本発明は筆記制御付きペン及びペンの筆記制御プログラムに係り、特に、ペンと筆記対象物である記録媒体との間隔等によって筆記を制御できる筆記制御付きペン及びペンの筆記制御プログラムに関する。
使用者が手で把持して筆記等を行うものとしては、鉛筆やボールペンやペン等のように紙等の平面的な記録媒体に黒鉛やインク等の記録材を移転するものが一般的である。
このような従来型の筆記具の他に、インク等の記録材の移転を電子的又は機械的に制御するものとして、インクジェットプリンタや、圧縮空気を用いるエアブラシ等が知られている。手で把持するものとして、特許文献1にはオンデマンドインクジェットヘッドを搭載した手動操作式印字装置が開示される。ここでは、別途指定される筆記内容等が、手で把持できる印字装置で印字できることが開示される。また、特許文献2には、エアブラシによる筆記の品質が、対象物までの距離に大きく依存することから、最適の筆記品質となる所定の離間距離となるガイドと、エアブラシの筆記のオン・オフを行う押しボタンとを備えることが開示される。
特許文献3には、手で把持できる装置ではないが、インクジェットプリンタ等のハードコピーデバイスに搭載できるコンパクト光センサシステムが開示される。ここでは、青色、緑色、オレンジ色、赤色のLED(Light Emission Device)とフォトダイオードとを用い、プリントヘッドから噴出されるインクにより媒体上に形成される画像の印刷色を検出することが開示される。
特開平9−95014号公報
特開平11−276975号公報
特開2003−179275号公報
従来型の筆記具は、筆記者の意思で自由に筆記できるが、これを電子的に制御できると、記録位置を指定でき、あるいは色をさまざまに指定でき、また筆記データのデータ処理が可能になる等の利便性が向上することが期待できる。
しかし、特許文献1の手動操作式印字装置は、手で把持するのは印刷位置の特定だけで、筆記具のように、筆記者の書きたい内容を筆記することができない。また、特許文献2のエアブラシでは、押しボタンオン・オフを行う必要があり、不便である。特許文献3のコンパクト光センサは、これを用いることで印刷色をモニタすることができるが、手で把持する装置への応用については触れていない。また、印刷が終了したものを測定することを前提としているため、調色しながら印刷することができない。
このように、単にインクジェット機構や、エアブラシ機構等の印字機構を小型にして手で把持できる大きさとしても、従来型の筆記具の有する使いやすさをそのまま実現できない。すなわち、従来型の筆記具として、ボールペンを例にとると、筆記者は単にボールペンの先を紙等に接触するだけで筆記ができ、紙等からボールペンの先を離すと、直ちに筆記が停止する。特許文献1、2の技術は、このようなことを実現できない。また、ボールぺンは、ボールが紙等の上を転がるにつれてインクを紙等に移すので、いわば筆記の道のりに応じてインク量が紙等に移され、筆記速度に比較的左右されない。これに対し、例えばインクジェット機構やエアブラシ機構を手で持って、紙等に赤インクを噴射させても、ゆっくり動かせば赤色を書くことができるが、速く動かすとピンク色等になり、あるいはかすれてしまうことがある。したがって、インクジェット機構や、エアブラシ機構等の印字機構を単に小型化しただけでは、従来の筆記具に比べ使い勝手がよくない。
本発明の目的は、従来型の筆記具に近い使いやすさを有する筆記制御付きペン及びペンの筆記制御プログラムを提供することである。
本発明に係る筆記制御付きペンは、手で把持し媒体上に筆記するペンであって、内部に所望の色のインクを収納するインクタンクが設けられるペン筐体と、ペン筐体の先端部であるペン先に設けられ、先端にインクの吐出口を有し、インクタンクに接続されるインクジェットヘッドと、ペン先に設けられ、色を測定する測色センサと、インクを吐出させながら媒体上の色を測色センサで検出させ、その測色センサにより検出される検出色と、任意に定められる目標色とを比較し、検出色と目標色とに差があるときは目標色になるまでインクを吐出させ、目標色になればインクの吐出を止める制御部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る筆記制御付きペンにおいて、制御部は、さらに、インクを吐出させない状態でペン先をモデル色に向けたときに測色センサが検出するモデル色を測色センサから取得し、モデル色又はモデル色に関連して予め任意に定められる関連色を目標色として記憶する記憶処理部と、インクを吐出させながら媒体上の色を測色センサで検出させ、その検出色を取得する吐出色取得部と、記憶されている目標色を読み出し、検出色と比較する記憶比較部と、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る筆記制御付きペンにおいて、さらに、ペンを把持する強さを検出する把持センサを備え、制御部は、把持センサの検出結果に応じ、目標色を切り替えることが好ましい。
また、本発明に係る筆記制御プログラムは、所望の色のインクを吐出するペン先と、ペン先に設けられて色を測定する測色センサと、測色センサの検出結果に応じペン先のインク吐出の制御を行う制御部とを含む筆記制御付きペンの制御部上で実行されるプログラムであって、測色センサから、媒体上の色の検出結果を取得する処理手順と、検出される検出色と、任意に定められる目標色とを比較する処理手順と、ペン先に対し、検出色と目標色に差があるときは目標色になるまでインクを吐出させ、目標色になればインクの吐出を止めさせる処理手順と、を実行することを特徴とする。
