JP4803978B2 - 非水系リチウム型蓄電素子 - Google Patents
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Description
上記駆動システム向けの蓄電素子が果たす役割のひとつとして、内燃機関または燃料電池が最大効率を発揮できる一定出力で運転させたまま、該駆動システムの負荷の増減を吸収することが挙げられる。すなわち、加速時には内燃機関または燃料電池からの駆動だけでは不足するパワーを、蓄電素子からモーターに電力を供給して補い、減速時にはモーターを発電機として用いて余剰に発生した電力を蓄電素子に回収するという役割である。
上記駆動システムに使用される蓄電素子に求められる第一の要求は、入出力特性が優れていることである。これは、自動車における減速や加速が継続する時間は、通常、長くても1分程度であり、短時間の間に蓄電素子がどれだけの量のエネルギーを吸収、放出できるかが重要であるためである。
また、これらの蓄電素子に求められる第二の要求は、エネルギー密度が高いことである。エネルギー密度が低いと、自動車両の加速に必要な電力を供給したり、減速で発生したエネルギーを余すことなく回生したりするために必要な蓄電素子の重量、体積が大きくなってしまい、自動車という限られた空間に効率よく収納することが困難になるためである。
さらに、第三の要求は、素子の耐久性が高いことである。耐久性には、低温での入力特性、出力特性(以下、あわせて「低温特性」ともいう。)や保存特性などをあげることができる。車載用途では、冬場のエンジン始動のための低温での出力特性、夏場の炎天下を走る場合などを想定した高温での保存特性、トリクル充電特性などが要求されている。
上述の電気二重層キャパシタとしては電解液が水系のもの(以下、「水系キャパシタ」という。)と非水系のもの(以下、「非水系キャパシタ」という。)が知られている。一般的に、水系キャパシタは入出力特性に優れるものの、電解液である水が電気分解するために蓄電素子あたりの耐圧が低くなり、エネルギー密度を高くできないという問題点がある。また、非水系キャパシタは耐圧が高いために、水系キャパシタと比較してエネルギー密度は高くできるものの、入出力特性が水系キャパシタよりも劣るという問題点がある。また、非水系キャパシタは、水系キャパシタよりはエネルギー密度は高いものの、電池と比べるとエネルギー密度は十分ではない。
他方、電池はエネルギー密度が高く、一般的に、自己放電特性も電気二重層キャパシタより良好であるが、上述した耐久性が低く、高温下でのトリクル充電や保存によって発生する不可逆な容量低下が大きい。さらに、充放電によってエネルギーの一部がジュール熱となって発熱を起こすため、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池を使用した駆動システムを搭載したハイブリッド自動車においては、電池部分の冷却が大きな課題である。
上述のように、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素電池、及びリチウムイオン電池のいずれも入出力特性、エネルギー密度、及び耐久性のすべてを満足できるものではないため、高入出力特性、高エネルギー密度、高耐久性のすべてを兼ね備えた蓄電素子の実用化が強く求められている。
一方、正極に活性炭、負極にリチウムイオンを吸蔵脱離しうる炭素材料(天然黒鉛、人造黒鉛、石油コークス、メソフェーズピッチ系炭素材料、難黒鉛性炭素材料、黒鉛系材料と黒鉛性炭素材料との複合材料並びに混合材料)であり、好ましくは比表面積が0.5〜20m2 /gで、炭素の面間隔が0.335〜0.410nmの炭素を使用した二次電源が提案されている。該二次電源の電解液としては、LiN(SO2 C2 F5 )2 を含有した有機溶媒電解液が45℃雰囲気でのサイクル信頼性に優れることが開示されている(特許文献2参照)。
本発明は、従来のキャパシタよりも高容量を有し、従来の電池よりも高出力である、特許文献1記載の非水系リチウム型蓄電素子において、ガス発生による高温での性能低下を防止すると共に、低温特性を向上させることを目的とする。
