JP4720281B2 - 車両の制動制御装置 - Google Patents
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Description
ところで、上記のように定めた定常的な到達目標ブレーキ液圧に実ブレーキ液圧が一致するような制動制御を行うと、急峻すぎる制動制御により実ブレーキ液圧が一時的に到達目標ブレーキ液圧を超えてしまう制御のオーバーシュートを生じ、一時的に制動力が目標に対して過大になる不具合を生じる。
上記フィルタ特性を或る程度以上に強くすることで、実ブレーキ液圧Pwが破線で示す経時変化傾向を持ったものとなり、ハッチングを付して示すオーバーシュートをなくすことができる。
かといって、制動制御の応答性を要求通りのものにするため上記フィルタ特性を弱くすると、実ブレーキ液圧Pwが二点鎖線や一点鎖線で示す経時変化傾向を持ったものとなり、実ブレーキ液圧Pwが速やかに過渡目標ブレーキ液圧tPwに達するものの、実ブレーキ液圧Pwがハッチングを付して示すごとく一時的に過渡目標ブレーキ液圧tPwを超えるオーバーシュートを発生する。
このロック傾向が前輪に発生すると、前輪の路面グリップ力が低下することにより車両前部が旋回方向外側に変位する傾向になる結果、運転者の操舵状態に応じた車両がトレースすべき旋回軌跡に対し車両がアンダーステア傾向となる。
逆にロック傾向が後輪に発生すると、後輪の路面グリップ力が低下することにより車両後部が旋回方向外側に変位する傾向になる結果、運転者の操舵状態に応じた車両がトレースすべき旋回軌跡に対し車両がオーバーステア傾向となる。
先ず前提となる制動装置について説明するに、これは、
定常的な到達目標ブレーキ液圧に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるようなフィルタ処理を施して求めた過渡目標ブレーキ液圧と、実ブレーキ液圧との間におけるブレーキ液圧偏差に基づいて車輪のブレーキ液圧を制御する車両の制動制御装置において、
運転者による車両の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、
前記操舵状態検出手段による車両の操舵状態に基づいて車両の旋回度合を検出する旋回度合検出手段とを具備するものである。
車両の旋回度合がオーバーステア傾向を示す時は、オーバーステア傾向を示さない時よりも旋回方向内側輪に係わる前記フィルタ特性を強くし、車両の旋回度合がアンダーステア傾向を示す時は、アンダーステア傾向を示さない時よりも旋回方向外側輪に係わる前記フィルタ特性を強くするような構成を施す。
車両の旋回度合がアンダーステア傾向を示す時は、アンダーステア傾向を示さない時よりも旋回方向外側輪に係わる前記フィルタ特性を強くし、車両の旋回度合がアンダーステア傾向を示す時は、アンダーステア傾向を示さない時よりも前輪に係わる前記フィルタ特性を強くする。
オーバーシュート傾向の抑制程度が、車両の旋回度合、つまり、車両旋回制動時の好ましくない旋回挙動(オーバーステア傾向、アンダーステア傾向)の発生状況に応じたものとなり、
不必要なオーバーシュートの抑制による制動応答性の犠牲なしに、好ましくない車両旋回挙動の発生を防止することができる。
車両旋回度合が強い時ほど、フィルタ特性が強くなってオーバーシュート傾向が確実に抑制されることとなり、オーバーシュート傾向の抑制程度が、車両の旋回度合、つまり、車両旋回制動時の好ましくない旋回挙動(オーバーステア傾向、アンダーステア傾向)の発生状況に応じたものとなり、
不必要なオーバーシュートの抑制による制動応答性の犠牲なしに、好ましくない車両旋回挙動の発生を防止することができる。
実際の車両減速度が要求に対して不足側へずれるという問題を生ずることなく上記の作用効果を達成することができる。
図1は、本発明のー実施例になる制動制御装置を具えた液圧ブレーキシステム図で、1は、運転者が希望する車両の制動力に応じて踏み込むブレーキペダルで、該ブレーキペダル1の踏力でマスターシリンダ2の図示せざるピストンカップが押し込まれることにより、マスターシリンダ2はブレーキペダル1の踏力に応じたマスターシリンダ液圧Pmを2系統の前輪ブレーキ液圧配管3,4に等しく出力するものとする。
マスターカット弁6FL,6FRがONにより閉じている間は、これらより上流におけるブレーキ液圧配管3,4内にマスターシリンダ液圧Pmが発生しても、ブレーキペダル1のストロークが発生しないため違和感になることから、通常のペダルストロークを発生させるためのストロークシミュレータ7をマスターシリンダ2に接続して設ける。
このポンプ8はモータ10により駆動され、リザーバ2aから回路9を経て吸入したブレーキ液を回路11に吐出し、この吐出したブレーキ液をアキュムレータ12内に蓄圧する。
アキュムレータ12の内圧を、圧力スイッチ13により検出してシーケンス制御する。
そして、回路14FLに増圧弁15FLを挿置し、回路14FRに増圧弁15FRを挿置し、回路14RLに増圧弁15RLを挿置し、回路14RRに増圧弁15RRを挿置する。
これら増圧弁15FL, 15FR, 15RL, 15RRから、対応するホイールシリンダ5FL, 5FR, 5RL, 5RRに至る回路14FL, 14FR, 14RL, 14RRの部分にそれぞれ、回路16FL, 16FR, 16RL, 16RRを接続し、これらをリザーバ2aへの共通な戻り回路17に接続する。
そして、回路16FL, 16FR, 16RL, 16RRにそれぞれ、減圧弁18FL, 18FR, 18RL, 18RRを挿置する。
制御に当たっては、増圧弁15FL, 15FR, 15RL, 15RRへの供給電流を増大することで、吐出回路11との連通度の増大により対応するブレーキ液圧Pwfl,Pwfr,Pwrl,Pwrrを電子制御下に上昇させることができ、
減圧弁18FL, 18FR, 18RL, 18RRへの供給電流を増大することで、戻り回路17との連通度の増大により対応するブレーキ液圧Pwfl,Pwfr,Pwrl,Pwrrを電子制御下に低下させることができる。
これがためマイクロコンピュータ30には、前記した圧力センサ12,21からの信号と、圧力センサ22FL, 22FR, 22RL, 22RRからの信号とを入力するほか、ステアリングホイールの操舵角θを検出する操舵角センサ23からの信号と、車両の横加速度θを検出する横加速度センサ24からの信号と、車両のヨーレートφを検出するヨーレートセンサ25からの信号とを入力する。
マイクロコンピュータ30は、マスターシリンダ液圧Pmの発生を検知するとき、駆動回路31を介してマスターカット弁6FL,6FRをONにより閉じた状態で、増圧弁15FL, 15FR, 15RL, 15RR、および、減圧弁18FL, 18FR, 18RL, 18RRの通電制御により、対応車輪のブレーキ液圧Pwfl,Pwfr,Pwrl,Pwrr(圧力センサ22FL, 22FR, 22RL, 22RRの検出値)が個々に目標値となるよう電子制御する。
