以下、適宜図面を参照して、本発明の好ましい実施形態が詳細に説明される。なお、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
[図面の説明]
図1は、本発明の実施形態に係る複合機10の外観斜視図である。図2は、複合機10の内部構成を示す模式図である。図3は、記録ヘッド19における記録可能領域103を示す底面図である。図4は、複合機10の制御部64の構成を示すブロック図である。図5は、プラテン42の構成を示す概略斜視図である。なお、図5では、キャリッジ38が省略されている。図6は、図5におけるV-V切断線の断面を示す断面図である。図7は、駆動機構48の構成を示す平面図である。なお、図7では、上フレーム49、第1トリガー83及び第2トリガー84が省略されている。図8及び図9は、キャリッジ38の入力による駆動機構48の動作を説明するための断面図である。図10から図12は、縁無し記録方法における第3支持部54の動作を説明するために模式図である。図13から図15は、変形例に係る縁無し記録方法における第3支持部54の動作を説明するために模式図である。
[複合機10の概略構成]
複合機10は、プリンタ部11及びスキャナ部12を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリント機能、スキャン機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。複合機10のうちプリンタ部11が、本発明に係るインクジェット記録装置に相当する。したがって、複合機10においてプリント機能以外の機能は任意のものであり、本発明に係るインクジェット記録装置は、例えばスキャナ部12が省略された単機能のプリンタとして実施されてもよい。
複合機10のプリンタ部11は、主にコンピュータやデジタルカメラなどの外部情報機器と接続され得る。外部情報機器から送信された画像データや文書データを含む記録データに基づいて、プリンタ部11が被記録媒体としての記録用紙に画像や文書を記録する。また、複合機10にはカード形式のメモリなどの各種記憶媒体が装着され得る。この記憶媒体に記憶された画像データなどに基づいても、プリンタ部11が記録用紙に画像を記録し得る。
図1に示されるように、複合機10の外形は、横幅及び奥行きが高さよりも大きい幅広薄型の略直方体である。複合機10の下部がプリンタ部11である。複合機10は、正面側に開口13を有する。開口13の内側に、給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に設けられている。給紙トレイ20には、複数枚の記録用紙が保持される。画像記録に際して、給紙トレイ20に保持された記録用紙がプリンタ部11の内部へ給送されて所望の画像が記録され、画像記録後の記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
複合機10の上部がスキャナ部12である。スキャナ部12は、いわゆるフラットベッドスキャナとして構成されているが、スキャナ部12の構成は本発明に直接関係しないので、ここではその詳細な説明が省略される。
複合機10の正面上部に操作パネル15が設けられている。操作パネル15は、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するための装置であって、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機10は、操作パネル15からの操作指示に基づいて動作する。複合機10が外部情報機器に接続されている場合には、この外部情報機器からプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機10が動作する。また、複合機10の正面にスロット部16が設けられている。カード形式のメモリカードは、スロット部16に装着されてデータの読み書きが可能となる。
[プリンタ部11の概略構成]
以下、プリンタ部11の概略構成が説明される。図2に示されるように、複合機10の底側に給紙トレイ20が配置されている。給紙トレイ20には、例えばA4サイズなどの所定サイズ以下の記録用紙が保持可能である。もっとも、給紙トレイ20にスライドトレイを設けてトレイ面を拡大可能とすれば、所定サイズ(例えばA4サイズ)の記録用紙より大きな記録用紙(例えばリーガルサイズ)を給紙トレイ20に保持させることもできる。
給紙トレイ20の奥側には分離板22が設けられている。分離板22は、その上端がプリンタ部11の背面側(図2における右側)へ傾倒されている。後述される給紙ローラ25の回転によって給紙トレイ20から給送された記録用紙が、例え重送されたとしても、これらの記録用紙は分離板22によって分離され、且つ分離された最上位置の記録用紙のみが上方へ案内される。
排紙トレイ21は、給紙トレイ20の上側に配置されている。排紙トレイ21は、画像記録後の記録用紙を積載状態で保持する。給紙トレイ20から排紙トレイ21へは、後述される用紙搬送路23によって記録用紙が搬送可能である。画像記録は、記録用紙の搬送過程において画像記録ユニット24によって行われる。
給紙ローラ25は、給紙トレイ20の上側に設けられている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に積載された記録用紙を用紙搬送路23へ給送する。給紙ローラ25は、アーム26の先端に支持されている。給紙ローラ25は、LFモータ71(図4参照)を駆動源として、図に示されていない駆動伝達機構を介して駆動されて回転される。この駆動伝達機構は、例えば複数のギアが相互に噛合されてなり、各ギアの回転が順次伝達されることによって、LFモータ71の駆動を給紙ローラ25へ伝達する。
アーム26は、その基端部が基軸28に支持されて、基軸28を回動中心軸として回転可能である。このアーム26の回転によって、給紙ローラ25が、給紙トレイ20に対して接離可能に上下動する。アーム26は、自重により又はバネなどに付勢されて下側へ弾性付勢されている。このため、アーム26は、通常において給紙トレイ20側へ回転し、給紙トレイ20が挿抜される際に給紙トレイ20により上側へ押しやられて回転する。アーム26が弾性付勢によって下側へ回転すると、給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転されると、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が分離板22へ送り出される。記録用紙は、その先端が分離板22に当接して上方へ案内され、用紙搬送路23へ給送される。
用紙搬送路23は、給紙トレイ20における分離板22の上側から、上方へUターンして装置正面側へ延びるいわゆるUターンパスとして形成されている。図には示されていないが、用紙搬送路23は、画像記録ユニット24などが配設されている箇所以外は、外側ガイド面と内側ガイド面とによって区画形成されている。これらガイド面は、プリンタ部11の筐体などに固定されている。
[画像記録ユニット24]
