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JP4788144B2 - 発光装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、発光装置の製造方法に関するものである。
近年、液晶ディスプレイに替わる自発発光型ディスプレイとして、有機物を用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と略記する)装置の開発が加速している。このような有機EL装置の作製方法として、EL材料の薄膜を液相法で形成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。同文献に記載の技術では、インクジェット法を用いて基板上に選択的に配置した液体EL材料の流動を防止するために、画素間にバンクと呼ばれる隔壁を設けている。また、特許文献2には、蒸着法やインクジェット法を用いてEL材料を成膜する際に、EL材料の蒸気又は液滴を帯電させ、電場によってEL材料の軌道を制御し、基板上への配置精度を高める技術が開示されている。
特開2000−323276号公報 特開2001−345179号公報
上記特許文献1に記載のように基板上にバンクを設け、バンクに囲まれる領域内に液体EL材料を配置することとすれば、基板上での液体EL材料の流動を防止でき、所定の位置にEL材料の薄膜を形成することができる。しかしながら、このバンクは液体EL材料を吐出する液滴吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)の精度や液滴の飛行状態までも補償するものではないため、液滴の着弾位置がずれた場合等に成膜不良を生じる可能性がある。そこで特許文献2に記載の技術を用いると、バンク上に形成した電極によって帯電させた液滴の軌道を制御することができ、液滴の着弾精度を高めることができると考えられる。しかしながら、特許文献2に記載の技術を用いる場合には、被成膜物であるアレイ基板上にバンクを立設しさらにバンク上にのみ選択的に電極を形成するという煩雑な工程が必要であるため、高コストにならざるを得ないという問題がある。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、液滴吐出法を用いて発光層等の機能層を形成する際の液滴の着弾精度を、製造コストの増加を伴うことなく向上させ、高歩留まりに発光装置を製造する方法を提供することを目的としている。また本発明は、前記製造方法を用いて好適な発光装置の製造装置を提供することを目的としている。
本発明は、上記課題を解決するために、発光層を含む機能層と電極とを具備した発光素子と、該発光素子に電気信号を供給する駆動回路とを基体上に備えてなる発光装置の製造方法であって、前記基体上に前記駆動回路及び前記発光素子の電極を形成する回路部形成工程と、前記電極上に前記機能層を液滴吐出法を用いて形成する機能層形成工程とを含み、前記機能層形成工程が、液滴吐出ヘッドから前記機能層を形成するための機能層形成材料を含む液滴を吐出するとともに帯電させ、前記帯電された液滴を、前記駆動回路によって前記液滴と異なる極性の電位に保持された前記電極上に配置する工程であることを特徴とする発光装置の製造方法を提供する。
本発明の製造方法では、液滴吐出ヘッドから吐出する液滴を帯電させ、この液滴と異なる極性の電位に保持した電極に対して着弾させるので、前記液滴と前記電極との間に吸引力を作用させて液滴を確実に電極上に着弾させることができる。そして、電極の電位制御を基体上に設けられた駆動回路によって行うので、電極の電位制御のための回路や配線等を別途基体上に形成する必要が無く、低コストに液滴の着弾精度を向上させることができる。したがって本発明の製造方法によれば、液滴吐出法を用いて機能層を形成する際の精度を高め、優れた特性の発光素子を具備した発光装置を歩留まりよく低コストに製造することができる。
また本発明は、発光層を含む機能層と電極とを具備した複数の発光素子と、該複数の発光素子に電気信号を供給する駆動回路とを基体上に備えてなる発光装置の製造方法であって、前記基体上に、前記駆動回路及び前記発光素子の電極を形成する回路部形成工程と、前記電極上に前記機能層を液滴吐出法を用いて形成する機能層形成工程とを含み、前記機能層形成工程が、液滴吐出ヘッドから前記機能層を形成するための機能層形成材料を含む液滴を吐出するとともに帯電させ、前記帯電された液滴を、前記駆動回路によって隣接する他の前記電極と異なる電位に保持された前記電極上に配置する工程であることを特徴とする発光装置の製造方法を提供する。
この製造方法では、帯電させた液滴を着弾させる電極の電位と、当該電極に隣接する他の電極の電位とを互いに異ならせることで、帯電させた液滴を着弾目標の電極に誘導し、正確な位置に着弾させることができる。したがって本製造方法によっても、低コストに液滴の着弾精度を高めることができ、優れた特性の発光素子を具備した発光装置を歩留まりよく製造することができる。
本発明の発光装置の製造方法では、前記機能層形成工程において、前記液滴吐出ヘッドにより前記液滴を吐出配置する前記電極の電位を、当該電極と隣接する他の電極の電位と、同じ極性の異なる電位にすることが好ましい。このような製造方法とすることで、前記帯電した液滴と、着弾目標の前記電極との吸引力を相対的に高めることができ、液滴を着弾目標の電極上に正確に着弾させることができる。これにより、機能層の品質の向上や、発光装置の歩留まりの向上を実現することができる。
本発明の発光装置の製造方法では、前記機能層形成工程において、前記液滴吐出ヘッドにより前記液滴を吐出配置する前記電極と隣接する他の前記電極の電位を、前記液滴と同一の極性の電位に保持することが好ましい。このような製造方法とすれば、着弾目標の電極以外の電極と、前記液滴との間に反発力を作用させることができ、液滴を着弾目標の電極上に誘導することができる。これにより、液滴の着弾精度を向上させ、発光装置を歩留まりよく製造することが可能になる。
本発明の発光装置の製造方法では、複数色の前記発光素子を具備した前記発光装置を製造するに際し、前記機能層形成工程において、前記液滴吐出ヘッドから前記液滴を吐出して形成する前記発光素子の電極と、他の色種の前記発光素子の前記電極とを互いに逆の極性の電位に保持することが好ましい。
この製造方法によれば、前記液滴と、その液滴の着弾目標の電極との間に吸引力を作用させ、他の色種の発光層が形成されるべき電極との間には反発力を作用させることができるので、液滴を正確に着弾目標の電極に着弾させることができる。また、これによって前記発光層の形成材料を含む液滴が他の色種の発光層に混入して表示品質を低下させることもなくなる。したがって本製造方法によれば、複数色の発光素子において鮮やかな発光色を得られる発光装置を高歩留まりに製造することができる。
本発明の発光装置の製造方法では、前記複数色の発光素子のうち、前記電極の平面積が小さいものから順に前記機能層形成工程を行うことが好ましい。電極上に液体材料が配置された前記電極においては、その液体材料の特性や、液体材料を乾燥させて得られる膜の特性によっては、電位制御が十分に行えないことも考えられるため、より高い液滴の着弾精度が要求される狭小な電極について先に液滴の吐出配置を行うことが好ましい。
本発明の発光装置の製造方法では、前記機能層を形成するための液体材料として、導電性を有する液体材料を用いることが好ましい。このような製造方法とすることで、液体材料を前記電極上に配置した後にも、電極の電位制御による帯電した液滴の誘導を良好に行うことができ、高精度に液滴を着弾させることができる。
本発明の発光装置の製造装置は、発光層を含む機能層と電極とを具備した発光素子と、該発光素子に電気信号を供給する駆動回路とを基体上に備えてなる発光装置の製造装置であって、前記機能層を形成するための機能層形成材料の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドから吐出される前記液滴を帯電させる帯電手段と、前記液滴吐出ヘッドと対向する位置にて前記基体を支持する基体支持手段と、前記基体支持手段に支持した前記基体の前記駆動回路を制御する駆動回路制御手段と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、前記液滴吐出ヘッドから吐出される液滴を前記帯電手段によって帯電させることができ、また前記液滴が配置される前記基体上の電極を、前記駆動回路制御手段により制御された前記基体上の駆動回路によって電位制御することができる製造装置が得られる。そして、この製造装置によれば、帯電させた液滴を電位制御された電極上に吐出配置することで、前記液滴と前記電極との間に吸引力を作用させ、前記液滴を着弾目標の電極上に正確に着弾させることができる。また、前記電極の電位制御は、基体上に設けられる駆動回路を介して行うので、高度な制御を簡素な構成の駆動回路制御手段によって行うことが可能であるため、安価に提供可能な制御装置となっている。したがって本発明の製造装置によれば、優れた特性を有する発光素子を液滴吐出法により形成することができ、高歩留まりに発光装置を製造することができる。
