以下、本発明の実施の形態による制御弁装置を、油圧シリンダ用の制御弁装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1はタンク2と共に油圧源を構成する油圧ポンプで、該油圧ポンプ1は、例えば油圧ショベルの原動機(図示せず)によって回転駆動され、タンク2内から吸込んだ作動油を高圧の圧油として吐出するものである。
3は油圧アクチュエータを構成する作業用の油圧シリンダで、この油圧シリンダ3は、例えば油圧ショベルの作業装置(図示せず)に設けられるブームシリンダ、アームシリンダまたはバケットシリンダ等を構成するものである。そして、油圧シリンダ3は、チューブ4、ピストン5およびロッド6等により構成されている。
この場合、油圧シリンダ3は、チューブ4内がピストン5により2つの油室3A,3Bに画成され、ピストン5には、ロッド6の基端側が固着されている。そして、ロッド6の先端側は、チューブ4外に突出し、チューブ4内に給排される圧油により伸長,縮小されるものである。
7A,7Bは油圧シリンダ3の油室3A,3Bに接続された一対の油圧管路を示し、該油圧管路7A,7Bは、例えば可撓性ホース等の油圧配管により構成され、後述する弁ハウジング12の油通路16A,16Bに接続されている。そして、油圧管路7A,7Bは、油圧ポンプ1からの圧油を後述の方向制御弁25,26等を介して油圧シリンダ3の油室3A,3Bに給排することにより、油圧シリンダ3のロッド6をチューブ4から伸縮動作させるものである。
8は油圧シリンダ3を遠隔操作する減圧弁型のパイロット操作弁(以下、操作弁8という)で、該操作弁8は、例えば油圧ショベルの運転室(図示せず)内に設けられ、オペレータによって傾転操作される操作レバー8Aを有している。そして、操作弁8は、そのポンプポートがパイロットポンプ9に接続され、タンクポートがタンク2に接続されている。また、操作弁8の出力ポートは、パイロット管路10A,10Bを介して後述する方向制御弁25(26)のパイロット油室30A,30B(36A,36B)に接続されている。
そして、操作弁8は、オペレータが操作レバー8Aを傾転操作したときに、その操作量に対応したパイロット圧をパイロット管路10A,10Bを通じて方向制御弁25(26)のパイロット油室30A,30B(36A,36B)に供給する。これにより、方向制御弁25,26は、図1に示す中立位置(イ)から切換位置(ロ),(ハ)のいずれかに切換えられるものである。
11は油圧ポンプ1、タンク2と油圧シリンダ3との間に設けられた制御弁装置で、該制御弁装置11は、後述の弁ハウジング12,13、スプール27,28、蓋体29A,29B,35A,35B等からなる後述の方向制御弁25,26と、後述のアンチドリフト弁43等とにより構成されるものである。
12,13は制御弁装置11の弁本体を構成する弁ハウジングで、該弁ハウジング12,13は、図2に示すように互いに衝合面12A,13Aの位置で衝合され、分解洗浄等を行うときには衝合面12A,13Aの位置で互いに分離されるものである。なお、弁ハウジング12,13は、予め一体物として形成してもよいものである。
そして、弁ハウジング12,13には、左,右方向に延びたスプール摺動穴14,15と、該スプール摺動穴14,15の軸方向に離間して形成されスプール摺動穴14,15に連通する油通路16A,16Bと、該油通路16A,16Bの間に位置する他の油通路17,18等とが設けられている。
ここで、弁ハウジング12,13内の油通路16A,16Bは、アクチュエータ側の油通路を構成し、図1に示す油圧シリンダ3の油室3A,3Bに油圧管路7A,7Bを介して接続されるものである。また、他の油通路17,18は、逆U字形状をなす通路穴として弁ハウジング12,13内に形成され、その左,右両側に位置する端部がスプール摺動穴14,15に連通している。
また、弁ハウジング12には、スプール摺動穴14の周壁側で油通路16A,16Bよりも軸方向の外側となる位置に環状の油溝19A,19Bが設けられ、弁ハウジング13には、スプール摺動穴15の周壁側で油通路16A,16Bよりも軸方向の外側となる位置に環状の油溝20A,20Bが設けられている。そして、これらの油溝19A,19B、20A,20Bは、タンク側の油通路(油圧源側の油通路)を構成し、それぞれタンク2に接続されるものである。
21は弁ハウジング12に設けられた高圧通路で、該高圧通路21は、図1に示す油圧ポンプ1の吐出側に接続され、油圧ポンプ1からの圧油が供給される。そして、高圧通路21には、油通路17との間にチェック弁22が設けられている。また、弁ハウジング13側には、これと同様に高圧通路23とチェック弁24とが設けられている。
