュレータ1は、図2に示すように、入力荷重(制動油圧)に対して、ガタや遊び分を考慮した立ち上げ吸収ストロークS0が発生した後、操作初期時の第1吸収ストローク(第1ブレーキ反力)S1が発生し、続いて、制動力を調整するための第2吸収ストローク(第2ブレーキ反力)S2が発生する。このとき、第1吸収ストローク(第1ブレーキ反力)S1は、第1ピストン3が圧縮コイルばね6だけを弾性変形させるため、線形剛性変化となる。また、第2吸収ストローク(第2ブレーキ反力)S2は、第2ピストン7がゴム部材8を弾性変形させるため、非線形剛性変化となる。
また、図1に示すように、第2ピストン7は、ゴム部材8を押圧する押圧部7bの先端部に、円錐台形状をなす円錐部7cが設けられている。一方、ゴム部材8は、第2ピストン7の押圧により押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する球面形状をなす変形部8aが設けられている。この場合、第2ピストン7の円錐部7cと、ゴム部材8の変形部8aとは、対向して位置することとなる。なお、第2ピストン7の円錐部7cは、円錐台形状に拘らず、円錐形状や球面形状など、先細(テーパ)形状であればよい。また、ゴム部材8の変形部8aは、球面形状に拘らず、円錐形状や円錐台形状など、先細(テーパ)形状であればよい。
ここで、本実施例のストロークシミュレータ1の作動を具体的に説明する。
例えば、乗員が図示しないブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキストロークに応じて制動油圧が発生し、この制動油圧が給排口2cを通して油圧室4に作用する。すると、第1ピストン3がこの油圧室4に作用した制動油圧により、圧縮コイルばね6の付勢力に抗して前進(図1にて左方へ移動)することで、この圧縮コイルばね6だけが収縮して弾性変形する。この場合、第1ピストン3が初期ストローク(第1吸収ストローク)S1だけ前進する間は、第2ピストン7を押圧することはなく、また、圧縮コイルばね6の付勢力がゴム部材8に作用しないため、このゴム部材8は弾性変形しない。そのため、圧縮コイルばね6は、線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダルの初期操作に対して、ストロークが早期に吸収されると共に、変化量が一定な反力が付与される。
そして、乗員がブレーキペダルを更に踏み込み、第1ピストン3が初期ストローク(第1吸収ストローク)S1を越えて前進すると、第1ピストン3が第2ピストン7を押圧する。すると、第1ピストン3が圧縮コイルばね6の付勢力に抗して更に前進することで、圧縮コイルばね6が収縮して弾性変形すると共に、第2ピストン7がゴム部材8の付勢力に抗して前進することで、ゴム部材8が収縮して弾性変形する。そのため、圧縮コイルばね6は、線形剛性変化をなすものの、ゴム部材8は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダルの調整操作に対して、ストロークが適正に吸収されると共に、安定した反力が付与される。
また、第2ピストン7がゴム部材8を押圧して弾性変形させるとき、第2ピストン7の円錐部7cがゴム部材8の中心部を押圧することで、ゴム部材8は、その中心部が凹むように弾性変形する。続いて、第2ピストン7の円錐部7cの前面がゴム部材8に密着して全体を押圧することで、ゴム部材8は、変形部8aが径方向における外方に弾性変形する。そのため、第2ピストン7がゴム部材8を弾性変形させるとき、弾性初期と弾性終期における弾性変化率が高くなり、ブレーキペダルに対して適正な反力が付与される。
このように実施例1のストロークシミュレータ1にあっては、ハウジング2内に第1ピストン3と第2ピストン7を直列に移動自在に支持し、第1ピストン3の前進により弾性変形可能な圧縮コイルばね6を設けると共に、第1ピストン3が予め設定された初期ストロークだけ前進してから第2ピストン7により押圧されて弾性変形可能なゴム部材8を設け、第1ピストン3が初期ストロークだけ前進する間に第2ピストン7によるゴム部材8の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段として、第1ピストン3と第2ピストン7との間に初期隙間S1を設定している。
従って、初期制動操作力により第1ピストン3が前進して圧縮コイルばね6だけを弾性変形し、第1ピストン3が初期ストロークだけ前進してから第2ピストン7がゴム部材8を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
この場合、第1ピストン3は、ハウジング2内で制動操作力により前進可能であり、圧縮コイルばね6の付勢力によりハウジング2に対して後退位置に付勢支持され、第2ピストン7は、ハウジング2内で第1ピストン3が初期ストロークだけ前進してから押圧されて前進可能であり、ゴム部材8の付勢力によりハウジング2に対して後退位置に付勢支持されている。従って、弾性変形抑制手段としての第1ピストン3と第2ピストン7との間に初期隙間S1を適正に確保することができる。
そして、実施例1のストロークシミュレータ1では、第1弾性部材を圧縮コイルばね6とし、第2弾性部材をゴム部材8とすることで、第1弾性部材(圧縮コイルばね6)は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、第2弾性部材(ゴム部材8)は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。従って、乗員がブレーキペダルを踏み込むと、制動油圧が第1ピストン3に作用して前進し、圧縮コイルばね6だけが収縮して弾性変形することとなり、この圧縮コイルばね6が線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダルの初期操作に対して、ストロークを早期に吸収すると共に、変化量が一定となる反力を付与することができる。そして、乗員が更にブレーキペダルを踏み込むと、第1ピストン3が初期ストロークを越えて前進した後にピストン7を押圧して前進し、ゴム部材8が収縮して弾性変形することとなり、このゴム部材8が非線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダルの調整操作に対して、ストロークを適正に吸収すると共に、安定した反力を付与することができる。
また、実施例1のストロークシミュレータ1では、第2ピストン7の先端部に、ゴム部材8を押圧する押圧部7bに円錐部7cを設ける一方、ゴム部材8に、第2ピストンの押圧により押圧方向と交差する方向に弾性変形する変形部8aを設けている。従って、第2ピストン7がゴム部材8を押圧して弾性変形させるとき、まず、円錐部7cがゴム部材8の中心部を押圧して弾性変形した後、円錐部7cの前面がゴム部材8全体を押圧して弾性変形させることとなり、ゴム部材8は、その弾性初期と弾性終期における弾性変化率が高くなり、ブレーキペダルに対して適正な反力を付与することができる。この場合、円錐部7cと変形部8aを対向して設けており、第2ピストン7とゴム部材8を小型化することができ、装置の簡素化及びコンパクト化を可能とすることができる。
図3は、本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図、図4は、実施例2の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。
実施例2の車両用制動装置において、図3に示すように、マスタシリンダ11は、シリンダ12内にピストンとしての入力ピストン13と加圧ピストン14が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。このシリンダ12は、基端部が開口して先端部が閉塞した円筒形状をなし、内部に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に配置されて軸方向に沿って移動自在に支持されている。
また、操作部材としてのブレーキペダル15は、上端部が図示しない車体の取付ブラケットに支持軸16により回動自在に支持されており、下端部に運転者が踏み込み操作可能なペダル17が取付けられている。そして、ブレーキペダル15は、中間部に連結軸18によりクレビス19が取付けられ、このクレビス19には操作ロッド20の基端部が連結されている。そして、シリンダ12の基端部側に配置された入力ピストン13は、基端部にブレーキペダル15の操作ロッド20の先端部が連結されている。
入力ピストン13は、外周面がシリンダ12の内周部に圧入または螺合して固定された円筒形状をなす支持部材21の内周面により移動自在に支持されている。この入力ピストン13は、支持部材21の内周面に嵌合する支持部13aと、基端部に固定されたブラケット13bと、先端部に支持部13aより大径の押圧部13cとを有している。そして、支持部材21と入力ピストン13のブラケット13bとの間に反力スプリング(第1弾性部材)22が介装されており、入力ピストン13が一方方向(図3にて、右方)に付勢支持されている。
加圧ピストン14は、シリンダ12内にて、入力ピストン13の先端部側に配置されており、外周面がシリンダ12の内周面に移動自在に支持されている。この加圧ピストン14は、シリンダ12の第1内周面12aに嵌合する第1支持部14aと、第1内周面12aに段部12bを介して大径に形成される第2内周面12cに嵌合する第2支持部14bとを有している。また、加圧ピストン14は、第2支持部14bに後方に開口する支持孔14cが形成されており、この支持孔14cの内周面に入力ピストン13の押圧部13cの外周面が移動自在に嵌合している。そして、支持孔14cの先端部に、支持部材23が圧入または螺合して固定されており、加圧ピストン14と支持部材23とは一体となって、入力ピストン13の支持部13aに対して相対移動可能となっている。
そのため、入力ピストン13は、反力スプリング22の付勢力により、押圧部13cが支持部材23に当接する位置に付勢支持されており、反力スプリング22の付勢力に抗して前進すると、この押圧部13cが加圧ピストン14における支持孔14cの底面に当接することができる。加圧ピストン14は、反力スプリング22の付勢力により、入力ピストン13を介して、支持部材23が支持部材21に当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン13は、押圧部13cが加圧ピストン14における支持孔14cの底面に当接した後、更に前進することで加圧ピストン14を押圧し、入力ピストン13と加圧ピストン14とが一体となって前進することができ、加圧ピストン14の先端部がシリンダ12の底部に当接することができる。
また、入力ピストン13は、押圧部13cに先端側が開口する支持孔13dが形成されており、この支持孔12d内にゴム部材(第2弾性部材)24が配置されている。そして、入力ピストン13は、押圧部13cの支持孔13dの底面に、ゴム部材24を押圧する円錐部13eが形成されている。一方、ゴム部材24は、円錐部13eに対向する後端部が平坦面をなし、前端部に、入力ピストン13の押圧により加圧ピストン14に当接したときに、この押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する円錐台形状をなす変形部24aが形成されている。この場合、入力ピストン13と加圧ピストン14が反力スプリング22の付勢力により後退位置に位置決めされているとき、ゴム部材24と加圧ピストン14との間には、初期隙間S1が設定されている。即ち、入力ピストン13が初期ストロークだけ前進する間に入力ピストン13によるゴム部材24の弾性変形を抑制する、本発明の弾性変形抑制手段として、この初期隙間S1が機能する。
本実施例では、入力ピストン13、反力スプリング22、ゴム部材24によりストロークシミュレータが構成されており、入力ピストン13が前進することで、反力スプリング22だけを弾性変形し、入力ピストン13が初期ストロークS1を越えて前進し、ゴム部材24が加圧ピストン14に接触して押圧されることで、このゴム部材24が弾性変形する。ここで、反力スプリング22は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材24は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
