本発明のインクジェット受理剤は、水系媒体と、前記水系媒体に分散した分子内に下記一般式[I]で示される構造単位(A)を含有するカチオン性ポリウレタン樹脂(B)と、前記水系媒体に分散したシリカ(C)と、水溶性樹脂(D)とを含有してなり、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)中における前記構造単位(A)に含まれるカチオン性アミノ基の含有量が0.005〜1.5当量/kgであることを特徴とするインクジェット受理剤を提供するものである。
まず、本発明のインクジェット受理剤を構成する、水系媒体とは、水、及び水と混和する有機溶剤のことである。水と混和する有機溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類、等を使用することができる。本発明においては、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
次に、本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(B)について説明する。
本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(B)は、分子内に、下記一般式[I]で示される構造単位(A)を含有してなり、前記構造単位(A)に含まれるカチオン性アミノ基を前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)中に0.005当量/kg〜1.5当量/kg含有するものである。
〔式中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を、R2及びR3は、互いに独立して脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキル基を、R4は、水素原子又は4級化反応により導入された4級化剤の残基を、X−はアニオン性の対イオンを表す。〕
上記一般式[I]で示される構造単位(A)は、本発明を構成するカチオン性ポリウレタン樹脂(B)に水系媒体への分散性を付与するうえで必須の構造単位である。また、上記一般式[I]で示される構造単位(A)は、カチオン性ポリウレタン樹脂(B)とシリカ(C)との混和性を向上させるうえで必須の構造単位である。前記混和性の向上したインクジェット受理剤は、表面亀裂を有さず、かつ造膜性及び光沢に優れたインクジェット受理層を形成することができる。
本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(B)は、公知の化合物を使用して製造することができるが、工業的に入手容易でかつ安価な原料を用いる製造方法としては、下記一般式[II]で示される1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)とを反応させて得られる3級アミノ基含有ポリオール(E)を、後述するポリイソシアネート(G)と反応せしめる方法が最も有用である。
〔式中、R1は、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基、2価フェノール類の残基、又はポリオキシアルキレン基を表す。〕
前記3級アミノ基含有ポリオール(E)は、その分子内に含有する3級アミノ基を、酸による中和、あるいは4級化剤による4級化によってカチオン性基を発生させるための前駆体であり、ポリウレタン樹脂に水分散性を付与するための化合物である。
前記3級アミノ基含有ポリオール(E)は、例えば、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)とを、エポキシ基1当量に対してNH基1当量となるように配合し、無触媒で、常温下又は加熱下で開環付加反応させることにより容易に得られる。
前記一般式[II]で示される1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)としては、下記の化合物を、単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。
前記R1が、脂肪族環式構造を含んでいてもよいアルキレン基であるものとしては、例えばエタンジオール−1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール−1,2−ジグリシジルエーテル、プロパンジオール−1,3−ジグリシジルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジグリシジルエーテル、ペンタンジオール−1,5−ジグリシジルエーテル、3−メチル−ペンタンジオール−1,5−ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール−1,6−ジグリシジルエーテル、ポリブタジエン−ジグリシジルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン(水素添加ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、水素添加ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物の(水素添加ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル等を使用することができる。
また、R1が2価フェノール類の残基であるものとしては、例えばレゾルシノール−ジグリシジルエーテル、ハイドロキノン−ジグリシジルエーテル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)のジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタンの異性体混合物(ビスフェノールF)のジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパンのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジフェニルのジグリシジルエーテル、4,4−ジヒドロキシジベンゾフェノンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)−2,2−プロパンのジグリシジルエーテル、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンのジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)のジグリシジルエーテル等を使用することができる。
また、R1がポリオキシアルキレン基であるものとしては、例えばジエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、更にオキシアルキレンの繰り返し単位数が3〜60のポリオキシアルキレングリコール−ジグリシジルエーテル、例えば、ポリオキシエチレングリコール−ジグリシジルエーテル及びポリオキシプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテル、ポリオキシテトラエチレングリコール−ジグリシジルエーテル等を使用することができる。