ここで、該チェック弁22,24は、高圧通路21,23から油通路17,18に向けて圧油が流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する。そして、油通路17,18は、チェック弁22,24を介して高圧通路21,23に接続されることにより、ポンプ側の油通路(油圧源側の油通路)を構成するものである。
25,26は制御弁装置11の一部を構成する方向制御弁で、該方向制御弁25,26は、弁ハウジング12のスプール摺動穴14,15と、後述のスプール27,28、蓋体29A,29B,35A,35B、戻しばね32,38等とにより構成されている。そして、方向制御弁25,26は、図1に示す中立位置(イ)から切換位置(ロ),(ハ)に切換えられることにより、油圧シリンダ3の油室3A,3Bに給排する圧油の方向を切換制御するものである。
27,28は方向制御弁25,26のスプールで、該スプール27,28は、弁ハウジング12のスプール摺動穴14,15内に挿嵌されている。そして、スプール27は、後述のパイロット油室30A,30Bに供給されるパイロット圧に従ってスプール摺動穴14内を左,右方向に摺動変位する。また、スプール28は、後述のパイロット油室36A,36Bに供給されるパイロット圧に従ってスプール摺動穴15内を左,右方向に摺動変位するものである。
この場合、弁ハウジング12内のスプール27は、図2に示す中立位置から左方向に変位したときに、アクチュエータ側となる一方の油通路16Aをタンク側の油溝19Aに連通させ、他方の油通路16Bを油通路17(チェック弁22を介して高圧通路21)に連通させる。また、スプール27が図2に示す中立位置から右方向に変位したときには、一方の油通路16Aが油通路17(チェック弁22を介して高圧通路21)に連通し、他方の油通路16Bは、タンク側の油溝19Bに連通するものである。
一方、弁ハウジング13内のスプール28についても、前述したスプール27と同様に図2に示す中立位置から左,右方向に摺動変位することにより、アクチュエータ側の油通路16A,16Bをタンク側の油溝20A,20Bと油通路18とのいずれかに選択的に連通させるものである。
29A,29Bはスプール27,28と共に方向制御弁25を構成する左,右の蓋体で、該蓋体29A,29Bは、例えばアルミニウム系の軽量な材料を用いて形成され、その耐圧性能は後述の蓋体41に比較して十分に低く設定されるものである。また、このために蓋体29A,29Bは、穴加工、切削加工等を比較的容易に行い得るものである。
ここで、蓋体29A,29Bは、スプール摺動穴14の軸方向(左,右方向)両側に位置して弁ハウジング12の外側面に衝合され、ボルト(図示せず)等を用いて弁ハウジング12の外側面に着脱可能に固定されている。そして、蓋体29A,29Bは、弁ハウジング12の外側からスプール摺動穴14の左,右両端を油密状態に閉塞するものである。
そして、蓋体29A,29B内には、パイロット油室30A,30Bが形成され、このパイロット油室30A,30B内には、図1に示す操作弁8からパイロット管路10A,10Bを介してパイロット圧が供給される。これにより、方向制御弁25のスプール27は、このときのパイロット圧に従ってスプール摺動穴14内を左,右方向に摺動変位するものである。
ここで、蓋体29Aは、図3、図4に示すように一側の開口端29A1 が弁ハウジング12の外側面に衝合され、開口端29A1 の一部は、後述の閉塞板57にも油密状態で当接(衝合)されている。そして、蓋体29A内のパイロット油室30Aは、後述の油路34、油孔57B(図3、図4参照)等を介して凹窪部56内の油溝56Bに連通されるものである。
31はスプール27の右側端部に設けられたストッパ軸で、該ストッパ軸31は、基端側がスプール27に固定され、先端側が蓋体29A内を軸方向外側へと延びている。そして、ストッパ軸31は、後述の戻しばね32を介してスプール27を中立位置に戻す機能を有すると共に、スプール27が右方向に摺動変位したときのストロークエンドを規制するものである。
32はスプール27を中立位置に保持するために蓋体29A内に設けられた戻しばねで、該戻しばね32は、図3に示す如くストッパ軸31の外周側にばね受33A,33Bを介して挿通され、スプール27を中立位置に向けて常時付勢している。そして、戻しばね32は、スプール27が図2中の左,右方向に摺動変位するのを弾性変形することによって許すものである。