従って、運転者がペダル17を踏み込むことでブレーキペダル15が回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して入力ピストン13に伝達され、この入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力に抗して前進することができる。そして、入力ピストン13が初期ストロークS1だけ前進すると、ゴム部材24を弾性変形させて加圧ピストン14に当接することができ、入力ピストン13は加圧ピストン14を押圧し、一体となって前進することができる。
なお、入力ピストン13と加圧ピストン14との受圧面積の関係は、以下に表すものとなっている。この場合、A1は、加圧ピストン14の第1支持部14aの断面積、A2は、加圧ピストン14の第2支持部14bの断面積、A3は、入力ピストン13の支持部13aの断面積である。
A1=A2−A3
このように、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に移動自在に配置されることで、加圧ピストン14における前進方向(図3にて左方)に第1圧力室(前方圧力室)R1が区画され、加圧ピストン14における後退方向(図3にて右方)、つまり、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に第2圧力室R2が区画され、入力ピストン13及び加圧ピストン14における後退方向(図3にて右方)、つまり、加圧ピストン14及び支持部材23と支持部材21との間に背面圧力室(後方圧力室)R3が区画されている。また、シリンダ12と加圧ピストン14との間にリリーフ室R4が形成されている。
一方、前輪FR,FL及び後輪RR,RLにはそれぞれブレーキ装置(制動装置)を作動させるホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLが設けられており、調圧手段を構成するABS(Antilock Brake System)70により作動可能となっている。即ち、マスタシリンダ11の第1圧力室R1に連通する第1圧力ポート26には、第1油圧配管27の一端部が連結されており、この第1油圧配管27の他端部は、2つの油圧供給配管28a,28bに分岐され、前輪FR,FLに配置されるブレーキ装置のホイールシリンダ25FR,25FLに連結されている。また、マスタシリンダ11の背面圧力室R3に連通する第2圧力ポート29には、第2油圧配管30の一端部が連結されており、この第2油圧配管30の他端部は、2つの油圧供給配管31a,31bに分岐され、後輪RR,RLに配置されるブレーキ装置のホイールシリンダ25RR,25RLに連結されている。
そして、第1油圧配管27にマスタカット弁32が設けられている。このマスタカット弁32は、ノーマルオープンタイプの電磁式開閉弁であって、電力供給時に閉止する。また、第1油圧配管27と第2油圧配管30との間には、連通油圧配管33が設けられており、この連通油圧配管33には連通弁34が設けられている。この連通弁34は、ノーマルクローズタイプの電磁式開閉弁であって、電力供給時に開放する。
また、第1油圧配管27から分岐した各油圧供給配管28a,28bには、油圧排出配管35a,35bの基端部が連結されており、第2油圧配管30から分岐した各油圧供給配管31a,31bには、油圧排出配管36a,36bの基端部が連結されている。そして、各油圧排出配管35a,35b,36a,36bは、先端部が集合して第3油圧配管37に連結されている。そして、マスタシリンダ11のリリーフ室R4に連通する第1リリーフポート38に、この第3油圧配管37の先端部が連結されている。
そして、各油圧供給配管28a,28b,31a,31bには、各油圧排出配管35a,35b,36a,36bとの接続部より上流側(第1、第2油圧配管27,30側)に、それぞれ電磁式の増圧弁39a,39b,40a,40bが配置されている。また、各油圧排出配管35a,35b,36a,36bには、それぞれ電磁式の減圧弁41a,41b,42a,42bが配置されている。この増圧弁39a,39b,40a,40bは、ノーマルオープンタイプの開閉弁であって、電力供給時に閉止する。一方、減圧弁41a,41b,42a,42bは、ノーマルクローズタイプの開閉弁であって、電力供給時に開放する。
油圧ポンプ43はモータ44により駆動可能であり、第4油圧配管45を介してリザーバタンク46に連結されると共に、配管47を介してアキュムレータ48に連結されている。従って、モータ44を駆動すると、油圧ポンプ43はリザーバタンク46に貯留されている作動油を加圧してアキュムレータ48に供給することができ、アキュムレータ48は、所定圧力の油圧を蓄圧することができる。
油圧ポンプ43及びアキュムレータ48は、高圧供給配管49を介して圧力制御弁50に連結されている。この圧力制御弁50は、電磁力によりアキュムレータ48に蓄圧された油圧を調圧し、マスタシリンダ11やホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに出力可能である。そのため、圧力制御弁50は、制御圧供給配管51を介して第2油圧配管30に連結され、減圧供給配管52及びリリーフ配管53を介して第3油圧配管37に連結されている。また、外部圧供給配管54を介して第1油圧配管27に連結されている。この場合、外部圧供給配管54は、第1油圧配管27におけるマスタカッド弁よりABS70側に連結されている。
ここで、上述した調圧手段を構成する圧力制御弁50について詳細に説明する。
この圧力制御弁50において、図4に示すように、ハウジング111は、その中心部に上下方向に沿って貫通する第1支持孔112が形成され、その上部には、第1支持孔112に連通する取付孔113及びねじ孔114が形成され、上方が外部に開口している。そして、位置調整用円盤115が外部からねじ孔114に螺合することで、第1支持孔112の上方の開口が閉塞されている。
また、ハウジング111の下部には、第1支持孔112に連通し、且つ、この第1支持孔112より小径の第2支持孔116が形成されている。そして、ハウジング111の第1支持孔112と第2支持孔116にわたって駆動ピストン117が移動自在に嵌合している。この駆動ピストン117は、円柱形状をなし、フランジ部117aが一体に形成されている。また、駆動ピストン117には、軸方向に貫通する第1通路117bが形成されると共に、この第1通路117bと交差するように径方向に貫通する第2通路117cが形成されている。
ハウジング111の下部には、プランジャ118が上下方向に沿って移動自在に支持されると共にリターンスプリング119により下方に付勢支持されている。そして、このプランジャ118は、上方に延出されて第2支持孔116に移動自在に嵌合するロッド部118aを有し、第1弁部118bが駆動ピストン117に形成された第1弁座117dに着座可能となっている。そして、プランジャ118の外周側には、通電可能なコイル120が巻装されており、このプランジャ118とコイル120によりソレノイドが構成されている。
ハウジング111の第1支持孔112には、駆動ピストン117の上方に位置して、円筒形状をなす外部ピストン121が移動自在に嵌合し、この外部ピストン121の内部に制御弁122が配設され、この外部ピストン121と相対移動自在となっている。外部ピストン121は、連通孔121aが形成されると共に、上方が開口している。そして、駆動ピストン117のフランジ部117aと外部ピストン121との間には、リターンスプリング123が張設されており、駆動ピストン117は下方に付勢支持され、外部ピストン121は上方に付勢支持されている。
外部ピストン121は、内部に制御弁122が収容され、上端部に蓋部124が固定されている。制御弁122は、上端部が蓋部124に嵌合する一方、下端部に連通孔121aを貫通する連結部122aが形成され、この連結部122aが駆動ピストン117の上端部に形成された連結凹部117eに嵌合している。また、制御弁122は、第2弁部122bが形成され、この第2弁部122bは、外部ピストン121に形成された第2弁座121bに着座可能となっている。そして、外部ピストン121と制御弁122との間には、リターンスプリング125が張設されており、その付勢力により外部ピストン121が上方に、制御弁122が下方に支持されることで、第2弁部122bが第2弁座121bに着座している。
本実施例の圧力制御弁50は、上述したように、ハウジング111内に駆動ピストン117、外部ピストン121、制御弁122が移動自在に支持されることから、外部ピストン121と制御弁122により区画される高圧室R11と、ハウジング111と駆動ピストン117とプランジャ118により区画される減圧室R12と、ハウジング111と駆動ピストン117と外部ピストン121と制御弁122とにより区画される圧力室R13と、ハウジング111と外部ピストン121と制御弁122とにより区画されるリリーフ室R14と、ハウジング111と外部ピストン121により区画される外部圧力室R15が設けられている。
そして、ハウジング111及び外部ピストン121を貫通して高圧室R11に連通する高圧ポートP11が形成されると共に、ハウジング111を貫通して減圧室R12に連通する減圧ポートP12が形成されている。また、ハウジング111を貫通して圧力室R13に連通する制御圧ポートP13が形成されている。更に、ハウジング111及び外部ピストン121を貫通してリリーフ室R14に連通するリリーフポートP14が形成されている。また、ハウジング111を貫通して外部圧力室R15に連通する外部圧ポートP15が形成されている。そして、高圧ポートP11は高圧供給配管49に連結され、減圧ポートP12は減圧供給配管52に連結され、制御圧ポートP13は制御圧供給配管51に連結され、リリーフポートP14はリリーフ配管53に連結され、外部圧ポートP15は外部圧供給配管54に連結されている。
このように構成された圧力制御弁50にて、コイル120が消磁状態にあるとき、リターンスプリング119によりプランジャ118の第1弁部118bが、駆動ピストン117の第1弁座117dから離間している。一方、リターンスプリング125により制御弁122の第2弁部122bが外部ピストン121の第2弁座121bに着座している。従って、連通孔121aが閉止されることで、高圧室R11と圧力室R13とが遮断され、圧力室R13と減圧室R12とが連通する。
この状態から、コイル120に通電すると、発生する電磁力によりプランジャ118が上方に移動し、ロッド部118aが駆動ピストン117を押圧し、この駆動ピストン117がリターンスプリング123の付勢力に抗して上方に移動する。すると、駆動ピストン117が制御弁122をリターンスプリング125の付勢力に抗して押圧し、この制御弁122が上方に移動する。制御弁122が上方に移動すると、第2弁部122bが外部ピストン121の第2弁座121bから離間して連通孔121aが開放される。従って、高圧室R11と圧力室R13が連通され、圧力室R13と減圧室R12とが遮断される。
また、外部圧ポートP15から外部圧力室R15に外部圧(油圧)が供給されると、蓋部124を介して外部ピストン121が下方に移動する。すると、この外部ピストン121がリターンスプリング123の付勢力に抗して下方に移動し、制御弁122の第2弁部122bから外部ピストン121の第2弁座121bが離間して連通孔121aが開放される。従って、前述と同様に、高圧室R11と圧力室R13が連通され、圧力室R13と減圧室R12とが遮断される。