図2に示されるように、画像記録ユニット24は、用紙搬送路23が上方へUターンする湾曲部分より搬送向き101の下流側に配置されている。画像記録ユニット24は、キャリッジ38と、インクジェット方式の記録ヘッド39とを備えている。記録ヘッド39は、キャリッジ38に搭載されている。キャリッジ38は、記録用紙の搬送向き101と直交する方向(図3の矢印102、以下「往復動方向102」とも称される。)へ往復動する。各図には現れていないが、複合機10の内部には、記録ヘッド39とは独立して各色インク毎にインクカートリッジが配置されている。これらのインクカートリッジから各インクチューブを通じてシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの各色インクが記録ヘッド39へ供給される。
なお、本実施形態では、記録用紙は搬送向き101にのみ搬送されるものとして説明がされるが、本発明に係るインクジェット記録装置において、各種記録制御に応じてシートが正搬送(搬送向き101)及び逆搬送(搬送向き101とは反対の向き)に搬送されてもよいことは言うまでもない。
図3に示されるように、記録ヘッド39は、その下面に複数のノズル40を有する。各ノズル40は、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの各色インクに対応して記録用紙の搬送向き101に沿ってそれぞれ1列に配置されている。図3に示されるように、各ノズル40は、シアンのインクを吐出するノズルが参照符号40Cで示され、マゼンタのインクを吐出するノズルが参照符号40Mで示され、イエローのインクを吐出するノズルが参照符号40Yで示され、ブラックのインクを吐出するノズルが参照符号40Bkで示されている。本明細書では、各色に対応したノズル40C,40M,40Y,40Bkを総称して、単にノズル40とも称される。記録ヘッド39の下面に開口したノズル40の開口端が、本発明における吐出口に相当する。また、記録ヘッド39の下面において、搬送向き101及び往復動方向102をそれぞれ各辺とした全ノズル40を含む矩形の領域(図3において2点鎖線で囲まれた領域)が記録可能領域103と称される。
各図には現れていないが、各ノズル40内に設けられたピエゾ素子の振動によって、各ノズル40から各色インクのインク滴が吐出される。キャリッジ38が往復動される間に、記録ヘッド39から各色インクが微小なインク滴として選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像が記録される。なお、各ノズルの搬送向き101に沿ったピッチや数は、記録される画像の解像度などに応じて適宜設定される。また、カラーインクの種類数に応じて各色に対応したノズルの列数が増減される。
各図には現れていないが、キャリッジ38の配置に対応して、往復動方向102へ延びるガイドレールやガイドシャフトなどのガイド部材が設けられている。キャリッジ38は、このガイド部材に支持されて往復動方向102へスライド移動可能である。また、キャリッジ38には、CRモータ73(図4参照)からベルト駆動機構などの駆動伝達機構を介して駆動伝達される。ベルト駆動機構は、例えば往復動方向102を長尺方向として一対のプーリに無端環状のベルトが架け渡され、CRモータ73によってプーリが回転されるとベルトが周運動する構成である。このベルトにキャリッジが連結されることにより、ベルトの周運動がキャリッジに伝達されて、キャリッジ38が往復動方向102へ往復動し得る。
図2に示されるように、画像記録ユニット24の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38の往復動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分を占めるように配設されている。プラテン42の幅(図2の紙面に垂直な方向の長さ)は、プリンタ部11が搬送可能な記録用紙の最大幅(図2の紙面に垂直な方向の長さ)より十分に大きく設定されている。したがって、搬送される記録用紙の幅方向における両端は、常にプラテン42上を通過する。後に詳述されるが、このプラテン42に可動部47(図2参照)が設けられている。可動部47は、記録用紙の搬送向き101に沿ってスライド可能である。
[搬送機構]
記録用紙を搬送する搬送機構は、前述された給紙ローラ25の他、搬送ローラ60及びピンチローラ61、排紙ローラ62及び拍車ローラ63を主要部材として構成されている。
図2に示されるように、画像記録ユニット24より搬送向き101の上流側に一対の搬送ローラ60及びピンチローラ61が設けられている。ピンチローラ61は、搬送ローラ60と接離する方向に移動可能に設けられている。ピンチローラ61は、コイルバネにより搬送ローラ60に圧接するように付勢されている。搬送ローラ60とピンチローラ61との間に記録用紙が進入すると、ピンチローラ61が記録用紙の厚み分だけコイルバネの付勢力に抗して退避するとともに、記録用紙を搬送ローラ60に圧接させる。これにより、搬送ローラ60の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。搬送ローラ60及びピンチローラ61は、用紙搬送路23を搬送される記録用紙を狭持してプラテン42上へ搬送する。
画像記録ユニット24より搬送向き101の下流側に一対の排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。排紙ローラ62及び拍車ローラ63は、記録済みの記録用紙を狭持して排紙トレイ21へ搬送する。拍車ローラ63は、排紙ローラ62と接離する方向に移動可能に設けられている。拍車ローラ63は、コイルバネにより排紙ローラ62に圧接するように付勢されている。排紙ローラ62と拍車ローラ63との間に記録用紙が進入すると、拍車ローラ63が記録用紙の厚み分だけコイルバネの付勢力に抗して退避するとともに、記録用紙を排紙ローラ62に圧接する。これにより、排紙ローラ62の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。
搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71から駆動力が伝達されて同期回転される。搬送ローラ60及び排紙ローラ62が記録制御に応じて回転したり停止したりする、いわゆる間欠駆動されることにより、記録用紙が所定の改行幅で間欠して搬送される。そして、記録用紙が停止しているときに、キャリッジ38が往復動しながら画像データに基づいて記録ヘッド39からインク滴が選択的に吐出されることにより、記録用紙上に画像が記録される。
用紙搬送路23には、搬送ローラ60より搬送向き101の上流側にレジセンサ59が配置されている。図には示されていないが、レジセンサ59は、検出子と光学センサとを有するいわゆるメカニカルセンサである。レジセンサ59の検出子は、用紙搬送路23へ突出しており、回動により用紙搬送路23に対して出没する。検出子は、図示しないバネ材により弾性付勢されて用紙搬送路23へ突出しており、1枚の記録用紙が当接すると用紙搬送路23から退避するように弾性付勢に抗して回動される。レジセンサ59は、このような検出子の回動を光学センサにより検出して電気信号として出力する。レジセンサ59が出力する電気信号に基づいて、検出子の位置を記録用紙の先端又は後端が通過したことが判定される。
[制御部64]
制御部64は、プリンタ部11のみでなくスキャナ部12も含む複合機10の全体動作を制御するものである。なお、スキャナ部12の制御に関する構成は、本発明の主要な構成ではないので、その詳細な説明は省略される。
