排気を利用したターボチャージャ等の過給器では、所謂ターボラグと称される過給遅延が発生し、過給圧の目標過給圧への到達が遅延することがある。また、排気バイパス弁が開いている故障状態にある場合であっても、然るべき時間経過の後には過給圧が目標過給圧へ到達することもある。このような場合、故障が検出できない、或いは故障を誤検出するといった事態が生じかねない。即ち、従来の技術には、排気バイパス弁の閉じ不良を精度良く検出し得ないという技術的な問題点がある。
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、排気バイパス弁の閉じ不良を精度良く検出することが可能な排気バイパス弁の故障検出装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置は、主排気経路に配設されたタービンを含む過給器、前記主排気経路における前記タービンの上流と下流とを連通すると共に前記タービンをバイパスするバイパス経路、及び該バイパス経路に設置され、開閉状態に応じて前記バイパス経路を介して排気の一部をバイパスさせることが可能な排気バイパス弁を備えた内燃機関を有する車両において前記排気バイパス弁の閉じ不良を検出する排気バイパス弁の故障検出装置であって、前記過給器の過給期間における、時間に対応付けられた過給圧の上昇の度合い、又は、前記上昇の度合い及び前記上昇の度合いに基づいた単位時間における前記上昇の度合いの変化率を特定する特定手段と、前記内燃機関の吸入空気量及び前記過給圧を含む前記内燃機関における所定の動作条件のうち少なくとも一つに応じて、前記上昇の度合いの下限を表す第1の判定値、又は、前記変化率の上限を表す第2の判定値を設定する設定手段と、前記設定された第1又は第2の判定値に基づいて前記閉じ不良が発生しているか否かの判別を行なう判別手段とを具備し、前記判別手段は、前記上昇の度合いが特定される場合において前記過給期間の初期における前記特定された上昇の度合いが前記設定された第1の判定値以下であるか、又は、前記変化率が特定される場合において前記特定された変化率が前記設定された第2の判定値以上である場合に、前記閉じ不良が発生していると判別することを特徴とする。
本発明に係る「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該複数の気筒の各々における燃焼室において燃料が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン及びコネクティングロッド等の機械的な伝達経路を経て、例えばクランク軸等の入出力軸を介して動力として取り出すことが可能な機関を包括する概念であり、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を指す。
また、本発明に係る内燃機関には特に、例えば上述した各気筒内部に例えば排気弁、排気ポート及び排気マニホールド等を介して連通する主排気経路(排気ポート及び排気マニホールドを含んでもよい)の途上に配設されたタービンを含む例えばターボチャージャ等の過給器が備わっており、例えば大気圧以上の吸気圧を得ることが(即ち、過給を行なうことが)可能となっている。
一方、この主排気経路には、当該タービンの上流部分と下流部分とを連通することにより当該タービンをバイパスするバイパス経路が設けられている。このバイパス経路には、例えばWGV等の排気バイパス弁が設けられており、開閉状態に応じてタービンをバイパスする排気の量を制御することが可能に、例えば相対的に開いた状態では相対的に多量の排気を、また例えば相対的に閉じた状態では相対的に少量の排気を夫々バイパス経路に導くことが可能に構成されている。排気バイパス弁では、例えばこのようにバイパス経路に導かれる排気の量の大小に応じて、タービンに供給される排気の量の小大が制御される。
本発明に係る「閉じ不良」とは、排気バイパス弁を閉じる際の弁の動作に係る故障を包括する概念であり、端的な状態としては、例えば、機械的、物理的又は電気的な理由から全閉要求に対し完全に弁が閉じない状態を指す。閉じ不良が生じると、本来バイパス経路を介した排気のバイパスが要求されない運転領域でも排気バイパス弁を介した排気の漏出が生じるため、タービンの作動効率が低下して過給効率が低下する。従って、排気バイパス弁における閉じ不良は、速やかに検出される必要がある。
ここで特に、排気の漏出によってタービンに供給される排気の量が減少することに鑑み、目標過給圧に対し実過給圧がどの程度であるかといった指標を用いて係る閉じ不良の検出を試みた場合、ターボラグによる過給圧上昇の遅延を閉じ不良と誤検出する可能性がある。或いは、閉じ不良が発生しても、過給圧は最終的には目標過給圧へ到達する場合が多いから、閉じ不良を検出し得ない場合も生じ得る。
そこで、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置は、以下の如くにして排気バイパス弁の閉じ不良を精度良く検出することが可能となっている。即ち、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置によれば、その動作時には、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される特定手段により、過給期間における時間に対応付けられた過給圧の上昇の度合い、又は、当該上昇の度合い及び当該上昇の度合いに基づいた単位時間における上昇の度合いの変化率(以下、適宜「変化率」と称する)が特定される。
ここで、「時間に対応付けられた過給圧の上昇の度合い」とは、例えば時間に対する過給圧の上昇量(即ち、過給圧の上昇率或いは過給圧上昇量の時間勾配値)等、時間に対する過給圧の上昇特性を定量的又は定性的に表してなる指標を包括する概念である。また、変化率とは、例えば、特定される過給圧の上昇の度合いを時間微分して得られる数値等を含み、この場合、例えば、過給圧が時間に対し一定の上昇率(即ち、傾きであり、本発明に係る「上昇の度合い」の一例)で上昇していればゼロである。
尚、本発明における「特定」とは、例えば、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に物理的数値又は物理的数値に対応する電気信号等として検出すること、何らかの検出手段を介して直接的に又は間接的に例えば電気信号等の形で検出された、特定対象と対応関係を有する物理的数値に基づいて予め然るべき記憶手段等に記憶されたマップ等から該当する数値を選択すること、このような物理的数値又は選択された数値等から、予め設定されたアルゴリズムや計算式に従って導出すること、或いはこのように検出、選択又は導出された数値等を、例えば電気信号等の形で単に取得すること等を包括する広い概念である。
例えば、上昇の度合いが上述したような過給圧の上昇率の形態を採る場合、過給圧センサ等の検出手段によって検出され、電気信号として供給される実過給圧と、タイマ等によって検出される経過時間とに基づいた数値演算の結果として係る上昇率が特定されてもよい。
一方、係る上昇の度合い又は変化率が特定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される判別手段の作用により、係る特定された上昇の度合い又は変化率に基づいて前述した閉じ不良が発生しているか否かの判別が行われる。
ここで、特定手段によって特定される過給圧の上昇の度合いは、例えば実過給圧と目標過給圧との差分等、時間と無関係な指標とは異なり、時間に対応付けられた指標であるため、排気バイパス弁の閉じ不良の兆候が現れ易い。例えば、最終的に到達する過給圧が目標過給圧であっても、また目標過給圧より低い場合であっても、到達する過給圧に至る経過に、少なくとも検出可能な程度に明確な差異が生じ易い。或いは単なるターボラグが生じている場合とも、その傾向は異なったものとなる。従って、係る上昇の度合いに基づいて排気バイパス弁に閉じ不良が発生しているか否かを好適に判別することが可能となる。また、過給圧の上昇の度合いは、排気バイパス弁の閉じ不良によって、過給期間の初期において顕著に影響され、緩やかになる傾向がある。また、過給期間の後期においては、そのような影響は相対的に小さくなり、過給圧は目標過給圧まで相対的に急激に漸近する。従って、変化率の観点からみれば、排気バイパス弁に閉じ不良が生じている場合、過給期間中において、変化率又は変化率の最大値が、何ら排気バイパス弁に異常が生じていない場合と較べ大きくなる可能性が高い。即ち、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置によれば、排気バイパス弁の閉じ不良を精度良く検出することが可能となるのである。
ここで、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置では、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される設定手段により、上昇の度合いの下限を表す第1の判定値又は変化率の上限を表す第2の判定値が設定される。
排気パイパス弁に閉じ不良が生じることにより過給圧の上昇が阻害されることに鑑みれば、特定手段により特定される、時間に対応付けられた上昇の度合いに対し、排気バイパス弁が正常に動作しているか否かの判断基準となり得る下限値を設定することが可能である。設定手段は、例えば、係る下限値としての第1の判定値を設定する。
本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置では、このようにして設定された第1又は第2の判定値に基づいて、判別手段により、排気バイパス弁における閉じ不良の発生の有無が判別される。即ち、判別手段は、過給圧の上昇の度合いに基づいて判別を行うにあたっては、過給期間の初期における、前述した過給圧の上昇の度合いが、係る第1の判定値以下である場合に、閉じ不良が発生していると判別する。
ここで、「過給期間の初期」とは、例えば加速期間において吸気圧(過給圧)が大気圧を超えた時点、又は係る時点近傍の時点から、過給期間(実過給圧が目標過給圧以下である期間)に対して相対的に短い時間が経過するまでの期間等を指し、定性的には、上昇度合い特定手段によって特定される過給圧の上昇の度合いが、排気バイパス弁の閉じ不良に顕著に影響される期間を指す。従って、本発明に係る「過給期間の初期」とは、必ずしも厳密に数値として規定された期間でなくともよく、また、内燃機関の仕様、仕向け及び動作環境並びに物理的、機械的又は電気的な構成等に応じて適宜相違していてもよい趣旨である。
また、第1の判定値は、排気バイパス弁に閉じ不良が発生しているか否かを、判別手段に係る判別動作によって、過不足なく且つ少なくとも実践上問題となる程の不利益が生じない程度の信頼性を有しつつ規定し得る値を包括する概念であり、単数及び複数の別並びに固定値及び可変値の別も何ら限定されない趣旨である。
