JP4843840B2 - 電気光学装置用基板の製造方法、電気光学装置用基板、電気光学装置及び電子機器 - Google Patents
電気光学装置用基板の製造方法、電気光学装置用基板、電気光学装置及び電子機器 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光透過性基板の表面上に所定のパターンの遮光層と絶縁体層とトランジスタ素子とを順次具備する電気光学装置用基板の製造方法、該製造方法により製造される電気光学装置用基板、該電気光学装置用基板を備えた電気光学装置及び電子機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
絶縁基体上に単結晶シリコン薄膜を形成し、その単結晶シリコン薄膜に半導体デバイスを形成するSOI技術は、素子の高速化や低消費電力化、高集積化等の利点を有することから、例えば液晶装置等の電気光学装置に好適に用いられている。
【0003】
このように電気光学装置にSOI技術を適用する場合、光透過性基板に単結晶シリコン基板を貼り合わせて研磨等により薄膜の単結晶シリコン層を形成し、単結晶シリコン層により例えば液晶駆動用のMOSFET等のトランジスタ素子を形成している。
【0004】
ところで、例えば液晶装置を使ったプロジェクタ等の投射型表示装置では、通常、液晶装置を構成する一方の光透過性基板側(液晶装置の表面)から光が入射するが、この光がもう一方の基板の表面上に形成されたトランジスタ素子のチャネル領域に入射して光リーク電流を生ずるのを防ぐためにトランジスタ素子の光が入射する側に遮光層を設ける構造とするのが一般的である。
【0005】
しかしながら、トランジスタ素子の光が入射する側に遮光層を設けても、トランジスタ素子が形成された基板が光透過性を有する場合には、液晶装置に入射した光がトランジスタ素子が形成された基板の裏面の界面で反射してトランジスタ素子のチャネル部に戻り光として入射することがある。この戻り光は、液晶装置の表面から入射する光量に対する割合としては僅かであるが、プロジェクタなどの非常に強力な光源を用いる装置においては充分に光リーク電流を生じうる。すなわち、トランジスタ素子が形成された基板の裏面からの戻り光は素子のスイッチング特性に影響を及ぼしデバイスの特性を劣化させる。なお、ここでは単結晶シリコン層の形成された面を基板の表面とし、反対側を裏面としている。
【0006】
特開平10−293320号公報には、トランジスタ素子を形成する基板の表面上に、各トランジスタ素子に対応させて遮光層を形成する技術が提唱されており、基板表面上に上記の如く所定のパターンの遮光層を形成し、その上に絶縁体層を形成した後、絶縁体層の表面を研磨により平坦化し、その表面上に単結晶シリコン基板を貼り合わせる方法が提唱されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般の電気光学装置では、基板の表面上において、表示領域(画素部)にのみトランジスタ素子が形成され、非表示領域にはトランジスタ素子が形成されないなど、トランジスタ素子が密集する領域(形成される領域)と密集しない領域(形成されない領域)とが存在する。そのため、各トランジスタ素子に対応して設けられる遮光層も同様の密度で分布し、その結果、その上に形成される絶縁体層表面に凹凸が形成され、その凹凸にも分布が発生するため、絶縁体層表面の研磨を行っても、基板の表面上において、研磨の度合いにばらつきを生じ、基板表面全体の研磨を行っても、凸部が密集する部分では絶縁体層が厚くなり、凸部が密集しない部分(凹部が密集する部分)では絶縁体層が薄くなり、研磨後の絶縁体層表面の平坦性が低くなるという恐れがある。
【0008】
例えば、図17(a)に示すように、基板1001の表面上において、遮光層1003が密集する領域1010と密集しない領域1020が存在する場合、遮光層1003を形成した基板1001上に形成される絶縁体層1004の表面において、遮光層1003が密集する領域1010に比較して、密集しない領域1020では凹部が多く形成される。なお、遮光層1003が密集する領域1010においても遮光層1003のパターンに応じて、絶縁体層1004の表面には微細な凹凸が形成されるが、図面上は簡略化のため、省略している。
【0009】
このように、凹凸に分布を有する絶縁体層1004表面を研磨した場合、絶縁体層1004表面において、凸部の面積が少ない領域(遮光層1003が密集しない領域1020)の方が凸部の面積が多い領域(遮光層1003が密集する領域1010)よりも速く研磨される。その結果、図17(b)に示すように、遮光層1003が密集しない領域1020の絶縁体層1004が過剰に研磨されて、絶縁体層1004表面において、遮光層1003が密集する領域1010と密集しない領域1020との間には段差が発生し、絶縁体層1004表面の平坦性が低いものとなる。
【0010】
このように、絶縁体層表面の平坦性が低くなった場合には、以下のような問題が生じる。第1に、絶縁体層と単結晶シリコン層とを貼り合わせた境界面にボイドを生じ、このボイドの存在する領域に形成されるトランジスタ素子の特性を劣化させる恐れがある。第2に、絶縁体層と単結晶シリコン層との貼り合わせ強度が弱くなり、単結晶シリコン層形成後のトランジスタ素子形成工程において膜剥がれ等の不良を発生させる原因となり製品の歩留まりを低下させる恐れがある。
【0011】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、単結晶シリコン層を貼り合わせる絶縁体層表面を平坦化することができる電気光学装置用基板の製造方法及び電気光学装置用基板、この電気光学装置用基板を備えた電気光学装置、及びこの電気光学装置を備えた電子機器を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、トランジスタ素子の形成領域にのみ遮光層を形成する場合など、光透過性基板の表面における凹部の面積が比較的大きい場合には以下の方法によって上記課題を解決し、単結晶シリコン層を貼り合わせる絶縁体層表面を平坦化することができることを見出した。
【0013】
すなわち、トランジスタ素子の形成領域にのみ遮光層を形成する場合など、光透過性基板の表面における凹部の面積が比較的大きい場合の第1の本発明の電気光学装置用基板の製造方法は、光透過性基板上に遮光層を形成する工程と、前記遮光層をトランジスタ素子の形成領域にパターニングする工程と、前記パターニングされた遮光層上に、前記パターニングされた遮光層の厚みに起因する凸部と、隣合う該凸部間に凹部とを有する絶縁体層を形成する工程と、前記絶縁体層の表面を研磨する工程と、表面を研磨した前記絶縁体層の表面に単結晶シリコン層を貼り合わせる工程と、前記単結晶シリコン層によりトランジスタ素子を形成する工程とを具備し、前記絶縁体層を形成する工程は、前記パターニングされた遮光層上に、第1の絶縁体層を形成する工程と、前記第1の絶縁体層上に、該第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い第2の絶縁体層を形成する工程とを有し、前記研磨する工程において、前記凹部に形成された前記第2の絶縁体層の表面と同一面となるように、前記凸部の第1及び第2の絶縁体層を研磨し、当該凸部を除去することを特徴とする。
【0014】
本発明者は、このように、トランジスタ素子の形成領域にのみ遮光層を形成する場合など、光透過性基板の表面における凹部の面積が比較的大きい場合には、遮光層を形成した光透過性基板上に第1の絶縁体層と、第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い(研磨されにくい)第2の絶縁体層を形成してから基板表面を研磨することにより、第2の絶縁体層の存在によって、過剰に研磨される部分が生じることを防止することができ、絶縁体層の表面を平坦化できることを見出した。なお、この方法によって、絶縁体層の表面を平坦化することができる理由については実施の形態において詳細に説明する。
【0015】
また、本発明者は、トランジスタ素子の非形成領域にも遮光層を形成する場合など、光透過性基板の表面における凹部の面積が比較的小さい場合には、以下の方法によって上記課題を解決し、単結晶シリコン層を貼り合わせる絶縁体層表面を平坦化することができることを見出した。
【0016】
すなわち、トランジスタ素子の非形成領域にも遮光層を形成する場合など、光透過性基板の表面における凹部の面積が比較的小さい場合の第2の本発明の電気光学装置用基板の製造方法は、光透過性基板上に遮光層を形成する工程と、前記遮光層をトランジスタ素子の形成領域にパターニングする工程と、前記パターニングされた遮光層上に、前記パターニングされた遮光層の厚みに起因する凸部と、隣合う該凸部間に凹部とを有する絶縁体層を形成する工程と、前記絶縁体層の表面を研磨する工程と、表面を研磨した前記絶縁体層の表面に単結晶シリコン層を貼り合わせる工程と、前記単結晶シリコン層によりトランジスタ素子を形成する工程とを具備し、前記絶縁体層を形成する工程は、前記パターニングされた遮光層上に、第1の絶縁体層を形成する工程と、前記第1の絶縁体層上に、該第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い第2の絶縁体層を形成する工程と、前記第2の絶縁体層上に、該第2の絶縁体層よりも研磨レートの高い第3の絶縁体層を前記パターニングされた遮光層の厚みに起因して前記第2の絶縁体層に形成された段差の高さよりも厚く形成する工程とを有し、前記研磨する工程において、前記第3の絶縁体層を研磨して前記凸部の第2の絶縁体層を露出させてから研磨を停止することを特徴とする。
【0017】
本発明者は、このように、トランジスタ素子の非形成領域にも遮光層を形成する場合など、光透過性基板の表面における凹部の面積が比較的小さい場合には、遮光層を形成した基板上に第1の絶縁体層と、第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い(研磨されにくい)第2の絶縁体層と、第2の絶縁体層より研磨レートの高い(研磨されやすい)第3の絶縁体層を形成してから基板表面を研磨することにより、第2の絶縁体層の存在によって、過剰に研磨される部分が生じることを防止することができ、絶縁体層の表面を平坦化できることを見出した。なお、この方法によって、絶縁体層の表面を平坦化することができる理由については実施の形態において詳細に説明する。
【0018】
上記第1、第2の本発明の電気光学装置用基板の製造方法によれば、絶縁体層表面を平坦化することができるので、絶縁体層と単結晶シリコン層とを貼り合わせた境界面にボイドを発生させないため、トランジスタ素子の特性の劣化を防止することができる。また、絶縁体層と単結晶シリコン層との貼り合わせ強度を確保できるので、トランジスタ素子を形成する工程において膜剥がれ等の不良が発生することを防止し、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0019】
上記第1の本発明の電気光学装置用基板の製造方法により、光透過性基板上に、少なくとも所定のパターンの遮光層と絶縁体層とトランジスタ素子とを順次具備する電気光学装置用基板であって、前記絶縁体層が、酸化シリコンからなる第1の絶縁体層と、該第1の絶縁体層上に前記遮光層と重ならないように部分的に形成され、該第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い窒化シリコンからなる第2の絶縁体層とから構成され、表面が研磨により平坦化されたものであるとともに、前記トランジスタ素子を構成する半導体層が単結晶シリコン層から形成されたものであることを特徴とする電気光学装置用基板を提供することができる。