また、図3に戻り、マスタシリンダ11のリリーフ室R4に連通する第2リリーフポート55には、第5油圧配管56の一端部が連結され、この第5油圧配管56の他端部はリザーバタンク46に連結されている。更に、マスタシリンダ11には、第3リリーフポート57が形成されており、この第3リリーフポート57は、加圧ピストン14に形成された第1連通孔58を通して第2圧力室R2に連通可能であると共に、第2連通孔59を通して第1圧力室R1に連通可能となっている。そして、第3リリーフポート57には、第6油圧配管60の一端部が連結され、この第6油圧配管60の他端部はリザーバタンク46に連結されている。この場合、シリンダ12と加圧ピストン14との間には、第3リリーフポート57の両側に位置してワンウェイシール61が設けられている。そのため、加圧ピストン14が後退位置にあるとき、第2圧力室R2とリザーバタンク46とが第1連通孔58により連通し、加圧ピストン14が前進すると、第1圧力室R1と第2圧力室R2とが第1連通孔58及び第2連通孔59により連通可能とする。
また、支持部材21には、入力ピストン13との間にシール部材62が装着されると共に、加圧ピストン14と一体の支持部材23には、入力ピストン13との間にシール部材63が装着されている。即ち、この構成により、入力ピストン13は、大気側のシール(シール部材62)径と加圧ピストン14側のシール(シール部材63)径とが同径となっている。そのため、マスタシリンダ11の第2圧力ポート29から背面圧力室R3に制御圧が作用したとき、入力ピストン13は、この制御圧の圧力を受けることがないため、反力の変化もない。
このように構成された本実施例の車両用制動装置にて、図3に示すように、電子制御ユニット(ECU)71は、ブレーキペダル15から入力ピストン13に入力される操作力(ペダル踏力)に応じた目標制御圧を設定し、圧力制御弁50により調圧し、この設定された目標制御圧を背面圧力室R3に作用させることで、加圧ピストン14をアシストする。また、目標制御圧をABS70を介して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに制動油圧として付与することで、この各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLを作動し、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに所望の制動力を作用させる。
即ち、ブレーキペダル15には、このブレーキペダル15のペダルストロークSpを検出するストロークセンサ72と、そのペダル踏力を検出する踏力センサ73が設けられており、各検出結果をECU71に出力している。また、第1油圧配管27にて、マスタカット弁32より上流側、つまり、第1圧力ポート26側には、油圧を検出する第1圧力センサ74が設けられ、マスタカット弁32より下流側、つまり、ABS70側には、油圧を検出する第2圧力センサ75が設けられている。マスタカット弁32が閉止状態にあるとき、第1圧力センサ74は、第1圧力室R1の圧力を検出し、第2圧力センサ75は、前輪FR,FL及び後輪RR,RLの各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLへ供給される油圧(制御圧)を検出し、それぞれ検出結果をECU71に出力している。
更に、油圧ポンプ43からアキュムレータ48を介して圧力制御弁50に至る高圧供給配管49には、油圧を検出する第3圧力センサ76が設けられている。この圧力センサ76は、アキュムレータ48に蓄圧されて圧力制御弁50に供給される油圧を検出し、検出結果をECU71に出力している。なお、前輪FR,FL及び後輪RR,RLには、それぞれ図示しない車輪速センサが設けられており、検出した各車輪速度をECU71に出力している。
従って、ECU71は、踏力センサ73が検出したブレーキペダル15のペダル踏力(または、ストロークセンサ72が検出したペダルストローク)に基づいて目標制御圧を設定し、圧力制御弁50における駆動ピストン117を制御する一方、第2圧力センサ75が検出した制御圧をフィードバックし、目標制御圧と制御圧とが一致するように制御している。この場合、ECU71は、ペダル踏力(ペダルストローク)に対する目標制御圧を表すマップを有しており、このマップに基づいて圧力制御弁50を制御する。
本実施例の車両用制動装置による制動力制御について、具体的に説明すると、図3及び図4に示すように、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力(踏力)により入力ピストン13が前進(図3にて左方へ移動)する。このとき、踏力センサ73はペダル踏力を検出し、ECU71は、このペダル踏力に基づいて目標制御圧を設定する。そして、ECU71は、この目標制御圧に基づいて圧力制御弁50を制御し、圧力制御弁50は、アキュムレータ48に蓄圧された油圧を調圧し、目標制御圧となる制御圧を制御圧供給配管51に出力する。
即ち、圧力制御弁50にて、コイル120に通電し、発生する吸引力によりプランジャ118をリターンスプリング119の付勢力に抗して上方に移動し、駆動ピストン117を押圧して上方に移動する。すると、駆動ピストン117が制御弁122を押圧して上方に移動し、連通孔121aが開放されることで、高圧ポートP11と制御圧ポートP13が連通する一方、減圧ポートP12と制御圧ポートP13が遮断される。そのため、アキュムレータ48の油圧が高圧供給配管49から高圧ポートP11に供給され、高圧室R11から連通孔121aを通ることで調圧されて圧力室R13に供給され、制御圧ポートP13から制御圧供給配管51を通して第2油圧配管30に供給される。
すると、第2油圧配管30に供給された油圧は、マスタシリンダ11の第2圧力ポート29を通して背面圧力室R3に作用する。ところが、入力ピストン13は、大気側のシール径と加圧ピストン14側のシール径が同径であるため、入力ピストン13は制御圧に関係なく前進することとなり、ブレーキペダル15に対して反力スプリング22により適正な反力が付与される。
また、第2油圧配管30に供給された制御圧は、各油圧供給配管31a,31bを通して後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに付与される。更に、第2油圧配管30に供給された制御圧は、連通油圧配管33を通して第1油圧配管27に供給され、各油圧供給配管28a,28bを通して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。このとき、ECU71は、第2圧力センサ75が検出した制御圧をフィードバックし、目標制御圧と制御圧とが一致するように圧力制御弁50を制御する。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
ところで、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力に抗して前進することで、この反力スプリング22だけが収縮して弾性変形する。この場合、入力ピストン13が初期ストロークS1だけ前進する間は、ゴム部材24は弾性変形しない。そのため、反力スプリング22は、線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークが早期に吸収されると共に、変化量が一定な反力が付与される。
そして、乗員がブレーキペダル15を更に踏み込み、入力ピストン13が初期ストロークS1を越えて前進すると、ゴム部材24が加圧ピストン14に接触して押圧される。このとき、マスタカット弁32が閉止されているため、加圧ピストン14が微小前進すると、第2連通孔59と第3リリーフポート57との連通が解除され、第1圧力室R1は密閉状態となり、加圧ピストン14の前進が拘束される。そのため、入力ピストン13がゴム部材24をより強く押圧することで、このゴム部材24が弾性変形する。即ち、入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力に抗して更に前進することで、この反力スプリング22が収縮して弾性変形すると共に、ゴム部材24が加圧ピストン14に押圧されて収縮して弾性変形する。そのため、反力スプリング22は、線形剛性変化をなすものの、ゴム部材24は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークが適正に吸収されると共に、安定した反力が付与される。
また、入力ピストン13が前進し、ゴム部材24が加圧ピストン14により押圧されて弾性変形するとき、円錐部13eがゴム部材24の中心部を押圧することで、ゴム部材24は、その中心部が凹むように弾性変形する。続いて、この円錐部13eの前面がゴム部材24に密着して全体を押圧することで、ゴム部材24は、変形部24aが加圧ピストン14により径方向における外方に弾性変形する。そのため、入力ピストン13がゴム部材24を弾性変形させるとき、弾性初期と弾性終期における弾性変化率が高くなり、ブレーキペダル15に対して適正な反力が付与される。
一方、電源系統に故障が発生して失陥した場合には、圧力制御弁50のコイル120への電流値を制御することで、各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLへ付与する制御圧を適正油圧に制御することができない。ところが、本実施例では、圧力制御弁50に、マスタシリンダ11の第1圧力室R1で発生したパイロット油圧を(外部圧)により作動する外部ピストン121を設け、この外部ピストン121により駆動ピストン117を制御して適正な制御圧を出力可能としている。
電源系統の失陥時に、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン13が前進し、初期ストロークS1を越えると、入力ピストン13がゴム部材24を介して加圧ピストン14を押圧し、入力ピストン13と加圧ピストン14が一体となって前進する。入力ピストン13及び加圧ピストン14が前進すると、第1圧力室R1が加圧される。このとき、マスタカット弁32が開放されているため、第1圧力室R1の油圧が外部圧として第1油圧配管27に吐出され、外部圧供給配管54を通して圧力制御弁50に作用する。
この圧力制御弁50にて、外部圧が外部圧供給配管54から外部圧ポートP15を介して外部圧力室R15に作用すると、外部ピストン121が下方に移動する。すると、連通孔121aが開放されることで、高圧ポートP11と制御圧ポートP13が連通する一方、減圧ポートP12と制御圧ポートP13が遮断される。そのため、アキュムレータ48の油圧が高圧供給配管49から高圧ポートP11に供給され、高圧室R11から連通孔121aを通ることで調圧されて圧力室R13に供給され、制御圧ポートP13から制御圧供給配管51を通して第2油圧配管30に供給される。すると、第2油圧配管30に供給された油圧は、マスタシリンダ11の第2圧力ポート29を通して背面圧力室R3に作用することとなり、この制御圧により加圧ピストン14を介して入力ピストン13をアシストすることができる。
そのため、第2油圧配管30に供給された制御圧が、各油圧供給配管31a,31bを通して後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに付与される。また、制御圧によりアシストされることで、容易に前進する入力ピストン13により、第2油圧配管30の制御圧と同等の制御圧が第1圧力室R1から第1油圧配管27に吐出される。そのため、第1油圧配管27に供給された制御圧が、各油圧供給配管28a,28bを通して前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与される。従って、前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに適正な制御圧が付与されると共に、後輪RR,RLのホイールシリンダ25RR,25RLに適正な制御圧が付与されることとなり、前輪FR,FL及び後輪RR,RLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた所望の制動力を発生させることができる。
なお、アキュムレータ48の残圧が不足した場合であっても、乗員がブレーキペダル15を踏むと、その操作力により入力ピストン13が前進し、ゴム部材24を介して加圧ピストン14を押圧して前進し、第1圧力室R1を加圧することができる。そのため、第1圧力室R1から第1油圧配管27に踏力に応じた油圧が吐出されるため、この油圧を前輪FR,FLのホイールシリンダ25FR,25FLに付与し、前輪FR,FLに対して乗員のブレーキペダル15の操作力に応じた制動力を発生させることができる。