図4は、定時割り込みにより繰り返し実行され、ステップS0において各種センサ信号の読み込みを行う。
ステップS1(図3の目標減速度演算部32)においては、マスターシリンダ液圧Pmと、予めROMに記憶しておく車両諸元に応じた定数K1とを用いて、両者の乗算により車両の目標減速度を算出する。
ステップS3〜ステップS6(図3のブレーキ押し付け力演算部34FR,34FL,34RR,34RL)においては、対応車輪が上記のように配分して求めた個々の目標制動力を発生するための目標ブレーキ押し付け力を算出する。
ステップS7〜ステップS10(図3のブレーキ液圧制御部35FR,35FL,35RR,35RL)においては、対応車輪のホイールシリンダ5FR,5FL,5RR,5RLが上記のように求めた個々の目標ブレーキ押し付け力を発生するようこれらホイールシリンダへのブレーキ液圧Pwfr,Pwfl,Pwrr,Pwrlを制御し、各車輪が前記のごとく配分して求めた個々の目標制動力を発生するようになす。
図5は、図3のブロック35FRおよび図4のステップS7で行うべき右前輪ホイールシリンダ5FRのブレーキ液圧制御を示し、
ステップS11においては、現在の右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧前回値Pwfr(OLD)に代入した後、右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧センサ値Pwfrにより更新する、信号の読み込みを行う。
ステップS13においては、上記のごとく更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるような所定のフィルタ処理(例えば図18に破線で示すブレーキ液圧変化を生じさせるようなフィルタ特性とする)を施して右前輪の過渡目標ブレーキ液圧tPwfroを演算する。
旋回走行中ならステップS15において、同じく別に設定する旋回内輪フラグfCurveInsideが1か否かにより、右前輪が旋回方向内側輪となる旋回方向か否かをチェックする。
右前輪が旋回方向内側輪であれば、旋回度合検出手段に相当するステップS16において、操舵角θと、車速VSPと、旋回半径演算係数K2とを用いた次式により車両の旋回半径rrを求める。
rr=θ×VSP×K2
tPwfro=(1-αf)×tPwfr(NOW)+αf×tPwfro
フィルタ係数αfが大きい(フィルタ特性が強い)ほど、ステップS13でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、フィルタ係数αfが小さい(フィルタ特性が弱い)ほど、ステップS12で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってステップS17は、本発明におけるフィルタ特性変更手段に相当する。
ステップS17で更新した右前輪(旋回内輪)過渡目標ブレーキ液圧tPwfroは、旋回度合が強い(急旋回)ほど、ステップS13でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、旋回度合が弱いほど、ステップS12で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
これと、比例制御のフィードバックゲインGpと、ステップS17で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroと、この右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに実ブレーキ液圧Pwfrを一致させる時の定常制御ゲインK3とを用いて、
実ブレーキ液圧Pwfrを、ステップS17で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させるのに必要な右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへの制御電流Isolを以下により決定する。
Isol=ΔPwfr×Gp+tPwfro×K3
ステップS18では、上記のごとくに決定した制御電流Isolを右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給し、これにより、実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させることができる。
この場合、次のステップS17において図6のマップを基に求める、車両旋回半径rr=rr(max)に対応したフィルタ係数αfが最低値(0.1)であることから、同ステップS17で更新する右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroが、フィルタ係数αf=最低値(0.1)に呼応して、ステップS12で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってこの場合、ステップS18で求めた制御電流Isolが右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給されて実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させる時、実ブレーキ液圧Pwfrが、ステップS12で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近い経時変化をもって制御されることになる。
ところで、旋回方向内側前輪は旋回方向外側前輪よりも遠心力により車輪荷重を低くされることから、旋回方向内側前輪のブレーキ液圧が到達目標ブレーキ液圧を超えるオーバーシュート傾向になると、当該旋回方向内側前輪が当該オーバーシュートによる制動ロックを生じやすくなるが、
本実施例のようにフィルタ特性を旋回方向内外輪で異ならせて、旋回方向内側前輪のブレーキ液圧を旋回方向外側前輪のブレーキ液圧よりも緩やかに到達目標ブレーキ液圧に到達させる場合、上記のオーバーシュートが生ずるのを抑制し得て旋回方向内側前輪が当該オーバーシュートにより制動ロックを生じやすくなるのを抑制することができ、旋回方向内側前輪の制動ロックによるアンダーステア傾向を抑制して車両の旋回制動挙動を安定させることができる。
旋回度合が強いほど旋回方向内側前輪の車輪荷重が低下して当該オーバーシュートによる制動ロックを生じやすくなるのに上記フィルタ特性の設定が良く符合し、旋回方向内側前輪に係わるフィルタ特性を強くし過ぎることがなく、フィルタ特性を強くし過ぎることによる(不必要なオーバーシュートの抑制による)制動応答性の犠牲なしに、車両の旋回制動挙動を安定させるという前記の作用効果を達成することができる。