図4に示されるように、制御部64は、CPU(Central Processing Unit)65、ROM(Read Only Memory)66、RAM(Random Access Memory)67、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)68を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。制御部64は、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、複合機10の各種動作を制御するためのプログラムなどがROM66に格納されている。RAM67は、CPU65が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。EEPROM68に、電源オフ後も保持すべき設定やフラグなどが格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LFモータ71に通電するPWM信号などを生成する。この信号は、LFモータ71の駆動回路72に付与され、この駆動回路72を介して駆動信号がLFモータ71に通電される。このようにして、LFモータ71の回転制御が行われる。LFモータ71は、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の駆動源であり、且つ給紙ローラ25の駆動源でもある。
駆動回路72は、LFモータ71を所望の回転で駆動させるものである。駆動回路72は、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を生成する。この電気信号を受けてLFモータ71が回転する。LFモータ71の回転が給紙ローラ25、搬送ローラ60及び排紙ローラ62へ伝達される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CRモータ73に通電するPWM信号などを生成する。この信号は、CRモータ73の駆動回路74に付与され、この駆動回路74を介して駆動信号がCRモータ73に通電される。このようにして、CRモータ73の回転制御が行われる。
駆動回路74は、CRモータ73を所望の回転で駆動させるものである。駆動回路74は、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を生成する。この電気信号を受けてCRモータ73が回転する。CRモータ73の回転力は、ベルト駆動機構を介してキャリッジ38へ伝達され、これにより、キャリッジ38が往復動される。このようにして、キャリッジ38の往復動が制御部64により制御される。また、キャリッジ38が、往復動の際に第1トリガー83又は第2トリガー84を動作させることによって可動部47がスライドされるが、この構成については後述される。
駆動回路75は、記録ヘッド39を所定のタイミングで駆動させるものである。CPU65から出力される駆動制御手順に基づいて、ASIC70が出力信号を生成する。この出力信号に基づいて駆動回路75が記録ヘッド39を駆動制御する。この駆動回路75は、ヘッド制御基板に搭載されている。駆動回路75から出力される信号は、フラットケーブルなどの電送部材を介して制御部64を構成するメイン基板からヘッド制御基板へ伝送される。これにより、記録ヘッド39は、所定のタイミングで各色インクを記録用紙に対して選択的に吐出する。
搬送ローラ60の回転量は、ロータリーエンコーダ76の検出信号に基づいて判定される。図2等には示されていないが、ロータリーエンコーダ76は、搬送ローラ60と同軸に設けられて回転するエンコーダディスクの光学パターンを光学センサで検知して、その光学パターンに応じた電気信号をエンコーダ量として出力する。制御部64は、レジセンサ59の検出信号及びロータリーエンコーダ76が検出するエンコーダ量に基づいて記録用紙の先端又は後端の位置を把握する。制御部64は、記録用紙の先端がプラテン42の所定の位置に到達すると、記録用紙を所定の改行幅ごとに間欠搬送すべくLFモータ71の回転を制御する。この改行幅は、画像記録の条件として入力された解像度などに基づいて設定される。
キャリッジ38の位置は、リニアエンコーダ77の検出信号に基づいて判定される。図2等には示されていないが、リニアエンコーダ77は、キャリッジ38を案内するガイド部材に沿って設けられたエンコーダストリップの光学パターンを、キャリッジ38に搭載された光学センサで検知して、その光学パターンに応じた電気信号をエンコーダ量として出力する。キャリッジ38は、複合機10の電源オンにより、往復動範囲の一方の端まで移動され、リニアエンコーダ77による検知位置が初期化される。キャリッジ38が初期位置からガイド部材に沿って移動すると、キャリッジ38に設けられた光学センサがエンコーダストリップの光学パターンを検知して位相の異なる複数のパルス信号を出力する。制御部64は、これらパルス信号に基づいて、キャリッジ38の移動方向及び速度を把握する。また、制御部64は、この移動方向及び速度に基づいてキャリッジ38の往復動を制御すべく、CRモータ73の回転を制御する。
スキャナ部12、複合機10の操作指示を行うための操作パネル15、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部16、パソコンなどの外部情報機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79などがASIC70に接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やモデム(MODEM)81もASIC70に接続されている。
[プラテン42]
図5に示されるように、プラテン42は、概略として平板形状であり、その上面43が記録ヘッド39のノズル40と対向されて配置されている。プラテン42の上面43は、キャリッジ38の往復動方向102を長手方向とする概ね長方形である。
プラテン42は、上面43を有するフレーム44と、フレーム44の上面43に設けられた第1支持部45及び第2支持部46と、フレーム44内に設けられた可動部47と、可動部47をスライド駆動する駆動機構48(図7参照)とを主要な構成とする。
フレーム44は、例えば合成樹脂や鋼板からなり、プラテン42の外形を構成する。フレーム44は、概ね中空の直方体形状をなしており、上面43を含む上フレーム49と下フレーム50とから構成されている。上フレーム49と下フレーム50とが組み付けられる前に、後述される可動部47及び駆動機構48などがフレーム44内に配置される。各図には現れていないが、フレーム44は、ブラケットなどを介してプリンタ部11のフレームなどに固定される。
フレーム44の上面43に、第1支持部45及び第2支持部46が設けられている。第1支持部45は、上面43における搬送向き101の上流側において、複数が長手方向(往復動方向102)に沿って所定間隔で一列に設けられている。各第1支持部45は、薄肉平板形状のリブであり、上面43において搬送向き101を長手方向として上方へ突出されている。また、各第1支持部45のリブ形状は、搬送向き101に沿って傾斜面が形成されて上向きに突出する山形形状をなしている。
第2支持部46は、上面43における搬送向き101の下流側において、フレーム44の長手方向(往復動方向102)に沿って延出されている。第2支持部46は、搬送向き101に沿った断面形状が山形形状であって、記録ヘッド39へ向かって上方へ突出している。
