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JP4817103B2 - 窒化ホウ素ナノチューブの製造方法 - Google Patents

窒化ホウ素ナノチューブの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、窒化ホウ素ナノチューブ及びその製造方法に関する。
窒化ホウ素は、高強度、耐酸化性、熱的・化学的安定性などの優れた特性を有しているため、そのナノチューブは、電子デバイスや機能性ナノ材料としての価値を高めている。今まで、窒化ホウ素ナノチューブは、窒化ホウ素を充填したタングステン棒をプラズマ放電させる方法(たとえば、非特許文献1参照。)、ホウ化ハフニウム棒をプラズマ反応させる方法(例えば、非特許文献2参照。)、六方晶系窒化ホウ素を高圧窒素中でレーザー加熱する方法(例えば、非特許文献3参照。)、鉄触媒の存在のもとでホウ酸−活性炭−多層カーボンナノチューブを原料としアンモニア中で加熱する方法(例えば、非特許文献4参照。)、六方晶系窒化ホウ素とタンタルを窒素ガス雰囲気中でアーク放電させる方法(例えば、非特許文献5参照。)等により製造されている。しかしながら、これらの方法は、信頼性のある大量合成法とは言えず、未だスケールアップのための合成ルートが確立されていない。
「N.G.Chopra、ほか、Science 269巻、966頁、1995年。」 「A.Loiseau、ほか、Phys.Rev.Lett.76巻、4737頁、1996年。」 「D.Golberg、ほか、Chem.Phys.Lett.279巻、191頁、1997年。」 「F.L.Deepak、ほか、Chem.Phys.Lett.353巻、345頁、2002年。」 「M.Terrones、ほか、Chem.Phys.Lett.259巻、568頁、1996年。」
本発明は、上記の現状に鑑み、毒性が低く、安価な単一の原料を窒化ホウ素源として用いて窒化ホウ素ナノチューブ並びにその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するものとして、まず、発明1の窒化ホウ素ナノチューブは、長さ1μm以上、外径20〜120nm、チューブ壁の厚さ3〜20nmを有することを特徴とする。
発明2は、発明1の窒化ホウ素ナノチューブの製造方法であって、窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを加熱して、フッ化マグネシウムを蒸発させることを特徴とする。
発明3は、発明2の窒化ホウ素ナノチューブの製造方法であって、無水塩化マグネシウム塊を加熱炉の中央部に配置し、テトラフルオロホウ酸アンモニウムを該加熱炉の一端に配置すると共に、前記テトラフルオロホウ酸アンモニウムを配置した方の端から該加熱炉内へ不活性ガスを流しながら、無水塩化マグネシウム塊を7×10〜10×10℃に、テトラフルオロホウ酸アンモニウムを320±10℃に加熱することにより、窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを製造した後、第二段階として、ここで製造した前記窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを加熱炉に設置し、不活性ガスを流しながら、12×10〜16×10℃に加熱することにより、フッ化マグネシウムを蒸発させることを特徴とする。
発明4は、発明2又は3の窒化ホウ素ナノチューブの製造方法において、テトラフルオロホウ酸アンモニウムと無水塩化マグネシウムのモル比が3:1〜5:1の範囲であることを特徴とする。
発明5は、発明2から4のいずれかの窒化ホウ素ナノチューブの製造方法において、不活性ガスがアルゴンガスあるいは窒素ガスであることを特徴とする。
本発明により、長さ1μm以上、外径20〜120nm、チューブ壁の厚さ3〜20nmを有する窒化ホウ素ナノチューブが実現される。また、本発明の方法により、毒性の低い安全な原料を用いて簡便なプロセスで窒化ホウ素ナノチューブを製造することが出来る。
本発明の窒化ホウ素ナノチューブは、長さ1μm以上、外径20〜120nm、チューブ壁の厚さ3〜20nmを有している。該窒化ホウ素ナノチューブの製造方法は、二段階からなり、第1段階では、無水塩化マグネシウム塊を穴の開いたふたを有するアルミナボートに入れ、このアルミナボートを加熱炉の中央部に設置し、該加熱炉の一端にテトラフルオロホウ酸アンモニウムを入れた窒化ホウ素製ボートを配置すると共に、該一端から不活性ガスを流しながら、無水塩化マグネシウム塊を7×10〜10×10℃に、テトラフルオロホウ酸アンモニウムを320±10℃に加熱して窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを製造する。
