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JP4894304B2 - 無鉛Snベースめっき膜及び接続部品の接点構造 - Google Patents

無鉛Snベースめっき膜及び接続部品の接点構造 Download PDF

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Description

本発明は、電子部品の電極などに用いられる無鉛Snベースめっき膜及びその製造方法に関し、該無鉛Snベースめっき膜を有し部品が嵌合される接続部品の接点構造に関するものである。
近年、環境配慮の背景から様々な部品において無鉛化が進められている。この中で、電子部品の電極に用いられるめっきやはんだ材料についても鉛を含まない無鉛はんだの開発と導入も進められている。具体的には、錫-鉛めっき(通称、はんだめっき)膜から無鉛Snベースめっき膜へ、鉛はんだ材料から無鉛はんだ材料への切り替えが検討されている。
しかしながら、電子部品の電極のめっき膜に関しては、かつてSnめっき膜であったときに自然放置状態で錫ウイスカーが発生し、これが電極間でショートするという問題を起こした時期があったが、このめっき膜の錫成分に鉛成分を添加したはんだめっき組成とする事によりウイスカーの発生を抑える対策とした経緯があった。そのため、電子部品の電極めっきに於いて、単に鉛フリーとしただけでは、錫ウイスカー問題の再発が危惧されていた。また、近年では、電子機器の高密度実装に伴い、部品の小型化が進み、電極間の距離も短くなる傾向にあるため、より厳格にウイスカーの抑制が求められている。そのような背景の中で、とくに、外部応力がかかる部品の電極めっき、あるいは嵌合により外部応力がかかる嵌合部品の電極めっきにはウイスカーが発生し、電極間のショートを引き起こしやくすなっていた。
ところで、鉛フリー錫合金めっき膜表面に発生するめっき時の異常析出を防止するために、電解析出を間欠的に行うめっき方法、いわゆるパルスめっき方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。ここでは、具体的にはめっき電流OFF時間(a)とON時間(b)との比(a/b)は0.2以上が望ましいとされている。
特開2004−204308号公報
しかしながら、このめっき方法によりめっき時の異常析出は防止することできるが、めっき膜を構成する粒子が細かくなる傾向にあり、ウイスカーがより成長してしまうことがあった。
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、Pbフリーでありながらウイスカーの成長を抑制することのできる無鉛Snベースめっき膜及びその製造方法を提供し、該無鉛Snベースめっき膜を有する接続部品の接点構造を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために提供する本発明は、金属が析出してなるめっき層が積層されてなり、該めっき層の積層界面が前記金属の結晶成長の不連続面となっている無鉛Snベースめっき膜であって、前記めっき層として膜厚が0.5μm以下のめっき層Aを複数含み、全膜厚が1〜10μmであることを特徴とする無鉛Snベースめっき膜である(請求項1)。
ここで、前記めっき層Aが連続して積層された構造を有することが好ましい。
あるいは、前記めっき層として膜厚が0.1〜5μmのめっき層Bを有し、前記めっき層Aが1層のものまたは該めっき層Aが連続して複数層積層された積層構造とめっき層Bとが交互に積層されてなるとよい。
また、前記めっき層Aは、Sn単体であるか、またはSnを主成分とし、Bi、Cu、Agから選ばれる一種または二種以上を含むめっき材料からなるものであることが好ましい。
また、前記めっき層Bは、Sn、Bi、Agのいずれかの単体であるか、またはSnを主成分とし、Bi、Cu、Agから選ばれる一種または二種以上を含むめっき材料からなるものであることが好ましい。
また前記課題を解決するために提供する本発明は、基材をめっき液中に浸漬し電流を印加することにより、前記基材の表面に、金属が析出してなるめっき層が積層されてなり、該めっき層の積層界面が前記金属の結晶成長の不連続面となっている無鉛Snベースめっき膜を製造することよりなる無鉛Snベースめっき膜の製造方法であって、
電流印加時のめっき電流の通電と停止とを1サイクルとして繰り返して行う電流印加パターンの中に、該1サイクルあたりの通電時間をa秒とし、停止時間をb秒とし、D=a/(a+b)としたときに、D=0.1〜0.9、Ls1=a+b=0.2〜60秒とするサイクルAを複数回含むことを特徴とする無鉛Snベースめっき膜の製造方法である(請求項6)。
ここで、前記サイクルAは連続して繰り返されることが好ましい。
あるいは、前記電流印加パターンの中に、通電時間a、停止時間bともに300秒以下であるサイクルBを含み、該電流印加パターンの中で、前記サイクルAが1回または連続して複数回繰り返されたパターンと、サイクルBとが交互に繰り返されてもよい。
また前記課題を解決するために提供する本発明は、一対の離脱可能な接点部分の接触によって電気回路を形成する接続部品の接点構造において、前記接点部分表面の少なくとも一方が、請求項1〜5のいずれか一に記載の無鉛Snベースめっき膜で構成されることを特徴とする接続部品の接点構造である(請求項9)。
