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JP4623029B2 - 印刷制御装置、画像処理装置 - Google Patents

印刷制御装置、画像処理装置 Download PDF

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Description

この発明は、印刷媒体上に各色インクドットを形成して高画質のカラー画像を印刷する技術に関する。
印刷媒体上に各色のインクドットを形成してカラー画像を印刷するカラープリンタが、コンピュータなどから出力されるカラー画像の出力機器として広く使用されている。かかるカラープリンタは複数色のインク、例えば、シアン色,マゼンタ色,イエロ色を含む限られた種類のインクドットを混在させて形成することで、多彩な色彩のカラー画像を印刷することができる。
こうしたカラープリンタで赤色の画像を印刷する場合には、マゼンタ色のインクドットとイエロ色のインクドットとを混在させながら画像を印刷する。こうすれば、視覚上でいわゆる減法混色が生じるので、赤色の色相を呈する画像を印刷することができる。同様に、マゼンタ色のインクドットとシアン色のインクドットとを混在させて形成すれば青色の画像を、シアン色のインクドットとイエロ色のインクドットとを混在させて形成すれば緑色の画像を、それぞれ印刷することができる。
更に、シアン色,マゼンタ色,イエロ色の3種類のインクドットを混在させて形成すれば、明度の低い(暗い)カラー画像を印刷することができる。例えば、明度の低い赤色の画像を印刷する場合は、赤色を印刷するためのマゼンタ色のインクドットおよびイエロ色のインクドットに加えて、シアン色のインクドットを僅かに混在させながら画像を印刷する。シアン色,マゼンタ色,イエロ色の各色インクドットをほぼ等量ずつ混在させて形成すると、減法混色によって視覚上では黒色を呈するので、マゼンタ色のインクドットとイエロ色のインクドットの中に僅かにシアン色のインクドットを形成することによって画像の明度を低下させることができる。画像の明度を更に低くする場合には、シアン色のインクドットの形成量を増やせばよい。このように、減法混色を利用して表現された黒色は、コンポジットブラックと呼ばれる。
一般に、印刷媒体には、インクの滲み等による画質の悪化を回避する観点から、単位面積当たりに形成するインクドットの総量に所定の目安が設けられている。本明細書では、形成可能なインクドット総量の目安の値をインクデューティ制限値と呼ぶ。コンポジットブラックを用いて画像の明度を低下させるためには3種類のインクドットを形成しなければならないので、インクデューティ制限値を越えてしまい画質の悪化を起こし易い。そこで、カラープリンタに黒色のインクを備えておき、コンポジットブラックの代わりに黒色インクのインクドットを用いる技術が広く行われている。このように、コンポジットブラックを用いた表現を黒色インクによる表現に置き換える処理は、下色除去と呼ばれる。下色除去を行えば、3種類のインクドットを形成するところを黒色インクドットのみ形成すれば足りるので、単位面積当たりに形成するインクドットの総量をインクデューティ制限値以下に抑えることができる。また、一般的に黒色インクを使用することによってコンポジットブラックよりも暗い色を表現することが可能になることから、黒色インクを用いれば、画像のコントラストを上げて先鋭度を向上させることが可能となる。また、コンポジットブラックから黒色インクに置き換えることによって画像の色再現範囲が拡大して、より鮮やかな色の表現が可能になるといった新たな利点も得ることができる。
ここで、黒色インクのドットはたいへん目立ち易く、明度の高い画像中に形成するとドットが目立って画像の粒状性を悪化させるおそれがある。従って、このようなことのないように、適切に黒色インクのドットを形成させなければならない。特に、単位面積当たりのインク使用量が多くなりがちな明度の低い(暗い)画像を印刷する場合には、インク使用量をインクデューティ制限値以下に抑えるために、ある程度の黒色インクドットを形成しなければならないので、粒状性の悪化を招かないように黒色インクドットを適切に形成する必要がある。また、インクデューティ制限値に対して余裕がある場合でも、黒色インクドットを用いることによる上述した利点から、粒状性の悪化を招かない範囲でできるだけ黒色インクドットを形成することで画質の改善を図ることができる。このため、次のように、画像の明度に応じて黒色インクドットの形成量を調整することが行われている。すなわち、画像中の比較的明度の高い部分を印刷する場合には、インクデューティ制限値に対して若干余裕があるので、黒色インクドットの形成を控えめにして、代わりにコンポジットブラックを多用して画像を印刷する。コンポジットブラックは黒色ドットのようにはドットが目立たないので、コンポジットブラックを多用して画像を印刷しても粒状性が悪化することはない。逆に、明度の低い部分を印刷する場合には、インク使用量をインクデューティ制限値以下とするために、更には画像の色再現範囲を拡大するために、コンポジットブラックの代わりに黒色ドットを多用して画像を印刷する。画像の明度が低ければ黒色ドットを形成してもドットは比較的目立たないので、黒色ドットを多用して画像を印刷してもドットが目立って画質を悪化させることはない。このように、画像の明度に応じて下色除去の割合を適切に設定しておけば、画像の明度に応じて黒色インクのドットを適切に形成して、良好な画質の画像を印刷することが可能となっている。
しかし、下色除去の割合を画像の明度に応じて如何に調整しても、黒色インクによるドットの形成を最適化できない場合があった。例えば、ある印刷条件では黒色ドットが若干目立っているため、その明度での黒色ドットの形成量が減るように下色除去の割合を減少させると、他の印刷条件ではインクデューティ制限値の制約を受けて、下色除去の割合を再び増加させなければならない場合がある。また、印刷条件が異なればインクが発色する特性も異なったものとなるため、黒色インクドットの目立ち具合や色の再現可能な範囲は異なったものとなってしまう。このような事情から、結局、明度に応じた調整を行なうだけでは、各々の印刷条件での黒色インクドットを形成することによる粒状性の悪化を回避しつつ、インクデューティ制限値を満足させて、尚かつ、広い色再現範囲を確保し得るような適正な下色除去の設定を見出し得ない場合があった。
この発明は、従来技術における上述の課題を解決するためになされたものであり、黒色インクによるインクドットの形成量を最適化することによって、高画質の画像を印刷することが可能な技術の提供を目的とする。
上述の課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の第1の印刷制御装置は、次の構成を採用した。すなわち、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する印刷制御装置であって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクを用いて表現するための該有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶している色変換テーブル記憶手段と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する色変換手段と、
前記変換された階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値が、前記カラー画像データの表す色相に応じて各々に定められた所定階調値以上の場合に、前記黒色インクの階調値を生成すると判断する黒色インク階調値生成判断手段と、
前記黒色インクの階調値を生成すると判断した場合には、前記カラー画像データが表す色相に応じて前記無彩色を表現する階調値の少なくとも一部を該黒色インクの階調値に置き換えて、前記各色インクの階調値の組み合わせとして確定する各色階調値確定手段と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する制御情報出力手段と
を備えることを要旨とする。
また、上記の第1の印刷制御装置に対応する本発明の第1の印刷制御方法は、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する印刷制御方法であって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクを用いて表現するための該有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶しておき、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換し、
前記変換された階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値が、前記カラー画像データの表す色相に応じて各々に定められた所定階調値以上の場合に、前記黒色インクの階調値を生成すると判断するとともに、
前記黒色インクの階調値を生成すると判断した場合には、前記カラー画像データが表す色相に応じて前記無彩色を表現する階調値の少なくとも一部を該黒色インクの階調値に置き換えて、前記各色インクの階調値の組み合わせとして確定し、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力することを要旨とする。
かかる第1の印刷制御装置および第1の印刷制御方法においては、カラー画像の各々の色彩と該色彩を表現するための有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付ける色変換テーブルを記憶しており、カラー画像データを受け取ると、該色変換テーブルを参照することによって、各色インクの階調値の組み合わせに変換する。かかる変換時に参照する色変換テーブルは、カラー画像の色彩と有彩色インクの階調値とを対応付けたものであるため、各色インクの階調値には、有彩色インクの階調値のみが含まれている。次いで、こうして変換された有彩色インクによる階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する階調値が所定値以上となっている場合に、該階調値を黒色インクの階調値に置き換える。置き換えに際しては、無彩色を表現している有彩色インクの階調値の少なくとも一部を、カラー画像データの色相に応じて定めた階調値に置き換える。こうして最終的に得られた各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、各色インクドットの形成を制御するための制御情報を前記印刷部に出力する。
こうすれば、印刷部ではカラー画像の色相に応じた割合で黒色インクのドットが形成される。黒色インクのドットの目立ち易さは、ドットが形成される画像の色相に応じて異なっているので、カラー画像の色相に応じて黒色インクドットを形成すれば、黒色インクドットの形成量がより適切となり、高画質の画像を印刷することが可能となる。
かかる第1の印刷制御装置においては、黒色インクの階調値を発生すると判断した場合に、無彩色を表現している各有彩色インクの階調値の中で、もっとも小さな階調値よりも、所定比率だけ小さな階調値の黒色インクに置き換えるようにしても良い。
黒色インクのドットはたいへんに目立ち易いドットであるため、印刷画像中で、有彩色インクのドットのみで無彩色が表現されていた部分から、一部を黒色ドットに置き換えて表現した部分に移り変わる境界が視認されて、印刷画質を悪化させることがある。このような場合、かかる印刷制御装置を用いれば、黒色ドットが控えめに形成されるため、境界部分が視認され難くなって好適である。