本発明の発光装置の製造装置では、前記駆動回路制御手段により前記電極に印加される電圧の極性と、前記帯電手段により前記液滴に付与される電荷の極性とが逆の極性であることが好ましい。このような構成とすることで、液滴吐出動作時に前記液滴と前記電極との間に吸引力を作用させることができ、液滴の着弾精度を高めることができる。
本発明の発光装置の製造装置では、前記帯電手段が、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出部に一体に設けられている構成とすることもできる。この構成によれば、液滴吐出ヘッドから吐出される液滴を容易に帯電させることができる。
本発明の発光装置の製造装置では、前記液滴吐出ヘッドから吐出された前記液滴を飛行中に帯電させる前記帯電手段を備えている構成としてもよい。このような構成とした場合にも、容易に液滴を帯電させることができる。
本発明の発光装置の製造装置では、前記基体支持手段又は前記液滴吐出ヘッドに、該液滴吐出ヘッドを前記基体に対して相対的に移動させる移動手段が設けられている構成とすることもできる。このような構成であれば、液滴吐出ヘッドを基体上で走査しつつ液滴吐出動作を行うことができ、複数の前記電極に対して連続的に液滴の吐出配置を行うことができる。
次に、本発明は、先に記載の本発明に係る製造方法によって製造されたことを特徴とする発光装置を提供する。かかる発光装置は、その発光素子の機能層が液滴吐出法により高精度に形成されたものであるから、優れた発光特性を有するものとなっている。
次に、本発明は、先に記載の本発明に係る発光装置を備えたことを特徴とする電子機器を提供する。この構成によれば、発光特性に優れた光源部、ないし表示部を具備した電子機器が提供される。
(発光装置の製造装置)
以下、本発明の発光装置の製造装置の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態において参照する各図にあっては、各部を見易くするために適宜大きさ等を変更して表示している。
図1は、本発明に係る発光装置の製造に好適に用いることができる製造装置の一例を示す概略斜視図である。本実施形態の発光装置の製造装置は、液滴吐出ヘッドを具備した液滴吐出装置であり、発光装置を構成する発光素子を液滴吐出法を用いて形成する装置である。図2は、図1に示す製造装置に設けられた液滴吐出ヘッドを示す図である。
図1に示す製造装置IJは、基板W表面の所定位置に選択的に液滴(インク滴)を配置することができる、いわゆる液滴吐出装置である。製造装置IJは、基台であるベース12と、ベース12上に設けられて基板Wを支持するステージ(基体支持手段)STと、ベース12とステージSTとの間に介在してステージSTを移動可能に支持する第1移動装置(移動手段)14と、ステージSTに支持された基板Wに対して液滴を定量的に吐出配置(滴下)可能な液滴吐出ヘッド20と、液滴吐出ヘッド20を移動可能に支持する第2移動装置(移動手段)16とを備えている。
さらに、液滴吐出ヘッド20とステージST(基板W)との間に、リング状のコイル71aを有する帯電装置(帯電手段)71が設けられている。帯電装置71のコイル71aは、内周の開口部を前記液滴吐出ヘッド20に対し位置決めされている。ステージSTには、同ステージ上に載置した基板Wの電子回路に電気的に接続可能な駆動回路制御装置(駆動回路制御手段)72が設けられている。
また、液滴吐出ヘッド20の液滴の吐出動作や、第1移動装置14及び第2移動装置16の移動動作を含む液滴吐出装置IJの動作を司る制御装置CONTが備えられており、さらにこの制御装置CONTは、上記帯電装置71及び駆動回路制御装置72にも接続されており、これらの装置に関する動作制御も行えるようになっている。
第1移動装置14はベース12上に設置されており、図示のY軸方向に沿って位置決めされている。第2移動装置16は、ベース12の後部12Aに立てられた支柱16A,16Aにより第1移動装置16の上方に支持されている。第2移動装置16のX軸方向は第1移動装置14のY軸方向と直交する方向である。ここで、Y軸方向はベース12の前部12Bと後部12A方向に沿った方向である。これに対してX軸方向はベース12の左右方向に沿った方向であり、各々水平である。また、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に垂直な方向である。
第1移動装置14は例えばリニアモータによって構成され、2本のガイドレール40と、これらのガイドレール40,40に沿って移動可能なスライダー42とを備えている。リニアモータ形式の第1移動装置14のスライダー42はガイドレール40に沿ってY軸方向に移動して位置決め可能である。スライダー42はZ軸回り(θ)用のモータ44を備えており、例えばダイレクトドライブモータからなるモータ44のロータは、ステージSTに固定されている。モータ44に通電すると、ロータとステージSTとをθ方向に沿って回転させることができ、ステージSTをインデックス(回転割り出し)することができる。すなわち、第1移動装置14はステージSTをY軸方向及びθ方向に移動可能である。
ステージSTは基板Wを所定位置に位置決めした状態にて支持するものである。ステージSTには吸着保持装置50が設けられており、この吸着保持装置50の動作によりステージST上に載置した基板Wを固定することができるようになっている。
第2移動装置16はリニアモータによって構成され、支柱16A,16Aに固定されたコラム16Bと、このコラム16Bに支持されているガイドレール62Aと、ガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動可能に支持されているスライダー60とを備えている。スライダー60はガイドレール62Aに沿ってX軸方向に移動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド20はスライダー60に取り付けられている。したがって、本実施形態の製造装置IJでは、先の第1移動装置14と上記第2移動装置16とによって液滴吐出ヘッド20と基板Wとを相対的に移動させ、互いに位置合わせするようになっている。
液滴吐出ヘッド20は揺動位置決め装置としてのモータ62,64,66,68を有している。モータ62を作動すれば、液滴吐出ヘッド20はZ軸に沿って上下動して位置決め可能である。このZ軸はX軸とY軸に対して各々直交する方向(上下方向)である。モータ64を作動すると、液滴吐出ヘッド20はY軸回りに沿って揺動して位置決め可能である。モータ66を作動すると、液滴吐出ヘッド20はX軸回りに揺動して位置決め可能である。モータ68を作動すると、液滴吐出ヘッド20はZ軸回りに揺動して位置決め可能である。すなわち、第2移動装置16は液滴吐出ヘッド20をX軸方向及びZ軸方向に移動可能に支持するとともに、この液滴吐出ヘッド20をθ方向、θ方向、θ方向に移動可能に支持する。
このように、図1に示す液滴吐出ヘッド20は、スライダー60上で複数の方向に平行移動ないし回転移動して位置決め可能であり、液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pを、基板Wに対し正確に位置決めすることができるようになっている。上記液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pには液滴を吐出する複数のノズルが設けられている。
ここで、図2を参照して液滴吐出ヘッド20の構成について説明する。図2(a)は液滴吐出ヘッド20を示す分解斜視図である。液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル81を有するノズルプレート80と、振動板85を有する圧力室基板90と、これらノズルプレート80と振動板85とを嵌め込んで支持する筐体88とを備えて構成されている。
液滴吐出ヘッド20の主要部構造は、図2(b)の斜視図(一部断面図)に示すように、圧力室基板90をノズルプレート80と振動板85とで挟み込んだ構造である。ノズルプレート80のノズル81は、各々圧力室基板90に区画形成された圧力室(キャビティ)91に対応している。圧力室基板90はシリコン単結晶基板を用いて形成されており、各キャビティ91はこのシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることにより形成されたものである。各キャビティ91は側壁92により所定の容積となるように区画されている。また、複数のキャビティ91が供給口94を介して共通の流路であるリザーバ93に連通している。
振動板85は、例えば酸化シリコン膜により構成され、前記リザーバ93に対応する位置にタンク口86が開口されている。タンク口86は、図1に示したタンク30から延びるパイプ(流路)31に接続され、タンク30から供給される任意の液体材料をリザーバ93に対して供給する。振動板85上の各キャビティ91に対応する位置に、それぞれ圧電体素子87が設けられており、圧電体素子87はPZT等の圧電性セラミックスの薄膜を上部電極および下部電極で挟んだ構造を備えている。各圧電体素子87は制御装置CONTから供給される吐出信号により弾性変形し、振動板85を変形させてキャビティ91の体積を変化させる。