このように実施例2の車両用制動装置にあっては、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14を直列に移動自在に支持することで第1圧力室R1及び第2圧力室R2を区画するマスタシリンダ11を設け、第1圧力室R1に連結された第1油圧配管27にABS70を介して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLを連結すると共にマスタカット弁32を設け、一方、電子制御可能な圧力制御弁50をABS70を介して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに連結している。
従って、電源系統の正常時には、圧力制御弁50を制御することで、アキュムレータ48の油圧を調圧して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給することができる。一方、電源系統の失陥時には、ブレーキペダル15の操作に応じた外部圧により圧力制御弁50を作動することで、アキュムレータ48の油圧を調圧して各ホイールシリンダ25FR,25FL,25RR,25RLに供給することができる。即ち、電磁力及び外部圧により作動する圧力制御弁50を適用することで、電源系統の状態に拘らず乗員によるブレーキペダル15の操作に応じた制御圧を確実に発生させることができ、その結果、油圧経路を簡略化して構造の簡素化を図ることができると共に、製造コストを低減することができる一方、適正な制動力制御を可能とすることができ、信頼性及び安全性の向上を図ることができる。
また、実施例2の車両用制動装置では、マスタシリンダ11内に制動操作力に応じたストロークを吸収すると共に反力を発生させるストロークシミュレータを内蔵し、このストロークシミュレータを、入力ピストン13とシリンダ11との間に張設された反力スプリング22と、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に設けられたゴム部材24とにより構成し、入力ピストン13が初期ストロークだけ前進する間にゴム部材24の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段として、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に初期隙間S1を設定している。
従って、初期制動操作力により入力ピストン13が前進して反力スプリング22だけを弾性変形し、入力ピストン13が初期ストロークだけ前進してからゴム部材24を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
そして、実施例2の車両用制動装置では、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン13が前進し、反力スプリング22だけが収縮して弾性変形することとなり、この反力スプリング22が線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークを早期に吸収すると共に、変化量が一定となる反力を付与することができる。そして、乗員が更にブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン13が初期ストロークを越えて前進した後にゴム部材24を弾性変形させることとなり、このゴム部材24が非線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークを適正に吸収すると共に、安定した反力を付与することができる。
また、実施例2の車両用制動装置では、マスタシリンダ11内に、反力スプリング22とゴム部材24を構成要素とするストロークシミュレータを内蔵している。そのため、装置のコンパクト化を可能とすることができる。なお、本実施例では、ゴム部材24を入力ピストン13側に設け、ゴム部材24と加圧ピストンとの間に初期隙間S1を設定したが、ゴム部材24を加圧ピストン14側に設け、入力ピストン13とゴム部材24との間に初期隙間S1を設定してもよい。
図5は、本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例3の車両用制動装置において、図5に示すように、マスタシリンダ201は、シリンダ202内にピストンとしての入力ピストン203と中間ピストン204と加圧ピストン205が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。ブレーキペダル15は、操作ロッド20が入力ピストン203に連結されている。
入力ピストン203は、外周面がシリンダ202の内周部に固定された支持部材206の内周面により移動自在に支持されている。この入力ピストン203は、支持部材206の内周面に嵌合する支持部203aと、基端部に固定されたブラケット203bと、先端部に支持部203aより大径の押圧部203cとを有している。そして、支持部材206と入力ピストン203のブラケット203bとの間に反力スプリング(第1弾性部材)207が介装されており、入力ピストン203が一方方向(図5にて、右方)に付勢支持されている。
中間ピストン204は、シリンダ202内にて、入力ピストン203と加圧ピストン205との間に配置されており、外周面がシリンダ202の内周面に移動自在に支持されている。この中間ピストン204は、シリンダ202の第1内周面202aに嵌合するフランジ部204aと、第1内周面202aより小径の第2内周面202bに嵌合する支持部204bとを有している。また、中間ピストン204は、支持部204bに後方に開口する第1支持孔204c及び第2支持孔204dが形成されており、第1支持孔204cの内周面に入力ピストン203の押圧部203cの外周面が移動自在に嵌合し、第2支持孔204dの内周面に押圧部203cから前方に延出した連結部203dの外周面が移動自在に嵌合している。
そのため、入力ピストン203は、反力スプリング207の付勢力により、押圧部203cが中間ピストン204のストッパ204eに当接する位置に付勢支持されており、反力スプリング207の付勢力に抗して前進すると、この連結部203dが中間ピストン204における第2支持孔204dの底面に当接することができる。中間ピストン204は、反力スプリング207の付勢力により、入力ピストン203を介して、フランジ部204aが支持部材206に当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン203は、連結部203dが中間ピストン204における第2支持孔204dの底面に当接した後、更に前進することで中間ピストン204を押圧し、入力ピストン203と中間ピストン204とが一体となって前進することができる。
加圧ピストン205は、シリンダ202内にて、中間ピストン204の先端部側に配置されており、外周面がシリンダ202の内周面に移動自在に支持されている。この加圧ピストン205は、シリンダ202の第2内周面202cに嵌合する支持部205aと、段部202dに当接可能なストッパ部205bとを有している。そして、シリンダ202に支持された支持ブラケット208と加圧ピストン205との間には、付勢スプリング209が張設されており、加圧ピストン205は、付勢スプリング209の付勢力により、ストッパ部205bが段部202dに当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン203は、中間ピストン204に当接した後、更に前進することで加圧ピストン205を押圧し、入力ピストン203と中間ピストン204と加圧ピストン205とが一体となって前進することができる。
また、中間ピストン204は、第1支持孔204c内にゴム部材(第2弾性部材)210が配置されている。そして、入力ピストン203は、押圧部203cの先端面に、ゴム部材210を押圧する円錐部203eが形成されている。一方、ゴム部材210は、円錐部203eに対向する後端部に、入力ピストン203の押圧により、この押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する円錐台形状をなす変形部210aが形成されている。この場合、入力ピストン203と中間ピストン204が反力スプリング207の付勢力により後退位置に位置決めされているとき、入力ピストン203とゴム部材210との間には、初期隙間S1が設定されている。即ち、入力ピストン203が初期ストロークだけ前進する間に入力ピストン203によるゴム部材210の弾性変形を抑制する、本発明の弾性変形抑制手段として、この初期隙間S1が機能する。
本実施例では、入力ピストン203、反力スプリング207、ゴム部材210によりストロークシミュレータが構成されており、入力ピストン203が前進することで、反力スプリング207だけを弾性変形し、入力ピストン203が初期ストロークS1を越えて前進し、ゴム部材210に接触して押圧することで、このゴム部材210が弾性変形する。ここで、反力スプリング207は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材210は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
従って、運転者がペダル17を踏み込むことでブレーキペダル15が回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して入力ピストン203に伝達され、この入力ピストン203が反力スプリング207の付勢力に抗して前進することができる。そして、入力ピストン203が初期ストロークS1だけ前進すると、ゴム部材210を弾性変形させて中間ピストン204に当接することができ、入力ピストン203は中間ピストン204を押圧し、一体となって前進することができる。その後、入力ピストン203と加圧ピストン204が一体となって前進し、中間ピストン204が加圧ピストン205に当接すると、入力ピストン203及び中間ピストン204は加圧ピストン205を押圧し、一体となって前進することができる。
このように、シリンダ202内に入力ピストン203と中間ピストン204と加圧ピストン205が同軸上に移動自在に配置されることで、加圧ピストン205における前進方向(図5にて左方)に第1圧力室(前方圧力室)R1が区画され、加圧ピストン205における後退方向(図5にて右方)、つまり、加圧ピストン205と中間ピストン204との間に第2圧力室R2が区画され、入力ピストン203及び中間ピストン204における後退方向(図5にて右方)、つまり、中間ピストン204及び支持部材206との間に背面圧力室(後方圧力室)R3が区画されている。また、シリンダ202と中間ピストン204との間に第1リリーフ室R4が形成されると共に、中間ピストン204と入力ピストン203との間に第2リリーフ室R5が形成されている。この場合、第2圧力室R2と背面圧力室R3とは、入力ピストン203に形成された連通路203f、中間ピストン204の第2支持孔204d、中間ピストン204に形成された連通路204fにより連通している。
なお、本実施例の車両用制動装置では、上述したマスタシリンダ201にマスタカット弁、ABS、ホイールシリンダ、圧力制御弁などが連結されているが、これらの構成は、上述した実施例1と同様であるため、説明は省略する。
マスタシリンダ201にて、第1圧力室R1の第1圧力ポート26には、第1油圧配管27が連結され、背面圧力室R3の第2圧力ポート29には、第2油圧配管30が連結されている。また、マスタシリンダ201にて、第1リリーフ室R4の第2リリーフポート55には、第5油圧配管56の一端部が連結され、この第5油圧配管56には、反力制御弁215が設けられている。この反力制御弁215は、ノーマルオープンタイプの開閉弁であって、電力供給時に閉止する。更に、マスタシリンダ201にて、第3リリーフポート57には、加圧ピストン205に形成された第2連通孔59を通して第1圧力室R1に連通可能であると共に、第6油圧配管60が連結されている。また、第2リリーフ室R5の第4リリーフポート211には、第7油圧配管212を介して図示しないリザーバタンクに連結されている。
