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JP4899757B2 - 眼用レンズ - Google Patents

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JP4899757B2 JP2006266708A JP2006266708A JP4899757B2 JP 4899757 B2 JP4899757 B2 JP 4899757B2 JP 2006266708 A JP2006266708 A JP 2006266708A JP 2006266708 A JP2006266708 A JP 2006266708A JP 4899757 B2 JP4899757 B2 JP 4899757B2
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Description

本発明は、眼用レンズに関するもので、該眼用レンズはコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などに特に好適に用いられる。
コンタクトレンズ装用者に見られる問題の一つに細菌による感染の問題がある。その対策の一つとして、コンタクトレンズ洗浄・保存液に抗菌性成分を含有することにより、コンタクトレンズ保存中に細菌が付着するのを抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、この方法では抗菌性成分は洗浄・保存液から取り出して軽く水洗するだけでも抗菌性成分が洗い流されてしまい、コンタクトレンズ使用中の細菌感染を抑制する目的には十分な効果が得られにくいという問題があった。
特表2006−509532
本発明は、抗菌性に優れ水洗等しても抗菌性が低下しない眼用レンズを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。すなわち、
(1) 分子内にアンモニウム基を有するモノマー単位を有する高分子化合物(A)が、ハイドロゲル(B)中に分散されてなり、高分子化合物中のアンモニウム塩モノマーの含有量が0.01〜10重量部であることを特徴とする眼用レンズ。
(2) 前記ハイドロゲル(B)が、シリコーン成分を20重量%以上含有するシリコーンハイドロゲルであることを特徴とする上記(1)記載の眼用レンズ。
(3) 前記シリコーン成分のうち、少なくとも1種類が下記一般式(a)
M−L−Sx (a)
で表されるシリコーンモノマーから得られる構造を有することを特徴とする上記(2)記載の眼用レンズ。
(Mはラジカル重合可能な重合性基を表す。Lは炭素数1〜20の置換されていてもよい2価の有機基を表す。Sxはシロキサニル基を表す。)
(4) 前記式(a)中のLが下記一般式(b)、(c)
Figure 0004899757
のいずれかであることを特徴とする上記(3)記載の眼用レンズ。
(jは1〜20の整数を表す。kは1〜6の整数を表し、mは1〜17の整数を表す。ただし、3k+m≦20である。)
(5) 前記シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が下記式(d)および(e)
Figure 0004899757
からなる群から選ばれたモノマーであることを特徴とする上記(3)または(4)記載の眼用レンズ。
(6) 前記アンモニウム基を有するモノマーが下記一般式(f)
Figure 0004899757
で表されることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の眼用レンズ。(Rは炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を表す。R〜Rは炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基または炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を表す。RとRは環を形成していてもよい。X−は任意のアニオンを表す。)
(7) 高分子化合物(A)と混合した状態で、ハイドロゲル(B)のモノマーまたはマクロモノマーを重合させて得られることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の眼用レンズ。
(8) 眼用レンズがコンタクトレンズであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の眼用レンズ。
本発明によれば、抗菌性に優れ水洗等しても抗菌性が低下しない眼用レンズを得ることができる。
本発明の眼用レンズは網目構造を有する親水性ポリマーであるハイドロゲル中に、分子内にアンモニウム基を有する高分子化合物を分散させてなる。本発明においては、ハイドロゲル内に該高分子化合物が分散されているとは、単にハイドロゲル表面に付着している場合を含まず、水を用いて超音波洗浄により眼用レンズ表面を洗浄した後、有機溶媒で眼用レンズ中に含まれる高分子化合物を抽出した際に、分子内にアンモニウム基を有する高分子化合物が抽出されるようなものを指す。該抽出操作により、分子内にアンモニウム基を有する高分子化合物が抽出された場合には、該ハイドロゲル中に該高分子化合物が分散されていると判断する。具体的には有機溶媒としてメタノール、エタノール、2−プロパノール、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドを用いて抽出し、これらのうち少なくとも1種類によって、ハイドロゲルの乾燥重量の0.1%以上分子内にアンモニウム基を有する高分子化合物が抽出された場合は該高分子化合物が分散されていると判断する。
