以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る変位ベクトル及び歪テンソル、並びに、弾性率及び粘弾性率測定装置の全体構成を示すブロック図である。この装置は、計測対象物6の3次元(又は2次元又は1次元)の関心領域7内の歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトル場等における変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、及び、これらの時空間偏微分の分布等を計測する装置であると共に、この装置等を使用して得られるそれらの計測結果を用いて、ずり弾性率分布、ポアソン比分布、粘ずり弾性率分布、粘ポアソン比分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布等を計測する装置である。
図1に示すように、計測対象物6の表面に接して、又は、適当な媒質を介して変位・歪検出センサー5が設けられる。本実施形態では、変位・歪検出センサー5として複数の超音波振動子からなる1次元又は2次元アレイ型の超音波探触子を用いている。
変位・歪検出センサー5は、位置調整手段4によって測定対象物6との距離を機械的に調整可能になっている。また、変位・歪検出センサー5と測定対象物6との相対距離を機械的に調整する位置調整手段4’が設けられている。変位・歪検出センサー5を駆動する超音波送信器及び超音波パルサー、および変位・歪検出センサー5から出力されるエコー信号を受信する受信器および増幅器を備えた駆動・出力調整手段5’が備えられている。また、対象物6を積極的に変形させる場合に使用する加圧・加振器などの力源8、およびその位置を機械的に決める位置調整手段4”が備えられている。
駆動・出力調整手段5'から出力されるエコー信号は計測制御手段3を介してデータ記録手段2に記録される。データ記録手段2に記録されたエコー信号は、データ処理手段1により読み出され、任意の時刻における関心領域7内の、変位ベクトル成分分布(時系列)や歪テンソル成分分布(時系列)が直接的に演算により求められ、また、これらの時空間偏微分の分布である、歪テンソル成分分布(時系列)、歪速度テンソル成分分布(時系列)、加速度ベクトル成分分布(時系列)等が、演算により求められる。すなわち、関心領域7内の変位ベクトル成分分布(時系列)が演算により求められる場合には、歪テンソル成分分布(時系列)は求められた変位ベクトル成分分布(時系列)に3次元、2次元、又は1次元の空間微分フィルタ処理(以下にて使用される各フィルタの遮断周波数は、一般的なフィルタと同様に、適宜、時空間方向毎に、各空間位置および各時刻において異なるものに設定されることがある。)を施すことにより求められ、加速度ベクトル成分分布(時系列)は計測された変位ベクトル成分分布(時系列)に時間微分フィルタ処理を2回施すことにより求められ、歪速度テンソル成分分布(時系列)は計測された変位ベクトル成分分布(時系列)に時間微分フィルタ処理を1回施すことにより得られる速度ベクトル成分分布(時系列)に空間微分フィルタ処理を施すことにより求められるか、あるいは、計測された歪テンソル成分分布(時系列)に時間微分フィルタ処理を1回施すことにより求められる。また、関心領域7内の歪テンソル成分分布(時系列)が演算により直接的に求められる場合には、歪速度テンソル成分分布(時系列)は計測された歪テンソル成分分布(時系列)に時間微分フィルタ処理を1回施すことにより求められる。さらに、データ処理手段1は、当該データ処理手段等を使用して計測された歪テンソル成分(時系列)、歪速度テンソル成分(時系列)、加速度ベクトル成分(時系列)等から、ずり弾性率分布、ポアソン比分布、粘ずり弾性率分布、粘ポアソン比分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布等を演算により求めるようになっている。これらの演算結果はデータ記録手段2に記録される。
計測制御手段3は、データ処理手段1、位置調整手段4、位置調整手段4”及び駆動・出力調整手段5’をコントロールするようになっている。なお、測定対象物6が固定されている場合は、位置制御手段4’は不要である。変位・歪検出センサー5が電子走査型の場合は、位置調整手段4は必ずしも必要ない。つまり、関心領域7の大きさによっては、機械走査を行うことなく測定できる場合がある。また、変位・歪検出センサー5は、対象物6に直接接触させて計測するほか、強力超音波(HIFU)治療を行う際に治療効果のモニタリングを行う場合は、対象物6を液体槽9中に浸漬し、変位・歪検出センサー5を液体槽9に浸して非接触的に計測を行うこともできる。
位置調整手段4は、例えば、図3に示すように、変位・歪検出センサー5と対象物6の相対的な位置決めを機械的に行うもので、上下左右並進、回転、扇状の回転を機械的に行う機械走査機構を使用する。また、駆動・出力調整手段5’の出力は、時間的に連続的に、あるいは所定の間隔をおいてデータ記録手段2に記録される。データ処理手段1は、駆動・出力調整手段5’を制御して、3次元の関心領域7(又は、2次元関心領域あるいは1次元関心領域)内のエコー信号の基本波(n=1)、第n次高調波(n=2〜N)、又は全成分を取得して、後述するデータ処理を施して所望の変位、歪、歪速度、加速度データを求め、データ記録手段2に格納する。
駆動・出力調整手段5’とデータ処理手段1は、計測制御手段3の指令に従って、変位・歪検出センサ5との間で送受する超音波信号について、送信固定フォーカシング処理、又は、マルチ送信固定フォーカシング処理および受信ダイナミックフォーカシング処理のフォーカシング処理等を行なう開口合成処理を行なう。また、超音波信号について、アポダイゼーションを行なって、例えば、超音波ビームのビーム形状をシャープにするべく各素子において放射・受信される超音波信号に重み付けを行う処理を行いながら、ビームステアリング処理を行ない、3次元(又は2次元あるいは1次元)関心領域7内のエコー信号を取得する。
次に、本実施形態に係る変位・歪計測装置について詳しく説明する。
本実施形態においては、変位・歪検出センサー5として、機械走査の可能な2次元超音波素子、電子走査型2次元超音波素子アレイ、電子走査型1次元超音波素子アレイ、機械走査が可能な2次元および1次元超音波素子アレイを用いることができる。
また、本実施形態においては、開口面合成を行うことに加えて、ビームステアリングを行って計測できる。ビームステアリングを行った場合には、計測された変位ベクトル成分分布又は歪テンソル成分分布の空間的な補間処理が行われ、これらの計測変位分布(時系列)データや計測歪分布(時系列)データに空間微分フィルタや時間微分フィルタを施すことにより歪テンソル成分分布(時系列)や歪速度テンソル成分分布(時系列)や加速度ベクトル成分分布(時系列)や速度ベクトル成分分布(時系列)が評価される。
ビーム方向の変位計測の精度が直交する走査方向の変位成分の計測精度に較べ格段に高いため、高精度な変位ベクトルの計測を実現するべく、機械走査やビームステアリングを行うことがある(フォーカシングに加えて、アポダイゼーションを行うこともある。以下、同様。)。すなわち、機械走査やビームステアリングを行うことにより、測定対象物の変形前後の各々において、3次元変位ベクトルを計測する場合は3方向に、2次元変位ベクトルを計測する場合は2方向に、超音波ビームを放射して超音波エコーデータフレームを取得する。そして、各同一方向に放射して得られた2枚の超音波エコーデータフレームから高精度に計測されたビーム方向の変位成分分布から、3次元、または2次元の変位ベクトル分布が計測される (図例4)。ビーム方向の1次元処理が行われることもある。また、超音波素子アレイの一素子ずつを使用して計測対象物の関心領域に超音波を放射し、一素子又は複数素子を使用して前記計測対象物にて発生する超音波エコー信号を取得して、各時相にて取得された超音波エコー信号に対して、3次元変位ベクトルを計測する場合には異なる3方向以上の、2次元変位ベクトルを計測する場合には異なる2方向以上の、1方向変位成分を計測する場合には異なる1方向以上の、ビームフォーミング(フォーカシングに加えて、アポダイゼーションを行うこともある。受信のみのビームフォーミングが行われることもある。以下同様。)を行い、異なる2つ以上の時相で取得された同一方向にビームフォーミングされた超音波エコー信号の位相に基づいて高精度に計測された局所ビーム方向変位成分から、3次元変位ベクトル又は3次元変位ベクトル成分又は2次元変位ベクトル又は2次元変位ベクトル成分又は1方向変位成分を計測することがある。これより、ビームステアリングを行う場合に比べて送受信時間を短縮化できる。ビーム方向の1次元処理が行われることもある。また、超音波素子アレイの一素子ずつを使用して計測対象物の関心領域に超音波を放射し、一素子又は複数素子を使用して前記計測対象物にて発生する超音波エコー信号を取得して、各時相にて取得された超音波エコー信号に対して、3次元歪テンソルを計測する場合には異なる6方向以上の、2次元歪テンソルを計測する場合には異なる3方向以上の、1方向歪成分を計測する場合には異なる1方向以上の、ビームフォーミングを行い、異なる2つ以上の時相で取得された同一方向にビームフォーミングされた超音波エコー信号の位相に基づいて直接的に高精度に計測された局所ビーム方向歪成分から、3次元歪テンソル又は3次元歪テンソル成分又は2次元歪テンソル又は2次元歪テンソル成分又は1方向歪成分を計測することがある。ビーム方向の1次元処理が行われることもある。各時相にて多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号を重ね合わせ、変位や歪を計測することもある。各ビーム方向の1次元処理が行われることがある(以下、同様)。また、多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号を重ね合わせた上で包絡線検波をして得られた超音波エコー信号を使用することもある。また、多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号の各々を包絡線検波をした上で重ね合わせて得られた超音波エコー信号を使用することもある。これらの超音波エコー信号から超音波画像を得ることがある。上記の送信時において、一素子以上の素子が使用されることもあり、その際には、別方向への送信ビームフォーミングが行われることがある。
但し、最終的な計測結果として変位ベクトル分布を得るためには、異なる離散座標系(以下、旧座標系)において評価された各変位ベクトル成分分布を、変位ベクトル分布を表現するための一つの離散座標系(以下、新座標系)にて表現する必要がある。そのために、いわゆる、変位成分分布のデータ補間を行う必要があり、具体的には、それらの旧座標系において評価された各変位ベクトル成分分布に対して、信号処理を施して新座標系において所望する位置における変位成分データを得る。この信号処理として、フーリエ変換を行い、そのフーリエ空間において複素エクスポネンシャルを乗ずることによる位相シフトを行うことで、空間領域における空間的なシフティングを実現する。
さらに、本実施形態においては、受信信号を走査方向に正弦変調しても良い(例えば、J.A. Jensen, “A new method for estimation of velocity vectors,” IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, vol. 45, no. 3, pp. 837-850, May 1998に記載の変調方法やM. E. Anderson, “Multi-dimensional velocity estimation with ultrasound using spatial quadrature,” IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, vol. 45, no. 3, pp. 852-861, May 1998に記載の変調方法等)。
この走査方向に正弦的に変調する際の周波数は高いほど良いが、この変調は超音波ビーム幅で決まる帯域幅を走査方向の周波数軸方向に周波数シフトすることになるため、この周波数は、これにより決まる走査方向の最高周波数がサンプリング定理に基づいて折り返し現象を生じない様に超音波ビーム間隔で決まるサンプリング周波数の1/2以下に設定される必要がある。これより、ビーム方向と直交する方向の走査方向の変位成分分布の計測精度を向上させることができる。
これらにより、3次元関心領域、2次元関心領域、または、1次元関心領域内において得られた超音波エコー信号の基本波成分、または、搬送周波数が高くなることにより超音波ビーム方向の変位成分の計測精度が向上する高調波成分、且つ、基本波で構成される超音波ビームに較べて超音波走査方向に広帯域(細いビームを実現できる)であることにより超音波走査方向の計測精度を向上させることが可能である高調波成分、または、高調波成分のみではそのSN比が低くなることがあるために超音波エコー信号の全成分を有効に利用することがある。
すなわち、超音波エコー信号そのものを、抽出した基本波(n =1)のみを、抽出した第n次高調波(n=2〜N)のみを、または、これらの組み合わせを、用いて、後述する所定の変位・歪計測方法(後述の方法1−1〜方法1−5、方法2−1〜方法2−5、方法3−1〜方法3−5、方法4−1〜4−5、方法5−1〜5−5、方法6−1〜6−5。)により、変位ベクトル計測を行うことがある。
これらの所定の変位・歪計測方法は、計測対象である変位分布や歪分布や歪速度分布や加速度分布や速度分布に関する先見的情報に基づいて設定されるこれらの初期値に対して、推定される修正すべき変位データを用いて反復的に変位の推定結果を修正していくことを基本とし、最終的に変位ベクトル分布(時系列)や変位成分(時系列)や歪テンソル分布(時系列)や歪成分分布(時系列)や歪速度テンソル分布(時系列)や歪速度成分分布(時系列)や加速度ベクトル分布(時系列)や加速度成分分布(時系列)や速度ベクトル分布(時系列)や速度成分(時系列)の高精度な計測を実現するものである。但し、実時間性を重視して1回の推定にて計測を終了することも可能である。また、反復的に推定する間に、時空間的な大きさや時空間的な連続性に関して先見的にありえない変位量や修正変位量が推定された場合には、その先見的情報に従うこととし、強制的に、例えば、設定される最大値や最小値の範囲に収まる様にそれらの値に修正される、また、隣接する点の推定結果との差がある範囲に収まる様にそれらの値が修正されることがある。
これらの所定の変位・歪計測方法において、修正すべき変位ベクトル又は変位ベクトル成分を推定する際に使用される方法は、いずれも、異なる2つ以上の時相において取得された超音波エコー信号の位相を指標とするものであるが、まずは、その1つである、異なる2時相にて取得された超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配から変位を計測する方法が使用された場合を用いて説明する。
また、該変位・歪計測方法が、超音波エコー信号の基本波、超音波エコー信号の第n次高調波(n=2〜N)を抽出したものの各々に施されることにより、その結果として得られる変位の計測データに関して、用いた基本波、第n次高調波(n=2〜N)のクロススペクトラムのパワー比等を重み値として計測結果の変位データを平均化して得られる変位データを最終的な計測結果とすることもある。
加えて、最小二乗法を用いてクロススペクトラムの位相の勾配から変位を計測する際に、前記の先見的情報を用いて正則化法を適用するデータ処理手段(信号処理)を実施できる。これにより、単なる変位計測を行う場合に比べ、安定的に高精度且つ高分解能な変位計測を実現できる。
また、クロススペクトラムの位相の勾配から大変位を評価する場合には、位相のアンラッピングを行う、または、相互相関法を使用する必要があったために、計測手順が煩雑なものであったのに対し、データを間引き最終的に元のデータ間隔(密度)に戻す手順を導入することでこれらの処理を不要として計測手順を格段にシンプルなものとする。これにより、ソフトとして実装する量の軽減および計算時間の短縮化を可能とする。時に、正則化を施さないこともある。
また、本実施形態に含まれるこれとは別の方法として、計測対象物の関心空間に時間間隔をおいて超音波を放射し、前記計測対象物から発生する超音波エコー信号を取得して、2時相で取得された超音波エコー信号のクロススペクトラムの位相の勾配に基づいて局所変位を計測するにあたり、前記2時相で取得された超音波エコー信号に相互相関法やそれらのクロススペクトラムの位相にアンラッピングを施こしても良い。
この場合においても、クロススペクトラムの位相の勾配に基づいて局所変位を計測するにあたり、正則化法を用いて関心領域内の変位分布に関する先見的情報を付加した上で、クロススペクトラムのパワーを用いて通常は正規化されたクロススペクトラムの二乗を重み関数として最小二乗法を適用して関心領域内の変位分布を求めることができる。
また、時に、クロススペクトラムの位相の勾配を評価するにあたり、取得された超音波エコー信号を各方向に各々等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いても良い。
これらの場合において、異なる2時相において取得された計測対象物の3次元関心空間・2次元または1次元関心領域内からの3次元・2次元または1次元超音波エコー信号の各局所3次元・2次元または1次元クロススペクトラムの位相の勾配から、3次元関心空間内の3次元変位ベクトル成分分布、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布、1次元関心領域内の1方向変位成分分布、3次元関心空間内の2次元変位ベクトル成分分布または1方向変位成分分布、または、2次元関心領域内の1方向変位成分分布を、安定的に高精度且つ高分解能に計測することができる。
また、本発明の変位・歪計測装置は、計測対象物の3次元関心空間・2次元または1次元関心領域内に生じた変位ベクトルまたは歪テンソル分布、これに加えて、歪速度テンソル分布や加速度ベクトル分布や速度ベクトル分布等を、3次元関心空間・2次元または1次元領域内にわたって測定した超音波エコーデータ(以下、3次元、2次元、1次元超音波エコー信号と称す。)から計測する装置であって、変位・歪検出センサー(超音波トランスデューサ)および測定対象物の相対的な位置決め・上下左右並進、回転、扇状の回転を機械的に行うための機械走査機構と、変位・歪センサー(超音波トランスデューサ)駆動(送信器・超音波パルサー)・出力調整(受信器・増幅器)手段と、 開口面合成処理[フォーカシング処理(送信固定フォーカシング・受信ダイナミックフォーカシング、または、マルチ送信固定フォーカシング・受信ダイナミックフォーカシング)およびアポダイゼーション(超音波ビームの改善、すなわち、ビーム形状をシャープにするべく各素子から放射される超音波信号に重み付けを行う処理)]を基本とした所定のデータ処理手段と、センサーの出力を記録するための記録手段と、これより変位ベクトル分布や歪テンソル分布や歪速度テンソル分布や加速度ベクトル分布や速度ベクトル分布等を計測するためのデータ処理(信号処理)手段と、計測されたこれらの変位ベクトルや歪テンソル成分分布や歪速度テンソル分布や加速度ベクトル分布や速度ベクトル分布等をも記録しておくための記録手段を有することを特徴とする。
この場合において、前記データ処理手段は、超音波データの取得(収集)および信号処理を施すことにより計測された前記3次元関心空間内の3次元変位ベクトル、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル、1次元関心領域内の1方向変位成分、3次元関心空間内の2次元変位ベクトルまたは1方向変位成分、2次元空間内の1方向変位成分に、帯域制限を施した空間微分フィルタ(3次元、2次元、または、1次元空間フィルタ)または周波数空間にて帯域制限のある空間微分フィルタの周波数応答(3次元、2次元、または、1次元周波数応答)をかけることにより歪テンソル成分を求めることを特徴とする。また、これらの時系列に帯域制限を施した時間微分フィルタまたは周波数空間にて帯域制限のある時間微分フィルタの周波数応答をかけることにより歪速度テンソル成分や加速度ベクトル成分や速度ベクトル成分を求めることを特徴とする。また、直接的に計測された歪テンソル成分から歪速度テンソル成分を求めることのあることを特徴とする。
また、少なくとも1つ以上の歪テンソル場(変位ベクトル場)を前記計測対象物の前記3次元関心空間・2次元または1次元関心領域に発生せしめることができるように力源として加圧器または加振器を使用することを特徴とする。この場合において、対象が生体の動き(心拍、脈拍、呼吸など)を力源として、これに同期して前記計測対象物の前記3次元関心空間・2次元または1次元関心領域内に生じる歪テンソル場(変位ベクトル場)を計測することができる。
また、超音波トランスデューサのタイプは、次の態様をとることができる。すなわち、変位または歪の検出センサーとして、機械走査の可能な超音波素子、電子走査型2次元超音波素子アレイ(時に機械走査が可能)、または、電子走査型1次元超音波素子アレイ(時に機械走査が可能)を使用して開口面合成を行ってエコー信号を取得することができる。このような変位または歪の検出センサーを用いてエコー信号を取得する際に、検出センサーを対象物に接触させて測定を行う場合には、この検出センサーの接触部そのものが力源となって、これが加圧・加振器を兼ねることがある。さらに、強力超音波(HIFU)治療を行う場合において、患部を水浸させる場合は、上述の変位または歪の検出センサーおよび対象物を、適切な液体中に浸して測定を行うことにより非接触に計測を行うことができる。
また、安定的に弾性率分布や粘弾性率分布を計測するために、変位または歪の検出センサーである超音波トランスデューサそのものを力源としてこれを用いて対象を圧迫する場合は、検出センサーと対象物の間に弾性率や粘弾性率計測のための参照物を挟んだ状態にて計測を行うことが好ましい。この場合、治具を用いて、参照物をトランスデューサ側に装着することもできる。
基本的には、前述した態様の変位または歪の検出センサーを用いて開口面合成を行って取得される3次元関心空間、2次元関心領域、または、1次元関心領域内の超音波エコー信号から所定のデータ処理手段(信号処理)により求められる前記3次元関心空間の3次元変位ベクトル成分分布、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布、1次元関心領域内の1次元変位成分分布、3次元関心空間の2次元変位ベクトル成分分布または1次元変位成分分布、または、2次元関心空間の1次元変位成分分布、および、これら変位計測データから歪テンソル成分分布や歪速度テンソル成分分布や加速度ベクトル成分分布や速度ベクトル成分分布を評価することができる。また、所定のデータ処理手段(信号処理)により直接的に求められる歪テンソル成分分布から歪速度テンソル成分分布を評価することができる。
この場合に、開口面合成を行うとともに、且つ、ビームステアリングを行いながら取得される上述の各次元の領域の超音波エコー信号から所定のデータ処理手段(信号処理)により、上記と同様の各変位ベクトル成分分布や各歪テンソル成分分布、および、これらの変位計測データや歪計測データから歪テンソル成分分布や歪速度テンソル成分分布や加速度ベクトル成分分布や速度ベクトル成分分布を評価することができる。
さらに、この場合において、取得する超音波エコー信号の基本波成分、または、超音波エコー信号の高調波成分、または、これらの全エコー信号成分から所定のデータ処理手段(信号処理)により、上述の各変位ベクトル成分分布や歪テンソル成分分布、および、これらの変位計測データや歪計測データから歪テンソル成分分布や歪速度テンソル成分分布や加速度ベクトル成分分布や速度ベクトル成分分布を評価することができる。
ここで、走査方向に正弦的に変調する際の周波数は高いほど良い。しかし、この変調は超音波ビーム幅で決まる帯域幅を走査方向の周波数軸方向に周波数シフトすることになるため、その周波数はこれにより決まる走査方向の最高周波数がサンプリング定理に基づいて折り返し現象を生じないようにする。つまり、超音波ビーム間隔で決まるサンプリング周波数の1/2以下に設定する必要がある。
さらに、上述を組合わせて、超音波トランスジューサーの開口面合成を行い、且つ、ビームステアリング、および、受信信号を走査方向に正弦的に変調させながら超音波エコー信号を取得することができる。この場合において、取得する超音波エコー信号の基本波成分、または、超音波エコー信号の高調波成分、または、これらの全エコー信号成分を用いて、各変位ベクトル成分分布を計測することができる。
後述する変位・歪計測方法を用いてビーム方向の変位成分を直交する走査方向の変位成分に較べて高精度に計測できることに基づき、高精度な変位ベクトルの計測を実現するべく、機械走査やビームステアリングを行うことにより(フォーカシングに加えてアポダイゼーションを行うこともある。以下、同様。)、測定対象物の変形前後の各々において、3次元変位ベクトルを計測する場合は3方向に、2次元変位ベクトルを計測する場合は2方向に、超音波ビームを放射して、超音波エコーデータフレームを得、各同一方向に放射して得られた2枚の超音波エコーデータフレームから高精度に計測されたビーム方向の変位成分分布に対してデータ補間(変位成分のフーリエ変換を行い、フーリエ空間において複素エクスポネンシャルを乗ずることによる空間的なシフティングによる補間)を施すことにより、3次元、または、2次元の変位ベクトル分布の高精度計測を実現し、これらの変位計測データから歪テンソル成分分布を評価する。ビーム方向の1次元処理が行われることもある。また、これらの時系列データから歪速度テンソル成分分布や加速度ベクトル成分分布や速度ベクトル成分分布を評価する。超音波時系列データに他の変位計測法や歪測定法を適応した場合も同様である。また、超音波素子アレイの一素子ずつを使用して計測対象物の関心領域に超音波を放射し、一素子又は複数素子を使用して前記計測対象物にて発生する超音波エコー信号を取得して、各時相にて取得された超音波エコー信号に対して、3次元変位ベクトルを計測する場合には異なる3方向以上の、2次元変位ベクトルを計測する場合には異なる2方向以上の、1方向変位成分を計測する場合には異なる1方向以上の、ビームフォーミング(フォーカシングに加えてアポダイゼーションを行うこともある。受信のみのビームフォーミングが行われることもある。以下、同様。)を行い、異なる2つ以上の時相で取得された同一方向にビームフォーミングされた超音波エコー信号の位相に基づいて高精度に計測された局所ビーム方向変位成分から、3次元変位ベクトル又は3次元変位ベクトル成分又は2次元変位ベクトル又は2次元変位ベクトル成分又は1方向変位成分を計測することがある。これより、ビームステアリングを行う場合に比べて送受信時間を短縮化できる。ビーム方向の1次元処理が行われることもある。また、超音波素子アレイの一素子ずつを使用して計測対象物の関心領域に超音波を放射し、一素子又は複数素子を使用して前記計測対象物にて発生する超音波エコー信号を取得して、各時相にて取得された超音波エコー信号に対して、3次元歪テンソルを計測する場合には異なる6方向以上の、2次元歪テンソルを計測する場合には異なる3方向以上の、1方向歪成分を計測する場合には異なる1方向以上の、ビームフォーミングを行い、異なる2つ以上の時相で取得された同一方向にビームフォーミングされた超音波エコー信号の位相に基づいて直接的に高精度に計測された局所ビーム方向歪成分から、3次元歪テンソル又は3次元歪テンソル成分又は2次元歪テンソル又は2次元歪テンソル成分又は1方向歪成分を計測することがある。ビーム方向の1次元処理が行われることもある。各時相にて多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号を重ね合わせ、変位や歪を計測することもある。各ビーム方向の1次元処理が行われることがある(以下、同様)。また、多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号を重ね合わせた上で包絡線検波をして得られた超音波エコー信号を使用することもある。また、多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号の各々を包絡線検波をした上で重ね合わせて得られた超音波エコー信号を使用することもある。これらの超音波エコー信号から超音波画像を得ることがある。上記の送信時において、一素子以上の素子が使用されることもあり、その際には、別方向への送信ビームフォーミングが行われることがある。
次に、本実施形態に係る変位・歪計測方法のアルゴリズムについて、詳しく説明する。なお、データ処理手段1は、以下に説明する演算処理を常時または必要に応じて組み合わせて実行する。
(1)3次元関心領域内の3次元変位ベクトル成分分布の演算処理(後述の方法1−1〜1−5)
(2)2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布の演算処理(後述の方法2−1〜2−5)
(3)1次元関心領域内の1次元(1方向)変位成分分布の演算処理(後述の方法3−1〜3−5)
(4)3次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布の演算処理(後述の方法4−1〜4−5)
(5)3次元関心空間内の1次元(1方向)変位成分分布の演算処理(後述の方法5−1〜5−5)
(6)2次元関心空間内の1次元(1方向)変位成分分布の演算処理(後述の方法6−1〜6−5)
また、ビームステアリングを行った場合は、データ処理手段1において変位ベ
クトル成分分布の空間的な補間処理を行う。
上記演算処理によって求めた変位成分分布や歪成分分布に基づいて、データ処理手段1は計測された変位ベクトル場や歪テンソル場に対して3次元(または2次元または1次元)の微分フィルタ処理を行ない、各時刻における、歪テンソル成分分布および歪テンソル成分勾配分布や、歪速度テンソル成分分布および歪速度テンソル成分勾配分布や、加速度ベクトル成分分布や速度ベクトル成分分布を求める。これらの演算結果は、データ記録手段2に記録される。また、これらの演算結果をCRT(カラー・グレイ)等の表示装置にリアルタイムまたは準リアルタイムで表示する。
また、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布、歪速度テンソル成分分布および歪速度テンソル成分勾配分布や、加速度ベクトル成分分布や速度ベクトル成分分布を静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)の画像等により表すことができる。さらに、各分布の任意の位置における値、およびその値の経時的変化(グラフ)を表示装置に表示する。例えば、生体の断層像を撮像する超音波画像診断装置を併用して、生体組織各部の体積弾性率および密度の空間的変化そのものをリアルタイムで測定して画像化することができる。また、上述の変位ベクトル分布等の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)を重畳表示することも可能である。また、変位ベクトル分布や加速度ベクトルや速度ベクトルに関してはベクトル線図にて表示することも可能である。
以下、変位計測および演算処理方法について詳細に説明する。
(I)方法1:3次元変位ベクトル分布の計測
3次元(デカルト座標系(x,y,z))空間内の3次元関心領域7内の3次元変位ベクトル分布を計測するものとする。まず、関心領域7内から一定時間間隔をおいて、つまり変形前後の2つの3次元超音波エコー信号を取得する。そして、以下に示す方法1−1、方法1−2、方法1−3、方法1−4、方法1−5により処理する。すなわち、変形前後の3次元エコー信号の各位置(x,y,z)に、図7に示すように局所空間を設け、その変形前の局所信号の位相特性が一致する(マッチする)局所空間を、図8に示すように、関心領域7内において反復的に探索する。この探索は、逐次、相関性の高くなった局所信号に係る残差ベクトルを用いて前回求めた変位ベクトルの推定結果を修正する。そして、残差ベクトルが所定の条件を満足した場合に、局所空間の大きさを小さくすることにより高分解能化を図る(図9)。これにより、最終的に高精度な3次元変位ベクトルの計測を実現するものである。ここで、x, y, z軸方向のエコー信号のサンプリング間隔は、Δx、Δy、Δzである。
[方法1−1]
方法1−1に係る処理手順を図10に示す。本処理手順は、以下の処理1〜5により、3次元関心領域内の任意の点(x,y,z)の3次元変位ベクトルd(x,y,z)[= (dx(x,y,z), dy(x,y,z), dz(x,y,z))T]を、変形前後における3次元エコー信号空間r1(x、y、z )およびr2(x、y、z )内の(x,y,z)を中心とする局所3次元エコー信号r1(l,m,n)および変形後の局所3次元エコー信号r2(l,m,n) [0≦l≦L−1,0≦m≦M−1, 0≦n≦N−1]から評価する。通常、L、M、Nは、ΔxL、ΔyM、ΔzNが、各々、対応する方向の変位成分の大きさ|dx(x,y,z)|、|dy(x,y,z)|、|dz(x,y,z)|の4倍以上に充分に長くなる様に設定されることが望ましい。
(処理1:点(x,y,z)における位相マッチング)
i回目(i≧1)の3次元変位ベクトルd(x,y,z)[= (dx(x,y,z), dy(x,y,z), dz(x,y,z))T]の推定結果di(x,y,z)[= (dix(x,y,z), diy(x,y,z), diz(x,y,z))T]を得るための位相マッチングを行う。
前回のi-1回目の3次元変位ベクトルd(x,y,z)の推定結果di-1(x,y,z) [= (di-1x(x,y,z), d i-1y(x,y,z), d i-1z(x,y,z))T] を修正するべく、(x,y,z)を中心とする局所空間[0≦l≦L−1,0≦m≦M−1, 0≦n≦N−1]を中央に持つ各方向の長さが2倍で、体積にて8倍の探索空間を変形後のエコー信号空間r2(x、y、z )に設定する。但し、d0(x,y,z)は、次のとおりである。
この探索空間内エコー信号r ’
2(l,m,n ) [0≦l≦2L−1,0≦m≦2M−1, 0≦n≦2N−1]、またはi-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’
i-1 2(l,m,n)を3次元フーリエ変換したものに、i-1回目における推定結果d
i-1(x,y,z)、または推定結果d
i-1(x,y,z)に修正すべき残差変位ベクトルu
i-1(x,y,z) [= (u
i-1 x(x,y,z), u
i-1 y(x,y,z), u
i-1 z(x,y,z))
T]の推定結果
を乗じ、変形後の局所エコー信号の位相を変形前の局所エコー信号と合わせることを試みる。
これを逆フーリエ変換することにより、i回目において3次元変位ベクトルd(x,y,z)[= (dx(x,y,z), dy(x,y,z), dz(x,y,z))T]の評価を行うために用いる変形後の局所3次元超音波エコー信号ri 2(l,m,n)を、(x,y,z)を中心とする探索空間内エコー信号r’i 2(l,m,n)内の中央にて得る。
尚、位相マッチングは、変形前の局所エコー信号の位相を、変形後の局所エコー信号の位相に合わせることでも同様に実現できる。但し、変形前のエコー信号空間r
1(x,y,z)の(x,y,z) を中心とする局所空間[0≦l≦L−1, 0≦m≦M−1, 0≦n≦N−1] を中央にもつ探索空間内のエコー信号r ’
1(l,m,n) [0≦l≦2L−1, 0≦m≦2M−1, 0≦n≦2N−1] 、またはi-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r ’
i-1 1(l,m,n)の3次元フーリエ変換したものには、
が掛けられる。
(処理2:点(x,y,z)の3次元残差変位ベクトルの推定)
変形前の局所3次元超音波エコー信号r
1(l,m,n)および位相マッチングを施した変形後の局所3次元超音波エコー信号r
i 2(l,m,n)の3次元フーリエ変換R
1(l, m, n)およびR
i 2(l, m, n)を評価し、これらより、(3)式の局所3次元エコークロススペクトラムを求める。
また、変形前の局所3次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r
i 1(l,m,n)およびr
2(l,m,n)のクロススペクトラムは
但し、0≦l≦L−1, 0≦m≦M−1, 0≦n≦N−1と表されることに基づき、その位相は(5)式で表される。
の勾配に関してクロススペクトラムの2乗
を最小化することにより、点(x,y,z)の3次元変位ベクトルd(x,y,z)のi−1回目の評価結果d
i−1(x,y,z)に修正すべき3次元残差変位ベクトルu
i (x,y,z) [= (u
i x(x,y,z), u
i y(x,y,z), u
i z(x,y,z))
T]の推定値(式(6−2))を得る。
具体的には、次の(7)式の連立方程式を解くことになる。
ここで、3次元変位ベクトルd(x,y,z)が大きい場合には、3次元残差変位ベクトルu
i (x,y,z)は、クロススペクトラム((3)式)の位相を周波数空間(l, m, n)においてアンラッピングした上で評価する必要がある。
また、3次元変位ベクトルd(x,y,z)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、クロススペクトラム((3)式)に3次元逆フーリエ変換を施すことにより得られる相互相関関数のピーク位置を検出するいわゆる相互相関法を使用すればよい。詳細には、相互相関法により3次元変位ベクトルのx, y, z軸方向の変位成分を超音波エコー信号のサンプリング間隔(データ間隔)Δx、Δy、Δzの整数倍の大きさで評価する。この場合、位相マッチングは、局所領域または探索領域を空間的にシフティングすることにより行える。例えば、閾値correTratioに対して、
または、閾値correTdiffに対して、
が満足された後、これを初期値として、3次元残差変位ベクトルu
i(x,y,z)をクロススペクトラム((3)式)の位相の勾配から評価すればよい。
相互相関法を施した後においては、|u
i x(x,y,z)|≦Δx/2、|u
i y(x,y,z)|≦Δy/2、|u
i z(x,y,z)|≦Δz/2が満足されることが経験的に確認されている。しかし、クロススペクトラム((3)式)の位相をアンラッピングせずに3次元残差変位ベクトルu
i (x,y,z)の推定を可能とするための必要十分条件は、(9)、(9’)式の条件を満たせば十分である。
したがって、相互相関法を施した後にクロスススペクトラムの位相の勾配から評価する際には、常に(9)式または(9’)式の条件が満足される様に、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことにより、データ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いて評価する。そして、反復回数iの増加に伴って3次元残差変位ベクトル成分u i x(x,y,z), u i y(x,y,z), u i z(x,y,z)の大きさが小さくなるに連れて、超音波エコー信号の各方向のデータ密度を元に戻して行き、最終的に取得された元のデータ密度の超音波エコー信号を用いて評価する。したがって、クロススペクトラムの位相の勾配から評価を行う初期段階においては、例えば、元のサンプリング間隔の3/2倍や2倍のデータ間隔の超音波エコー信号を用いて評価すればよい。また、超音波エコー信号の各方向のデータ密度は3/2倍や2倍に戻して行けばよい。
