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JP4758655B2 - 表面処理シリカ微粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な表面処理シリカ微粒子に関する。詳しくは、電子写真用トナーの外添剤として用いた場合に、トナーへのストレスによる帯電量の変化を効果的に抑制し、且つ、優れた転写効率の向上効果を発揮することが可能な表面処理シリカ微粒子を提供する。
電子写真法は、代表的には、帯電、露光により感光体表面に潜像を形成させ、潜像を帯電したトナーにより現像し、感光体表面のトナーを紙や中間転写体等に転写し、紙等に転写されたトナーを、熱を加えることにより定着させるものである。シリカ等の外添剤は、トナーの表面に付着しており、トナーへの流動性の付与、帯電効率の向上等の効果を発揮する。
近年、環境負荷の低減が重要視されており、コピー機、プリンターといった電子写真法を用いた機器においては、消費電力の低減、及びトナー消費量の低減が求められている。
消費電力を低減させるためには、トナーを定着させる際に加える熱を低減させることが重要である。そのため、トナー樹脂の軟化点は低下する方向にある。トナー樹脂の軟化点が低下することにより、トナーの耐久性は悪くなる傾向にある。具体的には、装置内で発生するトナーへのストレス、例えばトナーを帯電させる際に、キャリアや帯電ブレードから受けるせん断力により、外添剤がトナーに埋没しやすくなる。
このように、外添剤の埋没が起こると、トナーの帯電量が変化するという問題が発生する。この問題を解決するため、平均一次粒子径が50〜200nm程度の大粒径の外添剤をトナーに添加すると、外添剤の埋没に抑制効果があることが知られている(特許文献1、2、3参照)。また、上記大粒径の外添剤をシリコーンオイルにて処理する報告もある(特許文献4、5、6参照)。
しかしながら、上記のシリコーンオイルで処理された大粒径の外添剤においても、帯電量の変化を十分抑制することは困難であり、改善が求められていた。
特開昭60−32060号公報 特開昭64−68765号公報 特開2002−154820号公報 特開平5−346682号公報 特開平7−271087号公報 特開平8−292598号公報
したがって、本発明の目的は、トナーへのストレスによるトナーの帯電量の変化を、効果的に抑制することが可能なトナー用外添剤として好適に使用できる特性を有する表面処理シリカ微粒子を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、外添剤として平均一次粒子径が50〜200nmのシリコーンオイルで処理されたシリカ微粉末を用いる際に、シリカ微粉末の疎水化度、シリコーンオイル付着状態の均一性の違いが、トナーの帯電性に影響を及ぼすこと、また、平均一次粒子径が50〜200nmのシリカは、他の粒子径のシリカと比べて凝集性が著しく強く、均一なシリコーンオイル処理が行われていないという知見を得た。
本発明者らは、上記知見に基づき、更に検討を進めた結果、シリカ微粒子の凝集性がコントロールされた条件下でシリコーンオイル処理を行うことにより、該シリカ微粒子表面に均一なシリコーンオイル処理が達成された表面処理シリカ微粒子を得ることに成功し、かかる表面処理シリカ微粒子により、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を成功するに至った。
即ち、本発明によれば、シリコーンオイルにて処理された平均一次粒子径50〜200nmである表面処理シリカ微粒子において、該表面処理シリカ微粒子のメタノール滴定法による疎水化度が65容量(vol)%以上であり、且つメタノール濃度が60vol%のメタノール水における浮遊率が90%以上であることを特徴とする表面処理シリカ微粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記表面処理シリカ微粒子よりなるトナー用外添剤が提供される。
尚、本発明において、表面処理シリカ微粒子におけるメタノール滴定法による疎水化度は、表面処理シリカ微粒子を水に加え、攪拌下にメタノールを滴定により加え、表面処理シリカ微粒子の全量が水に懸濁した際のメタノール−水混合溶媒中のメタノールの濃度(vol%)の値を求めたものである。