本発明の眼用レンズが十分な酸素透過性を有するためには、ハイドロゲルはさらにシリコーン成分を含有したシリコーンハイドロゲルであることが好ましい。シリコーンハイドロゲル中のシリコーン成分の含有量は、少ないと眼用レンズを連続装用するのに必要な酸素透過性が得られず、多いと親水性成分との相溶性が得られにくくなることから、20〜80重量部が好ましく、30〜80重量部がより好ましく、50〜80重量部が最も好ましい。
本発明の眼用レンズに用いられるシリコーンハイドロゲルの重合方法としては、シリコーンモノマー、親水性モノマー、架橋モノマー等の各種モノマーの混合液を重合して得る方法、シリコーンモノマー、親水性モノマー等の各種モノマーを単独重合もしくは共重合した後、重合性基を導入したマクロモノマーを重合して得る方法などが挙げられる。
本発明のシリコーンハイドロゲルをモノマーから重合して得る場合のシリコーンモノマーは、2つ以上の重合性基を有すると架橋剤として機能し、得られるシリコーンハイドロゲルの弾性率が高くなりすぎることから、下記一般式(a)
M−L−Sx (a)
で表される、分子内に重合性基を一つ有する構造のシリコーンモノマーが好ましい。
式(a)中のMはラジカル重合可能な重合性基を表す。ラジカル重合可能な重合基の例としては、ビニル基、アリル基、ビニロキシ基、アリロキシ基、ビニルカルバメート基、アリルカルバメート基、ビニルカーボネート基、アリルカーボネート基、メタクリロイル基、アクリロイル基、スチリル基などが挙げられる。これらのうち、得られるポリマーの弾性率の点で好ましいのはアクリロイル基、メタクリロイル基である。
式(a)中、Lは炭素数1〜20の置換されていてもよい2価の有機基を表す。得られるポリマーの弾性率を下げるためにはアルキル基がより好ましく、さらに親水性モノマーとの相溶性を得るためには水酸基、エチレンオキシド構造を有することがより好ましい。その例としてメチレン基、エチレン基、プロピレン基、1−メチルエチレン基、2−メチルエチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、2−メチルプロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、n−ペンチレン基などの2価の炭化水素基、2−ヒドロキシプロピレン基、2−ヒドロキシブチレン基、3−ヒドロキシブチレン基などの水酸基を有する2価の有機基、2−エトキシエチル基、3−プロポキシエチル基、3−プロポキシプロピル基などのエーテル結合を有する2価の有機基、および3−プロポキシ−2−ヒドロキシプロピル基、2−プロポキシ−1−ヒドロキシメチルエチル基などのエーテル結合と水酸基を併せもつ2価の有機基などが挙げられる。
式(a)中、Sxはシロキサニル基を表す。ここで、シロキサニル基は構造中に少なくとも一つのSi−O−Si結合を有する基を表す。
上記一般式(a)で表されるシリコーンモノマーは、下記一般式(a’)で表されるものであることが好ましい。
Figure 0004899757
nは0〜200の整数を表す。a、b、cはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。n+a+b+cでシリコーン化合物中のシロキサン結合の数を表すが、n+a+b+cの数が少なすぎると眼用レンズやコンタクトレンズに必要とされる酸素透過性が十分に得られず、多すぎると共重合成分として用いられることの多い種々の親水性モノマーとの相溶性が低くなり、透明なレンズが得られないことから1〜260が好ましく、2〜100がより好ましく、2〜50が最も好ましい。
〜A11はそれぞれ置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。上記の構造で表される置換基の中で、かかる置換基を有した化合物が工業的に比較的安価に入手できることから、特に好適なものはトリス(トリメチルシロキシ)シリル基、メチルビス(トリメチルシロキシ)シリル基、ジメチルトリメチルシロキシシリル基、ポリ(ジメチルシロキサン)基からなる群から選ばれた基である。
一般式(a)で表されるシリコーンモノマーのうち、親水性モノマー、アンモニウム塩モノマーとの相溶性、重合して得られるポリマーの酸素透過性、機械的特性などの点で好ましいのは下記式(d)〜(g)
Figure 0004899757
(式(g)中、Qは炭素数1〜8のアルキル基を表す。pは1〜20の整数を表す。)
で表されるシリコーンモノマーである。
本発明においてマクロモノマーとは、分子量800以上で重合性基を1つ以上有するモノマーである。