また、3次元変位ベクトルd(x,y,z)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引いた超音波エコー信号を用いることにより、クロススペクトラム((3)式)の位相を周波数空間(l,m,n)においてアンラッピングすることなく、3次元残差変位ベクトルui (x,y,z)を評価できる。詳細には、(9)式または(9’)式の条件が満足される様に、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いて評価する。そして、反復回数iの増加に伴って3次元残差変位ベクトル成分u i x(x,y,z), u i y(x,y,z), u i z(x,y,z)の大きさが小さくなるに連れて、超音波エコー信号の各方向のデータ密度を元の高さに戻して行き(例えば、2倍ずつ。)、最終的に取得された元のデータ密度の超音波エコー信号を用いて評価する。(9)式や(9’)式の条件を満足しない3次元残差変位ベクトル成分u i x(x,y,z), u i y(x,y,z), u i z(x,y,z)が推定された場合は、条件を満足する様に値を打ち切る。
超音波エコー信号のデータの間隔を小さくするための条件としては、例えば、ある閾値stepTratioに対して、(10)、(10’)式を基準とする。
尚、(10)式または(10’)式の条件式は、各方向の成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとにデータ間隔が小さくされることもある。以下の方法1−2、方法1−3、方法1−4、方法1−5においても同様である。
(処理3: 点(x,y,z)の3次元変位ベクトル推定結果の更新)
これより、3次元変位ベクトルd (x,y,z)のi回目の推定結果は、次の(11)式のように評価される。
(処理4:3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(
局所空間の大きさを縮小する条件)
3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うために、各点における3次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所空間の大きさを小さくする。そのための基準は以下の通りであり、これらの基準を満足するまで処理1、処理2、および処理3を繰り返し、満足された際には、局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。例えば、ある閾値Tratioに対して、(12)式または(12’)式の条件を基準とする。
尚、(12)式または(12’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理5:点(x,y,z)における3次元変位ベクトルの反復推定の終了条件)
各点における3次元変位ベクトルの反復的推定を終えるための基準は以下の通りであり、これらの基準を満足するまで処理1、処理2、および処理3を繰り返す。例えば、ある閾値aboveTratioに対して、(13)式または(13’)式の条件を基準とする。
(処理6)
上述の処理1、処理2、処理3、処理4、処理5を3次元関心領域内の全ての点において施すことにより、関心領域内の3次元変位ベクトル成分分布を得ることができる。
尚、3次元変位ベクトルの反復推定の際のその初期値((1)式)は、特に、測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトルとする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
[方法1−1の限界]
上述した方法1−1により3次元関心空間内の各点(x,y,z)に関して反復的に3次元変位ベクトルd(x,y,z)の推定結果を更新した場合、局所3次元エコー信号のSN比の如何によっては、特に初期段階の残差ベクトルの推定時において突発的に大きなエラーを生じて、位相マッチングが発散してしまうことがある。例えば、処理2の(7)式を解く際、または、処理2の相互相関関数のピーク位置を検出する際におきることがある。
各点において、位相マッチングが発散する可能性は、例えば、ある閾値belowTratioに対して、(14)または(14’)式の条件により確認できる。
これを防ぐべく、ときに(14)式または(14’)式の条件式を用いて、以下に説明する方法1−2、方法1−3、方法1−4、方法1−5を適用し、残差ベクトルの推定時において生じる突発的な推定エラーの大きさを低減することにより、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐことができる。これにより、超音波エコー信号のSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現することができる。
[方法1−2]
本方法1−2のフローチャートを図11に示す。本方法は、前述の方法1−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。これにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現できる。
具体的には、方法1−1とは反復推定の流れが異なり、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を行なう。
(処理1:3次元残差変位ベクトル分布推定)
3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび全ての点(x,y,z)における3次元残差変位ベクトルの推定を行なう。つまり、3次元関心空間内の全ての点において、方法1−1の処理1および処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、i回目における3次元残差ベクトル分布の推定結果(式(6−2))を得る。
(処理2:3次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)
次に、i回目における3次元残差ベクトル分布の推定結果を用いてi−1回目の3次元変位ベクトル分布の推定結果を(15)式のように更新する。
次に、この推定結果に3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こして、(16)式の3次元変位ベクトル分布の推定値を得る。
これにより、方法1−1の処理2中の(7)式における残差ベクトルの推定時の空間的に突発的に生じる推定エラーの大きさを低減する。したがって、本法1−2の処理1の位相マッチングは、(16)式により空間的に平滑化された各点(x,y,z)の3次元変位ベクトル分布の推定値を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r2(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索空間内信号r ’2(l,m,n) [0≦l≦2L−1, 0≦m≦2M−1, 0≦n≦2N−1]に対して行われる。
(処理3:3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局
所空間の大きさを縮小する条件))
この処理の特徴は、3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点において3次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所空間の大きさを小さくし、または3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所空間の大きさを小さくすることにある。
3次元関心空間内の各点における3次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所空間の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。これらの基準を満足するまで、各位置にて使用される局所空間の大きさを変えることなく、本法1−2の処理1および本法1−2の処理2を繰り返す。そして、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(17)式または(17’)式の条件を基準とすることができる。
尚、(17)式または(17’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所空間の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。これらの基準を満足するまでその局所空間の大きさを変えることなく、本法1−2の処理1および本法1−2の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(18)式または(18’)式の条件を基準とすることができる。
尚、(18)式または(18’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4:3次元変位ベクトル分布の反復推定の終了条件)
3次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りである。これらの基準を満足するまで本法1−2の処理1、本法1−2の処理2、および本方法1−2の処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(19)式または(19’)式の条件を基準とすることができる。最終的な推定結果は、(15)式または、(16)式より得られる。
尚、3次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((1)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
[方法1−3]
本方法1−3のフローチャートを図12に示す。本方法は、前述の方法1−1を用いた場合の残差ベクトルの推定において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。前述の(14)式または(14’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法1−1および方法1−2を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法1−2の反復推定(方法1−2の処理1、処理2、処理3、および処理4)の流れに従うものとする。そして、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を施す。
まず、方法1−2の処理1により、3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび全ての点(x,y,z)における3次元残差変位ベクトルを推定する。すなわち、関心空間内の全ての点において方法1−1の処理1および処理2を1回ずつ行って3次元変位ベクトル分布のi-1回目における推定結果に対する3次元残差ベクトル分布ui(x,y,z)の推定結果(式(6−2))を得る。
その結果、(14)式または(14’)式の条件式が満足されなければ、方法1−1に従うこととする。また、(14)式または(14’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間が確認された場合は、方法1−2の処理2中において、(14)式または(14’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間を中心とする充分に広い空間内において、または、関心空間全体において、(15)式より得られる3次元変位ベクトル分布d(x,y,z)の推定結果d
i(x,y,z)に、次の(20)式のように、3次元低域通過型フィルタ、または3次元メディアンフィルタ
を施こす。
これにより、残差ベクトルの推定時に、方法1−1の処理2中の(7)式において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
その結果に基づいて、方法1−1の処理5または方法1−2の処理4により反復推定を終了する。したがって、最終的な推定結果は、(11)式または(15)式により得られる値、または(20)式より得られる推定値である。
尚、3次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((1)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法1−4]
本方法1−4のフローチャートを図13に示す。本方法は、前述の方法1−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時の処理2中の(7)式において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。これにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現できる。
具体的には、方法1−1とは反復推定の流れが異なり、i回目(i≧1)の推定において、以下に述べる処理を施す。
(処理1:3次元残差変位ベクトル分布推定)
ここで、3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび3次元残差変位ベクトル分布を推定する。3次元関心空間内の全ての点において方法1−1の処理1を1回行う。
次に、3次元変位ベクトル分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果d
i−1(x,y,z)の3次元残差ベクトル分布u
i (x,y,z)[(u
i x(x,y,z), u
i y(x,y,z), u
i z(x,y,z))
T]の推定結果:
を評価するべく、全ての点(x,y,z)に関して、変形前の局所3次元超音波エコー信号r
1(l,m,n)および位相マッチングを施した変形後の局所3次元超音波エコー信号r
i 2(l,m,n)の3次元フーリエ変換R
1(l,m,n)およびR
i 2(l,m,n)を評価する。これより求まる各局所3次元エコークロススペクトラム((3)式)の位相の勾配に関して、または変形前の局所3次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r
i 1(l,m,n)およびr
2(l,m,n)のクロススペクトラムの位相の勾配に関して、
および、正則化法を施し、すなわち、3次元残差ベクトル分布u
i(x,y,z)からなるベクトルu
iに関する汎関数:
をベクトルu
iに関して最小化することとなる。
しかし、未知3次元残差変位ベクトル分布の自乗ノルム||ui||2、そのベクトル成分の3次元勾配分布の自乗ノルム||Gui||2、および、そのベクトル成分の3次元ラプラシアン分布の自乗ノルム||GTGui||2、および、そのベクトル成分の3次元ラプラシアンの3次元勾配分布の自乗ノルム||GGTGui||2は正定値であるため、error(ui)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位ベクトル分布ui(x,y,z)に関する連立方程式:
(FTF + α1iI +α2iGTG +α3iGTGGTG +α4iGTGGTGGTG)ui = FTa (22)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるui(x,y,z)の推定エラーを低減し、安定的に3次元変位ベクトル分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果di−1(x,y,z)を更新するための3次元残差ベクトル分布ui(x
,y,z)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す四つの指標を代表に使用することがある。正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)に設定された局所空間内の3次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所空間においては値は大きく、SN比が高い局所空間においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)で評価されるクロススペクトラムの逆3次元フーリエ変換により評価される3次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所空間においては値は大きく、ピーク値の高い局所空間においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の各変位成分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)にて評価された3次元相互相関関数のピークの鋭さ(関数の各方向の2回微分値)を使用して、緩やかな(2回微分値の小さい)方向の変位成分にかかる値は大きく、鋭い(2回微分値の大きい)方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その微分値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階偏微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)にて評価された3次元相互相関関数のメインローブの幅(関数の各方向の半値幅)を使用して、狭い方向の偏微分にかかる値は小さく、広い方向の偏微分にかかる値は大きく設定されることがある。例えば、その半値幅に比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iの各々は、適宜、上記四つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの積に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2:3次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)
i回目における3次元残差ベクトル分布u
i(x,y,z)の推定結果を用いて、(23)式のように、i-1回目の3次元変位ベクトル分布の推定結果を更新する。
時に、この推定結果に、(24)式の3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こして、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることができる。
したがって、本法1−4の処理1中の位相マッチングは、(22)式より得られた各点(x,y,z)の3次元残差ベクトルデータui(x,y,z)、(23)式より得られた各点(x,y,z)の3次元ベクトルデータdi(x,y,z)、または、(24)式より空間的に平滑化された各点(x,y,z)の3次元ベクトルデータの推定値を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r2(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索空間内信号r’2(l,m,n)に対して行われる。
(処理3:3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局
所空間の大きさを縮小する条件))
3次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点において3次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所空間の大きさを小さくする。または、3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所空間の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点における3次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所空間の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所空間の大きさを変えることなく、本法1−4の処理1および本法1−4の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(25)式または(25’)式の条件を基準とする。
尚、(25)式または(25’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
3次元関心空間内の3次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所空間の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所空間の大きさを変えることなく、本法1−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所空間の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(26)式または(26’)式の条件を基準とする。
尚、(26)式または(26’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4:3次元変位ベクトル分布の反復推定の終了条件)
3次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法1−4の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(27)式または(27’)式の条件を基
準とする。
最終的な推定結果は、(23)式により得られる3次元変位ベクトル、または、(24)式より得られるその推定値である。
尚、3次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((1)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法1−5]
本法1−5のフローチャートを図14に示す。本方法は、前述の方法1−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時の処理2中の(7)式において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法1−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。前述の(14)式または(14’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法1−1および方法1−4を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の3次元変位ベクトル計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法1−4の反復推定の処理1、処理2、処理3、および、処理4の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を行なう。
方法1−4の処理1において、3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび3次元残差変位ベクトル分布の推定、すなわち、関心空間内の全ての点において方法1−1の処理1を行ない、さらに、正則化法を用いて、安定的に、3次元変位ベクトル分布のi-1回目における推定結果に対する3次元残差ベクトル分布の推定結果を得る。その結果、関心空間内において(14)式または(14’)式の条件式が満足されなければ、方法1−1に従う。(14)式または(14’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間が確認された場合は、次のようにする。
すなわち、方法1−4の処理2において、(14)式または(14’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間を中心とする充分に広い空間内において、または、関心空間全体において、(23)式より得られる3次元変位ベクトル分布d(x,y,z)の推定結果d
i(x,y,z)に、(28)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、残差ベクトルの推定誤差の低減を図る。
これにより、方法1−1の処理5または1−4の処理4により反復推定を終了する。したがって、最終的な推定結果は、(11)式または(23)式により得られる値、または、(28)式より得られる推定値である。
尚、3次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((1)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
(II)方法2:2次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布計測法
3次元(デカルト座標系(x,y,z))空間内の3次元関心空間(x,y,z)内の3次元変位ベクトルを計測する場合と同様に、あるz座標における2次元関心領域(x,y)内の2次元変位ベクトル分布を計測するべく、この関心領域内からの変形前後における2次元超音波エコー信号r1(x,y)およびr2(x,y)を取得した場合を考える。以下に示す方法2−1、方法2−2、方法2−3、方法2−4、方法2−5は、これらの変形前後の2次元超音波エコー信号r1(x,y)およびr2(x,y)の各位置(x,y)に、図15に示すように局所領域を設ける。そして、変形前の局所信号の位相特性が一致する(マッチする)局所領域をr1(x,y)内にて反復的に探索する(図16)。そして、逐次、相関性の高くなった局所信号を用いて評価される残差ベクトルを用いて前回の変位ベクトルの推定結果を修正していき、且つ、評価された残差ベクトルがある条件を満足した場合に局所領域の大きさを小さくすることにより高分解能化を図る(図17)。これにより、最終的に高精度な2次元変位ベクトルの計測を実現する。ここで、x, y軸方向の超音波エコー信号のサンプリング間隔は、Δx、Δyである。
[方法2−1]
方法2−1のフローチャートを図10に示す。本方法は、以下の処理1〜5により、あるz座標における2次元関心領域内の任意の点(x,y)の2次元変位ベクトルd(x,y)[= (dx(x,y), dy(x,y))T]を、変形前後における2次元超音波エコー信号領域r1(x,y)およびr2(x,y)内の(x,y)を中心とする局所2次元超音波エコー信号r1(l,m)および変形後の局所2次元超音波エコー信号r2(l,m) [0≦l≦L−1, 0≦ m ≦M−1]から評価する。通常、L、Mは、ΔxL、ΔyMが、各々、対応する方向の変位成分の大きさ|dx(x,y,z)|、|dy(x,y,z)|の4倍以上に充分に長くなる様に設定されることが望ましい。
(処理1:点(x,y,)における位相マッチング)
i回目(i≧1)の2次元変位ベクトルd(x,y)[= (dx(x,y), dy(x,y))
T]の推定結果d
i(x,y)[= (d
ix(x,y), d
iy(x,y))
T]を得るための位相マッチングを行う。前回のi-1回目の2次元変位ベクトルd(x,y)の推定結果d
i-1(x,y) [= (d
i-1 x(x,y), d
i-1 y(x,y))
T]を修正するべく、(x,y)を中心とする局所領域[0≦l≦L−1, 0≦ m ≦M−1]を中央に持つ各方向の長さが2倍(面積が4倍)である探索領域を変形後のエコー信号空間r
2(x,y)に設定する。但し、d
0(x,y)は、(29)式のとおりである。
この探索領域内エコー信号r
2(l,m) [0≦l≦2L−1, 0≦ m ≦2M−1]、またはi-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’
i−1 2(l,m)を2次元フーリエ変換したものに、i-1回目における推定結果d
i-1(x,y),または推定結果d
i-1(x,y)に修正すべき残差変位ベクトルu
i−1(x,y)[= (u
i-1 x(x,y), u
i−1 y(x,y))
T]の推定結果
を乗じ、変形後の局所エコー信号の位相を変形前の局所エコー信号と合わせることを試みる。
これを逆フーリエ変換することにより、i回目において2次元変位ベクトルd(x,y)[= (dx(x,y), dy(x,y))T]の評価を行うために用いる変形後の局所2次元超音波エコー信号ri 2(l,m)を(x,y)を中心とする探索領域内エコー信号r’i 2(l,m)内の中央にて得る。
尚、位相マッチングは、変形前の局所エコー信号の位相を変形後の局所エコー信号の位相と合わせることでも同様に実現できる。但し、変形前のエコー信号空間r
1(x,y)内の(x,y)を中心とする局所領域[0≦l≦L−1, 0≦ m ≦M−1]を中央にもつ探索領域内のエコー信号r’
1(l,m) [0≦l≦2L−1, 0≦ m ≦2M−1] 、またはi-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’
i−1 1(l,m)の2次元フーリエ変換したものには、
が掛けられる。
(処理2:点(x,y)の2次元残差変位ベクトルの推定)
変形前の局所2次元超音波エコー信号r
1(l,m)および位相マッチングを施した変形後の局所2次元超音波エコー信号r’
2(l,m)の2次元フーリエ変換R
1(l,m)およびR’
2(l,m)を評価し、これらより、(31)式の局所2次元エコークロススペクトラムを求める。
また、変形前の局所3次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は
、r
i 1(l,m)およびr
2(l,m)のクロススペクトラムは
但し、0≦l≦L−1, 0≦ m ≦M−1と表されることに基づき、その位相:
の勾配に関して、クロススペクトラムの二乗
を最小化することにより、点(x,y)の2次元変位ベクトルd(x,y)のi-1回目の評価結果d
i-1(x,y)に修正すべき2次元残差変位ベクトルu
i(x,y)[= (u
i x(x,y), u
i y(x,y))
T]の推定値(次式)を得る。
具体的には、以下の連立方程式を解くこととなる。
ここで、2次元変位ベクトルd(x,y)が大きい場合には、2次元残差変位ベクトルu
i(x,y)は、クロススペクトラム((31)式)の位相を周波数空間(l,m)においてアンラッピングした上で評価する必要がある。
また、2次元変位ベクトルd(x,y)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、クロススペクトラム((31)式)に2次元逆フーリエ変換を施すことにより得られる相互相関関数のピーク位置を検出するいわゆる相互相関法を使用することにより、クロススペクトラム((31)式)の位相を周波数空間(l,m)においてアンラッピングすることなく2次元残差変位ベクトルu
i(x,y)を評価でき、詳細には、相互相関法により2次元変位ベクトルのx, y軸方向の変位成分を超音波エコー信号のサンプリング間隔(データ間隔)Δx、Δyの整数倍の大きさで評価し(この場合、位相マッチングは、局所領域または探索領域を空間的にシフティングすることにより行える。)、例えば、閾値correTratioに対して、(36)式または(36’)式の条件を満足することを基準とする。
(36)式または(36’)式の条件が満足された後、これを初期値として2次元残差変位ベクトルu
i(x,y)をクロススペクトラム((31)式)の位相の勾配から評価すればよい。相互相関法を施した後においては、|u
i x(x,y)|≦Δx/2、|u
i y(x,y)|≦Δy/2が満足されることが経験的に確認されている。これはクロススペクトラム((31)式)の位相をアンラッピングせずに2次元残差変位ベクトルu
i(x,y)の推定を可能とするための必要十分条件である(37)式を満足する。
また、2次元変位ベクトルd(x,y)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引いた超音波エコー信号を用いることにより、クロススペクトラム((31)式)の位相を周波数空間(l,m)においてアンラッピングすることなく2次元残差変位ベクトルu
i(x,y)を評価できる。詳細には、(37)式、または(37)式を十分に満足する(37’)式の条件が満足される様に、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いて評価する。
そして、反復回数iの増加に共って2次元残差変位ベクトル成分ui x(x,y)、ui y(x,y)の大きさが小さくなるに連れて、超音波エコー信号の各方向のデータ密度を元の高さに戻して行き(例えば、2倍ずつ。)、最終的に取得された元のデータ密度の超音波エコー信号を用いて評価する。
超音波エコー信号のデータの間隔を小さくするための条件としては、例えば、ある閾値stepTratioに対して、(38)式または(38’)式の条件を基準とすることができる。
尚、(38)式または(38’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとにデータ間隔が小さくされることもある。以下の方法2−2、方法2−3、方法2−4、方法2−5においても同様である。
(処理3: 点(x,y)の2次元変位ベクトル推定結果の更新)
これより、2次元変位ベクトルd(x,y)のi回目の推定結果は、(39)式で評価される。
(処理4: 2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(
局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うために各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを小さくする。そのための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで処理1、処理2および処理3を繰り返し、満足された際には、局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(40)式または(40’)式の条件を基準とすることができる。
尚、(40)式または(40’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理5:点(x,y)における2次元変位ベクトルの反復推定の終了条件)
各点における2次元変位ベクトルの反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで処理1、処理2および処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioに対して、(41)または(41’)式を基準とすることができる。
(処理6)
処理1、処理2、処理3、処理4、処理5を2次元関心領域内の全ての点において施すことにより、関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布を得る。
尚、2次元変位ベクトルの反復推定の際のその初期値((29)式)は、特に、測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトルとする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
[方法2−1の限界]
方法2−1により2次元関心領域内の各点(x,y)に関して反復的に2次元変位ベクトルd(x,y)の推定結果を更新した場合、局所2次元エコー信号のSN比の如何によっては、特に初期段階の残差ベクトルの推定時において突発的に大きなエラーを生じることがある。これにより、例えば、処理2の(35)式を解く際、または、相互相関関数のピーク位置を検出する際に、処理1の位相マッチングが発散してしまうことがある。
各点において、位相マッチングが発散する可能性は、例えば、ある閾値belowTratioに対して、(42)または(42’)式により確認できる。
これを防ぐべく、ときに(42)式または(42’)式の条件式を用いて、以下の方法2−2、方法2−3、方法2−4、方法2−5が使用されることがある。すなわち、以下の方法2−2、方法2−3、方法2−4、方法2−5は、前述の方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時において、つまり方法2−1の処理2中の(35)式を解く、または相互相関関数のピーク位置を検出する時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減することにより、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ。これにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度な2次元変位ベクトル計測を実現する。
[方法2−2]
本方法2−2のフローチャートを図11に示す。本方法は、方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定において方法2−1の処理2中の(35)式の実行時に生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減する。これにより、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防いで、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトル計測を実現する。
具体的には、方法2−1とは反復推定の流れが異なり、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を行なう。
(処理1:2次元残差変位ベクトル分布推定)
ここでは、2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび全ての点(x,y)における2次元残差変位ベクトルの推定を行なう。2次元関心領域内の全ての点において方法2−1の処理1および方法2−1の処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、i回目における2次元残差ベクトル分布ui(x,y)の推定結果を得る。
(処理2:2次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)
i回目における2次元残差ベクトル分布u
i(x,y)の推定結果を用いてi-1回目の2次元変位ベクトル分布の推定結果を(43)式により更新する。
次に、この推定結果に、(44)または(44’)式の2次元低域通過型フィルタ、または2次元メディアンフィルタを施こす。
これにより、残差ベクトルの推定時における方法2−1の処理2中の(35)式の実行時において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。したがって、本法2−2の処理1の位相マッチングは、この空間的に平滑化された各点(x,y)の2次元ベクトル分布の推定結果を用いて、変形後の2次元エコー信号空間r2(x,y)内の各位置(x,y)に関する探索領域内信号ri 2(l,m) [0≦l≦2L−1, 0≦ m ≦2M−1] に対して行われる。
(処理3:2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うため、2次元関心領域内の各点において2次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。または、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
2次元関心領域内の各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。以下の基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法2−2の処理1および本法2−2の処理2を繰り返す。それらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(45)式または(45’)式の条件を基準とする。
