以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FR(Front engine Rear drive)車両である。なお、FR以外の車両であってもよい。
車両は、エンジン1000と、オートマチックトランスミッション2000と、トルクコンバータ2100と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成するプラネタリギヤユニット3000と、オートマチックトランスミッション2000の一部を構成する油圧回路4000と、プロペラシャフト5000と、デファレンシャルギヤ6000と、後輪7000と、ECU(Electronic Control Unit)8000とを含む。本実施の形態に係る制御装置は、たとえばECU8000のROM(Read Only Memory)8002に記録されたプログラムを実行することにより実現される。
エンジン1000は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。エンジン1000の駆動力により、オルタネータおよびエアコンディショナーなどの補機1004が駆動される。なお、エンジン1000の代わりにもしくは加えて、動力源にモータを用いるようにしてもよい。
オートマチックトランスミッション2000は、トルクコンバータ2100を介してエンジン1000に連結される。オートマチックトランスミッション2000は、所望のギヤ段を形成することにより、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。
オートマチックトランスミッション2000から出力された駆動力は、プロペラシャフト5000およびデファレンシャルギヤ6000を介して、左右の後輪7000に伝達される。
ECU8000には、シフトレバー8004のポジションスイッチ8006と、アクセルペダル8008のアクセル開度センサ8010と、ブレーキペダル8012の踏力センサ8014と、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度センサ8018と、エンジン回転数センサ8020と、入力軸回転数センサ8022と、出力軸回転数センサ8024と、油温センサ8026と、水温センサ8028とがハーネスなどを介して接続されている。
シフトレバー8004の位置(ポジション)は、ポジションスイッチ8006により検出され、検出結果を表す信号がECU8000に送信される。シフトレバー8004の位置に対応して、オートマチックトランスミッション2000のギヤ段が自動で形成される。また、運転者の操作に応じて、運転者が任意のギヤ段を選択できるマニュアルシフトモードを選択できるように構成してもよい。
アクセル開度センサ8010は、アクセルペダル8008の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。踏力センサ8014は、ブレーキペダル8012の踏力(運転者がブレーキペダル8012を踏む力)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
スロットル開度センサ8018は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ8016の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。電子スロットルバルブ8016により、エンジン1000に吸入される空気量(エンジン1000の出力)が調整される。
なお、電子スロットルバルブ8016の代わりにもしくは加えて、吸気バルブ(図示せず)や排気バルブ(図示せず)のリフト量や開閉する位相を変更することにより、エンジン1000に吸入される空気量を調整するようにしてもよい。
エンジン回転数センサ8020は、エンジン1000の出力軸(クランクシャフト)の回転数を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。入力軸回転数センサ8022は、オートマチックトランスミッション2000の入力軸回転数NI(トルクコンバータ2100のタービン回転数NT)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。出力軸回転数センサ8024は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOを検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
油温センサ8026は、オートマチックトランスミッション2000の作動や潤滑に用いられるオイル(ATF:Automatic Transmission Fluid)の温度(油温)を検出し、検出結果を表す信号をECU8000に送信する。
水温センサ8028は、エンジン1000の冷却水の温度(水温)を検出し、検出結果を表わす信号をECU8000に送信する。
ECU8000は、ポジションスイッチ8006、アクセル開度センサ8010、踏力センサ8014、スロットル開度センサ8018、エンジン回転数センサ8020、入力軸回転数センサ8022、出力軸回転数センサ8024、油温センサ8026、水温センサ8028などから送られてきた信号、ROM8002に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
