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JP4867085B2 - 記録液およびインクジェット記録方法 - Google Patents

記録液およびインクジェット記録方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録液に関し、詳しくは、特にインクジェット用記録液または筆記具用記録液に適した記録液およびインクジェット記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録用の記録液(インクジェット記録液)としては、水性媒体中に酸性染料や直接染料が溶解された水性記録液(インク)や油溶性染料を有機溶剤中に溶解した溶剤系記録液が使用されてきた。溶剤系記録液は、溶剤を使用するために環境安全面で問題があり、オフィスや家庭などでの使用には適さない等の理由で用途が限定されている。オフィス用や家庭用のインクジェットプリンタに使用される最も一般的な水性記録液においては、水溶性色素(染料)を使用しているため、印字物の耐水性や耐光性が不十分であるという問題がある。そして、この様なことはインクジェット記録液のみならず、筆記具用記録液についても同様である。
【0003】
上記の問題を解決するため、水性媒体中に、色材として耐水性および耐光性に優れるカーボンブラック等の顔料を分散した記録液が一部で使用されているが、従来の記録液は、特に、印字物の耐擦性の点で不十分であり、印字物を蛍光マーカーなどで擦った場合に汚れを生じる等の問題がある。
【0004】
上記の問題を解決するため、バインダーとして種々の高分子を添加した記録液が検討されているが、粘度の上昇などの理由により吐出安定性が損なわれ、結果的に、記録液の吐出安定性、印字物の印字濃度、耐擦性および耐マーカー性の全てを満足する記録液は未だ得られていない。特に印字物の掲示などを目的とする場合は、紙や樹脂フィルム等の支持体表面にインク受容層を具備した専用記録シートに対してインクジェット方式により記録する記録方法が採用されつつある。この場合、良好な吐出性と保存安定性を得ようとすると、表面の平滑ないわゆる光沢紙では印字物の耐擦性や光沢が不十分となり、表面粗度の高いいわゆるマット紙では印字物の印字濃度が不十分となる問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、保存安定性や吐出性に優れ、特にインクジェット記録用または筆記具用として、専用光沢紙、専用マット紙、普通紙などに記録した場合にも、印字物の印字濃度、耐擦性、耐マーカー性、耐水性、耐光性などに優れる記録液を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記の記録液を使用したインクジェット記録方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々検討した結果、顔料分散記録液に特定の高分子を含有させ、且つ、当該記録液の表面張力の範囲を最適化させることにより、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の要旨は、少なくとも、顔料(a)と、ウレタン系樹脂、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体を構成単位の一部とする重合体の群から選択され、且つその遊離酸の酸価が55〜350mgKOH/gである高分子(b)とを含有し、表面張力が25〜54dyne/cmであることを特徴とする記録液に存する。そして、本発明の第2の要旨は、支持体の少なくとも片面にインク受容層が設けられて成る記録用シートに上記の記録液を使用して記録することを特徴とするインクジェット記録方法に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明で使用する顔料(a)について説明する。本発明においては、有機顔料および無機顔料の何れであってもよく、これらの具体例は次の通りである。
【0009】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、114、128、129、151、154等が挙げられる。マゼンタインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、C.I.48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、123、168、184、202等が挙げられる。シアンインクに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:34、16、22、60、4、60等が挙げられる。
【0010】
以上の他、C.I.ピグメントレツド209、122、224、177、194、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.バットバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、23、37、C.I.ピグメントグリーン36、7、C.I.ピグメントブルー15:6、209等も使用できる。
【0011】
また、本発明おいては、顔料として、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の各種のカーボンブラックが使用できる。これらの中では、チャンネルブラック又はファーネスブラックが好ましく、特にファーネスブラックが好ましい。
【0012】
上記のカーボンブラックのDBP吸油量は、印字濃度の観点から、通常60ml/100g以上であるが、好ましくは100ml/100g以上、更に好ましくは140ml/100g以上である。揮発分は、通常8重量%以下、好ましくは4重量%以下である。pHは、通常1〜14とされるが、記録液の保存安定性の観点から、好ましくは3〜11、更に好ましくは6〜9である。BET比表面積は、通常100m2/g以上とされるが、好ましくは150〜600m2/g<更に好ましくは260〜500m2/gである。1次粒子径は、通常30nm以下とされるが、好ましくは20nm以下、更に好ましくは16nm以下、特に好ましくは15nm以下である。ここで、DBP吸油量はJIS K6221 A法で測定した値、揮発分はJIS K6221の方法で測定した値、1次粒子径は電子顕微鏡による算術平均径(数平均)のことである。
