JP4803418B2 - 懸垂式昇降搬送装置用台車における被搬送物の昇降機構 - Google Patents
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Description
このOHTは、OHT用台車が有する昇降機構によって所定の箇所において前記キャリア等の被搬送物を昇降させるとともに、当該OHT用台車を、所定の軌道に沿って配設されたレールに懸垂状態で移送させる構成をなしている。
この、タイミングベルトは、ハンド部の昇降機能のほか、内部にはOHT用台車本体部からハンド部におけるクリッパ駆動用モータを作動させるための電力供給線と、OHT用台車本体のコントローラと、ハンド部のコントローラ相互間での信号の授受のための通信線が埋設され、しかも、繰返し巻取り、繰出しに対して安定した特性が要求される。このため、タイミングベルトは可撓性に富み、所定の強度を備えた材料が用いられる(例えば、特許文献1を参照)。
前記長さ2.7mの4本のタイミングベルトで重量略16kgのキャリアを保持した際、タイミングベルトにバラツキがあると、ハンド部にて把持された被搬送物が傾き、4本のタイミングベルトに負荷される荷重が不均一となり、さらに、タイミングベルトの弾性伸び量もバラツクことになる。これに伴い、被搬送物の傾きが一層拡大され、タイミングベルトがタイミングプーリの噛込み部位において、歯飛び現象(以下、歯飛びという)を起こす危険があった。この歯飛びは被搬送物昇降時における重力方向への被搬送物の移動に伴い、4本のタイミングベルトに負荷される慣性力に起因する張力のアンバランスにより発生することが多い。
また、ハンチング現象によりタイミングベルト歯部には局部的な衝撃力が加わり、タイミングベルトの寿命を著しく短くする。
(A)タイミングプーリの歯の形状寸法
(B)タイミングベルトの歯の形状寸法
(C)タイミングベルトの弾性率
がある。
ところで、本願各発明の先行技術として特許文献2がある。この特許文献2には、OHT用台車におけるタイミングベルトの駆動機構の一環として、歯部を有するタイミングベルト11と、その基端部の巻取り・繰出しを行うローラ20と、タイミングベルト11の歯と噛合う歯を備え、タイミングベルト11を前記巻取りローラ20内から繰出しあるいはこの巻取りローラ20に巻込む方向に駆動するタイミングプーリ12とが開示されている。
さらに、特許文献2には、被搬送物の昇降時の制御手段として、タイミングプーリ12と巻取りローラ20との間でタイミングベルト11の弛みが発生すると、振動が発生し易くなると共に被搬送物の懸吊姿勢のバランスが崩れ易くなることを考慮した技術が開示されている。
一方、巻き戻し時(被搬送物の下降時)においては、滑りクラッチ21における回転駆動力伝達を遮断し、巻取りローラ20を回転自在にしてタイミングプーリ12に従動した状態にすることによってタイミングベルト11に張力を発生させてその弛みの発生を防止している。
しかし、これらのピンチローラ及びガイドローラはタイミングベルト及びタイミングプーリの各歯部の噛合わせ部位の歯飛びの防止効果はあるものの、十分ではない。
一方、従来のタイミングベルト及びタイミングプーリの各歯部の噛合わせ部位はその展開模式図としての図5に示すように、タイミングベルト50及びタイミングプーリ51において、各歯部50a、51a同士がタイトに噛合わされる慣用手段を用いていた。
従って、歯飛びはその発生箇所から波及し、1ピッチずれた状態でタイミングベルト及びタイミングプーリの各歯部同士が噛合うことになり、歯飛びを生じない他のタイミングベルトとで懸吊される被搬送物は正常な姿勢を維持できず、被搬送物が例えば、ウエハを収納したキャリアである場合、ウエハの品質低下を招くことがあり、極端な場合OHT用台車にて懸吊状態の被搬送物が落下する恐れがある。
即ち、前記各歯部同士の噛合い部において振動ほかの要因にて歯飛びが発生し始めた段階で、従来の慣用手段のように前記歯部同士の噛合い状態がクリアランスの殆どないタイトの状態では、タイミングベルトの伸縮に伴い、クリアランスが無くなり、歯飛びに移行するのに比べて、この構成では歯飛びを抑制する方向に移行する。