また、表面処理シリカ微粒子において、メタノール濃度が60vol%のメタノール水における浮遊率は、一定量の表面処理シリカ微粒子をメタノール濃度60vol%のメタノール水を一定量入れた容器に入れて攪拌した後、浮遊している表面処理シリカ微粒子の重量を測定し、測定に用いた表面処理シリカ微粒子の重量に対する、浮遊していた表面処理シリカ微粒子の割合を求めたものである。
いずれも、詳細な方法は、実施例に記載したとおりである。
本発明の表面処理シリカ微粒子は、メタノール濃度が60vol%のメタノール水における浮遊率が90%以上となるように均一にシリコーンオイル処理が行われているため、平均一次粒子径が50〜200nmであることとの組み合わせによって、トナー用外添剤として使用した場合には、トナーへのストレスによる帯電量の変化を効果的に抑制することが可能である。
また、本発明の表面処理シリカ微粒子の別の効果としては、疎水化度が65vol%以上になるようにシリコーンオイルによる処理がされており、平均一次粒子径が50〜200nmであることとの組み合わせによって、トナー用外添剤として使用した場合には、感光体からのトナーの転写効率を著しく向上させることが可能となり、トナーの消費量を低減させる効果を発揮する。
本発明において、シリコーンオイル処理前のシリカ微粒子(以下原体シリカ微粒子という)は、平均一次粒子径が50〜200nmの範囲のものを用いる。即ち、平均一次粒子径がこの範囲から外れて小さい場合には、トナーへのストレスによる帯電量変化の抑制、及び転写効率の向上に効果がない。また、平均一次粒子径がこの範囲を超えて大きい場合には、トナー粒子からの脱離が起こり、画像欠陥の原因となる。また、トナーへの転写性を向上させる目的においては、上記の平均一次粒子径が70nm以上であることが好ましく、トナー粒子からの脱離を抑える目的から、100nm以下であることが好ましい。
本発明における原体シリカ微粒子の平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡にて撮影した画像を画像解析して求めたものである。
上記の原体シリカ微粒子は、前記平均一次粒子径が50〜200nmを有するシリカを、特に制限なく用いることができる。例えば、ヒュームドシリカ、ゾル−ゲル法シリカなどが代表的である。
上記ヒュームドシリカとは、珪素化合物や金属珪素を火炎中、例えば酸水素火炎中で燃焼して製造されるシリカ粒子をいう。特に、四塩化ケイ素等の珪素化合物を用いるのが一般的である。上記ヒュームドシリカは、沈殿法シリカ等の湿式法で製造されるシリカと区別するため、「乾式シリカ」或いは「気相法シリカ」とも呼ばれることもある。
また、ゾル−ゲル法シリカは、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランなどの珪素のアルコキシドを酸性あるいはアルカリ性の含水有機溶媒中で加水分解することによって製造するものである。
上記のヒュームドシリカ、ゾルーゲル法のシリカのうち、溶媒を使用しないため、乾燥時に生成する凝集粒子が存在しないヒュームドシリカを好適に用いることができる。凝集粒子が増大した場合、メタノール濃度が60vol%のメタノール水における浮遊率が90%以上となるように均一に処理された表面処理シリカ微粒子を得ることが困難となるばかりでなく、トナーからの脱離が起こりやすく、画像欠陥を引き起こす原因となる。
該原体シリカ微粒子は、小角X線散乱測定において、解析対象範囲50nm〜150nmのフラクタル形状パラメータα及び解析対象範囲150nm〜353nmのフラクタル形状パラメータαが下記式(1)及び(2):
−0.0068S+2.548≦α≦−0.0068S+3.748(1)
−0.0011S+1.158≦α≦−0.0011S+2.058(2)
(上記式中、Sは原体シリカ微粒子のBET比表面積(m/g)を示す。)
で示される条件を満足していることが好ましい。即ち、フラクタル形状パラメータが上記の範囲内にあることにより、トナーの表面への付着力が向上し、目的の機能を効果的に果たせる傾向にある。
一般に、粉末を小角X線散乱測定したときに得られる散乱パターンから決定されるフラクタル形状パラメーター(α値)は、独立粒子の形状の複雑さの程度を表す指標となることが知られている。すなわち、α値が4に近いほど粒子形状が真球状粒子に近い(真球状粒子のα値は4)ことを示し、その値が小さくなるほど粒子形状が複雑であることを示している。
小角X線散乱における散乱強度(I)、散乱ベクトル(k)およびフラクタル形状パラメータ(α)との間には下記式の関係があるので、横軸をk、縦軸をIとしてプロットした小角X線散乱曲線からα値を決定することができる。
I∝k−α
