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JP4887863B2 - 光固定化方法及び構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、微小物体をその向きを制御して(所定の配向性で)固相に固定した構造体を作製する技術に関し、特に、このための光固定化方法、構造体の作製方法、構造体、固相材料組成物、固相材料に関する。
近年、タンパク質やDNAなどの生体物質を固相担体に固定化したビーズやチップが研究用や診断用に用いられるようになってきている。タンパク質等の生体物質は、一般に、親水化したガラス表面等に対して共有結合又は非共有結合にて固定できることが知られている。非共有結合性の固定化方法としては、単なる吸着が一般的であり、共有結合性の固定化方法としては、化学修飾したガラス基板等にアルデヒド基、アミノ基、活性化されたエステル基などを介して結合させることが一般に行われている。
タンパク質などの微小物体を基板などの固相材料表面に固定化する技術の一つとして、光照射により固定化する技術が知られている。例えば、DNAやタンパク質などの微小物体を光応答性のアゾ色素を含有するポリマー(アゾポリマー)を含有する材料表面に配置後、光照射によりその配置パターンに応じてDNA及びタンパク質等をアゾポリマーの表面上に固定することが開示されている(特許文献1)。また、こうした手法において、より安定的に生体物質を材料表面に固定するために前記材料中に、固定しようとする生体物質に親和性を示す親和性成分を含有させることも開示されている(特許文献2)。
また、抗体などのタンパク質を高密度に固定化する方法も報告されている(非特許文献1)。この方法は、基板表面にクラウンエーテルを有するリンカーを導入して、このクラウンエーテル部分とタンパク質のイオン化したアミノ基との相互作用を利用してタンパク質を固定化しようとするものである。
特開2003−329682 特開2004−251801 Proteomics 2003, 3, 2289−2304
しかしながら、単なる吸着などの非共有結合性の固定化は固定化操作が容易であるなどの利点はあるが、その非特異性ゆえに定量的な固定やタンパク質の方向性を制御した固定は困難であった。また、共有結合性の固定化は、固定化のための修飾基の導入によりタンパク質の生体活性を低下させるおそれがあるほか、タンパク質の種類に応じた固相表面の修飾が必要であった。
また、光照射により微小物体を固相表面の固定化手法に関して、微小物体の配向を制御して固定化することについて未だ開示されていない。さらに、クラウンエーテルを有するリンカーを利用する方法に関しては、被固定化物体の配向を制御しているが、弱い相互作用だけでタンパク質とリンカーが結合しているので洗浄などの処理によりタンパク質が外れてしまう。
そこで、本発明は、固相に対して微小物体をその配向を制御して所定の配向性で強固に固定化する技術を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、固相に対して微小物体を所定の配向性で固定化する固定化方法を提供することを一つの目的とする。また、本発明は、微小物体を所定の配向性で固定化するのに好適な固相材料及びそのための組成
物を提供することを他の一つの目的とする。さらに、本発明は、所定の配向性で固定化された微小物体を備える構造体及びその製造方法を提供することを他の一つの目的とする。
本発明者らは、光応答性成分を含有する固相に光照射により微小物体を固定化するのに際して、微小物体が固相に対して一定の配向性で固定可能な相互作用可能な成分を固相に備えさせることで、微小物体の配向性を制御して固相に固定化できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明の一つの態様によれば、固相に微小物体を固定化する方法であって、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能な1種又は2種以上の相互作用成分とを有する前記固相の表面又はその近傍に存在する前記微小物体に対して光照射して前記微小物体を前記表面に所定の配向性で固定化する光固定化工程、を備える、方法が提供される。
この態様においては、前記1種又は2種以上の相互作用成分は、静電的相互作用、親水性相互作用、疎水性相互作用及び水素結合から選択される1種又は2種以上の相互作用を発現する成分とすることができる。また、前記相互作用は静電的相互作用を含み、前記1種又は2種以上の相互作用成分が酸性基及び/又は塩基性基を有することができる。この場合、前記1種又は2種以上の相互作用成分が酸性基及び塩基性基を有することができる。さらにこの場合、前記1種又は2種以上の相互作用成分が有する前記酸性基及び前記塩基性基はいずれか一方が優勢的であるとすることができる。
この態様においては、前記1種又は2種以上の相互作用成分は、前記固相のマトリックスに保持されていることが好ましい態様であり、また、前記1種又は2種以上の相互作用成分は、前記固相のマトリックスに含まれる高分子材料の一部であることも好ましい態様である。
この態様においては、前記微小物体は、その表面又はその近傍における電荷の分布の不均一性を有する微小物体とすることができる。この場合、前記微小物体の有する1又は2以上の官能基の分布の不均一性が前記電荷の不均一性に関連している場合がある。さらに、前記1種又は2種以上の官能基は、酸性基及び塩基性基から選択されることができる。前記酸性基はカルボキシル基であることが好ましく、前記塩基性基はアミノ基であることが好ましい。
また、前記1種又は2種以上の相互作用成分はアミド基を有することができる。この態様において、前記1種又は2種以上の相互作用成分は、アミド基と静電的相互作用を発現する官能基とを有することもできる。さらに、前記静電的相互作用を発現する官能基は、酸性基及び塩基性基から選択される1種又は2種以上とすることができる。好ましくは、前記静電的相互作用を発現する官能基は、酸性基及び塩基性基を含み、さらに好ましくは、酸性基を含有する相互作用成分を塩基性含有相互作用成分よりも優勢に有している。
本発明の他の一つの態様によれば、固相に微小物体を固定化する方法であって、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能な酸性基及び/又は塩基性基を有する1種又は2種以上の相互作用成分と、をそのマトリックスに保持している前記固相の表面又はその近傍に存在する前記微小物体であってその表面又はその近傍において電荷の分布の不均一性を有している微小物体に対して光照射して前記微小物体を前記表面に前記所定の配向性で固定化する光固定化工程を備える、方法が提供される。
この態様においては、前記微小物体はタンパク質を含むことができ、前記微小物体は抗体とすることができる。また、前記抗体は、そのFab部位が露出されるような配向性で固定化されていてもよい。この場合、前記1種又は2種以上の相互作用成分は、前記固相のマトリックスに保持されており、酸性基及び塩基性基を有するが酸性基を塩基性基よりも優勢的に有するようにすることができる。また、前記マトリックスは、アミド基を有する1種又は2種以上の相互作用成分を保持していてもよい。
本発明の他の一つの態様によれば、固相に微小物体を固定化する方法であって、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化を可能にさせるアミド基を有する1種又は2種以上の相互作用成分と、をそのマトリックスに保持している前記固相の表面又はその近傍に存在する前記微小物体に対して光照射して前記微小物体を前記固相表面に前記所定の配向性で固定化する光固定化工程を備える、方法が提供される。
本発明の他の一つの態様によれば、微小物体を保持する固相を備える構造体の製造方法
であって、上記いずれかに記載の光固定化工程を備える、製造方法が提供される。前記光固定化工程は、前記固相に1種又は2種以上の前記微小物体のスポットをアレイ状に光固定化する工程とすることができる。
本発明の他の一つの態様によれば、微小物体を保持する固相を備える構造体であって、前記固相は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能な1種又は2種以上の相互作用成分を有し、前記微小物体は前記固相の表面に光照射により前記所定の配向性で固定化されている、構造体が提供される。こうした構造体は、抗体、糖鎖、酵素及び細胞から選択されるいずれかを固定したチップとすることができる。
この態様においては、前記微小物体は、その表面又はその近傍に電荷の分布の不均一性を有しており、前記固相において前記1種又は2種以上の相互作用成分は、酸性基及び/又は塩基性基を有していることが好ましい。また、前記1種又は2種以上の相互作用成分は、酸性基及び塩基性基を有することができ、さらに、前記酸性基及び前記塩基性基のいずれか一方をより優勢的に有することができる。例えば、いずれかを優勢的にするかは、固定化しようとする微小物体の表面の状態(場所)に応じて選択される。また、前記1種又は2種以上の相互作用成分は前記固相のマトリックスに保持されていてもよく、さらに、前記1種又は2種以上の相互作用成分は、前記固相のマトリックスに含まれる高分子材料の一部であってもよい。さらにまた、前記微小物体はタンパク質であってもよく、さらに、前記タンパク質は抗体を含むことができる。この場合、抗体は、そのFab部位が露出されるような配向性で固定化されていることが好ましい。また、前記1種又は2種以上の相互作用成分は、アミド基を有していてもよい。
本発明の他の一つの態様によれば、微小物体の光固定化に用いる固相材料組成物であって、
光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有する1又は2以上のユニットを有する重合性体と、酸性基を含有する1又は2以上のユニットを有する重合性体、塩基性基を含有する1又は2以上のユニットを有する重合性体並びに酸性基及び塩基性基を有する1又は2以上のユニットを有する重合性体から選択される1種又は2種以上の重合性体と、を含有する、組成物が提供される。この態様においては、前記微小物体は、タンパク質を含むことができる。
本発明の他の一つの態様によれば、 微小物体の光固定化に用いる固相材料組成物であって、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有する1又は2以上のユニットを有する重合性体と、アミド基を含有する1又は2以上のユニットを有する重合性体を含有する、組成物も提供される。この態様においては、前記微小物体は、タンパク質を含むことができる。
本発明の他の一つの態様によれば、微小物体の光固定化に用いる高分子固相材料であって、少なくとも、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有するユニットを有する高分子材料を含むマトリックスを有し、前記マトリックスには、酸性基含有成分及び/又は塩基性基含有成分を有している、材料が提供される。また、微小物体の光固定化に用いる高分子固相材料であって、少なくとも、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有するユニットを有する高分子材料を含むマトリックスを有し、前記マトリックスには、アミド基含有成分を有している、材料も提供される。これらの態様においては、前記酸性基含有成分は、前記酸性基含有ユニットとして前記高分子材料に含まれ、前記塩基性基含有成分は、前記塩基性基含有ユニットとして前記高分子材料に含まれるものとしてもよい。また、前記材料は、フィルム状としてもよい。