また、前記各タイミングプーリ及びこれに対応するタイミングベルトの各歯部同士が噛合う噛合い部の両側2箇所において、タイミングベルトの歯部が形成されていない面を押圧して前記タイミングベルトの歯部を前記タイミングプーリに押し当てるピンチローラを備えるようにした。これにより、上記の効果に加えて、タイミングベルトの歯飛び抑制効果をさらに向上させることができる。 即ち、ピンチローラは被搬送物を上昇させる時、タイミングベルトに衝撃的、瞬間的に加わる慣性重力がタイミングベルト歯部に伝播するのを遮断、緩和する効果を有する。
更に、前記タイミングベルトが前記巻取りドラムから巻戻される場合、及び、前記タイミングベルトが前記巻取りドラムに巻取られる場合、の何れの場合においても、前記各タイミングプーリとこれに対応する巻取りドラムとの間のタイミングベルトの張力を所定の範囲内で一定に保つように、前記各巻取りドラムの回転速度を制御する制御手段を備えるようにした。これにより、上記の効果に加えて、各タイミングプーリとこれに対応する巻取りドラムとの間のタイミングベルトの弛みと、これに伴う振動の発生を防止できるため、タイミングベルトの歯飛び抑制効果をさらに向上させることができる。
この請求項2に係る発明によれば、引用元の請求項1に係る発明の効果に加えて、タイミングローラの近傍に位置するタイミングベルトの幅方向の変位を抑制できるためタイミングベルト及びタイミングプーリの各歯部の噛合い部位における歯飛び防止効果を増すことができる。
この請求項3に係る発明によれば、引用元の請求項1又は2に係る発明の効果に加えて、全てのタイミングプーリにおける同期運転機構の組立てが容易で、被搬送物を把持するハンド部を安定状態にて懸吊することができる。
この請求項4に係る発明によれば、引用元の請求項1乃至3に係る発明の効果に加えてOHT用台車本体と被搬送物把持用ハンド部との電力・信号の授受に必要な概ね3mに及ぶ電線を別途設ける必要がなく、配線の簡素化を図ることができる。
因みに、タイミングベルトに埋設する電線の代りに別途電線を配する構成とすると、電線に伸縮機構を別途設ける必要が生じ構成の複雑化を来す。
先ず、図面の概要を述べると、図1は本発明に係るOHT用台車の要部構成を示す正面図、図2はOHT用台車のハンド部における昇降機構を平面視した概略構成図、図3は本発明の要部構成を示す概略構成図、図4はタイミングベルト及びタイミングプーリの各歯部の噛合わせ部位(図3における領域M部)における展開模式図で、同図(A)はタイミングベルトの張力が最大時(長さが最大)、同図(B)はタイミングベルトの張力が最小時(長さが最小)の状況を示す。図5は慣用手段としてのタイミングベルト及びタイミングプーリの各歯部の噛合わせ部位(図3における領域M部)における展開模式図、図6は本発明の実施例におけるタイミングプーリ及びタイミングベルトの寸法表示を付した模式図で同図(A)はタイミングベルトの寸法表示、同図(B)はタイミングプーリの寸法表示である。図7は本発明の実施例における被搬送物の荷重とタイミングベルトの関係を示す特性図である。
先ず、メインコントローラ(図示せず)からの搬送指令信号がOHT用台車の制御部に受信されると、搬送指令信号に含まれる信号内容が読み取られる。具体的には、搬送指令信号の信号内容に基づいて、搬送先となる処理装置(図示せず)の指定場所が認識されこの指定場所(走行位置データ)に到達するための走行ルートが決定される。
先ず、タイミングプーリ14及びタイミングベルト5には、互いの接触部位の相対位置における滑りを防止するために、タイミングプーリ14の周囲には歯部14aが形成され、タイミングベルト5には前記タイミングプーリの歯部14aと噛合う歯部5aが形成されている。次に、巻取ドラム13の構成について述べると、タイミングベルト5を巻取る円筒部13a、巻取られたタイミングベルト5の幅方向の変位を防止する鍔部13b、及び
固定部13cを備えている。
31、32はピンチローラで、タイミングベルト5及びタイミングプーリ14の各歯部
5a、14aの噛合い部位において、タイミングベルト5の背面(歯部5aが形成されていない面)を押圧しつつ回動自在に支持されている。
これによって、少なくともピンチローラ31、32間のM部に於いて、タイミングベルトは張力の加わった状態でタイミングプーリに巻架され、、しかも背面の2箇所をピンチローラで押圧されるので、ピンチローラの歯にタイミングベルトの歯が密着し、タイミングベルト5及びタイミングプーリ14の各歯部5a、14aの噛合い部位において歯飛びの発生の可能性は少ない。
