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JP4794717B2 - 光走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置 - Google Patents

光走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置に関し、特に長尺プラスチックレンズ端部に設けられた補強用のフランジ部に入射する光束は透過するレンズ面の領域を非鏡面部として形成することによってフレアー光の発生が低減される、例えばデジタル複写機やレーザープリンター等の装置に好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より光走査光学装置はレーザビームプリンタ(LBP)やデジタル複写機等の書き込み光学系として広く応用されている。近年これらの装置が普及するに伴ってさらなる高画質化、高速化の要求が高まっている。例えば解像度600dpi以上の高画質化のためには被走査面上に60μm程度の微小スポットを形成する必要があるが、走査する光束径が大きくなるため光偏向器(ポリゴンミラー)の大型化が必要となり、高速化との両立が難しい問題点がある。
【0003】
しかしながら高速化のためのアプローチは種々提案されており、例えばビーム数を増やして並列ライン走査を行うマルチビーム走査方式や従来のUFS(Under Filled Scanner)方式(UFS光学系)に対抗してポリゴンミラーを小径多面化できるOFS(Over Filled Scanner)方式(OFS光学系)が提案されている。
【0004】
OFS方式は次に述べるUFS方式の高速化の問題点を克服する方式として有望である。
【0005】
UFS方式はポリゴンミラーの1偏向面(反射面)にその偏向面の主走査方向の幅よりも狭い、微小スポットを形成するための所定幅の光束を入射させて偏向走査する方式である。このUFS方式は偏向面の回転に伴って該偏向面上の入射光束の位置が変わるために所定の走査角範囲で入射光束がケラレないようにするためには偏向面の主走査方向の幅を一定以上大きくしなければならず、ポリゴンミラーの形状が大きくなるという問題点があった。ポリゴンミラーの偏向面の数を増やすと、更に形状が大型化し回転負荷が増大するので高速回転させるのが困難である。したがってUFS方式は一般にマルチビーム化による高速化の手法が採用され、マルチビーム化のための複雑な構成が必要とされる。
【0006】
また1偏向面で走査可能な理論的走査角と有効走査領域を走査する走査角の比率を走査効率と呼ぶが、UFS方式では入射光束が所定の光束幅を持つため、走査可能な角度は入射光束が偏向面でケラレないことが制約条件となる。光束径の大きい高解像度での仕様のUFS方式ではせいぜい走査効率は70%程度である。残りの30%は画像形成領域の前後に振り分けられ、光源を所定の出力に安定させたり、画像の書き出し位置のタイミングの検出などの電気的処理に利用される。
【0007】
また1ラインの画像形成領域の走査終了直後には一旦光源が消灯される。これは走査に寄与しない不要な光束が光学部材の端部、あるいは光学部材を支持する構造物に当たり、反射光や散乱光がフレアーとなって被走査面上へ到達し、画像が劣化することを防いでいる。
【0008】
尚、走査開始側では画像の書き出し位置を検出するために有効走査領域の手前から光源を点灯させておく必要があるため同様のフレアーの発生は避けがたく遮光板や光学部材、支持部材の形状を工夫してフレアー光が生じても被走査面へ到達しないようにしている。
【0009】
一方、OFS方式は光源から出射した光束をポリゴンミラーの偏向面に対し該偏向面の主走査方向の幅より広い状態で入射させ(ポリゴンミラーの複数の偏向面にまたがって光束を入射させ)、入射光束の中を1つの偏向面が回転移動して走査する方式である。入射光束幅は十分大きく設定されるのでポリゴンミラーの走査角によって光束がケラレる心配はない。偏向面の幅はUFS方式における入射光束幅と一致させることができるので偏向面の数を増やしてもポリゴンミラー径はUFS方式ほど大きくならず、面数を増やして高速走査させることが可能である。
【0010】
またOFS方式はその原理上100%の走査効率で走査することが可能であるが現実には光源の出力を安定させるための時間、走査開始までの画像の書き出し位置のタイミングを検出する時間を確保するために、例えば90%程度の走査効率に抑えられる。
【0011】
このようにOFS方式ではポリゴンミラーを大きくすることなく面数を増やし、かつ走査効率をあげることによって走査光学装置の高速化を達成することができる。更にOFS方式をマルチビーム化すればさらなる高速化が期待できることは言うまでもない。
【0012】
装置が高速化していくと1ラインの走査時間は短縮され、走査開始前のわずかな点灯準備期間内において相当な高速処理が要求される。これらの処理速度には回路制御デバイスの性能や光源の立ち上がり安定性等で決まる限度がある。
【0013】
さらにOFS方式ではUFS方式より走査効率が高いので一層厳しい状況にあり、1ラインの有効走査領域の終了直後に一旦光源を消灯している時間的余裕はまずない。即ち、すぐに次のライン走査が始まるために光源を一旦消灯してしまうと点灯後に所定の光量に到達するまでの立ち上がり時間が確保できず、ライン走査開始前に行っている画像の書き出し位置検出や光源の出力検知の精度等が低下し画像の劣化につながるなどの問題点があり、光束を消灯しない光学系が必要になる。
【0014】
【発明が解決しようとしている課題】
ところで走査光学系の走査レンズは高性能化、低コスト化の為にプラスチックレンズが使われることが多い。このプラスチックレンズは従来のガラスレンズに比べてレンズ面が柔らかく、傷つき易い為、外周部につばを張り出して構造的にレンズ面を保護している。またレンズ配置により主走査方向に長尺の形状になるとレンズ端部を構造的に補強する必要が生じ、主走査方向の端部の側面に補強用のフランジ部が必要になる。この補強用のフランジ部は主走査断面内において光軸方向に傾斜を持つ為、不要な走査光が入射すると該フランジ部の傾斜部で反射し、画像形成領域に向かうフレアー光となる。
【0015】
従って走査効率の高い走査光学系では補強用のフランジ部に走査光が入射することは避けられず、フレア対策が必要になる。
【0016】
本発明は第2の光学系を構成する1枚以上の長尺プラスチックレンズの主走査方向の端部に補強用のフランジ部を設け、該フランジ部に入射する光束が透過するレンズの入射面又は/及び出射面の該当領域は非鏡面(例えば拡散面)部に形成したことにより、フレアー光を有効に低減することができる光走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段および作用】