なお、支持部材206には、入力ピストン203との間にシール部材(ワンウェイシール)213が装着されると共に、中間ピストン204には、入力ピストン203との間にシール部材214が装着されている。即ち、この構成により入力ピストン203と、中間ピストン204とのシール径が実質的に同径となっている。
従って、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン203が反力スプリング207の付勢力に抗して前進することで、この反力スプリング207だけが収縮して弾性変形する。この場合、入力ピストン203が初期ストロークS1だけ前進する間は、ゴム部材210は弾性変形しない。そのため、反力スプリング207は、線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークが早期に吸収されると共に、変化量が一定な反力が付与される。
そして、乗員がブレーキペダル15を更に踏み込み、入力ピストン203が初期ストロークS1を越えて前進すると、入力ピストン203がゴム部材210に接触して押圧する。このとき、反力制御弁215が閉止されているため、リリーフ室R4は密閉状態となり、中間ピストン204の前進が規制される。そのため、入力ピストン203がゴム部材210に接触すると、この入力ピストン203は、ゴム部材210を押圧しながら前進することで、入力ピストン203がゴム部材210をより強く押圧し、このゴム部材210が弾性変形する。
即ち、入力ピストン203が反力スプリング207の付勢力に抗して更に前進することで、この反力スプリング207が収縮して弾性変形すると共に、ゴム部材210が押圧され、収縮して弾性変形する。そのため、反力スプリング207は、線形剛性変化をなすものの、ゴム部材210は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークが適正に吸収されると共に、安定した反力が付与される。
また、入力ピストン203が前進し、ゴム部材210が押圧されて弾性変形するとき、円錐部203eがゴム部材210の中心部を押圧することで、ゴム部材210は、その中心部が凹むように弾性変形する。続いて、この円錐部203eの前面がゴム部材210に密着して全体を押圧することで、ゴム部材210は、変形部210aが加圧ピストン14により径方向における外方に弾性変形する。そのため、入力ピストン203がゴム部材210を弾性変形させるとき、弾性初期と弾性終期における弾性変化率が高くなり、ブレーキペダル15に対して適正な反力が付与される。
このように実施例3の車両用制動装置にあっては、マスタシリンダ201内に制動操作力に応じたストロークを吸収すると共に反力を発生させるストロークシミュレータを内蔵し、このストロークシミュレータを、入力ピストン203とシリンダ202との間に張設された反力スプリング207と、入力ピストン203と中間ピストン204(加圧ピストン205)との間に設けられたゴム部材210とにより構成し、入力ピストン203が初期ストロークだけ前進する間にゴム部材210の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段として、入力ピストン203と中間ピストン204との間に初期隙間S1を設定している。
従って、初期制動操作力により入力ピストン203が前進して反力スプリング207だけを弾性変形し、入力ピストン203が初期ストロークだけ前進してからゴム部材210を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
そして、実施例3の車両用制動装置では、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン203が前進し、反力スプリング207だけが収縮して弾性変形することとなり、この反力スプリング207が線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークを早期に吸収すると共に、変化量が一定となる反力を付与することができる。そして、乗員が更にブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン203が初期ストロークを越えて前進した後にゴム部材210を弾性変形させることとなり、このゴム部材210が非線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークを適正に吸収すると共に、安定した反力を付与することができる。
また、実施例3の車両用制動装置では、マスタシリンダ201内に、反力スプリング207とゴム部材210を構成要素とするストロークシミュレータを内蔵している。そのため、装置のコンパクト化を可能とすることができる。なお、本実施例では、ゴム部材210を中間ピストン204側に設け、入力ピストン203とゴム部材210との間に初期隙間S1を設定したが、ゴム部材210を入力ピストン203側に設け、ゴム部材210と中間ピストン204との間に初期隙間S1を設定してもよい。また、入力ピストン203と加圧ピストン205との間に中間ピストン204を設けたが、省略してもよい。
図6は、本発明の実施例4に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例4の車両用制動装置において、図6に示すように、マスタシリンダ301は、シリンダ202内に入力ピストン203と中間ピストン204と加圧ピストン205が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。ブレーキペダル15は、操作ロッド20が入力ピストン203に連結されている。入力ピストン203は、支持部材206の内周面に嵌合する支持部203aと、基端部に固定されたブラケット203bと、先端部に支持部203aより大径のフランジ部203gと、前方に延出する連結部203dとを有している。そして、支持部材206とブラケット203bとの間に反力スプリング207が介装されており、入力ピストン203が一方方向(図6にて、右方)に付勢支持されている。
中間ピストン204は、フランジ部204aと、支持部204bと、第1支持孔204cと、第2支持孔204dと、ストッパ204eとを有している。そして、入力ピストン203の支持部203aが中間ピストン204の第1支持孔204cに移動自在に嵌合し、連結部203dが第2支持孔204dに移動自在に嵌合している。そのため、入力ピストン203は、反力スプリング207の付勢力により、フランジ部203gが中間ピストン204のストッパ204eに当接する位置に付勢支持されており、反力スプリング207の付勢力に抗して前進すると、この連結部203dが中間ピストン204における第2支持孔204dの底面に当接することができる。中間ピストン204は、反力スプリング207の付勢力により、入力ピストン203を介して、フランジ部204aが支持部材206に当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン203は、連結部203dが中間ピストン204における第2支持孔204dの底面に当接した後、更に前進することで中間ピストン204を押圧し、入力ピストン203と中間ピストン204とが一体となって前進することができる。
加圧ピストン205は、支持部205aと、ストッパ部205bとを有している。そして、シリンダ202と加圧ピストン205との間に付勢スプリング209が張設されており、加圧ピストン205は、ストッパ部205bが段部202dに当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン203は、中間ピストン204に当接した後、更に前進することで加圧ピストン205を押圧し、入力ピストン203と中間ピストン204と加圧ピストン205とが一体となって前進することができる。
このように、シリンダ202内に入力ピストン203と中間ピストン204と加圧ピストン205が同軸上に移動自在に配置されることで、加圧ピストン205における前進方向に第1圧力室R1が区画され、加圧ピストン205と中間ピストン204との間に第2圧力室R2が区画され、中間ピストン204及び支持部材206との間に背面圧力室R3が区画されている。また、シリンダ202と中間ピストン204との間に第1リリーフ室R4が形成されると共に、中間ピストン204と入力ピストン203との間に第2リリーフ室R5が形成されている。この場合、第2圧力室R2と背面圧力室R3とは、入力ピストン203に形成された連通路203f、中間ピストン204の第2支持孔204d、中間ピストン204に形成された連通路204fにより連通している。
そして、マスタシリンダ301にて、第1圧力室R1の第1圧力ポート26には、第1油圧配管27が連結され、背面圧力室R3の第2圧力ポート29には、第2油圧配管30が連結されている。また、マスタシリンダ301にて、第1リリーフ室R4の第2リリーフポート55には、第5油圧配管56の一端部が連結され、この第5油圧配管56には、反力制御弁215が設けられている。更に、マスタシリンダ301にて、第3リリーフポート57には、加圧ピストン14に形成された第2連通孔59を通して第1圧力室R1に連通可能であると共に、第6油圧配管60が連結されている。また、第2リリーフ室R5の第4リリーフポート211には、第7油圧配管212を介して図示しないリザーバタンクに連結されている。
なお、本実施例の車両用制動装置では、上述したマスタシリンダ301にマスタカット弁、ABS、ホイールシリンダ、圧力制御弁などが連結されているが、これらの構成は、上述した実施例1と同様であるため、説明は省略する。
本実施例では、マスタシリンダ301の外部における第5油圧配管56にストロークシミュレータ311が設けられている。このストロークシミュレータ311において、中空円筒形状をなすハウジング312は、内部における軸方向の一端部側にピストン313が軸方向に沿って移動自在に支持されている。このピストン313は、外周部にハウジング312の内周面に摺接するシール部材313aが装着されると共に、一端部に凹部313bが形成されることで、ハウジング312との間に油圧室314が形成されている。そして、ハウジング312の端部に給排口312aが形成され、この給排口312aに、第5油圧配管56から分岐した分岐油圧配管315が連結されている。
ハウジング312は、内部における軸方向の他端部側に、第2弾性部材としてのゴム部材316が配置されており、このゴム部材316に対してピストン313が接触すると共に、ゴム部材316の外周面とハウジング312との間には微小隙間が確保されている。そして、このゴム部材316は、ピストン313との対向部に、ピストン313の押圧により押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する先細形状をなす変形部316aが設けられている。
この場合、本発明のピストンとして、マスタシリンダ301内の入力ピストン203と、ストロークシミュレータ311内のピストン313が機能する。そして、入力ピストン203が初期ストロークだけ前進する間にピストン313によるゴム部材316の弾性変形を抑制する、本発明の弾性変形抑制手段として、入力ピストン203と中間ピストン204との間の初期隙間S1が機能する。本実施例のストロークシミュレータ311では、入力ピストン203が前進することで、反力スプリング207だけを弾性変形する。続いて、入力ピストン203が中間ピストン204に当接して一体に前進し、発生した油圧が第5油圧配管56からストロークシミュレータ311のピストン313に作用して前進することで、ゴム部材316を弾性変形する。そのため、反力スプリング207は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材316は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