各第1支持部45と第2支持部46とは、搬送向き101に沿って隔てられている。本実施形態においては、各第1支持部45と第2支持部46との間として認識される上面43の一部分が溝51と称される。溝51は、上面43においてプラテン42の長手方向(往復動方向102)へ延びている。溝51の搬送向き101に沿った長さ(各第1支持部45と第2支持部46との距離104)は、記録ヘッド39の記録可能領域103における搬送向き101に沿った長さ105(図3参照)より長い。換言すれば、第1支持部45及び第2支持部46は、プラテン42の上面43において、キャリッジ38と共に往復動する記録ヘッド39の記録可能領域103に対応する記録可能領域108(図5において二点鎖線で囲まれた領域)、つまり各ノズル40からインク滴が着弾し得る領域より搬送向き101の上流側及び下流側にそれぞれ配置されている。
フレーム44の上面43には、搬送向き101に沿って延びるスリット52が複数設けられている。各スリット52は、プラテン42の長手方向(往復動方向102)へ所定間隔で配置されている。ほとんどのスリット52は、隣り合う第1支持部45の間から第2支持部46より搬送向き101の下流側まで延出されている。したがって、第2支持部46は、結果としてプラテン42の長手方向(往復動方向102)に対して複数のスリット52により分断されている。各スリット52を通じて、後述される可動部47の第3支持部54が、上面43から記録ヘッド39へ向かって上方へ突出している。フレーム44の長手方向(往復動方向102)における各スリット52の幅は、可動部47の第3支持部54が通過可能であれば十分である。したがって、本実施形態のプラテン42においては、第2支持部46は、複数のスリット52により分断されているものの、仮に可動部47が存在しない場合のプラテンの構成、すなわち第2支持部46が複数のスリット52によって分断されていないプラテンの構成に比して、記録用紙を支持する機能には何ら変わりがない。
図2、図5及び図6に示されるように、可動部47は、フレーム44内に配置されて搬送向き101へ移動可能なベース53と、ベース53に設けられた複数の第3支持部54とを有する。なお、図2においては、フレーム44の一部が省略されている。第3支持部54は、薄肉平板のリブであり、ベース53の短手方向(搬送向き101に沿った方向)を長手方向として、ベース53からそれぞれ上方へ突出する。各第3支持部54のリブ形状は、その上側部分が搬送向き101に沿って傾斜面が形成されて上向きに突出する山形形状をなしている。このような複数の第3支持部54が、ベース53の長手方向(往復動方向102)に所定間隔で一列に配置されている。各第3支持部54間の距離は、上フレーム49に形成された各スリット52間の距離と等しい。各第3支持部54は、上フレーム49の下側からスリット52を通じて上面43の上側へそれぞれ突出されている。つまり、可動部47は、上フレーム49に対して上面43と反対側配置されて、第3支持部54が記録ヘッド39へ向かってそれぞれ突出している。複数の第3支持部54が列設された往復動方向102が、本発明における第1方向に相当する。
図7に示されるように、下フレーム50には、搬送向き101に沿って一対の支持ガイド55,56が設けられている。各支持ガイド55,56は、搬送向き101を長手方向として延びる台形状であり、各支持ガイド55,56の上面は、同一の水平面に含まれる。各支持ガイド55,56の搬送向き101に沿った長さは、可動部47のスライド範囲に対応されて、スライド範囲を含むように設定されている。この一対の支持ガイド55,56に、可動部47のベース53が支持されており、支持ガイド55,56の上面に案内されて搬送向き101に沿って移動可能である。
駆動機構48は、可動部47を搬送向き101に沿って移動させるためのものである。図5から図7に示されるように、駆動機構48は、第1トリガー83、第2トリガー84、第1ラック部材85、伝達ギヤ86,87及び第2ラック部材88,89を主要な構成とする。
第1トリガー83は、フレーム44内において往復動方向102の一端側(図6における左側)に設けられている。第1トリガー83は、レバー90の一端に平歯ギヤ91が設けられたものである。上フレーム49には、上面43に往復動方向102へ延びる長孔57が形成されており、この長孔57を通じてレバー90の一部が上面43から上方へ突出されている。第1トリガー83は、フレーム44内において往復動方向102へ振り子の如く回動可能に設けられている。したがって、レバー90は、長孔57の延出方向、つまり往復動方向102へ回動可能である。レバー90の回動に伴って、フレーム44内の平歯ギヤ91が回転される。
第2トリガー84は、フレーム44内において往復動方向102の他端側(図6における右側)に設けられている。第2トリガー84は、3つの節(リンク)92,93,94がクランク形状に連結されたものである。上フレーム49には、上面43から側面に渡って孔58が形成されており、この孔58を通じて第2トリガー84の一部がフレーム44外へ突出されている。節92は、搬送向き101に沿った軸95を有し、軸95が上フレーム49に回動可能に支持されている。節92の両端には、節93,94がそれぞれ連結されている。節93は、フレーム44内において節92の回動に伴って上下動する。節94は、フレーム44の外において節92の回動に伴って上下動する。節94は、節92の回動位置によって、フレーム44の上面43に対して上方へ出没される。なお、各図には現れていないが、節92は、ネジリコイルバネなどの付勢部材によって、節94をフレーム44の上面43に対して没入される向き、つまり節94が下向きに移動するように弾性付勢されている。
第1ラック部材85は、フレーム44内において往復動方向102を長手方向として配設された長尺部材である。第1ラック部材85は、第1トリガー83が配置された一端側(図7における左側)の上面の一部に第1ラックギヤ96が設けられ、搬送向き101に対して上流側となる側面の一部に第2ラックギヤ97及び第3ラックギヤ98がそれぞれ設けられている。なお、図6及び図7においては、ギヤの歯が2点鎖線を用いて省略されて示されている。
第1ラック部材85の中央付近には、上下方向へ貫通されて往復動方向102へ延びる長孔99が形成されている。この長孔99には、下フレーム50に設けられた固定フック30が挿通される。固定フック30は、下フレーム50の底面から上方へ突出されて一端側へ鈎形状へ曲がる部材である。長孔99に対して他端側(図7における右側)には固定フック100が設けられている。固定フック100は、第1ラック部材85の上面から上方へ突出されて他端側へ鈎形状へ曲がる部材である。固定フック30及び固定フック100には、引きバネとしてのコイルバネ110が架設されている。
第1ラック部材85の他端(図7における右側)には、カム111が設けられている。カム111は、第1ラック部材85の上面から上方へ突出されて、当該上面に対して段差を形成している。