34は蓋体29Aに形成された一方の油路としての小径の油路で、該油路34は、図3、図4に示す如くパイロット油室30Aの外側となる位置をストッパ軸31、戻しばね32等と平行に延びるように蓋体29Aに穿設され、その一方側は径方向孔34Aとなってパイロット油室30Aと連通している。そして、油路34の他方側は、図4に示すように弁ハウジング12と蓋体29A(開口端29A1 )との衝合面に向けて延び、後述する閉塞板57の油孔57Bと連通するものである。
35A,35Bはスプール28と共に方向制御弁26を構成する左,右の蓋体で、該蓋体35A,35Bは、スプール摺動穴15の軸方向両側に位置して弁ハウジング13の外側面に衝合状態で設けられ、スプール摺動穴15の両端側を閉塞するものである。そして、蓋体35A,35Bも、例えばアルミニウム系の軽量な材料を用いて形成され、その耐圧性能は後述の蓋体41に比較して十分に低く設定されている。
ここで、蓋体35A,35B内には、パイロット油室36A,36Bが形成され、このパイロット油室36A,36B内にも、図1に示す操作弁8からパイロット管路10A,10Bを介してパイロット圧が供給される。そして、方向制御弁26のスプール28は、このときのパイロット圧に従ってスプール摺動穴15内を左,右方向に摺動変位するものである。
37はスプール28の右側端部に設けられたストッパ軸で、該ストッパ軸37は、基端側がスプール28に固定され、蓋体35A内を軸方向に延びている。そして、ストッパ軸37は、例えばスプール28が右方向に摺動変位したときのストロークエンドを規制するものである。
38はスプール28を中立位置に保持するため蓋体35A内に設けられた戻しばねで、該戻しばね38は、図2に示すようにストッパ軸37の外周側にばね受39,40を介して挿通され、スプール28を常時中立位置に向けて付勢すると共に、スプール28が図2中の左,右方向に摺動変位するのを許すものである。
41は弁ハウジング12に衝合状態で設けられた別個の蓋体で、該蓋体41は、方向制御弁25の蓋体29Aと隣接する位置、即ち蓋体29Aに近接した位置に配置される。そして、蓋体41は、蓋体29Aと同様に弁ハウジング12の外側面に衝合され、ボルト(図示せず)等を用いて弁ハウジング12の外側面に着脱可能に固定されるものである。蓋体41の衝合面側も、図3、図4に示すように後述の閉塞板57に油密状態で当接されている。
そして、蓋体41は、後述の弁体収容穴45等を弁ハウジング12の外側面から油密状態に閉塞し、後述するアンチドリフト弁43の一部を構成するものである。また、蓋体41は、例えば重い鋳鉄系材料を用いて形成され、油圧シリンダ3からの負荷圧に対しても十分な耐久性、耐圧性能等を有している。
ここで、蓋体41には、図3に示す如く後述の弁筒51が嵌合して取付けられる嵌合穴41Aが有底穴として形成され、該嵌合穴41Aの底部側には、該嵌合穴41Aの径方向に延びタンク2に接続されるタンク通路41Bが設けられている。また、嵌合穴41Aの軸方向(長さ方向)中間部位には、例えば油通路16Aのうち油圧管路7Aと常に連通する通路部分から油圧シリンダ3の負荷圧を導く負荷圧通路41Cが開口して設けられている。
42は蓋体41に形成された他方の油路としての小径の油路で、該油路42は、嵌合穴41Aの径方向外側となる位置を嵌合穴41Aと平行に延びるように蓋体41に穿設されている。そして、油路42の一側は、図4に示すように弁ハウジング12と蓋体41との衝合面に向けて延び、後述する閉塞板57の油孔57Cと連通している。また、油路42の他側は、径方向孔42Aとなって後述する弁筒51のパイロットポート51Eに連通するものである。
43は制御弁装置11の一部を構成する落下防止弁としてのアンチドリフト弁で、このアンチドリフト弁43は、弁ハウジング12,13のスプール摺動穴14,15内でスプール27,28を中立位置に保持しているときに、油圧シリンダ3の油室3Aから圧油(負荷圧)がリーク(漏洩)して油圧シリンダ3が不用意に動いてしまうのを防ぐものである。そして、アンチドリフト弁43は、後述のパイロット操作逆止弁44と、パイロット式切換弁50等とにより構成されている。
44は油通路16Aの途中に位置して弁ハウジング12内に設けられたパイロット操作逆止弁で、該パイロット操作逆止弁44は、スプール摺動穴14と油圧管路7Aとの間に位置して油通路16Aの途中に設けられ弁座45Aを有する弁体収容穴45と、後述の逆止弁体46、可動ばね受47およびスプリング49等とにより構成されている。