【0020】
また、上記第2の本発明の電気光学装置用基板の製造方法により、光透過性基板上に、所定のパターンの遮光層と絶縁体層とトランジスタ素子とを順次具備する電気光学装置用基板であって、前記絶縁体層が、酸化シリコンからなる第1の絶縁体層と、該第1の絶縁体層の表面上に形成され、該第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い窒化シリコンからなる第2の絶縁体層と、該第2の絶縁体層の表面上に前記遮光層と重ならないように部分的に形成され、該第2の絶縁体層よりも研磨レートの高い酸化シリコンからなる第3の絶縁体層とから構成され、表面が研磨により平坦化されたものであるとともに、前記トランジスタ素子を構成する半導体層が単結晶シリコン層から形成されたものであることを特徴とする電気光学装置用基板を提供することができる。
【0021】
なお、本発明の電気光学装置用基板において、第1の絶縁体層、第3の絶縁体層の材料としては酸化シリコン、第1の絶縁体層、第3の絶縁体層よりも研磨レートの低い第2の絶縁体層の材料としては窒化シリコンを例示することができる。
【0022】
さらに、上記の電気光学装置用基板と、該電気光学装置用基板のトランジスタ素子が形成された面と対向するように配置された他の光透過性基板を具備し、これら2枚の光透過性基板の間に挟持された電気光学材料層を具備することを特徴とする電気光学装置を提供することができる。
【0023】
本発明の電気光学装置用基板及びこの電気光学装置用基板を備えた本発明の電気光学装置は、絶縁体層と単結晶シリコン層とを貼り合わせた境界面にボイドがなく、絶縁体層と単結晶シリコン層との貼り合わせ強度が強く、トランジスタ素子の特性にばらつきや欠陥を生じることがない、性能の優れたものとなる。
【0024】
また、本発明の電気光学装置を備えることにより、性能の優れた電子機器を提供することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。以下の第1、第2実施形態においては電気光学装置の例として、TFT(トランジスタ素子)をスイッチング素子として用いたアクティブマトリクス型の液晶装置を取り上げて説明する。また、第1、第2実施形態において、第1遮光膜(遮光層)を形成した光透過性基板の表面上に第1層間絶縁膜(絶縁体層)を形成する工程及び、形成される第1層間絶縁膜(絶縁体層)の構造が特に特徴的なものとなっている。
【0026】
[第1実施形態]
(電気光学装置の構造)
はじめに、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置の構造について、液晶装置を取り上げて説明する。本実施形態の電気光学装置(液晶装置)は、本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法により製造されたTFTアレイ基板(電気光学装置用基板)を備えたものである。
【0027】
また、本実施形態においては、後述する第1遮光膜(遮光層)をトランジスタ素子の形成領域(画素部)にのみ形成する場合について説明する。
【0028】
図1は液晶装置の画素部(表示領域)を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。また、図2は、データ線、走査線、画素電極、遮光膜等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群を拡大して示す平面図である。また、図3は、図2のA−A’断面図である。尚、図1〜図3においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0029】
図1において、液晶装置の画素部を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、マトリクス状に複数形成された画素電極9aと画素電極9aを制御するためのTFT(トランジスタ素子)30とからなり、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6aに対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。
【0030】
画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、後述する対向基板に形成された後述する対向電極との間で一定期間保持される。
【0031】
液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの液晶部分を通過不可能とされ、ノーマリーブラックモードであれば、印加された電圧に応じて入射光がこの液晶部分を通過可能とされ、全体として液晶装置から画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射される。
【0032】
ここで、保持された画像信号のリークによってコントラスト比の低下やフリッカと呼ばれるちらつきなど表示上の不具合が生じるのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。例えば、画素電極9aの電圧は、データ線に電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量70により保持される。これにより、保持特性は更に改善され、コントラスト比の高い液晶装置が実現できる。本実施形態では特に、このような蓄積容量70を形成するために、後述の如く走査線と同層、もしくは導電性の遮光膜を利用して低抵抗化された容量線3bを設けている。
【0033】
次に、図2に基づいて、TFTアレイ基板のトランジスタ素子の形成領域(画素部)内の平面構造について詳細に説明する。図2に示すように、液晶装置のTFTアレイ基板上のトランジスタ素子の形成領域(画素部)内には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a’により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a、走査線3a及び容量線3bが設けられている。データ線6aは、コンタクトホール5を介して単結晶シリコン層の半導体層1aのうち後述のソース領域に電気的に接続されており、画素電極9aは、コンタクトホール8を介して半導体層1aのうち後述のドレイン領域に電気的に接続されている。また、半導体層1aのうちチャネル領域(図中右上りの斜線の領域)に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する。
【0034】
容量線3bは、走査線3aに沿ってほぼ直線状に伸びる本線部(即ち、平面的に見て、走査線3aに沿って形成された第1領域)と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って前段側(図中、上向き)に突出した突出部(即ち、平面的に見て、データ線6aに沿って延設された第2領域)とを有する。
【0035】
そして、図中右上がりの斜線で示した領域には、複数の第1遮光膜(遮光層)11aが設けられている。より具体的には、第1遮光膜11aは夫々、画素部において半導体層1aのチャネル領域を含むTFTをTFTアレイ基板の後述する基板本体側から見て覆う位置に設けられており、更に、容量線3bの本線部に対向して走査線3aに沿って直線状に伸びる本線部と、データ線6aと交差する箇所からデータ線6aに沿って隣接する段側(即ち、図中下向き)に突出した突出部とを有する。第1遮光膜11aの各段(画素行)における下向きの突出部の先端は、データ線6a下において次段における容量線3bの上向きの突出部の先端と重ねられている。この重なった箇所には、第1遮光膜11aと容量線3bとを相互に電気的に接続するコンタクトホール13が設けられている。即ち、本実施形態では、第1遮光膜11aは、コンタクトホール13により前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続されている。
【0036】
また、本実施形態において、画素電極9a、TFT、及び第1遮光膜11aは画素部内にのみ設けられている。
【0037】
次に、図3に基づいて、液晶装置の画素部内の断面構造について説明する。図3に示すように、液晶装置において、TFTアレイ基板10と、これに対向配置される対向基板20との間に液晶層50が挟持されている。
【0038】
TFTアレイ基板10は、石英などの光透過性基板からなる基板本体10Aとその液晶層50側表面上に形成された画素電極9a、TFT(トランジスタ素子)30、配向膜16を主体として構成されており、対向基板20は透明なガラスや石英などの光透過性基板からなる基板本体20Aとその液晶層50側表面上に形成された対向電極(共通電極)21と配向膜22とを主体として構成されている。
【0039】
TFTアレイ基板10の基板本体10Aの液晶層50側表面上には、画素電極9aが設けられており、その液晶層50側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは、例えばITO(インジウム・ティン・オキサイド)などの透明導電性薄膜からなり、配向膜16は、例えばポリイミドなどの有機薄膜からなる。
【0040】
また、基板本体10Aの液晶層50側表面上には、図3に示すように、各画素電極9aに隣接する位置に、各画素電極9aをスイッチング制御する画素スイッチング用TFT30が設けられている。
【0041】
他方、対向基板20の基板本体20Aの液晶層50側表面上には、その全面に渡って対向電極(共通電極)21が設けられており、その液晶層50側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は、例えばITOなどの透明導電性薄膜からなり、配向膜22は、例えばポリイミドなどの有機薄膜からなる。
【0042】
また、基板本体20Aの液晶層50側表面上には、更に図3に示すように、各画素部の開口領域以外の領域に第2遮光膜23が設けられている。このように対向基板20側に第2遮光膜23を設けることにより、対向基板20側から入射光が画素スイッチング用TFT30の半導体層1aのチャネル領域1a’やLDD(Lightly Doped Drain)領域1b及び1cに侵入することを防止することができるとともに、コントラストを向上させることができる。
【0043】
このように構成され、画素電極9aと対向電極21とが対向するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、両基板の周縁部間に形成されたシール材(図示略)により囲まれた空間に液晶(電気光学材料)が封入され、液晶層(電気光学材料層)50が形成されている。
【0044】
液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなっており、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態を採る。
【0045】
また、シール材は、TFTアレイ基板10及び対向基板20をそれらの周縁部で貼り合わせるための、例えば光硬化性接着剤や熱硬化性接着剤等の接着剤からなり、その内部には両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、ガラスビーズ等のスペーサが混入されている。
