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JP4818374B2 - 車両用通信装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用通信装置に係る発明であって、特に、車々間通信を行う車両用通信装置に関するものである。
近年、車々間通信を行う車両用通信装置を利用して安全運転支援システムを実用化する案が検討されている。この場合、車両用通信装置には、一般的に各車両間で一定周期毎に自車両の情報を送受信し合う情報交換型アプリケーションが用いられる。
しかし、この情報交換型アプリケーションは、通信エリア内に存在する車両台数が増加した場合、通信トラフィックが増加するため輻輳が発生し、車々間通信を十分行えず安全支援サービスを提供できなくなることが考えられる。
そこで、特許文献1では、車々間通信において輻輳が発生しないように、車両の危険な状況や通信路のトラフィック量に基づいて自車両の送信周期制御を行い輻輳を回避する方法が開示されている。さらに、特許文献2では、車々間通信において輻輳が発生しないように、車両の危険度に基づいて、自車両の受信感度や送信電力、アンテナ指向性、周波数を再設定する手法が開示されている。
特開2006−209333号公報 特開2004−206624号公報
特許文献1及び特許文献2に記載の車両用通信装置では、情報交換型アプリケーションとして単一のアプリケーションにしか対応できないため、緊急アプリケーションなどの他の複数アプリケーションを利用することができなかった。また、特許文献1及び特許文献2に記載の車両用通信装置では、緊急アプリケーションなどの他の複数アプリケーションのために通信帯域を確保しておくこともできなかった。
本発明は、車々間通信において複数アプリケーションを利用し、自車両の輻輳を回避する制御を行う車両用通信装置を提供することを目的とする。
本発明に係る解決手段は、所定の目的に応じて車々間通信を行う複数のアプリケーション部と、車々間でデータを送受信する前記下位プロトコル部と、前記アプリケーション部と下位プロトコル部との間に介在するミドルウェア部とを備える車両用通信装置であって、前記ミドルウェア部は、前記アプリケーション部に対してデータの受け渡しを行い、且つ前記ミドルウェア部が受信したデータの配信先を識別する転送サービス処理部と、前記車々間通信において輻輳を回避する処を行うとともにポート番号の管理を行って前記アプリケーション部を識別する通信制御サービス部と、前記データの送信制御及び受信制御を行う送受信制御処理部とを備え、前記通信制御サービス部は、前記輻輳を回避する処理において、前記アプリケーション部毎に受け取るアプリケーション優先度、車両の車両優先度、及び前記下位プロトコル部から取得するチャネル利用率に基づいて、前記自車両の通信における送信電力、送信間隔及び連送回数についての通信制御を行う
本発明に記載の車両用通信装置は、車々間通信において複数アプリケーションを利用し、自車両の輻輳を回避する制御を行うことが可能となる。
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のブロック図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のリンク確立を説明するための図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のアクセス点の識別を説明するための図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の各サービスプリミティブと各プロトコルとの関係を説明するための図である。 本発明の実施の形態に係る車々間通信M/Wの構成を説明する図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のM/Wプロトコルデータ単位及びM/Wサービスデータ単位を説明する図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の通信サービスプリミティブ間の論理関係を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の車々間通信M/Wプロトコルデータ単位を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の通信制御情報のフィールド形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のポート番号の設定例を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の優先度の設定例を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の管理サービスプリミティブ間の論理関係を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のM/Wプロトコルデータ単位の形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の通信制御情報のフィールド形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のポート番号の具体例を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のアナウンスメントメッセージの形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の参加メッセージの形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のResultCodeの内容を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の確認応答メッセージの形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の選択的再送メッセージの形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の初期接続手順を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の輻輳回避制御メッセージの形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置のチャネル利用率と輻輳状態レベルとの関係を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の車速に応じた送信電力設定の具体例を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の乱数の送信メッセージの形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の署名の応答メッセージの形式を示す図である。 本発明の実施の形態に係る車両用通信装置の機器認証手順の概略を示す図である。
(実施の形態)
本実施の形態に係る車両用通信装置は、車々間通信を行い安全運転支援システムを実用化するためのアプリケーションや快適で利便性の高いアプリケーションとしてITS(Intelligent Transport Systems)アプリケーション部1と、車々間でデータの送受信を行う下位プロトコル部2とを備えている。さらに、本実施の形態に係る車両用通信装置は、ITSアプリケーション部1と、下位プロトコル部2との間に介在する車々間通信ミドルウェア(M/W:Middle-Ware)部3を備えている。この車々間通信M/W部3を備えることにより、本実施の形態に係る車両用通信装置は、当該車々間通信M/W部3の規格に準拠したアプリケーションであれば複数利用することが可能となり、複数のアプリケーション(緊急アプリケーションを含む)がそれぞれ車々間通信を行うことが可能となる。
まず、図1に示すITSアプリケーション部1には、ネットワークプロトコル4を介して下位プロトコル部2と通信を行うネットワーク系アプリケーション5と、車々間通信M/W部3上で直接動作する非ネットワーク系アプリケーション6とを備えている。なお、ネットワークプロトコル4には、IP(Internet Protocol)、又はIP以外のプロトコルを用いる。また、図1では、ネットワーク系アプリケーション5及び非ネットワーク系アプリケーション6がそれぞれ1つ記載されているが、本発明はこれ限られず、複数のネットワーク系アプリケーション5及び非ネットワーク系アプリケーション6を設けても良い。
次に、図1に示す下位プロトコル部2には、IEEE802.11pプロトコルスタック及びその他のプロトコルスタック(例えば、5.8GHz,UHF/VHF等)を備えるデータリンク層の第2層(L2)21と、当該第2層の管理を行うL2管理層22とが図示されている。さらに、図1に示す下位プロトコル部2では、マルチプロトコルに対応するためのマルチプロトコル対応処理層23が第2.5層(L2.5)として設けられている。なお、図1に示す下位プロトコル部2では、特に図示していないがL2管理層22には管理情報ベース(MIB:Management Information Base)を備えており、第2層の下層には物理層の第1層(L1)が設けられている。
次に、図1に示す車々間通信M/W部3は、下位プロトコル部2とITSアプリケーション部1の非ネットワーク系アプリケーション6との間に介在している。そして、図1に示す車々間通信M/W部3は、通信機能を補完するために転送サービス処理部31、通信制御サービス部32、送受信制御処理部33及びメディアアダプテーション処理部34を備えている。さらに、図1に示す車々間通信M/W部3は、上述の構成を備えることで、非ネットワーク系アプリケーション6に対して下位プロトコル部2を意識させないプラットフォームを提供している。
転送サービス処理部31は、非ネットワーク系アプリケーション6に対してデータの受け渡しを行い、車々間通信M/W部3が受信したデータの配信先を識別する。通信制御サービス部32は、輻輳制御処理部321と、通信接続管理部322と、管理情報ベース(MIB:Management Information Base)323とを備え、車々間通信の通信制御を行っている。輻輳制御処理部321は、輻輳を回避するために送信電力を制御する送信電力制御部321a、及びチャネルを変更して輻輳を回避するチャネル制御321bを備えている。さらに、輻輳制御処理部321は、輻輳を回避するために送受信制御処理部33に対し送信間隔を指示する機能を有している。
通信接続管理部322は、別の車両の非ネットワーク系アプリケーション6を識別するためのポート番号を管理する。なお、車々間通信M/W部3では、発信元となる非ネットワーク系アプリケーション6から別の車両の非ネットワーク系アプリケーション6に対して正しくデータを送り届けるために、非ネットワーク系アプリケーション6を識別するためのポート番号が設けられている。管理情報ベース(MIB)323は、車々間通信M/W部3内の構成情報等を格納する。
なお、通信制御サービス部32は、チャネル利用率を監視し、緊急アプリケーションなどの他の複数アプリケーションのために通信帯域を確保しておく機能も有している。
送受信制御処理部33は、データの送信制御を行う送信制御部331と、データの受信制御を行う受信制御部332とを備えている。送信制御部331では、転送サービス処理部31を介して非ネットワーク系アプリケーション6から送られてきたデータに対して、送信間隔やデータの分割等の処理を行い、下位プロトコル部3へ送信する。送信間隔制御部331aでは、輻輳制御処理部321の指示に基づいてデータの送信間隔を変更する。分割処理部331bでは、データが所定の大きさより大きい場合、当該所定の大きさにデータを分割する。連送・再送制御部331cでは、優先度の高いデータのパケット到着率を高くするために所定回数同じデータを連送し、再送要求に応じてデータを再送する。
一方、受信制御部332では、別の車両から受信したデータに対して、組立等の処理を行い、転送サービス処理部31を介して非ネットワーク系アプリケーション6に送る。組立処理部332aでは、所定の大きさに分割されたデータを組み立てて、分割処理される前のデータに戻す。再送制御部332cでは、データが十分に受信できなかった場合に、再度当該データを送信してもらうように再送要求を送信先に送る。
図1に示す車々間通信M/W部3では、輻輳制御処理、分割・組立制御、連送制御などの補完機能を有する。これらの補完機能は、低機能な端末から高機能な端末まで適用できるように、用途に応じた選択が可能な車両用通信装置のオプションとすることができる。