46はパイロット操作逆止弁44の逆止弁体で、この逆止弁体46は、図4に示すように弁ハウジング12の弁体収容穴45内に摺動可能に挿嵌されたポペット弁体により構成されている。そして、逆止弁体46は、弁座45Aに離着座することにより油通路16Aの途中部位を油圧管路7Aに対して連通,遮断するものである。
47は逆止弁体46の背面側に位置して弁体収容穴45内に設けられた可動ばね受で、該可動ばね受47は、図4に示すように後述する弁筒51の挿嵌穴51B内に挿嵌され、逆止弁体46との間には背圧室48を形成するものである。そして、この背圧室48内には、逆止弁体46と可動ばね受47との間に位置して逆止弁体46を閉弁方向に向けて常時付勢するスプリング49が配設されている。
50はパイロット操作逆止弁44と共にアンチドリフト弁43を構成するパイロット式切換弁で、該パイロット式切換弁50は、図2〜図4に示すように蓋体41内(一部は弁ハウジング12内)に設けられ、図1に示す待機位置(a),作動位置(b)のいずれかに切換わることにより、パイロット操作逆止弁44に対する負荷圧(背圧)の供給,遮断(停止)を切換制御するものである。
そして、パイロット式切換弁50は、図4に示すように蓋体41の嵌合穴41A内に嵌合して設けられ内周側にスプール摺動穴51Aが形成された筒状の弁筒51と、該弁筒51のスプール摺動穴51A内に挿嵌された小径のスプール弁体52と、該スプール弁体52の軸方向一側に位置して可動ばね受47との間に配設されたスプリング53と、弁筒51の軸方向他側を閉塞したプラグ54とにより構成されている。
また、弁筒51内には、スプール弁体52の軸方向他側とプラグ54との間に位置してパイロット油室55が形成され、該パイロット油室55内には、後述のパイロットポート51Eを介してパイロット圧が供給される。そして、弁筒51(スプール摺動穴51A)内のスプール弁体52は、パイロット油室55内のパイロット圧に従ってスプール摺動穴51A内を軸方向に変位するものである。
また、弁筒51の軸方向一側には、スプール摺動穴51Aよりも大径な挿嵌穴51Bが設けられ、この挿嵌穴51B内はスプール摺動穴51Aと同軸に配置されている。そして、弁筒51の挿嵌穴51B内には、パイロット操作逆止弁44の可動ばね受47が挿嵌されている。また、弁筒51には、圧力の給排ポート51C、負荷圧ポート51Dおよびパイロットポート51Eがスプール摺動穴51Aの軸方向に互いに離間して設けられている。
一方、弁筒51の軸方向(長さ方向)には、スプール摺動穴51Aと平行に延びる低圧通路51Fが形成され、該低圧通路51Fの一側は、スプール摺動穴51Aと挿嵌穴51Bとの境界位置で径方向孔51Gと連通している。そして、低圧通路51Fの他側は、蓋体41のタンク通路41Bと常に連通しているものである。
ここで、パイロット式切換弁50のスプール弁体52は、弁筒51内のパイロット油室55に供給されるパイロット圧がスプリング53の付勢力よりも小さいときには、図1に示す待機位置(a)に保持される。これにより、油圧シリンダ3の負荷圧は、蓋体41の負荷圧通路41Cに導かれると共に、図4に示す負荷圧ポート51D、給排ポート51C等を介してパイロット操作逆止弁44の背圧室48に供給され、逆止弁体46をスプリング49と一緒に弁座45Aに向けて押圧する。
この結果、パイロット操作逆止弁44は、油圧シリンダ3からの負荷圧を逆止弁体46が背圧として受圧し、逆止弁体46を弁座45Aに対して強く着座させることにより、弁ハウジング12内の油通路16Aを途中位置(弁座45Aの位置)で遮断すると共に、油圧シリンダ3(油室3A)からの負荷圧が弁ハウジング12のスプール摺動穴14側に漏洩するのを防ぐものである。
また、弁筒51内のパイロット油室55に供給されるパイロット圧がスプリング53の付勢力よりも大きくなったときには、スプール弁体52がスプリング53に抗して図4中の左方向に摺動変位し、パイロット式切換弁50は図1に示す待機位置(a)から作動位置(b)に切換わる。
このため、蓋体41の負荷圧通路41Cと弁筒51の負荷圧ポート51Dは、スプール弁体52によって給排ポート51Cから遮断され、パイロット操作逆止弁44の背圧室48は、給排ポート51C、径方向孔51Gおよび低圧通路51Fを介してタンク通路41Bに連通する。
この結果、パイロット操作逆止弁44は、背圧室48内の圧力がタンク圧のレベルまで低下し、逆止弁体46はスプリング49の付勢力のみによって弁座45Aに着座する。そして、この状態で弁ハウジング12内の油通路16A内で弁座45Aの前,後に、スプリング49の付勢力よりも大きい差圧が発生したときには逆止弁体46が開弁され、油通路16A内の圧油(または戻り油)が弁座45Aの前,後に流通するのを許すものである。