NHBF + 2MgCl → BN + 2MgF + 4HCl
このとき、テトラフルオロホウ酸アンモニウムと無水塩化マグネシウムのモル比は3:1〜5:1の範囲であることが好ましい。テトラフルオロホウ酸アンモニウムの量がこの範囲よりも多いと未反応のまま残存するテトラフルオロホウ酸アンモニウムが生成した窒化ホウ素膜を侵食することが懸念される。逆に、テトラフルオロホウ酸アンモニウムの量が上記の範囲よりも少ないと生成物であるナノワイヤーの収量が低下する。
無水塩化マグネシウムの加熱温度は、上述した7×10〜10×10℃の範囲が好ましい。10×10℃よりも高いと板状粒子の生成や塩化マグネシウムの蒸気が反応系外へ逸散してしまう。7×10℃よりも低いと、反応が起こらない。
不活性ガスは、テトラフルオロホウ酸アンモニウムの蒸気を無水塩化マグネシウム塊のほうへ移送することと酸化防止が目的であるので、アルゴンガスや窒素ガスを使用することができる。その流量は反応装置の大きさ等によって異なるので一概には決められないが、たとえば、加熱反応管の内径が50mm程度の場合は、不活性ガスの流量を50〜200sccmの範囲とすることが好ましい。200sccmよりも多量に流すと蒸気が反応系外へ逸散し、フッ化マグネシウムの生成量が低下する。50sccmよりも流量が少ないと反応管が詰まることが懸念される。また、テトラフルオロホウ酸アンモニウムは、320℃近傍が昇華温度であるので、この近傍の温度で加熱することが望ましい。すなわち、加熱装置の精度にも依るが、現在市販されている加熱装置を使用する場合は、320±10℃にすることは十分制御可能である。このような操作を2時間程度続けることにより、無水塩化マグネシウム塊の表面がわずかに半融し無色のウール状物質が生成する。この無色のウール状物質は、分析することにより、長さ1μm以上、外径20〜120nmを有する窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーであることが確認される。
次に、第2段階では、上記で生成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを加熱炉中に配置し、不活性ガスを流しながら、12×10〜16×10℃に加熱することにより、フッ化マグネシウムが蒸発し、該ナノワイヤーから除去されるので窒化ホウ素ナノチューブが得られる。
この際、加熱する温度は、上述の12×10〜16×10℃の範囲が好ましく、16×10℃で十分にフッ化マグネシウムが蒸発除去されるので、これ以上の温度にする必要はない。12×10℃未満では、フッ化マグネシウムを完全に除去できない。このような操作を行うことにより、白色のウール状の窒化ホウ素ナノチューブが得られる。
次に、実施例を示してさらに具体的に説明する。
和光純薬工業(株)製のテトラフルオロホウ酸アンモニウム(純度98%)20gを窒化ホウ素製ボートに入れ、この窒化ホウ素製ボートを横型アルミナ管状炉の一端に設置した。和光純薬工業(株)製の無水塩化マグネシウム塊(純度99.5%)2gを穴あきのふたつきアルミナボートに入れ、このアルミナボートを前記横型アルミナ管状炉の中央部に配置した。前記テトラフルオロホウ酸アンモニウムを入れた窒化ホウ素製ボートを設置した方の炉の一端から流量80sccmのアルゴンガスを流しながら、テトラフルオロホウ酸アンモニウムを320℃に加熱すると同時に、無水塩化マグネシウム塊を700℃に2時間加熱した。無水塩化マグネシウム塊の表面がわずかに半融状態となり、その表面に無色のウール状物質がおよそ100mg堆積した。同様に、テトラフルオロホウ酸アンモニウムの量、無水塩化マグネシウム塊の量、アルゴンガスの流量並びに加熱時間を同じ値にして、加熱温度だけを、それぞれ、800℃、900℃および1000℃の3点に代えて実験し、無水塩化マグネシウム塊の表面に無色のウール状物質を堆積させた。
なお、上記において、無水塩化マグネシウムの代わりに、含水の塩化マグネシウムを使用した場合には、ウール状物質はほとんど得られなかった。
図1に、生成したウール状物質のX線回折のパターンを示した。(002)面及び星印で示した位置に六方晶系の窒化ホウ素に基づくピークが見られる。他のピークは格子定数a=0.462nm、b=0.304nmを有する正方晶系のフッ化マグネシウムの回折ピークであることが分かった。特に、(110)面、(220)面のフッ化マグネシウムに基づくピークが強く現れている。したがって、ウール状物質は窒化ホウ素とフッ化マグネシウムを含んでいることが分かった。