かかる第1の印刷制御装置においては、次のようにしてカラー画像データを有彩色インクと黒色インクの階調値の組み合わせに変換しても良い。すなわち、前記有彩色インクの階調値の組み合わせと、該組み合わせによって表現される色彩を該有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた黒色発生テーブルを記憶しておく。前記色変換手段から前記有彩色インクの階調値の組み合わせを受け取ると、前記黒色発生テーブルを参照しながら、該階調値の組み合わせを前記有彩色インクと黒色インクの階調値の組み合わせに変換する。
こうして黒色発生テーブルを参照しながら、前記有彩色インクと黒色インクの階調値の組み合わせに変換すれば、前記黒色インク階調値生成判断手段および前記各色階調値確定手段の各々の処理を実質的に行うことができ、従って、黒色インクドットを適切に形成することが可能となるので好適である。
かかる第1の印刷制御装置においては、次のような合成色変換テーブルを記憶しておき、かかる合成色変換テーブルを参照して色変換を行っても良い。あるいは、該印刷制御装置に対応する印刷制御方法においては、該合成色変換テーブルに相当する黒色発生色変換テーブルを記憶しておき、かかる黒色発生色変換テーブルを参照して色変換を行っても良い。ここで、合成色変換テーブル(あるいは黒色発生色変換テーブル)とは、前記色変換テーブルが記憶する対応関係であるカラー画像の色彩と前記有彩色インクの階調値の組み合わせとの対応関係と、前記黒色発生テーブルが記憶する対応関係である該有彩色インクの階調値の組み合わせと該有彩色インクおよび黒色インクの階調値の組み合わせとの対応関係とに基づいて、該カラー画像の色彩と該有彩色インクおよび黒色インクの階調値の組み合わせとを対応付けたテーブルである。
あるいは、前記カラー画像の色彩に対応付けられた前記各色階調値の組み合わせの中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値と、前記黒色インクの階調値との比率が、該カラー画像の色相に応じた所定値に設定されているテーブルを、前記合成色変換テーブルあるいは黒色発生色変換テーブルとして記憶しておいても良い。
このような合成色変換テーブルあるいは黒色発生色変換テーブルを記憶していれば、カラー画像データを受け取ると、該テーブルを参照しながら色変換を行うことによって、カラー画像データを前記有彩色インクと黒色インクの階調値の組み合わせに変換する。こうすれば色変換と同時に、前記黒色階調値の発生を併せて行うことができるので好適である。
かかる色変換テーブルは、所定の明度範囲においては、色相がシアンから青に向かって変化すると、明度が高くなるほど黒色インクの階調値が大きくなるような設定としておいてもよい。あるいは、所定の明度範囲においては、色相がマゼンタから青に向かって変化すると、明度が高くなるほど黒色インクの階調値が大きくなるように設定しておいてもよい。
シアンと青とは互いに隣接した色相であるが、黒色ドットはシアン色の画像中に形成されるよりも、青色の画像中に形成される方が遙かに目立ち難い。このため、ある明度の青色の画像中に黒色ドットを形成してもドットは目立たないが、同じ明度のシアン色の画像に黒色ドットを形成すると、ドットが目立ってしまうことが起こり得る。同様に、マゼンタと青とは互いに隣接した色相であるが、黒色ドットはマゼンタ色の画像中に形成されるよりも、青色の画像中に形成される方が遙かに目立ち難い。このため、ある明度の青色の画像中に黒色ドットを形成してもドットは目立たないが、同じ明度のマゼンタ色の画像に黒色ドットを形成すると、ドットが目立ってしまうことが起こり得る。従って、所定の明度範囲で、色相がシアンから青に向かって変化する領域、あるいは色相がマゼンタから青に向かって変化する領域では、明度が高くなるほど黒色インクの階調値が大きくなるように設定された色変換テーブルを参照すれば、画像の色相がシアンから青に向かって、あるいはマゼンタから青に向かって変化する領域で、黒色ドットを適切に形成して、高画質のカラー画像を印刷することが可能となる。
また、前述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の第2の印刷制御装置は次の構成を採用した。すなわち、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する印刷制御装置であって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクを用いて表現するための該有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶している色変換テーブル記憶手段と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する色変換手段と、
前記変換された階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値が、前記カラー画像データの表す色の彩度に応じて定められた所定階調値以上の場合に、前記黒色インクの階調値を生成すると判断する黒色インク階調値生成判断手段と、
前記黒色インクの階調値を生成すると判断した場合には、前記カラー画像データが表す色の彩度に応じて、前記無彩色を表現する階調値の少なくとも一部を該黒色インクの階調値に置き換えることにより、前記各色インクの階調値の組み合わせとして確定する各色階調値確定手段と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する制御情報出力手段と
を備えることを要旨とする。
また、上記の第2の印刷制御装置に対応する本発明の第2の印刷制御方法は、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する印刷制御方法であって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクを用いて表現するための該有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶しておき、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換し、
前記変換された階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値が、前記カラー画像データの表す色の彩度に応じて定められた所定階調値以上の場合に、前記黒色インクの階調値を生成すると判断するとともに、
前記黒色インクの階調値を生成すると判断した場合には、前記カラー画像データが表す色の彩度に応じて、前記無彩色を表現する階調値の少なくとも一部を該黒色インクの階調値に置き換えて、前記各色インクの階調値の組み合わせとして確定し、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力することを要旨とする。
黒色インクで形成されたドットが目立つことをどの程度まで許容するかは、ドットが形成される画像の彩度によって異なっている。例えば、彩度が高くない画像を印刷する場合には、できるだけ黒色ドットは目立たない方が好ましい、すなわちドットが目立つことに対する許容度は低いが、彩度の高い画像を印刷する場合は、次の理由から黒色ドットが目立つことに対する許容度は高くなる傾向にある。つまり、彩度の高い画像を印刷する場合、多数の黒色ドットを形成するほど、高い彩度の色彩を表現することが可能になる傾向がある。このことから、彩度の高い画像を印刷する必要がある場合には、多少、黒色ドットが目立つことを許容する傾向にある。
上述の第2の印刷制御装置および印刷制御方法においては、カラー画像データが表現する色の彩度に応じて、適切な割合で黒色ドットを形成することができるので、それだけ高画質の画像を印刷することが可能となって好適である。
かかる第2の印刷制御装置あるいは第2の印刷制御方法においては、次のような色変換テーブルを記憶しておき、かかる色変換テーブルを参照して色変換を行うこととしても良い。すなわち、色変換テーブルには、カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色階調値の組み合わせとが対応付けられているとともに、該各色階調値の組み合わせの中で、無彩色を表現していることに相当する該各有彩色インクの階調値と、該黒色インクの階調値との比率が、該カラー画像の色彩の彩度に応じた所定値となるように設定されている。
このような色変換テーブルを参照して、カラー画像データの色変換を行えば、該カラー画像データの表す色の彩度に応じて、有彩色インクと黒色インクとの階調値の適切な組み合わせに色変換することができるの好適である。
上述した第1あるいは第2の印刷制御装置においては、前記有彩色インクおよび黒色インクによる各色インクの階調値に基づいて、前記各色インクドットの形成有無を判断し、該判断結果を、前記各色インクドットの形成を制御するための制御情報として前記印刷部に出力しても良い。
こうして各色インクドットの形成有無の判断結果に基づいて、前記印刷部が各色インクドットを形成すれば、適切に黒色インクドットを形成して、高画質のカラー画像を印刷することができるので好適である。
上述のいずれかの印刷制御装置と、印刷媒体上に各色のインクドットを形成する印刷部とを用いて印刷装置を構成しても良い。かかる印刷装置では、印刷しようとするカラー画像の色相に応じて、黒色ドットを適切に形成することにより、高画質のカラー画像を印刷することができるので好適である。
また、本発明は、上述した第1あるいは第2の印刷制御方法の動作を実現するプログラムをコンピュータに組み込むことで、コンピュータを用いて実現することも可能である。従って、本発明は次のような記録媒体として把握することも可能である。すなわち、本発明の第1の印刷制御方法に対応する本発明の第1の記録媒体は、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する方法を実現するプログラムを、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体であって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクを用いて表現するための該有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶しておく機能と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能と、
前記変換された階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値が、前記カラー画像データの表す色相に応じて各々に定められた所定階調値以上の場合に、前記黒色インクの階調値を生成すると判断する機能と、
前記黒色インクの階調値を生成すると判断した場合には、前記カラー画像データが表す色相に応じて前記無彩色を表現する階調値の少なくとも一部を該黒色インクの階調値に置き換えて、前記各色インクの階調値の組み合わせとして確定する機能と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する機能と
を実現するプログラムを記録した記録媒体としての態様である。
かかる第1の記録媒体においては、次のようにすることもできる。すなわち、
前記カラー画像の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための該各色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた黒色発生色変換テーブルを記憶しておく機能を備え、