56は弁ハウジング12に設けられた凹窪部で、該凹窪部56は、蓋体29Aと蓋体41との間に位置する弁ハウジング12の外側面を凹設することにより、図5、図6に示す如く長円形状をなす凹溝として形成されている。即ち、凹窪部56は、図4に示すように蓋体29Aと蓋体41との衝合面側に開口する有底穴として形成され、その開口側56Aは、図5に示すように弁ハウジング12の外側面に開口している。そして、凹窪部56は、その開口側56Aが後述の閉塞板57により着脱可能に閉塞されるものである。
また、凹窪部56の底部側には、長円形状をなす凹窪部56の長軸方向に沿って細長く延びる油溝56Bが形成されている。そして、この油溝56Bは、後述する閉塞板57の油孔57B,57C間を常時連通するため、油孔57B,57Cの孔径よりも僅かに大きな溝幅をもってI字状に凹設されている。
57は凹窪部56の開口側56Aを油密状態で閉塞する閉塞板で、該閉塞板57は、図7、図8に示す如く長円形状をなす平板体として形成され、その一側面には浅底溝57Aが設けられている。そして、該浅底溝57Aは、閉塞板57の一側面を長円形状に座ぐることにより形成され、浅底溝57A内には後述のOリング58が装着されている。また、閉塞板57には、長円形状をなす閉塞板57の長軸方向で互いに離間した位置に一対の油孔57B,57Cが穿設され、該油孔57B,57Cは、後述するOリング58の径方向内側に位置して浅底溝57A内に開口している。
一方、閉塞板57の他側面には、油孔57B,57Cを径方向外側から取囲むように環状のシール溝57D,57Eが形成され、これらのシール溝57D,57E内には、後述のOリング59,60が装着されている。そして、閉塞板57は、弁ハウジング12の外側から凹窪部56内に嵌合されることにより凹窪部56の開口側56Aを閉塞するものである。
ここで、閉塞板57の油孔57B,57Cのうち一方の油孔57Bは、図4に示すように蓋体29Aの開口端29A1 側で油路34に連通すると共に、径方向孔34Aを介して蓋体29A内のパイロット油室30Aに連通される。また、他方の油孔57Cは、図4に示す如く蓋体41の油路42に連通すると共に、径方向孔42Aを介して弁筒51のパイロットポート51E、パイロット油室55にも連通するものである。
58,59,60は閉塞板57に設けられたシール部材としてのOリングで、該Oリング58〜60のうちOリング58は、図8に示す如く閉塞板57の浅底溝57A内に装着され、凹窪部56と閉塞板57との間を油密状態でシールする。また、Oリング59は、閉塞板57のシール溝57D内に装着され、閉塞板57の油孔57Bと蓋体29Aの油路34との間を油密状態でシールする。そして、Oリング60は、閉塞板57のシール溝57E内に装着され、閉塞板57の油孔57Cと蓋体41の油路42との間を油密状態でシールするものである。
61は凹窪部56と閉塞板57との間に形成された連通路で、この連通路61は、凹窪部56の底部側に形成した油溝56Bと、閉塞板57の油孔57B,57Cとを含んで構成され、蓋体29Aの油路34と蓋体41の油路42とを連通するものである。即ち、この連通路61は、蓋体29A内のパイロット油室30Aを油路34、閉塞板57の油孔57Bを介して凹窪部56内の油溝56Bに連通させると共に、閉塞板57の油孔57C、蓋体41の油路42および径方向孔42A、弁筒51のパイロットポート51Eを介してパイロット油室55に常時連通するものである。
本実施の形態による油圧シリンダ3用の制御弁装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、油圧ショベルのオペレータが図1に示す操作レバー8Aを手動操作すると、操作弁8からパイロット管路10A,10Bを通じて例えば方向制御弁25のパイロット油室30A,30Bにパイロット圧が供給される。これにより、方向制御弁25は、図1に示す中立位置(イ)から切換位置(ロ),(ハ)のいずれかに切換えられる。
そして、方向制御弁25を中立位置(イ)から切換位置(ロ)に切換えたときには、油圧ポンプ1からの圧油が油通路16B、油圧管路7Bを介して油圧シリンダ3の油室3Bに供給され、油室3A内の圧油は、戻り油となって油圧管路7A側に排出される。これにより、油圧シリンダ3のロッド6は、チューブ4内に向けて縮小する方向に駆動される。
