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JP4628507B2 - アルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法 - Google Patents

アルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法 Download PDF

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JP4628507B2
JP4628507B2 JP32868898A JP32868898A JP4628507B2 JP 4628507 B2 JP4628507 B2 JP 4628507B2 JP 32868898 A JP32868898 A JP 32868898A JP 32868898 A JP32868898 A JP 32868898A JP 4628507 B2 JP4628507 B2 JP 4628507B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント分散剤の原料として使用されるアルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法に関するものである。さらに詳しくは、貯蔵・移送中の過酸化物の生成及びその後のエステル化反応中のゲルの形成を抑制することによって、セメント分散剤の原料として使用されるアルコキシポリアルキレングリコールを安定して貯蔵・移送する方法、さらにはこのように貯蔵・移送されたアルコキシポリアルキレングリコールを用いたセメント分散剤に使用される重合体の製造方法ならびにその重合体を有するセメント分散剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
1981年にコンクリート構造物の早期劣化が社会問題化して以来、コンクリート中の単位水量を減らしてその耐久性と施工性を向上させることが強く求められており、このような要求を満たすセメント組成物さらにはこの品質及び性能に多大な影響を与えるセメント分散剤の開発が盛んに行われている。
【0003】
これらのうち、特開平9−328,346号公報では、一般式(1)
【0004】
【化4】
Figure 0004628507
【0005】
(ただし、式中、R1 は炭素原子数1〜22のアルキル基、R2 Oは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表わす。
)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールと、一般式(2)
【0006】
【化5】
Figure 0004628507
【0007】
(ただし、式中、R3 は水素原子またはメチル基を表わし、またR4 は炭素原子数1〜22のアルキル基または炭素原子数3〜12のシクロアルキル基を表わす。)で示される(メタ)アクリル酸エステルとを、塩基性触媒の存在下にエステル交換反応に供して得られる一般式(3)
【0008】
【化6】
Figure 0004628507
【0009】
(ただし、式中、R1 、R2 OおよびR3 は前記のとおりであり、またnはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜100の数を表わす。)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体(a)5〜95重量%、
一般式(4)
【0010】
【化7】
Figure 0004628507
【0011】
(ただし、式中、R3 は前記のとおりであり、またM1 は水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基または有機アミン基を表わす。)で示される(メタ)アクリル酸(塩)単量体(b)95〜5重量%、および
これらの単量体と共重合可能な単量体(c)0〜50重量%(ただし、(a)、(b)および(c)の合計は100重量%である。)を用いて導かれた重合体(A)および/または該重合体(A)をさらにアルカリ性物質で中和して得られた重合体塩(B)を含む、減水性能に優れ、かつ適度な空気連行性と良好なスランプ保持性能を備えたメント分散剤が開示されている。
【0012】
しかしながら、上記セメント分散剤の原料として使用されるアルコキシポリアルキレングリコールは、空気雰囲気下で貯蔵すると、過酸化物含量が増加し、これによりアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸(またはエステル)とのエステル化反応中にゲルを形成しやすいという性質を有する。さらに、このようにゲルが存在した状態のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸エステルとのエステル化反応により得られる単量体混合物を用いて上記公報に記載された方法を用いて重合すると、生成物たる重合体の分子量がゲルが存在しない場合とは異なる分子量分布になってしまい、セメント分散性等の性能が低下するという問題がある。このため、アルコキシポリアルキレングリコールを空気中で一定期間保存する場合には、エステル化反応中で形成したゲルを濾過などによって除去した後、重合反応に供しなければならず、手間や時間がかかってしまい、経済的な観点から好ましくない。また、同様の理由により、ある場所でアルコキシポリアルキレングリコールを製造した後、これを別の場所に移送してエステル化反応に使用することは、やはり経済的な観点から好ましくなかった。
【0013】
したがって、アルコキシポリアルキレングリコールを安定して貯蔵・移送する手段は存在せず、このような様々な問題を考慮して、アルコキシポリアルキレングリコールは、従来、エステル化反応に供される直前に製造されなければならなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、アルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送期間中の過酸化物の生成を有効に抑制することによって、セメント分散剤の原料として使用されるアルコキシポリアルキレングリコールを安定して貯蔵・移送する方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、アルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送期間中の過酸化物の生成を抑制し、これによりその後のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸(エステル)とのエステル化反応におけるゲルの形成を防止することによって、セメント分散性等の各種性能に優れたセメント分散剤の原料として使用されるアルコキシポリアルキレングリコールの安定した貯蔵・移送方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、このような方法で貯蔵・移送されたアルコキシポリアルキレングリコールを用いたセメント分散剤に使用される重合体の製造方法を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる別の目的は、このような方法で貯蔵・移送されたアルコキシポリアルキレングリコールを用いて製造される重合体を有するセメント分散剤を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、アルコキシポリアルキレングリコールを不活性ガスで置換されたおよび/またはラジカル捕捉剤が添加された雰囲気中で貯蔵・移送することによって、貯蔵・移送中の過酸化物の生成、さらにはその後のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸(またはエステル)とのエステル化反応におけるゲルの形成が有効に防止、抑制されることを発見し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、上記諸目的は下記(ア)〜(カ)のいずれかによって達成される。
【0020】