また、図1に示す車々間通信M/W部3では、下位プロトコル部3に対してマルチプロトコルを実現するためにメディアアダプテーション処理34を設けて、下位レイヤ固有の仕様を吸収している。
次に、本実施の形態に係る車両用通信装置の通信手順の概略について述べる。まず、本実施の形態に係る車々間通信M/W部3は、同報通信を行うことが前提である。そのため、本実施の形態に係る車々間通信M/W部3は、同報通信であればリンク確立を行う必要がないため通信接続に関わらず使用可能な状態となる。使用可能な状態の車々間通信M/W部3では、即通信フェーズとなり、非ネットワーク系アプリケーション6を利用した車々間通信が行われる。
一方、本実施の形態に係る車々間通信M/W部3において個別通信を行う場合、同報通信と異なりリンク確立を行う必要がある。具体的なリンク確立の手順を図2に示す。まず図2に示すステップS1では、リンクが停止されている。そして、ステップS2でリンク確立のためにリンク待ち受け状態になる。ステップS2において車々間通信M/W部3のリンク確立のために、通信接続通知があるとステップS3に進む。ステップS3では、通知される相手局(別車両)のM/Wプロファイルと自局(自車両)のM/Wプロファイルとを比較し、車々間通信M/W部3内で利用可能な機能の確認を行う。
ステップS3でM/Wプロファイルの確認が終了した場合ステップS4に進み、アクセス管理機能が有効なときは相手認証が行われる。ステップS4で相手認証の認証に成功した場合はステップS5に進み、車々間通信M/W部3が非ネットワーク系アプリケーション6を使用可能な状態として、処理をアプリケーションフェーズに移す。使用可能な状態となった非ネットワーク系アプリケーション6は、アプリケーション毎に初期設定を行い、通信フェーズとなり通信が可能になる(ステップS5)。ステップS6では、通信が終了し、ステップS2に戻る。なお、ステップS4で相手認証の認証に失敗した場合も、ステップS6に進み通信終了となる。
次に、本実施の形態に係る非ネットワーク系アプリケーション6におけるアクセス点の識別について説明する。概念図を図3に示す。図3では、非ネットワーク系アプリケーション6のデータであるアプリケーションデータ7が、車々間通信M/W部3においてはアクセス点を識別するためのポート番号8が付与されている。さらに、ポート番号8が付与されたアプリケーションデータ7が、下位プロトコル2においては車々間を識別するためにLID9が付与されている。ここで、ポート番号8は、複数の非ネットワーク系アプリケーション6のサポートを前提としており、各非ネットワーク系アプリケーション6を識別する番号として利用されている。
次に、図1に示す本実施の形態に係る車両用通信装置をプロトコルモデルと考えた場合に、各サービスプリミティブと各プロトコルとの関係を図4に示す。図4では、2台の車両間が下位プロトコル部2において提供するサービスインタフェースを利用してプロトコルデータ単位(PDU:Protocol Data Unit)を交換している。具体的には、下位プロトコル部2のレイヤ2でLPDU,MPDUを、レイヤ1でPHYPDUをそれぞれ交換することで、車々間通信M/W部3のプロトコルは、サービスプリミティブ及びMSDU(MAC Service Data Unit)を介してM/W−PDU(Middle-ware Protocol Data Unit)を車両間で交換している。また、ITSアプリケーション部1の上位プロトコルは、サービスプリミティブ及びM/W−SDU(Middle-ware Service Data Unit)を介して上位PDUを車両間で交換する。
また、車々間通信M/W部3は、サービスインタフェースとしてデータ転送のためのデータ転送サービスと、管理制御のための管理サービスとを利用して、サービスプリミティブ及びM/W−SDUを上位プロトコルであるITSアプリケーション部1に提供している。なお、後述する車々間通信M/W部3の規格(車々間通信M/W規格)では、当該サービスインタフェースは上位プロトコルとの相互動作のみを規定し、サービスインタフェースの仕様そのものについては規定していない。
次に、本実施の形態に係る車両用通信装置の輻輳回避処理について説明する。まず、通信制御サービス部32は、非ネットワーク系アプリケーション6毎に受け取るアプリケーション優先度、各車両の車両優先度(危険度、所要距離、許容遅延時間を含む)、及び下位プロトコル部2から取得するチャネル利用率に基づいて、自車両及び周辺車両の輻輳回避処理を制御する。具体的には、非ネットワーク系アプリケーション6は、自車両の情報に変更が生じた場合に車両情報設定要求プリミティブを車々間通信M/W部3に発行し、自車両の情報(車両ID、車速、通信車両台数、送信間隔、危険度)を受け取る。受け取った自車両の情報は、MIB323に保存する。
そして、車々間通信M/W部3は、下位プロトコル部2が提供する管理サービスインタフェースを利用してL2管理層22のMIBからチャネル情報(チャネル番号、チャネル利用率)を取得する。さらに、車々間通信M/W部3は、通信制御サービス部32において取得した自車両の情報とチャネル情報とに基づき、輻輳の発生が近いか否かを示す輻輳状態レベルを推定する。そして、当該輻輳状態レベルが所定のレベル以上である場合に、送信電力や送信間隔を制御したり、チャネルを変更したりして輻輳の回避処理を行う。
また、本実施の形態に係る車両用通信装置では、通信制御サービス部32が、輻輳回避制御情報(自車両の通信制御情報と自車両が周辺車両に要求する通信制御情報とを含む)を自車両と周辺車両との間で交換し、周辺車両の輻輳回避制御情報を考慮して自車両の通信制御を行う。具体的に、車々間通信M/W部3は、所定の条件(例えば輻輳状態レベルが所定のレベル以上)の場合に生成した輻輳回避制御情報を一定間隔で送信する。なお、自車両の優先度及び危険度が低い場合には輻輳回避制御情報の送信を中止する。一方、自車両の優先度及び危険度が高い場合には送信した輻輳回避制御情報に基づき相手車両に輻輳回避処理を実行するように要求する。輻輳回避制御情報を受信した相手車両は、受信した輻輳回避制御情報を輻輳回避制御プロファイルに登録して、当該プロファイルに基づき輻輳回避処理を行う。
(車々間通信M/W仕様)
次に、本発明に係る車両用通信装置、特に車々間通信M/Wにおいて定める仕様について以下に詳しく説明する。
1.1 車々間通信M/Wの機能
車々間通信M/Wは、下位プロトコルの通信機能を補完するために、
(1)マルチアプリケーション対応
(2)マルチプロトコル対応
(3)輻輳回避制御
(4)メディアアダプテーション制御
(5)分割組立制御
(6)連送制御
(7)通信接続管理
(8)再送制御
の機能を有している。そして、車々間通信M/Wは、上位アプリケーションに対してデータ転送のためのデータ転送サービスと、管理制御のための管理サービスとを提供している。
1.2 車々間通信M/Wの構造
図5に、車々間通信M/Wの構成を図示する。図5に示す車々間通信M/W部3は、各機能の追加削除が可能となるように機能単位でエンティティが構成されている。つまり、マルチアプリケーション対応機能に対応して転送サービス処理部33が設けられ、マルチプロトコル対応及びメディアアダプテーション制御機能に対応してメディアアダプテーション処理部34が設けられている。さらに、輻輳回避制御機能に対応して輻輳回避制御処理部33が設けられ、分割組立制御及び連送制御機能に対応して送信制御331及び受信制御332が設けられている。
また、通信接続管理機能に対応して通信接続管理部322が設けられている。車々間通信M/W部3の管理を行う通信制御管理部322は、管理エンティティ間での同位プロトコルを形成するため上位アプリケーションと同等のアクセス点の識別子を割り当てる。そして、通信制御管理部322は、通信制御サービス部32のインタフェースを利用して管理エンティティ間でのデータの送受信を行う。なお、図5に示す通信制御サービス部32には、オプションとしてアクセス管理部324を設けている。このアクセス管理部324は、データ受信局(データを受信する移動局)やデータ送信局(データを送信する移動局)の機器認証処理等を行う。
1.3 サービスインタフェース
車々間通信M/W部3と非ネットワーク系アプリケーション6との間に転送サービス処理部31を設け、当該転送サービス処理部31がデータ転送のためのデータ転送サービスインタフェースと、管理制御のための管理サービスインタフェースとを提供する。また、車々間通信M/W部3と下位プロトコル部2との間にメディアアダプテーション処理部34を設け、当該メディアアダプテーション処理部34は複数の車々間通信プロトコルが提供するサービスインタフェースを利用した通信を行う。
1.4 プロトコル
車々間通信M/W部3の通信制御の手順は、車々間通信M/W部3が付加する通信制御情報で規定する。また、通信制御管理の手順も、車々間通信M/W部3が付加する通信制御情報で規定する。この通信制御情報は、図6に示すように、各プロトコルでITSアプリケーション部1から渡された車々間通信M/Wサービスデータ単位(M/W−SDU:Middle-ware Service Data Unit)に結合する。なお、車々間通信M/Wサービスデータ単位(M/W−SDU)は、ITSアプリケーション部1においてはPDUであり、車々間通信M/Wサービスデータ単位(M/W−SDU)は、車々間通信M/W部3においては車々間通信M/Wプロトコルデータ単位(M/W−PDU)である。また、通信制御情報+車々間通信M/Wプロトコルデータ単位(M/W−PDU)は、下位プロトコル部3に渡されMSDUとなる。
2 通信制御
2.1 データ転送サービスインタフェース
2.1.1 プリミティブ相互関係の概要
車々間通信M/Wの通信制御は、データ転送サービス(以下、通信サービスともいう)として以下のプリミティブを非ネットワーク系アプリケーション(以下、単にアプリケーションともいう)に提供する。
TransferData.request
TransferData.indication
TransferData.requestは、アプリケーションから渡されたM/W−SDUを相手局へ転送することの要求を、アプリケーションから車々間通信M/Wへ渡す。TransferData.indicationは、M/W−SDUの到着を示す情報を車々間通信M/Wからアプリケーションへ渡す。
2.1.2 サービス内容の仕様
ここでは、通信サービスに関連するプリミティブ及び変数について以下に規定する。サービスインタフェースとしての変数は抽象的に記述し、受信側のエンティティにとって必要となる情報を規定する。但し、この情報を提供する具体的な実現方法については制約しない。
変数linkAddressは、相手局を識別する。変数PortNoは、転送先のアプリケーション及び通信制御サービスを識別する。
変数Parameterは、実際にM/W−SDUを渡すか、又はポインタを渡す。また、他の方法によって渡すこともできる。
変数Priorityは、アプリケーション毎の優先度を示す。
変数extensionParameterは、実際のデータを渡すか、又はポインタを渡す。また、他の方法によって渡すこともできる。
変数TransmissionMediaは、送信する通信メディアを識別する。
変数TransactionTypeは、再送処理の有効/無効を識別する。
車々間通信M/Wがアプリケーションへ提供する通信サービスプリミティブ間の論理関係を図7に示す。
2.1.2.1 データ送信要求プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、M/W−SDUを相手局へ送信することを要求するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、常にアプリケーションが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、TransferData.request(linkAddress, PortNo, userData, Priority, extensionParameter, TransmissionMedia、TransactionType)の変数を持つ。
変数linkAddressには、相手局を識別するリンクアドレスを格納する。プライベートリンクアドレスを、又はグループ同報リンクアドレスが指定できる。
変数PortNoには、アプリケーションのローカルポート番号を設定する。
変数userDataには、自局のアプリケーションから渡されたM/W−SDUを格納する。
変数Priorityには、アプリケーション毎の優先度を示す。
