以下、本発明の光導波路構造体および光導波路基板について添付図面に示す好適実施形態に基づき詳細に説明する。
図1および図2は、それぞれ、本発明の光導波路構造体の実施形態を示す断面図であり、図3は、図1中のA−A線断面図であり、図4は、本発明の光導波路基板の実施形態を示す断面図である。以下これらの図を参照しつつ、光導波路構造体および光導波路基板の構成例について説明する。なお、以下の説明では、図1〜図4中の上側を「上」または「上方」とし、下側を「下」または「下方」とする。また、各図は、層の厚さ方向(各図の上下方向)が誇張して描かれている。
<第1実施形態:図1>
図1に示すように、本発明の光導波路構造体1は、半導体層(半導体基板)2と、光導波路9と、光導波路9の光路を屈曲させる光路変換部96a、96bと、半導体層2の下面に接合された導体層51と、発光素子10と、受光素子11と、電子回路素子12、13と、半導体層2の上面に接合された導体層52、53と、半導体層2の上面に接合された絶縁層3とを備えている。
半導体層2は、例えば、シリコン、ガリウム・ヒ素、インジウム・リン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム等の半導体材料で構成され、特に、シリコンを主材料として構成されるものが好ましい。
半導体層2の厚さは特に限定されないが、光導波路9の厚さの1〜100倍程度が好ましく、1.5〜80倍程度がより好ましい。半導体層2の厚さの具体例としては、例えば、15μm〜2mm程度とすることができ、50μm〜1mm程度とするのが好ましい。
この半導体層2には、所定の回路(半導体回路)が形成されている。この回路としては、例えば、CPUやメモリ、信号増幅器、素子駆動装置等が挙げられる。受/発光素子と一体化された回路の半導体回路部で生成された電気信号を発光素子10で光信号に変換し、光導波路9を介して伝達し、受光素子11により電気信号に変換することは、別個の半導体素子と受/発光素子と光導波路を組み合わせることで生じていた信号伝達精度の低下、伝達速度の低下、実装工程の複雑化を解消することができるという利点を持つ。
半導体層2の下部には、光導波路9が設置(埋設)されている。なお、本発明では、光導波路9の全体が半導体層2内に埋設されている場合に限らず、光導波路9の少なくとも一部が半導体層2内に埋設されている構成であってもよい。
光導波路9は、図1中下側からクラッド層91、コア層93およびクラッド層92をこの順に積層してなるものであり、コア層93には、所定パターンのコア部94とクラッド部95とが形成されている(図3参照)。コア部94は、伝送光の光路を形成する部分であり、クラッド部95は、コア層93に形成されているものの伝送光の光路を形成せず、クラッド層91、92と同様の機能を果たす部分である。
図1に示す構成では、コア層93の全長に渡り(後述する反射面961a、961b間に)コア部94が形成されている。
コア層93の構成材料としては、活性放射線(活性エネルギー光線、電子線またはX線等)の照射により、あるいはさらに加熱することにより屈折率が変化する材料とされる。このような材料の好ましい例としては、ベンゾシクロブテン系樹ポリマー、ノルボルネン系ポリマー(樹脂)等の環状オレフィン系樹脂を含む樹脂組成物を主材料とするものが挙げられ、ノルボルネン系ポリマーを含む(主材料とする)ものが特に好ましい。
このような材料で構成されたコア層93は、曲げ等の変形に対する耐性に優れ、特に繰り返し湾曲変形した場合でも、コア部94とクラッド部95との剥離や、コア層93と隣接する層(クラッド層91、92)との層間剥離が生じ難く、コア部94内やクラッド部95内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路9の光伝送性能が維持され、耐久性に優れた光導波路9が得られる。
また、コア層93の構成材料には、例えば、酸化防止剤、屈折率調整剤、可塑剤、増粘剤、補強剤、増感剤、レベリング剤、消泡剤、密着助剤および難燃剤等の添加剤が含まれていてもよい。酸化防止剤の添加は、高温安定性の向上、耐候性の向上、光劣化の抑制という効果がある。このような酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリフェノール系等のフェノール系や、芳香族アミン系のものが挙げられる。また、可塑剤、増粘剤、補強剤の添加により、曲げに対する耐性をさらに増大させることもできる。
前記酸化防止剤に代表される添加剤の含有率(2種以上の場合は合計)は、コア層93の構成材料全体に対し、0.5〜40重量%程度が好ましく、3〜30重量%程度がより好ましい。この量が少なすぎると、添加剤の機能を十分に発揮することができず、量が多すぎると、添加剤の種類や特性によっては、コア部94を伝送する光(伝送光)の透過率の低下、パターニング不良、屈折率不安定等を生じるおそれがある。
コア層93の形成方法としては、塗布法が挙げられる。塗布法としては、コア層形成用組成物(ワニス等)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法が挙げられる。また、塗布法以外の方法、例えば、別途製造されたシート材を接合する方法を採用することもできる。
以上のようにして得られたコア層93に対し、マスクを用いて活性放射線を選択的に照射し、所望の形状のコア部94をパターニングする。
露光に用いる活性放射線としては、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光等の活性エネルギー光線や電子線、X線等が挙げられる。電子線は、例えば50〜2000KGy程度の照射量で照射することができる。
コア層93において、活性放射線が照射された部位は、その屈折率が変化し(コア層93の材料により、屈折率が増大する場合と減少する場合とがある)、活性放射線が照射されなかった部位との間で屈折率の差が生じる。例えば、コア層93の活性放射線が照射された部位がクラッド部954となり、照射されなかった部位がコア部94となる。また、この逆の場合もある。クラッド部95の屈折率は、クラッド層91、92の屈折率とほぼ等しい。
また、コア層93に対し活性放射線を所定のパターンで照射した後、加熱することにより、コア部94を形成する場合もある。この加熱工程を付加することにより、コア部94とクラッド部95との屈折率の差がより大きくなるので好ましい。なお、この原理等については、後に詳述する。
形成されるコア部94のパターン形状としては、特に限定されず、直線状、湾曲部を有する形状、異形、光路の分岐部、合流部または交差部を有する形状、集光部(幅等が減少している部分)または光拡散部(幅等が増大している部分)、あるいはこれらのうちの2以上を組み合わせた形状等、いかなるものでもよい。活性放射線の照射パターンの設定により、いかなる形状のコア部94をも容易に形成することができる点が、本発明の特徴である。
光導波路9の各部の構成材料およびコア部94の形成方法等については、後に詳述する。
半導体層2の上部には、発光素子10と、受光素子11と、電子回路素子12および13とが設置(埋設)されている。この場合、発光素子10、受光素子11、電子回路素子12および13の上面は、それぞれ、半導体層2の上面と一致するように半導体層2内に埋設されている。
なお、本発明では、発光素子10、受光素子11、電子回路素子12および13は、それぞれ、全体が半導体層2内に埋設されている場合に限らず、それらの少なくとも一部が半導体層2内に埋設されている構成であってもよい。
発光素子10は、図1中下面側に発光部101を有し、上面側に端子103を有している。端子103の図1中奥部には、グランドに接続されるもう1つの端子(図示せず)が設置され、該端子と前記端子103との間に通電する(電位差を与える)ことにより、発光部101が発光する。
なお、発光素子10における発光部101は、1つの発光点で構成されているものの他、発光点が複数個集合したものでもよい。発光点が複数個集合したものとしては、例えば、発光点が列状(例えば発光点が1×4個、1×12個)または行列状(例えば発光点がn×m個:n、mは2以上の整数)に配置されたものや、複数の発光点がランダム(不規則)に配置されたもの等が挙げられる。後述する受光素子11における受光部111についても同様である。
受光素子11は、図1中下面側に受光部111を有し、上面側に端子113を有している。端子113の図1中奥部には、グランドに接続されるもう1つの端子(図示せず)が設置され、受光部111が受光すると、端子113に電気信号が出力される。
電子回路素子12および13は、それぞれ、例えば半導体素子(半導体チップ)で構成されている。電子回路素子12の機能は特に限定されないが、一例として、発光素子10を駆動するための回路を構成するものが挙げられる。電子回路素子13の機能は特に限定されないが、一例として、受光素子11の出力信号を処理する(例えば増幅する)ための回路を構成するものが挙げられる。
電子回路素子12は、図1中上面側に端子123を有している。端子123の図1中奥部には、グランドに接続されるもう1つの端子(図示せず)が設置されている。
電子回路素子13は、図1中上面側に端子133を有している。端子133の図1中奥部には、グランドに接続されるもう1つの端子(図示せず)が設置されている。
半導体層2の下面(光導波路9の下面)には、導体層51が接合されている。この導体層51は、例えば後述する第3実施形態のように、所定の形状にパターンニングされて、所望の配線または回路を構成していてもよい(図4参照)。
また、半導体層2の上面には、所定の形状にパターンニングされて、所望の配線または回路を構成してなる導体層52および53が接合されている。導体層52により、電子回路素子12の端子123と発光素子10の端子103とが電気的に接続されている。導体層53により、電子回路素子13の端子133と受光素子11の端子113とが電気的に接続されている。
導体層51、52および53の構成材料としては、例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金、金、金系合金、タングステン、タングステン合金等の各種金属材料が挙げられる。導体層51〜53の厚さは、特に限定されないが、通常、3〜120μm程度が好ましく、5〜70μm程度がより好ましい。
導体層51〜53は、例えば、金属箔の接合(接着)、金属メッキ、蒸着、スパッタリング等の方法により形成されたものである。導体層51〜53へのパターニングは、例えばエッチング、印刷、マスキング等の方法を用いることができる。
また、導体層51〜53の材料として、半導体層2に拡散し易い金属、例えば銅を用いる(含む)場合には、例えばチタニアやタンタルなどで構成されたバリア層(図示せず)を半導体層2の表面に形成し、その上に導体層51〜53を形成するのが好ましい。
また、導体層51〜53の材料として、半導体層2と密着性の悪い金属、例えばタングステンを用いる場合は、密着力を向上させることができる密着層(図示せず)を形成し、該密着層を介して導体層51〜53を形成するのが好ましい。
半導体層2の上面には、電気絶縁性を有する絶縁層3が接合されている。絶縁層3は、発光素子10、受光素子11、電子回路素子12および13の各上面と、導体層52、53とを覆うように設置されており、これにより、発光素子10、受光素子11、電子回路素子12および13は、封止される。すなわち、発光素子10、受光素子11、電子回路素子12および13は、光導波路構造体1の内部に内蔵されている。
このような構成としたことにより、発光素子10、受光素子11、電子回路素子12および13は、外部に露出することなく封止されるので、汚れ、損傷、酸化劣化等から保護され、電子部品の信頼性向上に寄与する。
絶縁層3としては、例えば、可撓性を有する樹脂製のフィルム(シート材)を用いることができる。絶縁層3の構成材料としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンサルファイド、ポリフェニレンサルフィド、ポリキノリン、ポリノルボルネン、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、トリアゾール樹脂、ポリシアヌレート、ポリイソシアヌレート、ベンゾシクロブテン樹脂等が挙げられる。また、これらの材料は、単独で使用してもよく、複数を混合して使用してもよい。また、絶縁層3は、組成の異なる樹脂材料の層を複数積層した積層体であってもよい。
絶縁層3の厚さは、特に限定されないが、絶縁機能と強度とを考慮して、5〜100μm程度が好ましく、10〜80μm程度がより好ましい。
光導波路9のコア部94は、平面視で(図1の上方から見たとき)発光素子10の発光部101と重なるような(すなわち、発光部101の真下を通過するような)パターン形状で形成されている。また、光導波路9のコア部94は、平面視で(図1の上方から見たとき)受光素子11の受光部111と重なるような(すなわち、受光部111の真下を通過するような)パターン形状で形成されている。
コア層93において、コア部94の図1中前後(図3中左右)には、クラッド部95が存在している。コア部94は、クラッド部95に比べて屈折率が高く、また、クラッド層91、92に対しても屈折率が高い。クラッド層91および92は、それぞれ、コア部94の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような構成により、コア部94は、その外周の全周をクラッド部に囲まれた導光路として機能する。
このような光導波路9は、コア部94の光路を屈曲させる光路変換部(発光部側光路変換部)96aおよび光路変換部(受光部側光路変換部)96bを有している。本実施形態では、コア部94の図1中両端部にそれぞれ光路変換部96a、96bが形成されている。
光路変換部96a、96bは、それぞれ、伝送光の少なくとも一部を反射する反射面(ミラー)961a、961bで構成されている。反射面961a、961bは、それぞれ、発光部101の真下の位置および受光部111の真下の位置に設けられている。
反射面961a、961bは、それぞれ、光導波路9の光路、すなわちコア部94の長手方向に対しほぼ45°傾斜しており、伝送光の大半(例えば90%以上)を反射する機能を有している。