(ア) セメント分散剤の原料として使用されるアルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法において、
式(1):
【0021】
【化8】
Figure 0004628507
【0022】
(ただし、R1 は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わし、R2 Oは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各R2 Oの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびR2 Oが2種以上の混合物の形態である場合には各R2 Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数である)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールを容器内が不活性ガスで置換されたおよび/または容器中にラジカル捕捉剤が添加された雰囲気中で貯蔵・移送することを特徴とする、アルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法。
【0023】
(イ) 前記アルコキシポリアルキレングリコールが、容器内の空気の全容積に対して、70%以上、不活性ガスで置換された雰囲気中で貯蔵・移送される、前記(ア)に記載のアルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法。
【0024】
(ウ) 前記ラジカル捕捉剤がt−ブチルヒドロキシトルエンである、前記(ア)に記載のアルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法。
【0025】
(エ) 前記ラジカル捕捉剤の添加量が、アルコキシポリアルキレングリコールの量に対して、10〜1500ppmである、前記(ア)または(ウ)に記載のアルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法。
【0026】
(オ) 式(1):
【0027】
【化9】
Figure 0004628507
【0028】
(ただし、R1 は炭素原子数1〜30の炭化水素基を表わし、R2 Oは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各R2 Oの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびR2 Oが2種以上の混合物の形態である場合には各R2 Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数である)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応を行い、式(3):
【0029】
【化10】
Figure 0004628507
【0030】
(ただし、式中、R1 、R2 およびnは前記のとおりであり、およびR3 は水素原子またはメチル基を表わす)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルを得、該アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(塩)及び必要であれば該アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸(塩)と共重合可能な単量体を重合することからなるセメント分散剤に使用される重合体の製造方法において、前記アルコキシポリアルキレングリコールが前記(ア)から(エ)のいずれかに記載のものである製造方法。
【0031】
(カ) 少なくとも前記(オ)に記載の方法によって製造される重合体を有してなることを特徴とするセメント分散剤。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0033】
本発明の第一の概念によると、アルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法は、不活性ガスで置換されたおよび/またはラジカル捕捉剤が添加された雰囲気中で式(1)のアルコキシポリアルキレングリコール(以下、単に「アルコキシポリアルキレングリコール」ともいう)を貯蔵・移送することを特徴とする、アルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法が提供される。
【0034】
本発明の方法において、アルコキシポリアルキレングリコールは、下記式(1)で示される化合物である。
【0035】
【化11】
Figure 0004628507
【0036】
上記式(1)において、R1 は、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜18の炭化水素基を表わし、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基などのアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基、ノニルフェニル基などのアルキルフェニル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;アルケニル基;アルキニル基などが挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びフェニル基が好ましい。また、R2 Oは、炭素原子数2〜18、好ましくは2〜8の直鎖若しくは枝分かれ鎖のオキシアルキレン基を表わし、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、及びオキシスチレン基などが挙げられ、これらのうち、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基であることが好ましい。この際、各R2 Oの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびR2 Oが2種以上の混合物の形態である場合には、各R2 Oの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよい。さらに、nはR2 O(オキシアルキレン基)の繰り返し単位の平均付加モル数を表わし、1〜300、好ましくは5〜200、より好ましくは8〜150の数である。
【0037】
本発明において、式(1)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送形態は、1種のものが単独で存在する形態であってもあるいは2種以上の混合物の形態で存在する形態であってもよい。また、式(1)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールが2種以上の混合物の形態で存在する場合には、その存在形態は特に制限されるものではなく、R1 、R2 Oまたはnの少なくともいずれか1つが異なる2種以上の混合物での使用形態であればよいが、好ましくは、▲1▼R1 がメチル基とブチル基の2種で構成されている場合、▲2▼R2 Oがオキシエチレン基とオキシプロピレン基の2種で構成されている場合、▲3▼nが1〜10のものと11〜100のものの2種で構成されている場合、および▲1▼〜▲3▼を適宜組み合わせたもの等が挙げられる。
【0038】
本発明において、アルコキシポリアルキレングリコールが不活性ガスで置換された雰囲気下で貯蔵・移送される場合の不活性ガスとしては、特に制限されないが、窒素ガス、ヘリウムガスおよびアルゴンガスなどが挙げられ、これらのうち、コストや取り扱いのしやすさを考慮すると、窒素ガスおよびヘリウムガス、特に、窒素ガスが好ましく使用される。
【0039】