【0046】
また、図3に示すように、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの液晶層50側表面上において、各画素スイッチング用TFT30に対応する位置には、第1遮光膜(遮光層)11aが設けられている。第1遮光膜11aは、好ましくは不透明な高融点金属であるTi、Cr、W、Ta、Mo及びPdのうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド等から構成される。
【0047】
第1遮光膜11aをこのような材料から構成することにより、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの表面上において、第1遮光膜11aの形成工程の後に行われる画素スイッチング用TFT30の形成工程における高温処理により、第1遮光膜11aが破壊されたり溶融することを防止することができる。
【0048】
本実施形態においては、このようにTFTアレイ基板10に第1遮光膜11aが形成されているので、TFTアレイ基板10側からの戻り光等が画素スイッチング用TFT30のチャネル領域1a’やLDD領域1b、1cに入射することを防ぐことができ、光電流の発生によりトランジスタ素子としての画素スイッチング用TFT30の特性が劣化することを防止することができる。
【0049】
また、第1遮光膜11aと複数の画素スイッチング用TFT30との間には、第1層間絶縁膜(絶縁体層)12が設けられている。第1層間絶縁膜12は、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aを第1遮光膜11aから電気的絶縁するために設けられるものであり、第1層間絶縁膜12は、基板本体10Aの表面上の全面に形成されている。
【0050】
また、このようにTFTアレイ基板10の表面上に第1層間絶縁膜12を設けることにより、第1遮光膜11aが画素スイッチング用TFT30等を汚染することを防止することもできる。
【0051】
なお、本実施形態において、第1層間絶縁膜12は、第1の絶縁体層と第1の絶縁体層の表面上に部分的に形成され、第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い第2の絶縁体層とから構成されており、表面が平坦化されたものである。第1層間絶縁膜12の内部構造については、本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法(TFTアレイ基板10の製造方法)を説明する際に詳細に説明する。
【0052】
また、本実施形態では、ゲート絶縁膜2を走査線3aに対向する位置から延設して誘電体膜として用い、半導体膜1aを延設して第1蓄積容量電極1fとし、更にこれらに対向する容量線3bの一部を第2蓄積容量電極とすることにより、蓄積容量70が構成されている。
【0053】
より詳細には、半導体層1aの高濃度ドレイン領域1eが、データ線6a及び走査線3aの下に延設されて、同じくデータ線6a及び走査線3aに沿って伸びる容量線3b部分に絶縁膜2を介して対向配置されて、第1蓄積容量電極(半導体層)1fとされている。特に蓄積容量70の誘電体としての絶縁膜2は、高温酸化により単結晶シリコン層上に形成されるTFT30のゲート絶縁膜2に他ならないので、薄く且つ高耐圧の絶縁膜とすることができ、蓄積容量70は比較的小面積で大容量の蓄積容量として構成できる。
【0054】
更に、蓄積容量70においては、図2及び図3から分かるように、第1遮光膜11aを、第2蓄積容量電極としての容量線3bの反対側において第1蓄積容量電極1fに第1層間絶縁膜12を介して第3蓄積容量電極として対向配置させることにより(図3の図示右側の蓄積容量70参照)、蓄積容量が更に付与されるように構成されている。即ち、本実施形態では、第1蓄積容量電極1fを挟んで両側に蓄積容量が付与されるダブル蓄積容量構造が構築されており、蓄積容量がより増加する。このような構造とすることにより、本実施形態の液晶装置が持つ、表示画像におけるフリッカや焼き付きを防止する機能を向上させることができる。
【0055】
これらの結果、データ線6a下の領域及び走査線3aに沿って液晶のディスクリネーションが発生する領域(即ち、容量線3bが形成された領域)という開口領域を外れたスペースを有効に利用して、画素電極9aの蓄積容量を増やすことが出来る。
【0056】
また、本実施形態では、第1遮光膜11a(及びこれに電気的に接続された容量線3b)は定電位源に電気的に接続されており、第1遮光膜11a及び容量線3bは、定電位とされている。従って、第1遮光膜11aに対向配置される画素スイッチング用TFT30に対し第1遮光膜11aの電位変動が悪影響を及ぼすことはない。また、容量線3bは、蓄積容量70の第2蓄積容量電極として良好に機能し得る。なお、定電位源としては、本実施形態の液晶装置を駆動するための周辺回路(例えば、走査線駆動回路、データ線駆動回路等)に供給される負電源、正電源等の定電位源、接地電源、対向電極21に供給される定電位源等を挙げることができる。このように周辺回路等の電源を利用すれば、専用の電位配線や外部入力端子を設ける必要なく、第1遮光膜11a及び容量線3bを定電位にすることができる。
【0057】
また、図2及び図3に示したように、本実施形態では、TFTアレイ基板10に第1遮光膜11aを設けるのに加えて、コンタクトホール13を介して第1遮光膜11aは、前段あるいは後段の容量線3bに電気的に接続するように構成されている。このような構成とした場合には、各第1遮光膜11aが、自段の容量線に電気的に接続される場合と比較して、画素部の開口領域の縁に沿って、データ線6aに重ねて容量線3b及び第1遮光膜11aが形成される領域の他の領域に対する段差が少なくて済む。このように画素部の開口領域の縁に沿った段差が少ないと、当該段差に応じて引き起こされる液晶のディスクリネーション(配向不良)を低減できるので、画素部の開口領域を広げることが可能となる。
【0058】
また、第1遮光膜11aは、前述のように直線状に伸びる本線部から突出した突出部にコンタクトホール13が開孔されている。ここで、コンタクトホール13の開孔箇所としては、縁に近い程、ストレスが縁から発散されやすくなる等の理由により、クラックが発生しにくい。従って、どれだけ突出部の先端に近づけてコンタクトホール13を開孔するかに応じて(好ましくは、マージンぎりぎりまで先端に近づけるかに応じて)、製造工程中に第1遮光膜11aにかかる応力が緩和されて、より効果的にクラックを防止し得、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0059】
また、容量線3bと走査線3aとは、同一のポリシリコン膜からなり、蓄積容量70の誘電体膜とTFT30のゲート絶縁膜2とは、同一の高温酸化膜からなり、第1蓄積容量電極1fと、TFT30のチャネル形成領域1aおよびソース領域1d、ドレイン領域1e等とは、同一の半導体層1aからなっている。このため、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの表面上に形成される積層構造を簡略化でき、更に、後述の液晶装置の製造方法において、同一の薄膜形成工程で容量線3b及び走査線3aを同時に形成でき、蓄積容量70の誘電体膜及びゲート絶縁膜2を同時に形成することができる。
【0060】
更に、図2に示したように、第1遮光膜11aは、走査線3aに沿って夫々伸延しており、しかも、データ線6aに沿った方向に対し複数の縞状に分断されている。このため、例えば各画素部の開口領域の周りに一体的に形成された格子状の遮光膜を配設した場合と比較して、第1遮光膜11a、走査線3a及び容量線3bを形成するポリシリコン膜、データ線6aを形成する金属膜、層間絶縁膜等からなる本実施形態の液晶装置の積層構造において、各膜の物性の違いに起因した製造工程中の加熱冷却に伴い発生するストレスを格段に緩和することができる。このため、第1遮光膜11a等におけるクラックの発生防止や歩留まりの向上を図ることができる。
【0061】
尚、図2では、第1遮光膜11aにおける直線状の本線部分は、容量線3bの直線状の本線部分にほぼ重ねられるように形成されているが、第1遮光膜11aが、TFT30のチャネル領域を覆う位置に設けられており且つコンタクトホール13を形成可能なように容量線3bと何れかの箇所で重ねられていれば、TFT30に対する遮光機能及び容量線に対する低抵抗化機能を有することができる。従って、例えば相隣接した走査線3aと容量線3bとの間にある走査線に沿った長手状の間隙領域や、走査線3aと若干重なる位置にまでも、当該第1遮光膜11aを設けてもよい。
【0062】
容量線3bと第1遮光膜11aとは、第1層間絶縁膜12に開孔されたコンタクトホール13を介して確実に且つ高い信頼性を持って、両者は電気的に接続されているが、このようなコンタクトホール13は、画素毎に開孔されていても良いし、複数の画素からなる画素グループ毎に開孔されていても良い。
【0063】
コンタクトホール13を画素毎に開孔した場合には、第1遮光膜11aによる容量線3bの低抵抗化を促進でき、更に、両者間における冗長構造の度合いを高めることができる。他方、コンタクトホール13を複数の画素からなる画素グループ毎に(例えば2画素毎に或いは3画素毎に)開孔した場合には、容量線3bや第1遮光膜11aのシート抵抗、駆動周波数、要求される仕様等を勘案しつつ、第1遮光膜11aによる容量線3bの低抵抗化及び冗長構造による利益と、多数のコンタクトホール13を開孔することによる製造工程の複雑化或いは当該液晶装置の不良化等の弊害とを適度にバランスできるので、実践上大変有利である。
【0064】
また、このような画素毎或いは画素グループ毎に設けられるコンタクトホール13は、対向基板20側から見てデータ線6aの下に開孔されている。このため、コンタクトホール13は、画素部の開口領域から外れており、しかもTFT30や第1蓄積容量電極1fが形成されていない第1層間絶縁膜12の部分に設けられているので、画素部の有効利用を図りつつ、コンタクトホール13の形成によるTFT30や他の配線等の不良化を防ぐことができる。
【0065】
また、図3において、画素スイッチング用TFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜2、データ線6a、半導体層1aの低濃度ソース領域(ソース側LDD領域)1b及び低濃度ドレイン領域(ドレイン側LDD領域)1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0066】
高濃度ドレイン領域1eには、複数の画素電極9aのうちの対応する一つが接続されている。ソース領域1b及び1d並びにドレイン領域1c及び1eは後述するように、半導体層1aに対し、N型又はP型のチャネルを形成するかに応じて所定濃度のN型用又はP型用のドーパントをドープすることにより形成されている。N型チャネルのTFTは、動作速度が速いという利点があり、画素のスイッチング素子である画素スイッチング用TFT30として用いられることが多い。
【0067】
データ線6aは、Al等の金属膜や金属シリサイド等の合金膜などの遮光性の薄膜から構成されている。また、走査線3a、ゲート絶縁膜2及び第1層間絶縁膜12の上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール5及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール8が各々形成された第2層間絶縁膜4が形成されている。このソース領域1bへのコンタクトホール5を介して、データ線6aは高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。