本実施の形態において、ECU8000は、シフトレバー8004がD(ドライブ)ポジションであることにより、オートマチックトランスミッション2000のシフトレンジにD(ドライブ)レンジが選択された場合、前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されるように、オートマチックトランスミッション2000を制御する。前進1速〜8速ギヤ段のうちのいずれかのギヤ段が形成されることにより、オートマチックトランスミッション2000は後輪7000に駆動力を伝達し得る。なおDレンジにおいて、8速ギヤ段よりも高速のギヤ段を形成可能であるようにしてもよい。形成するギヤ段は、車速とアクセル開度とをパラメータとして実験等により予め作成された変速線図に基づいて決定される。
図1に示すように、ECU8000は、エンジン1000を制御するエンジンECU8100と、オートマチックトランスミッション2000を制御するECT(Electronic Controlled Transmission)_ECU8200とを含む。
エンジンECU8100とECT_ECU8200とは、互いに信号を送受信可能であるように構成される。本実施の形態においては、エンジンECU8100からECT_ECU8200に、アクセル開度を表わす信号が送信される。ECT_ECU8200からエンジンECU8100には、エンジン1000が出力すべきトルクとして定められるトルク要求量を表わす信号が送信される。
図2を参照して、プラネタリギヤユニット3000について説明する。プラネタリギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸2102を有するトルクコンバータ2100に接続されている。
プラネタリギヤユニット3000は、フロントプラネタリ3100と、リアプラネタリ3200と、C1クラッチ3301と、C2クラッチ3302と、C3クラッチ3303と、C4クラッチ3304と、B1ブレーキ3311と、B2ブレーキ3312と、ワンウェイクラッチ(F)3320とを含む。
フロントプラネタリ3100は、ダブルピニオン型の遊星歯車機構である。フロントプラネタリ3100は、第1サンギヤ(S1)3102と、1対の第1ピニオンギヤ(P1)3104と、キャリア(CA)3106と、リングギヤ(R)3108とを含む。
第1ピニオンギヤ(P1)3104は、第1サンギヤ(S1)3102および第1リングギヤ(R)3108と噛合っている。第1キャリア(CA)3106は、第1ピニオンギヤ(P1)3104が公転および自転可能であるように支持している。
第1サンギヤ(S1)3102は、回転不能であるようにギヤケース3400に固定される。第1キャリア(CA)3106は、プラネタリギヤユニット3000の入力軸3002に連結される。
リアプラネタリ3200は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。リアプラネタリ3200は、第2サンギヤ(S2)3202と、第2ピニオンギヤ(P2)3204と、リアキャリア(RCA)3206と、リアリングギヤ(RR)3208と、第3サンギヤ(S3)3210と、第3ピニオンギヤ(P3)3212とを含む。
第2ピニオンギヤ(P2)3204は、第2サンギヤ(S2)3202、リアリングギヤ(RR)3208および第3ピニオンギヤ(P3)3212と噛合っている。第3ピニオンギヤ(P3)3212は、第2ピニオンギヤ(P2)3204に加えて、第3サンギヤ(S3)3210と噛合っている。
リアキャリア(RCA)3206は、第2ピニオンギヤ(P2)3204および第3ピニオンギヤ(P3)3212が公転および自転可能であるように支持している。リアキャリア(RCA)3206は、ワンウェイクラッチ(F)3320に連結される。リアキャリア(RCA)3206は、1速ギヤ段の駆動時(エンジン1000から出力された駆動力を用いた走行時)に回転不能となる。リアリングギヤ(RR)3208は、プラネタリギヤユニット3000の出力軸3004に連結される。
ワンウェイクラッチ(F)3320は、B2ブレーキ3312と並列に設けられる。すなわち、ワンウェイクラッチ(F)3320のアウターレースはギヤケース3400に固定され、インナーレースはリアキャリア(RCA)3206に連結される。
図3に、各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。この作動表に示された組み合わせで各ブレーキおよび各クラッチを作動させることにより、前進1速〜8速のギヤ段と、後進1速および2速のギヤ段が形成される。
図4を参照して、油圧回路4000の要部について説明する。なお、油圧回路4000は、以下に説明するものに限られない。
油圧回路4000は、オイルポンプ4004と、プライマリレギュレータバルブ4006と、マニュアルバルブ4100と、ソレノイドモジュレータバルブ4200と、SL1リニアソレノイド(以下、SL(1)と記載する)4210と、SL2リニアソレノイド(以下、SL(2)と記載する)4220と、SL3リニアソレノイド(以下、SL(3)と記載する)4230と、SL4リニアソレノイド(以下、SL(4)と記載する)4240と、SL5リニアソレノイド(以下、SL(5)と記載する)4250と、SLTリニアソレノイド(以下、SLTと記載する)4300と、B2コントロールバルブ4500とを含む。
オイルポンプ4004は、エンジン1000のクランクシャフトに連結されている。クランクシャフトが回転することにより、オイルポンプ4004が駆動し、油圧を発生する。オイルポンプ4004で発生した油圧は、プライマリレギュレータバルブ4006により調圧され、ライン圧が生成される。
プライマリレギュレータバルブ4006は、SLT4300により調圧されたスロットル圧をパイロット圧として作動する。ライン圧は、ライン圧油路4010を介してマニュアルバルブ4100に供給される。