また、本発明に係る筆記制御プログラムにおいて、さらに、インクを吐出させない状態でペン先をモデル色に向けたときに測色センサが検出するモデル色を測色センサから取得し、モデル色又はモデル色に関連して予め任意に定められる関連色を目標色として記憶する処理手順と、インクを吐出させながら媒体上の色を測色センサで検出させ、その検出色を取得する処理手順と、記憶されている目標色を読み出し、検出色と比較する処理手順と、を実行することを特徴とする。
ここで、インクとは、一般的な記録材を指し、例えばインクジェット機構で用いることができるインク状の記録材、塗料状の記録材、タッチアップペイント材等を含む。
上記の測色センサの検出結果に基づいて筆記を制御することは、それぞれ単独で用いてもよく、必要に応じ、後述する他の参考とする実施例1、2を組み合わせて用いてもよい。
上記構成の少なくとも1つにより、測色センサを備え、測色センサの検出する紙等の上の筆記色と予め定めてある目標色とを比較し、目標色と差があるときは継続してインクを吐出し、目標色になればインクの吐出を止める。これにより、自動的に所望の色の筆記を行うことができ、所望の色との過不足がない。
また、測色モードと筆記モードとにより筆記を制御する。測色センサは、測色モードにおいて、インクを吐出させないときにモデル色を測色し、筆記モードにおいて、インクを吐出させつつ紙等の上の筆記色を測色する。目標色は、モデル色と同じでもよく、モデル色の補色等、モデル色と一定のカラーハーモニーの関係を有する色であってもよい。そして、筆記色と目標色とを比較し、目標色と差があるときは継続してインクを吐出し、目標色になればインクの吐出を止める。これにより、自動的に所望の色、またはその色の関連色の筆記を行うことができ、目標とする色との過不足がない。
また、把持センサを用いることで、ペンを握る強さを変える簡単な操作で目標色を切り替えることができる。例えば、普通に握っているときは黒色インクの筆記ができ、赤色の筆記をしたいときは強く握る事とすることができ、利便性が向上する。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、電気的に制御できる筆記機構を代表してインクジェット機構を用いるものを主に説明する。インクジェット機構は、説明のための代表であって、それ以外の筆記機構、例えばエアブラシ機構であってもよい。エアブラシ機構を用いる場合は、塗料状のインクを噴出するノズル、圧縮気体を生成する小型ポンプ、気体をためておく小型気体タンク、ノズルからのインク吐出を制御する電子制御弁、インクタンク等を内蔵させ、これら全体の動作を制御部で制御するものとすればよい。
また、異なる機能のセンサの作用について、別々の筆記ペンの構成を説明するが、これは、説明の便宜上のものであって、必要に応じて異なる機能のセンサを複数選択して搭載する筆記ペンでもよい。
図1は、本発明に係る実施形態である実施例3,4と必要な場合に組み合わせるときの参考となる実施例1を示す図である。図1は、ペン先と媒体との間隔がしきい間隔以下となるとインクを吐出し、しきい間隔を超えて離れるとインクの吐出を止める筆記制御付きペン10の構成を示す図で、一部破断面を用いている。この筆記制御付きペン10は、小型のインクジェット機構を内蔵し、手で把持するに適した太さを有する筆記ペンである。なお、必要があれば図示されていないキャップを用い、筆記制御付きペン10を筆記に用いないときにペン先を機械的に保護し、また、インクジェット機構の吐出部を覆って乾燥から保護するようにしてもよい。
筆記制御付きペン10は、筐体22の先端部、すなわちペン先にインクジェットヘッド24を有し、その内部にインクジェットヘッド24と接続されるインクタンク26を含む。なお、インクジェットヘッド24の先端にはインクの吐出口28が設けられる。また、筆記制御付きペン10の先端には、光センサ30が設けられ、筐体22の内部にセンサ回路32が備えられている。また、筆記制御付きペン10内部には、センサ回路32及びインクジェットヘッド24に接続される制御回路40が備えられ、さらに電源回路42が設けられる。
インクジェットヘッド24は、電気信号によりインクを吐出口28から吐出する機能を有する筆記ヘッドである。かかるインクジェットヘッド24としては、プリンタ等に広く用いられている圧電型インクジェットヘッド、あるいはバブルジェット(登録商標)型インクジェットヘッドを用いることができる。図1におけるインクジェットヘッド24は、筆記しやすく、取り扱いやすい形状のプラスチックケースに圧電型インクジェットヘッド等の素子が収納されるものとして示されている。インクジェットヘッド24の駆動信号は、制御回路40から信号線により供給される。
インクジェットヘッド24の先端には、吐出口28が設けられる。吐出口28は、色の種類ごとに設けられる。図1では、ブラック単色として1つの吐出口28が示される。吐出口28の直径は、ここから吐出され図示されていない記録媒体上に到達し、記録媒体に浸透等により広がって形成される単位画素の大きさをどの程度にするかによって定めることができる。例えば普通紙を記録媒体とし、単位画素の大きさを0.1mm程度とするときは、吐出口28の直径をおよそ50μmのものを用いることができる。