尚、(45)式または(45’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りである。以下の基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法2−2の処理1および本法2−2の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(46)式または(46’)式の条件を基準とする。
尚、(46)式または(46’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4:2次元変位ベクトル分布の反復推定の終了条件)
2次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りである。以下の基準を満足するまで本法2−2の処理1、本法2−2の処理2、および本方法2−2の処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(47)または(47’)式を基準とすることができる。
最終的な推定結果は、(43)式により得られる2次元変位ベクトル分布の推定値、または(44)式より得られる平滑された2次元変位ベクトル分布の推定値である。
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする、または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法2−3]
本法2−3のフローチャートを図12に示す。本方法は、前述の方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時における方法2−1の処理2中の(35)式の実行時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減して、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。つまり、前述の(42)式または(42’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1および方法2−2を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトル計測を実現する。
具体的には、まず、方法2−2の反復推定(方法2−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理する。
まず、方法2−2の処理1(2次元残差変位ベクトル分布推定 (2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび全ての点(x,y)における2次元残差変位ベクトルの推定))、すなわち、関心領域内の全ての点において方法2−1の処理1および方法2−1の処理2を1回ずつ行い、2次元変位ベクトル分布d(x,y)のi-1回目における推定結果に対する2次元残差ベクトル分布ui(x,y)の推定結果を得る。その結果、(42)式または(42’)式の条件式が満足されなければ方法2−1に従う。一方、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域が確認された場合は、次の方法による。
すなわち、方法2−2の処理2(2次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)中において、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域を中心とする充分に広い領域内において、または関心領域全体において、(43)式より得られる2次元変位ベクトル分布d(x,y)の推定結果に、(48)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こす。これにより、残差ベクトルの推定時(方法2−1の処理2中の(35)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
その結果、方法2−1の処理5または2−2の処理4により反復推定を終了するものとする。したがって、最終的な推定結果は、(39)式または(43)式により得られるdi(x,y)、または、(48)式より得られる平滑された推定値である。
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法2−4]
本方法2−4のフローチャートを図13に示す。本方法は、前述の方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定(方法2−1の処理2中の(35)式)時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。これにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトル計測を実現する。
具体的には、方法2−1とは反復推定の流れを異とし、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理をする。
(処理1:2次元残差変位ベクトル分布推定)
2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトル分布を推定する。2次元関心領域内の全ての点において方法2−1の処理1を1回行う。
次に、2次元変位ベクトル分布d(x,y)のi-1回目の推定結果d
i-1(x,y)の2次元残差ベクトル分布u
i(x,y)[u
i x(x,y), u
i y(x,y))
T]の推定結果;
を評価すべく、全ての点(x,y)に関して、変形前の局所2次元超音波エコー信号r
1(l,m)および位相マッチングを施した変形後の局所2次元超音波エコー信号r
i 2(l,m)の2次元フーリエ変換R
1(l,m)およびR
i 2(l,m)を評価する。そして、これより求まる各局所2次元エコークロススペクトラム((31)式)の位相の勾配、あるいは変形前の局所2次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r
i 1(l,m)およびr
2(l,m)のクロススペクトラムの位相の勾配に関して、
および正則化法を施し、すなわち、2次元残差ベクトル分布u
i(x,y)からなる
ベクトルu
iに関する汎関数:
をベクトルu
iに関して最小化することとなる。
しかし、未知2次元残差変位ベクトル分布の自乗ノルム||ui||2、そのベクトル成分の2次元勾配分布の自乗ノルム||Gui||2、そのベクトル成分の2次元ラプラシアン分布の自乗ノルム||GTGui||2、および、そのベクトル成分の2次元ラプラシアンの2次元勾配分布の自乗ノルム||GGTGui||2は正定値であるため、error(ui)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位ベクトル分布ui(x,y)に関する連立方程式
(FTF +α1iI +α2iGTG +α3iGTGGTG +α4iGTGGTGGTG)ui = FTa …(50)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるui(x,y)の推定エラーを低減し、安定的に2次元変位ベクトル分布d(x,y)のi-1回目の推定結果di−1(x,y)を更新するための2次元残差ベクトル分布di(x,y)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す四つの
指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)に設定された局所領域内の2次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)で評価されるクロススペクトラムの逆2次元フーリエ変換により評価される2次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の各変位成分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)にて評価された2次元相互相関関数のピークの鋭さ(関数の各方向の2回微分値)を使用して、緩やかな(2回微分値の小さい)方向の変位成分にかかる値は大きく、鋭い(2回微分値の大きい)方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その微分値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階偏微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)にて評価された2次元相互相関関数のメインローブの幅(関数の各方向の半値幅)を使用して、狭い方向の偏微分にかかる値は小さく、広い方向の偏微分にかかる値は大きく設定されることがある。例えば、その半値幅に比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iの各々は、適宜、上記四つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの積に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2:2次元変位ベクトル分布の推定結果の更新)
i回目における2次元残差ベクトル分布u
i(x,y)の推定結果を用いて、(51)式のように、i-1回目の2次元変位ベクトル分布の推定結果を更新する。
時に、この推定結果に(52)式の2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることがある。
従って、本法2−4の処理1中の位相マッチングは、(50)式より得られた各点(x,y)の2次元残差ベクトルデータui(x,y)、(51)式より得られた各点(x,y)の2次元ベクトルデータdi(x,y)、または、(52)式より空間的に平滑化された各点(x,y)の2次元ベクトルデータを用いて、変形後の2次元エコー信号空間r2(x,y)内の各位置(x,y)に関する探索領域内信号r’2(l,m) [0≦l≦2L−1、0≦m≦2M−1]に対して行われる。
(処理3: 2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトル分布計測の高空間分解能化を行うため、2次元関心領域内の各点において2次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
2次元関心領域内の各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法2−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。例えば、ある閾値Tratioに対して、(53)式または(53’)式の条件を基準とできる。
尚、(53)式または(53’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法2−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(54)式または(54’)式の条件を基準とできる。
尚、(54)式または(54’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4:2次元変位ベクトル分布の反復推定の終了条件)
2次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法2−4の処理1、処理2、および、本法2−4の処理3を繰り返す。
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(55)または(55’)式を基準と
できる。
最終的な推定結果は、(51)式により得られるd
i(x,y)、または、(52)式より得られるd
i(x,y)の推定値である。
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法2−5]
本法2−5のフローチャートを図14に示す。本法は、前述の方法2−1を用いた場合の残差ベクトルの推定時における方法2−1の処理2中の(35)式の実行時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減する。これにより、方法2−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法である。そのために、前述の(42)式または(42’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1および方法2−4を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトル計測を実現する。
具体的には、まず、方法2−4の反復推定(方法2−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
方法2−4の処理1において、2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトル分布の推定、すなわち、関心領域内の全ての点において方法2−1の処理1を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、2次元変位ベクトル分布d(x,y)のi-1回目における推定結果(数68)に対する2次元残差ベクトル分布u
i(x,y)の推定結果(数69)を得る。
その結果、関心領域内において(42)式または(42’)式の条件式が満足されなければ、方法2−1に従う。(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域が確認された場合は、次の処理による。
方法2−4の処理2により、2次元変位ベクトル分布の推定結果の更新中において、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(51)式より得られる2次元変位ベクトル分布d(x,y)の推定結果d
i(x,y)に,(56)式の2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることができる。
その結果、方法2−1の処理5または2−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(39)式または(51)式により得られるdi(x,y)、または、(56)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
(III)方法3:1次元関心領域内の1次元(1方向)変位成分分布計測法
3次元(デカルト座標系(x,y,z))空間内の3次元関心空間(x,y,z)内の3次元変位ベクトルを計測する場合と同様に、あるx軸上の1次元関心領域内のx軸方向の変位成分の分布を計測するべく、この関心領域内からの変形前後における1次元超音波エコー信号r1(x)およびr2(x)を取得した場合を考える。以下に示す方法3−1、方法3−2、方法3−3、方法3−4、方法3−5は、これらの変形前後の1次元超音波エコー信号r1(x)およびr2(x)の各位置xに、図18および図19に示すように、局所領域を設けて、その変形前の局所信号の位相特性が一致する(マッチする)局所領域をr2(x)内にて反復的に探索する。そして、逐次、相関性の高くなった局所信号を用いて評価される1方向残差変位成分を用いて前回の1方向変位成分の推定結果を修正していき、且つ、評価された残差変位成分がある条件を満足した場合に局所領域の大きさを小さくすることにより高分解能化を図り(図20)、最終的に高精度な1次元変位成分分布の計測を実現するものである。ここで、x軸方向の超音波エコー信号のサンプリング間隔は、Δxである。
[方法3−1]
本方法3−1のフローチャートを図10に示す。以下の処理1〜5により、あるx軸上の1次元関心領域内の任意の点xのx方向変位成分dx(x)を、変形前後における1次元超音波エコー信号領域r1(x)およびr2(x)内の点xを中心とする局所1次元超音波エコー信号r1(l)および変形後の局所1次元超音波エコー信号r2(l)[0≦l≦L−1]から評価する。通常、Lは、ΔxLが、対応する方向の変位成分の大きさ|dx(x,y,z)|の4倍以上に充分に長くなる様に設定されることが望ましい。
(処理1: 点xにおける位相マッチング)
i回目(i≧1)のx方向変位成分dx(x)の推定結果d
ix(x)を得るための位相マッチングを行う。
前回のi-1回目のx方向変位成分dx(x)の推定結果d
i-1 x(x)
を修正するべく、点xを中心とする局所領域[0≦l≦L−1]を中央に持つ長さが2倍)である探索領域を変形後のエコー信号空間r
2(x)に設定し、この探索領域内エコー信号r’
2(x)[0≦l≦2L−1] または、i-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’
i−1 2(l)を1次元フーリエ変換したものに、i-1回目における推定結果dx
i-1(x)(または、推定結果dx
i-1(x)に修正すべき残差変位成分u
i-1 x(x)の推定結果
を乗じ、変形後の局所エコー信号の位相を変形前の局所エコー信号と合わせることを試みる。これを逆フーリエ変換することにより、i回目においてx方向変位成分dx(x)の評価を行うために用いる変形後の局所1次元超音波エコー信号r
i 2(l)を点xを中心とする探索領域内エコー信号r’
i 2(l)内の中央にて得る。
尚、位相マッチングは、変形前の局所エコー信号の位相を変形後の局所エコー信号の位相と合わせることでも同様に実現できる。但し、変形前のエコー信号空間r
1(x)内の点xを中心とする局所領域[0≦l≦L−1]を中央にもつ探索領域内のエコー信号r’
1(l)[0≦l≦2L−1](または、i-1回目において位相マッチングを施した探索エコー信号r’
i−1 1(l)の1次元フーリエ変換したものには、
がかけられる。
(処理2: 点xの1方向残差変位成分の推定)
変形前の局所1次元超音波エコー信号r
1(l)および位相マッチングを施した変形後の局所1次元超音波エコー信号r
i 2(l)の1次元フーリエ変換R
1(l)およびR
i 2(l)を評価し、これらより、局所1次元エコークロススペクトラム:
を評価し、変形前の局所1次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r
i 1(l)およびr
2(l)のクロススペクトラムは
と表されることに基づき、その位相:
の勾配に関して、クロススペクトラムの二乗
を最小化することにより、点xのx方向変位成分dx(x)のi-1回目の評価結果dx
i-1(x)に修正すべきx方向残差変位成分u
i x(x)の推定値を得る。
ここで、x方向変位成分dx(x)が大きい場合には、x方向残差変位成分ux i(x)は、クロススペクトラム((59)式)の位相を周波数空間(l)においてアンラッピングした上で評価する必要がある。
また、x方向変位成分dx(x)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、クロススペクトラム((59)式)に1次元逆フーリエ変換を施すことにより得られる相互相関関数のピーク位置を検出するいわゆる相互相関法を使用することにより、クロススペクトラム((59)式)の位相を周波数空間(l)においてアンラッピングすることなくx方向残差変位成分ui x(x)を評価でき、詳細には、相互相関法により1方向(x方向)変位成分を超音波エコー信号のサンプリング間隔(データ間隔)Δxの整数倍の大きさで評価する。この場合、位相マッチングは、局所領域または探索領域を空間的にシフティングすることにより行える。
例えば、閾値correTratioに対して、(64)または(64’)が満足された後、これを初期値としてx方向残差変位成分u
x i(x)をクロススペクトラム((59)式)の位相の勾配から評価すればよい。
相互相関法を施した後においては、|u
i x(x)|≦Δx/2が満足されることが経験的に確認されているが、これはクロススペクトラム((59)式)の位相をアンラッピングせずにx方向残差変位成分u
i x(x)の推定を可能とするための必要十分条件
を満足する。
また、x方向変位成分dx(x)が大きい場合には、反復推定時の初期の段階において、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引いた超音波エコー信号を用いることにより、クロススペクトラム((59)式)の位相を周波数空間(l)においてアンラッピングすることなくx方向残差変位成分u
i x(x)を評価でき、詳細には、(65)式、または、(65)式を十分に満足する条件
が満足される様に、取得された元の超音波エコー信号を各方向に等間隔で間引くことによりデータ間隔を大きくした超音波エコー信号を用いて評価することとし、反復回数iの増加に共ってx方向残差変位成分u
i x(x)の大きさが小さくなるに連れて、超音波エコー信号の各方向のデータ密度を元の高さに戻して行き(例えば、2倍ずつ。)、最終的に取得された元のデータ密度の超音波エコー信号を用いて評価する。
超音波エコー信号のデータの間隔を小さくするための条件としては、例えば、ある閾値stepTratioに対して、(66)式または(66’)式の条件を基準とする。
(処理3: 点xの1方向変位成分推定結果の更新)
これより、x方向変位成分dx(x)のi回目の推定結果は、
と評価される。
(処理4: 1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うために各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを小さくするが、そのための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで処理1、処理2、および処理3を繰り返し、満足された際には、局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(68)または(68’)式を基準とできる。
(処理5: 点xにおける1方向変位成分の反復推定の終了条件)
各点におけるx方向変位成分の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで処理1、処理2、および処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioに対して、(69)または(69’)式を基準とできる。
(処理6)
この処理1、処理2、処理3、処理4、処理5を1次元関心領域内の全ての点において施すことにより、関心領域内のx方向変位成分分布を得ることができる。
尚、x方向変位成分の反復推定の際のその初期値((57)式)は、特に、測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
[方法3−1の限界]
方法3−1により1次元関心領域内の各点xに関して反復的にx方向変位成分dx(x)の推定結果を更新した場合、局所1次元エコー信号のSN比の如何によっては、特に初期段階の残差変位成分の推定時において突発的に大きなエラーを生じることがある。つまり、処理2の式(63)を解く際、または、相互相関関数のピーク位置を検出する際に、処理1における位相マッチングが発散してしまうことがある。
各点において、位相マッチングが発散する可能性は、例えば、ある閾値belowTratioに対して、(70)または(70’)式により確認できる。
これを防ぐべく、時に(70)式または(70’)式の条件式を用いて、以下の方法3−2、方法3−3、方法3−4、方法3−5が使用されることがある。すなわち、以下の方法3−2、方法3−3、方法3−4、方法3−5は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定時に、方法3−1の処理2中の(63)式を解く際、または相互相関関数のピーク位置を検出するときにおいて生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減することにより、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度な1方向変位成分の計測を実現するものである。
[方法3−2]
本方法3−2のフローチャートを図11に示す。本方法は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定(方法3−1の処理2中の(63)式)時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の計測を実現するものである。
具体的には、方法3−1とは反復推定の流れを異とし、i回目(i≧1)の推定において、以下の処理を行なう。
(処理1:1方向残差変位成分分布推定)
この処理では、1次元関心領域内の全ての点xにおける位相マッチングおよび全ての点xにおける1方向残差変位成分の推定を行なう。
1次元関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1および方法3−1の処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、
(処理2:1方向変位成分分布の推定結果の更新)
i回目におけるx方向変位成分分布u
i x(x)の推定結果を用いて、(71)式のように、i-1回目のx方向変位成分分布の推定結果を更新する。
次に、この推定結果に、(72)式の1次元低域通過型フィルタ、または、1次元メディアンフィルタを施こす。
これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。したがって、本法3−2の処理1の位相マッチングは、
(処理3: 1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所
領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うため、1次元関心領域内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、1次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
1次元関心領域内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法3−2の処理1および本法3−2の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(73)または(73’)式を基準とできる。
1次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法3−2の処理1および本法3−2の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(74)または(74’)式を基準とできる。
(処理4: 1方向変位成分分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法3−2の処理1、本法3−2の処理2、および本方法3−2の処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(75)または(75’)式を基準とできる。
最終的な推定結果は、(71)式により得られるdx
i(x)、または、(72)式より得られる推定値である。
尚、x方向変位成分分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法3−3]
本法3−3のフローチャートを図12に示す。本方法は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定において方法3−1の処理2中の(63)式の実行時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、前述の(70)式または(70’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法3−1および方法3−2を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法3−2の反復推定(方法3−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
方法3−2の処理1の1方向残差変位成分分布推定 (1次元関心領域内の全ての点xにおける位相マッチングおよび全ての点xにおける1方向残差変位成分の推定)、すなわち、関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1および方法3−1の処理2を1回ずつ行い、x方向変位成分分布dx(x)のi-1回目における推定結果
その結果、(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1に従うこととし、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域が確認された場合は、方法3−2の処理2(1方向変位成分分布の推定結果の更新中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(71)式より得られるx方向変位成分分布dx(x)の推定結果d
ix(x)に、(76)式の1次元低域通過型フィルタ、または、1次元メディアンフィルタを施こす。
これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減するものとする。
その結果、方法3−1の処理5または2−2の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(71)式により得られるdi(x)、または、(76)式より得られる推定値である。
尚、x方向変位成分分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法3−4]
本方法3−4のフローチャートを図13に示す。本方法は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定(方法3−1の処理2中の(59)式)の実行時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の計測を実現するものである。
具体的には、方法3−1とは反復推定の流れを異とし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
(処理1:1方向残差変位成分分布推定)
本処理では、1次元関心領域内の全ての点xにおける位相マッチングおよび1方向残差変位成分分布を推定する。すなわち、1次元関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1を1回行う。
次に、x方向変位成分分布d(x)のi-1回目の推定結果d
i−1 x(x)のx方向残差変位成分分布u
i x(x)の推定結果を評価するべく、全ての点xに関して、変形前の局所1次元超音波エコー信号r
1(l)および位相マッチングを施した変形後の局所1次元超音波エコー信号r
i 2(l)の1次元フーリエ変換R
1(l)およびR
i 2(l)を評価し、これより求まる各局所1次元エコークロススペクトラム((59)式)(変形前の局所1次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r
i 1(l)およびr
2(l)のクロススペクトラム)の位相の勾配に関して、
および、正則化法を施し、すなわち、x方向残差変位成分分布u
x i (x)からなるベクトルu
iに関する汎関数:
をベクトルu
iに関して最小化することとなるが、未知x方向残差変位成分分布の自乗ノルム||u
i||
2、その変位成分の1次元勾配分布の自乗ノルム||Gu
i||
2、その変位成分分布の1次元ラプラシアン分布の自乗ノルム||G
TGu
i||
2、および、その変位成分分布の1次元ラプラシアンの1次元勾配分布の自乗ノルム||GG
TGu
i||
2は正定値であるため、error(u
i)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位成分分布u
x i(x)に関する連立方程式
(F
TF +α
1iI +α
2iG
TG +α
3iG
TGG
TG +α
4iG
TGG
TGG
TG)u
i = F
Ta …(78)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるu
x i(x)の推定エラーを低減し、安定的にx方向変位成分分布dx(x)のi-1回目の推定結果dx
i-1(x)を更新するためのx方向残差変位成分分布u
x i(x)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα
1i、α
2i、α
3i、α
4iは、適宜、以下に示す二つの
指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x)に設定された局所領域内の2次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x)で評価されるクロススペクトラムの逆1次元フーリエ変換により評価される1次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記二つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの積に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位成分(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 1方向変位成分分布の推定結果の更新)
i回目におけるx方向残差変位成分分布u
x i(x)の推定結果を用いて、(79)式により、i-1回目のx方向変位成分分布の推定結果を更新する。
時に、この推定結果に、(80)式の1次元低域通過型フィルタ、または、1次元メディアンフィルタを施こす。これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることがある。
したがって、本法3−4の処理1中の位相マッチングは、(78)式より得られた各点xの残差変位成分データu
i x(x)、(79)式より得られた各点xのx方向変位データd
i x(x),または、(80)式より空間的に平滑化された各点xのx方向変位データ
(処理3: 1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件)
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うため、1次元関心領域内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、1次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
1次元関心領域内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法3−4の処理1および本法3−4の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(81)または(81’)式を基準とできる。
1次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法3−4の処理1および本法3−4の処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(82)または(82’)式を基準とできる。
(処理4: 1方向変位成分分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法3−4の処理1、本法3−4の処理2および、本法3−4の処理3を繰り返す。
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(83)または(83’)式を基準とできる。
最終的な推定結果は、(79)式により得られるdx
i(x)、または、(80)式より得られる推定値である。
尚、x方向変位成分分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
[方法3−5]
本法3−5のフローチャートを図14に示す。本法は、前述の方法3−1を用いた場合の残差変位成分の推定(方法3−1の処理2中の(63)式)時において生じうる突発的な推定エラーの大きさを低減し、方法3−1の処理1における位相マッチングが発散することを防ぐ方法であり、前述の(70)式または(70’)式の条件式により発散の可能性を検出することを可能とし、方法3−1および方法3−4を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法3−4の反復推定(方法3−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理する。
方法3−4の処理1において1次元残差変位成分分布推定(1次元関心領域内の全ての点xにおける位相マッチングおよび1次元残差変位成分分布の推定)、すなわち、関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、x方向変位成分分布dx(x)のi-1回目における推定結果
を得る。その結果、関心領域内において(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1に従う。そして、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域が確認された場合は、次の処理を行なう。
すなわち、方法3−4の処理2(1方向変位成分分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(79)式より得られるx方向変位成分分布d
x(x)の推定結果d
i x(x)に、(84)式に示す1次元低域通過型フィルタ、または、1次元メディアンフィルタを施こす。これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることができる。
その結果、方法3−1の処理5または3−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(79)式により得られるdx
i(x)、または、(84)式より得られる推定値である。
尚、x方向変位成分分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
(IV)方法4:3次元関心空間内の2次元変位ベクトル計測法
[方法4−1]
2次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布計測法(方法2−1、又は、2−2、又は、2−3、又は、2−4、又は、2−5)を用いて、3次元関心空間内の各(x,y)平面においてその計測を行うことにより、3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を計測することができる(図21)。
(処理1)
3次元関心空間内の各(x,y)平面において、方法2−1、又は、2−2、又は、2−3、又は、2−4、又は、2−5を使用する。
尚、2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された値を、逐次、使用してもよい。