また、本発明において、アルコキシポリアルキレングリコールが不活性ガスで置換された雰囲気下で貯蔵・移送される場合には、容器内の空気が完全に不活性ガスで置換された雰囲気下でアルコキシポリアルキレングリコールを貯蔵・移送することが好ましいことはいうまでもないが、容器内の空気が、容器内の空気の全容積に対して、容積比で、通常、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上、不活性ガスで置換されることが好ましい。この際、不活性ガスの置換率が70%未満であると、容器内の空気が十分不活性ガスで置換されず、過酸化物の生成やその後のエステル化反応中のゲルの形成が有効に抑制されず、好ましくない。
【0040】
また、本発明において、アルコキシポリアルキレングリコールがラジカル捕捉剤を添加した雰囲気中で貯蔵・移送される場合に使用されるラジカル捕捉剤としては、t−ブチルヒドロキシトルエン(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(2,6-di-t-butyl-p-cresol) (以下、単に「BHT」と称することもある)、α,α−ジフェニル−β−ピクリルヒドラジル、N,N,N’,N’−テトラエチル−p−フェニレンジアミン、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、p,p’−ジフルオルジフェニルアミノ、クロルアニル、ヨウ素、及び塩化鉄(III)などが挙げられる。これらのうち、t−ブチルヒドロキシトルエンが本発明で好ましく使用される。
【0041】
また、上記実施態様におけるラジカル捕捉剤の添加量は、貯蔵・移送期間中の容器内の過酸化物の生成および/またはその後のエステル反応中のゲルの形成を有効に抑制する量であれば特に制限されないが、通常、アルコキシポリアルキレングリコールの量に対して、10〜1500ppm、好ましくは100〜1200ppm、より好ましくは200〜1000ppmの範囲内である。この際、ラジカル捕捉剤の添加量が10ppm未満であると、ラジカル捕捉剤の添加による効果が不充分であり、また、過酸化物の生成やその後のエステル化反応中のゲルの形成が有効に抑制されず、好ましくない。これに対して、ラジカル捕捉剤の添加量が1500ppmを超えると、過剰の添加に見合う効果が得られず、やはり好ましくない。
【0042】
また、本発明において、アルコキシポリアルキレングリコールは、不活性ガスで置換された雰囲気下であるいはラジカル捕捉剤を添加した雰囲気中で、十分安定した状態で貯蔵・移送可能であるが、必要であれば、これらを組み合わせた状態で、すなわち、不活性ガスで置換しかつラジカル捕捉剤を添加した雰囲気中でアルコキシポリアルキレングリコールを貯蔵・移送してもよい。
【0043】
本発明の第二の概念によると、上記第一の概念によるアルコキシポリアルキレングリコール(以下、単にアルコキシポリアルキレングリコールち称する)と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応を行い、式(3):
【0044】
【化12】
Figure 0004628507
【0045】
(ただし、式中、R1 、R2 およびnは前記のとおりであり、およびR3 は水素原子またはメチル基を表わす)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルを得、このようにして得られたアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(塩)及び必要であれば該アルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸(塩)と共重合可能な単量体を重合することからなるセメント分散剤に使用される重合体の製造方法が提供される。上記方法によって、エステル化反応の原料として使用されるアルコキシポリアルキレングリコールが過酸化物が生成することなく長期間安定して貯蔵・移送可能であるため、長期間貯蔵・移送したアルコキシポリアルキレングリコールを用いた場合であっても、エステル化反応終了後に形成したゲルを濾過などによって除去する工程を必要とすることなく、重合反応に直接供することができ、経済的な観点から非常に好ましい。
【0046】
上記概念の製造方法を、エステル化反応及び重合反応に分けて、以下に詳細に説明する。
【0047】
(I)エステル化反応
上記概念によるアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応は、上記第一の概念によるアルコキシポリアルキレングリコールを原料として使用する以外は、特に制限されることなく従来公知の方法が使用される。具体的には、特公昭59−18,338号公報、特開平9−86,990号公報や特開平9−286,645号公報に記載の方法などの公知の方法と同様にして、または、必要であれば、脱水溶剤、酸触媒や重合禁止剤の存在下における、アルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応が挙げられるが、本発明において特に好適なエステル化工程の実施の形態について、以下に説明する。
【0048】
まず、反応系(反応槽)に、原料としての上記第一の概念によるアルコキシポリアルキレングリコール及び(メタ)アクリル酸、脱水溶剤、酸触媒及び重合禁止剤を仕込み、これら混合物を所定温度で所定のエステル化率になるまで、エステル化反応を行う。
【0049】
上記エステル反応に使用することのできる(メタ)アクリル酸は、アクリル酸およびメタクリル酸を、それぞれ単独で使用しても、あるいは混合して使用してもよく、その混合比率に関しても任意の範囲を採用することができる。
【0050】
エステル化反応で使用される上記原料の混合比率は、化学量論的には1:1(モル比)であるが、実際には、アルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応が効率良く進行する範囲であれば特に制限されるものではないが、通常、一方の原料を過剰に使用してエステル化反応を速めたり、目的のエステル化物の精製面からは、蒸留留去し易いより低沸点の原料を過剰に使用する。また、本発明では、エステル化反応時に反応生成水と脱水溶媒を共沸する際に、低沸点の(メタ)アクリル酸の一部も留出され、反応系外に持ち出されるため、アルコキシポリアルキレングリコールの使用量(仕込み量)に対して(メタ)アクリル酸の使用量(仕込み量)を化学量論的に算出される量よりも過剰に加えることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸の使用量は、通常、アルコキシポリアルキレングリコール1モルに対して、1.0〜30モル、好ましくは1.2〜10モルである。(メタ)アクリル酸の使用量がアルコキシポリアルキレングリコール1モルに対して1.0モル未満であると、エステル化反応が円滑に進行せず、目的とするエステル化物の収率が不十分であり、逆に30モルを超えると、添加に見合う収率の向上が認められず、不経済であり、やはり好ましくない。
【0051】
上記エステル化反応は、酸触媒若しくは塩基性触媒の存在下のいずれかで行われてもよいが、反応を速やかに進行させることを考慮すると、酸触媒の存在下で行われることが望ましい。この際、エステル化反応に使用することのできる酸触媒としては、例えば、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸水和物、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸水和物、トリフルオロメタンスルホン酸、「Nafion」レジン、「Amberlyst 15」レジン、リンタングステン酸、リンタングステン酸水和物、塩酸などが挙げられ、これらのうち、硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸水和物、メタンスルホン酸などが挙げられる。これらのうち、製造されるエステル化物の品質および性能の低下の原因となる不純物のジエステルの生成原因であるアルコキシポリアルキレングリコール原料の切断の起こりにくさを考慮すると、パラトルエンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸水和物が特に好ましく使用される。
【0052】