尚、設定手段に係る「設定する」とは、第1又は第2の判定値を判別手段に係る判別動作に供することを少なくとも含む概念である。従って、第1又は第2の判定値は、例えばその都度個別具体的に又はリアルタイムに、例えば数値演算等の結果として導かれる性質のものであってもよいし、例えば予め実験的に、経験的に、理論的に、又は数値演算やシミュレーションに基づいて第1の判定値に係る上述した概念を満たすように決定され、然るべき記憶手段に単一の固定値として、或いは車両の各種運転条件に対応付けられた複数の固定値として記憶されていてもよい。然るべき記憶手段に第1又は第2の判定値が記憶されている場合、設定手段は、例えば係る記憶手段から第1又は第2の判定値を読み出すことによって、或いは、内燃機関の運転条件を表す何らかの指標値に基づいて係る読み出された第1又は第2の判定値(この場合、基準となる判定値)を適宜補正すること等によって、第1又は第2の判定値の設定を行ってもよい。
このように、上昇の度合いと第1の判定値との比較により判別が行われる場合、特定された上昇の度合いが第1の判定値以下であるかを判別することによって、相対的にみて軽い処理負荷の下に排気バイパス弁の閉じ不良の有無を検出することが可能となり、実践上有益である。尚、本発明に係る「以下」とは、当然ながら比較対象次第で容易に「未満」と置換し得る概念であり、実質的には「未満」を包含する趣旨である。
一方、変化率に基づいて判別を行うにあたっては、判別手段は、特定された変化率が第2の判定値以上である場合に、排気パイパス弁に閉じ不良が発生しているものと判別する。尚、第2の判定値もまた、第1の判定値と同様に、排気バイパス弁に閉じ不良が発生しているか否かを、過不足なく且つ判別手段に係る判別動作によって少なくとも実践上問題となる程の不利益が生じない程度の信頼性を有しつつ規定し得る値を包括する概念であり、単数及び複数の別並びに固定値及び可変値の別も何ら限定されない趣旨である。
上述したように、排気バイパス弁に閉じ不良が生じている場合、過給期間中における変化率、好適には変化率の最大値は、排気バイパス弁が正常である場合と較べて大きくなる。特に変化率の最大値で言えば、正常時には到達し得ない大きな値となる。従って、変化率が第2の判定値以上であるか否かに基づいて、排気バイパス弁の閉じ故障を好適に検出することが可能となるのである。
但し、判別手段の判別動作に供される変化率は、必ずしも変化率の最大値でなくともよく、例えば、変化率が、予め正常時には到達し得ないことが実験的に、経験的に、理論的に或いは数値演算又はシミュレーション等に基づいて判明している値に到達した時点で、排気バイパス弁に閉じ故障が発生している旨を判別してもよいし、過給期間中の一時点又は多時点における変化率について、比較対象となり得る正常時の変化率が上限値として規定され得るならば、そのような一又は多時点における変化率が正常時の変化率以上であるか否かに基づいて係る判別が行なわれてもよい。
尚、本発明に係る「以上」とは、当然ながら比較対象次第で容易に「より大きい」と置換し得る概念であり、実質的には「より大きい」を包含する趣旨である。
ここで特に、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置では、設定手段が、内燃機関の吸入空気量及び過給圧を含む、内燃機関における所定の動作条件のうち少なくとも一つに応じて第1又は第2の判定値を設定する構成となっている。
この態様によれば、例えばエアフローメータ等によって検出される吸入空気量及び例えば吸気圧センサ等によって検出される過給圧(吸気圧)等を含む、過給期間の初期における過給圧の上昇の度合いと幾らかなり対応関係を有する内燃機関の動作条件のうち少なくとも一つに応じて、第1又は第2の判定値が、例えば、これら少なくとも一つに対応する然るべき値が選択されることによって、又は然るべきアルゴリズムや算出式に従った数値演算の結果として、或いはこれら少なくとも一つに応じた各種補正演算がなされること等によって設定される。
従って、第1又は第2の判定値が、実際の上昇の度合いに即したものとして判別手段に係る比較判別動作に供されることになり、好適に排気バイパス弁に閉じ不良が生じているか否かを検出することが可能となる。
本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置の一の態様では、前記設定手段は、前記内燃機関が過渡状態になる以前における前記少なくとも一つに応じて前記第1又は第2の判定値を設定する。
内燃機関が、例えば急発進や急加速等が要求され、過渡状態にある場合、前述した内燃機関の動作条件は相対的に激しく変化していることが多く、少なくとも安定しているとはいい難い。従って、過渡期間中における上述した各種動作条件に基づいて第1又は第2の判定値が設定された場合、第1又は第2の判定値が適切でなくなる可能性があり、排気バイパス弁の閉じ不良を誤検出する可能性が相対的に高くなる。
この態様によれば、内燃機関がこの種の過渡状態に陥る以前、即ち、典型的には定常期間或いは車両の減速期間等における前述した動作条件に応じて第1又は第2の判定値が設定されるため、第1又は第2の判定値を適切に設定することが可能となり、排気パイパス弁の閉じ不良を好適に検出することが可能となる。
第1の判定値が設定される、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置の一の態様では、前記設定手段は、前記吸入空気量に応じて、且つ前記吸入空気量が大きい場合に大きくなるように前記第1の判定値を設定する。
この態様によれば、過給期間の初期における過給圧の上昇の度合いに顕著に影響し得る吸入空気量(望ましくは前述したように過渡期間以前又は直前の吸入空気量)に応じて、より具体的には吸入空気量が大きい場合に大きくなるように第1の判定値が設定される。従って、排気バイパス弁の閉じ不良を効率的且つ効果的に検出することが可能となる。
尚、「大きい場合に大きくなるように」とは、吸入空気量に対し少なくとも定性的又は総体的に見て増加傾向を有することを包括する概念であり、必ずしも吸入空気量に対し一対一に増加の傾向を有さずともよい趣旨である。即ち、吸入空気量に対する第1の判定値に係る増加の態様は、連続的であっても、段階的であっても或いは離散的であってもよい趣旨である。
第1の判定値が設定される、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置の他の態様では、前記車両は、前記内燃機関の出力軸に接続され、車軸の回転速度を予め設定された複数の変速比の中から選択された変速比に応じて変化させることが可能な変速機を有し、前記設定手段は、前記選択された変速比が小さい場合に小さくなるように前記第1の判定値を設定する。
この態様によれば、第1の判定値が、例えばMT(Manual Transmission:手動変速機)、AT(Automatic Transmission:自動変速機)或いはCVT(Continuously Variable Transmission:連続無段変速機)等の各種変速機における変速比に応じて、且つ変速比が小さい場合に小さくなるように設定される。
変速比が大きい(例えば、ローギア等に対応する変速段が選択されている)場合、加速直後の機関回転数の上昇度合いが相対的に大きいため、必然的に過給期間の初期における過給圧の上昇の度合いが相対的に大きくなり易く、第1の判定値は相対的に大きい値に設定する必要が生じる。
反対に、変速比が小さい(例えば、トップギア等に対応する変速段が選択されている)場合、加速直後の機関回転数の上昇度合いが相対的に小さいため、必然的に過給期間の初期における過給圧の上昇の度合いが相対的に小さくなり易く、第1の判定値は相対的に小さい値に設定する必要が生じる。
従って、このように、変速比が小さい場合に小さくなるように第1の判定値が設定された場合には、過給圧の上昇の度合いの実情に第1の判定値を適合させることが可能となり、効率的且つ効果的に排気バイパス弁の閉じ不良を検出することが可能となる。
第2の判定値が設定される、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置の一の態様では、前記設定手段は、前記吸入空気量に応じて、且つ前記吸入空気量が大きい場合に小さくなるように前記第2の判定値を設定する。
この態様によれば、過給期間における過給圧の上昇の度合いの変化率に顕著に影響し得る吸入空気量(望ましくは前述したように過渡期間以前又は直前の吸入空気量)に応じて、より具体的には吸入空気量が大きい場合に小さくなるように第2の判定値が設定される。従って、排気バイパス弁の閉じ不良を効率的且つ効果的に検出することが可能となる。
尚、「大きい場合に小さくなるように」とは、吸入空気量に対し少なくとも定性的又は総体的に見て減少傾向を有することを包括する概念であり、必ずしも吸入空気量に対し一対一に減少の傾向を有さずともよい趣旨である。即ち、吸入空気量に対する第2の判定値に係る減少の態様は、連続的であっても、段階的であっても或いは離散的であってもよい趣旨である。
第2の判定値が設定される、本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置の他の態様では、前記車両は、前記内燃機関の出力軸に接続され、車軸の回転速度を予め設定された複数の変速比の中から選択された変速比に応じて変化させることが可能な変速機を有し、前記設定手段は、前記選択された変速比が小さい場合に大きくなるように前記第2の判定値を設定する。
この態様によれば、第2の判定値が、第1の判定値と同様に各種変速機における変速比に応じて、且つ変速比が小さい場合に大きくなるように設定される。
変速比が大きい(例えば、ローギア等に対応する変速段が選択されている)場合、加速直後の機関回転数の上昇度合いが相対的に大きいため、必然的に過給圧の上昇の度合いの変化率が相対的に小さくなり易く、第2の判定値は相対的に小さい値に設定する必要が生じる。
反対に、変速比が小さい(例えば、トップギア等に対応する変速段が選択されている)場合、加速直後の機関回転数の上昇度合いが相対的に小さいため、必然的に当該変化率が相対的に大きくなり易く、第2の判定値は相対的に大きい値に設定する必要が生じる。
従って、このように、変速比が小さい場合に大きくなるように第2の判定値が設定された場合には、変化率の実情に第2の判定値を適合させることが可能となり、効率的且つ効果的に排気バイパス弁の閉じ不良を検出することが可能となる。
本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置の他の態様では、前記判別手段は、前記内燃機関の吸入空気量及び前記内燃機関の機関回転数のうち少なくとも一方が予め設定された基準値未満である場合に前記判別を行う。
吸入空気量が相対的に大きい領域或いは機関回転数が相対的に高い領域から過給が開始される場合、排気バイパス弁の閉じ不良の影響は相対的に小さくなるため、必然的に閉じ不良を誤検出する可能性が高くなる。
この態様によれば、吸入空気量及び機関回転数のうち少なくとも一方が予め設定された基準値未満である場合に閉じ不良の発生の有無に係る判別を行う(より好適には、係る基準値以上である場合に係る判別を行わない)ため、排気バイパス弁の閉じ不良の検出精度が担保され好適である。