さらに、方法4−2として、方法2−2(図11)に基づく方法を、さらに、方法4−3として、方法2−3に基づいて、方法4−2の処理中に前述の(42)式または(42’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法2−1を用いた方法4−1を有効利用する方法を説明する。
[方法4−2]
方法4−2のフローチャートを図22に示す。例として、x軸およびy軸方向の変位成分からなる2次元変位ベクトルの3次元空間分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、処理1を行なう。
(処理1:2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布推定 )
3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトルを推定する。3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)において方法2−1の処理1および方法2−1の処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、i回目における2次元残差ベクトル分布u
i(x,y,z)[=(u
i x(x,y,z),u
i y(x,y,z))
T]の推定結果(次式)を得る。
(処理2:2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果の更新)
i回目における2次元残差ベクトルの3次元空間分布u
i(x,y,z)の推定結果
次に、この推定結果に、(86)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差ベクトルの推定時(方法2−1の処理2中の(35)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
従って、本法4−2の処理1の位相マッチングは、この空間的に平滑化された各点(x,y,z)の2次元ベクトルの3次元空間分布データ(下記)を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r
2(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索領域内信号r’
2(x,y,z)[0≦l≦2L−1、0≦m≦2M−1]対して行われる。
(処理3:2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点において2次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法4−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(87)式または(87’)式の条件を基準とできる。
尚、(87)式または(87’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法4−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(88)式または(88’)式の条件を基準とできる。
尚、(88)式または(88’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4: 2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の終了条件)
2次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法4−2の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(89)または(89’)式を基準とできる。
最終的な推定結果は、(85)式により得られるd
i(x,y,z)、または、(86)式より得られる推定値である。
尚、2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法4−3]
方法4−3のフローチャートを図23に示す。例として、x軸およびy軸方向の変位成分からなる2次元変位ベクトルの3次元空間分布を計測する場合を考える。
本法4−3は、前述の方法4−2の処理1にて前述の(42)式または(42’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1を用いた方法4−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法4−2の反復推定(方法4−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理する。方法4−2の処理1(2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布推定 (3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトルの推定))、すなわち、3次元関心空間内の全ての点において方法2−1の処理1および方法2−1の処理2を1回ずつ行い、2次元変位ベクトルの3次元空間分布d(x,y,z)のi−1回目における推定結果に対する2次元残差ベクトルの3次元空間分布ui(x,y,z)の推定結果を得る。その結果、(42)式または(42’)式の条件式が満足されなければ、方法2−1を用いた4−1に従う。(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または領域が確認された場合は、次の処理による。
方法4−2の処理2(2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果の更新)中において、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心空間全体において、(85)式より得られる2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果d
i(x,y,z)に、(90)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差ベクトルの推定時(方法2−1の処理2中の(35)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減するものとする。
その結果、方法2−1を用いた方法4−1の処理1または4−2の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(39)式または(85)式により得られるdi(x,y,z)、または、(90)式より得られる平滑された推定値である。
尚、2次元変位ベクトル分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
さらに、方法4−4として、正則化法を用いた方法2−4(図13)に基づく方法を、さらに、方法4−5として、方法2−5に基づいて、方法4−4の処理中に前述の(42)式または(42’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法2−1を用いた方法4−1を有効利用する方法を説明する。
[方法4−4]
方法4−4のフローチャートを図24に示す。例として、x軸およびy軸方向の変位成分からなる2次元変位ベクトルの3次元空間分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、処理1を行なう。
(処理1:2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布推定)
3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトルを推定する。3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)において方法2−1の処理1を1回行う。
次に、2次元変位ベクトルの3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果d
i−1(x,y,z)の2次元残差ベクトル分布u
i(x,y,z) [= (u
i x(x,y,z), u
i y(x,y,z))
T]の推定結果(次式)
を評価するべく、全ての点(x,y,z)に関して、変形前の局所2次元超音波エコー信号r
1(l,m)および位相マッチングを施した変形後の局所2次元超音波エコー信号r
i 2(l,m)の2次元フーリエ変換R
1(l,m)およびR
i 2(l,m)を評価し、これより求まる各局所2次元エコークロススペクトラム((31)式):変形前の局所2次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r
i 1(l,m)およびr
2(l,m)のクロススペクトラム)の位相の勾配に関して、
および、正則化法を施し、すなわち、2次元残差ベクトルの3次元空間分布u
i(x,y,z)からなるベクトルu
iに関する汎関数:
をベクトルu
iに関して最小化することとなるが、未知2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布の自乗ノルム||u
i||
2、そのベクトル成分の3次元勾配成分の3次元空間分布の自乗ノルム||Gu
i||
2、および、そのベクトル成分の3次元ラプラシアンの3次元空間分布の自乗ノルム||G
TGu
i||
2、および、そのベクトル成分の3次元ラプラシアンの3次元勾配成分の3次元空間分布の自乗ノルム||GG
TGu
i||
2は正定値であるため、error(u
i)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位ベクトルの3次元空間分布u
i(x,y,z)に関する連立方程式
(F
TF +α
1iI +α
2iG
TG +α
3iG
TGG
TG +α
4iG
TGG
TGG
TG)u
i = F
Ta …(92−1)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるu
i(x,y,z) の推定エラーを低減し、安定的に2次元変位ベクトルの3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目の推定結果d
i-1(x,y,z)を更新するための2次元残差ベクトルの3次元空間分布u
i(x,y,z)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα
1i、α
2i、α
3i、α
4iは、適宜、以下に示す四つの
指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)に設定された局所領域内の2次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)で評価されるクロススペクトラムの逆2次元フーリエ変換により評価される2次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の各変位成分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)にて評価された2次元相互相関関数のピークの鋭さ(関数の各方向の2回微分値)を使用して、緩やかな(2回微分値の小さい)方向の変位成分にかかる値は大きく、鋭い(2回微分値の大きい)方向の変位成分にかかる値は小さく設定されることがある。例えば、その微分値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階偏微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)にて評価された2次元相互相関関数のメインローブの幅(関数の各方向の半値幅)を使用して、狭い方向の偏微分にかかる値は小さく、広い方向の偏微分にかかる値は大きく設定されることがある。例えば、その半値幅に比例する様に設定されることがある。尚、z方向の偏微分にかかる値は、他の方向の偏微分に較べて十分に大きい値に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iの各々は、適宜、上記四つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの積に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位ベクトル(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 2次元変位ベクトル分布の3次元空間分布の推定結果の更新)
i回目における2次元残差ベクトルの3次元空間分布u
i(x,y,z)の推定結果を
用いて,(92−2)式により、i-1回目の2次元変位ベクトルの3次元空間分
布の推定結果を更新する。
時に、この推定結果に、(93)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることがある。
したがって、本法4−4の処理1中の位相マッチングは、(91)式より得られた各点(x,y,z)の2次元残差ベクトルの3次元空間分布データu
i(x,y,z)、(92−2)式より得られた各点(x,y,z)の2次元ベクトルの3次元空間分布データd
i(x,y,z)、または、(93)式より空間的に平滑化された各点(x,y,z)の2次元ベクトルの3次元空間分布データ(下記)を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r
2(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索領域内信号r’
2(l,m)[0≦l≦2L−1、0≦m≦2M−1]に対して行われる。
(処理3: 2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点において2次元変位ベクトルを反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点における2次元変位ベクトルの反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法4−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。例えば、ある閾値Tratioに対して、(94)式または(94’)式の条件を基準とできる。
尚、(94)式または(94’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
3次元関心空間内の2次元変位ベクトル分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法4−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、各辺の長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(95)式または(95’)式の条件を基準とできる。
尚、(95)式または(95’)式の条件式は各方向成分に適応されることもあり、前述の通り各方向ごとに長さが短くされることもある。
(処理4: 2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の終了条件)2次元変位ベクトル分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法4−4の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(96)または(96’)式を基準と
できる。
最終的な推定結果は、(92−2)式により得られるd
i(x,y,z)、または、(93)式より得られる平滑された推定値である。
尚、2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法4−5]
方法4−5のフローチャートを図25に示す。例として、x軸およびy軸方向の変位成分からなる2次元変位ベクトルの3次元空間分布を計測する場合を考える。
本法4−5は、前述の方法4−4の処理1にて前述の(42)式または(42’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1を用いた方法4−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の2次元変位ベクトルの3次元空間分布計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法4−4の反復推定(方法4−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
方法4−4の処理1(2次元残差変位ベクトル分布の3次元空間分布推定(3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび2次元残差変位ベクトルの3次元空間分布の推定))、すなわち、3次元関心空間内の全ての点において方法2−1の処理1を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、2次元変位ベクトル分布の3次元空間分布d(x,y,z)のi-1回目における推定結果
その結果、関心空間内において(42)式または(42’)式の条件式が満足されなければ、方法2−1を用いた方法4−1に従う。(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間が確認された場合は、次の処理による。すなわち、方法4−4の処理2(2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果の更新)中において、(42)式または(42’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間を中心とする充分に広い空間内において、または、関心空間全体において、(92−2)式より得られる2次元変位ベクトルの3次元空間分布の推定結果d
i(x,y,z)に、(97)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差ベクトルの推定誤差の低減を図ることができる。
その結果、方法2−1を用いた方法4−1の処理1または4−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(39)式または(92−2)式により得られるd
i(x,y,z)、または、(97)式より得られる平滑された推定値である。
尚、2次元変位ベクトルの3次元空間分布の反復推定の際の初期値((29)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零ベクトル分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
(V)方法5:3次元関心空間内の1方向変位成分計測法
[方法5−1]
方法5−1は、1次元関心領域内の1方向変位成分分布計測法(方法3−1、又は、3−2、又は、3−3、又は、3−4、又は、3−5)を用いて、3次元関心空間内のx軸に平行な直線上においてその方向の変位成分分布の計測を行うことにより、3次元関心空間内の1方向変位成分分布を計測することができる(図21)。
(処理1)
3次元関心空間内のx軸に平行な直線上において、方法3−1、又は、3−2、又は、3−3、又は、3−4、又は、3−5を使用する。
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
さらに、方法5−2として、方法3−2(図11)に基づく方法を、さらに、方法5−3として、方法3−3に基づいて、方法5−2の処理中に前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法3−1を用いた方法5−1を有効利用する方法を説明する。
[方法5−2]
方法5−2のフローチャートを図22に示す。例として、x軸方向の変位成分の3次元空間分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、次のように処理をする。
(処理1: 1方向残差変位成分の3次元空間分布推定 )
3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分を推定する。3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)において方法3−1の処理1および方法3−1の処理2を1回ずつ施すものとする。すなわち、i回目におけるx方向残差変位成分の3次元空間分布ui x(x,y,z)の推定結果を得る。
(処理2:1方向変位成分の3次元空間分布の推定結果の更新)
i回目におけるx方向変位成分の3次元空間分布u
i x(x,y,z)の推定結果を用いて(98)式により、i-1回目のx方向変位成分の3次元空間分布の推定結果を更新する。
次に、この推定結果に、(99)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
従って、本法5−2の処理1の位相マッチングは、この空間的に平滑化された各点(x,y,z)のx方向変位成分データ(下記)を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r
2(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索領域内信号r’
2(l) [0≦l≦2L−1]に対して行われる。
(処理3:1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、3次元関心空間内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法5−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(100)または(100’)式を基準とできる。
3次元関心空間内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法5−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(101)または(101’)式を基準とできる。
(処理4: 1方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分の3次元空間分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法3−2の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(102)または(102’)式を基準とできる。
最終的な推定結果は、(98)式により得られるdx
i(x,y,z)、または、(99)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法5−3]
方法5−3のフローチャートを図23に示す。例として、x軸方向の変位成分の3次元空間分布を計測する場合を考える。
本法5−3は、前述の方法5−2の処理1にて前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とする。また、方法3−1を用いた方法5−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の3次元空間分布計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法5−2の反復推定(方法5−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理をする。
まず、方法5−2の処理1(1方向残差変位成分の3次元空間分布推定(3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分の推定))、すなわち、関心空間内の全ての点において方法3−1の処理1および方法3−1の処理2を1回ずつ行い、x方向変位成分の3次元空間分布d
x(x,y,z)のi-1回目における推定結果
その結果、(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1を用いた方法5−1に従う。(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域が確認された場合は、次の方法による。
方法5−2の処理2(1方向変位成分の3次元空間分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心空間全体において、(98)式より得られるx方向変位成分の3次元空間分布の推定結果d
i x(x,y,z)に、(102)式にしめす3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定時[方法3−1の処理2中の(63)式]において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減するものとする。
その結果、方法5−1の処理1または5−2の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(98)式により得られるd
i x(x,y,z)、または、(102)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
さらに、方法5−4として、正則化法を用いた方法3−4(図13)に基づく方法を、さらに、方法5−5として、方法3−5に基づいて、方法5−4の処理中に前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法3−1を用いた方法5−1を有効利用する方法を説明する。
[方法5−4]
方法5−4のフローチャートを図24に示す。例として、x軸方向の変位成分の3次元空間分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
(処理1:1方向残差変位成分の3次元空間分布推定)
[3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分を推定する。3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)において、x方向変位成分の3次元空間分布dx(x,y,z)のi-1回目の推定結果を用いて、方法3−1の処理1を1回行う。
次に、x方向変位成分の3次元空間分布dx(x,y,z)のi-1回目の推定結果dx
i−1(x,y,z)のx方向残差変位成分の3次元空間分布u
i x(x,y,z)の推定結果
を評価するべく、全ての点(x,y,z)に関して、変形前の局所1次元超音波エコー信号r
1(l)および位相マッチングを施した変形後の局所1次元超音波エコー信号r
i 2(l)の1次元フーリエ変換R
1(l)およびR
i 2(l)を評価する。これより求まる各局所1次元エコークロススペクトラム((59)式:変形前の局所1次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r
i 1(l)およびr
2(l)のクロススペクトラム)の位相の勾配に関して、
および、正則化法を施し、すなわち、x方向残差変位成分の3次元空間分布u
i x(x,y,z)からなるベクトルu
iに関する汎関数:
をベクトルu
iに関して最小化することとなるが、未知x方向残差変位成分の3次元空間分布の自乗ノルム||u
i||
2、その変位成分の3次元勾配成分の3次元空間分布の自乗ノルム||Gu
i||
2、その変位成分の3次元ラプラシアンの3次元空間分布の自乗ノルム||G
TGu
i||
2および、その変位成分の3次元ラプラシアンの3次元勾配成分の3次元空間分布の自乗ノルム||GG
TGu
i||
2は正定値であるため、error(u
i)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位成分の3次元空間分布u
x i(x,y,z)に関する連立方程式
(F
TF+α
1iI+α
2iG
TG+α
3iG
TGG
TG+α
4iG
TGG
TGG
TG)u
i=F
Ta …(104)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるu
i x(x,y,z)の推定エラーを低減し、安定的にx方向変位成分の3次元空間分布d
x(x,y,z)のi-1回目の推定結果d
i−1 x(x,y,z)を更新するためのx方向変位成分の3次元空間分布u
i x(x,y,z)の推定結果を得る。
ここで、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、以下に示す二つの指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)に設定された局所領域内の1次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y,z)で評価されるクロススペクトラムの逆1次元フーリエ変換により評価される1次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、各反復時において、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階偏微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)。その場合、y、z方向の偏微分にかかる正則化パラメータの値は、x方向の値に較べて大きい値に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記二つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの積に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位成分(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 1方向変位成分の3次元空間分布の推定結果の更新)
時に、この推定結果に、(106)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることがある。
したがって、処理1中の位相マッチングは、(104)式より得られた各点(x,y,z)の残差変位成分の3次元空間分布データu
i x(x,y,z)、(105)式より得られた各点(x,y,z)のx方向変位成分の3次元空間分布データd
i x(x,y,z)、または、(106)式より空間的に平滑化された各点(x,y,z)のx方向変位成分の3次元空間分布データ
を用いて、変形後の3次元エコー信号空間r
2(x,y,z)内の各位置(x,y,z)に関する探索領域内信号r
i 2(l)[0≦l≦2L−1]に対して行われる。
(処理3: 1方向変位成分の3次元空間分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分の3次元空間x分布計測の高空間分解能化を行うため、3次元関心空間内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、3次元関心空間内のx方向変位成分を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
3次元関心空間内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法5−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(107)または(107’)式を基準とできる。
3次元関心空間内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法5−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(108)または(108’)式を基準とできる。
(処理4: 1方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分の3次元空間分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法5−4の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(109)または(109’)式を基準と
できる。
最終的な推定結果は、(105)式により得られるdx
i(x,y,z)、または、(106)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
[方法5−5]
方法5−5のフローチャートを図25に示す。例として、x軸方向の変位成分の3次元空間分布を計測する場合を考える。
本法5−5は、前述の方法5−4の処理1にて前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法3−1を用いた方法5−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度のx方向変位成分の3次元空間分布計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法5−4の反復推定(方法5−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
まず、方法5−4の処理1(1方向変位成分分布の3次元空間分布推定(3次元関心空間内の全ての点(x,y,z)における位相マッチングおよび1方向変位成分の3次元空間分布の推定))、すなわち、3次元関心空間内の全ての点において方法3−1の処理1を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、x方向変位成分の3次元空間分布dx(x,y,z)のi-1回目における
その結果、関心空間内において(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1を用いた方法5−1に従う。(70)式または(70’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間が確認された場合は、次の処理による。
すなわち、方法5−4の処理2(1方向変位成分の3次元空間分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点(x,y,z)または空間を中心とする充分に広い空間内において、または、関心空間全体において、(105)式より得られるx方向変位成分の3次元空間分布の推定結果d
i x(x,y,z)に(110)式に示す3次元低域通過型フィルタ、または、3次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることができる。
その結果、方法5−1の処理1または5−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(105)式により得られるd
x i(x,y,z)、または、(110)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、x方向変位成分の3次元空間分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
(VI)方法6:2次元関心領域内の1方向変位成分計測法
[方法6−1]
方法6−1のフローチャートを図21に示す。1次元関心領域内の1方向変位成分分布計測法(方法3−1、又は、3−2、又は、3−3、又は、3−4、又は、3−5)を用いて、2次元関心領域内のx軸に平行な直線上においてその方向の変位成分分布の計測を行うことにより、2次元関心領域内の1方向変位成分分布を計測することができる。
(処理1)
2次元関心領域内のx軸に平行な直線上において、方法3−1、又は、3−2、又は、3−3、又は、3−4、又は、3−5を使用する。
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用してもよい。
さらに、方法6−2として、方法3−2(図11)に基づく方法を、さらに、方法6−3として、方法3−3に基づいて、方法6−2の処理中に前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法3−1を用いた方法6−1を有効利用する方法を説明する。
[方法6−2]
方法6−2のフローチャートを図22に示す。例として、x軸方向の変位成分の2次元分布を計測する場合を考え、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
(処理1: 1方向残差変位成分の2次元分布推定
2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分を推定する。2次元関心領域内の全ての点(x,y)において方法3−1の処理1および方法3−1の処理2を1回ずつ施する。すなわち、
(処理2:1方向変位成分の2次元分布の推定結果の更新)
次に、この推定結果に、(112)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減する。
したがって、本法6−2の処理1の位相マッチングは、この空間的に平滑化された各点(x,y)のx方向変位成分データ(下記)を用いて、変形後の2次元エコー信号空間r
2(x,y,z)内の各位置(x,y)に関する探索領域内信号r’
2(l) [0≦l≦2L−1]に対して行われる。
(処理3:1方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分分布計測の高空間分解能化を行うため、2次元関心領域内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、2次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
2次元関心領域内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法6−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(113) または(113’)式を基準とできる。
2次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法6−2の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(114)または(114’)式を基準とできる。
(処理4: 1方向変位成分の2次元分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分の2次元分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法6−2の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
例えば、ある閾値aboveTratioroiに対して、(115)または(115’)式を
基準とできる。
最終的な推定結果は、(111)式により得られるdx
i(x,y)、または、(112)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法6−3]
方法6−3のフローチャートを図23に示す。例として、x軸方向の変位成分の2次元分布を計測する場合を考える。