前記カラー画像データを受け取って前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能は、前記黒色発生色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを前記有彩色インクおよび黒色インクの階調値の組み合わせに変換することにより、前記黒色インク階調値の生成有無の判断と前記各色インクの階調値の確定とを行う機能とすることもできる。
また、本発明の第2の印刷制御方法に対応する本発明の第2の記録媒体は、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する方法をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体であって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクを用いて表現するための該有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶しておく機能と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能と、
前記変換された階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値が、前記カラー画像データの表す色の彩度に応じて定められた所定階調値以上の場合に、前記黒色インクの階調値を生成すると判断する機能と、
前記黒色インクの階調値を生成すると判断した場合には、前記カラー画像データが表す色の彩度に応じて、前記無彩色を表現する階調値の少なくとも一部を該黒色インクの階調値に置き換えて、前記各色インクの階調値の組み合わせとして確定する機能と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する機能と
を記録していることを要旨とする。
かかる第2の記録媒体においては、次のようにすることもできる。すなわち、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する方法をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体であって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色階調値の組み合わせとが対応付けられているとともに、該各色階調値の組み合わせの中で、無彩色を表現していることに相当する該各有彩色インクの階調値と、該黒色インクの階調値との比率が、該カラー画像の色彩の彩度に応じた所定値となるように設定されている色変換テーブルを記憶しておく機能と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する機能と
を記録していることを要旨とする。
上述した各種の記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータで読み取り、該コンピュータを用いて上述の各機能を実現すれば、各色インクドットに加えて、無彩色インクのインクドットが適切に形成されるので、高画質のカラー画像を印刷することが可能となる。
本発明は、上述の印刷制御装置あるいは印刷装置に限られず、種々の形態としても把握することができる。例えば、カラー画像データを受け取って、複数の色の階調値の組み合わせに変換していることに着目すれば、本発明の印刷制御装置あるいは印刷制御方法を、画像処理装置あるいは画像処理方法として把握することもできる。
これら画像処理装置あるいは画像処理方法を利用すれば、カラー画像データを受け取って、有彩色および黒色の各色階調値の適切な組み合わせに変換することができる。こうして変換した画像データに基づいて、各色インクのドットを形成すれば、黒色インクのドットを適切に形成して高画質の画像を表現することが可能となるので好適である。
[発明の他の態様]
また、本発明は、前述した印刷制御装置内で行われる機能を実現するためのプログラムコードをコンピュータに記憶させ、該プログラムコードに記述された各種機能をコンピュータを用いて実現することで、実施することも可能である。従って、本発明は次のような各種のプログラムコードとしての構成を採ることもできる。すなわち、第1のプログラムコードは、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御するコンピュータプログラムを記述したプログラムコードであって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクを用いて表現するための該有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶しておく機能と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能と、
前記変換された階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値が、前記カラー画像データの表す色相に応じて各々に定められた所定階調値以上の場合に、前記黒色インクの階調値を生成すると判断する機能と、
前記黒色インクの階調値を生成すると判断した場合には、前記カラー画像データが表す色相に応じて前記無彩色を表現する階調値の少なくとも一部を該黒色インクの階調値に置き換えて、前記各色インクの階調値の組み合わせとして確定する機能と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する機能と
を記述したプログラムコードとしての態様である。
また、第2のプログラムコードは、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御するコンピュータプログラムを記述したプログラムコードであって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色階調値の組み合わせとが対応付けられているとともに、該各色階調値の組み合わせの中で、無彩色を表現していることに相当する該各有彩色インクの階調値と、該黒色インクの階調値との比率が、該カラー画像の色相に応じた所定値となるように設定されている色変換テーブルを記憶しておく機能と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する機能と
を記述したプログラムコードとしての態様である。
第3のプログラムコードは、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御するコンピュータプログラムを記述したプログラムコードであって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクを用いて表現するための該有彩色インクの階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶しておく機能と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能と、
前記変換された階調値の中で、無彩色を表現していることに相当する前記各有彩色インクの階調値が、前記カラー画像データの表す色の彩度に応じて定められた所定階調値以上の場合に、前記黒色インクの階調値を生成すると判断する機能と、
前記黒色インクの階調値を生成すると判断した場合には、前記カラー画像データが表す色の彩度に応じて、前記無彩色を表現する階調値の少なくとも一部を該黒色インクの階調値に置き換えて、前記各色インクの階調値の組み合わせとして確定する機能と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する機能と
を記述したプログラムコードとしての態様である。
第4のプログラムコードは、
互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御するコンピュータプログラムを記述したプログラムコードであって、
カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色階調値の組み合わせとが対応付けられているとともに、該各色階調値の組み合わせの中で、無彩色を表現していることに相当する該各有彩色インクの階調値と、該黒色インクの階調値との比率が、該カラー画像の色彩の彩度に応じた所定値となるように設定されている色変換テーブルを記憶しておく機能と、
カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照しながら、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能と、
前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する機能と
を記述したプログラムコードとしての態様である。
本発明の作用・効果をより明確に説明するために、本発明の実施の形態を、次のような順序に従って説明する。
A.第1実施例:
A−1.装置構成:
A−2.黒色階調値発生処理:
A−3.変形例:
B.第2実施例:
B−1.装置構成:
B−2.色変換テーブル作成処理:
B−3.変形例:
A.第1実施例:
A−1.装置構成:
図1は、本発明の印刷制御装置および印刷装置からなる印刷システムの構成を示す説明図である。図示するように、この印刷システムは、コンピュータ80にカラープリンタ20が接続された構成となっており、コンピュータ80に所定のプログラムがロードされて実行されると、コンピュータ80とカラープリンタ20とが全体として一体の印刷システムとして機能する。印刷しようとするカラー原稿は、コンピュータ80上で各種のアプリケーションプログラム91によって作成された画像等が使用される。また、コンピュータ80に接続されたスキャナ21を用いて取り込んだカラー画像や、あるいはデジタルカメラ(DSC)28で撮影した画像をメモリカード27を経由して取り込んで使用することも可能である。これらの画像のデータORGは、コンピュータ80内のCPU81によって、カラープリンタ20が印刷可能な画像データに変換され、画像データFNLとしてカラープリンタ20に出力される。カラープリンタ20が、この画像データFNLに従って、印刷媒体上に各色のインクドットの形成を制御すると、最終的に、印刷用紙上にカラー原稿に対応したカラー画像が印刷されることになる。
コンピュータ80は、各種の演算処理を実行するCPU81や、データを一時的に記憶するRAM83、各種のプログラムを記憶しておくROM82,ハードディスク26等から構成されている。また、SIO88をモデム24を経由して公衆電話回線PNTに接続すれば、外部のネットワーク上にあるサーバSVから必要なデータやプログラムをハードディスク26にダウンロードすることが可能となる。
カラープリンタ20はカラー画像の印刷が可能なプリンタである。本実施例では、シアン,マゼンタ,イエロ,ブラックの4色インクのドットを形成可能なインクジェットプリンタを使用している。尚、以下では場合によって、シアンインク,マゼンタインク,イエロインク,ブラックインクのそれぞれを、Cインク,Mインク,Yインク,Kインクと略称するものとする。
また、カラープリンタ20は、ピエゾ素子を用いてインクを吐出することによって印刷用紙上にインクドットを形成する方式を採用している。尚、本実施例で使用したカラープリンタ20では、ピエゾ素子を用いてインクを吐出する方式を採用しているが、他の方式によりインクを吐出するノズルユニットを備えたプリンタを用いるものとしてもよい。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によってインクを吐出する方式のプリンタに適用するものとしてもよい。また、インクを吐出する代わりに、熱転写などの現象を利用して、印刷用紙上にインクドットを形成する方式のプリンタであっても構わない。