このとき、アンチドリフト弁43は、後述の如くパイロット式切換弁50が図1に示す待機位置(a)から作動位置(b)に切換わることにより、パイロット操作逆止弁44の逆止弁体46が開弁し、油室3Aからの戻り油が方向制御弁25を介してタンク2に排出されるのを許すようになる。
ここで、アンチドリフト弁43は、方向制御弁25が中立位置(イ)にある間はパイロット管路10A内のパイロット圧がタンク圧に近い低圧状態にあるので、パイロット式切換弁50が図1に示す待機位置(a)にとどまり、油圧シリンダ3(油室3A)内の負荷圧を負荷圧通路41C、給排ポート51C等を介してパイロット操作逆止弁44の逆止弁体46に受圧させる。
この結果、パイロット操作逆止弁44は、油圧シリンダ3からの負荷圧によって逆止弁体46を閉弁状態に保持し、弁ハウジング12内の油通路16Aを途中位置で遮断することにより、油圧シリンダ3(油室3A)からの負荷圧が弁ハウジング12のスプール摺動穴14側に漏洩するのを防ぎ、油圧シリンダ3のロッド6が縮小方向へと不用意に動くのを禁止するものである。
次に、この状態で方向制御弁25を中立位置(イ)から切換位置(ロ)に切換えたときには、パイロット管路10Aから方向制御弁25のパイロット油室30Aに供給されるパイロット圧が、パイロット式切換弁50のパイロットポート51Eにも供給され、パイロット式切換弁50が図1に示す待機位置(a)から作動位置(b)に切換わる。
このため、パイロット式切換弁50の給排ポート51C等がタンク通路41B等を介してタンク2に接続され、パイロット操作逆止弁44は背圧室48(図3参照)内の圧力がタンク圧のレベルまで低下し、逆止弁体46はスプリング49の付勢力のみによって弁座45Aに着座する。
そして、この状態で油圧シリンダ3の油室3Aから油圧管路7A側に戻り油が排出されると、この戻り油は、弁ハウジング12内の油通路16A内で弁座45Aの前,後にスプリング49の付勢力よりも大きい差圧を発生させ、この差圧で逆止弁体46が開弁されることにより、油通路16A内の戻り油は方向制御弁25を介してタンク2側に排出されるものである。
一方、方向制御弁25を中立位置(イ)から切換位置(ハ)に切換えたときには、油圧シリンダ3の負荷圧よりも高圧の圧油が油圧ポンプ1から油通路16A内に向けて供給されるので、このときの高圧でパイロット操作逆止弁44の逆止弁体46は開弁される。
これにより、油圧シリンダ3は、油圧管路7A側から油室3A内に圧油が供給され、油室3Bからは戻り油が油圧管路7B、油通路16Bへとタンク2に向けて排出される。そして、油圧シリンダ3のロッド6は、チューブ4から伸長する方向に駆動される。また、方向制御弁25を中立位置(イ)に戻したときには、油圧シリンダ3は停止され、ロッド6が不用意に動くのをアンチドリフト弁43により抑えることができる。
なお、上述の説明では方向制御弁25を切換操作した場合について述べたが、方向制御弁26も油圧シリンダ3を駆動制御するものであり、方向制御弁25と同様に操作される。そして、制御弁装置11は、2つの方向制御弁25,26を一緒に切換操作することにより、油圧シリンダ3の動き(伸縮動作)を速くすることができる。
而して、本実施の形態によれば、方向制御弁25を構成する左,右の蓋体29A,29Bのうち一方の蓋体29Aと近い位置に、蓋体29Aよりも大なる耐圧性能をもった別個の蓋体41を設け、この蓋体41を弁ハウジング12の外側面に衝合状態で固定する構成としている。
そして、弁ハウジング12には、方向制御弁25のスプール27とは別に、油通路16Aの途中に位置してパイロット操作逆止弁44を設け、蓋体41内にはパイロット操作逆止弁44に対する負荷圧(背圧)の供給,停止を切換制御するパイロット式切換弁50を設ける構成としている。
このように、パイロット式切換弁50を内蔵する蓋体41を、例えば重い鋳鉄系材料を用いて形成することにより、油圧シリンダ3からの負荷圧を負荷圧通路41C等に導いたときにも、負荷圧に対する十分な耐久性、耐圧性を蓋体41に与えることができる。
また、方向制御弁25の蓋体29A,29Bについては、例えばアルミニウム系の軽量な材料を用いて成形することができ、これらの内部には操作弁8からのパイロット圧がパイロット油室30A,30Bに供給されるだけであり、蓋体29A,29Bには、パイロット圧に対する十分な耐圧性を与えることができる。
そして、互いに近接して配置される蓋体29Aと蓋体41とを別々の材料で形成することにより、一方の蓋体29Aを軽量化して形成できると共に、パイロット圧に対しては十分な耐圧性能を与えることができ、装置の組立時、メンテナンス時における取扱い性を高め、作業性を向上することができる。