本発明に係る排気バイパス弁の故障検出装置の他の態様では、前記特定手段は、前記上昇の度合い及び前記変化率を特定し、前記過給期間の初期における前記特定された上昇の度合いに対応する、前記排気バイパス弁における前記排気の漏出量を特定する漏出量特定手段と、前記特定された漏出量に対応する前記変化率の上限値を設定する上限値設定手段と、前記特定された変化率が前記設定された上限値を超えないように前記排気バイパス弁の開閉状態を制御する制御手段とを具備する。
この態様によれば、その動作時には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される漏出量特定手段により、排気バイパス弁における排気の漏出量が特定される。係る漏出量は、過給圧の上昇の度合い、顕著には過給初期における過給圧の上昇の度合いと相関があり、例えば、特定手段によって特定される上昇の度合い(好適には過給初期における上昇の度合い)に基づいて、例えば然るべき記憶手段に記憶されるマップ等から対応値を選択することによって、或いは例えばその都度リアルタイムに行なわれる数値演算等によって特定することが可能である。
一方、この態様によれば、特定手段により、上述した変化率が特定される。また、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される上限値設定手段により、特定された漏出量に対応する当該変化率の上限値が設定される。尚、係る上限値に係る設定の概念もまた、第1及び第2の判定値に係る設定の概念と同様である。
尚、漏出量に対応する上限値の設定態様は、何ら限定されず、例えば固定値であってもよいし、可変値であってもよい。例えば可変値である場合、例えば漏出量の増加に対し、連続的、段階的或いは離散的に上限値が減少するように上限値が設定されてもよい。
一方、このように上限値が設定されると、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される制御手段によって、過給圧の上昇の度合いの変化率が設定された上限値を超えないように、排気バイパス弁の開閉状態が、例えば物理的に、機械的に、機構的に或いは電気的に制御される。
この結果、上限値が固定値であるか可変値であるかによらず、過給圧の上昇の度合いの変化率が上限値以下に抑制され、排気バイパス弁の閉じ不良に起因する過給圧の急激な変化が抑制される。従って、この態様によれば、排気バイパス弁の閉じ不良が検出された場合に、運転者に知覚され得るドライバビリティの悪化や車両の安定性の低下等を抑制することが可能となり、単に排気バイパス弁の閉じ不良に係るOBD(On Board Diagnosis)が行われる場合と比較して運転者に対しより高い利益が提供される。
尚、変化率の最大値は、漏出量が大きい程、言い換えれば過給初期における過給圧の上昇の度合いが小さい程大きくなり易く、過給圧の急激な上昇を招き易い。従って、漏出量が大きい場合に小さくなるように上限値が設定された場合には、過給圧の急上昇が効果的に抑制され好適である。
尚、この態様では、前記車両は、前記内燃機関の出力軸に接続され、車軸の回転速度を予め設定された複数の変速比の中から選択された変速比に応じて変化させることが可能な変速機を有し、前記上限値設定手段は、前記選択された変速比が小さい場合に大きくなるように前記上限値を設定してもよい。
この態様によれば、上限値が、第1及び第2の判定値と同様に各種変速機における変速比に応じて、且つ変速比が小さい場合に大きくなるように設定される。
変速比が大きい(例えば、ローギア等に対応する変速段が選択されている)場合、加速直後の機関回転数の上昇度合いが相対的に大きいため、必然的に過給圧の上昇の度合いの変化率が相対的に小さくなり易く、上限値は相対的に小さい値に設定する必要が生じる。
反対に、変速比が小さい(例えば、トップギア等に対応する変速段が選択されている)場合、加速直後の機関回転数の上昇度合いが相対的に小さいため、必然的に当該変化率が相対的に大きくなり易く、上限値は相対的に大きい値に設定する必要が生じる。
従って、このように、変速比が小さい場合に大きくなるように上限値が設定された場合には、変化率の実情に上限値を適合させることが可能となり、効率的且つ効果的に実際の過給圧を制御することが可能となる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1−1:実施形態の構成>
始めに、本発明の第1実施形態に係る車両の構成について説明する。ここに、図1は、車両10の構成を概念的に表すブロック図である。
図1において、車両10は、ECU100、エンジン200、トルクコンバータ300及びECT400を備えた、本発明に係る「車両」の一例である。
ECU100は、夫々不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備え、車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「排気バイパス弁の故障検出装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述するWGV漏れ検出処理を実行することが可能に構成されている。
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンである。尚、エンジン200の詳細な構成については後述する。
トルクコンバータ300は、エンジン200の後述するクランクシャフト205に接続された入力軸300a及びECT400に接続された出力軸300b並びに係る入力軸300a及び出力軸300bを直結するためのロックアップクラッチ310等を備え、入力軸300aに接続されたポンプインペラ(不図示)の回転動力をATF(Automatic Transmission Fluid)を介して、またステータ(不図示)によってトルクを増幅させつつ出力軸300bに接続されたタービンランナ(不図示)に回転動力として伝達することが可能に構成されている。即ち、エンジン200の動力は、トルクコンバータ300を介してECT400に伝達される構成となっている。尚、トルクコンバータ300における、例えばロックアップクラッチ310の動作(例えば、係合動作等)は、トルクコンバータ300と電気的に接続されたECU100によって制御される構成となっている。
ECT400は、複数のクラッチ要素、ブレーキ要素及びワンウェイクラッチ要素等からなる複数の摩擦係合装置(不図示)を備えた、本発明に係る「変速機」の一例である。ECT400は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100による各種ソレノイド(不図示)等の駆動制御を介してこれら各摩擦係合装置相互間の係合状態が変化することによって、相互に異なる複数の変速比を得ることが可能に構成される。
尚、ECT400は公知の電子制御式自動変速機と同等の構成を有しており、その詳細な図示は省略するが、車両10の前進方向に対応する変速レンジとして、ギア比の大きい順に「1st」、「2nd」、「3rd」、「4th」、「5th」及び「6th」の6段の変速レンジを有しており、これらギア比が大きい順に大きい変速比が得られる構成となっている。車両10が前進する場合、ECU100は、ECT400における各摩擦係合装置の係合状態を制御することによって、ECT400の変速比を上記いずれかの変速レンジに対応する値に設定することが可能である。
次に、図2を参照して、エンジン200の要部構成について、その動作の一部を交えて説明する。ここに、図2は、エンジン200の模式図である。尚、図2において、図1と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。尚、図2は、エンジン200の構成を模式的に説明するものであって、必ずしもエンジン200における各部の空間的な配置態様を正確に表したものではない。
図2において、外部から吸入された空気は、吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。燃料は、不図示の燃料タンクに貯留されており、低圧ポンプ(不図示)の作用によりデリバリパイプ(不図示)を介してインジェクタ207に圧送供給されている。尚、インジェクタ207は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によって制御される通電時間に応じた量の燃料を吸気管206内に噴射することが可能に構成される。
尚、燃料を噴射する噴射手段の形態は、図3に例示するような所謂吸気ポートインジェクタの構成を採らずともよく、例えば、低圧ポンプにより圧送される燃料の圧力を更に高圧ポンプによって昇圧せしめ、高温高圧の気筒201内部へ燃料を直接噴射することが可能に構成された、所謂直噴インジェクタ等の形態を有していてもよい。
気筒201内部と吸気管206とは、吸気バルブ208の開閉によって連通状態が制御されている。気筒201内部で燃焼した混合気たる排気は、吸気バルブ208の開閉に連動して開閉する排気バルブ209を通過し、排気管210(即ち、本発明に係る「主排気経路」の一例)に排出される。
排気管210に排出された排気の一部は、タービン211に流入し、タービン211をその圧力及び流入量に応じて回転せしめる。また、タービン211の回転軸は、タービン211と対向配置されたコンプレッサ212と同軸に構成されており、タービン211が排気によって回転すると、それに伴いコンプレッサ212も回転し、過給が行われる構成となっている。タービン211及びコンプレッサ212は、本発明に係る「過給器」の一例たるターボチャージャ(符合省略)を構成している。
吸気管206上には、クリーナ213が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される構成となっている。また、クリーナ213の下流側(気筒201側)には、ホットワイヤー式のエアフローメータ214が配設されており、吸入空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。エアフローメータ214は、ECU100と電気的に接続されており、その検出値を表す電気信号がECU100に常に供給される構成となっている。
尚、エンジン200では、上述したようにコンプレッサ212による過給が行われており、吸気管206の圧力(即ち、過給圧)を、大気圧以上に上昇せしめることが可能となっている。更に、吸気管206には、インタークーラ215が設置されており、吸入空気はこのインタークーラ215により冷却され、一層コンプレッサ212による過給効率が高められている。また、インタークーラ215の下流側には、吸気圧センサ216が設置されており、吸気管206を介して吸入される吸入空気の圧力が検出される構成となっている。吸気圧センサ216によって検出される吸気圧は、コンプレッサ212により過給が行われる期間において、過給圧と同等であり、少なくとも本実施形態において、吸気圧と過給圧とは同義であるとし、以下の説明においては、その都度適宜、説明の趣旨に適した一方の言葉を選択し使用するものとする。