図7は、図3のブロック35RRおよび図4のステップS9で行うべき右後輪ホイールシリンダ5RRのブレーキ液圧制御を示し、
ステップS21においては、現在の右後輪ブレーキ液圧今回値Pwrr(NOW)を右後輪ブレーキ液圧前回値Pwrr(OLD)に代入した後、右後輪ブレーキ液圧今回値Pwrr(NOW)を右後輪ブレーキ液圧センサ値Pwrrにより更新する、信号の読み込みを行う。
ステップS23においては、上記のごとく更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるような所定のフィルタ処理(例えば図18に破線で示すブレーキ液圧変化を生じさせるようなフィルタ特性とする)を施して右後輪の過渡目標ブレーキ液圧tPwrroを演算する。
旋回走行中ならステップS26において、図5のステップS16におけると同様に、操舵角θと、車速VSPと、旋回半径演算係数K2とを用いて、車両の旋回半径rr=θ×VSP×K2を演算する。
tPwrro=(1-αf)×tPwrr(NOW)+αf×tPwrro
フィルタ係数αfが大きい(フィルタ特性が強い)ほど、ステップS23でのフィルタ処理により求めた右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに近いものとなり、フィルタ係数αfが小さい(フィルタ特性が弱い)ほど、ステップS22で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に近いものとなる。
ステップS27で更新した右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroは、旋回度合が強い(急旋回)ほど、ステップS23でのフィルタ処理により求めた右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに近いものとなり、旋回度合が弱いほど、ステップS22で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に近いものとなる。
これと、比例制御のフィードバックゲインGpと、ステップS27で更新した右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroと、この右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに実ブレーキ液圧Pwrrを一致させる時の定常制御ゲインK3とを用いて、
実ブレーキ液圧Pwrrを、ステップS27で更新した右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに追従させるのに必要な右後輪に係わる増減圧弁14RR,18RRへの制御電流Isolを以下により決定する。
Isol=ΔPwrr×Gp+tPwrro×K3
ステップS28では、上記のごとくに決定した制御電流Isolを右後輪に係わる増減圧弁14RR,18RRへ供給し、これにより、実ブレーキ液圧Pwrrを右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに追従させることができる。
この場合、次のステップS27において図6のマップを基に求める、車両旋回半径rr=rr(max)に対応したフィルタ係数αfが最低値(0.1)であることから、同ステップS27で更新する右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroが、フィルタ係数αf=最低値(0.1)に呼応して、ステップS22で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に近いものとなる。
従ってこの場合、ステップS28で求めた制御電流Isolが右後輪に係わる増減圧弁14RR,18RRへ供給されて実ブレーキ液圧Pwrrを右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに追従させる時、実ブレーキ液圧Pwrrが、ステップS22で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に近い経時変化をもって制御されることになる。
従って、旋回走行中に左右後輪のブレーキ液圧が到達目標ブレーキ液圧を超えるオーバーシュートを抑制することができ、
かかるオーバーシュートの抑制を行わないと、左右後輪の路面横方向グリップ余力が低下することによりオーバーステア傾向になるところながら、かかる好ましくない車両のステア特性を抑制して車両の旋回制動挙動を安定させることができる。
旋回度合が強いほど左右後輪が当該オーバーシュートによる制動ロックを生じやすくなるのに上記フィルタ特性の設定が良く符合し、左右後輪に係わるフィルタ特性を強くし過ぎることがなく、フィルタ特性を強くし過ぎることによる(不必要なオーバーシュートの抑制による)制動応答性の犠牲なしに、車両の旋回制動挙動を安定させるという前記の作用効果を達成することができる。
従って、旋回走行中に左右前輪のブレーキ液圧が到達目標ブレーキ液圧を超えるオーバーシュートを抑制することができ、
かかるオーバーシュートの抑制を行わないと、左右前輪の路面横方向グリップ余力が低下することによりアンダーステア傾向になるところながら、かかる好ましくない車両のステア特性を抑制して車両の旋回制動挙動を安定させることができる。
ステップS21〜ステップS26、およびステップS28においては、図7に同一符号で示すステップにおけると同様の処理を行う。
このステップS37においては、図9に例示した予定のフィルタ係数αrに関するマップを基に、車両旋回半径rrからフィルタ係数αr(1未満の正の値)を検索し、これと、ステップS22で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)と、ステップS23で求めた右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroとから、次式の演算により、右後輪の過渡目標ブレーキ液圧tPwrroを更新する。
tPwrro=(1-αr)×tPwrr(NOW)+αr×tPwrro
ところで、上記の後輪用のフィルタ係数αrが図9に示すように、図6におけるフィルタ係数αf(本実施例では前輪用のフィルタ係数)よりも総じて大きいことから、左右後輪ブレーキ液圧制御のフィルタ特性を左右前輪ブレーキ液圧制御のフィルタ特性よりも強くすることとなり、左右後輪のブレーキ液圧を左右前輪のブレーキ液圧よりも緩やかに到達目標ブレーキ液圧に到達させることができる。
