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JP4614023B2 - 顔料分散装置及び顔料分散方法 - Google Patents

顔料分散装置及び顔料分散方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,減圧しながら分散可能な顔料分散装置及び顔料分散方法及び着色樹脂粒子分散液製造方法に関する。より詳しくは,インクジェット記録用顔料インクの顔料および着色樹脂粒子分散液の分散装置及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録用インクは大別すると油性インクと水性インクがあるが,油性インクは臭気・毒性の点で問題があり,水性インクが主流となりつつある。
【0003】
しかしながら,従来の水性インクの多くは着色剤として水溶性染料を用いているため耐水性や耐光性が悪いという欠点を有していた。また,染料が分子レベルで溶解しているため,オフィスで一般に使用されているコピー用紙などのいわゆる普通紙に印刷すると髭状のフェザリングと呼ばれるブリードを生じて著しい印刷品質の低下を招いていた。
【0004】
上記欠点を改良するためにいわゆる水性の顔料インクが過去に様々に提案されており,例えばバインダー兼分散剤として水溶性樹脂を用いてカ−ボンブラックや有機顔料を分散させた樹脂溶解型のインクやポリマーラテックスあるいはマイクロカプセルとして着色剤を内包する樹脂分散型のインクが各種提案されている。
【0005】
ジェットプリンター用水性顔料インクとしては,なるべく微粒子径に分散された着色剤粒子が求められており,具体的な樹脂溶解型の水性インクの例として,特許第2512861号公報では,(a)顔料とポリマー分散剤とを2−ロールミリング装置に充填し;(b)摩砕して顔料とポリマー分散剤との分散体を得;そして(c)この顔料分散体を水性キャリア媒体中に分散させる工程からなる,改良された特性を有する水性の顔料入りインクジェット用インクの調整方法が,特開平3−153775号公報では,a)顔料とカルボキシル基含有ポリアクリル系樹脂とを含有する固体顔料調合物b)水で希釈可能な有機溶媒c)湿潤剤d)水を含有するインクジェット印刷用水性インク組成物が提案されている。
【0006】
樹脂分散型の水性インクは,インクの水分蒸発に伴う粘度上昇は比較的少なく,また耐水性に優れるという利点がある。具体的には,特開昭58−45272号公報では染料を含有したウレタンポリマーラテックスを含むインク組成物,特開昭62−95366号公報では水不溶性有機溶媒中にポリマーと油性染料を溶解し,さらに表面活性剤を含む水溶液と混合して乳化させた後に溶媒を蒸発してポリマー粒子中に内包された染料を含むインクが提案され,特開昭62−254833号公報ではカプセル化時の有機溶媒と水との間の界面張力を10ダイン以下にすることによる着色料水性懸濁液の製造法が提案され,特開平1−170672号公報では同様にマクロカプセル化した色素を含有する記録液等が提案されている。
【0007】
しかしながら,これらの技術は顔料の微粒子化には有効なものの,分散している着色剤の分散安定性やノズルからの噴射安定性が必ずしも十分ではなく,印刷品質も必ずしも良くはなかった。
【0008】
インクの吐出安定性を向上させる手段として,減圧(真空)下及び/又は超音波処理する方法が知られており,具体的には特開平06−184479号公報の記録液では,水性媒体と特定アゾ色素の少なくとも1種とを充分に混合して溶解し,孔径1μのテフロンフイルタ−で加圧濾過した後,真空ポンプ及び超音波洗浄器で脱気処理する方法,特開平06− 25574号公報のインキジエツトプリンタ−用インキでは連続液相,不連続相及び固相からなる微細分散三相懸濁液を含むインキ,具体的には,例えば,カ−ボンブラツク等の顔料からなる固相をオレイン酸に分散させた微細分散液と乳化補助剤であるソルビタンモノステアレ−トとを含む疎水相に,乳化剤であるトリエタノ−ルアミン,乳化補助剤及び水を含む親水性相を撹拌下に添加した後,得られた懸濁液を超音波処理することにより,前記の三相懸濁液を得る方法,特開平09−286943号公報の記録液の処理方法では,少なくとも分散剤,水性液媒体,顔料,水から構成される水性顔料系記録液を,調製,精製した後,超音波処理 ,並びに真空脱泡処理を行う方法が開示されている。