図2a〜dに無水塩化マグネシウム塊を1000℃、900℃、800℃および700℃にそれぞれ加熱して得たウール状物質の走査型電子顕微鏡像の写真を示した。これらの写真から、得られたウール状物質は、すべて繊維状の形態であった。また、900℃よりも高い温度で合成したウール状物質には板状の物質が含まれている。900℃、1000℃で合成した繊維状物質は長さが数百nmから数μmまでの比較的短い繊維であり、その直径は100nmよりも少し大きい程度である。それに対して、700℃と800℃で合成したウール状物質は、直径が20〜50nmで、長さが10μm以上と非常に長い。
800℃で合成したウール状物質の低倍率透過型電子顕微鏡像の写真を図3aに示し、その高解像度像の写真を図3bに示した。図3aからウール状の形態であることが確認できる。また、図3bからナノワイヤーの中心の外側が無秩序層で覆われている複合構造であることも確認される。この外側の無秩序層の化学組成は、透過型電子顕微鏡に付属されている電子エネルギー損失スペクトルメーターで測定したところ、ほぼ化学量論組成の窒化ホウ素であった
図3cに800℃で合成したウール状物質の中心部分の電子線回折の写真を載せたが、これはフッ化マグネシウムの[−113]晶帯軸のパターンと帰属される。
図4aに、900℃で合成したウール状物質の低倍率透過型電子顕微鏡像の写真を載せた。この図4aからその直径は100nmよりも大きい。図4bにその高解像度写真を示したが、外側(左側)にコートされた窒化ホウ素の層は結晶化されており、その層間隔は0.34nmである。内側(右側)のフッ化マグネシウムナノワイヤーの直径は、一定の均一な太さではなく変動している。
次に、第2段階として、無水塩化マグネシウム塊を700℃に加熱して得た上述の窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤー100mgを窒化ホウ素製るつぼに入れ、このるつぼを縦型高周波誘導加熱炉の中央部に設置した。該加熱炉の中に、流量2000sccmの窒素ガスを流しながら、1600℃に2時間加熱し、フッ化マグネシウムを蒸発させた。無色のウール状物質が20mg得られた。
同様に、無水塩化マグネシウム塊を900℃で加熱して得られた上述の窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを1600℃に2時間加熱してフッ化マグネシウムを蒸発させた。
図5に、1600℃で2時間加熱を行う前と後のウール状物質のフーリェ変換赤外吸収スペクトルの測定結果を示した。この図の上のスペクトルは、1600℃に加熱する前の窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーのスペクトルであるが、フッ化マグネシウムの伸縮振動のピークが500cm−1付近に現れていることが確認できる。図5の下のスペクトルは、1600℃に2時間加熱した後のスペクトルであるが、上述した500cm−1付近のピークが消失しており、フッ化マグネシウムが蒸発したことが裏付けられた。そして、窒化ホウ素に基づく820cm−1の面外変角振動および1378cm−1の面内光学モードの吸収の存在が確認できる。
無水塩化マグネシウム塊を700℃で加熱して得た窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを1600℃に2時間加熱処理してフッ化マグネシウムを蒸発除去したウール状物質の低倍率透過型電子顕微鏡像の写真を図6aに示し、無水塩化マグネシウム塊を900℃に加熱して得た窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを1600℃に2時間加熱してフッ化マグネシウムを除去したウール状物質の低倍率透過型電子顕微鏡像の写真を図6bに示した。図6aの写真から、窒化ホウ素ナノチューブの長さは1μmよりも長く、直径は20〜50nmであることが分かった。そして、その形態は出発物質として使用した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーに類似している。すなわち、窒化ホウ素膜(ナノチューブ)は高温処理しても変形せず、形態が維持されていることが分かった。このナノチューブの壁の厚さは、無秩序層のため10nmよりも大きい。それに対して、900℃で合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを加熱処理したナノチューブの形態は、上記の700℃で合成したものとは異なっており、その外径は約100nmで、チューブ壁の厚さは非常に薄く、3nmから15nmにわたっている。
本発明により、無秩序層からなる窒化ホウ素ナノチューブの製造が可能となったことから優れた圧電特性、水素吸蔵材料等への応用が期待される。
