JP4805591B2 - 電波到来方向の追尾方法及び電波到来方向追尾装置 - Google Patents
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Description
いま、線形等間隔アレーに、p個の多重波狭帯域信号{si(k)}が角度{θi}からアレーアンテナに入射しているとする。ここでサンプリング間隔をTsとすると、各素子のアレー受信信号は以下のように表せる。
図のようにアレーアンテナ100において、アンテナ素子101は等間隔dでM個並んでおり、L個のサブアレーに分割されている。ここで、mとLはサブアレーのサイズとサブアレーの個数と呼ばれ、L=M−m+1である。式(1)より、
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まず本発明の実施の形態の電波到来方向追尾方法の概略を説明する。
本発明の実施の形態の電波到来方向追尾方法は、信号源(通話者など)の移動による直接波や反射波の到来方向の運動軌跡が互いに交差するような場合について特に適したものである。
図1は、本発明の実施の形態の電波到来方向追尾方法の概略を説明するフローチャートである。
到来方向はサンプリング間隔Tsに比べて時間的にゆっくり変化するものとし、到来方向追尾期間(すなわち到来方向の計算更新期間)をT=NTs(NはTにおけるスナップショット個数である。)とする。また、サンプリング時刻kと、到来方向追尾時刻nとの関係はk=nN,nN+1,…,(n+1)N−1と表せる。
以下本実施の形態の詳細を説明する。
送信源10から基地局のアレーアンテナ20にまっすぐ入射する電波が直接波11である。また、建物BL1、BL2などの地物によって反射されてから基地局に入射するものが反射波12である。ここでは反射波が2つの場合について示しているが、以下では送信源10からの直接波11と反射波12の個数はpとする。また、pを既知と仮定する。あるサンプリング時刻kにおける直接波と反射波の関係は、次式で表わせる。
図4は、電波到来方向推定システムの構成を示す図である。
電波到来方向追尾部40は、瞬間相関の計算手段41、瞬間相関行列の計算手段42、線形演算子の計算手段43、直交射影作用素の計算手段44、到来方向の暫定値の計算手段45、オブザーバを用いた到来方向の予測手段46、及びオブザーバを用いた到来方向の計算手段47で構成されている。
また、xi(k)を無雑音受信信号、wj(k)を無相関白色雑音とすると、
yi(k)=xi(k)+wi(k)
E[wi(k)wj *(k)]=σ2(i=j)
E[wi(k)wj *(k)]=0(i≠j)
である。すなわち、無相関白色雑音環境ではアレー共分散行列Rの対角要素r11,r22,…,rMMに雑音が含まれている。
また図8は、瞬間アレー共分散行列において電波到来方向推定に必要な行要素を説明する図である。
瞬間相関の計算手段41は、式(12a)を計算することで、アレーアンテナ20におけるM番目のアンテナ素子21の受信信号と第1,2,…,M−1番目のアンテナ素子の受信信号間の、サンプリング時刻kにおける瞬間相関r1M(k),r2M(k),…,rM-1,M(k)(図7の最終列参照)を求める。そして瞬間相関行列の計算手段42は、式(13)を計算することで、以下の図のようにしてHankel相関行列Φf(k)を求め、この瞬間相関行列をそれぞれ上下2つの部分に分割する。
瞬間相関行列の計算手段42は、計算した瞬間アレー共分散行列Rの最終列の(M−1)個の瞬間相関より、信号数(=p個)の瞬間相関を上から下方向に1個ずつずらしながら(M−p)組取り出し、1行目から順番に配列することで、(M−p)×pの瞬間相関行列Φf(k)を作成する。そしてさらに、式(14)のようにΦf(k)を上下2つのp×pの行列Φf1(k)と(M−2p)×pの行列Φf2(k)に分割する。
以上の処理を、瞬間アレー共分散行列R(k)の行についても同様に行う。すなわち、瞬間相関の計算手段41は、式(12b)を計算することで、アレーアンテナ20における1番目のアンテナ素子21の受信信号と第2,3,…,M番目のアンテナ素子の受信信号間の、サンプリング時刻kにおける瞬間相関r12(k),r13(k),…,r1M(k)(図8の第1行目参照)を求める。そして、瞬間相関行列の計算手段42は、式(13)を計算することで、以下の図のようにしてHankel相関行列(瞬間相関行列)Φb(k)を求め、瞬間相関行列をそれぞれ上下2つの部分に分割する。