液滴吐出ヘッド20から液滴を吐出するには、制御装置CONTから液滴を吐出させるための吐出信号を液滴吐出ヘッド20に入力する。すると、前記圧電体素子87がその上部電極と下部電極との間に加えられた電圧により弾性変形して振動板85を撓ませ、キャビティ91の体積を変化させる。この結果、キャビティ91に貯留されている液体材料の液滴がノズル81から吐出される。液滴が吐出されたキャビティ91には吐出によって減った分の液体材料がリザーバ93から供給される。
本実施形態に係る液滴吐出装置IJに備えられた液滴吐出ヘッド20は、圧電体素子に体積変化を生じさせて液滴を吐出させる構成であるが、発熱体により液体材料に熱を加えその膨張によって液滴を吐出させるような構成であってもよい。
図1に戻り、基板W上への吐出配置に供される液体材料は、液体材料調整装置Sから液滴吐出ヘッド20に対して供給されるようになっている。液体材料調整装置Sは、液体材料を収容するタンク30と、タンク内部の液体材料の温度を調整する温度調整装置32と、タンク内部の液体材料を攪拌する撹拌装置33とを備えている。温度調整装置32は、ヒータとその駆動装置とからなり、タンク30内の液体材料を任意の温度に調整し保持する。温度調整装置32も制御装置CONTにより制御することができ、かかる温度調整によりタンク30内の液体材料の粘度調整も可能である。
液滴吐出ヘッド20に対して位置決めされて配設される帯電装置71は、図1に示すようにリング状のコイル71aを備えており、液滴吐出ヘッド20の吐出面20Pから吐出された液滴がコイル71aの内側を通過するように配置されている。そして、帯電装置71は、制御装置CONTから供給される制御信号によって動作し、コイル71aの内側を通過する液滴を任意の極性に帯電させるようになっている。
ステージST上に配設された駆動回路制御装置72は、複数の接続端子からなる端子群72aを備えており、ステージST上に配置した基板Wに、かかる端子群72aを介して電気的に接続するようになっている。そして、制御装置CONTから入力される制御信号により動作し、基板W上に設けられている駆動回路(図示略)に対して所定の電気信号を供給して基板Wの駆動回路を動作させるようになっている。
以上の構成を具備した発光装置の製造装置IJは、液滴吐出ヘッド20を基板W上の任意の位置に移動させて液滴吐出動作を行うことで、タンク30に貯留されている液体材料の液滴を基板W上に選択的に配置することができ、基板W上に配置された液体材料を乾燥/焼成することで所望の機能性薄膜を得られるものである。そして、詳細な作用効果は後述するが、製造装置IJによれば、液滴吐出ヘッド20の液滴吐出方向側に配置された帯電装置71とステージST上に設けられた駆動回路制御装置72とを動作させつつ上記液滴吐出動作を行うことで、基板W上における液滴の着弾精度を高め、歩留まりよく発光装置を製造することができる。
なお、図1には液滴吐出ヘッド20と液体材料調整装置Sのそれぞれが1個ずつ図示されているが、製造装置IJには複数の液滴吐出ヘッド20及び液体材料調整装置Sを設けることができ、複数の液滴吐出ヘッド20のそれぞれから異種または同種の液体材料の液滴を吐出する構成とすることができる。
そして、かかる構成の製造装置を用いるならば、複数の液滴吐出ヘッド20のうち、第1の液滴吐出ヘッドを用いて第1の液体材料を基板W上に吐出配置し、これを焼成又は乾燥した後、第2の液滴吐出ヘッドから第2の液体材料を基板Wに対して吐出配置することで、複数の機能層を基板W上に積層形成することができる。さらに他の液滴吐出ヘッドを用いて同様の処理を行えば、3層以上の機能層を積層形成できるのは勿論である。
(発光装置の製造方法)
以下、本発明に係る発光装置の製造方法について説明する。本実施形態では、発光装置の一例として有機EL(エレクトロルミネッセンス)装置の構成とその製造方法について説明する。
図3は、本実施形態の有機EL装置の回路構成図、図4は、本実施形態の有機EL装置の平面構成図、図5は、本実施形態の有機EL装置の表示領域の部分断面構成図である。また図6から図12は、本実施形態の有機EL装置の製造工程を示す部分断面構成図である。図13は、本実施形態の製造方法における作用を説明するための説明図であって、有機EL装置を構成する基板の部分断面構成図であり、図14は、同、有機EL装置を構成する基板の部分平面構成図である。
<有機EL装置>
本実施形態の有機EL装置(発光装置)は、図3に示すように、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を具備している。走査線101と信号線102との各交点付近に画素領域Pが形成されている。信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
更に、画素領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用薄膜トランジスタ(スイッチング用TFT)122と、このスイッチング用TFT122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用薄膜トランジスタ(駆動用TFT)123と、駆動用TFT123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、画素電極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。電極111と陰極12と有機EL層110とが、図示の有機EL装置における発光素子を構成している。
上記回路構成において、走査側駆動回路105から走査線101を介してスイッチング用TFT122のゲートにスイッチング信号が入力されると、スイッチング用TFTがオン状態になり、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、この保持容量capの状態に応じて駆動用TFT123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用TFT123のチャネルを介して電源線103から画素電極111に電流が流入し、この電流によって発光素子(有機EL層110)の発光動作が行われる。
本実施形態の有機EL装置は、図5に示すように、ガラス等からなる透明な基板2と、基板2上に平面視マトリクス状に配置された複数の発光素子を備えた発光素子部11と、この発光素子部11上に形成された陰極12とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とが表示素子10を構成している。基板2は、例えばガラス等の透明基板である。
一方、図4に示す平面構成図をみると、基板2の平面領域は、その中央部に位置する表示領域2aと、基板2の周縁側に位置して表示領域2aを囲む非表示領域2cとに概略区画されている。
表示領域2aには、先の発光素子(画素)がマトリクス状に配列されている。本実施形態の場合、図4に示すように、赤色に発光するR画素群、緑色に発光するG画素群、及び青色に発光するB画素群がそれぞれ図示上下方向に延びるストライプ状に周期的に配列されている。
表示領域2aの外側の非表示領域2cには、前述の電源線103(103R、103G、103B)等が配線されている。表示領域2aの図示左右方向両側に、前述の走査側駆動回路105、105が配置されており、これらの走査側駆動回路105、105の両側に、駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。駆動回路用制御信号配線105a及び駆動回路用電源配線105bはいずれも走査側駆動回路105に接続されている。表示領域2aの図示上方には、データ側駆動回路104が配置されている。製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行う検査回路を設けた構成としてもよい。
図5の断面構成図には、3つの画素領域Pが図示されている。本実施形態の有機EL装置では、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14と、画素電極111及び有機EL層110が形成された発光素子部11と、陰極12とを順に積層した構成を備えている。有機EL層110から基板2側に発せられた光は、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射され、有機EL層110から基板2の反対側に発せられた光は、陰極12により反射された後、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。すなわち、本実施形態の有機EL装置はボトムエミッション型の有機EL装置として構成されている。