【0068】
更に、データ線6a及び第2層間絶縁膜4の上には、高濃度ドレイン領域1eへのコンタクトホール8が形成された第3層間絶縁膜7が形成されている。この高濃度ドレイン領域1eへのコンタクトホール8を介して、画素電極9aは高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続されている。前述の画素電極9aは、このように構成された第3層間絶縁膜7の上面に設けられている。尚、画素電極9aと高濃度ドレイン領域1eとは、データ線6aと同一のAl膜や走査線3bと同一のポリシリコン膜を中継して電気的に接続するようにしてもよい。
【0069】
画素スイッチング用TFT30は、好ましくは上述のようにLDD構造を持つが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物イオンの打ち込みを行わないオフセット構造を有していてもよいし、ゲート電極(走査線3a)をマスクとして高濃度で不純物イオンを打ち込み、自己整合的に高濃度ソース及びドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。
【0070】
また、画素スイッチング用TFT30のゲート電極(走査線3a)をソース−ドレイン領域1b及び1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。この際、各々のゲート電極には同一の信号が印加されるようにする。このようにダブルゲート或いはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース−ドレイン領域接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。これらのゲート電極の少なくとも1個をLDD構造或いはオフセット構造にすれば、更にオフ電流を低減でき、安定したスイッチング素子を得ることができる。
【0071】
ここで、一般には、半導体層1aのチャネル領域1a’、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c等を構成する単結晶シリコン層は、光が入射するとシリコンが有する光電変換効果により光電流が発生してしまい画素スイッチング用TFT30のトランジスタ特性が劣化するが、本実施形態では、走査線3aを上側から覆うようにデータ線6aがAl等の遮光性の金属薄膜から形成されているので、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a’及びLDD領域1b、1cへの入射光の入射を防止することが出来る。
【0072】
また、前述のように、画素スイッチング用TFT30の下側(基板本体10A側)には、第1遮光膜11aが設けられているので、少なくとも半導体層1aのチャネル領域1a’及びLDD領域1b、1cへの戻り光の入射を防止することが出来る。
【0073】
尚、本実施形態においては、相隣接する前段あるいは後段の画素に設けられた容量線3bと第1遮光膜11aとを接続しているため、最上段あるいは最下段の画素に対して第1遮光膜11aに定電位を供給するための容量線3bが必要となる。そこで、容量線3bの数を垂直画素数に対して1本余分に設けておくようにすると良い。
【0074】
(電気光学装置の製造方法)
次に、上記構造を有する液晶装置の製造方法について、図4〜図11を参照して説明する。
【0075】
はじめに、図4〜図11に基づいて、本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法として、TFTアレイ基板10の製造方法について説明する。なお、図4〜図5と図6〜図11とは異なる縮尺で示している。
【0076】
まず、図4、図5に基づいて、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの表面上に第1遮光膜(遮光層)11aと第1層間絶縁膜12とを形成するまでの工程について詳細に説明する。尚、図4、図5は各工程におけるTFTアレイ基板の一部分を、図3と同様に、図2のA−A’断面に対応させて示す工程図である。
【0077】
はじめに、石英基板、ハードガラス等の基板本体(光透過性基板)10Aを用意し、基板本体10Aを好ましくはN2(窒素)等の不活性ガス雰囲気下、約850〜1300℃、より好ましくは1000℃の高温でアニール処理し、後に実施される高温プロセスにおいて基板本体10Aに生じる歪みが少なくなるように前処理することが望ましい。即ち、製造工程において処理される最高温に合わせて、基板本体10Aを同じ温度かそれ以上の温度で熱処理することが望ましい。
【0078】
このように処理された基板本体10Aの表面上の全面に、図4(a)に示すように、Ti、Cr、W、Ta、Mo及びPdのうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド等を、スパッタリング法、CVD法、電子ビーム加熱蒸着法などにより、例えば150〜200nmの膜厚に堆積することにより、遮光層11を形成する。
【0079】
次に、基板本体10Aの表面上の全面にフォトレジストを形成した後、最終的に形成する第1遮光膜11aのパターン(図2参照)を有するフォトマスクを用いてフォトレジストを露光し、その後フォトレジストを現像することにより、図4(b)に示すように、最終的に形成する第1遮光膜11aのパターンを有するフォトレジスト207を形成する。
【0080】
次に、フォトレジスト207をマスクとして遮光層11のエッチングを行い、その後、フォトレジスト207を剥離することにより、図4(c)に示すように、基板本体10Aの表面上において、トランジスタ素子の形成領域(画素部)にのみ所定のパターン(図2参照)の第1遮光膜(遮光層)11aが形成される。第1遮光膜11aの膜厚は、例えば150〜200nmとなる。
【0081】
次に、図5(a)に示すように、第1遮光膜11aを形成した基板本体10Aの表面上に、スパッタリング法、CVD法などにより、第1の絶縁体層12Aを形成する。第1の絶縁体層12Aの材料としては、酸化シリコンや、NSG(ノンドープトシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)などの高絶縁性ガラス等を例示することができる。また、第1の絶縁体層12Aの膜厚は、少なくとも第1遮光膜11aの膜厚よりも厚く設定し、例えば、約400〜1000nm、より好ましくは800nm程度とする。
【0082】
次に、図5(b)に示すように、第1の絶縁体層12Aの表面上に、スパッタリング法、CVD法などにより、第1の絶縁体層12Aよりも研磨レートの低い(研磨されにくい)第2の絶縁体層12Bを形成する。第1の絶縁体層12Aが酸化シリコンからなる場合には、第1の絶縁体層12Aよりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bの材料としては窒化シリコンを例示することができる。窒化シリコンの研磨レートは酸化シリコンの研磨レートの1/3〜1/5程度である。
【0083】
第2の絶縁体層12Bの膜厚は、第1の絶縁体層12Aとの研磨レートの差によって決定されるが、後述する研磨工程で過剰な研磨を抑制できる程度の厚さ、例えば50〜150nm程度とする。
【0084】
図5(b)に示すように、第2の絶縁体層12Bを形成した後の基板本体10Aの表面は、トランジスタ素子の形成領域においては凹凸を有するものとなり、トランジスタ素子の非形成領域においては平坦な凹部となっている。
【0085】
次に、第2の絶縁体層12Bを形成した基板本体10Aの表面をCMP(化学的機械研磨)法などの方法を用いて研磨する。
【0086】
この工程において、トランジスタ素子の形成領域にのみ凸部が形成されているので、トランジスタ素子の形成領域において、研磨レートが低く研磨速度は遅いが、凸部表面の第2の絶縁体層12Bは研磨される。凸部表面の第2の絶縁体層12Bが除去された後は、凸部は研磨レートの低い第1の絶縁体層12Aで構成されているので、凸部の研磨が進行する。このとき、凹部表面は凸部よりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bで構成されているので、凹部表面が研磨されることを防止することができ、凸部のみを研磨することができる。
【0087】
凸部が減少し、トランジスタ素子の非形成領域及び形成領域の凹部表面の第2の絶縁体層12Bの高さに研磨が到達すると、図5(c)に示すように、基板本体10Aの表面において、研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bの占める面積が増加し、研磨速度が低下するので、この時点で研磨を停止することにより、第1の絶縁体層12Aと、第1の絶縁体層12Aの表面上に部分的に形成され、第1の絶縁体層12Aよりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bとから構成され、表面が平坦化された第1層間絶縁膜(絶縁体層)12が形成される。
【0088】
なお、この工程において、トランジスタ素子の非形成領域及び形成領域の凹部表面の第2の絶縁体層12Bを全く削らなくても良いし、若干削って薄くしてもよいが、少なくともトランジスタ素子の非形成領域及び形成領域の凹部表面に、第1の絶縁体層12Aが露出しないように研磨を行う。
【0089】
次に、図6〜図11に基づいて、表面が平坦化された第1層間絶縁膜12を形成した基板本体10AからTFTアレイ基板10を製造する方法について説明する。尚、図6〜図11は各工程におけるTFTアレイ基板の一部分を、図3と同様に、図2のA−A’断面に対応させて示す工程図である。
【0090】
また、図6(a)は、図5(c)の一部分を取り出して異なる縮尺で示す図である。また、図6〜図11においては、簡略化のため、第1層間絶縁膜12を構成する第1の絶縁体層12A及び第2の絶縁体層12Bの図示を省略する。
【0091】
図6(b)に示すように、表面が平坦化された第1層間絶縁膜(絶縁体層)12を形成した図6(a)に示す基板本体10Aと単結晶シリコン基板206aとの貼り合わせを行う。
【0092】
貼り合わせに用いる単結晶シリコン基板206aの厚さは例えば600μmであり、あらかじめ、単結晶シリコン基板206aの基板本体10Aと貼り合わせる側の表面には、酸化膜層206bが形成されていると共に、水素イオン(H+)が例えば加速電圧100keV、ドーズ量10×1016/cm2にて注入されている。酸化膜層206bは単結晶シリコン基板206aの表面を0.05〜0.8μm程度酸化することにより形成される。
【0093】
貼り合わせ工程は、例えば300℃で2時間熱処理することによって2枚の基板を直接貼り合わせる方法を採用することができる。また、貼り合わせ強度をさらに高めるためには、さらに熱処理温度を上げて450℃程度にする必要があるが、石英などからなる基板本体10Aと単結晶シリコン基板206aの熱膨張係数には大きな差があるため、このまま加熱すると単結晶シリコン層にクラックなどの欠陥が発生し、製造されるTFTアレイ基板10の品質が劣化する恐れがある。
【0094】