図2は、本実施例の印刷制御装置の機能を実現するための、コンピュータ80のソフトウェア構成の概略を示すブロック図である。コンピュータ80においては、すべてのアプリケーションプログラム91はオペレーティングシステムの下で動作する。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ90やプリンタドライバ92が組み込まれていて、各アプリケーションプログラム91から出力される画像データは、これらのドライバを介してカラープリンタ20に出力される。
アプリケーションプログラム91が印刷命令を発すると、コンピュータ80のプリンタドライバ92は、アプリケーションプログラム91から画像データを受け取って所定の画像処理を行い、プリンタが印刷可能な画像データFNLに変換した後、変換した画像データFNLをカラープリンタ20に出力する。プリンタドライバ92が行う処理については後述する。
図3は、本実施例のカラープリンタ20の概略構成を示す説明図である。このカラープリンタ20は、図示するように、キャリッジ40に搭載された印字ヘッド41を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、このキャリッジ40をキャリッジモータ30によってプラテン36の軸方向に往復動させる機構と、紙送りモータ35によって印刷用紙Pを搬送する機構と、制御回路60とから構成されている。
キャリッジ40をプラテン36の軸方向に往復動させる機構は、プラテン36の軸と並行に架設されたキャリッジ40を摺動可能に保持する摺動軸33と、キャリッジモータ30との間に無端の駆動ベルト31を張設するプーリ32と、キャリッジ40の原点位置を検出する位置検出センサ34等から構成されている。
印刷用紙Pを搬送する機構は、プラテン36と、プラテン36を回転させる紙送りモータ35と、図示しない給紙補助ローラと、紙送りモータ35の回転をプラテン36および給紙補助ローラに伝えるギヤトレイン(図示省略)とから構成されている。印刷用紙Pは、プラテン36と給紙補助ローラの間に挟み込まれるようにセットされ、プラテン36の回転角度に応じて所定量だけ送られる。
制御回路60は、CPU61とROM62とRAM63等から構成されており、カラープリンタ20の各種機構を制御する。すなわち、制御回路60は、キャリッジモータ30と紙送りモータ35の動作を制御することによってキャリッジ40の主走査と副走査とを制御するとともに、コンピュータ80から供給される画像データFNLに基づいて、各ノズルでのインク滴の吐出を制御している。この結果、印刷用紙上の適切な位置にインクドットが形成される。
キャリッジ40にはブラック(K)インクを収納するインクカートリッジ42と、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y)のインクを収納するインクカートリッジ43とが装着されている。もちろん、Kインクと他のインクを同じインクカートリッジに収納してもよい。複数のインクを1つのカートリッジに収納可能とすれば、インクカートリッジをコンパクトに構成することができる。
キャリッジ40にインクカートリッジ42,43を装着すると、カートリッジ内の各インクは図示しない導入管を通じて、各色毎のインク吐出用ヘッド44ないし47に供給される。各色毎のインク吐出用ヘッド44ないし47の各底面には、48個のノズルNz が一定のノズルピッチkで配列されたノズル列が1組ずつ設けられている。インクカートリッジ42,43から各ヘッドの供給されたK,C,M,Y,LKの各色のインクは、制御回路60の制御の下で、それぞれのノズル列から吐出される。
以上のようなハードウェア構成を有するカラープリンタ20は、キャリッジモータ30を駆動することによって、各色のインク吐出用ヘッド44ないし47を印刷用紙Pに対して主走査方向に移動させ、また紙送りモータ35を駆動することによって、印刷用紙Pを副走査方向に移動させる。制御回路60は、画像データFNLに従って、キャリッジ40の主走査および副走査を繰り返しながら、適切なタイミングでノズルを駆動してインク滴を吐出することによって、カラープリンタ20は印刷用紙上にカラー画像を印刷している。
各色インク滴の吐出を制御するための画像データFNLは、プリンタドライバ92がカラー画像データに画像処理を施すことによって生成される。図4は、プリンタドライバ92が行う画像処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。以下、図4のフローチャートに従って、プリンタドライバ92が行う画像処理の概要を簡単に説明する。
プリンタドライバ92は画像処理ルーチンを開始すると、各種アプリケーション91が出力したカラー画像データを取り込む(ステップS100)。各種アプリケーションプログラム91は、R,G,Bの階調値で表現されたRGB階調データとしてカラー画像データを出力するので、ステップS100の処理では、RGB階調データとしてのカラー画像データを取り込む。
次いで、取り込んだカラー画像データの解像度を、カラープリンタ20が印刷するための解像度に変換する(ステップS102)。カラー画像データの解像度が印刷解像度よりも低い場合は、線形補間を行って隣接画像データ間に新たなデータを生成し、逆に印刷解像度よりも高い場合は、一定の割合でデータを間引くことによって、画像データの解像度を印刷解像度に変換する。
こうして解像度を変換すると、カラー画像データの色変換処理を行う(ステップS104)。色変換処理とは、R,G,Bの階調値で表現されているカラー画像データをカラープリンタ20で使用するC,M,Yの各色の階調値のデータに変換する処理である。この処理は、色変換テーブルLUTを用いて行われており、LUTにはR,G,Bのそれぞれの組合せからなる色を、C,M,Y各色で表現するときの、各色階調値の組合せが記憶されている。プリンタドライバ92は、RGB階調値を受け取ると、色変換テーブルLUTを参照して、かかるRGB階調値に対応するCMY各色の階調値に変換する。色変換テーブルLUTに該当するRGB階調値が記憶されていない場合には、補間演算を行いながらRGB階調値をCMY階調値に変換する。
色変換処理を終了すると、黒色階調値発生処理(ステップS106)を開始する。黒色階調値発生処理とは、色変換処理で変換したCMYの各階調値の一部を、黒色の階調値に置き換えることによって、CMYの階調データをCMYKの階調データに変換する処理である。黒色階調値発生処理の詳細については後述するが、本実施例では、カラー画像データの色相を考慮しながら黒色階調値を発生させているために、Kドットの発生を最適化して高画質ののカラー画像を印刷することが可能となっている。
こうしてカラー画像データを、CMYK各色の階調データに変換すると、階調数変換処理を行う(ステップS108)。階調数変換処理とは次のような処理である。本実施例においては、黒色階調値発生処理によって変換されたCMYK階調データは、各色毎に256階調幅を持つデータとして表現されている。これに対し、本実施例のカラープリンタ20では、「ドットを形成する」,「ドットを形成しない」のいずれかの状態しか採り得ない。すなわち、本実施例のカラープリンタ20は局所的には2階調しか表現し得ない。そこで、256階調を有する画像データを、カラープリンタ20が表現可能な2階調で表現された画像データに変換する必要がある。このような階調数の変換を行う処理が階調数変換処理である。本実施例のカラープリンタ20では、いわゆる誤差拡散法と呼ばれる方法を用いて階調数変換処理を行っている。もちろん、組織的ディザ法などの周知の種々の方法を適用しても構わない。
こうして階調数変換処理を終了すると、プリンタドライバ92はインターレース処理を行う(ステップS1110)。インターレース処理は、ドットの形成有無を表す形式に変換された画像データを、ドットの形成順序を考慮しながらカラープリンタ20に転送すべき順序に並べ替える処理である。プリンタドライバ92は、インターレース処理を行って最終的に得られた画像データを、画像データFNLとしてカラープリンタ20に出力する(ステップS112)。
カラープリンタ20は、画像データFNLに従って各色のインクドットを形成する。その結果、印刷用紙上に画像データORGに対応する画像を得ることができる。
A−2.黒色階調値発生処理:
図5は、プリンタドライバ92が画像処理ルーチンの中で行う黒色階調値発生処理の内容を示すフローチャートである。以下、図5のフローチャートに従って、CMY階調値から黒色の階調値(K階調値)を発生させる処理について詳しく説明する。
黒色階調値発生処理を開始すると、先ず初めに処理しようとする画素についての画像データを読み込む(ステップS200)。この画像データは、図4で説明したように、色変換処理によってCMY階調値に変換されている画像データである。
次いで、CMY色空間上で、処理しようとする画像データの座標を囲む3つの色相軸を検出する(ステップS202)。色相軸とは、以下に説明するような、色空間上にとった次のような座標軸である。
色相軸について説明する準備として、先ず、図6に示したCMY色空間について説明する。図6に示すように、直交する3軸にC軸,M軸,Y軸を取ると、CMY階調データとして表現されたカラー画像データは、3次元空間内の座標点として表すことができる。このような空間を色空間と呼ぶ。また、CMYの各階調値が0から255の値を取り得るものとすると、すべての画像データは、一辺の長さ255の立方体の内部の点として表現することができる。このような立方体を色立体と呼ぶ。色立体の8つの各頂点は、それぞれが固有の色彩を表している。例えば、座標値(0,0,0)の頂点は、CMYの各階調値がいずれも0であるから白色(W)を表し、座標値(255,255,255)の頂点は、CMYの各階調値がいずれも255であるから黒色(K)を表している。白色を表す頂点(頂点W)から黒色を表す頂点(頂点K)とを結ぶ直線CB上の座標は、いわゆる無彩色を表している。
また、色立体上の他の6つの頂点は、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y),赤(R),緑(G),青(B)の各色彩に対応している。すなわち、座標値(255,0,0)の頂点はシアン(C)の色彩を、座標値(0,255,0)の頂点はマゼンタ(M)の色彩を、座標値(0,0,255)の頂点はイエロ(Y)の色彩を、それぞれ表している。Cを示す頂点(頂点C)に対して、無彩色を示す直線CBと反対側の頂点(0,255,255)は、シアン(C)の補色である赤(R)を表している。同様に、マゼンタ(M)を表す頂点(頂点M)の反対側の頂点(255,0,255)は、Mの補色である緑(G)を表し、イエロ(Y)を表す頂点(頂点Y)の反対側の頂点(255,255,0)は、Yの補色である青(B)を表している。
本明細書中では、色立体のC,B,M,R,Y,G,Wの7つの頂点をそれぞれ原点として、各頂点と頂点Kとを結ぶ次のような7つの座標軸のそれぞれを各色相の色相軸と呼ぶ。すなわち、頂点Cから頂点Kに至る座標軸であるC色相軸と、頂点Bから頂点Kに至る座標軸であるB色相軸と、頂点Mから頂点Kに至る座標軸であるM色相軸と、頂点Rから頂点Kに至る座標軸であるR色相軸と、頂点Yから頂点Kに至る座標軸であるY色相軸と、頂点Gから頂点Kに至る座標軸であるG色相軸と、頂点Wから頂点Kに至る座標軸であるW色相軸の7つの座標軸である。図6には、これら各色相の7つの色相軸を実線で示している。
図7は、読み込んだ画像データに対応する座標を囲む3つの色相軸を検出している様子を示す説明図である。例えば、読み込んだ画像データに対応する座標が、図中の点Pであったとすると、点Pは頂点W,頂点G,頂点Y,頂点Kで構成される三角錐に内包されている。そこで、三角錐の稜線となっている3つの色相軸、すなわちG色相軸とY色相軸とW色相軸とを、点Pを囲む3つの色相軸として検出する。図5のステップS2202の処理は、このように、ステップS200で読み込んだ画像データの座標を囲む3つの色相軸を検出する処理である。