【0013】
以上の様なカーボンブラックの具体例としては、「Color Black FW1」、「FW2」、「FW2V」、「FW18」、「FW200」、「SpecialBlack 6」、「Color Black S170」(以上デグッサ製品)、「CONDUCTEX975ULTRA」(コロンビアン製品)等が挙げられる。
【0014】
また、本発明においては、上記の顔料を化学的に処理したもの(酸化処理、フッ素化処理など)、分散剤、界面活性剤などを物理的または化学的に結合させたもの(グラフト化処理、分散剤を分散前に予め吸着させたもの等)等を使用することが出来る。この様なものの具体例としては、Cab-o-jet 200またはCab-o-jet 300(以上キャボット社製、商品名)等が挙げられる。本発明においては、上述した顔料の中では、特にカーボンブラックが好適に使用される。
【0015】
次に、本発明で使用する、分子内にアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合から成る群から選ばれる結合を一つ以上有し且つ遊離酸の酸価が55〜350mgKOH/gである高分子(b)について説明する。
【0016】
分子内にアミド結合を有し且つ遊離酸の酸価が55〜350mgKOH/gである高分子としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン等のアミド結合を有する単位と(メタ)アクリル酸などの酸基を有する単位とを重合して得られる高分子の他、主鎖にアミド結合を有し且つ側鎖に酸基を有する様に合成された高分子などが挙げられる。これらの高分子は他の構成単位との共重合体として使用することが耐擦性および耐マーカー性の点で好ましい。中でも疎水性基を有する高分子が好ましい。なお、上記の(メタ)アクリルアミドとはメタクリルアミド及び/又はアクリルアミドのことを指し、(メタ)アクリル酸とはメタクリル酸及び/又はアクリル酸を指す。
【0017】
上記の疎水性基としては、置換されていてもよいフェニル基、ベンジル基、ナフチル基などの芳香環を有する有機基、炭素数4以上であって且つ枝分かれ又は置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基などが挙げられる。中でも、炭素数が4〜10の有機基および/または芳香環を有する有機基が好ましい。疎水基を有する単量体の具体例としては、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
また、特に、遊離酸の酸価が100〜350mgKOH/gである高分子(b)の具体例としては、アクリルアミド/エチルヘキシルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、ジメチルアクリルアミド/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、ジアセトンアクリルアミド/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体、メタクリルアミド/スチレン/アクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0019】
アミド結合を有する単量体の具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド以外にジエチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ジイソプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体および/またはメタクリルアミド誘導体などが使用できるが、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、モノメチルアクリルアミド、モノメチルメタクリルアミドが保存安定性、吐出安定性の点で好ましい。
【0020】
高分子中におけるアミド結合を有する単量体の割合は、耐擦性および吐出性の観点から、通常10mol%以上、好ましくは10〜50mol%である。高分子中における疎水性単量体の割合は、耐マーカー性の観点から、通常10mol%以上、好ましくは20mol%以上、更に好ましくは20mol%〜70mol%である。高分子中におけるアミド結合を有する単量体の割合(mol%)と疎水性単量体の割合の比(mol%)は、保存安定性および吐出性の観点から、通常1/15以上、好ましくは1/5以上、更に好ましくは1/3以上である。
【0021】
分子内にウレタン結合を有し且つ遊離酸の酸価が55〜350mgKOH/gである高分子としては、例えば、主として、ジイソシアネート化合物と、ポリエーテルジオール類、ポリエステルジオール類、ポリカーボネートジオール類などのジオール化合物と、カルボン酸基、スルホン酸基などの酸基含有ジオールとを反応して得られる水溶性ないしは水分散性の各種のウレタン系樹脂(脂肪族系ウレタン樹脂、芳香族系ウレタン樹脂、エステル系ウレタン樹脂、エーテル系ウレタン樹脂、カーボネート系ウレタン樹脂など)が挙げられる。
【0022】
上記のジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変成物など)等が挙げられる。
【0023】
上記のジオール化合物とは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルジオール、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等のポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。特にポリエーテル系またはポリエステル系のジオール化合物が好ましい。
【0024】
上記の酸基含有ジオールとしては、例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸などが挙げられる。特にジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0025】