制動時は車輪荷重が前方に移動して後輪荷重が低下し、上記のオーバーシュートによる制動ロックが前輪よりも後輪において生じやすくなる結果、オーバーステア傾向になるところながら、
左右後輪のオーバーシュート抑制作用を左右前輪のオーバーシュート抑制作用よりも高くすることで当該オーバーステア傾向を抑制可能であり、車両の旋回制動挙動を安定させることができる。
ステップS41においては、図5のステップS11におけると同様に、現在の右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧前回値Pwfr(OLD)に代入した後、右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧センサ値Pwfrにより更新する。
ステップS43においては、図5のステップS13におけると同様に、上記のごとく更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるような所定のフィルタ処理(例えば図18に破線で示すブレーキ液圧変化を生じさせるようなフィルタ特性とする)を施して右前輪の過渡目標ブレーキ液圧tPwfroを演算する。
従ってステップS44は、本発明における操舵状態検出手段に相当する。
ここで、上記目標ヨーレートtφと、旋回度合検出手段に相当するセンサ25(図1参照)により検出した実ヨーレートφとの間におけるヨーレート偏差Δφ=tφ−φ(従ってΔφは、オーバーステア度合を表す)を求め、このヨーレート偏差(オーバーステア度合)Δφがオーバーステア判定用の負の設定値D未満か否かにより、オーバーステア傾向か否かを判定する。
tPwfro=(1-αyo)×tPwfr(NOW)+αyo×tPwfro
フィルタ係数αyoが大きい(フィルタ特性が強い)ほど、ステップS43でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、フィルタ係数αyoが小さい(フィルタ特性が弱い)ほど、ステップS42で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってステップS47は、本発明におけるフィルタ特性変更手段に相当する。
ステップS47で更新した右前輪(旋回内輪)過渡目標ブレーキ液圧tPwfroは、オーバーステア度合Δφの絶対値が大きい(オーバーステア傾向が強い)ほど、ステップS43でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、オーバーステア度合Δφの絶対値が小さい(オーバーステア傾向が弱い)ほど、ステップS42で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
これと、比例制御のフィードバックゲインGpと、ステップS47で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroと、この右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに実ブレーキ液圧Pwfrを一致させる時の定常制御ゲインK3とを用いて、
実ブレーキ液圧Pwfrを、ステップS47で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させるのに必要な右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへの制御電流Isolを以下により決定する。
Isol=ΔPwfr×Gp+tPwfro×K3
ステップS48では、上記のごとくに決定した制御電流Isolを右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給し、これにより、実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させることができる。
この場合、次のステップS47において図11のマップを基に求める、オーバーステア度合Δφ=0に対応したフィルタ係数αyoが最低値(0.1)であることから、同ステップS47で更新する右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroが、フィルタ係数αyo=最低値(0.1)に呼応して、ステップS42で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってこの場合、ステップS48で求めた制御電流Isolが右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給されて実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させる時、実ブレーキ液圧Pwfrが、ステップS42で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近い経時変化をもって制御されることになる。
従って、オーバーステア傾向時に旋回方向内側前輪のブレーキ液圧が到達目標ブレーキ液圧を超えるオーバーシュートを抑制することができ、旋回方向内側前輪が車輪荷重の低下によっても制動ロックすることがないと共に、オーバーステア傾向時は旋回方向内側前輪のブレーキ液圧が過渡的に旋回方向外側前輪のブレーキ液圧よりも低くなることにより、旋回方向内側前輪の制動力を過渡的に旋回方向外側前輪の制動力よりも小さくし得て、内外輪制動力差によりオーバーステア傾向を抑制することができる。
上記オーバーステア傾向の抑制に必要な分だけ旋回方向内側前輪に係わるフィルタ特性が強くされることとなり、旋回方向内側前輪に係わるフィルタ特性を強くし過ぎることがなく、フィルタ特性を強くし過ぎることによる(不必要なオーバーシュートの抑制による)制動応答性の犠牲なしに、オーバーステア傾向を抑制して車両の旋回制動挙動を安定させるという前記の作用効果を達成することができる。
ステップS51においては、図5のステップS11におけると同様に、現在の右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧前回値Pwfr(OLD)に代入した後、右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧センサ値Pwfrにより更新する。
ステップS53においては、図5のステップS13におけると同様に、上記のごとく更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるような所定のフィルタ処理(例えば図18に破線で示すブレーキ液圧変化を生じさせるようなフィルタ特性とする)を施して右前輪の過渡目標ブレーキ液圧tPwfroを演算する。