このような光路変換部96a、96bは、例えば、光導波路9の一部(端部)を斜めに切断(除去)して傾斜面を形成し、該傾斜面を反射面961a、961bとして用いることができる。反射面961a、961bは、例えば多層光学薄膜や金属薄膜(例えばアルミ蒸着膜)のような反射膜あるいは反射増加膜を有していてもよい。また、図示しないが、光路変換部96の傾斜面には、充填材、特にコア部94と屈折率の異なる充填材が充填または接合されていてもよい。
半導体層2における発光部101の真下の位置(発光部101と光路変換部96aとの間)には、貫通孔22が形成されており、受光部111の真下の位置(受光部111と光路変換部96bとの間)には、貫通孔23が形成されている。
貫通孔22、23は、それぞれ、伝送光を透光する透光部21を構成するものである。すなわち、この貫通孔22、23は、伝送光を半導体層2の厚さ方向に導光(伝送)する導光路となる。
なお、図示されていないが、貫通孔22および/または23の内部(全部または一部)に、伝送光の透過率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の材料による充填材が充填されていてもよい。
また、図示されていないが、貫通孔22および/または23の内部には、コア部と、該コア部の外周を囲むクラッド部とで構成され、上下方向に光を伝送する垂直光導波路が挿入されていてもよい。
さらに、透光部21(貫通孔22および/または23)には、伝送光を集光または拡散し得るレンズが設けられていてもよい。
本実施形態の光導波路構造体1では、電子回路素子12が作動し、端子123および導体層52を介して発光素子10の端子103へ通電がなされると、発光部101が点灯し、図1中下方へ向かって発せられた光は、貫通孔22を通り、クラッド層92を透過し、反射面961aで反射されて90°屈曲し、光導波路9のコア部94に入り、クラッド部(クラッド層91、92および側方のクラッド部95)との界面で反射を繰り返しながら、コア部94内をその長手方向(図1中右方向)に沿って進む。このコア部94内を進んだ伝送光は、反射面961bで反射されて90°屈曲し、上方へ向かい、クラッド層92を透過し、貫通孔23を通り、受光部111で受光される。この受光された光は光電変換され、端子113から電気信号が出力される。この電気信号は導体層53を介して端子133より素子13に入力され、所定の信号処理がなされる。
<第2実施形態:図2>
図2には、本発明の光導波路構造体1の第2実施形態が示されている。以下、この光導波路構造体1について説明するが、前記第1実施形態と同様の事項についてはその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
本実施形態の光導波路構造体1は、電子回路素子12および13が光導波路構造体1の内部に設置されておらず、光導波路構造体1の上面(片面)側に搭載されている点およびそれに伴う構造が前記と異なり、それ以外は同様である。
すなわち、半導体層2の上部には、発光素子10、受光素子11、電子回路素子12および13のうち、発光素子10と受光素子11とが埋設されており、半導体層2の上面に前記と同様の絶縁層3が接合されている。この絶縁層3の上部(上方)に、電子回路素子12および13が搭載されている。
絶縁層3の上面には、所定の形状にパターンニングされて、所望の配線または回路を構成してなる導体層52および53が接合されている。
電子回路素子12は、図2中下面側に3つの端子123、125および127を有している。端子125、127は、それぞれ、電源、グランドに接続されている。各端子123、125および127は、それぞれ、半田4を介して導体層52の所定部位に接続されている。
電子回路素子13は、図1中下面側に3つの端子133、135および137を有している。端子135、137は、それぞれ、電源、グランドに接続されている。各端子133、135および137は、それぞれ、半田4を介して導体層53の所定部位に接続されている。
図2に示すように、絶縁層3には、その厚さ方向に貫通する2つの貫通孔(スルーホール)8が形成されている。各貫通孔8には、導電材料(例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金、金、金系合金、タングステン、タングステン合金等の各種金属材料)が充填され、それぞれ導体ポスト81、82を形成している。
導体ポスト81の下端は、発光素子10の端子103に接続され、導体ポスト81の上端は、導体層52の所定部位に接続されている。これにより、電子回路素子12の端子123と発光素子10の端子103とが、半田4、導体層52および導体ポスト81を介して電気的に接続されている。
導体ポスト82の下端は、受光素子11の端子113に接続され、導体ポスト82の上端は、導体層53の所定部位に接続されている。これにより、電子回路素子13の端子133と受光素子11の端子113とが、半田4、導体層53および導体ポスト82を介して電気的に接続されている。
なお、図示されていないが、半導体層2および絶縁層を貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔内に前記と同様の導体ポストを挿入し、該導体ポストにより導体層51と導体層52の所定部位同士や、導体層51と導体層53の所定部位同士を電気的に接続した構成とすることもできる。
本実施形態の光導波路構造体1では、電子回路素子12が作動し、端子123、半田4、導体層52および導体ポスト81を介して発光素子10の端子103へ通電がなされると、発光部101が点灯し、図2中下方へ向かって発せられた光は、貫通孔22を通り、クラッド層92を透過し、反射面961aで反射されて90°屈曲し、光導波路9のコア部94に入り、クラッド部(クラッド層91、92および側方のクラッド部95)との界面で反射を繰り返しながら、コア部94内をその長手方向(図2中右方向)に沿って進む。このコア部94内を進んだ伝送光は、反射面961bで反射されて90°屈曲し、上方へ向かい、クラッド層92を透過し、貫通孔23を通り、受光部111で受光される。この受光された光は光電変換され、端子113から電気信号が出力される。この電気信号は、導体ポスト82、導体層53および半田4を介して端子133より素子13に入力され、所定の信号処理がなされる。
<光導波路基板の実施形態:図4>
図4には、本発明の光導波路基板の実施形態が示されている。以下、この光導波路基板6について説明するが、前記第1および第2実施形態と同様の事項についてはその説明を省略し、相違点を中心に説明する。
光導波路基板6は、基板7上に、前記第1実施形態(図1)の光導波路構造体1を2つ搭載してなるものである。
基板7は、前記第2実施形態の光導波路構造体1とほぼ同様の構成である(但し、第2実施形態における電子回路素子12、13がそれぞれ第1実施形態の光導波路構造体1に置き換わっている)。すなわち、基板7は、シリコン等で構成される半導体層2と、光導波路9と、光導波路9の光路を屈曲させる光路変換部96c、96dと、半導体層2の下面に接合された導体層55と、半導体層2の上部に埋設された発光素子10および受光素子11と、半導体層2の内部に形成された透光部21(貫通孔22および23)と、半導体層2の上面に接合された絶縁層3と、絶縁層3の上面に接合され、所定の形状にパターニングされた導体層56および57とを備えている。
基板7における光導波路9は、図4中下側からクラッド層91、コア層93およびクラッド層92をこの順に積層してなるものであり、コア層93には、所定パターンのコア部94とクラッド部95とが形成されている(横断面は、図3と同様)。コア部94は、クラッド部95に比べて屈折率が高く、また、クラッド層91、92に対しても屈折率が高い。コア部94は、伝送光の光路を形成する部分であり、クラッド部95は、コア層93に形成されているものの伝送光の光路を形成せず、クラッド層91、92と同様の機能を果たす部分である。
図4に示す構成では、コア層93の全長に渡り(反射面961c、961d間に)、線状にコア部94が形成されており、該コア部94の図4中前後(図3中左右)には、クラッド部95が存在している。クラッド層91および92は、それぞれ、コア部94の下部および上部に位置するクラッド部を構成し、これにより、コア部94は、その外周の全周をクラッド部に囲まれた導光路として機能する。なお、光導波路9の各部の構成材料およびコア部94の形成方法等については、後に詳述する。
このような光導波路9は、コア部94の光路を屈曲させる光路変換部(発光部側光路変換部)96cおよび光路変換部(受光部側光路変換部)96dを有している。本実施形態では、コア部94の図4中両端部にそれぞれ光路変換部96c、96dが形成されている。
光路変換部96c、96dは、それぞれ、伝送光の少なくとも一部を反射する反射面(ミラー)961c、961dで構成されている。反射面961c、961dは、それぞれ、発光部101の真下の位置および受光部111の真下の位置に設けられている。
反射面961c、961dは、それぞれ、光導波路9の光路、すなわちコア部94の長手方向に対しほぼ45°傾斜しており、伝送光の大半(例えば90%以上)を反射する機能を有している。
このような光路変換部96c、96dは、例えば、光導波路9の一部(端部)を斜めに切断(除去)して傾斜面を形成し、該傾斜面を反射面961c、961dとして用いることができる。反射面961c、961dは、例えば多層光学薄膜や金属薄膜(例えばアルミ蒸着膜)のような反射膜あるいは反射増加膜を有していてもよい。また、図示しないが、光路変換部96の傾斜面には、充填材、特にコア部94と屈折率の異なる充填材が充填または接合されていてもよい。
半導体層2における発光部101の真下の位置(発光部101と光路変換部96cとの間)には、貫通孔22が形成されており、受光部111の真下の位置(受光部111と光路変換部96dとの間)には、貫通孔23が形成されている。
貫通孔22、23は、それぞれ、伝送光を透光する透光部21を構成するものである。すなわち、この貫通孔22、23は、伝送光を半導体層2の厚さ方向に導光(伝送)する導光路となる。
なお、図示されていないが、貫通孔22および/または23の内部(全部または一部)に、伝送光の透過率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の材料による充填材が充填されていてもよい。
また、図示されていないが、貫通孔22および/または23の内部には、コア部と、該コア部の外周を囲むクラッド部とで構成され、上下方向に光を伝送する垂直光導波路が挿入されていてもよい。
さらに、透光部21(貫通孔22および/または23)には、伝送光を集光または拡散し得るレンズが設けられていてもよい。
基板7に搭載される2つの前記第1実施形態(図1)の光導波路構造体1は、それぞれ、その下面に所定形状にパターニングされた導体層51を有している。一方、基板7の絶縁層3の上面に接合された導体層56および57も、所定形状にパターニングされている。一方(図4中左側)の光導波路構造体1の導体層51と導体層56の所定部位同士は、半田4により電気的に接続され、他方(図4中右側)の光導波路構造体1の導体層51と導体層57の所定部位同士は、半田4により電気的に接続されている。
基板7の絶縁層3には、その厚さ方向に貫通する2つの貫通孔(スルーホール)8が形成されている。各貫通孔8には、導電材料(例えば、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金、金、金系合金、タングステン、タングステン合金等の各種金属材料)が充填され、それぞれ導体ポスト83、84を形成している。
導体ポスト83の下端は、発光素子10の端子103に接続され、導体ポスト83の上端は、導体層56の所定部位に接続されている。導体ポスト84の下端は、受光素子11の端子113に接続され、導体ポスト84の上端は、導体層57の所定部位に接続されている。
このような構成により、一方の光導波路構造体1の導体層51と発光素子10の端子103とが導通し、他方の光導波路構造体1の導体層51と受光素子11の端子113とが導通する。
なお、基板7は、図示の構成のものに限らず、例えば、通常の樹脂製の基板であってもよい。樹脂製の基板としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、トリアゾール樹脂、ポリシアヌレート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリイミド、ポリベンザオキサゾール樹脂、ノルボルネン樹脂等の各種樹脂材料で構成されたものが挙げられる。
また、基板7は、例えばガラス繊維、樹脂繊維等の繊維基材(織布、不織布、織物、編物等)に前述したような樹脂材料を含浸させたもの(プリプレグ等)であってもよい。例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたものをガラスエポキシ基板と言うが、このようなものを基板7として用いることができる。
また、基板7は、複数の層の積層体(図4に示す以外の構成)であってもよい。例えば、それぞれ組成(種類)が異なる樹脂材料からなる第1の層と第2の層とを積層したもの、前記繊維基材に樹脂材料を含浸させた層(シート材)と、樹脂材料からなる層とを積層したものが挙げられる。さらに、導体層、絶縁層、接着層等の任意の層を有していてもよい。なお、積層体による基板7の層構成は、これらに限定されないことは言うまでもない。
本実施形態の光導波路基板6では、一方(図4中左側)の光導波路構造体1が作動し、導体層51、半田4、導体層56および導体ポスト83を介して発光素子10の端子103へ通電がなされると、発光部101が点灯し、図4中下方へ向かって発せられた光は、貫通孔22を通り、クラッド層92を透過し、反射面961cで反射されて90°屈曲し、光導波路9のコア部94に入り、クラッド部(クラッド層91、92および側方のクラッド部95)との界面で反射を繰り返しながら、コア部94内をその長手方向(図4中右方向)に沿って進む。このコア部94内を進んだ伝送光は、反射面961dで反射されて90°屈曲し、上方へ向かい、クラッド層92を透過し、貫通孔23を通り、受光部111で受光される。この受光された光は光電変換され、端子113から電気信号が出力される。この電気信号は、導体ポスト84、導体層57および半田4および導体層51を介して他方(図4中右側)の光導波路構造体1に入力され、所定の信号処理がなされる。
本実施形態の光導波路基板6は、例えば、スタックドIC、マルチCPU、Cellまたはそれ同士を更に一体化したチップに適用することができる。