一方、排気管210には、タービン211をバイパスするように排気バイパス管217(即ち、本発明に係る「バイパス経路」の一例)が設けられており、係る排気バイパス管217上には、ウェストゲートバルブ(以下、適宜「WGV」と称する)218が設置されている。WGV218は、ECU100で電気的に接続された、ECU100の制御により開閉する電磁開閉弁であり、その弁開度或いは開弁期間に応じた量の排気を、タービン211を介することなく排気バイパス管217を介して排出することが可能に構成されている。このため、エンジン200では、WGV218の開閉状態に応じて、過給圧の調整を行うことが可能となっている。タービン211を通過した、或いは排気バイパス管217を通過した排気は、三元触媒219によって浄化せしめられ、最終的に車両10の車外へ排出される。
吸気管206における吸気ポート(インジェクタ207により燃料が噴射される部位付近、符号省略)の上流側には、気筒201内部への吸入空気量を調節するスロットルバルブ220が配設されている。スロットルバルブ220の開度は、スロットルポジションセンサ222によって検出され、スロットルポジションセンサ222と電気的に接続されたECU100によって絶えず把握される構成となっている。また、スロットルバルブ220の開度は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ221によって可変に制御される構成となっている。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転状態を表すクランク角を検出するためのクランクポジションセンサ223が設置されている。クランクポジションセンサ223は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100は、クランクポジションセンサ223によって検出されたクランク角に基づいてピストン203の位置を把握し、点火装置202による点火時期等を制御することが可能に構成されている。また、ECU100は、クランクポジションセンサ223によって検出されたクランク角を時間処理することによって、エンジン200の機関回転数Neを算出することが可能に構成されている。
気筒201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定可能なノックセンサ224が配設されており、また係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温を検出するための水温センサ225が配設されている。これらは、夫々ECU100と電気的に接続されており、その検出値が絶えずECU100によって把握される構成となっている。
<1−2:実施形態の動作>
WGV218は、上述した如くタービン211に供される排気の量を制御するための弁であるが、基本的にECU100による全閉要求(WGV218を完全に閉じた状態にすべき旨の制御信号)に従って全閉状態に制御されており、排気は全てタービン211を経由して排出される。一方で、過給圧が目標過給圧を超えた場合等には、例えばその超過量に応じて、或いはフィードバック制御等による一定又は不定の変化量でWGV218は開弁せしめられ、過給圧の調整が行われる。
ここで、WGV218を全閉状態に制御すべき期間において、WGV218が例えば物理的、機械的、機構的或いは電気的な故障により全閉状態とならない場合(即ち、閉じ不良が生じた場合)、WGV218から排気が漏出するため、タービン211及びコンプレッサ212を含むターボチャージャの性能低下が生じ、車両10の走行性能及び快適性能等が悪化する。従って、WGV218における閉じ不良の発生は、迅速に且つ正確に検出される必要がある。
そこで、車両10では、ECU100がROMに格納された制御プログラムに従ってWGV漏れ検出処理を実行することにより、WGV218における閉じ不良の発生の有無を好適に検出することが可能となっている。ここで、図3及び図4を参照し、本実施形態の動作として、WGV漏れ検出処理の詳細について説明する。ここに、図3は、WGV漏れ検出処理のフローチャートである。
図3において、ECU100は、過給が開始されたか否かを判別する(ステップA10)。ここで、本実施形態において、過給が開始されたか否かの判別は、加速判定がなされ且つ吸気圧が大気圧を超えたか否かに基づいて行われる。
未だ過給が開始されていない場合(ステップA10:NO)、ECU100は実質的に処理を待機状態に制御すると共に、過給が開始された場合(ステップA10:YES)、過給開始初期における過給圧上昇指標値ΔPM(即ち、本発明に係る「時間に対応付けられた過給圧の上昇の度合い」の一例)を取得する(ステップA11)。
ここで、過給圧上昇指標値ΔPMについて、図4を参照して説明する。ここに、図4は、過給圧PMの上昇特性を例示する模式図である。
図4において、縦軸及び横軸には、夫々過給圧PM及び時刻が表されている。WGV218が正常である場合、過給圧PMの上昇特性は図示PRF1(実線)となる。即ち、過給圧PMは、時刻T1において大気圧PMthを超え、時刻T2において過給圧PM2(PMth<PM2)に到達した後、時刻T3において目標過給圧PMa(PMa>PM2)に到達する。
一方、WGV218に閉じ不良が発生している場合、過給圧PMの上昇特性は図示PRF2のようになる。即ち、過給圧PMは、時刻T1において大気圧PMthを超え、時刻T3において目標過給圧PMaに到達する点については正常時と変わらない(厳密な意味ではなく、本実施形態では少なくとも実践上有意な差が生じないという意味である)が、例えば時刻T2において過給圧PM1(PM1<PM2)であるように、その上昇カーブは相対的に緩やかであり、過給初期(例えば、時刻T1から時刻T2に至る期間)において正常時と顕著に相違する。
本実施形態において、過給圧上昇指標値ΔPMは、単位時間当たりの過給圧PMの上昇量として表される。即ち、過給圧上昇指標値ΔPMとは、時間に対する過給圧PMの傾きである。例えば上記例によれば、過給初期の過給圧上昇指標値ΔPMは、正常時には「(PM2−PMth)/(T2−T1)」であり、WGV218に閉じ不良が発生している場合には「(PM1−PMth)/(T2−T1)」となる。即ち、WGV218に閉じ不良が発生している場合、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMは相対的に小さくなる。
ECU100は、吸気圧センサ216によって検出される吸気圧(即ち、過給圧PM)の時間変化に基づいて、一定のサンプリング周期毎に過給圧上昇指標値ΔPMを演算しており、過給期間(即ち、過給圧PMが目標過給圧PMaに到達するまでの期間)について、その値をRAMにバッファリングしている。ステップA11に係る処理では、係るバッファリングされた過給圧上昇指標値ΔPMのうち、過給初期に対応する値が取得される。
過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMを取得すると、ECU100は、係る過給圧上昇指標値ΔPMが、基準値B(即ち、本発明に係る「第1の判定値」の一例)未満であるか否かを判別する(ステップA12)。ここで、基準値Bの値は、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、WGV218に閉じ不良が発生している旨を正確に且つ過不足なく判別し得る値として設定されており、ROMに格納されている。ECU100は、ROMから係る基準値Bを取得し、既に取得した過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMとの比較に供する(即ち、本発明に係る「設定する」の一例)ことにより、ステップA12に係る判別処理を実行する。
ECU100は、過給圧上昇指標値ΔPMが基準値B以上である場合(ステップA12:NO)、WGV218が正常であるものと判別し(ステップA14)、過給圧上昇指標値ΔPMが基準値B未満である場合(ステップA12:YES)、WGV218に閉じ不良が発生しているものと判別する(ステップA13)。
ステップA13又はステップA14に係る処理が実行された場合、処理はステップA10に戻され、一連の処理が繰り返される。
このように、第1実施形態によれば、WGV218に閉じ不良が発生している場合に正常時と顕著に異なった値を採り得る、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMに基づいて、WGV218に閉じ不良が発生しているか否かが検出される。従って、最終的な到達過給圧が目標過給圧PMaで等しいとしても、また、その到達時刻が等しい或いは有意な差がない程度に等しいとしても、正確にWGV218の閉じ不良を検出することが可能となる。即ち、本実施形態によれば、WGV218の閉じ不良を精度良く検出することが可能となるのである。
<2:第2実施形態>
WGV218の閉じ不良は、第1実施形態とは異なった手法でも検出することができる。ここで、図5を参照して、本発明の第2実施形態に係るWGV漏検出処理の詳細について説明する。ここに、図5は、第2実施形態に係るWGV漏れ検出処理のフローチャートである。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図5において、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMを取得すると(ステップA11)、ECU100は、WGV218からの排気漏出量(以下、適宜「WGV漏れ量」と称する)kwgvを取得する(ステップB10)。
ここで、図6を参照して、係るWGV漏れ量kwgvについて説明する。ここに、図6は、WGV漏れ量kwgvと過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMとの対応関係を概念的に表す模式図である。
図6において、WGV漏れ量kwgvは、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMが小さい程大きく、例えば、第1実施形態における基準値Bに対応するWGV漏れ量kwgvは図示の通りAとなる。ECU100は、ROM内部に、図6の対応関係に相当するマップを記憶している。
図5に戻り、ステップB10に係る処理において、ECU100は、ROMに記憶されたマップから、ステップA11において取得された過給圧上昇指標値ΔPMの値に対応するWGV漏れ量kwgvを取得する。
次に、ECU100は、係る取得されたWGV漏れ量kwgvが、基準値Aより大きいか否かを判別する(ステップB11)。ここで、再び図6を参照すれば明らかな通り、基準値Aとは、第1実施形態に係る基準値Bと対応する値であり、基準値Aより大きいか否かとは、即ち、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMが基準値B未満であるか否かと等価な概念である。