本発明の眼用レンズに用いるシリコーンハイドロゲルをマクロモノマーから得る場合には、上記の各種シリコーンモノマーを単独重合した後、重合性基を導入し、各種親水性モノマー等と共重合する方法や、各種シリコーンモノマー、各種親水性モノマー等を共重合した後、重合性基を導入して重合する方法を用いることができる。これらのうち、シリコーン成分と親水性成分の相溶性を高めやすいことから好ましいのは、各種シリコーンモノマーと各種親水性モノマーを共重合した後、重合性基を導入して重合する方法である。
シリコーンマクロモノマーの分子量は低すぎるとマクロモノマーを用いることの利点の一つである重合収縮抑制の効果が十分ではなく、高すぎるとマクロモノマーの粘度が高くなりすぎて取扱いが難しくなったり、重合溶媒に対する溶解性が低下するといった問題があることから、1000〜100万が好ましく、3000〜50万がより好ましく、5000〜10万が最も好ましい。
本発明の眼用レンズに用いられる高分子化合物を構成するアンモニウム塩モノマーは分子内に重合性基とアンモニウムカチオンを有するモノマーであればよい。重合性基はラジカル重合可能であれば特に制限はなく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、アリル基、ビニル基、および他のラジカル重合可能な炭素・炭素不飽和結合を有する基が含まれる。また、アンモニウムカチオンは窒素原子上の重合性基につながる一つ以外の三つの置換基が、それぞれ独立に置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基であり、それらの置換基は互いに環を形成していてもよい。より具体的な構造の例を挙げると下記一般式(f)、(h)、(i)
Figure 0004899757
Figure 0004899757
(式(h)、(i)中、R〜R10はそれぞれ独立に置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基または置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基を表す。R11は水素またはメチル基を表す。ZはOまたはNHを表す。Xは任意のアニオンを表す。)
で表されるアンモニウム塩モノマーなどが挙げられる。それらのうち、熱安定性と抗菌性の点で最も好ましいのは一般式(f)で表されるビニルイミダゾリウム塩である。
一般式(f)中、Rは炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を表す。炭素数が少ないと、アンモニウムカチオン部分の親水性によりシリコーンモノマーとの相溶性が低下し、炭素数が多すぎると、親水性モノマーとの相溶性が低下することから、炭素数4〜20がより好ましい。
一般式(f)中、R〜Rは炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基または炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を表す。RとRは環を形成していてもよい。
一般式(f)中、Xは任意のアニオンを表す。その例として、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンなどのハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、四フッ化ホウ素イオンなどが挙げられる。それらのうち、合成の容易さの点でハロゲン化物イオンが最も好ましい。
本発明の高分子化合物中のアンモニウム塩モノマーの含有量は、少なすぎると十分な抗菌性が得られず、多すぎるとハイドロゲル成分との相溶性が得られにくくなることから、0.001〜20重量部が好ましく、0.005〜15重量部がより好ましく、0.01〜10重量部が最も好ましい。
本発明の眼用レンズに用いられる高分子化合物は、アンモニウム塩以外に他のモノマーを共重合してもよい。共重合するモノマーの例としては、共重合可能であれば特に制限はなく、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリル基、ビニル基、および他の重合可能な炭素・炭素不飽和結合を有するモノマーを使用することができる。その例として、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのアミド系モノマー、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルメタクリレートなどの水酸基を有するモノマー、3−トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、片末端または両末端に(メタ)アクリル基を有するポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系モノマーなどが挙げられる。これらのうち、アンモニウム塩モノマーとの相溶性が得られやすい点からより好ましいのはアミド系モノマー、水酸基を有するモノマーであり、最も好ましいのはN−ビニルピロリドンである。
本発明の眼用レンズに用いる高分子化合物の分子量は、小さすぎると高分子化合物が基材から溶出しやすくなり、大きすぎると高分子化合物のモノマー混合液や含浸溶液に対する溶解性が低下することから、1000〜100万が好ましく、5000〜50万がより好ましく、10000〜30万が最も好ましい。