変数extensionParameterには、自局のアプリケーションから渡されたM/W−SDUを送信する許容遅延時間、必要距離などを格納する。
変数TransmissionMediaには、M/W−SDUを送信する通信メディアを選択する識別子を格納する。
変数TransactionTypeには、変数userDataの再送処理が有効/無効の識別子を格納する。
2.1.2.2 データ着信通知プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、相手局からのM/W−SDUの着信を通知するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、M/W−SDUの着信を示す時に車々間通信M/Wが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、TransferData.indication(linkAddress, PortNo, userData)の変数を持つ。
変数linkAddressには、相手局を識別するリンクアドレスが格納される。プライベートリンクアドレスを、又はグループ同報リンクアドレスが渡される。
変数PortNoには、アプリケーションのローカルポート番号を設定する。
変数userDataには、着信したM/W−SDUを格納する。
2.2 プロトコルデータ単位(PDU)
2.2.1 PDU形式
図8に示す車々間通信M/Wプロトコルデータ単位(M/W−PDU)は車々間通信M/WのPDUであり、後述の2.3.1に規定された車々間通信M/Wの手順を指示するための制御情報を格納する制御フィールド(通信制御情報)と、アプリケーションから渡されたM/W−SDUを格納するための情報フィールドとからなる。
2.2.2 PDU要素
2.2.2.1 コネクションの識別
コネクション識別のためのリンクアドレスは、下位レイヤが提供するサービスプリミティブの変数として授受する。
2.2.2.2 制御フィールドの形式
車々間通信M/Wの手順を指示する制御フィールドには、通信制御情報を格納する。なお、当該内容は、後述の2.3.1で詳しく規定する。
2.2.2.3 情報フィールドの形式
情報フィールドには、アプリケーションから渡されるM/W−SDUを分割もしくは透過して格納する。
2.3 通信制御の手順要素
2.3.1 通信制御情報の形式
通信制御情報には、車々間通信M/Wの手順を指示する制御情報が格納され、手順を実行するために移動局間(車両間)で共有される。この通信制御情報のフィールド形式を図9に示す。
(1)ポート番号(PortNo)は送信先のアプリケーション及び通信制御サービスを指示する識別子である。ポート番号の設定例を図10に示す。
(2)ノード優先度(NodePriority)は、車両の優先度を表す。相手局の優先度と、下位レイヤから受信した相手局のリンクアドレスとを車々間通信M/WのMIBで管理する。自局がM/W−PDUを送信する際に、後述の3.4.2.1に規定する自局の優先度と相手局の優先度、チャネル利用率等に応じて輻輳回避制御を行うために用いる。ノード優先度は車両情報設定プリミティブから取得した値を格納する。優先度の設定例を図11に示す。
(3)トランザクションタイプ(TransactionType)は、トランザクションのタイプを指定する。「0」:データ送信トランザクションサービス、「1」:リクエスト・レスポンス型トランザクションサービス。この識別子が「1」を示す場合、再送処理が有効となり、メッセージを相手局に対して通知すると共に、そのメッセージに対する確認応答(ACK)を取得する。なお、リクエスト・レスポンス型トランザクションサービスは個別通信でのみ使用可能である。
(4)再送データフラグ(RetransmitDataFlag)は、再送されたデータか否かを表すフラグである。この識別子が「1」を示す場合、PDUは再送されたデータを表す。
(5)トランザクションID(TransactionID)は、トランザクションの識別子である。当該トランザクションIDにより各々トランザクションを区別し、これにより同一アプリケーション間で複数トランザクションが同時に存在する状況にも対応可能となる。トランザクションIDの付番方式は、16ビット構成であり、新規のトランザクション発行毎に1インクリメントされる。
(6)セグメントフラグ(SegmentFlag)は、分割転送処理の有効/無効を指示する識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、M/W−PDUは分割転送されるセグメントであることを示す。セグメント処理しない場合は、本識別子は偽値(false)とする。
(7)セグメント終端フラグ(SegmentLastFlag)は、分割転送処理の最終セグメントであることを示す識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、車々間通信M/Wは分割転送されたセグメントの最終セグメントであることを示す。セグメント処理しない場合及び最終セグメントではない場合には、本識別子は偽値(false)とする。
(8)PDUグループ番号(pduGroup)は、セグメントの識別情報を示す。分割処理を施す前のM/W−SDUに対して一つの値を付番する。付番は送信キューを単位としてモジュロ32で行い、分割処理をしないM/W−SDUにも付番する。分割処理されたセグメントを組み立てる際には、同一のPDUグループ番号を対象とする。
(9)セグメントナンバー(SegmentNo)は、セグメントの分割順序を示すシリアル番号である。分割した最初のセグメントには、セグメントナンバーの「0」が付番され、以降のセグメントには順にインクリメントされた値を割り当てる。セグメントの組立ではセグメントナンバーの順番が保障される。分割転送が適用されない場合のセグメントナンバーは「0」とする。
(10)チャネルフラグ(ChannelFlag)は、通信制御情報にチャネル情報が含まれているか否かを示す識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、車々間通信M/Wは制御フィールドにチャネル情報を含むことを示す。チャネル情報を含まない場合は、本識別子は偽値(false)とする。
(11)チャネル利用率(ChannelUsageRate)は、オプションであり、送受信を行っているチャネルが使用中(ビジー)の割合を表す変数である。単位は%とし、0から100までの値を設定する。この変数から相手局のチャネル利用率を取得し、自局のチャネル利用率と比較して、差分が大きい場合には、自局にとって隠れ端末(自局とは重ならない相手局の通信端末)となる移動局が複数存在することが推定できる。
2.3.2 通信制御変数
2.3.2.1 車々間通信M/Wの最大受信単位(MRU)
車々間通信M/Wの最大受信単位(MRU:Maximum Receive Unit)は、車々間通信M/Wが上位アプリケーションから受け取ることが可能なデータの最大受信長である。車々間通信M/Wの最大受信単位(MRU)は、実装するアプリケーションが規定する最大転送単位(MTU:Maximum Transmission Unit)の中で最も大きな値とする。
2.3.2.2 分割転送のセグメント単位(SUU)
分割転送のセグメント単位(SUU:Segment Unit for Unicast)は、分割転送を行う際にM/W−SDUをセグメント化する単位で、選択したプロファイルに応じて以下の値を設定する。SUUの値は、183オクテットとする。
2.3.2.3 連送制御の連送回数(k)
連送制御の連送回数(k)は、連送制御でM/W−PDUを繰り返し送信する回数である。kの値により同報送信されたデータの受信誤り率が異なるため、値の設定にはシステムの信頼性を考慮し決定する必要がある。
2.3.3 下位レイヤとの通信サービスインタフェース
車々間通信M/Wでは、下位レイヤ(下位プロトコル部)とのインタフェースとして、常にメディアアダプテーション部が提供するサブプリミティブを介して行う。車々間通信M/Wは、下位レイヤが提供する複数の機能定義に対応可能なプリミティブを使用する。
2.4 通信制御の手順
2.4.1 転送サービス処理の手順
(1)送信サービスの処理
アプリケーションからデータ送信要求プリミティブ(TransferData.request)が呼び出された場合には、変数ParameterからM/W−SDUを取得する。取得したM/W−SDUには後述の2.4.3に規定された送信間隔制御処理を適用する。但し、取得したM/W−SDUのサイズがSUUを超える場合は送信間隔制御処理を適用する前に、後述の2.4.2に規定される分割制御を適用する。なお、以下の場合のM/W−SDUは無効とし、処理を行わない。
(a)変数Parameterで渡されたM/W−SDUのサイズが、車々間通信M/WのMRUを超える場合には、その要求プリミティブは破棄し、送信を要求したアプリケーションに対してイベント通知プリミティブ(EventReport.indication)にて、状態が「データサイズが上限値を超えた」を通知する。
(b)送信キューに空きがない場合には、そのM/W−SDUは破棄し、送信を要求したM/W−SDUに対してイベント通知プリミティブ(EventReport.indication)にて、状態「送信キューに空きがない、送信に失敗した」を通知する。
(c)変数linkAddressがグループ同報リンクアドレスで、そのアドレス値が「0」でない場合には、その要求プリミティブは破棄し、送信を要求したアプリケーションに対してイベント通知プリミティブ(EventReport.indication)にて、状態「指定されたグループ同報アドレスは有効ではない。」を通知する。
(2)受信サービスの処理
分割されている場合は組立制御を行った後、受信キューにM/W−PDUが格納されると、2.3.1に示す通信制御情報に含まれるポート番号(PortNo)を参照して、着信したM/W−PDUの通知先となるアプリケーション及び通信制御サービスを特定する。この際、自局内に配信先となるアプリケーション及び通信制御サービスが存在しない場合、到着したM/W−SDUは破棄する。
通知先がアプリケーションの場合には、アプリケーションへデータ着信通知プリミティブ(TransferData.indication)を用いてM/W−SDUの配信を行う。この際、変数ParameterにはM/W−PDUから通信制御情報を削除して、アプリケーションへ渡すM/W−SDUを取り出して格納する。変数linkAddressには、下位レイヤからのデータ着信プリミティブ(SendData.indication)から取得する相手局のリンクアドレスを格納する。
また、通知先が通信制御サービスの場合には、通信制御サービスへM/W−SDUの配信を行う。この際、M/W−PDUから通信制御情報を削除してM/W−SDUを取り出し、当該M/W−SDUと下位レイヤからのデータ着信プリミティブから取得する相手局のリンクアドレスとを一緒に通信制御サービスへ渡す。
変数トランザクションタイプ(TransactionType)が「1:リクエスト・レスポンス型」なら確認応答を返す。変数チャネルフラグ(ChannelFlag)が「1」ならチャネル情報が含まれているので、後続するチャネル情報を管理テーブル(MIB)に保管する。変数ノード優先度(NodePriority)とチャネル利用率(ChannelUsageRate)と、下位レイヤのデータ着信プリミティブから取得する相手局のLIDとをM/Wプロファイルに格納する。
2.4.2 分割・組立制御の手順
分割・組立制御の適用可否は、処理対象の車々間通信M/Wのリンクアドレスから当該移動局のM/Wプロファイルを参照し判定する。
2.4.2.1 送信局の手順
(1)分割転送機能が有効な場合の転送制御
M/Wプロファイルで分割転送機能が有効な移動局に対して、以下に示すM/W−SDUのセグメント処理を行う。まず、転送サービス処理からM/W−SDUが渡された場合に以下の処理を行う。M/W−SDUのサイズがMTU以下の場合には、2.3.1の規定に従ってセグメント処理しない場合の通信制御情報を付加してM/W−PDUを生成し、後述の2.4.3に規定の輻輳回避制御処理へ渡す。
M/W−SDUのサイズがMTUを超える場合、先頭から順にSUUのサイズでM/W−SDUを分割してセグメント化を行い、セグメント毎に2.3.1の規定に従った通信制御情報を付加してM/W−PDUを生成し、後述の2.4.3に規定の送信間隔制御処理へ渡す。この際、指定されたLIDに対して、すでに分割・組立処理が必要なトランザクションが実行されている場合には、アプリケーションに対してEventReport.indicationにて、状態「分割転送中」を通知する。
(2)分割転送機能が無効な場合の転送制御