ウレタン系樹脂はプレポリマー法によって合成してもよく、その際、低分子量のポリヒドロキシ化合物を使用してもよい。低分子量のポリヒドロキシ化合物としては、上記のポリエステルジオールの原料として挙げたグリコール及びアルキレンオキシド低モル付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、そのアルキレンオキシド低モル付加物などが挙げられる。
【0026】
また、ウレタンプレポリマーは、ジメチロールアルカン酸に由来する酸基を中和した後または中和しながら水延長またはジ若しくはトリアミン延長することが出来る。アミン延長の際に使用するポリアミンとしては、通常ジアミン又はトリアミンが挙げられる。また、その具体例としてはヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等が挙げられる。上記の中和の際に使用する塩基としては、例えば、ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、モルホリン、アンモニア、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0027】
分子内にウレア結合を有し且つ遊離酸の酸価が55〜350mgKOH/gである高分子は、上記の水延長またはジ若しくはトリアミン延長により、ウレタン結合およびウレア結合を有する高分子として得ることが出来る。また、分子内にウレア結合のみ有する高分子の場合は、例えば、ジイソシアネートと酸基含有ジアミンとの反応によって得ることが出来る。
【0028】
本発明において、高分子(b)としては、ウレタン系樹脂が好ましく、特に、エステル系、エーテル系または芳香族系のウレタン樹脂が好ましい。上記の各高分子(b)は、Li、Na、K等のアルカリ金属塩、アンモニア、ジメチルアミン、(モノ、ジ、トリ)エタノールアミン等の有機アミン塩などの形で使用できる。
【0029】
本発明で使用する上記の高分子(b)の遊離酸の酸価は、前述の通り、55〜350mgKOH/gであるが、記録液の保存安定性および吐出安定性を一層高める観点から、酸価の下限は、好ましくは60mgKOH/g、更に好ましくは65mgKOH/gであり、酸価の上限は、好ましくは330mgKOH/g、更に好ましくは300mgKOH/gである。また、普通紙(および専用紙)が使用される用途(例えばデスクトップ用)に利用できる高分子(b)の遊離酸の酸価は、好ましくは100〜350mgKOH/gである。更に、この場合の酸価の下限は、好ましくは120mgKOH/g、更に好ましくは150mgKOH/gであり、酸価の上限は、好ましくは330mgKOH/g、更に好ましくは300mgKOH/gである。一方、専用紙のみが使用される用途(例えばラージフォーマット用)に利用できる高分子(b)の遊離酸の酸価は好ましくは55〜150mgKOH/gである。更に、この場合の酸価の下限は、好ましくは60mgKOH/g、更に好ましくは65mgKOH/gであり、酸価の上限は、好ましくは130mgKOH/g、更に好ましくは100mgKOH/gである。また、上記の高分子(b)の重量平均分子量は、吐出安定性の観点から、通常30万以下、好ましくは5000〜4万5000、更に好ましくは5000〜3万、特に好ましく5000〜2万である。
【0030】
本発明に係る記録液には種々の添加剤を使用することが出来、例えば、各種の陰イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、水溶性高分子などが挙げられる。
【0031】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類、アルカンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物類、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類、N−メチル−N−オレオイルタウリン酸塩、αーオレフィンスルホン酸塩類などが挙げられる。
【0032】
非イオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、保存安定性、印字濃度の点から、エチレンオキサイド構造またはプロピレンオキサイド構造を有するものが好ましく、その中でもHLBが9〜17、特に10〜16のものが更に好ましい。
【0033】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アミノポリオキシエチレン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ナフトールエチレンオキシド付加物、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0034】
一方、陽イオン性界面活性剤および両性界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルベタイン類、アミノキサイド類が挙げられる。
【0035】
その他、前記の高分子(b)と共に、それ以外の各種水溶性高分子を併用してもよい。
【0036】
アニオン性水溶性高分子としては、記録液の保存安定の観点から、遊離酸の形での酸価が通常150mgKOH/g以上、好ましくは200mgKOH/g以上、更に好ましく250mgKOH/g以上のものが好適である。更に、疎水性基を有する共重合体は、カーボンブラックの分散安定性、印字物の耐水性および耐擦性の点で好ましい。
【0037】
高分子中の疎水性基としては、置換されていてもよいフェニル基、ベンジル基、ナフチル基などの芳香環を有する有機基、炭素数4以上であって且つ枝分かれ又は置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基などが挙げられるが、中でも芳香環を有する有機基が好ましい。
【0038】