従ってステップS54は、本発明における操舵状態検出手段に相当する。
ここで、上記目標ヨーレートtφと、旋回度合検出手段に相当するセンサ25(図1参照)により検出した実ヨーレートφとの間におけるヨーレート偏差Δφ=tφ−φ(従ってΔφは、アンダーステア度合を表す)を求め、このヨーレート偏差(アンダーステア度合)Δφがアンダーステア判定用の正の設定値E以上か否かにより、アンダーステア傾向か否かを判定する。
tPwfro=(1-αyu)×tPwfr(NOW)+αyu×tPwfro
フィルタ係数αyuが大きい(フィルタ特性が強い)ほど、ステップS53でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、フィルタ係数αyuが小さい(フィルタ特性が弱い)ほど、ステップS52で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってステップS57は、本発明におけるフィルタ特性変更手段に相当する。
ステップS57で更新した右前輪(旋回内輪)過渡目標ブレーキ液圧tPwfroは、アンダーステア度合Δφが大きい(アンダーステア傾向が強い)ほど、ステップS53でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、アンダーステア度合Δφが小さい(アンダーステア傾向が弱い)ほど、ステップS52で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
これと、比例制御のフィードバックゲインGpと、ステップS57で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroと、この右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに実ブレーキ液圧Pwfrを一致させる時の定常制御ゲインK3とを用いて、
実ブレーキ液圧Pwfrを、ステップS57で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させるのに必要な右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへの制御電流Isolを以下により決定する。
Isol=ΔPwfr×Gp+tPwfro×K3
ステップS58では、上記のごとくに決定した制御電流Isolを右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給し、これにより、実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させることができる。
この場合、次のステップS57において図13のマップを基に求める、アンダーステア度合Δφ=0に対応したフィルタ係数αyuが最低値(0.1)であることから、同ステップS57で更新する右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroが、フィルタ係数αyu=最低値(0.1)に呼応して、ステップS52で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってこの場合、ステップS58で求めた制御電流Isolが右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給されて実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させる時、実ブレーキ液圧Pwfrが、ステップS52で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近い経時変化をもって制御されることになる。
従って、アンダーステア傾向時に旋回方向外側前輪のブレーキ液圧が到達目標ブレーキ液圧を超えるオーバーシュートを抑制することができ、旋回方向外側前輪が制動ロックすることがないと共に、アンダーステア傾向時は旋回方向外側前輪のブレーキ液圧が過渡的に旋回方向内側前輪のブレーキ液圧よりも低くなることにより、旋回方向外側前輪の制動力を過渡的に旋回方向内側前輪の制動力よりも小さくし得て、内外輪制動力差によりアンダーステア傾向を抑制することができる。
上記アンダーステア傾向の抑制に必要な分だけ旋回方向外側前輪に係わるフィルタ特性が強くされることとなり、旋回方向外側前輪に係わるフィルタ特性を強くし過ぎることがなく、フィルタ特性を強くし過ぎることによる(不必要なオーバーシュートの抑制による)制動応答性の犠牲なしに、アンダーステア傾向を抑制して車両の旋回制動挙動を安定させるという前記の作用効果を達成することができる。
ステップS61においては、図7のステップS21におけると同様に、現在の右後輪ブレーキ液圧今回値Pwrr(NOW)を右後輪ブレーキ液圧前回値Pwrr(OLD)に代入した後、右後輪ブレーキ液圧今回値Pwrr(NOW)を右後輪ブレーキ液圧センサ値Pwrrにより更新する。
従ってステップS64は、本発明における操舵状態検出手段に相当する。
つまり、右旋回時に選択されるステップS65では、上記目標ヨーレートtφと、旋回度合検出手段に相当するセンサ25(図1参照)により検出した実ヨーレートφとの間におけるヨーレート偏差Δφ=tφ−φ(従ってΔφは、オーバーステア度合を表す)を求め、このヨーレート偏差(オーバーステア度合)Δφがオーバーステア判定用の負の設定値D未満か否かにより、オーバーステア傾向か否かを判定する。
また、左旋回時に選択されるステップS66では、上記目標ヨーレートtφおよび実ヨーレートφとの間におけるヨーレート偏差(オーバーステア度合)Δφ=tφ−φを求め、このヨーレート偏差(オーバーステア度合)Δφがオーバーステア判定用の正の設定値F以上か否かにより、オーバーステア傾向か否かを判定する。
tPwrro=(1-αyo)×tPwrr(NOW)+αyo×tPwrro
フィルタ係数αyoが大きい(フィルタ特性が強い)ほど、ステップS63でのフィルタ処理により求めた右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに近いものとなり、フィルタ係数αyoが小さい(フィルタ特性が弱い)ほど、ステップS62で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に近いものとなる。
従ってステップS67は、本発明におけるフィルタ特性変更手段に相当する。
