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JP4867067B2 - 永久磁石形同期電動機の制御装置 - Google Patents

永久磁石形同期電動機の制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転子に突極性を有する永久磁石形同期電動機(PMモータ)の制御装置に関し、特に回転子の磁極位置(以下、回転子位置という)を検出するための位置検出センサを使用しない永久磁石形同期電動機の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
永久磁石形同期電動機の高性能制御には、回転子の位置情報が必要である。
一般に位置検出センサとして、エンコーダやレゾルバなどが用いられているが、低コスト化を目的として、電動機の電圧や電流の情報から電気的に回転子位置を推定演算するセンサレス制御が提案されている。その一手法として、特開平7−245981号公報に記載された磁極位置検出装置が知られている。この公知技術に記載された回転子位置の検出手法は、突極性を有する永久磁石形同期電動機に高周波電圧を印加し、その結果として流れる突極性に起因した高周波電流から回転子位置を推定演算するものである。
【0003】
しかしながら、特開平7−245981号公報による回転子位置の推定演算方法は、原理的に180°の位置推定誤差を持つことがあり、これを補正するための演算(以下、この演算を「磁極判別」と呼ぶ。)が必要となる。この磁極判別法としては、
・電気学会論文誌D「産業応用部門誌」1990年11月 Vol.110 pp.1193〜1200
・電気学会論文誌D「産業応用部門誌」1996年7月 Vol.116 pp736〜742
・IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRY APPLICATIONS, VOL.32, NO.5, SEPTEMBER/OCTOBER 1996
等が提案されている。
【0004】
上記磁極判別方法は何れも電動機鉄心の磁気飽和特性を利用したものであり、回転子位置推定値を使用し、直軸電流を正極性および負極性に制御したときの電流の変化率の違いを使って磁極判別を行う。ここで、今後の理解を容易にするために、用語を説明する。
まず、直軸とは回転子永久磁石の磁極方向にとった座標軸であり、直軸電流とは直軸方向の電流成分である。言い換えるならば、正の直軸電流は永久磁石による磁束を強めるように作用し、負の直軸電流とは永久磁石による磁束を弱めるように作用する電流成分である。電圧に関しても同じように定義し、直軸電圧とは直軸方向の電圧成分である。また、直軸と直交方向に横軸を定義し、横軸方向の電流、電圧をそれぞれ横軸電流、横軸電圧と呼ぶ。
【0005】
図4に、永久磁石形同期電動機のセンサレス制御装置の磁極判別法の従来技術を示す。
図4において、電動機(PMモータ)40の電圧指令は座標変換器1に入力される。ここで、直軸電圧指令vd *には通常、方形波状の高周波電圧(基本波電圧成分と異なる周波数の高周波電圧であり、以下では、この電圧を方形波電圧という)が重畳され、横軸電圧指令vq *としては零が与えられる。
【0006】
座標変換器1は、積分器8から出力される位置推定値θと前記電圧指令v ,v とに基づいて三相電圧指令v ,v ,v を演算する。これらの電圧指令v ,v ,v をPWM回路3により電力変換器(インバータ)30のスイッチング素子に対するゲート信号に変換して、電動機40の端子電圧を制御する。なお、20は三相交流電源である。
【0007】
座標変換器2は、電力変換器30の出力側から検出した電機子電流i,iと位置推定値θとから、直軸電流i、横軸電流iを演算する。高周波分離フィルタ4は、iから方形波電圧と同じ周波数成分の横軸高周波電流iqhを分離・抽出する。
【0008】
なお、二つのスイッチAと三つのスイッチBとが連動スイッチとして設けられており、直軸電圧指令v にはスイッチAまたはスイッチBにより選択された電圧が重畳される。また、メモリ5には直軸電流iがスイッチBにより入力され、積分器8には、横軸高周波電流iqhが入力される速度推定器7の出力がスイッチAにより、零がスイッチBにより入力されるようになっている。
【0009】