以上のようにして、図5のステップS202において3つの色相軸を検出したら、3つの色相軸のそれぞれについてucr比率を算出する(ステップS204)。ucr比率とは、C,M,Yの各色のデータが同時に階調値を有し、いわゆるコンポジットブラックを表している部分を黒色の階調値に置き換える比率を示し、0から1.0の値をと取る数値である。ucr比率0とは、CMY階調データの中に、いわゆるコンポジットブラックを表現している部分があっても、コンポジットブラックを全く黒色に置き換えず、従って黒色階調値を発生させないことを意味している。また、ucr比率1.0とは、CMY階調値の中でいわゆるコンポジットブラックを表現している部分は、すべて黒色の階調値に置き換えることを意味している。
ステップS202で検出した3つの色相軸についてのucr比率は、次のようにして算出する。図7に破線で示すように、画像データに対応する点Pを通って、点Pを内包する三角錐の底辺に平行な平面を考え、この平面と、ステップS202で検出した3つの色相軸、G色相軸,Y色相軸,W色相軸との各交点PG ,PY ,PW を算出する。こうして求めた各色相軸上の交点でのucr比率を、以下のようにして算出する。
各色相軸上の交点でのucr比率は、予め実験的に定められた設定値に基づいて算出する。各色相軸上の交点でのucr比率を算出する方法を説明する準備として、初めに、ucr比率を予め実験的に求めて設定する方法について説明する。図8は、一例としてG色相軸について、ucr比率を実験的に求めて設定する様子を示す説明図である。
先ず、画像データの座標が頂点Gの位置にある場合は、C,M,Yの各階調値はそれぞれ255,0,255の値を採り、コンポジットブラックを表現している部分はない。従って、この条件では黒色階調値は生成されない。画像データがG色相軸上を頂点Kに向かって移動すると、C,Yの各階調値はいずれも255のまま、Mの階調値が増加していくので、コンポジットブラックを表現している部分が増加していく。ここで、画像データの座標が頂点Gの近傍にある条件、すなわち画像データの表す色彩が明度の高い(明るい)緑色である場合は、黒色ドットが形成されるとドットが目立って印刷画像の粒状性を大きく悪化させるので、コンポジットブラックを表現する部分が存在していても、この部分を黒色の階調値には置き換えずにおく。
この反対に、画像データの座標が頂点Kに充分に近づいて、画像データの表す色彩の明度が低く(暗く)なっている条件では、コンポジットブラックの部分をすべて黒色の階調値に置き換える。明度の低い画像では、コンポジットブラックの部分を黒色の階調値に置き換える割合が大きいほど、印刷可能な最大彩度が広がることが経験上から分かっている。そこで画質上の観点から画像データの座標が頂点Kの近傍のある条件では、コンポジットブラックの部分はすべて黒色の階調値に置き換える。
このことから明らかなように、コンポジットブラックを黒色階調値に全く置き換えない頂点Gと、コンポジットブラックをすべて黒色階調値の置き換える頂点Kとの間に、粒状性の悪化を回避するためにコンポジットブラックを黒色階調値に置き換えられない限界の座標値と、彩度を広げるためにすべてのコンポジットブラックを黒色階調値の置き換える限界の座標値とが存在している。このように、粒状性の悪化を回避するためにコンポジットブラックを黒色階調値に置き換えられない限界の座標値を k_start値と呼び、彩度を広げるためにすべてのコンポジットブラックを黒色階調値の置き換える限界の座標値をk_full値と呼ぶ。これら、 k_start値およびk_full値は、実際に緑色から黒色に変化するような画像を印刷し、画質を確認しながら実験的に定められる。
図9は、このようにして実験的に求めた k_start値およびk_full値とを用いて、G色相軸についてのucr比率を設定している様子を示す説明図である。図9の横軸に取ったmin(C,M,Y)は、C,M,Yの各階調値の最小値をとる演算子である。コンポジットブラックを表現している階調値は、min(C,M,Y)の値に所定の比例係数を乗算することによって求められ、かつ比例係数の値はほぼ「1」に近い値を採ることから、コンポジットブラックを表現する階調値をmin(C,M,Y)で代用して示したものである。図8に示した頂点Gは図9の横軸上ではmin(C,M,Y)=0に対応し、頂点Kはmin(C,M,Y)=255に対応する。
G色相軸上でのucr比率は、min(C,M,Y)の値が k_start値より小さい場合は「0」となり、k_full値より大きい場合は「1.0」となる(図9参照)。また、min(C,M,Y)の値が k_start値からk_full値まで増加する間に、ucr比率は「0」から「1.0」まで直線的に増加するように設定されている。従って、min(C,M,Y)の値が k_start値からk_full値までの値Aをとる場合は、図9に示すように線形補間を行うことによってucr比率「a」を算出することができる。
図10は、以上のような実験的な方法によって、C,B,M,R,Y,G,Wの各色相軸について、 k_start値およびk_full値を求めた結果を示す説明図である。黒色ドットの目立ち易さは、ドットが形成される背景の色相によって大きく異なっており、このことに対応して、各色相軸について求められた k_start値およびk_full値の最適値は、図示されているように、それぞれ異なっている。
特に、B色相軸については、 k_start値もk_full値も、いずれの値も「0」となっており、コンポジットブラックはすべて黒色ドットに置き換える設定となっている。これに対して、色空間上でB色相軸に隣接するC色相軸あるいはM色相軸の設定は、コンポジットブラックをすべて黒色ドットに置き換える設定とはなっていない。このことから、画像の明度が高い(明るい)領域では、色相がシアンから青に向かって変化する場合、あるいはマゼンタから青に向かって変化する場合に、明度が高くなるにもかかわらず黒色ドットの発生量が増える領域が存在していることが分かる。
図5のステップS204の処理では、先に求めたG色相軸,Y色相軸,W色相軸上の各交点、PG ,PY ,PW での、ucr比率を、図10に示した各色相軸についての k_start値およびk_full値から、線形補間によって算出するのである。
こうして、3つの交点PG ,PY ,PW でのucr比率が求められたら、三角形PG PY PW に内包されている点PでのUCR比率を補間によって算出する(ステップS206)。三角形PG PY PW 内の点PでのUCR比率の補間には、種々の方法を適用することができるが、本実施例では、面積座標を利用した補間法を用いている。この補間方法は、例えば、有限要素法などのように、物体を多数の微少な要素に分割して、要素の格子点での物理量を算出する計算方法において、要素内の算出値を補間する方法に広く適用されている手法である。もちろん、周知の他の補間方法を適用しても構わない。
図11は、面積座標を用いた補間方法を概念的に示す説明図である。X−Y平面上の3点(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)で、ucr比率がそれぞれのucr1,ucr2,ucr3の値を取るものとする。これを、図11に示すように、Z軸にucr比率をとった3次元座標を考えて、(x1,y1,ucr1),(x2,y2,ucr2),(x3,y3,ucr3)の3点によって表現する。X−Y平面上の破線で示した三角形の内部の点P(xP,yP)におけるucr比率の値ucrPは、3次元座標中に斜線を付して示した三角形内の点(xP,yP,ucrP)によって求められるものとする。このとき、ucrPの値は、次式によって求められる。
ucrP=α1+α2・xP+α3・yP … (1)
ここで、
α1={(x2・y3−x3・y2)・ucr1
+(x3・y1−x1・y3)・ucr2
+(x1・y2−x2・y1)・ucr3 }/(2A) …(2)
α2={(y2−y3)・ucr1
+(y3−y1)・ucr2
+(y1−y2)・ucr3 }/(2A) … (3)
α3={(x3−x2)・ucr1
+(x1−x3)・ucr2
+(x2−x1)・ucr3 }/(2A) … (4)
また、AはX−Y平面上で破線で示した三角形の面積である。
図5のステップS206においては、図7に示す三角形PG PY PW に内包された点PでのUCR比率を、上述の式(1)ないし(4)を用いて算出する。すなわち、ステップS204の処理で、G色相軸,Y色相軸,W色相軸上の各交点、PG ,PY ,PW での、ucr比率が、既に算出されているので、この値を用いて点PでのUCR比率を算出するのである。
こうして求めたUCR比率を用いて、処理中の画像データについての黒色階調値(K)を次式(5)によって算出する(ステップS208)。
K = UCR比率・min(C,M,Y) … (5)
次いで、C,M,Yの各色階調値を算出する(ステップS210)。すなわち、C,M,Yの各色階調値の中でコンポジットブラックを表現していた部分を、ステップS208の処理ではUCR比率に従ってK階調値に置き換えたことにともない、置き換え後の各色階調値Ccn,Mcn,Ycnを、次式(6)ないし(8)によって算出するのである。
Ccn=C−K … (6)
Mcn=M−K … (7)
Ycn=Y−K … (8)
こうして、ステップS200において、CMY階調値として表されていた画像データ(C,M,Y)を、K階調値を含んだ新たなCMY階調データ(Ccn,Mcn,Ycn,K)に変換することができる。
次いで、全画像データの処理を終了したか否かを判断し(ステップS212)、未処理の画像データが残っていれば再びステップS200に戻って、すべての画像データの処理を完了するまで、上述した一連の処理を繰り返す。すべての画像データを処理が終了したら、黒色階調値発生処理を抜けて、図4に示した画像処理ルーチンに復帰する。
以上に説明した黒色階調値発生処理においては、C,B,M,R,Y,G,Wの各色相軸に各々のucr比率を設定しておき、CMY画像データからK階調値を発生させる際には、各色相軸のucr比率から、画像データに対応するUCR比率を補間して使用する。ここで、各色相軸に設定されているucr比率は、Kドットの発生が最適となるように、すなわちもっとも高画質の印刷画像が得られるように、各色相軸毎に設定されている。従って、このような各色相軸のucr比率から補間によってUCR比率を求めることで、印刷しようとするカラー画像の色相に関わらず、最適なUCR比率が得られることになり、その結果、カラー画像の色相に関わらず、粒状性が良好で、かつ明度の低い領域でも鮮やかな彩度を有する高画質のカラー画像を印刷することが可能となる。
A−3.変形例:
上述した第1実施例の変形例について説明する。図12は、第1実施例の変形例における黒色階調値発生処理の流れを示すフローチャートである。図12に示す変形例は、図5に示した上述の第1実施例に対して、k_rate値算出処理(ステップS312)、および黒色階調値修正処理(ステップS314)を有する点のみ異なっている。以下では、図12のフローチャートに基づきながら、これら相違点を中心に変形例について説明する。
変形例の黒色階調値発生処理においても、処理する画像データを読み込んで(ステップS300)、画像データを囲む3つの色相軸を検出し(ステップS302)、検出した各色相軸についてucr比率を算出し(ステップS3004)、算出した各色相軸のucr比率から、画像データに対応するUCR比率を補間によって算出する(ステップS306)。こうして求めた最適なUCR比率に基づいて黒色階調値とCMY各色の階調値を算出する(ステップS308,S310)。
