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JP4829086B2 - シリカゾルおよびこれを含む塗料組成物 - Google Patents

シリカゾルおよびこれを含む塗料組成物 Download PDF

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JP4829086B2 JP2006328599A JP2006328599A JP4829086B2 JP 4829086 B2 JP4829086 B2 JP 4829086B2 JP 2006328599 A JP2006328599 A JP 2006328599A JP 2006328599 A JP2006328599 A JP 2006328599A JP 4829086 B2 JP4829086 B2 JP 4829086B2
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Description

本発明は新規なシリカゾルとこのシリカゾルを含む塗料組成物に関する。更に詳しくは、バインダー成分として有機系バインダーまたは無機系バインダーを含有した塗料(塗布液)の成分として有用なシリカゾル、およびそのシリカゾルと各種バインダーを含む塗料組成物に関する。
従来、シリカゾルは塗料(塗布液)中に例えば、展着性改善や親水性の調整を目的として配合されることが多いが、有機系バインダーまたは無機系バインダーを含有した塗料(塗布液)中では、主として電気的中和によりシリカコロイドは短時間で凝集する場合があり、実用上の問題となっていた。
特開平5−192562号公報(特許文献1)には、平均粒子径が1000nm以下の無機化合物コロイド粒子を母粒子とし、該母粒子の表面に合成樹脂からなる子粒子が付着されるか、または、該母粒子の表面が合成樹脂膜で被覆された有機・無機複合コロイド粒子を含有するコロイド溶液に関する技術が開示されている。また、このコロイド溶液は長期間安定であり、合成樹脂への添加剤(フィラー)として使用される旨が記載されている。
特開平5−269365号公報(特許文献2)には、次の一般式(1)で表されるシランカップリング剤で修飾された無機酸化物コロイド粒子に関する技術が開示されている。
2 m3 n(OR1lSiX ・・・ 一般式(1)
一般式(1)中、m、nは0〜2の整数であり、lは1〜3の整数であって、l+m+n=3を満足する値。R1 、R2 、R3 は水素または炭素数1〜4のアルキル基。Xは、同一の単量体の重合または異なる単量体の共重合によって得られる、数平均分子量が1,000〜200,000の鎖状高分子化合物を主構成要素とする原子団である。
この無機酸化物コロイド粒子は長い分子鎖を有し、合成樹脂への添加剤(フィラー)として使用した場合、合成樹脂中で優れたアンカー効果を発揮し、合成樹脂の機能性を最大限に向上させることができ、塗料用フィラーとして好適である旨が記載されている。
特開平5−287213号公報(特許文献3)には、有機溶媒中に単分散した負電荷または正電荷を有する無機酸化物コロイド粒子の表面に該コロイド粒子と異なる電荷を有するラジカル重合開始剤を導入し、次いで重合性モノマーを添加し重合させて得られる鎖状高分子化合物で修飾された無機酸化物コロイド粒子に関する技術が開示されている。この無機酸化物コロイド粒子については、長い分子鎖を有しているから、合成樹脂への添加剤(フィラー)として使用した場合、合成樹脂中で優れたアンカー効果を発揮し、合成樹脂の機能性を最大限に向上させることができ、塗料用フィラーとしても好適である旨が記載されている。
特開平6−335629号公報(特許文献4)には、電気伝導度が560μS/cm以下の微粒子分散液であって、該分散液が2つの異なる粒径分布を持つ微粒子群を含み、それぞれの粒径分布のピーク値をDA 、DB としたとき、不等式(0<│DA −DB │≦200nm)を満足することを特徴とする微粒子分散液に関する技術について開示がある。また、この微粒子分散液が塗料添加剤として好適である旨の記載がある。