瞬間相関行列の計算手段42は、瞬間アレー共分散行列R(k)の第1行目の(M−1)個の瞬間相関より、信号数(=p個)の瞬間相関を右から左に1個ずつずらしながら(M−p)組取り出し、1行目から順番に配列することで(M−p)×pの瞬間相関行列Φb(k)を作成する。そしてさらに、式(14)のように上下2つのp×pの行列Φb1(k)と(M−2p)×pの行列Φb2(k)に分割する。
以上のようにして、4つのHankel相関行列と、それぞれを分割した8つの行列が得られる。
以上に述べたように、電波到来方向追尾部40において、ある固定したステップサイズμをもつLMSアルゴリズム及び近似Newton法を利用して、信号の到来方向をオンラインで追尾できる。また、信号源(通話者など)の移動による直接波や反射波の到来方向の運動軌跡が互いに交差するような場合でも、演算量を増やすことなく精確に電波到来方向の推定値を得ることができる。
また、上記では、ある固定したステップサイズμを持つLMSアルゴリズムを用いて、式(17)のように線形演算子P(k)を求めたが、ステップサイズμを時変としてもよい。すなわちステップサイズμをサンプリング時刻kにおける瞬間相関行列Φ1(k)に変動させて、式(17)におけるステップサイズμを
また、LMSアルゴリズムの代わりに、以下の式(26)により表せるNLMSアルゴリズムを用いて線形演算子P(k)を計算してもよい。
図11は、到来方向の推定値の計算結果を示す図である。
ここで、線形等間隔アレーの素子数はM=9素子とする。また、4つの多重波は、それぞれθ1(n)、θ2(n)、θ3(n)、θ4(n)からアレーアンテナに入射し、それぞれのSNRは15dB、10dB、13dB、13dBである。到来方向の追尾期間T=1sにおいてN=100個のスナップショットを観測し、式(26)のNLMSアルゴリズムを用いて到来方向追尾時刻nにおける直交射影作用素Π(n)=Π(k)|k=(n+1)N-1を計算し、式(20)から到来方向の推定値
すなわち、空間相関雑音環境において、アレーアンテナ20におけるM番目のアンテナ素子21の受信信号と、
基地局受信装置は、例えば基地局内に配置され、アレーアンテナ20、ベースバンド/デジタル処理部30、電波到来方向追尾部40のほかに、瞬間ビーム形成器50、チャネル受信部60を有している。
アレーアンテナ20で信号を受信すると、ベースバンド/デジタル処理部30は、アンテナ素子ごとに信号処理して複素デジタル受信データを出力する。電波到来方向追尾部40は、複素デジタル受信データを得て、前述したような電波到来方向の追尾処理を行い到来方向追尾時刻nにおける到来方向の推定値を算出する。瞬間ビーム形成器(受信ビームフォーマ)50は、算出された到来方向の推定値を用いて信号源方向にピークを有するようにビームを形成する。すなわち、瞬間ビーム形成器50は、干渉や雑音などを抑圧しながら希望信号を抽出してチャネル受信部60に送る。チャネル受信部60は周知の方法で受信処理を行って受信データを復調、出力する。なお、瞬間ビーム形成器50として、前述のような本実施の形態の電波到来方向の追尾手法により得られた到来方向の情報を利用して種々の構成が可能であるが、例えば、O.L. Frost, “An algorithm for linearly constrained adaptive array processing,” Proc. IEEE, vol. 60, no. 8, pp. 926-935 (1975)及びJ. Xin, H. Tsuji, Y. Hase, and A. Sano, “Array beamforming based on cyclic signal detection,” Proc. IEEE 48th Vehicular Technology Conference, pp. 890-894, Ottawa, Canada (1998)などに記載されたビーム形成手法を活用して、希望の信号到来方向にビームを向けて受信することが可能である。
瞬間ビーム形成器(送信ビームフォーマ)70は、送信部80から送信データが入力されると、電波到来方向追尾部40により推定された到来方向にピークが向くように送信ビームパターンを形成し、複素デジタル送信信号をベースバンド/デジタル処理部30に入力する。ベースバンド/デジタル処理部30は、複素デジタル送信データを無線信号に変換してアレーアンテナ20aの各アンテナ素子21aに入力する。この結果、受信局に向けてビームが発射され、誤り率を低下できる。なお、図13のアレーアンテナ20、20aは共通化することができる。
