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JP4760669B2 - 吸着モジュールおよび吸着モジュールの製造方法 - Google Patents

吸着モジュールおよび吸着モジュールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、吸着モジュールおよび吸着モジュールの製造方法に関し、例えば吸着剤が気相冷媒を吸着する作用を用いて冷媒を蒸発させ、その蒸発潜熱により冷凍能力を発揮する吸着器に適用して好適なものである。
従来この種の吸着器は、吸着剤を充填した吸着熱交換器と、吸着剤が吸着/脱離する被吸着媒体が蒸発/凝縮する熱交換器とを有し、これら熱交換器を、吸着器の外枠を構成する真空保持可能な容器内に収容するものがある(特許文献1参照)。
特許文献1の開示する技術では、吸着熱交換器に、銅粉などを焼結したものが伝熱促進材として利用されている。この技術では、上記銅粉と吸着剤を混合し、焼結形成させたもので、熱交換媒体が流れる伝熱管を一体的に被包している。
なお、吸着器を構成する吸着熱交換器および上記熱交換器を個別に製作し、次いで容器の内部に、個々に製作された吸着熱交換器および熱交換器を収容した状態で、気密に組付けられている。
特開平4−148194号公報
しかしながら、上記特許文献1による従来技術では、吸着剤が充填された吸着熱交換器とこれを内部に収容する容器とをそれぞれ別々に製作した後に、これらを組み付けて一体化する構成となっているため、多くの製造工程を要するという問題があった。
発明者らは、伝熱管を容器内に配置して伝熱管の周辺部に銅粉を充填し、次いで炉中で、この真空容器と伝熱管とのろう付けと、銅粉などの金属粉を多孔質伝熱体とした焼結結合とを同時に行なうことにより、吸着モジュールを得ることを検討している。
このような吸気モジュールでは、容器内に金属粉が充填されているために、伝熱管と容器とのろう付け部に金属粉が接触する可能性がある。場合によっては、炉中で容器と伝熱管とのろう付けを行なう際に、溶けたろう材が伝熱管と容器との接合部から金属粉によって吸上げられ、ろう付け不良を発生させるおそれがある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、焼結体として焼結結合される金属粉によるろう材吸上げを防止する吸着モジュールおよび吸着モジュールの製造方法を提供することにある。
また、別の目的は、焼結体として焼結結合される金属粉によるろう材吸上げを防止するとともに、優れた生産性が図れる吸着モジュールおよび吸着モジュールの製造方法を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
すなわち、請求項1乃至13に記載の発明では、熱交換媒体が流れる複数の熱媒体管(21)と、熱媒体管(21)の周囲に多孔質伝熱体(23)として焼結結合された金属粉(23b)と、熱媒体管(21)の周辺部に存在する吸着剤(24)と、多孔質伝熱体(23)および吸着剤(24)を、真空保持可能に内部に収容する筐体(3)とを備えた吸気モジュールにおいて、筐体(3)は、内部の収容空間を、ろう材(81)によって互いにろう付けされた複数の部材(31、32、33、34、35)によって区画されるように構成され、熱媒体管(21)は、複数の部材(31、32、33、34、35)のうち、熱媒体管(21)が貫通する支持部材(32、33)とろう材(81)によってろう付けされるように構成され、
筐体(3)のろう付け部を接合するろう材が配置されている部位と、多孔質伝熱体(23)として焼結結合された金属粉(23b)との間に、隙間(δ)が設けられていることを特徴とする。
これによると、筐体(3)のろう付け部を接合するろう材(81)が配置されている部位と、熱媒体管(21)の外側を覆う多孔質伝熱体(23)の金属粉(23b)との間に、隙間(δ)が設けられているので、ろう材(81)が配置されるろう付け部と金属粉(23b)が接触することはない。したがって、ろう付けのために炉中等で加熱される際に、多孔質伝熱体(23)として焼結される金属粉(23b)によるろう材(81)吸上げを防止することができる。
また、請求項2に記載の発明では、多孔質伝熱体(23)は、粉末状、粒子状、および繊維状のいずれかの金属粉(23b)を焼結することによって形成されていることを特徴とする。
これによると、請求項1の記載の如く、ろう材が配置されている部位と、金属粉(23b)との間に隙間(δ)を設けているため、多孔質伝熱体(23)を焼結により形成する金属粉(23b)の形状が、粉末状、粒子状、および繊維状のいずれの形状であっても、金属粉(23b)によるろう材(81)吸上げが防止される。
また、隙間(δ)は、請求項3に記載の発明の如く、筐体(3)内に充填された金属粉(23b)を圧縮して形状維持させることによって、形成されていることが好ましい。
一般に、吸着剤を、多孔質伝熱体の細孔すなわち金属粉間に形成された細孔に充填するために、例えば筐体内に、金属粉および吸着剤を充填した後に、筐体内に充填された金属粉を外部から圧縮する。
これに対して請求項3に記載の発明では、前述の圧縮を、筐体(3)内に充填された金属粉(23b)が形状維持する程度に金属粉(23b)を押し当てるようにするだけでよいので、構成を複雑にすることなく、安価な吸着モジュールを提供することが可能である。
また、隙間(δ)内には、請求項4に記載の発明の如く、筐体(3)内に充填された金属粉(23b)を保持する仮止め板(41)が設けられていることが好ましい。
これにより、筐体(3)内に充填された金属粉(23b)を仮止め板(41)で押し当てる等して金属粉(23b)を保持することができるので、筐体(3)内に充填された金属粉(23b)の形状維持が確実にでき、従って隙間(δ)が確実に確保される。
特に、請求項5に記載の発明では、仮止め板(41)は、弾性体で形成されていることを特徴とする。
これによると、仮止め板(41)は弾性体で形成されているため、隙間(δ)内に仮止め板(41)を配置することによって金属粉(23b)を押し当てることができる。したがって、隙間(δ)確保のために、仮止め板(41)を筐体内に入れるだけで、金属粉(23b)間の細孔に吸着剤(24)を充填することが可能である。
また、請求項6に記載の発明は、仮止め板(41)は、ろう材(81)と交わらない濡れ性の悪い材料からなることを特徴とする。
これによると、仮止め板(41)は、鉄、鋼等の鉄系金属または、カーボン、セラミック等の非金属などの、ろう材(81)と交わらない濡れ性の悪い材料からなることが好ましい。このような材料からなる仮止め板(41)が、金属粉(23b)とろう付け部との間の隙間(δ)内に挟み込まれているので、ろう付けのために炉中等で加熱時に、溶けたろう材(81)がろう付け部から垂れるような場合があったとしても、垂れたろう材(81)が金属粉(23b)へ到達するのを抑制できる。
