JP4878360B2 - 鋼管の継手 - Google Patents
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その場合に、床下の狭い空間における作業であるから、長い鋼管を一度に圧入することはできず、短い鋼管を次々に接続して圧入してゆかざるを得ない。
この場合に短い鋼管を接続する方法として、溶接によって行うことが一般的である。
しかし溶接作業には熟練を要し、また漏電による事故、発熱による作業環境の悪化、などの問題がある。
その点を改善する方法として、鋼管と鋼管との間に短い筒状の継手を介在させる方法も知られている。
これは、短い筒体aの中間の外周に、鍔状に鍔板bが突設した部材である。
鋼管cを接続するに際しては、すでに地中に圧入してある下側の鋼管cの上から、鍔板bの下半分の下筒a1を挿入する。
そして接続すべき上側の鋼管cを、鍔板bの上半分の上筒a2に挿入して、継手を介在させた接続が完成する。
上方向への引張力が作用しないならば、理論的には、この構造の継手によって簡単に鋼管の接続ができそうである。
しかし、実際には次のような問題点がある。
すなわち、実際には鋼管の断面は図面で描くような真の円形を維持しておらず、製造時や保管時の影響で多少のゆがみが発生している。
また、鋼管の肉厚も必ずしも均一ではなく、多少の厚さの偏りがある。
したがってもし継手の上筒a2、下筒a1を図面通りの正確な円筒にして鋼管との寸法差をギリギリに設定して製造すると、鋼管cへの挿入が不可能となってしまう。
そこで継手の上筒a2、下筒a1とも、鋼管cの内径よりも多少小さめに形成しておき、鋼管cが容易に挿入できるように構成してある。
その結果、鋼管cと継手の間には多少の隙間が生じることになる。
この隙間によって、継手の上下の鋼管cは正確に同一の軸心上になく、多少の傾斜を生じてしまう。(図10の右図)
接続すべき鋼管cの本数が多くなれば、すなわち継手の箇所が多くなれば、傾斜が蓄積して、完成した鋼管c群は同一軸線上から大きく外れた状態で地中に圧入されていることになる。
<1> 鍔板の上部、あるいは下部の筒体の外径は、製造時の寸法誤差や、多少変形した鋼管の内径よりも十分に小さいから、簡単に挿入することができる。
<2> 本発明の継手を鋼管と鋼管の間に挿入した後に、鍔板の下側筒、上側筒ともに、その外径を拡大して鋼管の内面に強く押し付けるから、鋼管と継手との間に隙間が生じ難い。
<3> 一方の半筒体と、他方の半筒体との距離を離した場合に、凸状挿入板と、受け入れ凹部とが接する2箇所のスライド面が正確に平行な面として構成してある。そのために半筒体と半筒体の間に隙間があっても、その鉛直性は正確に維持されることになる。
<4> その結果、内径の寸法誤差のある鋼管を接続する場合に、圧入によって軸方向の力が加わっても、鋼管群はその中心軸を正確に一致させた状態で地中に圧入されてゆく。
<5> したがって、圧入後の鋼管群は正確に鉛直の姿勢で地中に位置することになり、設計通りの力を期待することができる。
本発明は、アンダーピーニング工法などにおいて地中に鋼管Bを接続しながら圧入してゆく場合、鋼管Bと鋼管Bの間に介在させる継手Aである。
ここでアンダーピーニング工法を例に挙げたのは、比較的短い鋼管Bの多数本を簡単に、かつ短時間の作業で順次接続してゆく必要がある場合の一例であって、他の用途においても利用できることはもちろんである。
本発明の継手Aの基本形状は単純な円筒である。
この円筒は、その外周の中間位置に鍔状に鍔板2を突設している。
このような円筒を、縦に二つ割りした2枚の半筒体1から構成する。
したがって、縦に二つ割りする以前の形状は、図10に示した従来の継手と同様であり、鍔板2の上の上筒1aと、鍔板2の下の下筒1bとによって構成したものである。
ただし、その平面形状は完全な円形ではなく、一部に平面部分を形成した、小判状に形成することもできる。
この小判状に形成した平面部分に、後述する凸状挿入板11と受け入れ凹部12を位置させると、両者が曲面ではなく平面においてスライドすることになって、スライド面13の機能を確実に達成させることができる。
継手Aと、接続予定の鋼管Bの関係は次の通りである。
すなわち、二つの半筒体1を組み合わせて再度、円筒に復元した場合、その外径は、接続を予定している鋼管Bの内径に対して余裕を持って小さい寸法で形成する。
また鍔板2の外径は、接続を予定している鋼管Bの内径よりも大きい寸法に形成する。
このような寸法の関係を与えて、接続予定の鋼管Bの内径ごとに継手Aを製造する。