M/Wプロファイルで、分割転送機能が無効な移動局に対しては分割転送処理を適用しない。この場合は2.3.1の規定に従ってセグメント処理しない場合の通信制御情報を付加してM/W−PDUを生成し、後述の2.4.3に規定の送信間隔制御処理へ渡す。
2.4.2.2 受信局の手順
受信局の組立処理では、受信キューに格納されたM/W−PDUの通信制御情報を参照し、以下の処理を行う。まず、セグメントフラグ(SegmentFlag)が真値(true)を示すセグメントが存在し、そのセグメントと同一のPDUグループ番号で、セグメントナンバーが0からセグメント終端フラグが真値(true)を示すセグメントナンバーまでのM/W−PDUが全て受信キューに格納された場合、セグメントナンバーの順にセグメントを連結してM/W−SDUを再生し、転送サービス処理に渡す。セグメントフラグが偽値(false)を示す場合、受信キューに格納されたM/W−PDUをM/W−SDUとして転送サービス処理に渡す。
2.4.3 送信間隔制御の手順
(1)送信局の処理
(a)送信間隔制御処理は、分割・組立制御からM/W−PDUを受け取ると、データ送信要求プリミティブ(TransferData.request)から受け取った変数Priorityよりアプリケーションの優先度、(オプション変数extensionParameterから所要距離、許容遅延時間)を取り出す。
(b)送信間隔制御は後述の3.4.2.2に記したように通信制御サービスの輻輳回避制御処理に輻輳回避制御情報であるアプリケーション優先度、所要距離、許容遅延時間を渡す。
(c)輻輳回避制御処理が後述の3.4.2.2に記載の手順で通信制御情報のパラメータを決定した後、送信間隔制御は輻輳回避制御処理から送信間隔Tiと連送回数kが渡されるのを待機する。
(d)送信間隔Tiを受け取ると、送信制御は2.3.1の規定に従って通信制御情報を作成・付加して、M/W−PDUを作成する。そして、前回の送信時間から送信間隔Ti後にM/W−PDUと連送回数kとを後述の2.4.4に記載の連送制御処理に渡し、送信間隔制御処理を完了する。
2.4.4 連送制御の手順
連送制御により、優先度の高いデータは連送を行い、パケット到着率を高くする。優先度の低いデータはチャネル状況によって連送するか否かを判断し、チャネル混雑時には連送せずに、チャネルが混雑していない場合には連送を行うことでパケット到着率を改善する。
(1)送信局の制御
送信間隔制御から渡された連送回数kから、該当するPDUグループ番号のM/W−SDUをk回送信し、メディアアダプテーション処理部に渡す。k回の繰り返しが完了すると、当該PDUグループ番号の全てのセグメントを破棄する。
(2)受信局の制御
通信制御情報のPDUグループ番号が重複するM/W−SDUは破棄する。
2.4.5 再送制御の手順
再送処理は、通信制御情報のTransactionType=1を指定した場合に適用する。
(1)送信処理
(a)アプリケーションがTransactionType=1でデータ送信要求プリミティブ(TransferData.request)を発行することで再送処理が有効なデータ転送サービスが開始される。
(b)TransactionType=1であるM/W−PDUを作成し、下位レイヤが提供するデータ転送プリミティブ(SendData.requet)を用いて相手局に送信後、再送タイマを起動し、相手局からの確認応答(ACK)の受信を待機する。
(c)(b)で送信されたPDUが到達しないなど、何らかの理由によりACK受信前までに(b)で起動した再送タイマがタイムアウトした場合は、(b)で送信したPDUの再送フラグ(Retransmit Flag)を1にセットする。そして、相手局に再送信後、再送タイマを再起動し、再送カウンタをインクリメントする。
(d)数回再送を繰り返した後、再送カウンタが最大再送回数を超えた場合は、イベント通知プリミティブ(EventReport.indication)でトランザクションの失敗をアプリケーションに通知し、このトランザクションを完了する。
(e)再送タイマのタイムアウト前に、下位レイヤの提供するデータ転送プリミティブにより、相手局から送信されたACKを受信すると、(b)又は(c)で起動した再送タイマを停止し、このトランザクションを完了する。
(2)受信処理
(a)下位レイヤが提供するデータ転送プリミティブ(SendData.request)により、M/W−PDUを受信すると、分割・組立制御に渡す。
(b)(a)で受信したPDUがTransactionType=1の場合にはACKを生成し、下位レイヤの提供するデータ転送プリミティブにより相手局に対してACKを送信し、ウェイトタイマを起動する。
(c)(b)で送信したACKが到達しないなどの理由で、(a)で受信したPDUを再受信した場合には、このPDUを破棄し、再度ACKを生成し、下位レイヤが提供するデータ転送プリミティブ(SendData.requet)により相手局に対して送信し、ウェイトタイマを再起動する。
(d)(b)もしくは(c)で起動したウェイトタイマがタイムアウトすると、このトランザクションを完了する。
2.4.6 メディアアダプテーション制御の手順
メディアアダプテーション制御は、複数の下位レイヤのデータ転送サービスと、車々間通信M/Wのデータ転送サービスとから構成され、車々間通信M/Wと下位レイヤとの違いを吸収するために制御を提供する。例えば、既存の下位レイヤの通信プロトコルを5.8GHzとIEEE802.11pと想定すると、下位レイヤとアプリケーション間のプリミティブは、それぞれ以下のように示される。
(a)5.8GHzの場合
データ転送プリミティブSend(分割フラグ、データ通し番号、送信データ)
データ着信プリミティブReceive(受信データ)
(b)IEEE802.11p
WSM-WaveShortMessage.request(ChannelInfo、WSMversion、SecurityType、ApplicationID、ApplicationContextMark、TransmissionPriority、Length、Data、PeerMacAddress)
WSM-WaveShortMessage.indication(ChannelInfo、WSMversion、SecurityType、ApplicationID、ApplicationContextMark、TransmissionPriority、Length、Data、PeerMacAddress)
上記プリミティブの変数の内、車々間通信M/Wでサポートされるものはマッピングを行い、サポートされていないものはPDUのデータ部に付加して渡す。なお、当該メディアアダプテーション処理部は下位レイヤの通信メディアの利用状況及びアプリケーションからの要求に応じて、データを送信する通信メディアを選択できる。
3 通信制御管理
3.1 管理サービスインタフェース
3.1.1 プリミティブ相互関係の概要
車々間通信M/Wの通信制御管理は、以下の管理サービスをアプリケーションに提供する。
(1)イベント通知サービス
イベント通知サービスでは、EventReport.indicationのプリミティブを提供する。
EventReport.indicationは、車々間通信M/W内で発生したエラー等の事象を通知するために、車々間通信M/Wから相手局もしくは自局のアプリケーションに渡す。
(2)車両情報設定サービス
車両情報設定サービスでは、SetVehicleInfo.requestのプリミティブを提供する。
SetVehicleInfo.requestは、車々間通信M/Wに車両の情報を設定することを要求するために、アプリケーションから車々間通信M/Wに渡す。
(3)MIBアクセスサービス
MIBアクセスサービスでは、以下のプリミティブを提供する。
MeGet.request
MeGet.indication
MeSet.request
MeSet.indication
MeGet.requestは、車々間通信M/WのMIB変数を取得することを要求するために、アプリケーションから車々間通信M/Wに渡す。MeGet.indicationは、車々間通信M/WのMIB変数の取得を通知するために車々間通信M/Wからアプリケーションに渡す。MeSet.requestは、車々間通信M/WのMIB変数の設定を要求するために、アプリケーションから車々間通信M/Wに渡す。MeSet.indicationは、車々間通信M/WのMIB変数の設定結果を通知するために車々間通信M/Wからアプリケーションに渡す。
(4)(オプション)接続管理サービス
接続管理サービスでは、以下のプリミティブを提供する。
M/W-Application.request
M/W-Application.confirm
M/W-Application.indication
M/W-Application.response
RegisterPort.request
DeregisterPort.request
M/W-Application.requestは、自局のアプリケーションが提供できるサービスを通知するために、自局のアプリケーションから車々間通信M/Wに渡す。M/W-Application.confirmは、M/W-Application.requestに対する応答を返すために、車々間通信M/Wから自局のアプリケーションに渡す。M/W-Application.indicationは、相手局のアプリケーションが提供できるサービスを通知するため及び相手局と接続するか否かの確認を要求するために、車々間通信M/Wから自局のアプリケーションに通知する。
M/W-Application.responseは、M/W-Application.indicationに対する応答を返すために、アプリケーションから車々間通信M/Wに渡す。RegisterPort.requestは、アプリケーションが車々間通信M/Wに対して提供できるアプリケーションを登録するために、アプリケーションから車々間通信M/Wに渡す。DeregisterPort.requestは、アプリケーションが車々間通信M/Wに対して提供できなくなったアプリケーションを通知するために、アプリケーションから車々間通信M/Wに渡す。
3.1.2 サービス内容の仕様
ここでは、管理サービスに関連するプリミティブ及び変数について規定する。インタフェースとしての変数は抽象的に記述し、受信側エンティティにとって必要となる情報を規定する。但し、この情報を提供する具体的な実現方法については制約しない。
変数linkAddressは、アプリケーション毎の自局と相手局のアクセス点を識別する。変数Parameterは、実際にM/W−SDUを渡すか、又はポインタを渡す。また、他の方法によって渡すこともできる。変数extensionParameter、及び変数mibParameterは、実際のデータを渡すか、又はポインタを渡す。また、他の方法によって渡すこともできる。変数statusは、事象に対する状態値を示す。変数mibIndexは、実際のMIB変数を指示する変数名を渡すか、又はポインタを渡す。また、他の方法によって渡すこともできる。変数mibStatusは、要求に対する成功/不成功を示す。変数PortNoは、アプリケーションのポート番号を示す。変数Priorityは、提供するアプリケーションの優先度を示す。
車々間通信M/Wがアプリケーションへ提供する管理サービスプリミティブ間の論理関係を図12に示す。
3.1.3 イベント通知サービス
イベント通知サービスは、車々間通信M/W内で発生したエラー等の事象を通知するサービスで、車々間通信M/Wは次のサービスプリミティブを提供する。
3.1.3.1 イベント通知プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、車々間通信M/W内で発生したエラー等の事象を通知するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、車々間通信M/W内で発生したエラー等の事象をアプリケーションに通知する時に車々間通信M/Wが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、EventReport.indication(linkAddress, status, [extensionParameter])の変数を持つ。
変数linkAddressには、車々間通信で使用するリンクアドレスを格納する。
変数statusには、発生した事象を示すコードを格納する。
変数 extensionParameterは、必要に応じて変数statusの内容を補足するための情報を格納する。この変数はオプションとする。
3.1.4 車両情報設定サービス