これらの中でも、カチオン性ポリウレタン樹脂(B)の水分散性をより向上させることができることから、上記一般式[II]のR1が、ポリオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、特に、ポリオキシエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、及び/又はポリオキシプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、及び/又はエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体のジグリシジルエーテルが好適である。
前記一般式[II]のR1がポリオキシアルキレン基であるポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテルのエポキシ当量は、本発明のインクジェット受理剤の種々の機械的特性や熱特性等の物性への影響を最小限に抑制し、カチオン性ポリウレタン樹脂(B)水分散体中のカチオン濃度の設計を広範囲に行える点で、好ましくは1000g/当量以下、より好ましくは500g/当量以下、特に好ましくは300g/当量以下である。
本発明において、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)との開環付加反応により、3級アミノ基含有ポリオール(E)を製造するには、2級アミン(A−2)が必要である。
かかる2級アミン(A−2)としては、公知の化合物を使用できるが、反応制御の容易さの点で、分岐状又は直鎖状の脂肪族2級アミンが好ましい。
かかる2級アミンとして使用することができるものとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、ジ−n−へプチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジイソオクチルアミン、ジノニルアミン、ジイソノニルアミン、ジ−n−デシルアミン、ジ−n−ウンデシルアミン、ジ−n−ドデシルアミン、ジ−n−ペンタデシルアミン、ジ−n−オクタデシルアミン、ジ−n−ノナデシルアミン、ジ−n−エイコシルアミンなどが挙げられる。
これらの中で、3級アミノ基含有ポリオール(E)を製造する際に揮発し難いこと、あるいは、含有する3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、又は4級化剤で4級化する際に立体障害を軽減できること、などの理由から、炭素数2〜18の範囲の脂肪族2級アミンが好ましく、炭素数3〜8の範囲の脂肪族2級アミンがより好ましい。
3級アミノ基含有ポリオール(E)が有する3級アミノ基の一部又は全てを、酸で中和、又は4級化剤で4級化することにより、3級アミノ基含有ポリオール(E)とポリイソシアネート(G)と反応せしめて得られるカチオン性ポリウレタン樹脂(B)に水分散性を付与することができる。
上記の3級アミノ基の一部又は全てを中和する際に使用することができる酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸類や、スルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、及び、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、硼酸、亜リン酸、フッ酸等の無機酸等を使用することができる。これらの酸は単独使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記3級アミノ基の一部又は全てを4級化する際に使用することができる4級化剤としては、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のジアルキル硫酸類や、メチルクロライド、エチルクロライド、ベンジルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、ベンジルブロマイド、メチルヨーダイド、エチルヨーダイド、ベンジルヨーダイドなどのハロゲン化アルキル類、メタンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸メチル等のアルキル又はアリールスルホン酸メチル類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のエポキシ類などを使用することができる。
これらは単独使用でもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において、3級アミノ基の中和又は4級化に使用する酸や4級化剤の量は、特に制限はないが、本発明のインクジェット受理剤の優れた印刷画像の耐水性を発現させるために、3級アミノ基1当量に対して、好ましくは0.1当量〜2.0当量の範囲であり、より好ましくは0.3当量〜1.0当量の範囲である。
本発明のインクジェット受理剤においては、インクジェットインクの固着性により優れ、その結果、印刷画像の耐水性がより向上する点から、カチオン性ポリウレタン樹脂(B)は、3級アミノ基が4級化されていることがより好ましい。
3級アミノ基含有ポリオール(E)を得るための、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)との反応方法について以下に説明する。
前記1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)が有するエポキシ基と2級アミン(A−2)が有するNH基との反応比率[NH基/エポキシ基]は、好ましくは当量比で0.5/1〜1.1/1の範囲であり、より好ましくは当量比で0.9/1〜1/1の範囲である。
これらの反応は無溶剤条件下にて行うこともできるが、反応制御を容易にする目的で、あるいは粘度低下による撹拌負荷の低減や均一に反応させる目的で、有機溶剤を使用し行うこともできる。
かかる有機溶剤としては、反応を阻害しない有機溶剤であればよく、例えばケトン類、エーテル類、酢酸エステル類、炭化水素類、塩素化炭化水素類、アミド類及びニトリル類などを使用することができる。
前記ケトン類としては、例えばアセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を使用することができる。
エーテル類としては、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を使用することができる。
前記酢酸エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等が例示できる。
炭化水素類としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等を使用することができる。
塩素化炭化水素類としては、例えば四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン等を使用することができる。
アミド類としては、例えばジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル等を使用することができる。