特開平10−194721号公報(特許文献5)には、珪素に直接結合した有機基を含むシリカ微粒子が水中に分散していることを特徴とする有機基含有シリカ微粒子分散ゾルに関する技術について開示がある。この有機基含有シリカ微粒子分散ゾルの製造方法は、酸性珪酸液および一般式:Rn R′m SiX4-(n+m)〔但し、R,R′:炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基、X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n、m:0〜3、n+m=1〜3〕で表される有機珪素化合物の加水分解物をpH10以上のアルカリ水溶液中に同時に添加してコロイド状微粒子を生成させてなるものである。この有機基含有シリカ微粒子分散ゾルは、シリカ微粒子中に有機基を含んでいるため、有機物や樹脂中にフィラーとして分散した際に、塗料中での凝集が起こりにくく、さらに、磁気テープ用フィルムに配合する際にも、凝集や脱落が起こりにくい旨が記載されている。
特開2003−12320号公報(特許文献6)には、平均粒子径が2〜100nmの範囲にあり、多価アルコールで表面が修飾されたシリカ系無機化合物微粒子が有機溶媒に分散してなるオルガノゾルであって、該シリカ系無機化合物微粒子のシリカ源の一部または全部がアルカリ金属珪酸塩に由来するものであることを特徴とする無機化合物オルガノゾルに関する技術が開示されている。この無機化合物オルガノゾルについては、塗料、保護膜、ハードコート剤などのフィラーとして塗料等に配合した場合、塗料への分散性がよく、得られる塗膜は緻密であるとともに基材との密着性に優れ、また粒子の凝集に基づくクラックの発生や透明性の低下などがほとんど起こることがない旨が記載されている。
他方、シリカゾルの凝集を抑制し、安定化させる技術としては、例えば、特開平1−278412号(特許文献7)に、アルキルシリケ−トを塩基性触媒により加水分解し、シリカ粒子を合成、該シリカ分散液に濃縮、安定化などの処理を加えるシリカゾルの製造において、該シリカゾルを塩基性から酸性にする際、超音波を照射しながら酸を添加することを特徴とするシリカゾルの安定化方法について開示されている。具体的には、シリカゾル中の負に荷電したシリカ粒子の安定化が極めて悪いpH=6〜7の領域において、該ゾルに超音波を照射し、超音波のキャビテ−シヨンによりシリカ粒子の凝集を防止し、安定化をはかり、塩基性から酸性へと円滑にシリカゾルのpH値を調整することができる旨の記載がある。
特開平9−208213号公報(特許文献8)には、酸性水性シリカゾルの水性媒体をプロパノールで大気圧下蒸留置換することによるシリカプロパノールゾルの製造方法において、上記置換中のゾルの媒体が15〜0.5質量%の水分を含有する間中ずっとゾル中5〜50質量%のSiO2濃度とゾルの媒体中1〜85質量%のメタノール濃度を維持させるために、当該媒体の置換中又は前の酸性水性シリカゾルにメタノールを添加すること、そしてこの置換を10〜50質量%のSiO2濃度を含有し、かつその残余として媒体中90質量%以上のプロパノールと上記濃度SiO2分に対し 7.5質量%以下の水分とからなる媒体とを含有するシリカプロパノールゾルが得られるまで行うことについて開示されている。
特開2005―255457号公報(特許文献9)には、熱水中に酸を添加した後、活性ケイ酸水溶液を少量ずつ添加してシリカ微粒子分散液を生成させ、分散液が沈殿を生じる前もしくはゲル化する前にアルカリを添加してシリカ微粒子を安定化し、該安定化状態を保ちながら活性ケイ酸水溶液を添加してシリカ微粒子を成長させることを特徴とするシリカ微粒子分散液の製造方法に関する技術が開示されている。また、シリカ微粒子分散液を調製する際に、シード液中のシード粒子同士の凝集を防止するために、必要量のアルカリ添加を行うこと、更に、使用するアルカリの例として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属元素の水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩、アンモニア、第4級アンモニウムハイドロオキサイド、アミン類などの窒素化合物などを挙げることができる旨の記載がある。
特開平5−192562号公報 特開平5−269365号公報 特開平5−287213号公報 特開平6−335629号公報 特開平10−194721号公報 特開2003−12320号公報 特開平1−278412号 特開平9−208213号公報 特開2005―255457号公報
本発明は、特に塗料組成物の成分として好適なシリカゾルを提供するものであり、有機系バインダーを含む塗料組成物においても、無機系バインダーを含む塗料組成物においても、凝集が生じ難く、増粘し難く、良好な分散性を維持することが可能なシリカゾルおよびそれを含む塗料組成物を提供することを目的とする。