また、蓋体41については、例えば重い鋳鉄系材料を用いて形成することにより、油圧シリンダ3からの負荷圧に対しても十分な耐久性、耐圧性を与えることができる上に、蓋体41を必要最小限の大きさまで小さく形成することができ、これによっても、装置の組立時、メンテナンス時における取扱い性を高め、作業性を向上することができる。
また、本実施の形態によれば、蓋体41内には、一方の蓋体29A内のパイロット油室30Aから油路34等を介してパイロット圧を導くため弁ハウジング12との衝合面に向けて弁筒51の嵌合穴41Aと平行に延びる油路42を設け、弁ハウジング12には、蓋体29A,41との衝合面側に開口する有底穴からなる凹窪部56と、該凹窪部56の開口側56Aを油密状態で閉塞し2つの油孔57B,57Cが穿設されると共に前記パイロット油室30A(油路34),油路42とに連通する連通路61が凹窪部56との間に形成された閉塞板57とを設ける構成としている。
このため、閉塞板57に穿設した油孔57B,57Cのうち一方の油孔57Bを油路34を介してパイロット油室30Aに連通させ、他方の油孔57Cを油路42に連通させることにより、例えば従来技術で述べたように外部配管となるパイロット配管等を用いることなく、2つの蓋体29A,41間で凹窪部56と閉塞板57との間の連通路61等を介してパイロット油室30A(油路34)と油路42との間を簡単に接続することができる。
このように、蓋体29A内のパイロット油室30A(油路34)と蓋体41側の油路42との間を、弁ハウジング12の凹窪部56と閉塞板57との間に形成した連通路61を用いて連通させることにより、外部配管等に比較して油漏れ等の発生を小さく抑えることができると共に、装置の組立時やメンテナンス時の作業性を向上することができる。
また、弁ハウジング12にはパイロット操作逆止弁44を設け、蓋体41内にはパイロット操作逆止弁44に対する負荷圧(背圧)の供給,停止を切換制御するパイロット式切換弁を設ける構成としているので、一方の蓋体29A(パイロット油室30A)内から閉塞板57の油孔57B、凹窪部56の油溝56B、油孔57Cおよび油路42を介して弁筒51内のパイロット油室55内に導かれるパイロット圧により、パイロット式切換弁50のスプール弁体52を円滑に切換制御することができる。
これにより、パイロット操作逆止弁44とパイロット式切換弁50とからなるアンチドリフト弁43の作動を安定させることができる。そして、弁ハウジング12のスプール摺動穴14内でスプール27を中立位置に保持しているときに、油圧シリンダ3が負荷圧のリーク(漏洩)により不用意に動く等の不具合が発生するのを防止でき、油圧シリンダ3の動作を安定させることができる。
従って、本実施の形態では、従来技術のように外部配管となるパイロット配管等を用いる必要がなく、部品点数を削減できると共に、一方の蓋体29A内から別個の蓋体41内に向けてパイロット圧を簡単に流通させることができ、例えば接続箇所における油漏れ等の発生を良好に抑えることができる。
しかも、蓋体29Aと蓋体41とをそれぞれ異なる材料を用いて別部材で形成することにより、それぞれの蓋体29A,41に適切な耐圧性能を与えることができ、装置の組立時、メンテナンス時における取扱い性を高め、作業性を向上することができると共に、コストの低減等も実現することができる。
次に、図9および図10は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、本実施の形態の特徴は、閉塞板71を円形の板体により構成としたことにある。
ここで、閉塞板71は、第1の実施の形態で述べた閉塞板57とほぼ同様に構成され、その一側面には長円形状の浅底溝71Aが設けられている。そして、該浅底溝71A内にはシール部材としてのOリング72が装着されている。また、閉塞板71には、互いに離間した位置に一対の油孔71B,71Cが穿設されている。一方、閉塞板71の他側面には、油孔71B,71Cを径方向外側から取囲むように環状のシール溝71D,71Eが形成され、これらのシール溝71D,71E内にはシール部材としてのOリング73,74が装着されている。
しかし、この場合には、閉塞板71を円形の平板として形成しているので、弁ハウジング12の凹窪部56(図4参照)についても、閉塞板71を嵌合して取付けるように円形の凹部として形成されるものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかし、本実施の形態では、閉塞板71を円形の平板として形成しているので、閉塞板71の製作、加工等を容易に行うことができる。