1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)とは、反応容器中に一括供給し反応させてもよく、また、1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)の何れか一方を反応容器に仕込み、他方を滴下することにより反応させてもよい。
1分子中にエポキシ基を2個有する化合物(A−1)と2級アミン(A−2)との反応は、反応性が高いため通常は触媒を必要としない。しかし、2級アミン(A−2)の窒素原子が有する脂肪族などの置換基が大きく、前記化合物(A−1)との反応が、立体障害により遅くなる場合には、フェノール、酢酸、水、アルコール類などに代表されるプロトン供与性物質を触媒として使用してもよい。
また、反応温度は、好ましくは室温〜160℃の範囲であり、より好ましくは60℃〜120℃の範囲である。
また、反応時間は、特に限定しないが、通常30分〜14時間の範囲である。
また、反応終点は、赤外分光法(IR法)にて、エポキシ基に起因する842cm−1付近の吸収ピークの消失によって確認できる。
また、常法によりアミン当量(g/当量)と水酸基当量(g/当量)を求めることができる。
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)を製造する際には、前記3級アミノ基含有ポリオール(E)の他に、目的、用途に応じて一般にポリウレタンの合成に利用される種々のポリオール(F)を用いることができる。
その中でも、好ましくは数平均分子量200〜10,000の範囲、より好ましくは数平均分子量300〜5,000の範囲のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、炭酸と脂肪族系多価アルコールとをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリチオエーテルポリオール、及びポリブタジエングリコールポリオール等の各種ポリオールが挙げられ、これらを単独使用してもよく2種以上を併用してもよい。
上記ポリオール(F)の中でも、工業的に入手が容易なポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールについて下記に代表的化合物を例示する。
前記ポリエステルポリオールとしては、低分子量ポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものを使用することができる。
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール(数平均分子量300〜6000の範囲)、ポリプロピレングリコール(数平均分子量300〜6000の範囲)、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体(数平均分子量300〜6000の範囲);ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキサイド付加体;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリストール、ソルビトール等を使用することができる。
前記ポリエステルポリオールを製造する際に使用できるポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、及びこれらのポリカルボン酸の無水物あるいはエステル形成誘導体等を使用することができる。
また、前記ポリエステルポリオールとしては、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル、及びこれらの共重合ポリエステル等を使用することもできる。
また、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、後述する活性水素原子を少なくとも2個有する化合物を開始剤として使用し、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の化合物の1種以上を付加重合することによって得られるものを使用することができる。
前記活性水素原子を少なくとも2個有する化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、グリセリン、ソルビトール;アクニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオール等を使用することができる。
また、炭酸と脂肪族系多価アルコールとをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のようなジオール類と、ジメチルカーボネート等によって代表されるようなジアルキルカーボネート或いはエチレンカーボネート等によって代表されるような環式カーボネートとの反応生成物などが挙げられる。
本発明のインクジェット受理剤によって形成されるインクジェット受理層には、長期間の保存耐久性が要求されるために、前記ポリオール(F)のなかでも、高耐久性のポリオールを使用することが好ましく、特にポリカーボネートポリオールが好ましい。
本発明のカチオン性ポリウレタン樹脂(B)を製造する際に使用することができるポリイソシアネート(G)としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及び脂肪族ポリイソシアネート等の、水性ポリウレタン樹脂の製造において用いられる公知慣用の有機ポリイソシアネート等があげられる。
前記ポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びこれらの三量体等を使用することができる。
本発明のインクジェット受理剤によって形成されるインクジェット受理層には、長期間の保存耐久性が要求されるために、耐熱変色、耐光変色による表面外観の劣化を防止する必要がある。このため、ポリイソシアネート(G)として、一般に無黄変型といわれる脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
この点から、前記ポリイソシアネート(G)としては、原料を入手しやすさを考慮すると、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを使用することが特に好ましい。
カチオン性ポリウレタン樹脂(B)を製造する際には、種々の機械的特性や熱特性等の物性を有するポリウレタン樹脂の設計を行う目的で、ポリアミンを鎖伸長剤として使用してもよい。
かかる鎖伸長剤として使用可能なポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、等の水酸基を含有するジアミン類;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン等のポリアミン類;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン等のヒドラジン類;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のセミカルバジド類を使用することができる。
カチオン性ポリウレタン樹脂(B)を製造する際には、前記ポリアミンの他に、ポリウレタン樹脂の種々の機械的特性や熱特性等の物性を調整する目的で、その他の活性水素原子含有の鎖伸長剤を使用することもできる。