【0009】
しかしながら,これらの技術は超音波そのものは顔料分散効果を有しておらず,顔料の微粒子化や濡れ改良効果,及び脱泡効果が小さいために,顔料の分散安定性やノズルからの噴射安定性が必ずしも十分ではなく,印刷品質も必ずしも良くはなかった。
【0010】
一方,一般的な顔料分散方法としては特開昭61−163970号公報の塗料用着色材およびその製造法として,塗料用樹脂を含む溶液で顔料を湿潤処理し,溶液中に顔料を分散させた後,乾燥固化させ,顔料表面を塗料用樹脂で被覆することにより,塗膜の光学的性質等に優れた塗料用着色材を得る方法が,特開昭62−192471号公報の粉体塗料の製造方法では湿式分散機により溶剤に溶解された樹脂液中に顔料が均一に分散された分散物を,瞬間真空乾燥することにより,顔料分散性が格段に改善され,隠ぺい性,平滑性に優れた粉体塗料を得る方法が提案されており,インクジェット記録用インクの製造方法として応用が可能であるが,一度分散液を固化するため,再分散工程が必要であることに加えて,顔料の分散媒への濡れが不十分でインクの吐出安定性が不十分であった。
【0011】
また,特開平09−12933号公報の磁性塗料の製造方法では,連続式2軸混練機を用いて磁性塗料を混練する混練工程において,混練機の混練部を真空雰囲気下にして混練を行う方法が開示されているが,本製造方法の装置構成では磁性粉と塗料樹脂の溶融混練であり,湿式混練が不可能であった。
【0012】
また,一般に,減圧で顔料分散を行うことは知られているが,連続して効率よく顔料分散を行うことが可能な顔料分散装置は知られていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は,微粒子径で分散安定性に優れ,かつインクジェット記録において安定した噴射と優れた印刷品質を可能にする,顔料を着色剤とするインク組成物を可能にする顔料分散装置及び顔料分散方法及び着色樹脂粒子製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は,上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果,本発明を解決するに至った。即ち本発明は,次の発明を提供する。
【0015】
(1)顔料分散装置
少なくとも減圧可能な構造を有する容器と,固体顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する,固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした,固体顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含み,固体顔料が液媒体に安定分散するまで,当該容器と分散機構との間に,当該混合物を連続的に循環させる機構を設けたことを特徴とするメジアミルからなる顔料分散装置。
【0016】
(2)顔料分散方法
少なくとも減圧可能な構造を有する容器と,固体顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する,固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした,固体顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含む顔料分散装置を用いて,固体顔料を液媒体に安定分散させるに当たり,当該混合物を循環させて,減圧下で,固体顔料を液媒体に安定分散させることを特徴とする顔料分散方法。
【0017】
以下,順に本発明を説明する。
【0018】
本発明の顔料分散装置は,少なくとも分散が行われる部分が減圧構造を有し,かつ分散液が連続的に通過するメジアミルである顔料分散装置で,好ましくは,分散液の供給及び/又は回収タンクから減圧を行うようにした顔料分散装置である。
【0019】
本発明の顔料分散装置は,少なくとも次の構成を有する。