従って、第1実施形態と同様の趣旨に基づいて、WGV漏れ量kwgvが基準値A以下である場合には(ステップB11:NO)、ECU100はWGV218が正常であると判別し(ステップA14)、WGV漏れ量kwgvが基準値Aより大きい場合(ステップB11:YES)、ECU100は、WGV218に閉じ不良が発生しているものと判別する(ステップA14)。
このように、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMは、WGV218の閉じ不良に起因する排気の漏出量と対応関係にあり、過給圧上昇指標値ΔPMの代わりにWGV漏れ量kwgvを閉じ不良発生の判別基準として用いても、第1実施形態と同様精度良くWGV218の閉じ不良を検出することが可能となる。
<3:第3実施形態>
WGV218における閉じ不良は、更に他の態様の下に検出することが可能である。ここで、図7を参照し、本発明の第3実施形態として、更に他の手法によるWGV218の閉じ不良の検出について説明する。ここに、図7は、本発明の第3実施形態に係るWGV漏れ検出処理のフローチャートである。尚、同図において、図3及び図5と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図7において、ECU100は、過給圧PMが上昇中であるか否かを判別する(ステップC10)。過給圧PMが上昇中であるか否かは、吸気圧センサ216によって検出される吸気圧に基づいて行なわれる。
過給圧PMが上昇中でない場合(ステップC10:NO)、ECU100は処理を実質的に待機状態に制御すると共に、過給圧PMが上昇中である場合(ステップC10:YES)、ECU100は、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)を取得する(ステップC11)。ここで、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)とは、過給期間における過給圧上昇指標値ΔPMの時間微分値であり、本発明に係る「過給圧の上昇の度合いの変化率」の一例である。尚、数式で表すと、時刻iにおける過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)(i)は、ΔPM(i)−ΔPM(i−1)となる。尚、ΔPM(i)とは、時刻iにおける過給圧上昇指標値であり、ΔPM(i−1)とは、時刻iに対し一時系列前の時刻である時刻i−1における過給圧上昇指標値である。
従って、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)は、過給圧PMがリニアに一定の上昇率で上昇している場合にはゼロとなり、値が大きい程過給圧上昇指標値ΔPMが急激に増加していることを表す指標値である。ECU100は、過給期間中、吸気圧センサ216によって検出される過給圧PMを一定のサンプリング周期で取得し、上記演算式に従って過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)を演算し取得する。
過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)を取得すると、ECU100は、係る取得された過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が、基準値C(即ち、本発明に係る「第2の判定値」の一例)よりも大きいか否かを判別する(ステップC12)。
ここで、図8を参照し、基準値Cの詳細について説明する。ここに、図8は、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)の時間特性を表した図である。
図8において、縦軸及び横軸には夫々、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)及び過給圧上昇開始からの経過時間が表されている。尚、縦軸に表される過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)は絶対値であり、下限はゼロとなっている。
WGV218が正常である場合、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)の時間特性は図示PRF3(実線)のようになる。一方、WGV218に閉じ不良が発生している場合、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)の時間特性は、図示PRF4(破線)の如くに変化する。即ち、ピーク値が正常時と較べて大きくなり、正常時には到達し得ない値まで上昇する。これは、WGV218に閉じ不良が発生している場合、その影響は過給初期において顕著であり、過給初期において過給圧PMの変化は緩やかに、そしてその後急激に増加に転じる傾向があることに起因する。
従って、WGV218に閉じ不良が発生しているか否かは、正常時の過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)では採り得ない相対的に大きい値を基準値(即ち、基準値Cである)とし、係る基準値との比較判別をもって高精度に検出することが可能となる。
尚、EC100は、予め実験的に、経験的に、理論的に或いはシミュレーション等に基づいて、WGV218の閉じ不良を正確に且つ過不足なく検出し得るものとして設定された基準値Cの値を予めROMに記憶しており、ステップC12に係る処理においてはROMから基準値Cを読み出し、比較判別処理に供する(即ち、設定する)構成となっている。
ステップC12に係る処理において、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が基準値C以下である場合(ステッC12:NO)、ECU100は、WGV218が正常であると判別する(ステップA14)と共に、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が基準値Cよりも大きい場合(ステップC12:YES)、ECU100は、WGV218に閉じ不良が発生しているものと判別する(ステップA13)。
尚、ステップC12に係る処理は、一の過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)に対して行われる処理ではなく、過給期間(即ち、過給圧PMが上昇している期間)に取得される過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)の中に、基準値Cよりも大きい値が包含されるか否かを判別する処理である。従って、過給期間中である限りは、ステップA13又はステップA14に係る処理を経て、処理がステップC10に戻され、一連の処理が繰り返される。但し、ステップA13に係る処理によってWGV218に閉じ不良が発生している旨の判別がなされた場合には、例えば、然るべきフラグをオンに設定して、WGV漏れ検出処理を終了してもよい。
<4:第4実施形態>
次に、図9を参照し、更に高精度にWGV218の閉じ不良を検出することが可能な、本発明の第4実施形態について説明する。ここに、図9は、本発明の第4実施形態に係るWGV漏れ検出処理のフローチャートである。尚、同図において、図3、図5及び図7と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図9において、ECU100は、車両10が定常走行中又は減速中であるか否かを判別する(ステップD10)。ここで、定常走行とは、例えば過給圧PMが目標過給圧PMaに到達し、維持されている状態等を指し、比較的車両10の動作条件が安定しているとみなし得る状態を包括する概念である。
言い換えれば、ステップD10に係る判別処理は、車両10が過給を開始する前段階にあるか否かを判別する処理であり、加速要求等により内燃機関の動作条件が過渡的に変化する以前であるか否かを判別する処理である。従って、定常走行中である場合の他に、機関回転数Neの低下に伴う過給圧PMの低下が生じる減速期間も判別条件に包含される。また、同様の趣旨により、定常走行である状態には車両10が停止している状態も含まれる。
車両10が定常走行中でも減速中でもない場合(ステップD10:NO)、ECU100は処理を待機状態に制御すると共に、車両10が定常走行又は減速中である場合(ステップD10:YES)、WGV漏れ検出フラグfwgvが、WGV漏れ検出処理が未実行であることを表す「0」であるか否かを判別する(ステップD11)。
本実施形態では、ECU100は、車両10における一の動作期間(即ち、イグニッションがオンされてからオフされるまでの期間)について、一回だけWGV漏れ検出処理を実行するように構成されている。WGV漏れ検出処理が実行された場合、WGV漏れ検出フラグは「1」となる。尚、無論これは例示に過ぎず、例えば、一のWGV漏れ検出処理が実行されてから一定又は不定の期間が経過した後に、或いは、車両10の動作条件が大きく変わったと判断された場合等に、WGV漏れ検出フラグが「1」から「0」へ書き換わってもよい。
WGV漏れ検出実行フラグfwgvが「1」である場合(ステップD11:NO)、ECU100は処理をステップD10に戻して処理を待機状態に制御する。一方で、WGV漏れ検出フラグが「0」である場合、即ち、未だWGV漏れ検出処理が実行されていない場合(ステップD11:YES)、ECU100は、吸入空気量Gaを取得する(ステップD12)。この際、ECU100は、エアフローメータ214によって検出される吸入空気量、スロットルバルブ220の開度及び過給圧PMに基づいて、その時点におけるエンジン200の吸入空気量Gaを取得する。
過給開始以前の吸入空気量Gaを取得すると、ECU100は、過給が開始されたか否かを判別し(ステップA10)、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMを取得して(ステップA11)、過給圧上昇指標値ΔPMが吸入空気量Gaに応じて可変である基準値k1B未満であるか否かを判別する(ステップD13)。尚、ステップA10に係る処理において過給が開始されていないと判別された場合(ステップA10:NO)、処理はステップD12に戻され、吸入空気量Gaが再取得される。即ち、ステップA10に係る処理では、常に過給直前の吸入空気量Gaが取得される。
ここで、過給開始前の吸入空気量Gaが過給圧上昇指標値ΔPMに与える影響について、図10を参照して説明する。ここに、図10は、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMと過給開始前の吸入空気量Gaとの対応関係を概念的に表した模式図である。