以上、各実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない限り、他の構成のものでもよい。また、本発明は、上述した各実施形態のうちの任意の2以上の実施形態を組み合わせたものでもよい。
次に、前記各実施形態における、光導波路9の製造方法および各部の構成材料等について説明するが、特にコア部94の形成方法について詳細に説明する。
<第1の製造方法>
まず、光導波路9の第1の製造方法について説明する。
図5−A〜図5−Eは、それぞれ、光導波路の第1の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
[1A] まず、支持基板951上に、層910を形成する(図5−A参照)。
層910は、コア層形成用材料(ワニス)900を塗布し硬化(固化)させる方法により形成される。
具体的には、層910は、支持基板951上にコア層形成用材料900を塗布して液状被膜を形成した後、この支持基板951を換気されたレベルテーブルに置いて、液状被膜表面の不均一な部分を水平化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより形成する。
層910を塗布法で形成する場合、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
支持基板951には、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、ガラス基板、石英基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が用いられる。
コア層形成用材料900は、ポリマー915と、添加剤920(本実施形態では、少なくともモノマー、助触媒および触媒前駆体を含む)とで構成される光誘発熱現像性材料(PITDM)を含有し、活性放射線の照射および加熱により、ポリマー915中において、モノマーの反応が生じる材料である。
そして、得られた層910中では、ポリマー(マトリックス)915は、いずれも、実質的に一様かつランダムに分配され、添加剤920は、ポリマー915内に実質的に一様かつランダムに分散されている。これにより、層910中には、添加剤920が実質的に一様かつ任意に分散されている。
このような層910の平均厚さは、形成すべきコア層93の厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
ポリマー915には、透明性が十分に高く(無色透明であり)、かつ、後述するモノマーと相溶性を有するもの、さらに、その中で後述するようにモノマーが反応(重合反応や架橋反応)可能であり、モノマーが重合した後においても、十分な透明性を有するものが好適に用いられる。
ここで、「相溶性を有する」とは、モノマーが少なくとも混和して、コア層形成用材料900中や層910中においてポリマー915と相分離を起こさないことを言う。
このようなポリマー915としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やベンゾシクロブテン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体など)用いることができる。
これらの中でも、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。ポリマー915としてノルボルネン系ポリマーを用いることにより、優れた光伝送性能や耐熱性を有するコア層93を得ることができる。
また、ノルボルネン系ポリマーは、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いコア層93を得ることができる。
ノルボルネン系ポリマーとしては、単独の繰り返し単位を有するもの(ホモポリマー)、2つ以上のノルボルネン系繰り返し単位を有するもの(コポリマー)のいずれであってもよい。
このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
これらの中でも、ノルボルネン系ポリマーとしては、下記化1(構造式B)で表される少なくとも1個の繰り返し単位を有するもの、すなわち、付加(共)重合体が好ましい。このものは、透明性、耐熱性および可撓性に富むことからも好ましい。
かかるノルボルネン系ポリマーは、例えば、後述するノルボルネン系モノマー(後述する化3で表されるノルボルネン系モノマーや、架橋性ノルボルネン系モノマー)を用いることにより好適に合成される。
なお、比較的高い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、芳香族環(芳香族基)、窒素原子、臭素原子や塩素原子を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。一方、比較的低い屈折率を有するポリマー915を得るためには、分子構造中に、アルキル基、フッ素原子やエーテル構造(エーテル基)を有するモノマーを一般的に選択して、ポリマー915が合成(重合)される。
比較的高い屈折率を有するノルボルネン系ポリマーとしては、アラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。かかるノルボルネン系ポリマーは、特に高い屈折率を有する。
アラルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアラルキル基(アリールアルキル基)としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、フルオレニルエチル基、フルオレニルプロピル基等が挙げられるが、ベンジル基やフェニルエチル基が特に好ましい。
かかる繰り返し単位を有するノルボルネン系ポリマーは、極めて高い屈折率を有するものであることから好ましい。
また、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高いため、かかるノルボルネン系ポリマーを用いることにより、光導波路9に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位が有するアルキル基としては、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられるが、ヘキシル基が特に好ましい。なお、これらのアルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
ヘキシルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマー全体の屈折率が低下するのを防止し、かつ、高い柔軟性を保持することができる。
ここで、光導波路9は、例えば、600〜1550nm程度の波長領域の光を使用したデータ通信において好適に使用されるが、ヘキシル(アルキル)ノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることから好ましい。
このようなノルボルネン系ポリマーの好ましい具体例としては、ヘキシルノルボルネンのホモポリマー、フェニルエチルノルボルネンのホモポリマー、ベンジルノルボルネンのホモポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとベンジルノルボルネンとのコポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態のコア層形成用材料900は、添加剤920として、モノマー、助触媒(第1の物質)および触媒前駆体(第2の物質)を含んでいる。
モノマーは、後述する活性放射線に照射により、活性放射線の照射領域において反応して反応物を形成し、この反応物の存在により、層910において照射領域と、活性放射線の未照射領域とにおいて、屈折率差を生じさせ得るような化合物である。
ここで、この反応物としては、モノマーがポリマー(マトリックス)915中で重合して形成されたポリマー(重合体)、ポリマー915同士を架橋する架橋構造、および、ポリマー915に重合してポリマー915から分岐した分岐構造(ブランチポリマーや側鎖(ペンダントグループ))のうちの少なくとも1つが挙げられる。
ここで、層910において、照射領域の屈折率が高くなることが望まれる場合には、比較的低い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して高い屈折率を有するモノマーとが組み合わせて使用され、照射領域の屈折率が低くなることが望まれる場合には、比較的高い屈折率を有するポリマー915と、このポリマー915に対して低い屈折率を有するモノマーとが組み合わせて使用される。
なお、屈折率が「高い」または「低い」とは、屈折率の絶対値を意味するものではなく、ある材料同士の相対的な関係を意味する。
そして、モノマーの反応(反応物の生成)により、層910において照射領域の屈折率が低下する場合、当該部分がクラッド部95となり、照射領域の屈折率が上昇する場合、当該部分がコア部94となる。
このようなモノマーとしては、重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、ノルボルネン系モノマー、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、スチレン系モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、モノマーとしては、ノルボルネン系モノマーを用いるのが好ましい。ノルボルネン系モノマーを用いることにより、光伝送性能に優れ、かつ、耐熱性および柔軟性に優れるコア層93(光導波路9)が得られる。
ここで、ノルボルネン系モノマーとは、下記化2(構造式A)で示されるノルボルネン骨格を少なくとも1つ含むモノマーを総称し、例えば、下記化3(構造式C)で表される化合物が挙げられる。
[式中、aは、単結合または二重結合を表し、R
1〜R
4は、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換の炭化水素基、または官能置換基を表し、mは、0〜5の整数を表す。ただし、aが二重結合の場合、R
1およびR
2のいずれか一方、R
3およびR
4のいずれか一方は存在しない。]
無置換の炭化水素基(ハイドロカルビル基)としては、例えば、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルキニル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルキル基、炭素数4〜12(C4〜C12)のシクロアルケニル基、炭素数6〜12(C6〜C12)のアリール基、炭素数7〜24(C7〜C24)のアラルキル基(アリールアルキル基)等が挙げられ、その他、R1およびR2、R3およびR4が、それぞれ炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキリデニル基であってもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基およびデシル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基およびシクロヘキセニル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基および2−ブチニル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロオクチル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基およびアントラセニル(anthracenyl)基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
アラルキル(aralkyl)基の具体例としては、ベンジル基およびフェニルエチル(フェネチル:phenethyl)基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、アルキリデニル(alkylidenyl)基の具体例としては、メチリデニル(methylidenyl)基およびエチリデニル(ethylidenyl)基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
置換された炭化水素基としては、前記の炭化水素基が有する水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたもの、すなわち、ハロハイドロカルビル(halohydrocarbyl)基、パーハロハイドロカルビル(perhalohydrocarbyl)基であるか、パーハロカルビル(perhalocarbyl)基のようなハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
これらのハロゲン化炭化水素基において、水素原子に置換するハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素および臭素から選択される少なくとも1種が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
このうち、パーハロゲン化された炭化水素基(パーハロハイドロカルビル基、パーハロカルビル基)の具体例としては、例えば、パーフルオロフェニル基、パーフルオロメチル基(トリフルオロメチル基)、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
なお、ハロゲン化アルキル基には、炭素数1〜10のもの以外に、炭素数11〜20のものも好適に用いることができる。すなわち、ハロゲン化アルキル基には、部分的または完全にハロゲン化され、直鎖状または分岐状をなし、一般式:−CZX’’2Z+1で表される基を選択することができる。ここで、X’’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子または水素原子を表し、Zは、1〜20の整数を表す。
また、置換された炭化水素基としては、ハロゲン原子の他、直鎖状または分岐状の炭素数1〜5(C1〜C5)のアルキル基またはハロアルキル基、アリール基およびシクロアルキル基で更に置換された、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基(アラアルキル基)等が挙げられる。