なお、本実施形態の有機EL装置は発光素子で生じた光を基板2と反対側に取り出すトップエミッション型のとすることもできる。この場合、上記陰極12として透明な材料を用い、画素電極111に光反射性の金属膜を用いた構成となる。同構成における陰極12に適用可能な陰極材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電材料を挙げることができる。
回路素子部14には、画素電極111に接続される駆動用TFT123が形成されている。駆動用TFT123は、半導体膜141と、ゲート絶縁膜142と、ソース電極145と、ドレイン電極146とを備えたものである。なお、図示の断面構成には含まれていないが、スイッチング用TFT122も駆動用TFT123と同層に設けられており、有機EL装置の製造に際しては前記両TFT122,123は同一工程で形成できるものである。
駆動用TFT123の半導体膜141は、基板2上に形成された酸化シリコン等の下地保護膜2c上に形成された島状の多結晶シリコン膜からなるものである。半導体膜141には、ソース領域141a、ドレイン領域141b、及びチャネル領域141cが形成されている。本実施形態の場合、ソース領域141a及びドレイン領域141bはリンイオン等の不純物を膜中に導入してなる高濃度不純物領域であり、チャネル領域141cは、イオン導入を全く行わない真性半導体領域、又は微量濃度のイオンを導入した微量濃度不純物領域である。
半導体膜141を含む下地絶縁膜2c上に酸化シリコン等からなるゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成されている。ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には、いずれも透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cと対向して設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して第2層間絶縁膜144b表面の領域と半導体膜141のソース領域141aとを接続するコンタクトホール内に、ソース電極145が形成されており、第1層間絶縁膜144aを貫通して第1層間絶縁膜144a表面の領域と半導体膜141のドレイン領域141bとを接続するコンタクトホール内にドレイン電極146が形成されている。
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定形状にパターン形成されており、先のソース電極145により画素電極111と半導体膜141のソース領域141aとが電気的に接続されている。また、第1層間絶縁膜144a上に形成された電源線103が、先のドレイン電極146を介して半導体膜141のドレイン領域141bと電気的に接続されている。
発光素子部11には、隣接する画素電極111間に立設されたバンク部112と、このバンク部112に囲まれた領域の画素電極111上に積層された有機EL層110とを含んでいる。さらに複数の有機EL層110とバンク部112とを覆うように陰極12が形成されている。そして、画素電極111と、有機EL層110と、陰極12とが発光素子を構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されており、平面視略矩形状を成してパターン形成されている。
バンク部112は、図5に示すように、基板2側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112a上に、第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bを積層した構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiOやSiO等の無機絶縁材料によって形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機絶縁材料によって形成されている。
無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bは、画素電極111の周縁部と一部平面的に重なるようにして形成されており、この画素電極111と重なる領域において、無機物バンク層112aが有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に突出して配置されている。このように画素電極111の内側に配置された無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cを形成している。また同様に、無機物バンク層111a上に配された有機物バンク層112bの内壁面が上部開口部112dを形成している。
上部開口部112dは、基板2側に形成されている下部開口部112cより間口が広く形成されており、かつ図示上側(有機物バンク層112bの開口端側)に向かって開口径が大きくなるように形成されている。すなわち、上部開口部112dを形成する有機物バンク層112bは、その内壁面が傾斜面を成すように形成されている。そして、これらの下部開口部112cと上部開口部112dとにより形成される画素電極111上の空間が、バンク部112の開口部112gを形成している。
また、バンク部112の表面を含む基板2上の領域には、親液性を示す領域と撥液性を示す領域とが形成されている。親液性を示す領域には、無機物バンク層112aの第1積層部112eの表面と、画素電極111の電極面111aとが含まれる。これらの領域は、例えば、酸素を処理ガスとするプラズマ処理により形成される。また、撥液性を示す領域には、上部開口部112dの壁面と有機物バンク層112の上面112fとが含まれる。これらの領域は、例えば、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理により形成される。
有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとを備えている。正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性を向上させることができる。また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子との再結合により発光する。
正孔注入/輸送層110aは、本実施形態の場合、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2とを含んで構成されている。このように無機物バンク層の第1積層部112e上に不均一な厚さの周縁部110a2が形成されていると、周縁部110a2が第1積層部112eによって画素電極111から絶縁された状態となるので、周縁部110a2から発光層110bに正孔が注入されることがなくなる。これにより、画素電極111からの電流が平坦部112a1のみに流れるようになり、正孔を平坦部112a1から発光層110bの中央部分のみに均一に輸送させ、均一な発光を得ることができる。
発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。本実施形態の場合、発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を含んでおり、図4に示した表示領域2aには各発光層110b1〜110b3が、各色ごとに平面視ストライプ状に配列されている。
なお、正孔注入/輸送層110aの形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bの形成材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
陰極12は、発光素子部11を覆って全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す機能を奏する。この陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層との積層膜により形成することができる。この場合、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する機能を奏する。
陰極12のアルミニウム層は、発光層110bから発した光を基板2側に反射させる機能をも奏するので、アルミニウムの他に、銀や、銀とアルミニウムの積層体等の光反射性の金属膜を用いることもできる。さらにアルミニウム層上にシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等からなる酸化防止用の保護層を設けてもよい。
なお、発光層110bと陰極12との間には、発光効率を高めるためにフッ化リチウム膜等を設けることもできる。この場合、特定色の有機EL層110上にのみフッ化リチウム膜を設けてもよい。例えば、青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウム膜を設けた構成とすることができる。