本発明の眼用レンズにおいては、良好な機械物性が得られ、消毒液や洗浄液に対する良好な耐性が得られるという意味で、1分子中に2個以上の共重合可能な炭素炭素不飽和結合を有するモノマーを共重合成分として用いることが好ましい。1分子中に2個以上の共重合可能な炭素炭素不飽和結合を有するモノマーの共重合比率は0.1〜20重量%が好ましく、0.3〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。
本発明の眼用レンズは、紫外線吸収剤や色素、着色剤などを含むものでもよい。また重合性基を有する紫外線吸収剤や色素、着色剤を共重合した形で含有してもよい。
本発明の眼用レンズを重合により得る際は、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有するものを選択して使用する。一般的には10時間半減期温度が40℃〜120℃のアゾ系開始剤および過酸化物系開始剤が好適である。光重合開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、および金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独または混合して用いられ、およそ1重量%くらいまでの量で使用される。
本発明の眼用レンズを重合により得る際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能であり特に制限はない。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶剤であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。
本発明の眼用レンズの重合方法、成形方法としては通常の方法を使用することができる。たとえば一旦、丸棒や板状に成形し、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、およびスピンキャスト法などである。
一例として本発明の眼用レンズをモールド重合法により得る場合について、次に説明する。
モノマー組成物を一定の形状を有する2枚のモールドの空隙に充填する。そして光重合あるいは熱重合を行ってモールドの形状に賦型する。モールドは樹脂、ガラス、セラミックス、金属等で製作されているが、光重合の場合は光学的に透明な素材が用いられ、通常は樹脂またはガラスが使用される。ポリマーを製造する場合には、多くの場合、2枚の対向するモールドにより空隙が形成されており、その空隙にモノマー組成物が充填されるが、モールドの形状やモノマーの性状によってはポリマーに一定の厚みを与え、かつ、充填したモノマー組成物の液もれを防止する目的を有するガスケットを併用してもよい。続いて、空隙にモノマー組成物を充填したモールドは、紫外線のような活性光線を照射されるか、オーブンや液槽に入れて加熱されて、モノマーを重合する。光重合の後に加熱重合したり、逆に加熱重合後に光重合するなど、両者を併用する方法もあり得る。光重合の場合は、例えば水銀ランプや捕虫灯を光源とする紫外線を多く含む光を短時間(通常は1時間以下)照射するのが一般的である。熱重合を行う場合には、室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めていく条件が、ポリマーの光学的な均一性、品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
本発明の眼用レンズは、抗菌効果を持続させるため、高分子化合物が基材ハイドロゲルの網目構造中に分散されている。高分子化合物を基材中に分散させる方法の例として、ハイドロゲルの原料モノマーまたは原料マクロモノマー混合液中に高分子化合物を混合した状態でハイドロゲルを重合させる方法、ハイドロゲルを高分子化合物の溶液中に浸漬して含浸させる方法などが挙げられる。
ハイドロゲルモノマー混合液中に高分子化合物を混合した状態でハイドロゲルを重合させる方法の場合、高分子化合物の含有量は少なすぎると十分な抗菌性が得られず、多すぎるとハイドロゲルの固形分が少なくなることから0.1〜20%が好ましく、0.5〜15%がより好ましく、1〜10%がもっとも好ましい。
ハイドロゲルを高分子化合物の溶液中に浸漬して含浸させる方法の場合、高分子化合物の溶液に使用する溶媒は有機系、無機系の各種溶媒が適用可能であり特に制限はない。例を挙げれば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、3,7−ジメチル−3−オクタノールなどの各種アルコール系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの各種芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、ケロシン、リグロイン、パラフィンなどの各種脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの各種ケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、フタル酸ジオクチル、二酢酸エチレングリコールなどの各種エステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロック共重合体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールランダム共重合体などの各種グリコールエーテル系溶剤であり、これらは単独あるいは混合して使用することができる。これらのうち、最も好ましいのは水である。