無水塩化マグネシウム塊の加熱温度を変化させて合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーのX線回折のパターンである。 図2aは、無水塩化マグネシウム塊を1000℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーの走査型電子顕微鏡像の写真である。 図2bは、無水塩化マグネシウム塊を900℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーの走査型電子顕微鏡像の写真である。 図2cは、無水塩化マグネシウム塊を800℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーの走査型電子顕微鏡像の写真である。 図2dは、無水塩化マグネシウム塊を700℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーの走査型電子顕微鏡像の写真である。 図3aは、無水塩化マグネシウム塊を800℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーの低倍率透過型電子顕微鏡像の写真である。 図3bは、図3aの高倍率透過型電子顕微鏡像の写真である。 図3cは、無水塩化マグネシウム塊を800℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーの電子線回折の写真である。 図4aは、無水塩化マグネシウム塊を900℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーの低倍率透過型電子顕微鏡像の写真である。 図4bは、図4aの高解像度透過型電子顕微鏡像の写真である。 図5の上のスペクトルは、窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーのフーリェ変換赤外吸収スペクトルの図である。 図5の下のスペクトルは、窒化ホウ素ナノチューブのフーリェ変換赤外吸収スペクトルの図である。 図6aは、無水塩化マグネシウム塊を700℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを1600℃に2時間加熱してフッ化マグネシウムを除去した窒化ホウ素ナノチューブの低倍率透過型電子顕微鏡像の写真である。 図6bは、無水塩化マグネシウム塊を900℃に加熱して合成した窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを1600℃に2時間加熱してフッ化マグネシウムを除去した窒化ホウ素ナノチューブの低倍率透過型電子顕微鏡像の写真である。

Claims (4)

  1. 窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを加熱して、フッ化マグネシウムを蒸発させることを特徴とする、長さ1μm以上、外径20〜120nm、チューブ壁の厚さ3〜20nmを有する窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  2. 請求項1に記載の窒化ホウ素ナノチューブの製造方法であって、無水塩化マグネシウム塊を加熱炉の中央部に配置し、テトラフルオロホウ酸アンモニウムを該加熱炉の一端に配置すると共に、前記テトラフルオロホウ酸アンモニウムを配置した方の端から該加熱炉内へ不活性ガスを流しながら、無水塩化マグネシウム塊を7×10 〜10×10 ℃に、テトラフルオロホウ酸アンモニウムを320±10℃に加熱することにより、窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを製造した後、第二段階として、ここで製造した前記窒化ホウ素膜がコートされたフッ化マグネシウムナノワイヤーを加熱炉に設置し、不活性ガスを流しながら、12×10 〜16×10 ℃に加熱することにより、フッ化マグネシウムを蒸発させることを特徴とする窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  3. テトラフルオロホウ酸アンモニウムと無水塩化マグネシウムのモル比が3:1〜5:1の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
  4. 不活性ガスがアルゴンガスあるいは窒素ガスであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の窒化ホウ素ナノチューブの製造方法。
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