本法6−3は、前述の方法6−2の処理1にて前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法2−1を用いた方法6−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の2次元分布計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法6−2の反復推定(方法6−2の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
すなわち、方法6−2の処理1(1方向残差変位成分の2次元分布推定 (2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分の推定)) の後、すなわち、関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1および方法3−1の処理2を1回ずつ行う。そして、
この間において、(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1を用いた方法5−1に従う。(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域が確認された場合は、次の処理による。
すなわち、方法5−2の処理2(1方向変位成分の2次元分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点xまたは領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(111)式より得られるx方向変位成分の2次元分布の推定結果d
i x(x,y)に、(116)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定時(方法3−1の処理2中の(63)式)において生じる空間的に突発的な推定エラーの大きさを低減するものとする。
その結果、方法6−1の処理1または6−2の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(111)式により得られるdxi(x,y,z)、または、(116)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
さらに、方法6−4として、正則化法を用いた方法3−4(図13)に基づく方法を、さらに、方法6−5として、方法3−5に基づいて、方法6−4の処理中に前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能として方法3−1を用いた方法6−1を有効利用する方法を説明する。
[方法6−4]
方法6−4のフローチャートを図24に示す。例として、x軸方向の変位成分の2次元分布を計測する場合を考える。i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
(処理1: 1方向残差変位成分の2次元分布推定 )
2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび1方向残差変位成分を推定する。2次元関心領域内の全ての点(x,y)において、x方向変位成分の2次元分布dx(x,y)のi-1回目の推定結果を用いて、方法3−1の処理1を1回行う。
次に、x方向変位成分の2次元分布dx(x,y)のi-1回目の推定結果dx
i−1(x,y)のx方向残差変位成分の2次元分布u
i x(x,y)の推定結果(下記)を評価する。
この推定結果を評価するために、評価するために、全ての点(x,y)に関して、変形前の局所1次元超音波エコー信号r
1(l)および位相マッチングを施した変形後の局所1次元超音波エコー信号r
i 2(l)の1次元フーリエ変換R
1(l)およびR
i 2(l)を評価し、これより求まる各局所1次元エコークロススペクトラム((59)式):変形前の局所1次元超音波エコー信号に位相マッチングを施した場合は、r
i 1(l)およびr
2(l)のクロススペクトラム)の位相の勾配に関して、
および、正則化法を施し、すなわち、x方向残差変位成分の2次元分布u
i x(x,y)からなるベクトルu
iに関する汎関数:
をベクトルu
iに関して最小化することとなるが、未知x方向残差変位成分の2次元分布の自乗ノルム||u
i||
2、その変位成分の2次元勾配成分の2次元分布の自乗ノルム||Gu
i||
2、その変位成分の2次元ラプラシアンの2次元分布の自乗ノルム||G
TGu
i||
2、および、その変位成分の2次元ラプラシアンの2次元勾配成分の2次元分布の自乗ノルム||GG
TGu
i||
2は正定値であるため、error(u
i)は必ず一つの最小値を持つこととなり、これより得られる残差変位成分の2次元分布u
x i(x,y)に関する連立方程式
(F
TF+α
1iI+α
2iG
TG+α
3iG
TGG
TG+α
4iG
TGG
TGG
TG)u
i=F
Ta …(118)
を解くことにより、測定された超音波データのノイズにより、突発的に生じるu
x i(x,y)の推定エラーを低減し、安定的にx方向変位成分の2元分布d
x(x,y)のi-1回目の推定結果d
i−1 x(x,y)を更新するためのx方向変位成分の2元空間分布u
i x(x,y)の推定結果(下記)を得る。
ここで、正則化パラメータα
1i、α
2i、α
3i、α
4iは、適宜、以下に示す二つの指標を代表に使用することがある。
正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)に設定された局所領域内の1次元超音波エコー信号のクロススペクトラムのパワーのSN比を使用し、そのSN比が低い局所領域においては値は大きく、SN比が高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、そのSN比に反比例する様に設定されることがある。
また、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、空間的に変化するものとして使用される場合(ゼロとすることもある)、その値を設定するための一つの指標として、各反復時において各位置(x,y)で評価されるクロススペクトラムの逆1次元フーリエ変換により評価される1次元相互相関関数のピーク値から評価される相関性を使用し、ピーク値の低い局所領域においては値は大きく、ピーク値の高い局所領域においては値は小さく設定されることがある。例えば、ピーク値に反比例する様に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα2i、α3i、α4iは、各反復時において、空間的に変化するものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、且つ、計測対象の変位成分の各方向の1階偏微分ごとに異なるものとして使用されることがあり(ゼロとすることもある)、その場合、y方向の偏微分にかかる正則化パラメータの値は、x方向の値に較べて大きい値に設定されることがある。
さらに、正則化パラメータα1i、α2i、α3i、α4iは、適宜、上記二つの指標の内の幾つかを組み合わせて使用し、各々の指標から求められる値に重要度に応じて重み付けしたもの積に比例する様に設定されることがある(ゼロとすることもある)。従って、超音波エコー信号を重視できる理想的な場合には、反復回数iの増加に共い、これらの値は小さく設定されるべきものであるが、大きさ、連続性、微分可能性(滑らかさ)などの変位成分(分布)に関する先見的な情報を重視する必用がある場合は、反復回数iの増加に共い、これらの値は大きく設定されることがある。
(処理2: 1方向変位成分の2次元分布の推定結果の更新)
時に、この推定結果に、 (120)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることがある。
したがって、処理1中の位相マッチングは、(118)式より得られた各点(x,y)の残差変位成分の2次元分布データu
i x(x,y)、(119)式より得られた各点(x,y)のx方向変位成分の2次元分布データd
x i(x,y)、または、(120)式より空間的に平滑化された各点(x,y)のx方向変位成分の2次元分布データ(下記)を用いて、変形後の2次元エコー信号空間r
2(x,y)内の各位置(x,y)に関する探索領域内信号r
i 2(l)[0≦l≦2L−1]に対して行われる。
(処理3:1方向変位成分の2次元分布計測の高空間分解能化を行うための条件(局所領域の大きさを縮小する条件))
x方向変位成分の2次元分布計測の高空間分解能化を行うため、2次元関心領域内の各点においてx方向変位成分を反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする、または、2次元関心領域内のx方向変位成分を空間的に一様な空間分解能で反復推定するために使用する局所領域の大きさを小さくする。
2次元関心領域内の各点におけるx方向変位成分の反復推定に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで各位置にて使用される局所領域の大きさを変えることなく、本法6−3の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、その点において用いる局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioに対して、(121)または(121’)式を基準とできる。
2次元関心領域内のx方向変位成分分布を空間的に一様な空間分解能で反復的に推定する場合に使用する局所領域の大きさを縮小するための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまでその局所領域の大きさを変えることなく、本法6−4の処理1および処理2を繰り返し、これらの基準が満足された場合は、使用する局所領域の大きさを小さくする(例えば、長さを1/2にする)。
例えば、ある閾値Tratioroiに対して、(122)または(122’)式を基準とできる。
(処理4: 1方向変位成分の2次元分布の反復推定の終了条件)
x方向変位成分の2次元分布の反復的推定を終えるための基準は以下の通りで、これらの基準を満足するまで本法6−4の処理1、処理2、および、処理3を繰り返す。
例えば、閾値aboveTratioroiに対して、(123)または(123’)式を基準と
できる。
最終的な推定結果は、(119)式により得られるdx
i(x,y)、または、(120)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
[方法6−5]
方法6−5のフローチャートを図25に示す。例として、x軸方向の変位成分の2次元分布を計測する場合を考える。
本法6−5は、前述の方法6−4の処理1にて前述の(70)式または(70’)式の条件式により位相マッチングの発散の可能性を検出することを可能とし、方法3−1を用いた方法6−1を有効に利用することにより、超音波エコーデータのSN比が低い場合においても、高精度の1方向変位成分の2次元分布計測を実現するものである。
具体的には、まず、方法6−4の反復推定(方法6−4の処理1、処理2、処理3、および、処理4)の流れに従うものとし、i回目(i≧1)の推定において、次の処理を行なう。
すなわち、方法6−4の処理1(1方向変位成分分布の2次元分布推定(2次元関心領域内の全ての点(x,y)における位相マッチングおよび1方向変位成分の2次元分布の推定))の後にて、すなわち、2次元関心領域内の全ての点において方法3−1の処理1を行い、さらに、正則化法を用いて、安定的に、
その結果、関心領域内において(70)式または(70’)式の条件式が満足されなければ、方法3−1を用いた方法6−1に従う。(70)式または(70’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域が確認された場合は、次の処理による。
すなわち、方法6−4の処理2(1方向変位成分の2次元分布の推定結果の更新)中において、(70)式または(70’)式の条件式を満足する点(x,y)または領域を中心とする充分に広い領域内において、または、関心領域全体において、(119)式より得られるx方向変位成分の2次元分布の推定結果d
i x(x,y)に、(124)式に示す2次元低域通過型フィルタ、または、2次元メディアンフィルタを施こし、これにより、残差変位成分の推定誤差の低減を図ることができる。
その結果、方法3−1を用いた方法6−1の処理1または方法6−4の処理4により反復推定を終了するものとする。従って、最終的な推定結果は、(67)式または(119)式により得られるdx i(x,y)、または、(124)式より得られる平滑化された推定値である。
尚、x方向変位成分の2次元分布の反復推定の際の初期値((57)式)は、特に測定対象の剛体運動変位量や測定対象に与える変位量に関する先見的なデータを所有しない場合は零分布とする。または、近隣の位置において既に推定された精度の良い値(相関値が高い、又は、二乗誤差が小さい)を、逐次、使用していく。
尚、3次元関心領域内の3次元変位ベクトル分布は、上記の方法1を用いること以外に、上記の3次元関心領域内の2次元変位ベクトル成分分布を計測する方法4または3次元関心領域内の1次元(1方向)変位成分分布を計測する方法5を演算する方向を変えて用いることにより計測可能であり、また、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル分布は、上記の方法2を用いること以外に、上記の2次元関心領域内の1次元(1方向)変位成分分布を計測する方法6を演算する方向を変えて用いることにより計測可能である。また、反復推定の終了基準を定める閾値以外の上記のいずれの閾値も、適宜、各々が定める基準が満足された際に値が更新されうるものであり、また、1回の推定にて反復推定を終了することもある。
また、正則化を施す際に付加する先見的情報としては、上記の変位ベクトル分布および変位成分分布の空間的な連続性や微分可能性に関するものや組織の力学的特性(例えば、非圧縮性)や変位ベクトル分布および変位成分分布に関する適合条件などの他に、異なる2つ以上の時相にて取得された超音波エコー信号を用いて評価される複数のクロススペクトラムの位相の勾配から未知変位ベクトル成分分布の時系列に関する連立方程式を得た上で、これに最小二乗法を適用する際に、変位ベクトル成分分布の時系列や変位成分分布の時系列の時間的な連続性や微分可能性に関するものを使用できる。この場合、正則化の処罰項および正則化パラメータは前記関心領域の次元数および変位成分の方向および関心領域内の位置および時刻に依存して異なるものとすることができる。
このようにして、変位ベクトルを精度よく計測することができることから、結果的に、単に3次元歪テンソルの計測を可能とするだけでなく、2次元歪テンソル、歪1成分、3次元歪速度テンソル、2次元歪速度テンソル成分、歪速度1成分、また、加速度ベクトルや速度ベクトル等の高精度な計測を可能とする。
(VII)微分フィルタ
前記信号処理により計測された前記3次元関心空間内の3次元変位ベクトル、2次元関心領域内の2次元変位ベクトル、1次元関心領域内の1方向変位成分、3次元関心空間内の2次元変位ベクトルまたは1方向変位成分、2次元空間内の1方向変位成分に帯域制限を施した空間微分フィルタ(3次元、2次元、または、1次元空間フィルタ)または周波数空間にて帯域制限のある空間微分フィルタの周波数応答(3次元、2次元、または、1次元周波数応答)をかけることにより歪テンソル成分は求められる。また、これらの時系列に帯域制限を施した時間微分フィルタまたは周波数空間にて帯域制限のある時間微分フィルタの周波数応答をかけることにより歪速度テンソル成分や加速度ベクトル成分や速度ベクトル成分が求められる。また、下記信号処理により直接的に計測された歪テンソル成分から歪速度テンソル成分を求めることもできる。
まずは、クロススペクトラムのパワーを用いて通常は正規化されたクロススペクトラムの2乗を重み関数として、最小二乗法に基づいてクロススペクトラムの位相の勾配から変位を計測する際に、関心領域内の変位の大きさや変位分布に関する先見的情報を付加するべく、正則化処理を施して安定化することにより、さらに高精度な変位計測を実現した。
次に、反復的に修正すべき3次元変位ベクトル成分、又は、2次元変位ベクトル成分、又は、1方向変位成分を推定する方法として、演算プログラム量の軽減及び演算処理時間の短縮化を図るべく、クロススペクトラムのパワーを用いて通常は正規化されたクロススペクトラムの2乗を重み関数として最小二乗法に基づいてクロススペクトラムの位相の勾配から推定する前記の方法の代わりに、反復推定の過程において、適宜、組み合わせて使用することのできる、若しくは、いずれかの1つを使用できる推定方法を列挙する。実時間性を重視して1回の推定にて終了することもある。尚、超音波信号の送受信は前記に従う。
演算処理をシンプル化して、演算プログラム量の軽減及び演算処理時間を短縮化するべく、異なる2つの時相(変形前後)の局所超音波エコー信号の各々の3次元フーリエ変換R
1(ωx, ωy, ωz)[位相θ
1(ωx, ωy, ωz)]とR
2(ωx, ωy, ωz)[位相θ
2(ωx, ωy, ωz)]を用いて、クロススペクトラムの位相θ(ωx, ωy, ωz)はθ
2(ωx, ωy, ωz)−θ
1(ωx, ωy, ωz)であるため、変位ベクトルu(=(ux,uy,uz)
T)は、
と表され、スペクトラムのSN比が高い周波数(ωx, ωy, ωz)の位相を用いて、位相θ
2(ωx, ωy, ωz)とθ
1(ωx, ωy, ωz)との差を各方向の周波数ωx, ωy, ωzで偏微分して求めるか、或いは、位相θ
2(ωx, ωy, ωz)とθ
1(ωx, ωy, ωz)の各々の各方向の周波数ωx, ωy, ωzで偏微分したものの差を求めるか、或いは、アンラッピングすることなしにフーリエ変換値のRe[R
2(ωx, ωy, ωz)]とIm[R
2(ωx, ωy, ωz)]とRe[R
1(ωx, ωy, ωz)]とIm[R
1(ωx, ωy, ωz)]や、これらの周波数ωx, ωy, ωz方向の偏微分値を用いて求められることがある。これらの偏微分は、差分近似や微分フィルタを施すことにより求められることもあるが、適宜、位相や各信号成分や式中の分子・分母・項は周波数領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタに掛けられることがある。スペクトラムのSN比が高い複数の周波数(ωx, ωy, ωz)において評価された変位ベクトルの平均値(ベクトル)を計測結果とすることも可能である。
ここで、2次元変位ベクトルや1方向変位成分の各々は、変形前後の超音波エコー信号の2次元フーリエ変換や1次元フーリエ変換を通じて同様に求めることができる。
また、周波数空間内において上式より得られる未知変位ベクトル成分に関する式を連立する、若しくは、この周波数空間の空間方向内や時間方向内(異なる3つ以上の時相の超音波エコー信号を取得した場合)において同式を連立した上で、上記の正則化が施されることもある。
また、1次元(1方向)演算処理を行う場合は、演算処理をシンプル化して、演算プログラム量の軽減及び演算処理時間を短縮化するべく、x軸方向の処理を行う場合はクロススペクトラムの位相がθ(ωx)=ux・ωx、y軸方向の処理を行う場合はクロススペクトラムの位相がθ(ωy)=uy・ωy、z軸方向の処理を行う場合はクロススペクトラムの位相がθ(ωz)=uz・ωzと表されるため、クロススペクトラムのSN比が高い周波数の位相のみを用いて求められることがある。クロススペクトラムのSN比が高い複数の周波数(ωx若しくはωy若しくはωz)において評価された変位の平均値を計測結果とすることも可能である。
また、大変位を評価する場合には、第1実施形態と同様に、位相のアンラッピングを行う、または、相互相関法を使用する、若しくは、これにより計測手順が煩雑なものになることを回避するべく、データを間引き最終的に元のデータ間隔(密度)に戻す手順を導入することでこれらの処理を不要として計測手順を格段にシンプルなものともできる。
また、周波数空間内において上式より得られる未知変位ベクトル成分に関する式を連立する、若しくは、この周波数空間の空間方向内や時間方向内(異なる3つ以上の時相の超音波エコー信号を取得した場合)において同式を連立した上で、上記の正則化が施されることもある。
また、適宜、異なる2つ以上の時相において超音波エコー信号を取得することとし、自己相関法(ビーム方向若しくは走査方向)と正則化法の両方を、備える、又は、積極的に使用することがある。
また、適宜、超音波ドプラ法(超音波エコー信号のビーム方向若しくは走査方向のドプラ変移周波数の検出)により、速度ベクトル成分を直接的に求める方法を備える、又は、積極的に使用することができる。ビーム方向の速度成分を直交する走査方向の速度成分に較べて高精度に計測できることに基づき、高精度な速度ベクトルの計測を実現するべく、機械走査やビームステアリングを行うことにより(フォーカシングに加えてアポダイゼーションを行うこともある。以下、同様。)、測定対象物の変形前後の各々において、3次元速度ベクトルを計測する場合は3方向に、2次元速度ベクトルを計測する場合は2方向に、超音波ビームを放射して、超音波エコーデータフレームを得、各同一方向に放射して得られた2枚の超音波エコーデータフレームから高精度に計測されたビーム方向の速度成分分布に対してデータ補間(変位成分のフーリエ変換を行い、フーリエ空間において複素エクスポネンシャルを乗ずることによる空間的なシフティングによる補間)を施すことにより、3次元、または、2次元の速度ベクトル分布の高精度計測を実現する。ビーム方向の1次元処理が行われることもある。超音波データに他の速度計測法を適応した場合も同様である。また、速度を直接的に計測する場合は、超音波素子アレイの一素子ずつを使用して計測対象物の関心領域に超音波を放射し、一素子又は複数素子を使用して前記計測対象物にて発生する超音波エコー信号を取得して、各時相にて取得された超音波エコー信号に対して、3次元速度ベクトルを計測する場合には異なる3方向以上の、2次元速度ベクトルを計測する場合には異なる2方向以上の、1方向速度成分を計測する場合には異なる1方向以上の、ビームフォーミング(フォーカシングに加えてアポダイゼーションを行うこともある。受信のみのビームフォーミングが行われることもある。以下、同様。)を行い、異なる2つ以上の時相で取得された同一方向にビームフォーミングされた超音波エコー信号の位相に基づいて高精度に計測された局所ビーム方向速度成分から、3次元速度ベクトル又は3次元速度ベクトル成分又は2次元速度ベクトル又は2次元速度ベクトル成分又は1方向速度成分を計測することがある。これより、ビームステアリングを行う場合に比べて送受信時間を短縮化できる。ビーム方向の1次元処理が行われることもある。各時相にて多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号を重ね合わせ、速度を計測することもある。各ビーム方向の1次元処理が行われることがある(以下、同様)。また、多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号を重ね合わせた上で包絡線検波をして得られた超音波エコー信号を使用することもある。また、多方向にビームフォーミングして得られた超音波エコー信号の各々を包絡線検波をした上で重ね合わせて得られた超音波エコー信号を使用することもある。上記の送信時において、一素子以上の素子が使用されることもあり、その際には、別方向への送信ビームフォーミングが行われることがある。他の速度を直接的に計測する場合も同様である。
この場合において、計測された3次元関心空間内の3次元速度ベクトル、2次元関心領域内の2次元速度ベクトル、1次元関心領域内の1方向速度成分、3次元関心空間内の2次元速度ベクトルまたは1方向速度成分、2次元空間内の1方向速度成分に、帯域制限を施した空間微分フィルタ(3次元、2次元、または、1次元空間フィルタ)または周波数空間にて帯域制限のある空間微分フィルタの周波数応答(3次元、2次元、または、1次元周波数応答)をかけることにより歪速度テンソル成分を求めることがある。また、速度ベクトルや速度成分の時系列に帯域制限を施した時間微分フィルタまたは周波数空間にて帯域制限のある時間微分フィルタの周波数応答をかけることにより加速度ベクトル成分を求めることがある。
ドプラ変移周波数や速度を検出する方法には様々なものがあるが、
時間tにおける1方向速度成分を計測対象として、関心領域内の各位置(x,y,z)において得られるR軸方向の直交検波信号Z
R(x,y,z,t)(=Re[Z
R(x,y,z,t)]+jIm[Z
R(x,y,z,t)]。jは虚数単位。)の位相の分布θ
ZR(x,y,z,t)=tan
-1(Im[Z
R(x,y,z,t)]/Re[Z
R(x,y,z,t)])より、例えば、時間t=Tにおける位置(X,Y,Z)のx軸方向(R=x)の未知速度成分vxは、
より求めることができる。ここで、c
Rは、超音波の伝播速度である。また、f
0Rは、R軸が超音波ビーム方向である場合は超音波キャリア周波数であり(但し、スキャン方向の変調無しの状態)、R軸がスキャン方向である場合はその方向の正弦周波数である(但し、ビーム方向の動き補償をした状態)。また、s
Rは、R軸が超音波ビーム方向である場合は4.0であり、R軸がスキャン方向である場合は2.0である。上記の如く、位相θ
ZR(x,y,z,t)の時間勾配は、位相θ
ZR(x,y,z,t)を求めた上で差分近似や微分フィルタを施すことにより求められることもあるが、適宜、位相や各信号成分や式中の分子・分母は時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられた上で、求められることがある。また、位相θ
ZR(x,y,z,t)の時間勾配は、tan
-1(Im[Zx
*(x,y,z,t)Zx(x,y,z,t+ΔT)]/Re[Zx
*(x,y,z,t)Zx(x,y,z,t+ΔT)])/ΔTより求めることもできる。但し、*は共役である。適宜、位相差や各信号成分や式中の分子・分母は時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられた上で、求められることがある。これより、関心領域内の速度成分分布(時系列)を求めることができる。
また、上式より得られる未知速度ベクトル成分に関する式を空間方向内や時間方向内において連立した上で、上記の正則化が施されることもある。
この様にして求められた各速度成分(時系列)にパルス放射時間間隔Tsをかけることにより、この間におけるその方向の変位成分分布(時系列)を得ることができる。また、移動量を考慮した上で、速度ベクトル分布(時系列)を時間方向に積分することにより変位ベクトル分布(時系列)を得ることができる。
これらの速度ベクトル分布(時系列)や変位ベクトル分布(時系列)の時空間偏微分により、歪テンソル成分分布(時系列)、加速度ベクトル成分分布(時系列)、歪速度テンソル成分分布(時系列)を得ることができる。
また、適宜、超音波エコー信号の直交検波信号(ビーム方向若しくは走査方向)の位相の空間偏微分より、歪テンソル成分を直接的に求めることのできる方法を備える、又は、積極的に使用することもできる。
時間tにおける歪成分を計測対象として、関心領域内の各位置(x,y,z)において得られるR軸方向の直交検波信号Z
R(x,y,z,t)(=Re[Z
R(x,y,z,t)]+jIm[Z
R(x,y,z,t)]。jは虚数単位。)の位相の分布θ
ZR(x,y,z,t)=tan
-1(Im[Z
R(x,y,z,t)]/Re[Z
R(x,y,z,t)])より、例えば、時間t=Tにおける位置(X,Y,Z)のx軸方向(R=x)の未知垂直歪成分εxxは、
より求めることができる。ここで、c
Rは、超音波の伝播速度である。また、f
0Rは、R軸が超音波ビーム方向である場合は超音波キャリア周波数であり(但し、スキャン方向の変調無しの状態)、R軸がスキャン方向である場合はその方向の正弦周波数である(但し、ビーム方向の動き補償をした状態)。また、s
Rは、R軸が超音波ビーム方向である場合は4.0であり、R軸がスキャン方向である場合は2.0である。上記の如く、位相θ
ZR(x,y,z,t)の空間勾配は、位相θ
ZR(x,y,z,t)を求めた上で差分近似や微分フィルタを施すことにより求められることもあるが、適宜、位相や各信号成分や式中の分子・分母は時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられた上で、求められることがある。また、位相θ
ZR(x,y,z,t)の空間勾配は、例えば、x軸方向の微分は、tan
-1(Im[Zx
*(x,y,z,t)Zx(x+Δx,y,z,t)]/Re[Zx
*(x,y,z,t)Zx(x+Δx,y,z,t)])/Δxより求めることもできる。但し、*は共役である。適宜、位相差や各信号成分や式中の分子・分母は時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられた上で、求められることがある。また、例えば、時間t=Tにおける位置(X,Y,Z)のx-y面(R=xとy)内の未知ずり歪成分εxyは、
より求めることができる。また、同様に共役積を利用して求めることができる。この様にして、関心領域内の歪テンソル成分の分布(時系列)を求めることができる。
また、上式より得られる未知歪テンソル成分に関する式を空間方向内や時間方向内において連立した上で、上記の正則化が施されることもある。
また、同様にして、変位ベクトル成分の1階偏微分の分布(時系列)を求めることができ、これを偏微分方向に積分することにより変位ベクトル分布(時系列)を得ることができる。
これらの歪テンソル分布(時系列)や変位ベクトル分布(時系列)の時空間偏微分により、歪速度テンソル成分分布(時系列)や加速度ベクトル成分分布(時系列)を得ることができる。
また、適宜、(I−1)複素相互相関法(複素解析信号若しくは検波信号を得た上、若しくは、超音波エコー信号の相互相関関数を得た上で求められる、ビーム方向若しくは走査方向の、複素相互相関関数信号の位相)を用いる方法や、(I−2)複素相互相関法(ビーム方向若しくは走査方向)と正則化法の両方を用いる方法や、(I−3)複素相互相関法において評価される、3次元、2次元、若しくは、1次元複素相互相関関数信号の位相の2次元以上の空間分布(ビーム方向を含む、若しくは、含まない)と正則化法を用いる方法を、備える、又は、積極的に使用することができる。時として、複素相互相関関数として、単に共役積が使用されることがある(時として、複素相互相関関数の位相として、単に、共役積の位相、すなわち、位相差が使用されることがある。)。共役積は、適宜、時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられることがある。
(I-3)の方法においては、時間t=Tにおける3次元変位ベクトル又は2次元変位ベクトル又は1方向変位成分を計測対象として、時間t=Tと時間t=T+ΔT(ΔTは例えば超音波パルス放射間隔。)における超音波エコー信号より関心領域内の各位置(X,Y,Z)において求められる複素相互相関関数信号Cc(X,Y,Z;x,y,z)(=Re[Cc(X,Y,Z;x,y,z)]+jIm[Cc(X,Y,Z;x,y,z)]。jは虚数単位。複素相互相関関数の座標(x,y,z)は位置(X,Y,Z)に原点を持つ。)の位相の3次元分布θcc(X,Y,Z;x,y,z)=tan
-1(Im[Cc(X,Y,Z;x,y,z)]/Re[Cc(X,Y,Z;x,y,z)])より、各位置の未知変位ベクトル(ux,uy,uz)
Tに関する方程式
を得、さらに、これらを関心領域内において時として時間方向にも連立した上で最小二乗法を適用する際に、適宜、未知変位ベクトルやその成分の、時空間的な大きさや時空間的な連続性に関する各種条件を用いて正則化した上で、関心領域内の未知変位ベクトル分布(時系列)が求められる。位相θcc(X,Y,Z;x,y,z)の各方向の勾配は、位相θcc(X,Y,Z;x,y,z)に差分近似や微分フィルタを施すことにより求められるが、例えば、x軸方向の微分d/dx・θcc(x,y,z)|
x=0,y=0,z=0に関しては、(Re[Cc(X,Y,Z;0,0,0)]×(d/dx・Im[Cc(X,Y,Z;x,y,z)]|
x=0,y=0,z=0)−(d/dx・Re[Cc(X,Y,Z;x,y,z)]|
x=0,y=0,z=0)×Im[Cc(X,Y,Z;0,0,0)])/(Re[Cc(X,Y,Z;0,0,0)]
2+Im[Cc(X,Y,Z;0,0,0)]
2)より求められることもある。その際には、例えば、d/dx・Re[Cc(X,Y,Z;x,y,z)]|
x=0,y=0,z=0は、Re[Cc(X,Y,Z;x,y,z)]に差分近似や微分フィルタを施すことにより求められる。また、例えば、x軸方向の微分d/dx・θcc(x,y,z)|
x=0,y=0,z=0は、tan
-1(Im[Cc
*(X,Y,Z;0,0,0)Cc(X,Y,Z;Δx,0,0)]/Re[Cc
*(X,Y,Z;0,0,0)Cc(X,Y,Z;Δx,0,0)])/Δxより求めることもできる。但し、*は共役である。θcc(0,0,0)に関しては、同様にしてd/dt・θcc(x,y,z)|
x=0,y=0,z=0を求めた上で、時間間隔Δtをかけることにより求められることがある。これより、位相をアンラッピングする必要がなくなる。また、θcc(0,0,0)は、同様にしてd/dt・θcc(x,y,z)|
x=0,y=0,z=0の時系列を求めた上で、時間積分することにより求められることがある。
これらの計算において、位相や偏微分値や各信号成分や式中の分子・分母の各々は、適宜、時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられることがある。未知変位ベクトルが2次元ベクトルである場合、例えば、2次元変位ベクトル(ux,uy)
Tを求める場合は、各位置(X,Y,Z)において求められる複素相互相関関数信号の位相の2次元分布θ(X,Y,Z;x,y)より、各位置の未知変位ベクトルに関する方程式
を得、これらを関心領域内において時として時間方向にも連立した上で最小二乗法を適用する際に、適宜、正則化した上で、関心領域内の未知変位ベクトル分布(時系列)が求められる。
また、(I-1)の相互相関法は、ビーム方向若しくは走査方向の複素相互相関関数信号の位相を用いるものであり、例えば、関心領域内の各位置(X,Y,Z)において求められる複素相互相関関数信号の位相θcc(X,Y,Z;x)より、各位置の未知変位成分uxに関する方程式
を得、これを解くことにより未知変位成分uxが求まり、これより関心領域内のその変位成分分布(時系列)が求められる(自己相関法)。また、(I-2)の方法は、同様に、関心領域内の各位置において、ビーム方向若しくは走査方向の複素相互相関関数信号の位相を用いて導出された未知変位成分に関する方程式を得、それらを関心領域内において時として時間方向にも連立した上で最小二乗法を適用する際に、適宜、正則化した上で、関心領域内の未知変位成分分布(時系列)が求められる。
尚、上記の(I‐2)と(I-3)の方法を用いる際には、未知変位ベクトルや未知変位成分の各々を局所の変位ベクトルや局所の変位成分として扱う、すなわち、局所領域の剛体運動を仮定して局所変位ベクトルや局所変位成分の連立方程式を立てる、あるいは、有限時間内において一定の変位であるものとして連立方程式を立てることにより、その空間分布(時系列)が求められることがある。また、前記の複数方向にビームフォーミングを行う二つの場合においては、各方向の超音波信号において変位ベクトルまたは変位成分に関する方程式を導出し、連立方程式を立てることにより、その空間分布(時系列)が求められることがある。これらの場合において前記の通り正則化を行わないこともある。
また、適宜、位置(x,y,z)において時間t=Tにと時間t=T+ΔT(ΔTは例えば超音波パルス放射間隔。)の超音波エコー信号から求められる、3次元複素相互相関関数信号の遅延零における位相θcc(x,y,z;0,0,0)=tan-1(Im[Cc(x,y,z;0,0,0)]/Re[Cc(x,y,z;0,0,0)])、2次元複素相互相関関数信号(ビーム方向を含む、若しくは、含まない)の遅延零における位相θcc(x,y,z;0,0)=tan-1(Im[Cc(x,y,z;0,0)]/Re[Cc(x,y,z;0,0)])、1次元複素相互相関関数信号(ビーム方向、若しくは、走査方向)の遅延零における位相θcc(x,y,z;0)=tan-1(Im[Cc(x,y,z;0)]/Re[Cc(x,y,z;0)])の空間偏微分より、歪テンソル成分を直接的に求めることのできる方法を備える、又は、積極的に使用することもできる。
例えば、位置(X,Y,Z)のx軸方向(R=x)の未知垂直歪成分εxxは、
ここで、c
Rは、超音波の伝播速度である。また、f
0Rは、R軸が超音波ビーム方向である場合は超音波キャリア周波数であり(但し、スキャン方向の変調無しの状態)、R軸がスキャン方向である場合はその方向の正弦周波数である(但し、ビーム方向の動き補償をした状態)。また、s
Rは、R軸が超音波ビーム方向である場合は4.0であり、R軸がスキャン方向である場合は2.0である。上記の如く、位相θ
CC(x,y,z,t)の空間微分は、位相θ
CC(x,y,z,t)を求めた上で差分近似や微分フィルタを施すことにより求められることもあるが、適宜、位相や各信号成分や式中の分子・分母は時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられた上で、求められることがある。また、位相θ
CC(x,y,z,t)の空間微分は、例えば、x軸方向の微分d/dx・θcc(x,y,z,t)|
x=X,y=Y,z=Z,t=Tは、tan
-1(Im[Cc
*(X,Y,Z,T)Cc(X+Δx,Y,Z,T)]/Re[Cc
*(X,Y,Z,T)Cc(X+Δx,Y,Z,T)])/Δxより求めることもできる。但し、*は共役である。適宜、位相差や各信号成分や式中の分子・分母は時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられた上で、求められることがある。この様にして、関心領域内の歪テンソル成分の分布(時系列)を求めることができる。
また、上式より得られる未知歪テンソル成分に関する式を空間方向内や時間方向内において連立した上で、上記の正則化が施されることもある。
また、同様にして、変位ベクトル成分の1階偏微分の分布(時系列)を求めることができ、これを偏微分方向に積分することにより変位ベクトル分布(時系列)を得ることができる。
これらの歪テンソル分布(時系列)や変位ベクトル分布(時系列)の時空間偏微分により、歪速度テンソル成分分布(時系列)や加速度ベクトル成分分布(時系列)を得ることができる。
また、適宜、(II-1)超音波エコー信号の複素解析信号(ビーム方向若しくは走査方向)を用いる方法や、(II-2)超音波エコー信号の複素解析信号(ビーム方向若しくは走査方向)と正則化法の両方を用いる方法や、(II-3)超音波エコー信号の複素解析信号の位相の2次元以上の空間分布(ビーム方向を含む、若しくは、含まない)と正則化法を用いる(通常、信号強度に適用されるオプティカルフローのアルゴリズムに基づく)方法を、備える、又は、積極的に使用することができる。
(II-3)の方法においては、時間tにおける3次元変位ベクトル又は2次元変位ベクトル又は1方向変位成分を計測対象として、関心領域内の各位置(x,y,z)において得られる
複素解析信号A(x,y,z,t)(=Re[A(x,y,z,t)]+jIm[A(x,y,z,t)]。jは虚数単位。)の位相の3次元分布θ
A(x,y,z,t)=tan
-1 (Im[A(x,y,z,t)]/Re[A(x,y,z,t)])より、例えば、時間t=Tにおける位置(X,Y,Z)の未知変位ベクトル(ux,uy,uz)
Tに関する方程式
(又は、各位置の未知速度ベクトル(vx,vy,vz)
Tに関する方程式
)を得(Δtは、例えばパルス放射時間間隔。)、さらに、これらを関心領域内において時として時間方向にも連立した上で最小二乗法を適用する際に、適宜、未知変位(又は速度)ベクトルやその成分の、時空間的な大きさや時空間的な連続性に関する各種条件を用いて正則化した上で、関心領域内の未知変位(又は速度)ベクトル分布(時系列)が求められる。位相θ