上記酸触媒の使用量としては、所望の触媒作用を有効に発現する事ができる範囲であれば特に制限されるものではないが、通常、0.4ミリ当量/g以下、好ましくは0.36〜0.01ミリ当量/g、より好ましくは0.32〜0.05ミリ当量/gの範囲内である。この際、酸触媒の使用量が0.4ミリ当量/gを超えると、エステル化反応時に反応系内で形成されるジエステルの量が増加し、エステル化反応により得られるエステル化物を用いて合成されるセメント分散剤等の用途性能、例えば、セメント分散能等が低下する。
【0053】
本明細書において、酸触媒の使用量(ミリ当量/g)は、反応に使用した酸触媒のH+ の当量数(ミリ当量)を、原料であるアルコキシポリアルキレングリコール及び(メタ)アクリル酸の合計仕込み量(g)で割った値で表される。より具体的には下記式によって算出される値である。
【0054】
【数1】
Figure 0004628507
【0055】
上記酸触媒の反応系への添加のし方は、一括、連続、または順次行ってもよいが、作業性の面からは、反応槽に、原料と共に一括で仕込むのが好ましい。
【0056】
また、上記概念によるエステル化反応は、重合禁止剤の存在下で行われることが好ましい。重合禁止剤を用いることにより、原料のアルコキシポリアルキレングリコール及び(メタ)アクリル酸、生成物のエステル化物またはこれらの混合物の重合を防止することできる。上記エステル化反応において使用できる重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤が使用できるものであり、特に制限されるものではなく、例えば、フェノチアジン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、ジ−p−フルオロフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジル、N−(3−N−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ベンゾキノン、ハイドロキノン、メトキノン、ブチルカテコール、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、ジチオベンゾイルジスルフィド、クペロン、塩化銅(II)などが挙げられる。これらのうち、脱水溶剤や生成水の溶解性の理由から、フェノチアジン、ハイドロキノン、メトキノンが好ましく使用される。これらの重合禁止剤は、単独で使用してもよいほか、2種以上を混合して使用することもできる。とりわけ、フェノチアジン、ハイドロキノンやメトキノンが、上記したように、エステル化反応終了後に、脱水溶剤を水との共沸により留去する際にも、弱いながらも重合活性のある水溶性重合禁止剤を用いなくても極めて有効に重合禁止能を発揮することができ、高分子量体の形成を効果的に抑えることができる点から極めて有用である。
【0057】
上記重合禁止剤の使用量は、原料としてのアルコキシポリアルキレングリコール及び(メタ)アクリル酸の合計仕込量に対して、0.001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%の範囲内である。重合禁止剤の使用量が0.001重量%未満であると、重合禁止能の発現が十分でなく、原料としてのアルコキシポリアルキレングリコール、(メタ)アクリル酸、生成物としてのエステル化物またはこれらの混合物の重合を有効に防止しにくくなるため好ましくなく、重合禁止剤の使用量が1重量%を超えると、生成物であるエステル化物中に残留する重合禁止剤量が増えるため、品質及び性能面から好ましくなく、また、過剰に添加することに見合うさらなる効果も得られず、経済的な観点からも好ましくない。
【0058】
さらに、上記概念によるエステル化反応は、脱水溶剤中で、行われることが好ましい。本明細書中、脱水溶剤とは、水と共沸する溶剤として規定されるものである。すなわち、脱水溶剤を用いることにより、エステル化反応により生成する反応生成水を効率よく共沸させることができるものである。脱水溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジオキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、イソプロピルエーテルなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは2種以上のものを混合溶剤として使用することができる。これらのうち水との共沸温度が150℃以下、より好ましくは60〜90℃の範囲であるものが好ましく、具体的には、シクロヘキサン、トルエン、ジオキサン、ベンゼン、イソプロピルエーテル、ヘキサン、ヘプタンなどが挙げられる。水との共沸温度が150℃を超える場合には、取り扱いの面(反応時の反応系内の温度管理および共沸物の凝縮液化処理などの制御等を含む)から好ましくない。
【0059】
上記脱水溶剤は、反応系外に反応生成水と共沸させ、反応生成水を凝縮液化して分離除去しながら還流させることが望ましく、この際、脱水溶剤の使用量は、原料としてのアルコキシポリアルキレングリコール及び(メタ)アクリル酸の合計仕込量に対して、1〜100重量%、好ましくは2〜50重量%の範囲内である。脱水溶剤の使用量が1重量%未満であると、エステル化反応中に生成する反応生成水を共沸により反応系外に十分除去できず、エステル化の平衡反応が進行しにくくなるため、好ましくなく、脱水溶剤の使用量が100重量%を超えると、過剰に添加することに見合う効果が得られず、また、反応温度を一定に維持するために多くの熱量が必要となり、経済的な観点から好ましくない。
【0060】
本発明において、エステル化反応は、回分または連続いずれによっても行ないうるが、回分式で行うことが好ましい。
【0061】
また、エステル化反応における反応条件は、エステル化反応が円滑に進行する条件であればよいが、例えば、反応温度は30〜140℃、好ましくは60〜130℃、さらに好ましくは90〜125℃、特に好ましくは100〜120℃である(なお、これらは、本発明の一般的な(広い意味での)エステル化反応の条件であり、上述した脱水溶剤を反応系外に反応生成水と共沸させ、反応生成水を凝縮液化して分離除去しながら還流させる場合は、その1例であり、これらの範囲内に含まれるが、完全に一致するものではない。)。反応温度が30℃未満では、脱水溶剤の還流が遅くて脱水に時間がかかるほか、エステル化反応が進行しづらく、好ましくない。逆に、反応温度が140℃を超えると、原料であるアルコキシポリアルキレングリコールの切断によって過大量のジエステルが生成してセメント分散性能のほか、各種用途における分散性能や増粘特性が低下するほか、原料の重合が生じたり、共沸物への原料の混入量が増すなど、生成物であるエステル化物の性能及び品質の劣化が生じるなど、やはり好ましくない。また、反応時間は、後述するようにエステル化率が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%に達するまでであるが、通常、1〜50時間、好ましくは3〜40時間である。さらに、本発明によるエステル化反応は、常圧下または減圧下いずれで行ってもよいが、設備面から、常圧下で行うことが望ましい。
【0062】
本発明によるエステル化反応におけるエステル化率は、70%以上、より好ましくは70〜99%、最も好ましくは80〜98%であることが好ましい。エステル化率が70%未満であると、製造されるエステル化物の収率が不十分であり、これを原料として得られるセメント分散剤等の用途性能、例えば、セメント分散能等が低下する。なお、本明細書において使用される「エステル化率」は、エステル化の出発材料であるアルコキシポリアルキレングリコールの仕込み時及びエステル化反応終了時の量を下記表1に示される測定条件で液体クロマトグラフィー(LC)によってLCの面積として測定して、アルコキシポリアルキレングリコールの減少量を求め、さらにこの減少量を仕込み時のアルコキシポリアル
キレングリコールの量で割ることによって算出された値(%)とし、より具体的には、下記式により求められた値を意味する。
【0063】
【数2】
Figure 0004628507
【0064】
・エステル化率測定条件
Figure 0004628507
なお、上記の式によりエステル化率を決定しているため、エステル化率が100%を越えることはない。従って、本発明においては、エステル化率が規定以上に達した時点でエステル化反応が終了したものとする。
【0065】