その後、変形例の黒色階調値発生処理では、k_rate値の算出を行う(ステップS312)。k_rate値とは、ステップS308で求めた黒色階調値に乗算される修正係数であり、図13に示すように、min(C,M,Y)の関数として実験的に定められる値である。このようなk_rate値を用いて黒色階調値を修正することで、Kドットの発生量をより適切に調整して、更に高画質のカラー画像を印刷することが可能となる。このような効果が得られる理由について後述する。尚、図13に示すように、k_rate値をmin(C,M,Y)の関数として設定しているのは、ucr比率をmin(C,M,Y)の関数として設定していることから、黒色階調値発生処理を単純にするための便宜的な理由によるものである。従って、明度に相当する数値など、他の変数についての関数として、k_rate値を設定することも可能である。
次いで、求められたk_rate値と、ステップS308で求めたK階調値とを乗算して、黒色階調値の修正値Kcnを算出する(ステップS314)。このようにして、ステップS300で読み込んだ画像データ(C,M,Y)がK階調値を含んだ新たな画像データ(Ccn、Mcn、Ycn、Kcn)に変換される。
その後、全画像データの処理を終了したか否かを判断し(ステップS316)、未処理の画像データが残っていれば再びステップS300に戻って、すべての画像データの処理を完了するまで、上述した一連の処理を繰り返す。すべての画像データを処理が終了したら、黒色階調値発生処理を抜けて、図4に示した画像処理ルーチンに復帰する。
ここで、以上のようにして黒色階調値を修正することによって、カラー画像の画質が改善される理由について説明する。前述したように、CMYの各色ドットで表現されるコンポジットブラックに対して、Kドットはたいへん目立ち易いドットであるため、明度の高い(明るい)画像中にKドットが形成されると、ドットが目立って印刷画像の粒状性を悪化させる。このため、各色相軸のucr比率の設定に際しては、コンポジットブラックを表現する画像データをK階調値に置き換えるタイミングを遅らせて、粒状性が悪化しないような k_startを設定している(図9参照)。また、明度の低い(暗い)画像では、コンポジットブラックではなくKドットを用いることで表現可能な彩度の範囲が広がることが経験上知られている。このため、各色相軸のucr比率の設定に際しては、画像の明度が低くなってコンポジットブラック量がある程度以上に増加すると、全量のコンポジットブラックがK階調値に置き換えられるように、k_full値が設定されている(図9参照)。
このように、 k_start値およびk_full値が設定される結果、 k_start値からk_full値の間では、横軸にとったmin(C,M,Y)の値に対しucr比率が急激に増加するような設定となる傾向にある。また、本実施例のプリンタドライバ92は画像データを8ビットのデータとして扱っているため、min(C,M,Y)の値も8ビットのデータ、すなわち256階調しか採り得ない。このため、min(C,M,Y)の値が1階調分増加することによって、Kドットが急激に増加したように感じられることがある。これを、図14を用いて説明する。
図14は、 k_start値の付近でucr比率が設定されている様子を拡大して示す説明図である。 k_sart値は階調値S0に設定されており、横軸に取ったmin(C,M,Y)の値が階調値SOの場合はucr比率の値は「0」となっている。min(C,M,Y)の値が、1階調値だけ増加して階調値S0+1になると、ucr比率の値は「u1」に増加する。ここで、前述したように、ucr比率の傾きはmin(C,M,Y)に対して急激に増加するように設定される傾向があるから、横軸の階調値が1増加しただけでucr比率の値が「0」から「u1」に急激に増加する場合がある。このようなことが起きると、印刷画像上では、コンポジットブラックだけで印刷されていた領域の中に、ある程度のまとまった濃度でKドットが形成されている領域が発生することとなる。特に、Kドットは目立ち易いドットであるから、コンポジットブラックだけで印刷されている領域と、ある程度の濃度でKドットが形成されている領域と境界部分が視認されて、印刷画質を悪化させる場合がある。
これに対して図13に示すようなk_rate値を設定しておき、かかる修正係数を黒色階調値に乗算すれば、Kドットの形成開始付近でKドットが控えめに形成されることになって、ドットの目立たない良好なカラー画像を印刷することが可能となる。
B.第2実施例:
上述した第1実施例では、RGB各色で表現されたカラー画像データをCMY各色の階調データに一旦変換し、CMY階調データの中でコンポジットブラックを表現する部分の一部をK階調値に置き換えている。これに対して第2実施例では、RGB画像データをCMYK各色の階調データに一度に変換する。変換の際に参照される色変換テーブルLUTの内容を、予めカラー画像データの色相を考慮した内容としておくことで、第1実施例の場合と同様に、カラー画像の特性によらず、Kドットの発生量が最適化された高画質のカラー画像を印刷することができる。以下、このような第2実施例の印刷システムについて簡単に説明する。
B−1.装置構成:
第2実施例の印刷システムのハードウェア構成およびソフトウェア構成は、前述の第1実施例の印刷システムと同様であり、第2実施例の印刷システムは、第1実施例の印刷システムに対して、プリンタドライバ92が行う画像処理ルーチンのみが異なっている。図15は、第2実施例の画像処理ルーチンの流れを示したフローチャートである。以下、図15のフローチャートに従いながら、第2実施例の画像処理ルーチンについて、第1実施例の画像処理ルーチンと異なる部分を中心に説明する。
第2実施例の画像処理ルーチンにおいても、プリンタドライバ92は処理を開始すると、各種アプリケーション91が出力したRGBカラー画像データを取り込み(ステップS400)、次いで、取り込んだカラー画像データの解像度を、カラープリンタ20が印刷するための解像度に変換する(ステップS402)。
こうして解像度を変換すると、色変換テーブルLUTを参照しながら、RGBカラー画像データをCMYKの階調値の組み合わせによって表現したカラー画像データに色変換する(ステップS404)。図16は、色変換テーブルLUTを概念的に示した説明図である。直交するR軸、B軸、G軸によって形成されるRGB色立体を格子状に細分し、各格子点の座標をRGB画像データに対応付けて考える。色変換テーブルは、このような各格子点に、該格子点のRGB画像データに相当するCMYKの各階調値を記憶した3次元の数表である。例えば、RGBの階調値がそれぞれr,g,bである画像データを、CMYKの階調値で表現された画像データに色変換する場合、色変換テーブルを参照することによって容易に色変換することができる。先ず、色立体を格子状に細分してできた小立方体の中から座標値(r,g,b)の点を内包する小立方体を見つけ出し、この小立方体の各頂点に記憶されているCMYK階調値から補間することによって、座標値(r,g,b)に対応するCMYK階調値を求めることができる。第2実施例の画像処理ルーチンでは、後述するようにして、画像データの色相を考慮して適切なCMYKの階調値を設定した色変換テーブルを参照している。そのため、図15に示したステップS404の色変換処理を行うことで、画像データの色相を考慮した適したK階調値を有するCMYK階調データに色変換される。
こうして適切に色変換を行った後、階調数変換処理(ステップS406)、およびインターレース処理(ステップS4408)を行って、最終的な画像データFNLとしてカラープリンタ20に出力して(ステップS410)、第2実施例の画像処理ルーチンを終了する。カラープリンタ20では、かかる画像データFNLに基づいて各色インクドットを形成することによって、カラー画像の色相に関わらず、粒状性が良好で、かつ明度の低い領域でも鮮やかな彩度を有する高画質のカラー画像を印刷することが可能となる。
B−2.色変換テーブルの作成処理:
第2実施例の画像処理ルーチン中で参照される色変換テーブルの作成方法について説明する。図17は、かかる色変換テーブルを作成する処理の流れを示したフローチャートである。かかる処理は、コンピュータを利用した種々の画像処理装置によって実行される。
色変換テーブル作成処理を開始すると、先ず初めにRGB色立体を細分してできた複数の格子点の中から、処理を行う格子点を1つ選択する(ステップS500)。
次いで、選択した格子点のRGB座標値に対応するRGB画像データを取得し、該画像データをCMY階調データに変換する(ステップS502)。すなわち、格子点の座標に対応する色彩を表現するためのCMY画像データを算出するのである。RGB画像データからCMY画像データへの変換は、非線形性の強い変換であるため、理論的な解析結果に基づいて変換するよりも、実験結果に基づいて変換する方が容易である。実験的に求められたRGB画像データからCMY画像データへ変換結果は、通常は色変換テーブルとしてまとめられているので、かかる変換テーブルを参照すれば、容易に変換することができる。
こうしてRGB画像データをCMY画像データに変換すると、変換したCMY階調値を座標値とするCMY色空間内の点を検出し、この点を囲む3つの色相軸を検出する(ステップS504)。色相軸とは、前述の第1実施例において、図6を用いて説明したC,B,M,R,Y,G,Wの7つの座標軸である。第1実施例において既に詳しく説明したので、詳細な説明は省略するが、色空間内の点が1つ決まると、この点を内包する三角錐を構成するような、W色相軸と互いに隣接する2つの色相軸を必ず1組決めることができる。ステップS504では、このような3つの色相軸を検出する。
その後、検出した3つの色相軸のそれぞれについて、画像データに対応するucr比率を算出し(ステップS5506)、各色相について算出した3つのucr比率から、画像データに対応するUCR比率を算出する(ステップS508)。各色相軸についてのucr比率の算出、あるいは画像データに対応するUCR比率の算出には、前述した第1実施例で行った方法と同様の方法を用いることができる。すなわち、図7に示したように、画像データの座標点を通って、該座標点を内包する三角錐の底面に平行な平面を考え、かかる平面と3つの色相軸との交点を算出し、これら3つの交点に設定されているucr比率を算出する(図9参照)。こうして、求めた3つのucr比率から補間することによって、画像データに対応するUCR比率を算出する(図11参照)。
こうして画像データに対応するUCR比率が求められたら、CMYKの各色毎に階調値を算出し、ステップS500で選択した格子点に対応付けて、算出したCMYKの各階調値を書き込む(ステップS510)。CMYKの階調値の算出には、第1実施例において使用した式(5)ないし式(8)を適用することができる。
以上のようにして、1つの格子点にCMYKの階調値を書き込んだら、すべての格子点について階調データを書き込んだか否かを判断し(ステップS512)、まだ階調値を書き込んでいない格子点があれば、ステップS500に戻り、すべての格子点にCMYK階調値を書き込むまで、続く一連の処理を行う。すべての格子点にCMYK階調値が書き込まれたら、色変換テーブルの作成処理を終了する。
こうして作成された色変換テーブルの各格子点には、格子点の座標が示す色相に応じて算出されたUCR比率に基づいて、適切なK階調値が記憶されている。第2実施例のプリンタドライバ92は、図15のステップS404において、こうして作成された色変換テーブルを参照しながら、カラー画像データを変換するので、適切なCMYK階調データに色変換することができる。その結果、カラープリンタ20では、カラー画像の色相に関わらず、粒状性が良好で、かつ明度の低い領域でも鮮やかな彩度を有する高画質のカラー画像を印刷することが可能となる。
B−3.変形例:
上述した各種の実施例では、C,B,M,R,Y,G,Wの各色相軸上で、それぞれに設定された k_start値およびk_full値に基づいて、画像データに対応するUCR比率を算出した。もちろん、これら7つの色相軸に限らず、例えば各色相軸の間に中間色の色相軸を設け、かかる中間色の色相軸上で設定した k_start値およびk_full値を用いて、画像データに対応するUCR比率を算出することとしても良い。必要に応じて中間色の色相軸を設ければ、 k_start値およびk_full値の設定自由度が向上するので、それだけ適切なUCR比率を求めることが可能となる。