円筒を完全に二つ割りにすると、単なる樋状の曲がり板が形成されるだけである。
しかし本発明の半筒体1は、二つ割りした端面が相互に入り組んで嵌合できるように形成してある。
すなわち一方の半筒体1の縁部には、他方の半筒体1に向けた凸状挿入板11を突設してある。
それに対して、他方の半筒体1の縁部には、一方の半筒体1に向けて、受け入れ凹部を形成してある。
そして、一方の半筒体1の凸状挿入板11が、他方の半筒体1の受け入れ凹部12に正確に挿入できる寸法に構成する。
この凸状挿入板11と、受け入れ凹部12との接するスライド面13は平行に二箇所に形成されるが、凸状挿入板11と受け入れ凹部12の形状がほとんど寸法差のないように形成しておけば、凸状挿入板11のスライド面13はスムーズに受け入れ凹部12のスライド面13に沿って滑り込む状態で挿入することができる。
このように図2に示すように、二箇所のスライド面13が正確に平行であるから、一方の半筒体1と、他方の半筒体1との間に隙間があっても、両半筒体1の間で正確な中心軸を維持させることができる。
このように本発明の継手Aにおいては、凸状挿入板11と、受け入れ凹部12との間のスライド面13に実質的に隙間がなく、凸状挿入板11が正確に受け入れ凹部12内にスライドして挿入できるから、図2の一点鎖線で示すように半筒体1と半筒体1との間で傾きが生じることがない。
二つの半筒体1の間には、軸方向を直行する方向に伸張が可能な加圧具3を配置する。
実際には、二つの半筒体1は別々の部材であるから、二つの半筒体1を一つの筒体として復元して組み立てた場合に、その筒体の中心軸と直交する、円の直径方向に配置する。
具体的には、一方の半筒体1には、その内面にナット筒31を取り付ける。
このナット筒31には、ネジを刻設したロッド32をねじ込むことが可能である。
他方の半筒体1には、その内面に受け台33を取り付ける。
そして、二つの半筒体1を一つの筒体状に組み立てた場合に、ナット筒31にねじ込んだネジロッド32の先端が、受け台33に当接するように構成する。
この加圧具3を伸張させるために、半筒体1の外部から、この加圧具3を伸張させることが可能な操作穴34を形成する。
実施例の場合にはこの操作穴34からドライバーなどを挿入して、ネジを刻設したロッド32の尾端から回転を与えてナット筒31から出入りし得るような構造を採用する。
本発明の継手Aによってその上下の鋼管Bを接続すると、上筒1aも下筒1bも鋼管Bの内部に隠れてしまう。
したがってこの操作穴34は、鍔板2部分に開口して、鋼管Bの接続後でも、外部からの操作が可能であるように形成する。
二つの半筒体1を組み合わせた場合の、半筒体1の端面間の隙間に、クサビを挿入可能な凹部を挿入口21として構成することもできる。
このように構成すると、加圧具3でいったん拡大した一方の半筒体1と他方の半筒体1の間の距離が縮まることを阻止することができる。
本発明の継手Aは二つの半筒体1から構成してあるから、使用に際しては両半筒体1を組み合わせて元の筒体に復元した状態で鋼管Bに挿入する。
その際に、ナット筒31にネジロッド32をねじ込んでおき、ネジロッド32の先端が受け台33の表面に接触する状態、あるいは挿入する状態で組み合わせて復元する。
前記したように、一方の半筒体1の凸状挿入板11が、他方の半筒体1の受け入れ凹部12に正確に挿入できる寸法で突設している。
そして凸状挿入板11と受け入れ凹部12との接触する2箇所のスライド面13は正確に平行面であるから、両半筒体1を組み立てる際には、凸状挿入板11のスライド面13は静かに受け入れ凹部12のスライド面13に沿って滑り込んで一体となる。
2箇所のスライド面13、13は正確な平行面を維持しているので、他の端面は接触している必要はなく隙間が介在していても問題はない。
凸状挿入板11と、受け入れ凹部12が接触する平行するスライド面13,13には実質的に隙間がないことが重要である。
次の本発明の継手Aの使用方法について説明する。
すでに地中に圧入、打設してある下側の鋼管Bの上から、本発明の継手Aを挿入する。(図3)
前記したように、2枚の半筒体1を組み立てて復元した筒体の外径は、鋼管Bの内径に比較して余裕を持って小さい寸法に形成してある。
したがって鋼管Bが多少変形していたり、肉厚が均一でなくとも、復元した筒体の鋼管Bへの挿入は容易である。
こうして、2枚の半筒体1を組み立てた継手Aの鍔板2を鋼管Bの上端面に係合する。
次に上側鋼管Bを、鍔板2の上まで挿入する。(図4)
その場合にも組み立てた継手Aの外径は、鋼管Bの内径に比較して余裕を持って小さい寸法に形成してあるから、上からの上側鋼管Bの挿入は容易である。