本実施例では、ピストン313及びゴム部材316を有するストロークシミュレータ311に加えて、マスタシリンダ301の入力ピストン203及び反力スプリング207により本発明のストロークシミュレータが構成されており、入力ピストン203が前進することで、反力スプリング207だけを弾性変形し、入力ピストン203が初期ストロークS1を越えて前進し、発生した油圧によりピストン313が前進することで、ゴム部材316を弾性変形する。ここで、反力スプリング207は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材316は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
従って、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン203が反力スプリング207の付勢力に抗して前進することで、この反力スプリング207だけが収縮して弾性変形する。この場合、入力ピストン203が初期ストロークS1だけ前進する間は、ゴム部材316は弾性変形しない。そのため、反力スプリング207は、線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークが早期に吸収されると共に、変化量が一定な反力が付与される。
そして、乗員がブレーキペダル15を更に踏み込み、入力ピストン203が初期ストロークS1を越えて前進すると、入力ピストン203が中間ピストン204に当接して押圧し、一体に前進する。このとき、反力制御弁215が閉止されているため、リリーフ室R4は密閉状態となり、中間ピストン204が前進すると、このリリーフ室R4が加圧されることで油圧が発生し、この油圧が第2圧力ポート55から第5油圧配管56に作用する。すると、この油圧が分岐油圧配管315から油圧室314に作用し、ピストン313は、ゴム部材316を押圧しながら前進することで、このゴム部材316が弾性変形する。
即ち、入力ピストン203が反力スプリング207の付勢力に抗して更に前進することで、この反力スプリング207が収縮して弾性変形すると共に、ピストン313がゴム部材316を押圧することで収縮して弾性変形する。そのため、反力スプリング207は、線形剛性変化をなすものの、ゴム部材316は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークが適正に吸収されると共に、安定した反力が付与される。
このように実施例4の車両用制動装置にあっては、マスタシリンダ301内に入力ピストン203と中間ピストン204と加圧ピストン205を移動自在に収容し、入力ピストン203とシリンダ202との間に反力スプリング207を張設する一方、リリーフ室R4の第2圧力ポート55に連結された第5油圧配管56に、ピストン313とゴム部材316を有するストロークシミュレータ311を連結し、入力ピストン203が初期ストロークだけ前進する間にゴム部材316の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段として、入力ピストン203と中間ピストン204との間に初期隙間S1を設定している。
従って、初期制動操作力により入力ピストン203が前進して反力スプリング207だけを弾性変形し、入力ピストン203が初期ストロークだけ前進してから、ピストン313が前進してゴム部材316を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
そして、実施例4の車両用制動装置では、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン203が前進し、反力スプリング207だけが収縮して弾性変形することとなり、この反力スプリング207が線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークを早期に吸収すると共に、変化量が一定となる反力を付与することができる。そして、乗員が更にブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン203が初期ストロークを越えて前進した後に、ピストン313が前進してゴム部材316を弾性変形させることとなり、このゴム部材316が非線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークを適正に吸収すると共に、安定した反力を付与することができる。
また、実施例4の車両用制動装置では、ピストン313とゴム部材316を有するストロークシミュレータ311を、マスタシリンダ301とは別に設けている。そのため、マスタシリンダ301のコンパクト化を可能とすることができ、車両への搭載性を向上することができる。
図7は、本発明の実施例5に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例5の車両用制動装置において、図7に示すように、マスタシリンダ401は、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が移動自在に支持されて構成されている。ブレーキペダル15は、操作ロッド20が入力ピストン13に連結されている。入力ピストン13は、シリンダ12の内周部に固定された円筒形状をなす支持部材21に移動自在に支持されており、支持部材21と入力ピストン13のブラケット13bとの間に介装された反力スプリング22により一方方向に付勢支持されている。加圧ピストン14は、シリンダ12にて、入力ピストン13の先端部側に移動自在に支持されている。また、加圧ピストン14は、支持孔14cに入力ピストン13の押圧部13cが移動自在に嵌合している。そして、支持孔14cの先端部に支持部材23が固定されており、入力ピストン13に対して相対移動可能となっている。
このように、シリンダ12内に入力ピストン13と加圧ピストン14が同軸上に移動自在に配置されることで、第1圧力室R1と、第2圧力室R2と、背面圧力室R3と、リリーフ室R4が形成されている。そして、第1圧力室R1の第1圧力ポート26に第1油圧配管27が連結され、背面圧力室R3の第2圧力ポート29に第2油圧配管30が連結され、リリーフ室R4の第2リリーフポート55に第5油圧配管56の一端部が連結され、第3リリーフポート57に第6油圧配管60が連結され、第2圧力室R2のリリーフポート81,82には、油圧配管83を介して図示しないリザーバタンクが連結されている。
なお、本実施例の車両用制動装置では、上述したマスタシリンダ401にマスタカット弁、ABS、ホイールシリンダ、圧力制御弁などが連結されているが、これらの構成は、上述した実施例1と同様であるため、説明は省略する。
本実施例では、マスタシリンダ401の外部における第1油圧配管27にストロークシミュレータ311が設けられている。このストロークシミュレータ311は、ハウジング312内に、ピストン313とゴム部材316が収容されて構成されている。この場合、本発明のピストンとして、マスタシリンダ401内の入力ピストン13と、ストロークシミュレータ311内のピストン313が機能する。そして、入力ピストン13が初期ストロークだけ前進する間にピストン313によるゴム部材316の弾性変形を抑制する、本発明の弾性変形抑制手段として、入力ピストン13と加圧ピストン14との間の初期隙間S1が機能する。本実施例のストロークシミュレータ311では、入力ピストン13が前進することで、反力スプリング22だけを弾性変形する。続いて、入力ピストン13が加圧ピストン14に当接して一体に前進し、発生した油圧が第1油圧配管27からストロークシミュレータ311のピストン313に作用して前進することで、ゴム部材316を弾性変形する。そのため、反力スプリング22は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材316は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
本実施例では、ピストン313及びゴム部材316を有するストロークシミュレータ311に加えて、マスタシリンダ401の入力ピストン13及び反力スプリング22により本発明のストロークシミュレータが構成されており、入力ピストン13が前進することで、反力スプリング22だけを弾性変形し、入力ピストン13が初期ストロークS1を越えて前進し、発生した油圧によりピストン313が前進することで、ゴム部材316を弾性変形する。ここで、反力スプリング22は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材316は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
従って、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力に抗して前進することで、この反力スプリング22だけが収縮して弾性変形する。この場合、入力ピストン13が初期ストロークS1だけ前進する間は、ゴム部材316は弾性変形しない。そのため、反力スプリング22は、線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークが早期に吸収されると共に、変化量が一定な反力が付与される。
そして、乗員がブレーキペダル15を更に踏み込み、入力ピストン13が初期ストロークS1を越えて前進すると、入力ピストン13が加圧ピストン14に当接して押圧し、一体に前進する。このとき、図示しないマスタカット弁が閉止されているため、第1圧力室R1は密閉状態となり、加圧ピストン14が前進すると、加圧された油圧が第1油圧配管27に作用する。すると、この油圧が分岐油圧配管315から油圧室314に作用し、ピストン313は、ゴム部材316を押圧しながら前進することで、このゴム部材316が弾性変形する。
即ち、入力ピストン13が反力スプリング22の付勢力に抗して更に前進することで、この反力スプリング22が収縮して弾性変形すると共に、ピストン313がゴム部材316を押圧することで収縮して弾性変形する。そのため、反力スプリング22は、線形剛性変化をなすものの、ゴム部材316は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークが適正に吸収されると共に、安定した反力が付与される。
このように実施例5の車両用制動装置にあっては、マスタシリンダ401内に入力ピストン13と加圧ピストン14を移動自在に収容し、入力ピストン13とシリンダ12との間に反力スプリング22を張設する一方、第1圧力室R1の第1圧力ポート26に連結された第1油圧配管27に、ピストン313とゴム部材316を有するストロークシミュレータ311を連結し、入力ピストン13が初期ストロークだけ前進する間にゴム部材316の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段として、入力ピストン13と加圧ピストン14との間に初期隙間S1を設定している。
従って、初期制動操作力により入力ピストン13が前進して反力スプリング22だけを弾性変形し、入力ピストン13が初期ストロークだけ前進してから、ピストン313が前進してゴム部材316を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
図8は、本発明の実施例6に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。なお、前述した実施例で説明したものと同様の機能を有する部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施例6の車両用制動装置において、図8に示すように、マスタシリンダ501は、シリンダ502内にピストンとしての入力ピストン503と中間ピストン504と加圧ピストン505が軸方向に移動自在に支持されて構成されている。ブレーキペダル15は、操作ロッド20が入力ピストン503に連結されている。