本発明で使用するアニオン性水溶性高分子としては、具体的には、(α−メチル)スチレン/マレイン酸共重合体、(α−メチル)スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、(α−メチル)スチレン/(メタ)アクリル酸エステル/(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル/(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル/マレイン酸共重合体および/またはこれらの塩なとが挙げられるが、好ましくは(α−メチル)スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体である。ここで、(α−メチル)スチレンとはα−メチルスチレン及び/又はスチレンのことを指し、(メタ)アクリル酸とはメタクリル酸および/またはアクリル酸のことを指す。
【0039】
また、本発明で使用するアニオン性水溶性高分子は、ブロックポリマー、グラフトポリマー、ランダムポリマーの何れでもよいが、主に製造コストの点から、グラフトポリマー又はランダムポリマーが好ましく、特にランダムポリマーが好ましい。また、重量平均分子量は、吐出安定性の観点より、5万以下が好ましく、1万5千以下が更に好ましく、1万以下が特に好ましい。更に、酸価が150mgKOH/g以上の共重合体は、Li、Na、K等のアルカリ金属塩、アンモニア、ジメチルアミン、(モノ、ジ、トリ)エタノールアミン等の有機アミン塩などの形で使用できる。
【0040】
以上の様な高分子または高分子溶液の市販品としては、ジョンソンポリマー社製の「ジョンクリル67」、「678」、「680」、「682」、「690」及び/又はその塩、「ジョンクリル52」、「57」、「60」、「62」、「63」、「70」、「354」、「501」、「6610」等が挙げられる。
【0041】
本発明の記録液の媒体としては、通常、水を主体とする水性媒体が使用されるが、この場合、水に水溶性有機溶剤を添加して使用するのが好ましい。
【0042】
上記の水溶性有機溶剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−プロパンジオール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(具体例:和光純薬社製「#200」、「#300」、「#400」、「#4000」、「#6000」)、グリセリン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリノン、チオジグリコール、2−ピロリドン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ネオペンチルアルコール、トリメチロールプロパン、2、2−ジメチルプロパノール等が挙げられる。
【0043】
本発明においては、記録液の表面張力を下げ、インクの紙面への浸透速度、記録物の乾燥速度を向上させるため、低分子量のノニオン性界面活性剤を使用することが出来る。
【0044】
上記の低分子量のノニオン性界面活性剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−アミルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−sec−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンのエチレングリコール付加物(具体例:リポニックEG−1(リポケミカル社製)等)、アセチレングリコール類のエチレングリコール付加物(具体例:サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485(日信化学工業製)、アセチレノールEH、アセチレノールEL(以上、川研ファインケミカル製)等が挙げられる。
【0045】
低分子量のノニオン性界面活性剤の使用量は、記録液100重量部に対し、通常0.5〜50重量部、好ましくは2〜30重量部、更に好ましくは5〜20重量部である。記録液の表面張力は、低分子量のノニオン系界面活性剤の種類および使用量により適切に制御されるが、本発明の記録液の表面張力は25〜54dyne/cmの範囲にする必要がある。表面張力が54dyne/cmより大きくなると、記録液として印字した場合に、被記録材への記録液の浸透が遅くなる結果、印刷スピードを遅くせざるを得なくなるという不具合が発生する。また、記録液の表面張力が25dyne/cmより小さい範囲では被記録材への記録液の浸透が大きくなりすぎるために、印字濃度が損なわれる。
【0046】
そして、上記の範囲のうち、記録液の表面張力が25dyne/cm以上37dyne/cm未満では、記録液の保存安定性、耐擦性の点で、高分子(b)として、ウレタン系樹脂が好適に使用される。また、記録液の表面張力が37dyne/cm以上54dyne/cm未満である場合は、高分子(b)として、アクリルアミド誘導体および/またはメタクリルアミド誘導体を構成単位の一部とする重合体が好適に使用される。
【0047】
また、印刷用紙の種類から見ると、前述の普通紙(および専用紙)に使用される様な用途(例えばデスクトップ用)の場合、主に記録液の印字濃度の点で、記録液の表面張力は、通常37dyne/cm以上、好ましくは40dyne/cm以上、更に好ましくは40〜50dyne/cmの範囲であり、また、前述の専用紙のみに使用される様な用途(例えばラージフォーマット用)の場合は、印字濃度、印字速度の点で、記録液の表面張力は、通常37dyne/cm未満、好ましくは35dyne/cm以下、更に好ましくは30〜35dyne/cmの範囲である。
【0048】
本発明の記録液には、上記の他、防腐剤、防黴剤、殺菌剤、pH調整剤、尿素などの他の添加剤を必要に応じて使用してもよい。
【0049】
本発明の記録液は、公知の方法に従い、媒体中にて前記の高分子(b)及び必要な前記の添加成分の存在下に顔料(a)を分散処理して高濃度の分散液を得、次いで、得られた分散液に媒体を添加して濃度調整を行って記録液を調製する方法(マスターバッチ法)又は媒体中にて高分子(b)及び必要な前記の添加成分の存在下に顔料(a)を分散処理して記録液を調製する方法によって得られる。上記のマスターバッチ法は、分散処理が高濃度で行われるために効率的である。
【0050】