また、官能置換基としては、例えば、−(CH2)n−CH(CF2)2−O−Si(Me)3、−(CH2)n−CH(CF3)2−O−CH2−O−CH3、−(CH2)n−CH(CF3)2−O−C(O)−O−C(CH3)3、−(CH2)n−C(CF3)2−OH、−(CH2)n−C(O)−NH2、−(CH2)n−C(O)−Cl、−(CH2)n−C(O)−O−R5、−(CH2)n−O−R5、−(CH2)n−O−C(O)−R5、−(CH2)n−C(O)−R5、−(CH2)n−O−C(O)−OR5、−(CH2)n−Si(R5)3、−(CH2)n−Si(OR5)3、−(CH2)n−O−Si(R5)3および−(CH2)n−C(O)−OR6等が挙げられる。
ここで、前記各式において、それぞれ、nは、0〜10の整数を示し、R5は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20(C1〜C20)アルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数1〜20(C1〜C20)のハロゲン化もしくはパーハロゲン化アルキル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルケニル基、直鎖状または分岐状の炭素数2〜10(C2〜C10)のアルキニル基、炭素数5〜12(C5〜C12)のシクロアルキル基、炭素数6〜14(C6〜C14)のアリール基、炭素数6〜14(C6〜C14)のハロゲン化もしくはパーハロゲン化アリール基または炭素数7〜24(C7〜C24)のアラルキル基を表す。
なお、R5で示される炭化水素基は、R1〜R4で示されるものと同一の炭化水素基を示す。R1〜R4で示すように、R5で示される炭化水素基は、ハロゲン化またはパーハロゲン化されていてもよい。
例えば、R5が炭素数1〜20(C1〜C20)のハロゲン化またはパーハロゲン化アルキル基である場合、R5は、一般式:−CZX’’2Z+1で表される。ここで、zおよびX’’は、それぞれ、上記の定義と同じであり、X’’の少なくとも1つは、ハロゲン原子(例えば、臭素原子、塩素原子またはフッ素原子)である。
ここで、パーハロゲン化アルキル基とは、前記一般式において、すべてのX’’がハロゲン原子である基であり、その具体例としては、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、−C7F15、−C11F23が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
パーハロゲン化アリール基の具体例としては、ペンタクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
また、R6としては、例えば、−C(CH3)3、−Si(CH3)3、−CH(R7)−O−CH2CH3、−CH(R7)OC(CH3)3および下記化4の環状基等が挙げられる。
ここで、R7は、水素原子、あるいは直鎖状または分岐状の炭素数1〜5(C1〜C5)のアルキル基を表す。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル、ペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
なお、上記化4で表される環状基では、環構造から延びる単結合と酸置換基との間でエステル結合が形成される。
R6の具体例としては、例えば、1−メチル−1−シクロヘキシル基、イソボルニル(isobornyl)基、2−メチル−2−イソボルニル基、2−メチル−2−アダマンチル基、テトラヒドロフラニル(tetrahydrofuranyl)基、テトラヒドロピラノイル(tetrahydropyranoyl)基、3−オクソシクロヘキサノイル(3−oxocyclohexanonyl)基、メバロンラクトニル(mevalonic lactonyl)基、1−エトキシエチル基、1−t−ブトキシエチル基等が挙げられる。
また、他のR6としては、例えば、下記化5で表されるジシクロプロピルメチル基(Dcpm)、ジメチルシクロプロピルメチル基(Dmcp)等が挙げられる。
また、モノマーには、上記のモノマーに代えて、または、上記のモノマーとともに架橋性モノマー(架橋剤)を用いることもできる。この架橋性モノマーは、後述する触媒前駆体の存在下で、架橋反応を生じ得る化合物である。
架橋性モノマーを用いることにより、次のような利点がある。すなわち、架橋性モノマーは、より速く重合するので、コア層93(光導波路9)の形成(プロセス)に要する時間を短縮することができる。また、架橋性モノマーは、加熱しても蒸発し難くいので、蒸気圧の上昇を抑えることができる。さらに、架橋性モノマーは、耐熱性に優れるため、コア層93の耐熱性を向上させることができる。
このうち、架橋性ノルボルネン系モノマーは、前記化2(構造式A)で表されるノルボルネン系部位(ノルボルネン系二重結合)を含む化合物である。
架橋性ノルボルネン系モノマーとしては、連続多環環系(fused multicyclic ring systems)の化合物と、連結多環環系(linked multicyclic ring systems)の化合物とがある。
連続多環環系の化合物(連続多環環系の架橋性ノルボルネン系モノマー)としては、下記化6で表される化合物が挙げられる。
[式中、Yは、メチレン(−CH
2−)基を表し、mは、0〜5の整数を表わす。ただし、mが0である場合、Yは、単結合である。]
なお、簡略化のため、ノルボルナジエン(norbornadiene)は、連続多環環系に含まれ、重合性ノルボルネン系二重結合を含むものと考えることとする。
この連続多環環系の化合物の具体例としては、下記化7で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
一方、連結多環環系の化合物(連結多環環系の架橋性ノルボルネン系モノマー)としては、下記化8で表される化合物が挙げられる。
[式中、aは、それぞれ独立して、単結合または二重結合を表し、mは、それぞれ独立して、0〜5の整数を表し、R
9は、それぞれ独立して二価の炭化水素基、二価のエーテル基または二価のシリル基を表す。また、nは、0または1である。]
ここで、二価の置換基とは、端部にノルボルネン構造に結合し得る結合手を2つ有する基のことを言う。
二価の炭化水素基(ハイドロカルビル基)の具体例としては、一般式:−(CdH2d)−で表されるアルキレン基(dは、好ましくは1〜10の整数を表す。)と、二価の芳香族基(アリール基)とが挙げられる。
二価のアルキレン基としては、直鎖状または分岐状の炭素数1〜10(C1〜C10)のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基が挙げられる。
なお、分岐アルキレン基は、主鎖の水素原子が、直鎖状または分岐状のアルキル基で置換されたものである。
一方、二価の芳香族基としては、二価のフェニル基、二価のナフチル基が好ましい。
また、二価のエーテル基は、−R10−O−R10−で表される基である。
ここで、R10は、それぞれ独立して、R9と同じものを表す。
この連結多環環系の化合物の具体例としては、下記化9、化10、化11、化12、化13で表される化合物の他、化14、化15で表されるフッ素含有化合物(フッ素含有架橋性ノルボルネン系モノマー)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
この化10で表される化合物は、ジメチルビス[ビシクロ[2.2.1]へプト−2−エン−5−メトキシ]シランであり、またの命名では、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(「SiX」と略される。)と呼ばれる。
[式中、mおよびnは、それぞれ、1〜4の整数を表す。]
各種の架橋性ノルボルネン系モノマーの中でも、特に、ジメチルビス(ノルボルネンメトキシ)シラン(SiX)が好ましい。SiXは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位および/またはアラルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーに対して十分に低い屈折率を有する。このため、後述する活性放射線を照射する照射領域の屈折率を確実に低くして、クラッド部95とすることができる。また、コア部94とクラッド部95との間における屈折率差を大きくすることができ、コア層93(光導波路9)の特性(光伝送性能)の向上を図ることができる。
なお、以上のようなモノマーは、単独または任意に組み合わせて用いるようにしてもよい。
触媒前駆体(第2の物質)は、前記のモノマーの反応(重合反応、架橋反応等)を開始させ得る物質であり、後述する活性放射線の照射により活性化した助触媒(第1の物質)の作用により、活性化温度が変化する物質である。
この触媒前駆体(プロカタリスト:procatalyst)としては、活性放射線の照射に伴って活性化温度が変化(上昇または低下)するものであれば、いかなる化合物を用いてもよいが、特に、活性放射線の照射に伴って活性化温度が低下するものが好ましい。これにより、比較的低温による加熱処理でコア層93(光導波路9)を形成することができ、他の層に不要な熱が加わって、光導波路9の特性(光伝送性能)が低下するのを防止することができる。
このような触媒前駆体としては、下記式(Ia)および(Ib)で表わされる化合物の少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
[式Ia、Ib中、それぞれ、E(R)
3は、第15族の中性電子ドナー配位子を表し、Eは、周期律表の第15族から選択される元素を表し、Rは、水素原子(またはその同位体の1つ)または炭化水素基を含む部位を表し、Qは、カルボキシレート、チオカルボキシレートおよびジチオカルボキシレートから選択されるアニオン配位子を表す。また、式Ib中、LBは、ルイス塩基を表し、WCAは、弱配位アニオンを表し、aは、1〜3の整数を表し、bは、0〜2の整数を表し、aとbとの合計は、1〜3であり、pおよびrは、パラジウムカチオンと弱配位アニオンとの電荷のバランスをとる数を表す。]
式Iaに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CCMe3)2(P(Cy)3)2、Pd(OAc)2(P(Cp)3)2、Pd(O2CCF3)2(P(Cy)3)2、Pd(O2CC6H5)3(P(Cy)3)2が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ここで、Cpは、シクロペンチル(cyclopentyl)基を表し、Cyは、シクロヘキシル基を表す。
また、式Ibで表される触媒前駆体としては、pおよびrが、それぞれ1および2の整数から選択される化合物が好ましい。
このような式Ibに従う典型的な触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2が挙げられる。ここで、Cyは、シクロヘキシル基を表し、Acは、アセチル基を表す。
これらの触媒前駆体は、モノマーを効率よく反応(ノルボルネン系モノマーの場合、付加重合反応によって効率よく重合反応や架橋反応等)することができる。
また、活性化温度が低下した状態(活性潜在状態)において、触媒前駆体としては、その活性化温度が本来の活性化温度よりも10〜80℃程度(好ましくは、10〜50℃程度)低くなるものが好ましい。これにより、コア部94とクラッド部95との間の屈折率差を確実に生じさせることができる。
かかる触媒前駆体としては、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2およびPd(OAc)2(P(Cy)3)2のうちの少なくとも一方を含む(主とする)ものが好適である。
なお、以下では、Pd(OAc)2(P(i−Pr)3)2を「Pd545」と、また、Pd(OAc)2(P(Cy)3)2を「Pd785」と略すことがある。
助触媒(第1の物質)は、活性放射線の照射によって活性化して、前記の触媒前駆体(プロカタリスト)の活性化温度(モノマーに反応を生じさせる温度)を変化させ得る物質である。
この助触媒(コカタリスト:cocatalyst)としては、活性放射線の照射により、その分子構造が変化(反応または分解)して活性化する化合物であれば、いかなるものでも用いることができるが、特定波長の活性放射線の照射によって分解し、プロトンや他の陽イオン等のカチオンと、触媒前駆体の脱離基に置換し得る弱配位アニオン(WCA)とを発生する化合物(光開始剤)を含む(主とする)ものが好適に用いられる。
弱配位アニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(FABA−)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6 −)等が挙げられる。
この助触媒(光酸発生剤または光塩基発生剤)としては、例えば、下記化17で表されるテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩やヘキサフルオロアンチモン酸塩の他、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム酸塩、アルミン酸塩類、アンチモン酸塩類、他のホウ酸塩類、ガリウム酸塩類、カルボラン類、ハロカルボラン類等が挙げられる。
このような助触媒の市販品としては、例えば、ニュージャージ州クランベリーのRhodia USA社から入手可能な「RHODORSIL(登録商標、以下同様である。) PHOTOINITIATOR 2074(CAS番号第178233−72−2番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−372R((ジメチル(2−(2−ナフチル)−2−オキソエチル)スルフォニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート:CAS番号第193957−54−9番))、日本国東京のみどり化学株式会社から入手可能な「MPI−103(CAS番号第87709−41−9番)」、日本国東京の東洋インキ製造株式会社から入手可能な「TAG−371(CAS番号第193957−53−8番)」、日本国東京の東洋合成工業株式会社から入手可能な「TTBPS−TPFPB(トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルフォニウムテトラキス(ペンタペンタフルオロフェニル)ボレート)」、日本国東京のみどり化学工業株式会社より入手可能な「NAI−105(CAS番号第85342−62−7番)」等が挙げられる。