運転開始時は、始めに突極性を利用した位置推定を行う。図示するようにスイッチAが全て閉じており、スイッチBが全て開いている。スイッチAが閉じているので、直軸電圧指令v は、図示するような正負に値が繰り返す方形波電圧となる。
速度推定器7は、高周波分離フィルタ4により分離された横軸高周波電流iqhの値から速度推定値を演算し、積分器8は、速度推定値を積分して位置推定値θを演算する。
この結果、位置推定値θは、真値または180°の誤差をもった値に収束する。
【0010】
次に、磁極判別について説明する。この場合には図示の状態とは逆で、スイッチAは全て開き、スイッチBは全て閉じている。直軸電圧指令v としては、方形波電圧の代わりに、磁極判別用試験信号として間欠的に正極性及び負極性となるパルス電圧が与えられており、直軸電流iを零から正へ、または零から負へ制御する。
このとき、方形波電圧の重畳は停止されていて横軸高周波電流iqhを使った速度・位置推定演算ができないので、積分器8には零を入力することによりその動作を停止して位置推定値θを固定する。
正極性及び負極性のパルス電圧を印加したときの直軸電流iの変化率△idp,△idmは、それぞれメモリ5に記憶される。
【0011】
磁極判別器6は、△idp,△idmの値を比較して、積分器8の出力を次の数式1によりプリセットし、位置推定値の演算誤差を補正する。すなわち、速度推定器7の出力を積分した値を第1の位置推定値とすれば、この第1の位置推定値を数式1によりプリセットして補正した第2の位置推定値θを生成し、出力する。
【0012】
[数式1]
(a) △idp<△idmのとき → θ=θ(前回値)+180°
(b) △idp>△idmのとき → θ=θ(前回値)
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従来の制御では、磁極判別の際には位置推定演算を停止する必要がある。このため、回転子が回転している場合は回転子位置が不明であり、パルス電圧を正確に直軸の正方向および負方向に出力できずに磁極判別を誤る恐れがある。また、磁極判別を行なっている間は基本波電流を制御できないため、回転子の回転に伴う誘起電圧により電機子に過大な電流が流れる恐れがある。
そこで本発明は、位置推定演算を磁極判別と同時に実行可能とし、更に磁極判別時にも基本波電流の制御を行えるようにして過電流の発生を防止するようにした永久磁石形同期電動機の制御装置を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、基本波電圧に周波数の異なる高周波電圧、例えば方形波電圧を重畳し、電機子に流れる高周波電流を使って位置推定値を演算する。そして、磁極判別用試験信号としてのパルス電圧を高周波電圧に重畳するか、直軸電流または横軸電流の極性を制御し、位置推定を行ないながら、高周波電圧に同期したタイミングで磁極判別用試験信号成分を検出電流から抽出し、このときの電流の変化率や振幅に基づいて磁極判別を行い、位置推定値を補正する。なお、前記パルス電圧のパルス幅は、磁気飽和領域に到達するぐらい十分な長さとし、高周波電圧に同期させる。
位置推定のための信号は、重畳した高周波電圧の周波数成分をフィルタによって検出電流から抽出することで直接検出可能である。また、磁極判別用の試験信号は、前記高周波電圧に対して一定の位相差をもって同期したパルス電圧等を重畳させることで、容易かつ直接に、しかも位置推定のための信号の検出と同時に検出することができる。
【0015】
すなわち、請求項1記載の発明は、回転子に突極性を有する永久磁石形同期電動機を電力変換器により駆動するための制御装置であって、位置検出センサを用いずに速度推定値から回転子位置を推定し、この位置推定値を用いて電動機に対する電圧指令を直軸電圧指令及び横軸電圧指令に分離して制御するようにした永久磁石形同期電動機の制御装置において、
直軸基本波電圧指令に高周波電圧を重畳して直軸電圧指令を生成する手段と、
電動機の電機子電流を直軸電流及び横軸電流に分解し、前記横軸電流から前記高周波電圧と同じ周波数の高周波電流を抽出する手段と、
直軸電流の平均値を零に制御して前記直軸基本波電圧指令を生成する手段と、
前記横軸電流の平均値を零に制御して横軸電圧指令を生成する手段と、
前記高周波電流から回転子の速度推定値を演算し、この速度推定値を積分して第1の位置推定値を演算する手段と、