これによって、タイミングベルト5の反巻取ドラム13側であって、ハンド部7側の端部におけるタイミングベルトの幅方向の振れが発生した場合、タイミングプーリ14の歯部14aに対するタイミングベルト5の歯部5aの噛合いが傾斜することに伴い発生する可能性のある歯飛びを抑制できる。
(1) 巻取ドラム13及びタイミングプーリ14間のタイミングベルト5に所定範囲
内で一定張力を加えること
(2) ピンチローラ31、32を設けること
(3) ガイドローラ33、34を設けること
は、タイミングベルト5及びタイミングプーリ14の各歯部5a、14aの噛合い部位の歯飛び発生の抑制効果を有する。
しかし、タイミングベルト5及びタイミングプーリ14の各歯部5a、14aの噛合い部位において、従来のクリアランスが最小限で、タイトな噛合わせであると、剛性大につき歯ピッチの変動のないタイミングプーリ14の歯部14aと、弾性体で形成されることに伴い、被搬送物8の有無により歯部ピッチに変動のあるタイミングベルト5の歯部5aとの噛合い状態が変化し、最適状態を維持できない。
先ず、タイミングプーリ14が剛体で形成されていることにより、当該タイミングプーリ14の歯部14aの歯ピッチが一定であるのに対して、タイミングベルト5は、巻取ドラム14に巻取り・繰出しされるため弾性体で形成される。このため、タイミングベルト5に最大張力が負荷されるハンド部7に対して被搬送物8を把持して上昇するときに最大長となり、ハンド部7に被搬送物8を把持しない状態で降下する時に最小長となる。
このようにタイミングベルト5が最大長となるときのタイミングベルト5及びタイミングプーリ14の各歯部5a、14aの噛合い部位の適正な状態は図4(A)の関係にあることが望ましい。
即ち、ピンチローラ31、32間のタイミングベルト5とタイミングプーリ14とが噛合うM部の中央部において、タイミングプーリ14の歯部14aと、タイミングプーリ14の各歯部5a間に形成されるクリアランス寸法G1は通常の寸法(従来慣用されているクリアランス)であり、両端部に於いて形成されるタイミングプーリ14の歯部14aと、タイミングプーリ14の各歯部5a間のクリアランスG2は最大となる。
即ち、ピンチローラ31、32間のタイミングベルト5とタイミングプーリ14とが噛合うM部の中央部において、タイミングプーリ14の歯部14aと、タイミングプーリ14の各歯部5a間に形成されるクリアランスG1は図4(A)と同様通常の寸法であるが、両端部に於いて形成されるタイミングプーリ14の歯部14aと、タイミングプーリ14の各歯部5a間のクリアランスG2は最小となる。
この図4(A)、(B)のようにタイミングベルト5及びタイミングプーリ14の各歯部5a、14aの噛合い部位の最適化を図るための手法は、
(1) タイミングベルト5及びタイミングプーリ14の各歯部5a、14aの噛合い部の
長さ(図3よりこの長さはM)
(2) タイミングベルト5の弾性率(単位重量当りの伸び率をEとする)
(3) タイミングベルト5に作用する負荷荷重変動量W(最大負荷荷重−最小負荷荷重)
とする。
0≦G1<0.4mm・・・・・・・・・・・(式1)
M×E×W≦G2<M×E×W+G1・・・・(式2)
また、クリアランスG1、G2が必要以上に大きな寸法になると歯部の強度が不足し、十分な耐寿命特性が得られなくなり、しかも、タイミングベルトの昇降動作でタイミングベルトに滑りが生じるなど動作が不安定になる。前記(式1)、(式2)は歯部の強度が十分な耐寿命特性を有し、昇降動作の安定性も確保できるものである。
なお、理論上、前記クリアランスG1は、タイミングベルト5に対し、被搬送物8の荷重が負荷される図4(B)の状態の方が被搬送物8の荷重が負荷されない図4(A)の状態より大となるが、負荷荷重によるタイミングベルト5全体の伸びに比べて1ピッチの伸びが関与するのみで、実質同じとしても前記式1、2への影響は殆どない範囲である。
L1:0.35mm
L2:1.1mm
L3:0.85mm
L4:2mm
L5:1.1mm
L6:0.85mm
L7:0.7mm
H1:0.65mm
H2:0.5mm
D:29.60mm
T:0.65mm
である。
また、前記式1、2の要素ほか実施データとして具体的数値を示すと、
G1:約0.2mm
E:約5.5×10−4(mm/kg)
M:約60mm
W:約4Kg
タイミングベルト5の幅:約25mm
タイミングベルト5及びタイミングプーリ14の歯ピッチ:2mm