前記その他の活性水素含有の鎖伸長剤として使用することができるものは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類及びそれらのアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール等のポリヒドロキシ化合物類、及び水が挙げられ、本発明のカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体の保存安定性を低下させない範囲内においてこれらを単独もしくは併用しても構わない。
更に、本発明のインクジェット受理剤は、シリカ(C)に対してさらに優れたバインダー力を発現することを目的として、下記一般式[III]で表される構造単位(H)をカチオン性ポリウレタン樹脂(B)の骨格に導入することが好ましい。
(但し、式中、R5は水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基を、R6はハロゲン原子、アルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基からなる群より選ばれる官能基を表し、また、nは0、1又は2なる整数を表す。)
該構成単位(H)をカチオン性ポリウレタン樹脂(B)に導入するための化合物としては、下記一般式[IV]で示される化合物(I)が好ましい。
(但し、式中、R5は水素原子、アルキル基、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる一価の有機残基を、R6はハロゲン原子、アルコキシル基、アシロキシ基、フェノキシ基、イミノオキシ基又はアルケニルオキシ基からなる群より選ばれる官能基を、nは0、1又は2なる整数を、Yはアミノ基を少なくとも1個以上含有する有機残基を表す。)
前記一般式[III]で示される化合物として使用することができるものは、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシアミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−ヒドロキシエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。
本発明で使用するカチオン性ポリウレタン樹脂(B)を製造し、該カチオン性ポリウレタン樹脂(B)を水系媒体中に分散する方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
〔方法1〕ポリオール(F)とポリイソシアネート(G)と3級アミノ基含有ポリオール(E)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
〔方法2〕ポリオール(F)とポリイソシアネート(G)と3級アミノ基含有ポリオール(E)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造した後、ポリアミンを用いて鎖伸長することによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
〔方法3〕ポリオール(F)とポリイソシアネート(G)と3級アミノ基含有ポリオール(E)とを、一括又は分割して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、得られたウレタンプレポリマー中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめ、その後にポリアミンを用いて鎖伸長する方法。
〔方法4〕ポリオール(F)とポリイソシアネート(G)と3級アミノ基含有ポリオール(E)とを、一括又は分割してこれらを仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることにより末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水系媒体中にホモジナイザー等の機械を用いて強制的に乳化させて水分散せしめ、その後にポリアミンを用いて鎖伸長する方法。
〔方法5〕ポリオール(F)とポリイソシアネート(G)と3級アミノ基含有ポリオール(E)とポリアミンとを、一括して仕込み、溶剤中又は無溶剤下で反応させることによりポリウレタン樹脂を製造し、得られたポリウレタン樹脂中の3級アミノ基の一部又は全てを酸で中和、及び/又は4級化剤で4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
尚、上記〔方法1〕〜〔方法5〕の製造方法において、乳化剤を必要に応じて用いてもよい。
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)水分散体を製造する際に使用可能な乳化剤としては、特に限定しないが、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)水分散体の優れた保存安定性を維持する観点から、基本的にノニオン性又はカチオン性であることが好ましい。例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤等を使用することが好ましい。なお、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)水分散体への乳化剤の混和安定性が保たれる範囲内であれば、アニオン性又は両性の乳化剤を併用しても構わない。
前記方法によりカチオン性ポリウレタン樹脂(B)を製造する際には、該樹脂の水分散性を助ける助剤として、親水基となりうる基を有する化合物(以下、親水基含有化合物という。)を使用してもよい。
かかる親水基含有化合物としては、アニオン性基含有化合物、カチオン性基含有化合物、両性基含有化合物、又はノニオン性基含有化合物を用いることができるが、カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体の優れた保存安定性を維持する観点から、ノニオン性基含有化合物が好ましい。
前記ノニオン性基含有化合物としては、分子内に少なくとも1個以上の活性水素原子を有し、かつエチレンオキシドの繰り返し単位からなる基、及びエチレンオキシドの繰り返し単位とその他のアルキレンオキシドの繰り返し単位からなる基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有する化合物を使用することができる。
例えば、エチレンオキシドの繰り返し単位を少なくとも30質量%以上含有し、ポリマー中に少なくとも1個以上の活性水素原子を含有する数平均分子量300〜20,000のポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシブチレン共重合体グリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシアルキレン共重合体グリコール又はそのモノアルキルエーテル等のノニオン基含有化合物又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリエーテルポリオールなどの化合物を使用することが可能である。