また図示は省略したが、実際の有機EL装置では図5に示す発光素子部11上に封止部材が配設される。封止部材は、陰極12または発光素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられるものであり、例えば封止缶や封止樹脂が用いられる。封止缶を用いる場合には封止缶を発光素子部11を覆うように基板2に被着して接合し、封止缶と基板2との間に発光素子部11を封止する。封止缶と発光素子部11との間に、エポキシ樹脂等の封止樹脂を充填してもよい。あるいは、前記封止缶の内側に、水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
<有機EL装置の製造方法>
次に、上記有機EL装置を製造する方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)バンク部形成工程、(2)正孔注入/輸送層形成工程(機能層形成工程)、(3)発光層形成工程(機能層形成工程)、(4)陰極形成工程及び(5)封止工程等を有する。また前記各工程のうち、機能層形成工程である(2)正孔注入/輸送層形成工程、及び(3)発光層形成工程については、本発明に係る発光装置の製造装置(液滴吐出装置)IJを用いた液体吐出法(インクジェット法)により行われる。
なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じて工程の省略や他の工程の追加が可能である。
(1)バンク部形成工程
バンク部形成工程では、基板2の所定位置にバンク部112を形成する。バンク部112は、無機物バンク層(第1のバンク層)112aと、有機物バンク層(第2のバンク層)112bとを積層した構造を有している。なお以下では、基板2上には、駆動用TFT123や第1層間絶縁層144を備えた回路素子部14、や画素電極111等が予め形成されているものとして説明する。
[無機物バンク層の形成]
まず、図6に示すように、回路素子部14及び画素電極111が形成された基板2上の所定位置に、無機物バンク層112aを形成する。無機物バンク層112aが形成される位置は、隣接する画素電極111の間の第2層間絶縁膜144b上であり、無機物バンク層112aの外縁部は一部画素電極111上に乗り上げて形成される。
具体的には、まず、CVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によってSiO、TiO等の無機材料の薄膜(無機物膜)を基板2上に成膜する。その後、前記無機物膜を公知のフォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより、下部開口部112cを無機物膜に開口することで、無機物バンク層112aを形成する。このとき、下部開口部112aは画素電極111の平面領域内に形成され、無機物バンク層112aにより縁取られた画素電極111上の領域が有機EL素子の発光領域となる。更に、無機物バンク層112aの膜厚は50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
[有機物バンク層の形成]
次に、図6に示すように、無機物バンク層11a上に第2のバンク層としての有機物バンク層112bを形成する。有機物バンク層112bの形成材料としては、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する有機絶縁材料が好適に用いられる。
具体的には、まず、上記有機絶縁材料を含む液状体を基板2上の全面に塗布することで無機物バンク層112bを含む基板2上の領域を覆う樹脂膜を形成する。そして、公知のフォトリソグラフィ技術を用いてこの樹脂膜をパターニングすることで、電極面111a及び下部開口部112cに対応する位置に上部開口部112dを開口して有機物バンク層112bとする。上記樹脂膜のパターニングに際しては、樹脂膜上にフォトレジストのマスク材を形成して樹脂膜をエッチングする方法を用いてもよいが、感光性の有機絶縁材料を用いて前記樹脂膜を形成すれば、樹脂膜を直接露光、現像できるようになることから工数を削減でき、都合がよい。
ここで、上部開口部112dは、図6に示すように、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cより広い間口に形成することが好ましい。さらに、有機物バンク層112bは、その底面側端部では画素電極111の幅より狭く、有機物バンク層112bの上端部では画素電極111の幅とほぼ同一の幅に形成することが好ましい。すなわち、有機物バンク層112bの下側端部から、下部開口部112cを成す第1積層部112eが画素電極111の中央側に突出している形状とすることが好ましい。
このようにして無機物バンク層112aの下部開口部112c上に上部開口部112dを形成することにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成される。
また、有機物バンク層112bの厚さ(高さ)は、0.1μm〜3.5μmの範囲が好ましく、特に2μm程度がよい。厚さが0.1μm未満では、後段の工程で形成する正孔注入/輸送層及び発光層の合計厚より有機物バンク層112bが薄くなるおそれがあり、発光層110bが上部開口部112dの外側にはみ出すと異なる色種の発光層が混ざり合って正確な発光色が得られなくなるおそれがある。一方、3.5μmを超える厚さになると、上部開口部112dによる段差が大きくなり、後段の工程で有機物バンク層112bを覆って形成される陰極12のステップカバレッジが確保できなくなるおそれがある。また、有機物バンク層112bの厚さを2μm以上とすれば、陰極12と駆動用の薄膜トランジスタ123との絶縁を高めることができる点で好ましい。
さらに、バンク部112、及び画素電極111の表面には、プラズマ処理により適切な表面処理を施すことが好ましい。一例を挙げるならば、以下に示す手順でバンク部112表面の撥液化処理、及び画素電極111等の親液化処理を行うのがよい。
上記表面処理に際しては、まず、基板2上の全面に酸素ガスを用いたOプラズマ処理を施すことで、親液化処理を行う。例えば、プラズマパワー100kW〜800kW、酸素ガス流量50ml/min〜100ml/min、板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件でOプラズマ処理を施すことで、画素電極111表面を含む基板2上の表面領域を親液化することができる。また、このOプラズマ処理により画素電極111表面の清浄化、及び仕事関数の調整も同時に行うことができる。
次に、所定部分を撥液化するために、例えばテトラフルオロメタンを用いたCFプラズマ処理による撥液化処理を行う。例えば、プラズマパワー100kW〜800kW、4フッ化メタンガス流量50ml/min〜100ml/min、基板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で、上記親液化処理後の基板2上の全面に撥液化処理を施す。すると、酸化物を含む画素電極111及び第1積層部112eは撥液化されにくいために親液状態に保持され、その一方で有機絶縁材料からなる有機物バンク層112bの上部開口部112d及び上面112fは良好に撥液化される。以上の工程により、基板2上に親液領域(画素電極111表面、第1積層部112e)と撥液領域(有機物バンク層112b表面)とを形成することができる。
(2)正孔注入/輸送層形成工程
次に発光素子形成工程では、まず画素電極111上に正孔注入/輸送層を形成する。
正孔注入/輸送層形成工程では、図1に示した製造装置IJを用いた液滴吐出法により、正孔注入/輸送層形成材料を含む液体材料を電極面111a上に吐出配置する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上及び無機物バンク層112a上に正孔注入/輸送層110aを形成する。なおここでは、正孔注入/輸送層110aが第1積層部112e上に形成される場合について説明するが、正孔注入/輸送層110aが画素電極111上にのみ形成される場合も製造手順自体は同様である。
製造装置IJを用いて正孔注入/輸送層110aを形成するには、まず、図1に示した基板Wとして、(1)バンク部形成工程までが終了した基板2をステージST上に載置する。そして、基板2上に既に形成されている駆動回路104,105と接続された外部接続端子に対して、駆動回路制御装置72の端子群72aを接続する。これにより、制御装置CONTに接続された駆動回路制御装置72によって、基板2上の駆動回路104,105を動作制御できる状態となる。
また、上記駆動回路制御装置72とともに、液滴吐出ヘッド20、ステージST、及びステージSTと液滴吐出ヘッド20との間に配設された帯電装置71を、制御装置CONTにより制御可能な状態とする。すなわち、上記液滴吐出ヘッド20、ステージST、帯電装置71、及び駆動回路制御装置72の動作を制御装置CONTにより連動させ得る状態とする。