本発明を実施するための最良の形態について、以下詳細に説明する。
本発明は、微小物体の光固定化方法、構造体の製造方法、構造体、光固定化用固相材料組成物、光固定化用固相材料等の各種の態様の発明を提供する。本発明の一つの態様である、本発明の固相に微小物体を固定化する方法は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能な1種又は2種以上の相互作用成分とを有する前記固相の表面又はその近傍に存在する前記微小物体に対して光照射して前記微小物体を前記表面に所定の配向性で固定化する光固定化工程、を備えることを特徴としている。
また、本発明の他の一つの態様である微小物体を保持する固相を備える構造体は、前記固相は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分と、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能な1種又は2種以上の相互作用成分を有し、前記微小物体は前記固相の表面に光照射により前記所定の配向性で固定化されていることを特徴としている。
本発明の各種態様においてはいずれも、微小物体を固相に対して所定の配向性で固定化可能な相互作用成分を有している。こうした一見単純な構成により、微小物体を所定の配向性で固相に対して固定化できるのは意外なことであった。本発明を拘束するものではないが、こうした構成により微小物体を固相に対して配向させることができるのは、光照射を含む光固定化工程の操作が相互作用成分によって微小物体と固相との間に相互作用を生じた状態を妨げないことによるものと考えられる。このために、本発明によれば、特別な構造物などや共有結合を用いることなく、微小物体に所定の配向性を付与するには、微小物体の種類に応じた1種又は2種以上の相互作用成分を固相に付与することで微小物体に所定の配向性を付与することができるものと考えられる。
また、本発明の各種の態様においては、微小物体における表面又はその近傍の電荷等の分布の不均一性を利用して微小物体に所定の配向性を付与することができる。光固定によれば、こうした表面状態の不均一性に依存する相互作用の差をも利用して微小物体に配向性を付与することができるのである。
以下、本発明の実施形態として、本発明の構造体、光固定化方法及び構造体の製造方法について適宜図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の構造体の一形態を配向性なく微小物体が固定化された構造体とともに例示する。
〈構造体〉
以下、本発明の構造体2について説明するが、まず、微小物体10と固相4とについて説明する。
(微小物体)
本発明の構造体2は、固相4の表面に微小物体10を備えている。微小物体10は、1個あるいは複数個備えることができる。また、1種類の微小物体10を備えることもできるし、2種類以上の微小物体10を同じ固相4の表面上に備えることもできる。
微小物体10は、有形である限り、その存在形態を問うものではない。微小物体10の形状は、必ずしも固定的である必要はなく、フレキシブルに変形し得るものでも良い。また、微小物体10は、1mm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、とりわけ好ましくは10μm以下のサイズのものを対象とすることができる。また、微小物体10は、好ましくは1nm以上の大きさである。本明細書においては、微小物体10の大きさは、固定化前及び固定化後のいずれかで微小物体10が測定しやすい状態にあるときに測定することができ、微小物体10の観察時における最大寸法で規定するものとする。例えば、微小物体10の最大寸法が1μm以上程度であれば光学顕微鏡で測定することができ、1μm未満程度の場合には、AFM(原子間力顕微鏡)で測定することができる。さらに、10nm以上100μm以下程度の範囲にあっては、走査型電子顕微鏡で測定することもできる。
微小物体に含有され、あるいは微小物体を構成する材料としては、特に限定しないが、例えば、以下の(a)無機材料群、(b)有機材料群、(c)生体材料群、(d)生物材料群及び(e)複合材料群から選ばれる1種又は2種以上の材料が挙げられる。
(a)無機材料群
無機材料としては、少なくとも金属、金属酸化物、半導体、セラミックス、ガラスを含んでいる。また、金属酸化物は、例えば、メタロロキサン骨格を有するなど無機高分子の形態であってもよい。
(b)有機材料群
有機材料としては、いわゆるプラスチックを含んでいる。プラスチックは、各種形態を採ることができる。プラスチックは、固相の粒子であるほか、溶液又は懸濁液中の粒子の形態であってもよい。さらに、プラスチック粒子は、単相の粒子であってもよいし、マトリックス状であっても、カプセル状であってもよい。また、有機材料には、抗菌性、抗炎症性、各種の生体プロセスのブロック作用、ある種のアゴニスト又はアンタゴニストであるなど生理活性を有する有機化合物を包含してもよい。これらは低分子化合物であっても1種あるいは2種以上の単量体ユニットを有する高分子化合物であってもよい。
(c)生体材料群
生体材料としては、タンパク質、核酸、糖類、脂質及び骨形成材料並びにこれらから選択される2種以上の集合体が挙げられる。これらの生体材料は、生体を構成する分子及びその改変体並びにこれらの多量体を含んでいる。また、生体材料は、生体から採取されたものに限定されず、生体から採取され人工的な改変が施されたものであっても、人工的に合成されたものであってもよい。これらの生体材料は、蛍光色素などの色素を含む標識が結合されたものであってもよい。
タンパク質とは、本明細書において使用する場合、任意のサイズ、構造、または機能の、タンパク質、ポリペプチド、およびペプチドをいう。しかし、代表的には、タンパク質は、少なくとも約6アミノ酸長である。好ましくは、タンパク質が短いペプチドの場合、少なくとも約10アミノ酸残基長である。タンパク質は、天然由来であってもよいし、化学的に合成されたものであってもよいし、遺伝子工学的に合成されたものであってもよいし、これらを組み合わせて得られるものであってもよい。さらに、タンパク質は、非天然アミノ酸を含有していてもよい。タンパク質はまた、天然に存在するタンパク質またはそのフラグメントでもあってもよい。タンパク質のフラグメントは、例えば、培養細胞から単離された全長タンパク質の消化を行うことによって得られるポリペプチドが挙げられる。タンパク質は、単一の分子であっても、複数の分子の複合体であってもよい。複合体としては、活性型及び不活性型のタンパク質の双方を含むとともに、複数のタンパク質を共有結合他各種の結合様式で集合化されて複数のユニットとして有する集合体を含んでいる。タンパク質及びその集合体としては、例えば、各種タンパク質、酵素、抗原、抗体、レクチン又は細胞膜レセプターが挙げられる。さらに、タンパク質には、糖鎖などのアミノ酸残基以外の化合物が結合していてもよい。
本明細書において「抗体」とは、天然の又は全体的若しくは部分的に合成的に産生された免疫グロブリンを意味する。特異的結合能を保持するその全ての誘導体も包含される。この用語はまた、免疫グロブリンの結合ドメインに相同か、または高度に相同な結合ドメインを有する任意のタンパク質を含む(キメラ抗体およびヒト化抗体を含む)。抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよい。抗体は、任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得、任意のヒトのクラス(IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE)を含む。IgGクラスの誘導体が本発明において好ましい。
核酸は、1本鎖あるいは2本鎖以上、あるいは一部に1本鎖を有するDNA、RNAのほか、人工的な核酸を含んでいる。核酸としては、例えば、ゲノムDNA及びそのマイクロサテライト部あるいは任意の遺伝子の少なくとも一部を含む断片、cDNA及びその断
片、mRNA及びその断片のほか、一塩基多型部位など変異部位を含むDNA(cDNA含む)断片、制限酵素部位を含むDNA断片が挙げられる。また、核酸は、オリゴヌクレオチドであってもよいしポリヌクレオチドであってもよい。
糖類としては、単糖類、オリゴ糖及び多糖類が挙げられる。糖類には、生体内においてタンパク質や脂質と結合している糖鎖及びその一部も含んでいる。脂質としては、例えば、リポタンパク質、リポ多糖類などにおける脂質鎖あるいはその一部を含んでいる。骨形成材料としては、カルシウムの各種リン酸塩など無機化合物が挙げられる。
(d)生物材料群
生物材料は、少なくとも各種の生物細胞及びその一部、組織及び生物体を含んでいる。これらはいずれも、生活状態にあってもよいし、生活状態になくてもよい。生物細胞としては、哺乳動物及び非哺乳動物の任意の動物細胞、植物体の任意の細胞、真菌、酵母、細菌、ウイルスなどの各種の生物の細胞を含んでいる。さらに、生物細胞の一部とは、これらの生物細胞内に存在する各種オルガネラのほか、生物細胞の膜、オルガネラの一部を含んでいる。また、組織とは、生物細胞の集合体であり、動物の一部及び動物の各種臓器(皮膚を含む)を構成する組織並びに植物体の一部及び器官を含んでいる。さらに、生物体とは、生物として繁殖あるいは増殖可能な一つの単位体を意味している。生物体としては、例えば、受精卵、微生物細胞やウイルスが挙げられる。これらの生物材料は、遺伝子工学又は化学的など人工的に修飾されたものであってもよい。
(e)複合材料群
複合材料とは、上記した無機材料、有機材料、生体材料及び生物材料から選択される2種類以上を複合化した材料である。複合化は、どのような形態であってもよく、共有結合、疎水結合、水素結合等の各種結合様式によるものであってもよいし、物理的な圧密等によるものであってもよい。このような複合材料によれば、固相4の表面に光固定化しにくい材料であっても、光固定化が相対的に容易な材料と複合化することにより、容易に光固定化することができる。こうした複合材料としては、例えば、タンパク質と糖鎖などの生体材料同士や、タンパク質や核酸などの生体材料と無機材料又は有機材料とを、共有結合他各種の結合様式にて複合化した複合材料が挙げられる。さらに、近接場光源として有効な無機材料や有機材料の粒子をタンパク質、核酸などの生体材料あるいは生物材料と複合化した微小物体10が挙げられる。
本発明における微小物体10は、その表面状態、すなわち、表面又はその近傍における特性、例えば、(1)電荷、(2)疎水性や親水性などの極性、(3)官能基について不均一な分布を有していることが好ましい。こうした微小物体10の不均一性又はこうした不均一性を示す部位は、固相4に備えられる相互作用成分と相互作用して微小物体10を所定の配向性で固定化するための標的となる。
微小物体10が電荷について不均一な分布を有している場合とは、その一部に(特に、微小物体10の表面又はその近傍において)正又は負の電荷が他の部分よりも多い比率で存在している場合が挙げられる。こうした電荷の不均一性には、酸性基や塩基性基などの官能基の不均一性が関連している。例えば、微小物体10がタンパク質の場合には、タンパク質の表面近傍の一部のアミノ酸配列において塩基性アミノ酸(又は酸性アミノ酸)が多く含まれている場合や、アミノ酸のアミノ基やイミダゾール基(又はカルボキシル基)が高い比率(モル比率)で表面に露出されている場合が挙げられる。こうしたタンパク質の表面近傍における官能基分布は結晶構造解析により判断することができる。したがって、こうした部位に存在する電荷に対して引力又は斥力として作用する静電的相互作用可能な成分を固相4に付与することで微小物体10を配向して光固定できるようになる。