▲1▼液媒体(分散媒に対応する)と,固体顔料との混合物を入れる,減圧可能な構造を有する容器を有する。
▲2▼運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する,固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした,固体顔料を液媒体に分散させるメジアミルを有する。
▲3▼固体顔料を液媒体に安定分散するまで,前記▲1▼の容器と分散機構との間に,前記▲1▼の混合物を連続的に循環させる機構を有する。
【0020】
本発明の顔料分散装置の最大の特徴は,上記▲1▼と▲3▼とを兼備する点にある。
【0021】
本発明の好ましい分散装置であるメジアミルとしては,公知慣用のビーズミルやボールミルがいずれも使用できるが,例えば,分散技術入門(日刊工業新聞社;小石真純,釣谷泰一著)による分類の,通過型ミル(サンドミル,連続式アトライター,パールミル,モリネックス)及びそれらの変形ミル(ドライスヴェルケ製DCPミル,三井鉱山製SCミル,井上製作所製スパイクミル,シンマルエンタープライゼス製ダイノーミルECM,浅田鉄工製ナノミル等)が挙げられる。
【0022】
これらは分散メジア(ボールあるいはビーズ)の磨砕剪断力を利用して顔料の磨砕・分散を行う分散装置であるが,本発明では,減圧下でそれが行えるようにして用いる。
【0023】
中でも,固体顔料と液媒体との混合物が通過する,運動するメジア群を含む前記分散機構が,ベッセルの内壁に微小間隙を介して,外壁を有する回転可能なロータを有し,その微小間隙にメジアが運動可能となる様に充填されており,ロータを回転させるとともに,固体顔料と液媒体との混合物を,分散機構中で略栓流となる様にして通過させる様になっている環状メジアミルが,特に好ましい。
【0024】
固体顔料と液媒体との混合物を安定な固体顔料分散液とするに当たり,当該混合物を略栓流とするためには,上記に加えて,例えば,ロータ表面に,メジアに回転と衝撃力を与える突起と,当該混合物の流れ方向とは逆方向にメジアが戻される様に溝を形成する様にするのが好ましい。
【0025】
固体顔料と液媒体との混合物や,固体顔料分散液を冷却可能なように,少なくとも装置の一部に冷却構造を設けることが好ましい。具体的には,固体顔料と液媒体との混合物や,固体顔料分散液と直接接しないように,ロータ内部やベッセル外壁等に,冷却ジャケットを設けて,冷却水等の冷媒を通過させて,分散時の温度を調節する様にするのが好ましい。以下,この様な特に好ましいメジアミルをスパイクミルと称する。
【0026】
メジアミルのロータとベッセルとの微小間隙には分散のためのメジアが充填されている。本発明の分散に用いる分散メジアは,既存のものが使用可能であり,メジア径が細かいほど,密度が大きいほど,回転数が高いほど顔料の粉砕能力はアップする。分散メジアはガラスビーズやセラミックスビーズ,スチールボール,ステンレスボール,架橋樹脂ビーズなどが好ましく,顔料を微粒子にするには,なるべく細かい径のビーズが好ましい。そして,これらのメジアはメジアミルから外部には流出しない様になっている。
【0027】
本発明では,固体顔料と液媒体との混合物を入れる,減圧可能な構造を有する容器を有するが,固体顔料と液媒体との混合物を供給する供給容器,及び/又は,固体顔料が液媒体に安定分散した顔料分散液を回収する回収容器を有し,すくなくともいずれか一方から減圧を行う様にする。
【0028】
即ち,本発明では,供給容器と回収容器とを同一として,兼用容器として一つのみ用いる場合と,供給容器と回収容器とを別々に両方用いる場合とがある。前者の場合には,この一つの兼用容器から減圧を行い,後者の場合には,供給容器の圧力に対して,回収容器の圧力が負圧になる様に減圧を行うのが,好ましい。
【0029】
尚,容器に一部に超音波発信機構を設ける様にするのが,同一メジアミルを同一運転条件する場合には,より短時間で,安定な分散液が得られる点で好ましい。
【0030】
固体顔料を液媒体に安定分散するまで,前記各容器と分散機構との間に,固体顔料と液媒体との混合物を連続的に循環させる機構を設ける。この機構は,具体的には,管を設けてこれらを連結することにより,設けることが出来る。勿論,この配管部分にジャケットを設けて上記と同様に分散時の温度を調節する様にすることも出来,実際にも,そうすることが好ましい。
