JP4887127B2 - 発泡潤滑剤封入軸受 - Google Patents
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Description
また、潤滑剤の存在下でポリウレタン原料であるポリオールとジイソシアネートとを潤滑成分中で反応させた自己潤滑性のポリウレタンエラストマーが知られている(特許文献4参照)。
また、樹脂成分である固形成分を発泡体化し、これに潤滑油を後含浸させ、軸受内部の摩擦接触部の近傍に設ける含油発泡体が知られている(特許文献5参照)。
また、このような固形潤滑剤を製造する工程では、潤滑油やグリースを確実に含浸させるために多くの製造工程が必要になり、これでは低コスト化の要求に応えることも困難である。
また、上記発泡潤滑剤封入軸受は、転がり軸受であることを特徴とする。
また、上記硬化剤が芳香族ポリアミン化合物であり、上記発泡剤が水であることを特徴とする。
また、上記混合物は、発泡・硬化が完了する前に転動体の周囲に充填されることを特徴とする。
また、発泡潤滑剤を封入することで、転走面近くに潤滑剤が存在できグリース潤滑と比較してより潤滑剤が転走面に供給されやすい。また、外部からの塵・水分等の侵入に対してはシール部材の役割をも果たす。その上、多孔質な部分を多く持つので、軸受の軽量化の点でも有利である。
また、組み立て後に潤滑剤を封入する必要がないので、生産効率が向上し、安価に製造できる。
この発泡潤滑剤は潤滑油などの保持力に優れ、外力による変形を受けても潤滑油染み出し量を必要最小限に抑制し、かつ安価に製造でき、軸受の必要箇所にのみ封入でき、軸受を効率よく製造できることがわかった。本発明はこのような知見に基づくものである。
また、本発明に用いる発泡潤滑剤において樹脂成分は、発泡により表面積が大きくなっており、染み出した余剰の潤滑油を再び発泡体の気泡内に一時的に保持することもできて染み出す潤滑油量は安定しており、また樹脂内に潤滑剤を吸蔵させるとともに気泡内に含浸させることによって非発泡の状態より潤滑油の保持量も多くなる。
また、潤滑成分と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物を発泡・硬化させるだけであるので、特別な設備も不要であり、任意の場所に充填して成形することが可能である。
また、潤滑成分と、ウレタンプレポリマーと、硬化剤と、発泡剤とを含む混合物の配合量をコントロールすることにより発泡潤滑剤の密度を変化させることができる。
活性水素基を有する化合物としては低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上の混合物として使用することができる。低分子ポリオールとしては、2価のもの例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等、3価以上のもの(3〜8価のもの)例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等が挙げられる。
本発明で用いるウレタンプレポリマーは、イソシアネート基(−NCO)含有量が 2 重量%以上のものが望ましい。イソシアネート基(−NCO)含有量がこれ未満であると、発泡性と弾力性の両立が難しくなる。
芳香族ジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートおよびその混合物、1,5-ナフチレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族または脂環式ジイソシアネートは、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、1,3-シクロブタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソプロパンジイソシアネート、2,4-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、1,3-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、1,4-ヘキサヒドロフェニルジイソシアネート、2,4′パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-パーヒドロジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、4,4′,4″-トリフェニルメタントリイソシアネート、4,6,4′-ジフェニルトリイソシアネート、2,4,4′-ジフェニルエーテルトリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが挙げられる。
また、これらイソシアネートの一部をビウレット、アロファネート、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミド等に変性したものが挙げられる。
上記ポリラクトンエステルポリオールはカプロラクトンを開環反応させて得られるポリラクトンエステルポリオールに短鎖ポリオールの存在下、ポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、アルキレンオキサイドの付加物または開環重合物が挙げられ、これらとポリイソシアネートを付加重合させたウレタンプレポリマーが好ましい。
本発明においては、分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを用いることから、イソシアネート化合物と反応して二酸化炭素ガスを発生させる水が好ましい。
また、有機金属触媒としてはスタナオクタエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマレエート、ジオクチルチンジメルカプチド、ジオクチルチンチオカルボキシレート、オクテン酸塩などが挙げられる。また、反応のバランスを整えるなどの目的でこれら複数種類を混合して用いてもよい。
潤滑油としては、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、エステル系合成油、エーテル系合成油、炭化水素系合成油、GTL基油、フッ素油、シリコーン油等が挙げられる。これらは単独でも混合油としても使用できる。
増ちょう剤としては、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、カルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられるが、特に限定されるものではない。
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p-トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
