JP4843905B2 - 高分子固体電解質の製造方法 - Google Patents
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上記で使用される化合物がモノマーである場合、液状のものが多く、常温で固体のモノマーと比較して常温での反応性が高いため、室温で長時間保管していると重合が進行してしまい、モノマーの安定性に欠け、保存性や長期信頼性が問題となる。そのため低温での保管が必要となり、低温環境設備のためにコストが高くなってしまうという問題がある。
以上の理由から、水分やアルカリ金属及びアルカリ土類金属イオンの両方を低減させ、サイクル特性を改善することが望まれている。
即ち本発明は、常温で固体のモノマーより重合して得られる高分子を含んでなる高分子固体電解質であって、前記モノマーは、水分の含有量が200ppm以下且つアルカリ金属とアルカリ土類金属の含有量が200ppm以下であることを特徴とする高分子固体電解質であり、前記モノマーは、有機溶媒で再結晶させたものであることが好ましい。さらに、前記モノマーが、ラジカル重合性官能基を有する酸成分とラジカル重合性官能基を有するアンモニウム成分とから構成される塩モノマーであっても良い。
さらに、本発明は、前記高分子固体電解質を構成要素とすることを特徴とする二次電池である。
前記乾燥剤としては、例えば、モレキュラーシーブ、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、水素化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸ナトリウムなどの既知の乾燥剤が挙げられる。これらの乾燥剤を使用するとアルカリ金属イオンなどのリチウムイオン以外のイオン性不純物を混入させてしまう可能性があるが、この後モノマーを再結晶することにより、イオン性不純物は除去される。また、得られた結晶を洗浄する操作を入れる方が好ましいが、その際に使用する溶媒も含水量が200ppm以下、リチウムイオン以外のアルカリ金属及びアルカリ土類金属イオンの総量が200ppm以下に制御された溶媒を使用することが好ましい。
本発明の電池で用いられる正極に使用される活物質としては、エネルギー密度が高く、リチウムイオンの可逆的な脱挿入に優れたリチウムを含有する遷移金属酸化物が好ましく、例えば、LiCoO2などのリチウムコバルト酸化物、LiMn2O4などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO2などのリチウムニッケル酸化物、これら酸化物の混合物およびLiNiO2のニッケルの一部をコバルトやマンガンに置換したものなどが挙げられる。負極活物質としては、リチウムイオンを挿入、脱離させることのできる炭素系材料が挙げられ、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズおよびグラファイトなどが挙げられる。
次に、黒鉛粉末などの負極活物質と、ポリ(ビニリデンフルオライド)などの結着剤を混合して、負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン中に分散させてスラリー状の負極合剤とする。この負極合剤を、厚み15μmの銅箔などからなる負極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで負極が得られる。
以上のようにして得られた負極と正極とを、厚みが25μmのポリエチレン製微多孔性フィルムからなるセパレーターを介して密着させ、巻回して電極巻回体とし、この電極巻回体を、絶縁材料からなる外装フィルムに封入するとともに、上記で得られたモノマー電解質溶液を外装フィルム中に注入する。次に、外装フィルムの外周縁部を封口し、正極端子と負極端子とを、外装フィルムの開口部に挟み込むとともに、電極巻回体を外装フィルム中に減圧下にて密閉する。次に、これを60℃から80℃の温度下で、5分から2時間加熱することによって、高分子固体電解質を用いた二次電池が得られる。
2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸10.36g(50mmol)を水500mlに溶解し、それに炭酸銀13.80g(50mmol)を添加して、8時間攪拌し、濾過後無色透明の液を得た。これに、100mmol/Lの3−メタクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの水溶液を滴下して反応させた。反応の進行と同時に塩化銀の白色固体が析出した。反応は導電率計で、導電率を測定しながら行い、3−メタクリル酸アミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリドの水溶液を、492.0ml滴下した時点で、導電率が最小値を示し、その点を終点とした。濾過により析出した塩化銀を取り除き、無色透明の水溶液を得た。濾液をエバポレーターにより濃縮し、少し粘調な水溶液を得た。