車両情報設定サービスは、アプリケーションから車々間通信M/Wに対して、車両情報などを提供するためのサービスで、車々間通信M/Wは次のサービスプリミティブを提供する。
3.1.4.1 車両情報設定要求プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、車々間通信M/Wに対してアプリケーションの持つ車両情報を定期的に送信するプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、アプリケーションにおいて車両情報が更新された場合にアプリケーションが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、SetVehicleInfo.request (VehicleParameters)の変数を持つ。変数VehicleParametersには、自車両に関する車両情報を格納する。
3.1.5 MIBアクセスサービス
MIBアクセスサービスは、通信制御管理のMIB管理機能が提供するサービスで、車々間通信M/WのMIB変数の設定・参照を行うためのサービスである。MIBアクセスサービスは、車々間通信M/Wは次のサービスプリミティブを提供する。
3.1.5.1 MIB変数取得要求プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは車々間通信M/WのMIB変数を取得することを要求するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは常にアプリケーションが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、MeGet.request (mibIndex)の変数を持つ。変数mibIndexには、MIB変数を指示する変数名を格納する。
3.1.5.2 MIB変数取得通知プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは車々間通信M/WのMIB変数の取得を通知するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは常に車々間通信M/Wが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、MeGet.indication (mibIndex, mibStatus, [mibParameter])の変数を持つ。
変数 mibIndexには、MIB変数を指示する変数名を格納する。
変数 mibStatusには、要求を実行した結果を格納する。
変数 mibParameterには、取得したMIB変数の内容を格納する。指示されたMIB変数が存在しない場合や、値が設定されていない場合は省略する。
3.1.5.3 MIB変数格納要求プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは車々間通信M/WのMIB変数の内容を設定することを要求するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは常にアプリケーションが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、MeSet.request (mibIndex, [mibParameter])の変数を持つ。
変数 mibIndexには、MIB変数を指示する変数名を格納する。
変数 mibParameterには設定するMIB変数の内容を格納する。省略した場合は、その変数の内容を破棄する要求となる。
3.1.5.4 MIB変数取得通知プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは車々間通信M/WのMIB変数の設定結果を通知するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは車々間通信M/WのMIB変数の設定結果を示すときに、車々間通信M/Wが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、MeSet.indication (mibIndex, mibStatus)の変数を持つ。
変数 mibIndexには、設定したMIB変数を指示する変数名を格納する。
変数 mibStatusには、要求を実行した結果を格納する。
3.1.6 (オプション)接続管理サービス
接続管理サービスでは、以下のサービスをアプリケーションに対して提供することで、アプリケーションを車々間通信M/Wに登録・削除及び初期接続開始のためのAnnouncementFrame送信開始機能を提供する。
(1)下位レイヤの接続状況を管理・監視し、アプリケーションからの要求に応じて、接続状況の報告や新規接続・切断を通知するサービス。
(2)接続管理サービス間で、受信可能ポート番号を通知し合うことで、相手局が有する受信可能ポート番号を管理し、アプリケーションからの要求に応じて、それらの状況を報告したり、あるポートが受信可能になったことを通知するサービス。
なお、接続管理サービスは車々間通信M/W上のアプリケーションと同様の位置づけとし、接続管理サービス間のイベント送受信は、下位レイヤの提供するデータ転送サービスを利用する。
3.1.6.1 サービス通知要求プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、初期接続のためのAnnouncement Frameの送信開始を要求するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、常にアプリケーションが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、M/W-Application.request(linkAddress, PortNo)の変数を持つ。
変数linkAddressには、相手局を識別するリンクアドレスを格納する。プライベートリンクアドレスを、又はグループ同報リンクアドレスが指定できる。
変数PortNoには、アプリケーションのローカルポート番号を設定する。
3.1.6.2 サービス通知確認プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、サービス通知要求プリミティブに対する応答を返すサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、常に車々間通信M/Wが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、M/W-Application.confirm(ResultCode)の変数を持つ。変数 ResultCodeには、結果を示すコードを格納する。
3.1.6.3 サービス通知着信プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、初期接続のためのAnnouncement Frameの着信を通知するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、常に車々間通信M/Wが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、M/W-Application.indication(linkAddress, PortNo)の変数を持つ。
変数linkAddressには、相手局を識別するリンクアドレスを格納する。プライベートリンクアドレスを、又はグループ同報リンクアドレスが指定できる。
変数PortNoには、アプリケーションのローカルポート番号を設定する。
3.1.6.4 サービス通知応答プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、サービス通知着信プリミティブに対して応答するサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、常にアプリケーションが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、M/W-Application.response(ResultCode)の変数を持つ。変数 ResultCodeには、結果を示すコードを格納する。
3.1.6.5 アプリケーション登録プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、車々間通信M/Wにアプリケーションがサポートするアプリケーションを登録するためのサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、常にアプリケーションが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、RegisterPort.request(PortNo, Priority)の変数を持つ。
変数PortNoには、アプリケーションのローカルポート番号を設定する。
変数Priorityには、アプリケーションの優先度を格納する。
3.1.6.6 アプリケーション削除プリミティブ
(1)機能 このプリミティブは、車々間通信M/Wに登録されたアプリケーションを削除するためのサービスプリミティブである。
(2)生成契機 このプリミティブは、常にアプリケーションが生成する。
(3)プリミティブの変数 このプリミティブは、DeregisterPort.request(PortNo)の変数を持つ。変数PortNoには、アプリケーションのローカルポート番号を設定する。
3.2 プロトコルデータ単位(PDU)
3.2.1 PDU形式
車々間通信M/Wの管理を行う通信制御管理は、管理エンティティ間での同位プロトコルを形成するため、通信制御管理にアプリケーションと同等のポート番号を割り当て、通信制御の通信サービスインタフェースを利用して管理エンティティ間でのデータ送受信を可能にしている。
M/W−PDUの形式を図13に示す。M/W−PDUは、車々間通信M/Wの手順を指示するための制御情報を格納する制御フィールド(通信制御情報)と、上位アプリケーションのPDUを格納する情報フィールド(M/W−SDU)からなる。
3.2.2 PDU要素
3.2.2.1 コネクションの識別
通信制御管理の識別のためのポート番号は、M/W−PDUの制御フィールドにて授受する。また、コネクション識別のためのリンクアドレス等は、車々間通信M/Wの通信制御が提供するサービスプリミティブの変数として授受する。
3.2.2.2 制御フィールドの形式
通信制御管理の手順を指示する制御フィールドには、ポート番号フィールドとポート番号のオプションフィールドで構成する通信制御情報を格納する。この通信制御情報のフィールド形式を図14に示す。
(1)ポート番号フィールド(PortNo)
ポート番号フィールドには、通信制御管理のアクセス点を識別する値を格納する。
(2)ポート番号フィールドのオプションフィールド
ポート番号フィールドのオプションフィールドには、通信制御管理の手順を指示する制御情報を格納する。また、ポート番号フィールドは、制御内容を捕捉するための付加情報を多重するオプションフィールドを有しており、通信制御管理は必要に応じてこのオプションフィールドを使用する。通信制御管理では、図15に示す識別情報を定義し、移動局間で共有するメッセージを定義する。
3.2.2.3 情報フィールドの形式
情報フィールドはNULL(長さ0のデータ)とする。
3.3 通信接続管理
3.3.1 通信接続管理の手順要素
3.3.1.1 M/Wプロファイル
M/Wプロファイルは、車々間通信M/Wの特性を相手局に示すもので、車々間通信M/Wが実装する機能リスト及び提供可能なアプリケーションのリストなどで構成する。M/Wプロファイルには、以下の変数が含まれる。
(1)バージョン情報
バージョン情報は、車々間通信M/Wのバージョン情報を示す。本規格では「0」とする。
(2)移動局識別情報
移動局識別情報には、移動局を識別する識別子を格納する。移動局でユニークな値を割り付けることを原則とする。
(3)移動局の接続管理タイマ値
移動局の接続管理タイマ値は、自局が相手局との接続状態を管理する通信接続管理タイマCTで設定するTmaxを示すもので、ミリ秒を単位とする。移動局の接続管理タイマ値は、0から4095の範囲の値を設定する。なお、値として「0」を設定した場合は無限大とする。
(4)アプリケーション識別情報
アプリケーション識別情報には、移動局がサポートするアプリケーションの種類を指示する識別子を格納する。アプリケーション識別情報は、アプリケーション登録プリミティブによって登録される。