本発明は、短径/長径比が0.05〜0.5の範囲にあり、BET法により測定される比表面積から換算される平均粒子径が4〜12nmの範囲にあるシリカ微粒子が液状媒体に分散してなるシリカゾルであって、該シリカ微粒子100重量部に対して0.00001〜0.001重量部のカルボン酸塩を含有することを特徴とするものである。
前記カルボン酸塩は、一塩基カルボン酸塩または多塩基カルボン酸塩であることが好ましく、酢酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸から選ばれる1種以上のカルボン酸の塩であることが好ましい。
前記シリカゾルのpHは8〜10の範囲にあることが好ましい。
本発明の塗料組成物は、バインダーと前記シリカゾルを含有することを特徴とする。
前記バインダーは有機系バインダーまたは無機系バインダーから選ばれるものである。
本発明のシリカゾルは特に塗料組成物の成分として配合されて、その優れた効果を発揮する。即ち、塗料組成物は長期保存でき、被膜の歩留まりも向上する。
また、シリカゾル中のシリカ微粒子を非球状とすることにより、被膜形成時の毛細管現象に基づく粒子間引力による凝集が抑えられ、被膜が緻密化して透明となる効果が得られる。
〔シリカゾル〕
シリカ微粒子およびシリカゾル
本発明のシリカゾルは、短径/長径比が0.05〜0.5の範囲にあり、BET法により測定される比表面積から換算される平均粒子径が4〜12nmの範囲にあるシリカ微粒子が液状媒体に分散してなるシリカゾルであって、該シリカ微粒子100重量部に対して0.00001〜0.001重量部のカルボン酸塩を含有することを特徴とするシリカゾルである。
本発明においてシリカ微粒子の短径/長径比の値が0.05〜0.5の範囲にあることが求められ、このようなシリカ微粒子はその形状が非球状のものとなる。非球状のシリカ微粒子は、塗料組成物のフィラー成分として、基材に適用された際に、均一なネットワーク形成効果を発揮するため有用である。
シリカ微粒子の短径/長径比の値が0.05未満の場合は、シリカゾルの粘度が高くなる傾向が強まる。このため、高濃度のシリカゾルを得ることが容易ではなくなり、実用上問題がある。他方、短径/長径比が0.5を超える場合は、上記の異方性に基づく特性が発現し難くなる。本発明のシリカゾルにおけるシリカ微粒子の短径/長径比の範囲については、好適には、0.08〜0.45の範囲が推奨される。
非球状のシリカ微粒子が液状媒体に分散してなるシリカゾルの製造方法については、格別の限定はないが、好適な製造方法を列挙すれば次の通りである。
(1)水溶性珪酸塩の水溶液に対して珪酸液を添加して、SiO2/M2O[Mはアルカリ金属、第3級アンモニウム、第4級アンモニウムまたはグアニジンから選ばれる](モル比)が30〜65の範囲の混合液を調製し、該混合液に60〜200℃の温度で、再度珪酸液を断続的または連続的に添加することによりシリカゾルを調製し、該シリカゾルをpH7〜9の範囲にて、60〜98℃で加熱する方法。
(2)アルカリ滴定法により測定される平均粒子径が3〜25nmの範囲にあるシリカ微粒子が分散した、pHが2〜8の範囲にあるシリカゾルに、該シリカゾルのシリカ固形分100重量部に対して、ポリ金属塩化合物を0.01〜70重量部添加し、50〜160℃で加熱する方法。
(3)珪酸液(a)にアルカリ性水溶液を添加してpHを10.0〜12.0に調整し、60〜150℃の温度条件下、珪酸液(b)と2価以上の水溶性金属塩との混合物を連続的にまたは断続的に添加する方法。
(4)平均粒子径が3〜20nmの範囲にあるシリカゾルを脱陽イオン処理してpH2〜5の範囲に調整し、次いで脱陰イオン処理した後、アルカリ性水溶液を添加してpH7〜9に調整した後、60〜250℃で加熱する方法。
なお、前記短径/長径比については、透過型電子顕微鏡により撮影された写真をもとに、後記するように所定数のシリカ微粒子について、短径/長径の長さを測定し、それから短径/長径比の値を算出し、更にその平均値をとることにより求める。
本発明のシリカゾルにおけるシリカ微粒子の粒子径については、透明被膜を得るためにその平均粒子径が4〜12nmの範囲にあることが求められる。シリカゾル中のシリカ重量を一定とした場合、粒子径が小さくなれば粒子数が増加して、凝集を起こし易くなる。
平均粒子径が4nm未満の場合には、粒子の凝集を防止するためにシリカ重量を増やすことができず、希薄なシリカゾルしか得られないので塗料の好適な粘度が得られ難い。他方、平均粒子径が12nmを超える場合は光散乱が増大し透明被膜が得られ難い。このシリカ微粒子の平均粒子径については、好適には5〜9nmの範囲が推奨される。