上記製造装置IJの準備が完了したならば、図7に示すように、液滴吐出ヘッド20に形成された複数のノズルから正孔注入/輸送層形成材料を含む液体材料の液滴を吐出する。すなわち、バンク112により区画された画素電極面111aに液滴吐出ヘッド20のノズルプレート80を対向させ、この液滴吐出ヘッド20と基板2とを相対移動させつつ、ノズルプレート80に設けられたノズル(81)から1滴当たりの液量が制御された液体材料の液滴110cを電極面111a上に吐出する。
なお、図7では、液滴吐出ヘッドを走査することにより各画素毎に液滴を配置するように表示しているが、基板2を走査することによっても可能である。特に本実施形態では、ステージSTとスライダー60とによって基板2と液滴吐出ヘッドととを相対的に移動させることで基板2上の所定位置に液滴を配置することができる。なお、これ以降の液滴吐出ヘッドを用いて行う工程では上記の点は同様である。
そして、本実施形態の製造装置IJでは、液滴吐出ヘッド20とステージSTとの間に設けられた帯電装置71、及び基板2の外部接続端子に接続された駆動回路制御装置72とによって、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴110cを正確に目標の画素電極面111aに着弾させることができるようになっている。以下、かかる作用につき、図13及び図14を参照して説明する。
図13は、本実施形態の製造方法における作用を説明するための基板2の部分断面構成図であり、同図には基板2とともに製造装置IJの要部を併せて表示している。また、図14は、液滴110を吐出配置する際の基板2表面における電位の状態を示す平面構成図である。
図13に示すように、本実施形態の製造装置IJでは、液滴吐出ヘッド20に対して帯電装置71のコイル71aが位置決めされて配置されており、さらに基板2に既設の駆動回路104,105に対して駆動回路制御装置72が接続されている。帯電装置71及び駆動回路制御装置72は、製造装置IJの制御装置CONTに接続されている。そして、上記構成の製造装置IJを動作させると、帯電装置71は、制御装置CONTから入力される制御信号に基づきコイル71aに所定電流を流し、液滴吐出ヘッド20から吐出されてコイル71aの内側を通過する液滴110cを所定の極性(図13では(+)極性)に帯電させる。また、駆動回路制御装置72は、制御装置CONTから入力される制御信号に基づいて駆動回路104,105を動作させ、TFT123を介して画素電極111に所定の電圧を書き込み、例えば図13に示すように、液滴110cの着弾目標である図示中央(G画素)の画素電極111を(−)極性の電位に保持し、他のR画素(図示左側)、B画素(図示右側)の画素電極111をいずれも(+)極性の電位に保持するようになっている。
このように、製造装置IJは、帯電装置71及び駆動回路制御装置72により液滴吐出ヘッド20から吐出される液滴110cの帯電状態と、着弾目標である画素電極111の電位状態とを制御することができるようになっている。図13に示すように、液滴110cを(+)極性に帯電させ、着弾目標の画素電極111を(−)極性の電位に保持するならば、液滴110cは、着弾目標の画素電極111に引き寄せられて正確に着弾し、所定量の液体材料を選択的に画素電極111上に配置することができる。またこのとき、着弾目標の画素電極111に隣接するR画素、B画素の画素電極111は、いずれも液滴110cと同極性(+)の電位に保持されているので、液滴110cはこれらR画素、B画素の画素電極111により形成される電界の反発力によってさらに着弾目標のG画素の画素電極111側へ集中するようになっている。
なお、上記帯電装置71による液滴110cの帯電動作と、駆動回路制御装置72による画素電極111の電位制御は、図13に示した組み合わせに限定されるものではなく、種々の形態が適用可能である。例えば、帯電装置71によって液滴110cを(−)極性に帯電させ、かかる液滴110cの着弾目標の画素電極111を、駆動回路制御装置72(及び駆動回路104,105)によって(+)極性の電位に保持する場合にも上記と同様の効果を得ることができる。
また、基板2上に平面的に配列形成されている画素電極111の電位の状態についても、図14に示すように種々の形態を採ることができる。なお、図14に符号Psを付して示す画素電極111が、液滴の着弾目標であり、同画素電極上に配置される液滴は帯電装置71により(+)極性に帯電されるものとする。
図14(a)に示す形態では、図示上下方向に延びるストライプ状に配列されているR画素群、G画素群、B画素群の各画素電極111について、G画素群の画素電極111を(−)極性の電位に保持し、これらのG画素群を挟んで配置されているR画素群及びB画素群の画素電極111を(+)極性の電位に保持している。このように電位制御することで、G画素群の画素電極111上に順次液滴を吐出配置する場合に、隣接するR画素群及びB画素群の画素電極111上に液滴が配置されるのを良好に防止することができ、正確な量の液体材料をバンク部112に囲まれる領域内に配置することができる。
次に、図14(b)に示す形態では、図示上下方向に延びるストライプ状に配列されているR画素群、G画素群、B画素群の各画素電極111について、R画素群及びB画素群の画素電極111について(+)極性の電位に保持するのは(a)に示す形態と同様であるが、G画素群の画素電極111のうち、液滴の着弾目標である図示中央の画素電極Psのみを(−)極性の電位に保持するようになっている。すなわち、着弾目標の画素電極111のみを(+)極性に帯電した液滴と引き寄せ合う(−)極性の電位に保持するようになっており、かかる形態を採用することで、(a)に示した形態よりもさらに液滴の着弾精度を向上させることが可能である。
次に、図14(c)に示す形態では、(a)、(b)のいずれとも異なり、着弾目標の画素電極111のみを(−)極性の電位に保持するようになっている。このようにして画素電極111の電位制御を行った場合にも、(−)極性の電位に保持された着弾目標の画素電極Psは、(+)極性に帯電した液滴を引き寄せるので、画素電極111の電位制御を行わない場合に比して液滴の着弾精度を向上させることができる。
また本実施形態において、上記駆動回路制御装置72による画素電極111の電位制御は、基板2に対する液滴吐出ヘッド20の相対移動に追随して行われるようになっている。すなわち、1つの画素電極111に対する液滴110cの吐出配置が終了し、液滴吐出ヘッド20が次の着弾目標の画素電極111上に移動したならば、駆動回路制御装置72は、液滴吐出ヘッド20の移動先の画素電極111の電位を、液滴吐出ヘッド20から吐出される液滴110cを引き寄せる(−)極性の電位に変更する。以後液滴吐出ヘッド20の走査に連動して画素電極111の電位を変更し、液滴吐出ヘッド20が吐出する液滴110cを、正確に着弾目標の画素電極111上に導くよう画素電極111の電位を制御する。
この正孔注入/輸送層形成工程で用いる液体材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
より具体的な組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、上記液体材料の粘度は1mPa・s〜20mPa・s程度が好ましく、特に4mPa・s〜15mPa・s程度が良い。
上記のように調製した液体材料を用いることにより、ノズルの目詰まりを良好に防止しつつ安定に液滴を吐出することができる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R画素)、緑(G画素)、青(B画素)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、各発光層毎に変えても良い。
上述したように液滴吐出ヘッド20から吐出され、飛行経路を制御されつつ基板2上に到達した液滴110cは、親液処理された電極面111a及び第1積層部112e上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。本実施形態の製造装置IJでは、液滴110cが着弾目標の画素電極111に引き寄せられるため、基板2上の正確な位置に液滴110cを配置することができるが、仮に液滴110cが目標位置から外れてバンク部112の上面112f上に配置されたとしても、上面112fの表面が撥液処理されているので、液滴110cはバンク部112の表面で弾かれて開口部112g内に転がり込むようになっている。
なお、上記工程において、電極面111a上に吐出配置する液体材料の量は、開口部112gの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、液体材料中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により適宜決定する。