(5)車々間通信M/Wの機能識別情報
車々間通信M/Wの機能識別情報には、移動局の車々間通信M/Wがサポートする機能を識別する識別子を格納する。
(6)下位レイヤの通信プロトコル識別情報
下位レイヤの通信プロトコル識別情報には、移動局の下位レイヤがサポートする通信プロトコルを識別する識別子を格納する。
3.3.1.2 管理制御変数
3.3.1.2.1 通信接続管理タイマ(CT、Tmax)
通信接続管理タイマは、自局と接続している相手局間の通信接続の状態を監視するタイマである。CTは相手局との通信接続毎に生成し、当該移動局との通信終了時に破棄する。Tmaxは、CTに設定可能な最大のタイマ値である。
3.3.1.2.2 送信スケジュール監視タイマ(WTTS)
送信スケジュール監視タイマは、相手局に対して定期的な送信が保証されているかを監視するための自局のタイマである。送信スケジュール監視タイマは、相手局との通信接続毎に生成し、当該移動局との通信終了時に破棄する。この送信スケジュール監視タイマには、通信接続管理タイマで設定したTmaxを設定する。
3.3.1.3 通信接続管理情報の形式
通信接続管理では、通信接続管理情報に接続管理のための手順を指示する制御情報を格納し、移動局間で共有するメッセージを定義する。
3.3.1.3.1 アナウンスメントメッセージ (AnnouncementPDU)
アナウンスメントメッセージは、アナウンスメントデータを送信するためのメッセージである。アナウンスメントメッセージの形式を図16に示す。
(1)ポート番号(PortNo)
ポート番号は、通信制御管理のアナウンスメントメッセージを示す識別子を格納する。具体的には、図15に示すポート番号を格納する。
(2)トランザクションID(TransactionID)
トランザクションIDにより各々トランザクションを区別し、これにより同一アプリケーション間で複数トランザクションが同時に存在する状況にも対応可能となる。トランザクションIDの付番方式は、16ビット構成であり、新規のトランザクション発行毎に1インクリメントされる。
(3)アプリケーションフラグ(ApplicationFlag)
アプリケーションフラグは、アナウンスメントメッセージ にアプリケーション情報が含まれているか否かを示す識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、車々間通信M/Wは制御フィールドに自局が提供可能なアプリケーションの情報を含むことを示す。アプリケーション情報を含まない場合は、本識別子は偽値(false)とする。なお、アプリケーション情報には、後述のアプリケーション数、アプリケーションID、及びアプリケーションプライオリティが含まれる。
(4)アプリケーション数(ApplicationNumber)
アプリケーション数は、提供可能なアプリケーションの総数を示す。
(5)アプリケーションID(ApplicationID)
アプリケーションIDは、アプリケーションを識別する識別子である。M/Wプロファイルを参照して、登録されているアプリケーションIDを格納する。
(6)アプリケーションプライオリティ(ApplicationPriority)
アプリケーションプライオリティは、アプリケーションの優先度を示す。
(7)チャネルフラグ(ChannelFlag)
チャネルフラグは、アナウンスメントメッセージにチャネル情報が含まれているか否かを示す識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、車々間通信M/Wは制御フィールドに自局が監視しているチャネルの情報を含むことを示す。チャネル情報を含まない場合は、本識別子は偽値(false)とする。
(8)チャネル数
チャネル数は、自局が監視しているチャネルの総数を示す。
(9)チャネル番号
チャネル番号は、チャネルを識別する識別子を示す。
(10)チャネル利用率
チャネル利用率は送受信を行っているチャネルが使用中(ビジー)の割合を表す変数である。単位は%とし、0から100までの値を設定する。この変数から相手局のチャネル利用率を取得し、自局のチャネル利用率と比較して差分が大きい場合には、自局にとって隠れ端末となる移動局が複数存在することが推定できる。
(11)予約フィールド
予約フィールドは、将来拡張するために予め確保しておくフィールドである。
3.3.1.3.2 参加メッセージ(JoinPDU)
参加メッセージは、初期接続を完了するために参加要求を行うメッセージである。参加メッセージの形式を図17に示す。
(1)ポート番号
ポート番号には、通信制御管理の参加メッセージを示す識別子を格納する。具体的には、図15に示すポート番号を格納する。
(2)トランザクションID
トランザクションIDにより各々トランザクションを区別し、これにより同一アプリケーション間で複数トランザクションが同時に存在する状況にも対応可能となる。トランザクションIDの付番方式は、16ビット構成であり、新規のトランザクション発行毎に1インクリメントされる。
(3)ResultCode
ResultCodeは、初期接続を行うか否かの結果を示す。ResultCodeは、接続相手とサポートするアプリケーションが異なる場合は「接続しない」を通知し、サポートするアプリケーションが存在する場合は「接続する」を通知する。ResultCodeの内容を図18に示す。
(4)アプリケーションフラグ(ApplicationFlag)
アプリケーションフラグは、アプリケーション情報が含まれているか否かを示す識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、車々間通信M/Wは制御フィールドに自局及び相手局の双方がサポートできるアプリケーションの情報を含むことを示す。アプリケーション情報を含まない場合は、本識別子は偽値(false)とする。なお、アプリケーション情報には、アプリケーションIDが含まれる。
(5)アプリケーション数(ApplicationNumber)
アプリケーション数は、自局及び相手局の双方がサポート可能なアプリケーションの総数を示す。
(6)アプリケーションID(ApplicationID)
アプリケーションIDは、自局及び相手局の双方がサポート可能なアプリケーションを識別する識別子を示す。
3.3.1.3.3 確認応答メッセージ(ACKPDU)
確認応答メッセージは、再送要求が行われている場合に確認応答を返すためのメッセージである。確認応答メッセージの形式を図19に示す。
(1)ポート番号
ポート番号には、通信制御管理の確認応答メッセージを示す識別子を格納する。具体的には、図15に示すポート番号を格納する。
(2)トランザクションID
トランザクションIDにより各々トランザクションを区別し、これにより同一アプリケーション間で複数トランザクションが同時に存在する状況にも対応可能となる。トランザクションIDの付番方式は、16ビット構成であり、新規のトランザクション発行毎に1インクリメントされる。
(3)再送データフラグ
再送データフラグは、再送されたデータか否かを表すフラグである。このフラグが「1」を示す場合、PDUは再送されたデータを表す。
(4)予約フィールド
予約フィールドは、将来拡張するために予め確保しておくフィールドである。
3.3.1.3.4 選択的再送メッセージ(NACKPDU)
選択的再送メッセージは、分割組立処理の選択的再送処理のメッセージである。選択的再送メッセージの形式を図20に示す。
(1)ポート番号
ポート番号には、通信制御管理の選択的再送メッセージを示す識別子を格納する。具体的には、図15に示すポート番号を格納する。
(2)トランザクションID
トランザクションIDにより各々トランザクションを区別し、これにより同一アプリケーション間で複数トランザクションが同時に存在する状況にも対応可能となる。トランザクションIDの付番方式は、16ビット構成であり、新規のトランザクション発行毎に1インクリメントされる。
(3)再送データフラグ
再送データフラグは、再送されたデータか否かを表すフラグである。このフラグが「1」を示す場合、PDUは再送されたデータを表す。
(4)未受信のPDUの順序番号の数
未受信のPDUの順序番号の数は、受信できていないPDUのセグメントの数を示す。
(5)未受信のPDUの順序番号のリスト
未受信のPDUの順序番号のリストは、受信できていないPDUのセグメントナンバーのリストを示す。
3.3.2 通信接続管理の手順
3.3.2.1 下位レイヤの利用条件
車々間通信M/Wは利用可能なアプリケーションが少なくとも1つ以上存在する場合に、下位レイヤ環境の利用を可能にすることを原則とする。
3.3.2.2 初期接続手順
個別通信を用いた通常アプリケーションの初期接続手順を示す。なお、同報通信を用いるアプリケーションでは初期接続手順なしにアプリケーションの実行が可能である。手順を図21に示し、以下に詳細を述べる。
(1)移動局の各アプリケーションは受信可能なポート番号をアプリケーション登録プリミティブ(RegisterPort.request)を用いて、車々間通信M/Wの通信接続管理に通知する。
(2)通信接続管理は変数PortNoで示されるアプリケーションのポート番号を車々間通信M/Wプロファイルに登録する。
(3)個別通信を行うアプリケーションは、サービス通知要求プリミティブ(M/W-Application.request)を用いて、ノードA(Node A)の車々間通信M/WにAnnouncementPDUの送信を要求する。なお、図21に示すM/W-Application.requestではLID=0xffffとし、LIDのノードを特に特定していない。
(4)ノードA(Node A)の車々間通信M/Wは、車々間通信M/Wプロファイルを参照して、3.3.1.3.1の規定に従ってAnnouncementPDUを生成後、転送サービス処理を経由して下位レイヤ(MLME:MAC layer management entity)の提供するデータ送信プリミティブによって送信する。
(5)ノードB(Node B)の車々間通信M/Wは、AnnouncementPDUを受信すると、AnnouncementPDUに含まれるアプリケーション識別情報と自局のM/Wプロファイルとを比較して、両者が共にサポートするアプリケーションのみ有効とする。
(6)ノードB(Node B)の車々間通信M/Wでサポートされているアプリケーションが接続可能の場合は、相手局に接続を要求するため、3.3.1.3.2の規定に従ってJoinPDUを生成後、ノードA(Node A)に送信する。接続可否が不明の場合は、サービス通知着信プリミティブ(M/W-Application.indication)を用いて、アプリケーションに接続可能か否かを問い合わせ、サービス通知応答プリミティブ(M/W-Application.response)で結果を取得し、その結果をJoinPDUで通知する。
(7)JoinPDUを受信したノードA(Node A)の車々間通信M/Wは、JoinPDUに含まれる結果から接続管理テーブルを更新し、相手局(ノードB(Node B))に確認応答を返すために3.3.1.3.3の規定に従ってACKを生成・送信し、初期接続を完了する。また、ノードA(Node A)では、結果をサービス通知確認プリミティブ(M/W-Application.confirm)でアプリケーションに通知する。
(8)確認応答ACKを受信したノードB(Node B)の車々間通信M/Wは接続管理テーブルを更新して初期接続を完了する。
(9)以降は、接続済みの移動局間の通信が可能となる。
3.3.2.3 通信接続管理手順
移動局の通信接続の維持管理を行うための手順を以下に示す。
移動局の通信制御管理では、通信接続時に通信接続管理タイマ(CT)を生成する。生成した通信接続タイマには移動局の最大タイマ値(Tmax)を参照して、その値を設定し起動する。以降、通信接続タイマは、移動局からの有効なサービスプリミティブの着信の通知を受けるたびに再起動させる。
移動局からの有効なサービスプリミティブの着信がなく、通信接続タイマがタイムアウトした場合には、使用可能としていたアプリケーションに対してイベント通知プリミティブで状態「通信切断の通知」を発行する。そして、移動局の通信制御管理では、当該移動局に対するアプリケーションの使用を終了するとともに接続管理テーブルを更新する。また、当該移動局との処理プロセス及び通信接続タイマは、通信切断時に終了させ、新たな接続通知もしくは同報受信の待ち受けを行うようにする。
3.4 輻輳回避制御機能
3.4.1 輻輳回避制御機能の手順要素
3.4.1.1 輻輳状態レベル
輻輳状態レベルには、車々間通信M/Wが判定する現在のチャネルの利用状態のレベルを格納する。
