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JP4634559B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

電動パワーステアリング装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置は、ステアリング軸に接続されたピニオン軸をラック軸に噛合いさせるとともに、モータの出力軸に連結されたウォームギヤをウォームホイールに噛合いさせ、このウォームホイールをピニオン軸に接続し、モータのトルクをラック軸に伝えることにて操舵アシストする。このような電動パワーステアリング装置では、操舵中にタイヤが縁石に乗り上げる等により、ラック軸のストロークが急停止せしめられると、モータ、ギヤ等の破損を生ずる恐れがある。
【0003】
ここで、従来技術では、特開平9-20256 号公報に記載の如く、モータに駆動されるウォームホイールとピニオン軸の間に、径方向に弾発保持されて所定のトルクでスリップするトルクリミッタを介装し、トルクリミッタの弾発力(リミットトルク)を越える衝撃トルクからモータ、ギヤ等を保護することとしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、従来技術では、ウォームホイールはトルクリミッタを介してピニオン軸に支持されているに過ぎない。他方、モータのトルク伝達時に、ウォームギヤはウォームホイールにトルクの大きさに応じて変動するラジアル荷重を及ぼす結果、ウォームホイールはこのラジアル荷重によって軸心ずれを生じ、これがひいてはトルクリミッタの径方向弾発変形量を変動させてそのリミットトルクを不安定にする。ウォームホイールとウォームギヤの噛合い精度を含めた、ウォームホイールからピニオン軸に至るまでのトルク伝達経路の部品精度のばらつきは、トルクリミッタの上述の径方向弾発変形量を更に変動させるものとなり、そのリミットトルクを更に不安定にする。
【0005】
本発明の課題は、電動パワーステアリング装置において、モータのトルク伝達経路のトルクリミッタを設けるに際し、所定のリミットトルクを安定維持し、トルクリミッタの耐久信頼性を向上することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明は、ステアリング軸に接続されたピニオン軸をラック軸に噛合いさせ、モータに駆動される操舵アシストギヤが、径方向に弾発保持されて所定のトルクでスリップするトルクリミッタを介して前記ピニオン軸に接続されてなる電動パワーステアリング装置において、操舵アシストギヤとピニオン軸をギヤハウジングに支持するに際し、ピニオン軸を2つの軸受でギヤハウジングに両持ち支持するとともに、操舵アシストギヤを上記2つの軸受とは異なる他の軸受でギヤハウジングに直に支持することにより、操舵アシストギヤとピニオン軸をギヤハウジングに対して相互に独立に支持するとともに、操舵アシストギヤが、モータの出力軸に結合されたウォームギヤと噛合うウォームホイールであり、該ウォームホイールをギヤハウジングに直に支持する軸受とトルクリミッタのそれぞれを、該ウォームホイールの軸方向で、ウォームホイールのウォームギヤとの噛合い位置と軸方向同一位置にて、ウォームホイールのボスとピニオン軸の中間部のそれぞれに互いに同軸をなすように設けたものである。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において更に、前記ウォームホイールのための軸受と、ウォームギヤのための軸受を、同一のギヤハウジングに設けてなるようにしたものである。
【0009】
【作用】
(a)ウォームホイールはピニオン軸とは独立に支持される。従って、モータのトルク伝達時に、トルクの大きさに応じてウォームギヤからウォームホイールに作用するラジアル荷重はウォームホイールの軸受に支持され、ウォームホイールに軸心ずれを生ずることがない。このため、ウォームホイールとピニオン軸の間に介装されているトルクリミッタはトルクのみを伝達するものとなり、その径方向弾発変形量は変動することがなく、そのリミットトルクは安定維持される。従って、トルクリミッタのリミットトルクは、ウォームホイールからピニオン軸に至るまでのトルク伝達経路の部品精度のばらつきにも影響されることなく、所定のリミットトルクを安定維持し、トルクリミッタの耐久信頼性を向上できる。
【0010】
(b)ウォームホイールの軸受は、ウォームホイールとウォームギヤの噛合い位置に設けられた。従って、ウォームギヤからウォームホイールに作用するラジアル荷重がウォームホイールに及ぼすモーメントを小さくでき、ウォームホイールの倒れ(軸の倒れ)を抑制できる。従って、ウォームホイールのウォームギヤとの噛合いの安定を維持でき、且つトルクリミッタの径方向弾発変形量、ひいてはそのリミットトルクをより確実に安定維持できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は電動パワーステアリング装置を示す模式図、図2は電動パワーステアリング装置を示す縦断面図、図3は図2のIII-III線に沿う断面図である。