分散処理に使用する分散機としては、分散機としては、ボールミル、ロールミル、サンドグラインドミルの他、メディアを使用せずに粉砕処理できるナノマイザー、アルティマイザー等のジェットミルが使用される。特に、サンドグラインドミル又はメディアに由来する汚染の少ないジェットミルが好ましい。本発明においては、上記の分散機による摩砕・分散処理の後、濾過機または遠心分離機により粗大粒子を除去する。
【0051】
顔料(a)の使用量は、記録液全重量に対し、通常1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、更に好ましくは2〜6重量%である。分子内にアミド結合、ウレタン結合、ウレア結合から成る群から選ばれる結合を一つ以上有し且つ酸価が55〜350mgKOH/gである高分子(b)の使用量は、顔料(a)の重量に対し、通常5〜200重量%、好ましくは8〜100重量%、更に好ましくは8〜70重量%である。また、上記の水溶性有機溶剤の使用量は、記録液の保存安定性の観点から、記録液中の割合として、通常5〜30重量%、好ましくは5〜20重量%、更に好ましくは8〜20重量%の範囲である。
【0052】
記録液中の顔料の平均粒径は、分散安定性、吐出安定性、記録濃度の観点から、通常0.01〜0.3μm、好ましくは0.05〜0.2μm、更に好ましくは0.1〜0.2μmの範囲である。顔料の最大粒径は、分散安定性、吐出安定性の観点から、5μm以下であることが好ましい。また、記録液中の顔料の分散粒径分布における標準偏差は、記録液の保存安定性、吐出安定性、記録濃度の観点から、通常70nm以下、好ましくは5〜60nm、更に好ましくは10〜50nmとされる。
【0053】
ただし、上記の平均分散粒径および分散粒径分布は、粒度分布計:日機装(株)社製品「マイクロトラックUPA150」で測定した値とする。
【0054】
本発明の記録液は、インクジェット用および筆記具用に止まらず、他の用途の記録液として使用することも出来る。本発明の記録液は特にインクジェット記録用に好適である。そして、被記録材は、セルロース、填料、サイズ剤などから成る一層構造の普通紙と、支持体の少なくとも片面にインク受容層が設けられて成る多層構造の専用紙に大別されるが、本発明の記録液は、全ての被記録材(普通紙、リサイクル紙、インクジェット専用紙(コート紙、光沢紙等)、インクジェット専用フィルム(コートフィルム、光沢フィルム等)、OHPフィルム等)に使用できる。
【0055】
次に、本発明に係るインクジェット記録方法について説明する。本発明においては、オンデマンド方式、コンティニュアス方式、ピエゾ方式、サーマル方式などのあらゆるタイプのインクジェット記録方法を採用することが出来る。
【0056】
本発明においては、支持体の少なくとも片面にインク受容層が設けられて成る記録用シートを使用する。
【0057】
支持体としては、化学パルプ、機械パルプ、古紙パルプ等の木材パルプと顔料から成る主成分に、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの添加成分を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造した原紙が使用される。また、原紙の上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙の他、ポリオレフィン等の樹脂層を設けたものも使用できる。更に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂やこれらの混合物から成るフィルム(又はシート)であってもよい。これらの支持体は、記録目的、記録画像の用途、インク受容層との密着性などを考慮して適宜選択される。
【0058】
インク受容層は、支持体の表面に無機微粒子(白色顔料)が分散されたバインダ樹脂を塗布することによって形成される。
【0059】
無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、合成非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム、アルミナゾル、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。また、酸化アルミニウム水和物、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物などの金属酸化水和物から成るカチオン変性剤で被覆されたコロイダルシリカを使用することも出来る。これらの無機微粒子は、2種以上を併用してもよい。なお、無機微粒子の平均粒子径は、光沢紙とマット紙とによって異なるため、それぞれ、適切な範囲から選択される。
【0060】
バインダ樹脂として、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合ラテックス類、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体などのアクリル系重合ラテックス類、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合ラテックス類、これらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合ラテックス類、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、シリル変性ポリビニルアルコールの他、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化性合成樹脂が挙げられる。
【0061】
また、本発明において、色材としてのカーボンブラックの定着性を高める目的でカチオン性有機物質を併用することが出来る。斯かるカチオン性有機物質としては、例えば、4級アンモニウム塩、アルキルアミン等のアミン類、アミド類などが挙げられる。また、この様なカチオン性残基を側鎖に有する高分子もカチオン性有機物質として使用することが出来る。
【0062】
更にその他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤などを適宜配合することが出来る。
【0063】