また、請求項7に記載の発明は、仮止め板(41)は、金属粉(23b)に接触し、かつ筐体(3)の内周壁の形状に沿う本体部(41a)と、本体部(41a)から隙間(δ)の延在方向に延びる脚部(41b)とを有し、脚部(41b)は、内周壁に対して、隙間(δ)の延在方向に向けて離れるように傾斜していることを特徴とする。
これによると、仮止め板(41)に、金属粉(23b)に接触しかつ筐体(3)の内周壁の形状に沿う本体部(41a)から、隙間(δ)の延在方向に延びる脚部(41b)を設ける場合において、脚部(41b)は、内周壁に対して、隙間(δ)の延在方向に向けて離れるように傾斜していることが好ましい。これにより、筐体(3)のろう付け部に配置されたろう材(81)に、仮止め板(41)が直接接触するのを回避することができる。したがって、溶けたろう材(81)が仮止め板(41)の面に沿って金属粉(23b)側へ流れるようなことはない。
また、請求項8に記載の発明は、仮止め板(41)は、金属粉(23b)に接触し、かつ筐体(3)の内周壁の形状に沿うように形成され、
筐体(3)の内周壁には、仮止め板(41)を係止する係止部(31k)が設けられていることを特徴とする。
これによると、筐体(3)の内周壁に、仮止め板(41)を係止する係止部(31k)を設けているので、係止部(31k)で仮止め板(41)を係止することによって隙間(δ)を形成するとともに、係止部(31k)によって内周壁に係止された仮止め板(41)で、筐体(3)内に充填された金属粉(23b)を保持することができる。
また、請求項9に記載の発明は、隙間(δ)は、熱媒体管(21)の軸方向に延びる端部のうちの一方の端部側に設けられ、端部のうち少なくとも他方の端部間は連続的に接続され、熱交換媒体は熱媒体管(21)内を少なくとも一方方向に流通可能であることを特徴とする。
これによると、隙間(δ)を、熱媒体管(21)の軸方向に延びる端部のうちの一方の端部側に設ける場合において、端部のうち少なくとも他方の端部間を連続的に接続し、熱媒体管(21)内を熱交換媒体が少なくとも一方方向に流通可能となる構成にすることが好ましい。このような構成にすることにより、隙間(δ)を設けるための、仮止め板等の部材を追加することなく、金属粉(23b)によるろう材(81)吸上げを防止することができる。
また、請求項10に記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の吸着モジュール(1)は、被吸着媒体が流れる被吸着媒体通路(25)を備え、被吸着媒体通路(25)は、熱媒体管(21)の間に配置されていることを特徴とする。
熱媒体管(21)の周辺部に多孔質伝熱体(23)および吸着剤(24)を設ける場合において、多孔質伝熱体(23)は、金属粉(23b)を焼結体としたいわゆる伝熱フィンとすることにより、この伝熱フィン内に充填された吸着剤(24)との接触面積が増え伝熱特性が向上する。しかしながら、多孔質伝熱体(23)における熱媒体管(21)の周辺部の厚さによっては、吸着剤(24)が被吸着媒体を吸着/脱離する際の被吸着媒体の拡散抵抗によって、吸着剤(24)の吸着/脱離速度が狙い通り上がらず、結果的には冷却性能を向上させることができないおそれがある。
これに対して請求項10に記載の発明は、被吸着媒体が流れる被吸着媒体通路(25)を、熱媒体管(21)の間に設けるので、多孔質伝熱体(23)内部の吸着剤(24)に被吸着媒体を浸透させ易くなり、被吸着媒体の拡散抵抗を低減することができる。
また、請求項11に記載の発明は、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の吸着モジュール(1)において、筐体(3)は、内部に被吸着媒体を封入し、外部の蒸発器および凝縮器と被吸着媒体を流通可能に結合するように構成されており、吸着時には蒸発器側より被吸着媒体が流入し、脱離時には凝縮器側へ被吸着媒体が流出することを特徴とする。
これによると、吸着時および脱離時において、別個に設けた蒸発器および凝縮器へ被吸着媒体を導くように構成されているので、蒸発器および凝縮器は、脱離時および吸着時における無駄エネルギを生じない。
また、請求項12に記載の発明は、多孔質伝熱体(23)の金属粉(23b)は、銅または銅合金からなり、熱媒体管(21)は、銅または銅合金からなることを特徴とする。
これによると、伝熱特性に優れた多孔質伝熱体(23)と熱媒体管(21)が焼結結合することにより、これらが単に接触するだけではなく、金属的に接合できるので、伝熱向上が効果的に図れる。
また、請求項13に記載の発明は、金属粉(23b)は、焼結温度がろう材(81)のろう付け温度と同じ温度とするように構成されていることを特徴とする。
これによると、ろう材(81)によるろう付け部の接合と、金属粉(23b)の焼結による多孔質伝熱体(23)の形成が、一度の炉内でのろう付け温度による加熱によって、同時に行なえるので、優れた生産性が図れる吸着モジュールを提供することができる。
また、請求項14乃至17に記載の発明は、熱交換媒体が流れる熱媒体管(21)と、熱媒体管(21)に多孔質伝熱体(23)として焼結結合された、粉末状、粒子状、および繊維状のいずれかの金属粉(23b)と、熱媒体管(21)の周辺部(22)に存在する吸着剤(24)とを筐体(3)内部に備えた吸着モジュールの製造方法において、
熱媒体管(21)を筐体(3)内部に配置して組付ける組付工程と、筐体(3)内部に金属粉(23b)と吸着剤(24)を混合して入れて、金属粉(23b)および吸着剤(24)を熱媒体管(21)の周辺部(22)に位置させ、かつ充填された金属粉(23b)を圧縮して形状維持する充填工程と、充填工程において金属粉(23b)および吸着剤(24)を入れた充填口を閉じて、ろう付け前の筐体を形成するろう付け前の筐体形成工程と、ろう付け前の筐体を炉内に入れて加熱することにより、金属粉(23b)を焼結して多孔質伝熱体(23)を形成するするとともに、熱媒体管(21)と筐体(3)とのろう付け結合するろう付け工程とを備えていることを特徴とする。
これによると、熱媒体管(21)の周辺部(22)に金属粉を焼結する工程、吸着剤(24)が吸着作用を発揮できる状態にする工程、および吸着モジュール(1)を構成する部品同士をろう付け結合する工程を、ろう付け工程によって実施するので、製造工程数を低減した効率的な製造方法を提供することができる。
なお、充填された金属粉を形状維持するための圧縮は、治具を用いて治具を金属粉に押し当てることにより圧縮するもの、仮止め板を設けて仮止め板を金属粉に押し当てるもの、および、筐体内で仮止め板に保持された金属粉を、仮止め板とは反対側から治具などで押し当てるものなど、いずれであってもよい。