入力ピストン503は、外周面がシリンダ502の内周部に固定された支持部材506の内周面により移動自在に支持されている。この入力ピストン503は、支持部材506の内周面に嵌合する支持部503aと、基端部に固定されたブラケット503bと、先端部に支持部503aより大径の押圧部503cと、押圧部503cから前方に延出する連結部503dとを有している。そして、支持部材506と入力ピストン503のブラケット503bとの間に反力スプリング(第1弾性部材)507が介装されており、入力ピストン503が一方方向(図8にて、右方)に付勢支持されている。
中間ピストン504は、シリンダ502内にて、入力ピストン503と加圧ピストン505との間に配置されており、外周面がシリンダ502の内周面に移動自在に支持されている。この中間ピストン504は、シリンダ502の第1内周面502aに嵌合する第1支持部504aと、第1内周面502aより小径の第2内周面502bに嵌合する第2支持部504bとを有している。また、中間ピストン504は、第1支持部504aに後方に開口する第1支持孔504d及び第2支持孔504eが形成されると共に、第2支持孔504eの底部に連結孔504cが形成されている。そして、中間ピストン504の第1支持孔504d内に入力ピストン503の押圧部503cが進入し、連結孔504cに連結部503dの先端部が移動自在に嵌合している。そして、第1支持孔504dの先端部に、支持部材508が固定されており、入力ピストン503に対して相対移動可能となっている。
そのため、入力ピストン503は、反力スプリング507の付勢力により、押圧部503cが中間ピストン504と一体の支持部材508に当接する位置に付勢支持されており、反力スプリング507の付勢力に抗して前進すると、連結部503dが中間ピストン504における連結孔504cの底面に当接することができる。中間ピストン504は、反力スプリング507の付勢力により、入力ピストン503を介して、支持部材508が支持部材506に当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン503は、連結部503dが中間ピストン504における連結孔504cの底面に当接した後、更に前進することで中間ピストン504を押圧し、入力ピストン503と中間ピストン504とが一体となって前進することができる。
加圧ピストン505は、シリンダ502内にて、中間ピストン504の先端部側に配置されており、外周面がシリンダ502の内周面に移動自在に支持されている。この加圧ピストン505は、シリンダ502の第2内周面502bに嵌合する支持部505aと、段部502cに当接可能なストッパ部505bとを有している。そして、シリンダ502と加圧ピストン505との間には、付勢スプリング509が張設されており、加圧ピストン505は、付勢スプリング509の付勢力により、ストッパ部505bが段部502cに当接する位置に付勢支持されている。また、入力ピストン503は、中間ピストン504に当接した後、更に前進することで加圧ピストン505を押圧し、入力ピストン503と中間ピストン504と加圧ピストン505とが一体となって前進することができる。
また、入力ピストン503は、連結部503dの基端部に第1ゴム部材510が配置され、中間ピストン504は、第2持孔504e内に連結部503dが貫通するカバー512が移動自在に支持され、内部に第2ゴム部材511が配置されている。本実施例では、第1ゴム部材510と第2ゴム部材511により第2弾性部材が構成される。そして、第1ゴム部材510は、その前後に、入力ピストン503の押圧により、この押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する円錐台形状をなす変形部510a,510bが形成されている。また、第2ゴム部材511は、その前後に、入力ピストン503の押圧により、この押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する円錐台形状をなす前後の変形部511a,511bが形成されている。
なお、第1ゴム部材510は、第2ゴム部材511と同じ長さに設定されているが、外径が大きく設定されている。また、第1ゴム部材510は、外周面と第1支持部504bとの間に微小隙間が設定され、第2ゴム部材511は、内周面と連結部503dとの間に微小隙間が設定さている。即ち、第1ゴム部材510と第2ゴム部材511とは、その形状や配設位置が相違することで、弾性力(ばね定数)が異なるように設定されている。
また、入力ピストン503と中間ピストン504が反力スプリング507の付勢力により後退位置に位置決めされているとき、第1ゴム部材510とカバー512(第2ゴム部材511)の間には、初期隙間S1が設定されている。即ち、入力ピストン503が初期ストロークだけ前進する間に入力ピストン503による各ゴム部材510,511の弾性変形を抑制する、本発明の弾性変形抑制手段として、この初期隙間S1が機能する。
本実施例では、入力ピストン503、反力スプリング507、ゴム部材510,511によりストロークシミュレータが構成されており、入力ピストン503が前進することで、反力スプリング507だけを弾性変形し、入力ピストン503が初期ストロークS1を越えて前進し、第1ゴム部材510がカバー512に接触して押圧することで、この第1ゴム部材510が弾性変形し、続いて、第2ゴム部材511が弾性変形する。ここで、反力スプリング507は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材510,511は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
従って、運転者がペダル17を踏み込むことでブレーキペダル15が回動すると、その操作力が操作ロッド20を介して入力ピストン503に伝達され、この入力ピストン503が反力スプリング507の付勢力に抗して前進することができる。そして、入力ピストン503が初期ストロークS1だけ前進すると、各ゴム部材510,511を弾性変形させて中間ピストン504に当接することができ、入力ピストン503は中間ピストン504を押圧し、一体となって前進することができる。その後、入力ピストン503と加圧ピストン504が一体となって前進し、中間ピストン504が加圧ピストン505に当接すると、入力ピストン503及び中間ピストン504は加圧ピストン505を押圧し、一体となって前進することができる。
このように、シリンダ502内に入力ピストン503と中間ピストン504と加圧ピストン505が同軸上に移動自在に配置されることで、第1圧力室R1、第2圧力室R2、背面圧力室R3、第1リリーフ室R4、第2リリーフ室R5が形成されている。この場合、第1リリーフ室R4と第2リリーフ室R5とは、中間ピストン504に形成された連通路513及び連結孔504cにより連通している。
なお、本実施例の車両用制動装置では、上述したマスタシリンダ501にマスタカット弁、ABS、ホイールシリンダ、圧力制御弁などが連結されているが、これらの構成は、上述した実施例1とほぼ同様であるため、説明は省略する。
マスタシリンダ501にて、第1圧力室R1の第1圧力ポート26には、第1油圧配管27が連結され、この第1油圧配管27は、マスタカット弁を介して、例えば、三輪のホイールシリンダに連結されている。また、第2圧力室R2は、中間ピストン504の連通路514を介して第2リリーフポート55に連通可能であると共に、第2圧力室R2の第3圧力ポート515には、第8油圧配管516が連結され、この第8油圧配管516は、マスタカット弁を介して、例えば、一輪のホイールシリンダに連結されている。更に、背面圧力室R3の第2圧力ポート29には、第2油圧配管30が連結されている。また、第1リリーフ室R4の第2リリーフポート55には、第5油圧配管56が連結され、第3リリーフポート57には、加圧ピストン505に形成された第2連通孔59を通して第1圧力室R1に連通可能であると共に、第6油圧配管60が連結されている。
従って、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン503が反力スプリング507の付勢力に抗して前進することで、この反力スプリング507だけが収縮して弾性変形する。この場合、入力ピストン503が初期ストロークS1だけ前進する間は、ゴム部材510は弾性変形しない。そのため、反力スプリング507は、線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークが早期に吸収されると共に、変化量が一定な反力が付与される。
そして、乗員がブレーキペダル15を更に踏み込み、入力ピストン503が初期ストロークS1を越えて前進すると、入力ピストン503の第1ゴム部材510が中間ピストン504のカバー512に接触し、第1ゴム部材510及び第2ゴム部材511を押圧する。このとき、マスタカット弁により油圧配管27,516が閉止されているため、第1圧力室R1及び第2圧力室R2は密閉状態となり、中間ピストン504及び加圧ピストン505の前進が規制される。そのため、入力ピストン503の第1ゴム部材510がカバー512に接触すると、この入力ピストン503は、押圧部503cが第1ゴム部材510を押圧しながら前進することで、第1ゴム部材510が弾性変形した後、続いて第2ゴム部材511が弾性変形する。
即ち、入力ピストン503が反力スプリング507の付勢力に抗して更に前進することで、この反力スプリング507が収縮して弾性変形すると共に、各ゴム部材510,511が押圧され、順に収縮して弾性変形する。そのため、反力スプリング507は、線形剛性変化をなすものの、各ゴム部材510,511は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークが適正に吸収されると共に、安定した反力が付与される。
このように実施例6の車両用制動装置にあっては、マスタシリンダ501内に制動操作力に応じたストロークを吸収すると共に反力を発生させるストロークシミュレータを内蔵し、このストロークシミュレータを、入力ピストン503とシリンダ502との間に張設された反力スプリング507と、入力ピストン503と中間ピストン504(加圧ピストン505)との間に設けられた2つのゴム部材510,511とにより構成し、入力ピストン503が初期ストロークだけ前進する間にゴム部材510,511の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段として、入力ピストン503と中間ピストン504との間に初期隙間S1を設定している。
従って、初期制動操作力により入力ピストン503が前進して反力スプリング507だけを弾性変形し、入力ピストン503が初期ストロークだけ前進してから各ゴム部材510,511を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
そして、実施例6の車両用制動装置では、乗員がブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン503が前進し、反力スプリング507だけが収縮して弾性変形することとなり、この反力スプリング507が線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の初期操作に対して、ストロークを早期に吸収すると共に、変化量が一定となる反力を付与することができる。そして、乗員が更にブレーキペダル15を踏み込むと、入力ピストン503が初期ストロークを越えて前進した後に各ゴム部材510,511を順に弾性変形させることとなり、このゴム部材510,511が非線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダル15の調整操作に対して、ストロークを適正に吸収すると共に、安定した反力を付与することができる。
また、実施例6の車両用制動装置では、入力ピストン503と中間ピストン504との間に、弾性力(ばね定数)の異なる2種類のゴム部材510,511とを配設している。従って、ブレーキ反力の変化を最適2次曲線とすることができ、乗員によるブレーキフィーリングを向上させることができる。