(但し、k=4πλ−1sinθ)
尚、kの単位はnm−1であり、πは円周率、λは入射X線の波長(単位はnm)、θはX線散乱角度(該θは検出器の走査角度を0.5倍した値である)を意味する。
小角X線散乱を得るためには、まず単色化されたX線をスリットおよびブロックを用いて細かく絞り、試料に照射し、検出器の走査角度を変化させながら、試料によって散乱されたX線を検出し、横軸をk、縦軸をIとしてプロットすればよい。
このとき両対数目盛りでプロットすれば、散乱曲線のkにおける接線の傾きが−αに等しくなるのでα値を求めることができる。また、解析対象範囲をDとすると、DとX線散乱角度θと入射X線波長λとの間には、ブラッグの式:
2Dsinθ=λ
の関係があるので、kとDの間には下記式の関係が成立する。
D=2πk−1
従って、kとIの両対数プロットの横軸を、
Logk=−1.377〜−0.902(D=50〜150nm)
および、
Logk=−1.750〜−1.377(D=150〜353nm)
で区切り、区切られた各々の範囲の曲線を直線で近似し、その近似曲線の傾きを求めることによって、解析対象範囲毎のフラクタル形状パラメータであるαおよびαを決定することができる。
上記αは、複数の一次粒子が互いに融着した種々の形状及び粒径を有する粒子のうち、比較的小さな凝集粒径範囲での形状の複雑さを示すものであり、また、上記αは、比較的大きな凝集粒径範囲での形状の複雑さを示すものである。一般に、上記αとαとは、α>αの関係にある。α及びαが、(1)式及び(2)式の範囲の上限を超えた場合には、粒子形状が球形に近くなるため、トナー粒子への定着性が悪くなり、帯電量の変化を抑制する効果が減少する傾向にある。また、この範囲の下限未満の場合には、転写性を向上させる効果に劣る傾向にある。
上記のフラクタル形状パラメータα及びαが、(1)式及び(2)式の範囲の原体シリカ微粒子は、火炎加水分解法や火炎熱分解法のような火炎中の反応によって得ることができ、特に火炎中の粒子同士の凝集を調整しながら部分溶着せしめることにより得ることができる。
具体的には、原料珪素化合物をガス状で供給する供給口の外周に水素および/または炭化水素(以下、これらのガスを可燃性ガスと総称する)並びに酸素をそれぞれ供給して外周炎を形成することにより、該珪素化合物をシリカ微粒子に変換し、且つ、火炎中で適度に溶着せしめ、次いで、溶着したシリカ微粒子を分散した状態で冷却して補修する(例えば、配管内を通過せしめた後、バグフィルターによって補修する)ことにより、フラクタル形状パラメータα及びαが、(1)式及び(2)式の範囲の原体シリカ微粒子を得ることができる。
上記製造方法において、フラクタル形状パラメータの値に特に影響を及ぼす条件の一つはバーナー出口の流速であり、かかる流速は、0.5〜10m/秒の間で調整することが好ましい。
また、フラクタル形状パラメータの値に特に影響を及ぼす条件の他の一つは、原料珪素化合物の濃度、即ち、火炎中におけるシリカ濃度であり、かかる濃度は、SiO換算で0.05〜5モル/m、特に、0.1〜3モル/mが好ましい。
さらに、前記フラクタル形状パラメータが(1)式、(2)式を有する原体シリカ微粒子の製造方法において、平均一次粒子径や比表面積の調整は、原料珪素化合物の濃度およびバーナー出口流速、外周炎の長さ等を、また、フラクタル形状パラメータの値は、上記条件と共に、外周炎の温度を調整することによって行うことができる。
一般に、原料珪素化合物の濃度を上げると、平均一次粒子径は大きくなり、比表面積は小さくなり、また、フラクタル形状パラメータの値は大きくなる。また、バーナーの出口流速を上げると、平均一次粒子径は小さくなり、比表面積は大きくなり、また、フラクタル形状パラメータの値は小さくなる。更に、外周炎の長さを長くすると、平均一次粒子径は大きくなり、比表面積は小さくなり、また、フラクタル形状パラメータの値は大きくなる。更にまた、外周炎の温度を上げると、平均一次粒子径は大きくなり、比表面積は小さくなり、また、フラクタル形状パラメータの値は大きくなる。
前記フラクタル形状パラメータが(1)式、(2)式を有する原体シリカ微粒子の製造方法において、珪素化合物は、特に制限なく使用することが可能である。例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザンなどのシラザン類、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシラン類、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロゲン化珪素、モノシラン、ジシランなどの無機シラン化合物を原料珪素化合物として使用することができる。