【0031】
メジアミルの分散が行われる部分を減圧とするには,例えば脱気をすれば良い。上記容器と管とを連結配管するならば,例えば,固体顔料と液媒体との混合物を入れておく,減圧可能な構造を有する容器の上方から減圧を行う様にすれば良い。
【0032】
本発明の顔料分散方法を実施するに当たっての分散温度や圧力は,特に制限されるものではなく,適宜選択すれば良いが,分散温度としては,循環系を全体を1〜20℃,好ましくは1〜10℃とし,循環系の圧力は,1〜500mmHg,好ましくは1〜100mmHgとする。インクジェット記録用水性インク用顔料分散液を得る場合には,印刷濃度がより高く安定である,長期連続印字における吐出安定性がより優れる等の点で,分散が行われる循環系は,温度1〜10℃で1〜100mmHgとするのが特に好ましい。
【0033】
こうした顔料分散装置を用いて前記混合物を,安定な固体顔料分散液となるまで,繰り返し循環させて,固体顔料の液媒体への分散を行う。安定な分散液を得るに当たっては,予め種種の条件にて循環の途中にて適宜サンプリングを行い,必要な安定性が保たれる様な条件を見い出してから,その最適条件にて実施することが好ましい。一般的には,分散安定性が一定となり飽和するまで処理作業を行う様にするのが好ましい。
【0034】
次に本発明の顔料分散装置を図面を用いて説明する。図1は,本発明の供給タンクと回収タンクが同一である,減圧構造を有する顔料分散装置1Aを示す。黒抜き矢印は,固体顔料の液媒体との混合物の流れ方向を,白抜き矢印は,装置を一定温度に保つための液媒体を通過させる,ジャケット(後述)内での流れ方向を示す(以下,同様。)。
【0035】
この装置は,脱気要素に相当する脱気用ポンプ(図示せず)と,減圧するの必要な脱気口6を設けた供給容器兼回収容器である,減圧可能な構造を有する容器に相当するタンク4と,メジアミルと,固体顔料の液媒体との混合物を連続的に循環させる機構である,タンク4とメジアミルとを連結する管7とからなっている。実使用時には,脱気用ポンプと脱気口6とを管で連結して,系を減圧状態とする。
【0036】
このタンク4の内部の側部には,超音波発信機構に相当する超音波発振器5が設けられており,一方,タンク4と,固体顔料の液媒体との混合物を供給する側の管4の外部に,ジャケットを設けて,循環系が一定の温度に保てる様な仕組みとなっている。このタンク4の下部は管7により,メジアミルの入口(導入口)に連結されている。逆に,メジアミルの出口(排出口)は,タンク4に戻される様に管7により連結されており,これにより循環を行う。
【0037】
メジアミルの入口に対して,固体顔料と液媒体との混合物をより安定的に供給する際には,図示していないが,供給ポンプを設ける様にしても良い。
【0038】
メジアミルは,ベッセルと,ロータ3とを含み,ベッセルの壁2と,ロータ3の外壁との間に微小間隙を有しており,この間隙に,上記分散メジアが充填されている。このロータは環状であり,軸中心に回転する様になっており,固体顔料の液媒体との混合物を,管7を通してメジアミルの入口から導入し,この間隙に通過させると,ロータ3の回転によりメジア群が運動し,その剪断力により,固体顔料の液媒体への分散が起こり,入口よりは,より安定な分散状態となり,メジアミルの出口(排出口)より,管7へ排出される様になっている。メジアの回転や衝撃力に基づく運動量を大きくし,結果的に前記混合物に大きな剪断力が作用する様に,ロータ3の表面には凹凸が設けられている。
【0039】
ベッセルの外部にも同様に,ジャケットが設けられ,微小間隙の通過時においても,系内温度が一定の温度に保てる様な仕組みとなっている。
【0040】
こうすることにより,前記混合物や分散安定性が未だ不十分な分散液を減圧しながら循環分散が可能となる。
【0041】
図2は,本発明の供給容器と回収容器とを別々に両方有する,減圧構造を有する顔料分散装置1Bを示す。この装置1Bは,供給容器に対応する供給タンク4Aと,回収容器に対応する回収タンク4Bを有しており,各タンクには,装置1Aと同様に,脱気口6と超音波発振器5がそれぞれ設けられている。また,タンク4Aとメジアミルとを連結する管7の一部分に圧力調節弁8を,タンク4Aと4Bを連結する管7の一部分に切替弁9を設けてある。