前記液状媒体の種類としては、水が好適ではあるが、この他にも水と有機溶剤とからなる混合溶媒も使用可能である。但し、水と有機溶媒からなる混合溶媒の場合、シリカゾルがアルカリ性で塩を含有しており、有機溶剤中の溶解性が低いことから、有機溶媒の割合は1〜50質量%に限られる。
このような有機溶剤の種類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等のアミド類などが挙げられる。これらは単独で使用しても良く、また2種以上混合して使用しても良い。
カルボン酸塩
本発明のシリカゾルにおいては、シリカ微粒子100重量部に対して、0.00001〜0.001重量部のカルボン酸塩が含まれるものである。カルボン酸塩はシリカ微粒子表面に吸着または被覆することにより、シリカ微粒子の凝集を抑止するものと考えられる。また、無機系バインダーなど金属成分と共存する場合においては、金属多価カチオンと錯体などの結合体を形成することで、シリカ微粒子の表面負電位が保持されるため凝集が抑制されるものと考えられる。
有機酸化合物の配合量が、シリカ微粒子100重量部に対して、0.00001重量部未満の場合は、シリカ微粒子表面に吸着する分子数が不足するためバインダー成分による凝集を生じやすいので好ましくない。他方、0.001重量部を超える場合は塩濃度が上昇するためシリカゾルが凝集し易いといった問題が生じ易くなる。シリカ微粒子に対する有機酸化合物の配合量は、好適には、0.00005〜0.0005重量部の範囲が推奨される。
前記カルボン酸塩には、カルボキシル基を1個有する一塩基カルボン酸の塩、またはカルボキシル基を2個以上有してなる多塩基カルボン酸の塩がある。
一塩基カルボン酸としては、通常炭素数1〜24の脂肪酸が用いられ、その脂肪酸は直鎖のものでも分岐のものでもよく、また飽和のものでも不飽和のものでもよい。具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、直鎖状又は分岐状のブタン酸、直鎖状又は分岐状のペンタン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン酸、直鎖状又は分岐状のオクタン酸、直鎖状又は分岐状のノナン酸、直鎖状又は分岐状のデカン酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン酸、直鎖状又は分岐状のドデカン酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデカン酸、直鎖状又は分岐状のノナデカン酸、直鎖状又は分岐状のイコサン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコサン酸、直鎖状又は分岐状のドコサン酸、直鎖状又は分岐状のトリコサン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコサン酸等の飽和脂肪酸、アクリル酸、直鎖状又は分岐状のブテン酸、直鎖状又は分岐状のペンテン酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン酸、直鎖状又は分岐状のオクテン酸、直鎖状又は分岐状のノネン酸、直鎖状又は分岐状のデセン酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン酸、直鎖状又は分岐状のドデセン酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン酸、直鎖状又は分岐状のペンタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン酸、直鎖状又は分岐状のオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のヒドロキシオクタデセン酸、直鎖状又は分岐状のノナデセン酸、直鎖状又は分岐状のイコセン酸、直鎖状又は分岐状のヘンイコセン酸、直鎖状又は分岐状のドコセン酸、直鎖状又は分岐状のトリコセン酸、直鎖状又は分岐状のテトラコセン酸等の不飽和脂肪酸、及びこれらの混合物等が挙げられる。
多塩基カルボン酸としては、二塩基酸、クエン酸、トリメリット酸等が挙げられる。二塩基酸は鎖状二塩基酸、環状二塩基酸のいずれであってもよい。また、鎖状二塩基酸の場合、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。