A(x,y,z,t)の時空間勾配は、位相θ
A(x,y,z,t)に差分近似や微分フィルタを施すことにより求められるが、例えば、x軸方向の微分d/dx・θ
A(x,y,z,t)|
x=X,y=Y,z=Z,t=Tに関しては、(Re[A(X,Y,Z,T)] × (d/dx・Im[A(x,y,z,t)]|
x=X,y=Y,z=Z,t=T)−(d/dx・Re[A(x,y,z,t)]|
x=X,y=Y,z=Z,t=T) × Im[A(X,Y,Z,T)])/(Re[A(X,Y,Z,T)]
2+Im[A(X,Y,Z,T)]
2)より求められることもある。その際には、例えば、d/dx・Re[A(x,y,z,t)]|
x=X,y=Y,z=Z,t=Tは、Re[A(x,y,z,t)]に差分近似や微分フィルタを施すことにより求められる。また、例えば、x軸方向の微分d/dx・θ
A(x,y,z)|
x=X,y=Y,z=Z,t=Tは、tan
-1(Im[A
*(X,Y,Z,T)A(X+Δx,Y,Z,T)]/Re[A
*(X,Y,Z,T)A(X+Δx,Y,Z,T)])/Δxより求めることもできる。但し、*は共役である。
これらの計算において、位相や偏微分値や各信号成分や式中の分子・分母は、適宜、時空間領域において窓関数を使用して移動平均が行われるか、あるいは、低域通過型フィルタやメディアンフィルタに掛けられることがある。また、d/dt・θ
A(x,y,z,t)|
x=X,y=Y,z=Z,t=TΔtは時間積分により求められることがある。未知変位(又は速度)ベクトルが2次元ベクトルである場合、例えば、時間t=Tにおいて位置(X,Y,Z)において得られる
複素解析信号の位相の2次元分布θ
A(X,Y,Z,T)より、その位置の2次元未知変位ベクトル(ux,uy)
Tに関する方程式
(又は、その位置の2次元未知速度ベクトル(vx,vy)
Tに関する方程式
)を得、これらを関心領域内において時として時間方向にも連立した上で最小二乗法を適用する際に、適宜、正則化した上で、関心領域内の未知変位ベクトル分布(時系列)が求められる。
また、(II-1)の方法は、ビーム方向若しくは走査方向の
複素解析信号の位相を用いるものであり、例えば、時間t=Tにおける関心領域内の各位置(X,Y,Z)において得られる
複素解析信号の位相θ
A(X,Y,Z,T)より、各位置の未知変位成分uxに関する方程式
(又は、その位置の未知速度成分vxに関する方程式(ドプラ方程式)
)を得、これを解くことにより未知変位成分ux(又は未知速度成分vx)が求まり、これより関心領域内のその変位(又は速度)成分分布(時系列)が求められる。また、(II-2)の方法は、同様に、関心領域内の各位置において、ビーム方向若しくは走査方向の
複素解析信号の位相を用いて導出された未知変位(又は速度)成分に関する方程式を得、それらを関心領域内において時として時間方向にも連立した上で最小二乗法を適用する際に、適宜、正則化した上で、関心領域内の未知変位(又は速度)成分分布(時系列)が求められる。
尚、上記の(II‐2)と(II-3)の方法を用いる際には、未知変位(又は速度)ベクトルや未知変位(又は速度)成分の各々を局所の変位(又は速度)ベクトルや局所の変位(又は速度)成分として扱う、すなわち、局所領域の剛体運動を仮定して局所変位(又は速度)ベクトルや局所変位(又は速度)成分の連立方程式を立てる、あるいは、有限時間内において一定の変位(一定速度)であるものとして連立方程式を立てることにより、その空間分布(時系列)が求められることがある。また、前記の複数方向にビームフォーミングを行う二つの場合においては、各方向の超音波信号において変位(又は速度)ベクトルまたは変位(又は速度)成分に関する方程式を導出し、連立方程式を立てることにより、その空間分布(時系列)が求められることがある。これらの場合において前記の通り正則化を行わないこともある。
速度ベクトル成分(時系列)が求められた場合は、各速度成分(時系列)にパルス放射時間間隔Tsをかけることにより、この間におけるその方向の変位成分分布(時系列)を得ることができる。また、移動量を考慮した上で、速度ベクトル分布(時系列)を時間方向に積分することにより変位ベクトル分布(時系列)を得ることができる。
これらの速度ベクトル分布(時系列)や変位ベクトル分布(時系列)の時空間偏微分により、歪テンソル成分分布(時系列)、加速度ベクトル成分分布(時系列)、歪速度テンソル成分分布(時系列)を得ることができる。
この他にも、反復的に修正すべき変位ベクトル成分量を推定するための様々な方法があるが、これらの推定方法と同様に使用することができる。反復的に推定する間に、時空間的な大きさや時空間的な連続性に関して先見的にありえない変位量や修正変位量が推定された場合には、その先見的情報に従うこととし、強制的に、例えば、設定される最大値や最小値の範囲に収まる様にそれらの値に修正される、また、隣接する点の推定結果との差がある範囲に収まる様にそれらの値が修正されることがある。
以上説明したように、本実施形態によれば、時間間隔をおいて取得される異なる2つ以上の時相の超音波エコー信号のクロススペクトラム位相の勾配等から変位成分を求めるにあたり、反復推定を行うことにより(複素エクスポネンシャルを乗ずることによる局所超音波エコー信号のシフティング、若しくは、超音波エコー信号のサンプリングデータのシフティングを行った上で各種データ補間を行う)、3次元関心領域内の変位ベクトルの計測精度、特に3次元変位ベクトル分布の計測精度を向上させることができる。また、超音波ビーム走査方向と直交する方向の変位計測の精度を向上させることができる。さらに、クロススペクトラムの位相のアンラッピングや、相互相関法を用いることなく、演算処理をシンプル化して、演算プログラム量の軽減及び演算処理時間を短縮化することができる。尚、変位ベクトルや変位成分や速度ベクトルや速度成分を反復的に推定する際に、用いた計測法による変位ベクトルまたは変位成分の推定結果をその方向の元の超音波のサンプリング間隔の整数倍にて近似し(近い整数倍に近似や整数倍に打ち切り近似)、これを用いて局所領域又は探索領域を空間的にシフティングすることにより、位相マッチングの演算処理時間を短縮化することもできる。
また、本実施形態によれば、超音波エコー信号の位相を指標として着目した組織からの超音波エコー信号を追跡し(複素エクスポネンシャルを乗ずることによる局所超音波エコー信号のシフティング、若しくは、超音波エコー信号のサンプリングデータのシフティングを行った上で各種データ補間を行う)、連続した2つ以上の時相において求められた変位成分を加算することにより、大変位(ベクトル)と大歪(テンソル)の高精度な計測を可能とすることができる。この場合においても変位ベクトルまたは変位成分の推定結果をその方向の元の超音波のサンプリング間隔の整数倍にて近似し(近い整数倍に近似や整数倍に打ち切り近似)、これを用いて局所領域又は探索領域を空間的にシフティングすることにより位相マッチングの演算処理時間を短縮化することができる。
さらに、本実施形態によれば、従来は、変位・歪検出センサー、力源、および参照弾性率の与えられる参照領域(参照物)に関する計測系の構成に関して制約が課せられていたのに対し、計測系の構成に高い自由度をもたらし、弾性率分布や粘弾性率分布の高精度な計測を実現できる。
次に、本発明の一実施形態に係る弾性率・粘弾性率計測装置について説明する。本実施形態に係る弾性率・粘弾性率計測装置は、先に説明した変位ベクトル・歪テンソル計測装置と同様に、図1に示す装置を用い、先に説明した変位・歪計測方法によって計測された変位ベクトル、歪テンソル等を用いて弾性率、粘弾性率等を計測するものである。
まず、本実施形態に係る弾性率・粘弾性率計測及び方法の前提について説明する。計測対象物に設定する関心領域についてのみを対象として、ずり弾性率やポアソン比等の弾性率、粘ずり弾性率や粘ポアソン比等の粘弾性率、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間や緩和時間、密度等を計測することを前提とする。これにより、全ての力源が関心領域の外部に位置するとみなせるので、計測用の力源の他に、他の力源や、制御できない力源が存在しても、関心領域のずり弾性率やポアソン比等の弾性率、粘ずり弾性率や粘ポアソン比等の粘弾性率、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間や緩和時間、密度等を計測することができる。その結果、全ての力源について位置、力の働く方向および力の大きさなどのパラメータ、あるいは対象物表面の応力および歪データが不要であり、また、有限差分法や有限要素法等でモデル化するのも関心領域のみでよい。
なお、関心領域を変形させる力源が関心領域の近傍に存在する場合は、変形を起こさせる格別な力源を用意する必要がない場合がある。このような力源としては、生体観察の場合には、例えば、心拍、呼吸、血管、体動などの制御不可能な力源が含まれる(肺、空気、血管、血液などは関心領域に含めることが多い)。この場合は、その場を乱すことなく、ずり弾性率やポアソン比等の弾性率、粘ずり弾性率や粘ポアソン比等の粘弾性率、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間や緩和時間、密度等を求めることができる。特に、測定精度に勝るだけの大きな変形を生じさせることが困難であると考えられる対象物の深部に関心領域を設定する場合に有用である。
また、一階偏微分方程式を解く際の初期条件として弾性率に関して参照ずり弾性率や参照ポアソン比を、粘弾性率に関して参照粘ずり弾性率や参照粘ポアソン比を用い、これらの他に、密度に関して参照密度を用いることがある。この場合には、予め弾性率、粘弾性率、密度等が判っている参照物又は参照領域を本来の関心領域内又はその近傍に設置又は設定し、これを含む連続した領域を解析対象の関心領域とすることがある。このように設定された関心領域の歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトル場等を計測により求める際に参照物又は参照領域の変位ベクトルを同一時に計測することとし、これに基づいて、参照ずり弾性率、参照ポアソン比、参照粘ずり弾性率、参照粘ポアソン比、参照密度等を設定する。
参照物又は参照領域は、力源により生ずる変形方向と広く交わる大きさ又は位置に設定することが好ましい。例えば、大きな接触面積を有する力源の場合は、その面積に対応する大きさの参照領域を設定することが好ましい。また、小さな接触面積の力源の場合は、その力源に近い表面近傍に参照領域を配置すれば、比較的小さな参照領域でも問題はない。但し、本発明は、これに限られるものではなく、関心領域の、ずり弾性率、ポアソン比、粘ずり弾性率、粘ポアソン比、密度等が推定できる場合は、それぞれの推定値を、参照ずり弾性率、参照ポアソン比、参照粘ずり弾性率、参照粘ポアソン比、参照密度等として設定するようにしても良い。
いずれの場合においても、本発明によれば、絶対的なずり弾性率分布、参照ずり弾性率に対する相対的なずり弾性率分布、絶対的なポアソン比分布、参照ポアソン比に対する相対的なポアソン比分布、絶対的な粘ずり弾性率分布、参照粘ずり弾性率に対する相対的な粘ずり弾性率分布、絶対的な粘ポアソン比分布、参照粘ポアソン比に対する相対的な粘ポアソン比分布、絶対的な遅延時間分布や緩和時間分布、参照遅延時間に対する相対的な遅延時間分布、参照緩和時間に対する相対的な緩和時間分布、絶対的な密度分布、参照密度に対する相対的な密度分布等を求めることができる。ここで、ポアソン比と粘ポアソン比と密度の参照分布値としては絶対値が与えられる必要があるのに対し、これら以外の弾性率と粘弾性率の参照分布値としては相対値が与えられてもよいことがある。
また、一階偏微分方程式を解く数値解析法として、有限差分法又は有限要素法を用いることができる。この場合には、正則化された代数方程式を用いることによって、歪テンソル場データにエラー(ノイズ)が含まれていても、参照物又は参照領域が小さい場合、又は位置が悪い場合においても、ずり弾性率分布、ポアソン比分布、粘ずり弾性率分布、粘ポアソン比分布、密度分布等の推定ができる。
再び、図1を参照しながら、データ処理手段1におけるずり弾性率分布、ポアソン比分布、粘ずり弾性率分布、粘ポアソン比分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布等の演算方法について説明する。3次元歪テンソル、3次元歪速度テンソル、3次元加速度ベクトル等の計測データが得られている場合は、3次元の関心領域内の、ずり弾性率分布μを、ポアソン比分布をν、粘ずり弾性率分布をμ’、粘ポアソン比分布をν’、遅延時間分布をτ、緩和時間分布をτ’、歪テンソル場をε、歪速度テンソル場をε’とし、例えば、デカルト座標系(x,y,z)を使用して次式(125)〜(137’)の連立一階空間偏微分方程式が扱われる。
即ち、3次元歪テンソルが計測されて、ずり弾性率分布μのみが未知である場合には、
が扱われる。
また、3次元歪テンソル及び3次元歪速度テンソルが計測されて、ずり弾性率分布μと粘ずり弾性率分布μ’が未知である場合には、
が扱われる。ここで、t’は、初期時刻である。また、後者において、ずり弾性率分布μ又は粘ずり弾性率分布μ’のいずれかの一つが与えられる場合は、方程式
でもよい。また、両者が未知である場合には、この方程式より、緩和時間μ’(t)/μ(t)が求められ、(128’’’)式において使用される場合もある。
また、ずり弾性率分布μとポアソン比分布νと粘ずり弾性率分布μ’と粘ポアソン比分布ν’が未知である場合には、
が扱われる。ここで、t’は、初期時刻である。また、後者において、ずり弾性率分布μと粘ずり弾性率分布μ’、若しくは、ポアソン比分布νと粘ポアソン比分布ν’のいずれかが与えられる場合は、方程式
でもよい。また、この方程式より、必ず、緩和時間μ’(t)/μ(t)が求まり、これと、ずり弾性率分布μ又は粘ずり弾性率分布μ’のいずれかの1つが与えられる場合はこの方程式より求まるずり弾性率分布μと粘ずり弾性率分布μ’が、又、ポアソン比分布νと粘ポアソン比分布ν’のいずれか一つが与えられる場合はこの方程式より求まるポアソン比分布νと粘ポアソン比分布ν’と緩和時間λ’(t)/λ(t)が、(129’’’)式において使用される場合もある。
尚、式(128’’’)と式(128’’’’)と式(129’’’)と(129’’’’)は、水分、分泌物、血液等の流体そのものやこれらを多く含む組織を対象とする場合に扱われ、時間方向に1階の偏微分を施した上で扱われる、あるいは、部分積分を施した上で扱われることもある(理論的には、弾性率分布と粘弾性率分布は、初期時刻t’から時刻tまでの間、不変である必要がある。)。
また、2次元歪テンソルや2次元歪速度テンソルが計測される場合には、式(125)〜式(129’’’’)[i,j=1,2]、又は、次式(130)〜(134’’’’)[i,j=1,2]の連立一階偏微分方程式が扱われる。式(125)〜式(129’’’’)[i,j=1,2]は平面歪に近い状態において、次式(130)〜(134’’’’)は平面応力に近い状態において扱われる。
2次元歪テンソルが計測されて、ずり弾性率分布μが未知である場合には、
が扱われる。
2次元歪テンソル及び2次元歪速度テンソルが計測されて、ずり弾性率分布μと粘ずり弾性率分布μ’が未知である場合には、
が扱われる。ここで、t’は、初期時刻である。また、後者において、ずり弾性率分布μ又は粘ずり弾性率分布μ’のいずれかの一つが未知である場合は、方程式
でもよい。また、両者が未知である場合には、この方程式より、緩和時間μ’(t)/μ(t)が求められ、(133’’’)式において使用される場合もある。
また、ずり弾性率分布μとポアソン比分布νと粘ずり弾性率分布μ’と粘ポアソン比分布ν’が未知である場合には、
が扱われる。ここで、t’は、初期時刻である。また、後者において、ずり弾性率分布μと粘ずり弾性率分布μ’、若しくは、ポアソン比分布νと粘ポアソン比分布ν’のいずれかが与えられる場合は、方程式
でもよい。また、この方程式より、必ず、緩和時間μ’(t)/μ(t)が求まり、これと、ずり弾性率分布μ又は粘ずり弾性率分布μ’のいずれかの1つが与えられる場合はこの方程式より求まるずり弾性率分布μと粘ずり弾性率分布μ’が、又、ポアソン比分布νと粘ポアソン比分布ν’のいずれか一つが与えられる場合はこの方程式より求まるポアソン比分布νと粘ポアソン比分布ν’と緩和時間γ’(t)/γ(t)が、(134’’’)式において使用される場合もある。
尚、式(133’’’)と式(133’’’’)と式(134’’’)と式(134’’’’)は、水分、分泌物、血液等の流体そのものやこれらを多く含む組織を対象とする場合に扱われ、時間方向に1階の偏微分を施した上で扱われる、あるいは、部分積分を施した上で扱われることもある(理論的には、弾性率分布と粘弾性率分布は、初期時刻t’から時刻tまでの間、不変である必要がある。)。
また、1次元歪や1次元歪速度の計測データが得られている場合には、次式(135)〜(137’’)の一階偏微分方程式が扱われる。
1次元歪が計測されて、ずり弾性率分布μが未知である場合には、
が扱われる。
1次元歪及び1次元歪速度が計測されて、ずり弾性率分布μと粘ずり弾性率分布μ’が未知である場合には、
が扱われる。ここで、t’は、初期時刻である。また、後者において、ずり弾性率分布μ又は粘ずり弾性率分布μ’のいずれかの一つが未知である場合は、方程式
でもよい。また、両者が未知である場合には、この方程式より、緩和時間μ’(t)/μ(t)が求められ、(137’)式において使用される場合もある。
尚、式(137’)と式(137’’)は、水分、分泌物、血液等の流体そのものやこれらを多く含む組織を対象とする場合に扱われ、時間方向に1階の偏微分を施した上で扱われる、あるいは、部分積分を施した上で扱われることもある(理論的には、弾性率分布と粘弾性率分布は、初期時刻t’から時刻tまでの間、不変である必要がある。)。
上式(125)、(130)、(135)中の、ずり弾性率の自然対数の1階の偏微分(lnμ),jを含まない項の符号を変え、ずり弾性率の自然対数の1階の偏微分(lnμ),jをずり弾性率の逆数の自然対数の1階の偏微分{ln(1/μ)},jに置き換えたものが、ずり弾性率の逆数の自然対数そのものln(1/μ)を変数とする偏微分方程式として扱われることがある。以下において、(125)、(130)、(135)式に関しては、ずり弾性率の自然対数lnμを変数とする場合に関して説明するが、ずり弾性率の逆数の自然対数そのものln(1/μ)を変数とする場合は、同様に、ずり弾性率の逆数の自然対数ln(1/μ)又はずり弾性率の逆数(1/μ)を求め、その上で、ずり弾性率の自然対数lnμ又はずり弾性率μを評価することがある。
又,上式(126)、(131)、(136)中の、ずり弾性率の1階の偏微分μ,jを含まない項の符号を変え、全てのずり弾性率μをずり弾性率の逆数(1/μ)に置き換えたものが、ずり弾性率の逆数そのもの(1/μ)を変数とする偏微分方程式として扱われることがある。以下において、(126)、(131)、(136)式に関しては、ずり弾性率μを変数とする場合に関して説明するが、ずり弾性率の逆数(1/μ)を変数とする場合は、同様に、ずり弾性率の逆数(1/μ)又はずり弾性率の逆数の自然対数ln(1/μ)を求め、その上で、ずり弾性率μ又はずり弾性率の自然対数lnμを評価することがある。
これらは、関心領域内に骨や穿刺針(生検や治療用)などの極めてずり弾性率の高い物体を含む場合に有効である場合がある(この場合、歪が、零であると計測される、あるいは、零であると想定されることがある。)。
また、時に、水分、分泌物、血液等の流体そのものやこれらを多く含む組織を対象として上記の粘弾性率分布が未知である場合は、歪速度テンソルが計測されて、式(125)〜(127)、(130)〜(132)、(135)、(136)中の偏微分方程式の弾性率を対応する粘弾性率に置き換え、且つ、歪テンソル成分を対応する歪速度テンソル成分に置き換えたものが扱われることがある。この場合においても、式(125)、(130)、(135)中の、粘ずり弾性率の自然対数の1階の偏微分(lnμ’),jを含まない項の符号を変え、粘ずり弾性率の自然対数の1階の偏微分(lnμ’),jを粘ずり弾性率の逆数の自然対数の1階の偏微分{ln(1/μ’)},jに置き換えたものが、粘ずり弾性率の逆数の自然対数そのものln(1/μ’)を変数とする偏微分方程式として扱われることがある。以下において、この場合の(125)、(130)、(135)式に関しては、粘ずり弾性率の自然対数lnμ’を変数とする場合に関して説明するが、粘ずり弾性率の逆数の自然対数そのものln(1/μ’)を変数とする場合は、同様に、粘ずり弾性率の逆数の自然対数ln(1/μ’)又は粘ずり弾性率の逆数(1/μ’)を求め、その上で、粘ずり弾性率の自然対数lnμ’又は粘ずり弾性率μ’を評価することがある。
又,上式(126)、(131)、(136)中の、粘ずり弾性率の1階の偏微分μ’,jを含まない項の符号を変え、全ての粘ずり弾性率μ’を粘ずり弾性率の逆数(1/μ’)に置き換えたものが、粘ずり弾性率の逆数そのもの(1/μ’)を変数とする偏微分方程式として扱われることがある。以下において、(126)、(131)、(136)式に関しては、粘ずり弾性率μ’を変数とする場合に関して説明するが、粘ずり弾性率の逆数(1/μ’)を変数とする場合は、同様に、粘ずり弾性率の逆数(1/μ’)又は粘ずり弾性率の逆数の自然対数ln(1/μ’)を求め、その上で、粘ずり弾性率μ’又は粘ずり弾性率の自然対数lnμ’を評価することがある。
これらは、関心領域内に骨や穿刺針(生検や治療用)などの極めてずり弾性率の高い物体を含む場合に有効である場合がある(この場合、歪速度が、零であると計測される、あるいは、零であると想定されることがある。)。
また、弾性率や粘弾性率が非等方性である、上式(125)〜(137’’)に対応する偏微分方程式が扱われることがある。
尚、密度分布ρに関しては、計測された加速度ベクトル場をaとし、上式(126)、(128)、(128’’’)、(131)、(132)、(133)、(133’’’)、(134)、(134’’’)の右辺に慣性項として(1/2)ρaiを、上式(127)、(129)、(129’’’)の右辺に慣性項としてρaiを、上式(136)、(137)、(137’)の右辺に慣性項として(1/3)ρaiを加え、密度分布ρが既知である領域においてはその分布値を使用し、密度分布ρが未知である領域においてはこの分布を計測対象とした上で、式(125)〜(137’)中のずり弾性率分布μと、ポアソン比分布νと、粘ずり弾性率分布μ’と、粘ポアソン比分布ν’と共に同様に扱われる。但し、水分、分泌物、血液等の流体そのものやこれらを多く含む組織を対象として上記の粘弾性率分布が未知である場合は、上式(126)、(127)、(131)、(132)、(136)の偏微分方程式中の弾性率を対応する粘弾性率に置き換え、且つ、歪テンソル成分を対応する歪速度テンソル成分に置き換えたものが扱われることがある。尚、上記の如く、式(126)、(131)、(136)の偏微分方程式を、ずり弾性率の逆数の自然対数そのもの、ずり弾性率の逆数そのもの、粘ずり弾性率の逆数の自然対数そのもの、又は、粘ずり弾性率の逆数そのものに関して解く場合に関しては、適用されない。
詳細には、計測された変形場、即ち、歪テンソル場や歪速度テンソル場(密度ρを扱う場合には、加速度ベクトル場や加速度ベクトルの時間方向の1階偏微分場と、歪テンソル場や歪速度テンソル場。以下、この場合の記載は略。)や計測された変形場データの精度に応じて、3次元関心領域7内全体において連立一階偏微分方程式(125)〜(129’’’’)が扱われる、あるいは、3次元関心領域7内に設けられる、複数の3次元関心領域、2次元関心領域や1次元関心領域内において、それぞれ、連立一階偏微分方程式(125)〜(129’’’’)、連立一階偏微分方程式(125)〜(134’’’’)、一階偏微分方程式(135)〜(137’’)が扱われる。また、複数の独立した変形場(歪テンソル場や同一時間における歪速度テンソル場)が計測された場合には、計測された変形場データの精度により、適宜、式(125)〜式(137’’)のいずれかの方程式、もしくは複数の方程式が、3次元関心領域7の各関心点にて扱われることとなり、これらの方程式が、個々に、もしくは、連立して扱われる。但し、複数の独立した変形場とは、力源や参照領域の位置が異なる状態で生じる歪テンソル場や歪速度テンソル場を意味する。例えば、力源の状態が時間的に変化する制御不可能な場合、あるいは力源の状態を積極的に変化させる場合など、力の働く方向が変わるので、それぞれ独立の変形場になる。3次元関心領域7内に設けられることのある、これらの、3次元関心領域、2次元関心領域や1次元関心領域内は、互いに同一の領域を含むことがある。
尚、式(125)〜(134’’’’)中の関心領域内のポアソン比νや粘ポアソン比ν’は、それぞれ、例えば、各位置において計測された、歪テンソル、歪速度テンソルの、主値の絶対値の比(3次元計測の場合は、3つ求められる主値の比のいずれか1つ、もしくはこれら3つ又は2つの比値の平均値)から近似的に評価されることもある。特に、複数の変形場が計測された場合には、ポアソン比や粘ポアソン比は、各々、例えば、各位置において計測された各変形場から評価された値の平均値をもって近似することができる。また、ポアソン比νや粘ポアソン比ν’は、対象物の典型的な値が使用されることがある。例えば、対象物が非圧縮性であると仮定して、ポアソン比νと粘ポアソン比ν’は1/2に極めて近い値とすることがある。特に、式(130)〜(134’’’’)においては、対象物が完全に非圧縮性であると仮定して、ポアソン比νと粘ポアソン比ν’を1/2とすることがある。
初期条件となる参照ずり弾性率、参照ポアソン比、参照粘ずり弾性率、参照粘ポアソン比等は、関心領域7内において、1つ以上の参照点、もしくは、計測精度を向上させるべく、各変形場に対して前述した基準に従って、適切に極力広い1つ以上の参照領域において与えられることが望ましい。
即ち、参照ずり弾性率は、次式(138)又は(138’)のように、
参照ポアソン比は、次式(139)のように、
参照粘ずり弾性率は、次式(140)のように、
参照粘ポアソン比は、次式(141)のように、
また、弾性率や粘弾性率が非等方性である、上式(125)〜(137’’)に対応する方程式が扱われることがあり、その場合には、弾性率や粘弾性率が非等方性である、上式(138)、(138’)〜(141)に対応する初期条件が扱われる。
次に、関心領域7内のずり弾性率分布μやポアソン比分布ν等の弾性率分布や粘ずり弾性率分布μ’や粘ポアソン比分布ν’等の粘弾性率分布を計算するために、使用される一階空間偏微分方程式の各々及びそれらの初期条件に関して、離散デカルト座標系(x,y,z)〜(IΔx,JΔy,KΔz)を用い、ずり弾性率分布μ、ポアソン比分布ν、弾性率分布φ[式(125’)、式(126’)、式(128’)]、弾性率分布λ[式(127’)、式(129’)]、弾性率分布ψ[式(130’)、式(131’)、式(133’)]、弾性率分布γ[式(132’)、式(134’)]、粘ずり弾性率分布μ’、粘ポアソン比ν’、粘弾性率分布φ’[式(128’’)]、粘弾性率分布λ’[式(129’’)]、粘弾性率分布ψ’[式(133’’)]や粘弾性率分布γ’[式(134’’)]、変位分布、歪分布や歪速度分布に対して有限差分近似、又は、ガラーキン法や変分原理に基づく有限要素近似を適用して代数方程式を導出し、各々の代数方程式を、未知ずり弾性率分布μ、未知ポアソン比分布ν、未知弾性率分布λ[式(127’)、式(129’)]や未知弾性率分布γ[式(132’)、式(134’)]等の未知弾性率分布や未知粘ずり弾性率分布μ’、未知粘ポアソン比分布ν’、未知粘弾性率分布λ’[式(129’’)]や未知粘弾性率分布γ’[式(134’’)]等の未知粘弾性率分布の各々にかかる空間的に不均質な係数(若しくはその分布)のパワーの和の平方根により通常は正規化した上で、正則化された連立方程式を導出する。ここで、式(127’)、式(129’)の弾性率λとずり弾性率μは両者でラメ定数と呼ばれ、また、式(129’’)の弾性率λ’とずり弾性率μ’は両者で粘性ラメ定数と呼ばれる。
その結果、一階空間偏微分方程式(125)、(126)、(130)、(131)、(135)、(136)を用いた場合には未知ずり弾性率分布μに関して、一階空間偏微分方程式(127)、(132)の各々を用いた場合には未知の弾性率分布λ[式(127’)]と未知の弾性率分布γ[式(132’)]の各々と未知ずり弾性率分布μ、即ち、未知ずり弾性率分布μと未知ポアソン比分布νに関して、一階空間偏微分方程式(128)、(128’’’)、(128’’’’)、(133)、(133’’’)、(133’’’’)、(137)、(137’)、(137’’)を用いた場合には未知ずり弾性率分布μと未知粘ずり弾性率分布μ’に関して、一階空間偏微分方程式(129)、(129’’’)、(129’’’’)、(134)、(134’’’)、(134’’’’)の各々を用いた場合には未知の弾性率分布λ[式(129’)]と未知の弾性率分布γ[式(134’)]の各々と未知の粘弾性率分布λ’[式(129’’)]と未知の粘弾性率分布γ’[式(134’’)]の各々と未知ずり弾性率分布μと未知粘ずり弾性率分布μ’、即ち、未知ずり弾性率分布μと未知ポアソン比分布νと未知粘ずり弾性率分布μ’と未知粘ポアソン比分布ν’に関して、例えば、有限差分近似を施した場合には、次式(142)の連立方程式を得る。
EGs=e…(142)
但し、sは3次元の関心領域7内の未知ずり弾性率分布μ、未知の弾性率分布λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率分布γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率分布μ’、未知の粘弾性率分布λ’[式(129’’)]や未知の粘弾性率分布γ’[式(134’’)]等からなる未知ベクトル、Gはこれらの3次元、2次元又は1次元の一階偏微分の有限差分近似定数からなる行列、Eとeの各々は未知ずり弾性率分布μ、未知の弾性率分布λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率分布γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率分布μ’、未知の粘弾性率分布λ’[式(129’’)]や未知の粘弾性率分布γ’[式(134’’)]等にかかる、歪テンソル分布データ、歪速度テンソル分布データ、与えられる弾性率データや粘弾性率データ、これらの空間微分値等から定まる行列とベクトルである。
式(142)を最小二乗法を用いて解く。この場合には、E、e中の歪テンソル分布や歪速度テンソル分布およびそれらの空間微分値は、計測された歪テンソルデータや歪速度テンソルデータのノイズを低減するべく、低域通過型の空間フィルタや低域通過型の時間フィルタや低域通過型の時空間フィルタをかけたもので決まる。これにより、EGの逆はeに含まれる高周波数帯のノイズを増幅させてしまう。つまり、sは不安定な結果となってしまう。そこで、いわゆる正則化法を応用して再構成の安定化を図る。具体的には、正則化パラメータα1およびα2(ゼロ以上)を用いて、次式(143)の汎関数をsに関して最小化する。ここで、上付き添え字のTは、転置行列を意味する。
error(s)=|e−E G s|2+α1|D s|2+α2|DTD s|2…(143)
但し、DおよびDTDの各々は、3次元の関心領域7内の未知ベクトルsを構成する未知ずり弾性率分布μ、未知の弾性率分布λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率分布γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率分布μ’、未知の粘弾性率分布λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率分布γ’[式(134’’)]等の、3次元、2次元又は1次元勾配作用素から定まる行列、および、3次元、2次元又は1次元ラプラシアン作用素から定まる行列であり、各未知分布に関して、3次元関心領域7全体、又は、3次元関心領域7内に設定される、複数の、3次元関心領域、2次元関心領域や1次元関心領域の各々において正則化が行われることがある。DsおよびDTDsは正定値であるため、error(s)は必ず一つの最小値を持つことになる。error(s)の最小化により、次式(144)に示す正則化された正規方程式が得られる。
(GTETEG+α1DTD+α2DTDDTD)s=GTET e…(144)
したがって、解は次式(145)になる。
s=(GTETEG+α1DTD+α2DTDDTD)−1 GTET e…(145)
なお、ガラーキン法や変分原理に基づく有限要素近似を適用した場合においても、同様に、導出される連立方程式に関して最小二乗法を適用する際に正則化を施す。但し、この場合は、Gはこれらの未知弾性率や未知粘弾性率の節点分布から成るベクトルsにかかる各々の基底関数からなる行列を表し、式(143)においては、正則化パラメータα0(ゼロ以上)を用いてα0|s|2又はα0|Gs|2を加えた上で正則化されることもある。また、その際には、式(143)において、α1|Ds|2の代わりにα1|DGs|2を、α2|DTDs|2の代わりにα2|DTDGs|2を使用して正則化されることもある。但し、この場合のDとDTDの各々は未知弾性率や未知粘弾性率の節点分布から成るベクトルsにかかる各々の基底関数からなる行列Gにかかる3次元、2次元又は1次元勾配作用素から定まる行列、および、3次元、2次元又は1次元ラプラシアン作用素から定まる行列である。
正則化パラメータα0、α1、α2は、ベクトルsを構成する、未知ずり弾性率分布μ、未知の弾性率分布λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率分布γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率分布μ’、未知の粘弾性率分布λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率分布γ’[式(134’’)]等の各々に関して、歪・歪速度の計測精度、変形の状態、力源および参照空間・領域の相対的な位置の如何によって、以下のように設定されることがある。
正則化パラメータα0、α1、α2は、正則化された正規方程式(144)式において、ベクトルsにかかる行列が数値解析的に充分に正定値となるように、ベクトルsを構成するこれらの各未知分布にかかる行列EG中の成分分布データのパワーにより大きい値に調節されることがある。又は、これらの各未知分布にかかる行列EG中の成分分布データの精度(SN比)により調節されることがある(SN比が高い場合に小さく、SN比が低い場合に大きくする。)。これに準じて、例えば、そのSNパワー比に反比例させることがある。
複数の変形場のデータが使用される場合には、ベクトルsを構成するこれらの各未知分布にかかる行列EG中の成分分布データのパワーや精度に依存するこれらの正則化パラメータα0、α1、α2は、各々、各変形場データにおいて評価される値の和に比例する値となる。これに準じて、例えば、各変形場データを用いて導出される成分分布データのSNパワー比に反比例した値の和とすることがある。
また、正則化パラメータα1、α2は勾配作用素およびラプラシアン作用素内にて現れる偏微分の方向ごとに異なるもの(方向に依存するもの)として実現されることがある。この場合には、α1Dおよびα2DTDとして、ベクトルsにかかる行列が数値解析的に充分に正定値となるように、ベクトルGsを構成するこれらの各未知分布の勾配にかかる行列E中の各々の成分分布データの主値分布データのパワーにより調節するべく、ベクトルGsを構成する各関心点の未知ずり弾性率μ、未知の弾性率λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率μ’、未知の粘弾性率λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率γ’[式(134’’)]等の勾配ベクトルにかかる行列E中の各々の局所行列の各主軸方向の偏微分作用素を近似して正則化パラメータ(主値が大きい主軸方向を小さく、主値が小さい主軸方向を大きく、これに準じて、例えば、主値の二乗に反比例する様に設定されることがある。)をかけた上で各方向の偏微分作用素の近似を得て関心領域内において平均したものが使用されることがある。
又は、α1Dおよびα2DTDとして、ベクトルGsを構成するこれらの各未知分布の勾配にかかる行列E中の各々の成分分布データの主値分布データの精度(SN比)により調節するべく、各関心点のこれらの勾配ベクトルにかかる行列E中の各々の局所行列の各主軸方向の偏微分作用素を近似して正則化パラメータ(主値のSN比が高い主軸方向を小さく、主値のSN比が低い主軸方向を大きく、これに準じて、例えば、主値データのSNパワー比に反比例させることがある。)をかけた上で各方向の偏微分作用素の近似を得て関心領域内において平均したものが使用されることがある。なお、関心領域の次元に比べて計測された主値の数が小さい場合、つまり、主値が零である、あるいは、主値が数値解析的に零であるとみなされる場合には、その主軸方向の正則化パラメータは他の求まる主軸方向の正則化パラメータに比して大きい値に設定されることがある。
複数の変形場のデータが使用される場合には、α1Dおよびα2DTDとして、ベクトルsを構成するこれらの各未知分布にかかる行列EG中の各変形場データを用いて導出される成分分布データのパワーや精度から評価される正則化パラメータ値と、ベクトルGsを構成するこれらの各未知分布の勾配にかかる行列E中の同一の変形場のデータの主値分布データから評価される各方向の偏微分作用素の近似とを重要度の重み付けを行った上で算出される積の和に比例する値とすることがある。
また、正則化パラメータα0、α1、α2は、空間的に変化するものとして実現されることがあり、結果的に、ベクトルsを構成する各関心点の未知ずり弾性率μ、未知の弾性率λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率μ’、未知の粘弾性率λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率γ’[式(134’’)]等にかかる行列EG中の各々の局所行列が数値解析的に充分に正定値となるように、各々の局所行列の成分データのパワーにより大きい値に調節されることがある。又は、各々の局所行列の成分データの精度(SN比)により調節されることがある(例えば、SN比が高い場合に小さく、SN比が低い場合に大きくする。)。これに準じて、例えば、そのSNパワー比に反比例させることがある。
これらの関心点の位置に依存する正則化パラメータα0、α1、α2の各々は、同一の関心点において複数の変形場のデータが使用される場合には、ベクトルsを構成する各関心点の未知ずり弾性率μ、未知の弾性率λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率μ’、未知の粘弾性率λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率γ’[式(134’’)]等にかかる行列EG中の各変形場データを用いて導出される各々の局所行列の成分データのパワーや精度から評価される値の和に比例する値となる。これに準じて、例えば、各関心点において各変形場データを用いて導出される各々の局所行列の成分データのSNパワー比に反比例する値の和となることがある。
また、各関心点にて使用される変形場のデータの数が異なる場合は、このデータ数が考慮されることがあり(数の多い関心点では大きく、数の少ない関心点では小さく)、これに準じて、例えば、使用する変形データの数に比例させることがある。また、これに準じて、各関心点にて各変形場データを用いて導出される各々の局所行列の成分データのパワーや精度(SN比)から評価される正則化パラメータ値と各関心点にて使用される変形場のデータの数から評価される正則化パラメータ値とを重要度の重み付けを行った上で算出される積の和に比例する値とすることがある。