次に、図11および図12は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、本実施の形態の特徴は、閉塞板81にシール部材としてパッキン部材82,83,84を貼着して設ける構成としたことにある。
ここで、閉塞板81は、第1の実施の形態で述べた閉塞板57とほぼ同様に長円形状をなす平板体として形成されている。しかし、閉塞板81には、その一側面に長円形状をなすリング溝81Aが形成され、このリング溝81Aには、環状のパッキン部材82が貼着されている。また、閉塞板81には、長円形状をなすリング溝81Aの径方向内側に位置し長軸方向で互いに離間した一対の油孔81B,81Cが穿設されている。そして、閉塞板81の他側面には、油孔81B,81Cを径方向外側から取囲むように環状のリング溝81D,81Eが形成され、これらのリング溝81D,81E内には環状のパッキン部材83,84が貼着されている。
そして、閉塞板81は、第1の実施の形態で述べた閉塞板57と同様に弁ハウジング12の凹窪部56(図5、図6参照)に嵌合して取付けられ、パッキン部材82は、凹窪部56と閉塞板81との間を油密状態にシールするものである。また、パッキン部材83,84は、第1の実施の形態で述べたOリング59,60と同様に機能して閉塞板81の油孔81B,81Cと蓋体29Aの油路34,蓋体41の油路42との間を油密状態でシールするものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかし、本実施の形態では、閉塞板81にパッキン部材82,83,84を貼着して設ける構成としているので、例えばOリング等のシール部材を省略することができる。
次に、図13および図14は本発明の第4の実施の形態を示し、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。しかし、本実施の形態の特徴は、閉塞板91にシール部材としてシール皮膜92を貼着して設ける構成としたことにある。
ここで、閉塞板91は、第1の実施の形態で述べた閉塞板57とほぼ同様に長円形状をなして形成されている。しかし、閉塞板91の外周側には、全周にわたる縁取り部91Aが一体に形成され、この縁取り部91Aは、閉塞板91の板厚方向(後述する油孔91B,91Cの軸方向)に一定の高さで突出している。
そして、閉塞板91の表面側と縁取り部91Aとには、例えばゴム等の弾性材料からなるシール皮膜92が貼着して設けられ、このシール皮膜92は、縁取り部91Aの内,外周面を全周にわたって被覆する構成となっている。また、閉塞板91には、長円形状をなす閉塞板91の長軸方向で互いに離間した位置に一対の油孔91B,91Cが穿設され、これらの油孔91B,91Cは、閉塞板91の表面側でシール皮膜92を貫通しているものである。
そして、閉塞板91は、第1の実施の形態で述べた閉塞板57と同様に弁ハウジング12の凹窪部56(図5、図6参照)に嵌合して取付けられ、凹窪部56の開口側56A等をシール皮膜92を介して油密状態にシールするものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかし、本実施の形態では、閉塞板91の表面側と縁取り部91Aとにシール皮膜92を貼着して設ける構成としているので、例えばOリング等のシール部材を省略することができる。
なお、前記第4の実施の形態では、閉塞板91を縁取り部91Aにより長円形状をなす浅底の容器として図14に示す如く形成する構成としている。このため、閉塞板91が嵌合される凹窪部56の底部側には、例えば図5に示すような油溝56Bを設ける必要がなくなるものである。
また、前記各実施の形態では、方向制御弁25の蓋体29Aに油路34を設け、該油路34によりパイロット油室30Aを閉塞板57(71,81,91)の油孔57B(71B,81B,91B)に連通させる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば蓋体29Aのパイロット油室30Aを閉塞板57(71,81,91)の油孔57B(71B,81B,91B)に直接的に連通させる構成としてもよいものである。
また、前記各実施の形態では、制御弁装置として油圧シリンダ3用の制御弁装置11を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧モータ等の制御弁装置に適用してもよいものである。