【0012】
電動パワーステアリング装置10は、図1〜図3に示す如く、ステアリングホイールが接続されるステアリング軸12を、ギヤボックス11の内部でピニオン軸13に接続するとともに、このピニオン軸13をラック軸14に噛合いさせ、ラック軸14の中間部に連結ボルト15A、15Bを介して左右のタイロッド16A、16Bを連結し、運転者によるステアリングホイールの操舵力をギヤボックス11に固定のモータ17によりアシストするものである。
【0013】
ギヤボックス11は、図2に示す如く、第1〜第3のギヤハウジング11A〜11Cからなり、ステアリング軸12とピニオン軸13を軸受21、軸受22、23で支持するとともに、ステアリング軸12とピニオン軸13をそれらの内部でトーションバー24により連結している。
【0014】
ギヤボックス11は、トルクセンサ30を構成する2個の検出コイル31、32をステアリング軸12、ピニオン軸13に係合している円筒状のコア33を囲むように、第1ハウジング11Aに設けている。コア33は、ピニオン軸13のガイドピン34に係合する縦溝35を備えて軸方向にのみ移動可能とされるとともに、ステアリング軸12のスライダピン36に係合するスパイラル溝37を備える。これにより、ステアリングホイールに加えた操舵トルクがステアリング軸12に付与され、トーションバー24の弾性ねじり変形により、ステアリング軸12とピニオン軸13の間に回転方向の相対変位を生ずると、ステアリング軸12とピニオン軸13の回転方向の変位がコア33を軸方向に変位させるものとなり、このコア33の変位による検出コイル31、32の周辺の磁気的変化に起因する検出コイル31、32のインダクタンスが変化する。即ち、コア33がステアリング軸12側へ移動すると、コア33が近づく方の検出コイル31のインダクタンスが増加し、コア33が遠ざかる方の検出コイル32のインダクタンスが減少し、このインダクタンスの変化により操舵トルクを検出できる。
【0015】
ギヤボックス11は、ピニオン軸13の反トルクセンサ30側の端部のピニオン歯13Aに、ラック軸14のラック歯14Aを噛合いさせている。このとき、第3ギヤハウジング11Cにはキャップ11Dが固定され、キャップ11Dにスプリング38を介してバックアップされるラックガイド39がラック軸14を背面支持している。
【0016】
ギヤボックス11は、図3に示す如く、モータ17を第3ギヤハウジング11Cに支持するとともに、モータ17の出力軸にクラッチ18を介して結合されるウォームギヤ41を、軸受42、43により第3ギヤハウジング11Cに両端支持している。そして、ギヤボックス11は、ウォームギヤ41に噛合う操舵アシストギヤとしてウォームホイール44を、トルクリミッタ45を介してピニオン軸13の中間部に同軸的に接続し、軸受50により後述する如くに第3ギヤハウジング11Cに支持している。トルクリミッタ45は、ばね等の弾性リングからなり、ピニオン軸13とウォームホイール44のボス44Aの間に圧入等されて径方向に弾発保持される。そして、トルクリミッタ45は、電動パワーステアリング装置10の通常使用されるトルク(リミットトルクより小なるトルク)では、弾性リングの弾発力によりウォームホイール44とピニオン軸13を滑りなく結合し続け、他方、タイヤが操舵中に縁石に乗り上げる等により、ラック軸14のストロークが急停止せしめられ、モータ17の慣性力がウォームホイール44に大きな衝撃力を及ぼすことに起因する、その弾性リングの弾発力を越える衝撃トルク(リミットトルク)に対しては、ウォームホイール44をピニオン軸13に対してスリップさせ、モータ17のトルクを伝達させないように機能する。
【0017】
ウォームホイール44が、ボス44Aをアーム44Bとリム44Cからなり、リム44Cに歯44Dを備え、ボス44Aとアーム44Bをインサート金具により構成して強度を確保し、リム44Cを樹脂により構成してウォームギヤ41との噛合い音の静粛を図っている。
【0018】
軸受50は、ウォームホイール44のボス44Aに内輪50Aを装着されて止め輪51により保持されるとともに、第3ギヤハウジング11Cの環状支持部52に外輪50Bを装着されてナット53により保持され、結果として、ウォームホイール44をピニオン軸13とは独立して回転自在にギヤボックス11に支持する。そして、軸受50は、ウォームホイール44の軸方向で、ウォームホイール44のウォームギヤ41との噛合い位置(歯44Dの位置)に対応する位置(軸方向同一位置)に設けられている。尚、ウォームホイール44は、ボス44Aに軸受50の内輪50Aを保持した状態で、軸受50の外輪50Bを第3ギヤハウジング11Cの環状支持部52に装着し、ナット53をアーム44Bの開口から環状支持部52に螺着することにより、ギヤボックス11に組み込まれる。
【0019】