図9は、本発明の実施例7に係るストロークシミュレータを表す概略断面図である。
実施例7において、図9に示すように、ストロークシミュレータ601において、中空円筒形状をなすハウジング602は、ハウジング本体602aと、蓋部602bとから構成されている。このハウジング602は、内部における軸方向の一端部側に第1ピストン603が軸方向に沿って移動自在に支持されている。この第1ピストン603は、外周部にハウジング602の内周面に摺接するシール部材603aが装着されている。また、第1ピストン603は、一端部に凹部603bが形成されることで、ハウジング602との間に油圧室604が形成されている。そして、ハウジング602(ハウジング本体602a)の端部に給排口602cが形成され、制動操作力としての制動油圧がこの給排口602cを通して油圧室604に作用するように構成されている。
ハウジング602は、内部における軸方向の他端部側に第2ピストン607が軸方向に沿って移動自在に支持されている。この第2ピストン607は、軸部607aと円板形状をなす押圧部607bと支持部607cとを有している。第2ピストン607の軸部607aは、端部が第1ピストン603の他端部に形成された嵌合孔603cに移動可能に嵌合している。また、支持部607c、端部がハウジング602(ハウジング本体602a)に形成された嵌合孔602dに移動可能に嵌合している。
そして、第1ピストン603と第2ピストン607との間には、第1弾性部材としての圧縮コイルばね606が張設されている。また、ハウジング602の蓋部602bに密着して第2弾性部材としてのゴム部材608が配置されており、ハウジング602の内周面とゴム部材608の外周面との間には微小隙間が確保されている。更に、第2ピストン607の支持部607cには、先端が開口する支持孔607dが形成され、ハウジング602の蓋部602bと支持孔607dとの間には、弾性変形抑制手段としての圧縮コイルばね609が張設されている。この場合、圧縮コイルばね606と圧縮コイルばね609は同じ弾性力、つまり、同じばね定数に設定されている。
この場合、本発明のピストンとして、ハウジング602内に直列に配置される第1ピストン603及び第2ピストン607が機能する。第2ピストン607は、押圧部607bの先端部がゴム部材608に接触することで、その弾性力により押圧部607bの後端部がハウジング603の段部602eに当接する後退位置に付勢支持されている。また、第1ピストン602は、圧縮コイルばね606の付勢力により一端部がハウジング602の一端部に当接する後退位置に付勢支持されており、油圧室604に作用する制動油圧(制動操作力)により前進可能である。更に、第2ピストン607は、圧縮コイルばね606の付勢力により前進側に付勢されると共に、この圧縮コイルばね606と同じ付勢力を有する圧縮コイルばね609により後退側に付勢支持されている。そして、第1ピストン603と第2ピストン607との間には、初期隙間S1が確保されている。第2ピストン607は、第1ピストン603が初期ストローク(初期隙間S1)だけ前進してから押圧されて前進可能となっている。
また、本実施例のストロークシミュレータ601では、第1ピストン603が油圧室604に作用する制動油圧により前進することで、圧縮コイルばね606だけを弾性変形させる。つまり、第2ピストン607は、同じ付勢力を有する圧縮コイルばね606と圧縮コイルばね609により両側から押圧されているため、圧縮コイルばね606が弾性変形しても、第2ピストン607のゴム部材608を押圧することはない。そして、第1ピストン603が第2ピストン607に接触してから押圧し、前進することで、ゴム部材608を弾性変形させる。そのため、圧縮コイルばね606は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、ゴム部材608は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。
また、第2ピストン607は、ゴム部材608を押圧する押圧部607bの先端部に、円錐台形状をなす円錐部607eが設けられている。一方、ゴム部材608は、第2ピストン607の押圧により押圧方向(軸方向)と交差する方向(径方向)に弾性変形する円錐台形状をなす変形部608aが設けられている。
ここで、本実施例のストロークシミュレータ601の作動を具体的に説明する。
例えば、乗員が図示しないブレーキペダルを踏み込むと、ブレーキストロークに応じて制動油圧が発生し、この制動油圧が給排口602cを通して油圧室604に作用する。すると、第1ピストン603がこの油圧室604に作用した制動油圧により、圧縮コイルばね606の付勢力に抗して前進(図9にて左方へ移動)することで、この圧縮コイルばね606だけが収縮して弾性変形する。この場合、第1ピストン603が初期ストローク(第1吸収ストローク)S1だけ前進する間は、圧縮コイルばね606の付勢力が圧縮コイルばね609の付勢力により打ち消されるため、第2ピストン607を押圧することはなく、ゴム部材608が弾性変形しない。そのため、圧縮コイルばね606は、線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダルの初期操作に対して、ストロークが早期に吸収されると共に、変化量が一定な反力が付与される。
そして、乗員がブレーキペダルを更に踏み込み、第1ピストン603が初期ストロークS1を越えて前進すると、第1ピストン603が第2ピストン607を押圧する。すると、第1ピストン603が圧縮コイルばね606の付勢力に抗して更に前進することで、圧縮コイルばね606が収縮して弾性変形すると共に、第2ピストン607が圧縮コイルばね609及びゴム部材608の付勢力に抗して前進することで、圧縮コイルばね609及びゴム部材608が収縮して弾性変形する。そのため、圧縮コイルばね606,609は、線形剛性変化をなすものの、ゴム部材608は、弾性変形時に非線形剛性変化をなすこととなり、乗員によるブレーキペダルの調整操作に対して、ストロークが適正に吸収されると共に、安定した反力が付与される。
また、第2ピストン607がゴム部材608を押圧して弾性変形させるとき、第2ピストン607の円錐部607eがゴム部材608の中心部を押圧することで、ゴム部材608は、その中心部が凹むように弾性変形する。続いて、第2ピストン607の円錐部607eの前面がゴム部材608に密着して全体を押圧することで、ゴム部材608は、変形部608aが径方向における外方に弾性変形する。そのため、第2ピストン607がゴム部材608を弾性変形させるとき、弾性初期と弾性終期における弾性変化率が高くなり、ブレーキペダルに対して適正な反力が付与される。
このように実施例7のストロークシミュレータ601にあっては、ハウジング602内に第1ピストン603と第2ピストン607を直列に移動自在に支持し、第1ピストン603の前進により弾性変形可能な圧縮コイルばね606を設けると共に、第1ピストン603が予め設定された初期ストロークだけ前進してから第2ピストン607により押圧されて弾性変形可能なゴム部材608を設け、第1ピストン603が初期ストロークだけ前進する間に第2ピストン607によるゴム部材608の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段として、第1ピストン603と第2ピストン607との間に初期隙間S1を設定すると共に、第2ピストン607を後退側に付勢する圧縮コイルばね609を設けている。
従って、初期制動操作力により第1ピストン603が前進して圧縮コイルばね606だけを弾性変形し、第1ピストン603が初期ストロークだけ前進してから第2ピストン607がゴム部材608を弾性変形することとなり、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保することで、制動操作フィーリングを向上することができる。
また、実施例7のストロークシミュレータ601では、第1弾性部材を圧縮コイルばね606とし、第2弾性部材をゴム部材608とすることで、第1弾性部材(圧縮コイルばね606)は、弾性変形時に線形剛性変化をなす一方、第2弾性部材(ゴム部材608)は、弾性変形時に非線形剛性変化をなす。従って、乗員がブレーキペダルを踏み込むと、制動油圧が第1ピストン603に作用して前進し、圧縮コイルばね606だけが収縮して弾性変形することとなり、この圧縮コイルばね606が線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダルの初期操作に対して、ストロークを早期に吸収すると共に、変化量が一定となる反力を付与することができる。そして、乗員が更にブレーキペダルを踏み込むと、第1ピストン603が初期ストロークを越えて前進した後に第2ピストン607を押圧して前進し、ゴム部材608が収縮して弾性変形することとなり、このゴム部材608が非線形剛性変化をなすため、乗員によるブレーキペダルの調整操作に対して、ストロークを適正に吸収すると共に、安定した反力を付与することができる。
以上のように、本発明に係るストロークシミュレータ及び車両用制動装置は、ピストンの前進により弾性変形可能な第1弾性部材と、ピストンが初期ストロークだけ前進してから押圧されて弾性変形可能な第2弾性部材と、ピストンが初期ストロークだけ前進するときに第2弾性部材の弾性変形を抑制する弾性変形抑制手段とを設けることで、制動操作力に応じた理想的な吸収ストローク及び制動反力を確保して制動操作フィーリングの向上を図るものであり、いずれの種類の制動装置に用いても好適である。
本発明の実施例1に係るストロークシミュレータを表す概略断面図である。
実施例1のストロークシミュレータにおける入力荷重に対する吸収ストロークを表すグラフである。
本発明の実施例2に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
実施例2の車両用制動装置における圧力制御弁の断面図である。
本発明の実施例3に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
本発明の実施例4に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
本発明の実施例5に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
本発明の実施例6に係る車両用制動装置を表す概略構成図である。
本発明の実施例7に係るストロークシミュレータを表す概略断面図である。
符号の説明
1,311,601 ストロークシミュレータ
2,312,602 ハウジング
3,603 第1ピストン(ピストン)
5 ケース
6,606 圧縮コイルばね(第1弾性部材)
7,607 第2ピストン(ピストン)
8,608 ゴム部材(第2弾性部材)
11,201,301,401,501 マスタシリンダ
12,202,502 シリンダ
13,203,503 入力ピストン(ピストン)
14,205,505 加圧ピストン
15 ブレーキペダル(操作部材)
21,23,206,506,508 支持部材
22,207,507 反力スプリング(第1弾性部材)
24,316,210,510,511 ゴム部材(第2弾性部材)
25FR,25FL,25RR,25RL ホイールシリンダ
27 第1油圧配管
30 第2油圧配管
32 マスタカット弁
33 連通油圧配管
34 連通弁
39a,39b,40a,40b 増圧弁
41a,41b,42a,42b 減圧弁
43 油圧ポンプ(油圧供給源)
46 リザーバタンク
48 アキュムレータ(油圧供給源)
49 高圧供給配管
50 圧力制御弁(調圧手段)
51 制御圧供給配管
54 外部圧供給配管
70 ABS(調圧手段)
71 電子制御ユニット、ECU
72 ストロークセンサ
73 踏力センサ
74 第1圧力センサ
75 第2圧力センサ
76 第3圧力センサ
204,504 中間ピストン
313 ピストン
609 圧縮コイルばね(弾性変形抑制手段)
R1 第1圧力室
R2 第2圧力室
R3 背面圧力室
R4,R5 リリーフ室
S1 初期隙間、初期ストローク(弾性変形抑制手段)