鎖状二塩基酸としては、炭素数2〜16の鎖状二塩基酸が好ましく、具体的には例えば、エタン二酸、プロパン二酸、直鎖状又は分岐状のブタン二酸、直鎖状又は分岐状のペンタン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタン二酸、直鎖状又は分岐状のオクタン二酸、直鎖状又は分岐状のノナン二酸、直鎖状又は分岐状のデカン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデカン二酸、直鎖状又は分岐状のドデカン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデカン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデカン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプテン二酸、直鎖状又は分岐状のオクテン二酸、直鎖状又は分岐状のノネン二酸、直鎖状又は分岐状のデセン二酸、直鎖状又は分岐状のウンデセン二酸、直鎖状又は分岐状のドデセン二酸、直鎖状又は分岐状のトリデセン二酸、直鎖状又は分岐状のテトラデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘプタデセン二酸、直鎖状又は分岐状のヘキサデセン二酸及びこれらの混合物等が挙げられる。また、環状二塩基酸としては、1、2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、安定性の点から、鎖状二塩基酸が好ましい。
本発明のカルボン酸塩としては、前記カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、酪酸、吉草酸、α−メチル酪酸、α、β−ジメチル吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸またはテレフタル酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩またはアンモニウム塩を挙げることができる。
このなかでは特に、酢酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸の塩が好ましい。これは、シリカゾルを含む塗料組成物を用いて形成させた被膜からカルボン酸塩を除去する場合に、比較的低温度の熱処理により除去できるためである。
本発明のシリカゾルのpHについては、非球状のシリカゾルでは酸性での表面電位が小さいため長期間安定に使用するのが困難である理由で、pH8〜10の範囲が推奨される。pH8未満の場合は、シリカの溶解度が極めて低く表面シラノール基が解離できないためシリカゾルとして安定に存在できない。他方、pH10を超える場合は、シリカの溶解度が高過ぎて粒子の溶解が起こるため安定に存在できない。このpHの範囲については、好適には8.5〜9.5の範囲が推奨される。
〔シリカゾルの製造方法〕
本発明のシリカゾルの製造方法は、格別に限定されるものではないが、通常は、短径/長径比が0.05〜0.5の範囲にあり、比表面積換算粒子径が4〜12nmの範囲にあるシリカ微粒子が液状媒体に分散してなるシリカゾルに、室温から95℃の範囲にて、該シリカ微粒子100重量部に対して、0.00001〜0.001重量部のカルボン酸塩を添加し、充分に混合することにより調製することができる。
カルボン酸塩を添加、混合後のpHが8〜10の範囲にある場合は、格別にpH調整の必要は無いが、この範囲を外れる場合は、pH調整剤を添加してpHを8〜10の範囲に調整することが好ましい。なお、pH調整剤としては、酸性側に調整する場合は、通常、硫酸、塩酸、硝酸などの水溶液が使用できる。アルカリ性側に調整する場合は、通常、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などが使用できる。
〔塗料組成物〕
本発明のシリカゾルは各種塗料組成物の成分として適用することが可能である。このような塗料組成物については、その組成について格別に制限されるものではなく、各種基材上または基材表面の被膜上に適用されて、被膜を形成できるものであれば限定されるものではない。このような塗料組成物は、バインダーと本発明のシリカゾルを含む成分を混合することにより得ることができる。
前記塗料組成物として、有機系バインダーを含有してなる塗料組成物と無機系バインダーを含有してなる塗料組成物を挙げることができる。