このようなクラックなどの欠陥の発生を抑制するためには、一度300℃にて貼り合わせのための熱処理を行った単結晶シリコン基板206aをウエットエッチングまたはCMPによって100〜150μm程度まで薄くした後に、さらに高温の熱処理を行うことが望ましい。例えば80℃のKOH水溶液を用い、単結晶シリコン基板206aの厚さが150μmなるようエッチングを行った後、基板本体10Aとの貼り合わせを行い、さらに450℃にて再び熱処理し、貼り合わせ強度を高めることが望ましい。
【0095】
次に、図6(c)に示すように、貼り合わせた単結晶シリコン基板206aの貼り合わせ面側の酸化膜206bと単結晶シリコン層206を残したまま、単結晶シリコン基板206aを基板本体10Aから剥離するための熱処理を行う。この基板の剥離現象は、単結晶シリコン基板206a中に導入された水素イオンによって、単結晶シリコン基板206aの表面近傍のある層でシリコンの結合が分断されるために生じるものである。
【0096】
熱処理は例えば、貼り合わせた2枚の基板を毎分20℃の昇温速度にて600℃まで加熱することにより行うことができる。この熱処理によって、貼り合わせた単結晶シリコン基板206aが基板本体10Aと分離し、基板本体10Aの表面上には約200nm±5nm程度の単結晶シリコン層206が形成される。なお、単結晶シリコン層206は、前に述べた単結晶シリコン基板206aに対して行われる水素イオン注入の加速電圧を変えることによって50nm〜3000nmまで任意の膜厚で形成することが可能である。
【0097】
なお、薄膜化した単結晶シリコン層206は、ここに述べた方法以外に、単結晶シリコン基板の表面を研磨してその膜厚を3〜5μmとした後、さらにPACE(Plasma Assisted Chemical Etching)法によってその膜厚を0.05〜0.8μm程度までエッチングして仕上げる方法や、多孔質シリコン上に形成したエピタキシャルシリコン層を多孔質シリコン層の選択エッチングによって貼り合わせ基板上に転写するELTRAN(Epitaxial Layer Transfer)法によっても得ることができる。
【0098】
次に、図6(d)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、図2に示した如き所定パターンの半導体層1aを形成する。即ち、特にデータ線6a下で容量線3bが形成される領域及び走査線3aに沿って容量線3bが形成される領域には、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aから延設された第1蓄積容量電極1fを形成する。
【0099】
次に、図6(e)に示すように、画素スイッチング用TFT30を構成する半導体層1aと共に第1蓄積容量電極1fを約850〜1300℃の温度、好ましくは約1000℃の温度で72分程度熱酸化することにより、約60nmの比較的薄い厚さの熱酸化シリコン膜を形成し、画素スイッチング用TFT30のゲート絶縁膜2と共に容量形成用のゲート絶縁膜2を形成する。この結果、半導体層1a及び第1蓄積容量電極1fの厚さは、約30〜170nmの厚さ、ゲート絶縁膜2の厚さは、約60nmの厚さとなる。
【0100】
次に、図7(a)に示すように、Nチャネルの半導体層1aに対応する位置にレジスト膜301を形成し、Pチャネルの半導体層1aにPなどのV族元素のドーパント302を低濃度で(例えば、Pイオンを70keVの加速電圧、2×1011/cm2のドーズ量にて)ドープする。
【0101】
次に、図7(b)に示すように、図示を省略するPチャネルの半導体層1aに対応する位置にレジスト膜を形成し、Nチャネルの半導体層1aにBなどのIII族元素のドーパント303を低濃度で(例えば、Bイオンを35keVの加速電圧、1×1012/cm2のドーズ量にて)ドープする。
【0102】
次に、図7(c)に示すように、Pチャネル、Nチャネル毎に各半導体層1aのチャネル領域1a’の端部を除く基板10の表面にレジスト膜305を形成し、Pチャネルについて、図7(a)に示した工程の約1〜10倍のドーズ量のPなどのV族元素のドーパント306、Nチャネルについて図7(b)に示した工程の約1〜10倍のドーズ量のBなどのIII族元素のドーパント306をドープする。
【0103】
次に、図7(d)に示すように、半導体層1aを延設してなる第1蓄積容量電極1fを低抵抗化するため、基板本体10Aの表面の走査線3a(ゲート電極)に対応する部分にレジスト膜307(走査線3aよりも幅が広い)を形成し、これをマスクとしてその上からPなどのV族元素のドーパント308を低濃度で(例えば、Pイオンを70keVの加速電圧、3×1014/cm2のドーズ量にて)ドープする。
【0104】
次に、図8(a)に示すように、第1層間絶縁膜12に第1遮光膜11aに至るコンタクトホール13を反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより或いはウエットエッチングにより形成する。この際、反応性エッチング、反応性イオンビームエッチングのような異方性エッチングにより、コンタクトホール13等を開孔した方が、開孔形状をマスク形状とほぼ同じにできるという利点がある。但し、ドライエッチングとウエットエッチングとを組み合わせて開孔すれば、これらのコンタクトホール13等をテーパ状にできるので、配線接続時の断線を防止できるという利点が得られる
次に、図8(b)に示すように、減圧CVD法等によりポリシリコン層3を350nm程度の厚さで堆積した後、リン(P)を熱拡散し、ポリシリコン膜3を導電化する。又は、Pイオンをポリシリコン膜3の成膜と同時に導入したドープトシリコン膜を用いてもよい。これにより、ポリシリコン層3の導電性を高めることができる。
【0105】
次に、図8(c)に示すように、レジストマスクを用いたフォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、図2に示した如き所定パターンの走査線3aと共に容量線3bを形成する。尚、この後、基板本体10Aの裏面に残存するポリシリコンを基板本体10Aの表面をレジスト膜で覆ってエッチングにより除去する。
【0106】
次に、図8(d)に示すように、半導体層1aにPチャネルのLDD領域を形成するために、Nチャネルの半導体層1aに対応する位置をレジスト膜309で覆い、走査線3a(ゲート電極)を拡散マスクとして、まずBなどのIII族元素のドーパント310を低濃度で(例えば、BF2イオンを90keVの加速電圧、3×1013/cm2のドーズ量にて)ドープし、Pチャネルの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cを形成する。
【0107】
続いて、図8(e)に示すように、半導体層1aにPチャネルの高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成するために、Nチャネルの半導体層1aに対応する位置をレジスト膜309で覆った状態で、かつ、図示はしていないが走査線3aよりも幅の広いマスクでレジスト層をPチャネルに対応する走査線3a上に形成した状態、同じくBなどのIII族元素のドーパント311を高濃度で(例えば、BF2イオンを90keVの加速電圧、2×1015/cm2のドーズ量にて)ドープする。
【0108】
次に、図9(a)に示すように、半導体層1aにNチャネルのLDD領域を形成するために、Pチャネルの半導体層1aに対応する位置をレジスト膜(図示せず)で覆い、走査線3a(ゲート電極)を拡散マスクとして、PなどのV族元素のドーパント60を低濃度で(例えば、Pイオンを70keVの加速電圧、6×1012/cm2のドーズ量にて)ドープし、Nチャネルの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cを形成する。
【0109】
続いて、図9(b)に示すように、半導体層1aにNチャネルの高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成するために、走査線3aよりも幅の広いマスクでレジスト62をNチャネルに対応する走査線3a上に形成した後、同じくPなどのV族元素のドーパント61を高濃度で(例えば、Pイオンを70keVの加速電圧、4×1015/cm2のドーズ量にて)ドープする。
【0110】
次に、図9(c)に示すように、画素スイッチング用TFT30における走査線3aと共に容量線3b及び走査線3aを覆うように、例えば、常圧又は減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第2層間絶縁膜4を形成する。第2層間絶縁膜4の膜厚は、約500〜1500nmが好ましく、更に800nmがより好ましい。
【0111】
この後、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを活性化するために約850℃のアニール処理を20分程度行う。
【0112】
次に、図9(d)に示すように、データ線31に対するコンタクトホール5を、反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより或いはウエットエッチングにより形成する。また、走査線3aや容量線3bを図示しない配線と接続するためのコンタクトホールも、コンタクトホール5と同一の工程により第2層間絶縁膜4に開孔する。
【0113】
次に、図10(a)に示すように、第2層間絶縁膜4の上に、スパッタ処理等により、遮光性のAl等の低抵抗金属や金属シリサイド等を金属膜6として、約100〜700nmの厚さ、好ましくは約350nmに堆積し、更に図10(b)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、データ線6aを形成する。
【0114】
次に、図10(c)に示すように、データ線6a上を覆うように、例えば、常圧又は減圧CVD法やTEOSガス等を用いて、NSG、PSG、BSG、BPSGなどのシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等からなる第3層間絶縁膜7を形成する。第3層間絶縁膜7の膜厚は、約500〜1500nmが好ましく、更に800nmがより好ましい。
【0115】
次に、図11(a)に示すように、画素スイッチング用TFT30において、画素電極9aと高濃度ドレイン領域1eとを電気的に接続するためのコンタクトホール8を、反応性エッチング、反応性イオンビームエッチング等のドライエッチングにより形成する。
【0116】
次に、図11(b)に示すように、第3層間絶縁膜7の上に、スパッタ処理等により、ITO等の透明導電性薄膜9を、約50〜200nmの厚さに堆積し、更に図11(c)に示すように、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程等により、画素電極9aを形成する。尚、本実施形態の液晶装置が反射型液晶装置である場合には、Al等の反射率の高い不透明な材料から画素電極9aを形成してもよい。
【0117】
続いて、画素電極9aの上にポリイミド系の配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角を持つように、且つ所定方向にラビング処理を施すこと等により、配向膜16(図3参照)が形成される。
【0118】
以上のようにして、TFTアレイ基板(電気光学装置用基板)10が製造される。
【0119】