図6に示されるように、下フレーム50には、底面から上方へ突出する支持ガイド31,32,37が設けられている。各支持ガイド31,32,37は、その上面が同一の水平面に含まれる台形状である。この一対の支持ガイド31,32,37に、前述された第1ラック部材85が支持されており、支持ガイド31,32,37の上面に案内されて水平方向へ移動可能である。第1ラック部材85は、前述された長孔99と固定フック30との係合によって、その水平移動が長尺方向、つまり往復動方向102へ案内される。したがって、第1ラック部材85は、往復動方向102へ水平移動可能である。下フレーム50の側面には、往復動方向102へ移動される第1ラック部材85との当接を回避するために、孔33,34が形成されている。第1ラック部材85は、往復動方向102への移動に伴って、その端部が孔33,34からフレーム44の外側へ突出され得る。
図7に示されるように、フレーム44において、前述された第1ラック部材85の第2ラックギヤ97及び第3ラックギヤ98にそれぞれ対応する位置に、伝達ギヤ86,87がそれぞれ配置されている。各伝達ギヤ86,87は、下フレーム50の底面から鉛直上向きへ延出された軸35,36にそれぞれ回転自在に支持されている。各伝達ギヤ86,87は、それぞれ第2ラックギヤ97又は第3ラックギヤ98と噛合されている。
第2ラック部材88,89は、フレーム44内において搬送向き101に沿った方向を長手方向としてそれぞれ配設された長尺部材である。各第2ラック部材88,89は、前述された伝達ギヤ86,87の直近にそれぞれ配置されている。各第2ラック部材88,89の搬送向き101の上流端は、可動部47のベース53に連結されている。各第2ラック部材88,89は、伝達ギヤ86,87に対抗する側面の一部にラックギヤ112,113がそれぞれ設けられている。各ラックギヤ112,113は、伝達ギヤ86,87とそれぞれ噛合されている。
前述されたように構成された駆動機構48によって、可動部47は、初期位置P0と退避位置P1とに移動される。図10に示されるように、初期位置P0は、プラテン42の溝51に対応する位置であり、搬送向き101に対して第1支持部45と第2支持部46との中央となる位置である。換言すれば、第1支持部45から初期位置P0までの搬送向き101に沿った距離106と、初期位置P0から第2支持部46までの搬送向き101に沿った距離107とが同等である(距離104=距離106+距離107)。
図10に示されるように、退避位置P1は、記録可能領域108より搬送向き101の上流側であり、搬送向き101に対して概ね第1支持部45付近である。この退避位置P1が、本発明における第1位置に相当し、前述された初期位置P0が、本発明における第2位置に相当する。
駆動機構48への入力は、キャリッジ38によってなされる。図5及び図6に示されるように、第1トリガー83のレバー90が長孔57の他端(図6における右側)に位置されていると、第1トリガー83の平歯ギヤ91と第1ラックギヤ96により噛合する第1ラック部材85は、往復動方向102に対して一端側(図6における左側)へ位置せしめられる。この第1ラック部材85のスライド位置において、第2トリガー84の節93は、カム110の上面に当接している。カム110との当接によって節93が降下されないので、節92が弾性付勢力に抗して回転されて節94が降下している。
図7に示されるように、前述された第1ラック部材85のスライド位置に対応して、第2ラックギヤ97及び第3ラックギヤ98、伝達ギヤ86,87及びラックギヤ112,113を介して第2ラック部材88,89が搬送向き101の下流側へスライドされる。この第2ラック部材88,89のスライド位置に対応して、可動部47の第3支持部54が初期位置P0に位置せしめられる。
図8に示されるように、キャリッジ38がスライドされて第1トリガー83のレバー90と当接し、レバー90を長孔57の一端(図8における左側)へ回動させると、第1トリガー83の平歯ギヤ91と第1ラックギヤ96により噛合する第1ラック部材85は、コイルバネ110の引っ張り力に抗して、往復動方向102に対して他端側(図8における右側)へ移動される。第1ラック部材85がスライドされることによって、第2トリガー84の節93が、カム110より中央側まで相対移動されて、第1ラック部材85の上面へ降下される。これによって、節92が弾性付勢力によって回転されて節94が上昇される。上昇された節94は、キャリッジ38と当接可能な高さとなる。また、第2トリガー84の節93とカム110の係合によって、第1ラック部材85が、コイルバネ110の引っ張り力に抗して、このスライド位置に保持される。
前述された第1ラック部材85のスライドが、第2ラックギヤ97及び第3ラックギヤ98、伝達ギヤ86,87及びラックギヤ112,113を介して第2ラック部材88,89へ伝達されて、第2ラック部材88,89が搬送向き101の上流側へスライドされる。この第2ラック部材88,89のスライドに連動して、可動部47の第3支持部54が退避位置P1に位置せしめられる。
図9に示されるように、キャリッジ38がスライドされて第2トリガー84の節94と当接し、図6に示されるように、節94を降下させると、節92が弾性付勢力に抗して回転されて節93が上昇される。節93の下端がカム110の上面より上側まで上昇すると、コイルバネ110の引っ張り力によって第1ラック部材85が往復動方向102に対して一端側(図6における左側)へスライドされる。第1ラック部材85がスライドは、第1ラックギヤ96を介して第1トリガー84の平歯ギヤ91へ伝達されて、レバー90が長孔57の他端側(図6における右側)へ回動される。また、第2トリガー84の節93は、カム110の上面に当接し、キャリッジ38が節94から離れても、節92が弾性付勢力に抗して回転されて、節94が降下した位置に保持される。
前述された第1ラック部材85のスライドが、第2ラックギヤ97及び第3ラックギヤ98、伝達ギヤ86,87及びラックギヤ112,113を介して第2ラック部材88,89へ伝達されて、第2ラック部材88,89が搬送向き101の下流側へスライドされる。この第2ラック部材88,89のスライドに連動して、可動部47の第3支持部54が初期位置P0に位置せしめられる。
[縁無し記録方法]
複合機10は、操作パネル15において所定の操作が行われるか、外部情報機器から所定の指令が送信されることによって、画像記録の態様が選択される。画像記録の態様とは、いわゆる縁有り記録又は縁無し記録である。以下、縁無し記録が選択された際の画像記録が説明される。
本実施形態における縁無し記録方法には、少なくとも以下の3つのステップが含まれる。
(1)第3支持部54を退避位置P1に位置せしめて、記録用紙17をプラテン42における記録可能領域108へ搬送させて、記録用紙17の先端18側に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる第1ステップ。
(2)記録用紙17が初期位置P0に位置された第3支持部54を被覆可能な位置にあり、且つ先端18が記録可能領域108にあるときに、第3支持部54を初期位置P0に位置せしめて、記録用紙17に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる第2ステップ。
(3)記録用紙17の後端19が記録可能領域108にあり、且つ記録用紙17が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過する前に、第3支持部54を退避位置P1に位置せしめて、記録用紙17の後端19側に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる第3ステップ。