マニュアルバルブ4100は、ドレンポート4105を含む。ドレンポート4105から、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の油圧が排出される。マニュアルバルブ4100のスプールがDポジションにある場合、ライン圧油路4010とDレンジ圧油路4102とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102に油圧が供給される。このとき、Rレンジ圧油路4104とドレンポート4105とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがRポジションにある場合、ライン圧油路4010とRレンジ圧油路4104とが連通させられ、Rレンジ圧油路4104に油圧が供給される。このとき、Dレンジ圧油路4102とドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
マニュアルバルブ4100のスプールがNポジションにある場合、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104の両方と、ドレンポート4105とが連通させられ、Dレンジ圧油路4102のDレンジ圧およびRレンジ圧油路4104のRレンジ圧がドレンポート4105から排出される。
Dレンジ圧油路4102に供給された油圧は、最終的には、C1クラッチ3301、C2クラッチ3302およびC3クラッチ3303に供給される。Rレンジ圧油路4104に供給された油圧は、最終的には、B2ブレーキ3312に供給される。
ソレノイドモジュレータバルブ4200は、ライン圧を元圧とし、SLT4300に供給する油圧(ソレノイドモジュレータ圧)を一定の圧力に調圧する。
SL(1)4210は、C1クラッチ3301に供給される油圧を調圧する。SL(2)4220は、C2クラッチ3302に供給される油圧を調圧する。SL(3)4230は、C3クラッチ3303に供給される油圧を調圧する。SL(4)4240は、C4クラッチ3304に供給される油圧を調圧する。SL(5)4250は、B1ブレーキ3311に供給される油圧を調圧する。
SLT4300は、アクセル開度センサ8010により検出されたアクセル開度に基づいたECU8000からの制御信号に応じて、ソレノイドモジュレータ圧を調圧し、スロットル圧を生成する。スロットル圧は、SLT油路4302を介して、プライマリレギュレータバルブ4006に供給される。スロットル圧は、プライマリレギュレータバルブ4006のパイロット圧として利用される。
SL(1)4210、SL(2)4220、SL(3)4230、SL(4)4240、SL(5)4250およびSLT4300は、ECU8000から送信される制御信号により制御される。
B2コントロールバルブ4500は、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104のいずれか一方からの油圧を選択的に、B2ブレーキ3312に供給する。B2コントロールバルブ4500に、Dレンジ圧油路4102およびRレンジ圧油路4104が接続されている。B2コントロールバルブ4500は、SLUソレノイドバルブ(図示せず)から供給された油圧とスプリングの付勢力とにより制御される。
SLUソレノイドバルブがオンの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において左側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、SLUソレノイドバルブから供給された油圧をパイロット圧として、Dレンジ圧を調圧した油圧が供給される。
SLUソレノイドバルブがオフの場合、B2コントロールバルブ4500は、図4において右側の状態となる。この場合、B2ブレーキ3312には、Rレンジ圧が供給される。
図5を参照して、ECU8000についてさらに説明する。なお、以下に説明するECU8000の機能は、ハードウエアにより実現するようにしてもよく、ソフトウエアにより実現するようにしてもよい。
ECU8000のエンジンECU8100は、トルク制御部8110を含む。トルク制御部8110は、ECT_ECU8200から出力されるトルク要求量を受け、このトルク要求量に対応したトルクがエンジン1000から出力されるように、電子スロットルバルブ8016のスロットル開度およびイグニッションプラグによる点火時期などを制御する。
ECU8000のECT_ECU8200は、トルク要求部8210と、車速検出部8220と、変速制御部8230と、状態判断部8240と、油温検出部8250、係合部8260と、解放部8270とを含む。
トルク要求部8210は、アクセル開度などに基づいて、エンジン1000に要求するトルクであるトルク要求量を設定する。
車速検出部8220は、オートマチックトランスミッション2000の出力軸回転数NOから車速を算出(検出)する。
変速制御部8230は、図6に示すように、車速およびアクセル開度をパラメータとした変速線図にしたがって、アップシフトまたはダウンシフトを行なう。変速線図においては、変速の種類(変速前のギヤ段と変速後のギヤ段の組合わせ)毎にアップシフト線およびダウンシフト線が設定される。変速が行なわれると、通常時は、前述した図3の作動表に記載の組合わせで摩擦係合要素が係合される。
状態判断部8240は、前進1速ギヤ段での駆動時、すなわちC1クラッチ3301が係合状態になるように、B2ブレーキ3312が解放状態になるように制御された状態におけるギヤ比が、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素により変化される状態であるか否かを判断する。
言い換えると、B2ブレーキ3312およびワンウェイクラッチ(F)3320を除く、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素がトルクを伝達する状態であるか否かが判断される。