前記速度推定値及び第1の位置推定値の演算を行いながら、前記直軸電流の平均値を零に制御する機能を停止するとともに正極性及び負極性を有するパルス電圧を前記高周波電圧に重畳し、かつ、正極性のパルス電圧を重畳したときと負極性のパルス電圧を重畳したときの前記直軸電流の変化率により、第1の位置推定値を補正して第2の位置推定値を演算する手段と、を備えたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1の制御ブロック図は本発明の第1実施形態を示すものである。
図4と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、以下では異なる点を中心に説明すると、本実施形態では、方形波電圧とパルス電圧との加算結果を直軸電圧指令vd *として出力する加算器9が付加され、また、すべてのスイッチAと図4の積分器8の入力側に設けられていたスイッチBとが除去されている。
この実施形態におけるスイッチBは、加算器9の一方の入力端にパルス電圧を入力可能であり、同時に、メモリ5に直軸電流idを入力可能となっている。
【0017】
次に、この実施形態の動作を説明する。
始めにスイッチBを開き、方形波電圧を直軸電圧指令v として座標変換器1に入力して回転子位置の推定演算を行う。この時、従来技術と同様に、速度推定器7は高周波分離フィルタ4から抽出・分離される横軸高周波電流iqh(方形波電圧の周波数成分を持つ)から速度推定値を演算し、積分器8は速度推定値を積分して第1の位置推定値θを演算する。
【0018】
しかる後にスイッチBを閉じ、方形波電圧とパルス電圧とを加算器9により加算して直軸電圧指令v を生成し、この指令v を座標変換器1に入力する。ここで、パルス電圧のパルス幅は、磁気飽和領域に到達させることを考慮して、方形波電圧の整数倍の周期とし、かつ方形波電圧に同期させる。
【0019】
また、位置推定を行ないながら、方形波電圧に同期したタイミングで磁極判別用試験信号成分を直軸電流iから抽出し、直軸電流iの変化率△idp,△idmをメモリ5に記憶させて前記数式1に従い磁極判別を行なう。磁極判別器6では、例えば、数式1(a)が成立した場合には第1の位置推定値に180度を加算する信号を積分器8にプリセットすることにより、第1の位置推定値の演算誤差を補正し、第2の位置推定値θを生成して出力する。
【0020】
上記のように構成することにより、パルス電圧を方形波電圧に重畳して回転子位置を推定しながら磁極判別を同時かつ正確に行うことができる。
【0021】
図2の制御ブロック図は本発明の第2実施形態を示すものである。
この実施形態では、図1の構成に対して、更に直軸電流の平均値を零に制御して直軸基本波電圧指令v **を出力する手段としての直軸電流調節器11と、横軸電流の平均値を零に制御して横軸電圧指令v を出力する手段としての横軸電流調節器12と、加算器10とが付加されており、位置推定及び磁極判別を行ないながら基本波電流の制御も行なうようになっている。
【0022】
直軸電流調節器11には、高周波分離フィルタ4から出力される直軸基本波電流idbと直軸電流指令値i (=0)とが入力され、その出力が直軸基本波電圧指令v **として加算器10の一方の入力端に加えられている。加算器10の他方の入力端には加算器9の出力が加えられており、加算器10の出力が最終的な直軸電圧指令v として座標変換器1に入力される。また、横軸電流調節器12には、高周波分離フィルタ4から出力される横軸基本波電流iqbと横軸電流指令値i (=0)とが入力され、その出力が横軸電圧指令v として座標変換器1に入力されている。
【0023】
この実施形態の動作を説明すると、回転子の位置推定時には、スイッチBを開いて加算器9に方形波電圧のみを印加する。
高周波分離フィルタ4は、i,iから方形波電圧の周波数成分を除いた直軸基本波電流idbと横軸基本波電流iqbと、方形波電圧と同じ周波数成分の横軸高周波電流iqhとを分離・抽出する。
直軸電流調節器11は、i (=0)とidbとの偏差を増幅して直軸基本波電圧指令v **を演算し、加算器10によりv **に方形波電圧を重畳して最終的な直軸電圧指令v とする。また、横軸電流調節器12は、i (=0)とiqbとの偏差を増幅して横軸電圧指令v を演算する。これらの調節器11,12の動作により、直軸電流の平均値及び横軸電流の平均値は零に制御される。
【0024】
速度推定器7は高周波分離フィルタ4から出力される横軸高周波電流iqhから速度推定値を演算し、積分器8は速度推定値を積分して第1の位置推定値θを演算する。
【0025】