次に、カチオン性ポリウレタン樹脂(B)を製造する際の、原料仕込み比率(当量比)について詳細に述べる。
前記ポリオール(F)と3級アミノ基含有ポリオール(E)と、ポリイソシアネート(G)とを反応させる場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基の当量比〔(G)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(F)が有する水酸基の当量+(E)が有する水酸基の当量〕を、0.9/1〜1.1/1の範囲に調整することが好ましい。
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)を製造する際に、鎖伸長剤として、たとえばポリアミンを使用する場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基の当量比〔(G)のイソシアネートの当量〕/〔(F)が有する水酸基の当量+(E)が有する水酸基の当量+ポリアミンが有するアミノ基の当量〕を、0.9/1〜1.1/1の範囲に調整することが好ましい。
また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)は、ウレタンプレポリマーを製造した後に、ポリアミンを用いて鎖伸長反応させることにより製造してもよい。かかる場合、イソシアネート基と活性水素原子含有基との当量比〔(G)が有するイソシアネート基の当量〕/〔(F)が有する水酸基の当量+(E)が有する水酸基の当量〕を、1.1/1〜3/1の範囲に調整することが好ましく、1.2/1〜2/1の範囲に調整することがより好ましい。この場合、ポリアミンで鎖伸長する際のポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比は、好ましくは1.1/1〜0.9/1の範囲である。
かかる反応において、反応温度は、好ましくは20℃〜120℃の範囲であり、より好ましくは30℃〜100℃の範囲である。
また、3級アミノ基含有ポリオール(E)は、インクジェット記録媒体の光沢性を良好にするため、さらに亀裂のないインクジェット記録媒体を作製するうえで必須の構造単位であり、3級アミノ基含有ポリオール(E)由来のカチオン性アミノ基の含有量としては、カチオン性ポリウレタン樹脂(B)に対して、好ましくは0.005当量/kg〜1.5当量/kgの範囲であり、より好ましくは0.03当量/kg〜1.0当量/kgであり、さらにより好ましくは0.15当量/kg〜0.5当量/kgの範囲である。
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)は、無溶剤条件下で製造することもできるが、反応制御を容易にする目的で、又は粘度低下による撹拌負荷の低減や均一に反応させる目的で、有機溶剤下で製造することも可能である。
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタン等の塩素化炭化水素類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等を使用することができる。
前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)は、無触媒下で製造することも可能であるが、公知の触媒、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジフタレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、その他、3級アミン類、4級アンモニウム塩等を使用してもよい。
上記のようにして得られるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体中に含まれる有機溶剤は、必要により、反応の途中又は反応終了後に、例えば減圧加熱などの方法により除去することが好ましい。
次に、本発明で使用する、もう一方の重要な材料であるシリカ(C)について述べる。
前記シリカ(C)としては、例えば乾式シリカ、湿式シリカ及びゾル−ゲル法シリカ等を使用することができる。以下、これらのシリカの製造方法について説明する。
前記乾式シリカは、一般に、四塩化珪素を燃焼させることによって製造することができる。乾式シリカは、一般的にフュームドシリカとも称されている。
前記乾式シリカとしては、約50〜500m2/gの範囲の比表面積を有するものを使用することができる。前記比表面積から計算される乾式シリカの一次粒子径は、約5〜50nm程度であるが、通常、それらが凝集した1μm以上の粒子径を形成している。
また、前記湿式シリカとしては、例えば沈澱法シリカ、ゲル法シリカといわれるものを使用することができる。
前記沈澱法シリカは、一般的にホワイトカーボンとも称されており、例えば珪酸ソーダを鉱酸で中和することによって製造することができる。
また、前記ゲル法シリカは、珪酸ソーダを酸で中和することによって製造することができる。
前記方法で得られた各種湿式シリカは、中和後に濾過、洗浄、乾燥し、必要に応じて粉砕されていてもよい。
前記湿式シリカとしては、比表面積が約50〜1000m2/gの範囲を有するものを使用することができる。前記比表面積から計算される湿式シリカの一次粒子径は、約3〜50nm程度であるが、通常、それらが凝集して1〜数百μm程度の平均粒子径を有する粒子を形成している場合がある。
また、前記ゾル−ゲル法シリカは、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランなどのアルコキシシランを加水分解することによって製造することができる。
前記ゾル−ゲル法シリカとしては、バルク状のシリカを使用してもよいが、必要に応じてそれを粉砕し、約1〜数百μmの粒子径を有する不定形のシリカを使用してもよい。
本発明で用いる前記シリカ(C)としては、前記した各種のシリカのなかでも、四塩化珪素を燃焼させることによって製造される、比表面積が70〜300m2/gの範囲の乾式シリカを使用することが、光沢に優れたインクジェット受理層を形成可能なインクジェット受理剤を製造するうえで好ましい。
中でも、光沢、造膜性に優れるインクジェット受理剤を形成するためには、比表面積が70〜100m2/gの範囲の乾式シリカを使用することが好ましい。
本発明のインクジェット受理剤を、後述するような方法で製造する際には、前記シリカ(C)が予め水系媒体中に分散されたものを使用することが、カチオン性ポリウレタン樹脂(B)と水溶性樹脂(D)との混合がより容易であることから好ましい。
前記シリカ(C)の分散に使用可能な水系媒体としては、例えば水や、水と混和する有機溶剤等の極性溶媒が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類、及びこれらの酢酸エステル類;N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類等を使用することができる。
前記水系媒体としては、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良い。水系媒体としては、安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、水及び水と混和する有機溶剤との混合物を使用することが好ましく、水のみを使用することが特に好ましい。