上記特許文献2には、上述の低温特性や高温でのガス発生に関する記載はないが、電解液が分解して負極の表面に形成されるSEI(Solid Electrolyte Interface)が多くなりすぎないように、負極の材料の比表面積は0.5〜20m2 /gの炭素材料が好ましいとされている。それに対して、本願発明の蓄電素子の負極の材料は後述するように比表面積が大きいものであるので、本発明者はSEIのできやすさ等の電解液に対する要件も異なるのではないかとの着想に至った。そこで、電解液の組成を検討した結果、リチウム塩電解質としてLiN(SO2 Cn F2n+1)(SO2 Cm F2m+1)であらわされる電解質を使用し、特定の組成範囲の非水溶媒と組合せた非水電解液を使用した場合に、高出力かつ高容量という本願発明の蓄電素子の有する特質を犠牲にすることなく、高温でのガス発生を抑制し、低温特性を向上できることを見出した。
正極活物質層と正極集電体とを有する正極と、負極活物質層と負極集電体とを有する負極と、正極と負極の間に介在するセパレータと、非水系電解液、及び外装体からなる蓄電素子であって、
負極活物質が活性炭の表面に炭素質材料を被着させた、比表面積が30m2 /g以上1000m2 /g以下である複合多孔性材料を主とするものであり、正極活物質が活性炭を主とするものであり、
非水電解液が非水溶媒にLiN(SO 2 C 2 F 5 ) 2 、LiN(SO 2 CF 3 )(SO 2
C 2 F 5 )、又は両者の任意の量比の混合物のいずれかであるリチウム塩電解質のみを溶解したものであり、
該非水溶媒の10体積%以上30体積%以下がエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、又は両者の任意の量比の混合物のいずれかである環状炭酸エステルであり、
該非水溶媒の70体積%以上90体積%以下が、鎖状炭酸エステル、プロピオン酸エステル、又は両者の任意の量比の混合物のいずれかであり、
該鎖状炭酸エステルが、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、又はこれらの任意の量比の混合物のいずれかであり、
該プロピオン酸エステルが、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、又は両者の任意の量比の混合物のいずれかであることを特徴とする非水系リチウム型蓄電素子である。
負極活物質として用いられる複合多孔性材料は、活性炭の表面に炭素質材料を被着させたものであることを特徴とする。この複合多孔性材料は、例えば、以下の方法で製造できる。
原料に用いる活性炭は、得られる複合多孔性材料が所望の特性を発揮する限り、その原料などに特に制限はなく、石油系、石炭系、植物系、高分子系などの各種の原料から得られた市販品を使用することができ、平均粒径1〜500μm程度(より好ましくは1〜50μm)の活性炭粉末を用いる事が好ましい。複合多孔性材料は、活性炭をピッチ、メソカーボンマイクロビーズ、コークスあるいはフェノール樹脂等の合成樹脂等の共存下に熱処理することにより得られる。中でも、安価なピッチを用いる事が製造コスト上好ましい。これらピッチは、大別して石油系ピッチと石炭系ピッチとに分けられる。例えば、石油系ピッチとしては、原油の蒸留残査、流動性接触分解残査(デカントオイルなど)、サーマルクラッカーからのボトム油、ナフサクラッキングの際に得られるエチレンタールなどが例示される。
上記ピッチを用いる場合、複合多孔性材料は、活性炭の表面でピッチの揮発成分あるいは熱分解成分を熱反応させ、活性炭の表面に炭素質材料を被着させる事により得られる。この場合、200〜500℃程度の温度において、ピッチの揮発成分、あるいは、熱分解成分の活性炭細孔内への被着が進行し、400℃以上で該被着成分が炭素質材料となる反応が進行する。熱処理時のピーク温度は得られる複合多孔性材料の特性、熱反応パターン、熱反応雰囲気等により適宜決定されるものであるが、400℃以上である事が好ましく、更に好ましくは450℃〜1000℃であり、特に500〜800℃程度のピーク温度であることが好ましい。また、熱処理時のピーク温度を維持する時間は30分間から10時間であればよく、好ましくは1時間から7時間、更に好ましくは2時間から5時間である。500〜800℃程度のピーク温度で2時間から5時間熱処理する場合、活性炭表面に被着している炭素質材料は多環芳香族系炭化水素になっているものと考えられる。
負極活物質は、必要に応じて、上記複合多孔性材料に電子伝導性向上のための導電性フィラーを混合した負極材料から作成することができる。導電性フィラーとしては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、黒鉛などを挙げることができる。導電性フィラーの混合量は、複合多孔性材料に対して0質量%以上20質量%以下の範囲が好ましい。該混合量が20質量%よりも多いと高容量、高出力が達成しにくくなる。