有機系バインダーを含有してなる塗料組成物の例としては、(1)有機樹脂からなるバインダーおよびシリカ微粒子からなる塗料組成物、(2)加水分解性有機珪素化合物からなるバインダーおよびシリカ微粒子からなる塗料組成物を挙げることができる。
前記有機樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂、これら樹脂の混合物、さらにはこれら樹脂の共重合体や変性体などの樹脂が挙げられる。
バインダーとして有機樹脂を用いる場合には、例えば、シリカ微粒子が分散したシリカゾルの分散媒をアルコール等の有機溶媒で置換した有機溶媒分散ゾルを用いることができる。
一方、バインダーとして加水分解性有機珪素化合物を用いる場合には、例えば、アルコキシシランとアルコールの混合液に、水および触媒としての酸またはアルカリを加えることにより、アルコキシシランの部分加水分解物を得、これにシリカゾルを混合し、必要に応じて有機溶剤で希釈して、塗布液とすることができる。
塗料組成物中のシリカ微粒子とバインダー(固形分)の重量割合は、シリカ微粒子/バインダー=1/99〜9/1の範囲が好ましい。重量比が9/1を越えると被膜の強度や基材との密着性が低下して実用性に欠ける一方、1/99未満では当該シリカ微粒子の添加による基材との密着性向上、被膜強度向上等の効果が不充分となる。
無機系バインダーを含有してなる塗料組成物の例としては、(1)燐酸塩からなるバインダー、およびシリカ微粒子が溶剤に分散してなる塗料組成物、(2)燐酸塩からなるバインダー、シリカ微粒子および金属含有微粒子が溶剤に分散してなる塗料組成物などを挙げることができる。
前記燐酸塩としては、亜鉛、鉄、マンガン、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム等の燐酸塩を挙げることができる。この様なリン酸塩は、シリカ微粒子に対するバインダーとして機能するものであり、例えば、金属製の基材上にて、被膜を形成することが知られている。このような燐酸塩と本発明のシリカゾルを混合することにより、シリカ微粒子の凝集が抑制された塗料組成物を得ることができる。
また、前記燐酸塩およびシリカ微粒子を含む塗料組成物に、所望により、更に金属含有微粒子を配合することが可能である。このような金属含有微粒子の例としては、Fe、Al、Ga、TiまたはZrから選ばれる1種または2種以上の金属元素を含有する微粒子を挙げることができる。より具体的には、Fe、Al、Ga、TiまたはZrを含有する化合物(但し、該化合物は水酸化物、酸化物、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩または珪酸塩から選ばれる)によりSiO2、Al23、ZrO2またTiO2から選ばれる微粒子を改質して得られる金属含有微粒子が挙げられる。これらの金属含有微粒子についても、通常は分散媒に分散したゾル状のものが使用される。
燐酸塩からなるバインダー、およびシリカ微粒子が溶剤に分散してなる塗料組成物においては、燐酸塩100重量部に対して、シリカ微粒子がシリカ固形分に換算して30〜100重量部であることが好ましい。また、更に金属含有微粒子を配合する場合は、燐酸塩100重量部に対して、金属含有微粒子0.1〜20重量部が好ましい。
本発明の塗料組成物については、所望により各種添加剤を加える事が出来る。例えば、塗膜の平滑性改良剤としてアクリル酸アルキルエステル、着色顔料として二酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料、カーボン、フタロシアニン、ジアゾ化合物等の有機顔料、更にワキ防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、流れ性調製剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
本発明の塗料組成物においては、前記の通りカルボン酸塩の存在により凝集が抑制されており、さらに被膜内部の細孔形成が抑制される上に、被膜外表面の凹凸も抑制される結果、塗料組成物から得られる被膜のヘーズ(曇価)についても低いレベルに抑えることが可能となる。
[実施例および比較例で用いた分析方法]
続いて本発明の好適な実施例を述べるが、その前に、以下の合成例、実施例および比較例における、[1]画像解析による試料微粒子の長径および短径測定方法、[2]窒素吸着法による比表面積測定ならびに平均粒子径の算定方法、[3]粘度測定方法、[4]スピンコート方法および[5]ヘーズ測定方法について、説明する。
[1]画像解析による試料微粒子の長径および短径測定