なお、助触媒(第1の物質)として、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を用いる場合、後述する活性放射線(化学線)としては、紫外線(UV光)が好適に用いられ、紫外線の照射手段としては、水銀灯(高圧水銀ランプ)が好適に用いられる。これにより、層910に対して、300nm未満の十分なエネルギーの紫外線(活性放射線)を供給することができ、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074を効率よく分解して、上記のカチオンおよびWCAを発生させることができる。
また、コア層形成用材料(ワニス)900中には、必要に応じて、増感剤を添加するようにしてもよい。
増感剤は、活性放射線に対する助触媒の感度を増大して、助触媒の活性化(反応または分解)に要する時間やエネルギーを減少させる機能や、助触媒の活性化に適する波長に活性放射線の波長を変化させる機能を有するものである。
このような増感剤としては、助触媒の感度や増感剤の吸収のピーク波長等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、例えば、9,10−ジブトキシアントラセン(CAS番号第76275−14−4番)のようなアントラセン類、キサントン類、アントラキノン類、フェナントレン類、クリセン類、ベンツピレン類、フルオラセン類(fluoranthenes)、ルブレン類、ピレン類、インダンスリーン類、チオキサンテン−9−オン類(thioxanthen−9−ones)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いられる。
増感剤の具体例としては、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、フェノチアジン(phenothiazine)またはこれらの混合物が挙げられる。
なお、9,10−ジブトキシアントラセン(DBA)は、日本国神奈川県の川崎化成工業株式会社から入手が可能である。
コア層形成用材料900中の増感剤の含有量は、特に限定されないが、0.01重量%以上であるのが好ましく、0.5重量%以上であるのがより好ましく、1重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、上限値は、5重量%以下であるのが好ましい。
さらに、コア層形成用材料900中には、酸化防止剤を添加することができる。これにより、望ましくないフリーラジカルの発生や、ポリマー915の自然酸化を防止することができる。その結果、得られたコア層93(光導波路9)の特性の向上を図ることができる。
この酸化防止剤としては、ニューヨーク州タリータウンのCiba Specialty Chemicals社から入手可能なCiba(登録商標、以下同様である。) IRGANOX(登録商標、以下同様である。) 1076およびCiba IRGAFOS(登録商標、以下同様である。) 168が好適に用いられる。
また、他の酸化防止剤としては、例えば、Ciba Irganox(登録商標、以下同様である。) 129、Ciba Irganox 1330、Ciba Irganox 1010、Ciba Cyanox(登録商標、以下同様である。) 1790、Ciba Irganox(登録商標) 3114、Ciba Irganox 3125等を用いることもできる。
なお、このような酸化防止剤は、例えば、層910が酸化条件に曝されない場合や、曝される期間が極めて短い場合等には、省略することもできる。
コア層形成用材料(ワニス)900の調製に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒等の各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
さて、支持基板951上に形成された液状被膜中から溶媒を除去(脱溶媒)する方法としては、例えば、自然乾燥、加熱、減圧下での放置、不活性ガスの吹付け(ブロー)などによる強制乾燥等の方法が挙げられる。
以上のようにして、支持基板951上には、コア層形成用材料900のフィルム状の固化物(または硬化物)である層910が形成される。
このとき、層(PITDMの乾燥フィルム)910は、第1の屈折率(RI)を有している。この第1の屈折率は、層910中に一様に分散(分布)するポリマー915およびモノマーの作用による。
[2A] 次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、層910に対して活性放射線930を照射する(図5−B参照)。
以下では、モノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用い、また、触媒前駆体として、活性放射線930の照射に伴って活性化温度が低下するものを用いる場合を一例に説明する。
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925がクラッド部95となる。
したがって、ここで示す例では、マスク935には、形成すべきクラッド部95のパターンと等価な開口(窓)9351が形成される。この開口9351は、照射する活性放射線930が透過する透過部を形成するものである。
マスク935は、予め形成(別途形成)されたもの(例えばプレート状のもの)でも、層910上に例えば気相成膜法や塗布法により形成されたものでもよい。
マスク935として好ましいものの例としては、石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスク、ステンシルマスク、気相成膜法(蒸着、スパッタリング等)により形成された金属薄膜等が挙げられるが、これらの中でもフォトマスクやステンシルマスクを用いるのが特に好ましい。微細なパターンを精度良く形成することができるとともに、ハンドリングがし易く、生産性の向上に有利であるからである。
また、図5−Bにおいては、形成すべきクラッド部95のパターンと等価な開口(窓)9351は、活性放射線930の未照射領域940のパターンに沿ってマスクを部分的に除去したものを示したが、前記石英ガラスやPET基材等で作製されたフォトマスクを用いる場合、該フォトマスク上に例えばクロム等の金属による遮蔽材で構成された活性放射線930の遮蔽部を設けたものを用いることもできる。このマスクでは、遮蔽部以外の部分が前記窓(透過部)となる。
用いる活性放射線930は、助触媒に対して、光化学的な反応(変化)を生じさせ得るものであればよく、例えば、可視光、紫外光、赤外光、レーザ光の他、電子線やX線等を用いることもできる。
これらの中でも、活性放射線930は、助触媒の種類、増感剤を含有する場合には、増感剤の種類等によって適宜選択され、特に限定されないが、波長200〜450nmの範囲にピーク波長を有するものであるのが好ましい。これにより、助触媒を比較的容易に活性化させることができる。
また、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜3J/cm2程度であるのがさらに好ましい。これにより、助触媒を確実に活性化させることができる。
前記マスク935の構成材料としては、照射する活性放射線930により適宜選定される。具体的には、マスク935の構成材料としては、活性放射線930を遮光し得る材料とされる。このような特性を有するものであれば、マスク935の材料自体は、公知のいずれのものも使用することができる。
マスク935を介して、活性放射線930を層910に照射すると、活性放射線930が照射された照射領域925内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
ここで、活性潜在状態(または潜在的活性状態)の触媒前駆体とは、本来の活性化温度より活性化温度が低下しているが、温度上昇がないと、すなわち、室温程度では、照射領域925内においてモノマーの反応を生じさせることができない状態にある触媒前駆体のことを言う。
したがって、活性放射線930照射後においても、例えば−40℃程度で、層910を保管すれば、モノマーの反応を生じさせることなく、その状態を維持することができる。このため、活性放射線930照射後の層910を複数用意しておき、これらに一括して加熱処理を施すことにより、コア層93を得ることができ、利便性が高い。
なお、活性放射線930として、レーザ光のように指向性の高い光を用いる場合には、マスク935の使用を省略してもよい。
[3A] 次に、層910に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散(モノマーディフュージョン)して照射領域925に集まってくる。
その結果、照射領域925では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、モノマーの重合体としては、主に付加(共)重合体が生成する。
一方、未照射領域940では、当該領域から照射領域925にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー915の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部94(未照射領域940)とクラッド部95(照射領域925)とが形成される(図5−C参照)。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、30〜80℃程度であるのが好ましく、40〜60℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、照射領域925内におけるモノマーの反応がほぼ完了するように設定するのが好ましく、具体的には、0.1〜2時間程度であるのが好ましく、0.1〜1時間程度であるのがより好ましい。
ここで、コア部94は、その横断面形状が、図示のように、正方形または矩形(長方形)のような四角形に形成されるが、その幅および高さは、それぞれ、好ましくは1〜200μm程度、より好ましくは5〜100μm程度、さらに好ましくは10〜60μm程度とされる。
[4A] 次に、層910に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域940および/または照射領域925に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域925、940に残存するモノマーを反応させる。
このように、各領域925、940に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部94およびクラッド部95の安定化を図ることができる。
この第2の加熱処理における加熱温度は、触媒前駆体または助触媒を活性化し得る温度であればよく、特に限定されないが、70〜100℃程度であるのが好ましく、80〜90℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
[5A] 次に、層910に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層93に生じる内部応力の低減や、コア部94およびクラッド部95の更なる安定化を図ることができる。
この第3の加熱処理における加熱温度は、第2の加熱処理における加熱温度より20℃以上高く設定するのが好ましく、具体的には、90〜180℃程度であるのが好ましく、120〜160℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、0.5〜2時間程度であるのが好ましく、0.5〜1時間程度であるのがより好ましい。
以上の工程を経て、コア層93が得られる。
なお、例えば、第2の加熱処理や第3の加熱処理を施す前の状態で、コア部94とクラッド部95との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、本工程[5A]や前記工程[4A]を省略してもよい。
[6A] 次に、支持基板952上に、クラッド層91(92)を形成する(図5−D参照)。
クラッド層91(92)の形成方法としては、クラッド材を含むワニス(クラッド層形成用材料)を塗布し硬化(固化)させる方法、硬化性を有するモノマー組成物を塗布し硬化(固化)させる方法等、いかなる方法でもよい。
クラッド層91(92)を塗布法で形成する場合、例えば、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
支持基板952には、支持基板951と同様のものを用いることができる。
クラッド層91(92)の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体、複合体(積層体)など)用いることができる。
これらのうち、特に耐熱性に優れるという点で、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、またはそれらを含むもの(主とするもの)を用いるのが好ましく、特に、ノルボルネン系樹脂(ノルボルネン系ポリマー)を主とするものが好ましい。
ノルボルネン系ポリマーは、耐熱性に優れるため、これをクラッド層91(92)の構成材料として使用する光導波路9では、光導波路9に導体層を形成する際、導体層を加工して配線を形成する際、光学素子を実装する等に加熱されたとしても、クラッド層91(92)が軟化して、変形するのを防止することができる。
また、高い疎水性を有するため、吸水による寸法変化等を生じ難いクラッド層91(92)を得ることができる。
また、ノルボルネン系ポリマーまたはその原料であるノルボルネン系モノマーは、比較的安価であり、入手が容易であることからも好ましい。