状態判断部8240は、C1クラッチ3301のみが係合状態になるように制御され、B2ブレーキ3312が解放状態になるように制御された状態において入力軸回転数NI(タービン回転数NT)と出力軸回転数NOとが同期していない場合、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される状態であると判断する。
たとえば、出力軸回転数NOに1速ギヤ段のギヤ比を乗じた値と入力軸回転数NIとの差がしきい値よりも大きい場合、入力軸回転数NIと出力軸回転数NOとが同期していないと判断される。なお、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される状態であるか否かを判断する方法はこれに限らない。
油温検出部8250は、油温センサ8026から送信された信号に基づいて油温を検出する。
係合部8260は、前進1速ギヤ段での駆動時において、油温がしきい値THO(0)以下であり、かつC1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される状態であると判断された場合、B2ブレーキ3312が係合状態になるように制御する。
解放部8270は、油温がしきい値THO(0)以下であり、かつC1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される状態であると判断されて、B2ブレーキ3312が係合状態にされた状態において、アクセル開度がしきい値PA(0)以上になった場合または車速がしきい値V(0)以上になった場合、B2ブレーキ3312が解放状態になるように制御する。
図7を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、予め定められた周期で繰返し実行される。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU8000は、前進1速ギヤ段を形成した状態での駆動時であるか否かを判断する。前進1速ギヤ段を形成した状態での駆動時であると(S100にてYES)、処理はS110に移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
S110にて、ECU8000は、油温センサ8026から送信された信号に基づいて油温を検出する。S112にて、ECU8000は、油温がしきい値TH0(0)以下であるか否かを判断する。油温がしきい値TH0(0)以下であると(S112にてYES)、処理はS120に移される。もしそうでないと(S112にてNO)、処理はS130に移される。
S120にて、ECU8000は、アクセル開度センサ8010から送信された信号に基づいてアクセル開度を検出する。S122にて、ECU8000は、アクセル開度がしきい値PA(0)以上であるか否かを判断する。アクセル開度がしきい値PA(0)以上であると(S122にてYES)、処理はS130に移される。もしそうでないと(S122にてNO)、処理はS140に移される。
S130にて、ECU8000は、B2ブレーキ3312が係合状態であるか否かを判断する。B2ブレーキ3312が係合状態であると(S130にてYES)、処理はS180に移される。もしそうでないと(S130にてNO)、この処理は終了する。
S140にて、ECU8000は、B2ブレーキ3312が解放状態であるか否かを判断する。B2ブレーキ3312が解放状態であると(S140にてYES)、処理はS150に移される。もしそうでないと(S140にてNO)、処理はS170に移される。
S150にて、ECU8000は、入力軸回転数センサ8022から送信された信号に基づいて入力軸回転数NIを検出するとともに、出力軸回転数センサ8024から送信された信号に基づいて出力軸回転数NOを検出する。
S152にて、ECU8000は、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される状態であるか否かを判断する。C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される状態であると(S152にてYES)、処理はS160に移される。もしそうでないと(S152にてNO)、この処理は終了する。S160にて、ECU8000は、B2ブレーキ3312を係合状態にする。
S170にて、ECU8000は、出力軸回転数センサ8024から送信された信号に基づいて車速を検出する。S172にて、ECU8000は、車速がしきい値V(0)以上であるか否かを判断する。車速がしきい値V(0)以上であると(S172にてYES)、処理はS180に移される。もしそうでないと(S172にてNO)、この処理は終了する。S180にて、ECU8000は、B2ブレーキ3312を解放状態にする。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU8000の動作について説明する。
前進1速ギヤ段を形成した状態での駆動時であると(S100にてYES)、油温センサ8026から送信された信号に基づいて油温が検出される(S110)。油温がしきい値TH0(0)以下であると(S112にてYES)、アクセル開度センサ8010から送信された信号に基づいてアクセル開度が検出される(S120)。アクセル開度がしきい値PA(0)より小さいと(S122にてNO)、B2ブレーキ3312が解放状態であるか否かが判断される(S140)。
B2ブレーキ3312が解放状態であると(S140にてYES)、入力軸回転数センサ8022から送信された信号に基づいて入力軸回転数NIを検出するとともに、出力軸回転数センサ8024から送信された信号に基づいて出力軸回転数NOが検出される(S150)。
すなわち、C1クラッチ3301のみが係合状態になるように、かつB2ブレーキ3312が解放状態になるように制御されて、前進1速ギヤ段が形成されていると、入力軸回転数NIおよび出力軸回転数NOが検出される(S150)。