【0042】
この装置1Bの場合には,供給タンク4Aの圧力に対して,回収タンク4Bの圧力が負圧となる様にして,即ち,タンク4Aよりも4Bの方がより高い減圧度となる様にして,固体顔料の液媒体への分散を行うのが,好ましい。
【0043】
具体的に,供給タンク4Aと回収タンク4Bを上記した様に個別に設置する場合には,供給タンク4A側を常圧か減圧に設定し,さらに供給タンク4Aの圧力に対して,回収タンク4Bの圧力を負圧になるようにする事により,メジアミル中の分散部分で減圧分散可能となる。この際の圧力調節に弁8,9を利用する。
【0044】
この時,固体顔料と液媒体との混合物をメジアミルの入口に供給するための供給ポンプを設けた場合にはそれの負荷を大幅に小さくすることが可能になり,場合によっては供給ポンプが不要となる。供給タンク4Aに受けた固体顔料と液媒体の混合物は,一度常圧に戻してから回収タンクに戻して,固体顔料の液媒体への分散安定性が飽和するまで,循環させて再度繰り返し分散を行うことが可能であるが,回収タンク4Bの減圧度以上の吸引ポンプで供給タンクに分散液を戻すことによって,常圧に戻すことなく分散を継続することが可能になる。
【0045】
この時,メジアミルは,分散部分の供給側に圧損を発生させる弁構造を設けたり,分散部分の断面積が小さく分散部分に大きな圧損が生じる様にした上記変形ミルを用いることが好ましい。
【0046】
図2の装置の場合,タンク4Aに充填された固体顔料と液媒体との混合物は,タンク4Aとタンク4Bとの圧力差によって,メジアミルのベッセル内に供給されるが,圧力調節弁8を絞ることによりベッセル内での負圧をコントロールすることができる。この時,タンク4Aとタンク4Bとの間の切替弁9は閉じられている。
【0047】
当該混合物の分散液がタンク4Bに回収された時点で,圧力調節弁8が閉じられ,タンク4Aと4Bの減圧度を逆転して切替弁8を開放にすると,該混合物はタンク4Aから4Bへ移動する。固体顔料と液媒体の混合物について,同様の操作を繰り返すことにより,繰り返しパス分散が可能となる。分散安定性が飽和して安定な分散液となるまでは,この繰り返しで,当該混合物の分散安定性は,より向上する。
【0048】
尚,当該混合物のメジアミル中での流量あるいは処理量は,循環分散の場合には,供給ポンプを設けると,その供給量で処理量を決定することが出来る。パス方式においてはタンク4Aと4Bの減圧度の差によって処理量が決定することが出来るが,メジアミルの構造によってはローターの回転数が上がると処理量が増すものもある。例えばSCミルは,ローターの回転に伴う負圧の発生によって吸引効果が生じるためにローターの回転数が上がると処理量が増す。但し,本発明においてメジアミルとして好適なスパイクミルの構造では,回転に伴う吸引力が働かないので,圧力差が支配要因となる。
【0049】
本発明の顔料分散装置として,少なくとも回収タンク4Bの一部に超音波発振器を設置した顔料分散装置は,メジアミルによって減圧分散処理された分散液の分散安定性をさらに向上させる。上記装置1Bは,タンク4A,4Bの両方に超音波発振器を設けた,好ましい形態を示してある。
【0050】
また,本発明の顔料分散装置の循環系を一定温度に保ったり,分散により固体顔料と液媒体との混合物または安定な分散液が必要以上に加熱されるのを避けるに当たって,メジアミルの分散部分,配管,タンクの少なくとも一部を冷却構造にした本発明の顔料分散装置は,減圧による,固体顔料と液媒体との混合物または安定な分散液中の揮発成分の蒸発を防止することも出来る。
【0051】
このジャケット構造は,固体顔料と液媒体との混合物または安定な分散液が接する部分になるべく広く設置されることが好ましく,また,冷却に伴う,装置各部の結露や凍結及び機械的な強度低下等の生じないような対策を行うことが好ましい。
【0052】