得られた溶液をエタノールで希釈し、これを大量のテトラヒドロフランに滴下して白色の沈殿物を得た。濾過により得られた白色粉末(以下、塩モノマーA)を真空乾燥し、示差走査熱分析(DSC)により生成物の融点の確認を行った。融点は152℃であり、得られた化合物は単一の塩モノマーであることを確認した。得られた塩モノマーAを、五酸化リンを備えたデシケータ中に1日間室温で保管し乾燥させた。この塩モノマーAの水分量は、800ppmであった。
上記で得られた塩モノマーAを20g、脱水メタノール(水分量50ppm以下)を500mlビーカーに入れ完全に溶解させた。得られた溶液を二つに分け、一方の溶液について、エバポレーターを用いて濃縮し析晶が見え始めた時点で濃縮をやめ、冷蔵庫に一晩静置し、塩モノマーAを再結晶させた。得られた結晶を濾過し、その結晶を脱水アセトン(水分量50ppm以下)を用いて洗浄した。得られた結晶を上記と同様に乾燥させ、水分量とNa+イオン、K+イオン、Ca2+イオンの濃度を測定し、表1にまとめた。(実施例1)
残り半分の溶液には、乾燥剤として硫酸カルシウム(和光純薬製、DRIERITE)を20g添加して2時間攪拌後、1日静置した。濾過により乾燥剤を取り除き、得られた塩モノマー溶液を実施例1と同様の操作を行い、水分量とNa+イオン、K+イオン、Ca2+イオンの濃度を測定し、表1にまとめた。(実施例2)
実施例1−2において、塩モノマーAの代わりにN−イソプロピルアクリルアミド(和光純薬社製)(以下NIPAmと略す)を25g、メタノールの代わりにアセトン/ヘキサン混合溶媒(水分量50ppm以下)(混合体積比1/1)200mlを用いて実施例1−2と同様の再結晶操作を行い、アセトン/ヘキサンから再結晶させたNIPAmとDRIERITEで脱水処理後アセトン/ヘキサンから再結晶させたNIPAmをそれぞれ得た。この2種類のNIPAmの水分量とNa+イオン、K+イオン、Ca2+イオンの濃度を測定し、表1にまとめた。
実施例1−2において、塩モノマーAの代わりにN,N−メチレンビスアクリルアミド(関東化学社製)(以下BISと略す)を20g、メタノールの代わりにエタノール(水分量50ppm以下)800mlを用いて実施例1−2と同様の再結晶操作を行い、エタノールから再結晶させたBISとDRIERITEで脱水処理後エタノールから再結晶させたBISをそれぞれ得た。この2種類のBISの水分量とNa+イオン、K+イオン、Ca2+イオンの濃度を測定し、表1にまとめた。
実施例1と同様にして作製した水分量800ppmの塩モノマーAを20g、蒸留水400mlを用いて実施例1と同様の再結晶操作を行い、蒸留水から再結晶させた塩モノマーAを得た。この塩モノマーAの水分量とNa+イオン、K+イオン、Ca2+イオンの濃度を測定し、表1にまとめた。本比較例で得られた塩モノマーAの水分量は650ppmと高かった。
ジエチレングリコールジアクリレート(以下DEDAと略す)20g、電子工業用メタノール(和光純薬社製)(Na+イオン、K+イオン、Ca2+イオンのいずれも100ppb以下)100mlとで溶液を調製し、これにカチオン交換樹脂SK112(三菱化学社製)を10g添加した後、静かに2時間攪拌した。この溶液から濾過によりカチオン交換樹脂を取り除き、DEDAのメタノール溶液を得た。このメタノール溶液からエバポレーターでメタノールを除去し、さらに真空ポンプを用いてメタノールを完全に除去した。なお、上記で使用したカチオン交換樹脂は、2規定の塩酸で2回処理した後、電子工業用メタノールで5回洗浄したものを使用した。得られたDEDAの水分量とNa+イオン、K+イオン、Ca2+イオンの濃度を測定し、表1にまとめた。イオン性不純物のNa+イオン、K+イオン、Ca2+イオンはいずれも10ppm以下となったが、水分量が4100ppmと多くなった。なお、このDEDAは常温で液状のモノマーであり、再結晶操作は不可能であった。
比較例2において、カチオン交換樹脂の代わりにDRIERITE(硫酸カルシウム)10gを用いて比較例2と同様の操作を行い、脱水処理したDEDAを得た。この水分量とNa+イオン、K+イオン、Ca2+イオンの濃度を測定し、表1にまとめた。水分量は100ppm以下となったが、Ca2+イオンは1200ppmと高くなった。なお、このDEDAは常温で液状のモノマーであり、再結晶操作は不可能であった。
<高分子固体電解質を用いた二次電池の作製とサイクル特性評価>