サンプリング時刻ごとに、前記アレーアンテナにおける所定のアンテナ素子の受信データと他のアンテナ素子の受信データ間の瞬間相関を計算するステップと、
前記瞬間相関をもとに瞬間相関行列を計算するステップと、
前記瞬間相関行列を用いて、線形演算により雑音部分空間を推定するステップと、
前回の到来方向追尾時刻における到来方向の状態ベクトルを利用して、今回の到来方向追尾時刻の到来方向の状態ベクトルをオブザーバで予測するステップと、
予測した前記状態ベクトルから得られる到来方向の予測値と、前記雑音部分空間を利用して、今回の到来方向追尾時刻における到来方向の暫定値を計算するステップと、
前記暫定値と、予測した前記状態ベクトル及び前記予測値をもとに、今回の到来方向追尾時刻における状態ベクトルを計算し、前記状態ベクトルから到来方向の推定値を計算するステップと、
を有することを特徴とする電波到来方向の追尾方法。
(付記5)前記瞬間相関行列は、前記アンテナ素子の数をM、雑音の空間的相関の長さを
(付記6)前記瞬間相関行列は前記瞬間相関をもとに1乃至4つ生成され、1乃至4つの前記瞬間相関行列を用いて、前記雑音部分空間を推定することを特徴とする付記1記載の電波到来方向の追尾方法。
(付記8)前記適応アルゴリズムは最小二乗平均法または正規最小二乗平均法であることを特徴とする付記7記載の電波到来方向の追尾方法。
(付記10)前記状態ベクトルは、前記到来方向、前記到来方向の変化速度及び加速度で表されることを特徴とする付記1記載の電波到来方向の追尾方法。
(付記13)時空間的に無相関白色雑音環境における相関信号の到来方向を追尾することを特徴とする付記1記載の電波到来方向の追尾方法。
(付記15)時空間的に相関雑音環境における多重波の到来方向を追尾することを特徴とする付記1記載の電波到来方向の追尾方法。
(付記17)時空間的に相関雑音環境における無相関信号の到来方向を追尾することを特徴とする付記1記載の電波到来方向の追尾方法。
サンプリング時刻ごとに、前記アレーアンテナにおける所定のアンテナ素子の受信データと他のアンテナ素子の受信データ間の瞬間相関を計算する瞬間相関計算手段と、
前記瞬間相関をもとに瞬間相関行列を計算する瞬間相関行列計算手段と、
前記瞬間相関行列を用いて、線形演算により雑音部分空間を推定する雑音部分空間推定手段と、
前回の到来方向追尾時刻における到来方向の状態ベクトルを利用して、今回の到来方向追尾時刻の到来方向の状態ベクトルをオブザーバで予測する到来方向予測手段と、
予測した前記状態ベクトルから得られる到来方向の予測値と、前記雑音部分空間を利用して、今回の到来方向追尾時刻における到来方向の暫定値を計算する暫定値計算手段と、
前記暫定値と、予測した前記状態ベクトル及び前記予測値をもとに、今回の到来方向追尾時刻における状態ベクトルを計算し、前記状態ベクトルから到来方向の推定値を計算する推定値計算手段と、
を有することを特徴とする電波到来方向追尾装置。
サンプリング時刻ごとに、前記アレーアンテナにおける所定のアンテナ素子の受信データと他のアンテナ素子の受信データ間の瞬間相関を計算する瞬間相関計算手段と、前記瞬間相関をもとに瞬間相関行列を計算する瞬間相関行列計算手段と、前記瞬間相関行列を用いて、線形演算により雑音部分空間を推定する雑音部分空間推定手段と、前回の到来方向追尾時刻における到来方向の状態ベクトルを利用して、今回の到来方向追尾時刻の到来方向の状態ベクトルをオブザーバで予測する到来方向予測手段と、予測した前記状態ベクトルから得られる到来方向の予測値と、前記雑音部分空間を利用して、今回の到来方向追尾時刻における到来方向の暫定値を計算する暫定値計算手段と、前記暫定値と、予測した前記状態ベクトル及び前記予測値をもとに、今回の到来方向追尾時刻における状態ベクトルを計算し、前記状態ベクトルから到来方向の推定値を計算する推定値計算手段と、を備えた電波到来方向追尾部と、
前記推定値を入力して推定された方向にピークが向くビームを生成するビーム形成部と、
を有することを特徴とする基地局装置。
11 直接波
12 反射波
20 アレーアンテナ
21 アンテナ素子
30 ベースバンド/デジタル処理部
40 電波到来方向追尾部