請求項1の発明の光走査光学装置は、光源手段と、偏向手段と、前記光源手段から射出された光束を前記偏向手段に入射させる第1の光学系と、前記偏向手段の偏向面にて偏向された光束を被走査面上の有効走査領域に結像させる第2の光学系と、を有する光走査光学装置であって、
前記光源手段から射出された光束が前記被走査面上の有効走査領域外を走査する際に前記光源手段から射出された光束が常時点灯しつづけるように設定されており、
前記第2の光学系は、長尺プラスチックレンズを備え、前記長尺プラスチックレンズは、主走査方向の端部にフランジ部を有し、前記フランジ部に入射する光束が透過する前記長尺プラスチックレンズの入射面の領域は、10%以下の透過率特性を有する拡散面であり、
主走査断面内において、前記フランジ部に入射する光束が透過するレンズ面の領域に向う光束の主光線と前記被走査面上の有効走査領域の端部に向う光束の主光線との前記長尺プラスチックレンズの入射面上での主走査方向の間隔が前記被走査面上の有効走査領域の端部に向う光束の主走査方向の光束幅の半値幅以上の大きさであり、かつ、
主走査断面内において、前記フランジ部と前記有効走査領域の中心に向う光束の主光線との成す角度が、前記フランジ部に入射する光束の主光線の入射角度よりも大きいことを特徴としている。
【0018】
請求項2の発明の画像形成装置は請求項1に記載の光走査光学装置と、前記光走査光学装置の被走査面に配置された感光ドラムと、前記感光ドラム上を光束が走査することによって形成された静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記現像されたトナー像を用紙に転写する転写手段と、転写されたトナー像を用紙に定着させる定着手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【0019】
請求項3の発明は請求項2の発明において、前記画像形成装置は、BAEプロセスにて画像が形成されることを特徴としている。
【0033】
請求項17の発明は請求項12の発明において、
前記フランジ部と前記有効走査領域の中心に向かう光束の主光線との成す角度が、該フランジ部に入射する光束の主光線の入射角度よりも大きく成るようにしたことを特徴としている。
【0034】
請求項18の発明は請求項12の発明において、
前記光走査光学装置は有効走査領域外を走査する光束の少なくとも一部を用いて前記被走査面上の走査開始位置のタイミングを制御する書き出し位置検出光学系を有し、
前記光源手段は光束が有効走査領域外を走査するときにおいても常に点灯し続けることを特徴としている。
【0035】
請求項19の発明は請求項12の発明において、
前記第1の光学系を介した光束は副走査断面内において前記偏向手段の偏向面に対して斜め方向から入射していることを特徴としている。
【0036】
請求項20の発明は請求項12の発明において、
前記第1の光学系を介した光束は主走査断面内において前記偏向手段の偏向角内から偏向面に入射していることを特徴としている。
【0037】
請求項21の発明の画像形成装置は、
前記請求項12乃至20の何れか1項記載の光走査光学装置と、該走査光学装置の被走査面に配置された感光体と、該感光体上を光束が走査することによって形成された静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、該現像されたトナー像を用紙に転写する転写手段と、転写されたトナー像を用紙に定着させる定着手段とを備えたことを特徴としている。
【0038】
請求項22の発明は請求項21の発明において、
BAEプロセスにて画像が形成されることを特徴としている。
【0039】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
図1(A)は本発明の走査光学装置の実施形態1の主走査断面図、図1(B)は図1(A)の副走査断面図,図1(C)は入射光学系を主走査断面と直交する平面で切った要部断面図(AA′断面図)である。
【0040】
尚、本明細書において主走査断面とはポリゴンミラーの回転軸に垂直な平面に投影した走査光学系の断面であり、副走査断面とはポリゴンミラーの回転軸を通り主走査断面と直交する平面で切り取られた断面を称す。
【0041】
図中、1はレーザユニット(光学ユニット)であり、光源手段としての半導体レーザ(レーザ光源)2と2枚の球面レンズを貼り合わせてなるコリメーターレンズ部3とを一体化にして構成しており、所定の光学調整を行なうことにより該コリメーターレンズ部3の光軸に対し平行な平行光束を射出するようにしている。またレーザユニット1は主走査断面内においてコリメーターレンズ部3の光軸と直交する矢印E方向に所定量だけ平行シフトして固定することが可能なシフト調整手段(不図示)を備えている。
【0042】
本実施形態における半導体レーザ2は光束が有効走査領域外(非有効走査部)を走査するときにおいても消灯せず、常時点灯するように設定している。即ち半導体レーザ2は画像形成終了後も消灯しつづけ、次のライン走査開始まで消灯することがない。
【0043】
4は負の屈折力を有する凹レンズであり、レーザユニット1を射出した平行光束を弱発散光束としている。5は開口絞りであり、通過光束を規制してビーム形状を成形している。6はシリンドリカルレンズであり、副走査方向にのみ所定の屈折力を有している。7は折り返しミラーであり、シリンドリカルレンズ6を通過した光束の光路を光偏向器10側へ折り曲げている。
【0044】
尚、コリメーターレンズ部3、凹レンズ4、開口絞り5、シリンドリカルレンズ6、そして折り返しミラー7の各要素は入射光学系41の一要素を構成しており、また入射光学系41、そして後述する第1、第2のfθレンズ8,9の各要素は第1の光学系42の一要素を構成している。
【0045】
10は偏向手段としてのポリゴンミラー(光偏向器)であり、モーター等の駆動手段(不図示)により図中矢印P方向に一定速度で回転している。
【0046】
43は第2の光学系であり、第1、第2のfθレンズを有するfθレンズ系44とプラスチック材より成る長尺のシリンドリカルレンズ(長尺シリンドリカルレンズ)11とを有している。本実施形態におけるfθレンズ系44は第1のfθレンズとしての球面凹レンズ8と第2のfθレンズとしてのシリンドリカルレンズ9とを有しており、主に主走査方向に屈折力を有し、fθ特性と主走査方向の像面湾曲を有効走査領域にわたって良好に補正している。長尺シリンドリカルレンズ11は主に副走査方向に屈折力を有しており、ポリゴンミラー10の偏向面と被走査面とを副走査断面内において略共役関係にしており、偏向面の面倒れによって被走査面としての感光ドラム面12上の照射位置がズレ、画像ピッチムラになることを防いでいる。また長尺シリンドリカルレンズ11は感光ドラム面12上における副走査方向の像面湾曲を抑え、かつ倍率を略一定に保ってスポット径の変動を抑えている。