図9において、縦軸及び横軸には夫々過給初期における過給圧上昇指標値ΔPM及び吸入空気量Gaが表されている。図9には三種類の特性PRF5(実線)、PRF6(破線)及びPRF7(一点鎖線)が示されており、夫々が、WGV218が正常である場合の特性、WGV218に閉じ不良が生じている場合の特性、及び基準値k1Bの特性に対応している。
図示の通り、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMは、過給開始前の吸入空気量Gaに応じて増加する。従って、閉じ不良の判別に係る基準値k1Bも、同様に過給開始前の吸入空気量Gaに応じて変化させるのが好ましい。図10には正常時と閉じ不良発生時の特性の中間付近に基準値k1Bの特性が設定されている。
図9に戻り、ステップD13に係る処理において、ECU100は、過給開始前の吸入空気量Gaに応じた基準値k1Bを、予め係る吸入空気量Gaに対応付けた形で基準値を表してなるマップ(即ち、図10に相当する対応関係を表すマップであり、例えばROMに記憶される)から、ステップD12に係る処理において取得された過給開始前の吸入空気量Gaに対応する値を選択し、比較判別処理に供する。
尚、基準値が「k1B」と表されているように、係る基準値は、第1実施形態に係る基準値Bに、過給開始前の吸入空気量Gaに応じて変化する補正値k1を乗じて算出されてもよい。この場合、例えばマップ等の形態で過給開始前の吸入空気量Gaに応じた補正係数を保持し、然るべき補正係数k1を選択して基準値Bとの乗算の結果として基準値k1Bを設定してもよい。
また、基準値B或いは基準値k1Bは、必ずしもマップ等の形態で保持されている必要はなく、例えば、予め付与されるアルゴリズムや算出式に基づいて、その都度個別具体的に算出されてもよい。
ECU100は、ステップA11に係る処理において取得された、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMが基準値k1B以上であれば(ステップD13:NO)、WGV218が正常であると判別し(ステップA14)、同様に基準値k1B未満であれば(ステップD13:YES)、WGV218に閉じ不良が発生しているものと判別する(ステップA13)。ステップA13又はステップA14に係る処理によって、WGV218の故障状態が検出されると、WGV漏れ検出フラグfwgvが「1」に更新される(ステップD14)。
WGV漏れ検出フラグが更新されると、処理はステップD10に移行され、一連の処理が繰り返される。尚、WGV漏れ検出処理が1回のみ実行されることに鑑みれば、この時点で実質的に本実施形態に係るWGV漏れ検出処理が終了する。
以上説明したように、本実施形態に係るWGV漏れ検出処理によれば、過給初期の過給圧上昇指標値ΔPMが顕著に影響を受ける、過給開始前(好適には直前)の吸入空気量Gaに基づいて、閉じ不良の有無判別に係る基準値k1Bが設定され、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMとの比較判別に供される。従って、より精細に且つ実情に即した形でWGV218の閉じ不良の有無を検出することが可能となり好適である。
<5:第5実施形態>
第4実施形態として例示した、過給開始前の吸入空気量に基づいて更に精細にWGV218の閉じ不良を検出する態様は、第2実施形態のように過給圧上昇指標値変化率に対しても適用することができる。ここで、図11を参照して、このような本発明の第5実施形態について説明する。ここに、図11は、本発明の第5実施形態に係るWGV漏れ検出処理のフローチャートである。尚、同図において、図3、図5、図7及び図9と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図11において、過給開始前の吸入空気量Gaを取得し(ステップD12)、且つ過給圧PMが上昇中である場合(ステップC10)、ECU100は、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)を取得する(ステップC11)。
次に、ECU100は、取得した過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)を、過給開始前の吸入空気量Gaに応じた可変値である基準値k2Cと比較し、基準値k2Cよりも大きいか否かを判別する(ステップE10)。
ここで、図12を参照して、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)と過給開始前の吸入空気量Gaとの対応関係について説明する。ここに図12は、過給開始前の吸入空気量Gaに対する過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)の特性を概念的に表した模式図である。
図12において、縦軸及び横軸には夫々過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)及び過給開始前の吸入空気量Gaが表されている。図12には三種類の特性PRF8(実線)、PRF9(破線)及びPRF10(一点鎖線)が示されており、夫々が、WGV218が正常である場合の特性、WGV218に閉じ不良が生じている場合の特性、及び基準値k2Cの特性に対応している。
図示の通り、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)は、過給開始前の吸入空気量Gaに応じて減少する。従って、閉じ不良の有無判別に係る基準値k2Bも、同様に過給開始前の吸入空気量Gaに応じて変化させるのが好ましい。図10には正常時と閉じ不良発生時の特性の中間付近に基準値k2Bの特性が設定されている。
図11に戻り、ステップE10に係る処理において、ECU100は、過給開始前の吸入空気量Gaに応じた基準値k2Cを、予め過給開始前の吸入空気量Gaに対応付けた形で基準値を表してなるマップ(即ち、図12に相当する対応関係を表すマップであり、例えばROMに記憶される)から、ステップD12に係る処理において取得された過給開始前の吸入空気量Gaに対応する値を選択し、比較判別処理に供する。
尚、基準値が「k2C」と表されているように、係る基準値は、第3実施形態に係る基準値Cに、過給開始前の吸入空気量Gaに応じて変化する補正値k2を乗じて算出されてもよい。この場合、例えばマップ等の形態で当該吸入空気量Gaに応じた補正係数を保持し、然るべき補正係数k2を選択して基準値Bとの乗算の結果として基準値k2Cを設定してもよい。
また、基準値C或いは基準値k2Cは、必ずしもマップ等の形態で保持されている必要はなく、例えば、予め付与されるアルゴリズムや算出式に基づいて、その都度個別具体的に算出されてもよい。
ECU100は、ステップC11に係る処理において取得された、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が基準値k2C以下であれば(ステップE10:NO)、WGV218が正常であると判別し(ステップA14)、同様に基準値k2Cより大きければ(ステップE10:YES)、WGV218に閉じ不良が発生しているものと判別する(ステップA13)。ステップA13又はステップA14に係る処理によって、WGV218の故障状態が検出されると、WGV漏れ検出フラグfwgvが「1」に更新される(ステップD14)。
WGV漏れ検出フラグが更新されると、処理はステップD10に移行され、一連の処理が繰り返される。尚、WGV漏れ検出処理が1回のみ実行されることに鑑みれば、この時点で実質的に本実施形態に係るWGV漏れ検出処理が終了する。
以上説明したように、本実施形態に係るWGV漏れ検出処理によれば、過給期間における過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が顕著に影響を受ける、過給開始直前の吸入空気量Gaに基づいて、閉じ不良の有無判別に係る基準値k2Cが設定され、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)との比較判別に供される。従って、より精細に且つ実情に即した形でWGV218の閉じ不良の有無を検出することが可能となり好適である。
<6:第6実施形態>
過給期間における過給圧の上昇特性は、前述した過給開始前の吸入空気量とは異なる要因によっても顕著に影響される。ここで、図13を参照し、このような本発明の第6実施形態について説明する。ここに、図13は、本発明の第6実施形態に係るWGV漏れ検出処理のフローチャートである。尚、同図において、図3、図5、図7、図9及び図11と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図13において、過給開始直前の吸入空気量Gaを取得し(ステップD12)、且つ過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMを取得すると(ステップA11)、ECU100は、ECT400においてその時点で選択されている変速段(変速レンジ)が相対的に変速比の小さい高速用の変速段である(以降、適宜「Hiギアが選択されている」等と表現する)か否かを判別する(ステップF10)。
Hiギアが選択されている場合(ステップF10:YES)、ECU100は、ステップA11において取得された過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMが、Hiギア用の基準値k1BH未満であるか否かを判別する(ステップF11)。
一方、Hiギアが選択されていない場合、即ち相対的に変速比の大きい低速用の変速段が選択されている(以降、適宜「Lowギアが選択されている」等と称する)場合(ステップF10:NO)ECU100は、ステップA11において取得された過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMが、Lowギア用の基準値k1BL未満であるか否かを判別する(ステップF12)。
ここで、図14及び図15を参照して、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMと変速比との関係について説明する。ここに、図14は、Hiギアが選択されている場合の、過給開始前の吸入空気量Gaに対する過給圧上昇指標値ΔPMの特性を概念的に表す模式図であり、図15は、Lowギアが選択されている場合の、過給開始前の吸入空気量Gaに対する過給圧上昇指標値ΔPMの特性を概念的に表す模式図である。尚、各図において、図10と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図14において、WGV218の正常時に対応する特性及び閉じ不良発生時に対応する特性並びに基準値k1BHに対応する特性を夫々表す図示PRF11(実線)、PRF12(破線)及びPRF13(一点鎖線)が示される。例えば、吸入空気量Ga1に対応する基準値k1BHは、図示の通りk1BH1となる。