特に、上記珪素化合物としてシロキサン類および/またはシラザン類またはアルコキシラン類を使用することにより、塩素等の不純物が著しく低減されたより高純度の珪素酸化物(シリカ微粒子)を得ることが可能であり、また、取り扱い性も向上する。
本発明の表面処理シリカ微粒子は、メタノール滴定法による疎水化度が65vol%以上であり、且つメタノール濃度が60vol%のメタノール水における浮遊率が90%以上であることを特徴のひとつとする。
上記疎水化度が65vol%に満たない場合、電子写真用トナー外添剤として使用した場合、転写効率の向上に対する効果が小さく、また、メタノール濃度が60vol%のメタノール水に対する浮遊率が90%未満では、シリコーンオイルの付着状態が不均一となるため、トナーへのストレスによる帯電量の変化を抑制する効果が小さい。更には、上記の疎水化度においては、70vol%以上、上記60vol%における浮遊率においては、95%以上であることが好ましい。
これに対して、従来の平均一次粒子径が50〜200nmの原体シリカ微粒子に対してシリコーンオイル処理を行った表面処理シリカ微粒子は、疎水化度が低かったり、或いは、不均一な処理状態で処理が行われたりするといった問題があった。この理由は、原体シリカ微粒子に不要な混合等の操作を加えることにより、シリコーンオイル処理前に凝集が進み、均一なシリコーンオイル処理が十分に達成されていなかったものと推定される。
本発明の表面処理シリカ微粒子は、前記の構成を満足することによって目的を達成することができるが、更に、原体シリカ微粒子に付着せしめるシリコーンオイルの余剰分を特定な範囲に調整することが好ましい。シリコーンオイルの余剰分が多すぎた場合には、トナー用外添剤として用いた場合にトナーの流動性を低下させる傾向にある。また、シリコーンオイルの余剰分が少なすぎると、トナーへのストレスによる帯電量の変化の抑制効果が得られにくい傾向にある。
上記のシリコーンオイルの余剰分は、炭素量C(%)とクロロホルム抽出後の炭素量C(%)との差(ΔC(%))によって求めることができる。そして、ΔC(%)は、0.5〜3.0の範囲内であることが好ましく、更には1.5〜2.1の範囲であることが好ましい。
本発明の表面処理シリカ微粒子のクロロホルム抽出後の炭素量Cは、以下の式(3)の範囲内であることが好ましい。クロロホルム抽出後の炭素量Cは、シリコーンオイルがシリカ表面と反応した量と関係がある。炭素量Cがこの範囲を超えて小さい場合には、表面処理シリカ微粒子の疎水化度を高めることが困難となりやすく、この範囲を超えて大きいものを得ることは困難である。
32.4S/(S+1000)≦C≦97.2S(3S+1000)(3)
(上記式中、Sは原体シリカ微粒子のBET比表面積(m/g)を示す。)
本発明において、原体シリカ微粒子のBET比表面積は、窒素吸着法により測定した一点法の値を指す。該原体シリカ微粒子の比表面積は、シリコーンオイルでの処理を行った後であっても、窒素雰囲気下で表面処理シリカ微粒子を500℃程度で1時間以上保持した後に、表面に付着しているシリコーンオイルを取り除き、測定することが可能である。上記シリコーンオイルを取り除く操作が確実に行われていることを、後述する実施例に示す炭素量の測定方法によって確認することができる。
上記原体シリカ微粒子のBET比表面積は、前記平均一次粒子径と関係があり、平均一次粒子径が50〜200nmの場合には、一般的に10〜50m/gとなる。
本発明において、シリコーンオイル処理は、処理されたシリカが本発明の範囲内に含まれる方法であれば特に限定されるものではないが、後述の乾式処理法により、原体シリカ微粒子に凝集を生じさせない条件で、且つ良好な混合状態が保たれた原体シリカ微粒子に対してシリコーンオイルを噴霧し、適切な温度で熱処理を加えることにより実施することが好ましい。
上記シリコーンオイル処理は、液体であるシリコーンオイルとシリカ微粒子表面とを、所定の熱処理により反応させるものである。処理法としては、トルエン等の溶媒中にシリコーンオイルを溶解させ、該溶液中にシリカを分散させ、溶媒を蒸発させることによりシリカ表面にシリコーンオイルを付着させ、更に所定の熱処理を行うことによる方法(湿式処理法)、及びミキサー、あるいは流動層中で混合しながら原体シリカ微粒子に対してシリコーンオイルを噴霧し、シリカ微粒子表面にシリコーンオイルを付着させ、所定の熱処理を行うことによる方法(乾式処理法)が挙げられる。