【0047】
尚、長尺シリンドリカルレンズ11に主に副走査方向の屈折力をもたせ感光ドラム面12近傍に配置したのは、ポリゴンミラー10から感光ドラム面12までの副走査方向の結像倍率を1以下の縮小系とし、ポリゴンミラー10の回転軸回りの偏心に対してピッチむらが生じるのを緩和させるためである。
【0048】
12は被走査面としての感光ドラム面である。
【0049】
13は遮光部材であり、ポリゴンミラー10とfθレンズ系44との間に配置されており、ポリゴンミラー10で偏向反射された走査開始側および走査終端側の不要な光束(ポリゴンミラー10で偏向反射された光束のうち、有効走査領域外を走査する少なくとも一部の光束)を遮光している。
【0050】
34は反射ミラー(以下「BDミラー」とも記す。)であり、主走査方向の走査線上に配置されており、感光ドラム面12上の走査開始位置のタイミングを調整する為の同期検知用の光束(BD光束)を後述する同期検出素子38側へ反射させている。36は同期検出用のスリット(以下「BDスリット」とも記す。)であり、感光ドラム面12と等価な位置に配されており、画像の書き出し位置を決めている。37は集光レンズ(以下「BDレンズ」とも記す。)であり、BDミラー34と同期検出素子38とを共役な関係にする為のものであり、BDミラー34の面倒れを補正している。38は同期検出素子としての光センサー(以下「BDセンサー」とも記す。)であり、本実施形態では該BDセンサー38からの出力信号を検知して得られた同期信号(BD信号)を用いて感光ドラム面12上への画像記録の走査開始位置のタイミングを調整している。尚、BDスリット36,BDレンズ37,そしてBDセンサー38との各要素は書き出し位置検出光学系35の一要素を構成している。
【0051】
本実施形態においては上述の如く1ライン中の有効走査領域外においても光源を消灯せず、常時点灯させており、これにより画像の書き出し位置の検出精度や光源の出力安定性を向上させ、常に良好なる画像が得られるようにしている。また本実施形態の光走査光学装置の走査効率は80%以上と成るように各要素を設定している。
【0052】
ここで図1(A)を用いて本実施形態の光学的作用について説明する。
【0053】
図1(A)においてレーザユニット1を出射した平行光束は凹レンズ4で弱い発散光束に変換され、開口絞り5で光束径が整形され、シリンドリカルレンズ6を透過して折り返しミラー7で折り曲げられる。この光束はfθレンズ系44を構成する第2、第1のfθレンズ9,8を透過し、再び平行光束となってポリゴンミラー10の偏向角の略中央から偏向面に入射している(正面入射)。このときの平行光束の光束幅は主走査方向においてポリゴンミラー10の偏向面のファセット幅に対し十分広くなるように設定している。即ちポリゴンミラー10の複数の偏向面を照射する(オーバーフィルド走査系)。
【0054】
そしてポリゴンミラー10で偏向反射された光束は遮光板13で走査開始側および走査終端側の不要な光束が遮断され、再び第1、第2のfθレンズ8、9を透過し、感光ドラム面12上に導光され、該ポリゴンミラー10を矢印P方向に回転させることによって該感光ドラム面12上を矢印S方向に等速直線運動で走査している。これにより記録媒体としての感光ドラム面12上に画像記録を行っている。
【0055】
このときポリゴンミラー10で偏向反射された光束の一部は有効走査領域外の上流側において、BDミラー34により光路が折り曲げられ、書き出し位置検出光学系35に入射し、該書き出し位置検出光学系35で光束が通過した時間が検出される。即ちBDスリット36を横切った光束がBDセンサー38で信号波形として検出され、波形の立ち上がり時間を検出する。この検出時間から画像を書き始めるまでの時間から所定の遅延時間後に画像を書き始めることにより、ライン間の書き始め位置を揃えることができる。
【0056】
本実施形態では上記の如くレーザユニット1から出射した光束を第1の光学系42を介して主走査断面内において走査角内からポリゴンミラー10に入射させることによって、ポリゴンミラー10の偏向面の出入りによる非対称性を軽減させ、これにより第2の光学系43の結像性能を向上させている。
【0057】
次に図1(C)を用いて本実施形態の光学的作用について説明する。
【0058】
図1(C)においてレーザユニット1からシリンドリカルレンズ6までの各光学素子は同一光軸(AA′)上に配置され、この光軸AA′はポリゴンミラー10の回転軸に垂直な平面(直線)BB′に対してθ/2の角度で傾斜している。本実施形態ではθ/2=0.8度である。この斜入射角θ/2は走査範囲内からポリゴンミラー10に入射させる構成の場合は、該ポリゴンミラー10で偏向反射された走査光束と分離するために必須である。斜入射角θ/2は分離のためには大きいほど良いが、特殊なレンズを用いずに結像性能や走査線湾曲を抑えるには略1°以下が望ましい。
【0059】
レーザユニット1から出射した平行光束は凹レンズ4で弱い発散光束になり、開口絞り5で所定の光束径に整形され、シリンドリカルレンズ6により第2、第1のfθレンズ9、8を透過してポリゴンミラー10の偏向面10a上に結像される。折り返しミラー7はポリゴンミラー10の回転軸と平行に配置されており、これによりシリンドリカルレンズ6から斜めに入射した収束光はねじれることがなく、偏向面10aへ入射する焦線は光軸に垂直な面内で回転することなく向きは保たれる。
【0060】
主走査断面内において光偏向器の偏向面に光源から出射した光束を入射させる光学系の場合、光源が常時点灯していると、該光偏向器の偏向面の位置は該光偏向器の回転によって入射光束と垂直な関係になる場合がある。この場合、偏向面からの正反射光が光源に戻り、該光源の出力安定性を著しく損なう現象が生じる。せっかく光源を点灯し続けてもこの様な現象が生じては意味がない。
【0061】
そこで本実施形態では上述の如く第1の光学系42を介した光束を副走査断面内においてポリゴンミラー10の偏向面10aに対して斜め方向から入射させることにより、該偏向面10aからの正反射光が光源に戻らなくして、光源の一層の安定性を得ている。
【0062】
また本実施形態では上記の如くポリゴンミラー10の偏向面10aに対し斜め方向から光束を入射させることによって、主走査断面内においてポリゴンミラー10に入射させる角度を小さくし、これにより走査角を画像中心に対して対称に近づけることが可能になり、ポリゴンミラー10の偏向面の出入りによる非対称性を軽減させて第2の光学系43の結像性能を向上させている。
【0063】