3.4.1.2 送信電力レベル
送信電力レベルは、送信する電力のレベルを示す。
3.4.1.3 受信感度レベル
受信感度レベルは、受信できる電力の閾値レベルを示す。
3.4.1.4 チャネル数
チャネル数は、車々間通信で利用できるチャネルの総数を示す。
3.4.1.5 チャネル番号
チャネル番号は、チャネル固有の番号を示す。
3.4.1.6 チャネル利用率
チャネル利用率は、指定されたチャネル番号におけるチャネルのビジーの割合を示す。
3.4.1.7 輻輳回避制御プロファイル
輻輳回避制御プロファイルは、周辺に存在する局の輻輳特性を示すもので、周辺に存在する移動局におけるチャネル利用率などで構成する。この輻輳回避制御プロファイルには、以下の内容が含まれる。
(1)バージョン情報
(2)移動局識別子(LID)
(3)ポート番号
(4)ノートプライオリティ
(5)送信電力
(6)受信感度
(7)送信間隔
(8)送信チャネル
(9)チャネル利用率
3.4.1.8 管理制御変数
3.4.1.8.1 通信車両台数
通信車両台数には、自車両が現在、通信中の車両の台数を格納する。この値は、車両情報設定要求プリミティブ(SetVehicleInfo.request)によって設定されるか、MIB情報設定要求プリミティブ(MeSet.request)によってアプリケーションから設定される。
3.4.1.8.2 最大送信電力(MaxTransmitPower)
最大送信電力は、送信電力制御によって実現可能な最大の送信電力を示す。
3.4.1.8.3 最小送信電力(MinTransmitPower)
最小送信電力は、送信電力制御によって実現可能な最小の送信電力を示す。
3.4.1.8.4 最大受信感度(maxSensitivity)
最大受信感度は、実現可能な受信感度の内、最大の受信感度を示す。
3.4.1.8.5 最小受信感度(minSensitivity)
最小受信感度は、実現可能な受信感度の内、最小の受信感度を示す。
3.4.1.9 輻輳回避制御情報の形式
輻輳回避制御では、制御フィールドに輻輳回避制御のための手順を指示する制御情報(輻輳回避制御情報)を格納し、移動局間で共有するメッセージを定義する。
3.4.1.9.1 輻輳回避制御メッセージ
輻輳回避制御メッセージは、輻輳回避制御情報を相手局に送信するためのメッセージである。輻輳回避制御メッセージの形式を図22に示す。
(1)ポート番号(PortNo)
ポート番号は、送信先のアプリケーション及び通信制御サービスを指示する識別子である。具体的には、図15に示すポート番号を格納する。
(2)ノード優先度(NodePriority)
ノード優先度は、車両の優先度を表す。ノード優先度は、相手局の優先度と、下位レイヤから受信した相手局のリンクアドレスとを車々間通信M/WのMIBで管理する。自局がPDUを送信する際に、自局の優先度と相手局の優先度、チャネル利用率に応じて通信制御を行うために用いる。
(3)トランザクションタイプ(TransactionType)
トランザクションタイプは、トランザクションのタイプを指定し格納する。0:データ送信トランザクションサービス、1:リクエスト・レスポンス型トランザクションサービス。この識別子が「1」を示す場合、再送処理が有効となり、メッセージを相手に対して通知すると共に、そのメッセージに対する確認応答(ACK)を取得する。リクエスト・レスポンス型トランザクションサービスは個別通信でのみ使用可能である。
(4)再送データフラグ(Retransmit Data Flag)
再送データフラグは、再送されたデータか否かを表すフラグである。このフラグが「1」を示す場合、PDUは再送されたデータを表す。
(5)トランザクションID(TransactionID)
トランザクションIDは、トランザクションにより各々トランザクションを区別し、これにより同一アプリケーション間で複数トランザクションが同時に存在する状況にも対応可能となる。トランザクションIDの付番方式は、16ビット構成であり、新規のトランザクション発行毎に1インクリメントされる。
(6)セグメントフラグ(SegmentFlag)
セグメントフラグは、分割転送の有効・無効を指示する識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、M/W−PDUは分割転送されるセグメントであることを示す。セグメント処理しない場合は、本識別子は偽値(false)とする。
(7)セグメント終端フラグ(SegmentFlag)
セグメント終端フラグは、分割転送の最終セグメントであることを示す識別子である。このフラグが真値(true)を示す場合、車々間通信M/Wは分割転送されたセグメントの最終セグメントであることを示す。セグメント処理しない場合及び最終セグメントではない場合には、本識別子は偽値(false)とする。
(8)PDUグループ番号(pduGroup)
PDUグループ番号は、セグメントの識別情報である。PDUグループ番号は、分割処理を施す前のM/W−SDUに対して一つの値を付番する。付番は送信キューを単位としてモジュロ32で行い、分割処理をしないM/W−SDUにも付番する。分割処理されたセグメントを組み立てる際には、同一のPDUグループ番号を対象とする。
(9)セグメントナンバー(SegmentNo)
セグメントナンバーは、セグメントの分割順序を示すシリアル番号である。分割した最初のセグメントには「0」のセグメントナンバーが付番され、以降順にインクリメントされた値を割り当てる。セグメントの組立ではセグメントナンバーの順番が保障される。分割転送が適用されない場合のセグメントナンバーは「0」とする。
(10)チャネルフラグ(ChannelFlag)
チャネルフラグは、通信制御情報にチャネル情報が含まれているか否かを示す識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、車々間通信M/Wは制御フィールドにチャネル情報を含むことを示す。チャネル情報を含まない場合は、本識別子は偽値(false)とする。
(11)チャネル数(ChannelCount)
チャネル数は、通信制御情報に含まれているチャネルの総数を示す。
(12)チャネル番号(ChannelNumber)
チャネル番号は、チャネルを識別する番号を示す。
(13)チャネル利用率(ChannelUsageRate)
チャネル利用率は、送受信を行っているチャネルが使用中(ビジー)の割合を表す変数である。単位は%とし、0から100までの値を設定する。この変数から相手局のチャネル利用率を取得し、自局のチャネル利用率と比較して差分が大きい場合には、自局にとって隠れ端末となる移動局が複数存在することが推定できる。
(14)自車両パラメータフィールド(MyParameter)
自車両パラメータフィールドには、(a)送信電力サブフィールド、(b)受信感度サブフィールド、(c)送信間隔サブフィールドを備える。自車両パラメータフィールドは、自車両において現在設定されている送信電力・受信感度・送信間隔の各パラメータを示す。
(15)相手車両への要求パラメータフィールド(OtherParameter)
相手車両への要求パラメータフィールドは、(a)送信電力サブフィールド、(b)受信感度サブフィールド、(c)送信間隔サブフィールドを備える。相手車両への要求パラメータフィールドは、現在の状況において、自車両が相手車両に設定を要求する送信電力・受信感度・送信間隔の各パラメータを示す。
3.4.2 輻輳回避制御の手順
3.4.2.1 輻輳推定手順
移動局は、輻輳回避制御プロファイルのバージョン情報を元に通信可能なバージョンを選択できた場合に、以下の輻輳回避制御手順を実施する。
(1)アプリケーションは、自車両情報に変更が生じた場合に車両情報設定要求プリミティブ(SetVehicleInfo.request)を車々間通信M/Wに発行し、自車両に関する情報(車両ID、車速、通信車両台数、送信間隔、危険度)を受け取る。受け取った情報をMIBに保存する。
(2)車々間通信M/Wは、下位レイヤが提供する管理サービスインターフェイスを利用して、下位レイヤのMIBからチャネル情報(チャネル番号、チャネル利用率)を取得する。
(3)次に、車々間通信M/Wは、取得した自車両情報とチャネル情報を用いて、輻輳の発生が近いか否かを示す輻輳状態レベルを推定する。輻輳推定の一例を以下に示す。この例では、チャネル利用率だけを参照し輻輳推定を行う方法を示す。車々間通信ではCSMA(Carrier Sense Multiple Access)を利用することが想定されているため、フレーム間スペース(IFS:Inter Frame Space)を考慮するとチャネル利用率が75%程度になると輻輳状態と推定する。チャネル利用率と輻輳状態レベルとの関係を図23に示す。
3.4.2.2 輻輳回避制御の手順
車々間通信M/Wの輻輳回避制御は、送信電力制御・受信感度制御・マルチチャネル制御・送信間隔制御を組み合わせて、送信電力・受信感度・送信周期・送信チャネルなどの通信制御情報のパラメータを決定する。また、輻輳回避制御では、アプリケーションの優先度、車両の優先度(危険度、所要距離、許容遅延時間を含む)、及びチャネル利用率に応じて、パケット到着率を改善するための連送制御の連送回数及びパケットを送信する下位レイヤの通信プロトコルを決定する。以下では車々間通信M/Wにおける輻輳回避制御の手順を記述する。
3.4.2.2.1 アプリケーションデータ送信時の輻輳回避制御
(1)輻輳回避制御は、2.4.3に記載した送信間隔制御からデータ送信要求プリミティブ(TransferData.request)に含まれるアプリケーションの優先度、(オプション変数extensionParameterから所要距離、許容遅延時間)、及び3.4.2.1で設定される輻輳状態レベル、3.4.1.7で規定される輻輳回避制御プロファイルを取得する。
(2)適応的な輻輳回避制御の一例を示す(シングルチャネル)。輻輳回避制御は以下の手順で行う。
(a)アプリケーションの優先度やチャネル利用率に関わらず、車両情報取得要求プリミティブで取得した車速(speed)から、車速に基づいた送信電力制御により基準となる送信電力(transmitPowerLevel)を設定する。車速に応じた送信電力設定の一例を以下に示す。この例ではASV(Advanced Safety Vehicle)プロジェクトにおいて車両が停止に要するまでの距離だけ通信が可能な送信電力を設定している。具体的には、図24に示すような関係となる。
(b)輻輳状態レベルに応じて、通信制御を行う。
(ア)輻輳状態レベルが「4」よりも小さい場合:通信トラフィックが増加しても輻輳は発生しない。
(i)送信電力を最大送信電力(10mW)、送信周期を基準の送信間隔(100msec)に設定する。アプリケーションの優先度・危険度が高い場合には信頼性を高めるために連送回数を2回(輻輳状態レベル3,4)及び3回(輻輳状態レベル1,2)に設定する。
(イ)輻輳状態レベルが「5」,「6」の場合:輻輳をしない適度なトラフィック量
(i)アプリケーションの優先度及び危険度が低い場合、送信電力は(a)の設定・送信周期はアプリケーションの設定に従う。
(ii)アプリケーションの優先度及び危険度が高い場合、送信電力を最大送信電力(10mW)、送信周期をアプリケーションの設定する送信周期に設定する。
(ウ)輻輳状態レベルが「7」よりも大きい場合:ほぼ輻輳状態
(i)アプリケーションの優先度・危険度が低い場合、送信電力を(a)の設定よりも小さくし、送信周期も長く設定する。また、アプリケーションの優先度・危険度が低い場合には輻輳回避制御プロファイルに周辺車両から要求されている通信制御情報のパラメータがあればその値に設定する。
(ii)アプリケーションの優先度・危険度が高い場合、送信電力は所要距離を満足するように設定し、送信周期は許容遅延時間を満足するように設定する。
(iii)下位レイヤが複数存在する場合で、且つアプリケーションに送信する下位プロトコルを指定されていない場合は、混雑していない周波数を利用する通信プロトコルを選択し、その周波数における輻輳状態レベルに応じて通信制御情報のパラメータを設定する。
(iiii)複数チャネルが利用できる場合、混雑していない送信チャネルを選択し、その送信チャネルにおける輻輳状態レベルに応じて通信制御情報のパラメータを設定する。
(3)(2)で決定した送信電力・受信感度・送信チャネルを、下位レイヤの提供する管理サービスインタフェースを利用して下位レイヤのMIBに設定し、送信周期・連送回数及び下位プロトコルは送信間隔制御部に渡して、輻輳回避制御を完了する。
3.4.2.2.2 輻輳回避制御データ送信時の輻輳回避制御
(1)送信局の処理