本発明の無鉛Snベースめっき膜によれば、Pbフリーでありながらめっき膜の結晶構造によりウイスカーの成長を抑制することができる。また、従来のウイスカー対策として使用されている、コスト的に高価な金めっきを避けることができる。
また、本発明の無鉛Snベースめっき膜の製造方法によれば、簡便なめっき方法により、ウイスカーの成長を抑制することができるめっき膜を形成することができる。
さらに、本発明の接続部品の接点構造によれば、ウイスカーの成長を抑制することができる無鉛Snベースめっき膜により、接点電極間でショートする問題を解消することができる。
以下に、本発明に係る無鉛Snベースめっき膜の構成について説明する。
本発明に係る無鉛Snベースめっき膜は、金属が析出してなるめっき層が積層されてなり、該めっき層の積層界面が前記金属の結晶成長の不連続面となっており、前記めっき層として膜厚が0.5μm以下のめっき層Aを複数含み、全膜厚が1〜10μmであることを特徴とするものである。
図1は、本発明に係る無鉛Snベースめっき膜の第1の実施の形態の構成を示す断面図である。
無鉛Snベースめっき膜10は、基材11上に同じ厚みの繰り返しである周期膜厚dが0.5μm以下のめっき層Aが連続して積層された積層構造を有しており、めっき層Aの積層界面が結晶成長の不連続面Iとなっている。
ここで、めっき層Aは、Sn単体であるか、またはSnを主成分とし、Bi、Cu、Agから選ばれる一種または二種以上を含むめっき材料からなるものであることが好ましい。
不連続面Iは、後述する電気めっき法においてめっき電流の通電、停止によって形成される結晶成長の境界面であり、結晶粒間の界面あるいは結晶粒内で結晶方位が不連続なものとなって形成された面(面欠陥等)である。本発明では、この結晶成長の不連続面Iをモルフォロジー的により明確な構造とすることにより、よりウイスカー成長を抑制する障壁面としている。また、不連続面Iは、めっき電流を断続することによりめっき液に残存する主要なめっき組成を構成する元素以外の無機物、有機物を取り込んでいることから、錫ウイスカーの成長に関わるSn原子の動きを抑制する。なお、結晶成長の不連続面Iの間隔は、めっき層Aの周期膜厚dとなっている。
図2(a)は、第1の実施の形態の無鉛Snベースめっき膜の断面を高分解能イオン顕微鏡(SIM(Scanning Ion Microscope))で観察した際の明視野像であり、図2(b)はその無鉛Snベースめっき膜の断面組織の模式図である。なお、試料断面は、ガリウムイオンを用いたイオン照射、すなわちFIB(Focused Ion Beam)で作製した。また、図2(b)の模式図は、図2(a)の無鉛Snベースめっき膜の断面組織における明暗の差として観察されるそれぞれの領域を囲んで作成したものである。なお、図2においてはSn単体からなる無鉛Snベースめっき膜を示している。
図2に示すように、無鉛Snベースめっき膜10は、電気めっき法により形成される無鉛はんだ材料からなるめっき層であり、複数の結晶粒10pが厚み方向に積層されて膜面方向に周期的に不連続面(障壁面)Iが形成された柱状結晶構造を有している。また、前記周期によって形成される周期膜厚dが15〜500nmであり、全膜厚が1〜10μmであることを特徴とするものである。なお、この結晶構造は、柱状構造が面方向に分断された柱状節理構造のようにも見える。
図3に、比較として従来の無鉛Snベースめっき膜の構成を示す。
図3(a)は、無鉛Snベースめっき膜の断面のTEM観察した際の明視野像であり、図3(b)はその無鉛Snベースめっき膜の断面組織の模式図である。
図3から分かるように、無鉛Snベースめっき膜90は、本発明とは異なり、膜厚方向に長い結晶粒90pからなる柱状結晶構造を有している。
従来の無鉛Snベースめっき膜90ではウイスカーが成長し易いが、本発明の無鉛Snベースめっき膜10では不連続面I(層構造中の障壁面)がSn原子の動きを止めることによりウイスカーの成長を抑制することができる。このウイスカー成長の違いは、本発明と従来の無鉛Snベースめっき膜の結晶構造の違いよるものであり、さらにはめっき方法の違いに由来するものである。
以下、第1の実施の形態の無鉛Snベースめっき膜の製造方法について説明する。
本発明の無鉛Snベースめっき膜の製造方法は、基材をめっき液中に浸漬し電流を印加することにより、前記基材の表面に、図1に示すような結晶構造を有する無鉛Snベースめっき膜を製造するものである。ここで、本発明において使用するめっき液、基材、対極(陽極)、及びこれらの接続構成は従来公知の無鉛Snベースめっき技術と同じであるが、電流印加方法に特徴がある。
すなわち、本発明の無鉛Snベースめっき膜の製造方法は、基材をめっき液中に浸漬し電流を印加することにより、前記基材の表面に、金属が析出してなるめっき層が積層されてなり、該めっき層の積層界面が前記金属の結晶成長の不連続面となっている無鉛Snベースめっき膜を製造することよりなる無鉛Snベースめっき膜の製造方法であって、電流印加時のめっき電流の通電と停止とを1サイクルとして繰り返して行う電流印加パターンの中に、該1サイクルあたりの通電時間をa秒とし、停止時間をb秒とし、D=a/(a+b)としたときに、D=0.1〜0.9、Ls1=a+b=0.2〜60秒とするサイクルAを複数回含むことを特徴とする。
ここで、無鉛Snベースめっき膜中の結晶粒及び/又はそのバウンダリーにおいて結晶成長の不連続面を形成させるに、印加するめっき電流の波形をめっき電流の通電と停止とが交互に行われる矩形波を基本とする。このとき、従来のパルスめっきと異なり、めっき電流の通電・停止の1サイクルの時間を長くするとともに、めっき電流停止の時間を長くすることが肝要である。