画像記録の開始指令があると、まず、給紙トレイ20に積載された記録用紙17が用紙搬送路23へ給送される。具体的には、制御部64がLFモータ71を駆動して、給紙ローラ25が回転される。給紙トレイ20から用紙搬送路23に給送された記録用紙17は、用紙搬送路23に沿って下方から上方へ反転するように搬送される。
用紙搬送路23において、記録用紙17の先端18がレジセンサ59に当接してレジセンサ59がONとなる。記録用紙17がさらに搬送されることにより、記録用紙17の先端18が搬送ローラ60及びピンチローラ61に当接する。搬送ローラ60は、搬送向き101と逆向きに回転されているので、この状態では記録用紙17の先端18は搬送ローラ60及びピンチローラ61に挟持されず、記録用紙17は、搬送ローラ60及びピンチローラ61に当接した状態でレジスト処理される。記録用紙17がレジスト処理された後、制御部64はLFモータ71の回転を反転させて、搬送ローラ60を搬送向き101へ回転させる。これにより、レジスト処理された記録用紙が搬送ローラ60及びピンチローラ61にニップされる。そして、図10(A)に示されるように、記録用紙17がプラテン42上へ搬送される。
キャリッジ38は、記録用紙17がプラテン42へ搬送されるまでのイニシャライズ動作において、図6に示されるように、第2トリガー84の節94を降下させて第3支持部54を初期位置P0に位置せしめる。このようなイニシャライズ動作は、前述された記録用紙17の搬送と無関係に行うことができる。つまり、第3支持部54を初期位置P0に位置せしめるための動作は、CRモータ73を駆動してキャリッジ38をスライドさせることによるもであり、記録用紙17の搬送は、LFモータ71を駆動して搬送機構を動作させることによるものであり、これら動作は独立して行うことができる。
続いて、本発明に係る縁無し記録方法における第1ステップに対応する動作が説明される。第1ステップにおいては、制御部64が、第3支持部54を退避位置P1に位置せしめて、記録用紙17をプラテン42における記録可能領域108へ搬送させて、記録用紙17の先端18側に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる。
レジスト処理後にLFモータ61が正転されて、搬送ローラ60及び排紙ローラ61が搬送向き101へ回転すると、記録用紙17が搬送ローラ60及びピンチローラ61にニップされて搬送向き101へ搬送される。記録用紙17の先端がプラテン42上へ到達すると、LFモータ71が間欠駆動される。また、記録用紙17の先端がプラテン42に到達する前に、所定のタイミングでCRモータ73が駆動されてキャリッジ38が第1トリガー83のレバー90を回動させる。このレバー90の回動によって、第3支持部54が退避位置P1へ移動される。
図10(B)に示されるように、記録用紙17の先端18がプラテン42へ到達すると、記録用紙17の先端18側は、第1支持部45及び第3支持部54に支持される。制御部64は、記録用紙17の先端18がプラテン42の記録可能領域108へ進入すると、LFモータ71を間欠駆動させて、記録用紙17を間欠して搬送させる。
記録用紙17の搬送が間欠している間に、キャリッジ38とともにスライドされる記録ヘッド39から各色のインク滴が選択的に吐出されて記録用紙17に着弾する。縁無し記録では、少なくとも記録用紙17の周囲の縁までインク滴が吐出されるが、記録用紙17の先端18側においては、記録用紙17の間欠搬送に伴って記録ヘッド39がインク滴を吐出可能な記録可能領域103のうち記録用紙17の先端18に対応する位置から搬送向き101の上流側においてのみインク滴が吐出される。
前述されたようにして、記録用紙17の先端18側に縁無し記録が行われる。このとき、第3支持部54は退避位置P1に位置せしめられているので、記録用紙17の先端18が記録可能領域108へ進入すれば、直ちに記録ヘッド39からインク滴を吐出させて画像記録を行うことができる。つまり、記録用紙17の先端18の位置に対応させながら記録ヘッド39の記録可能領域103のすべてが使用されて記録用紙17に縁無し記録が実施される。また、記録用紙17は、その腰(剛性)によって、第1支持部45及び第3支持部54から搬送向き101に突出された先端18側を、溝51内へ垂れ込ますことなく水平に維持する。さらに、記録用紙17の先端18に着弾しなかったインク滴は、溝51へ着弾する。後述されるように、第1支持部45、第2支持部46及び第3支持部54によって支持される記録用紙17は、溝51へ垂れ込むことがないので、溝51へ着弾したインク滴が記録用紙17を汚すことがない。
続いて、本発明に係る縁無し記録方法における第2ステップに対応する動作が説明される。第2ステップにおいては、制御部64が、記録用紙17が初期位置P0に位置されたときの第3支持部54を被覆可能な位置にあり、且つ先端18が記録可能領域108にあるときに、第3支持部54を初期位置P0に位置せしめて、記録用紙17に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる。
図11(A)に示されるように、先端18側に縁無し記録が行われている記録用紙17の先端18が初期位置P0に位置されたときの第3支持部54を被覆可能な位置まで搬送されると、キャリッジ38が第2トリガー84の節94を降下させるまでスライドされる。この節94の降下によって、第3支持部54が初期位置P0へ移動される。これにより、記録用紙17は、その先端18側が第3支持部54に支持され、且つ記録可能領域108より搬送向き101の上流側において第1支持部45により支持される。第3支持部54に支持されることにより、第1支持部45から搬送向き101へ大きく突出し且つインク滴が着弾された先端18側が、溝51へ垂れ込むことがない。
そして、前述と同様にして、制御部64は、記録用紙17の先端18側に縁無し記録を行う。縁無し記録では、少なくとも記録用紙17の周囲の縁までインク滴が吐出されるが、仮に記録用紙17へ着弾しないインク滴があったとしても、記録用紙17に覆われている第3支持部54にインク滴が付着することはない。
続いて、本発明に係る縁無し記録方法における第3ステップに対応する動作が説明される。第3ステップにおいては、制御部64が、記録用紙17の後端19が記録可能領域108にあり、且つ記録用紙17が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過する前に、第3支持部54を退避位置P1に位置せしめて、記録用紙17の後端19側に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる。
図11(B)に示されるように、後端19側に縁無し記録が行われている記録用紙17の後端19が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過するまでは、記録用紙17は、その後端19側が第3支持部54に支持され、且つ記録可能領域108より搬送向き101の下流側において第2支持部46により支持される。第3支持部54に支持されることにより、第2支持部46から搬送向き101の上流側へ大きく突出し且つインク滴が着弾された後端19側が、溝51へ垂れ込むことがない。また、後端19側への縁無し記録において、仮に記録用紙17へ着弾しないインク滴があったとしても、記録用紙17に覆われている第3支持部54にインク滴が付着することはない。