前述の吸着モジュールの製造方法において、請求項15乃至16に記載の如く、熱媒体管(21)の間に配置された被吸着媒体通路(25)をさらに備える吸着モジュールの場合には、充填工程は、筐体(3)内部に金属粉(23b)と吸着剤(24)を混合して入れて、金属粉(23b)および吸着剤(24)を熱媒体管(21)の周辺部(22)に位置させるとともに、被吸着媒体通路(25)を熱媒体管(21)の間に位置させ、かつ、充填された金属粉(23b)を圧縮して形状維持することが好ましい。
これによると、筐体(3)内の熱媒体管(21)の周辺部(22)に金属粉(23b)および吸着剤(24)を位置させる工程、熱媒体管(21)の間に被吸着媒体通路(25)を位置させる工程、および筐体(3)内に充填された金属粉(23b)を圧縮して隙間(δ)を形成する工程を、充填工程によって実施するので、優れた生産性向上が図れる。
特に、請求項16に記載の発明の如く、充填工程においては、被吸着媒体通路(25)を設けるための治具を熱媒体管(21)の間に配置することが好ましい。
これによると、熱媒体管(21)の周辺部(22)で混合されている金属粉(23b)と吸着剤(24)に、治具を挿入するだけで、被吸着媒体通路(25)の空間を確保することができる。
また、請求項17に記載の発明では、多孔質伝熱体(23)の金属粉(23b)は、銅または銅合金であり、熱媒体管(21)は、銅または銅合金からなり、
ろう付け工程においてろう付け結合するために用いられるろう材(81)の溶融温度は、700〜1000°Cの範囲にあることを特徴とする。
これによると、700〜1000°Cの範囲は銅粉が焼結する温度であるので、ろう付け前の筐体(3)を炉内に一度通すことにより、ろう付け結合と焼結を同時に実施することができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態における吸着モジュールを、図1から図7に従って説明する。図1は本実施形態の吸着モジュールを示す外観図である。図2は図1中のIIからみた横断面図である。図3は図2中のIIIからみた縦断面図である。図4は図2中の吸着剤充填層を示す模式的断面図である。図5は図3中に設けた隙間周りを拡大した部分断面図である。図6は図3中の仮止め板を示す図であって、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図である。図7は本実施形態の吸着モジュールの製造方法の一例について、製造工程を示す流れ図である。
図1に示す吸着モジュール1は、その内部に含む吸着剤が気相冷媒(水蒸気)を吸着する作用を用いて冷媒を蒸発させてその蒸発潜熱により冷凍能力を発揮することを利用して吸着式冷凍機に使用されるものであり、車両用などの空調装置に適用することもできる。この吸着モジュール1は、図2および図3に示すように、筐体を構成するケーシング3内に吸着熱交換器2を備えている。吸着熱交換器2は、熱交換媒体(冷媒)が流れる熱媒体管21とを有しており、熱媒体管21の周辺部22に、細孔23aを有する多孔質熱伝体23および吸着剤24が設けられている。
具体的には、吸着熱交換器2は、図2および図4に示すように、材質が銅または銅合金(本実施例では、銅)からなる熱媒体管21と、細孔23aを有する多孔質熱伝体23と、その細孔23aに充填された吸着剤24とを有している。
多孔質熱伝体23は、熱伝導性に優れる金属粉23bを加熱して、溶融することなく焼結結合した焼結体である。金属粉23bは、銅または銅合金(本実施例では、銅)を用いており、例えばその銅粉は、粉末状、粒子状、および繊維状のいずれか(本実施例では、繊維状)に形成されているものであればよい。
このような多孔質熱伝体23、すなわち金属粉23bを焼結結合した焼結体は、図4に示すように、細孔23aを有する微細な焼結フィン(以下、多孔質焼結フィン)を形成する。細孔23aは、金属粉(23b)に比べて粒子径が微小な吸着剤24を充填可能にマッチした微細な孔である。また、多孔質熱伝体23は、銅からなる熱媒体管21の周辺部に焼結結合している。なお、多孔質熱伝体23は、その全体が一方向に伸長するように複数の円筒状の熱媒体管21の周辺部22で形成されており、全体形状として円筒状である。
吸着剤24は、微小な多数の粒子状に形成されており、例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、活性アルミナ等から構成されている。吸着剤24は、多孔質熱伝体23の細孔23a内部に充填されている。
なお、ここで、熱媒体管21の周辺部22の多孔質熱伝体23を、吸着剤充填層と呼ぶ。この吸着剤充填層は、熱媒体管21の周辺部22で焼結結合した多孔質焼結フィンの厚さL(図3参照)に対応している。
次に、吸着熱交換器2を筐体3内部に一体化成形して備えた吸着モジュール1を、図1から図3に従って説明する。
吸着モジュール1は、吸着熱交換器2と、仮止め板41と、筐体本体31、熱媒体管21を支持する支持部材としてのシート32、33、およびタンク34、35とを有する、金属からなる筐体3とを備えている。なお、本実施例では、筐体3の金属は、銅、銅合金、およびニッケル合金のいずれかとする。
筐体本体31は、円筒状に形成されており、内部に、略円筒状の吸着熱交換器2の多孔質熱伝体23が収容可能に形成されている。また、筐体本体31の上端側開口部と下端側開口部は、シート32、33で封止可能に形成されている。筐体本体31の上部には、吸着熱交換器2の吸着剤充填層に、水蒸気を導くことが可能な被吸着媒体流入配管36および被吸着媒体流出配管37が設けられている。
筐体本体31とシート32、33は、ろう付けによる接合により気密に固定されている。筐体本体31の内周壁とシート32、33とが組付けられる角部は、筐体本体31とシート32、33とを接合するろう付け部を構成しており、ろう付け部には、図5の如く、ろう付けのためのろう材81が配置される。
また、シート32、33には、熱媒体管21が貫通可能な貫通穴32a、33aが形成されている。この貫通穴32a、33aと熱媒体管21は、ろう付けによる接合により気密に固定されている。シート32、33の貫通穴32a、33aの周縁部は、シート32、33と熱媒体管21とを接合するろう付け部を構成しており、ろう付け部には、図5の如く、ろう材81が配置される。
このように筐体本体31とシート32、33と熱媒体管21を封止することにより、内部を真空に保持可能である。これにより、筐体本体31とシート32、33によって形成される内部密閉空間内には、被吸着媒体としての水蒸気以外には、他の気体(気相冷媒)は1Torr以下しか存在しないようになっている。
そして、吸着時には、水蒸気は、蒸発器側から被吸着媒体流入配管36を通して内部密閉空間内の吸着剤充填層へ流入する。流入した水蒸気は、吸着剤充填層の内部に浸透する。また、脱離時には、水蒸気は、吸着剤充填層から吐き出され、吐き出た水蒸気は、被吸着媒体流出配管37より凝縮器側へ導かれる。