前記シリカ(C)を水系媒体に分散する際には、シリカ(C)の分散安定性を向上させ、かつインクの固着性を向上させるために、カチオン性樹脂を用いて分散することが好ましい。水系媒体に分散された前記シリカ(C)の分散粒子径は、高光沢のインクジェット受理層を形成するうえで、5〜200nmであることが好ましい。なお、分散粒子径とは、レーザー光散乱式粒度分布測定装置による測定で前記シリカの分散体を測定して得られる粒子径である。
前記カチオン性樹脂としては、水系媒体中に溶解したときに解離してカチオン性を呈する樹脂であれば限定されるものではないが、例えばポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミジン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド−ホルマリン縮合物、ジシアンジアミドポリアルキル−ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等の化合物及びこれらの塩酸塩、更にポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド及びそのアクリルアミド等の共重合物、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリメタクリル酸エステルメチルクロライド4級塩等の第1〜3級アミン基又は4級アンモニウム塩基を有する樹脂を使用することができる。
前記シリカ(C)の水分散体は、例えば前記水系媒体中で、シリカ(C)とカチオン性樹脂とを、混合、攪拌することによって製造することができる。
前記シリカ(C)の水分散体を調製する際に前記したカチオン性樹脂を使用する場合には、前記シリカ(C)100質量部に対して前記カチオン性樹脂を1〜50重量部使用することが好ましく、1〜10重量部使用することがより好ましい。
次に、本発明で使用する、もう一方の重要な材料である水溶性樹脂(D)について述べる。
前記水溶性樹脂(D)は、水に完全に溶解した形態をとり得る樹脂であり、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリアルキレンオキサイド、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンイミン、ポリアミド、各種の第4級アンモニウム塩基含有水溶性樹脂、及びこれらの変性物等を使用することができる。前記水溶性樹脂(D)としては、なかでもポリビニルアルコールを使用することが、とりわけ前記シリカ(C)に対するバインダー力が良好で、かつ形成されるインクジェット受理層の表面亀裂の発生を抑制できることから好ましい。
前記ポリビニルアルコールは、透明性、皮膜強度、顔料に対するバインダー力などの、インクジェット受理剤に必要な物性を有しており、かつ入手が容易で、変性物等の種類が豊富であることから、インクジェット受理剤の業界で従来より使用されている。
ポリビニルアルコールは一般に、酢酸ビニルポリマーのアセチル基部位を、水酸化ナトリウム等の強塩基で加水分解し水酸基にすること(鹸化)によって得られる。ポリビニルアルコールとしては、種々の鹸化の割合(鹸化度)のものや種々の重合度を有するものが市販されている。前記水溶性樹脂(D)としては、インクジェット受理層の表面亀裂を抑制する観点から、80モル%〜95モル%の範囲の鹸化度を有するポリビニルアルコールを使用することが好ましく、85モル%〜90モル%の範囲の鹸化度を有するポリビニルアルコールを使用することがより好ましい。
前記鹸化度が80モル%〜95モル%のポリビニルアルコールとしては、具体的にはPVA224、PVA235(以上、(株)クラレ製)、ゴーセノール GL−05、GH−17、GH−20、GH−23(以上、日本合成化学工業(株)製)などが使用可能であるが、本具体例によって本発明は何ら限定されない。
また、前記ポリビニルアルコールとしては、鹸化度が前記した範囲内であれば、各種の変性基を有する変性ポリビニルアルコールを使用してもよい。変性基の例としては、例えばアセトアセチル基、シリル基、第4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、ケトン基、メルカプト基、アミノ基、エチレン基等が挙げられる。これらは、酢酸ビニルと、前記変性基を有するモノマーとを共重合することによって、ポリビニルアルコール中に導入することができる。
前記ポリビニルアルコールとしては、いかなる重合度のものも用いることができるが、シリカに対するバインダー力、インクの速乾性等の観点から、500〜4000の範囲の重合度を有するものを使用することが好ましい。
本発明のインクジェット受理剤は、例えば、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)の水分散体、シリカ(C)、水溶性樹脂(D)、及び必要によりその他の成分を混合することにより製造することができる。
かかる製造方法としては、例えば、前記シリカ(C)及び前記水溶性樹脂(D)を、あらかじめ適当な水系媒体に分散あるいは溶解させたものと、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)の水分散体とを各種の攪拌機や分散機を用いて混合する方法が簡便である。
また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)、前記シリカ(C)、水溶性樹脂(D)を、水系媒体中へ任意の順序で添加し混合する方法で製造することも可能である。
また、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)の水分散体、前記シリカ(C)の水分散体、及び前記水溶性樹脂(D)の水溶液を混合する方法で製造することもできる。
前記インクジェット受理剤を製造する際に使用可能な攪拌機としては、例えばタービン翼、プロペラ翼、ファウドラー翼、パドル翼、アンカー翼、マックスブレンド翼、リボン翼、ディスパー翼等を有する攪拌機を使用することができる。また、分散機としては、例えば各種ホモジナイザー、ビーズミル、サンドミル、ラインミル、コロイドミル等を使用することができる。
本発明のインクジェット受理剤としては、前記シリカ(C)100質量部に対して前記水溶性樹脂(D)を1〜60質量部含み、かつ前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)を1〜60質量部含むものが好ましい。また、前記水溶性樹脂(D)を5〜30質量部含み、かつ前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)を1〜30質量部含むものがより好ましい。かかる配合割合のインクジェット受理剤は、形成されるインクジェット受理層の膜厚が従来より薄くても、インクに対する印刷適性、インクの速乾性に優れ、かつ所望の光沢を有するインクジェット受理層を形成することができる。
本発明のインクジェット受理剤の粘度は、その保存安定性及び各種基材への塗工、含浸作業の効率化の観点から、10万mPa・s以下であることが好ましい。
本発明のインクジェット受理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。