ステップS67で更新した右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroは、オーバーステア度合Δφの絶対値が大きい(オーバーステア傾向が強い)ほど、ステップS63でのフィルタ処理により求めた右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに近いものとなり、オーバーステア度合Δφの絶対値が小さい(オーバーステア傾向が弱い)ほど、ステップS62で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に近いものとなる。
これと、比例制御のフィードバックゲインGpと、ステップS67で更新した右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroと、この右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに実ブレーキ液圧Pwrrを一致させる時の定常制御ゲインK3とを用いて、
実ブレーキ液圧Pwrrを、ステップS67で更新した右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに追従させるのに必要な右後輪に係わる増減圧弁14RR,18RRへの制御電流Isolを以下により決定する。
Isol=ΔPwrr×Gp+tPwrro×K3
ステップS68では、上記のごとくに決定した制御電流Isolを右後輪に係わる増減圧弁14RR,18RRへ供給し、これにより、実ブレーキ液圧Pwrrを右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに追従させることができる。
この場合、次のステップS67において図11のマップを基に求める、オーバーステア度合Δφ=0に対応したフィルタ係数αyoが最低値(0.1)であることから、同ステップS67で更新する右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroが、フィルタ係数αyo=最低値(0.1)に呼応して、ステップS62で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に近いものとなる。
従ってこの場合、ステップS68で求めた制御電流Isolが右後輪に係わる増減圧弁14RR,18RRへ供給されて実ブレーキ液圧Pwrrを右後輪過渡目標ブレーキ液圧tPwrroに追従させる時、実ブレーキ液圧Pwrrが、ステップS62で更新した右後輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwrr(NOW)に近い経時変化をもって制御されることになる。
従って、オーバーステア傾向時は左右後輪ブレーキ液圧のオーバーシュートが抑制され、このオーバーシュートによる左右後輪の制動ロックを抑制し得る結果、オーバーステア傾向を回避することができる。
また、オーバーステア傾向時は左右後輪のブレーキ液圧が過渡的に左右前輪のブレーキ液圧よりも低くなり、これにより、左右後輪の制動力を過渡的に左右前輪の制動力よりも小さくし得て、前後輪制動力差によりオーバーステア傾向を更に確実に抑制することができる。
上記オーバーステア傾向の抑制に必要な分だけ後輪に係わるフィルタ特性が強くされることとなり、後輪に係わるフィルタ特性を強くし過ぎることがなく、フィルタ特性を強くし過ぎることによる(不必要なオーバーシュートの抑制による)後輪制動の応答性の低下を生ずることなく、オーバーステア傾向を抑制して車両の旋回制動挙動を安定させるという前記の作用効果を達成することができる。
ステップS71においては、図5のステップS11におけると同様に、現在の右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧前回値Pwfr(OLD)に代入した後、右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧センサ値Pwfrにより更新する。
ステップS73においては、図5のステップS13におけると同様に、上記のごとく更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるような所定のフィルタ処理(例えば図18に破線で示すブレーキ液圧変化を生じさせるようなフィルタ特性とする)を施して右前輪の過渡目標ブレーキ液圧tPwfroを演算する。
従ってステップS74は、本発明における操舵状態検出手段に相当する。
つまり、右旋回時に選択されるステップS75では、上記目標ヨーレートtφと、旋回度合検出手段に相当するセンサ25(図1参照)により検出した実ヨーレートφとの間におけるヨーレート偏差Δφ=tφ−φ(従ってΔφは、アンダーステア度合を表す)を求め、このヨーレート偏差(アンダーステア度合)Δφがアンダーステア判定用の正の設定値F以上か否かにより、アンダーステア傾向か否かを判定する。
また、左旋回時に選択されるステップS76では、上記目標ヨーレートtφおよび実ヨーレートφとの間におけるヨーレート偏差(アンダーステア度合)Δφ=tφ−φを求め、このヨーレート偏差(アンダーステア度合)Δφがアンダーステア判定用の負の設定値E未満か否かにより、アンダーステア傾向か否かを判定する。
tPwfro=(1-αyu)×tPwfr(NOW)+αyu×tPwfro
フィルタ係数αyuが大きい(フィルタ特性が強い)ほど、ステップS73でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、フィルタ係数αyuが小さい(フィルタ特性が弱い)ほど、ステップS72で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってステップS77は、本発明におけるフィルタ特性変更手段に相当する。
ステップS77で更新した右前輪(旋回内輪)過渡目標ブレーキ液圧tPwfroは、アンダーステア度合Δφが大きい(アンダーステア傾向が強い)ほど、ステップS73でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、アンダーステア度合Δφが小さい(アンダーステア傾向が弱い)ほど、ステップS72で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
これと、比例制御のフィードバックゲインGpと、ステップS77で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroと、この右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに実ブレーキ液圧Pwfrを一致させる時の定常制御ゲインK3とを用いて、