即ち、電動パワーステアリング装置10にあっては、車速センサ(不図示)や上述のトルクセンサ30の検出結果を得たコントロールユニット(不図示)により、所定のアシスト力マップから、モータ17の駆動電流を決定し、車速と操舵トルクに応じた適切な操舵アシスト力となるモータ17のトルクをピニオン軸13に付与する。尚、モータ17とウォームギヤ41との間に設けられるクラッチ18は、アシスト不要時(高速時)に操舵アシスト力を遮断する。
【0020】
本実施形態によれば、以下の作用がある。
▲1▼ウォームホイール44はピニオン軸13とは独立に支持される。従って、モータ17のトルク伝達時に、トルクの大きさに応じてウォームギヤ41からウォームホイール44に作用するラジアル荷重はウォームホイール44の軸受50に支持され、ウォームホイール44に軸心ずれを生ずることがない。このため、ウォームホイール44とピニオン軸13の間に介装されているトルクリミッタ45はトルクのみを伝達するものとなり、その径方向弾発変形量は変動することがなく、そのリミットトルクは安定維持される。従って、トルクリミッタ45のリミットトルクは、ウォームホイール44からピニオン軸13に至るまでのトルク伝達経路の部品精度のばらつきにも影響されることなく、所定のリミットトルクを安定維持し、トルクリミッタ45の耐久信頼性を向上できる。
【0021】
▲2▼ウォームホイール44の軸受50は、ウォームホイール44とウォームギヤ41の噛合い位置に設けられた。従って、ウォームギヤ41からウォームホイール44に作用するラジアル荷重がウォームホイール44に及ぼすモーメントを小さくでき、ウォームホイール44の倒れ(軸の倒れ)を抑制できる。従って、ウォームホイール44のウォームギヤ41との噛合いの安定を維持でき、且つトルクリミッタ45の径方向弾発変形量、ひいてはそのリミットトルクをより確実に安定維持できる。
【0022】
▲3▼ピニオン軸13の軸受23、ウォームホイール44の軸受50を同一の第3ギヤハウジング11Cに設けているから、ピニオン軸13とウォームホイール44の同軸組付精度を簡易に高精度化し、トルクリミッタ45のリミットトルクを安定維持できる。
【0023】
▲4▼ウォームギヤ41の軸受42、43、ウォームホイール44の軸受50を同一の第3ギヤハウジング11Cに設けているから、ウォームギヤ41とウォームホイール44の軸間距離精度を簡易に高精度化し、両者の噛合い精度を簡易に高精度化でき、ひいてはトルクリミッタ45のリミットトルクを安定維持できる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、電動パワーステアリング装置において、モータのトルク伝達経路のトルクリミッタを設けるに際し、所定のリミットトルクを安定維持し、トルクリミッタの耐久信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は電動パワーステアリング装置を示す模式図である。
【図2】 図2は電動パワーステアリング装置を示す縦断面図である。
【図3】 図3は図2のIII−III線に沿う断面図である。
【符号の説明】
10 電動パワーステアリング装置
11 ギヤボックス
11A〜11C ギヤハウジング
12 ステアリング軸
13 ピニオン軸
14 ラック軸
17 モータ
22、23 軸受
41 ウォームギヤ
44 ウォームホイール
44A ボス
45 トルクリミッタ
50 軸受

Claims (2)

  1. ステアリング軸に接続されたピニオン軸をラック軸に噛合いさせ、
    モータに駆動される操舵アシストギヤが、径方向に弾発保持されて所定のトルクでスリップするトルクリミッタを介して前記ピニオン軸に接続されてなる電動パワーステアリング装置において、
    操舵アシストギヤとピニオン軸をギヤハウジングに支持するに際し、ピニオン軸を2つの軸受でギヤハウジングに両持ち支持するとともに、操舵アシストギヤを上記2つの軸受とは異なる他の軸受でギヤハウジングに直に支持することにより、操舵アシストギヤとピニオン軸をギヤハウジングに対して相互に独立に支持するとともに、
    操舵アシストギヤが、モータの出力軸に結合されたウォームギヤと噛合うウォームホイールであり、該ウォームホイールをギヤハウジングに直に支持する軸受とトルクリミッタのそれぞれを、該ウォームホイールの軸方向で、ウォームホイールのウォームギヤとの噛合い位置と軸方向同一位置にて、ウォームホイールのボスとピニオン軸の中間部のそれぞれに互いに同軸をなすように設けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記ウォームホイールのための軸受と、ウォームギヤのための軸受を、同一のギヤハウジングに設けてなる請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
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