また、微小物体10が極性について不均一な分布を有している場合とは、微小物体10がタンパク質の場合には、タンパク質の表面近傍の一部のアミノ酸配列において疎水性アミノ酸(又は親水性アミノ酸)が多く含まれている場合や、アミノ酸のフェニル基やアルキル基を含む炭化水素基などの疎水性基(又はアミノ基やカルボキシル基などの親水性基)が高い比率で表面に露出されている場合が挙げられる。したがって、こうした部位に存在する疎水性基や親水性基に対して引力又は斥力として作用する親水性相互作用や疎水性相互作用を奏する成分を固相4に付与することで微小物体10を配向して光固定できるようになる。
なお、微小物体10におけるこうした表面状態の不均一性は、本来的に微小物体10が備えているものであることが好ましいが、意図的に微小物体10に対して付与したものであってもよい。例えば、微小物体10としてのタンパク質の活性に影響を及ぼさない部位のアミノ酸配列を遺伝子工学的な手法により改変して表面状態の電荷、極性、官能基等の分布に不均一性を付与してもよい。
微小物体10としては、微小物体10の利用形態において、方向性、部位特異性、立体特性など必要なものが本発明に好ましく適用される。したがって、生体材料、生物材料及びこれらと他の材料との複合材料が好ましく用いられる。なかでも、タンパク質を含むものを好ましく用いることができる。こうしたタンパク質としては、各種レセプター、酵素、レクチンや抗体が挙げられる。また、タンパク質−糖鎖複合体、タンパク質−核酸の複合体などであってもよい。
<固相>
光固定化工程において用いられる固相4は、そのマトリックスに光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を有しており、さらに、微小物体を所定の配向性で固定可能な相互作用成分を保持することができる。
(マトリックス)
固相4のマトリックス6は、光固定化可能に光応答性成分を保持できるものであればよい。したがって、その限りにおいてマトリックス6を構成するマトリックス材料は特に限定しないで高分子材料を含む有機材料、無機材料、有機−無機複合材料等を用いることができる。マトリックス6への光応答性成分や相互作用成分の分散性や結合性等を考慮すると、高分子材料又は高分子材料を含む複合材料であることが好ましい。また、後述するように、固相4において光変形を生じさせる観点又は加工性等の観点からは、光変形を許容し得る可塑性や熱可塑性を有する材料、典型的には高分子材料であることが好ましい。
マトリックス6を構成する高分子材料としては、特に限定しないで各種の熱可塑性又は熱硬化性ポリマーを用いることができる。こうした高分子材料は、後述する光応答性成分や相互作用成分の共重合による導入性を考慮して使用されることが好ましい。したがって、例えば、(1)エチレン性モノマーなど二重結合を含有する重合性体の重合体であるアクリル系ポリマー、メタクリル系モノマー、ビニル系ポリマー、スチレン系ポリマー、ジエン系ポリマー、(2)重合性官能基の重縮合により得られるアミド系ポリマー、エステル系ポリマー、(3)ウレタン系ポリマー、ウレア系ポリマーなど付加重合性ポリマーが挙げられる。これらのなかでも、アクリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー及びアクリル−メタクリル系コポリマーを好ましく用いることができる。これらのポリマーは、抗体を固定化する際の比特異的吸着が少ないため、抗体チップなどにおいてバックグラウンドシグナルを抑制できるため、高感度測定が可能となる。なお、構成ユニット中にウレタン基,ウレア基,又はアミド基を含んだものが、更には高分子の主鎖中にフェニレン基のような環構造を備えたものが、耐熱性の点では好ましい。マトリックス6には、1種又は2種以上の高分子材料を用いることができる。こうした高分子材料を得るための各種の重合性体は、モノマーのほか、オリゴマー、マクロモノマー、デンドリマーなどの中間分子量体などを用いることができる。
マトリックス6は、光応答性成分を含有すること及び光による分子構造の変化等により結果として形状変形(以下、光変形ともいう。)を生じるように構成されていることが好ましい。本明細書において光変形とは、通常のマクロな意味での形状変化のほか、分子レベルでの運動による微小物体と光固定化材料表面との絡み合いになどによる変形も含む。このような変形の中には、変形量や変形形態の問題から通常の観察手段によっては明瞭に観察できないものもある。光変形は、光応答性成分が光固定化材料中に存在することにより、光照射時に、例えば、マトリックス6若しくは光応答性成分の体積、密度、自由体積などが変化することにより誘起されることにより生じると考えられる。固相4が光変形材料であるときには、光照射による分子構造の変化等のみならず、表面形状を変化させることができ、表面形状によって微小物体の固相4の表面における配列等を制御できる。
(光応答性成分)
光応答性成分は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる成分である。光により分子構造の変化が生じる現象は、フォトクロミズムと一般にいわれている。本発明で用いる光応答性成分としては、一般にフォトクロミック化合物といわれる化合物を用いることができるが、なかでも、光異性化を生じる化合物を用いることが好ましい。なお、光異性化等の分子構造変化を伴って又は光異性化等の分子構造変化を伴わないで光誘起配向、光会合等の分子配列の変化(特に異方的な変化)を生じる化合物も、本発明における固相を構築できるものである限り本発明の光応答性成分として用いることができる。
光応答性成分は、微小物体を光固定化可能な程度、すなわち、固相4の表面又はその近傍に微小物体が存在するとき、光照射により微小物体を固相4に固定化できる程度で固相4に含まれていればよい。光応答性成分は、単一の化合物であってもよいし、マトリックス6を構成するマトリックス材料に化学的に結合された一部分であってもよい。こうした光応答性成分としては、例えばトランス−シス光異性化を生じる成分等の光異性化化合物等があり、例えば、アゾ化合物、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、ジアリールエテン化合物などの有機化合物、カルコゲナイトガラスと総称される無機材料などがあげられる。なかでも、光応答性成分としては、アゾ基(−N=N−)を有する色素構造、なかでも、アゾベンゼンやその誘導体の構造を持つアゾ化合物「化1」参照)が好ましい。アゾ化合物は、光照射等によりシス−トランス異性化を起こし、この異性化による分子レベルの運動が固相4を可塑化させて変形を容易にする。また、例えば、「化2」及び「化3」に示すように、アゾベンゼン骨格の一方のベンゼン環に電子吸引性置換基が、他方に電子供与性置換基が結合したものは、光照射中にシス−トランスの異性化を繰り返して固相4の可塑化が著しいため好ましい。特に、光応答性成分は、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光応答性成分は、固相4のマトリックス6に均一に存在することが好ましい。こうすることで固相4の所望の部位において光固定化が可能となる。
光応答性成分は、固相4のマトリックス6に分散される別個の成分として固相4に含まれていてもよいし、固相4のマトリックス6を構成する1種又は2種以上のマトリックス材料に共有結合などの化学的結合を介して連結されてその一部となっていてもよい。例えば、マトリックス6が高分子材料を含む場合には、光応答性成分は、高分子材料の一部(主鎖、側鎖あるいは修飾基)に含まれて存在することが好ましい。すなわち、光応答性成分を含むユニットが高分子材料の一部、すなわち、共有結合などの化学的結合を介して主鎖、側鎖又は修飾基として含まれることにより、固相4の薄膜化など、マトリックス6を構成する高分子材料の熱による軟化や溶融を利用した場合であっても、マトリックス6中に均一に光応答性成分を存在させることが可能となる。
高分子材料に含まれる光応答性成分としては、次の「化4」〜「化5」に示す単量体ユニットが好ましく例示される。なお、これらの構造式においてRは重合性基を表している。また、好ましい(メタ)アクリル系モノマーとしては以下の「化6」〜「化8」が挙げられる。
なお、その他、本発明において使用可能な光応答性成分又は光応答性成分を含有する個相4としては、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報及び特開2004−251801号公報に記載の担体や光固定化材料を用いることができる。また、本明細書には、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報及び特開2004−251801号公報に記載されるすべての事項が引用により取り込まれるものとする。
(相互作用成分)
マトリックス6中には、1種又は2種以上の相互作用成分を有している。相互作用成分は、微小物体10を所定の配向性で固相4に固定可能な相互作用を奏する成分である。ここで、所定の配向性で固相4に微少物体10を固定するとは、少なくとも微小物体10と固相4とに意図した相互作用が存在しない場合よりも高い割合で予め決定された配向性で微小物体10を固相4に固定することを意味している。より好ましくは、予め決定された配向性の微小物体10が優勢的となるように固相4に固定することを意味している。
相互作用成分は、結果として微小物体10を固相4に対して所定の配向性で固定できるものであれば足りる。該成分が奏する相互作用の種類は、非共有結合性であることが好ましく、例えば、正−負荷電間の静電的相互作用、親水性相互作用、疎水性相互作用、水素結合等が挙げられる。これらの相互作用は、1種又は2種以上を組み合わせてもよい。2種以上の相互作用を奏する相互作用成分を組み合わせることで、微小物体10をより選択的に配向させることができる。こうした相互作用のなかでも、静電的相互作用及び水素結合は、それぞれ単独でもまた他の相互作用と組み合わせても用いることができる。また、
相互作用としては、静電的相互作用及び水素結合のいずれかあるいは双方を用いることも好ましい。少なくとも静電的相互作用を用いることも好ましい。また、少なくとも水素結合を用いることも好ましい。
相互作用の種類や相互作用成分の種類は、固定しようとする微小物体10に応じて適宜決定される。すなわち、相互作用成分は、固相4のマトリックス6に存在する場合、固定しようとする微小物体10の種類、特にその表面又はその近傍における極性や電荷の不均一性を利用できるようなものが選択される。微小物体10の表面又はその近傍において極性の分布が不均一な場合には、微小物体10の一部の極性に着目してその極性に対して引力又は斥力が作用するような親水性相互作用及び/又は疎水性相互作用が選択される。また、微小物体10の表面又はその近傍において電荷の分布が不均一な場合には、微小物体10の一部の電荷分布に着目して、その電荷に対して引力又は斥力が作用するような正及び/又は負の電荷による静電的相互作用が選択される。例えば、微小物体10がタンパク質である場合には、正−負電荷間の静電的相互作用を少なくとも用いることが好ましい。正電荷や負電荷の分布は、タンパク質によりまたタンパク質の部分により特徴的であり、正−負電荷の静電的相互作用によって微小物体10に配向性を容易に付与できる。さらに、微小物体10が電荷のほか極性の分布についても不均一性を有する場合には、静電的相互作用と親水性及び/又は疎水性相互作用とを組み合わせて用いることができる。