インクタンク26は、インクジェットヘッド24にインク通路によって接続され、記録材としてのインクを収納する小型タンクである。インクタンク26は、インクジェットヘッド24と着脱可能として、インクの消耗に応じて交換可能とすることが好ましい。かかるインクタンク26としては、インクジェットプリンタ等で広く用いられるインクカートリッジの構造を利用して構成することができる。例えば、適当なインク吐出能力を有する発泡材を内部に設け、それにインクを収納するもの等を用いることができる。インクは染料系でも顔料系でもよく、固体インクや油性ペイントでもよい。また、ブラックインク、カラーインクの他、下地処理剤や白色インクを含んでもよい。
光センサ30は、受光素子とともに発光素子を設け、いわゆる反射型光センサとして用いることが好ましい。図2は、そのような反射型の光センサ30の構成と、紙等の媒体50との関係を示すもので、図2(a)は、反射型の光センサ30が媒体50から遠く離れているときの様子を、(b)は、反射型の光センサ30が媒体50に対し、しきい間隔Dまで接近したときの様子を示す。反射型の光センサ30は、基板34の上に発光素子36としてのLEDと、受光素子38としてのフォトダイオードとが搭載される。受光素子38にフォトトランジスタを用いてもよい。発光素子36、受光素子38にはそれぞれ信号線の一方端が接続され、その他方端は制御回路40に接続される。
かかる構成の反射型の光センサ30につきその作用を説明する。発光素子36に制御回路40から発光信号を供給すると、発光素子36から媒体50に向けて光が放射され、媒体50で反射された光は反射型の光センサ30の方に戻ってくる。図2(a)のように反射型の光センサ30が媒体50から遠く離れているときは、発光素子36から放射され、媒体50から戻ってくる光は、必ずしも受光素子38に受け止められず、それてしまうことがあり、受け止められる光も間隔が大きいために弱い光となり、受光素子38の出力は小さい値となる。これに対し、図2(b)のように、白抜き矢印の方向に反射型の光センサ30が媒体50に対し十分接近すると、発光素子36から放射され、媒体50から戻ってくる光の大部分が受光素子38に受け止められ、また受け止められる光も間隔が小さいので強い光となり、受光素子38の出力は十分大きな値となる。
このように、光センサ30が媒体50に接近するにつれ受光素子の出力は大きな値になるので、図2(b)に示すように、光センサ30と媒体50との間隔、すなわちペン先と媒体50との間隔について予めしきい間隔Dを定め、そのしきい間隔Dに対応する受光素子の出力値を基準として、ペン先と媒体50との近接、離間を判断することができる。しきい間隔Dとしては、従来型の筆記具の筆記感覚に近いものが望ましく、例えば、およそ1mmから数mm程度とすることができる。
光センサ30の受光素子の出力信号はセンサ回路32に入力される。センサ回路32は、光センサ30からの信号を処理し、ペン先と媒体50との間隔がしきい間隔D以下のときに近接信号を制御回路40に出力し、ペン先と媒体50との間隔がしきい間隔Dを超えるときは近接信号を制御回路40に出さないようにする機能を有する回路である。なお、光センサ30が発光素子36を有するときはその駆動回路をセンサ回路32に含んでもよい。具体的には、センサ回路32は、適当なしきい値判別回路を備える。しきい値判別回路は、しきい間隔Dに対応する受光素子の出力値をしきい出力値とし、受光素子の出力値がしきい出力値以上のときに例えばHレベルの近接信号を出し、しきい出力未満のときにLレベルの近接信号を出す機能を有する回路で、一般的な比較回路で構成することができる。しきい間隔D前後の動作を確実にするため、適当なヒステリシス回路を付加するものとしてもよい。さらに、発光素子36を点滅させ、点灯時と消灯時の差分から距離を判断してもよい。これにより外光の影響を軽減することができる。光センサ30は、媒体50からの反射が少ない場合、例えば既にペンで筆記中のときにペンの陰に隠れ、しきい値D以下でも反応しないという特性がある。記入中に反射率が低下すると、筆記を継続したいにもかかわらず自動的に記入を停止してしまうが、発光素子36の点滅の技術を用いる等で、外光の影響を軽減し、意図しない筆記中断が起こることを防ぐことができる。
再び図1に戻り、制御回路40は、センサ回路32と接続され、その出力信号に基づき、インクジェットヘッド24に供給する駆動信号を制御する機能を有する回路である。すなわち、センサ回路32から近接信号が出力されるときは、制御回路40は、ペン先と媒体50との間の距離がしきい間隔D以下に近接したものと判断し、インクジェットヘッド24に、吐出口28からインクを吐出させるための駆動信号を供給する。また、近接信号が出なくなると、インクジェットヘッド24に対する駆動信号を止める。かかる制御回路40は、論理回路とドライバ回路を組み合わせて構成できる。また、CPUとドライバ回路と組み合わせてもよく、その場合には、制御回路40の機能はソフトウエアで実現でき、さらに詳しくは対応する筆記制御プログラムを実行することで実現できる。
電源回路42は、制御回路40、センサ回路32、インクジェットヘッド24等に必要な電力を供給する電源回路である。インクジェットヘッド24の駆動電圧等が高いときは、電源回路42に適当な昇圧回路を含むものとすることができる。また、電源回路42を筐体22の外部に出し、ケーブル等で制御回路40等に必要な電力を供給するものとしてもよい。