本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法によれば、基板本体(光透過性基板)10Aの表面上において、トランジスタ素子の形成領域(画素部)にのみ第1遮光膜(遮光層)11aを形成し、第1遮光膜11aを形成した基板本体10Aの表面上に第1の絶縁体層12Aと第1の絶縁体層12Aよりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bを順次積層形成してから基板本体10A表面の研磨を行うことにより、表面が平坦化された第1層間絶縁膜(絶縁体層)12を形成することができるので、第1層間絶縁膜(絶縁体層)12と単結晶シリコン層206とを貼り合わせた境界面にボイドを発生させないため、TFT(トランジスタ素子)30の特性の劣化を防止することができる。
【0120】
また、第1層間絶縁膜12と単結晶シリコン層206との貼り合わせ強度を確保することができるので、TFT(トランジスタ素子)30を形成する工程において膜剥がれ等の不良が発生することを防止し、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0121】
次に、対向基板20の製造方法及びTFTアレイ基板10と対向基板20とから液晶装置を製造する方法について説明する。
【0122】
図3に示した対向基板20については、基板本体20Aとしてガラス基板等の光透過性基板を用意し、基板本体20Aの表面上に、第2遮光膜23及び後述する周辺見切りとしての第2遮光膜を形成する。第2遮光膜23及び後述する周辺見切りとしての第2遮光膜は、例えばCr、Ni、Alなどの金属材料をスパッタリングした後、フォトリソグラフィ工程、エッチング工程を経て形成される。尚、これらの第2遮光膜は、上記の金属材料の他、カーボンやTiなどをフォトレジストに分散させた樹脂ブラックなどの材料から形成してもよい。
【0123】
その後、基板本体20Aの表面上の全面にスパッタリング法などにより、ITO等の透明導電性薄膜を、約50〜200nmの厚さに堆積することにより、対向電極21を形成する。更に、対向電極21の表面上の全面にポリイミドなどの配向膜の塗布液を塗布した後、所定のプレティルト角を持つように、且つ所定方向にラビング処理を施すこと等により、配向膜22(図3参照)を形成する。以上のようにして、対向基板20が製造される。
【0124】
最後に、上述のように製造されたTFTアレイ基板10と対向基板20とを、配向膜16及び22が互いに対向するようにシール材により貼り合わせ、真空吸引法などの方法により、両基板間の空間に、例えば複数種類のネマティック液晶を混合してなる液晶を吸引して、所定の厚みを有する液晶層50を形成することにより、上記構造の液晶装置が製造される。
【0125】
(液晶装置の全体構成)
上記のように構成された本実施形態の液晶装置の全体構成を図12及び図13を参照して説明する。尚、図12は、TFTアレイ基板10を対向基板20側から見た平面図であり、図13は、対向基板20を含めて示す図12のH−H’断面図である。
【0126】
図12において、TFTアレイ基板10の表面上には、シール材52がその縁に沿って設けられており、図13に示すように、図12に示したシール材52とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材52によりTFTアレイ基板10に固着されている。
【0127】
図12に示すように、対向基板20の表面上にはシール材52の内側に並行させて、例えば第2遮光膜23と同じ或いは異なる材料から成る周辺見切りとしての第2遮光膜53が設けられている。
【0128】
また、TFTアレイ基板10において、シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路101及び実装端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならない場合には、走査線駆動回路104は片側だけでも良いことは言うまでもない。
【0129】
また、データ線駆動回路101を表示領域(画素部)の辺に沿って両側に配列してもよい。例えば奇数列のデータ線6aは表示領域の一方の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給し、偶数列のデータ線6aは表示領域の反対側の辺に沿って配設されたデータ線駆動回路から画像信号を供給するようにしてもよい。この様にデータ線6aを櫛歯状に駆動するようにすれば、データ線駆動回路の占有面積を拡張することができるため、複雑な回路を構成することが可能となる。
【0130】
更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられており、更に、周辺見切りとしての第2遮光膜53の下に隠れてプリチャージ回路を設けてもよい。また、TFTアレイ基板10と対向基板20間のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための導通材106が設けられている。
【0131】
また、TFTアレイ基板10の表面上には更に、製造途中や出荷時の液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。また、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の表面上に設ける代わりに、例えばTAB(テープオートメイテッドボンディング基板)上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板10の周辺領域に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。
【0132】
また、対向基板20の光が入射する側及びTFTアレイ基板10の光が出射する側には各々、例えば、TN(ツイステッドネマティック)モード、STN(スーパーTN)モード、D−STN(デュアルスキャン−STN)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光手段などが所定の方向で配置される。
【0133】
本実施形態の液晶装置がカラー液晶プロジェクタ(投射型表示装置)に適用される場合には、3枚の液晶装置がRGB用のライトバルブとして各々用いられ、各パネルには各々RGB色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射されることになる。従って、その場合には上記実施形態で示したように、対向基板20に、カラーフィルタは設けられていない。
【0134】
しかしながら、対向基板20の基板本体20Aの液晶層50側表面上において、第2遮光膜23の形成されていない画素電極9aに対向する所定領域にRGBのカラーフィルタをその保護膜と共に形成してもよい。このような構成とすれば、液晶プロジェクタ以外の直視型や反射型のカラー液晶テレビなどのカラー液晶装置に、上記実施形態の液晶装置を適用することができる。
【0135】
更に、対向基板20の表面上に1画素に1個対応するようにマイクロレンズを形成してもよい。このようにすれば、入射光の集光効率を向上することで、明るい液晶装置が実現できる。更にまた、対向基板20の表面上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用して、RGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付き対向基板によれば、より明るいカラー液晶装置が実現できる。
【0136】
なお、本実施形態における液晶装置では、従来と同様に入射光を対向基板20側から入射させることとしたが、TFTアレイ基板10に第1遮光膜11aを設ける構成としているので、TFTアレイ基板10側から入射光を入射させ、対向基板20側から出射するようにしても良い。即ち、このように液晶装置を液晶プロジェクタに取り付けても、半導体層1aのチャネル領域1a’及びLDD領域1b、1cに光が入射することを防ぐことが出来、高画質の画像を表示することが可能である。
【0137】
従来は、TFTアレイ基板10の裏面側での反射を防止するために、反射防止用のAR(Anti−reflection)被膜された偏光手段を別途配置したり、ARフィルムを貼り付ける必要があった。しかし、本実施形態では、TFTアレイ基板10の表面と半導体層1aの少なくともチャネル領域1a’及びLDD領域1b、1cとの間に第1遮光膜11aが形成されているため、このようなAR被膜された偏光手段やARフィルムを用いたり、TFTアレイ基板10そのものをAR処理した基板を使用する必要が無くなる。
【0138】
従って、上記実施形態によれば、材料コストを削減でき、また偏光手段の貼り付け時に、ごみ、傷等により、歩留まりを落とすことがなく大変有利である。また、耐光性が優れているため、明るい光源を使用したり、偏光ビームスプリッタにより偏光変換して、光利用効率を向上させても、光によるクロストーク等の画質劣化を生じない。
【0139】
また、本実施形態の液晶装置は、本実施形態の電気光学装置用基板用基板の製造方法により製造されたTFTアレイ基板(電気光学装置用基板)10を備えたものであるので、第1層間絶縁膜(絶縁体層)12と単結晶シリコン層206とを貼り合わせた境界面にボイドがなく、第1層間絶縁膜(絶縁体層)12と単結晶シリコン層206との貼り合わせ強度が強く、TFT(トランジスタ素子)30の特性にばらつきや欠陥を生じることがない、性能の優れたものとなる。
【0140】
[第2実施形態]
(電気光学装置用基板の製造方法)
次に、本発明に係る第2実施形態の電気光学装置用基板の製造方法として、TFTアレイ基板の製造方法について説明する。
【0141】
本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法において、第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法と異なる点は第1遮光膜の形成領域と、第1層間絶縁膜の形成方法のみである。
【0142】
したがって、図14、図15に基づいてTFTアレイ基板の基板本体の表面上に第1層間絶縁膜を形成するまでの工程についてのみ説明する。図14、図15は第1実施形態の図4、図5に相当する図である。なお、図15以降の製造工程、すなわち第1層間絶縁膜を形成した後の工程については第1実施形態において図6〜図11に示したものと全く同様である。また、図14、図15において、第1実施形態と同じ構成要素については同じ参照符号を付し、説明は省略する。
【0143】
本実施形態においては、トランジスタ素子の形成領域のみならず、トランジスタ素子の非形成領域にもパターニングされていない第1遮光膜(遮光層)を形成する場合について説明する。
【0144】
なお、本実施形態において、トランジスタ素子の非形成領域とは、具体的には、トランジスタ素子の形成領域(画素部)の周辺領域に存在する、対向基板貼り合わせのためのシール材を塗布するシール領域や、データ線、走査線を駆動するための駆動回路の周辺部、入出力信号線を接続するための接続端子を形成する端子パッド領域等を指す。
【0145】
図14(a)に示すように、第1実施形態と同様に、TFTアレイ基板10の基板本体10Aの表面上に所定のパターンの第1遮光膜(遮光層)11aを形成する。本実施形態においては、トランジスタ素子の形成領域に所定のパターン(図2参照)の第1遮光膜(遮光層)11aを形成し、トランジスタ素子の非形成領域にはパターニングされていない第1遮光膜(遮光層)11aを形成する。第1遮光膜11aの膜厚は、例えば150〜200nm程度とする。
【0146】