一方、図15において、図14と同様の条件に対応する夫々PRF14(実線)、PRF15(破線)及びPRF16(一点鎖線)が示される。ここで、図14と同様に吸入空気量Ga1に対応する基準値k1BLは、k1BL1(k1BL1>k1BH1)であり、Lowギアが選択されている方が、Hiギアが選択されているよりも全体的に過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMの値が高いことが分かる。これは、ギア比が相対的に高いことに起因して機関回転数Neが上昇し易く結果として吸入空気量Gaが大きくなり易い(即ち、過給圧が上昇し易い)ためである。
図13に戻り、Hiギア選択時に過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMがk1BH以上であるか(ステップF11:NO)、又はLowギア選択時に過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMがk1BL以上である(ステップF12:NO)場合、ECU100は、WGV218が正常であるものと判別する(ステップA14)。一方、Hiギア選択時に過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMがk1BH未満であるか(ステップF11:YES)、又はLowギア選択時に過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMがk1BL未満である(ステップF12:YES)場合、ECU100は、WGV218に閉じ不良が発生しているものと判別する(ステップA13)。
このように、本実施形態によれば、ECT400において選択されている変速段に対応する変速比に応じて、閉じ不良の有無判別に供すべき基準値k1Bを変化させることが可能であり、車両10の運転条件を考慮した更に精細な閉じ不良の検出が可能となる。
尚、本実施形態では、変速比が、高速用のHiギアか低速用のLowギアかのいずれかに分類されるが、より好ましい態様としては、ECT400において選択可能な変速比の各々について、個別に基準値k1Bが設定されていてもよい。
また、変速比に応じた基準値は、過給開始前の吸入空気量の場合と同様に、全て予めマップに格納されていてもよいし、マップに格納される補正係数に基づいた数値演算の結果として導き出されてもよい。或いは全てが数値演算の結果として導き出されてもよい。
<7:第7実施形態>
過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMは、過給開始前の吸入空気量Ga及び機関回転数Neの値によってはWGV218の閉じ不良に対する感度が低くなり易い。ここで、図16を参照し、このような事態に対処し得る本発明の第7実施形態に係るWGV漏れ検出処理について説明する。ここに、図16は、本発明の第7実施形態に係るWGV漏れ検出処理のフローチャートである。尚、同図において、図3、図5、図7、図9、図11及び図13と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図16において、過給開始前における吸入空気量Gaを取得すると(ステップD12)、ECU100は、更に機関回転数Neを取得する(ステップG10)。機関回転数Neを取得すると、ECU100は、第6実施形態と同様に、ECT400においてHiギアが選択されているか否かを判別する(ステップG11)。
Hiギアが選択されている場合(ステップG11:YES)、ECU100は、ステップD12に係る処理で取得された過給開始前の吸入空気量GaがHiギア用の上限値DH未満であるか否かを判別する(ステップG12)。過給開始前の吸入空気量GaがDH未満である場合には(ステップG12:YES)、ECU100は更にステップG10において取得された機関回転数NeがHiギア用の上限値EH未満であるか否かを判別する(ステップG14)。
一方、Lowギアが選択されている場合(ステップG11:NO)、ECU100は、過給開始前の吸入空気量GaがLowギア用の上限値DL未満であるか否かを判別する(ステップG13)。過給開始前の吸入空気量GaがDL未満である場合には(ステップG13:YES)、ECU100は更に機関回転数NeがLowギア用の上限値EL未満であるか否かを判別する(ステップG15)。
Hiギア選択時に、当該吸入空気量GaがDH以上であるか(ステップG12:NO)若しくは機関回転数NeがEH以上である(ステップG14:NO)、又は、Lowギア選択時に当該吸入空気量GaがDL以上であるか(ステップG13:NO)若しくは機関回転数NeがEL以上である(ステップG15:NO)場合、ECU100は、WGV218に閉じ不良が発生しているか否かに関する判別を禁止し、処理をステップD10に戻す。
一方で、Hiギア選択時に、当該吸入空気量GaがDH未満であり(ステップG12:YES)且つ機関回転数NeがEH未満である(ステップG14:YES)場合、又はLowギア選択時に当該吸入空気量GaがDL未満であり(ステップG13:YES)且つ機関回転数NeがEL未満である(ステップG15:YES)場合、ECU100は、過給が開始されたか否かの判別(ステップA10)を経て、過給初期における過給圧上昇指標値ΔPMと基準値k1BH又はk1BLとの比較に基づいた閉じ不良の検出を実行する。
ここで、図17乃至図20を参照し、WGV218の閉じ不良に関する検出禁止の概念について説明する。ここに、図17は、Hiギア選択時における、過給開始前の吸入空気量Gaに対する過給圧上昇指標値ΔPMの特性を、図18は、Lowギア選択時における、過給開始前の吸入空気量Gaに対する過給圧上昇指標値ΔPMの特性を、図19は、Hiギア選択時における、過給開始前の機関回転数Neに対する過給圧上昇指標値ΔPMの特性を、そして図20は、Lowギア選択時における、過給開始前の機関回転数Neに対する過給圧上昇指標値ΔPMの特性を夫々概念的に表してなる模式図である。尚、各図において、図14及び図15と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図17において、Hiギア選択時に吸入空気量GaがDH以上となる領域では、過給圧上昇指標値ΔPMの、WGV218の閉じ不良に対する感度が相対的に低下し、正常時における過給圧上昇指標値ΔPM、閉じ不良時における過給圧上昇指標値ΔPM、及び基準値k1BHの各々の特性を表す図示PRF17(実線)、PRF18(破線)及びPRF19(一点鎖線)が相互に漸近する。従って、この領域では、WGV218の閉じ不良を誤検出する可能性が高くなる。従って、図16に示すように閉じ不良の有無判別が禁止され、図示するように過給開始前の吸入空気量GaがDH未満となる領域が検出許可範囲として設定される。
図18において、Lowギア選択時に吸入空気量GaがDL以上となる領域では、過給圧上昇指標値ΔPMの、WGV218の閉じ不良に対する感度が相対的に低下し、正常時における過給圧上昇指標値ΔPM、閉じ不良時における過給圧上昇指標値ΔPM、及び基準値k1BLの各々の特性を表す図示PRF20(実線)、PRF21(破線)及びPRF22(一点鎖線)が相互に漸近する。従って、この領域では、WGV218の閉じ不良を誤検出する可能性が高くなる。従って、図16に示すように閉じ不良の有無判別が禁止され、図示するように過給開始前の吸入空気量GaがDL未満となる領域が検出許可範囲として設定される。
図19において、Hiギア選択時に機関回転数NeがEH以上となる領域では、過給圧上昇指標値ΔPMの、WGV218の閉じ不良に対する感度が相対的に低下し、正常時における過給圧上昇指標値ΔPM、閉じ不良時における過給圧上昇指標値ΔPM、及び基準値k1BHの各々の特性を表す図示PRF23(実線)、PRF24(破線)及びPRF25(一点鎖線)が相互に漸近する。従って、この領域では、WGV218の閉じ不良を誤検出する可能性が高くなる。従って、図16に示すように閉じ不良の有無判別が禁止され、図示する通り機関回転数NeがEH未満となる領域が検出許可範囲として設定される。
図20において、Lowギア選択時に機関回転数NeがEL以上となる領域では、過給圧上昇指標値ΔPMの、WGV218の閉じ不良に対する感度が相対的に低下し、正常時における過給圧上昇指標値ΔPM、閉じ不良時における過給圧上昇指標値ΔPM、及び基準値k1BLの各々の特性を表す図示PRF26(実線)、PRF27(破線)及びPRF28(一点鎖線)が相互に漸近する。従って、この領域では、WGV218の閉じ不良を誤検出する可能性が高くなる。従って、図16に示すように閉じ不良の有無判別が禁止され、図示する通り機関回転数NeがEL未満となる領域が検出許可範囲として設定される。
このように、本実施形態によれば、WGV218における閉じ不良の発生の有無を誤判断しかねない吸入空気量及び機関回転数の領域では、閉じ不良の検出が禁止される。従って、WGV218における閉じ不良の発生の有無を効率的に且つ正確に検出することが可能となるのである。
尚、図16に示すWGV漏れ検出処理では、Hiギア選択時及びLowギア選択時のいずれにおいても、過給開始前の吸入空気量Ga及び機関回転数Neの両方が上限値未満である場合にWGV218における閉じ不良の検出が許可されているが、閉じ不良の発生を誤判断する可能性が実践的にみて顕在化しない程度である限りにおいて、例えば、いずれか一方が検出許可領域である場合に閉じ不良の検出が許可されてもよい。
<8:第8実施形態>
上述した各種実施形態に係る、WGV218の閉じ不良の検出過程で得られる各種指標値は、このような閉じ不良の検出期間と同期したタイミングで或いは係る検出期間よりも後の任意の期間において、エンジン200における過給圧制御に反映させることができる。ここで、図21を参照し、そのような趣旨に基づいた本発明の第8実施形態について説明する。ここに、図21は、本発明の第8実施形態に係る過給圧制御処理のフローチャートである。尚、同図において、図3、図5、図7、図9、図11、図13及び図16と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。尚、ここでは、上述した第1乃至第7実施形態に係る動作によって、WGV218に閉じ不良が発生しているものとする。
図21において、ECU100は、WGV漏れ量kwgvを取得し(ステップB10)且つ過給圧上昇中である場合(ステップC10:YES)、過給圧上昇指標値変化率の最大値(以下、適宜「変化率最大値」と称する)Δ(ΔPM)maxを取得する(ステップH10)。
ここで、図22を参照して、変化率最大値Δ(ΔPM)maxについて説明する。ここに図22は、WGV漏れ量kwgvに対する変化率最大値Δ(ΔPM)maxの特性を概念的に表した模式図である。
図22において、変化率最大値Δ(ΔPM)maxは、総体的にみてWGV漏れ量kwgvが小さい領域で大きく、WGV漏れ量kwgvが大きい領域で小さく設定される。ECU100に備わるROMには、図22に示す特性に対応するマップが記憶されている。