正極活物質として、LiCoO2を85重量%、導電剤としての黒鉛を5重量%と、結着剤としてのポリ(ビニリデンフルオライド)を10重量%とを混合して、正極合剤を調製し、この正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン中に分散させて、スラリー状の正極合剤とした。この正極合剤を、正極集電体として用いる厚み20μmのアルミニウム箔の両面に、均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで正極を得た。
負極活物質として粉砕した黒鉛粉末を90重量%と、結着剤としてポリ(ビニリデンフルオライド)を10重量%とを混合して、負極合剤を調製し、この負極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン中に分散させて、スラリー状の負極合剤とした。この負極合剤を、負極集電体として用いる厚み15μmの銅箔の両面に、均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで負極を得た。
実施例2で得られた塩モノマーAを4.0重量%、実施例6で得られたBISを0.6重量%、エチレンカーボネートを47.5重量%、ジエチルカーボネートを47.5重量%、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.4重量%となるように混合した溶液中に、電解質塩としてLiPF6を1.0mol/L溶解させたモノマー電解液を調製した。
上記のようにして得られた負極と正極とを、厚みが25μmのポリエチレン製微多孔性フィルムからなるセパレーターを介して密着させ、巻回して電極巻回体とした。この電極巻回体を、絶縁材料からなる外装フィルムに封入するとともに、上記で得られたモノマー溶液を、外装フィルム中に注入した。そして外装フィルムの外周縁部を封口し、正極端子と負極端子とを、外装フィルムの開口部に挟み込むとともに、電極巻回体を外装フィルム中に、減圧下にて密閉した。これを80℃の温度下で60分間加熱して、モノマーを重合すると共に、高分子固体電解質を用いた二次電池を得た。
電池の組み立て後、25℃、500mAの定電流電圧充電を上限4.2Vまで2時間行い、次に500mAでの放電(1時間率放電)を終止電圧2.5Vまで行った。これを1サイクルとして充放電を100サイクル行い、1サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の容量維持率を求めた。結果を表2に示す。100サイクル後の容量維持率は、99%であった。
実施例7におけるモノマー電解液の代わりに、実施例2で得られた塩モノマーAを3.0重量%、実施例4で得られたNIPAm3.0重量%、実施例6で得られたBISを0.6重量%、エチレンカーボネートを46.5重量%、ジエチルカーボネートを46.5重量%、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを0.4重量%となるように混合した溶液中に、電解質塩としてLiPF6を1.0mol/L溶解させたモノマー電解液を用いる以外は実施例7と同様にして100サイクル後の容量維持率を求めた。結果を表2に示す。100サイクル後の容量維持率は、98%であった。
<高分子固体電解質二次電池の作製とサイクル特性評価>
実施例7におけるモノマー電解液の代わりに、比較例1で得られた塩モノマーAを4.0重量%、比較例3で得られたDEDAを0.6重量%、エチレンカーボネートを47.5重量%、ジエチルカーボネートを47.5重量%、重合開始剤として過酸化ベンゾイルを0.4重量%となるように混合した溶液中に、電解質塩としてLiPF6を1.0mol/L溶解させたモノマー電解液を用いる以外は実施例7と同様にして100サイクル後の容量維持率を求めた。結果を表2に示す。100サイクル後の容量維持率は、42%であった。
Claims (2)
- 常温で固体のモノマーより重合して得られる高分子を含んでなる高分子固体電解質の製造方法であって、前記モノマーを、水分量50ppm以下の、メタノール、アセトン/ヘキサン混合体積比1/1の溶媒またはエタノールで再結晶させることを特徴とする、水分の含有量が200ppm以下且つアルカリ金属とアルカリ土類金属の含有量が200ppm以下であることを特徴とする高分子固体電解質の製造方法。
- 前記モノマーは、ラジカル重合性官能基を有する酸成分とラジカル重合性官能基を有す
るアンモニウム成分とから構成される塩モノマーである請求項1記載の高分子固体電解質の製造方法。
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