以上、エステル化工程について説明してきたが、上記(I)のエステル化反応を酸触媒の存在下で行う場合には、本工程と以下に詳述する重合反応の間に、酸触媒または酸触媒の全部と(メタ)アクリル酸の一部を中和する部分中和工程、および部分中和工程後、反応液から脱水溶剤を水と共沸して留去する溶剤除去工程を行うことが望ましい。このため、以下に、上記部分中和工程及び溶剤除去工程について説明する。
【0066】
(II)部分中和工程
本工程は、エステル化反応後に脱水溶剤を留去する工程で水を加えて共沸する場合、あるいはエステル化物を用いてさらに重合を行うために、エステル反応後に調整水を加えて生成されたエステル化物の水溶液を作製する場合に、酸触媒による加水分解が生じ、エステル化物の品質及び性能の低下を招くほか、加水分解により生じたもの(以下、単に加水分解生成物ともいう)がエステル化物中に残留し、当該エステル化物を用いてセメント分散剤に使用される重合体を合成する場合には、該加水分解生成物は、重合には関与しない不純物となり、重合率(ひいては生産性)が低下し、また重合体の品質や性能の劣化にもつながるという問題を解決するために、上記(I)のエステル化工程によるエステル化反応終了後、90℃以下で酸触媒をアルカリで中和することからなるものである。これにより、エステル化反応後の処理過程で、加水分解生成物を生じることもなく、高純度で高品質のエステル化物を得ることができる。
【0067】
(III)溶剤留去工程
本工程は、上記(I)で述べたように、エステル化反応を脱水溶剤中で行うため、上記(I)のエステル化工程によりエステル化反応を行った後に、反応液から脱水溶剤を留去するものである。さらに上記エステル化反応を酸触媒の存在下で行う場合には、上記(I)のエステル化工程によりエステル化反応を行った後に、上記(II)の部分中和工程により酸触媒、さらには(メタ)アクリル酸の一部を中和し、次いで、反応液から脱水溶剤を留去するものである。
【0068】
溶剤留去工程の好適な実施の形態につき、以下に説明する。
【0069】
本発明は、エステル化反応終了後(必要に応じて、部分中和処理を行い)、当該溶剤留去工程において、反応液から脱水溶剤を留去する際に、原料としてのアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸の全使用量に対して、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下、さらにより好ましくは300ppm以下の水溶性重合禁止剤を反応液に添加して、特に好ましくは添加せずに行うことを特徴とするものである。すなわち、本来的には重合を禁止する目的で添加されていた水溶性重合禁止剤を加えることで、この重合禁止剤が弱いながらも重合活性を有するために、意外にも、未反応の原料、生成物であるエステル化物またはこれらの混合物の重合を招き、高分子量体を形成していたことを見出すとともに、エステル化反応時に添加されていた重合禁止剤が、当該脱水溶剤の留去時にも有効に機能することを見出し、これら水溶性重合禁止剤を全く使用しなくとも高分子量体の発生を防止し得る事を見出したものである。したがって、水溶性重合禁止剤の使用量が、原料としてのアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸の全使用量に対して1000ppmを超える場合には、該水溶性重合禁止剤のもつ重合活性により、2.0面積%以上の高分子量体の発生を招き、これらを含むエステル化物を単量体成分として利用する場合には、得られる重合体を用いたセメント分散剤に影響を及ぼすため好ましくない。
【0070】
本溶剤留去工程では、重合禁止剤の存在下に、エステル化反応を行っているが、当該重合禁止剤が上述したようにエステル化反応後(さらには部分中和処理後)においても有効に機能するものである場合には、本溶剤留去工程において、系内の溶液中に、新たに重合禁止剤を補充する必要はないが、濃度の薄いアルカリ水溶液を用いて部分中和処理を行っている場合には、反応液中に比較的多くの水が存在している。そのため、例えば、エステル化反応を行う際に使用した重合禁止剤が水に難溶ないし不溶であり、エステル化反応後(さらには部分中和処理後)においてさほど有効に機能しえない場合に限り、未反応の原料やエステル化物が水に溶けて重合することがあるため、これを防止する観点から、水溶性重合禁止剤のもつ重合活性による重合作用と本来的に有する重合禁止能との関係から、重合活性以上に有効に重合禁止能を発現し得る範囲(上記に規定する範囲)において、反応液に水溶性重合禁止剤を加えてから下記に規定する温度まで昇温し、脱水溶剤を水との共沸により留去することが望ましいものである。
【0071】
ここで、使用することのできる水溶性重合禁止剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、カテコール及びこれらの誘導体(例えば、p−t−ブチルカテコール等)、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。なかでも、比較的重合活性が低いとの理由から、ハイドロキノン、メトキノンが好ましい。また、これらの水溶性重合禁止剤は、1種若しくは2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
さらに、本発明において、エステル化反応終了後(必要に応じて、部分中和処理を行い)、当該溶剤留去工程において、反応液から脱水溶剤を留去する際に、該反応液に対して不活性ガスを接触させることにより、反応液中に溶存する脱水溶剤を該不活性ガスによって極めて効率よく追い出すことができ、得られるエステル化物に溶剤臭が発生するのを防止してもよい。
【0073】
ここで、本発明による重合反応を以下に詳細に説明する。
【0074】
(IV)重合反応
本発明による重合反応は、本発明の上記目的の範囲を逸脱しない限りは、上記工程によって得られた式(3)のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル単量体(以下、単にエステル化物単量体とも言う)を単量体成分として用いて得られたものであること以外には、特に制限されるものではなく、例えば、特公昭59−18338号公報、特開平9−86990号公報および特開平9−286645号公報に記載の方法などの公知の方法と同様にして、エステル化物単量体、(メタ)アクリル酸(塩)、および必要によりこれらのエステル化物の単量体成分と共重合可能な単量体(以下、単に他の単量体とも言う)を重合反応に供することができるが、これらに限定されるものではなく、詳細な説明において例示したそれぞれの公報に記載の重合方法が適用できる事はもちろんのこと、これら以外にも従来既知の各種重合方法を適用できることはいうまでもない。
【0075】
具体的には、例えば、本発明による重合体は、エステル化物単量体を、(メタ)アクリル酸(塩)単量体および必要によりこれらの単量体と共重合可能な単量体とともに重合反応することにより得ることができる。この際、エステル化物単量体、(メタ)アクリル酸(塩)、および必要により他の単量体の混合比率は、目的とする重合体が得られる比であれば特に制限されるものではないが、具体的には、エステル化物単量体の混合比は、全原料の重量に対して、好ましくは99〜5重量%、より好ましくは95〜10重量%であり、(メタ)アクリル酸(塩)の混合比は、全原料の重量に対して、好ましくは95〜1重量%、より好ましくは90〜5重量%であり、および他の単量体の混合比は、全原料の重量に対して、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜10重量%である。
【0076】
また、本重合工程において、エステル化物単量体における高分子量体の含有率は、2.0面積%以下であることが好ましい。なお、上記高分子量体の含有率は、液体クロマトグラム測定法により算出される面積比に基づいて算出されるものであり、具体的には、下記液体クロマトグラム測定条件により測定したグラフにおいて、目的とするエステル化物の測定ピーク部分の面積に対して、目的とするエステル化物の測定ピーク部分以外に検出された高分子量体の測定ピーク部分の面積の比率を表すものである。
【0077】
<液体クロマトグラム測定条件>
Figure 0004628507
【0078】