図21に戻り、ROMに記憶されたマップから、ステップB10に係る動作により取得されたWGV漏れ量kwgvに対応する変化率最大値Δ(ΔPM)maxを取得すると、ECU100は、目標最大過給圧PMmaxを取得する(ステップH11)。本実施形態では、目標最大過給圧PMmaxはECT400の変速段に応じて設定され、Hiギア側で相対的に大きく且つLowギア側で相対的に小さく設定される。
次に、ECU100は、吸気圧センサ216によって検出される過給圧PMを取得する(ステップH12)。過給圧PMを取得すると、更にECU100は、取得した過給圧PMが、ステップH12に係る動作で設定された目標最大過給圧PMmaxよりも大きいか否かを判別する(ステップH13)。
過給圧PMが目標最大過給圧PMmaxよりも大きい場合(ステップH13:YES)、ECU100はWGV218を、弁体が開く方向に制御する(ステップH15)。即ち、過給圧PMが低下するようにWGV218を制御する。この際、ECU100は、過給圧PMが目標最大過給圧PMmaxに維持されるようにWGV218の開閉状態を制御してもよいし、予め設定された変化量だけ開き側に制御されてもよい。
一方、過給圧PMが目標最大過給圧PMmax以下である場合(ステップH13:NO)、ECU100は、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)を取得し(ステップC11)、先に取得した変化率最大値未満であるか否かを判別する(ステップH14)。
過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が変化率最大値Δ(ΔPM)max未満である場合(ステップH14:YES)、ECU100は、WGV218を閉じ側に、即ち過給圧PMの上昇を促す方向へ制御する(ステップH16)。一方で、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が変化率最大値Δ(ΔPM)max以上である場合(ステップH14:NO)、ECU100はWGV218を開き側に制御する(ステップH15)。
ステップH15又はステップH16に係る処理が実行されると、処理はステップB10に戻され、一連の処理が繰り返される。この一連の処理が繰り返される過程で、WGV218は、ステップH13及びステップH14に係る判別の結果に応じて適宜開弁又は閉弁され、一種のフィードバック制御が実現される。
ここで、図23を参照して、本実施形態の効果について説明する。ここに、図23は、過給圧PMの時間特性を表す他の模式図である。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図23において、WGV218が正常である場合の特性であるPRF29(実線)、WGV218に閉じ不良が発生し且つ本実施形態に係る過給圧制御がなされない場合の特性であるPRF30(破線)及びWGV218に閉じ不良が発生し且つ本実施形態に係る過給圧制御がなされた場合の特性であるPRF31(太破線)が示される。尚、PRF31において、太破線以外の部分は、PRF30と同等であるとする。
図23において、PRF29及びPRF30共に、時刻T4に過給圧PMが大気圧PMthを超え、且つ時刻T5に目標過給圧PMaに到達する。然るに、過給初期における両者の傾き(即ち、過給圧上昇指標値ΔPM)を見れば、明らかにPRF30の方が緩やかであり、従ってPRF30、即ちWGV218に閉じ不良が生じている場合には、過給期間中に過給圧の急激な変化が生じることになる。
このような過給圧PMの急激な変化は、運転者によるアクセル操作を困難にする要因、及びドライバビリティの悪化等、快適性能を阻害する要因となるが、本実施形態によれば、過給圧PMが急激な変化が、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)を指標として抑制される。より具体的には、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が変化率最大値Δ(ΔPM)maxを超えないようにWGV218の開閉状態が制御されることにより、図示PRF31に示す如く過給圧PMの急激な上昇が抑制され、目標過給圧PMへの到達時刻が時刻T5から時刻T6へ推移する。このため、車両10の操作性及び快適性が相対的に向上する。
尚、本実施形態では特に、図22に示すように、過給初期における過給圧上昇指標値が相対的に低下することに起因して過給圧がより急激に変化し易い、WGV漏れ量kwgvが大きい場合に、小さくなるように変化率最大値Δ(ΔPM)maxが設定されるため、効果的である。但し、変化率最大値Δ(ΔPM)maxの設定態様は、図22のものに限定されず、WGV漏れ量kwgvに対し固定されていても、リニアに、段階的に或いは離散的に減少するよう設定されていてもよい。
<9:第9実施形態>
第8実施形態に示した過給圧制御において、変化率最大値Δ(ΔPM)maxをより精細に設定することにより、過給圧の急激な上昇を一層効果的に抑制することも可能である。ここで、図24を参照し、本発明の第9実施形態として、このような過給圧制御処理について説明する。ここに、図24は、本発明の第9実施形態に係る過給圧制御処理のフローチャートである。尚、同図において、図21と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図24において、過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)を取得すると(ステップC11)、ECU100は更に、ECT400において選択されている変速段がHiギアであるか否かを判別する(ステップI10)。Hiギアが選択されている場合(ステップI10:YES)、ECU100は、ステップC11に係る処理で取得した過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が、Hiギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxH未満であるか否かを判別する(ステップI11)。一方、Lowギアが選択されている場合(ステップI10:NO)、ECU100は、ステップC11に係る処理で取得した過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)が、Lowギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxL未満であるか否かを判別する(ステップI12)。
ここで、図25を参照し、変速比に応じた変化率最大値Δ(ΔPM)maxの設定態様について説明する。ここに、図25は、変速比に応じた変化率最大値Δ(ΔPM)maxの特性を概念的に表す模式図である。尚、同図において、図22と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図25において、Hiギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxH及びLowギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxLの特性を表す、PRF32(実線)及びPRF33(破線)が夫々示される。PRF32及びPRF33の何れも、総体的にみてWGV漏れ量kwgvが小さい領域で大きく、WGV漏れ量kwgvが大きい領域で小さく設定される。
但し、Lowギアが選択されている場合、Hiギアが選択されている場合と較べて、アクセル操作に対する過給圧上昇の感度が高いため(即ち、Lowギア程アクセル操作性が悪化するため)、PRF33はPRF32と較べて全体的に低く設定される。尚、これらの特性は、何れも図22に示す変化率最大値Δ(ΔPM)maxの特性に対し一律に補正値を乗じた形態を有しており、ECU100に備わるROMには、図22に示す特性を図25に示す各特性に変換するための補正値が、変速比(この場合、Hiギア及びLowギアの二種類)及びWGV漏れ量kwgvに対応付けられて設定されてなるマップが記憶されている。
図24に戻り、ステップI11及びステップI12に係る動作において、ECU100は、ROMに記憶されたマップから、ステップB10に係る動作により取得されたWGV漏れ量kwgv及び選択されている変速比に対応する補正値を取得し、ステップH11に係る動作により得られた変化率最大値Δ(ΔPM)maxを補正することによりHiギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxH及びLowギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxLを取得して、ステップC11に係る動作で得られた過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)との比較判別を実行する。
係る比較判別の結果、Hiギア選択時に過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)がHiギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxH未満であるか(ステップI11:YES)、Lowギア選択時に過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)がLowギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxL未満である(ステップI12:YES)場合、ECU100は、WGV218を閉じ側に制御する(ステップH16)。
一方で、係る比較判別の結果、Hiギア選択時に過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)がHiギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxH以上であるか(ステップI11:NO)、Lowギア選択時に過給圧上昇指標値変化率Δ(ΔPM)がLowギア用の変化率最大値Δ(ΔPM)maxL以上である(ステップI12:NO)場合、ECU100は、WGV218を開き側に制御する(ステップH15)。
このように、本実施形態によれば、変化率最大値Δ(ΔPM)maxが、ECT400の変速比に応じて可変であり、過給圧の急激な変化が、車両10の運転条件に応じて一層効果的に抑制される。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う排気バイパス弁の故障検出装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…車両、100…ECU、200…エンジン、201…気筒、203…ピストン、205…クランクシャフト、211…タービン、212…コンプレッサ、214…エアフローメータ、216…吸気圧センサ、217…バイパス管、218…ウェストゲートバルブ(WGV)、400…ECT。