高分子化合物の水溶液の濃度は、低すぎると十分な抗菌性が得られず、高すぎると過剰の高分子化合物の洗浄が必要になる可能性があることから、0.1〜30%が好ましく、0.5〜20%がより好ましく、1〜10%が最も好ましい。
本発明の眼用レンズの酸素透過性は、低すぎると、特に連続装用時に酸素不足による眼障害が起こり、高くしようとしすぎると他の眼用レンズに必要とされる諸物性の低下を招くことから、酸素透過係数70×10−11〜500×10−11(cm/sec)mLO/(mL・hPa)が好ましい。
本発明の眼用レンズの抗菌性は、緑膿菌で3サンプルの菌数を測定した場合、培養後の菌数の3回の平均値が、培養前の初期菌数の3回の平均値の4倍以内であれば増殖なしとみなし、抗菌効果があると判断する。より好ましくはコントロールの菌数の平均値の10%以下であり、最も好ましくはコントロールの菌数の1%以下である。
本発明のポリマーは、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズとして特に好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例1
下記式(y1)
Figure 0004899757
で表されるシリコーン化合物(31重量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(38重量部)、下記式(y2)
Figure 0004899757
で表される片末端がメタクリル化されたポリジメチルシロキサン(分子量約1000、31重量部)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(4重量部)、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(3.25重量部)、分子内にアンモニウム基を有するモノマー単位を有する高分子化合物(分子量約40000、PVP/ビニルメチルイミダゾリウムクロリド=95/5、6重量部)、光開始剤イルガキュア1850(1.0重量部)、3,7−ジメチル−3−オクタノール(50重量部)を混合し撹拌した。このモノマー混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。窒素雰囲気下のグローブボックス中で10cm角、厚さ3mmのガラス板2枚(うち1枚には剥離しやすいようにアルミシールを貼付)の間に、厚さ100μmのパラフィルムの中央部を切り抜いたものを2枚スペーサーとして挟み、そこにモノマー混合物を流し込んで、光照射(東芝FL6D蛍光灯、8.4キロルクス、15分間)により板間重合してフィルム状サンプルを得た。
得られたフィルム状サンプルを、水中で超音波を20分間あててガラス板から剥離し、60%IPA水溶液に60℃で一晩浸漬し、さらに80%IPA水溶液に60℃、2時間浸漬して残存モノマーなどの不純物を抽出し、50%IPA水溶液、25%水溶液、水と段階的にIPA濃度を下げた液におよそ30分ずつ浸漬して水和した。200mLガラス瓶中のホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬し、該ガラス瓶をオートクレーブに入れ、121℃で30分間煮沸処理を行った。放冷後、フィルム状サンプルをガラス瓶から取り出し、ホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)に浸漬した。得られたフィルム状サンプルを3cm角に切り出して抗菌性評価用サンプルとした。
実施例1で得られたサンプルを40℃、16時間真空乾燥を行った後、2gとり、蒸留水中で超音波洗浄を30分間行った後、2−プロパノールに浸漬して60℃で24時間加熱した。抽出液からエバポレータを用いて溶媒を留去し、さらに真空ポンプで減圧して完全に残存溶媒を除去して重量を測定したところ、抽出物は56.9mgであった。また、赤外線吸収スペクトルから、この抽出物はPVP/ビニルメチルイミダゾリウムクロリド共重合体であることがわかった。このことから、実施例1のサンプル中には分子内にアンモニウム基を有するモノマー単位を有する高分子化合物が分散されていないことが確認できた。
比較例1
モノマー混合液中に高分子化合物を加えない以外は実施例1と同様にしてフィルム状サンプルを得た。3cm角に切り出して抗菌性評価用サンプルとした。
比較例1で得られたサンプルを40℃、16時間真空乾燥を行った後、2gとり、蒸留水中で超音波洗浄を30分間行った後、2−プロパノールに浸漬して60℃で24時間加熱した。抽出液からエバポレータを用いて溶媒を留去し、さらに真空ポンプで減圧して完全に残存溶媒を除去して重量を測定したところ、抽出物は0.1mgであった。また、溶媒をメタノール、エタノール、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドに変更して抽出を行ったが、いずれもサンプルの乾燥重量の0.1重量%以上の抽出物が抽出されることはなかった。