上記湿式処理法、乾式処理法のうち、より均一に処理されたシリカ微粒子が得られる理由、及び有機溶媒を使用しないため、コスト面、安全面、環境面において優れている理由から乾式処理法を用いることが好ましい。
上記乾式処理法において、原体シリカ微粒子を製造し、ミキサー、或いは流動層等に導入するまでの操作は、粒子同士の接触を促進する操作は避けることが好ましい。具体的な例としては、原体シリカ微粒子をホッパーから取り出す際には、スクリューフィーダーのような装置は用いないことが好ましい。
前記乾式処理法において、良好な混合状態でシリコーンオイルを噴霧することは、均一なシリコーンオイル処理を行う上で重要である。本発明で用いる平均一次粒子径が50〜200nmの原体は付着性が特異的に強く、あまり強い力で混合するとシリカ微粒子が増粒、又は壁面に付着するといった現象が発生し、シリコーンオイル処理が不均一となる場合がある。また、あまり弱い力で混合した場合には、シリカ微粒子間におけるシリコーンオイルのやり取りの頻度が少なくなるため、不均一なシリコーンオイル処理となる傾向がある。
前記乾式処理法において、シリカ微粉末を混合する方法としては、ミキサーが好ましい。ミキサーによる混合は、流動層による混合と比較してシリカ微粒子同士の衝突頻度が高く、シリカ微粒子間でのシリコーンオイルのやり取りが頻繁に行われるため、より均一に処理された表面処理シリカ微粒子が得られる傾向にある。
前記乾式処理法をミキサーで行う場合には、攪拌の周速を30〜300m/minの範囲にすることが好ましい。周速がこの範囲を超えて小さい場合には、混合が不十分となり、シリコーンオイル処理が不均一なものとなる傾向にある。また、この範囲を超えて大きい場合には、シリカ微粒子が極度に帯電して反応器壁面へ付着するため、混合が不十分となり、シリコーンオイル処理が不均一なものとなる傾向にある。
また、上記ミキサーでのシリカ微粒子の混合において、混合度合の指標となる混合度が、1分以内に0.95を超える条件で行うことが好ましい。混合度の求め方には種々のものが提案されているが、本発明においては、次の方法により求めたものを指している。即ち、混合機内の1箇所の適当なポイントにマーカーとなる物質を入れ、ミキサーを任意の時間動かし、ミキサー内の複数のポイントからサンプリングを行い、マーカーとなる物質の含有量を分析し、その含有量のばらつきを変動係数で数値化して、1から該変動係数の値を減算することにより求める。
上記混合度の具体例としては、シリカ微粒子をミキサー内に入れ、ミキサー内の任意の1箇所に10μmのアクリル樹脂を入れ、任意の時間ミキサーを動かし、ミキサー内の任意の6箇所からサンプリングを行い、シリカ微粒子とアクリル樹脂との混合物の炭素量を測定し、その6点の変動係数を求め、1から該変動係数の値を減算することにより求める。アクリル樹脂の添加量は、炭素量の測定できる範囲内であり、且つできるだけ少量であることが好ましく、シリカ微粒子に対して2%程度の添加量が良い。また、シリカ微粒子は、その平均一次粒子径により流動性に違いがあるため、処理に用いる原体シリカ微粒子毎に上記混合係数を求め、好適な範囲内に入るようにミキサーの周速、攪拌羽根の形状を選ぶことが好ましい。
本発明において、シリコーンオイル処理を上記乾式処理法により行う際に、原体シリカ微粒子の水分を乾燥させる工程を含んでいることが好ましい。具体的には、シリコーンオイルの噴霧を行う前に、200〜300℃の環境下において不活性ガスを10分以上流通させることにより行うことができる。本発明で用いる平均一次粒子径50〜200nmの原体シリカ微粒子は、付着性が特異的に強いが、水分を乾燥させることにより、付着性を弱くすることが可能となり、良好な混合状態を得られやすい。上記乾燥工程により、原体シリカ微粒子の水分量は0.1%以下に調整することが、好ましい。
本発明において、シリコーンオイル処理を前記乾式処理法により行う場合に、シリコーンオイルを噴霧する際の噴霧粒径は、80μm以下であることが好ましい。噴霧粒径をこの範囲内とすることにより、均一な処理を行ない易い。シリコーンオイルの噴霧装置は、1流体ノズル、2流体ノズル等を用いることが可能である。より小さな粒径で噴霧が可能である理由から、2流体ノズルにより行うことが好ましい。