また、正則化パラメータα1、α2に関しては、上記の如く空間的に変化するものとして、且つ、勾配作用素およびラプラシアン作用素内にて現れる偏微分の方向ごとに異なるもの(方向に依存するもの)として実現されることもある。この場合には、α1Dおよびα2DTDとして、ベクトルsを構成する各関心点の未知ずり弾性率μ、未知の弾性率λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率μ’、未知の粘弾性率λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率γ’[式(134’’)]等の勾配ベクトルにかかる行列E中の各々の局所行列が数値解析的に充分に正定値となるように、各々の局所行列の主値データのパワーにより調節するべく、各関心点にて各々の局所行列に関して各主軸方向の偏微分作用素の近似に正則化パラメータ(主値が大きい主軸方向を小さく、主値が小さい主軸方向を大きく、これに準じて、例えば、主値の二乗に反比例する様に設定されることがある。)をかけた上で得られる各方向の偏微分作用素の近似を使用することがある。
又は、α1Dおよびα2DTDとして、ベクトルGsを構成する各関心点のこれらの勾配ベクトルにかかる行列E中の各々の局所行列の主値データの精度(SN比)により調節するべく、各々の局所行列の各主軸方向の偏微分作用素を近似して正則化パラメータ(主値のSN比が高い主軸方向を小さく、主値のSN比が低い主軸方向を大きく、これに準じて、例えば、主値データのSNパワー比に反比例させることがある。)をかけた上で各方向の偏微分作用素の近似が使用されることがある。なお、関心領域の次元に比べて計測された主値の数が小さい場合、つまり、主値が零である、あるいは、主値が数値解析的に零であるとみなされる場合には、その主軸方向の正則化パラメータは他の求まる主軸方向の正則化パラメータに比して大きい値に設定されることがある。
これらの関心点の位置に依存して且つ方向に依存する正則化パラメータα1、α2の各々は、同一の関心点において複数の変形場のデータが使用される場合には、α1Dおよびα2DTDとして、ベクトルsを構成する各関心点の未知ずり弾性率μ、未知の弾性率λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率μ’、未知の粘弾性率λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率γ’[式(134’’)]等にかかる行列EG中の各変形場のデータを用いて導出される各々の局所行列の成分データのパワーや精度(SN比)から評価される正則化パラメータ値と、ベクトルGsを構成する各関心点のこれらの勾配ベクトルにかかる行列E中の同一の変形場のデータを用いて導出される各々の局所行列の主値データから評価される各方向の偏微分作用素の近似とを重要度の重み付けを行った上で算出される積の和に比例する値とすることがある。
また、各関心点において使用する変形場のデータの数が異なる場合は、このデータ数が考慮されることがあり(数の多い関心点では大きく、数の少ない関心点では小さく)、これに準じて、例えば、使用される変形場のデータの数に比例させることがある。これに準じて、ベクトルsを構成する各関心点の未知ずり弾性率μ、未知の弾性率λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率μ’、未知の粘弾性率λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率γ’[式(134’’)]等にかかる行列EG中の各変形場のデータを用いて導出される各々の局所行列の成分データのパワーや精度(SN比)から評価される正則化パラメータ値と、ベクトルGsを構成する各関心点のこれらの勾配ベクトルにかかる行列E中の同一の変形場のデータを用いて導出される各々の局所行列の主値データから評価される各方向の偏微分作用素の近似と、各関心点にて使用される変形場のデータの数から評価される正則化パラメータ値とを重要度の重み付けを行った上で算出される積の和に比例する値とすることがある。
また、関心領域7が2次元領域である場合には、上記の3次元関心領域を対象とする場合と同様に、計測された変形場(歪テンソル場や歪速度テンソル場)に応じて、2次元関心領域7内全体において連立一階偏微分方程式(125)〜(134’’’’)が、又は、2次元関心領域7内に設けられる、複数の、2次元関心領域や1次元関心領域内にて一階偏微分方程式(125)〜(137’’)が、初期条件と共に扱われる。
この場合には、正則化された正規方程式(143)中のDおよびDTDの各々は、2次元の関心領域7内の未知ベクトルsを構成する未知ずり弾性率分布μ、未知の弾性率分布λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率分布γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率分布μ’、未知の粘弾性率分布λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率分布γ’[式(134’’)]等の、2次元又は1次元勾配作用素から定まる行列、および、2次元又は1次元ラプラシアン作用素から定まる行列であり、各未知分布に関して2次元関心領域7全体又は2次元関心領域7内に設定される複数の2次元関心領域や1次元関心領域内の各々において正則化が行われることがある。2次元関心領域7内に設けられることのある、これらの2次元関心領域や1次元関心領域内は、互いに同一の領域を含むことがある。
また、関心領域7が1次元領域である場合には、上記の多次元関心領域を対象とする場合と同様に、計測された変形場(歪場や歪速度場)に応じて、1次元関心領域7内全体において連立一階偏微分方程式(135)〜(137’’)が、また、1次元関心領域7内に設けられる複数の1次元関心領域内にて一階偏微分方程式(135)〜(137’’)が、初期条件と共に扱われる。
この場合には、正則化された正規方程式(143)中のD及びDTDの各々は、1次元の関心領域7内の未知ベクトルsを構成する未知ずり弾性率分布μ、未知粘ずり弾性率分布μ’等の、1次元勾配作用素から定まる行列、および、1次元ラプラシアン作用素から定まる行列であり、各未知分布に関して1次元関心領域7全体又は1次元関心領域7内に設定される複数の1次元関心領域内の各々において正則化が行われることがある。1次元関心領域7内に設けられることのあるこれらの1次元関心領域内は、互いに同一の領域を含むことがある。
尚、変形場(歪テンソル場や歪速度テンソル場)の時系列データが計測された場合には、複数の独立した変形場とみなされるその計測データを使用して、上記の如く、勾配作用素やラプラシアン作用素を用いた正則化を施すことによりこれらの未知弾性率分布や未知粘弾性率分布を推定することがある。
尚、ずり弾性率、ポアソン比、ラメ定数等の弾性率とこれらの各弾性率に対応する粘弾性率が推定された場合は、各弾性率Eと対応する粘弾性率E’の比(E’/E)から、各弾性率と粘弾性率に関わる遅延時間分布τ[粘弾性率E’を式(128)、(129)、(133)、(134)、(136)、(137)中の偏微分方程式から推定した場合]や緩和時間分布τ’[粘弾性率E’を、式(128’’’)、(128’’’’)、(129’’’)、(129’’’’)、(133’’’)、(133’’’’)、(134’’’)、(134’’’’)、(136’’’)、(136’’’’)、(137’)、(137’’)から推定した場合、若しくは、式(125)〜(127)、(130)〜(132)、(135)、(136)中の偏微分方程式の各弾性率を対応する粘弾性率に置き換え、且つ、歪テンソル成分を歪テンソル速度成分に置き換えたものから推定した場合]を推定することができる。また、各位置の歪テンソルデータと弾性率データから弾性エネルギーの分布を、又、各位置の歪速度テンソルデータと粘弾性率データから変形した際に消費されたエネルギーの分布を求めることができる。
また、これらの未知弾性率分布や未知粘弾性率は時間的に変化することがあり、この場合においては、各々の参照(分布)値および位置・大きさ・状態・個数が時間的に変化しうる参照領域を使用して、変形場(歪テンソル場や歪速度テンソル場)の計測された各時間において、上記の如く、勾配作用素やラプラシアン作用素を用いた正則化を施して未知弾性率分布や未知粘弾性率分布を推定することにより、これらの未知弾性率分布や未知粘弾性率分布の時系列を求めることができる。複数の独立した変形場の時系列が計測された場合は、計測対象物が同一の状態にある各時系列のその時間において成立する方程式を全て連立した上で、上記の如く、各変形場のデータに対して勾配作用素やラプラシアン作用素を用いた正則化を施して未知弾性率分布や未知粘弾性率分布を推定することにより、未知弾性率分布や未知粘弾性率分布の時系列を求めることができる場合がある。
また、これらの未知弾性率分布や未知粘弾性率の時系列を推定する場合には、各時間において成立する方程式を全て連立し、未知弾性率や未知粘弾性率の各々の時系列の時間方向の1階の偏微分分布の2乗ノルムや2階の偏微分分布の2乗ノルムを用いた正則化を施すことがある。ここで、夫々の2乗ノルムにかかる正則化パラメータをα3とα4とする。
これらの未知弾性率分布や未知粘弾性率分布の時系列の時間方向の1階偏微分や2階偏微分を使用した正則化は、各未知分布に関して上記の勾配作用素やラプラシアン作用素を使用した場合と同様に、関心領域7全体、又は、関心領域7内に設定される複数の関心領域の各々において行われることがある。その際に、各時間の未知弾性率分布や未知粘弾性率分布の勾配やラプラシアンの2乗ノルムを用いて正則化が同時に施されることがある。
複数の独立した変形場(歪テンソル場や歪速度テンソル場)の時系列が計測された場合には、各時系列の各時間において成立する方程式を全て連立した上で、未知弾性率分布や未知粘弾性率分布の時系列の時間方向の、1階の偏微分や2階の偏微分の2乗ノルム、各時間の未知弾性率分布や未知粘弾性率分布の勾配やラプラシアンの2乗ノルムを用いた正則化を施すことがある。
尚、これらの弾性率分布や粘弾性率分布の時系列が推定された場合は、弾性率、粘弾性率の各々の時系列データの空間分布の各位置においてスペクトラム解析を行うことにより、弾性率、粘弾性率の周波数分散の空間分布を近似的に求めることができる。又、各弾性率と対応する粘弾性率の空間分布データの各位置において、各時刻の弾性率Eと粘弾性率E’の比(E’/E)を評価することにより、各弾性率と粘弾性率に関わる遅延時間τや緩和時間τ’の時系列データの空間分布を得、各位置においてスペクトラム解析を行うことにより、遅延時間、緩和時間の周波数分散の空間分布を近似的に求めることができる。これらの弾性率、粘弾性率、遅延時間、緩和時間の時系列の周波数分散の空間分布を評価する場合は、積極的に、力源の周波数(単一)を変えながら、変形場の計測を行う、あるいは、広帯域の力源を使用することがある。また、各時間において、各位置の歪テンソルデータと弾性率データから弾性エネルギーの分布を、又、各位置の歪速度テンソルデータと粘弾性率データから変形した際に消費されたエネルギーの分布を求めることができる。
正則化パラメータα3とα4は、ベクトルsにかかる行列が数値解析的に充分に正定値となるように、各時間において、ベクトルsを構成する各時間のこれらの各未知分布にかかる行列EG中の成分分布の時間方向の変化量データのパワーにより調節されることがある。又は、各時間のこれらの各未知分布にかかる行列EG中の成分分布の時間方向の変化量データの精度(SN比)により調節されることがある(SN比が高い時間に小さく、SN比が低い時間に大きくする。)。これに準じて、各時間において、例えば、そのSNパワー比に反比例させることがある。
複数の変形場の時系列データが使用される場合には、ベクトルsを構成する各時間のこれらの各未知分布にかかる行列EG中の成分分布の時間方向の変化量データのパワーや精度に依存するこれらの正則化パラメータα3とα4は、各時間において、各々、各変形場データにおいて評価される値の和に比例する値となる。これに準じて、各時間において、例えば、各変形場データを用いて導出される成分分布の時間方向の変化量データのSNパワー比に反比例した値の和とすることがある。
また、正則化パラメータα3とα4は、各時間において、空間的に変化するものとして実現されることがあり、結果的に、ベクトルsを構成する各関心点の各時間の未知ずり弾性率μ、未知の弾性率λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率μ’、未知の粘弾性率λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率γ’[式(134’’)]等にかかる行列EG中の各々の局所行列が数値解析的に充分に正定値となるように、各時間において、各々の局所行列の成分の時間方向の変化量データのパワーにより調節されることがある。又は、各時間の各々の局所行列の成分の時間方向の変化量データの精度(SN比)により調節されることがある(例えば、SN比が高い時間に小さく、SN比が低い時間に大きくする。)。これに準じて、各時間において、例えば、そのSNパワー比に反比例させることがある。
これらの関心点の位置に依存する正則化パラメータα3とα4の各々は、同一の関心点において複数の変形場の時系列データが使用される場合には、ベクトルsを構成する各関心点の各時間の未知ずり弾性率μ、未知の弾性率λ[式(127’)、式(129’)]、未知の弾性率γ[式(132’)、式(134’)]、未知粘ずり弾性率μ’、未知の粘弾性率λ’[式(129’’)]、未知の粘弾性率γ’[式(134’’)]等にかかる行列EG中の各変形場データを用いて導出される各々の局所行列の成分の時間方向の変化量データのパワーや精度から評価される値の和に比例する値となる。これに準じて、各時間において、例えば、各関心点において各変形場データを用いて導出される各々の局所行列の成分の時間方向の変化量データのSNパワー比に反比例する値の和となることがある。
また、各時間において、各関心点にて使用される変形場のデータの数が異なる場合は、このデータ数が考慮されることがあり(数の多い関心点では大きく、数の少ない関心点では小さく)、これに準じて、各時間において、例えば、使用する変形データの数に比例させることがある。また、これに準じて、各時間において、各関心点にて各変形場データを用いて導出される各々の局所行列の成分の時間方向の変化量データのパワーや精度 (SN比)から評価される正則化パラメータ値と各関心点にて使用される変形場のデータの数から評価される正則化パラメータ値とを重要度の重み付けを行った上で算出される積の和に比例する値とすることがある。
(125)式〜(137’’)式より導出される(143)式〜(145)式において、各未知弾性率分布や各未知粘弾性率に関して共役勾配法などの反復的方法(通常、未知領域の各々の推定値の初期値は、各々の分布に関する先見的情報(均質性、不均質性など)を積極的に使用して設定される)に基づいて安定的に解く場合において、下記の如く、必要に応じて関心領域内の各未知弾性率分布と各未知粘弾性率分布の前記の参照領域(参照値)の他に新たに参照領域(参照値)を設け、また、未知領域の各々の推定値の初期値を適切に設定することにより、計算量が低減されることがある。
弾性率分布に関して、例えば、偏微分方程式(135)又は(136)に基づくずり弾性率の1次元計測の場合においては、これらを解析的に解くことにより、参照点x=Aのずり弾性率値に対するx=Xにおける相対的なずり弾性率値μ(X)/μ(A)は、その2点の歪の比ε(A)/ε(X)より評価できることを確認できる(特開平7−55775号公報)。特に、x軸方向が変形方向に等しい場合に有効である。(又、粘弾性率分布に関して、例えば、偏微分方程式(135)又は(136)に基づく粘ずり弾性率の1次元計測の場合においては、これらを解析的に解くことにより、参照点x=Aの粘ずり弾性率値に対するx=Xにおける相対的な粘ずり弾性率値μ(X)/μ(A)は、その2点の歪速度の比ε’(A)/ε’(X)より評価できる。以下、ずり弾性率を例に扱う。)但し、例えば、歪値が数値解析的にゼロ、又は符号が反転した特異点あるいは特異領域においては、歪の比から評価されたその領域外の絶対値や相対値をも参照値として扱い(歪の比を評価した点や領域を参照領域に加え)、上述の正則化を施すことにより安定的に評価されることがある。歪の絶対値がある正値A以下(すなわち、ある正の閾値A以下の値)を持つものと推定された点と領域の各々をずり弾性率の未知点や未知領域(極めて零に近い値である場合は特異点と特異領域)として、同様に、歪の比等で与えられるその領域外の参照値を用いて安定的に評価されることもある。この場合の特異点や特異領域や未知点や未知領域の未知ずり弾性率分布[(135)式や(136)式から導出された(143)式〜(145)式中]の推定値の初期値としては、各種補間処理(2次元補間、余弦補間、ラグランジュ補間、スプライン補間等)を通じて評価される、上記の先見的情報を使用して設定された初期値やその領域外の参照値と連続となる値や分布値が使用される。この閾値Aは各位置の歪データのパワーや精度(SN比)に依存して時空間的に変化しうるものであり、SN比が高い時間や位置においては閾値Aを小さく、SN比が低い時間や位置においては閾値Aを大きく設定することがある。又、例えば、歪の比値からずり弾性率値が参照値に対してある有限倍以上の相対値B(すなわち、ある閾値B以上の相対値)を持つものと推定される点や領域の各々をずり弾性率の未知点や未知領域(極めて大きい値倍である場合は特異点と特異領域)として、同様に、歪の比等で与えられるその領域外の参照値を用いて安定的に評価されることもある。この場合においても、その推定値の初期値は、補間処理により上記の先見的情報を使用して設定された初期値やその領域外の参照値と連続となる値や分布値に設定される。この閾値Bは各位置の歪データのパワーや精度(SN比)に依存して時空間的に変化しうるものであり、SN比が高い時間や位置においては閾値Bを高く、SN比が低い時間や位置においては閾値Bを低く設定することがある。これらの方法により参照領域を決定する際に使用される歪分布データとしては、組織構造の時空間的変化に依存して時空間的に変化しうるある有限大きさの時空間窓の移動平均処理が施されたものが使用されることがある。これらの他に、参照領域(参照値)や推定値の初期値を適切に設定する方法としては、参照値と初期値は時空間的に連続であるものが望ましいことが多く、特異領域や未知領域の上記の先見的情報を使用して設定された初期値や外の参照値を用いて特異領域や未知領域の値を補間した上で(線形補間も可)、適宜、その領域の内外にわたって時空間低域通過型フィルタをかけることにより、その領域の外内の参照値と推定値の初期値が設定されることもある(但し、x=Aにおいて参照値として与えられたμ(A)は不変)。尚、他式においても、各弾性率や各粘弾性率の参照領域は必要に応じて同様に(かかる歪の比やかかる歪速度の比等を使用して)多く広く設定され、各々の、推定値の初期値、特異点や特異領域、未知点や未知領域も、同様に扱われることがある。ここで述べた参照領域を必要に応じて新たに設定する方法は、反復的解法だけではなく、直接的解法を使用した場合にも適用できる。
また、(125)式〜(137’’)式より導出される(143)式〜(145)式において、関心領域内の各未知弾性率分布や各未知粘弾性率分布に関して反復的方法に基づいて安定的に解く場合において、各々の推定値の初期値を適切に設定することにより、計算量が低減されることがある。例えば、(135)式と(136)式においてずり弾性率を扱う場合は、関心領域内の未知ずり弾性率分布の初期値として上記の如く歪の比より評価されるずり弾性率値を使用することがある。歪の比を評価する間に確認される、上記の特異点と特異領域や、歪の絶対値がある正値A以下(すなわち、ある正の閾値A以下の値)を持つものと推定された点と領域や、ずり弾性率値が単位値に対してある有限倍以上の相対値B(すなわち、ある閾値B以上の相対値)を持つものと推定された点と領域の初期値には、上記の如く、各種補間処理(2次元補間、余弦補間、ラグランジュ補間、スプライン補間等)を通じて評価される、その領域外の参照値や歪の比等で与えられる初期値と連続となる値や分布値が使用される。また、参照値と初期値は時空間的に連続であるものが望ましく、参照値や歪の比等で与えられる初期値を用いて初期値の与えられない領域の値を補間した上で(線形補間も可)、適宜、その領域の内外にわたって時空間低域通過型フィルタをかけたものが使用されることもある(但し、x=Aにおいて参照値として与えられたμ(A)は不変)。これらの閾値は各位置の歪データのパワーや精度(SN比)に依存して時空間的に変化しうるものであり、SN比が高い時間や位置においては閾値Aを小さく閾値Bを高く、SN比が低い時間や位置においては閾値Aを大きく閾値Bを低く設定することがある。尚、他の各弾性率分布や各粘弾性率分布に関しても、各々の推定値の初期値は、同様に扱われることがある。
尚、ある弾性率や粘弾性率に関して、上記の如く(かかる歪の比やかかる歪速度の比等を使用して)設定される参照領域(参照値)や推定値の初期値を用い、他の各弾性率分布や各粘弾性率分布が同時に扱われることがある。
この様な反復的解法が行われている間に、計測対象の弾性率、粘弾性率、遅延時間、緩和時間、密度値に関する先見的なデータ(例えば、(粘)弾性率値はゼロより大きい。又、(粘)ポアソン比はゼロより大きく1/2より小さい等。)から外れる値が評価された際には、強制的に先見的な値を満足する様に修正されることがある(例えば、(粘)弾性率値が負値として評価された場合にはゼロに近い正値に修正される。又、(粘)ポアソン比値が1/2より大きい値として評価された場合には1/2未満の1/2に極めて近い値に修正される。この場合、平面応力近似を想定している場合には(粘)ポアソン比値は1/2に修正できる。)。
また、ずり弾性率やポアソン比等の弾性率や粘ずり弾性率や粘ポアソン比等の粘弾性率の1次元又は2次元計測の場合は、関心点の位置が力源から離れるに従い、その位置の弾性率や粘弾性率は小さく評価される傾向がある。この場合には、計測対象と形状が等しく弾性率や粘弾性率が均質であるモデルおよび使用される力源をモデル化し、このモデルにおいて解析的に又は数値解析的に評価される歪データや歪速度データを用いて弾性率分布や粘弾性率分布の計測に用いる歪計測データや歪速度データを補正することがある。又は、このモデルにおいて解析的に又は数値解析的に評価される応カデータを用いて計測された弾性率分布や粘弾性率分布を校正することがある。あるいは、このモデルにおいて解析的に又は数値解析的に評価された歪データや歪速度データを用いて弾性率分布や粘弾性率分布を評価してこれらを用いて計測された弾性率分布や粘弾性率分布を校正することができる。但し、関心領域が力源から離れるに従い計測対象および力源を厳密にモデル化する必要はないことがある。又、変形方向と計測された歪テンソル成分の方向が異なる場合においても、弾性率や粘弾性率を、同様に、解析モデル又は数値解析モデルを用いて補正することがある。上記の正則化パラメータは、いずれも、参照領域から支配的に変形している方向に遠ざかるに連れて大きい値に設定されることがある。
ずり弾性率やポアソン比等の弾性率、粘ずり弾性率や粘ポアソン比等の粘弾性率、遅延時間や緩和時間の経時的絶対変化(差分値)は、基準の時刻および異なる時刻において評価された絶対的な値の差分を評価することにより得られる。また、これらの弾性率分布、粘弾性率、遅延時間や緩和時間の経時的相対変化(比の値)を評価する場合は、基準の時刻および異なる時刻において評価された絶対的な値又は相対的な値の比の値が評価されるか、又、これらの弾性率分布や粘弾性率の経時的相対変化(比の値)に関しては、基準の時刻および異なる時刻において評価された自然対数値の差分より評価されることもある。このように、弾性率や粘弾性率の推定結果に関しての信号処理は、自然対数の取られている状態にて施されることがある。また、(143)式〜(145)式による弾性率分布や粘弾性率分布の計算においては、共役勾配法などの反復的解法が採用されることがあるが、その際の推定値の初期値としては、一つ前の時刻において評価された推定値を用いることなどにより、計算量を低減できる。その反復推定が行われている間に、計測対象の弾性率、粘弾性率、遅延時間、緩和時間、密度値に関する先見的なデータ(例えば、(粘)弾性率値はゼロより大きい。又、(粘)ポアソン比はゼロより大きく1/2より小さい等。)から外れる値が評価された際には、強制的に先見的な値を満足する様に修正されることがある(例えば、(粘)弾性率値が負値として評価された場合にはゼロに近い正値に修正される。又、(粘)ポアソン比値が1/2より大きい値として評価された場合には1/2未満の1/2に極めて近い値に修正される。この場合、平面応力近似を想定している場合には(粘)ポアソン比値は1/2に修正できる。)。
式(125)〜(137’’)の直接的解法として特異値分解が使用される場合ことがあり、その場合には正則化が施される場合と施されない場合がある。
また、一階の空間偏微分方程式の式(125)〜(137’ ’)にて未知弾性率や未知粘弾性率のスペクトラムを扱い、上記の時空間方向にだけでなく周波数方向にも正則化を施して安定的に各未知弾性率や未知粘弾性率を評価することがある。
例えば、1次元関心領域x内のずり弾性率分布の時系列μ(x,t)及び粘ずり弾性率分布の時系列μ’(x,t)の周波数分散(スペクトラムの周波数分布及び位相の周波数分布)を計測対象とする場合に、ずり弾性率分布の時系列μ(x,t)の離散時系列μ(x,j)[j=t/Δt(=0〜n)](有限要素近似を施す場合には空間座標(x,I)[I=x/Δx]のみを変数とする基底関数φ(I,x)を使用して、Σ
Iφ
μ(I,x)μ(I,j)と表される。)が、μ(x,j)を各位置において時間j方向にフーリエ変換を行うことにより得られるスペクトラム分布の各周波数l成分の大きさμ(x,l)及び位相θ
μ(x,l)を用いて、即ち、各位置の各周波数lのスペクトラムの実数成分(μ(x,l)cosθ
μ(x,l))及び虚数成分(μ(x,l)sinθ
μ(x,l))を用いて、次のように表される。
ここで、太文字jは虚数単位を表す。l(=0〜n)は離散周波数座標であり、周波数fとは周波数データの間隔Δfを用いてf=lΔfの関係にある。
また、粘ずり弾性率分布の時系列μ’(x,t)の離散時系列μ’(x,j)(有限要素近似を施した場合には、Σ
Iφ
μ’(I,x)μ’(I,j)と表される。)が、μ’(x,j)を各位置において時間j方向にフーリエ変換を行うことにより得られるスペクトラム分布の各周波数l成分の大きさμ’(x,l)及び位相θ
μ’(x,l)を用いて、即ち、各位置の各周波数lのスペクトラムの実数成分(μ’(x,l)cosθ
μ’(x,l))及び虚数成分(μ’(x,l)sinθ
μ’(x,l))を用いて、次のように表される。
1階の空間偏微分方程式(137)式は、次のように表されるものとする。
その場合には、各周波数lにおいて、次の1階の連立空間偏微分方程式が成立する。
従って、1階の連立空間偏微分方程式の(146’)式及び(146’ ’)式を、一階の空間偏微分方程式の式(137)を各時間j(=0〜n)において扱う場合と同様に、有限差分近似や有限要素近似(変分原理やガラーキン法に基づく)を行うことができる。
さらに、既知の弾性率や粘弾性率の時系列の各周波数l(=0〜n)のスペクトラムの実数成分の節点空間分布データ及び虚数成分の節点空間分布データ(ずり弾性率の時系列の各周波数l(=0〜n)のスペクトラムの実数成分の節点空間分布データのμ(I,l)cosθμ(I,l)と虚数成分の節点空間分布データのμ(I,l)sinθμ(I,l)、及び、粘ずり弾性率の時系列のスペクトラムの各周波数l(=0〜n)の実数成分の節点空間分布データのμ’(I,l)cosθμ’(I,l) と虚数成分の節点空間分布データのμ’(I,l)sinθμ’(I,l))を代入することにより、各時間j(=0〜n)において、各周波数l(=0〜n)の、ずり弾性率の時系列のスペクトラムの実数成分の節点空間分布μ(I,l)cosθμ(I,l)と粘ずり弾性率のスペクトラムの実数成分の節点空間分布μ’(I,l)cosθμ’(I,l)に関する連立方程式(142)と、ずり弾性率の時系列のスペクトラムの虚数成分の節点空間分布μ(I,l)sinθμ(I,l)及び粘ずり弾性率のスペクトラムの虚数成分の節点空間分布μ’(I,l)sinθμ’(I,l)に関する連立方程式(142)を得る。
この様に、式(125)〜(137’ ’)のいずれの1階の空間偏微分方程式が使用される場合においても、同様に、計測対象である未知弾性率や未知粘弾性率の空間分布が周波数領域においてその節点空間分布のスペクトラムを用いて近似されて、未知パラメータである未知弾性率や未知粘弾性率のスペクトラムの実数成分の空間分布に関する連立方程式と未知パラメータである未知弾性率や未知粘弾性率のスペクトラムの虚数成分の空間分布に関する連立方程式が導出される。以下、これらの2個の連立方程式の各々が正則化される際には、各連立方程式は、通常、上述の如く、未知の分布にかかる分布データ等により正規化される。
(A)各時系列i(=1〜M)の各時間j(=0〜n)の各周波数l(=0〜n)において導出される2個の連立方程式は、各々、1つ以上の未知パラメータの周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布の各々について解かれることがある。
(B)異なる時系列i(=1〜M)や異なる時間j(=0〜n)の各々において導出される2個の連立方程式は、各々、1つ以上の未知パラメータの周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布の各々に関して連立され、全ての未知パラメータの周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布の各々について解かれることがある。
(C)異なる時系列i(=1〜M)や異なる時間j(=0〜n)の各々において導出される2個の連立方程式は、各々、1つ以上の未知パラメータの周波数lの実数成分の空間分布と虚数分布の空間分布の各々に関して連立され、全ての未知パラメータの各周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布の各々を空間的に安定化させるべく、これらの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布に関する連立方程式の各々に前述の式(143)の空間方向の正則化[各分布の2乗ノルム(有限要素近似を行った場合のみ)や各分布の勾配の2乗ノルムや各分布のラプラシアンの2乗ノルムを使用]が施されることがある。この場合には、各未知パラメータの各周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布にかかる正則化パラメータは、これらの空間分布にかかる物理量の関心領域内において使用された時間内のSNパワー比に反比例する様に決定されることがある。また、正則化パラメータは、方向(かかる物理量の各方向の変化量のSNパワー比に反比例)と時間と位置に依存するものとして扱われることもある。
(D)同様に、異なる時系列i(=1〜M)や異なる時間j(=0〜n)の各々において導出される2個の連立方程式は、各々、1つ以上の未知パラメータの周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布に関して連立され、全ての未知パラメータの各周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布の各々を時間方向に安定化させるべく、これらの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布に関する連立方程式の各々に前述の時間方向の正則化(各分布の時間方向の1階偏微分の2乗ノルムや2階偏微分の2乗ノルムを使用)が施されることがある。この場合には、各未知パラメータの各周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布にかかる正則化パラメータは、これらの空間分布にかかる物理量の関心領域内において使用された時間内の変化量のSNパワー比に反比例する様に決定されることがある。また、正則化パラメータは、方向(かかる物理量の各方向の変化量のSNパワー比に反比例)と時間と位置に依存するものとして扱われることもある。
(E)任意の時系列iの任意の1つの時間jにおいて、導出される1つ以上の未知パラメータの各周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布の各々に関する連立方程式を全ての周波数(l=0〜n)に関して連立した上で、各位置において全ての未知パラメータのスペクトラムの実数成分分布と虚数成分分布の各々を周波数方向に安定化させるべく、各未知パラメータのスペクトラムの実数成分分布と虚数成分分布の各々の周波数方向の1階偏微分の2乗ノルムと2階偏微分の2乗ノルムを用いた正則化が施されることがある。これらの各未知パラメータの各周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布にかかる正則化パラメータは、これらの空間分布にかかる物理量のSNパワー比に反比例する様に決定されることがある。また、正則化パラメータは、方向(かかる物理量の各方向の変化量のSNパワー比に反比例)と時間と位置に依存するものとして扱われることもある。
さらに、上記の(C)や(D)と同様に、1つ以上の未知パラメータの空間分布の各々を、空間的に、また、時間方向に安定化させるべく、異なる時系列(i=1〜M)や時間j(=0〜n)において導出される全ての未知パラメータの各周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布の各々に関する連立方程式を全ての周波数(l=0〜n)に関して連立した上で、上記の空間方向と時間方向と周波数方向に関する正則化が施されることがある。これらの各未知パラメータの各周波数lの実数成分の空間分布と虚数成分の空間分布にかかる正則化パラメータは、各未知パラメータにかかる物理量の使用された時間内のSNパワー比に反比例する様に決定されることがある。また、正則化パラメータは、方向(かかる物理量の各方向の変化量のSNパワー比に反比例)と位置と時間に依存するものとして扱われることもある。
以上の通り、連立方程式(142)を用いた上記の(A)〜(E)のいずれかにより、使用された歪や歪速度の時系列データの時間内の各未知弾性率や未知粘弾性率の周波数分散が求められる。
また、節点弾性率分布や節点粘弾性率の時系列は、各位置において使用された節点歪テンソルや節点歪速度テンソルの時系列データの時間内において求められたスペクトラム分布に、各位置において、逆フーリ変換を施すことにより求められる。例えば、時間j=0〜nにおいて、節点ずり弾性率分布の時系列は、
であり、これより、ずり弾性率分布の時系列μ(x,t)が求められる。
式(125)〜(137’ ’)の3次元、2次元、1次元関心領域を対象とした場合も同様である。
弾性率や粘弾性率の周波数分散そのものを最終的な計測対象とする場合は、式(125)〜(137’ ’)を直接的に使用した場合と同様に、弾性率や粘弾性率の周波数分散の関心のある周波数帯域を対象とできる様に、充分に広帯域の変形場の時系列を生成させるべく、積極的に適切な力源が使用されることがある。
尚、上記において、変形データの瞬時周波数を測定した場合は、周波数lを瞬時周波数として扱えばよい。
また、未知弾性率や未知粘弾性率に関するフーリエ変換は時間方向にではなく、空間方向に適用されて、同様に、未知弾性率分布や未知粘弾性率分布が求められることがある。
また、一階の空間偏微分方程式の式(126)、(127)、(128)、(129)、(131)、(132)、(133)、(134)、(136)、(137)と式(128’ ’ ’)、(128’ ’ ’ ’)、(129’ ’ ’)、(129’ ’ ’ ’)、(133’ ’ ’)、(133’ ’ ’ ’)、(134’ ’ ’)、(134’ ’ ’ ’)、(137’)、(137’ ’)にて未知弾性率や未知粘弾性率の時系列の周波数分散(スペクトラムの周波数分布及び位相の周波数分布)を扱うべく、式(126)、(127)、(128)、(128’ ’ ’ ’)、(129)、(129’ ’ ’ ’)、(131)、(132)、(133)、(133’ ’ ’ ’)、(134)、(134’ ’ ’ ’)、(136)、(137)、(137’ ’)を畳み込み積分を用いて近似的に式(128’ ’ ’)、(129’ ’ ’)、(133’ ’ ’)、(134’ ’ ’)、(137’)の如く表し(例えば、式(137)は、近似して、
と表す。式(128’ ’ ’)、(129’ ’ ’)、(133’ ’ ’)、(134’ ’ ’)、(137’)と同様に、上記の如く、時空間において正則化を施して安定的に扱われることもある。時間方向に1階の偏微分を施した上で扱われることや、部分積分を施した上で扱われることもある。理論的には、弾性率分布と粘弾性率分布は、初期時刻t’から時刻tまでの間、不変である必要がある。フーリエ変換した上で
(例えば、式(137’ ’ ’)の場合は、
と求められる。)、上記の如く、時空間方向や周波数方向に正則化を施して安定的に未知弾性率や未知粘弾性率が求められることがある。
尚、密度分布ρを扱う場合に関しては、前記の如く慣性項を右辺に加えた空間偏微分方程式(125)〜(137’)が扱われ[但し、式(126)、(131)、(136)の偏微分方程式を、ずり弾性率の逆数の自然対数そのもの、ずり弾性率の逆数そのもの、粘ずり弾性率の逆数の自然対数そのもの、又は、粘ずり弾性率の逆数そのものに関して解く場合に関しては、適用されない。]、上記の如く、これらの偏微分方程式は有限差分近似されるか、あるいは有限要素近似(変分原理又はガラーキン法)され、ずり弾性率分布μ、ポアソン比分布ν、粘ずり弾性率分布μ’、粘ポアソン比分布ν’と同様、密度分布ρが既知である領域においてはその分布値が使用され、又、密度分布ρが未知である領域においてはその分布は計測対象として式(142)の未知ベクトルsの構成成分となり、正則化された上で安定的に求められる。又、前述の通り、式(126)、(127)、(131)、(132)、(136)の偏微分方程式中の弾性率を対応する粘弾性率に置き換え、且つ、歪テンソル成分を歪速度テンソル成分に置き換え、同様に、使用される偏微分方程式は有限差分近似されるか、あるいは有限要素近似され、密度分布ρが既知である領域においてはその分布値が使用され、又、密度分布ρが未知である領域においてはその分布は計測対象として式(142)の未知ベクトルsの構成成分となり、正則化された上で安定的に求められる。この様に、密度ρを扱う場合は、連立方程式(142)の行列E及びベクトルe中の加速度ベクトル分布データと、歪テンソル分布データや歪速度テンソル分布データおよびこれらテンソルデータの空間微分値は、計測された加速度ベクトルデータと歪テンソルデータや歪速度テンソルデータのノイズを低減するべく、低域通過型の空間フィルタや低域通過型の時間フィルタや低域通過型の時空間フィルタをかけたもので決定される。
尚、式(125)〜式(134’’’’)に関しては、有限差分近似又は有限要素近似された式が、式中の体積歪ε
ααを含む項の弾性率(空間、時間、スペクトラム)分布から成るベクトルx
1と体積歪ε
ααを含まない項の弾性率(空間、時間、スペクトラム)分布から成るベクトルx
2に関する式
として扱われることがある。また、これより、ベクトルx
1とベクトルx
2の各々に関する式
を得、参照値が代入された上で、必要に応じ、両者、若しくは、いずれかが、式(142)と同様に扱われるか、或いは、両者、若しくは、いずれかが、式(142)中にて使用されることがある。但し、A
11 +とA
22 +の各々は、A
11とA
22の、逆行列、若しくは、一般逆(最小二乗逆、又は、特異値分解を行った上で体積歪の測定精度に基づき小さい特異値を使用しないもの、又は、上記の如く体積歪の測定精度に基づき単位行列や勾配作用素やラプラシアン作用素を用いて正則化したもの)である。関心領域内の非圧縮性を呈示する組織においては測定される体積歪ε