透過型電子顕微鏡〔株式会社日立製作所製、H−800〕により、試料シリカゾルを倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、それぞれの最大径を長径、それぞれの長径の中心に直交する径を短径として測定し、それぞれの短径/長径比を求め、それらの平均値を算出して、試料シリカゾルの短径/長径比とした。
[2]窒素吸着法による比表面積(SA)の測定方法ならびに平均粒子径(D)の算定
(1)比表面積の測定については、シリカゾル50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出した。
具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%/ヘリウム70v%混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、シリカゾルの比表面積(SA)を算出した。
(2)比表面積(SA)の値を次式(2)に適用して、平均粒子径(D)を求めた。ρ(シリカの密度)は2.2である。
D=6000/(SA×ρ) ・・・ (2)
[3]粘度測定
塗料組成物20m?について、粘度計(東機産業株式会社製、TV−10)にて、室温で粘度測定を行った。初期粘度については、粘度計のローターの回転数60rpmにて測定した。暴露粘度については、実施例1では回転数30rpm、実施例2および実施例3では回転数60rpm、比較例1では、回転数12rpm、比較例2では回転数3rpmにて、それぞれ測定した。
[4]スピンコート
塗料組成物3gをスピンコーター(ミカサ株式会社製、1H−360S)を用いて、面温度を50℃に加温した10cm四方のガラス基板上に滴下して、200rpmの回転速度にて、80秒間の塗布処理を行い、更に350℃で30分間の焼成処理を行った。この操作を、膜厚3μmになるまで反復して行い、膜厚3μmの被膜を有した被膜付基板を作製した。
[5]ヘーズ測定
前記[4]にて作製した膜厚3μmの被膜付基板について、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、ヘーズメーター300A)を使用して、ヘーズを測定した。
合成例1
還流器および攪拌機付セパラブルフラスコに、SiO2濃度が24重量%でNa2O濃度が8.16重量%の珪酸ナトリウム水溶液(SiO2/Na2Oモル比3)18.7g入れ、さらに水895gを添加して、珪酸ナトリウム水溶液914gを調製した。
次に、この珪酸ナトリウム水溶液に、SiO2濃度4.82重量%の珪酸ナトリウム(SiO2/Na2Oモル比3)を陽イオン交換樹脂塔に通すことにより得られたSiO2濃度4.82重量%の珪酸液(pH2.3、SiO2/Na2Oモル比=1,200)を、35℃の温度条件下、1,707g添加することにより、珪酸液と珪酸ナトリウム水溶液からなる混合液(SiO2/Na2Oモル比60)を得た。
得られた混合液を加温し、80℃の温度で30分間熟成した。80℃に保持した状態で、この液に前記珪酸液と同じ組成の珪酸液295gを2時間かけて添加して、pH8.7のシリカゾルを得た。このシリカゾルを70℃にて12時間加熱した後、エバポレーターにてSiO2濃度20重量%まで濃縮した。
このシリカゾルについて前記[2]の方法にて平均粒子径を求めたところ、7nmとなった。また、シリカゾルの短径/長径比については、前記[1]の方法により求めたところ、平均値は0.15となった。また、透過型電子顕微鏡により測定された平均短径は6nm、平均長径は40nmだった。
合成例2
合成例1のシリカゾル製造工程において、pH8.7のシリカゾルを70℃にて12時間加熱するまでは同様にしてシリカゾルを調製した。このシリカゾルに3%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.2に調整して90℃で5時間加熱した後、エバポレーターにてSiO2濃度20重量%まで濃縮した。
このシリカゾルについて前記[2]の方法にて平均粒子径を求めたところ、10nmとなった。また、シリカゾルの短径/長径比については、前記[1]の方法により求めたところ、平均値は0.23となった。また、透過型電子顕微鏡により測定された平均短径は9nm、平均長径は40nmだった。
合成例3
球状のシリカゾル(SiO2濃度20重量%)について、前記[2]の方法にて平均粒子径を求めたところ、6nmとなった。また、シリカゾルの短径/長径比については、前記[1]の方法により求めたところ、平均値は1.0となった。