さらに、クラッド層91(92)の材料として、ノルボルネン系ポリマーを主とするものを用いると、曲げ等の変形に対する耐性に優れ、繰り返し湾曲変形した場合でも、クラッド層91、92とコア層93との層間剥離が生じ難く、クラッド層91、93の内部にマイクロクラックが発生することも防止される。しかも、コア層93の構成材料として好適に用いられる材料と同種となるため、コア層93との密着性がさらに高いものとなり、クラッド層91(92)とコア層93との間での層間剥離を防止することができる。このようなことから、光導波路9の光伝送性能が維持され、耐久性に優れた光導波路9が得られる。
このようなノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、(1)ノルボルネン型モノマーを付加(共)重合して得られるノルボルネン型モノマーの付加(共)重合体、(2)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との付加共重合体、(3)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、および必要に応じて他のモノマーとの付加共重合体のような付加重合体、(4)ノルボルネン型モノマーの開環(共)重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(5)ノルボルネン型モノマーとエチレンやα−オレフィン類との開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加した樹脂、(6)ノルボルネン型モノマーと非共役ジエン、または他のモノマーとの開環共重合体、および必要に応じて該(共)重合体を水素添加したポリマーのような開環重合体が挙げられる。これらの重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体等が挙げられる。
これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
これらの中でも、ノルボルネン系ポリマーとしては、付加(共)重合体が好ましい。このものは、透明性、耐熱性および可撓性に富むことからも好ましい。
特に、ノルボルネン系ポリマーは、重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アリール基を含む置換基を有するノルボンネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。
重合性基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、クラッド層91(92)において、ノルボルネン系ポリマーの少なくとも一部のものの重合性基同士を、直接または架橋剤を介して架橋させることができる。また、重合性基の種類、架橋剤の種類、コア層93に用いるポリマーの種類等によっては、このノルボルネン系ポリマーとコア層93に用いるポリマーとを架橋させることもできる。換言すれば、かかるノルボルネン系ポリマーは、その少なくとも一部のものが重合性基において架橋しているのが好ましい。
その結果、クラッド層91(92)自体の強度や、クラッド層91(92)とコア層93との密着性の更なる向上を図ることができる。
このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位としては、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位、および、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位がのうちの少なくとも1種が好適である。これらの重合性基は、各種重合性基の中でも、反応性が高いことから好ましい。
また、このような重合性基を含むノルボルネンの繰り返し単位を、2種以上含むものを用いれば、架橋密度をさらに向上させることができ、前記効果がより顕著となる。
一方、アリール基を含む置換基を有するノルボンネンの繰り返し単位を含むことにより、アリール基は、疎水性が極めて高いため、クラッド層91(92)の吸水による寸法変化等をより確実に防止することができる。また、アリール基は、脂溶性(親油性)に優れ、前述したようなコア層93に用いられるポリマーとの親和性が高いため、クラッド層91(92)とコア層93との間での層間剥離をより確実に防止することができ、より耐久性に優れた光導波路9が得られる。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むものが好ましい。なお、アルキル基は、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。
アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、ノルボルネン系ポリマーは、柔軟性が高くなるため、クラッド層91、92(光導波路9)に高いフレキシビリティ(可撓性)を付与することができる。
また、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーは、前述したような波長領域(特に、850nm付近の波長領域)の光に対する透過率が優れることからも好ましい。
なお、クラッド層91(92)に用いるノルボルネン系ポリマーは、比較的屈折率の低いものが好適であるのに対して、アリール基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含むと、一般に屈折率が高くなる傾向を示すが、アルキルノルボルネンの繰り返し単位を含むことにより、屈折率の上昇を防止することもできる。
このようなことから、クラッド層91(92)に用いるノルボルネン系ポリマーとしては、下記化18〜21や、化25で表されるものが好適である。
[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表し、p/qが20以下である。]
なお、化18で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、aおよびbがそれぞれ1である化合物、例えば、ブチルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとメチルグリシジルエーテルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、p/qが20以下である。]
なお、化19で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、aが1である化合物、例えば、ブチルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー、デシルノルボルネンとアクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルとのコポリマー等が好ましい。
[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、Xは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表し、p/qが20以下である。]
なお、化20で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、aが1または2、Xがメチル基またはエチル基である化合物、例えば、ブチルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとノルボルネニルエチルトリメトキシシランとのコポリマー、ブチルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリエトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ブチルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとトリメトキシシリルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、A
1およびA
2は、それぞれ独立して、下記化22〜24で表される置換基を表すが、同時に同一の置換基であることはない。また、p/q+rが20以下である。]
[式中、aは、0〜3の整数を表し、bは、1〜3の整数を表す。]
[式中、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、aは、0〜3の整数を表す。]
[式中、Xは、それぞれ独立して、炭素数1〜3のアルキル基を表し、aは、0〜3の整数を表す。]
なお、化21で表されるノルボルネン系ポリマーとしては、例えば、ブチルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー、ブチルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、アクリル酸2−(5−ノルボルネニル)メチルと、メチルグリシジルエーテルノルボルネンとのターポリマー、ブチルボルネン、ヘキシルノルボルネンまたはデシルノルボルネンのいずれかと、メチルグリシジルエーテルノルボルネン、ノルボルネニルエチルトリメトキシシラン、トリエトキシシリルノルボルネンまたはトリメトキシシリルノルボルネンのいずれかとのターポリマー等が挙げられる。
[式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表し、R
2は、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Arは、アリール基を表し、X
1は、酸素原子またはメチレン基を表し、X
2は、炭素原子またはシリコン原子を表し、aは、0〜3の整数を表し、cは、1〜3の整数を表し、p/qが20以下である。]
なお、化25で表されるノルボルネン系ポリマーの中でも、特に、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、X1が酸素原子、X2がシリコン原子、Arがフェニル基、R2がメチル基、aが1、cが2である化合物、例えば、ブチルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー、デシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマー等や、Rが炭素数4〜10のアルキル基であり、X1がメチレン基、X2が炭素原子、Arがフェニル基、R2が水素原子、aが0、cが1である化合物、例えば、ブチルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、ヘキシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー、デシルノルボルネンとフェニルエチルノルボルネンとのコポリマー等が好ましい。
また、p/qまたはp/q+rは、20以下であればよいが、15以下であるのが好ましく、0.1〜10程度がより好ましい。これにより、複数種のノルボルネンの繰り返し単位を含む効果が如何なく発揮される。
以上のようなノルボルネン系ポリマーは、前述した特性に加えて、比較的低い屈折率のものであり、かかるノルボルネン系ポリマーを主材料としてクラッド層91(92)を構成することにより、光導波路9の光伝送性能をより向上させることができる。
なお、ノルボルネン系ポリマーが、(メタ)アクリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含む場合、(メタ)アクリル基同士は、加熱により比較的容易に架橋(重合)させることができるが、クラッド層形成用材料中に、ラジカル発生剤を混合することにより、(メタ)アクリル基同士の架橋反応を促進することができる。
ラジカル発生剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1,1−ビス(t−ブチルペロキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が好適に用いられる。
また、ノルボルネン系ポリマーが、エポキシ基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位や、アルコキシシリル基を含む置換基を有するノルボルネンの繰り返し単位を含む場合、これらの重合性基同士を直接架橋させるためには、クラッド層形成用材料中に、前述した助触媒と同種の物質(光酸発生剤または光塩基発生剤)を混合しておき、この物質の作用により、エポキシ基やアルコキシシリル基を架橋させればよい。
一方、エポキシ基同士、(メタ)アクリル基同士やアルコキシシリル基同士を架橋剤を介して架橋させるためには、さらに、クラッド層形成用材料中に、架橋剤として、各重合性基に対応する重合性基を少なくとも1つを有する化合物を混合するようにすればよい。
エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(γ−GPS)、シリコーンエポキシ樹脂等が好適に用いられる。
(メタ)アクリル基を有する架橋剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラントリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等が好適に用いられる。
アルコキシシリル基を有する架橋剤としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランのようなシランカップリング剤等が好適に用いられる。
これらの重合性基同士の架橋反応は、本工程[6A]の最終段階で行うようにしてもよいし、次工程[7A]において光導波路9を得た後に行うようにしてもよい。
また、クラッド層形成用材料中には、各種の添加剤を添加(混合)するようにしてもよい。
例えば、クラッド層形成用材料中には、前記コア層形成用材料で挙げたモノマー、触媒前駆体および助触媒を混合してもよい。これにより、クラッド層91(92)中において、前述したのと同様にして、モノマーを反応させて、クラッド層91(92)の屈折率を変化させることができる。
特に、モノマーとしては、架橋性モノマーを含むものを用いると、クラッド層91(92)において、ノルボルネン系ポリマーの少なくとも一部のもののを、架橋性モノマーを介して架橋させることができる。また、架橋剤の種類、コア層93に用いるポリマーの種類等によっては、このノルボルネン系ポリマーとコア層93に用いるポリマーとを架橋させることもできる。