次に図1(B)を用いて本実施形態の光学的作用について説明する。
【0064】
図1(B)においてポリゴンミラー10の偏向面10aに対し斜め方向から入射した光束は、該偏向面10aが回転するとともに円錐面を描いて偏向反射される。第1、第2のfθレンズ8、9の光軸は同図に示す直線BB′に対して略平行な方向に置かれ、入射出射する斜め光束に対して振り分けの配置にすることを基準としている。しかしながら実際は第1、第2のfθレンズ8、9はこの配置を基準として1度弱ほどわずかながら副走査断面内で傾斜して置かれる。このように傾けて配置することにより折り返しミラー7で反射した光束が第1、第2のfθレンズ8、9の表面で正反射しても、この正反射光が被走査面に向かうのを防ぐことができる。
【0065】
第2のfθレンズ9と感光ドラム面12との間には上述の如く主に副走査方向に屈折力を有する長尺シリンドリカルレンズ11が配置されており、これにより感光ドラム面12上に副走査方向の結像を行い、ポリゴンミラー10の偏向面10aと感光ドラム面12とを略共役の関係にしてポリゴンミラーの面倒れを補正している。また長尺シリンドリカルレンズ11は感光ドラム面12上における副走査方向の像面湾曲を抑え、かつ倍率を略一定に保ってスポット径の変動を抑えるためにレンズの副走査断面における曲率半径は両面とも長手方向に変化させている。さらに長尺シリンドリカルレンズ11に入射する光束の走査軌跡が湾曲しているため、感光ドラム面12上での走査線湾曲を抑え、結像性能を改善するために長尺シリンドリカルレンズ11の光軸は副走査方向に偏心しており、これにより入射光束は光軸から外れた位置を透過する。
【0066】
図2に偏心した長尺シリンドリカルレンズ11のレンズ形状を示す。同図に示すように光束中心がレンズ光軸の上方に位置するようにしている。このようなレンズ形状を実現するために長尺シリンドリカルレンズ11はプラスチックを成形して作成される。また長尺シリンドリカルレンズ11は主走査方向に屈折力を持たす必要がないので両面を同一の曲率とし、肉厚一定で成形性が安定する形状にしている。
【0067】
表−1にポリゴンミラー10から感光ドラム面12までの光学系の構成を示す。
【0068】
【表1】
Figure 0004794717
【0069】
次に各光学要素の光学的作用について説明する。
【0070】
レーザユニット1は半導体レーザ2とコリメーターレンズ部3との間隔および画角が調整されたものであり、コリメーターレンズ部3の光軸と平行に平行光束を出射し、所定の精度で取り付けられている。コリメーターレンズ部3は球面収差および色収差を低減するために半導体レーザ2側から凹、凸で硝材が異なる2つの球面レンズを貼り合わせて一体化した貼り合わせレンズより成っている。OFS光学系ではレーザユニット1から出射した平行光束の一部が主走査方向にポリゴンミラー10の偏向面10aで切り取られて偏向光束となるため、上記平行光束の走査に寄与する有効光束は走査角に比例して軸外に移動し、光束に含まれる球面収差の量が増大するためである。このため従来のUFS光学系であれば単レンズで十分なほど暗いF値(Fナンバー)であってもOFS光学系では球面収差を低減する貼り合わせレンズが必要になる。色収差は半導体レーザ2の波長が環境温度で変化するため、ピント変動を抑える目的で行われる。
【0071】
レーザユニット1から出射した平行光束は凹レンズ4で弱発散光束に変換され第2、第1のfθレンズ9、8を透過して再び拡大された平行光束に変換される。このような光学構成にするとレーザユニット1の半導体レーザ2とコリメーターレンズ部3とを一体として主走査方向に平行シフトするだけで半導体レーザ素子のチップの傾きによる平行光束中のレーザ強度分布の横ずれを補正することができる。図3(C)はこのときの補正状態を示した要部概略図である。尚、図3(A)は半導体レーザ素子のチップが傾いていない場合,図3(B)は半導体レーザ素子のチップが傾いている場合を示している。
【0072】
シフト調整手段はレーザユニット1内の構成に含まれ、入射光学系41への取付け部材に対し半導体レーザ2とコリメーターレンズ部3との位置関係を保持したまま主走査方向にシフト可能な機構を備えている。単独の治具上で行なわれるレーザーユニット1の光学特性の調整はピント及び画角調整を行なった後、光源2とコリメーターレンズ部3とを一体として主走査方向へシフトさせ、基準軸上に設けられた所定の開口を透過する光束について主走査方向に2分割された光束の強度の比が所定の値以下に成るようにシフト量が調整される。調整済みのレーザユニット1はレーザ強度のピークがほぼ入射光学系41の光軸に一致し、該光軸と平行な平行光束を出射するので単品としての互換性が保証できる。
【0073】
また凹レンズ4を光軸方向に移動させて主走査方向のピント変動を補正する。主走査方向のピントを補正する目的は以下に示す3つの理由による。
【0074】
(1)OFS光学系はUFS光学系に対してポリゴンミラーの偏向面の主走査方 向の幅が狭く、等価な主走査方向の面精度を確保するのが困難である。
【0075】
(2)光束は第1、第2のfθレンズ8,9を往復で透過するためfθレン ズの面精度の影響が2倍になる。さらにOFS光学系ではポリゴン面数が 増えるのでfθレンズの焦点距離が長くなり、面精度の敏感度が増大し てピント変動が無視できなくなる。
【0076】
(3)高解像度で微小スポットの要求に対し、狭い焦点深度範囲内にピント を補正する機構が必要である。
【0077】
一方、副走査方向のピント補正は凹レンズ4を調整した後に従来どおりシリンドリカルレンズ6を光軸方向に移動させて行なえば良い。
【0078】
折り返しミラー7は入射光束をポリゴンミラーの走査中心(偏向角の略中央)から入射させるための折り曲げミラーであり、第1の光学系41を折り畳んでコンパクトにしている。また折り返しミラー7はレーザユニット1からシリンドリカルレンズ6までの入射光学系41の部品公差で生じる斜入射角の誤差を補正し、ポリゴンミラー10の偏向面10aに所定の角度で入射させるために、図4(A),(B)に示すように主走査断面内で該折り返しミラー7と平行な回転軸廻りに調整可能な初期調整の機構を備えている。
【0079】
図4(A),(B)において回転軸は入射光線の高さと略一致し、ミラーの裏面にはこの高さに配置された支持部材(7a,7b)が支点となり、矢印で示したセットビスを回すことによりミラーを回転調整する。折り返しミラー7は反射された光束を観測系(不図示)で観察することにより所定の角度に調整され固定される。
【0080】