かかる筆記制御付きペン10の作用を、しきい間隔との比較による筆記制御のためのフローチャートである図3を用いて説明する。しきい間隔との比較による筆記制御とは、ペン先と媒体50との間の距離がしきい間隔D以下のときはインクを吐出させ、しきい間隔Dを超えてペン先が媒体50から離れるときはインクの吐出を止める制御である。
まず、筆記制御付きペン10が使用中かどうかの判断がされる(S10)。簡単には、筆記制御付きペン10に使用スイッチを設け、これをオンにするときを使用中としてもよいが、例えば、筐体22に図示されていない加速度センサ等を設け、筐体22を手で把持することを検出し、また、筆記制御付きペン10が図示されていないキャップを有するときはキャップ着脱センサ等でキャップが外されることを検出することで、筆記制御付きペン10が使用中かどうか判断できる。使用中でないと判断されると、このルーチンは終了する。
使用中であると判断されると、ペン先と媒体との間隔がしきい間隔D以下か否かが判断される(S12)。しきい値D以下であると判断されると、インクが吐出される(S14)。しきい値D以下であるとは判断されないとき、すなわちしきい値Dを超えると判断されると、まずインク吐出中か否かが判断(S16)され、インク吐出中であると判断されると、インク吐出を止める(S18)。すなわち、この場合には、直前の状態がペン先と媒体との間隔がしきい間隔D以下でインクが吐出されているのであるが、使用者がペン先を持ち上げる等でしきい間隔Dを超えて媒体50から離れるときに当たり、この場合には、直ちにインクの吐出を止める。S16でインク吐出中でないと判断されるときは、もともとペン先と媒体との間隔がしきい間隔Dを超えていて、今もしきい間隔Dを超えているときであるので、そのまま維持される。この場合を含め、S14,S18の処理が終わると、再びS10に戻る。筆記制御付きペン10が使用スイッチを備えているときはS12に戻る。
すなわち、筆記制御付きペン10は、使用中か、ペン先と媒体50との間隔がしきい間隔D以下か否かについて、常時監視が続けられる。これにより、ペン先が媒体に接近するとインクを吐出させ、ペン先が媒体から遠ざかるとインクの吐出を止める制御を行うことができる。したがって、筆記者は、筆記したい個所にペン先を近づけるだけで他の操作を要せず、自動的に書けるようになり、ペン先を離せば自動的に書けなくなり、従来型の筆記具に近い使いやすさとなる。
なお、光センサ30に代えて、他の非接触型近接センサを用いるものとしてもよい。例えば、磁気センサ等を用いて、ペン先から媒体50までの距離を検出するものとしてもよい。
図4は、ペン先と媒体50との間隔を検出する近接センサとして、接触型のものを用いる筆記制御付きペン12を示す図である。以下の説明において、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。この筆記制御付きペン12には、光センサ30、センサ回路32に代わり、インクジェットヘッド24より先に突き出る形で検出バー60が設けられ、筐体22の内部で検出バー60の根元に接続して接触スイッチ62が備えられている。
検出バー60は、ペン先が媒体50に接近したときに媒体50に接触し、それによって押されることを根元の接触スイッチ62に伝達する機能を有する棒材である。検出バー60の長さは、ペン先からしきい間隔Dの値より若干大きめ長さで突き出すように設定される。若干大きめの程度は、接触スイッチ62の感度ストローク等で定めることができる。例えば、しきい間隔Dを約2mmとし、接触スイッチ62の感度ストローク、すなわちオフからオンに変わるストロークを約2mmとすれば、約4mmだけペン先より検出バー60の先端を突き出すことが好ましい。かかる検出バー60は、折れにくい剛性を有する金属製細棒やプラスチック製細棒を用いることができる。
接触スイッチ62は、検出バー60の軸方向の動きを検出し、ペン先と媒体50との間隔がしきい間隔D以下のときに近接信号を制御回路40に出力し、ペン先と媒体50との間隔がしきい間隔Dを超えるときは近接信号を制御回路40に出さないようにする機能を有するスイッチである。具体的には、しきい間隔D以下の間隔にペン先が媒体50に接近したときに接点を閉じてオン信号を近接信号として制御回路40に供給し、ペン先がしきい間隔Dを超えて離れるときは接点を開いて近接信号を出力しない。しきい間隔D前後の動作を確実にするため、接触スイッチ62にヒステリシス回路を付加するものとしてもよい。かかる接触スイッチ62としては、機械的な開閉スイッチの他、一般的な近接センサとして知られる磁気センサや光センサ等を用いることができる。
制御回路40は、接触スイッチ62から近接信号が出力されるときは、ペン先と媒体50との間の距離がしきい間隔D以下に近接したものと判断し、インクジェットヘッド24に、吐出口28からインクを吐出させるための駆動信号を供給する。また、近接信号が出なくなると、インクジェットヘッド24に対する駆動信号を止める。
かかる構成の接触型近接センサの作用につき図5を用いて説明する。図5(a)は、筆記制御付きペン12が媒体50と十分離れている場合の様子を示すもので、検出バー60の先端は媒体50にまだ接触していないので、接触スイッチ62は開放、すなわちオフ状態で、近接信号が制御回路40に供給されない。したがって制御回路40はインクジェットヘッド24に対し駆動信号を供給せず、インクジェットヘッド24の先端の吐出口28からインクは吐出されず、筆記が行われない。図5(b)は、筆記者により、筆記制御付きペン12が白抜き矢印の方向に媒体50に十分近づけられ、検出バー60の先端が媒体50に接触し、接触スイッチ62を閉鎖し、すなわちオン状態となって近接信号を制御回路40に供給するときである。このとき、インクジェットヘッド24の先端の吐出口28と媒体50との間の距離は、しきい間隔Dとなるように設定される。そして、接触スイッチ62のオン信号、すなわち近接信号を取得し、制御回路40はインクジェットヘッド24に対し駆動信号を供給し、インクジェットヘッド24の先端の吐出口28からインクが液滴29として吐出され、筆記が行われる。