負極は、公知のリチウムイオン電池、キャパシタ等の電極製造技術により製造する事が可能であり、例えば、結着剤である樹脂の有機溶剤溶液を用いて、該負極材料を集電体である金属上に塗着し、乾燥し、必要に応じてプレスすることにより得られる。
また、負極活物質には、あらかじめリチウムをドープしておくことができる。リチウムをドープしておくことにより、素子の初期効率、容量および出力特性を制御することが可能である。
また、容量を向上させることを目的として、正極活物質として、上述の活性炭にリチウム含有金属酸化物を混合したものを使用することも可能である。リチウム含有金属酸化物としては、LiMnO2 類、LiMn2 O4 類、LiCoO2 類、LiNiO2 類、Li2 NiCoO4 類などを挙げることができる。該リチウム含有金属酸化物の混合量が多すぎると出力特性が低下するため、該混合量は20質量%以下であることが好ましい。
正極活物質は、必要に応じて、上記活物質に電子伝導性向上のための導電性フィラーを混合した正極材料から作成することが可能である。導電性フィラーの混合量は、正極活物質に対して2質量%以上20質量%以下の範囲が好ましい。該混合量が2質量%以下であると高出力が達成しにくくなり、20質量%よりも多いと高容量、高出力が達成しにくくなる。
正極の製造方法は限定されるものではなく、例示すれば、結着剤である樹脂の有機溶剤溶液を用いて、正極材料を集電体である金属上に塗着し、乾燥し、必要に応じてプレスすることにより得られる。
環状炭酸エステル以外の溶媒としては、鎖状炭酸エステル、なかでもメチルエチルカーボネート(以下、MECと略称する。)、ジエチルカーボネート(以下、DECと略称する。)、ジメチルカーボネート(以下、DMCと略称する。)、ならびにこれらの混合物が好適に使用され、さらには、プロピオン酸エチル(以下、EPrと略称する。)、プロピオン酸メチル(以下、MPrと略称する。)、ならびに両者の混合物も好適に使用される。もちろん、鎖状炭酸エステルと、EPr、MPr、ならびに両者の混合物とを混合して使用することも可能である。鎖状炭酸エステルを使用すると高温でガスが発生しにくくなるために好ましく、なかでもMECは好ましい。また、EPr、MPrを用いると、低温での出力特性が向上する。本発明の素子の電解液溶媒は、実際に素子が使用される環境を考慮して、上記の中から適宜組合せることが可能である。
本発明の蓄電素子は、正極と負極とをセパレータを介して巻回または積層し、缶またはラミネートフィルムの外装体を装着した後、電解液を注入、密閉することで得ることができる。
<電極の作成>
市販のピッチ系活性炭(BET比表面積1955m2 /g)150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、石炭系ピッチ300gを入れたステンレス製バットの上に置き、電気炉(炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置して、熱処理を行った。熱処理は窒素雰囲気下で、670℃まで4時間で昇温し、同温度で4時間保持し、続いて自然冷却により60℃まで冷却した後、炉から取り出した。得られた生成物はBET比表面積250m2 /gであった。
次いで、上記で得た複合多孔性材料84質量部、アセチレンブラック8質量部およびPVdF(ポリフッ化ビニリデン)8質量部とNMP(N−メチルピロリドン)を混合して、スラリーを得た。次いで、得られたスラリーを厚さ14μmの銅箔の片面に塗布し、乾燥し、プレスして、厚さ約75μmの負極を得た。
また、負極の複合多孔性材料の原料と同一の市販のピッチ系活性炭82質量部、ケッチェンブラック6質量部およびPVdF12質量部とNMPを混合したものを、Al箔の片面に塗布、乾燥し、厚さ約150μmの正極を得た。
上記で得られた負極及び正極を各々2.8cm2 に切り出し、負極の複合多孔性材料に接するように同面積で厚み20μmのリチウム金属を圧着し、正極と負極の間にセルロース製のセパレータをはさみ込み、電極体を作成した。この電極体を容器に入れ、ECとMECとを2:8の体積比率で混合した非水溶媒に1mol/Lの濃度でLiN(SO2 C2 F5 )2 を溶解した非水電解液を注入して密閉し、蓄電素子を作成した。
作成した蓄電素子を、25℃の環境下、電圧が4.0Vを示すまで1.5mAの一定電流で充電し、ついで1.5mAの一定電流で2.0Vを示すまで放電することで、系の安定化を実施した。