インク受容層の形成は、各種ブレードコータ、ロールコータ、エアーナイフコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ、カーテンコータ、ショートドウェルコータ、サイズプレス等の公知の各種装置使用して行われる。
【0064】
インク受容層は多孔質層を形成しているのが好ましい。多孔質層の平均細孔径は、印字物の印字濃度および耐擦過性の観点から、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μmである。ここで、平均細孔径とは、記録シート表面の走査型電子顕微鏡写真を複数の倍率で撮影し、スキャナー入力法でデジタル化した後、コンピュータ画像解析によって抽出された各空隙部分の面積と等しい面積を有する円の直径(等面積円径)の分布を算出して求めた、算術平均径(数平均)をいう。
【0065】
本発明に係る前述の記録液は、表面粗度の比較的高いマット調のインク受容層を具備した記録用シートに対して特に有用である。従って、上記のインク受容層表面のS.A.D.(Surface Area Difference)は、通常50以上、好ましくは60以上、更に好ましくは70以上とされる。この場合、極めて印字濃度および耐擦過性の優れた印字物を得ることが出来る。
【0066】
上記のS.A.D.とは、表面の粗度を表す指標の一つであり、具体的には表面の比表面積を表すものであり、下記の式(I)で定義される。本発明においては、下記の表1に示す条件でS.A.D.を測定して算出する。但し、式(I)中、Siは隣接した3つのデータポイントによって形成された全ての三角形の面積、PiはSiをXY平面に投影した際の面積、ΣSiは全てのsiの和、ΣPiは全てのPiの和を表す。
【0067】
【数1】
S.A.D.={(ΣSi/ΣPi)−1}×100(%)
【0068】
【表1】
(測定方法)
装置:Scanning Probe Microscope
機種:Digital Instruments 社製 NanoScope III
Scanner:J-Head
測定領域:1μm×1μm
ピクセル数:512×512
Scan Rate:1.0Hz
測定モード:Tapping AFM
探針:デジタルインスツルメンツ社製 NCH−W
【0069】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。以下の諸例において「部」及び「%」は、特に断りがない限り重量基準である。また、使用したカーボンブラック並びに物性の測定および評価方法は次の通りである。
【0070】
【表2】
Figure 0004867085
【0071】
(1)印字試験:
インクジェットプリンタに記録液を充填し、インクジェットプリンタ専用紙(マット紙、光沢紙)及び/又は普通紙(コピー用紙)にベタ印字して次の3段階の基準で評価した。
【0072】
【表3】
○:印字抜けがなく且つエッジ部の品位も良好な印字物が得られた。
△:微かに印字抜けがあるが実用上問題ない。
×:印字抜けが著しい。
【0073】
(2)印字濃度評価:
上記の印字試験で得た印字物の濃度をマクベス濃度計(RD914)を使用して測定した。数値が大きいほど印字濃度が良好であることを示し、1.5以上であれば合格と判定した。
【0074】
(3)耐擦性試験:
上記の印字試験で得た印字物において、記録液が乾燥・定着した後に印字ベタ部を金属製スプーンで軽く擦り、次の3段階の基準で記録液の耐擦性を評価した。
【0075】
【表4】
○:記録液の剥がれがなく被記録材表面が露出しない。
△:微かに記録液の剥がれがあるが実用上問題ない。
×:記録液の剥がれが著しい。
【0076】
(4)耐マーカー試験:
上記の印字試験で得た印字物において、印字試験後24時間後に文字部を黄色の市販蛍光マーカー(ZEBRA社製品OPTEX)でなぞり、次の3段階の基準でインクの耐マーカー性を評価した。
【0077】
【表5】
○:マーカーによって擦られた文字部の汚れが殆どない。
△:マーカーによって擦られた文字部の汚れが微かにあるが、実用上問題ない。
×:マーカーによって擦られた文字部の汚れが著しい。
【0078】
(5)分散粒径分布測定:
イオン交換水で記録液を希釈して粒度分布計(日機装(株)社製品「マイクロトラックUPA150」)にて分散粒径分布の測定を行った。
【0079】
(6)インク受容層の平均細孔径および白色顔料の平均粒子径の測定:
先ず、記録シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(引き伸ばし後の倍率150倍)をスキャナから360dpiで入力し、コンピュータ画像処理を行いデジタル画像化した。一画素の値は0.465μmに対応した。512×512画素の6枚の画像を同様に処理し、合計1723個の細孔(空隙部)を抽出した。抽出された各細孔の面積と等面積を有する円の直径(等面積円径)を求めて、その分布から平均細孔径(数平均値)を算出した。印字試験に供した市販のインクジェット記録専用紙についての測定結果を表9に示す。
【0080】
(7)インク受容層表面のS.A.D.の測定:
インク受容層表面の5点(5領域)について本文に記載の方法で測定し、その平均値を採用した。印字試験に供した市販のインクジェット記録専用紙についての測定結果を表9に示す。
【0081】
(8)表面張力測定:
記録液界面張力は、ウイルヘルミー型表面張力測定機「CBVP−Z」(協和界面科学社製)を使用して測定した。
【0082】
高分子化合物の合成例1
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管、攪拌装置を取り付けた4口フラスコにエタノール200部を入れ、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)2部を加え、窒素気流下80℃で還流加熱した。この反応容器に、ジメチルアクリルアミド25部、ベンジルメタクリレート44部、メタクリル酸31部、ラウリルメルカプタン5部の混合物を2時間に亘って滴下した。滴下終了後、AIBNを0.5部添加して4時間重合を行った。次いで、エタノールを除去して高分子化合物を得た。
【0083】