以上のような材料塗布工程を行ったならば、次に、図8に示す乾燥工程を行う。つまり、開口部112g内に満たされた液体材料110cを乾燥処理して液体材料中の溶媒を蒸発させることにより、正孔注入/輸送層110aを形成する。乾燥処理を行うと、液体材料に含まれる溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。これにより、図8に示すように、無機バンク層112aの第1積層部112e上に、正孔注入/輸送層形成材料からなる周縁部110a2が形成される。この周縁部110a2は、上部開口部112dの壁面(有機物バンク層112b)とも密着しており、その厚さが電極面111aに近い側では薄く、電極面111aから離れた側(有機物バンク層112bに近い側)で厚くなっている。
また、これと同時に、乾燥処理によって電極面111a上でも溶媒の蒸発が起き、これにより電極面111a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部110a1が形成される。電極面111a上では溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面111a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部110a1が形成される。このようにして、周縁部110a2及び平坦部110a1からなる正孔注入/輸送層110aが形成される。なお、本実施形態では周縁部110a2が形成される場合について説明しているが、画素領域の構成によっては電極面111a上のみに正孔注入/輸送層が形成される場合もあり、かかる態様であっても構わない。
上記乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば133.3Pa(1Torr)程度にして行うことが好ましい。圧力が低すぎると液体材料110cが突沸するおそれがあるため好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、形成される膜の平坦性を損なうおそれがある。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中で200℃、10分程度の熱処理を行い、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
上記の正孔注入/輸送層形成工程では、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴110cが、帯電装置71による帯電制御及び駆動回路制御装置72による電位制御によって正確な位置に配置されて、下部、上部開口部112c、112d内に満たされる一方で、撥液処理された有機物バンク層112bで液体材料が弾かれて下部、上部開口部112c、112d内に保持される。これにより、所定量の液体材料110cを開口部112g内に充填することができ、電極面111a上に正確な膜厚の正孔注入/輸送層110aを形成することができる。
(3)発光層形成工程
発光層形成工程は、発光層形成材料吐出工程と乾燥工程とを含む。前述の正孔注入/輸送層形成工程と同様、インクジェット法により発光層形成用の液体材料を正孔注入/輸送層110a上に吐出配置する。その後、吐出した液体材料を乾燥処理(及び熱処理)して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
図9に、インクジェット法により発光層形成用材料を含む液体材料の吐出工程を示す。図示の通り、液滴吐出ヘッド20と基板2とを相対的に移動させつつ、液滴吐出ヘッド20に形成されたノズルから各色(例えばここでは青色(B))の発光層形成材料を含有する液体材料110eの液滴を基板2上に吐出配置する。具体的には、下部開口部112c及び上部開口部112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに前記ノズルを対向させた状態で1滴当たりの液量を制御された液体材料の液滴を吐出し、バンク部112に囲まれた領域内を液体材料110eで満たす。
本実施形態では、上記液体材料110eの配置に続けて、他の発光層用の液体材料の吐出配置を行う。つまり、図10に示すように、基板2上に滴下された液滴110eを乾燥させることなく、緑色の発光層形成材料を含む液体材料110fと、赤色の発光層形成材料を含む液体材料110gをバンク部112に囲まれる領域内に吐出配置する。このように各色の発光層110b1〜110b3を形成するための液体材料110e〜110gの滴下を行うに際しては、各色の発光層形成材料を含む液体材料をそれぞれ充填した複数の液滴吐出ヘッドを、それぞれ独立に走査して基板2上への液滴110e〜110gの配置を行う。あるいは、前記複数の液滴吐出ヘッドを一体に走査することにより、ほぼ同時に液体材料110e〜110fの吐出配置を行えるようにしてもよい。
図10に示すように、吐出された各液体材料110e〜110gは、正孔注入/輸送層110a上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。また仮に液体材料110e〜110gの液滴の着弾位置がずれてバンク部の上面112fに乗り上げたとしても、この上面112fは撥液処理されているため、乗り上げた液滴は弾かれて下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
発光層形成工程において各正孔注入/輸送層110a上に吐出する液体材料量は、先の正孔注入/輸送層形成工程と同様、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする発光層110bの厚さ、液体材料中の発光層材料の濃度等により適宜調整すればよい。
本実施形態の場合、この発光層形成工程においても、本発明に係る製造装置IJによる液体材料の吐出配置が行われる。つまり、液滴吐出ヘッド20から吐出した液体材料110e〜110gの液滴を帯電装置71により所定の極性に帯電させ、駆動回路制御装置72により前記液滴とは逆の極性に電位制御された画素電極111(正孔注入/輸送層110a)上に着弾させることで、液体材料の吐出配置が行われる。したがって、発光層形成工程においても、着弾目標の画素領域(バンク部112に囲まれた領域)に正確に液体材料110e〜110fを配置することができる。特に発光層形成工程では、隣接する他の色の画素領域への液体材料の混入が生じると、発光色が変化して画質の低下を招くおそれがあるが、本実施形態の製造装置IJを用いることで、正確な位置に正確な量の液体材料を吐出配置できるので、高輝度、高色純度の発光素子を形成することができ、高画質の有機EL装置を製造することができる。
発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。そして、これら発光層形成材料を溶解ないし分散させるための溶媒は、各色発光層毎に同じ種類のものを用いることが好ましい。
上記発光層形成材料を含む液体材料110e〜110gを基板2上の所定位置に配置したならば、次に、一括に乾燥処理を施すことで液体材料から溶媒を除去し、図11に示すような赤色(R)発光層110b1、緑色(G)発光層110b2、青色(B)発光層110b3を形成する。この液体材料の乾燥処理は、真空乾燥により行うことが好ましく、例えば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とした条件により行うことができる。圧力が低すぎると液体材料が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、発光層形成材料が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
上記真空乾燥が終了したならば、次に、ホットプレート等の加熱手段を用いて発光層110bのアニール処理を行うことが好ましい。このアニール処理は、各有機EL層の発光特性を最大限に引き出せる共通の温度と時間で行う。以上の工程により、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
なお、前記発光層形成材料吐出工程に先立ち、正孔注入/輸送層110aの表面を表面改質するために表面改質工程を行うものとしても良い。
発光層形成工程では、正孔注入/輸送層110aの再溶解を防止するために、発光層形成の際に用いる液体材料の溶媒として、正孔注入/輸送層110aに対して不溶な溶媒を用いるものとするのが好ましい。しかし、その一方で正孔注入/輸送層110aは、溶媒に対する親和性が低いため、溶媒を含む液体材料を正孔注入/輸送層110a上に吐出しても、正孔注入/輸送層110aと発光層110bとを密着させることができなくなるか、あるいは発光層110bを均一に塗布できないおそれがある。そこで、正孔注入/輸送層110aの表面に対する液体材料の親和性を高めるために、発光層形成の前に表面改質工程を行うとよい。
表面改質工程は、発光層形成の際に用いる液体材料の溶媒と同一溶媒又はこれに類する溶媒である表面改質材料を、インクジェット法(液滴吐出法)、スピンコート法又はディップ法により正孔注入/輸送層110a上に塗布し、乾燥する方法により行うことができる。ここで用いる表面改質材料としては、液体材料の溶媒と同一なものとして例えば、シクロへキシルベンゼン、イソプロピルビフェニル、トリメチルベンゼン等を例示でき、液体材料の溶媒に類するものとして例えば、テトラメチルベンゼントルエン、トルエン、キシレン等を例示できる。