低油温時では、ATFの粘度が高いため、C1クラッチ3301のみが係合状態になるように、かつB2ブレーキ3312が解放状態になるように制御されている場合であっても、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素がトルクを伝達し得る。たとえば、前進1速ギヤ段の形成時には解放状態になるように制御されるB1ブレーキ3311がトルクを伝達し得る。
したがって、アクセル開度が低い状態、すなわちエンジン1000からオートマチックトランスミッション2000に入力されるトルクが低い状態では、プラネタリギヤユニット3000のリアキャリア(RCA)3206などの回転要素が、B1ブレーキ3311が伝達したトルクの影響により回転せしめられる。よって、ワンウェイクラッチ(F)3320が係合し得ない。
そのため、オートマチックトランスミッション2000のギヤ比が、前進1速ギヤ段よりも低いギヤ比に変化し得る。このような場合、車両の駆動力が低くなる。したがって、加速性が悪化する。
そこで、本実施の形態においては、入力軸回転数NIと出力軸回転数NOとが同期していないことから、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される状態であると(S152にてYES)、ワンウェイクラッチ(F)3320に並列に設けられたB2ブレーキ3312が係合状態にされる(S160)。
これにより、前進1速ギヤ段を確実に形成することができる。そのため、ギヤ比が低下して駆動力が低くなることを抑制することができる。その結果、加速性が悪化することを抑制することができる。
その後、出力軸回転数センサ8024から送信された信号に基づいて車速が検出される(S172)。車速がしきい値V(0)より低いと(S172にてNO)、B2ブレーキ3312が係合状態に維持される。
B2ブレーキ3312を係合して前進1速ギヤ段を形成した状態での駆動時において(S100にてYES)、油温がしきい値TH0(0)より高いと(S112にてNO)、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される可能性は低いと考えられる。この場合、B2ブレーキ3312が係合状態であるため(S130にてYES)、B2ブレーキ3312が解放状態にされる(S180)。
同様に、アクセル開度がしきい値PA(0)以上であると(S122にてYES)、オートマチックトランスミッション2000の入力トルクが高いため、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素が伝達するトルクの影響が相対的に小さくなる。そのため、C1クラッチ3301以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される可能性は低いと考えられる。この場合、B2ブレーキ3312が係合状態であるため(S130にてYES)、B2ブレーキ3312が解放状態にされる(S180)。
ところで、B2ブレーキ3312を係合して前進1速ギヤ段を形成した状態での駆動時において(S100にてYES)、車速が上昇すると、前進1速ギヤ段から前進2速ギヤ段へのアップシフトが行なわれる。
このとき、B2ブレーキ3312が係合状態であると、オートマチックトランスミッション2000の内部において、前進1速ギヤ段を形成するために係合される摩擦係合要素と前進2速ギヤ段を形成するために係合される摩擦係合要素とが同時に係合するインターロックが発生する。
インターロックを抑制するため、油温がしきい値TH0(0)より低く(S112にてYES)、アクセル開度がしきい値PA(0)より小さく(S122にてNO)、かつB2ブレーキ3312が係合状態であると(S140にてNO)、車速が検出される(S172)。車速がしきい値V(0)以上であると(S172にてYES)、B2ブレーキ3312が解放状態にされる(S180)。これにより、インターロックを抑制することができる。
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるECUによれば、C1クラッチのみが係合状態になるように、かつB2ブレーキが解放状態になるように制御されて、前進1速ギヤ段が形成されている状態において、油温がしきい値TH0(0)以下であり、かつ、C1クラッチ以外の摩擦係合要素によりギヤ比が変化される状態であると、B2ブレーキが係合状態にされる。これにより、前進1速ギヤ段を確実に形成することができる。そのため、前進1速ギヤ段のギヤ比よりもギヤ比が低下して駆動力が低くなることを抑制することができる。その結果、加速性が悪化することを抑制することができる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1000 エンジン、2000 オートマチックトランスミッション、2100 トルクコンバータ、3000 プラネタリギヤユニット、3301 C1クラッチ、3302 C2クラッチ、3303 C3クラッチ、3304 C4クラッチ、3311 B1ブレーキ、3312 B2ブレーキ、4000 油圧回路、8000 ECU、8002 ROM、8004 シフトレバー、8006 ポジションスイッチ、8008 アクセルペダル、8010 アクセル開度センサ、8012 ブレーキペダル、8014 踏力センサ、8016 電子スロットルバルブ、8018 スロットル開度センサ、8020 エンジン回転数センサ、8022 入力軸回転数センサ、8024 出力軸回転数センサ、8026 油温センサ、8028 水温センサ、8100 エンジンECU、8110 トルク制御部、8200 ECT_ECU、8210 トルク要求部、8220 車速検出部、8230 変速制御部、8240 状態判断部、8250 油温検出部、8260 ブレーキ係合部、8270 ブレーキ解放部。