鍔板2をはさんでその上下に鋼管Bが位置すると、鍔板2のみが表面に露出している。(図5)
この鍔板2に開口した操作穴34からドライバーなどの工具を利用してネジロッド32に対してナット筒31から外部へ露出する方向の回転を与える。(図6)
すると二つの半筒体1の間に距離が強制的に拡大される。
その結果、二つの半筒体1を組み立てて復元した筒体の外径が拡大し、上下の鋼管Bの内面に強力に押し付けられる。
その場合に前記したように、凸状挿入板11と受け入れ凹部12との接触する2箇所のスライド面13は正確に平行面であるから(図2)、両半筒体1間の距離が離れる際には、凸状挿入板11のスライド面13は静かに受け入れ凹部12のスライド面13に沿って滑り出してゆく。
このように2箇所のスライド面13、13は正確な平行面を維持しているので、一方の半筒体1と他方の半筒体1とは1本の中心軸を中心にしてほぼ同心円状に拡大を続ける。
その拡大力が大きければ、継手Aのわずかな変形、鋼管のわずかな変形によって、各鋼管Bの内面と継手Aの外面との間の隙間がほとんどなくなり、上下の鋼管Bは、正確な同一軸線を維持することができる。
さらに拡大後に、クサビの挿入口21に、テーパー状のクサビを挿入しておけば、拡大状態が戻ることはない。
この状態で上側の鋼管Bの上端から加圧すると、上下の鋼管Bは正確な中心軸を維持して加圧力を受け、鉛直線を維持して地中に圧入される。
こうして、本発明の継手Aの使用することにより、正確な鉛直線を維持した鋼管B群を簡単に形成することができる。
以上の構造は、ナット筒31および受け台33を各半筒体1の内面に直接固定した構造について説明した。
しかし図8、図9に示すように、それらを直接、半筒体1の内面に固定せず、ナット筒31および受け台33を複数本の傾斜材35を介して各半筒体1の内面に固定することもできる。
傾斜材35とは丸棒や角材、板片、曲面板などによって構成する。
そのように傾斜材35でナット筒31や受け台33を取り付けると、加圧具3の伸張による力は、傾斜材35の取り付け方向に向けて作用する。
したがって傾斜材35の端部を、半筒体1の端部に近い位置に取り付けておけば、拡大する力は半筒体1の端部に作用して、内側から鋼管Bを加圧して隙間の発生をより効率よく阻止することができる。
傾斜材35は、棒状の脚部材ではなく、山型や樋状に折り曲げた板によって構成することも可能である。
前記の実施例は半筒体1の平面形状を円形に形成した場合であった。
しかし、その平面形状は完全な円形ではなく、一部に平面部分を形成した、小判状に形成することもできる。
この小判状に形成した平面部分に、凸状挿入板11と受け入れ凹部12を位置させると、両者が曲面ではなく平面においてスライドすることになって、スライド面13の機能を確実に達成させることができる。
B:鋼管
1:半筒体
2:鍔板
3:加圧具
Claims (5)
- アンダーピーニング工法などにおいて地中に鋼管を接続しながら圧入してゆく場合の鋼管と鋼管を接続する継手であって、
円筒の外周の中間位置に、鍔状に鍔板を突設した円筒を、縦に二つ割りした半筒体の2枚から構成し、
一方の半筒体の縁部には、他方の半筒体に向けた凸状挿入板を突設し、
他方の半筒体の縁部には、一方の半筒体に向けた受け入れ凹部を形成し、
凸状挿入板と、受け入れ凹部との接触する、平行したスライド面には実質的に寸法差がない状態で、凸状挿入板を受け入れ凹部に挿入できる寸法に構成し、
二つの半筒体の間には、筒体の軸方向と直行する方向に伸張が可能な加圧具を配置し、
鍔板には、半筒体の外部から加圧具を伸張するための操作穴を形成し、
加圧具を伸張することによって、両半筒体間の距離を離して半筒体を鋼管の内面に押し付け、その結果、鋼管群の鉛直性を維持できるように構成した、
鋼管の継手。
- 加圧具が、ネジを刻設したロッドであり、
半筒体の外部から、このネジに回転を与え得るように構成した、
請求項1記載の鋼管の継手。
- 二つの半筒体を組み合わせて加圧具で半筒体間の距離を離した後に、
半筒体の端面間の隙間に、クサビを挿入可能に構成した、
請求項1記載の鋼管の継手。
- 加圧具を、半筒体の内面に直接固定せず、
傾斜材を介して半筒体の内面に固定した、
請求項1記載の鋼管の継手。
- 半筒体を組み立てた平面形状を円形ではなく、一部に平面部分を形成した、小判状に形成し、
この小判状に形成した平面部分に、凸状挿入板と受け入れ凹部を位置させた、
請求項1記載の鋼管の継手。
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