図4に、本実施の形態における無鉛Snベースめっき膜形成時の電流印加方法を示す。
電流印加時のめっき電流の通電と停止とを1サイクルとして繰り返して行う電流印加パターンの中に、該1サイクルあたりの通電時間をa秒、停止時間をb秒、1サイクルをa+b秒とし、1サイクル当りの通電時間の割合をDuty比:D=a/(a+b)としたときに、D=0.1〜0.9とし、Ls1=a+b=0.2〜60秒とするサイクルAを複数回含む。ここではサイクルAが連続して繰り返される電流印加パターンとなっている。また、より好ましくは、D=0.2〜0.7、a+b=1〜30秒である。なお、このようなめっき方法をチョップめっき(Chopめっき)と称する。これに類似のめっき方法として断続的に周期的めっきがなされるパルスめっきがあるが、本発明によってなされるめっき膜の結晶粒は、パルスめっきによって形成される結晶粒より大きいのが特徴(粒径1〜数μm)である。
つぎに、本発明の無鉛Snベースめっき膜の第2の実施の形態について説明する。
図5は、本発明に係る無鉛Snベースめっき膜の第2の実施の形態の構成を示す断面図である。
図5(a)において、無鉛Snベースめっき膜20Aは、基材11上にめっき層Aが連続して複数層積層された積層構造21と、膜厚が0.1〜5μmのめっき層Bとがこの順番で積層されており、めっき層A同士の積層界面及び積層構造21とめっき層Bとの積層界面が結晶成長の不連続面Iとなっている。ここで、めっき層A及び不連続面Iは第1の実施の形態で示したものと同じである。なお、図5(a)ではめっき層Aが連続して4層積層された積層構造21を示している。
めっき層Bは、Sn単体であるか、またはSnを主成分とし、Bi、Cu、Agから選ばれる一種または二種以上を含むめっき材料からなるものであることが好ましい。あるいは、Bi、Agのいずれかの単体であってもよい。
また、図5(b)は第2の実施の形態のバリエーションである無鉛Snベースめっき膜20Bの断面構成を示すものであり、基材11上に膜厚が0.1〜5μmのめっき層Bと、めっき層Aが連続して複数層積層された積層構造21とがこの順番で積層されてなるものであり、めっき層Bと積層構造21との積層界面及びめっき層A同士の積層界面が結晶成長の不連続面Iとなっている。
つぎに、本発明の無鉛Snベースめっき膜の第3の実施の形態について説明する。
図6は、本発明に係る無鉛Snベースめっき膜の第3の実施の形態の構成を示す断面図である。第3の実施の形態の無鉛Snベースめっき膜は、基材11上に前記めっき層Aまたは該めっき層Aが連続して複数層積層された積層構造31と、前記めっき層Bとが交互に積層されており、めっき層A同士の積層界面及びめっき層Aまたは積層構造31とめっき層Bとの積層界面が結晶成長の不連続面Iとなっている。ここで、めっき層A及び不連続面Iは第1の実施の形態で示したものと同じであり、めっき層Bは第2の実施の形態で示したものと同じである。
具体的には、図6(a)の無鉛Snベースめっき膜30Aでは、基材11上にめっき層Aが連続して3層積層された積層構造31と、めっき層Bとが交互にそれぞれ4回積層されてなるものである。
また、図6(b)の無鉛Snベースめっき膜30Bでは、基材11上にめっき層Aが連続して2層積層された積層構造31と、めっき層Bとが交互にそれぞれ2回積層されてなるものである。
また、図6(c)の無鉛Snベースめっき膜30Cでは、基材11上にめっき層Aと、めっき層Bとが交互にそれぞれ4回積層されてなるものである。
なお、第2の実施の形態、第3の実施の形態におけるめっき層Aの膜厚は、第1の実施の形態と同様、0.015〜0.5μmであってもよいが、本実施の形態ではめっき層Bをめっき層Aまたはめっき層Aが連続して複数層積層された積層構造に重畳することにより、ウイスカー成長をさらに抑制することを図っているため、前記膜厚は0.015μm未満でもよい。
また本発明では、めっき層の積層界面に結晶成長の不連続面を形成すればウイスカー成長を抑制する効果が得られる。そのため、結晶成長の不連続面を形成することができる限り、2つのSnベースのめっき層の間に異種金属のめっき層を設けてもよい。その例を第4の実施の形態として図7に示す。
第4の実施の形態の無鉛Snベースめっき膜40は、基材11上にめっき層Cと、前記めっき層Aが連続して複数層積層された積層構造41とが交互に積層されており、めっき層A同士の積層界面及び積層構造41とめっき層Cとの積層界面が結晶成長の不連続面Iとなっている。ここで、めっき層A及び不連続面Iは第1の実施の形態で示したものと同じである。
めっき層Cは、膜厚が0.5μm以下のBi、Agのいずれかの単体からなるめっき層である。金属めっきでは、めっき金属ごとに固有の析出電位が決まっていることから、めっき層Cを形成するに当ってはそれ(Bi、Agのいずれか単体)に対応するめっき電流の大きさを制御するようにすればよい。
第2の実施の形態及び第3の実施の形態の無鉛Snベースめっき膜はつぎのようにして製造する。