ポリゴンミラー10の偏向面10aに入射する光束の主走査方向の幅は開口絞り5で制限され、ポリゴンミラー10の走査角、入射光学系41の公差による光束のずれやポリゴンミラー10の位置精度を考慮して、該偏向面10aの主走査方向の幅の約2〜3倍に設定される。本実施形態では外接円径29mm、12面のポリゴンミラーであり、偏向面の幅7.5mmに対して18mm程度の入射光束である。副走査方向の絞りの幅は感光ドラム面12上のスポット径に関わっている。
【0081】
[遮光板の作用の説明]
次に遮光部材としての遮光板13の作用について説明する。
【0082】
本実施形態においては上述の如く半導体レーザ2は光束が有効走査領域外(非有効走査部)を走査するときにおいても消灯せず、常時点灯するように設定している。そこで本実施形態ではポリゴンミラー10で偏向反射された光束のうち走査開始側および走査終端側の不要な光束を遮光板13により遮断することにより、第1、第2のfθレンズ8、9や長尺シリンドリカルレンズ11の有効部外を照射してフレアー光が発生しないようにしている。
【0083】
尚、本実施形態では遮光板13を象徴的にポリゴンミラー10と第1のfθレンズ8との間に配置しているが、これに限らず遮光板13をさらに他の光学部材の前後に追加して複数配置しても良い。これによりフレアーの遮光効果はより完全なものとなる。
【0084】
[偏向面の境界部の形状の説明]
次にポリゴンミラーの隣接面(隣接する偏向面)の境界部(エッジ部)の形状について図5(A),(B)を用いて説明する。
【0085】
本実施形態においてポリゴンミラー10は12面の正多角形である。ポリゴンミラー10の隣接面の境界部(エッジ部)10bは稜線状のエッジ形状より成り、図5(B)に示すようにある程度の幅を有している。本実施形態ではこの境界部10bの幅(ポリゴンミラーが回転する方向の幅)がポリゴンミラー10の偏向面10aで偏向反射される光束の主走査方向の光束幅W、即ち偏向面10aに対して1%以下(好ましくは0.02%〜1%)と成るように設定している。本実施形態においては上述の如く光源が常時点灯しているので、隣接面の境界部10bが被走査面12と正対する瞬間が発生する。このとき境界部10bに正面から入射した光束の一部は図5(A)に示すように、該境界部10bの幅に比例した強度で正反射し、通常の走査光と同一の光路をたどって被走査面12上の中央を照射し、フレアー光となる。
【0086】
しかしながら本実施形態では上述の如く境界部10bの幅をポリゴンミラー10の偏向面10aで反射される光束の主走査方向の走査幅W(即ち偏向面10aの幅)に対して1%以下になるように設定しているので、フレアー光の強度比は同様に1%程度となり、これは実質的に画像に悪影響を与えることはない。また本実施形態では光束の主走査方向の強度ピークの90%以上となる領域がポリゴンミラーの隣接面の境界部10bに入射するように設定している。
【0087】
このように本実施形態においては上述の如く走査有効領域外においても光源が常に点灯する光走査光学装置において、ポリゴンミラー10の隣接面の境界部10bの幅をポリゴンミラー10の偏向面10aで反射される光束の主走査方向の走査幅Wに対して1%以下になるように設定することにより、該ポリゴンミラー10の境界部10bからの反射光がフレアー光として被走査面12に到達しても実質的に画像劣化が生じないようにしている。
【0088】
[偏向面の境界部の形状の他の説明]
図6はポリゴンミラーの主要部分の要部概略図である。
同図においてはポリゴンミラー10の隣接面の境界部において、一方の偏向面が他方の偏向面に延在しており、該延在する領域10cの長さが該ポリゴンミラー10の偏向面10aで偏向反射される光束の主走査方向の光束幅Wに対して5%以下(好ましくは1%〜5%)となるように設定している。即ち,ポリゴンミラー10の偏向面10aは、一方の境界部が隣接面から延在され、他方の境界部が隣接面に延在するように設定されている。
【0089】
このように本実施形態では上述の如く境界部の形状を形成することにより、前記図5(A)に示すような入射光が偏向面を照射してもフレアとはならず、延在する偏向面の光束幅γ分,該偏向面10aの幅が長くなっただけである。
【0090】
OFS光学系の場合は偏向面の主走査方向の幅が光束幅、すなわち主走査方向のスポット径を決めているので、これらの変化量を抑えるように許容値を決めればよい。通常5%程度のスポット径は許容されるので加工方法を工夫することにより、このような延在する形状を形成するとフレアは生じなくなる。また常に隣接面の一方向に延在するように加工すれば、延在量を含んだ偏向面の幅を略均一に管理でき、これにより主走査方向のスポット径の変動も抑えることができる。
【0091】
[長尺シリンドリカルレンズの支持方法の説明]
次に本発明に関わる長尺シリンドリカルレンズ11の支持方法について図7を用いて説明する。
【0092】
長尺シリンドリカルレンズ11は被走査面12近傍に配置されるので長尺の形状となる。そのため熱収縮や振動等を防止するには長尺シリンドリカルレンズ11を図7(A),(B),(C)に示すように取り付ける。
【0093】
即ち、同図(A)は長尺シリンドリカルレンズ11を入射面側から見た側面図、同図(B)は長尺シリンドリカルレンズ11を上方から見た上面図、同図(C)は出射面側から長尺シリンドリカルレンズ11が取り付けられている様子を示した説明図である。Liは光入射面、Loは光射出面である。
【0094】
同図(A)において14,14’は各々レンズ中央基準部である位置決め部であり、凹形状より成り、長尺シリンドリカルレンズ11の長手方向(主走査方向)の中央の上下に設けられている。本実施形態では位置決め部14と、ハウジング25から突出した嵌合部材22とを嵌合させることにより、該長尺シリンドリカルレンズ11の長手方向の位置を決めている。尚、嵌合部材22はハウジング25における長尺シリンドリカル11の長手方向の中央部に相当する所に設けられている。
【0095】
長尺シリンドリカルレンズ11の入出射面方向の姿勢は同図(A),(B)に示す各支持部材16、17により擬似的な3点受けと成り、これにより該当位置の長尺シリンドリカルレンズ11側は所定の平面度を確保している。支持部材16は長尺シリンドリカルレンズ11の高さ中央まで突出した線状の受け面より成り、支持部材17は長尺シリンドリカルレンズ11の高さに渡って突出した線状の受け面より成る。
【0096】
また長尺シリンドリカルレンズ11の上下方向(副走査方向)Tは同図(A)、(C)に示す該長尺シリンドリカルレンズ11の長手方向の端部に設けられた2つの突起15がハウジング25の座面に突き当たることによって位置決めされる。長尺シリンドリカルレンズ11は各位置決め部15と16,17に対向する位置を矢印20,21で示した方向からバネ部材(不図示)で押すことにより固定される。本実施形態では合計4点の支持点を持つ。尚、同図(B)に示す19は取付け方向の識別用面取り部である。外形形状を非対称にすることで取付け方向を間違えた場合は設置できないようにするためである。