本発明によれば、こうした相互作用及び相互作用成分を用いることで微小物体10が固相4に対して所定の配向性で固定されている。所定の配向性を得るための好適な相互作用の種類や相互作用成分の種類や比率等は、後述するように、利用する相互作用の種類や固相4に用いる相互作用成分の種類や比率等を種々に変えて、微小物体10の固相4に対する相互作用のあり方を変化させ、得られる配向性を評価することで、決定される。
正−負荷電間の静電的な相互作用を奏する成分は、酸性基及び/又は塩基性基を有している(以下、こうした成分を酸性基含有相互作用成分及び塩基性基含有相互作用成分等ともいう。)。酸性基は、プロトンを放出する能力がある基を意味している。酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が挙げられる。リン酸基の場合、プロトン放出できるOHが少なくとも一つあればよく、それ以外のOHは各種置換基で置換されていてもよい。酸性基は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、塩基性基は、プロトンを受容する能力がある基を意味している。塩基性基としては、例えば、各種アミノ基、イミダゾール、ピリジンなどの複素環式化合物性基などが挙げられる。これらの塩基性基は、いずれも、プロトンを受容できる限り、鎖状又は環状のアルキル基などの炭化水素基、芳香族炭化水素基で置換されていてもよい。塩基性基は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
親水性相互作用を奏する成分は、水酸基のほか、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの酸性基を有している。疎水性相互作用を奏する成分は、ベンゼン環、アルキル基などがあげられる。水素結合を奏する成分は、水酸基やアミド基などを有している。
正―負荷電間の静電的相互作用を奏する相互作用成分を用いる場合、当該相互作用成分は、微小物体10の部分的な電荷と引力又は斥力が作用するように、酸性基又は塩基性基のいずれかのみを有するものであってもよいし、酸性基及び塩基性基を有していてもよい。好ましくは、酸性基及び塩基性基を有する。1種又は2種以上の相互作用成分が酸性基及び塩基性基を有する態様としては、例えばアミノ酸のように、1種の相互作用成分が酸性基及び塩基性基を有していてもよいし、2種以上の相互作用成分のうち一種の相互作用成分が酸性基を有し、他の1種が塩基性基を有していてもよい。酸性基及び塩基性基の双方を用いることにより、固相4の表面が電荷の分布に不均一性を有する微小物体10を配置及び配向させやすくなる。微小物体10がタンパク質の場合には、本来、タンパク質は酸性基と塩基性基とを双方備えているからであるとも推論される。
相互作用成分の特性基として酸性基及び/又は塩基性基を用いる場合には、いずれか一方が優勢的になるようにすることが好ましい。ここで相互作用成分の特性基としての酸性基及び塩基性基について、いずれかが優勢的であるとは、酸性基と塩基性基のモル比率で判断するものとする。例えば、固相4におけるモル比率で酸性基が塩基性基を超えている場合(酸性基だけの場合を含む)には、酸性基が優勢的であるとする。なお、ここでいうモル比率は、固相4を構成する材料における組成に基づいて判断することができる。すなわち、固相4を構成する材料が樹脂材料の場合、こうした樹脂材料を構成するモノマー組成から酸性基及び塩基性基の固相4におけるモル比率を得ることができる。
特に、微小物体10が生体由来物質(特にタンパク質など)であるときには、こうした特性基の組み合わせで相互作用成分を含有することが好ましい。さらに、酸性基及び塩基性基の双方を含みかつ一方を優勢的にすることで、酸性基または塩基性基単独で導入されている場合に比べ、固相4の表面の静電状態が一層配向に都合のよい状態にすることができる。例えば、タンパク質などの微小物体10が正の電荷が優勢的に存在する部位を有しており、微小物体10の配向に関しこの部位との引力を生じる相互作用を利用することを意図する場合、固相4には負の電荷、すなわち、酸性基を有する相互作用成分のみを用いるよりも、同時に塩基性基を有する相互作用成分を用いるとともに、酸性基が優勢的になるように用いることが好ましいのである。
一例として、例えば、微小物体10として抗体を用い、そのFab部位を露出するような配向性で固相4に光固定するには、固相4に特性基として酸性基を含む相互作用成分を存在させるか、又は固相4に特性基として酸性基と塩基性基とを含む1種又は2種以上の相互作用成分を存在させ、かつ酸性基を優勢的にすることが好ましい。配向のメカニズムの詳細は明らかではないが、こうした固相4の組成によれば、固相4の表面の静電状態が抗体のFc部位と優位に相互作用する状態になっているためであると考えられる。
アミド基を有する相互作用成分としては、アミド基を有していれば特に限定されないが、例えば、以下の式「化9」で表される化合物が挙げられる。なお、式「化9」におけるRは、任意の置換基を表し、Rは、それぞれ独立に水素原子又は任意の置換基を表す。ただし、Rにおける置換基は好ましくは炭化水素系置換基であり、具体的には、アルキル基及びアリール基等である。アミド基を用いると、特に、抗体などタンパク質の配向性の向上とともに固定化量を増加させることができる。したがって、微小物体10におけるタンパク質又はペプチド部位との相互作用により微小物体10を所定の配向性で光固定化することができる。特に、酸性基又は塩基性基を有する相互作用成分とともにアミド基を有する相互作用成分とを用いることで、高い配向性で多くのタンパク質を固相4に固定化することができ、この結果、配向性に基づく活性の高いタンパク質を固相4に固定化することができる。例えば、抗体の場合には、Fab部位を固相4の表面においてより多く露出した状態に配向させることができるため、相互作用成分を導入しない場合に比べ固定化量が同等でも高い抗体活性を発現させることができる。
こうしたアミド基の作用は必ずしも明らかではないが、水素結合相互作用によるものと推測される。したがって、式「化9」におけるRのいずれか一方が水素原子であることが好ましい。全てのRが水素原子が結合する形態であってもよい。なお、アミド基を有する相互作用成分も固相4のマトリックス6中に添加剤のように分散されていてもよいし、マトリックス6を構成する材料に結合した状態で備えられていてもよい。
アミド基を有する相互作用成分は、酸性基及び/又は塩基性基を有する相互作用成分とともに固相4に備えられていることが好ましい。上記したように、アミド基は、タンパク質との相互作用により、微小物体10を配向しかつ固定化量を増大させる作用があり、こうした作用と上記静電的相互作用による高い配向性とを組み合わせることで、配向した微小物体10をより多く固定化させることができる。アミド基は、酸性基のみとともに固相4に存在していてもよいし、塩基性基のみとともに固相4に存在していてもよいし、酸性基及び塩基性基の双方と固相4に存在していてもよい。さらに、酸性基及び塩基性基はいずれか一方をより多く備えるようにしてもよい。
これらの各種相互作用成分の固相4における含有量については、特に制限はないが、上記した各種の酸性基または塩基性基については、固相4の安定性(耐水性、耐久性など)を考慮すると、酸性基の場合では放出できるプロトンの数、塩基性基の場合では受容できるプロトンの数の合計が、固相4に含まれる全原子数の50%以下であることが好ましい。
また、アミド基を備える固相4においては、同様に固相4の安定性の観点から、アミド基に含まれるN原子数が固相4に含まれる全原子数の50%以下であることが好ましい。また、アミド基と酸性基及び/又は塩基性基とを備える固相4においては、アミド基に含まれるN原子数と放出可能なプロトン数及び/又受容可能なプロトン数との合計が固相4の全原子数の50%以下であることが好ましい。
相互作用成分は、マトリックス6にマトリックス材料や光応答性成分と別個の成分として含まれていてもよいし、マトリックス材料又は光応答性成分と化学的な結合を介して連結されていてもよい。酸性基や塩基性基など水溶性の基を備える相互作用成分は、光固定工程において水性媒体を用いる場合には、マトリックス材料と結合していることが好ましい。マトリックス材料と結合していないと、操作時に水性媒体中に相互作用成分が流れ出すおそれがある。同様に、疎水性基を備える相互作用成分は、光固定において非水性媒体を用いる場合にはマトリックス材料と結合されていることが好ましい。
上記したように、マトリックス材料は高分子材料であることが好ましいが、相互作用成分は、マトリックス材料を構成する構成ユニットとの共重合等によりマトリックス材料に連結されていることが好ましい。マトリックス材料は、既に説明したように、光応答性成分も構成ユニットに備えることができる。
例えば、マトリックス材料がアクリル系又はメタクリル系の高分子材料の場合、相互作用成分としては、1又は2以上の酸性基及び/又は塩基性基と、二重結合性の重合性基を有するモノマー、オリゴマー、マクロモノマー及びデンドリマーのいずれかの重合性体を用いることができる。具体的には、酸性基を有する相互作用成分としては、典型的にはメ
タクリル酸、アクリル酸などを用いることができ、塩基性基を有する相互作用成分としてメタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどを用いることができる。また、アクリル系又はメタクリル系のマトリックス6にアミド基を備える場合には、アミド基と二重結合性基を備えるモノマー等の重合性体を用いることができる。アミド基を有する相互作用成分としては、例えば、メタクリルアミドやアクリルアミドを用いることができる。共重合は、ランダムでもブロックでもよい。固相4の表面特性の均質性を考慮すると、ランダム共重合が好ましい。また、他の種類のポリマーの場合にはそれぞれ種類に応じた重合性体を準備すればよい。
相互作用成分が結合された高分子材料に光応答性成分が結合されていてもよいし、光応答性成分が結合された高分子材料は別途用意されてもよい。相互作用成分と光応答性成分とがそれぞれ別個の高分子材料に結合されている場合には、これらを混合することで光応答性成分と相互作用成分とを有するマトリックス6を得ることができる。
マトリックス材料が二重結合性(典型的にはエチレン性)の重合性基を含んだ重合性体の共重合により得られる高分子材料であって、光応答性成分および正−負荷電間相互作用を奏する相互作用成分が共重合により導入されている場合の好ましい重合性体組成の条件として、例えば、以下のものが挙げられる。なお、重合性体がモノマーである場合には、以下の説明におけるユニットはモノマーで置き換えることができるが、重合性体がオリゴマーやマクロモノマー、デンドリマーの場合にはこれらの重合性体に含まれる一つの酸性基などの特性基に対応するユニットを1モルとして算出するものとする。
(1)酸性基含有ユニットと塩基性基含有ユニットの合計は、全重合性体の50mol%以下である(これ以上加えると、固相4の水に対する安定性が低下する。)。より好ましくは30mol%以下である。これ以上加えても、配向性があまり向上しなくなり、コスト的に不利になる。