すなわち、これらの無鉛Snベースめっき膜の製造方法は、第1の実施の形態と同様に、基材をめっき液中に浸漬し電流を印加することにより、前記基材の表面に、金属が析出してなるめっき層が積層されてなり、該めっき層の積層界面が前記金属の結晶成長の不連続面となっている無鉛Snベースめっき膜を製造することよりなる無鉛Snベースめっき膜の製造方法であるが、電流印加時のめっき電流の通電と停止とを1サイクルとして繰り返して行う電流印加パターンの中に、該1サイクルあたりの通電時間をa秒とし、停止時間をb秒とし、D=a/(a+b)としたときに、D=0.1〜0.9、Ls1=a+b=0.2〜60秒とするサイクルAと、通電時間a、停止時間bともに300秒以下であるサイクルBとを含み、該電流印加パターンの中で、前記サイクルAが1回または連続して複数回繰り返されたパターンと、サイクルBとが交互に1回行われるまたは繰り返し行われることを特徴とするものである。
図8に、第2の実施の形態、第3の実施の形態における無鉛Snベースめっき膜形成時の電流印加方法の例を示す。
図8(a)は、図5(a)に示した構成の無鉛Snベースめっき膜を製造するための電流印加のパターンであり、通電a秒、停止b秒の前記サイクルAを4回繰り返した後、停止b秒、通電a秒の前記サイクルBを行っている。
図8(b)は、図6(b)に示した構成の無鉛Snベースめっき膜を製造するための電流印加のパターンであり、通電a秒、停止b秒の前記サイクルAを2回繰り返した後、停止b秒、通電a秒の前記サイクルBを行い、再度サイクルA2回、サイクルB1回を行っている。なお、1回目のサイクルBの後、サイクルAの前に停止時間b秒を設けている。この停止時間bは、300秒以下であればよく、例えばbと同じでよい。あるいは停止時間bはなくてもよい。図8(b)において通電時間aとaに対応する電流値は同じ大きさで示しているが、サイクルAとサイクルBで形成されるめっき層の組成が異なる場合は、夫々のサイクルのめっき層組成にあった析出電流の大きさに設定すればよい。
(本発明における無鉛Snベースめっき膜の製造方法の考え方)
ウイスカーの成長の詳細なメカニズムは現在のところ不明であるが、めっき膜中に存在する残留応力ないし外部応力がひげ状ウイスカーの結晶成長の駆動エネルギーになっていると思われる。とくに本発明で問題としている錫ウイスカーは、常温常圧で圧力がかかることで発生していることから、外部圧力がウイスカーの結晶成長の駆動力になっていると思われる。また、錫ウイスカーはSn原子が動き、再配列、再結晶することに起因している。本発明では、無鉛Snベースめっきを従来のように連続にめっき付けするのではなく、めっき膜形成の過程の中でめっき及びめっきの停止を交互に繰り返し、めっきを積層的に積み重ねることにより、めっきで形成される結晶成長の不連続面(周期的に分断された結晶粒構造、周期的に形成された結晶の面欠陥等)を設けることで、これを障壁面としてSn原子の動きを抑制し、ウイスカー成長を抑えることを狙いとしている。ここで、めっき電流のオン、オフでめっき付ける方法としてパルスめっきという手法が既にあるが、一般のパルスめっきによって形成される結晶粒の大きさは1μm以下、すなわちサブミクロンレベルの細かい結晶粒を形成している。本発明のめっき方法においては、結晶粒を大きく形成させ、さらにSn原子の動きを抑制するという指針から周期的に形成される不連続面(障壁面)を明確に形成するためにめっき付けの周期(サイクル)の時間を0.1秒以上の秒単位で長くとるとともに、めっき電流停止時間をなるべく大きくとり、結晶成長の不連続面を十分に形成させることを特徴としている。
また本発明のめっき電流のオン、オフを周期的に且つ断続的に繰り返してめっきする技術に於いて、めっき液を構成している主要元素以外の元素、もしくは、有機系の基を不純物としてめっき膜中に取り込む方法も、Snベースの結晶粒のバウンダリー及び結晶粒中の結晶欠陥を生成する事につながり、ウイスカー成長に寄与するSn原子の動きを止める働きがあり、ウイスカー成長の抑制に効果がある。
これにより、複数の結晶粒が厚み方向に積層されて膜面方向に周期的に結晶成長の不連続面(障壁面)が形成される。このとき、めっき電流の通電時間は周期膜厚dなどのめっき層の膜厚をコントロールするものであり、停止時間は結晶成長の不連続面の形成に寄与する。ここで、通電時間は所定の膜厚が確保できる程度に長ければよく、長すぎると結晶粒がめっき膜の膜厚方向にカラム状(柱状)になりやすく、部品として嵌合した際にその部分に外力がかかるとウイスカーが成長し易くなる。そのため、めっき層Aを形成するための通電時間は0.1〜40秒が好ましい。より好ましくは0.1〜20秒である。また、停止時間を長くするほど明確な結晶成長の不連続面を形成することができるが、長すぎると無鉛Snベースめっき膜中の残留応力が増大しウイスカー成長に悪影響を及ぼす。そのため、めっき層形成時の停止時間は0.1〜20秒が好ましい。より好ましくは0.1〜10秒である。
また、めっき層Bについては、通電時間が長いと、上記で述べた結晶粒の成長がカラム状に成長しやすい。結晶粒の膜面方向と膜厚方向の大きさを夫々x、zとした時のアスペクト比をz/xとした時、1以上のアスペクト比は柱状構造であり好ましくない。本発明を適用する部品のめっき厚は通常5μm前後である。この膜厚を前提とするとめっき層Bの膜厚は、最大で5μm前後が好ましい。また、従来の定電流的なめっきの成膜速度は、凡そ1μm/分前後であり、これよい成膜速度を上げると結晶成長学的には柱状構造を促進することになることからめっき層Bの成膜速度も最大で1μm/分である。従ってめっき層Bを形成する際の通電時間aは300秒以下が好ましい。
図9に、本発明の無鉛Snベースめっき膜のめっき層Aの膜厚範囲とめっき層Bの膜厚範囲を示す。斜線領域が本発明で求められるめっき層A及びめっき層Bの膜厚範囲であり、めっき層Aの膜厚は0.5μm以下(0μmを含まず)であり、めっき層Bの膜厚は0〜5μmである。