【0097】
長尺シリンドリカルレンズ11は、その長手方向の両端で支持されるので中央部は空間に浮いており、外部からの振動の影響を受けやすい。
【0098】
本実施形態ではこの対策として同図(A),(B),(C)に示すように接着台座26を嵌合部材22とは独立に、かつ長尺シリンドリカルレンズ11と接触しないようにハウジング25上に設け、該長尺シリンドリカルレンズ11の外枠と該接着台座26との間隔を約0.4mm以下(好ましくは0.03mm〜0.4mm)に狭め、その位置に接着剤23を塗布して軽微な接着を行っている。このようにすれば接着強度は振動を抑える程度に軽微なものに管理することができ、前述の長尺シリンドリカルレンズ11の中央基準による嵌合及び4点支持による位置決め基準と矛盾することはない。尚、上記軽微とは位置決めの作用を乱さない程度に管理された接着力を意味する。接着剤23は紫外線硬化である。
【0099】
また本実施形態では同図(D)に示すように接着台座26と嵌合部材22との間(中央基準の間)に溝部27が形成されてあるので接着剤23が中央基準の間まで広がる心配はない。接着台座26を長尺シリンドリカルレンズ11側に設けないのは、該長尺シリンドリカルレンズ11の外形形状が複雑になって成形安定性を損なうことを避けるためである。
【0100】
このように本実施形態では上述の如く第2の光学系43を構成する長尺シリンドリカルレンズ11の長手方向の中央部に位置決め部14,14’を設け、ハウジング25上に該長尺シリンドリカルレンズ11とは接触しない接着台座26を備え、該接着台座26と該長尺シリンドリカルレンズ11との隙間に接着剤23を充填し、該長尺シリンドリカルレンズ11を該ハウジング25に固定することにより、外部からの振動の影響を防止し、該レンズの振動を抑えている。
【0101】
尚、長尺シリンドリカルレンズ側に突出した嵌合部材を設け、接着台座に凹形状の位置決め部を設けても良い。また後述するブランク露光があるBAEプロセスを用いた画像形成装置では、有効走査領域が長くなるので長尺シリンドリカルレンズの主走査方向の形状も同様に長くする必要があり、振動を拾いやすくなる。このことから上記に示した長尺レンズの支持方法は、特に有効といえる。また本実施形態では長尺シリンドリカルレンズを例にとり、その支持方法について説明してきたが、もちろん他の長尺レンズであっても良いことは言うまでもない。
【0102】
[長尺シリンドリカルレンズのフランジ部の説明]
図8(A),(B)は各々長尺シリンドリカルレンズの長手方向の端部付近の形状と該端部に入射する光束の主光線との関係を示した要部断面図である。同図(A)は主走査断面図、同図(B)は入射面側から見た要部断面図である。尚、不図示の他方の端部も同様な構成である。
【0103】
同図(A)においてプラスチック材より成る長尺シリンドリカルレンズ11は主走査方向の端部にレンズ補強用のフランジ部54を有しており(一体的に形成している)、該フランジ部54はレンズ面から光軸方向に傾斜角θ1の角度で突き出している。本実施形態ではフランジ部54に入射する光束(走査ビーム)が透過するレンズ面の該当領域を非鏡面部の表面状態に処理しており、本実施形態では拡散面より形成している。この拡散面は10%以下の透過率特性を有している。
【0104】
本実施形態においてポリゴンミラーで偏向走査された光束のうち、有効走査領域(もしくは画像形成領域)の端部に向かう光束はフランジ部54から離れた位置を透過して被走査面上に結像する。さらに偏向走査された光束は同図(B)に示すように斜線部55に入射するが、この斜線部55は上記の如く非鏡面部の領域であり、拡散面より形成されているので、この拡散面を透過する光束は指向性を失うことになる。よってフランジ部54に光束が入射しても十分に減衰、拡散されるので画像に影響を与えることはない。
【0105】
尚、斜線部55の非鏡面部の領域はレンズの入射面に限らず、出射面に形成してもよく、もしくは両面に形成しても良い。両面に非鏡面部の領域を形成しておけば十分なフレア対策として作用することができるので良い。
【0106】
また本実施形態では同図に示すように斜線部55に示す非鏡面部の領域と有効走査領域(もしくは画像形成領域)の端部に向かう光束の主光線との間隔dが光束の主走査方向の光束幅の半値幅以上となるように構成している。これにより有効走査領域の端部に向かう走査用の光束が斜線部55の非鏡面部の領域にかからないようにしている。
【0107】
さらに本実施形態では同図(A)に示すようにフランジ部54と有効走査領域の中心に向かう光束の主光線との成す角度θ1が、該フランジ部54に入射する光束の主光線の入射角度θ2よりも大きくなるように設定している。フランジ部54と有効走査領域の中心に向かう光束の主光線との成す角度θ1は該フランジ部54を形成する為の抜き勾配として必要な角度であるが、この角度θ1はフランジ部54の光軸方向の長さに比例する。フランジ部54の角度θ1が該フランジ部54に入射する光束の主光線の角度θ2より大きければ非鏡面部の領域で減衰、拡散された光束が有効走査領域(もしくは画像形成領域)外に逃がすことができるのでフレア対策はより完全なものに成る。但しフランジ部54の角度θ1を必要以上に大きくすると、本来のレンズ補強用のフランジ部としての最適値な角度からは外れてしまうため、レンズ構造上は必ずしも好ましいとは言えない。
【0108】
尚、斜線部55の非鏡面部の領域は透過率が10%以下の拡散作用を有する面であれば、その拡散性と合わせてフレアー光を有効に低減させることができる。また本実施形態ではこの斜線部55の領域を拡散面としたが、これに限らず、例えば光減衰作用を有する面(例えば非鏡面部の領域を黒色塗料で塗布)より形成しても本発明は前述の実施形態1と同様に適用することができる。
【0109】
[コンパクトに構成した走査光学装置の説明]
図9は図1に示した走査光学装置をコンパクトに構成したときの副走査断面図である。同図において図1に示した要素と同一要素には同符番を付している。
【0110】
同図において入射光学系及びポリゴンミラー10からfθレンズ系44までの光学部材は光学箱25の上面に配置され、ハの字ミラー52としての第1、第2の折り曲げミラー27、28を直角(ハの字)に配置することにより、光路を光学箱25の下面に取り回している。同図に示す1点鎖線は前記図1(B)のBB′で示した直線を第1、第2、第3の折り曲げミラー27,28,29によって折り曲げられた様子を示している。第1、第2の折り曲げミラー27,28はそれぞれ別個に光学箱25に取り付けられるが、互いの直角度の誤差を所定の範囲内に収めるために一方の折り曲げミラーには調整機構が設けられており、光学箱25の基準、例えばポリゴンミラーユニットの取付け座面に対して平行な光束がハの字ミラー52の透過後も平行で所定の高さを通るように該光学箱25との関係があらかじめ調整されている。