このように、接触型近接センサを用いて、ペン先が媒体に接近するとインクを吐出させ、ペン先が媒体から遠ざかるとインクの吐出を止める制御を行うことができる。したがって、筆記者は、筆記したい個所にペン先を近づけるだけで他の操作を要せず、自動的に書けるようになり、ペン先を離せば自動的に書けなくなり、従来型の筆記具に近い使いやすさとなる。
図6は、本発明に係る実施形態である実施例3,4と必要な場合に組み合わせるときの参考となる実施例2を示す図である。図6は、ペン先が媒体上を動く長さである道のり長さに応じてインクを吐出し、道のり長さの時間変化がなくペンが動いていないときはインクの吐出を止める筆記制御付きペン14の構成を示す図である。以下の説明において、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。この筆記制御付きペン14には、光センサ30、センサ回路32に代わり、ペン先に道のりセンサ64が設けられ、筐体22の内部にそのセンサ回路66が備えられている。
道のりセンサ64は、ペン先が媒体50に接触したことを検出し、さらにペン先が媒体の上を接触しながら移動する道のりの長さSを検出する機能を有する。かかる道のりセンサ64としては、ローラを用いてローラの回転を検出し、それによりローラの媒体上の移動距離を求め、これを道のり長さSとするものを用いることができる。また、これに代わり、例えば、筐体2に加速度センサ等を設け、これによりペン先の移動を検出し、加速度の積分等によりペン先速度、ペン先位置を求め、これに基づきペン先の道のり長さを検出するものとしてもよい。
センサ回路66は、道のりセンサ64からの信号を受け取ってこれを処理し、ペン先が媒体に接触したこと及び道のりセンサ64の出力から道のり長さSを求め、これに基づいて制御回路40にペン先の移動状態を出力する機能を有する回路である。具体的には、道のり長さSの時間変化を求め、道のり長さSが予め任意に定める時間間隔内に変化しないときはペン先が停止しているものとして停止信号を制御回路40に出力する。道のり長さSの時間変化があると認められるときは、道のり長さSを制御回路40に出力する。道のり長さSの時間変化を検出するには適当な微分回路を用いることができる。
制御回路40は、センサ回路66から停止信号が出力されるときは、ペン先が動いていないものとして、インクジェットヘッド24に対する駆動信号は出さない。停止信号が出されず、道のり長さSを受け取ったときは、時々刻々変化する道のり長さSに応じてインクジェットヘッド24に、吐出口28からインクを吐出させるための駆動信号を供給する。このとき、道のり長さSの単位長さ当りのインク吐出量が略一定となるように駆動信号を供給する。例えば、各インク液滴の大きさを一定とするときは、道のり長さSに応じた駆動パルスの数とする。また、各インク液滴の大きさを可変できるシステムのときは、単位時間当りの道のり長さに応じたインク液滴の大きさとなるように駆動信号の内容を可変する。このように、道のりセンサを用いて、ペン先が媒体と接触して移動しているときは道のり長さSに応じてインク吐出量を制御する。すなわち道のり長さSが倍に延びれば、累積のインク吐出量を倍とし、筆記におけるインク濃度を略一定にする。また、ペン先が動いていないときは、ペン先が媒体に接触していてもインク吐出を止める。したがって、筆記者は、ペン先を媒体上で動かすだけで他の操作を要せず、自動的にほぼ一定の濃度の筆記を行うことができ、さらに、媒体上で止まっていても、余分なインクは出ず、従来型の筆記具に近い使いやすさとなる。
かかる筆記制御付きペン10の作用を、道のり長さによる筆記制御のためのフローチャートである図7を用いて説明する。まず、筆記制御付きペン14が使用中かどうかの判断がされる(S20)。この工程の内容は図3のS10と同様である。使用中でないと判断されると、このルーチンは終了する。
使用中であると判断されると、道のり長さSが検出される(S22)。このときにペン先が媒体に接触しているか否かも合わせて検出される。ペン先が媒体に接触していないときは、図3で述べたと同様にして、インク吐出中か否かが判断(図3のS16参照)され、インク吐出中のときはインク吐出が止められる(図3のS18参照)。
そして、ペン先が媒体に接触しているときは、道のり長さSに時間変化があるかによってペン先が動いているか否かが判断される(S24)。上記のように、ペン先の動きの有無は、道のり長さSの時間変化で判断され、ペン先が動いていると判断されるときは道のり長さSに応じたインク吐出量がインクジェットヘッド24から吐出される(S26)。ペン先が動いていないと判断されると、まずインク吐出中か否かが判断(S28)され、インク吐出中であると判断されると、インク吐出を止める(S30)。S28,S30の工程の内容はそれぞれ図3のS16,S18と同様である。この場合を含め、S26,S30の処理が終わると、再びS20に戻る。筆記制御付きペン14が使用スイッチを備えているときはS22に戻る。