さらに、内部密閉空間には、金属粉23bが、筐体本体31、シート32、33、および熱媒体管21のろう付け部に接触しないように、仮止め板41が設けられている。すなわち、熱媒体管21の周辺部22を覆う金属粉23bと、シート32、33との間に仮止め板41が配置されている。すなわち、仮止め板41を多孔質伝熱体23とシート32、33との間に設けて、隙間δを形成している。
仮止め板41は、図6に示すように、金属粉23bに接触し、かつ筐体本体31の内周壁の形状に沿う本体部41aと、本体部41aから隙間δの延在方向に延びる脚部41bとを有しており、本体部41aには、熱媒体管21が貫通可能な貫通穴41cが設けられている。そして、脚部41bは、上記内周壁に対して、隙間δの延在方向に向けて離れるように傾斜していることが好ましい。これにより、上記ろう付け部に配置されたろう材81に、仮止め板41が直接接触するのを回避することができる。
仮止め板41の材料は、金属粉23b、筐体3、および熱媒体管21と同じ材料であってもよく、またろう材81と交わらない濡れ性の比較的悪い材料を用いてもよい。なお、濡れ性の比較的悪い材料としては、鉄、鋼等の鉄系金属または、カーボン、セラミック等の非金属などである。
タンク34、35には、熱交換媒体を導くことが可能な熱媒体流入配管38および熱媒体流出配管39が設けられている。熱交換媒体は、下部タンク34の熱媒体流入配管38に流入し、熱媒体管21を通して、上部タンク35の熱媒体流出配管39より流出する。
このような下部タンク34および上部タンク35は、熱交換媒体を複数の熱媒体管21へ供給分配するためのタンクである。
なお、上記筐体3および熱媒体管21は、その径方向断面が円筒形状、楕円形状、矩形形状のいずれの形状であってもよい。
次に、吸着モジュール1の製造工程を、図7に従って説明する。吸着モジュール1の製造工程は、筐体3内に焼結体として形成される金属粉23b、および吸着剤24を充填する工程前に各構成部品を組付ける組付工程(ステップS100)と、筐体3内に金属粉および吸着剤を充填する充填工程(ステップS200)と、金属粉および吸着剤24を充填した充填口を閉じてろう付け前の筐体3を形成する筐体形成工程(ステップS300)と、ろう付け前の筐体3を炉の中に入れてろう付けするろう付け工程(ステップS400)とを備えている。
ステップS100の組付工程は、ステップS200の金属粉23bおよび吸着剤24の充填工程の準備工程であり、金属粉23bおよび吸着剤24を充填する前に組付け可能な構成部品を、できるだけ、組付けておくことが好ましい。
ステップS100の組付工程では、吸着熱交換器2の構成部品である熱媒体管21を筐体3内に保持させて固定するために、まず、複数の熱媒体管21の一端を、シート32の貫通穴32aに挿入しておき、シート32に挿通した熱媒体管21を拡管(口拡)することによりシート32と熱媒体管21を固定する。次いで、シート32を、筐体本体31の下端側開口部に組付け固定する。この状態では、筐体本体31の上端側開口部が開放されているとともに、筐体本体31内に熱媒体管21が保持されて固定されている。
上記筐体本体31内において、隣り合う熱媒体管21は互いに所定間隔をあけて設けられ、熱媒体管21は、空間である周辺部22が形成されている。
次に、ステップS200の充填工程では、熱媒体管21の周辺部22に焼結させる金属粉23bおよび保持させる吸着剤24を、上記筐体本体31内に充填させる工程である。まず、ステップS200の工程では、充填する金属粉23bとシート32との間に隙間δを設けるために、筐体本体31内の熱媒体管21に仮止め板41を挿入しておく。次いで、筐体本体31のシート33が組付けられていない上端側開口部、もしくは被吸着媒体流入配管36および被吸着媒体流出配管37と連結する連通穴から、金属粉23bと吸着剤24を混ぜたものを充填する。図2および図3に示すように、熱媒体管21の周辺部22に、銅粉と吸着剤24の混合物を所定量満たす。
銅粉と吸着剤24の混合物を所定量充填した後、加圧用治具を用い、図3中の上部より所定の加圧力を加えて、銅粉と吸着剤24の混合物を固める。次いで、上部開口部から仮止め板41を挿入し、仮止め板41の本体部41aを、銅粉と吸着剤24の混合物へ当てる。
なお、銅粉と吸着剤24の混合物を固める方法としては、上記加圧用治具で銅粉と吸着剤24の混合物を加圧する方法に限らず、仮止め板41を上部開口部から挿入し、仮止め板41の本体部41aを、銅粉と吸着剤24の混合物へ押し当てることにより、銅粉と吸着剤24の混合物を固めてもよい。
次に、ステップS300の筐体形成工程では、ろう付け結合(接合)が必要となる構成部品を、S400のろう付け工程前にすべて組付けておく工程である。まず、筐体本体31の上端側開口部に、シート33を組付け固定する。また、筐体本体31の上記連通穴と、被吸着媒体流入配管36および被吸着媒体流出配管37とを組付け固定する。
次いで、下部タンク34および上部タンク35を、シート32、33、もしくは筐体本体31に組付け固定する。また、熱媒体流入配管38および熱媒体流出配管39を、下部タンク34および上部タンク35に組付け固定する。
次に、ステップS400のろう付け工程では、吸着モジュール1を構成する部品同士のろう付け結合(接合)と、ステップ200で充填された金属粉23bの焼結と、この金属粉23bの焼結体と熱媒体管21との焼結結合(接合)と、吸着剤24の焼結体(多孔質伝熱体)内部への定着とを行なう工程である。
まず、ろう付け結合(接合)が必要となる構成部品に置きろうをする。少なくとも、シート32、33と、このシート32、33に貫通して組付け固定されている熱媒体管21との接合部位、シート32、33と筐体本体31との接合部位、およびシート32、33とタンク34、35との接合部位に置きろうをする。すなわち、筐体本体31、シート32、33、および熱媒体管21の各ろう付け部に、ろう材81を配置する。
また、金属粉として用いた銅粉の焼結温度は、700°C〜1000°Cの範囲であるので、上記ろう材81は、700°C〜1000°Cの範囲に含まれる溶融温度を備えるものを使用する。例えば、ろう材81は銅系または銀系の材料を使用する。さらに、吸着剤24は、炉内で上記高温雰囲気にさらされるため、炉内温度(700°C以上)において破壊されないものを使用する。
以上説明した本実施形態では、筐体3のろう付け部を接合するろう材81が配置されている部位と、熱媒体管21の外側を覆う多孔質伝熱体23の金属粉23bとの間に、隙間δが設けられているので、ろう材81が配置されるろう付け部と金属粉23bが接触することはない。したがって、ろう付けのために炉中等で加熱される際に、金属粉23bによるろう材81吸上げを防止することができる。
また、以上説明した本実施形態では、隙間δは、多孔質伝熱体23の金属粉23bとシート32、33との間に仮止め板41を設けることよって形成されている。これにより、筐体3内に充填された金属粉23bを仮止め板41で押し当てる等して金属粉23bを保持することができるので、筐体3内に充填された金属粉23bの形状維持が確実にでき、従って隙間δが確実に確保される。
