JP4836061B2 - 塗料組成物、塗料組成物の調製方法、塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法および透明性保護膜を有する有機ガラス - Google Patents
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Description
本発明の塗料組成物は、水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、混合乾燥溶媒と、の混合物を含む。混合乾燥溶媒は、透明性高分子およびポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる。
本発明の塗料組成物の調製方法は、既に説明した塗料組成物を調製する方法である。原料高分子と混合乾燥溶媒とを一度に混合してもよいが、本発明の塗料組成物の調製方法は、第一調製工程と第二調製工程と、の二工程からなるのが望ましい。
本発明の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法は、既に説明した塗料組成物を用いて基材の表面に透明性保護膜を製造する方法である。本発明の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法は、調製工程と塗布工程と硬化工程と、からなる。調製工程については、[塗料組成物の調製方法]の欄で既に述べた。
本発明の透明性保護膜を有する有機ガラスは、透明性を有し樹脂からなる基板と、樹脂基板の表面に塗布された本発明の塗料組成物からなり上記の製造方法により得られる有機−無機ナノコンポジットである透明性保護膜と、からなる。
透明性高分子として、ポリ(メチルメタクリレート-co-ヒドロキシエチルメタクリレート)を原子移動ラジカル重合により合成した(以下「PMMA」と略記)。PMMAの各成分は、メチルメタクリレート:84.9mol%、ヒドロキシエチルメタクリレート:15.1mol%、数平均分子量は2.3×104 であった。なお、PMMAの各成分のモル分率は、 1H原子を用いた核磁気共鳴吸収法(NMR)により、また、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
上記の手順で得られた塗料を評価するために、塗料1〜14に生じた析出物の有無を目視により確認した。結果を表1に示す。塗料13および14は、PMMAに対して貧溶媒であるシクロヘキサンを添加しないため、析出物は生じなかった。一方、添加方法Aでシクロヘキサンを添加した塗料1〜4では、グラフト重合体が析出して沈殿した。なお、添加方法Aでシクロヘキサンを添加しても、シクロヘキサンが20重量%未満であれば、析出は生じなかった。また、添加方法Bでシクロヘキサンを添加した塗料5〜12では、析出物は生じなかった。シクロヘキサンを滴下して添加したことで、高分子ミセルが形成されたためである。
調製された塗料1〜14(塗料1〜4は析出物を取り除いて使用)を、ポリカーボネート押し出し成形板(三菱ガス化学製ユーピロンシート(NF−2000):150mm×100mm×1.0mm、以下「PC板」と記載)の表面にフローコート法により塗布した。塗布後、室温で24時間乾燥し、PC板上に透明性保護膜を有する有機ガラスである試料1〜14を得た。得られた透明性保護膜の膜厚を表2に示す。なお、表2において、「シリカ分率」の欄は、透明性保護膜に占めるシリカの体積(計算値)である。また、「乾燥・焼成方法」の欄は、室温で24時間乾燥したものをa、乾燥後さらに100℃で3時間焼成したものをb、とした。
上記の手順で得られた試料を評価するために、試料の透明性を測定した。各試料の透明性は、紫外可視分光光度計(日本分光製JascoV−530)を用い、200〜1100nmの測定波長範囲で行った。測定結果を表2に示す。なお、表2において、○はPC板と同等の透明性、△は僅かに不透明、×は不透明、をそれぞれ示す。試料1〜12では、濁りが無く、透明性保護膜に割れや剥がれも見られない良好な外観であった。すなわち、試料1〜12は、PCに対して貧溶媒であるシクロヘキサンが添加されている塗料1〜12を用いたため、PC板の表面の劣化が抑制された。一方、試料13および14では、白化による透明度の低下が確認された。
Claims (15)
- 水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、
該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも該透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、
の混合物を含むことを特徴とする塗料組成物。 - 前記原料高分子は、前記ポリシラザンが前記透明性高分子にグラフトしたグラフト重合体を含む請求項1記載の塗料組成物。
- 前記第二乾燥溶媒は、前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、
前記グラフト重合体は、前記透明性高分子からなるコアと、前記ポリシラザンからなるシェルと、をもつ高分子ミセルを形成する請求項2記載の塗料組成物。 - 前記高分子ミセルは、10〜5000nmの粒径をもつ請求項3記載の塗料組成物。
- 前記第二乾燥溶媒は、前記混合乾燥溶媒を100体積%としたときに10〜90体積%である請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
- 水酸基を有する透明性高分子とポリシラザンとからなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、を含む溶液を不活性雰囲気下で調製する第一調製工程と、
少なくとも前記透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒を前記溶液に添加して塗料組成物を調製する第二調製工程と、
からなることを特徴とする塗料組成物の調製方法。 - 前記第二乾燥溶媒は、前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、
前記第二調製工程は、前記溶液に該第二乾燥溶媒を滴下する工程である請求項6記載の塗料組成物の調製方法。 - 前記第二調製工程は、前記第二乾燥溶媒を0.01〜0.20ml/秒の速度で滴下する工程である請求項7記載の塗料組成物の調製方法。
- 水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも該透明性高分子に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、の混合物を含む塗料組成物を調製する調製工程と、
該塗料組成物を基材の表面に塗布する塗布工程と、
前記ポリシラザンをシリカに転化させて該塗料組成物を硬化させ、透明性保護膜とする硬化工程と、
からなることを特徴とする塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法。 - 前記基材は透明性を有する樹脂からなる樹脂製基材であり、前記第二乾燥溶媒は該樹脂に対して不活性な貧溶媒である請求項9記載の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法。
- 前記塗布工程は、ディップコート法またはフローコート法により前記塗料組成物を塗布する工程である請求項9または10に記載の塗料組成物を用いた透明性保護膜の製造方法。
- 透明性を有し樹脂からなる基板と、
該基板の表面に塗布された、水酸基を有する透明性高分子と、ポリシラザンと、からなる原料高分子と、該透明性高分子および該ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒である第一乾燥溶媒と、少なくとも前記基板の樹脂に対して不活性な貧溶媒である第二乾燥溶媒と、からなる混合乾燥溶媒と、の混合物を含む塗料組成物からなり、前記透明性高分子からなる有機部と、該透明性高分子の水酸基と反応し結合した前記ポリシラザンが転化したシリカからなる無機部と、をもつ有機−無機ナノコンポジットである透明性保護膜と、
を有することを特徴とする透明性保護膜を有する有機ガラス。 - 前記第二乾燥溶媒は、前記透明性高分子に対して不活性な貧溶媒であり前記ポリシラザンを溶解して分散させる良溶媒であって、
前記透明性保護膜は、中心部よりも外側部にシリカを多く含むシリカ粒子を含む請求項12記載の透明性保護膜を有する有機ガラス。 - 前記シリカ粒子は、10〜5000nmの粒径をもつ請求項13記載の透明性保護膜を有する有機ガラス。
- 前記樹脂基板は、ポリカーボネートである請求項12〜14のいずれかに記載の透明性保護膜を有する有機ガラス。
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