すなわち、筆記制御付きペン10は、使用中か、ペン先が媒体に接触しているか、ペン先が動いているか、動いているときの道のり長さSについて、常時監視が続けられる。これにより、ペン先が媒体上を移動しているときは道のり長さSに応じたインク量を吐出させ、ペン先が止まるか、ペン先が媒体から遠ざかるとインクの吐出を止める制御を行うことができる。つまり、筆記者は、あたかもボールペンを用いているように、筆記しているときは、筆記速度によらず、ほぼ同じ濃度の筆記ができ、ペン先の動きを止めればそれ以上インクは出ない。つまり、速く書いても、遅く書いても同じような濃淡の筆記ができ、赤色で書こうと思ったのに、ピンク色になり、あるいはかすれることがなく、従来型の筆記具に近い使いやすさとなる。
図8は、本発明に係る実施の形態の1つである実施例3を示す図である。図8は、ペン先に測色センサを備え、測色センサが検出する検出色に基づき、予め任意に定められる目標色になるまでインクを吐出し、目標色になればインクの吐出を止める筆記制御付きペン16の構成を示す図である。以下の説明において、図1と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
この筆記制御付きペン16は、ペン先70にフルカラー用のインクジェットヘッド25が設けられ、これに対応し筐体22内にフルカラー用のインクタンク27が備えられる。また、ペン先70には、フルカラーの色を測定できる測色センサ90が設けられ、筐体22内部にそのセンサ回路92が備えられている。また、必要に応じ、筐体22の傾きや把持の強さに応じて目標色を切り替える目標色切替センサ94を設けることができる。
図9は、筆記制御付きペン16のペン先70を正面から見るときの様子を示す図である。ペン先70には、フルカラーの色を検出するためのR(赤),G(緑),B(青)の色の光をそれぞれ独立に放射できる発光窓72,74,76と、発光窓72,74,76からの光が対象物に放射され、対象物からの反射光を検出する受光センサ78とが設けられている。発光窓72,74,76の筐体22の内側には、それぞれ適当なLEDが配置される。発光窓72,74,76の光フィルタ特性と、その背後に配置される各LEDの発光特性を調整することで、R,G,Bの光を発光窓72,74,76から放射することができる。受光センサ78は、帯域の広いフォトダイオードあるいはフォトトランジスタを用いることができる。また、ペン先70には、フルカラー用のインクジェットヘッド25のC(シアン),Y(イエロー),M(マゼンタ),K(黒)の各色の吐出口80,82,84,86が設けられる。
センサ回路92は、制御回路40の制御の下で発光窓72,74,76の背後の各LEDに発光駆動信号を時間差をおいて順次供給し、これに対応する受光センサ78からの各信号を処理して、R,G,Bの色の検出信号として制御回路40に出力する機能を有する。例えば、時刻T1で発光窓72からRの色を放射し、そのときの受光センサ78の出力をR検出信号とし、時刻T2で発光窓74からGの色を放射し、そのときの受光センサ78の出力をG検出信号とし、時刻T3で発光窓76からBの色を放射し、そのときの受光センサ78の出力をB検出信号とする。このように、時刻T1,T2,T3においてそれぞれ検出される1組の信号が、対象物に対する検出色に関する測色信号として制御回路40に出力される。
制御回路40は、センサ回路92と接続され、その出力信号、すなわち検出色に関する測色信号に基づき、フルカラー用のインクジェットヘッド25に供給する駆動信号を制御する機能を有する回路である。制御は、予め任意に定められる目標色と、検出色との比較によって行われる。目標色は、制御回路40内部又は外部の適当なメモリに記憶され、そのデータは、検出色に関する測色信号と比較しやすい形式で記憶されることが好ましい。具体的な制御は、検出色を取得し、目標色を読み出し、検出色と目標色との差異を求め、この差異をなくするために必要なフルカラー用のインクジェットヘッド25の各色の吐出口80,82,84,86に対する駆動信号を求め、求められた駆動信号をフルカラー用のインクジェットヘッド25に供給するという手順で行われる。例えば、目標色をRGB空間の反射率で示すとして(R100,G50,B50)の色であるとし、検出色が(R70,G50,B50)とすれば、この比較からRが不足していることがわかり、この差異を埋めるためにCYMの各吐出口からの吐出割合を求め、それに対応する各駆動信号をフルカラー用のインクジェットヘッド25に供給する。
目標色はメモリに予め内蔵されている1色だけでなく、切り替えるようにすることもできる。例えば、筆記制御付きペン16に予め複数の色ボタンを設け、所望の色ボタンを押せばその色が目標色になるようにすることができる。また、ボタン等を用いずに、筆記者が筆記制御付きペン16の持ち方を変更することで目標色を変更するようにしてもよい。図8に示す目標色切替センサ94は、筆記者が筆記制御付きペン16を通して目標色を変更できるようにするためのセンサである。
目標色切替センサ94の一例は傾きセンサである。傾きセンサは、紙等の媒体に対する筐体22の傾きを検出する機能を有するセンサである。例えば、通常の筆記時の傾き角度の範囲では目標色を黒とし、その範囲より外れる傾き、すなわち、通常の傾きよりペン先を立て、あるいはペン先を寝かせるときは目標色を赤色とする等の切り替えを行うことができる。傾き角度を複数の立体角度領域に分け、それぞれを異なる複数の目標色としてもよい。かかる傾きセンサとしては、ペン先と一体となって動く傾き検出軸等を設け、傾き検出軸と筐体22との間の隙間等を検出するセンサを用いることができる。媒体50が机の上の紙等に限定されるときは、筐体22に重力方向を検出する重力センサ等を設け、その重力方向と筐体22の長手軸との傾きを検出するものとしてもよい。