また、以上説明した本実施形態では、仮止め板41は、鉄、鋼等の鉄系金属または、カーボン、セラミック等の非金属などの、ろう材81と交わらない濡れ性の悪い材料からなることが好ましい。このような材料からなる仮止め板41が、金属粉23bとろう付け部との間の隙間δ内に挟み込まれているので、ろう付けのために炉中等で加熱時に、溶けたろう材81がろう付け部から垂れるような場合があったとしても、垂れたろう材81が金属粉23bへ到達するのを抑制できる。
また、以上説明した本実施形態では、仮止め板41は、金属粉23bに接触し、かつ筐体本体31の内周壁の形状に沿う本体部41aと、本体部41aから隙間δの延在方向に延びる脚部41bとを有しており、脚部41bは、その内周壁に対して、隙間δの延在方向に向けて離れるように傾斜していることが好ましい。これにより、上記ろう付け部に配置されたろう材81に、仮止め板41が直接接触するのを回避することができる。したがって、溶けたろう材81が仮止め板41の面に沿って金属粉23b側へ流れるようなことはない。
また、以上説明した本実施形態において、吸着モジュール1における筐体3は、内部に被吸着媒体を封入し、外部の蒸発器および凝縮器と被吸着媒体を流通可能に結合するように構成されており、吸着時には蒸発器側より被吸着媒体が流入し、脱離時には凝縮器側へ被吸着媒体が流出する。これによると、吸着時および脱離時において、別個に設けた蒸発器および凝縮器へ被吸着媒体を導くように構成されているので、蒸発器および凝縮器は、脱離時および吸着時における無駄エネルギを生じない。
また、以上説明した本実施形態では、多孔質伝熱体23の金属粉23bは、銅または銅合金からなり、熱媒体管21は、銅または銅合金からなることが好ましい。これによると、伝熱特性に優れた多孔質伝熱体23と熱媒体管21が焼結結合することにより、これらが単に接触するだけではなく、金属的に接合できるので、伝熱向上が効果的に図れる。
また、以上説明した本実施形態では、吸着モジュール1の製造方法において、筐体3内に焼結体として形成される金属粉23b、および吸着剤24を充填する工程前に各構成部品を組付ける組付工程と、筐体3内に金属粉23bおよび吸着剤24を充填する充填工程と、金属粉23bおよび吸着剤24を充填した充填口を閉じてろう付け前の筐体3を形成する筐体形成工程と、ろう付け前の筐体3を炉の中に入れてろう付けするろう付け工程とを備えている。
これにより、熱媒体管21の周辺部22に金属粉23bを焼結する工程、吸着剤24が吸着作用を発揮できる状態にする工程、および吸着モジュール1を構成する部品同士をろう付け結合する工程を、ろう付け工程によって実施するので、製造工程数を低減した効率的な製造方法を提供することができる。
また、以上説明した本実施形態では、ろう付け工程においてろう付け結合するために用いられるろう材81の溶融温度は、700〜1000°Cの範囲内にあることことが好ましい。これによると、700〜1000°Cの範囲は金属粉23bである銅粉が焼結する温度であるので、ろう付け前の筐体3を炉内に一度通すことにより、ろう付け結合と焼結を同時に実施することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図8に示す。第2実施形態は、筐体本体31に、仮止め板141を係止するための係止部31kを設けた吸着モジュール101に適用したものである。図8は、本実施形態の吸着モジュールを示す縦断面図である。図9は、図8中に設けた隙間δ周りを拡大した部分断面図である。
仮止め板141は本体部41aを有しており、筐体本体31の内周壁の形状に沿うように本体部41aが形成されている。また、筐体本体31の内周壁には、上記係止部31kとしてかしめが設けられており、このかしめによって仮止め板141が固定されている。
このように、筐体本体31の内周壁に、仮止め板141を係止する係止部31kを設けているので、係止部31kで仮止め板141を係止することによって隙間δを形成するとともに、係止部31kによって上記内周壁に係止された仮止め板1411で、筐体本体31内に充填された金属粉23bを保持することができる。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図10に示す。第3実施形態は、筐体3を構成するシートと多孔質伝熱体23の金属粉23bとの間に設ける隙間δを、熱媒体管121の軸方向に延びる端部の一方のみに設けた吸着モジュール201に適用したものである。図10は、本実施形態の吸着モジュールを示す部分的縦断面図である。
熱媒体管121は、複数の熱媒体管121の軸方向に延びる本体部121aと、本体部121aの軸方向に延びる端部間を連続的に接続する屈曲部121bとを有しており、熱媒体管121の一方の端部は、熱交換媒体(冷媒)の流入を可能とし、他方の端部は、一方の端部から流入した熱交換媒体(冷媒)の流出を可能としている。
筐体3は、筐体本体31と、筐体本体31の一方の開口部を閉じるシート33と、タンク135、134とを備えている。シート33は、筐体本体31の両開口部のうち、タンク135側の上部開口部を封止可能であり、このシート33には、上記熱媒体管121の一方端部および他方端部が貫通可能な貫通穴33aを有している。
タンク135には、熱媒体流入配管38および熱媒体流出配管39が設けられている。熱交換媒体(冷媒)は、熱媒体流入配管38よりタンク135内に流入し、熱媒体管21の一方端部を通して熱媒体管121内を流通する。また、熱媒体管121内を流通した熱交換媒体(冷媒)は、他方端部を通じてタンク135内に導かれ、熱媒体流出配管39より流出する。なお、上記タンク135内には、流入する熱交換媒体と流出する熱交換媒体とを区分けするための隔壁51が設けられている。また、タンク134には、熱媒体流入配管38および熱媒体流出配管39のいずれも設けない。
これにより、熱媒体管21の上記端部のうち少なくとも他方の端部間を連続的に接続し、熱媒体管21内を熱交換媒体が少なくとも一方方向(本実施例では、図中の下方方向および上方方向の二方向)に流通可能となる構成とすることができる。
次に吸着モジュール1の製造方法としては、第1実施形態の製造方法とは主として以下のことのみが異なる。まず、組付工程では充填工程の準備工程であるため、タンク134を筐体本体31に組み付けておく。筐体本体31の係止部(かしめ)31kの加工は、このとき行なってもよいし、また、別個に、筐体本体31をプレス加工する等の成形加工時に、筐体本体31の成形と、係止部31kのかしめとを一体成形するものであってもよい。
充填工程では、図10の如く、タンク134を底に配置し、筐体本体31を天地方向に立てる。この状態の筐体本体31の上部開口部から、金属粉23bと吸着剤24を混ぜたものを充填する。このとき熱媒体管21の周辺部22には、図10の如く、隙間δが形成できる所定量を満たす。