本発明において、使用するシリコーンオイルとしては、市販のものを制限なく使用することが可能である。ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられる。上記シリコーンオイルの粘度は特に制限されないが、20〜500cStのものを好適に用いることが可能である。シリコーンオイルの粘度がこの範囲を超えて小さい場合には、シリコーンオイルが揮発性になるため、所定の量をシリカ微粒子表面に付着させにくい傾向にあり、またこの範囲を超えて大きくなると、処理が不均一になる傾向にある。また、上記シリコーンオイルの2種類以上を混合して用いることも可能である。また、後述の抽出後の炭素量Cを増加させる目的では、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル等の反応性のシリコーンオイルを用いると効果的である。更には、カルボン酸、アミン等の極性の官能基により変性されたシリコーンオイルを用いることにより、帯電量、帯電の摩擦混合に対する安定性を変化させることが可能であり、目的にあわせて使い分けることが好ましい。
本発明において、シリコーンオイル処理は、原体シリカ微粒子表面にシリコーンオイルを付着させた後に、所定の熱処理を行うことが好ましい。熱処理は、好ましくは200〜300℃、更に好ましくは220℃〜280℃の環境下で、好ましくは15分〜120分程度、更に好ましくは30分から90分程度、保持することにより行うことができる。
本発明においては、前述の表面処理シリカ微粒子よりなる電子写真トナー用の外添剤をも提供する。
本発明のトナー用外添剤が適用可能なトナーとしては、黒トナー、及び、カラートナーのいずれにも使用でき、また、磁性一成分、非磁性一成分、二成分等のいずれの電子写真システムにも使用可能である。トナーのバインダー樹脂も、一般的に使用されるスチレン/アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等、特に制限なく適用可能である。また、トナー製造方法も、主流の粉砕・混練法はもとより、懸濁重合や乳化重合等の重合法で得られたトナーにも適用できる。
本発明のトナー用外添剤は、その他のトナーの構成材料に関しても、公知のものを任意に配合したトナーに対して適用することができる。黒の着色剤やシアン、マゼンタ、イエロー等のカラー着色剤、正帯電及び負帯電の帯電制御剤、ワックス等の離型剤も当該分野で通常使用される材料を何ら制限なく使用できる。
本発明の外添剤のトナーに対する添加量は、得られるトナーが所望する特性となるような量であれば、特に制限はされないが、通常0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜4質量%とするのが好ましく、公知の方法でトナーに添加できる。
さらに、トナーを製造する際には本発明の外添剤は単独で使用されるものとは限らず、必要に応じて本発明の外添剤以外の疎水化シリカ粒子を組み合わせたり、チタニア、アルミナ等のシリカ以外の酸化物微粒子や、テフロン(登録商標)、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン等の定着助剤等の他の添加剤を併用することも可能である。
以下、本発明を具体的に説明するため、実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
なお、本発明の表面処理シリカ微粒子の物性及び応用特性は、以下の方法により測定した。
(疎水化度の測定)
表面処理シリカ微粒子0.2gを容量250mlのビーカー中の50mlの水に加え、マグネティックスターラーで攪拌した。これにビューレットを使用してメタノールを加え、表面処理シリカ微粒子の全量がビーカー内の溶媒に濡れて懸濁した時点を終点として、滴定を行った。この際メタノールが直接試料に触れない様に、チューブで溶液内に導いた。そして、滴定の終点におけるメタノール−水混合溶媒中のメタノールのvol%の値を疎水化度とした。
(浮遊率の測定)
容量110mlのガラス容器に表面処理シリカ微粒子0.5gを入れ、また、メタノール濃度60vol%のメタノール水を90ml入れ、振とう機により30分間振とうした。振とうしたガラス容器を水平な机の上に置き、4時間静置した後に、浮遊している表面処理シリカ微粒子を吸い込まないようにしながら、スポイト等を用いてメタノール水を抜き出した。次いで、120℃の乾燥機内で、浮遊していた表面処理シリカ微粒子を乾燥させた後に重量を測定した。そして、測定に用いた表面処理シリカ微粒子の重量である0.5gに対する、浮遊していた表面処理シリカ微粒子の割合を求めて浮遊率とした。
(原体シリカ微粒子の平均一次粒子径の測定)