さらに記録用紙17が搬送されて、記録可能領域108へ進入した記録用紙17の後端19が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過する前に、キャリッジ38が第1トリガー83のレバー90を回動させるまでスライドされる。このレバー90の回動によって、第3支持部54が退避位置P1へ移動される。
そして、記録用紙17の後端19側への縁無し記録が継続される。このとき、第3支持部54は退避位置P1に位置せしめられているので、初期位置P0に位置されたときの第3支持部54上を記録用紙17の後端19が通過しても、記録用紙17の後端19の位置に対応させながら記録ヘッド39の記録可能領域103のすべてが使用されて記録用紙17に縁無し記録が実施される。また、記録用紙17は、その腰(剛性)によって、第2支持部46から搬送向き101の上流側へ突出された後端19を、溝51内へ垂れ込ますことなく水平に維持する。さらに、記録用紙17の後端19に着弾しなかったインク滴は、溝51へ着弾するが、前述されたように、第2支持部46によって支持される記録用紙17が溝51へ垂れ込むことがないので、溝51へ着弾したインク滴が記録用紙17を汚すことがない。
なお、本実施形態では詳細な説明がなされないが、プリンタ部11は、記録用紙の周囲に記録されるべき画像が無い、いわゆる縁有り記録も行い得る。このような縁有り記録では、記録ヘッド39から記録用紙17に向けて吐出されるインク滴は全て記録用紙17上に着弾するので、第3支持部54を退避位置P1に位置せしめる必要はない。したがって、縁有り記録がなされる間は、第3支持部54を初期位置P0に保持されるので、記録用紙17の先端18又は後端19が第1支持部45と第2支持部46との間に垂れることがなく、記録ヘッド39と記録用紙17との間の距離(ヘッドギャップ)が一定に保たれる。
[本実施形態の作用効果]
前述されたように、本実施形態によれば、第3支持部54を退避位置P1に位置せしめて、(1)記録用紙17をプラテン42の記録可能領域108へ搬送させて記録用紙17の先端18側に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させ、(2)初期位置P0に位置された第3支持部54を被覆可能な位置まで記録用紙17を搬送させた後に、第3支持部54を初期位置P0に位置せしめて記録用紙17に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させ、(3)記録用紙17が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過する位置まで搬送させる前に、第3支持部54を退避位置P1に位置せしめて記録用紙17の後端19側に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させるので、縁無し記録において、第3支持部54にインク滴を付着させることなく、記録用紙17の先端18が記録可能領域108へ搬送されると或いは記録用紙17の後端19が記録可能領域108のいずれの位置にあっても、ノズル40を制限することなく直ちに縁無し記録を行い得る。これにより、画像記録の高速化が実現され得る。
また、第3支持部54が初期位置P0に位置せしめられている状態では、第3支持部54が記録用紙17に覆われているので、仮に記録ヘッド39の全ノズル40からインク滴が吐出されたとしても、第3支持部54にインク滴が付着することがない。さらに、第3支持部54に支持されることによって、記録用紙17が第1支持部45と第2支持部46との間に垂れ込むことが防止されるので、縁無し記録において記録用紙17がインクで汚されることがない。
さらに、記録可能領域108に対して搬送向き101の上流側にのみ第3支持部54を退避させればよいので、第3支持部54を搬送向き101へ移動させる範囲を短くすることができ、装置の小型化及びコストダウンが実現される。
また、退避位置P1を、記録可能領域108に対して搬送向き101の上流側とすることにより、第3支持部54が退避位置P1から初期位置P0へ移動される際に、第3支持部54が記録用紙17の外側から潜り込むような移動とならない。これにより、第3支持部54が移動される際に、記録用紙17の先端18や後端19に第3支持部54が当接して、記録用紙17を破損等することがない。
また、本実施形態では、第2ステップにおいて、記録用紙17が初期位置P0に位置されたときの第3支持部54を被覆可能な位置にあり、且つ先端18がプラテン42の記録可能領域108にあるときに、第3支持部54を初期位置P0に位置せしめ、第3ステップにおいて、記録用紙17の後端19がプラテン42の記録可能領域108にあり、且つ記録用紙17が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過する前に、第3支持部54を退避位置P1に位置せしめるので、記録用紙17が初期位置P0に位置されたときの第3支持部54を被覆可能な位置にあり、且つ先端18がプラテン42の記録可能領域108にあるときには、初期位置P0に位置された第3支持部54が記録用紙17を支持して、記録用紙17の先端18が溝51へ垂れ込むことが効果的に防止される。
また、記録用紙17の後端19がプラテン42の記録可能領域108へ進入すると、初期位置P0に位置された第3支持部54が記録用紙17を支持して、記録用紙54の後端19が溝51へ垂れ込むことが効果的に防止される。そして、記録用紙17の後端19が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過する前に、第3支持部54が退避位置P1に位置せしめられることによって、後端19の位置に対応して記録ヘッド39のノズル40からインク滴が吐出されても、第3支持部54にインク滴が付着することがない。
また、第1支持部45から初期位置P0までの搬送向き101に沿った距離106と、初期位置P0から第2支持部46までの搬送向き101に沿った距離107とが同等なので、記録用紙17が溝51へ最も垂れ込む易い第1支持部45と第2支持部46との中央付近において、第3支持部54によって記録用紙17を支持させることができる。
また、複数の第3支持部54が、搬送向き101と直交する往復動方向102に沿って列設されているので、キャリッジ38が往復動される方向に対して複数箇所で記録用紙17を支持できるので、記録ヘッド39と記録用紙17との間隔(ヘッドギャップ)が記録用紙17の幅方向に対して同等となるように記録用紙17が支持され、高精度な画像記録が実現される。
[変形例]
以下に、前述された実施形態の変形例が説明される。この変形例では、前述された実施形態の退避位置P1に代えて、プラテン42の記録可能領域108に対して搬送向き101の下流側を退避位置P2としたものである。したがって、前述されたプラテン42において、可動部47が搬送向き101に沿って移動される範囲が異なるが、前述された駆動機構48と同様の構成を用いて、例えば前述された実施形態における退避位置P1を変形例における初期位置P0に対応させ、前述された実施形態における初期位置P0を変形例における退避位置P2に対応させるように各部材の配置を変更することによって、この変形例を実現できるプラテン42が構成され得る。したがって、以下には、第3支持部54の動作についてのみが詳細に説明され、プラテン42の詳細な構成について説明が省略される。なお、各図において、前述された実施形態と同じ参照符号が付された部材は、初期位置P0及び退避位置P2が異なることを除いては、同様の部材を示すものである。