筐体形成工程では、ろう付け結合(接合)が必要となる構成部品を、ろう付け工程前にすべて組付けておく。シート33、隔壁51、タンク135、および熱媒体管121の一方端部などを全て組み付け固定する。
ろう付け工程では、タンク134を底に配置し、筐体本体31を天地方向に立てた状態で、炉中でろう付けを行なう。
以上説明した本実施形態では、熱媒体管21の上記端部のうち少なくとも他方の端部間を連続的に接続し、熱媒体管21内を熱交換媒体が少なくとも一方方向(本実施例では、図中の下方方向および上方方向の二方向)に流通可能となる構成としている。このような構成にすることにより、仮止め板等の部材を追加することなく、隙間δを設けることができる。したがって、ろう材81が配置されるろう付け部と金属粉23bが接触することはない簡素な吸着モジュールを提供することができる。
しかも、ろう付け工程において、タンク134を底に配置し、筐体本体31を天地方向に立てた状態で、炉中でろう付けを行なうという比較的簡易な制限があるだけであるので、比較的優れた生産性を図れる吸着モジュールを提供することができる。
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態を図11に示す。第4実施形態は、焼結体として焼結する金属粉23bの形状を、繊維状のものとする吸着モジュール1に適用したものである。図11は、本実施形態に係わる吸着剤充填層を示す模式的断面図である。
図11に示す如く、金属粉23bの形状を繊維状とすることにより、繊維状の金属粉23b同士が絡み易くなるので、金属粉間に、吸着剤が充填可能な細孔23aを容易に形成することができる。したがって、熱媒体管21の周辺部22に金属粉23bと吸着剤24を混合した混合物を入れるだけで、細孔23aに吸着材24を充填し、優れた伝熱特性を有する多孔質伝熱体23を形成することが可能である。
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態を図12に示す。第4実施形態は、金属粉23bの形状を、繊維状のものとする吸着モジュール301に適用した他の実施例である。図12は、本実施形態の吸着モジュールを示す縦断面図である。図13は、図12中に設けた隙間周りを拡大した部分断面図である。図14は、本実施形態の吸着モジュールの製造方法の一例について、製造工程を示す流れ図である。
金属粉23bの形状を繊維状とするので、金属粉23b同士が絡み易いため、図13に示すように、筐体3内に充填された繊維状の金属粉23bを、圧縮用治具等を用いて圧縮することにより、金属粉23bが絡み合った状態で形状を維持することができる。すなわち、充填工程において、熱媒体管21の周辺部22に金属粉を充填し、熱媒体管21の外側を覆う金属粉23bを図中の軸方向に圧縮することよって、金属粉23bが熱媒体管21に絡み合った状態で形状維持することができる。
これにより、充填工程において、筐体3内に充填する金属粉23bを、隙間δが形成できる程度の所定量で満たす、または金属粉23bを圧縮する際に隙間δが形成できる程度に圧縮することによって、仮止め板等の部材を追加することなく、隙間δを設けることができる。
次に、吸着モジュール1の製造工程の一例を、図14に従って説明する。充填工程(S220)では、金属粉23bのみを充填する。次いで充填した金属粉23bを圧縮用治具等を用いて圧縮する。圧縮された金属粉23bは、熱媒体管21に絡み合った状態で形状が維持され、シート32、33との間に隙間δが形成される。
上述のように、金属粉23bが熱媒体管21に絡んだ状態で形状維持されることによって隙間δが形成されているので、ろう付け工程において、タンク134を底に配置し、筐体本体31を天地方向に立てた状態で、炉中でろう付けを行なうという制限はない。
ろう付け工程では、吸着モジュール1を構成する部品同士のろう付け結合(接合)と、充填された金属粉23bの焼結と、この金属粉23bの焼結体と熱媒体管21との焼結結合(接合)とを行なう。
ろう付け工程が終了した後、吸着剤24の焼結体(多孔質伝熱体)内部への定着とを行なう工程(S520)を行なう。
ステップS520の吸着剤充填工程は、吸着剤24を分散楳に分散させた吸着剤スラリー(液体)を、被吸着媒体流入配管36または被吸着媒体流出配管37から投入し、多孔質伝熱体23の細孔23a内に吸着剤24を充填する。その後、吸着剤スラリーを乾燥させると、多孔質伝熱体23内部へ定着し、吸着剤24が吸着作用を発揮できる状態とすることができる。
これにより、多孔質伝熱体23の内部の伝熱表面に一様な吸着剤充填層を容易に形成することができる。
しかも、吸着剤24が充填された状態で炉中に投入するためには吸着剤24に耐熱性が必要となるが、本実施形態では多孔質伝熱体23形成後に充填するので、耐熱性のない吸着剤24であっても本実施形態の製造方法を適用することができる。
(第6実施形態)
熱媒体管21の周辺部22に多孔質伝熱体23および吸着剤24を設ける場合において、多孔質体23は、金属粉23bを焼結体としたいわゆる伝熱フィンとすることにより、この伝熱フィン内に充填された吸着剤24との接触面積が増え伝熱特性が向上する。しかしながら、多孔質伝熱体23における熱媒体管21の周辺部22の厚さによっては、吸着剤24が被吸着媒体を吸着/脱離する際の被吸着媒体の拡散抵抗によって、吸着剤24の吸着/脱離速度が狙い通り上がらず、結果的には冷却性能を向上させることができないおそれがある。
本発明の第6実施形態を図15に示す。第6実施形態は、熱媒体管21の間に被吸着媒体通路25をさらに備える吸着モジュール401に適用したものである。図15は、本実施形態の吸着モジュールを示す横断面図である。図16は、図15中のXVIからみた縦断面図である。図17は、本実施形態の吸着モジュールの製造方法の一例について、製造工程を示す流れ図である。
本実施形態では、図15の如く、熱媒体管21の間に、被吸着媒体(以下、水蒸気)が流通する被吸着媒体通路25が配置されている。被吸着媒体通路25の断面形状は、本実施例では円としたが、円、楕円、矩形のいずれであってもよい。また、本実施例では、被吸着媒体通路25は、図中の3つの熱媒体管21に囲まれた領域に配置されているが、3つに限らず、4つや5つ等の複数の熱媒体管21に囲まれた領域に配置されるものであってもよい。
この被吸着媒体通路25は、吸着時には、被吸着媒体流入配管側の蒸発器からの水蒸気を通して熱媒体管21の周辺部22の多孔質熱伝体23内部へ速やかに浸透させる役割を果す。また、脱離時には、熱媒体管21の周辺部22の多孔質熱伝体23から吐き出した水蒸気を、この被吸着媒体通路25を通して速やかに被吸着媒体流出配管37側の凝縮器へ導く役割を果す。
この吸着剤充填層の厚さLを設定するに当たり、水蒸気が熱媒体管21に向かう浸透深さr2と、熱媒体管21からの距離(以下、伝熱距離)r1とが略等しくなるように、熱媒体管21の間に被吸着媒体通路25を配置することが好ましい。なお、浸透深さr2は、本実施例では、被吸着媒体通路25の内周面から熱媒体管21の外周面までの距離である。