更には、UCR比率の算出に際して、画像データが表現している色の彩度も考慮して補間することとすれば、より適切なUCR比率を得ることが可能となる。以下に説明する第2実施例の変形例の印刷システムでは、このようなことを考慮して設定された色変換テーブルを参照することで、より高画質のカラー画像を印刷することが可能である。理解を容易にするために、初めに、かかる第2実施例の変形例の概要を説明しておく。
(1)変形例の概要:
図18は、C,B,M,R,Y,G,Wの各色の色相軸に加えて、中間色の色相軸を設定している様子を例示する説明図である。図18では、B色相軸とC色相軸との間にCB色相軸(図中では破線で表示)を設定し、B色相軸とM色相軸との間にMB色相軸(図中では一点鎖線で表示)を設定している場合を示している。もちろん、設定する色相軸の数は2つである必要はなく、より多数の色相軸を設定しても、あるいは1つの色相軸のみを設定しても構わない。こうして設定した中間色の色相軸についても、各色色相軸と同様に、 k_start値およびk_full値を設定する。
図19は、新たに設定したCB色相軸およびMB色相軸を含む各色の色相軸について、 k_start値およびk_full値が設定されている様子を示す説明図である。理解の便宜を図るために、図19では、C色相軸、B色相軸、M色相軸についても併せて表示している。図19(a)はC色相軸に k_start値およびk_full値が設定されている様子を示しており、図19(b)はCB色相軸に k_start値およびk_full値が設定されている様子を示している。同様に、図19(c)はB色相軸に、図19(d)はMB色相軸に、図19(e)はM色相軸に、それぞれ
k_start値およびk_full値が設定されている様子を示している。
このように、CB色相軸あるいはMB色相軸を設けることにより、 k_start値およびk_full値を設定する自由度が増加するので、より適切な値に設定することが可能となる。例えば、青い背景の上に黒色ドットを形成してもドットが比較的目立ち難いので、画像が青い色相である場合(B色相軸付近の画像)には黒色ドットを早めに形成しても画質が悪化することはなく、逆に、鮮やかな色彩が表現可能となって高画質化を図ることができる。このことから、図19(b),(d)に示すように、CB色相軸上あるいはMB色相軸上の k_start値およびk_full値を、黒色ドットが早めに形成されるような値に設定しておけば、B色相軸付近の画像を印刷する際に黒色ドットをより早めに発生させることが可能となる。
図20は、UCR比率を算出する際に、画像データが表現する色の彩度を考慮することにより、より適切なUCR比率を得る方法を例示する説明図である。図20(a)に示されているように、G,W,Yの各色相軸に囲まれている点P(Cp,Mp,Yp)でのUCR比率を算出する場合を考える。図7を用いて前述した場合と同様に、3つの色相軸が構成する三角錐の底面に平行な平面を考え、この平面とG,W,Yの3つの色相軸との交点PG,PW,PYでのucr比率を算出する。ここで、前述した実施例では3点でのucr比率から直ちに点PでのUCR比率を算出したが、以下に説明する第2実施例の変形例では、彩度を考慮するために、次のように、色相方向への補間および彩度方向への補間の2段階の補間を行う。
初めに、色相方向の補間を行う。図20は、色相方向の補間を行う方法を示す説明図である。図20(a)に示すように、色相方向の補間は、直線PG−PY上の点P’でのucr比率を算出することで行う。ここで、点P’は直線PG−PYと、直線PW−Pとの交点である。点P’は、色立体の最表面に存在し、高彩度の色彩を表している。このように、初めに彩度を最高彩度に固定して補間を行い、次いで、彩度方向の補間を行うのである。
点P’の座標は、次の関係から容易に算出することができる。図20(b)は、点PG,点PW,点PY,点P,点P’の位置関係を示した説明図である。点Pの座標を(Cp,Mp,Yp)とすれば、W色相軸上の点PWの座標は(Mp,Mp,Mp)となる。なぜなら、W色相軸は点W(0,0,0)と点K(255,255,255)とを結ぶ直線であることからも明らかなように、W色相軸上ではC,M,Yの各座標値は同じ値となるからである。また、G色相軸上の点PGの座標は(255,Mp,255)となる。なぜなら、G色相軸は点G(255,0,255)と点K(255,255,255)とを結ぶ直線であることからも明らかなように、G色相軸上ではC,Yの座標値は255の一定値で、Mの座標値のみが変化するからである。同様にして、Y色相軸上の点PYの座標は(Mp,Mp,255)となる。なぜなら、Y色相軸上ではYの座標値は255の一定値となり、かつC,Mの座標値は同じ値を取るからである。図20(b)は、このような各点の位置関係を示している。
本実施例では、図20(b)に示す各点の位置関係から点P’の座標を算出し、次いで、点PYおよび点PGのucr比率に基づいて、直線補間を行うことで点P’でのucr比率を算出する。
こうして、最高彩度の点P’についてucr比率を算出したら、今度は彩度方向の補間を行う。点Pは、点PWと点P’とを結ぶ直線上の点であるから、点P’でのucr比率をucr_P’ 、点PWでのucr比率をucr_PWとすれば、点Pでのucr比率、すなわちUCR比率は、ucr_PWとucr_P’ とを所定割合Kで内分するとして、
UCR比率=ucr_PW+K×(ucr_P’ −ucr_PW) … (9)
によって、UCR比率を算出することができる。ここで、点PW,点P,点P’の各点は図20(b)に示す位置関係にあるから、所定割合Kを、
K=((Yp−Mp)/(255−Mp))**gnm … (10)
を用いて算出する。「**」はべき乗演算子を示している。(10)式に現れる指数gnmの値を適切に設定することで、画像データが表す色の彩度を考慮した補間の仕方を変更することができる。
図21は、指数gnmの値の設定によって、点PでのUCR比率の算出値が異なる様子を示す説明図である。図中に実線で示しているのはgnmが「1」の場合であり、破線は「1」より大きい場合、一点鎖線は「1」より小さい場合を示している。
gnmが「1」の場合(実線で表示)は、点PWと点P’間を直線補間する場合に相当する。点Pの位置が、無彩色を表す点PWから、色立体の最表面にあって彩度の高い色彩を表す点P’に向かって移動すると、それに連れて、UCR比率(点Pでのucr比率)も直線的に変化する。
指数gnmを「1」より大きい値とした場合は、図21中の破線で示すように、UCR比率は点Pの彩度に応じて、直線補間した場合よりも小さめの値として補間される。すなわち、点Pが無彩色を表す点PWの近く(色立体の内部)にある場合は、UCR比率は小さめの値となっているが、点P’の彩度が高くなって色立体の最表面にある点P’に近づくと、UCR比率は次第に大きくなって、直線補間した場合と同じ値に近づいていく。
指数gnmを「1」より小さい値とした場合は、図21中の一点差線で示すように、「1」より大きい値とした場合とは逆の傾向となる。すなわち、UCR比率は点Pの彩度に応じて、直線補間した場合よりも大きめの値として補間される。このように、(10)式中に現れるgnmの値を変更することで、点Pの彩度を考慮した補間方法を変更することができる。
一般に、UCR比率が大きくなるにつれて黒色ドットが目立ち易くなるが、その一方で、より鮮やかな色彩を表現することが可能となる。このことから、彩度の比較的低い領域(色立体の内部の領域)ではUCR比率を小さめの値としておき、彩度の高い領域(色立体の表面付近の領域)を表現する場合にUCR比率を大きめの値に設定しておくことが望ましい。従って、第2実施例の変形例では、(10)式に表れるgnmの値を「1」より大きな値とすることによって、このような望ましいUCR比率に設定するのである。
(2)変形例における色変換テーブル作成処理:
以上に説明したように、第2実施例の変形例では、色相方向および彩度方向の2段階の補間を行ってUCR比率を算出するが、予め、このような補間を行って求めたUCR比率を色変換テーブルに反映させているので、画像の印刷に要する時間が増加することはない。以下では、このような色変換テーブルの作成方法について説明する。尚、かかる第2実施例の変形例の色変換テーブルの作成方法の概要は、図17に示した第2実施例の色変換テーブルの作成方法と同様であり、変形例の方法が異なっている部分を中心に説明する。
変形例の色変換テーブル作成処理を開始すると、先ず初めにRGB色立体を細分してできた複数の格子点の中から、処理を行う格子点を1つ選択して(ステップS600)、選択した格子点のRGB座標値に対応するRGB画像データを取得し、該画像データをCMY階調データに変換する(ステップS602)。次いで、変換したCMY階調値を座標値とするCMY色空間内の点を検出し、この点を囲む3つの色相軸を検出する(ステップS604)。尚、前述したように、第2実施例の変形例では中間色の色相軸も設定可能であり、ステップS604においては、これら中間色の色相軸を含めて、3つの色相軸を検出する。その後、検出した3つの色相軸のそれぞれについて、画像データに対応するucr比率を算出する(ステップS5606)。
第2実施例の変形例においては、画像データを色立体表面上に投影して、色相方向の補間を行う(ステップS608)。すなわち、図20を用いて前述したように、画像データを表す点Pを色立体表面に投影した点P’について、ucr比率を補間することで、色相方向の補間を行うのである。
次いで、色立体表面上の投影点とW色相軸との間で彩度方向の補間を行い、画像データのUCR比率を算出する(ステップS610)。かかる処理は、図20において、点P’のucr比率(ucr_P’ )と点PWのucr比率(ucr_PW)とから、(9)式および(10)式を用いて、点PにおけるUCR比率を補間する処理に相当する。(10)式で用いる指数gnmは「1」より大きな所定値を使用する。こうすれば、色空間内部の領域では小さめのUCR比率となり、色空間表面付近では大きめのUCR比率となって、望ましい割合で黒色ドットを形成させることが可能となる。
こうして画像データに対応するUCR比率が求められたら、CMYKの各色毎に階調値を算出し、ステップS600で選択した格子点に対応付けて、算出したCMYKの各階調値を書き込む(ステップS612)。以上のようにして、1つの格子点にCMYKの階調値を書き込んだら、すべての格子点について階調データを書き込んだか否かを判断し(ステップS614)、まだ階調値を書き込んでいない格子点があれば、ステップS600に戻り、すべての格子点にCMYK階調値を書き込むまで、続く一連の処理を行う。すべての格子点にCMYK階調値が書き込まれたら、色変換テーブルの作成処理を終了する。
こうして作成された色変換テーブルの各格子点には、格子点の座標が示す色相と彩度とに応じて算出されたUCR比率に基づいて、適切なK階調値が記憶されている。従って、かかる色変換テーブルを参照して色変換処理を行えば、RGB画像データを適切なCMYK階調データに色変換することができ、延いては、高画質な印刷画像を得ることが可能となる。
以上、各種の実施例について説明してきたが、本発明は上記すべての実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することができる。
例えば、上述の実施例では、プリンタドライバ92側で各色インクドットの形成有無まで判断しているものとして説明したが、プリンタドライバ側ではRGB階調データからCMYK画像データへの変換までを行い、各色ドットの形成有無についての判断は、カラープリンタ側で行うことも可能である。すなわち、本発明は、このような画像データの変換を行う画像データ変換装置、あるいは画像データ変換方法としての態様をとることも可能である。