流速 :1.0ml/min
ここで、所望の重合体を得るには、重合開始剤を用いて前記エステル化物単量体成分等を共重合させれば良い。共重合は、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行なうことができる。
【0079】
溶媒中での重合は、回分式でも連続式でも行なうことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;等が挙げられる。原料のエステル化物の単量体成分および得られる共重合体の溶解性ならびに該共重合体の使用時の便からは、水および炭素原子数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。その場合、炭素原子数1〜4の低級アルコールの中でもメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が特に有効である。
【0080】
水媒体中で重合を行なう時は、重合開始剤としてアンモニウムまたはアルカリ金属の過硫酸塩あるいは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物あるいはケトン化合物を溶媒とする重合には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等の芳香族アゾ化合物等が重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、通常0〜120℃の範囲内で行なわれる。
【0081】
塊状重合は、重合開始剤としてベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物等を用い、50〜200℃の温度範囲内で行なわれる。
【0082】
また、得られる重合体の分子量調節のために、チオール系連鎖移動剤を併用することもできる。この際に用いられるチオール系連鎖移動剤は、一般式HS−R5 −Eg (ただし、式中R5 は炭素原子数1〜2のアルキル基を表わし、Eは−OH、−COOM2 、−COOR6 または−SO3 2 基を表わし、M2 は水素、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表わし、R6 は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表わす。)で表わされ、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0083】
このようにして得られた重合体は、そのままでもセメント分散剤の主成分として用いられるが、必要に応じて、さらにアルカリ性物質で中和して得られる重合体塩をセメント分散剤等の各種用途の主成分として用いても良い。このようなアルカリ性物質としては、一価金属および二価金属の水酸化物、塩化物および炭素塩等の無機物;アンモニア;有機アミン等が好ましいものとして挙げられる。
【0084】
本発明による重合工程において、使用することのできる上記式(3)で示されるエステル化物単量体成分は、1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。特に、2種以上を混合して使用する場合には、目的とする特性(機能・性能等)を発現させる事ができるように、発現特性の異なる種類を適当に組み合わせて用いる事が望ましく、例えば、以下の2種の組み合わせが有利である。
【0085】
すなわち、式(3)のエステル化物において、平均付加モル数nが1〜97、好ましくは1〜10の整数を表わす。)で示される第1のエステル化物(a1 )と、平均付加モル数nが4〜100、好ましくは11〜100の整数を表わす。)で示される第2のエステル化物(a2 )との混合物(ただし、第2のエステル化物(a2 )の平均付加モル数の方が第1のエステル化物(a1 )の平均付加モル数よりも3以上大きいものとする)の組み合わせが有利である。
【0086】
このような第1のエステル化物(a1 )と第2のエステル化物(a2 )との混合物を製造する方法は、当該エステル化物の製造方法で説明した通りであり、これらの第1および第2のエステル化物(a1 )および(a2 )を別々にエステル化反応により製造してもよいし、それぞれ相当するアルコキシポリアルキレングリコールの混合物と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により製造してもよく、特に後者の方法は工業的に安価の製造方法を提供できる。
【0087】
この場合、第1のエステル化物(a1 )と第2のエステル化物(a2 )との重量比は5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10である。
【0088】
第1のエステル化物(a1 )としては、例えば、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノ(エタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシ(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が例示される。第1のエステル化物(a1 )は、その側鎖の短鎖アルコールに疎水性を有することが重要である。
【0089】
また、共重合のし易さの面からは、側鎖はエチレングリコール単位が多く含まれているのが好ましい。したがって、(a1 )としては、平均付加モル数が1〜97、好ましくは1〜10の(アルコキシ)(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0090】
第2のエステル化物(a2 )としては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが例示される。
【0091】
高い減水性を得るためには、第2のエステル化物(a2 )の平均付加モル数が4〜100のアルコール鎖による立体反発と親水性でセメント粒子を分散させることが重要である。そのためには、ポリアルキレングリコール鎖にはオキシエチレン基が多く導入されることが好ましく、ポリエチレングリコール鎖が最も好ましい。よって、第2のエステル化物(a2 )のアルキレングリコール鎖の平均付加モル数nは、4〜100、好ましくは11〜100である。
【0092】
本発明の重合体の製造方法において、使用することのできる上記(メタ)アクリル酸(塩)単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸ならびにこれらの酸の一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0093】
また、本発明による重合工程において、使用することのできるエステル化物単量体および(メタ)アクリル酸(塩)単量体の単量体成分と共重合可能な単量体の例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;これらのジカルボン酸類とHO(R11O)r 12(ただし、R11Oは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよく、rはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり1から100の整数を表わし、R12は水素または炭素原子数1〜22、好ましくは1〜15のアルキル基を表わす。)で表わされるアルコールとのモノエステルあるいはジエステル類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類およびそれらの一価金属塩、二価金属塩、アルモニウム塩、有機アミン塩類;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル類;炭素原子数1〜18、好ましくは1〜15の脂肪族アルコールあるいはベンジルアルコール等のフェニル基含有アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0094】