また、本発明の無鉛Snベースめっき膜の残留応力は、ウイスカーの成長を抑制するためには−5MPa以上、5MPa以下であることが好ましい。
なお、基材は電子部品の電極であり、例えばCuフレーム、あるいは該CuフレームにNiめっきを施したもの、鉄系金属である42アロイ系などが挙げられる。
以上のように作製される本発明の無鉛Snベースめっき膜10は、電子部品の電極に適用することができる。例えば、一対の離脱可能な接点部分の接触によって電気回路を形成する接続部品の接点構造において、前記接点部分表面の少なくとも一方が本発明の無鉛Snベースめっき膜10で構成されるとよい。
図10にその一例を示す。
図10では、基材上に本発明の無鉛Snベースめっき膜10,20,30,40のいずれかが形成されてなる接続部品の接点構造100と、断面がヘアピン形状のバネ接点構造200とを示している。ここで、接点構造100をヘアピン形状の間に挟むようにバネ接点構造200に挿入する。このとき接点構造100の表面すなわち無鉛Snベースめっき膜10,20,30,40のいずれかと、バネ接点構造200とは、該バネ接点構造200のバネ作用により圧接された状態で保持され接点部分において電気的接続が得られる。また、接点構造100をバネ接点構造200より抜き出すことにより離脱可能である。
図11に、本発明の接続部品の接点構造100をバネ接点構造200に挿抜した後の接点構造100における無鉛Snベースめっき膜10の表面状態を示す。接点部分では、無鉛Snベースめっき膜10の表面に外部応力が作用した跡が観察された。
本発明によれば、この外部応力が作用している部分におけるウイスカーの成長を抑制することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
(実施例1−1)
以下の条件で本発明の無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜10)を形成した。
・基材:りん青銅からなるコネクター基板(めっき対象面積:578mm
・Niプレめっきあり
・めっき液:硫酸浴系Snめっき液(LPW−Chemie社製、商品名Tinto)
・めっき浴温度:室温
・めっき浴攪拌:スターラ攪拌
・陽極:高純度錫
・電極間距離:37mm
・目標膜厚:3μm
・めっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:14秒
・・停止時間b:5秒
・・1サイクル(a+b):19秒
・・Duty比D:0.74
・・めっき時間:2.5分(8サイクル)
以上のように作成したサンプルのNiめっきの膜厚は1.8μm、無鉛Snめっき膜の膜厚は3.1μmであった。
(実施例1−2)
実施例1−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例1−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:23秒
・・停止時間b:5秒
・・1サイクル(a+b):28秒
・・Duty比D:0.82
・・めっき時間:2.3分(5サイクル)
以上のように作成したサンプルのNiめっきの膜厚は1.6μm、無鉛Snめっき膜の膜厚は2.9μmであった。
(実施例1−3)
実施例1−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例1−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:36秒
・・停止時間b:5秒
・・1サイクル(a+b):41秒
・・Duty比D:0.88
・・めっき時間:2分(3サイクル)
以上のように作成したサンプルのNiめっきの膜厚は1.4μm、無鉛Snめっき膜の膜厚は2.9μmであった。
(比較例1)
実施例1−1において、めっき電流条件を以下のように定電流めっき条件に変更し、それ以外は実施例1−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・めっき時間:1.9分
以上のように作成したサンプルのNiめっきの膜厚は1.8μm、無鉛Snめっき膜の膜厚は2.6μmであった。
得られたサンプルについて、直径30mm、厚み5mmの2枚のアクリル板で挟んだ上で、0.5Nmのトルク圧力を加えた状態で、室温環境下で72時間保持した。その後、サンプルを取り出し、加圧部分におけるウイスカーを観察し、そのうち最も長いものを最大ウイスカー長さとして測定した。
その結果を図12に示す。ここでは、無鉛Snめっき膜の全膜厚をそれぞれのめっき時のサイクル数で除した値を周期膜厚としている。
その結果、実施例はすべて比較例1よりもウイスカーの成長は抑えられていた。また、実施例1−1〜1−3において、周期膜厚が小さくなるほどウイスカーの成長は抑えられていた。
<実施例2>
(実施例2−1)
以下の条件で本発明の無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜10)を形成した。
・基材:りん青銅からなるコネクター基板
・Niプレめっきあり(膜厚1μm)
・めっき液:硫酸浴系Snめっき液(LPW−Chemie社製、商品名Tinto)
・めっき浴温度:20℃
・めっき浴攪拌:スターラ攪拌
・陽極:高純度錫