実ブレーキ液圧Pwfrを、ステップS77で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させるのに必要な右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへの制御電流Isolを以下により決定する。
Isol=ΔPwfr×Gp+tPwfro×K3
ステップS78では、上記のごとくに決定した制御電流Isolを右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給し、これにより、実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させることができる。
この場合、次のステップS77において図13のマップを基に求める、アンダーステア度合Δφ=0に対応したフィルタ係数αyuが最低値(0.1)であることから、同ステップS77で更新する右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroが、フィルタ係数αyu=最低値(0.1)に呼応して、ステップS72で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってこの場合、ステップS78で求めた制御電流Isolが右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給されて実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させる時、実ブレーキ液圧Pwfrが、ステップS72で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近い経時変化をもって制御されることになる。
従って、アンダーステア傾向時は左右前輪ブレーキ液圧のオーバーシュートが抑制され、このオーバーシュートによる左右前輪の制動ロックを抑制し得る結果、アンダーステア傾向を回避することができる。
また、アンダーステア傾向時は左右前輪のブレーキ液圧が過渡的に左右後輪のブレーキ液圧よりも低くなり、これにより、左右前輪の制動力を過渡的に左右後輪の制動力よりも小さくし得て、前後輪制動力差によりアンダーステア傾向を更に確実に抑制することができる。
上記アンダーステア傾向の抑制に必要な分だけ前輪に係わるフィルタ特性が強くされることとなり、前輪に係わるフィルタ特性を強くし過ぎることがなく、フィルタ特性を強くし過ぎることによる(不必要なオーバーシュートの抑制による)前輪制動の応答性の低下を生ずることなく、アンダーステア傾向を抑制して車両の旋回制動挙動を安定させるという前記の作用効果を達成することができる。
ステップS11〜ステップS13においては、図5の同一符号で示すステップにおけると同様の処理を行う。
つまり、ステップS11においては、現在の右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧前回値Pwfr(OLD)に代入した後、右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)を右前輪ブレーキ液圧センサ値Pwfrにより更新し、
ステップS12においては、現在の右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)を右前輪到達目標ブレーキ液圧前回値tPwfr(OLD)に代入した後、図4のステップS3で求めた右前輪目標ブレーキ押し付け力tFfrを右前輪ホイールシリンダ5FRの受圧面積Awfrで除算して得られる右前輪到達目標ブレーキ液圧(tFfr/Awfr)を右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に代入して、この右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)を更新し、
ステップS13においては、上記のごとく更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるような所定のフィルタ処理(例えば図18に破線で示すブレーキ液圧変化を生じさせるようなフィルタ特性とする)を施して右前輪の過渡目標ブレーキ液圧tPwfroを演算する。
tPwfro=(1-αm)×tPwfr(NOW)+mf×tPwfro
フィルタ係数αmが大きい(フィルタ特性が強い)ほど、ステップS13でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、フィルタ係数αmが小さい(フィルタ特性が弱い)ほど、ステップS12で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
従ってステップS87は、本発明におけるフィルタ特性変更手段に相当する。
ステップS87で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroは、凍結路などのように制動ロックを生じやすいほど、ステップS13でのフィルタ処理により求めた右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに近いものとなり、乾燥路のように制動ロックしにくいほど、ステップS12で更新した右前輪到達目標ブレーキ液圧今回値tPwfr(NOW)に近いものとなる。
ステップS87で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroと、ステップS11で更新した右前輪ブレーキ液圧今回値Pwfr(NOW)とのブレーキ液圧偏差ΔPwfr=tPwfro−Pwfr(NOW)を求め、
これと、比例制御のフィードバックゲインGpと、ステップS17で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroと、この右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに実ブレーキ液圧Pwfrを一致させる時の定常制御ゲインK3とを用いて、
実ブレーキ液圧Pwfrを、ステップS17で更新した右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させるのに必要な右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへの制御電流Isolを以下により決定する。
Isol=ΔPwfr×Gp+tPwfro×K3
ステップS18では、上記のごとくに決定した制御電流Isolを右前輪に係わる増減圧弁14FR,18FRへ供給し、これにより、実ブレーキ液圧Pwfrを右前輪過渡目標ブレーキ液圧tPwfroに追従させることができる。
ところで、路面摩擦係数μが低いほど、車輪のブレーキ液圧が到達目標ブレーキ液圧を超えるオーバーシュートに起因した車輪の制動ロックを生じやすくなるが、