また、この場合、クラッド層91(92)中において、屈折率の差を設けることが要求されないので、助触媒を省略して、加熱により容易に活性化する触媒前駆体を用いることもできる。
かかる触媒前駆体としては、例えば、[Pd(PCy3)2(O2CCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[2−methallyl Pd(PCy3)2]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[Pd(PCy3)2H(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、[Pd(P(iPr)3)2(OCOCH3)(NCCH3)]テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
その他の添加剤としては、前述したような酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を混合することにより、クラッド材(ノルボルネン系ポリマー)の酸化による劣化を防止することができる。
以上のようにして、支持基板952上に、クラッド層91(92)が形成される。
クラッド層91、92の平均厚さは、コア層93の平均厚さの0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.3〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層91、92の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1〜200μm程度であるのが好ましく、5〜100μm程度であるのがより好ましく、10〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光導波路9が不要に大型化(圧膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
[7A] 次に、支持基板951からコア層93を剥離し、このコア層93を、クラッド層91が形成された支持基板952と、クラッド層92が形成された支持基板952とで挟持する(図5−E参照)。
そして、図5−E中の矢印で示すように、クラッド層92が形成された支持基板952の上面側から加圧し、クラッド層91、92とコア層93とを圧着する。
これにより、クラッド層91、92とコア層93とが接合、一体化される。
また、この圧着作業は、加熱下で行われるのが好ましい。加熱温度は、クラッド層91、92やコア層93の構成材料等により適宜決定されるが、通常は、80〜200℃程度が好ましく、120〜180℃程度がより好ましい。
次いで、クラッド層91、92から、それぞれ、支持基板952を剥離、除去する。これにより、光導波路9が得られる。
このような光導波路9の好ましい例では、コア層93において、コア部94が第1のノルボルネン系材料を主材料として構成され、クラッド部95が第1のノルボルネン系材料より低い屈折率を有する第2のノルボルネン系材料を主材料として構成され、クラッド層91、92が、それぞれ、第1のノルボルネン系材料(コア層93のコア部94)より屈折率が低いノルボルネン系ポリマーを主材料として構成される。
そして、第1のノルボルネン系材料と前記第2のノルボルネン系材料とは、いずれも、同一のノルボルネン系ポリマーを含有するが、このノルボルネン系ポリマーと異なる屈折率を有するノルボルネン系モノマーの反応物の含有量が異なることにより、互いに屈折率が異なっている。
ノルボルネン系ポリマーは、透明性が高いため、かかる構成の光導波路9では、高い光伝送性能が得られる。
また、このような構成により、コア部94とクラッド部95との間の高い密着性のみならず、コア層93とクラッド層91およびクラッド層92との間の高い密着性が得られ、光導波路9に曲げ等の変形が生じた場合でも、コア部94とクラッド部95との剥離や、コア層93とクラッド層91、92との層間剥離が生じ難く、コア部94内やクラッド部95内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路9の光伝送性能が維持される。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、高い耐熱性、高い疎水性を有するため、かかる構成の光導波路9では、耐久性に優れたものとなる。
また、光導波路9に高い耐熱性や高い疎水性を付与することができるため、その特性の低下(劣化)を防止しつつ、前述したような各種の方法を採用して導体層を確実に形成することができる。特に、光の伝送に重要なコア部94と重なるように、導体層を形成した場合でも、コア部94の変質・劣化を防止することができる。
また、以上のような製造方法によれば、簡単な処理で、しかも短時間に、所望の形状を有し、かつ、寸法精度の高いコア部94を有する光導波路9を得ることができる。
<第2の製造方法>
次に、光導波路9の第2の製造方法について説明する。
以下、第2の製造方法について説明するが、前記第1の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2の製造方法では、コア層形成用材料900の組成が異なり、それ以外は、前記第1の製造方法と同様である。
すなわち、第2の製造方法で用いられるコア層形成用材料900は、活性放射線の照射により活性化する離脱剤(物質)と、主鎖と該主鎖から分岐し、活性化した離脱剤の作用により、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ぺンダントグループ)とを有するポリマー915とを含有している。
離脱剤には、前記第1の製造方法で挙げた助触媒と同様のものを用いることができる。
第2の製造方法において用いられるポリマー915としては、前記第1の製造方法で挙げたポリマー915が有する置換基を離脱性基で置換したものや、前記第1の製造方法で挙げたポリマー915に離脱性基を導入したもの等が挙げられる。
かかるポリマー915は、離脱性基の離脱(切断)により、その屈折率が変化(上昇または低下)する。
離脱性基は、カチオン、アニオンまたはフリーラジカルの作用により離脱するもの、すなわち、酸(カチオン)脱離性基、塩基(アニオン)脱離性基、フリーラジカル脱離性基のいずれであってもよいが、好ましくはカチオン(プロトン)の作用により離脱するもの(酸基離脱性基)である。
酸離脱性基としては、その分子構造中に、−O−構造、−Si−アリール構造および−O−Si−構造のうちの少なくとも1つを有するものが好ましい。かかる酸離脱性基は、カチオンの作用により比較的容易に離脱する。
このうち、離脱によりポリマー915の屈折率に低下を生じさせる酸離脱性基としては、−Si−ジフェニル構造および−O−Si−ジフェニル構造の少なくとも一方が好ましい。
なお、フリーラジカルの作用により離脱するフリーラジカル脱離性基としては、例えば、末端にアセトフェノン構造を有する置換基等が挙げられる。
また、ポリマー915は、前記第1の製造方法で説明したのと同様の理由から、ノルボルネン系ポリマーを用いるのが好ましく、アルキル(特にヘキシル)ノルボルネンの繰り返し単位を含むノルボルネン系ポリマーを用いるのがより好ましい。
以上のことを考慮した場合、離脱性基の離脱により屈折率が低下するポリマー915としては、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランのホモポリマーや、ヘキシルノルボルネンとジフェニルメチルノルボルネンメトキシシランとのコポリマーが好適に用いられる。
以下では、ポリマー915として、離脱性基(特に酸離脱性基)の離脱により屈折率が低下するものを用いる場合を一例に説明する。
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925がクラッド部95となる。
[1B] 前記工程[1A]と同様の工程を行う。
このとき、層(PITDMの乾燥フィルム)910は、第1の屈折率(RI)を有している。この第1の屈折率は、層910中に一様に分散(分布)するポリマー915の作用による。
[2B] 前記工程[2A]と同様の工程を行う。
マスク935を介して、活性放射線930を層910に照射すると、活性放射線930が照射された照射領域925内に存在する離脱剤は、活性放射線930の作用により反応(結合)または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、カチオンは、離脱性基そのものを主鎖から離脱させるか、または、離脱性基の分子構造の途中から切断する(フォトブリーチ)。
これにより、照射領域925では、未照射領域940よりも完全な状態の離脱性基の数が減少し、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。なお、このとき、未照射領域940の屈折率は、第1の屈折率が維持される。
このようにして、照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差(第2の屈折率<第1の屈折率)が生じて、コア部94(未照射領域940)とクラッド部95(照射領域925)とが形成される。
なお、この場合、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.3〜6J/cm2程度であるのがより好ましく、0.6〜6J/cm2程度であるのがさらに好ましい。これにより、離脱剤を確実に活性化させることができる。
[3B] 次に、層910に対して加熱処理を施す。
これにより、ポリマー915から離脱(切断)された離脱性基が、例えば、照射領域925から除去されたり、ポリマー915内において再配列または架橋する。
さらに、このとき、クラッド部95(照射領域925)に残存する離脱性基の一部がさらに離脱(切断)すると考えられる。
したがって、このような加熱処理を施すことにより、コア部94とクラッド部95との間の屈折率差をより大きくすることができる。
この加熱処理における加熱温度は、特に限定されないが、70〜195℃程度であるのが好ましく、85〜150℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱時間は、照射領域925から離脱(切断)された離脱性基を十分に除去し得るに設定され、特に限定されないが、0.5〜3時間程度であるのが好ましく、0.5〜2時間程度であるのがより好ましい。
なお、例えば、加熱処理を施す前の状態で、コア部94とクラッド部95との間に十分な屈折率差が得られている場合等には、本工程[3B]を省略してもよい。
また、必要に応じて、1回または複数回の加熱処理(例えば、150〜200℃×1〜8時間程度)の工程を追加することもできる。
以上の工程を経て、コア層93が得られる。
[4B] 前記工程[6A]と同様の工程を行う。
[5B] 前記工程[7A]と同様の工程を行う。
以上のようにして、光導波路9が完成する。
このような光導波路9の好ましい例では、コア層93がノルボルネン系材料を主材料として構成され、クラッド層91、92が、それぞれ、コア層93のコア部94より屈折率が低いノルボルネン系ポリマーを主材料として構成される。
そして、コア部94とクラッド部95とは、主鎖と主鎖から分岐し、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基とを有するノルボルネン系ポリマーを主材料として構成され、コア部94とクラッド部95とは、主鎖に結合した状態の離脱性基の数が異なることにより、それらの屈折率が異なっている。
ノルボルネン系ポリマーは、透明性が高いため、かかる構成の光導波路9では、高い光伝送性能が得られる。
また、このような構成により、コア部94とクラッド部95との間の高い密着性のみならず、コア層93とクラッド層91およびクラッド層92との間の高い密着性が得られ、光導波路9に曲げ等の変形が生じた場合でも、コア部94とクラッド部95との剥離や、コア層93とクラッド層91、92との層間剥離が生じ難く、コア部94内やクラッド部95内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路9の光伝送性能が維持される。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、高い耐熱性、高い疎水性を有するため、かかる構成の光導波路9では、耐久性に優れたものとなる。
また、光導波路9に高い耐熱性や高い疎水性を付与することができるため、その特性の低下(劣化)を防止しつつ、前述したような各種の方法を採用して導体層を確実に形成することができる。特に、光の伝送に重要なコア部94と重なるように、導体層を形成した場合でも、コア部94の変質・劣化を防止することができる。
また、以上のような製造方法によれば、簡単な処理で、しかも短時間に、所望の形状を有し、かつ、寸法精度の高いコア部94を有する光導波路9を得ることができる。
特に、第2の製造方法によれば、少なくとも活性放射線をすればよく、極めて簡単な処理で、コア層93を形成することができる。
<第3の製造方法>
次に、光導波路9の第3の製造方法について説明する。
以下、第3の製造方法について説明するが、前記第1および第2の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3の製造方法では、コア層形成用材料900として、第1および第2の製造方法で用いたコア層形成用材料を組み合わせたものを用い、それ以外は、前記第1または第2の製造方法と同様である。
すなわち、第3の製造方法で用いられるコア層形成用材料900は、前述したような離脱性基を有するポリマー915と、モノマーと、助触媒(第1の物質)と、触媒前駆体(第2の物質)とを含有している。また、助触媒は、前記第2の製造方法における離脱剤と同じものであり、離脱剤を離脱させる機能も有する。
このようなコア層形成用材料900では、選択する離脱性基と、選択するモノマーとの組み合わせにより、得られるコア層93において、コア部94とクラッド部95との間の屈折率差をより多段階に調整することが可能となる。