走査電子顕微鏡にて撮影した画像を画像解析して求めた。具体的には、倍率10万倍において、走査電子顕微鏡にて視野を変えて50の画像を撮影し、これを用いて2500個の原体シリカ微粒子について平均一次粒子径を画像解析し、個数平均を求めた。
(表面処理シリカ微粒子のクロロホルム抽出)
クロロホルム40mlに表面処理シリカ微粒子1.0gを懸濁させ、超音波分散機にて30分程度分散させた後、遠心分離機にて表面処理シリカ微粒子を分離した。分離後、更にクロロホルムを添加し、超音波分散し、遠心分離機にて表面処理シリカ微粒子を分離する操作を3回繰り返した。その後、表面処理シリカ微粒子に含まれるクロロホルムを減圧乾燥機により完全に取り除いた。
(炭素量の測定)
表面処理シリカ微粒子の炭素量C及びクロロホルム抽出後の炭素量Cは、堀場製作所製、炭素量分析装置(商品名:EMIA−110型)を使用して測定した。
(小角X線散乱測定)
試料の原体シリカ微粒子を、基板に設けられた貫通孔(縦40mm、横5mm、高さ1mm)に充填し、充填した試料の両側を厚さ6μmのポリピロピレンフィルムで鋏み込むことで保持したものを測定に供した。Kratzky−U−slitを装備したマックサイエンス社製、二軸小核X線散乱装置(商品名:M18XHF22)を用いて、下記の条件で測定を行った。
入射X線:Cu−Kα
管電圧:40kv
管電流:300mA
スリット幅:10μm
検出器走査角度:0.025度〜0.900度。
(通常条件及びストレス条件での帯電量)
スチレン−アクリル樹脂(ガラス転移点61℃)をジェットミルで粉砕し、平均粒径8μmの樹脂粉を得た。この樹脂粉34.3gと表面処理シリカ微粒子1.4g、およびレオロシールHM−20S(株式会社トクヤマ製、原体比表面積200m/g、ヘキサメチルジシラザン処理品)0.7gを250mlのポリエチレン容器に入れ、更に混合助剤として5mmのガラスビーズ200gを入れ、一定時間振とう機にて振とうさせることにより擬似トナーを作成した。この振とう時間が、30分の時を通常条件、240分の時をストレス条件とした。作成した擬似トナー1gとシリコーン樹脂でコートされたフェライトキャリア99gをサンプル瓶に入れ、25℃、50%RHの環境化で12時間以上調湿した。調湿後、同様の環境下において、卓上ローラーミルにて擬似トナーとフェライトキャリアを60分混合することにより摩擦帯電させ、東芝ケミカル製、ブローオフ法帯電量測定装置(商品名:TB−200型)にて帯電量を測定した。通常条件で振とうした擬似トナーの帯電量と、ストレス条件で振とうした擬似トナーの帯電量を比較し、トナーの耐久性を向上させる効果を評価した。
(転写効率の評価)
上記の帯電量測定時と同様に、擬似トナーを作成した。振とう時間は、30分とした。混合助剤として添加している5mmのガラスビーズと擬似トナーを篩い分けした際に、5mmのガラスビーズの表面に残存する擬似トナー量を測定し、転写効率を評価した。残存する擬似トナーの量が少ないほど、転写効率が良い。
実施例1
酸素−水素炎で形成された外炎中において、オクタメチルシクロテトラシロキサンを酸水素炎中にて燃焼酸化させることにより、比表面積35m/g、平均一次粒子径80nm、フラクタル形状パラメータα、αがそれぞれ2.766、1.293の原体シリカ微粒子を得た。この原体シリカ微粒子に対して、微粒子同士の接触を促進するような混合等の操作は、一切行わないように注意した。
原体シリカ微粒子をミキサーに入れ、ミキサー内温度が250℃、周速94m/s、1分間の混合度が98%の条件にて攪拌を開始し、窒素を流通させた。このまま30分間保持し、原体シリカ微粒子を乾燥させた。この操作により、原体シリカ微粒子の水分量は、0.1%以下となった。
引き続き、同条件でミキサーの攪拌を続け、原体シリカ微粒子100重量部に対して11重量部のジメチルシリコーンオイル(粘度50cSt)を、2流体ノズルを用いて噴霧し、原体シリカ微粒子に付着させた。
更に、同条件でミキサーの攪拌を続け、60分間保持し、表面処理シリカ微粒子を得た。得られた表面シリカ微粒子の諸物性を表2、3に示す。
実施例2〜4
シリコーンオイルの添加量、及びシリコーンオイルの種類を表1に示す条件に変更した以外は、実施例1と同様の条件で処理を行った。得られた表面シリカ微粒子の諸物性を表2、3に示す。
実施例5
酸素−水素炎で形成された外炎中において、オクタメチルシクロテトラシロキサンを酸水素炎中にて燃焼酸化させることにより、比表面積11m/g、平均一次粒子径190nm、フラクタル形状パラメータα、αがそれぞれ3.112、2.135の原体シリカ微粒子を得た。この原体シリカ微粒子に対して、微粒子同士の接触を促進するような混合等の操作は、一切行わないように注意した。