このようにして得られた重合体(上記エステル化物単量体を1種、若しくは2種以上を用いて重合してなるもののいずれも含まれるほか、必要に応じて、さらにアルカリ性物質で中和して得られる重合体塩を含む)は、重量平均分子量が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリエチレングリコール換算で500〜500000、特に5000〜300000の範囲とすることが好ましい。また、重合体の重量平均分子量からピークトップ分子量を差し引いた値は、0〜8000であることが必要であり、好ましくは0〜7000である。重量平均分子量が500未満では、セメント分散剤の減水性能が低下するために好ましくない。一方、500000を越える分子量では、セメント分散剤の減水性能、スランプロス防止能が低下するために好ましくない。また、重量平均分子量からピークトップ分子量を差し引いた値が8000を越える場合には、得られたセメント分散剤のスランプ保持性能が低下するために好ましくない。
【0095】
第三の概念によると、本発明の方法によって製造される重合体を有してなるセメント分散剤;すなわち、容器内が不活性ガスで置換されたおよび/または容器中にラジカル捕捉剤が添加された雰囲気中で貯蔵・移送された式(1)のアルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応を行い、さらに当該エステル化反応によって得られた式(3)のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(塩)及び必要であればこのアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸(塩)と共重合可能な単量体を重合することによって得られる重合体を含むセメント分散剤が提供される。
【0096】
上記概念において、セメント分散剤は、上記に規定する重合体成分の他に、従来公知のナフタレン系セメント分散剤、アミノスルホン酸系セメント分散剤、ポリカルボン酸系セメント分散剤およびリグニン系セメント分散剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種のセメント分散剤がさらに配合されてもよい。すなわち、本発明のセメント分散剤では、上記重合体単独で使用しても良いし、必要に応じて、さらに付加価値を持たせるべく、上記および下記に示す各種成分を配合する事ができるものであり、これらの配合組成については、目的とする付加的機能の有無により大きく異なるものであり、上記重合体成分を100重量%(全量)ないし主成分とするものから、上記重合体成分を高付加価値成分として、従来のセメント分散剤に適量加える態様まで様々であり、一義的に規定することはできない。
【0097】
また、本発明のセメント分散剤には、従来公知のセメント分散剤の他に、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、急結剤、水溶性高分子物質、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、消泡剤等を配合することができる。
【0098】
このようにして得られる重合体を主成分とするセメント分散剤は、少なくともセメントおよび水よりなるセメント組成物に配合することによりセメントの分散を促進する。
【0099】
本発明のセメント分散剤は、ポルトランドセメント、ビーライト高含有セメント、アルミナセメント、各種混合セメント等の水硬セメント、あるいは、石膏などのセメント以外の水硬材料などに用いることができる。
【0100】
本発明のセメント分散剤は、上記に記載の作用効果を奏するため、従来のセメント分散剤に比較して少量の添加でも優れた効果を発揮する。たとえば水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント重量の0.001〜5%、好ましくは0.01〜1%となる比率の量を練り混ぜの際に添加すればよい。この添加により高減水率の達成、スランプロス防止性能の向上、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上などの各種の好ましい諸効果がもたらされる。添加量が0.001%未満では性能的に不十分であり、逆に5%を越える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。
【0101】
本発明のセメント分散剤は、上述のような特定の重量平均分子量を有し、かつ重量平均分子量からピークトップ分子量を差し引いた値が特定の値を有する重合体を主成分とするセメント分散剤であることが望ましい。
【0102】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0103】
実施例1
温度計及び撹拌機を備えたオートクレーブに、メタノール32g及び水酸化ナトリウム0.23gを仕込み、容器内を十分に窒素ガスで置換し、この混合液の温度を70℃まで昇温した。次に、このオートクレーブに、エチレンオキシド132gを1時間かけて添加した後、さらに1時間、反応温度を70℃に維持して、エチレンオキシドのメタノールへの付加反応を完結させ、メタノール1モルに対してエチレンオキシド3モルが付加したメトキシポリ(n=3)エチレングリコール[CH3 O(CH2 CH2 O)3 H]を得た。続いて、この溶液の温度を155℃にまで昇温し、さらにエチレンオキシド308gをオートクレーブ中に添加した後、さらに1時間、反応温度を155℃に維持して、エチレンオキシドのメトキシポリ(n=3)エチレングリコールへの付加反応を完結させ、アルコキシポリアルキレングリコール(1)としての、メトキシポリ(n=10)エチレングリコール[CH3 O(CH2 CH2 O)10H]を得た。
【0104】
このようにして得れらたアルコキシポリアルキレングリコール(1)の付加反応直後の過酸化物価を以下のようにして測定したところ、0.2ミリ当量/gであった。
【0105】
<過酸化物価の測定方法>
アルコキシポリアルキレングリコール(1)10g、クロロホルム35ml及び酢酸35mlをフラスコに入れ、フラスコ内を窒素ガスで置換しながら、飽和ヨウ化カリウム1mlを加えて攪拌した後、20分間放置して、褐色の試験溶液を調製した。次に、この試験溶液に、0.01規定のチオ硫酸ナトリウムを、上記試験溶液の褐色が消えるまで滴下し、この際のチオ硫酸ナトリウムの滴定量(ml)を測定し、下記式に従って、過酸化物価を算出した。なお、ブランク値(ml)は、試験溶液の代わりに、アルコキシポリアルキレングリコール(1)を添加しない試験溶液を用いた以外は上記と同様の操作をすることによって得た。
【0106】
【数3】
Figure 0004628507
【0107】
実施例2
実施例1で得られたアルコキシポリアルキレングリコール(1)1000gを、内部が完全に窒素ガスで置換された密栓可能なガラスビン(内容積:2リットル)内に、60℃で、1週間保存し、これをアルコキシポリアルキレングリコール(2)とした。所定期間経過後、このアルコキシポリアルキレングリコール(2)について、実施例1と同様にして、過酸化物価を測定したところ、0.2ミリ当量/gであった。
【0108】
実施例3
実施例1で得られたアルコキシポリアルキレングリコール(1)1000gを、ラジカル捕捉剤をアルコキシポリアルキレングリコールの量に対して0.1(重量または容積)%添加した密栓可能なガラスビン(内容積:2リットル)内に、60℃で、1週間保存し、これをアルコキシポリアルキレングリコール(3)とした。所定期間経過後、このアルコキシポリアルキレングリコール(3)について、実施例1と同様にして、過酸化物価を測定したところ、0.2ミリ当量/gであった。
【0109】
比較例1
実施例1で得られたアルコキシポリアルキレングリコール(1)1000gを密栓可能なガラスビン(内容積:2リットル)内に仕込み、容器内を窒素ガスで置換せずにそのまま空気雰囲気中で、60℃で、1週間保存し、これをアルコキシポリアルキレングリコール(4)とした。所定期間経過後、このアルコキシポリアルキレングリコール(4)について、実施例1と同様にして、過酸化物価を測定したところ、0.8ミリ当量/gであった。
【0110】
実施例2、3及び比較例1で得られた結果を下記表1に要約した。
【0111】
【表1】
Figure 0004628507
【0112】