本実施例のようにフィルタ特性を低摩擦路面ほど大きくして、車輪のブレーキ液圧が緩やかに到達目標ブレーキ液圧に到達するように構成する場合、低摩擦路面ほど上記のオーバーシュートが生ずるのを抑制し得て車輪が当該オーバーシュートにより制動ロックを生じやすくなるのを抑制することができ、低摩擦路での前輪の制動ロックによるアンダーステア傾向や後輪の制動ロックによるオーバーステア傾向を抑制して車両の旋回制動挙動を安定させることができる。
2 マスターシリンダ
3,4 前輪ブレーキ液圧配管
5FL 左前輪ホイールシリンダ
5FR 右前輪ホイールシリンダ
5RL 左後輪ホイールシリンダ
5RR 右後輪ホイールシリンダ
6FL,6FR マスターカット弁
7 ストロークシミュレータ
8 ポンプ
10 モータ
12 アキュムレータ
13 圧力スイッチ
15FL, 15FR, 15RL, 15RR 増圧弁
17 戻り回路
18FL, 18FR, 18RL,18RR 減圧弁
21 圧力センサ
22FL, 22FR, 22RL, 22RR 圧力センサ
23 操舵角センサ
24 横加速度センサ
25 ヨーレートセンサ25
30 マイクロコンピュータ
31 駆動回路
32 目標減速度演算部
33 前後左右制動力配分部
34FL, 34FR, 34RL, 34RR ブレーキ押付力演算部
35FL, 35FR, 35RL, 35RR ブレーキ液圧制御部
Claims (7)
- 定常的な到達目標ブレーキ液圧に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるようなフィルタ処理を施して求めた過渡目標ブレーキ液圧と、実ブレーキ液圧との間におけるブレーキ液圧偏差に基づいて車輪のブレーキ液圧を制御する車両の制動制御装置において、
運転者による車両の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、
前記操舵状態検出手段による車両の操舵状態に基づいて車両の旋回度合を検出する旋回度合検出手段と、
該手段により検出した車両旋回度合が強い時ほど、前記フィルタ処理に際して用いるフィルタ特性を強くするフィルタ特性変更手段とを具備し、
該フィルタ特性変更手段は、前記旋回度合検出手段により検出された車両の旋回度合がオーバーステア傾向を示す時、オーバーステア傾向を示さない時よりも旋回方向内側輪に係わる前記フィルタ特性を強くするものであることを特徴とする車両の制動制御装置。 - 定常的な到達目標ブレーキ液圧に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるようなフィルタ処理を施して求めた過渡目標ブレーキ液圧と、実ブレーキ液圧との間におけるブレーキ液圧偏差に基づいて車輪のブレーキ液圧を制御する車両の制動制御装置において、
運転者による車両の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、
前記操舵状態検出手段による車両の操舵状態に基づいて車両の旋回度合を検出する旋回度合検出手段と、
該手段により検出した車両旋回度合が強い時ほど、前記フィルタ処理に際して用いるフィルタ特性を強くするフィルタ特性変更手段とを具備し、
該フィルタ特性変更手段は、前記旋回度合検出手段により検出された車両の旋回度合がアンダーステア傾向を示す時、アンダーステア傾向を示さない時よりも旋回方向外側輪に係わる前記フィルタ特性を強くするものであることを特徴とする車両の制動制御装置。 - 定常的な到達目標ブレーキ液圧に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるようなフィルタ処理を施して求めた過渡目標ブレーキ液圧と、実ブレーキ液圧との間におけるブレーキ液圧偏差に基づいて車輪のブレーキ液圧を制御する車両の制動制御装置において、
運転者による車両の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、
前記操舵状態検出手段による車両の操舵状態に基づいて車両の旋回度合を検出する旋回度合検出手段と、
該手段により検出した車両旋回度合が強い時ほど、前記フィルタ処理に際して用いるフィルタ特性を強くするフィルタ特性変更手段とを具備し、
該フィルタ特性変更手段は、操舵状態検出手段が検出した車両の操舵状態に対し、前記旋回度合検出手段により検出された車両の旋回度合がオーバーステア傾向を示す時、オーバーステア傾向を示さない時よりも後輪に係わる前記フィルタ特性を強くするものであることを特徴とする車両の制動制御装置。 - 定常的な到達目標ブレーキ液圧に対し、目標ブレーキ液圧の時間変化割合が緩やかになるようなフィルタ処理を施して求めた過渡目標ブレーキ液圧と、実ブレーキ液圧との間におけるブレーキ液圧偏差に基づいて車輪のブレーキ液圧を制御する車両の制動制御装置において、
運転者による車両の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、
前記操舵状態検出手段による車両の操舵状態に基づいて車両の旋回度合を検出する旋回度合検出手段と、
該手段により検出した車両旋回度合が強い時ほど、前記フィルタ処理に際して用いるフィルタ特性を強くするフィルタ特性変更手段とを具備し、
前記フィルタ特性変更手段は、前記旋回度合検出手段により検出された車両の旋回度合がアンダーステア傾向を示す時、アンダーステア傾向を示さない時よりも前輪に係わる前記フィルタ特性を強くするものであることを特徴とする車両の制動制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の制動制御装置において、
前記操舵状態検出手段は、運転者によるステアリングホイール操舵角、操舵トルク、車輪舵角、および、これら操舵角、操舵トルク、車輪舵角の時間変化割合のうちの少なくとも1つから、車両の操舵状態を検出するものである車両の制動制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の制動制御装置において、
前記旋回度合検出手段は、車両の横加速度、ヨーレート、横滑り角、車輪荷重、および、横加速度、ヨーレート、横滑り角、車輪荷重の時間変化割合のうちの少なくとも1つから、車両の旋回度合を検出するものである車両の制動制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両の制動制御装置において、
前記フィルタ特性変更手段は、車輪および路面間の摩擦係数が低いほど前記フィルタ特性よりも強くするものである車両の制動制御装置。
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