JP4636718B2 - コンクリート硬化体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート構造物やコンクリート二次製品などのコンクリート硬化体の製造において、セメントの凝結を促進して作業効率を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えばコンクリート二次製品の製造においては、常圧で蒸気養生する方法が広く採用されている。蒸気養生とは、型枠に打設したコンクリートを養生室内に設置し、この養生室内にボイラーによって発生させた水蒸気を導入し、コンクリートを加湿条件下で昇温させ、セメントの水和反応を促進して強度発現を早める方法である。具体的には、コンクリートの練り上がり温度によっては、打設後約2〜5時間前置き養生した後、ブリーディングが止まってからコテ仕上をした後、さらに約2時間かけて蒸気によって加熱昇温し、最高温度に達してから2〜3時間保持して脱型強度を得て脱型する工程よりなる。
このような方法によると、1日に1つの型枠で製品を一体しか製造することができず、生産効率の改善が望まれている。
【0003】
そこで、コンクリート製品の生産性を高めるために、▲1▼昇温速度を速くし且つ最高温度を高くする方法や、あるいは▲2▼水硬性の高いセメントを使用するか、あるいは塩化物、硝酸塩、ロダン酸塩などに代表される凝結促進剤などを併用添加してコンクリートの凝結硬化を速める方法などが考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記▲1▼の方法によれば、脱型後の強度増進があまり見込めないため製品強度が不足するという問題があり、前記▲2▼の方法によれば、富配合によるコストアップを招きやすく、また単に凝結促進剤のみを添加するだけでは、コンクリートの可使時間が短くなるといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、コンクリート硬化体の製造においてセメントの凝結促進を図ることを課題とし、例えばコンクリート製品工場においては、少ない型枠を効率良く使用して多くの製品を製造することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その解決手段は、セメントの水和反応を促進する凝結促進剤の表面が、実質的に水に不溶で且つ50〜70℃で溶融するコーティング材によって被覆され、凝結促進剤100重量部に対してコーティング材が10〜300重量部の配合比率で混合されているセメント凝結促進剤を添加してコンクリートを製造し、該コンクリートを打設した後に、加熱養生による加熱によって前記コーティング材を溶融させることを特徴とするコンクリート硬化体の製造方法にある。
【0007】
凝結促進剤の表面をコーティング材によって被覆することによって、該凝結促進剤による効果の発現を制御することができ、可使時間を確保しつつコンクリート硬化体の製造時間を効果的に短縮することができる。
【0009】
コンクリート二次製品のようなコンクリート硬化体は、加熱養生によって凝結を促進させることが一般的に行われているが、このような50〜70℃で溶融するコーティング材によって凝結促進剤が被覆されていることにより、加熱養生時のセメントの水和反応をさらに促進することができ、極めて効率良くコンクリート硬化体を製造することが可能となる。
また、加熱養生する前には凝結促進剤が作用して不用意に可使時間を短縮する虞がなく、作業時間が十分に確保できるという利点がある。
【0011】
また、このようなセメント凝結促進剤を添加し、コーティング材を溶融させることにより、所望の時期にセメントの水和反応を促進させ、コンクリートの凝結を早めることが可能となる。
【0013】
コンクリート二次製品等の製造工程では、一般的に加熱養生によってセメントの凝結を促進させるため、この加熱養生の際にコーティング材を溶融させることによって養生時間の短縮を図り、コンクリート硬化体の生産性を改善することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明におけるコーティング材は、水に不溶性又は難溶性(本明細書において、「実質的に不溶」という)の物質であり、50〜70℃に加熱することによって溶融するものである。
溶融温度が低すぎると保存する際に溶融してしまい、いわゆる汗をかいた状態となるために好ましくない。また、溶融温度が高すぎると、該コーティング材を溶融させるための大掛かりな加温装置が必要となるために好ましくない。
【0015】
該コーティング材として、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、バルミチン酸およびステアリン酸などの脂肪酸、高級アルコール類、無水マレイン酸、パラフィン等を例示することができる。
中でも、セメント混練時におけるすり合わせに対する抵抗性の高いものが好ましく、そのような観点からは、該コーティング材はパラフィンが好ましい。
【0016】
一方、有効成分である凝結促進剤は、セメントの水和反応を促進させるものであればいずれのものでも使用することができ、性状は粉体あるいは液体のいずれでも良い。具体的には、該凝結促進剤として、アルミン酸およびこれらの塩類、カルシウムアルミネート等、或いはこれらを主成分とする急結剤、急硬剤等を例示することができる。
【0017】
前記コーティング材を用いて凝結促進剤をコーティングする方法は、特に限定されるものではない。具体的には、コーティング方法として従来より行われている方法として、界面重合法、In−Situ法、液中硬化被覆法などの化学的な方法、あるいは噴霧乾燥法、プレコーティング法、メカノケミカル法、パンコーティング法などの機械的な方法、さらには相分離法、液中乾燥法、溶解分散冷却法などの物理化学的な方法によって行うことができる。