(2)酸性基含有ユニット及び塩基性基含有ユニットのいずれか(好ましくは酸性基含有ユニット)を含む場合には、そのユニットのユニット比率が15mol%以下(好ましくは5mol%以下)であり、酸性基含有ユニット及び塩基性基含有ユニットを含む場合には、いずれか一方が優勢的であり、好ましくは、多い方のユニット比率(mol%)から少ない方のユニット比率を引いた差(多い方のユニット比率(mol%)−他方のユニット比率(mol%))が15mol%以下(より好ましくは5mol%以下、さらに好ましくは2mol%以下、一層好ましくは1mol%以下)である。
(3)光変形成分に酸性基あるいは塩基性基が含まれていても、それらは相互作用成分には含めない。すなわち、なお、このようなユニット比率の算出にあたっては、光応答性成分含有ユニットが正−負荷電間静電的相互作用を発揮する酸性基や塩基性基を含有していても、酸性基含有ユニットや塩基性基含有ユニットに含めないものとする。
こうした高分子材料の共重合比は、高分子材料を得るための重合性体組成物における各種の重合性体組成物が算出することもできるが、得られた高分子材料を、重クロロホルムなどの溶媒で、日本電子製の超伝導フーリエ変換核磁気共鳴装置(JNM−LA500)を用いて1H−NMRを測定し、プロトンの積分値から算出することもできる。
微小物体10としての抗体などのタンパク質を光固定するのに上記(1)〜(3)を採用することができる。特に、抗体のそのFab部位を露出するように配向させて光固定するには、上記(1)〜(3)中、特に上記(2)において、酸性基含有モノマーの比率(mol%)−塩基性含有モノマー比率(mol%)を15mol%以下とすることが好ましい。
また、マトリックス材料が、光応答性成分とアミド基含有相互作用成分とが共重合により導入されている場合のアミド基含有ユニットの含有量は特に限定されないが、好ましくは20mol%以下であることが好ましい。20mol%以下で十分な作用を発揮できるからである。マトリックス材料が、アミド基と酸性基及び/又は塩基性基とを含む場合には、これらの合計量が50mol%以下であることが好ましい。50mol%以下であれば固相4の水に対する安定性を確保することが容易であるからである。より好ましくは30mol%以下である。30mol%を超えて配合しても配向性及び固定化量が向上しにくいからである。なお、アミド基とともに酸性基及び/又は塩基性基を含む場合において、酸性基及び塩基性基については、上記と同様の含有量を好ましく適用できる。
なお、こうした高分子材料は、その種類に応じた重合方法(懸濁重合、溶液重合等)により得ることができるものである。
なお、こうして得られる固相4の三次元形態は特に限定しない。フィルム状体、シート
状体、板状体の他、球状、不定形状、針状、棒状、薄片状等の各種の粒子形態を取ることもできる。さらに、固相4は、基板や粒子などの適当な支持体の一部又はその表面に対して固定されていてもよい。支持体としては、ガラス、シリコン、金などの無機材料、高分子材料などの有機材料であってもよい。なお、支持体上の固相の厚みは、少なくとも10nm以上であることが好ましい。10nm以上であれば、所望の部分に欠陥なく光固定化材料薄膜を作製することが容易になる。支持体上への薄膜状の固相の作製は、スピンコート、ディップコート、インクジェット、ロールを用いた方法など既存の方法を使用することができる。
(微小物体が固定された構造体)
構造体2は、こうした微小物体10が固相4に含まれる相互作用成分により所定の配向性で固相4に固定されて構成されている。微小物体10が固相4に固定化された状態とは、固相4に微小物体10が直接固定化されている場合だけでなく、微小物体10の固定化を妨げない限り、微小物体10と固相4との間に化合物が介在されて固定化された場合も包含している。例えば、こうした化合物としては界面活性剤などが挙げられる。微小物体10に対してこれらの介在性化合物が十分に小さければ(薄ければ)、固相4の相互作用成分が微小物体10に対して相互作用可能に近接される、微小物体10と固相4との相互作用は発揮される。
微小物体10が光照射により固相4に固定化された状態とは、例えば、微小物体10が固相4に固定されているその表面変形形状や表面の分子配列や異性化の状態から把握することができる。こうした表面状態は、例えば、AFMによる観察により確認することができる。また、表面にタンパク質などを固定化したかどうかは、固定したタンパク質と各種タンパク質との反応を行うことにより把握することができる。
本発明の構造体2によれば、微小物体10を所定の配向性で固相4に固定化されていることにより、微小物体10の表面状態(表面の機能)が均一でない場合、あるいは、特定の機能をその一部に有する場合、ある特定の機能を有する部分を表面に露出させるような配向性で固定することで、ランダムな向きで固定する場合に比べ、効率・感度などが高い状態での機能発現が可能である。すなわち、固相4の表面において、微小物体10の特定部位を選択的に又は優勢的に露出させることができるようになり、この結果、固相4の表面に高い特異性や選択性、さらには機能性を付与することができる。
したがって、例えば、微小物体10が酵素である場合、酵素の基質結合部位を固相4表面に露出させるような配向性(換言すれば、基質結合部位と反対側を固相4に固定する配向性)で固相4に固定化することで、高い反応性の酵素保持材料(プロテインチップなど)を得ることができる。こうしたプロテインチップは、各種の反応チップのほか、薬剤のスクリーニング用として用いることができる。
また、微小物体10が抗体の場合には、抗体の抗原認識部位(Fab部位)を固相4の表面に露出させるような配向性(換言すれば、Fc部位を固相に固定する配向性)で固相4に固定化することで、高感度かつ高効率な抗原−抗体反応が可能な抗体保持材料(抗体チップなど)を得ることができ、診断の精度やダイナミックレンジを大幅に向上させることができる。こうした抗体チップは、薬剤スクリーニングなどの研究用、疾患や健康状態などの診断用として有用である。
特に、抗体のFc部位側を固相4に固定してFab部位を露出される態様は、Fc部位が各種の抗体においておおよそ保存されているため、広く抗体あるいはその誘導体に利用できるメリットがある。さらに、Fc部位の固定の配向性を利用すれば、他の生体材料など各種の微小物体10にFc部位を保持させることで、Fc部位を利用した各種の微小物
体10について所定の配向性での固定化が可能となる。
なお、微小物体10は、所定のパターニングで固相4に対して固定されていてもよい。こうしたパターニングは、後述する光照射のパターニングによって実現できるほか、微小物体10を所定のパターニングで固相4に対して供給することによってもよい。また、固相4における相互作用成分の分布に依存することもできる。
また、本発明の構造体によれば、一旦固定した微小物体10を洗浄等に抗して安定的に保持できるため、こうした診断用として用いた場合には複数回の使用が可能である。さらに、微小物体10の固相4への供給形態(例えば、アレイ状に供給するなど)や固定化のための光照射部位を適宜組み合わせることで、多数種類の抗体やタンパク質などの微小物体を単一の固相4に容易に固定化することができる。このため、ハイスループットな検査にも好ましく用いることができる。
(光固定化用の固相材料組成物)
本発明の固相材料組成物は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有する1種又は2種以上のユニットを有する重合性体と、酸性基及び塩基性基を含有する1種又は2種以上のユニットを有する重合性体、酸性基を含有する1種又は2種以上のユニットを有する重合性体及び塩基性基を含有する1種又は2種以上のユニットを有する重合性体から選択される1種又は2種以上の重合性体とを含有することができる。この組成物をこれらの重合性体に必要な重合条件を付与することにより、光応答性成分と、酸性基及び/又は塩基性基と、を有する高分子材料を得ることができる。こうした高分子材料は、本発明の構造体や光固定化方法に用いるのに好ましい固相を提供することができる。
この組成物においては、酸性基と塩基性基との双方あるいは一方のみを有することができる。酸性基及び塩基性基のいずれかが優勢的であることが好ましく、その具体的なモル比率については、既に述べた本発明の構造体2における固相4におけるモル比率をそのまま適用することができる。この組成物は、塩基性基としてアミノ基やイミダゾール基、酸性基としてカルボキシル基を有するタンパク質の光固定化用として好ましく用いることができる。
また、本発明の固相材料組成物は、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有する1種又は2種以上のユニットを有する重合性体と、アミド基を含有する1種又は2種以上のユニットと、を含有することができる。この組成物に含まれる重合性体に所定の重合条件を付与することにより、光応答性成分とアミド基とを備える高分子材料を得ることができる。さらに、本発明の固相材料組成物は、アミド基含有ユニットとともに、酸性基及び塩基性基を含有する1種又は2種以上のユニットを有する重合性体、酸性基を含有する1種又は2種以上のユニットを有する重合性体及び塩基性基を含有する1種又は2種以上のユニットを有する重合性体から選択される1種又は2種以上の重合性体とを含有することもできる。この組成物を重合することにより、光応答性成分とアミド基と酸性基及び/又は塩基性基とを備える高分子材料を得ることができる。
この組成物においては、アミド基のほかに酸性基及び/又は塩基性基を有する場合には、酸性基及び塩基性基のいずれかが優勢的であることが好ましく、その具体的なモル比率については、既に述べた本発明の構造体2における固相4のモル比率をそのまま適用することができる。アミド基含有重合性体を有する組成物は、微小物体10がタンパク質部分を備えるときの光固定化用として好ましく用いることができる。
これらの組成物に含まれる各種重合性体は、特性基を含有するユニットを一つのみ有するモノマーのほか、ユニットを2個以上有するオリゴマー、マクロモノマー又はデンドリマーなどの中間的な分子量体とすることができる。また、これらの重合性体は、二重結合などのラジカル重合性基、重縮合基、付加重合基など、得ようとする高分子材料の種類に応じた重合性基を有することができる。
(光固定化用の高分子固相材料)
本発明の高分子固相材料は、少なくとも、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有するユニットを有する高分子材料を含むマトリックス6を有し、このマトリックス6には、酸性基含有成分及び/又は塩基性基含有成分を有することができる。こうした固相材料を用いた固相4によれば、微小物体10を所定の配向性で固相4に光固定化することができる。この固相材料における固相4、マトリックス6、高分子材料、光応答性成分、酸性基、塩基性基については、本発明の構造体2について説明したのと同様の内容を適用することができる。また、この固相材料における酸性基含有成分は、本発明の構造体2について説明した酸性基含有相互作用成分の内容を適用でき、同様に、塩基性基含有成分については、塩基性基含有相互作用成分の内容を適用できる。この高分子固相材料は、上記した本発明の固相材料組成物を重合することによって得ることができる。