原体シリカ微粒子をミキサーに入れ、ミキサー内温度が250℃、周速61m/s、1分間の混合度が95%の条件にて攪拌を開始し、窒素を流通させた。このまま30分間保持し、原体シリカ微粒子を乾燥させた。この操作により、原体シリカ微粒子の水分量は、0.1%以下となった。
引き続き、同条件でミキサーの攪拌を続け、原体シリカ微粒子100重量部に対して7重量部のジメチルシリコーンオイル(粘度50cSt)を、2流体ノズルを用いて噴霧し、原体シリカ微粒子に付着させた。
更に、同条件でミキサーの攪拌を続け、60分間保持し、表面処理シリカ微粒子を得た。得られた表面シリカ微粒子の諸物性を表2、3に示す。
比較例1
実施例1の原体シリカ微粒子20gをトルエン200mlに分散させ、ジメチルシリコーンオイル(50cSt)2.2gを添加した。スターラーで60分間攪拌した後に、エバポレーターによりトルエンを留去した。その後、250℃の電気炉にいれ、1時間保持した。得られた表面シリカ微粒子の諸物性を表2、3に示す。
比較例2
実施例1の原体シリカ微粒子を、ミキサーに入れ、室温で周速980m/sの条件にて攪拌を開始し、原体シリカ微粒子100重量部に対して11重量部のジメチルシリコーンオイル(粘度50cSt)を、2流体ノズルを用いて噴霧し、原体シリカ微粒子に付着させた。
その後、シリコーンオイルを付着せしめたシリカ微粒子をミキサーから取り出し、電気炉に入れ120℃の条件で60分間保持した。得られた表面処理シリカ微粒子の諸物性を表2、3に示す。
比較例3
電気炉の温度を250℃とした以外は、比較例2と同様の方法により処理を行った。得られた表面処理シリカ微粒子の諸物性を表2、3に示す。
比較例4
実施例1の原体シリカ微粒子を反応器に入れ、反応器内部の温度が250℃の条件で、窒素雰囲気下、ヘキサメチルジシラザン20重両部をミキサー内に導入した。反応器内の圧力はゲージ圧で100kPaとなった。このまま60分間保持し、反応器内を窒素で置換した。得られた表面処理シリカ微粒子の諸物性を表2、3に示す。
上記の実施例により製造された表面処理シリカ微粉末は、本発明の請求項に記載された物性を有しており、トナーに添加した際に、帯電量の変化を抑制する効果、及び転写効率を向上させる効果に優れている。
比較例1、3に記載された表面処理シリカ微粉末は、60vol%メタノール水における浮遊率が低く、シリコーンオイルの付着状態が不均一であるため、帯電量の変化を抑制する効果が劣っている。
比較例2記載された表面処理シリカ微粉末は、疎水化度が低いため、転写効率を向上させる効果が劣っている。
比較例4に記載された表面処理シリカ微粉末は、シリコーンオイルによる処理が行われていないため、帯電量の変化を抑制する効果が劣っている。
Figure 0004758655
Figure 0004758655
Figure 0004758655

Claims (4)

  1. シリコーンオイルにて処理された平均一次粒子径が50〜200nmである表面処理シリカ微粒子であり、該表面処理シリカ微粒子のメタノール滴定法による疎水化度が65容量%以上であり、且つメタノール濃度が60容量%のメタノール水における浮遊率が90%以上であることを特徴とする表面処理シリカ微粒子。
  2. 該表面処理シリカ微粒子の原体シリカ微粒子に対する小角X線散乱測定において、解析対象範囲50nm〜150nmのフラクタル形状パラメータα及び解析対象範囲150nm〜353nmのフラクタル形状パラメータαが下記式(1)及び(2):
    −0.0068S+2.548≦α≦−0.0068S+3.748(1)
    −0.0011S+1.158≦α≦−0.0011S+2.058(2)
    (上記式中、Sは原体シリカ微粒子のBET比表面積(m/g)を示す。)
    で示される条件を満足していることを特徴とする請求項1記載の表面処理シリカ微粒子。
  3. 前記表面処理シリカ微粒子において、炭素量C(%)及びクロロホルム抽出後の炭素量C(%)との差(ΔC(%))が、0.5〜3.0の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面処理シリカ微粒子。
  4. 請求項1〜3の何れか一項に記載の表面処理シリカ微粒子よりなる電子写真用トナー外添剤。
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