このように、吸着および脱離速度に係わる浸透深さr2と、伝熱距離r1とが略等しくなるように熱媒体管21の間に被吸着媒体通路25を配置することにより、被吸着媒体の拡散抵抗が小さくかつ伝熱特性が優れ、吸着と脱離に要す時間を短縮することができる高性能な吸着熱交換器を提供できる。
次に、吸着モジュール1の製造工程の一例を、図17に従って説明する。ステップS240の充填工程では、被吸着媒体通路25を設けるための図示しない被吸着媒体通路用治具を、熱媒体管21の間に挿入しておく。次いで、金属粉23bと吸着剤24を混ぜたものを充填し、銅粉と吸着剤24の混合物を固める。
金属粉23bと吸着剤24の混合物を固めた後、被吸着媒体通路用治具を拭き取り、被吸着媒体通路25の孔(空間)を確保する。
なお、被吸着媒体通路25は、銅粉と吸着剤24とを充填後に加圧して固める際に、同時に被吸着媒体通路25の孔を開けるような治具を挿入してもよい。
このような製造方法により、筐体3内の熱媒体管21の周辺部22に金属粉23bおよび吸着剤24を位置させる工程、熱媒体管21の間に被吸着媒体通路25を位置させる工程、および筐体3内に充填された金属粉23bを圧縮して隙間δを形成する工程を、充填工程によって実施するので、優れた生産性向上が図れる。
また、上記充填工程においては、被吸着媒体通路25を設けるための被吸着媒体通路用治具を熱媒体管21の間に配置している。熱媒体管21の周辺部22で混合されている金属粉23bと吸着剤24に、被吸着媒体通路用治具を挿入するだけで、被吸着媒体通路25の空間を確保することができる。
(他の実施形態)
(1)以上説明した本実施形態において、ろう付け部(接合部)にろう材81を置きろうすることにより配置した。これに限らず、シート32、33やタンク34、35に、ろう材をグラッドした銅材を利用してもよい。これにより、上記接合部位に置きろうをする手間を省くことができる。
(2)以上説明した本実施形態では、熱媒体管および筐体を円筒形状としたが、熱媒体管および筐体は、その径方向断面が円筒形状、楕円形状、矩形形状等のいずれの形状であってもよい。
(3)以上説明した第1、第6実施形態では、仮止め板41は、鉄、鋼などの鉄系金属またはカーボン、セラミックなどの非金属などの材料から形成されているとした。これに限らず、ろう付けのための炉内の温度に対して耐熱性を有するものであれば、ばね鋼などの弾性体であってもよい。この場合、仮止め板は弾性体で形成されているため、隙間δ内に仮止め板を配置することによって金属粉23bを押し当てる等して圧縮することができる。したがって、隙間δ確保のために、仮止め板を筐体内に入れるだけで、金属粉23b間の細孔23aに吸着剤24を充填することが可能である。
(4)以上説明した本実施形態において、金属粉23bの形状を、粉末状または繊維状として説明したが、これに限らず、粉末状、粒子状、および繊維状のいずれの形状であってもよい。
(5)以上説明した本実施形態では、圧縮治具の圧縮または仮止め板41を当てることにより、熱媒体管21の外側を覆う金属粉23bと、シート32、33との間に隙間δを形成した。これに限らず、筐体3内に充填された金属粉23bの形状を維持するようにするものであれば、いずれの方法であってもよい。圧縮治具等を用いて圧縮することにより金属粉23bの形状を維持する場合においては、その圧縮を、筐体3内に充填された金属粉23bが形状維持する程度に金属粉23bを押し当てるようにするだけでよいので、構成を複雑にすることなく、安価な吸着モジュールを提供することが可能である。
(6)上記充填された金属粉を形状維持するための圧縮方法は、治具を用いて治具を金属粉23bに押し当てることにより圧縮するもの、仮止め板等の部材を設けてその部材を金属粉23bに押し当てるもの、および、筐体内で仮止め板に保持された金属粉23bを、仮止め板とは反対側から治具などで押し当てるものなど、いずれの方法であってもよい。
(7)以上説明した本実施形態では、多孔質伝熱体23の金属粉23bは、銅または銅合金であり、熱媒体管21は、銅または銅合金からなり、ろう付け工程においてろう付け結合するために用いられるろう材81の溶融温度は、700〜1000°Cの範囲にあるとした。これに限らず、少なくとも金属粉23bは、焼結温度がろう材81のろう付け温度と同じ温度とするように構成されていればよい。この場合、ろう材81によるろう付け部の接合と、金属粉23bの焼結による多孔質伝熱体23の形成が、一度の炉内でのろう付け温度による加熱によって、同時に行なえるので、優れた生産性が図れる吸着モジュールを提供することができる。
本発明の第1実施形態の吸着モジュールを示す外観図である。 図1中のIIからみた横断面図である。 図2中のIIIからみた縦断面図である。 図2中の吸着剤充填層を示す模式的断面図である。 図3中に設けた隙間周りを拡大した部分断面図である。 図3中の仮止め板を示す図であって、図6(a)は平面図、図6(b)は正面図である。 第1実施形態の吸着モジュールの製造方法の一例について、製造工程を示す流れ図である。 第2実施形態の吸着モジュールを示す縦断面図である。 図8中に設けた隙間周りを拡大した部分断面図である。 第3実施形態の吸着モジュールを示す部分的縦断面図である。 第4実施形態に係わる吸着剤充填層を示す模式的断面図である。 第5実施形態の吸着モジュールを示す縦断面図である。 図12中に設けた隙間周りを拡大した部分断面図である。 第5実施形態の吸着モジュールの製造方法の一例について、製造工程を示す流れ図である。 第6実施形態の吸着モジュールを示す横断面図である。 図15中のXVIからみた縦断面図である。 第6実施形態の吸着モジュールの製造方法の一例について、製造工程を示す流れ図である。
符号の説明
1 吸着モジュール
2 吸着熱交換器
21 熱媒体管
22 周辺部
23 多孔質伝熱体(多孔質焼結フィン、焼結体)
23a 細孔
23b 金属粉
24 吸着剤
3 筐体
31 筐体本体
32、33 シート(支持部材)
32a、33a 貫通穴
34 下部タンク(タンク)
35 上部タンク(タンク)
41 仮止め板
41a 本体部
41b 脚部
41c 貫通穴
81 ろう材

Claims (17)

  1. 熱交換媒体が流れる複数の熱媒体管(21)と、前記熱媒体管(21)の周囲に多孔質伝熱体(23)として焼結結合された金属粉(23b)と、前記熱媒体管(21)の周辺部に存在する吸着剤(24)と、前記多孔質伝熱体(23)および前記吸着剤(24)を、真空保持可能に内部に収容する筐体(3)とを備えた吸気モジュールにおいて、
    前記筐体(3)は、内部の収容空間を、ろう材(81)によって互いにろう付けされた複数の部材(31、32、33、34、35)によって区画されるように構成され、