[縁無し記録方法]
以下、変形例に係る縁無し記録が説明される。なお、画像記録の開始指令に基づいて、記録用紙17がプラテン42上へ搬送されるまでは、前述された実施形態と同様の動作が行われる。
以下に、本変形例に係る縁無し記録方法における第1ステップに対応する動作が説明される。第1ステップにおいては、制御部64が、第3支持部54を退避位置P2に位置せしめて、記録用紙17をプラテン42における記録可能領域108へ搬送させて、記録用紙17の先端18側に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる。
図13(A)に示されるように、記録用紙17の先端がプラテン42上へ到達すると、LFモータ71が間欠駆動される。そして、図13(B)に示されるように、記録用紙17の先端18がプラテン42に到達する前に、所定のタイミングでCRモータ73が駆動されてキャリッジ38が第2トリガー84が動作されて、第3支持部54が退避位置P2へ移動される。
記録用紙17の先端18がプラテン42へ到達すると、記録用紙17の先端18側は、第1支持部45に支持される。制御部64は、記録用紙17の先端18がプラテン42の記録可能領域108へ進入すると、LFモータ71を間欠駆動させて、記録用紙17を間欠して搬送させて、記録用紙17の先端18側に縁無し記録を行う。このとき、第3支持部54は退避位置P2に位置せしめられているので、記録用紙17の先端18が記録可能領域108へ進入すれば、直ちに記録ヘッド39からインク滴を吐出させて画像記録を行うことができる。つまり、記録用紙17の先端18の位置に対応させながら記録ヘッド39の記録可能領域103のすべてが使用されて記録用紙17に縁無し記録が実施される。また、記録用紙17は、その腰(剛性)によって、第1支持部45から搬送向き101に突出された先端18側を、溝51内へ垂れ込ますことなく水平に維持する。さらに、記録用紙17の先端18に着弾しなかったインク滴は、溝51へ着弾する。後述されるように、第1支持部45、第2支持部46及び第3支持部54によって支持される記録用紙17は、溝51へ垂れ込むことがないので、溝51へ着弾したインク滴が記録用紙17を汚すことがない。
続いて、本変形例に係る縁無し記録方法における第2ステップに対応する動作が説明される。第2ステップにおいては、制御部64が、記録用紙17が初期位置P0に位置されたときの第3支持部54を被覆可能な位置にあり、且つ先端18が記録可能領域108にあるときに、第3支持部54を初期位置P0に位置せしめて、記録用紙17に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる。
図14(A)に示されるように、先端18側に縁無し記録が行われている記録用紙17の先端18が初期位置P0に位置されたときの第3支持部54を被覆可能な位置まで搬送されると、キャリッジ38が第1トリガー83を動作させて、第3支持部54が初期位置P0へ移動される。これにより、記録用紙17は、その先端18側が第3支持部54に支持され、且つ記録可能領域108より搬送向き101の上流側において第1支持部45により支持される。第3支持部54に支持されることにより、第1支持部45から搬送向き101へ大きく突出し且つインク滴が着弾された先端18側が、溝51へ垂れ込むことがない。
そして、前述と同様にして、制御部64は、記録用紙17の先端18側に縁無し記録を行う。縁無し記録では、少なくとも記録用紙17の周囲の縁までインク滴が吐出されるが、仮に記録用紙17へ着弾しないインク滴があったとしても、記録用紙17に覆われている第3支持部54にインク滴が付着することはない。
続いて、本変形例に係る縁無し記録方法における第3ステップに対応する動作が説明される。第3ステップにおいては、制御部64が、記録用紙17の後端19が記録可能領域108にあり、且つ記録用紙17が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過する前に、第3支持部54を退避位置P2に位置せしめて、記録用紙17の後端19側に記録ヘッド39からインク滴を選択的に吐出させる。
図14(B)に示されるように、後端19側に縁無し記録が行われている記録用紙17の後端19が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過するまでは、記録用紙17は、その後端19側が第3支持部54に支持され、且つ記録可能領域108より搬送向き101の下流側において第2支持部46により支持される。第3支持部54に支持されることにより、第2支持部46から搬送向き101の上流側へ大きく突出し且つインク滴が着弾された後端19側が、溝51へ垂れ込むことがない。また、後端19側への縁無し記録において、仮に記録用紙17へ着弾しないインク滴があったとしても、記録用紙17に覆われている第3支持部54にインク滴が付着することはない。
さらに記録用紙17が搬送されて、記録可能領域108へ進入した記録用紙17の後端19が初期位置P0に位置された第3支持部54上を通過する前に、キャリッジ38が第2トリガー84を動作させて、第3支持部54が退避位置P2へ移動される。
そして、記録用紙17の後端19側への縁無し記録が継続される。このとき、第3支持部54は退避位置P2に位置せしめられているので、記録用紙17の後端19が初期位置P0に位置されたときの第3支持部54上を通過しても、記録用紙17の後端19の位置に対応させながら記録ヘッド39の記録可能領域103のすべてが使用されて記録用紙17に縁無し記録が実施される。また、記録用紙17は、その腰(剛性)によって、第2支持部46及び第3支持部54から搬送向き101の上流側へ突出された後端19を、溝51内へ垂れ込ますことなく水平に維持する。さらに、記録用紙17の後端19に着弾しなかったインク滴は、溝51へ着弾するが、前述されたように、第2支持部46によって支持される記録用紙17が溝51へ垂れ込むことがないので、溝51へ着弾したインク滴が記録用紙17を汚すことがない。
前述されたような変形例に係る縁無し記録方法によって、前述された実施形態と同様に、縁無し記録において第3支持部54にインク滴を付着させることなく、記録用紙17の先端18が記録可能領域108へ搬送されると或いは記録用紙17の後端19が記録可能領域108のいずれの位置にあっても、ノズル40を制限することなく直ちに縁無し記録を行い得る。これにより、画像記録の高速化が実現され得る。
また、第3支持部54が初期位置P0に位置せしめられている状態では、第3支持部54が記録用紙17に覆われているので、仮に記録ヘッド39の全ノズル40からインク滴が吐出されたとしても、第3支持部54にインク滴が付着することがない。さらに、第3支持部54に支持されることによって、記録用紙17が第1支持部45と第2支持部46との間に垂れ込むことが防止されるので、縁無し記録において記録用紙17がインクで汚されることがない。
さらに、記録可能領域108に対して搬送向き101の下流側の退避位置P2にのみ第3支持部54を退避させればよいので、第3支持部54を搬送向き101へ移動させる範囲を短くすることができ、装置の小型化及びコストダウンが実現される。