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:0.2秒
・・停止時間b:0.2秒
・・1サイクル(a+b):0.4秒
・・Duty比D:0.5
・・周期膜厚:15nm
・・全膜厚:5μm
(実施例2−2)
実施例2−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例2−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:0.7秒
・・停止時間b:0.7秒
・・1サイクル(a+b):1.4秒
・・Duty比D:0.5
・・周期膜厚:50nm
・・全膜厚:5μm
(実施例2−3)
実施例2−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例2−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:1.3秒
・・停止時間b:1.3秒
・・1サイクル(a+b):2.6秒
・・Duty比D:0.5
・・周期膜厚:100nm
・・全膜厚:5μm
(実施例2−4)
実施例2−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例2−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:2.6秒
・・停止時間b:2.6秒
・・1サイクル(a+b):5.2秒
・・Duty比D:0.5
・・周期膜厚:200nm
・・全膜厚:5μm
(比較例2)
実施例2−1において、めっき電流条件を以下のように定電流めっき条件に変更し、それ以外は実施例2−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・めっき時間:66秒
・・全膜厚:5μm
得られたサンプルについて、試験時間を500時間とした以外は、実施例1と同じ条件でウイスカー試験を行い、最大ウイスカー長さの経時変化を測定した。
その結果を図13に示す。
その結果、実施例はすべて比較例2よりもウイスカーの成長は抑えられていた。また、実施例2−1〜2−4において、周期膜厚が小さくなるほどウイスカーの成長は抑えられる傾向を示した。
<実施例3>
以下の条件で本発明の無鉛Sn−1%Cuめっき膜(無鉛Snベースめっき膜10)を形成した。
・基材:りん青銅からなるコネクター基板
・Niプレめっきあり(膜厚1μm)
・めっき液:Sn−Cuめっき液(日本MacDermid社製、商品名NF−111(Sn/Cu=99/1))
・めっき浴温度:18℃
・陽極:不溶電極
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:6秒
・・停止時間b:20秒
・・1サイクル(a+b):26秒
・・Duty比D:0.23
・・周期膜厚:100nm
・・全膜厚:5μm
(比較例3)
実施例3において、めっき電流条件を以下のように定電流めっき条件に変更し、それ以外は実施例3と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・めっき時間:300秒
・・全膜厚:5μm
得られたサンプルについて、試験時間を1100時間とした以外は、実施例1と同じ条件でウイスカー試験を行い、最大ウイスカー長さの経時変化を測定した。
その結果を図14に示す。その結果、実施例3は比較例3よりもウイスカーの成長は抑えられていた。
<実施例4>
スペシャルティ テスティング デベロップメント社製のストリップ電着応力測定器を用いて、無鉛Snめっき膜の残留応力を測定した。本測定器では、C194銅合金からなり二股に切り込みが入った1枚の薄板を測定子として用い、この測定子にめっきした際に二股部分が反って離れた距離から残留応力が求められるようになっている。
実施例1−1において、基材を前記測定子とし、周期膜厚、全膜厚及びめっき電流条件を以下に示す表1の条件とし、印加電流を2A/dmとし、それ以外は実施例1−1と同じ条件で無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜10)を形成して該無鉛Snめっき膜の残留応力を測定した。
以上の結果を図15に示す。
すべてのサンプルが残留応力−10〜10MPaの範囲内に入っていた。
<実施例5>
前記ストリップ電着応力測定器を用いて、無鉛Snめっき膜の周期膜厚と残留応力との関係を調査した。
(実施例5−1)
以下の条件で本発明の無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜10)を形成した。
・基材:ストリップ電着応力測定器の測定子
・めっき液:硫酸浴系Snめっき液(LPW−Chemie社製、商品名Tinto)
・めっき浴温度:20℃
・めっき浴攪拌:スターラ攪拌
・陽極:高純度錫
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:1秒
・・停止時間b:1秒
・・1サイクル(a+b):2秒
・・Duty比D:0.5
・・周期膜厚:15nm
・・全膜厚:5μm
(実施例5−2)
実施例5−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例5−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:2秒
・・停止時間b:2秒
・・1サイクル(a+b):4秒