比較例2
比較例1で得られたフィルム状サンプルを50mLスクリュー管に入れ、1.7%PVP/ポリメチルビニルイミダゾリウムクロリド(95/5)水溶液に室温で16時間浸漬した。
実施例1で得られたフィルム状サンプルを3枚用意し、JIS Z 2801:2000「抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果」5.2 プラスチック製品などの試験方法に基づき、コンタクトレンズ使用時にみられる代表的な細菌の一つである緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC 13275)をフィルム状サンプルに接種し、接種した直後の菌数(初期菌数)および35℃、24時間後の菌数をカウントして抗菌評価を行った。その結果は下表1の通りであり、高分子化合物を加えずに重合した比較例1で得られたフィルム状サンプルでは初期菌数と比較して増殖が見られたのに対し、実施例1で得られたフィルム状サンプルでは初期菌数と比較して1桁の減少が見られ、十分な抗菌性を示した。
Figure 0004899757
超音波洗浄後の抗菌評価
実施例1および比較例2で得られたフィルム状サンプルを300mLの蒸留水に浸漬し、超音波で15分間洗浄した後、取り出して上記と同様の抗菌評価を行った。その結果は下表2の通りであり、抗菌性高分子水溶液に浸漬したのみの比較例2で得られたフィルム状サンプルでは抗菌性が失われて菌の増殖が見られたのに対して、実施例1で得られたフィルム状サンプルは超音波洗浄後も十分な抗菌性を有することが示された。
比較例2で得られたサンプルを40℃、16時間真空乾燥を行った後、2gとり、蒸留水中で超音波洗浄を30分間行った後、2−プロパノールに浸漬して60℃で24時間加熱した。抽出液からエバポレータを用いて溶媒を留去し、さらに真空ポンプで減圧して完全に残存溶媒を除去して重量を測定したところ、抽出物は0.3mgであった。また、溶媒をメタノール、エタノール、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドに変更して抽出を行ったが、いずれもサンプルの乾燥重量の0.1重量%以上の抽出物が抽出されることはなかった。
Figure 0004899757
実施例2
ガラス板の代わりに透明樹脂(ポリ4−メチルペンテン−1)製のコンタクトレンズ用モールドを用いる以外は実施例1と同様にして煮沸まで行い、コンタクトレンズ状サンプルを得た。

Claims (8)

  1. 分子内にアンモニウム基を有するモノマー単位を有する高分子化合物(A)が、ハイドロゲル(B)中に分散されてなり、高分子化合物100重量部中のアンモニウム塩モノマー単位の含有量が0.01〜10重量部であることを特徴とする眼用レンズ。
  2. 前記ハイドロゲル(B)が、シリコーン成分を20重量%以上含有するシリコーンハイドロゲルであることを特徴とする請求項1記載の眼用レンズ。
  3. 前記シリコーン成分のうち、少なくとも1種類が下記一般式(a)
    M−L−Sx (a)
    で表されるシリコーンモノマーから得られる構造を有するものであることを特徴とする請求項2記載の眼用レンズ。
    (Mはラジカル重合可能な重合性基を表す。Lは炭素数1〜20の置換されていてもよい2価の有機基を表す。Sxはシロキサニル基を表す。)
  4. 前記式(a)中のLが下記一般式(b)、(c)
    Figure 0004899757
    のいずれかであることを特徴とする請求項3記載の眼用レンズ。
    (jは1〜20の整数を表す。kは1〜6の整数を表し、mは1〜17の整数を表す。ただし、3k+m≦20である。)
  5. 前記シリコーンモノマーのうち、少なくとも一種類が下記式(d)および(e)
    Figure 0004899757
    からなる群から選ばれたモノマーであることを特徴とする請求項3または4記載の眼用レンズ。
  6. 前記アンモニウム基を有するモノマーが下記一般式(f)
    Figure 0004899757
    で表されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の眼用レンズ。(Rは炭素数1〜30の置換されていてもよいアルキル基を表す。R〜Rは炭素数1〜20の置換されていてもよいアルキル基または炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を表す。RとRは環を形成していてもよい。X−は任意のアニオンを表す。)
  7. 高分子化合物(A)と混合した状態で、ハイドロゲル(B)のモノマーまたはマクロモノマーを重合させて得られることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の眼用レンズ。
  8. 眼用レンズがコンタクトレンズであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の眼用レンズ。
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