前記添加剤としては、例えば、ホウ酸、ジルコニウム系、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系等の各種架橋剤や、フィラーの分散剤、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、無機顔料、樹脂ビーズ等のブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、及びノニオン性、カチオン性、アニオン性、両性などの各種イオン性を有する炭化水素系、シリコーン系、フッ素系、アセチレンジオール系の各種レベリング剤等を使用することができる。
これら添加剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定しないが、インクジェット受理剤中の固形分の全量に対して0.01〜30質量%の範囲であることが好ましい。
また、本発明のインクジェット受理剤は、本発明の効果を損なわない範囲内で、水系媒体に分散可能な、公知の樹脂、例えば酢酸ビニル系、エチレン酢ビ系、アクリル系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系、スチレン・ブタジエン系、アクリロニトリル・ブタジエン系、アクリル・ブタジエン系等の合成ゴム等を含んでいても良い。
前記した添加剤等は、前記カチオン性ポリウレタン樹脂(B)、前記シリカ(C)、及び前記水溶性樹脂(D)を混合、攪拌する際に併せて使用することができる。
次に、本発明のインクジェット記録媒体について説明する。
本発明のインクジェット記録媒体は、前記インクジェット受理剤を、各種基材に塗工又は含浸した後に、インクジェット受理剤中に含まれる水系媒体を揮発させ、基材上にインクジェット受理層を形成することにより、インクの吸収性、印刷画像の耐水性に優れるインクジェット記録媒体を製造することができる。
前記基材としては、例えば、紙、板紙、レジンコート紙、各種プラスチックフィルム、合成紙、繊維、不織布、スパンボンド、人工皮革や天然皮革のように織物や不織布に樹脂が含浸及び/または塗工されたもの等を使用することができる。
前記インクジェット受理剤を前記各種基材上に塗工又は含浸する方法としては、公知慣用の方法を用いることができ、特に限定しないが、例えば、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ゲートロールコーター等の塗工機を用いる方法が簡便である。
本発明のインクジェット受理剤は、基材上に塗工又は含浸する際に亀裂が生じにくい。したがって、前記基材上にインクジェット受理剤を塗工又は含浸する際には、形成されるインクジェット受理層表面の亀裂を防止する為の工程、例えば低温条件下での乾燥工程や塗工を複数回繰り返すなどの工程が不要である。
本発明のインクジェット受理剤を基材上に塗工した後、水系媒体を揮発させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、乾燥機を用いて乾燥させる方法が一般的である。乾燥温度としては、水系媒体を揮発させることが可能で、かつ基材に対して悪影響を与えない範囲の温度に設定すればよい。
前記製造方法によって得られた本発明のインクジェット記録媒体は、実用レベルのインクの吸収性等の特性を維持し、かつ良好な生産効率を維持するうえで、3μm〜30μmの範囲の厚さのインクジェット受理層を有するものが好ましく、インクの吸収性、インクの速乾性と製造コストを勘案すると、従来の1/3〜1/2の膜厚である、5μm〜15μmが特に好ましい。
本発明により得られたインクジェット記録媒体は、各種インクに対する印刷適性、インクの速乾性に優れ、かつ所望の光沢を発現し、いずれも薄膜で実現可能なインクジェット受理層を与える、写真調インクジェット記録媒体として特に有用である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
〔合成例1〕3級アミノ基含有ポリオール(E)−Iの合成
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル(エポキシ当量201g/当量。)590質量部を仕込んだ後、フラスコ内を窒素置換した。次いで、前記フラスコ内の温度が70℃になるまでオイルバスを用いて加熱した後、滴下装置を使用してジ−n−ブチルアミン380質量部を30分間で滴下し、滴下終了後、90℃で10時間反応させた。反応終了後、赤外分光光度計(FT/IR−460Plus、日本分光株式会社製)を用いて、反応生成物のエポキシ基に起因する842cm−1付近の吸収ピークが消失していることを確認し、3級アミノ基含有ポリオール(E)−I(アミン当量339g/当量、水酸基当量339g/当量。)を調製した。
〔合成例2〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−I)の調製
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び滴下装置を備えた4ツ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールとジメチルカーボネートとを反応させて得られるポリカーボネートポリオール、(水酸基当量986g/当量。)を588質量部、ネオペンチルグリコ−ルと1,4−ブタンジオールとテレフタル酸とアジピン酸とを反応させて得られるポリエステル(水酸基当量951g/当量。)を196質量部加え、減圧度0.095MPaにて120〜130℃で脱水を行った。
脱水後、70℃に冷却し、メチルエチルケトン529質量部を加え、50℃まで冷却しながら十分に撹拌混合した。撹拌混合後、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート310質量部とオクチル酸第一錫0.2質量部とを加え、70℃で2時間反応させた。
反応終了後、合成例1で得られた3級アミノ基含有ポリオール(E)−Iを140質量部添加し、4時間反応させた後、55℃に冷却し、3−アミノプロピルトリエトキシシランを17質量部添加して、1時間反応させることにより、末端イソシアネ−ト基を有するウレタンプレポリマー溶液を調製した。
次いで、前記ウレタンプレポリマー溶液にメチルエチルケトン1125部、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン55質量部を加え、55℃で鎖伸長反応を3時間行った。
次いで、メチルエチルケトン860質量部、ジメチル硫酸を49質量部添加して、60℃で1時間保持した後、40℃に冷却し、イオン交換水3800質量部を添加することにより、水分散体を調製した。この水分散体を減圧蒸留することにより、不揮発分が30質量%で、pHが5.9であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−I)を調製した。なお、pHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、M−12)を用い、25℃の環境下で測定した値である。以下、同様の方法で、pHを測定した。
〔合成例3〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−II)の調製