また、上述した第2実施例の色変換テーブルでは、第1実施例の変形例で考慮したようなk_rate値は考慮していないが、もちろんこのような修正係数を考慮しても構わない。
また、上述の機能を実現するソフトウェアプログラム(アプリケーションプログラム)を、通信回線を介してコンピュータシステムのメインメモリまたは外部記憶装置に供給し実行するものであってもよい。
本実施例の印刷システムの概略構成図である。 ソフトウェアの構成を示す説明図である。 本実施例のプリンタの概略構成図である。 第1実施例のプリンタドライバが行う画像処理の流れを示すフローチャートである。 第1実施例の画像処理中で行う黒色階調値発生処理の流れを示すフローチャートである。 CMY色空間上で7つの色相軸を定義している様子を示す説明図である。 CMY色空間上で画像データの座標値を囲む3つの色相軸を検出し、検出した色相軸に設定されているucr比率を算出する方法を説明する説明図である。 色相軸上でucr比率が設定されている様子を示す説明図である。 色相軸上に設定されている k_start値およびk_full値からucr比率の設定値を算出する方法を示す説明図である。 7つの色相軸のそれぞれについて適切な k_start値およびk_full値が設定されている様子を示す説明図である。 3つの色相軸について求めたucr比率から、画像データに対応するUCR比率を算出する方法を例示する説明図である。 第1実施例の変形例の画像処理中で行う黒色階調値発生処理の流れを示すフローチャートである。 第1実施例の変形例の黒色階調値発生処理で使用されるk_rate値の設定例を示す説明図である。 第1実施例の変形例によって印刷画質が改善される理由を示す説明図である。 第2実施例のプリンタドライバが行う画像処理の流れを示すフローチャートである。 色変換テーブルを概念的に示す説明図である。 第2実施例のプリンタドライバが参照する色変換テーブルの作成方法を示すフローチャートである。 第2実施例の変形例において、中間色の色相軸が設けられている様子を示す説明図である。 第2実施例の変形例において、中間色の色相軸を設けることにより適切なucr比率を設定している様子を示す説明図である。 第2実施例の変形例において、色相方向および彩度方向の補間を行う方法を示す説明図である。 第2実施例の変形例において、最適な指数を選択することによって、彩度方向の補間を適切に行うことができることを示す説明図である。 第2実施例の変形例の色変換テーブルを作成する方法を示すフローチャートである。
符号の説明
20…カラープリンタ
21…スキャナ
24…モデム
26…ハードディスク
27…メモリカード
30…キャリッジモータ
31…駆動ベルト
32…プーリ
33…摺動軸
34…位置検出センサ
35…紙送りモータ
36…プラテン
40…キャリッジ
41…印字ヘッド
42,43…インクカートリッジ
44〜47…インク吐出用ヘッド
60…制御回路
61…CPU
62…ROM
63…RAM
80…コンピュータ
81…CPU
82…ROM
83…RAM
88…SIO
90…ビデオドライバ
91…アプリケーションプログラム
92…プリンタドライバ

Claims (8)

  1. 互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する印刷制御装置であって、
    カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶している色変換テーブル記憶手段と、
    カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照して、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する色変換手段と、
    前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する制御情報出力手段と
    を備え、
    前記色変換テーブルは、
    前記カラー画像の色彩に対応付けられた前記各色階調値の組み合わせの中で、前記組み合わせて無彩色を表現可能な前記各有彩色インクの階調値、前記黒色インクの階調値に置き換える比率であるUCR比率が、該カラー画像の色相に応じた所定値に設定されているテーブルである
    印刷制御装置。
  2. 互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する印刷制御装置であって、
    カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶している色変換テーブル記憶手段と、
    カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照して、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する色変換手段と、
    前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する制御情報出力手段と
    を備え、
    前記色変換テーブルは、
    前記カラー画像の色彩に対応付けられた前記各色階調値の組み合わせの中で、前記組み合わせて無彩色を表現可能な前記各有彩色インクの階調値、前記黒色インクの階調値に置き換える比率であるUCR比率が、該カラー画像の色彩の彩度に応じた所定値に設定されているテーブルである
    印刷制御装置。
  3. 互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御する印刷制御方法であって、
    カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色階調値の組み合わせとが対応付けられているとともに、該各色階調値の組み合わせの中で、前記組み合わせて無彩色を表現可能な前記各有彩色インクの階調値を、前記黒色インクの階調値に置き換える比率であるUCR比率が、該カラー画像の色彩の彩度に応じた所定値となるように設定されている色変換テーブルを記憶しておき、
    カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照して、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換し、
    前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する
    印刷制御方法。
  4. 互いに組み合わせて無彩色を表現可能な複数の有彩色インクによるインクドットと、黒色インクによるインクドットとを形成してカラー画像を印刷する印刷部に、該各色インクドットの形成を制御する制御情報を出力して、該印刷部を制御するプログラムをコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体であって、
    カラー画像の各々の色彩と、該色彩を前記有彩色インクおよび前記黒色インクを用いて表現するための各色階調値の組み合わせとが対応付けられているとともに、該各色階調値の組み合わせの中で、前記組み合わせて無彩色を表現可能な前記各有彩色インクの階調値を、前記黒色インクの階調値に置き換える比率であるUCR比率が、該カラー画像の色彩の彩度に応じた所定値となるように設定されている色変換テーブルを記憶しておく機能と、
    カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照して、該カラー画像データを、前記各色インクの階調値の組み合わせに変換する機能と、
    前記各色インクの階調値の組み合わせに基づいて、前記制御情報を前記印刷部に出力する機能と
    を実現するプログラムを記録した記録媒体。
  5. カラー画像データを受け取り、互いに組み合わせると無彩色を呈する複数の有彩色と黒色とを用いて該カラー画像データの色彩を表現するための、該各色の階調値の組み合わせに変換する画像処理装置であって、
    カラー画像の各々の色彩と、該色彩を表現するための前記有彩色および黒色の階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶している色変換テーブル記憶手段と、
    カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照して、該カラー画像データを、前記各色階調値の組み合わせに変換する色変換手段と
    を備え、
    前記色変換テーブルは、
    前記カラー画像の色彩に対応付けられた前記各色階調値の組み合わせの中で、前記組み合わせて無彩色を表現可能な前記各有彩色インクの階調値、前記黒色インクの階調値に置き換える比率であるUCR比率が、該カラー画像の色相に応じた所定値に設定されているテーブルである
    画像処理装置。
  6. カラー画像データを受け取り、互いに組み合わせると無彩色を呈する複数の有彩色と黒色とを用いて該カラー画像データの色彩を表現するための、該各色の階調値の組み合わせに変換する画像処理装置であって、
    カラー画像の各々の色彩と、該色彩を表現するための前記有彩色および黒色の階調値の組み合わせとを対応付けた色変換テーブルを記憶している色変換テーブル記憶手段と、
    カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照して、該カラー画像データを、前記各色階調値の組み合わせに変換する色変換手段と
    を備え、
    前記色変換テーブルは、
    前記カラー画像の色彩に対応付けられた前記各色階調値の組み合わせの中で、前記組み合わせて無彩色を表現可能な前記各有彩色インクの階調値を、前記黒色インクの階調値に置き換える比率であるUCR比率が、該カラー画像の彩度に応じた所定値に設定されているテーブルである画像処理装置。
  7. カラー画像データを受け取り、互いに組み合わせると無彩色を呈する複数の有彩色と黒色とを用いて該カラー画像データの色彩を表現するための、該各色の階調値の組み合わせに変換する画像処理方法であって、
    カラー画像の各々の色彩と、該色彩を表現するための前記有彩色および黒色の階調値の組み合わせとが対応付けられているとともに、該各色階調値の組み合わせの中で、前記組み合わせて無彩色を表現可能な前記各有彩色インクの階調値を、前記黒色インクの階調値に置き換える比率であるUCR比率が、該カラー画像の色相に応じた所定値となるように設定されている色変換テーブルを記憶しておき、
    カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照して、該カラー画像データを、前記各色階調値の組み合わせに変換する画像処理方法。
  8. カラー画像データを受け取り、互いに組み合わせると無彩色を呈する複数の有彩色と黒色とを用いて該カラー画像データの色彩を表現するための、該各色の階調値の組み合わせに変換する画像処理方法であって、
    カラー画像の各々の色彩と、該色彩を表現するための前記有彩色および黒色の階調値の組み合わせとが対応付けられているとともに、該各色階調値の組み合わせの中で、前記組み合わせて無彩色を表現可能な前記各有彩色インクの階調値を、前記黒色インクの階調値に置き換える比率であるUCR比率が、該カラー画像の色彩の彩度に応じた所定値となるように設定されている色変換テーブルを記憶しておき、
    カラー画像データを受け取って、前記色変換テーブルを参照して、該カラー画像データを、前記各色階調値の組み合わせに変換する画像処理方法。
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