この固相材料においては、酸性基含有成分は、酸性基含有ユニットとして高分子材料に含まれ、塩基性基含有成分は、塩基性基含有ユニットとして前記高分子材料に含まれていることが好ましい。酸性基及び/又は塩基性基が高分子材料の一部として含まれていることにより、高分子材料の成形加工時においても酸性基や塩基性基の分散性等が確保されやすいからである。こうした高分子固相材料に含まれる酸性基及び/又は塩基性基は、ランダムな状態で(ランダム共重合で)含まれていることが好ましい。また、この固相材料は、液状、粉状、粒状、ペレット状、フィルム状体のほか、所定の成形体形状を有することができる。基板等への適用にはフィルム状体であることが好ましい。
本発明の高分子固相材料は、少なくとも光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有するユニットを有する高分子材料を含むマトリックス6を有し、このマトリックス6には、アミド基含有成分を有することができる。こうした固相材料を用いた固相4によれば、微小物体10を容易に所定の配向性で固相4に光固定化することができる。また、固相材料には、酸性基及び/又は塩基性基を備えることもでき、その場合には、より高い配向性で微小物体10を固定化できるものとなっている。この固相材料における固相4、マトリックス6、高分子材料、光応答性成分、アミド基及びアミド基含有成分については、本発明の構造体2について説明したのと同様の内容を適用することができる。この高分子固相材料は、上記した本発明の固相材料組成物を重合することによって得ることができる。なお、このこうした固相材料においても、上記と同様の理由によって、アミド基含有成分は、アミド基含有ユニットとして前記高分子材料に含まれていることが好ましい。また、アミド基はランダムな状態で(ランダム共重合で)含まれていることが好ましい。また、この固相材料においても、上記と同様の各種形態を採ることができ、基板等への適用にはフィルム状体であることが好ましい。
(光固定化方法及び構造体の作製方法)
次に、本発明の光固定化方法及び当該光固定化方法を用いた本発明の構造体の作製方法について説明する。本光固定化方法及び作製方法では、まず、固相4と微小物体10とを準備する。これらについては既に説明したとおりである。
構造体2を作製するにあたり、所定の配向性を得るための好適な相互作用の種類や相互作用成分の種類や比率等は、予め決定しておくことができる。すなわち、固定しようとする微小物体10に対して利用可能な相互作用の種類及び相互作用成分の種類や比率を種々に変更して、所望の配向性を得ることができるように固相4に用いる相互作用の種類と相互成分の種類や比率を設定しておく。微小物体10に対して利用可能な相互作用の種類や相互作用成分の種類は、構造体2において既に説明したように、微小物体10の構造や組成から一定範囲内にあるため、こうした相互作用についての条件設定は多大な試行錯誤を要することなく実行できるものである。
例えば、微小物体10として抗体を固相4に固定化しようとする場合、抗体のFab部位を利用する用途に用いる場合(例えば、診断用等の抗体チップ)には、Fc部位と相互作用する相互作用成分を固相4に導入しておくことが好ましい。一方、Fc部位を利用する用途に用いる場合には、Fab部位と相互作用する相互作用成分を固相4に導入しておくことが好ましい。
なお、本発明によれば、種々の相互作用成分及びその配合を異ならせた固相4に対して微小物体10を光固定化し、固定した微小物体10の配向性を評価する工程を実施することにより、微小物体10の表面状態を評価する方法も提供される。固相4に付与した相互作用成分の種類や配合比等と結果として得られる微小物体10の配向状態から、微小物体10の電荷、極性、官能基の不均一性、均一性などを評価することができる。
<微小物体の供給>
まず、準備された固相4に対して微小物体10を供給する。微小物体10を固相4の表面に供給する方法は特に限定しないが、液状媒体を介して液状媒体に溶解又は懸濁させた状態で適用することが好ましい。液状媒体中に浸漬した固相4の表面に対して微小物体10を容易に展開させることができ、微小物体10たるタンパク質、細胞、微生物の機能維持や生存に最適の液状媒体中で固定化を行うことができるからである。
なお、液状媒体として、水又は水を主媒体とする組成液が特に好ましい。水を主媒体とする組成液としては、緩衝液、pHを調整した緩衝液、細胞や微生物の栄養分を溶解させた液等が挙げられる。また、液状媒体は、微小物体10と固相4との相互作用を高めるようなものを選択することもできる。例えば、液状媒体のpH、電解質濃度、極性などを調整することにより相互作用を高めることができる。こうした液状媒体としては、水、水と相溶性のある有機溶媒である水性溶媒、非水性溶媒を単独であるいは組み合わせるなどして、固相4及び微小物体10の種類に応じて適切なものを選択することができる。また、固相4と微小物体10との相互作用を高めるための上記した液性を付与するのに必要な成分を添加してもよい。さらに、例えば、界面活性剤が液状媒体に添加されていてもよい。界面活性剤が液状媒体に含有されていることで、微小物体10の分散性が向上し、微小物体10そのものの表面状態を利用しやすくなる。分散性が悪いと、ランダムな集合体として固定されるため、配向性が低下する場合もありえる。
微小物体10は、その個体ごとにバラバラに配置・固定化される態様、多数の微小物体10が特定の分布パターンに従って配置・固定化される態様、自己組織化(例えば、結晶化など)する性質を持つ微小物体10においては、多数の微小物体を自己組織化した状態において光固定化材料の表面に配置させ、固定化する態様等がある。微小物体10のパターニングには、従来公知の各種の印刷法(インクジェットなど)を用いることができる。パターニングの一例としては、微小物体10のスポットをアレイ状に供給するパターンが挙げられる。また、固相4の所定部位への微小物体10の配置には、レーザートラッピング(ただし、配置のみに用いる場合には、光応答性成分が反応しない波長域を用いる)を利用することもできる。さらに、自己組織化は、固相4への供給に先立って行ってもよいし、固相4の表面で行うようにしてもよい。
<微小物体の配向>
微小物体10に固相4に対する所定の配向性を付与するには、微小物体10と固相4の相互作用成分とが相互作用する必要があるが、微小物体10を固相4に供給することで両者の相互作用は可能となっていると推測される。微小物体10と固相4との相互作用は、既に説明したように、静電的相互作用、親水性相互作用、疎水性相互作用、水素結合等であるが、こうした相互作用を効果的に発現させるために、適宜熱などの熱力学的パラメーターを付与したり変化させたりすることもできる。また、液状媒体を乾燥により除去してもよい。微小物体10と固相4との相互作用は、必要に応じて時間をかけて行う。特に限定しないが、例えば、数秒から数十分以上とすることができる。
(光固定化工程)
固相4に対して固定化しようとする微小物体10が供給されることで、微小物体10は相互作用に基づいて固相4に配置されていると考えられる。こうした状態で固相4上の微小物体10に光照射することにより、微小物体10を所定の配向性で固相に強固に固定(光固定)することができる。ここに、光固定とは、光応答性成分を含有する固相4の表面に配した微小な物体10に光照射して固相4の表面において光異性化ないしは光変形を生じさせて固定することをいう。
光固定ではエネルギーの低い可視光の照射によっても固定が可能であるので生体分子などへの障害を抑制又は回避した固定が可能である。このため、所定の配向性で固定化される微小物体10がタンパク質などの生体材料の場合には、その立体構造や良好な活性を維持して固定化することができる。光照射による微小物体10の固相4への固定化メカニズムは必ずしも明らかではなく本発明を拘束するものではないが、以下のように考えられる。すなわち、光照射により微小物体10の周囲に発生する電場に依存して光応答性成分及び固相4において生じる微小物体10の沿った変形など微小物体10の形状に依存した何らかの変形による微小物体10に対する支持効果、微小物体10と固相4の表面との接触面積の増大によるファンデルワールス力等の付着力の増加効果等によるものではないかと考えられる。こうした固定化の結果、微小物体10が抗体などの機能を備える場合であっても、その機能性が維持されていると考えられる。
光照射による光固定化工程は、微小物体10とマトリックス6との間で十分な相互作用を生じさせた後に光照射して実施することで、効率的にかつ所定の配向性で微小物体10を光固定できる。なお、配向のために要する実質的に時間を要しない場合もあり、また、光照射を行いながら配向し固定させることもできる。したがって、微小物体10の供給と同時に光固定化工程を実施してもよい。なお、固相4表面の微小物体10への光照射は、液状媒体が存在する状態で実施することもできるし、液状媒体が存在しない状態で行うこともできる。微小物体10と固相4との相互作用が一旦形成されれば、液状媒体が除去されても配向性が維持されて光固定できる。なお、光固定化工程における光照射を液状媒体の存在下に行う場合の液状媒体は、固相4への微小物体10の供給に用いた液状媒体であってもよいし、供給時の液状媒体を除去した後に別途供給された同一又は別組成の液状媒体であってもよい。
光固定のための光照射の方法は特に限定しない。各種の伝播光、近接場光又はエバネッセント光などの任意の光が微小物体10の存在する固相4の表面又はその近傍に到達するように照射すればよい。さらに、光照射は公知の手法を用いて固相4上の一部に対して選択的に行うこともできる。例えば、固相4に対する照射光の照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与えることにより、1種又は2種以上の多数の微小物体をそれぞれ異なる特定の分布パターンに従って固定化することができる。照射光の照射領域あるいは照射強度に一定の分布を与える手段として、フォトマスクの利用及び/又は干渉光の使用が挙げら
れる。この方法により、微小物体10の固定化領域が回路等を形成するように固定化を行うことができる。
また、固相4の表面に対する微小物体10の光固定化には、レーザートラッピングを利用することもできる。すなわち、固相4の光応答性成分が反応する波長の光を集光して照射すると、集光された部分に微小物体10が捉えられ、その位置で固相4の表面に固定化される。なお、既に説明したように固相4の光応答性成分が反応しない波長の光で微小物体をレーザートラッピングし、その後、光応答性成分が反応する波長の光で微小物体を固定化することも可能である。
光固定に用いる波長域は、光応答性成分において分子構造又は分子配列の変化を生じさせる波長域であればよい。こうした波長域に関する情報は、各種の入手可能な光応答性成分について容易に取得できるか又は使用に際して確認することができる。
なお、光固定のための光照射については、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報及び特開2004−251801号公報に既に記載される照射光や光照射方法を採用することができる。光固定化については、特開2003−329682号公報、特開2004−93996号公報及び特開2004−251801号公報において本出願人が開示しており、これらの方法を本発明における光固定化についても適用することができる。
<洗浄>
微小物体10を固相4に光固定した後は、固相4の洗浄工程を実施することができる。洗浄工程を実施した配向構造体2は、そのままあるいはさらなる加工や修飾を施すことにより各種用途のデバイスとして用いることができるようになる。