【0018】
凝結促進剤とコーティング材との配合比率は、凝結促進剤100重量部に対してコーティング材を10〜300重量部とする。
【0019】
このようにして製造したセメント凝結促進剤は、該セメント凝結促進剤を添加してコンクリートを製造した後、コンクリートの打設の際あるいは該コンクリートを打設した後に、前記コーティングを溶融することによって使用される。
【0020】
該セメント凝結促進剤のコンクリートへの添加量は、凝結促進剤の種類やコンクリート硬化体の製造における便宜を考慮したうえで、必要な量を添加すればよい。
【0021】
斯かるコーティング材は、打設する際又は打設した後に、加熱することによって溶融され、有効成分である凝結促進剤本体を容易に露呈させることができる。
【0022】
また、該コーティング材が、上記温度によって溶融するものである場合には、コンクリートを打設した後に通常の加熱養生を行うことによって該コーティング材を溶融させ、凝結促進剤を露呈させることができる。
従って、このような場合には、加熱養生を行う従来のコンクリート二次製品等の製造工程にそのまま適用することができ、改めて別の工程を必要としないという利点がある。
【0023】
但し、加熱手段は特に限定されず、例えば、蒸気養生や、ジェットヒーターでの加温養生の他、型枠に電熱線等を埋め込むか又は表面に巻き付けることによって型枠ごとに加熱を行う方法などを挙げることができる。
【0024】
このようなセメント凝結促進剤を用いたコンクリート硬化体の製造方法によれば、有効成分である凝結促進剤の表面がコーティング材によって被覆されているため、コンクリート製造時に直ちに凝結促進剤による効果が発現することなく、十分な可使時間を確保することができる。
【0025】
また、コーティング材を溶融することによって凝結促進剤が作用し、コンクリート硬化体を早期に脱型することが可能となる。従って、同一の型枠を用いて繰り返しコンクリート硬化体を製造することができ、型枠の回転率が向上して生産性が飛躍的に改善されることとなる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0027】
(コンクリートの作製)
表1に示す配合のコンクリートをベースコンクリートとして作製した。一方、表2に示す配合のセメント凝結促進剤をそれぞれ作製し、ベースコンクリートに添加した。セメント凝結促進剤は、有効成分である凝結促進剤がベースセメントに対して外割で2重量%となるように添加した。
【0028】
【表1】
【0029】
尚、コンクリートおよびセメント凝結促進剤については、以下の材料を使用した。
コンクリート
セメント : 普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント(株)製)
細骨材 : 野洲川産川砂
粗骨材 : 高槻産砕石
混和剤 : AE減水剤
セメント凝結促進剤
凝結促進剤(有効成分) : アルミン酸ナトリウム(試薬)
コーティング材 : パラフィン(試薬、融点約54℃)
コーティング方法 : パンコーティング法
【0030】
(供試体の作製および試験)
作製したコンクリートをφ100mm×H200mmの型枠に充填し、打ち込み面(表面)をラップで包んで封緘した。これを型枠ごと65℃に温度調節した乾燥機にて1時間養生し、脱型した。
次いで、脱型した各供試体について、JIS A1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じた圧縮試験を行い、脱型の可否を評価した。また、各コンクリートの可使時間についても評価した。
結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示したように、凝結促進剤を添加しない比較例1では、65℃1時間程度の加温では強度を発現せず、脱型することができない。また、有効成分である凝結促進剤をコーティングせずに添加した比較例2では、直ちにセメントの凝結が起こるためにコンクリートを混練することができない。さらに、過剰のコーティング材で被覆した比較例3では、コーティング材の溶融に時間がかかるため、1時間では十分な効果を発揮することができない。
【0033】
一方、実施例1〜4では、コーティング材の量によって圧縮強度に多少の相違はみられるものの、いずれも十分な可使時間を確保しつつ、65℃1時間の加温によって脱型が可能な強度を得ることができる。
【0034】
尚、本発明は、当該実施例に限定されるものではなく、よって、例えばコーティング材や凝結促進剤(有効成分)の種類に応じてこれらの配合比率を変更することや、或いはコンクリート硬化体の製造時の都合に合わせてセメント凝結促進剤の添加量を変更することも可能である。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係るセメント凝結促進剤およびコンクリート硬化体の製造方法によれば、コンクリートを製造し打設するのための可使時間を確保しつつ、打設後にはコンクリート硬化体の凝結時間を効果的に短縮することが可能となる。
【0036】
従って、例えば型枠を使用して養生するコンクリート二次製品等の製造においては、早期に該型枠より脱型することが可能となり、型枠を効率的に使用して生産効率を顕著に改善することができる。
Claims (1)
- セメントの水和反応を促進する凝結促進剤の表面が、実質的に水に不溶で且つ50〜70℃で溶融するコーティング材によって被覆され、凝結促進剤100重量部に対してコーティング材が10〜300重量部の配合比率で混合されているセメント凝結促進剤を添加してコンクリートを製造し、該コンクリートを打設した後に、加熱養生による加熱によって前記コーティング材を溶融させることを特徴とするコンクリート硬化体の製造方法。
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