上記の高分子化合物の酸価を測定するために、試料1gを採り、水/エタノール(50g/50g)の混合溶媒に溶解した後、0.1NKOH水溶液で中和滴定を行った。滴定はJIS K0113に記載の電位差滴定方法により行い、終点はJIS K0113 5.2.2に記載の変曲点法により決定した。滴定に必要としたKOHの量を酸価とした。その結果、上記の高分子化合物の酸価は200mgKOH/gであった。
【0084】
次に、冷却下、水酸化ナトリウム水溶液をフラスコに滴下して中和した。次いで、エタノールを除去し、アニオン性高分子A水溶液を得た。この高分子は、重量平均分子量が7,000、高分子中に占めるアミド結合を有する単量体の割合が29 モル%、高分子中に占める疎水基を有する単量体の割合が29モル%であった。
【0085】
高分子の合成例2
上記の合成例1において、ジメチルアクリルアミド15部、ベンジルメタクリレート54部、メタクリル酸31部、ラウリルメルカプタン5部の混合物を使用したこと以外は、合成例1と同様にして酸価が200mgKOH/gの高分子を得た。次いで、冷却下、水酸化ナトリウム水溶液をフラスコに滴下して中和した後、エタノールを除去し、アニオン性高分子(B)水溶液を得た。この高分子は、重量平均分子量が7,500、高分子中に占めるアミド結合を有する単量体の割合が18 モル%、高分子中に占める疎水基を有する単量体の割合が38モル%であった。
【0086】
高分子の合成例3
上記の合成例1において、ジメチルアクリルアミド45部、ベンジルメタクリレート24部、メタクリル酸31部の混合物を使用したこと以外は、合成例1と同様にして酸価が200mgKOH/gの高分子を得た。次いで、冷却下、水酸化ナトリウム水溶液をフラスコに滴下して中和した後、エタノールを除去し、アニオン性高分子(C)水溶液を得た。この高分子は、重量平均分子量が33,000、高分子中に占めるアミド結合を有する単量体の割合が48 モル%、高分子中に占める疎水基を有する単量体の割合が14モル%であった。
【0087】
高分子の合成例4
上記の合成例1において、ジメチルアクリルアミド45部、ベンジルメタクリレート24部、メタクリル酸31部、ラウリルメルカプタン2部の混合物を使用したこと以外は、合成例1と同様にして酸価が200mgKOH/gの高分子を得た。次いで、冷却下、水酸化ナトリウム水溶液をフラスコに滴下して中和した後、エタノールを除去し、アニオン性高分子(D)水溶液を得た。この高分子は、重量平均分子量が11,500、高分子中に占めるアミド結合を有する単量体の割合が48 モル%、高分子中に占める疎水基を有する単量体の割合が14モル%であった。
【0088】
実施例1
次の表6に示す各成分を採取し、平均0.6mm径のジルコニアビーズを使用しサンドグラインダーにて分散処理を行った。
【0089】
【表6】
Figure 0004867085
【0090】
上記で得られた液に、後述の方法で得られたポリエステル系ウレタン樹脂溶液(武田薬品工業株式会社製)21.6部、グリセリン22.5部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル22.5部、イオン交換水58.4部を更に加えた。この液をNo.5Cの濾紙で加圧濾過し、ここで得られた液を記録液とした。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.139μmであり、記録液の表面張力は33dyne/cmであった。その他の試験結果は表10及び表11に示した。
【0091】
上記のポリエステル系ウレタン樹脂溶液は、アジピン酸、ネオペンチルグリコール、1.6−ヘキサンジオールから合成されたポリエステルポリオール60g、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート90g、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン30g、ジメチロールプロピオン酸40g、トリエチレングリコール5g、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール10gを反応させた後、水酸化ナトリウムで中和することにより得られ、遊離酸の酸価:70mgKOH/g、Tg:190℃、Mw:20万、固形分濃度:25%である。
【0092】
実施例2
実施例1と同様にして分散処理して得られた液に、酸価70のポリエステル系ウレタン樹脂溶液9部、グリセリン9部、2−ピロリドン12.6部、イソプロピルアルコール3.6部、イオン交換水45.8部を更に加えた。この液をNo.5Cの濾紙で加圧濾過し、ここで得られた液を記録液とした。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.137μmであり、記録液の表面張力は48dyne/cmであった。その他の試験結果は表10及び表11に示した。
【0093】
比較例1
実施例1において、酸価70のポリエステル系ポリウレタン樹脂の代わりに、酸価50のポリエステル系ポリウレタン樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして記録液を調製し評価した。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.138μmであり、記録液の表面張力は34dyne/cmであった。印字試験結果を表10に示すが、耐擦性試験は印字不良のために実施できなかった。
【0094】
比較例2
実施例2において、酸価70のポリエステル系ポリウレタン樹脂の代わりに、酸価50のポリエステル系ポリウレタン樹脂を使用した以外は、実施例1と同様にして記録液を調製し評価した。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.140μmであり、記録液の表面張力は33dyne/cmであった。印字試験結果を表10に示すが、耐擦性試験は印字不良のために実施できなかった。
【0095】
実施例3
実施例1において、カーボンブラック(A)の代わりに、カーボンブラック(B)を使用した以外は実施例1と同様に記録液を調製し、評価を行った。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.140μmであり、記録液の表面張力は35dyne/cmであった。その他の試験結果は表10及び表11に示した。