表1に示される結果から、アルコキシポリアルキレングリコール(1)を窒素雰囲気下(実施例2)またはBHTが添加された雰囲気下(実施例3)で貯蔵する際には、1週間たっても過酸化物価は変化しないが、アルコキシポリアルキレングリコール(1)を空気中で貯蔵すると、1週間後には過酸化物価が0.2ミリ当量/gから0.8ミリ当量/gへと増加していることが示された。
【0113】
実施例4
温度計、攪拌機、生成水分離器及び環流冷却管を備えたガラス製反応容器(内容積:3リットル)に、実施例2で得られたアルコキシポリアルキレングリコール(2)1346g、メタクリル酸654g、脱水溶剤としてのベンゼン660g、酸触媒としての硫酸20g及び重合禁止剤としてのヒドロキノン0.5gを仕込み、混合溶液を攪拌しながら温度を90℃にまで昇温してエステル化反応を開始した。52mlの生成水が留去されたのを確認した後、30%水酸化ナトリウム水溶液118g及び水370gを加えて、ベンゼンを水との共沸によって追い出し、調整水を加えて、80%単量体混合物水溶液(1)を得た。なお、上記エステル化反応中に、ゲルは形成しなかった。
【0114】
次に、温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管及び環流冷却管を備えたガラス製反応容器(内容積:3リットル)に、水1900gを仕込み、攪拌しながら、反応容器内を窒素ガスで置換し、窒素雰囲気下で水の温度を95℃まで加熱した。さらに、上記で得られた80%単量体混合物水溶液(1)1000gに水1000gを加えた溶液を4時間かけて反応容器内に滴下した後、さらに過硫酸アンモニウム13.5gを水86.5gに溶解した水溶液を5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間引き続いて反応温度を95℃に維持して重合反応を完結させ、反応溶液を30%水酸化ナトリウム水溶液でpH7まで中和して、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算;以下、同様とする)33,000の本発明の重合体水溶液(1)を得た。
【0115】
実施例5
アルコキシポリアルキレングリコール(2)の代わりに、実施例2で得られたアルコキシポリアルキレングリコール(3)を使用する以外は、実施例4と同様にしてエステル化反応を行い、80%単量体混合物水溶液(2)を得た。なお、エステル化反応中に、ゲルは形成しなかった。
【0116】
次に、この80%単量体混合物水溶液(2)を使用する以外は、実施例4と同様にして重合反応を完結し、中和を行うことによって、重量平均分子量33,000の本発明の重合体水溶液(2)を得た。
【0117】
比較例2
アルコキシポリアルキレングリコール(2)の代わりに、比較例1で得られたアルコキシポリアルキレングリコール(4)を使用する以外は、実施例4と同様にしてエステル化反応を開始したところ、しばらくして攪拌翼や攪拌棒、ならびに温度計に多量のゲルが付着したため、エステル化反応を中断した。この反応混合物を濾過することによって、ゲルを除去することによって、メトキシポリ(n=10)エチレングリコールモノメタクリレートを単離した。
【0118】
次に、このようにして得られたメトキシポリ(n=10)エチレングリコールモノメタクリレート1000gにメタクリル酸265gを加えたものを実施例4における80%単量体混合物水溶液(1)の代わりに使用する以外は、実施例4と同様にして重合反応を完結し、中和を行うことによって、重量平均分子量33,000の比較用重合体水溶液(1)を得た。
【0119】
実施例4、5及び比較例2で得られた結果を下記表2に要約した。
【0120】
【表2】
Figure 0004628507
【0121】
表2に示される結果から、窒素雰囲気下で1週間保存されたアルコキシポリアルキレングリコール(2)またはBHTが添加された雰囲気下で1週間保存されたアルコキシポリアルキレングリコール(3)を用いて、エステル化反応を行うと、ゲルはまったく生成しないのに対して、空気中で1週間保存されたアルコキシポリアルキレングリコール(4)を用いて、エステル化反応を行うと、ゲルが多量に生成することが示される。また、アルコキシポリアルキレングリコール(2)やアルコキシポリアルキレングリコール(3)を用いたエステル化反応により得られた単量体混合物水溶液は何ら予備処理を行うことなくそのまま重合反応に供することができるが、アルコキシポリアルキレングリコール(4)を用いたエステル化反応により得られた単量体混合物水溶液を使用する場合には、重合反応を行う前に、予め生成したゲルを除去するという余分な工程が必要であることが分かった。
【0122】
【発明の効果】
上述したように、本発明のアルコキシポリアルキレングリコールの貯蔵・移送方法は、式(1)で示されるアルコキシポリアルキレングリコールを容器内が不活性ガスで置換されたおよび/または容器中にラジカル捕捉剤が添加された雰囲気中で貯蔵・移送することを特徴とするものである。したがって、本発明の方法によると、アルコキシポリアルキレングリコールは安定した状態で長期間貯蔵・移送されうるため、アルコキシポリアルキレングリコールの製造場所とこれを用いてセメント分散剤を製造する場所を同じ場所にする必要がなく、また、アルコキシポリアルキレングリコールの作り貯めも可能になった。
【0123】
また、長期間貯蔵されても、アルコキシポリアルキレングリコール中に過酸化物やゲルが形成しないので、これを用いてエステル化反応を行ったエステル化物は何ら処理を施すことなくそのまま重合反応に供することができ、工業上および経済上の観点から非常に好ましい。

Claims (5)

  1. 式(1):
    Figure 0004628507
    (ただし、Rはメチル基を表わし、ROは炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基を表わし、この際、各ROの繰り返し単位は同一であってもあるいは異なっていてもよく、およびROが2種以上の混合物の形態である場合には各ROの繰り返し単位はブロック状に付加していてもあるいはランダム状に付加していてもよく、ならびにnはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表わし、1〜300の数である)で示されるメトキシポリアルキレングリコールを、容器内が、容器内の空気の全容積に対して、90%以上、不活性ガスで置換された雰囲気および/または容器中にラジカル捕捉剤が、メトキシポリアルキレングリコールの量に対して、100〜1200ppmの量添加された雰囲気中で貯蔵・移送し、
    該メトキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応を行い、式(3):
    Figure 0004628507
    (ただし、式中、R、Rおよびnは前記のとおりであり、およびRは水素原子またはメチル基を表わす)で示されるメトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルを得、該メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸(塩)を重合することを特徴とする、セメント分散剤に使用される重合体の製造方法。
  2. 該ラジカル捕捉剤がt−ブチルヒドロキシトルエンである、請求項1に記載の方法。
  3. 該エステル化反応は、60〜130℃の温度で行なわれる、請求項1または2に記載の方法。
  4. 該エステル化反応は、0.36〜0.01ミリ当量/gの酸触媒の存在下で行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 該メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル及び(メタ)アクリル酸(塩)にさらに該メトキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸(塩)と共重合可能な単量体を添加して重合する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
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