(a)車々間通信M/Wは、3.4.1.9の規定に従って輻輳回避制御情報を生成する。生成するタイミング及び契機は、例えば輻輳状態レベルが「5」よりも大きくなった場合に一定間隔で送信する。
(b)自局の通信制御情報のパラメータは、3.4.2.2.1に記載のアルゴリズムによって設定した送信電力・受信感度・送信周期を設定する。自局の優先度及びアプリケーション優先度が低い場合には輻輳回避制御情報の送信を中止し、自局の優先度及びアプリケーション優先度が高い場合には相手局に要求する通信制御情報のパラメータは自局の送信電力よりも低くし、送信周期は長く設定する。
(c)輻輳回避制御情報を付加したM/W−PDUを転送サービス制御に渡して、送信処理を完了する。
(2)受信局の処理
(a)転送サービス処理から輻輳回避制御情報を示すM/W−PDUを受信すると、輻輳回避制御処理は受信した輻輳回避制御情報を輻輳回避制御プロファイルに登録して、受信処理を完了する。
3.5 アクセス管理
3.5.1 アクセス管理の手順要素
3.5.1.1 セキュリティプロファイル
セキュリティプロファイルは、M/Wプロファイルでの車々間通信M/Wの機能識別情報に、セキュリティ機能の登録がある場合に有効となる情報である。アクセス管理では、機器認証機能が有効な場合にセキュリティプロファイルを参照し、オプション情報等の設定を行う。
(1)機器認証有効識別子(authenticate)
機器認証有効識別子は、機器認証機能の有効/無効を指示する識別子である。この識別子が真値(true)を示す場合、機器認証を実行する。機器認証を実行しない場合は、本識別子は偽値(false)とする。
(2)機器識別子(userID)
機器識別子は、機器認証に用いる移動局の識別子である。この識別子は、移動局のみでの利用とし、基地局ではNULL(長さ0のデータ)を格納する。
(3)機器認証アルゴリズム識別子(authenticationMethod)
機器認証アルゴリズム識別子は、機器認証に用いる署名アルゴリズムの識別子である。この識別子はオプションである。署名アルゴリズムを指定する場合にアルゴリズムの識別子を格納する。なお、機器認証アルゴリズム識別子が存在しない場合は、デフォルトの署名アルゴリズムを使用する。なお、機器認証アルゴリズム識別子は、システムの運用者が指定することを想定している。
3.5.1.2 デフォルトの署名アルゴリズム
デフォルトの署名アルゴリズムは、デフォルトが選択された場合に乱数とパスワードによる署名演算は行わず、平文のパスワードを演算結果として取り扱うものとする。
3.5.1.3 認証試行回数(NA)
認証試行回数(NA)は、移動局が再試行する認証要求を許容する回数である。基地局は同一移動局からの再試行回数がNA回以下の場合には再試行を認め、NA回を超過した場合には通信を切断する。なお、認証試行回数の値は、実装要件とし規定しない。
3.5.1.4 アクセス制御情報の形式
アクセス管理では、アクセス制御情報にアクセス管理のための手順を指示する制御情報を格納し、移動局間で共有するメッセージを定義する。
3.5.1.4.1 乱数の送信メッセージ(ChallengeCodePDU)
乱数の送信メッセージは、署名元データとなる乱数を送信するためのメッセージである。乱数の送信メッセージの形式を図25に示す。
(1)ポート番号
ポート番号は、通信制御管理の乱数の送信メッセージを示す識別子を格納する。
(2)ポート番号のオプションフィールド
ポート番号のオプションフィールドは、以下の内容を格納する。
(a)乱数の長さ識別子
乱数の長さ識別子は、後続する乱数のデータ長を指示する。単位はオクテット。
(b)乱数の内容
乱数は、0−255オクテットまでの可変長データとする。
3.5.1.4.2 署名の応答メッセージ(SigniturePDU)
署名の応答メッセージは、受信した署名元乱数に対する署名結果を送信するためのメッセージである。署名の応答メッセージの形式を図26に示す。
(1)ポート番号
ポート番号には、通信制御管理の署名の応答メッセージを示す識別子を格納する。
(2)ポート番号のオプションフィールド
ポート番号のオプションフィールドは、以下の内容を格納する。
(a)署名の長さ識別子
署名の長さ識別子は、後続する署名のデータ長を指示する。単位はオクテット。
(b)署名の内容
署名は、0−255オクテットまでの可変長データとする。
3.5.2 アクセス管理の手順
図27に、機器認証手順の概略を示す。以下、図27に基づいて機器認証手順を説明する。
3.5.2.1 機器認証における初期設定
(1)データ受信局の初期設定
データ受信局は、下位レイヤからデータ着信プリミティブによる指示を受け付けると、機器認証の処理に状態を移行する。この際、当該プリミティブから取得したM/Wプロファイル内のセキュリティプロファイルの内容を以下の手順で確認する。
(a)機器認証有効識別子の値が真値(true)である場合、署名アルゴリズム識別子の内容を確認し、当該識別子に示すアルゴリズムを選択する。一方、署名アルゴリズム識別子が存在しない場合には、デフォルトのアルゴリズムを選択する。
(b)次に、機器識別子を参照し当該識別子に対応するパスワードを取得し、後述の3.5.2.2の(1)に規定する認証処理へと移行する。なお、パスワードの取得手段については規定しない。
(c)データ送信局のセキュリティプロファイルが存在しない場合、セキュリティプロファイルの機器認証有効識別子の値が偽値(false)である場合には、機器認証処理を終了する。なお、機器認証有効識別子の値が真値(true)である場合の署名アルゴリズム識別子の内容が一致しない場合、デフォルトのアルゴリズムを選択するか、通信を終了させるかは運用上の問題であるため、特にここでは規定しない。また、機器認証の機能を有していないデータ送信局からデータ受信局へのアクセスに対する受け入れの可否についても、運用上の問題であるため、特にここでは規定しない。
3.5.2.2 機器認証処理
(1)データ受信局の機器認証処理
データ受信局は、機器認証処理に状態を移行するとまず乱数を生成する。生成した乱数は、乱数の送信メッセージ(ChallengeCodePDU)にてデータ送信局へ送信し、応答を待ち受ける。また、生成した乱数を初期設定手順で取得したパスワードで署名し、署名データを作成する。データ送信局から署名の応答メッセージ(SigniturePDU)による応答を受け付けると、メッセージに格納されている署名データと、データ受信局で作成した署名データとを比較してデータ送信局を認証する。
比較結果が一致する場合には認証成功とし、データ受信局へのアクセスが許可されたことを確認応答メッセージにより通知する。この際、予約フィールドに状態識別子status「アクセスは許可された」を設定する。比較結果が一致しない場合には認証不成功とし、データ受信局に対するアクセスは拒否されたことを確認応答メッセージにより通知する。この際の状態識別子statusには、「アクセスは拒否された」を設定する。
受信したメッセージの内容が期待値と異なる場合には、当該メッセージは破棄し認証の失敗回数に計数の上、新たなメッセージの到着を待ち受ける。また、認証処理中に通信接続管理タイマ(CT)、もしくは送信スケジュール監視タイマ(WTTS)がタイムアウトした場合、処理内容を全て破棄した後、通信を切断して終了する。当該データ送信局に対する認証の失敗回数が認証試行回数(NA)回以下の場合にはデータ送信局からの再試行を認め、再度乱数を生成し乱数の送信メッセージ(ChallengeCodePDU)にて送信する。認証試行回数(NA)を超過した場合には即座に通信を切断する。
なお、認証失敗によって通信切断したデータ送信局が再接続を試みることを許容する場合は、高い頻度で無限にアクセスがなされることに対する対策を考慮すべきである。
(2)データ送信局の機器認証処理
データ送信局は、乱数の送信メッセージ(ChallengeCodePDU)を受信すると、メッセージに格納されている乱数を署名元データとして、当該データ送信局に設定されているパスワードで署名処理を行う。署名処理によって得られた署名データは、署名の応答メッセージ(SigniturePDU)に格納してデータ受信局へ送信し、認証結果を待ち受ける。
確認応答のメッセージで認証成功の通知を受信した場合には、アプリケーションとのポート番号を有効にして、認証処理を終了する。確認応答のメッセージで認証不成功の通知を受信した場合には、再試行のために乱数の送信メッセージを待ち受ける。受信したメッセージの内容が期待値と異なる場合には、当該メッセージは破棄して新たなメッセージの到着を待ち受ける。また、認証処理中に通信接続管理タイマ(CT)がタイムアウトした場合、処理内容は全て破棄し、通信を終了する。
なお、データ受信局認証の失敗による通信切断が発生した場合の当該データ受信局への再接続の可否については、実装要件とし規定しない。
(まとめ)
以上のように、本実施の形態に係る車両用通信装置は、移動局間の車々間通信M/Wが非ネットワーク型プロトコルを利用して通信を行う場合である。この車々間通信M/Wは、上位層の複数アプリケーションから受け取るアプリケーション毎の優先度と、各車両の優先度と、下位レイヤから取得するチャネル利用率に基づいて、自車両及び周辺車両の送信電力や送信間隔・利用チャネル・受信感度などの通信パラメータを変化させて輻輳回避制御を行っている。そのため、本実施の形態に係る車両用通信装置では、輻輳の発生を回避することができ、通信を行う必要がある車両のみが優先的に通信を行うことができる。
また、本実施の形態に係る通信制御サービス部は、自車両が設定する送信電力・送信間隔・受信感度などの通信制御情報を含む輻輳回避制御情報を相手車両と交換することによって、相手車両が自車両に対して要求する送信電力・送信間隔・受信感度などの通信制御情報に基づき、自車両の通信制御を行う。そのため、本実施の形態に係る車両用通信装置では、自車両から周辺車両に対して適応的に周辺車両の通信パラメータを変更することができ、自車両からネットワーク全体の輻輳回避制御を行うことができる。
また、本実施の形態に係る通信制御サービス部は、チャネル利用率(通信チャネル状況)を監視しながら通信制御を行うことで、緊急アプリケーションに対応できるように予め通信帯域を確保することが可能となり、ネットワークの輻輳を回避し遅延時間の短い通信ができる。
また、本実施の形態に係る車両用通信装置は、車々間通信M/Wと下位プロトコル部との違いに対応できるメディアアダプテーション処理部を備えたことで、アプリケーションが下位のプロトコルを意識せずに通信することが可能となる。
また、本実施の形態に係る車両用通信装置は、アクセス管理部を設けることで車々間通信の際に機器認証を行うことができるので、セキュリティの高い車々間通信を行うことができる。
また、本実施の形態に係る通信制御サービス部は、チャネル利用率(通信チャネル状況)を監視しながら通信制御を行うことで、周辺車両および他の通信システムとの干渉を回避することができる。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。

Claims (3)

  1. 所定の目的に応じて車々間通信を行う複数のアプリケーション部と、車々間でデータを送受信する下位プロトコル部と、前記アプリケーション部と前記下位プロトコル部との間に介在するミドルウェア部と、を備える車両用通信装置であって、
    前記ミドルウェア部は、
    前記アプリケーション部に対してデータの受け渡しを行い、且つ前記ミドルウェア部が受信したデータの配信先を識別する転送サービス処理部と、
    前記車々間通信において輻輳を回避する処を行うとともにポート番号の管理を行って前記アプリケーション部を識別する通信制御サービス部と、
    前記データの送信制御及び受信制御を行う送受信制御処理部と、を備え、
    前記通信制御サービス部は、前記輻輳を回避する処理において、前記アプリケーション部毎に受け取るアプリケーション優先度、車両の車両優先度、及び前記下位プロトコル部から取得するチャネル利用率に基づいて、前記自車両の通信における送信電力、送信間隔及び連送回数についての通信制御を行うことを特徴とする車両用通信装置。
  2. 請求項1に記載の車両用通信装置であって、
    前記通信制御サービス部は、前記チャンネル利用率に基づいて輻輳状態を推定し、推定した輻輳状態に基づいて、前記周辺車両に設定を要求する送信電力及び送信間隔を含む輻輳回避制御情報を前記周辺車両に送信することを特徴とする車両用通信装置。
  3. 請求項に記載の車両用通信装置であって、
    前記通信制御サービス部は、前記周辺車両から受信した前記輻輳回避制御情報に従って前記自車両の前記通信制御を行うことを特徴とする車両用通信装置。
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