次に、図14(b)に示すように、第1実施形態と同様に、第1遮光膜(遮光層)11aを形成した基板本体10Aの表面上に、第1の絶縁体層12Aを形成する。第1の絶縁体層12Aの膜厚は、少なくとも第1遮光膜11aの膜厚よりも厚く設定し、例えば約400〜1000nm、より好ましくは800nm程度とする。
【0147】
次に、図14(c)に示すように、第1実施形態と同様に、第1の絶縁体層12Aの表面上に、第1の絶縁体層12Aよりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bを形成する。第2の絶縁体層12Bの膜厚は、次の工程で形成する第3の絶縁体層12Cとの研磨レートの差によって決定されるが、後述する研磨工程で過剰な研磨を抑制できる程度の厚さ、例えば50〜150nm程度とする。
【0148】
次に、図15(a)に示すように、第2の絶縁体層12Bの表面上に、スパッタリング法、CVD法などにより、第2の絶縁体層12Bよりも研磨レートの高い第3の絶縁体層12Cを形成する。第3の絶縁体層12Cの膜厚は、少なくとも、第2の絶縁体層12Bを形成した基板本体10A表面に形成された段差の高さよりも厚く設定する。すなわち、第3の絶縁体層12Cの膜厚は、少なくとも第1遮光膜11aの膜厚より厚く設定し、例えば300nm程度とする。
【0149】
第1の絶縁体層12A、第3の絶縁体層12Cの材料としては酸化シリコン、第1の絶縁体層12A、第3の絶縁体層12Cよりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bの材料としては窒化シリコンを例示することができる。窒化シリコンの研磨レートは酸化シリコンの研磨レートの1/3〜1/5程度である。
【0150】
第3の絶縁体層12Cを形成した基板本体10Aの表面は、図15(a)に示すように、トランジスタ素子の形成領域においては凹凸を有するものとなり、トランジスタの非形成領域においては平坦な凸部となっている。
【0151】
次に、第3の絶縁体層12Cを形成した基板本体10Aの表面をCMP(化学的機械研磨)法などの方法により研磨する。
【0152】
この工程において、はじめにトランジスタ素子の形成領域の凸部及び非形成領域において、研磨レートの高い第3の絶縁体層12Cが研磨される。その後、トランジスタ素子の形成領域の凸部及び非形成領域の第2の絶縁体層12Bの高さに研磨が到達すると、基板本体10Aの表面における、研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bの占める面積が増加し、研磨速度が低下するので、この時点で研磨を停止することにより、図15(b)に示すように、第1の絶縁体層12Aと、第1の絶縁体層12Aの表面上に形成され、第1の絶縁体層12Aよりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bと、第2の絶縁体層12Bの表面上に部分的に形成され、第2の絶縁体層12Bよりも研磨レートの高い第3の絶縁体層12Cとからなり、表面が平坦化された第1層間絶縁膜120が形成される。
【0153】
なお、この工程において、トランジスタ素子の非形成領域及び形成領域の凸部の第2の絶縁体層12Bを全く削らなくても良いし、若干削って薄くしてもよいが、基板本体10Aの表面に、第1の絶縁体層12Aが露出しないように研磨を行う。
【0154】
本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法によれば、基板本体(光透過性基板)10Aの表面上において、トランジスタ素子の非形成領域にも第1遮光膜(遮光層)11aを形成し、第1遮光膜(遮光層)11aを形成した基板本体10Aの表面上に第1の絶縁体層12Aと第1の絶縁体層12Aよりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bと第2の絶縁体層12Bよりも研磨レートの高い第3の絶縁体層12Cとを形成してから基板本体10A表面の研磨を行うことにより、表面が平坦化された第1層間絶縁膜(絶縁体層)120を形成することができるので、第1層間絶縁膜(絶縁体層)120と単結晶シリコン層とを貼り合わせた境界面にボイドを発生させないため、TFT(トランジスタ素子)の特性の劣化を防止することができる。
【0155】
また、第1層間絶縁膜(絶縁体層)120と単結晶シリコン層との貼り合わせ強度を確保できるので、TFT(トランジスタ素子)を形成する工程において膜剥がれ等の不良が発生することを防止し、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0156】
また、本実施形態の電気光学装置用基板の製造方法により、第1の絶縁体層12Aと、第1の絶縁体層12Aの表面上に形成され、第1の絶縁体層12Aよりも研磨レートの低い第2の絶縁体層12Bと、第2の絶縁体層12Bの表面上に部分的に形成され、第2の絶縁体層12Bよりも研磨レートの高い第3の絶縁体層12Cとから構成され、表面が平坦化された第1層間絶縁膜(絶縁体層)120を備え、TFT(トランジスタ素子)を構成する半導体層が単結晶シリコン層から形成されたTFTアレイ基板(電気光学装置用基板)を提供することができる。
【0157】
また、本実施形態の電気光学装置用基板用基板の製造方法により製造されたTFTアレイ基板(電気光学装置用基板)を備えることにより、第1層間絶縁膜(絶縁体層)120と単結晶シリコン層とを貼り合わせた境界面にボイドがなく、第1層間絶縁膜(絶縁体層)120と単結晶シリコン層との貼り合わせ強度が強く、トランジスタ素子の特性にばらつきや欠陥を生じることがない、性能の優れた液晶装置(電気光学装置)を提供することができる。
【0158】
なお、本実施形態においては、トランジスタ素子の非形成領域にパターニングされていない第1遮光膜(遮光層)を形成する場合についてのみ説明したが、トランジスタ素子の非形成領域に形成する第1遮光膜のパターンはトランジスタ素子の形成領域に形成される第1遮光膜と同じパターンなど、いかなるパターンであっても同等の効果を得ることができる。
【0159】
(電子機器)
上記の第1、第2実施形態の電気光学装置用基板の製造方法により製造される電気光学装置用基板を備えた液晶装置(電気光学装置)を用いた電子機器の一例として、投射型表示装置の構成について、図16を参照して説明する。
【0160】
図16において、投射型表示装置1100は、第1、第2実施形態の電気光学装置用基板の製造方法により製造される電気光学装置用基板を備えた液晶装置を3個用意し、夫々RGB用の液晶装置962R、962G及び962Bとして用いた投射型液晶装置の光学系の概略構成図を示す。
【0161】
本例の投射型表示装置の光学系には、光源装置920と、均一照明光学系923が採用されている。そして、投射型表示装置は、この均一照明光学系923から出射される光束Wを赤(R)、緑(G)、青(B)に分離する色分離手段としての色分離光学系924と、各色光束R、G、Bを変調する変調手段としての3つのライトバルブ925R、925G、925Bと、変調された後の色光束を再合成する色合成手段としての色合成プリズム910と、合成された光束を投射面100の表面に拡大投射する投射手段としての投射レンズユニット906を備えている。また、青色光束Bを対応するライトバルブ925Bに導く導光系927をも備えている。
【0162】
均一照明光学系923は、2つのレンズ板921、922と反射ミラー931を備えており、反射ミラー931を挟んで2つのレンズ板921、922が直交する状態に配置されている。均一照明光学系923の2つのレンズ板921、922は、それぞれマトリクス状に配置された複数の矩形レンズを備えている。光源装置920から出射された光束は、第1のレンズ板921の矩形レンズによって複数の部分光束に分割される。そして、これらの部分光束は、第2のレンズ板922の矩形レンズによって3つのライトバルブ925R、925G、925B付近で重畳される。従って、均一照明光学系923を用いることにより、光源装置920が出射光束の断面内で不均一な照度分布を有している場合でも、3つのライトバルブ925R、925G、925Bを均一な照明光で照明することが可能となる。
【0163】
各色分離光学系924は、青緑反射ダイクロイックミラー941と、緑反射ダイクロイックミラー942と、反射ミラー943から構成される。まず、青緑反射ダイクロイックミラー941において、光束Wに含まれている青色光束Bおよび緑色光束Gが直角に反射され、緑反射ダイクロイックミラー942の側に向かう。赤色光束Rはこのミラー941を通過して、後方の反射ミラー943で直角に反射されて、赤色光束Rの出射部944からプリズムユニット910の側に出射される。
【0164】
次に、緑反射ダイクロイックミラー942において、青緑反射ダイクロイックミラー941において反射された青色、緑色光束B、Gのうち、緑色光束Gのみが直角に反射されて、緑色光束Gの出射部945から色合成光学系の側に出射される。緑反射ダイクロイックミラー942を通過した青色光束Bは、青色光束Bの出射部946から導光系927の側に出射される。本例では、均一照明光学素子の光束Wの出射部から、色分離光学系924における各色光束の出射部944、945、946までの距離がほぼ等しくなるように設定されている。
【0165】
色分離光学系924の赤色、緑色光束R、Gの出射部944、945の出射側には、それぞれ集光レンズ951、952が配置されている。したがって、各出射部から出射した赤色、緑色光束R、Gは、これらの集光レンズ951、952に入射して平行化される。
【0166】
このように平行化された赤色、緑色光束R、Gは、ライトバルブ925R、925Gに入射して変調され、各色光に対応した画像情報が付加される。すなわち、これらの液晶装置は、図示を省略している駆動手段によって画像情報に応じてスイッチング制御されて、これにより、ここを通過する各色光の変調が行われる。一方、青色光束Bは、導光系927を介して対応するライトバルブ925Bに導かれ、ここにおいて、同様に画像情報に応じて変調が施される。尚、本例のライトバルブ925R、925G、925Bは、それぞれさらに入射側偏光手段960R、960G、960Bと、出射側偏光手段961R、961G、961Bと、これらの間に配置された液晶装置962R、962G、962Bとからなる液晶ライトバルブである。
【0167】
導光系927は、青色光束Bの出射部946の出射側に配置した集光レンズ954と、入射側反射ミラー971と、出射側反射ミラー972と、これらの反射ミラーの間に配置した中間レンズ973と、ライトバルブ925Bの手前側に配置した集光レンズ953とから構成されている。集光レンズ946から出射された青色光束Bは、導光系927を介して液晶装置962Bに導かれて変調される。各色光束の光路長、すなわち、光束Wの出射部から各液晶装置962R、962G、962Bまでの距離は青色光束Bが最も長くなり、したがって、青色光束の光量損失が最も多くなる。しかし、導光系927を介在させることにより、光量損失を抑制することができる。
【0168】
各ライトバルブ925R、925G、925Bを通って変調された各色光束R、G、Bは、色合成プリズム910に入射され、ここで合成される。そして、この色合成プリズム910によって合成された光が投射レンズユニット906を介して所定の位置にある投射面100の表面に拡大投射されるようになっている。
【0169】