合成例1で調製されたシリカゾル1000gに対して、シリカ分100重量部に対して、酢酸が0.0005重量部となるように、室温にて1.0%酢酸水溶液を添加し、充分に混合した。混合後のpHは9だった。次にこのシリカゾルをロータリーエバポレーターにより濃縮して、シリカ濃度20重量%に調整した。このシリカゾル100gを重リン酸アルミニウムの50重量%水溶液(米山化学株式会社製)200gに混合し、充分に攪拌することにより塗料組成物を調製した。
この塗料組成物について、初期粘度および暴露後粘度(暴露条件:50℃浴に1日静置)を測定した。その結果を表1に示す。
合成例2で調製されたシリカゾル1000gに対して、シリカ分100重量部に対して、酢酸が0.0005重量部となるように、室温にて1.0%酢酸水溶液を添加し、充分に混合した。混合後のpHは9だった。次にこのシリカゾルをロータリーエバポレーターにより濃縮して、シリカ濃度20重量%に調整した。このシリカゾル100gを重リン酸アルミニウムの50重量%水溶液(米山化学株式会社製)200gに混合し、充分に攪拌することにより塗料組成物を調製した。この塗料組成物について、実施例1と同様に初期粘度と暴露後粘度を測定し、その結果を表1に示す。
合成例1で調製されたシリカゾル1000gに対して、シリカ分100重量部に対して、クエン酸が0.0005重量部となるように、室温にて1.0%クエン水溶液を添加し、充分に混合した。混合後のpHは9だった。次にこのシリカゾルをロータリーエバポレーターにより濃縮して、シリカ濃度20重量%に調整した。このシリカゾル100gを重リン酸アルミニウムの50重量%水溶液(米山化学株式会社製)200gに混合し、充分に攪拌することにより塗料組成物を調製した。この塗料組成物について、実施例1と同様に初期粘度と暴露後粘度を測定し、その結果を表1に示す。
比較例1
合成例1で調製されたシリカゾル1000gを重リン酸アルミニウムの50重量%水溶液(米山化学株式会社製)200gに混合し、充分に攪拌することにより塗料組成物を調製した。この塗料組成物について、実施例1と同様に初期粘度と暴露後粘度を測定し、その結果を表1に示す。
比較例2
合成例3で調製されたシリカゾル1000gに対して、シリカ分100重量部に対して、酢酸が0.0005重量部となるように、室温にて1.0%酢酸水溶液を添加し、充分に混合した。混合後のpHは9だった。次にこのシリカゾルをロータリーエバポレーターにより濃縮して、シリカ濃度20重量%に調整した。このシリカゾル100gを重リン酸アルミニウムの50重量%水溶液(米山化学株式会社製)200gに混合し、充分に攪拌することにより塗料組成物を調製した。この塗料組成物について、実施例1と同様に初期粘度と暴露後粘度を測定し、その結果を表1に示す。
Figure 0004829086
本発明のシリカゾルは、微細で非球状シリカ微粒子が液状媒体に分散してなるシリカゾルであり、塗料組成物の成分として配合され、塗料組成物自体の貯蔵安定性に寄与する。また、本発明のシリカゾルが配合された塗料組成物は、基材上に良好な性状の塗膜を形成するものであり、絶縁性、耐擦傷性、防錆性、などの機能を発揮する。

Claims (6)

  1. 短径/長径比が0.05〜0.5の範囲にあり、BET法により測定される比表面積から換算される平均粒子径が4〜12nmの範囲にあるシリカ微粒子が液状媒体に分散してなるシリカゾルであって、該シリカ微粒子100重量部に対して0.00001〜0.001重量部のカルボン酸塩を含有することを特徴とするシリカゾル。
  2. 前記カルボン酸塩が一塩基カルボン酸塩または多塩基カルボン酸塩である請求項1記載のシリカゾル。
  3. 前記カルボン酸塩が、酢酸、クエン酸、マレイン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸から選ばれる1種以上のカルボン酸の塩である請求項1または請求項2記載のシリカゾル。
  4. 前記シリカゾルのpHが8〜10の範囲にある請求項1、請求項2または請求項3の記載のシリカゾル。
  5. バインダーおよび請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載のシリカゾルを含有することを特徴とする塗料組成物。
  6. 前記バインダーが有機系バインダーまたは無機系バインダーから選ばれるものである請求項5記載の塗料組成物。
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