(4)陰極形成工程
次に、図12に示すように、画素電極(陽極)111と対をなす電極である陰極12を形成する。すなわち、各色発光層110bと有機物バンク層112bとを含む基板2上の領域全面に、例えばカルシウム層とアルミニウム層とを順次積層することで陰極12を形成する。これにより、各色発光層110bの形成領域に、赤色、緑色、青色の各色に対応する有機EL素子がそれぞれ形成される。
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。また陰極12上に、酸化防止のためにSiO、SiN等の保護層を設けても良い。
(5)封止工程
最後に、有機EL素子が形成された基板2と、別途用意した封止基板(図示略)とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板を配置する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されることがあるので好ましくない。
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上に設けられている駆動回路に回路素子部14の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置が完成する。
以上説明した本実施形態の製造方法では、液滴吐出装置である製造装置IJを用いて液滴吐出を行う際に、製造装置IJに備えられた帯電装置71により液滴を所定の極性に帯電させ、さらにステージST上に載置した基板2の駆動回路に接続された駆動回路制御装置72によって前記液滴の着弾目標である画素電極111を前記液滴とは逆の極性の電位に保持するようになっている。これにより、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴をその着弾目標である画素電極111に引き寄せることができ、正確な位置に正確な量の液体材料を配置でき、もって正確な膜厚で均一な膜質の正孔注入/輸送層110a、及び発光層110bを形成することができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、高画質表示が可能な有機EL装置を歩留まりよく製造することができる。
特に、基板2側の画素電極111の電位制御を行うのに、基板2上の駆動回路104,105を利用していることから、簡素な構成の駆動回路制御装置72であっても正確な電位制御を自在に行うことができるという利点がある。
また、図14(a)、(b)に示したように、前記液滴の吐出配置に際して、着弾目標の画素電極111に隣接する画素電極111を液滴と同極性の電位に保持するならば、これらの隣接する画素電極により形成される電界が液滴に対して反発力を作用するので、さらに高精度に液滴を目標位置に着弾させることができるようになる。
このように本発明に係る製造方法によれば、液滴吐出ヘッド20から吐出される液滴を正確な位置に着弾させることができるので、極めて微細な画素領域を有する高精細有機EL装置の製造に特に好適である。
なお、本実施形態では、表示領域2aに形成される各色の画素領域の大きさがほぼ同一である場合について説明したが、各色の発光層110bの寿命や発光効率の差異に応じて画素領域の大きさを異ならせた有機EL装置も知られている。このような有機EL装置では、例えば、赤色に発光するR画素の発光面積Sと、青色に発光するB画素の発光面積Sと、緑色に発光するG画素の発光面積Sとが、S:S:S=1.2:1.0:0.8なる関係を満たすように各色の発光素子が形成される。
このような構成の有機EL装置の製造に際しても本発明に係る製造方法は問題なく適用することができ、高画質の表示が可能な有機EL装置を製造することができる。そして、本発明に係る製造方法を上記有機EL装置に適用する場合、発光面積の小さい画素領域(上記の例ではG画素)から先に機能層(正孔注入/輸送層、発光層)形成のための液滴の吐出配置を行うことが好ましい。画素電極111上に液体材料が配置されると、液体材料の有する導電性の程度に応じて液体材料表面の電位が変化するため、帯電した液滴に対する反発力が弱まることも考えられる。そこで、より高い着弾精度が要求される発光面積の小さい画素領域については、他の画素領域よりも先に液体材料の吐出配置を行うことが好ましい。このような製造方法を採用することで、画素領域の面積によらず正確に液滴を着弾させることができ、高品質の正孔注入/輸送層や発光層の形成を行うことができる。
(電子機器)
図15は、本発明に係る電子機器の一実施形態を示している。本実施形態の電子機器は、上述した有機EL装置を表示手段として備えている。ここでは、携帯電話の一例を斜視図で示しており、符号1000は携帯電話本体を示し、符号1001は上記実施形態の有機EL装置を用いた表示部を示している。このように本実施形態に係る有機EL装置を表示手段として備える電子機器によれば、良好な発色の高精細表示が可能である。
実施形態に係る発光装置の製造装置の斜視構成図。 同、液滴吐出ヘッドの斜視構成を示す説明図。 発光装置の一例である有機EL装置の回路構成図。 同、平面構成図。 同、表示領域における部分断面構成図。 実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す部分断面構成図。 実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す部分断面構成図。 実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す部分断面構成図。 実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す部分断面構成図。 実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す部分断面構成図。 実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す部分断面構成図。 実施形態に係る有機EL装置の製造工程を示す部分断面構成図。 同、製造方法における作用を説明するための部分断面構成図。 同、製造方法における作用を説明するための部分平面構成図。 電子機器の一例を示す斜視構成図。
符号の説明
14 第1移動装置(移動手段)、16 第2移動装置(移動手段)、20 液滴吐出ヘッド、20P 吐出面、71 帯電装置(帯電手段)、71a コイル、72 駆動回路制御装置(駆動回路制御手段)、72a 端子群、104 データ側駆動回路(駆動回路)、105 走査側駆動回路(駆動回路)、CONT 制御装置、IJ 発光装置の製造装置(液滴吐出装置)、P 画素領域、Ps 処理対象画素領域、ST ステージ(基体支持手段)、W 基板(基体)。

Claims (5)

  1. 発光層を含む機能層と電極とを具備した複数の発光素子と、該複数の発光素子に電気信号を供給する駆動回路とを基体上に備えてなる発光装置の製造方法であって、
    前記基体上に、前記駆動回路及び前記発光素子の電極を形成する回路部形成工程と、記電極上に前記機能層液滴吐出法を用いて形成する機能層形成工程とを含み、
    前記機能層形成工程が、液滴吐出ヘッドから前記機能層を形成するための機能層形成材料を含む液滴を吐出するとともに帯電させ、
    前記帯電された液滴を、前記駆動回路によって隣接する他の前記電極と異なる電位に保持された前記電極上に配置する工程であって、
    前記複数色の発光素子のうち、前記電極の平面積が小さいものから順に前記液滴の吐出を行うことを特徴とする発光装置の製造方法。
  2. 前記機能層形成工程において、前記液滴吐出ヘッドにより前記液滴を吐出配置する前記電極の電位を、当該電極と隣接する他の電極の電位と、同じ極性の異なる電位にすることを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
  3. 前記機能層形成工程において、前記液滴吐出ヘッドにより前記液滴を吐出配置する前記電極と隣接する他の前記電極の電位を、前記液滴と同一の極性の電位に保持することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
  4. 複数色の前記発光素子を具備した前記発光装置を製造するに際し、
    前記機能層形成工程において、前記液滴吐出ヘッドから前記液滴を吐出して形成する前記発光素子の電極と、他の色種の前記発光素子の前記電極とを互いに逆の極性の電位に保持することを特徴とする請求項1に記載の発光装置の製造方法。
  5. 前記機能層を形成するに際して、導電性を有する液体材料を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
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