本例では、液晶装置962R、962G、962Bには、TFTの下側に第1遮光膜(遮光層)が設けられているため、当該液晶装置962R、962G、962Bからの投射光に基づく液晶プロジェクタ内の投射光学系による反射光、投射光が通過する際のTFTアレイ基板の表面からの反射光、他の液晶装置から出射した後に投射光学系を突き抜けてくる投射光の一部等が、戻り光としてTFTアレイ基板の側から入射しても、画素電極のスイッチング用のTFTのチャネルに対する遮光を十分に行うことができる。
【0170】
このため、小型化に適したプリズムユニットを投射光学系に用いても、各液晶装置962R、962G、962Bとプリズムユニットとの間において、戻り光防止用のフィルムを別途配置したり、偏光手段に戻り光防止処理を施したりすることが不要となるので、構成を小型且つ簡易化する上で大変有利である。
【0171】
また、本実施形態では、戻り光によるTFTのチャネル領域への影響を抑えることができるため、液晶装置に直接戻り光防止処理を施した偏光手段961R、961G、961Bを貼り付けなくてもよい。そこで、図17に示されるように、偏光手段を液晶装置から離して形成、より具体的には、一方の偏光手段961R、961G、961Bはプリズムユニット910に貼り付け、他方の偏光手段960R、960G、960Bは集光レンズ953、945、944に貼り付けることが可能である。このように、偏光手段をプリズムユニットあるいは集光レンズに貼り付けることにより、偏光手段の熱は、プリズムユニットあるいは集光レンズで吸収されるため、液晶装置の温度上昇を防止することができる。
【0172】
また、図示を省略するが、液晶装置と偏光手段とを離間形成することにより、液晶装置と偏光手段との間には空気層ができるため、冷却手段を設け、液晶装置と偏光手段との間に冷風等の送風を送り込むことにより、液晶装置の温度上昇をさらに防ぐことができ、液晶装置の温度上昇による誤動作を防ぐことができる。
【0173】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電気光学装置用基板の製造方法によれば、トランジスタ素子の形成領域にのみ遮光層を形成する場合など、光透過性基板の表面における凹部の面積が比較的大きい場合には、遮光層を形成した光透過性基板上に第1の絶縁体層と、第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い(研磨されにくい)第2の絶縁体層を形成してから基板表面を研磨し、トランジスタ素子の非形成領域にも遮光層を形成する場合など、光透過性基板の表面における凹部の面積が比較的小さい場合には、遮光層を形成した光透過性基板上に第1の絶縁体層と、第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い(研磨されにくい)第2の絶縁体層と、第2の絶縁体層より研磨レートの高い(研磨されやすい)第3の絶縁体層を形成してから基板表面を研磨することにより、第2の絶縁体層の存在によって、過剰に研磨される部分が生じることを防止することができるので、絶縁体層の表面を平坦化することができる。
【0174】
また、本発明の電気光学装置用基板の製造方法により製造される電気光学装置用基板及びこの電気光学装置用基板を備えた電気光学装置は、絶縁体層表面が平坦化されているので、絶縁体層と単結晶シリコン層とを貼り合わせた境界面にボイドがなく、絶縁体層と単結晶シリコン層との貼り合わせ強度が強く、トランジスタ素子の特性にばらつきや欠陥を生じることがない、性能の優れたものとなる。
【0175】
また、本発明の電気光学装置を備えることにより、性能の優れた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置において、画素部を構成する各種素子、配線等の等価回路図である。
【図2】 図2は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置において、TFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。
【図3】 図3は、図2のA−A’断面図である。
【図4】 図4(a)〜(c)は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図5】 図5(a)〜(c)は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図6】 図6(a)〜(e)は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図7】 図7(a)〜(d)は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図8】 図8(a)〜(e)は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図9】 図9(a)〜(d)は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図10】 図10(a)〜(c)は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図11】 図11(a)〜(c)は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図12】 図12は、本発明に係る第1実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を用いて製造された電気光学装置用基板を備えた電気光学装置のTFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図である。
【図13】 図13は、図12のH−H’断面図である。
【図14】 図14(a)〜(c)は、本発明に係る第2実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図15】 図15(a)、(b)は、本発明に係る第2実施形態の電気光学装置用基板の製造方法を示す工程図である。
【図16】 図16は、本発明に係る第1、第2実施形態の電気光学装置用基板の製造方法により製造された電気光学装置用基板を備えた電気光学装置を用いた電子機器の一例である投射型表示装置の構成図である。
【図17】 図17(a)、(b)は、従来の課題を説明するための図である。
【符号の説明】
1a…半導体層
1a’…チャネル領域
1b…低濃度ソース領域(ソース側LDD領域)
1c…低濃度ドレイン領域(ドレイン側LDD領域)
1d…高濃度ソース領域
1e…高濃度ドレイン領域
10…TFTアレイ基板
20…対向基板
10A、20A…基板本体(光透過性基板)
11a…第1遮光膜(遮光層)
12、120…第1層間絶縁膜(絶縁体層)
12A…第1の絶縁体層
12B…第2の絶縁体層
12C…第3の絶縁体層
30…画素スイッチング用TFT(トランジスタ素子)
50…液晶層(電気光学材料層)
206…単結晶シリコン層
Claims (9)
- 光透過性基板上に遮光層を形成する工程と、
前記遮光層をトランジスタ素子の形成領域にパターニングする工程と、
前記パターニングされた遮光層上に、前記パターニングされた遮光層の厚みに起因する凸部と、隣合う該凸部間に凹部とを有する絶縁体層を形成する工程と、
前記絶縁体層の表面を研磨する工程と、
表面を研磨した前記絶縁体層の表面に単結晶シリコン層を貼り合わせる工程と、
前記単結晶シリコン層によりトランジスタ素子を形成する工程とを具備し、
前記絶縁体層を形成する工程は、
前記パターニングされた遮光層上に、第1の絶縁体層を形成する工程と、
前記第1の絶縁体層上に、該第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い第2の絶縁体層を形成する工程とを有し、
前記研磨する工程において、前記凹部に形成された前記第2の絶縁体層の表面と同一面となるように、前記凸部の第1及び第2の絶縁体層を研磨し、当該凸部を除去することを特徴とする電気光学装置用基板の製造方法。 - 前記遮光層をパターニングする工程において、トランジスタ素子の形成領域にのみ遮光層を形成することを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置用基板の製造方法。
- 光透過性基板上に遮光層を形成する工程と、
前記遮光層をトランジスタ素子の形成領域にパターニングする工程と、
前記パターニングされた遮光層上に、前記パターニングされた遮光層の厚みに起因する凸部と、隣合う該凸部間に凹部とを有する絶縁体層を形成する工程と、
前記絶縁体層の表面を研磨する工程と、
表面を研磨した前記絶縁体層の表面に単結晶シリコン層を貼り合わせる工程と、
前記単結晶シリコン層によりトランジスタ素子を形成する工程とを具備し、
前記絶縁体層を形成する工程は、
前記パターニングされた遮光層上に、第1の絶縁体層を形成する工程と、
前記第1の絶縁体層上に、該第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い第2の絶縁体層を形成する工程と、
前記第2の絶縁体層上に、該第2の絶縁体層よりも研磨レートの高い第3の絶縁体層を前記パターニングされた遮光層の厚みに起因して前記第2の絶縁体層に形成された段差の高さよりも厚く形成する工程とを有し、
前記研磨する工程において、前記第3の絶縁体層を研磨して前記凸部の第2の絶縁体層を露出させてから研磨を停止することを特徴とする電気光学装置用基板の製造方法。 - 光透過性基板上に、少なくとも所定のパターンの遮光層と絶縁体層とトランジスタ素子とを順次具備する電気光学装置用基板であって、
前記絶縁体層が、酸化シリコンからなる第1の絶縁体層と、該第1の絶縁体層上に前記遮光層と重ならないように部分的に形成され、該第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い窒化シリコンからなる第2の絶縁体層とから構成され、表面が研磨により平坦化されたものであるとともに、
前記トランジスタ素子を構成する半導体層が単結晶シリコン層から形成されたものであることを特徴とする電気光学装置用基板。 - 前記遮光層がトランジスタ素子の形成領域にのみ形成されたことを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置用基板。
- 光透過性基板上に、所定のパターンの遮光層と絶縁体層とトランジスタ素子とを順次具備する電気光学装置用基板であって、
前記絶縁体層が、酸化シリコンからなる第1の絶縁体層と、該第1の絶縁体層の表面上に形成され、該第1の絶縁体層よりも研磨レートの低い窒化シリコンからなる第2の絶縁体層と、該第2の絶縁体層の表面上に前記遮光層と重ならないように部分的に形成され、該第2の絶縁体層よりも研磨レートの高い酸化シリコンからなる第3の絶縁体層とから構成され、表面が研磨により平坦化されたものであるとともに、
前記トランジスタ素子を構成する半導体層が単結晶シリコン層から形成されたものであることを特徴とする電気光学装置用基板。 - 前記遮光層がトランジスタ素子の非形成領域にも形成されたことを特徴とする請求項6に記載の電気光学装置用基板。
- 請求項4から請求項7までのいずれか1項に記載の電気光学装置用基板と、
該電気光学装置用基板のトランジスタ素子が形成された面と対向するように配置された他の光透過性基板を具備し、
これら2枚の光透過性基板の間に挟持された電気光学材料層を具備することを特徴とする電気光学装置。 - 請求項8に記載の電気光学装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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