Claims (9)
- 複数個のアンテナ素子を同じ素子間隔で直線状の異なる空間位置に配列したアレーアンテナで所定数の電波を受信しその到来方向を推定する電波到来方向の追尾方法において、
サンプリング時刻ごとに、前記アレーアンテナにおける所定のアンテナ素子の受信データと他のアンテナ素子の受信データ間の瞬間相関を計算するステップと、
前記瞬間相関をもとに、前記サンプリング時刻におけるHankel相関行列である瞬間相関行列を計算するステップと、
固定または時変のステップサイズを用いた第1の適応アルゴリズムを用いた線形演算により、前記瞬間相関行列から雑音部分空間を推定するステップと、
前回の到来方向追尾時刻における到来方向の状態ベクトルを利用して、今回の到来方向追尾時刻の到来方向の状態ベクトルをオブザーバで予測するステップと、
予測した前記状態ベクトルから得られる到来方向の予測値と、前記雑音部分空間から、第2の適応アルゴリズムにより今回の到来方向追尾時刻における到来方向の暫定値を計算するステップと、
前記暫定値と、予測した前記状態ベクトル及び前記予測値をもとに、今回の到来方向追尾時刻における状態ベクトルを計算し、前記状態ベクトルから到来方向の推定値を計算するステップと、
を有することを特徴とする電波到来方向の追尾方法。 - 前記瞬間相関行列は、前記アンテナ素子の数をMとしたとき、第M番目の前記アンテナ素子の受信データと第1、2、…、M−1番目の前記アンテナ素子の受信データ間の相関から求められ、時空間的に無相関白色雑音環境における電波到来方向を追尾することを特徴とする請求項1記載の電波到来方向の追尾方法。
- 前記瞬間相関行列は、前記アンテナ素子の数をMとしたとき、第1番目の前記アンテナ素子の受信データと第2、3、…、M番目の前記アンテナ素子の受信データ間の相関から求められ、時空間的に無相関白色雑音環境における電波到来方向を追尾することを特徴とする請求項1記載の電波到来方向の追尾方法。
- 前記瞬間相関行列は前記瞬間相関をもとに1乃至4つ生成され、1乃至4つの前記瞬間相関行列を用いて、前記雑音部分空間を推定することを特徴とする請求項1記載の電波到来方向の追尾方法。
- 前記第1の適応アルゴリズムは、最小二乗平均法または正規最小二乗平均法であることを特徴とする請求項1記載の電波到来方向の追尾方法。
- 前記第2の適応アルゴリズムは、近似Newton法であることを特徴とする請求項1記載の電波到来方向の追尾方法。
- 前記状態ベクトルは、前記到来方向、前記到来方向の変化速度及び加速度で表されることを特徴とする請求項1記載の電波到来方向の追尾方法。
- 到来方向の計算更新期間はサンプリング期間よりも長く、前記計算更新期間におけるスナップショット数をNとすると、前記到来方向追尾時刻と前記サンプリング時刻との関係は、前記到来方向追尾時刻をn、前記サンプリング時刻をkとすると、k=nN,nN+1,…,(n+1)N−1で表されることを特徴とする請求項1記載の電波到来方向の追尾方法。
- 複数個のアンテナ素子を同じ素子間隔で直線状の異なる空間位置に配列したアレーアンテナで所定数の電波を受信しその到来方向を推定する電波到来方向追尾装置において、
サンプリング時刻ごとに、前記アレーアンテナにおける所定のアンテナ素子の受信データと他のアンテナ素子の受信データ間の瞬間相関を計算する瞬間相関計算手段と、
前記瞬間相関をもとに、前記サンプリング時刻におけるHankel相関行列である瞬間相関行列を計算する瞬間相関行列計算手段と、
固定または時変のステップサイズを用いた第1の適応アルゴリズムを用いた線形演算により、前記瞬間相関行列から雑音部分空間を推定する雑音部分空間推定手段と、
前回の到来方向追尾時刻における到来方向の状態ベクトルを利用して、今回の到来方向追尾時刻の到来方向の状態ベクトルをオブザーバで予測する到来方向予測手段と、
予測した前記状態ベクトルから得られる到来方向の予測値と、前記雑音部分空間から、第2の適応アルゴリズムにより今回の到来方向追尾時刻における到来方向の暫定値を計算する暫定値計算手段と、
前記暫定値と、予測した前記状態ベクトル及び前記予測値をもとに、今回の到来方向追尾時刻における状態ベクトルを計算し、前記状態ベクトルから到来方向の推定値を計算する推定値計算手段と、
を有することを特徴とする電波到来方向追尾装置。
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