3−アミノプロピルトリエトキシシランの代わりに、ジ−n−ブチルアミンを10質量部使用すること以外は、合成例2と同様の方法で、不揮発分が30質量%で、pHが5.6であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−II)を調製した。
〔合成例4〕カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−III)の調製
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの使用量を357質量部に変更すること、3級アミノ基含有ポリオール(E)−Iの代わりに、N−メチルジエタノールアミンを47質量部使用すること、及び、ジメチル硫酸の使用量を47質量部に変更すること以外は、合成例2と同様の方法で、不揮発分が22質量%でpHが6.0であるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−III)を調製した。
〔実施例1〕
前記カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−I)と、PVA235〔株式会社クラレ製、ケン化度88%、重合度3500のポリビニルアルコール〕の10質量%水溶液と、カチオン性樹脂で分散した乾式シリカ〔シリカの比表面積:90m2/g、凝集粒子径:100nm〕の12質量%水分散液を、[水分散体(PUD−I):PVA235の10質量%水溶液:乾式シリカの12質量%水分散液]の質量割合が、2.3:15.9:81.8となるように、プロペラ翼を取り付けた攪拌機にて十分に混合することにより、不揮発分が12質量%のインクジェット受理剤を調製した。
得られたインクジェット受理剤を、易接着処理された透明なポリエチレンテレフタレートのフィルム(東洋紡績株式会社製、A−4100)に、アプリケーターで塗工し、50℃で10分間乾燥させることにより、厚さ12μmのインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体を作製した。
〔実施例2〕
前記カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−II)と、PVA235〔株式会社クラレ製、ケン化度88、重合度3500のポリビニルアルコール〕の10質量%水溶液と、カチオン性樹脂で分散した乾式シリカ〔比表面積:90m2/g、凝集粒子径:100nm〕の12質量%水分散液を、[水分散体(PUD−II):PVA235の10質量%水溶液:乾式シリカの12質量%水分散液]の質量割合が、2.3:15.9:81.8となるように、プロペラ翼を取り付けた攪拌機にて十分に混合することにより、不揮発分が12質量%のインクジェット受理剤を調製した。
得られたインクジェット受理剤を、実施例1と同様の方法で塗工、乾燥し、厚さ12μmのインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体を作製した。
〔比較例1〕
前記カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−III)と、PVA235〔株式会社クラレ製、ケン化度88%、重合度3500のポリビニルアルコール〕の10質量%水溶液と、カチオン性樹脂で分散した乾式シリカ〔比表面積:90m2/g、凝集粒子径:100nm〕の12質量%水分散液を、[水分散体(PUD−III):PVA235の10質量%水溶液:乾式シリカの12質量%水分散液]の質量割合が、2.3:15.9:81.8となるように、プロペラ翼を取り付けた攪拌機にて十分に混合することにより、不揮発分が12質量%のインクジェット受理剤を調製した。
得られたインクジェット受理剤を、実施例1と同様の方法で塗工し、厚さ12μmのインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体を作製した。
〔比較例2〕
PVA235〔株式会社クラレ製、ケン化度88%、重合度3500のポリビニルアルコール〕の10質量%水溶液と、カチオン性樹脂で分散した乾式シリカ〔比表面積:90m2/g、凝集粒子径:100nm〕の12質量%水分散液を、[PVA235の10質量%水溶液:乾式シリカの12質量%水分散液]の質量割合が、22.0:78.0となるように、プロペラ翼を取り付けた攪拌機にて十分に混合することにより、不揮発分が12質量%のインクジェット受理剤を調製した。
得られたインクジェット受理剤を、実施例1と同様の方法で塗工し、厚さ12μmのインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体を作製した。
〔比較例3〕
PVA235〔株式会社クラレ製、ケン化度88%、重合度3500のポリビニルアルコール〕の10質量%水溶液と、カチオン性樹脂で分散した乾式シリカ〔比表面積:90m2/g、凝集粒子径:100nm〕の12質量%水分散液と、炭酸ジルコニウムの5質量%水溶液を、[炭酸ジルコニウムの5質量%水溶液:PVA235の10質量%水溶液:乾式シリカの12質量%水分散液]の質量割合が、2.8:21.1:76.1となるように、プロペラ翼を取り付けた攪拌機にて十分に混合することにより、不揮発分が12質量%のインクジェット受理剤を調製した。
得られたインクジェット受理剤を、実施例1と同様の方法で塗工し、厚さ12μmのインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体を作製した。
〔比較例4〕
前記カチオン性ポリウレタン樹脂水分散体(PUD−I)とPVA235〔株式会社クラレ製、ケン化度88%、重合度3500のポリビニルアルコール〕の10質量%水溶液を、[水分散体(PUD−I):PVA235の10質量%水溶液]の質量割合が、22.0:78.0となるように、プロペラ翼を取り付けた攪拌機にて十分に混合することにより、不揮発分が12質量%のインクジェット受理剤を調製した。
得られたインクジェット受理剤を、実施例1と同様の方法で塗工し、厚さ12μmのインクジェット受理層を有するインクジェット記録媒体を作製した。
[インクジェット印刷前のインクジェット記録媒体の評価方法]
実施例1〜2、及び比較例1〜4で得られたインクジェット記録媒体の表面について、光沢、及び亀裂の度合いを目視にて評価した。
評価基準:
<光沢>
3:光沢が良好。
2:光沢がやや良好。
1:光沢が不良。
<亀裂>
3:全く亀裂がなかった。
2:若干の亀裂が発生したが、受理層のはく離は見られなかった。
1:多数の亀裂が発生し、かつ受理層のはく離が見られた。
[印刷後のインクの速乾性の評価方法]
ナローフォーマットインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、PMー950C)を使用し、前記インクジェット記録媒体に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色の100%ベタ画像を、染料インクで印刷した。印刷直後に普通紙を印刷部に重ねて軽く圧着し、普通紙に転写されたインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
評価方法
<速乾性>
3:全く転写しなかった。
2:わずかに転写していた。
1:著しく転写していた。