上記潤滑成分の配合割合は、混合物全体に対して、1〜90 重量%、好ましくは 5〜80 重量%である。潤滑成分が 1 重量%未満であると、潤滑成分の供給量が少なく、十分な寿命を得ることができない、または潤滑剤不足により摩擦係数が増大し摩耗の原因になる。90 重量%より多いときには固化しなくなる。
上記分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの配合割合は、混合物全体に対して、8〜98 重量%、好ましくは 20〜80 重量%である。8 重量%より少ないときは固化せず、98 重量%より多いときには潤滑成分の供給量が少なく、十分な寿命を得ることができない。
上記混合物は、市販のシリコーン系整泡剤などの界面活性剤を使用し、各原料分子を均一に分散させておくことが望ましい。また、この整泡剤の種類によって表面張力を制御し、生じる気泡の種類を連続気泡または独立気泡に制御することが可能となる。このような界面活性剤としては陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
これに対してあらかじめ発泡体を製造しておき、これに潤滑剤を含浸させる後含浸法では潤滑剤保持力が十分でなく、短時間で潤滑剤が放出され長期的に使用すると潤滑剤が供給不足となる。
(1)発泡硬化した発泡潤滑剤を適当な大きさにカットし、試料Aを得る。試料Aの重量を測定する。
(2)Aを 3 時間ソックスレー洗浄(溶剤:石油ベンジン)する。その後 80℃で 2 時間恒温槽に放置し、有機溶剤を完全に乾燥させ、試料Bを得る。試料Bの重量を測定する。
(3)連続気泡率を以下の手順で算出する。
連続気泡率=(1−(試料Bの樹脂成分重量−試料Aの樹脂成分重量)/試料Aの潤滑成分重量)×100
なお、試料A、Bの樹脂成分重量、潤滑成分重量は、試料A、Bの重量に組成の仕込み割合を乗じて算出する。
連続していない独立気泡中に取り込まれた潤滑成分は 3 時間ソックスレー洗浄では外部へ放出されないため試料Bの重量を減少させることがないので、上記の操作で試料Bの重量減少分は連続気泡からの潤滑成分の放出によるものとして連続気泡率が算出できる。
また、発泡潤滑剤は柔軟なため、フルパック仕様にしても回転トルクが大きくなりにくく、発熱を抑えることができる。また、外部からの塵や水分等の侵入に対してはシールの役割をも果たす。
形状が複雑な軸受内の任意の部位にも容易に充填することが可能であり、発泡成形体を得るための成形金型や研削工程等も不要であることから、本発明では、混合物を発泡・硬化前に軸受内に流し込み、軸受内において発泡・硬化させる方法を採用することが好ましい。該方法を採用することで、製造工程が簡易となり低コスト化が図れる。
図5に示すように軸受31は内輪32と、内輪32と同心に配置された外輪33と、これら内、外輪間に介在する複数個の転動体34と、この複数個の転動体34を保持する保持器36と、外輪33等に固定されるシール部材35とにより構成される。少なくとも転動体34の周囲に発泡潤滑剤37が封入される。
図1は、本発明の他の実施例に係るラジアル玉軸受(シール部材なし)への封入例を示す模式図である。図1に示すように、軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具の上に内輪2と、外輪3と、内、外輪間に介在する転動体4とを有する軸受1を置き、よく撹拌した発泡直前の発泡潤滑剤成分の混合物6を内輪2と、外輪3と、鉄板5とに囲まれた空間に流し込み、発泡・硬化させる。この場合、混合物6を軸受1内に流し込んだ後にさらに軸受1上部に軸受外径7より大きい鉄板5もしくはそれに類似する治具をかぶせてもよい。鉄板もしくは治具をかぶせる場合、軸受内での発泡潤滑剤の充填率が向上する。混合物6の発泡・硬化終了後に鉄板5もしくはそれに類似する治具を外して、発泡潤滑剤封入軸受を得る。
また、軸受への潤滑剤の封入には、射出成型機等を用いることもできる。この場合、軸受は金型に装着され、スクリュー内で混合された発泡潤滑剤成分はノズルより軸受内へ封入される。
80℃のポリテトラフルオロエチレン樹脂製ビーカ(直径 60 mm×高さ 150 mm )内で、硬化剤、アミン触媒および発泡剤を除く配合材料を表1に示す配合割合でよく混合した。次に、120℃で溶解したイハラケミカル社製MOCA(硬化剤)をビーカ内に投入し、よく撹拌した。続いてアミン触媒および発泡剤を投入し撹拌した。この混合物を、玉軸受6204の内部空間に充填した。数秒後に発泡反応が始まり、常温で放置し硬化させて発泡潤滑剤封入軸受の試験片を得た。この試験片を用いて以下に示す実機耐久試験を行ない、実機での耐久性を評価した。また、前述の連続気泡率の算出法に基づき発泡潤滑剤の連続気泡率を測定した。結果を表1に併記する。
潤滑油を用いずに発泡・硬化させた後、潤滑油を後含浸したこと以外は実施例1と同様に処理して後含浸型の発泡潤滑剤封入軸受の試験片を得た。この試験片を用いて以下に示す実機耐久試験を行ない、実機での耐久性を評価した。また前述の連続気泡率の算出法に基づき発泡潤滑剤の連続気泡率を測定した。結果を表1に併記する。
得られた試験片について、Fa=Fr=67 N の荷重を負荷し、100℃で 10000 rpmで回転させ、回転軸を駆動している電動機の入力電流が制限電流を超過した時(回転トルクが始動トルクの 2 倍をこえた時)までの寿命時間を測定する。
2、12、22、32 内輪
3、13、23、33 外輪
4、14、24、34 ボール(転動体)
5 鉄板
6、16、26 発泡潤滑剤成分の混合物
7 軸受外径
15、35 シール部材
21 スラスト玉軸受
25 金型
27 円筒治具
28 発泡潤滑剤
31 深溝玉軸受
36 保持器
37 発泡潤滑剤
Claims (4)
- 軸受内部に発泡潤滑剤が封入されてなる発泡潤滑剤封入軸受であって、
前記発泡潤滑剤は、潤滑成分と、分子内にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、硬化剤である芳香族ポリアミン化合物と、発泡剤である水とを含む混合物を発泡・硬化させてなり、
前記潤滑成分の配合割合は、前記混合物全体に対して 1 重量%〜90 重量%であることを特徴とする発泡潤滑剤封入軸受。 - 前記混合物は、発泡・硬化が完了する前に転動体の周囲に充填されることを特徴とする請求項1記載の発泡潤滑剤封入軸受。
- 前記発泡潤滑剤の連続気泡率が 50%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の発泡潤滑剤封入軸受。
- 前記発泡潤滑剤封入軸受は、転がり軸受であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載の発泡潤滑剤封入軸受。
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