【0111】
第3の折り曲げミラー29は光学箱25から出射する光束を感光ドラム面12側に折り曲げるためのミラーである。第3の折り曲げミラー29は該ミラー29の裏面側を3点のセットビスで支持され、該3点のセットビスを調整することにより、感光ドラム面12への照射位置高さ(感光ドラム周方向の位置)、走査線傾き(感光ドラム回転軸と走査線の平行度)、全体倍率(第3の折り曲げミラーから感光ドラムまでの距離)が所定の性能に合わせられる。
【0112】
防塵ガラス30は感光ドラム面12近傍からの塵埃、飛散トナー等から光学部材の汚れを防止している。また防塵ガラス30は着脱可能で、適時清掃することによって汚れを取り除くことができる。ゴースト遮光板41はfθレンズ系44からの正反射光を遮光するための部材であり、光学箱25の底面を補強しているリブと遮光板とを兼用しており、ハの字ミラー52以降へ正反射光が抜けないように所定の高さに決められている。32,33は各々光学箱25を密閉するための蓋である。
【0113】
[実施形態2]
図10(A)は本発明の走査光学装置の実施形態2の主走査断面図、図10(B)は図10(A)のCC′断面図(CC′副走査断面図)である。同図(A),(B)において図1に示した要素と同一要素には同符番を付している。尚、同図(A)においては前記図1(A)に示した走査開始位置のタイミングを制御する書き出し位置検出光学系35等は省略している。
【0114】
本実施形態において前述の実施形態1と特に異なる点は入射光学系41をUFS光学系より構成し、ポリゴンミラー10の偏向面10aの大きさを実施形態1のポリゴンミラーに比して大きくした点、第2の光学系43を単一のレンズ(fθレンズ)45より構成した点である。その他の構成及び光学的作用は実施形態1と略同様であり、これにより同様な効果を得ている。
【0115】
即ち、本実施形態におけるポリゴンミラー10の偏向面10aの主走査方向の幅は、該ポリゴンミラー10で偏向反射されてfθレンズ45に向かう光束の光束径と同じ幅であるが、OFS光学系のポリゴンミラーの偏向面より3倍以上大きい。従って走査角が大きくなると入射光束径が偏向面でケラレてしまうので、例えば解像度600dpi、50枚機相当の装置では走査効率(duty)はせいぜい70%程度である。しかしながら、更なる高速化を目指すと1ラインの点灯時間そのものが短くなり、光源を消灯することが困難になってくる。UFS光学系の場合もOFS光学系ほどではないが、光源の常時点灯は必須となる。
【0116】
同図(B)においてレーザユニット1から出射した光束はシリンドリカルレンズ6の光軸を外れた位置を通過し、ポリゴンミラー10の偏向面10aに対して斜め方向から入射している。このようにポリゴンミラー10の偏向面10aに対し副走査断面内において斜め方向から光束を入射させることにより、該偏向面10aが主走査断面内において入射光学系の光軸と垂直な関係にあっても、該偏向面10aからの正反射光は光源に戻らないので、該光源の動作の安定性を確保することができる。
【0117】
本実施形態においても前述の実施形態1と同様に画像形成領域よりも外側の有効走査領域まで走査しなければならないので前記図8に示したようにフランジ部に入射する有効走査領域の端部に向かう光束の主光線の入射角は大きくなり、フレア対策の必要性はますます大きい。本実施形態では実施形態1と同様にフランジ部に入射する光束が透過するレンズのレンズ面(入射面又は/及び出射面)の領域を図8の斜線部55で示したように非鏡面(例えば拡散面)部で形成することによって、該フランジ部の有無に関係無くフレアー光を抑制することができる。
【0118】
[画像形成装置]
図11は本発明の光走査光学装置を用いた画像形成装置である電子写真プリンタの構成例を示す副走査方向の要部断面図である。
【0119】
図中、100は先に説明した本発明の実施形態1,2のいずれかの光走査光学装置を示す。101は静電潜像担持体たる感光ドラム(感光体)であり、該感光ドラム101の上方には該感光ドラム101の表面を一様に帯電せしめる帯電ローラ102が該表面に当接している。該帯電ローラ102の当接位置よりも下方の上記感光ドラム101の回転方向A下流側の帯電された表面には、光走査光学装置100によって走査される光ビーム(光束)103が照射されるようになっている。
【0120】
光ビーム103は、画像データに基づいて変調されており、この光ビーム103を照射することによって上記感光ドラム101の表面に静電潜像を形成せしめる。該静電潜像は、上記光ビーム103の照射位置よりもさらに上記感光ドラム101の回転方向A下流側で該感光ドラム101に当接するように配設された現像手段としての現像装置107によってトナー像として現像される。該トナー像は、上記感光ドラム101の下方で該感光ドラム101に対向するように配設された転写手段としての転写ローラ108によって転写材たる用紙112上に転写される。該用紙112は上記感光ドラム101の前方(図11において右側)の用紙カセット109内に収納されているが、手差しでも給紙が可能である。該用紙カセット109端部には、給紙ローラ110が配設されており、該用紙カセット109内の用紙112を搬送路へ送り込む。
【0121】
以上のようにして、未定着トナー像を転写された用紙112はさらに感光ドラム101後方(図11において左側)の定着手段としての定着器へと搬送される。該定着器は内部に定着ヒータ(図示せず)を有する定着ローラ113と該定着ローラ113に圧接するように配設された加圧ローラ114とで構成されており、転写部から搬送されてきた用紙112を上記定着ローラ113と加圧ローラ114の圧接部にて加圧しながら加熱することにより用紙112上の未定着トナー像を定着せしめる。更に定着ローラ113の後方には排紙ローラ116が配設されており、定着された用紙112をプリンタの外に排出する。
【0122】
[BAEプロセスを用いた画像形成装置]
また上記の画像形成装置はBAEプロセス(バックグランド露光方式)の画像形成装置に用いても好適である。
【0123】
ここでBAEプロセスとはBackground area exposureの略でネガトナーを用いた露光プロセスのことである。被走査面である感光ドラム面上に光束を照射していない部分が画像を形成する。BAEプロセスはアナログ複写機の露光プロセスの為、通常走査光学系に適用されるIAE(image area exposure)プロセスとはネガとポジとの関係にある。
【0124】