ααの大きさは極めて小さく、式(147’)と(147’’)の各々は、特に、その組織の領域において使用されることがある。
また、ベクトルx
1は、時として、体積歪ε
ααと弾性率の積そのものの分布から成るベクトルとして扱われることもあり、この場合においては、この積の分布が求められた上で、弾性率分布が求められる。
以上の如く、(125)式〜(137’ ’)式のいずれかを用いて計測された弾性率分布データや粘弾性率分布データや密度分布データと別の変形データを用いて、同様に、(125)〜(137’ ’)式のいずれかを用いて未知弾性率分布や未知粘弾性率分布や未知密度分布が計測されることがある。
次に、図26のフローチャートに沿って、ずり弾性率やポアソン比等の弾性率の分布、粘ずり弾性率や粘ポアソン比等の粘弾性率の分布、遅延時間の分布、緩和時間の分布、密度分布の計測手順について詳細に説明する。まず、これらの未知弾性率、未知粘弾性率、未知密度の参照領域を適切に設定する(S11)。または、未知弾性率、未知粘弾性率、未知密度の各々の参照領域として、関心領域7内に参照点を設定する。ここで、参照点はその弾性率、粘弾性率、密度が既知である点、又は単位大きさの値を持つと想定した点、又は単位値以外のある有限値を持つと想定した点である。
これらの未知弾性率、粘弾性率、密度の計測精度を向上させるためには、変形方向と広く交わるように各々の参照領域を関心領域内に設定することが望ましい。参照領域とは、これらの弾性率、粘弾性率、密度の各々が既知である領域又は先見的に弾性率、粘弾性率、密度がある分布をもつと想定できる領域である。絶対的な弾性率分布、絶対的な粘弾性率、絶対的な密度を計測するためには、参照値として各々の絶対値が与えられる必要がある。
時として、参照領域内の対応する応力成分の分布を仮定し(例えば、一定)、かかる歪の値(例えば、応力成分の分布を一定と仮定した場合は歪の比)から弾性率の参照値が、かかる歪速度の値(例えば、応力成分の分布を一定と仮定した場合は歪速度の比)から粘弾性率の参照値が、決定されることがある。
関心領域内に弾性率値、粘弾性率値、密度値が既知である参照点又は参照領域が存在しない場合は、それらの参照物を関心領域に直接的に当てることが可能であれば、これを当てた上で一部を関心領域に含めて変形場(歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトル場)の計測を行う(S12)。この場合には、参照物の弾性率値は計測対象のそれよりも大きい値であることが望ましく、また、この参照物を力源8と関心領域の間に挟むことが望ましい。
対象物は、厳密には3次元空間において変形するため、3次元再構成を行うことが望ましい。しかし、対象物の浅部における弾性率、粘弾性率、密度を評価する場合は、高精度に計測できる深部方向の歪データ、歪速度データ、加速度データを積極的に用いる1次元再構成法(式(135)〜(137’ ’))は有用である。これに対し、対象物の深部における弾性率、粘弾性率、密度を評価する場合には、やはり、多次元再構成(式(125)〜(134’ ’ ’ ’))が有用であり、力源および参照領域の設定に関して自由度を高くすることができる。
特に、2次元再構成に関しては関心領域の面に対してz方向に両側よりかかる力によりz方向の歪がゼロに近い場合は式(125)〜(129’ ’ ’ ’)を、関心領域の面に対してz方向にかかる力がゼロに近い場合は式(130)〜(134’ ’ ’ ’)を用いる。独立した変形場(歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトル場)を計測する場合は、力源8の位置を変えて行うことがある。これは、歪、歪速度、加速度の計測精度がその大きさに依存するため、関心領域全体にわたって一様な弾性率、粘弾性率、密度の計測精度を実現するためには、様々な位置に力源8を設定して計測する必要がある。当然のことながら、計測時間およびコストがかかるため、計測回数は計測精度とトレード・オフの関係にある。逆に、対象物が力源8’や8”により自然に変形する場合には、力源8は必要ないことがあり、自然に生じる歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトル場のみを計測すればよいことは既に述べた。
弾性率、粘弾性率、密度の計測は、計測制御手段3によって、計測対象6および検出センサー5の位置を調整し、位置情報と検出信号をデータ記録手段2に入力する。データ処理手段1において、歪、歪速度、加速度の計測データに対してノイズ除去のためのフィルタリングを行い(S13)、空間的に平滑化し、係数E、eを求める(S14)。次いで、正規方程式(144)より関心領域のs、即ち、弾性率分布、粘弾性率分布、密度分布等を求める(S15)。なお、計測結果としては、各時間の、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分勾配分布、歪速度テンソル成分分布、歪速度テンソル成分勾配分布、ずり弾性率やポアソン比やラメ定数等の弾性率分布、粘ずり弾性率や粘ポアソン比や粘性ラメ定数等の粘弾性率分布、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間分布や緩和時間分布、密度分布、これらの勾配分布、これらのラプラシアン分布、これらの時間方向の1階偏微分(時間方向の変化率)、これらの時間方向の2階偏微分、これらの時系列を記録すべく、データ処理手段1の計測結果がデータ記録手段2に入力される。また、これらの計測結果をCRT(カラー・グレイ)などの表示装置にリアルタイム表示すべく、データ処理手段1の出力は表示装置に入力することができる。また、静止画(フリーズ画像)を呈示することもできる。尚、画像表示の際には、各々の計測結果は、適宜、設定される各々の上限値や下限値により打ち切られることがある。各弾性率分布と各粘弾性率分布の画像表示に関しては、各々の逆数の分布が画像表示されることがある。また、これらには直流が加算若しくは減算されることもある。歪テンソル成分分布の画像表示に関しては、符号が関心領域内において変化する場合には、適切な直流を加えて、符号が一定となる様にすることがある(その際には、弾性率画像と相関が取れる様に輝度値が割り当てられることが望ましい)。また、各々の計測結果は、ログ圧縮されて表示されることもある。
計測結果としては、各時間の、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分勾配分布、歪速度テンソル成分分布、歪速度テンソル成分勾配分布、ずり弾性率やポアソン比やラメ定数等の弾性率分布、粘ずり弾性率や粘ポアソン比や粘性ラメ定数等の粘弾性率分布、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間分布や緩和時間分布、密度分布、これらの勾配分布、これらのラプラシアン分布、これらの時間方向の1階偏微分(時間方向の変化率)、これらの時間方向の2階偏微分、これらの時系列のほかに、これらの弾性率分布、粘弾性率分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布の各々の基準時刻に対する経時的相対変化(比の値)あるいは経時的絶対変化(差分値)とこれらの時系列を、また、これらの弾性率、粘弾性率、遅延時間、緩和時間、密度の各々の周波数分散の近似の空間分布、各時間の弾性エネルギー分布や変形の際に消費されたエネルギー分布と基準時刻からの時間方向の各々の積算値とこれらの時系列、これらの弾性エネルギー分布や変形の際に消費されたエネルギー分布の各々の基準時刻に対する経時的相対変化(比の値)あるいは経時的絶対変化(差分値)とこれらの時系列をデータ処理手段1にて評価できる。歪計測データが欠落した点又は領域が存在した場合は、その時間の点又は領域を関心領域から除外して演算し、その演算後において、演算結果を関心時空間内において内挿又は外挿補間処理により欠落したその時間の点又は領域の値を評価することがある。そして、それらの評価結果をデータ記録手段2に記録すると共に、表示装置に出力表示することができる。
これら計測結果は、データ処理手段1にて正規方程式(144)より得られる空間的に絶対的なこれらの弾性率分布、粘弾性率分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布又は空間的に相対的なこれらの弾性率分布、粘弾性率分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布に空間フィルタ処理を予め施した上で求められるか、あるいはこれらの各結果を求めた上で空間フィルタ処理が施される、また、これらの弾性率分布、粘弾性率分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布の時系列に時間フィルタ処理や空間フィルタや時空間フィルタ処理を予め施した上で求められるか、あるいはこれらの各結果を求めた上で時系列に時間フィルタ処理や空間フィルタや時空間フィルタ処理が施されることがあり、その後、データ記録手段2に記録すると共に、表示装置に出力表示することができる。空間フィルタ処理、時間フィルタ処理、又は時空間フィルタ処理は、周波数を指標にして表示又は定量化する際の成分を選択又は強調するためであり、初期値と参照値を含めて、高域強調型、中域強調型、低域強調型、高域通過型、中域通過型、低域通過型などを、適宜採用することができる。このフィルタ処理はデータ処理手段1にて行われる。
尚、偏微分方程式(125)〜(137’)において、別の変形場データを使用して式(125)〜(137’)に基づいて予め計測された弾性率分布、粘弾性率分布、密度分布データ、もしくは典型値に基づく弾性率分布、粘弾性率分布、密度分布データが使用された上で、未知弾性率分布、未知粘弾性率分布、未知密度分布が求められることがある。
また、超音波診断装置と併用して、これより評価される体積弾性率および密度の空間的変化の計測および画像化も同時に行うことができる。これにより、関心領域に関する組織について総合的な評価がなされる。この場合は、図1のデータ処理手段1、データ記録手段2、計測制御手段3、変位又は歪検出センサー5、駆動・出力調整手段5’などを併用することになる。また、核磁気共鳴イメージング装置と併用して、原子密度分布の計測及び画像化が同時に行なわれることがある。
上述したように、図1の実施形態によれば、変位又は歪検出センサー5を用い、遠隔的に関心領域内の歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトルを計測し、その計測値によって記述される一階の空間偏微分方程式を有限差分法又は有限要素法を用いて解くことによって、これらの絶対的な弾性率分布、関心領域内において与えられたこれらの参照弾性率に対する各々の相対的な分布、これらの絶対的な粘弾性率分布、関心領域内において与えられたこれらの参照粘弾性率に対する各々の相対的な分布、絶対的な密度分布、関心領域内において与えられた参照密度に対する相対的な分布等を演算により推定することできる。
また、これらの弾性率、粘弾性率、密度の演算にあたって、正則化された代数方程式を用いることにより、歪計測データ、歪速度計測データ、加速度計測データに含まれるエラー(ノイズ)データや参照領域が狭くて位置が悪い場合においても関心領域内の歪計測データ、歪速度計測データ、加速度計測データのみからこれらの弾性率分布、粘弾性率分布、密度分布の推定が可能となる。
また、上述の実施形態によれば、各力源8、8’、8”が関心領域の外部に存在するという条件の下ではあるが、変位・歪検出センサー5を用いて取得される関心領域内の超音波散乱信号を信号処理して得られる歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトル場の計測データのみから、その関心領域内のこれらの弾性率、粘弾性率、密度を推定することが可能である。すなわち、未知対象物の関心領域内のこれらの弾性率、粘弾性率、密度を関心領域内にて計測された歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトル場の計測データから求めることができる。特に、対象物が自然に変形する場合にはその場を乱すことなく容易に関心空間・領域の弾性率分布、粘弾性率分布、密度分布を推定することが可能となる。また、測定精度に勝るだけの大きな変形を生じさせることが困難であると考えられる対象物の深部に関心領域が存在する場合に有用である。
本実施形態に係る弾性率・粘弾性率計測装置は、放射線照射による組織の変性および温度変化が、ずり弾性率やポアソン比やラメ定数等の弾性率、粘ずり弾性率や粘ポアソン比や粘性ラメ定数等の粘弾性率、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間や緩和時間、密度の変化をともなうため、放射線照射等の治療効果をモニタリングするものとして極めて有用である。
なお、図1の実施形態においては、超音波探触子を用いた変位・歪検出センサー5により関心領域内の歪テンソル、歪速度テンソル、加速度ベクトルを計測する例を説明したが、本発明はこれに限らず、電磁波(光を含む)透過/反射/散乱信号や核磁気共鳴信号の信号処理により評価される関心領域7内の歪テンソル場、歪速度テンソル場、加速度ベクトル場のみから、その関心領域の、ずり弾性率やポアソン比やラメ定数等の弾性率、粘ずり弾性率や粘ポアソン比や粘性ラメ定数等の粘弾性率、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間や緩和時間、密度を演算により求めることができる(以下、ラメ定数と粘性ラメ定数を使用しての弾性率と粘弾性率の記載は略)。
次に、本発明の一実施形態に係る治療装置について説明する。この治療装置は、以上説明した変位ベクトル分布、歪テンソル分布等の計測技術、及び、弾性率・粘弾性率と密度の計測技術を超音波治療に適用したものである。
ここで、先に説明したような変位ベクトル分布、歪テンソル分布、歪速度テンソル分布、加速度ベクトル分布、速度ベクトル分布、弾性率分布や粘弾性率分布を計測する狙いは、定量的に静力学または動力学に関る物体、物質および材料の非破壊による特性評価および検査、生物の非侵襲的診断および検査を行うことにある。例えば、ヒト生体軟組織を対象とした場合には、積極的に体外より圧迫ないし低周波振動を印加すると、病変の進行や組織性状の変化に伴う組織の静的弾性特性の変化に着目して組織性状鑑別を行うことができる。また、体外より圧迫することに代えて、心拍や脈拍などによる組織変形を計測しても同様であり、組織の弾性率や粘弾性率の値およびその分布形態から組織性状鑑別を行うことができる。血流(速度)を観察することにも使用できる。
図27は、本実施形態に係る治療装置の全体構成を示すブロック図である。医療分野においては、強力超音波照射、レーザ照射、電磁RF波照射や電磁マイクロ波照射の照射、冷凍(冷却)により、病変部を治療することが行なわれている。これらの低侵襲治療の場合には、治療により病変部の組織変性や組成成分重量分率の変化、温度変化が生ずる。例えば、生体を対象とした場合には、組織蛋白質の変性により組織凝固を生じる。これらの組織変性や組成成分重量分率の変化や温度変化は、ずり弾性率やポアソン比等の弾性率や粘ずり弾性率や粘ポアソン比等の粘弾性率、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間や緩和時間、電気インピーダンス(導電率や誘電率)や熱物性(熱伝導率や熱拡散率や(灌流現象に関わる)熱伝達率)、これらに関わる遅延時間や緩和時間、密度の変化をともなう。
そこで、病変部位の、絶対的又は相対的なずり弾性率、絶対的又は相対的なポアソン比、絶対的又は相対的な粘ずり弾性率、絶対的又は相対的な粘ポアソン比、各弾性率と対応する粘弾性率に関わる絶対的又は相対的な遅延時間や緩和時間、絶対的又は相対的な密度、電気インピーダンス(導電率や誘電率)や熱物性(熱伝導率や熱拡散率や熱伝達率)、これらに関わる遅延時間や緩和時間等を計測し、これらの経時的変化や周波数分散を観察することにより、治療効果を非侵襲でモニタリングすることができる。また、消費電力量や消費電力量の経時的変化や温度や温度の経時的変化が、各組織に関して理論・シミュレーション・計測を通じて得られる換算データに基づいて、計測されたずり弾性率値、ポアソン比値、粘ずり弾性率値、粘ポアソン比値、電気インピーダンス(導電率や誘電率)、熱物性(熱伝導率や熱拡散率や熱伝達率)、遅延時間値、緩和時間値、密度値、歪値、歪速度値やこれらの経時的変化より換算され、治療効果が評価されることもある。
消費電力量や消費電力量の経時的変化の計測には、電力計及び組織物性値(電気インピーダンスや機械インピーダンスなど)を使用した上で評価されることもある。また、温度や温度の経時的変化の計測には、従来の温度モニタリング法、又は計測精度を重視して熱電対などが同時に又は単独で使用されることもある。これらの空間分布の計測を行うことにより、治療効果をモニタリングできるだけでなく、安全性及び信頼性を確保することができる。そして、これらのモニタリングデータを、治療実施間隔、照射パワー、照射強度、照射時間、照射間隔、照射位置(焦点)、照射形状(アポダイゼ−ション)などをダイナミックにディジタル電子制御や機械制御するための指標として利用して、治療効率を向上させることができる。
図27に示す治療装置は、強力な超音波を病変部に照射して治療する治療装置であり、超音波診断装置と弾性率・粘弾性率計測装置を備えて構成されている。図27に示すように、治療プローブ11は、超音波探触子12(治療用振動子13を兼ねることもある)と、治療用振動子13(超音波探触子12を兼ねることもある)と、プローブ支持部14とを有して形成されている。超音波探触子12は、周知の超音波診断装置に用いられるものと同様、例えばコンベックス型のように、複数の振動子を一列に配列して形成され、プローブ支持部14に取り付けられている。治療用振動子13は、複数の振動子を超音波探触子12の両側に分けて対称的に配列して、プローブ支持部14に取り付けられている。図中には、治療用振動子13の複数の振動子の超音波射出面が、凹状の曲面を形成するように配列されているものを示す。プローブ支持部14は手で把持したり、図1の位置調整手段4に把持されるようになっている。これにより、治療プローブ11の位置を調整できるようになっている。
治療プローブ11の治療用振動子13には、治療パルス発生回路21で発生された超音波パルスが、治療波遅延回路22と増幅器23を介して供給されるようになっている。つまり、治療波遅延回路22において各振動子用に遅延制御され、増幅器23によって高エネルギの駆動パルスに変換されて各振動子に供給され、これによって、治療用振動子13の複数の振動子から射出される超音波のビームの焦点位置を治療部位に制御可能に形成されている。
一方、超音波探触子12には、超音波パルス発生回路31から発生された超音波パルスが送波遅延回路32においてフォーカス処理され、増幅器33において増幅された後、送受分離器34を介して超音波探触子12を構成する振動子に供給されるようになっている。超音波探触子12により生体内から受信された超音波のエコー信号は、送受分離器34を介して増幅器35に道びかれて増幅された後、受波整相回路36においてエコー信号の位相が整相されるようになっている。受波整相回路36から出力されるエコー信号に基づいて、信号処理部37において画像再構成が行なわれ、DSC(ディジタルスキャンコンバータ)38にて診断像に変換されてモニタ39に表示される。これらの診断装置に係る部分は、周知の超音波診断装置を適用できる。
本実施形態の特徴に係る弾性率・粘弾性率計測部40は、受波整相回路36から出力されるエコー信号に基づいて、前述の手順により、ずり弾性率、ポアソン比、粘ずり弾性率、粘ポアソン比、密度、これらの各弾性率と対応する粘弾性率に関わる遅延時間や緩和時間等を演算により求めるようになっている。なお、計測データおよび演算結果は、弾性率・粘弾性率計測部40に備えられているデータ記録手段に格納されるようになっている。
また、上述の治療パルス発生回路21、治療波遅延回路22、超音波パルス発生回路31、送波遅延回路32、受波整相回路36、信号処理部37、DSC38、および弾性率・粘弾性率計測手段40は、制御部41の指令によって制御されるようになっている。また、操作者は、操作部42から制御部41に指令や条件を入力するによって、各種の操作条件や治療条件を設定できるようになっている。なお、信号処理部37、弾性率・粘弾性率計測手段40、操作部42および制御部41は、コンピュータにより構成されている。
このように構成される超音波治療装置を用いて、超音波治療を行なう場合の動作の概要を説明する。まず、治療プローブ11を生体の体表面に接触させて所望の治療部位を含む生体内の関心領域に向けて支持する。時として、液体槽内において、治療プローブ11を体表面に非接触に所望の治療部位を含む生体内の関心領域に向けて支持することもある。まず、治療に先立って治療部位を撮像するため、操作部42から撮像開始の指令を入力すると、これに応答して制御部41は超音波パルス発生回路31と送波遅延回路32に指令を出力する。これにより、超音波探触子12から計測対象の生体内に超音波ビームが照射される。この超音波ビームは、超音波探触子12の振動子の配列方向に沿って走査され、生体の扇形等の断層面に沿った領域に超音波ビームが照射される。超音波が照射された領域から反射される超音波エコーは、超音波探触子12の振動子により受信され、そのエコー信号は、受波整相回路36において超音波ビームごとに整相処理され、信号処理部37及びDSC38からなる画像処理部により断層面の2次元画像が生成され、モニタ39に表示される。このようにして断層像を観察しながら生体内を診断すると共に、断層像を観察しながら断層像上に治療部位が現れた場合は治療を実行する。
治療用振動子と13と超音波探触子12が兼用/併用される場合には、治療パルス発生回路21は超音波パルス発生回路31を、治療波遅延回路22は送波遅延回路32を、増幅器23は増幅器33を、各々、兼ねることがあり、増幅器23の出力パルスは送受分離器34を介して治療用振動子13と超音波探触子12に供給されることがある。この場合、治療パルスの送信時においても送受波分離器34以降を動作させることがある。時として、受波整相回路36において、隣接する素子間等の受信信号の位相差を前記変位計測法に基づく方法により推定していわゆる位相収差を求め、治療波遅延回路22と送波遅延回路32を制御することにより、位相収差補正を行った上でエコー信号を受信するだけでなく、治療(送信フォーカス)位置の位置決め精度を向上せしめることがある。
すなわち、治療部位が断像上に現れたら、治療プローブ11の位置を現在位置に保持する。そして、制御部41は、DSC38に記憶されている断層像に基づいて、治療用振動子13の各振動子に供給する駆動パルスの遅延時間を求めて治療波遅延回路22に出力し、これにより、治療用振動子から射出される超音波のビーム焦点位置が治療部位に調整される。また、超音波ビームの照射強度が調整されることがある。これにより、治療部位が加熱、焼灼されて病変部位が変性される。この治療操作は、必要に応じて間隔をおいて繰返し行なわれる。また、3次元超音波画像を観察しながら治療を行なうことがある。なお、治療用の超音波ビームの制御は、ビーム焦点位置(照射位置)の制御に限らず,治療実施間隔、超音波ビームパワー、超音波ビーム強度、照射時間、ビーム形状(アポタイゼーション)などの制御を適宜組合わせて行なわれる。
次に、治療の効果をモニタリングするためのずり弾性率、ポアソン比、粘ずり弾性率、粘ポアソン比、遅延時間、緩和時間、密度等の計測と治療操作の手順を図28のフローチャートを参照しながら説明する。まず、治療開始前の関心領域内の、ずり弾性率分布μ(x,y,z)、ポアソン比分布ν(x,y,z)、粘ずり弾性率分布μ’(x,y,z)、粘ポアソン比分布ν’(x,y,z)、遅延時間τ(x,y,z)、緩和時間τ’(x,y,z)、密度分布ρ(x,y,z)等を計測する(S21)。この計測は、操作部42から制御部41に指令を送り、力源を用いて関心領域内の生体を変形させ、また、超音波探触子12から超音波を生体内の関心領域に照射する。次いで、制御部41は、弾性率・粘弾性率計測部40に指令を送って、超音波探触子12から受信されるエコー信号を受波整相回路36から取り込ませ、前述した手順で歪テンソル場や歪速度テンソル場を計測する。この計測された歪テンソル場や歪速度テンソル場に基づいて、ずり弾性率分布μ(x,y,z)、ポアソン比分布ν(x,y,z)、粘ずり弾性率分布μ’(x,y,z)、粘ポアソン比分布ν’(x,y,z)、遅延時間τ(x,y,z)、緩和時間τ’(x,y,z)、密度分布ρ(x,y,z)等を演算する。
次に、関心領域内の治療部位を確認し、治療処理回数カウンタIを初期化(I=0)する(S22)。そして、治療開始位置および治療用超音波の初期強度を設定して(S23)、治療を開始する(S24)。その治療の都度、関心領域内の、ずり弾性率分布μ(x,y,z)、ポアソン比ν(x,y,z)、粘ずり弾性率分布μ’(x,y,z)、粘ポアソン比ν’(x,y,z)、遅延時間τ(x,y,z)、緩和時間τ’(x,y,z)、密度ρ(x,y,z)等を計測する(S25)。このとき、計測される弾性率や粘弾性率や遅延時間や緩和時間や密度は絶対的なもののほか、空間的、時間的に相対的なものでよい。そして、予め組織物性情報等により設定された治療効果確認のためのずり弾性率μ、ポアソン比ν、粘ずり弾性率μ’、粘ポアソン比ν’等の判定値TH1(軟化する場合)又はTH2(硬化する場合)等、遅延時間τ、緩和時間τ’、密度ρ等の判定値と比較して所望の治療効果が得られているか否かを確認する(S26)。TH1、TH2等の判定値は、時間t・位置(x,y,z)や上記の照射回数等の照射超音波のパラメータや変性情報等の関数である閾値(予め与えられる、又は、適宜更新される)であり、絶対的又は相対的な弾性率値や粘弾性率値、絶対的又は相対的な遅延時間値や緩和時間値、密度値の単位を持っている。所望の効果が得られていない場合は、超音波強度を高く調整して(S27)、再度治療を実行させる(S24)。所望の治療効果が得られた場合は、所定の治療部位に設定した全ての点についての治療が終了したか否か判断する(S28)。全ての治療点についての治療が終了していなければ、治療位置を変更して(S29)、再度治療を実行させる(S24)。
全ての治療点についての治療が終了していれば、治療部位を冷却する(S30)。この冷却は、自然冷却でも、強制的な冷却でもよい。その後、つまり治療後の関心領域内のずり弾性率分布μ(x,y,z)、ポアソン比ν(x,y,z)、粘ずり弾性率分布μ’(x,y,z)、粘ポアソン比ν’(x,y,z)、遅延時間τ(x,y,z)、緩和時間τ’(x,y,z)、密度ρ(x,y,z)等を計測する(S31)。そして、所定の治療部位に設定した全ての点について、所望の治療効果が得られたか否かを判断する(S32)。治療効果が得られていない場合は、治療効果が得られるまで、さらに冷却を行なって、ずり弾性率分布μ(x,y,z)、ポアソン比ν(x,y,z)、粘ずり弾性率分布μ’(x,y,z)、粘ポアソン比ν’(x,y,z)、遅延時間τ(x,y,z)、緩和時間τ’(x,y,z)、密度ρ(x,y,z)等を計測する(S30〜S32)。所定の治療部位に設定した全ての点について所望の治療効果が得られた場合は、治療を終了するか否か判断する(S33)。治療を終了しない場合は、治療処理回数カウンタIをインクリメントして、所定の照射回数の治療が終了するまで、S23〜S33を繰返し、全ての病変部の治療が終了した場合は、処理を終了する。なお、照射位置は、病変の深部や腫瘍辺縁部から順に設定するのではなく、照射位値の治療効果を確認した上で、治療の照射位置を変えていくこともある。
上述したように、図27に示す実施の形態の治療装置によれば、超音波による治療を施しながら、その治療効果をリアルタイムで観察することができ、的確な治療を行なうことができる。また、治療効果を確認しながら、超音波強度およびその照射回数等を調整することができる。
なお、図27の治療装置は、超音波照射による治療を例に説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、レーザ照射、電磁RF波照射、電磁マイクロ波の照射、冷凍(冷却)による治療にも適用できる。この場合は、治療用振動子11、治療パルス発生回路21、治療波遅延回路22および増幅器23に代えて、レーザ照射手段等の低侵襲治療手段を設ければ良い。
また、超音波探触子12としては、例えば、2次元アレイ型開口、1次元アレイ型開口、2次元アレイ型開口アプリケータ、1次元アレイ型開口アプリケータ、又は凹面開口アプリケータ等を使用することができる。そして、例えば、生物又は採取組織を対象とする場合は経皮、経口、経膣、経肛門、経各種内視鏡、開体などの経物体表面から、放射線治療(強力超音波照射、レーザ照射、電磁RF波照射、電磁マイクロ波の照射等)を実施した際や、冷凍(冷却)治療を実施した際の、組織変性、組成成分重量分率の変化、及び温度変化をモニタリングできる。その際に、計測されたずり弾性率値、ポアソン比値、粘ずり弾性率値、粘ポアソン比値、電気インピーダンス値(導電率値と誘電率値)、熱物性値(熱伝導率値、熱拡散率値、熱伝達率値、特願2002−376130「熱物性推定方法及び装置」により、測定された温度分布(時系列)データからこれらの熱物性値分布(時系列)の計測が可能)、遅延時間値、緩和時間値、密度値等を含めて、その治療実施間隔、照射パワー強度、照射時間、照射間隔、照射位置(焦点)、照射形状(アポダイゼ−ション)などをダイナミック制御するための指標として用いることができる。
また、その際に、治療前、治療間、治療後において、治療の制御を行うべく計測される弾性率分布や粘弾性率分布や密度分布をモニタ39に画像表示するだけでなく、本発明の各実施形態により計測される変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布、歪速度テンソル成分分布、歪速度テンソル成分の勾配分布、加速度ベクトル成分の分布、速度ベクトル成分の分布等の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)の画像等、各分布の任意の位置における値、および、各分布の任意の位置における値の経時的変化(グラフ)をモニタ39に表示しても良い。
さらに、超音波画像診断装置との併用により、体積弾性率および密度の空間的変化そのもののリアルタイム測定および画像化も可能として、体積弾性率および密度の空間的変化そのものの画像に、計測結果として、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布、歪速度テンソル成分分布、歪速度テンソル成分の勾配分布、加速度ベクトル成分の分布、速度ベクトル成分の分布、弾性率分布、粘弾性率分布、密度分布等の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)等を重畳表示しても良い。
特に、アプリケータがアレイ型開口を有する場合はこれらはディジタル電子制御され、アプリケータが凹面開口を有する場合は、照射形状は固定となることがあり、その場合には、照射位置は機械制御のみ行われることになる。高い照射空間分解能が必要であることは述べるまでもなく、その際の制御プログラムは、例えば図28に示したフローチャートを適用できる。つまり、照射前、照射間、照射後に計測された絶対的又は相対的なずり弾性率分布、絶対的又は相対的なポアソン比分布、絶対的又は相対的な粘ずり弾性率分布、絶対的又は相対的な粘ポアソン比分布、絶対的又は相対的な熱物性値分布(熱伝導率分布や熱拡散率分布や熱伝達率分布)、絶対的又は相対的な遅延時間分布や緩和時間分布、絶対的又は相対的な密度分布等、又は、これらの弾性率や粘弾性率、熱物性値、遅延時間、緩和時間、密度の経時的絶対変化や経時的相対的変化等を、その照射パワー強度、照射間隔、照射(焦点)位置などをダイナミックに制御するための指標として使用できる。
また、以上説明した変位ベクトル分布、歪テンソル分布等の計測技術、及び、弾性率・粘弾性率、導電率・誘電率、熱伝導率・熱拡散率・熱伝達率と密度等の計測技術は、穿刺針やカテーテルなどの侵襲デバイスを使用して、強力超音波照射、レーザ照射、電磁RF波照射、電磁マイクロ波照射、冷凍(冷却)をする治療の場合や、生物や物体・物質・材料(生成時および成長時を含む)を対象とした非破壊検査にも適用できる。
例えば、穿刺型放射線治療「強力超音波照射、レーザ照射、電磁RF波照射(不感電極も針電極のものもある)、電磁マイクロ波照射(不感電極も針電極のもの、モノポールのものもある)」や穿刺型冷凍(冷却)治療などによる生体組織の治療効果(温度変化を含む)のモニタリングに使用する場合も、治療前、治療間、治療後において治療の制御を行うべく計測される弾性率分布や粘弾性率分布や導電率や誘電率や熱伝導率や熱拡散率や熱伝達率や密度を計測して画像表示するだけでなく、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布、歪速度テンソル成分分布、歪速度テンソル成分の勾配分布、加速度ベクトル成分の分布、速度ベクトル成分の分布等の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)の画像等、各分布の任意の位置における値、および、各分布の任意の位置における値の経時的変化(グラフ)をモニタに表示しても良く、また、超音波画像診断装置との併用により、体積弾性率および密度の空間的変化そのもののリアルタイム測定および画像化も可能として、体積弾性率および密度の空間的変化そのものの画像に、計測結果として、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布、歪速度テンソル成分分布、歪速度テンソル成分の勾配分布、加速度ベクトル成分の分布、速度ベクトル成分の分布、弾性率分布、粘弾性率分布、密度分布等の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)等を重畳表示しても良い。変位ベクトル分布や加速度ベクトル分布や速度ベクトルに関してはベクトル線図にて表示しても良い。
また、治療を施す場合において、安全性を確保すべく、基本的には必要以上に組織ずり弾性率、ポアソン比、粘ずり弾性率、粘ポアソン比、遅延時間、緩和時間、密度等が変化しないように、ずり弾性率、ポアソン比、粘ずり弾性率、粘ポアソン比、電気インピーダンス(導電率や誘電率)、熱物性値(熱伝導率や熱拡散率や熱伝達率)、遅延時間、緩和時間、密度の各々に関する上限及び下限値やこれらの弾性率や粘弾性率、遅延時間や緩和時間、密度の絶対的変化又は相対的変化に関する上限値を設定し、照射パワー強度、照射時間、照射間隔、照射位置、照射形状等の制御を行うことが好ましい。
また、上記の通り、照射前、照射間、照射後に計測される歪(テンソル)分布、歪速度(テンソル)分布、ずり弾性率分布、ポアソン比分布、粘ずり弾性率分布、粘ポアソン比分布、電気インピーダンス(導電率や誘電率)分布、熱物性値(熱伝導率や熱拡散率や熱伝達率)分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布等やこれらの経時的変化より、温度や温度の経時的変化が検出され、治療効果が評価されることもある。この場合には、安全性を確保すべく、基本的には必要以上に温度が上昇しないように、温度や温度変化に関する上限値を設定し、照射パワー、照射強度、照射時間、照射間隔、照射位置、照射形状等の制御を行うことが好ましい。その際には、これらの上限値をずり弾性率値μ、ポアソン比値ν、粘ずり弾性率値、粘ポアソン比値、密度値、遅延時間値、緩和時間値、歪値e、歪速度値等に換算した上で制御することも可能である。温度や温度変化は、従来の温度モニタリング法や熱電対などを同時に用いて計測されることもある。
また、力源が存在しない場合や積極的に力源を使用せずとも、照射前、照射間、照射後に計測される歪(テンソル)分布、歪速度(テンソル)分布、ずり弾性率分布、ポアソン比分布、粘ずり弾性率分布、粘ポアソン比分布、遅延時間分布、緩和時間分布、密度分布等やこれらの経時的変化より、組織変性、組成成分重量分率の変化、温度変化を検出できる。また、歪(テンソル)分布や歪速度(テンソル)分布を計測した時点において、この変化に伴う膨張、縮退などを直接的に検出することが可能である。
また、本発明の弾性率・粘弾性率計測装置は、薬品の注入、塗布、投与による温度変化や組織変性や組成成分重量分率の変化のモニタリングに使用することができる。この場合には、実施前、実施中、実施後に、計測される歪分布、歪速度分布、絶対的又は相対的なずり弾性率分布、絶対的又は相対的なポアソン比分布、絶対的又は相対的な粘ずり弾性率分布、絶対的又は相対的な粘ポアソン比分布、絶対的又は相対的な熱伝導率分布、絶対的又は相対的な熱拡散率分布、絶対的又は相対的な熱伝達率分布、絶対的又は相対的な遅延時間分布や緩和時間分布、絶対的又は相対的な密度分布等、又はこれらの経時的絶対変化や経時的相対的変化等を、その薬品の量、実施時間、実施間隔、実施位置を決めるための指標として使用することができる。このような薬品の例としては、抗癌剤がある。
即ち、抗癌剤投与による生体組織の治療効果(温度変化を含む)のモニタリングに使用し、治療の制御を行うべく治療前・治療間、治療後に計測される弾性率分布や粘弾性率分布や熱伝導率分布や熱拡散率分布や熱伝達率分布や密度分布を計測して画像表示するだけでなく、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布、歪速度テンソル成分分布、歪速度テンソル成分の勾配分布、加速度ベクトル成分の分布、速度ベクトル成分の分布等の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)の画像等、各分布の任意の位置における値、および、各分布の任意の位置における値の経時的変化(グラフ)をモニタに表示する、また、超音波画像診断装置との併用により、体積弾性率および密度の空間的変化そのもののリアルタイム測定および画像化も可能として、体積弾性率および密度の空間的変化そのものの画像に、計測結果として、変位ベクトル分布、変位ベクトル成分分布、歪テンソル成分分布、歪テンソル成分の勾配分布、歪速度テンソル成分分布、歪速度テンソル成分の勾配分布、加速度ベクトル成分の分布、速度ベクトル成分の分布、弾性率分布、粘弾性率分布、密度分布等の静止画像、動画像、各分布の経時的変化(差分値)等を重畳表示することもある。変位ベクトル分布や加速度ベクトル分布や速度ベクトルに関してはベクトル線図にて表示することもある。尚、これらの治療効果のモニタリングにおいて、特に、力源が存在しない、あるいは、力源を積極的に使用しない場合には、変位ベクトルおよび歪テンソルおよび歪速度テンソル等を計測することにより治療そのものによる組織の変性、組織の膨張・収縮(縮退)、組織の温度変化などの検出にも応用できる。
上記の診断・治療を行うための弾性率や粘弾性率や密度等や電気インピーダンスや熱物性値やこれらにより表される高次データの計測は、組織の非線形特性を捉えるべく、非線形現象を微少時間内や微小空間内の線形近似を行った場合に適用でき、これより評価される非線形弾性率データや非線形粘弾性率データやこれらにより表される高次データが同様に診断・治療に使用されることがある。
以上において、温度分布測定/計測方法として、公知の超音波伝播速度の時間変化の検出に基づく方法と、また、弾性率値や電気インピーダンスや熱物性値及びこれら各々の高次データの時間変化の検出に基づく方法などを述べたが、治療の効率性と安全性を追求して(弾性率と同様に温度の閾値を設ける)、前に参照した特願2002−376130「熱物性推定方法及び装置」に基いて測定された温度分布(時系列)データからこれらの熱物性値分布(時系列)を計測し、これと組織の受熱特性に関する知見(各エネルギーのインピーダンス等)に基いて各時刻において予測される消費電力量から、そのエネルギーの印加により生じる温度分布を予測する(初期値境界値問題を解く)ことにより、加熱パターン(加熱位置、加熱強度、加熱形状)を逐次計画/更新する治療を実施することも可能である。また、前述の通り、弾性率も制御指標として併用されることがある。