【0096】
実施例4
次の表7に示す各成分を採取し、平均0.6mm径のジルコニアビーズを使用しサンドグラインダーにて分散処理を行った。
【0097】
【表7】
Figure 0004867085
【0098】
上記で得られた液に、前記合成例1で得た高分子(A)水溶液3.8部(高分子1.25部)、グリセリン5部、イソプロピルアルコール2部、2−ピロリドン7部、イオン交換水18.2部を更に加えた。この液をNo.5Cの濾紙で加圧濾過し、ここで得られた液を記録液とした。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.143μmであり、記録液の表面張力は50dyne/cmであった。その他の試験結果は、その他の試験結果は表12に示した。
【0099】
実施例5
実施例4において、高分子(A)水溶液3.8部(高分子1.25部)の代わりに前記合成例2で得た高分子(B)水溶液3.8部(高分子1.25部)を使用したこと以外は、実施例4と同様にして記録液を得た。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.138μmであり、記録液の表面張力は50dyne/cmであった。その他の試験結果は表12に示した。
【0100】
実施例6
次の表8に示す各成分を採取し、平均0.6mm径のジルコニアビーズを使用しサンドグラインダーにて分散処理を行った。
【0101】
【表8】
Figure 0004867085
【0102】
上記で得られた液に、前記合成例2で得た高分子(B)水溶液6.1部(高分子2.0部)、グリセリン5部、イソプロピルアルコール2部、2−ピロリドン7部、イオン交換水28.7部を更に加えた。この液をNo.5Cの濾紙で加圧濾過し、ここで得られた液を記録液とした。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.139μmであり、記録液の表面張力は48dyne/cmであった。その他の試験結果は表12に示した。
【0103】
実施例7
実施例6と同様にして得た分散液に、前記合成例3で得た高分子(C)水溶液4.1部(高分子1.0部)、グリセリン5部、イソプロピルアルコール2部、2−ピロリドン7部、イオン交換水30.7部を更に加えた。この液をNo.5Cの濾紙で加圧濾過し、ここで得られた液を記録液とした。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.311μmであり、記録液の表面張力は52dyne/cmであった。その他の試験結果はその他の試験結果は表12に示した。
【0104】
実施例8
実施例6と同様にして得た分散液に、前記合成例4で得た高分子(D)水溶液4.7部(高分子1.6部)、グリセリン5部、イソプロピルアルコール2部、2−ピロリドン7部、イオン交換水30.1部を更に加えた。この液をNo.5Cの濾紙で加圧濾過し、ここで得られた液を記録液とした。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.176μmであり、記録液の表面張力は51dyne/cmであった。その他の試験結果は表12に示した。
【0105】
実施例9
実施例6と同様にして得た分散液に前記合成例2で得た高分子(B)水溶液3.8部(高分子1.25部)、グリセリン5部、トリエチレングルコールモノブチルエーテル4.0部、2−ピロリドン7部、イオン交換水39部を更に加えた。この液をNo.5Cの濾紙で加圧濾過し、ここで得られた液を記録液とした。得られた記録液中のカーボンブラックの平均分散粒径は0.114μmであり、記録液の表面張力は44dyne/cmであった。その他の試験結果は表12に示した。
【0106】
【表9】
Figure 0004867085
【0107】
【表10】
Figure 0004867085
【0108】
【表11】
Figure 0004867085
【0109】
【表12】
Figure 0004867085
【0110】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、保存安定性や吐出性に優れ、特にインクジェット記録用または筆記具用として普通紙に記録した場合にも、記録物の印字濃度、耐擦性、耐水性および耐光性などに優れる記録液が提供される。

Claims (12)

  1. 少なくとも、顔料(a)と、ウレタン系樹脂、アクリルアミド誘導体、メタクリルアミド誘導体を構成単位の一部とする重合体の群から選択され、且つその遊離酸の酸価が55〜350mgKOH/gである高分子(b)とを含有し、表面張力が25〜54dyne/cmであることを特徴とする記録液。
  2. 高分子(b)の遊離酸の酸価が55mgKOH/g以上150mgKOH/g未満である請求項1記載の記録液。
  3. 高分子(b)の遊離酸の酸価が100〜350mgKOH/gである請求項1記載の記録液。
  4. 記録液の表面張力が25dyne/cm以上37dyne/cm未満である請求項1記載の記録液。
  5. 記録液の表面張力が37dyne/cm以上54dyne/cm未満である請求項1記載の記録液。
  6. 高分子(b)以外のアニオン性水溶性高分子を含有する請求項1に記載の記録液。
  7. 高分子(b)以外のアニオン性水溶性高分子の酸価が150mg・KOH/g以上である請求項に記載の記録液。
  8. アニオン性水溶性高分子が(α-メチル)スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体である請求項に記載の記録液。
  9. 顔料(a)がカーボンブラックである請求項1に記載の記録液。
  10. カーボンブラックのDBP吸油量が100cm/100g以上である請求項に記載の記録液。
  11. 非イオン系界面活性剤を0.5〜50重量%含む請求項1に記載の記録液。
  12. 支持体の少なくとも片面にインク受容層が設けられて成る記録用シートに請求項1に記載の記録液を使用して記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
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