以上説明したように、本発明の光固定化方法によれば、微小物体10を固相4の表面に所定の配向性で強固に固定することができる。微小物体10の固相4に対する配向性は、微小物体10に対して用いる相互作用の種類や相互作用成分の種類や比率等によって変化する。本発明の各種の形態は、こうした相互作用を利用することで、微小物体10を所望の配向性を付与して容易に固相4に固定化して、微小物体10が固相4に対して配向性を持って固定された構造体の提供及び当該構造体の利用に寄与している。
以下、本発明を、具体例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1:光固定化用固相材料の合成)
常法に従い固相の合成を行った。即ち、まず、公知のジアゾカップリング法を用いて「化10」に示す化合物を合成した。次に、公知の酸クロリドとの反応により、「化11」に示す化合物を合成した。これらの「化10」及び「化11」に示す化合物において、アゾベンゼン構造部分が光応答性成分を構成している。
上記「化11」に示す化合物と、市販のメタクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(いずれも和光純薬製)とを、表1に示す各種比率で共重合し高分子材料「化12」を合成した。ここで、メタクリル酸は酸性基含有相互作用成分であり、メタクリル酸ジメチルアミノエチルは塩基性基含有相互作用成分にあたる。
共重合反応の詳細は以下のとおりである。表1に示す各試験例及び比較例1のモノマー混合物(合計10mmol)(本発明の光固定化用固相材料組成物にあたる。)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、40mg、0.24mmol)をDMF(10ml)に溶解した。室温で30分間窒素バブリングを行った後、窒素気流下、60〜70℃で4時間撹拌して重合反応を行った。反応溶液を室温まで冷却した後に、反応溶液をメタノール(500ml)にゆっくりと滴下した。沈殿したポリマーをろ過により回収し、アセトン(10ml)に溶解した。アセトン溶液をメタノール(500ml)にゆっくりと滴下し、再度ポリマーを沈殿させた。ポリマーをろ過により回収し、40℃で一晩真空乾燥させることにより、光固定化用の固相材料を得た。得られた固相材料の共重合比は、重クロロホルム溶媒で、日本電子製の超伝導フーリエ変換核磁気共鳴装置(JNM−LA500)を用いて1H−NMRを測定し、プロトンの積分値から算出した。また、分子量は、クロロホルム溶媒で、昭和電工(株)製のGPC(ShodexGPC−101、カラム:K−800RL+K−805L×2)を用いて測定し、ポリスチレン換算の分子量を算出した。表1に光固定化材料の共重合比率と平均分子量を示す。比較例1は、相互作用性成分の導入のない固相材料である。
試験例1〜試験例3および比較例に係る固相材料の各50mgを、それぞれピリジン4mLに溶解し、これらの溶液をそれぞれスライドガラス基板上に1mLほど滴下した。そしてスライドガラス基板を4000r.p.m.で回転させて溶媒を除去し、各スライドガラス基板の表層に試験例1〜試験例3および比較例に係る均一な厚さの高分子フィルムを作製した。これらの高分子フィルムはいずれも膜厚が約40nmであった。
(実施例2:抗体の固定と配向の評価)
本実施例では、以下のようにして抗体の配向性を評価した。すなわち、Cy5標識抗体(Cy5−IgG:Anti−IgG(Fc),Mouse,Goat−Poly,Cy5[CHEMICON:AP127S])及び抗ヤギ−ウサギ抗体(anti−goat−IgG:Anti−IgG(H+L),Goat,Rabbit−Poly[Bethyl:A50−100A])の2種類の抗体を固定化し、その後、anti−goat−IgGに対しCy5−IgGを用いて抗原−抗体反応を行った。Cy5−IgGを固定した部分の蛍光強度とanti−goat−IgGに対しCy5−IgGを用いて抗原−抗体反応を行った部分の蛍光強度の比から、anti−goat−IgGのFab部位がどれだけ表面に露出しているかを見積もった。なお、Cy5−IgGを固定した部分の蛍光強度の値を、すべてのanti−goat−IgGのFab部位が表面に露出している場合の蛍光強度とした。
抗体の光固定は以下のようにて行った。各種濃度(0、10、20、50、100、2
00、300、400及び500ng/ml)のCy5−IgGおよびanti−goat−IgGのTPBS(0.01%Tween20PBS,pH=7.4)溶液を、スライドガラス基板上に作製した高分子フィルム上に1μlずつスポットした。真空中でスポットを乾燥させた後、青色LED(20mW/cm2)を用いて30分間光照射した。スライドガラスをTPBSを用いて5分間×3回洗浄した。
次に、以下の方法で、抗原−抗体反応を行った。1μg/mlのCy5−IgGを含んだ1%ゼラチンTPBSをスライドグラスの中央に40μl滴下し、ギャップカバーガラスをかぶせて反応を行った。反応温度は25℃、時間は30分である。反応後、スライドガラスをTPBSで1分間×2回洗浄した。
洗浄後の各種のスライドガラスについて蛍光強度を測定した。蛍光検出は共焦点レーザー顕微鏡(アフィメトリクス社:428ArrayScanner)を用いて行った。Cy5検出波長における蛍光強度の測定は、励起波長が633nm、検出波長が660〜680nmで行った。結果を表1に併せて示す。
表1に示すように、比較例1のCy5−IgGを固定した部分の蛍光強度とanti−goat−IgGに対しCy5−IgGを用いて抗原−抗体反応を行った部分の蛍光強度の比の値を100とすると、試験例1は280、試験例2は300、試験例3は200であった。数値が大きいほど、抗体のFabが露出して固定されている抗体の数が多いことを示している。このことから、タンパク質が有するアミノ基等の塩基性基及びカルボキシル基等の酸性基に対応して酸性基含有相互作用成分及び塩基性基含有相互作用成分を固相に導入することで、anti−goat−IgGのFab部位が表面に露出している割合が2倍以上に向上することがわかった。すなわち、IgGに所定の配向性を付与して固相に光固定化できることがわかった。
(比較例2及び3)
さらに、比較例2及び3として、親水性基(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)および疎水性基(メタクリル酸ステアリル)を導入した固相材料を合成した。親水性基の導入は「化5」に示す化合物とメタクリル酸メチルにメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを共重合することにより行った。疎水性基の導入は「化11」に示す化合物とメタクリル酸メチルにメタクリル酸ステアリルを共重合することにより行った。得られた光固定化材料の共重合比と平均分子量は表2に示すとおりであった。
実施例1と同様にして、抗体の配向の評価を行った。その結果、比較例1を100とした場合、比較例2は100、比較例3は80であった。抗体に対しては、親水性基又は疎水性基の導入のみでは、抗体の配向性を向上させることができないことがわかった。
(実施例3:光固定化用固相材料の合成)
常法に従い固相の合成を行った。まず、実施例1と同様にして、「化10」及び「化11」に示す化合物を合成した。
上記「化11」に示す化合物と、市販のメタクリル酸メチル、メタクリルアミド、メタクリル酸、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(いずれも和光純薬製)とを、表3に示す各種比率で共重合し高分子材料「化13」を合成した。ここで、メタクリル酸は酸性基含有相互作用成分に、メタクリル酸ジメチルアミノエチルは塩基性基含有相互作用成分に、メタクリルアミドがアミド基含有相互作用成分にそれぞれ該当する。
共重合反応の詳細は以下のとおりである。表3に示す試験例4〜7のモノマー混合物(合計10mmol)(本発明の光固定化用固相材料組成物にあたる。)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、40mg、0.24mmol)をDMF(10ml)に溶解した。室温で30分間窒素バブリングを行った後、窒素気流下、60〜70℃で4時間撹拌して重合反応を行った。反応溶液を室温まで冷却した後に、反応溶液をメタノール(500ml)にゆっくりと滴下した。沈殿したポリマーをろ過により回収し、アセトン(10ml)に溶解した。アセトン溶液をメタノール(500ml)にゆっくりと滴下し、再度ポリマーを沈殿させた。ポリマーをろ過により回収し、40℃で12時間真空乾燥させることにより、光固定化用の固相材料を得た。得られた固相材料の共重合比は、重クロロホルム溶媒で、日本電子製の超伝導フーリエ変換核磁気共鳴装置(JNM−LA500)を用いて1H−NMRを測定し、プロトンの積分値から算出した。また、分子量は、クロロホルム溶媒で、昭和電工(株)製のGPC(ShodexGPC−101、カラム:K−800RL+K−805L×2)を用いて測定し、ポリスチレン換算の分子量を算出した。表3に光固定化材料の共重合比率と平均分子量を示す。なお、比較のための参考例1〜4として実施例1で作製した試験例1〜3及は比較例1の固相材料を用いた。
試験例4〜7及び参考例1〜4に係る固相材料の各50mgを、それぞれピリジン4mLに溶解し、これらの溶液をそれぞれスライドガラス基板上に1mLほど滴下した。そしてスライドガラス基板を4000r.p.m.で回転させて溶媒を除去し、各スライドガラス基板の表層に試験例4〜7および参考例1〜4に係る均一な厚さの高分子フィルムを作製した。これらの高分子フィルムはいずれも膜厚が約40nmであった。
(実施例4:抗体の固定化と配向の評価)
本実施例では、以下のようにして抗体の配向性を評価した。すなわち、Cy5標識抗体(Cy5−IgG:Anti−IgG(Fc),Mouse,Goat−Poly,Cy5[CHEMICON:AP127S])及び抗ヤギ−ウサギ抗体(anti−goat−IgG:Anti−IgG(H+L),Goat,Rabbit−Poly[Bethyl:A50−100A])の2種類の抗体を固定化し、その後、anti−goat−IgGに対しCy5−IgGを用いて抗原−抗体反応を行った。Cy5−IgGを固定した部分の蛍光強度とanti−goat−IgGに対しCy5−IgGを用いて抗原−抗体反応を行った部分の蛍光強度の比から、anti−goat−IgGのFab部位がどれだけ表面に露出しているか(以下、固定化抗体活性ともいう。)を見積もった。なお、Cy5−IgGを固定した部分の蛍光強度の値を、すべてのanti−goat−IgGのFab部位が表面に露出している場合の蛍光強度とした。また、Cy5−IgGを固定化した部分の蛍光強度を抗体固定量とした。
抗体の光固定、抗原−抗体反応及び洗浄並びに蛍光強度の検出は実施例2と同様にして行った。結果を表4に示す。
表4に示すように、参考例4の固定化抗体活性と抗体固定量とをそれぞれ100とすると、参考例1〜3においては、抗体固定量はおおよそ一定にも関わらず固定化抗体活性は2倍から3倍程度にまで増大しており、酸性基及び塩基性基を固相に備えることにより、抗体の活性、すなわち、抗体のFab部位が露出された状態に配向制御されて固定化されることがわかった。また、試験例4〜7においては、抗体固定量が増加するとともに固定化抗体活性も増加していることがわかった。すなわち、アミド基含有相互作用成分を固相に導入することで、抗体固定量を増加させるとともに固定化抗体活性を増加させることができるとともに、静電的相互作用成分とアミド基含有相互作用成分とを同時に固相に導入することにより、高い固定化抗体活性を維持しつつ抗体固定化量を増加させることができることがわかった。また、これらのことから、アミド基を固相に導入することによって、抗体のFc部位との相互作用が生じたものと考えられた。