    前記熱媒体管(21)は、前記複数の部材(31、32、33、34、35)のうち、前記熱媒体管(21)が貫通する支持部材(32、33)とろう材(81)によってろう付けされるように構成され、
    前記筐体(3)のろう付け部を接合するろう材が配置されている部位と、前記多孔質伝熱体(23)として焼結結合された前記金属粉(23b)との間に、隙間(δ)が設けられていることを特徴とする吸着モジュール。
  2. 前記多孔質伝熱体(23)は、粉末状、粒子状、および繊維状のいずれかの前記金属粉(23b)を焼結することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸着モジュール。
  3. 前記隙間(δ)は、前記筐体(3)内に充填された前記金属粉(23b)を圧縮して形状維持させることによって、形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸着モジュール。
  4. 前記隙間(δ)内には、前記筐体(3)内に充填された前記金属粉(23b)を保持する仮止め板(41)が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の吸着モジュール。
  5. 前記仮止め板(41)は、弾性体で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の吸着モジュール。
  6. 前記仮止め板(41)は、ろう材(81)と交わらない濡れ性の悪い材料からなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の吸着モジュール。
  7. 前記仮止め板(41)は、前記金属粉(23b)に接触し、かつ前記筐体(3)の内周壁の形状に沿う本体部(41a)と、前記本体部(41a)から前記隙間(δ)の延在方向に延びる脚部(41b)とを有し、
    前記脚部(41b)は、前記内周壁に対して、前記隙間(δ)の延在方向に向けて離れるように傾斜していることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の吸着モジュール。
  8. 前記仮止め板(141)は、前記金属粉(23b)に接触し、かつ前記筐体(3)の内周壁の形状に沿うように形成され、
    前記筐体(3)の内周壁には、前記仮止め板(141)を係止する係止部(31k)が設けられていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の吸着モジュール。
  9. 前記隙間(δ)は、前記熱媒体管(21)の軸方向に延びる端部のうちの一方の端部側に設けられ、
    前記端部のうち少なくとも他方の端部間は連続的に接続され、前記熱交換媒体は前記熱媒体管(21)を少なくとも一方方向に流通可能であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の吸着モジュール。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の吸着モジュール(1)は、被吸着媒体が流れる被吸着媒体通路(25)を備え、
    前記被吸着媒体通路(25)は、前記熱媒体管(21)の間に配置されていることを特徴とする吸着モジュール。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の吸着モジュール(1)において、
    前記筐体(3)は、内部に前記被吸着媒体を封入し、外部の蒸発器および凝縮器と前記被吸着媒体を流通可能に結合するように構成されており、吸着時には前記蒸発器側より前記被吸着媒体が流入し、脱離時には前記凝縮器側へ前記被吸着媒体が流出することを特徴とする吸着モジュール。
  12. 前記多孔質伝熱体(23)の前記金属粉(23b)は、銅または銅合金からなり、
    前記熱媒体管(21)は、銅または銅合金からなることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の吸着モジュール。
  13. 前記金属粉(23b)は、前記焼結温度が前記ろう材(81)のろう付け温度と同じ温度とするように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の吸着モジュール。
  14. 熱交換媒体が流れる熱媒体管(21)と、前記熱媒体管(21)に多孔質伝熱体(23)として焼結結合された、粉末状、粒子状、および繊維状のいずれかの金属粉(23b)と、前記熱媒体管(21)の周辺部(22)に存在する吸着剤(24)とを筐体(3)内部に備えた吸着モジュールの製造方法において、
    前記熱媒体管(21)を前記筐体(3)内部に配置して組付ける組付工程と、
    前記筐体(3)内部に前記金属粉(23b)と前記吸着剤(24)を混合して入れて、前記金属粉(23b)および前記吸着剤(24)を前記熱媒体管(21)の周辺部(22)に位置させ、かつ充填された前記金属粉(23b)を圧縮して形状維持する充填工程と、
    前記充填工程において前記金属粉(23b)および前記吸着剤(24)を入れた充填口を閉じて、ろう付け前の筐体を形成するろう付け前の筐体形成工程と、
    ろう付け前の前記筐体を炉内に入れて加熱することにより、前記金属粉(23b)を焼結して前記多孔質伝熱体(23)を形成するするとともに、前記熱媒体管(21)と前記筐体(3)とのろう付け結合するろう付け工程とを備えていることを特徴とする吸着モジュールの製造方法。
  15. 請求項14に記載の吸着モジュールは、前記熱媒体管(21)の間に配置された被吸着媒体通路(25)をさらに備え、
    前記充填工程は、
    前記筐体(3)内部に前記金属粉(23b)と前記吸着剤(24)を混合して入れて、前記金属粉(23b)および前記吸着剤(24)を前記熱媒体管(21)の周辺部(22)に位置させるとともに、
    前記被吸着媒体通路(25)を前記熱媒体管(21)の間に位置させ、
    かつ、充填された前記金属粉(23b)を圧縮して形状維持することを特徴とする吸着モジュールの製造方法。
  16. 前記充填工程においては、前記被吸着媒体通路(25)を設けるための治具を前記熱媒体管(21)の間に配置することを特徴とする請求項15に記載の吸着モジュールの製造方法。
  17. 前記多孔質伝熱体(23)の前記金属粉(23b)は、銅または銅合金であり、
    前記熱媒体管(21)は、銅または銅合金からなり、
    前記ろう付け工程においてろう付け結合するために用いられるろう材(81)の溶融温度は、700〜1000°Cの範囲にあることを特徴とする請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の吸着モジュールの製造方法。
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