なお、前述したように、モノマーとして、ポリマー915より低い屈折率を有するものを用い、また、触媒前駆体として、活性放射線930の照射に伴って活性化温度が低下するものを用い、ポリマー915として、離脱性基の離脱により屈折率が低下するものを用いると、照射領域925をクラッド部95とし、コア部94との屈折率差が極めて大きいコア層93を得ることができる。
以下では、このような組み合わせのポリマー915、モノマーおよび触媒前駆体を用いる場合を一例に説明する。
すなわち、ここで示す例では、活性放射線930の照射領域925がクラッド部95となる。
[1C] 前記工程[1A]と同様の工程を行う。
このとき、層(PITDMの乾燥フィルム)910は、第1の屈折率(RI)を有している。この第1の屈折率は、層910中に一様に分散(分布)するポリマー915およびモノマーの作用による。
[2C] 前記工程[2A]と同様の工程を行う。
マスク935を介して、活性放射線930を層910に照射すると、活性放射線930が照射された照射領域925内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線930の作用により反応または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
また、カチオンは、離脱性基そのものを主鎖から離脱させるか、または、離脱性基の分子構造の途中から切断する。
これにより、照射領域925では、未照射領域940よりも完全な状態の離脱性基の数が減少し、屈折率が低下して第1の屈折率より低くなる。なお、このとき、未照射領域940の屈折率は、第1の屈折率が維持される。
なお、この場合、活性放射線930の照射量は、0.1〜9J/cm2程度であるのが好ましく、0.2〜5J/cm2程度であるのがより好ましく、0.2〜4J/cm2程度であるのがさらに好ましい。これにより、助触媒を確実に活性化させることができる。
[3C] 前記工程[3A]と同様の工程を行う。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散して照射領域925に集まってくる。
また、この加熱処理により、ポリマー915から離脱(切断)された離脱性基が、例えば、照射領域925から除去されたり、ポリマー915内において再配列または架橋する。
その結果、照射領域925では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになること、ポリマー915から離脱(切断)された離脱性基が減少すること等により、さらに屈折率が低下して第2の屈折率となる。
一方、未照射領域940では、当該領域から照射領域925にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー915の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部94(未照射領域940)とクラッド部95(照射領域925)とが形成される。
[4C] 前記工程[4A]と同様の工程を行う。
[5C] 前記工程[5A]と同様の工程を行う。
[6C] 前記工程[6A]と同様の工程を行う。
[7C] 前記工程[7A]と同様の工程を行う。
以上のようにして、光導波路9が完成する。
このような光導波路9の好ましい例では、コア層93は、主鎖とこの主鎖から分岐し、分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基とを有するノルボルネン系ポリマーを含有しており、コア部94とクラッド部95とは、主鎖に結合した状態の離脱性基の数が異なること、および、ノルボルネン系ポリマーと異なる屈折率を有するノルボルネン系モノマーの反応物の含有量が異なることにより、それらの屈折率が異なっており、また、クラッド層91、92が、それぞれ、コア層93のコア部94より屈折率が低いノルボルネン系ポリマーを主材料として構成される。
ノルボルネン系ポリマーは、透明性が高いため、かかる構成の光導波路9では、高い光伝送性能が得られる。
また、このような構成により、コア部94とクラッド部95との間の高い密着性のみならず、コア層93とクラッド層91およびクラッド層92との間の高い密着性が得られ、光導波路9に曲げ等の変形が生じた場合でも、コア部94とクラッド部95との剥離や、コア層93とクラッド層91、92との層間剥離が生じ難く、コア部94内やクラッド部95内にマイクロクラックが発生することも防止される。その結果、光導波路9の光伝送性能が維持される。
さらに、ノルボルネン系ポリマーは、高い耐熱性、高い疎水性を有するため、かかる構成の光導波路9では、耐久性に優れたものとなる。
また、光導波路9に高い耐熱性や高い疎水性を付与することができるため、その特性の低下(劣化)を防止しつつ、前述したような各種の方法を採用して導体層を確実に形成することができる。特に、光の伝送に重要なコア部94と重なるように、導体層を形成した場合でも、コア部94の変質・劣化を防止することができる。
また、以上のような製造方法によれば、簡単な処理で、しかも短時間に、所望の形状を有し、かつ、寸法精度の高いコア部94を有する光導波路9を得ることができる。
特に、第3の製造方法によれば、コア部94とクラッド部95との間の屈折率差を多段階に設定することが可能となる。
<第4の製造方法>
次に、光導波路9の第4の製造方法について説明する。
図6−A〜図6−Eは、それぞれ、光導波路の第4の製造方法の工程例を模式的に示す断面図である。
以下、第4の製造方法について説明するが、前記第1〜第3の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4の製造方法では、コア層形成用材料900やクラッド層形成用材料には、前記第1〜第3の製造方法で説明したのと同様のものを用いることができる。
なお、以下では、コア層形成用材料として、前記第1の製造方法で挙げたものを用いる場合を代表に説明する。
[1D] まず、支持基板1000上に、クラッド層形成用材料(第1のワニス)を前述したのと同様の方法を用いて塗布して、第1の層1110を形成する(図6−A参照)。
支持基板1000には、支持基板951と同様のものを用いることができる。
第1の層1110の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
[2D] 次に、第1の層1110上に、コア層形成用材料(第2のワニス)を前述したのと同様の方法を用いて塗布して、第2の層1120を形成する(図6−B参照)。
コア層形成用材料は、第1の層1110をほぼ完全に乾燥させた後に塗布するようにしてもよいし、第1の層1110が乾燥する前に塗布するようにしてもよい。
後者の場合、第1の層1110と第2の層1120とは、それらの界面において相互に混ざり合った状態となる。この場合、得られた光導波路9において、クラッド層91とコア層93との密着性の向上を図ることができる。
また、この場合、第1のワニスおよび第2のワニスは、それぞれ、粘度(常温)が好ましくは100〜10000cP程度、より好ましくは150〜5000cP程度、さらに好ましくは200〜3500cP程度に調製される。これにより、第1の層1110と第2の層1120とが、それらの界面において必要以上に混ざり合うのを防止することができるとともに、第1の層1110および第2の層1120の厚さが不均一となるのを防止することができる。
なお、第2のワニスの粘度は、第1のワニスの粘度より高くするのが好ましい。これにより、第1の層1110と第2の層1120とが、それらの界面において必要以上に混ざり合うのを確実に防止することができる。
第2の層1120の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、15〜125μm程度であるのがより好ましく、25〜100μm程度であるのがさらに好ましい。
[3D] 次に、第2の層1120上に、クラッド層形成用材料(第3のワニス)を前述したのと同様の方法を用いて塗布して、第3の層1130を形成する(図6−C参照)。
第3の層1130は、前記第2の層1120と同様にして形成することができる。
第3の層1130の平均厚さは、特に限定されないが、5〜200μm程度であるのが好ましく、10〜100μm程度であるのがより好ましく、15〜65μm程度であるのがさらに好ましい。
これにより、積層体2000が得られる。
[4D] 次に、積層体2000中の溶媒を除去(脱溶媒)する。
脱溶媒の方法としては、例えば、加熱、大気圧または減圧下での放置、不活性ガス等の噴き付け(ブロー)等の方法が挙げられるが、加熱による方法が好ましい。これにより、比較的容易かつ短時間での脱溶媒が可能である。
この加熱の温度は、25〜60℃程度であるのが好ましく、30〜45℃程度であるのがより好ましい。
また、加熱の時間は、15〜60分程度であるのが好ましく、15〜30分程度であるのがより好ましい。
[5D] 次に、開口(窓)9351が形成されたマスク(マスキング)935を用意し、このマスク935を介して、積層体2000に対して活性放射線930を照射する(図6−D参照)。
マスク935を介して、活性放射線930を積層体2000に照射すると、第2の層1120の活性放射線930が照射された照射領域925内に存在する助触媒(第1の物質:コカタリスト)は、活性放射線930の作用により反応または分解して、カチオン(プロトンまたは他の陽イオン)と、弱配位アニオン(WCA)とを遊離(発生)する。
そして、これらのカチオンや弱配位アニオンは、照射領域925内に存在する触媒前駆体(第2の物質:プロカタリスト)の分子構造に変化(分解)を生じさせ、これを活性潜在状態(潜在的活性状態)に変化させる。
[6D] 次に、積層体2000に対して加熱処理(第1の加熱処理)を施す。
これにより、照射領域925内では、活性潜在状態の触媒前駆体が活性化して(活性状態となって)、モノマーの反応(重合反応や架橋反応)が生じる。
そして、モノマーの反応が進行すると、照射領域925内におけるモノマー濃度が徐々に低下する。これにより、照射領域925と未照射領域940との間には、モノマー濃度に差が生じ、これを解消すべく、未照射領域940からモノマーが拡散して照射領域925に集まってくる。
その結果、照射領域925では、モノマーやその反応物(重合体、架橋構造や分岐構造)が増加し、当該領域の屈折率にモノマー由来の構造が大きく影響を及ぼすようになり、第1の屈折率より低い第2の屈折率へと低下する。
一方、未照射領域940では、当該領域から照射領域925にモノマーが拡散することにより、モノマー量が減少するため、当該領域の屈折率にポリマー915の影響が大きく現れるようになり、第1の屈折率より高い第3の屈折率へと上昇する。
このようにして、照射領域925と未照射領域940との間に屈折率差(第2の屈折率<第3の屈折率)が生じて、コア部94(未照射領域940)とクラッド部95(照射領域925)とが形成される(図6−E参照)。
[7D] 次に、積層体2000に対して第2の加熱処理を施す。
これにより、未照射領域940および/または照射領域925に残存する触媒前駆体を、直接または助触媒の活性化を伴って、活性化させる(活性状態とする)ことにより、各領域925、940に残存するモノマーを反応させる。
このように、各領域925、940に残存するモノマーを反応させることにより、得られるコア部94およびクラッド部95の安定化を図ることができる。
[8D] 次に、積層体2000に対して第3の加熱処理を施す。
これにより、得られるコア層93に生じる内部応力の低減や、コア部94およびクラッド部95の更なる安定化を図ることができる。
以上の工程を経て、光導波路9が得られる。
かかる方法では、第1の加熱処理の後、積層体2000内にコア部94が目視で確認することができるようになる。
また、第1のワニスおよび第3のワニスとして、第2のワニスと同様の組成、すなわち、ポリマー915、モノマー、助触媒および触媒前駆体を含有するものを用いるようにしてもよい。これにより、モノマーの反応が、第1の層1110および第3の層1130と、第2の層1120の界面、および/または、かかる界面を越えて第1の層1110および第3の層1130内で生じて、クラッド層91、92とコア層93との剥離をより確実に防止することができる。
また、この場合、例えば、I:第1の層1110および第3の層1130のポリマー915として、第2の層1120のポリマー915の屈折率より相対的に低い屈折率(RI)のものを選択したり、II:第1の層1110および第3の層1130のモノマーとして、第2の層1120のモノマーと同じものを用いるが、第1の層1110および第3の層1130における触媒前駆体およびモノマーの比率を、第2の層1120のそれより低くなるように調節するようにしたりすればよい。
これにより、活性放射線930を照射しても、クラッド層91、92内に、コア層93のコア部94より高い屈折率を有する領域が形成されるのを防止することができる。
なお、コア層形成用材料(第2のワニス)として、離脱性基を有するポリマー915を含有するものを用いる場合、クラッド層形成用材料(第1のワニス、第3のワニス)としては、脱離性基を有しないポリマー915を用いて調製したものを用いるか、離脱性基を有するポリマー915を用いるが、離脱剤を含有しないものを用いるようにすればよい。
これにより、第1の層1110および第3の層1130において、ポリマー915から離脱性基が離脱(分解)することを防止することができる。
また、この場合、助触媒には、コア層93を形成する際には、活性化しないものを選択するようにしてもよい。例えば、第2のワニスが含有する助触媒の活性化に適した活性放射線を吸収しないか、または、活性放射線に代わって熱の作用により活性化される助触媒を選択するようにすればよい。
このような助触媒としては、例えば、非吸収性光塩基発生剤(PBG)や熱塩基発生剤(TBG)等が挙げられる。
なお、本発明において、光導波路構造体および光導波路基板の基本構造、層構成、各部の形状、数、配置等は、図示のものに限定されないことは言うまでもない。
また、前記各実施形態において、素子として、発光素子10および受光素子11の双方を備える構成について説明したが、発光素子10および受光素子11のいずれか一方を搭載した構成であってもよい。もちろん、発光素子と受光素子の双方を2組以上搭載するものでもよい。
以上、本発明を図示の各実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を発揮し得る任意の構成と置換することができ、また、任意の構成が付加されていてもよい。