・・Duty比D:0.5
・・周期膜厚:30nm
・・全膜厚:5μm
(実施例5−3)
実施例5−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例5−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:7秒
・・停止時間b:3秒
・・1サイクル(a+b):10秒
・・Duty比D:0.7
・・周期膜厚:105nm
・・全膜厚:5μm
(実施例5−4)
実施例5−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例5−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・通電時間a:20秒
・・停止時間b:20秒
・・1サイクル(a+b):40秒
・・Duty比D:0.5
・・周期膜厚:300nm
・・全膜厚:5μm
(比較例5)
実施例5−1において、めっき電流条件を以下のように定電流めっき条件に変更し、それ以外は実施例5−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・印加電流:2A/dm
・・めっき時間:66秒
・・全膜厚:5μm
以上の結果を図16に示す。
周期膜厚105nm以下では残留応力が−5MPa以上であった。実施例2の結果(図13)における無鉛Snめっき膜の周期膜厚と最大ウイスカー長さとの関係と、本実施例の結果とを合わせると、無鉛Snめっき膜の残留応力を−5MPa以上とすることでウイスカーの成長を抑制できることがわかる。
<実施例6>
(実施例6−1)
以下の条件で本発明の無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜10)を形成した。
・基材:電極として銅からなるFPC(Flexible Printed Circuit)のフレキ基板(めっき対象面積:578mm
・プレめっきなし
・めっき液:硫酸浴系Snめっき液(LPW−Chemie社製、商品名Tinto)
・めっき浴温度:室温
・めっき浴攪拌:スターラ攪拌
・陽極:高純度錫
・電極間距離:37mm
・目標膜厚:5μm
(ステップ11)めっき層Aのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:0.5秒
・・停止時間b:0.5秒
・・1サイクル(a+b):1.0秒
・・Duty比D:0.5
・・めっき時間:1分40秒(100サイクル)
・前記ステップS11を行った。
以上のように作成したサンプルの無鉛Snめっき膜の膜厚は5μmであった。
(実施例6−2)
実施例6−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例6−1と同じとして本発明の無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜20A)を作製した。
(ステップ21)めっき層Aのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:0.5秒
・・停止時間b:0.5秒
・・1サイクル(a+b):1.0秒
・・Duty比D:0.5
・・めっき時間:25秒(25サイクル)
(ステップ22)めっき層Bのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:2分30秒
・・停止時間b:2分30秒
・前記ステップS21、S22を順に行った。トータルめっき時間は5分25秒であった。
以上のように作成したサンプルの無鉛Snめっき膜の膜厚は5μmであった。また、サンプル断面を電子顕微鏡(SEM)で観察した。図17にその結果を示す。めっき層Aが連続して積層された積層構造とめっき層Bとの境界面が観察されるとともに、前記積層構造においてめっき層Aの積層状態を示す細かな周期筋が観察された。
(実施例6−3)
実施例6−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例6−1と同じとして本発明の無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜20B)を作製した。
(ステップ31)めっき層Bのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:2分30秒
・・停止時間b:2分30秒
(ステップ32)めっき層Aのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:0.5秒
・・停止時間b:0.5秒
・・1サイクル(a+b):1.0秒
・・Duty比D:0.5
・・めっき時間:25秒(25サイクル)
・前記ステップS31、S32を順に行った。トータルめっき時間は5分25秒であった。
以上のように作成したサンプルの無鉛Snめっき膜の膜厚は5μmであった。
(実施例6−4)
実施例6−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例6−1と同じとして本発明の無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜30B)を作製した。
(ステップ41)めっき層Aのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:0.5秒