安定化した蓄電素子を、同様に25℃の環境下で最大電流75mA、最大電圧4.0Vで10分間充電し、25℃の環境下で1.5mAの一定電流で、素子電圧が2.0Vを示すまで放電した。このときの放電容量をこの素子の基準容量とした。引き続き、低温での出力特性を調べるため、25℃の環境下で最大電流75mA、最大電圧4.0Vで10分間充電し、−20℃の環境下に移動して、75mAの一定電流で、素子の電圧が2.0Vを示すまで放電した。このときの放電容量の基準容量に対する維持率を低温出力として表1にまとめた。
また、25℃の環境下で1.5mAの一定電流で2.0Vを示すまで放電した蓄電素子を、−20℃の環境下で75mAの一定電流で電圧が4.0Vを示すまで充電したときに蓄電素子が充電できた容量の、基準容量に対する比率を低温入力として、同じく表1にまとめた。
この素子を25℃の環境下で75mAの一定電流で電圧が4.0Vを示すまで充電したときの内部抵抗を、0.1Hzの交流周波数を使用して測定し、この抵抗値を基準抵抗値とした。次に、このセルを60℃の環境下で3.8Vでフロート充電試験を行った。1000時間後に試験を終了し、25℃の環境下で75mAの一定電流で電圧が4.0Vを示すまで充電して0.1Hzの交流周波数で内部抵抗を測定してから、1.5mAでセル電圧が2.0Vを示すまで一定電流で放電することで、試験後のセルの容量を測定した。このときの基準容量と基準抵抗値に対する容量の変化と抵抗値の変化を表1にまとめた。また、表1には、試験後の素子の外観にガス発生による膨れが見られるかどうかもまとめた。
表1から明らかなように、低温での出力特性が30%以上、入力特性が20%以上と良好で、なおかつ高温でのガス発生もなく、フロート充電特性も1000時間で70%以上の容量を持ち、抵抗増加が5倍以下という良好な蓄電素子が得られた。
非水電解液組成を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に蓄電素子を作成し、評価した。結果を表1に示す。これらの表から明らかなように低温での入力特性と出力特性が良好で、なおかつ高温でのガス発生もなく、フロート充電特性も良好な、実用的な蓄電素子が得られたことが理解される。
<比較例1〜7>
非水電解液組成を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に蓄電素子を作成し、評価した。結果を表1に示す。ECとMECの混合溶媒においては、ECの含有量が多くなると、低温の入出力特性だけでなく、フロート充電特性が低下した。一方、ECの含有量が少なくなっても低温での伝導度が低下するために入力特性が低下し、フロート充電においては顕著なガスの発生が見られた。
またPC単独の溶媒の場合は、低温での入出力特性が低下した。また、イミド塩の全部又は一部を引用文献1の実施例に記載されたリチウム塩電解質であるLiPF6 に置換した場合には、高温でのガス発生が見られ、フロート充電特性も低下した。本発明の範囲を外れると、低温での入力、出力特性とを兼ね備え、さらには高温でのフロート充電特性を両方兼ね備えた蓄電素子は作成できないことがわかる。
Claims (1)
- 正極活物質層と正極集電体とを有する正極と、負極活物質層と負極集電体とを有する負極と、正極と負極の間に介在するセパレータと、非水系電解液、及び外装体からなる蓄電素子であって、
負極活物質が活性炭の表面に炭素質材料を被着させた、比表面積が30m2 /g以上1000m2 /g以下である複合多孔性材料を主とするものであり、正極活物質が活性炭を主とするものであり、
非水電解液が非水溶媒にLiN(SO 2 C 2 F 5 ) 2 、LiN(SO 2 CF 3 )(SO 2 C 2 F 5 )、又は両者の任意の量比の混合物のいずれかであるリチウム塩電解質のみを溶解したものであり、
該非水溶媒の10体積%以上30体積%以下がエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、又は両者の任意の量比の混合物のいずれかである環状炭酸エステルであり、
該非水溶媒の70体積%以上90体積%以下が、鎖状炭酸エステル、プロピオン酸エステル、又は両者の任意の量比の混合物のいずれかであり、
該鎖状炭酸エステルが、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、又はこれらの任意の量比の混合物のいずれかであり、
該プロピオン酸エステルが、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、又は両者の任意の量比の混合物のいずれかであることを特徴とする非水系リチウム型蓄電素子。
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