感光ドラムの露光面は走査方向の幅が画像形成領域よりも幅広いため、画像形成領域外の感光ドラムの領域を露光して現像されないようにする必要がある。この領域の露光をブランク露光と呼ぶ。アナログ機では一般に補助光源によって露光されていたが、走査光学系では走査ビームの走査幅を延長し、画像形成領域にブランク露光の幅を加えた領域を光学的に有効な走査領域とする。BAEプロセスでは露光する走査幅が長くなるので走査効率もより一層大きくなり、レンズの長尺化も必要となるので光学系は補強用のフランジ部を備えたレンズを有する。本装置では前述の如くフランジ部に入射する光束が透過するレンズのレンズ面(入射面又は/及び出射面)の領域を非鏡面(例えば拡散面)部より形成しており、これにより入射光束を十分減衰させ、フレアー光を有効に低減している。
【0125】
デジタル機としての光走査光学装置にアナログ機と同じBAEプロセスを用いることはトナー等の消耗品は普及しているアナログ機が築いたサービス体制や資産をそのまま利用できるのでアナログ機の置き換えをスムーズに移行できるなどのメリットがある。
【0126】
図12にBAEプロセスに適用した場合の1ラインの走査(1ライン走査幅)における有効走査領域、画像形成領域、ブランク露光領域の関係を示す。
【0127】
同図に示すようにBAEプロセスを用いた画像形成装置では被走査面を露光する有効走査部(有効走査領域)は画像形成領域の両側にブランク露光領域を備えるので走査幅が長くなり、走査効率が増大する。画像の書き出し位置を検出するBDセンサーはブランク露光よりも上流側に位置するので走査終了から書き出し位置までの時間はますます短くなる。この為、光源の安定には常時レーザーが点灯している必要がある。フレア対策としても遮光部材は必要である。これはUFS光学系およびOFS光学系に共通であるが、特にOFS光学系とBAEプロセスとを組み合わせた場合は走査効率(duty)が大きいので非有効走査部の時間は短く、光源の常時点灯は必須である。
【0128】
【発明の効果】
本発明によれば前述の如く第2の光学系を構成する1枚以上の長尺プラスチックレンズの主走査方向の端部に補強用のフランジ部を設け、該フランジ部に入射する光束が透過するレンズの入射面又は/及び出射面の該当領域は非鏡面(例えば拡散面)部に形成したことにより、フレアー光を有効に低減することができ、これにより良好なる画像を得ることができる光走査光学装置及びそれを用いた画像形成装置を達成することができる。
【0129】
本発明は通常のUFS光学系はもちろんのこと、OFS光学系を用いた光走査光学装置やBAEプロセスを用いた画像形成装置においても特に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1の要部断面図 (A)主走査断面図、(B)副走査断面図、(C)入射系AA′断面図
【図2】 長尺シリンドリカルレンズの偏心構造図
【図3】 レーザユニットのシフト調整の原理説明図
【図4】 ミラーの調整機構を示した説明図
【図5】 ポリゴンミラーのエッジによるフレアー光の説明図
【図6】 ポリゴンミラーのエッジによるフレアー光の説明図
【図7】 長尺シリンドリカルレンズの支持方法の説明図
【図8】 長尺シリンドリカルレンズの端部の説明図
【図9】 本発明の実施形態1の他の要部概略図
【図10】 本発明の実施形態2の要部概略図
【図11】 本発明の画像形成装置の副走査断面図
【図12】 BAEプロセスの走査光学系の1ラインの有効走査領域の説明図
【符号の説明】
1…レーザユニット
2…光源手段(半導体レーザ)
3…コリメータ−レンズ部
4…凹レンズ
5…開口絞り
6…シリンドリカルレンズ
7…折り返しミラー
8…球面凹レンズ
9…シリンドリカルレンズ
10…偏向手段(ポリゴンミラー)
11…長尺シリンドリカルレンズ
12…被走査面
13…遮光部材
41…入射光学系
42…第1の光学系
43…第2の光学系
44…fθレンズ系
45…fθレンズ
34…反射ミラー
35…書き出し位置検出光学系
36…スリット
37…集光レンズ
38…同期検出素子
14,14′…中央基準
15…基準
16,17…基準受け面
18…ゲート
19…面取り部
20…基準押さえバネ
21…基準押さえバネ
22…中央基準カンゴウ部材
23…UV接着剤
25…ハウジング
26…接着台座
27…ミラー
28…ミラー
29…ミラー
30…防塵ガラス
31…感光ドラム
32…上蓋
33…下蓋
54…フランジ部
55…斜線部
100 走査光学装置
101 感光ドラム
102 帯電ローラ
103 光ビーム
107 現像装置
108 転写ローラ
109 用紙カセット
110 給紙ローラ
112 転写材(用紙)
113 定着ローラ
114 加圧ローラ
116 排紙ローラ

Claims (3)

  1. 光源手段と、偏向手段と、前記光源手段から射出された光束を前記偏向手段に入射させる第1の光学系と、前記偏向手段の偏向面にて偏向された光束を被走査面上の有効走査領域に結像させる第2の光学系と、を有する光走査光学装置であって、
    前記光源手段から射出された光束が前記被走査面上の有効走査領域外を走査する際に前記光源手段から射出された光束が常時点灯しつづけるように設定されており、
    前記第2の光学系は、長尺プラスチックレンズを備え、前記長尺プラスチックレンズは、主走査方向の端部にフランジ部を有し、前記フランジ部に入射する光束が透過する前記長尺プラスチックレンズの入射面の領域は、10%以下の透過率特性を有する拡散面であり、
    主走査断面内において、前記フランジ部に入射する光束が透過するレンズ面の領域に向う光束の主光線と前記被走査面上の有効走査領域の端部に向う光束の主光線との前記長尺プラスチックレンズの入射面上での主走査方向の間隔が前記被走査面上の有効走査領域の端部に向う光束の主走査方向の光束幅の半値幅以上の大きさであり、かつ、
    主走査断面内において、前記フランジ部と前記有効走査領域の中心に向う光束の主光線との成す角度が、前記フランジ部に入射する光束の主光線の入射角度よりも大きいことを特徴とする光走査光学装置。
  2. 請求項1に記載の光走査光学装置と、前記光走査光学装置の被走査面に配置された感光ドラムと、前記感光ドラム上を光束が走査することによって形成された静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記現像されたトナー像を用紙に転写する転写手段と、転写されたトナー像を用紙に定着させる定着手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
  3. 前記画像形成装置は、BAEプロセスにて画像が形成されることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
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