本発明の構造体の一例(a)と微小物体が配向されることなく固定化されている構造体の一例(b)を示す図。
符号の説明
2 構造体、4 固相、6 マトリックス、10 微小物体。

Claims (42)

  1. 固相に微小物体を固定化する方法であって、
    以下の(a)及び(b):
    (a)光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分、
    (b)静電的相互作用、親水性相互作用、疎水性相互作用及び水素結合から選択される1種又は2種以上の相互作用を発現する官能基を有する1種又は2種以上の相互作用成分であって、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能に配合された前記相互作用成分、
    を有する前記固相の表面又はその近傍に存在する前記微小物体に対して光照射して、前記微小物体を前記固相の表面に所定の配向性で固定化する光固定化工程、
    を備える、方法。
  2. 前記相互作用は静電的相互作用を含み、前記1種又は2種以上の相互作用成分は酸性基及び/又は塩基性基を有している、請求項1に記載の方法。
  3. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は酸性基及び塩基性基を有している、請求項2に記載の方法。
  4. 前記1種又は2種以上の相互作用成分が有する前記酸性基及び前記塩基性基はいずれか一方が優勢的である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は、前記固相のマトリックスに保持されている、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は、前記固相のマトリックスに含まれる高分子材料の一部である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記微小物体は、その表面又はその近傍における電荷の分布の不均一性を有する微小物体である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記微小物体の有する1又は2以上の官能基の分布の不均一性が前記電荷の不均一性に関連している、請求項7に記載の方法。
  9. 前記1種又は2種以上の官能基は、酸性基及び塩基性基から選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記酸性基がカルボキシル基であり、前記塩基性基がアミノ基である、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
  11. 前記1種又は2種以上の相互作用成分はアミド基を有している、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は、アミド基と静電的相互作用を発現する官能基とを有している、請求項11に記載の方法。
  13. 前記静電的相互作用を発現する官能基は、酸性基及び塩基性基から選択される1種又は2種以上である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記静電的相互作用を発現する官能基は、酸性基及び塩基性基を含む、請求項12に記載の方法。
  15. 固相に微小物体を固定化する方法であって、
    以下の(a)及び(b):
    (a)光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分、
    (b)酸性基及び/又は塩基性基を有する1種又は2種以上の相互作用成分であって、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能に配合された前記相互作用成分と、
    をそのマトリックスに保持している前記固相の表面又はその近傍に存在する前記微小物体であってその表面又はその近傍において電荷の分布の不均一性を有している微小物体に対して光照射して前記微小物体を前記固相の表面に前記所定の配向性で固定化する光固定化工程を備える、方法。
  16. 前記微小物体はタンパク質である、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 前記微小物体は抗体である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記抗体は、そのFab部位が露出されるような配向性で固定化されている、請求項17に記載の方法。
  19. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は、前記固相のマトリックスに保持されており、酸性基及び塩基性基を有するが酸性基が優勢的である、請求項18に記載の方法。
  20. 前記マトリックスは、アミド基を有する1種又は2種以上の相互作用成分を保持している、請求項15〜19のいずれかに記載の方法。
  21. 固相に微小物体を固定化する方法であって、
    以下の(a)及び(b):
    (a)光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分、
    (b)アミド基を有する1種又は2種以上の相互作用成分であって、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能に配合された前記相互作用成分、
    をそのマトリックスに保持している前記固相の表面又はその近傍に存在する前記微小物体に対して光照射して前記微小物体を前記固相表面に前記所定の配向性で固定化する光固定化工程を備える、方法。
  22. 微小物体を保持する固相を備える構造体の製造方法であって、
    請求項1〜21のいずれかに記載の前記光固定化工程を備える、製造方法。
  23. 前記光固定化工程は、前記固相に1種又は2種以上の前記微小物体のスポットをアレイ状に光固定化する工程である、請求項22に記載の製造方法。
  24. 微小物体を保持する固相を備える構造体であって、
    前記固相は、以下の(a)及び(b):
    (a)光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分、
    (b)静電的相互作用、親水性相互作用、疎水性相互作用及び水素結合から選択される1種又は2種以上の相互作用を発現する官能基を有する1種又は2種以上の相互作用成分であって、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能に配合された前記相互作用成分、
    を有し、
    前記微小物体は前記固相の表面に光照射により前記所定の配向性で固定化されている、構造体。
  25. 前記微小物体は、その表面又はその近傍に電荷の分布の不均一性を有しており、
    前記固相において前記1種又は2種以上の相互作用成分は、酸性基及び/又は塩基性基を有している、請求項24に記載の構造体。
  26. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は、酸性基及び塩基性基を有している、請求項25に記載の構造体。
  27. 前記酸性基及び前記塩基性基のいずれか一方を優勢的に有している、請求項26に記載の構造体。
  28. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は、アミド基を有している、請求項24〜27のいずれかに記載の構造体。
  29. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は前記固相のマトリックスに保持されている、請求項24〜28のいずれかに記載の構造体。
  30. 前記1種又は2種以上の相互作用成分は、前記固相のマトリックスに含まれる高分子材料の一部である、請求項24〜29のいずれかに記載の構造体。
  31. 前記微小物体はタンパク質である、請求項24〜30のいずれかに記載の構造体。
  32. 前記タンパク質は抗体である、請求項31に記載の構造体。
  33. 前記抗体は、そのFab部位が露出されるような配向性で固定化されている、請求項32に記載の構造体。
  34. 前記構造体は、抗体、糖鎖、酵素及び細胞から選択されるいずれかを固定したチップである、請求項24〜33のいずれかに記載の構造体。
  35. 微小物体の光固定化に用いる固相用の材料組成物であって、
    光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有する1又は2以上のユニットを有する重合性体と、
    静電的相互作用、親水性相互作用、疎水性相互作用及び水素結合から選択される1種又は2種以上の相互作用を発現する官能基を有する1又は2以上のユニットを有する重合性体から選択され、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能に配合された1種又は2種以上の重合性体と、
    を含有する、組成物。
  36. 微小物体の光固定化に用いる固相用の材料組成物であって、
    光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有する1又は2以上のユニットを有する重合性体と、
    アミド基を含有する1又は2以上のユニットを有する1種又は2種以上の重合性体であって、前記微小物体を所定の配向性で前記固相に固定化可能に配合された前記重合性体と、
    を含有する、組成物。
  37. 前記微小物体は、タンパク質である、請求項35又は36に記載の組成物。
  38. 微小物体の光固定化に用いる高分子固相材料であって、
    少なくとも、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有するユニットを有する高分子材料を含むマトリックスを有し、
    前記マトリックスには、静電的相互作用、親水性相互作用、疎水性相互作用及び水素結合から選択される1種又は2種以上の相互作用を発現する官能基を有する1種又は2種以上の相互作用成分であって、前記微小物体を所定の配向性で前記高分子固相材料に固定化可能に配合された前記相互作用成分を有している、材料。
  39. 前記相互作用成分は、酸性基含有成分及び塩基性基含有成分から選択される1種又は2種以上であり、これらの基を含有するユニットとして前記高分子固相材料に含まれる、請求項38に記載の材料。
  40. 微小物体の光固定化に用いる高分子固相材料であって、
    少なくとも、光により分子構造の変化又は分子配列の変化を生じる光応答性成分を含有するユニットを有する高分子材料を含むマトリックスを有し、
    前記マトリックスには、前記微小物体を所定の配向性で前記高分子固相材料に固定化可能に配合されたアミド基含有成分を有している、材料。
  41. 前記アミド基含有成分は、アミド基含有ユニットとして前記高分子固相材料に含まれる、請求項40に記載の材料。
  42. 前記材料は、フィルム状である、請求項38〜41のいずれかに記載の材料。
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