タイミングベルト5の実施可能長さ:300〜5,000mm
である。
図7は、この実施例におけるタイミングベルトの荷重W(単位はkg)に対する長さL(単位はmm)との関係を示すグラフである。
この実施例によってタイミングベルト5とタイミングプーリ14の各歯部5a、14aとの噛合い状態において歯飛びは発生しないことを確認した。
タイミングベルト幅寸方が10mm〜50mmの範囲で、伸び率Eが5.0×10−4(mm/kg)〜5.0×10−6(mm/kg)の範囲にある場合、G1の適正値は0.5mm以下、好ましくは0.2mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下である。
以上に記載のデータは本願各発明の一具体例を示したもので、各請求項にて規制される技術的範囲を限定するものではない。
5.タイミングベルト
5a。タイミングベルトの歯部
6.昇降機構
7.ハンド部
13.巻取ドラム
14.タイミングプーリ
14a.タイミングプーリの歯部
31,32.ピンチローラ
33,34.ガイドローラ
Claims (4)
- 帯状をなし、その一面において、長手方向に沿って歯部を形成し、被搬送物把持用ハンド部を下端部で支持する複数本のタイミングベルトと、
各タイミングベルト毎に、その歯部と噛合い、当該タイミングベルトによって懸吊される前記ハンド部を昇降制御するタイミングプーリと、
当該各タイミングプーリの駆動制御により、各対応する前記タイミングベルトを巻取り、又は繰り出しする巻取りドラムと、
前記各タイミングプーリ及びこれに対応するタイミングベルトの各歯部同士が噛合う噛合い部の両側2箇所において、タイミングベルトの歯部が形成されていない面を押圧して前記タイミングベルトの歯部を前記タイミングプーリに押し当てるピンチローラと、
前記タイミングベルトが前記巻取りドラムから巻戻される場合、及び、前記タイミングベルトが前記巻取りドラムに巻取られる場合、の何れの場合においても、前記各タイミングプーリとこれに対応する巻取りドラムとの間のタイミングベルトの張力を所定の範囲内で一定に保つように、前記各巻取りドラムの回転速度を制御する制御手段と、
を有する懸垂式昇降搬送装置用台車における被搬送物の昇降機構において、
前記タイミングベルト及び前記タイミングプーリの各歯部同士の噛合い状態が、被搬送物搭載の有無に対応した負荷荷重の有無により、前記タイミングベルトの弾性伸縮に起因して変動するタイミングベルトの歯ピッチと、弾性伸縮を生じない前記タイミングプーリの歯ピッチとにズレが生じても、前記タイミングベルトの歯部の形状寸法と前記タイミングプーリの歯部の形状寸法との最適化を図ることにより、噛合わせ不良を生じることなく、かつ、所定の噛合い強度を保つように構成し、
前記最適化を図るために、
前記タイミングベルトの歯部と前記タイミングプーリの歯部との噛合い部の長さ、前記タイミングベルトの単位重量当りの伸び率、及び前記タイミングベルトに作用する負荷荷重変動量を考慮して、前記ハンド部が前記被搬送物を把持して上昇するときにおける前記タイミングベルトの歯ピッチが最大となる場合、及び、前記ハンド部が前記被搬送物を把持しないで降下するときにおける前記タイミングベルトの歯ピッチが最小となる場合、の何れの場合においても、前記噛合い部の長さ範囲内にわたって互いの歯部同士が噛合い可能なクリアランスが存在するように、各々の前記歯部の形状寸法を設定することを特徴とする懸垂式昇降搬送装置用台車における被搬送物の昇降機構。 - 前記各タイミングプーリの近傍であって、当該タイミングプーリと、被搬送物相互間、当該タイミングプーリと、これに対応する巻取りドラム相互間の夫々に位置し、前記タイミングベルトの幅方向の変位を防止させるガイドローラを備えることを特徴とする請求項1に記載の懸垂式昇降搬送装置用台車における被搬送物の昇降機構。
- タイミングベルトの本数が4であることを特徴とする請求項1又は2に記載の懸垂式昇降搬送装置用台車における被搬送物の昇降機構。
- 各タイミングベルトに対し、ハンド部への動力発生用電力乃至制御信号供給に必要な電線が埋設されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の懸垂式昇降搬送装置用台車における被搬送物の昇降機構。
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