磁極判別を行なう際にはスイッチBを閉じ、加算器9,10の動作により、直軸基本波電圧指令v **に対して、方形波電圧と、更に磁極判別用試験信号としての正極性及び負極性のパルス電圧を重畳して、直軸電圧指令v を生成する。
パルス電圧を印加する時間は、直軸電流調節器11が追従できないくらいに十分短くする。パルス電圧が正極性に与えられたときと負極性に与えられたときのiの変化率△idp,△idmをそれぞれメモリ5に記憶し、前記数式1により磁極判別器6をプリセットして第1実施形態と同様の方法により第1の位置推定値を補正し、第2の位置推定値θを生成する。
【0026】
上記の構成により、電動機40が回転しているときにも磁極判別を正確に行い、誘起電圧による過電流を防止して電動機を保護することができる。
【0027】
次に、図3の制御ブロック図は本発明の第3実施形態を示すものである。
この実施形態は、図2の実施形態において直軸電流調節器11と加算器10との間にスイッチCが付加されていることを特徴とする。このスイッチCの動作としては、スイッチBが閉じていて磁極判別用試験信号としてのパルス電圧が正または負の値であれば「開」、それ以外では「閉」となるものである。
【0028】
以下、本実施形態の動作を説明する。回転子位置の推定動作は第1、第2実施形態と同様である。
磁極判別に当たっては、スイッチBを閉じた状態で、パルス電圧が正あるいは負の値のときにスイッチCが開くことにより、直軸電流の制御は行なわれず、正または負のパルス電圧によって大きな直軸電流が流れる。これによって、十分に磁気飽和するような直軸電流iを流すことができ、メモリ5及び磁極判別器6を介して高精度に磁極判別を行うことができる。なお、本実施形態では大きな直軸電流iを流すために、パルス電圧が正または負である期間をモータやインバータが許容される範囲で長くするのが望ましい。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、位置推定演算を磁極判別と同時に実行することができ、更に磁極判別時にも基本波電流の制御を行えるようにして過電流の発生を防止することができる。また、回転子が回っている場合でも、回転子位置の演算を正確に行うことができるので、速やかな始動が可能となる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す制御ブロック図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す制御ブロック図である。
【図4】従来技術を示す制御ブロック図である。
【符号の説明】
1,2 座標変換器
3 PWM回路
4 高周波分離フィルタ
5 メモリ
6 磁極判別器
7 速度推定器
8 積分器
9,10 加算器
11 直軸電流調節器
12 横軸電流調節器
13 加速度検出器
20 三相交流電源
30 電力変換器
40 永久磁石形同期電動機(PMモータ)
A,B,C スイッチ

Claims (1)

  1. 回転子に突極性を有する永久磁石形同期電動機を電力変換器により駆動するための制御装置であって、位置検出センサを用いずに速度推定値から回転子位置を推定し、この位置推定値を用いて電動機に対する電圧指令を直軸電圧指令及び横軸電圧指令に分離して制御するようにした永久磁石形同期電動機の制御装置において、
    直軸基本波電圧指令に高周波電圧を重畳して直軸電圧指令を生成する手段と、
    電動機の電機子電流を直軸電流及び横軸電流に分解し、前記横軸電流から前記高周波電圧と同じ周波数の高周波電流を抽出する手段と、
    直軸電流の平均値を零に制御して前記直軸基本波電圧指令を生成する手段と、
    前記横軸電流の平均値を零に制御して横軸電圧指令を生成する手段と、
    前記高周波電流から回転子の速度推定値を演算し、この速度推定値を積分して第1の位置推定値を演算する手段と、
    前記速度推定値及び第1の位置推定値の演算を行いながら、前記直軸電流の平均値を零に制御する機能を停止するとともに正極性及び負極性を有するパルス電圧を前記高周波電圧に重畳し、かつ、正極性のパルス電圧を重畳したときと負極性のパルス電圧を重畳したときの前記直軸電流の変化率により、第1の位置推定値を補正して第2の位置推定値を演算する手段と、
    を備えたことを特徴とする永久磁石形同期電動機の制御装置。
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