目標色切替センサ94の一例は把持センサである。把持センサは、筐体22を握る強さである把持力を検出する機能を有するセンサである。例えば、通常の筆記時の把持力の範囲では目標色を黒とし、その範囲より強い把持力で筐体22を握るときは目標色を赤色とする等の切り替えを行うことができる。
このように、目標色切替センサ94を用いることで、筆記者が通常の筆記状態から異なる状態を取ることを検出し、自動的に目標色を変更でき、利便性が向上する。
かかる筆記制御付きペン16の作用を、目標色との比較による筆記制御のためのフローチャートである図10を用いて説明する。ここでは筆記制御付きペン16がすでに使用中であるとして以後の手順を説明する。まず、目標色が設定される(S40)。目標色は予めメモリ内に固定して設定されるものとしてもよく、上記のように切り替えスイッチで設定してもよい。筆記状態により目標色を切り替えられるようになっているときは、その切り替え内容がメモリ内に設定されることが必要である。つぎに、測色センサ90を用いて媒体上の色を検出する(S42)。測色センサ90はフルカラーの反射型光センサであるので、図2で説明したように、それ自体で媒体とペン先との間隔を検出できる。したがって、ペン先と媒体との間隔がしきい間隔Dを超えるときはインクを吐出しないものとするが、以下では、ペン先と媒体との間隔がしきい間隔D以下であるとして説明を進める。
測色センサ90から検出色を取得すると、検出色と目標色と一致するか否かが判断される(S44)。具体的には、メモリ等から目標色が読み出され、検出色と比較される。一致していると判断されると、インク吐出が止められる(S46)。一致していないと判断されると、その不一致に応じて、一致するためのCYMKの各吐出色の割合が求められ、それに対応する駆動信号がフルカラー用のインクジェットヘッド25に対して供給され、対応する色のインクが吐出される(S48)。そして再びS44に戻り、測色センサ90の検出色と目標色との比較が行われる。すなわち、検出色と目標色とが一致するまで、その比較と、差異をなくするためのインクの吐出が続けられる。検出色と目標色とが一致すればS46に従い、インク吐出が止められる。
すなわち、筆記制御付きペン16は、使用中か、ペン先がしきい間隔D以下かの監視のほかに、目標色と媒体上の筆記色との差異について常時監視が続けられる。これにより、自動的に所望の色の筆記を行うことができ、所望の色との過不足がない。
図11は、本発明に係る実施の形態の1つである実施例4を示す図である。図11は、図8で説明した筆記制御付きペン16に、さらに測色センサ90の認識ボタン96を設け、認識ボタン96によって測色センサ90の認識したモデル色等を目標色として設定できるようにした筆記制御付きペン18を示す図である。認識ボタン96に関するところ以外は、測色センサ90、センサ回路92を含め図8の筆記制御付きペン16と同様の構成であるので、相違するところを中心に以下に説明する。
認識ボタン96は、測色センサ90の機能をモデル色の測色とするのか、媒体上の筆記色の測色とするのかを区別し、制御回路40に知らせるためのボタンである。すなわち、筆記者がモデル色を制御回路40に知らせたいときは、インクを吐出しない状態でペン先70をモデル色、例えば色パレットの所望の色のところにもってゆき、そこで認識ボタン96をオンにする。これによりペン先70の測色センサ90は色パレットのその色を検出し、その測色データはセンサ回路92を介して制御回路40に伝えられる(モデル色の測色モード、単に測色モードといってもよい)。制御回路40は認識ボタン96のオン信号を受け取って、このデータがモデル色に関するものであると区別し、記憶する。一方、筆記者が媒体上に筆記したいときは、インクを吐出する状態で認識ボタン96をオフにする。これにより、ペン先70の測色センサ90は媒体上の筆記の色を検出し、その測色データはセンサ回路92を介して制御回路40に伝えられる(筆記色の測色モード、単に筆記モードといってもよい)。制御回路40は認識ボタン96のオフ信号を受け取って、このデータが筆記色に関するものであると区別できる。
目標色は、モデル色のデータから設定される。一般的にはモデル色が目標色である。また、目標色は、モデル色に関連して予め任意に定められる関連色であってもよい。例えばモデル色の補色等、モデル色と一定のカラーハーモニーの関係を有する色であってもよい。モデル色に対し、一定のカラーハーモニーの関係にある色は、これをモデル色の隣等に配置すると、配色が目立つ関係とすることができる。したがって、ある色を筆記あるいは塗りつぶしを行った後、その色をモデル色とし、その補色を目標色として前に塗りつぶした色の隣に筆記すれば、配色が目立つものとすることが容易にできる。
このように、モデル色に基づき目標色を定め、これを記憶する。そして、この目標色を媒体上の色である検出色と比較して筆記制御を行う。制御の仕方は図10に説明したものと同じである。