・・停止時間b:0.5秒
・・1サイクル(a+b):1.0秒
・・Duty比D:0.5
・・めっき時間:7秒(7サイクル)
(ステップ42)めっき層Bのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:1分10秒
・・停止時間b:1分10秒
・前記ステップS41、S42の順で2回繰り返して行った。トータルめっき時間は4分54秒であった。
以上のように作成したサンプルの無鉛Snめっき膜の膜厚は5μmであった。
(実施例6−5)
実施例6−1において、めっき電流条件を以下のように変更し、それ以外は実施例6−1と同じとして本発明の無鉛Snめっき膜(無鉛Snベースめっき膜30A)を作製した。
(ステップ51)めっき層Aのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:0.5秒
・・停止時間b:0.5秒
・・1サイクル(a+b):1.0秒
・・Duty比D:0.5
・・めっき時間:6秒(6サイクル)
(ステップ52)めっき層Bのめっき電流条件
・・印加電流:175mA
・・通電時間a:39秒
・・停止時間b:39秒
・前記ステップS51、S52の順で4回繰り返して行った。トータルめっき時間は5分36秒であった。
以上のように作成したサンプルの無鉛Snめっき膜の膜厚は5μmであった。
(比較例6)
実施例6−1において、めっき電流条件を以下のように定電流めっき条件に変更し、それ以外は実施例6−1と同じとしてサンプルを作製した。
・めっき電流条件
・・めっき時間:5分
以上のように作成したサンプルの無鉛Snめっき膜の膜厚は5μmであった。
得られたサンプルについて、試験時間を1000時間とした以外は、実施例1と同じ条件でウイスカー試験を行い、最大ウイスカー長さの経時変化を測定した。
その結果を図18,図19に示す。図18は実施例6−1〜6−5及び比較例6すべての結果を示しており、図19は実施例6−1〜6−5を拡大して示したものである。
その結果、実施例6−1(記号○)、実施例6−2(記号△)、実施例6−3(記号□)、実施例6−4(記号◇)、実施例6−5(記号■)はすべて比較例6(記号●)よりもウイスカーの成長は抑えられていた。また、実施例6−2〜6−5はチョップめっきと定電流めっきを組み合わせたもの、すなわちめっき層Aとめっき層Bとを組み合わせたものであるが、チョップめっきと定電流めっきの繰り返し回数を多くする程、ウイスカーの成長は抑えられていた。
本発明に係る無鉛Snベースめっき膜の第1の実施の形態の構成を示す模式図である。 第1の実施の形態の無鉛Snベースめっき膜の断面を観察した結果を示す図である。 従来の無鉛Snベースめっき膜の断面を観察した結果を示す図である。 本発明における無鉛Snベースめっき膜形成時の電流印加方法(1)を示す図である。 本発明に係る無鉛Snベースめっき膜の第2の実施の形態の構成を示す模式図である。 本発明に係る無鉛Snベースめっき膜の第3の実施の形態の構成を示す模式図である。 本発明に係る無鉛Snベースめっき膜の第4の実施の形態の構成を示す模式図である。 本発明における無鉛Snベースめっき膜形成時の電流印加方法(2)を示す図である。 本発明の無鉛Snベースめっき膜のめっき層A及びめっき層Bの膜厚範囲を示す図である。 本発明に係る接続部品の接点構造の構成を示す断面図である。 本発明の接続部品の接点構造における使用後の無鉛Snベースめっき膜の表面状態を示す図である。 実施例1における周期膜厚と最大ウイスカー長さとの関係を示す図である。 実施例2におけるウイスカー試験結果を示す図である。 実施例3におけるウイスカー試験結果を示す図である。 実施例4における無鉛Snめっき膜の残留応力結果を示す図である。 実施例5における無鉛Snめっき膜の周期膜厚と残留応力との関係を示す図である。 実施例6−2の無鉛Snベースめっき膜の断面を観察した結果を示す図である。 実施例6におけるウイスカー試験結果を示す図である。 図18のウイスカー試験結果の拡大図である。
符号の説明
10,20A,20B,30A,30B,30C,40,90…無鉛Snベースめっき膜、10p,90p…結晶粒、11…基材、21,31…積層構造、100…接続部品の接点構造、200…バネ接点構造、A,B…めっき層、d…周期膜厚、I…結晶成長の不連続面

Claims (3)

  1. 金属が析出してなるめっき層が積層されて成り、めっき層の積層界面が金属の結晶成長の不連続面となっている無鉛Snベースめっき膜であって、
    めっき層の全膜厚は1〜10μmであり、
    めっき層は、膜厚が0.5μm以下のめっき層Aの複数層と、めっき層Cとが、交互に積層されて成り、
    めっき層Aは、Sn単体であるか、又は、Snを主成分とし、Bi、Cu、Agから選ばれる1種又は2種以上を含むめっき材料から成り、
    めっき層Cは、膜厚が0.5μm以下のBi、Agのいずれかの単体から成る無鉛Snベースめっき膜。
  2. めっき層Aが連続して積層された構造を有する請求項1に記載の無鉛Snベースめっき膜。
  3. 一対の離脱可能な接点部分の接触によって電気回路を形成する接続部品の接点構造において、
    接点部分表面の少なくとも一方が、請求項1又は請求項2に記載の無鉛Snベースめっき膜で構成される接続部品の接点構造。
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