かかる筆記制御付きペン18の作用を、測色モードと筆記モードとを有し、測色モードにより取得するモデル色に基づいた目標色との比較による筆記制御のためのフローチャートである図12を用いて説明する。ここでは筆記制御付きペン18がすでに使用中であるとして以後の手順を説明する。まず、モデル色の所にペンを移動する(S50)。具体的には、ペン先70を、モデルあるいは色パレットにおける所望の色の部分に近づける。例えば、緑色を記録媒体であるキャンバスに塗る場合を取り上げると、色パレットにおける緑色の絵の具の上にペン先70を近づける。色パレット以外でも、例えば、目の前にある緑色の草と同じ色をキャンバスに塗りたいときは、その緑色の草にペン先70を近づければよい。この工程は、使用者が行う動作であるので、制御回路40の制御動作と区別するため、図12においては破線で示してある。
ついで、認識ボタン96を押す(S52)。この工程も使用者が行う工程であるが、認識ボタン96を押されたことを示す信号は、制御回路40に伝達される。そして、制御回路40は、測色センサ90の各LEDを駆動し、発光窓72,74,76から光を色パレット上に放射させ、その反射光を受光センサ78に検出させる。上記のように、各LEDの駆動を順次行うようにし、それに同期させて受光センサ78の検出を行うようにして、R,G,Bの色を区別して検出する。受光センサ78の検出信号は、信号線を介して制御回路40に送られてくるので、その信号に基づき、制御回路40は、ペン先70の向かう先にあるモデル色を測色する(S54)。上記の例では、「色モデルは緑色」と測色される。なお、認識ボタン96を押すのは、モデル色の特定又は認識を行うためであるので、一旦押して特定が終われば、認識ボタン96を押す動作を止めてよい。
そして、制御回路40は、測色された色モデルのデータに基づき、予め定めておいたルールにより目標色を定め、これを適当なメモリに一時記憶する(S56)。例えば、モデル色を目標色とするルールであれば、上記の例で目標色は緑色になる。一時記憶は、筆記までに時間差があるためである。また、制御回路40は、この一時記憶された目標色を、筆記までの適当なタイミングで読み出し、この目標色に対応する吐出条件を選び出す(S58)。上記の例では、目標色は緑であるので、インクジェットヘッド24に対しYとMの色を吐出するような駆動信号の条件を選択する。選択された吐出条件は、筆記までの間は、待機状態に置かれる。なお、予め検出される色と、インクジェットヘッドに対する駆動条件とを対応させる換算テーブルを用意し、モデル色測色工程(S54)のあと、この対応駆動条件への換算を行い、これを記憶するものとしてもよい。
つぎに、ペン先70を筆記したい記録媒体の所望の個所に移動する(S60)。これ以後の工程の内容は、図10のS42以降の工程と同様であり、検出色と目標色とが比較され、一致していないときは一致するまで対応する色のインクが吐出され、検出色と目標色とが一致すればインク吐出が止められる。
すなわち、筆記制御付きペン18は、測色モードを用いて、所望のモデル色を取得し、これに基づいて目標色を定めることができ、その目標色について筆記モードにより検出色と目標色とを一致させることができる。したがって、筆記者は、筆記したい色を選択するには、その色のところにペン先を持ってきてその色を記憶させるだけで様々な筆記色をその通り選択でき、カラー筆記あるいはカラー塗りつぶし等の利便性が向上する。また、その色と関連のある補色等も自動的に筆記でき、利便性が向上する。
本発明に係る実施の形態に対し、参考となる実施例1として、しきい間隔との比較を用いる筆記制御付きペンの構成を示す図である。
本発明に係る実施の形態に対し参考となる実施例1において、反射型の光センサの構成と、紙等の媒体との関係を示す図である。
本発明に係る実施の形態に対し参考となる実施例1において、しきい間隔との比較による筆記制御の手順を示すフローチャートである。
本発明に係る実施の形態に対し参考となる実施例1において、接触型近接センサを用いる筆記制御付きペンの構成を示す図である。
本発明に係る実施の形態に対し参考となる実施例1において、接触型近接センサの作用を説明する図である。
本発明に係る実施の形態に対し、参考となる実施例2として、道のり長さを用いる筆記制御付きペンの構成を示す図である。
本発明に係る実施の形態に対し参考となる実施例2において、道のり長さを用いる筆記制御の手順を示すフローチャートである。
本発明に係る実施の形態としての実施例3において、目標色との比較を用いる筆記制御付きペンの構成を示す図である。
本発明に係る実施の形態としての実施例3において、測色センサを備えるペン先を正面から見るときの様子を示す図である。
本発明に係る実施の形態としての実施例3において、目標色との比較を用いる筆記制御の手順を示すフローチャートである。
本発明に係る実施の形態としての実施例4において、測色モードと筆記モードとを有する筆記制御付きペンの構成を示す図である。
本発明に係る実施の形態としての実施例4において、測色モードと筆記モードとを用いる筆記制御の手順を示すフローチャートである。
符号の説明
10,12,14,16,18 筆記制御付きペン、22 筐体、24,25 インクジェットヘッド、26,27 インクタンク、28,80,82,84,86 吐出口、29 液滴、30 光センサ、32,66,92 センサ回路、34 基板、36 発光素子、38 受光素子、40 制御回路、42 電源回路、50 媒体、60 検出バー、62 接触スイッチ、64 道のりセンサ、72,74,76 発光窓、78 受光センサ、90 測色センサ、94 目標色切替センサ、96 認識ボタン。