本発明では,少なくとも減圧可能な構造を有する容器と,固体顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する,固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした,固体顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含む顔料分散装置を用いて,固体顔料を液媒体に安定分散させるに当たり,当該混合物を循環させて,減圧下で,固体顔料を液媒体に安定分散させる。
【0053】
本発明では,固体顔料と液媒体とを必須成分として,分散を行うべき処理液たる,混合物が調製される。
【0054】
本発明の顔料分散方法に用いる固体顔料は,特に限定されるものではなく,公知慣用の顔料がいずれも使用できるが,例えばカーボンブラック,チタンブラック,チタンホワイト,硫化亜鉛,ベンガラ等の無機顔料や,フタロシアニン顔料,モノアゾ系,ジスアゾ系等のアゾ顔料,フタロシアニン顔料,キナクリドン顔料,イソインドリン顔料,ペリレン顔料,イミダゾロン顔料等の有機顔料などがある。
【0055】
この混合物には,固体顔料と液媒体の他に,樹脂や樹脂の中和剤を含めることが出来る。液媒体としては,少なくとも,酸価を有する樹脂と,水と,塩基を含む液媒体が好適に用いられる。
【0056】
本発明の顔料分散方法において用いる樹脂も,特に限定はなく公知公用のものが使用可能であり,天然樹脂や合成樹脂に限定されず様々な樹脂が用いることができ,例えばスチレン系樹脂,(メタ)アクリル系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0057】
本発明のより好ましい樹脂としては,酸価を有する樹脂があり,塩基との組み合わせで水溶性あるいは水分散性の酸価を有する樹脂である。好ましい樹脂の酸価は,10〜200で,分子量は1000以上10万以下である。特に好ましい樹脂組成としてはスチレン,置換スチレン,(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも一つのモノマーと,(メタ)アクリル酸との共重合体である。
【0058】
本発明で用いる塩基としては,例えば水酸化ナトリウム(カセイソーダ),水酸化カリウム,水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物,アンモニア,トリエチルアミン,モルホリン等の塩基性物質の他,トリエタノールアミン,ジエタノールアミン,N−メチルジエタノールアミン等のアルコールアミンが使用可能であり,これらは単独あるいは組み合わせても良い。使用する塩基の量は,樹脂の酸基に対して分散性や,例えばインクジェット適性を考慮して適当な中和率に設定すればよい。
【0059】
液媒体は,この固体顔料を分散させるべき分散媒であり,水及び/又は有機溶剤が挙げられる。
【0060】
本発明の顔料分散方法において用いる有機溶剤として,前記した樹脂を溶解可能な水溶性有機溶剤が用いられるが,例えばアセトン,ジメチルケトン,メチルエチルケトン等のケトン系溶媒,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒,酢酸エチルエステル等のエステル系溶媒,エチレングリコールモノメチルエーテル,エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒,アミド類,等樹脂に合わせて選択すれば良い。これらの溶剤は,単独又は複数の組み合わせで樹脂を溶解又は分散するものがよい。
【0061】
一般の顔料分散,特に分散媒として有機溶剤が主の場合には,分散媒は顔料の中に容易に浸透しやすく,顔料を十分に濡らすことができる。一方,水若しくは水を主体とする液媒体においては強力な磨砕力を有するミルを用いてもなかなか顔料を濡らすことが難しい。
【0062】
本発明の顔料分散装置を用いて,少なくとも固体顔料と液媒体とからなる混合物の分散を行うと,顔料微粒子は,液媒体を構成する樹脂・有機溶剤・界面活性剤等によって,極めて効率良く濡れることになる。
【0063】
固体顔料を水若しくは水を主体とする液媒体に安定分散するに当たっては,界面活性剤等を用いる方法があるが,これらは,インキや塗料等の顔料分散液の最終使用用途において,皮膜耐水性などの点で,不都合を生じる場合が多い。
【0064】
本発明の顔料分散装置及び顔料分散方法は,界面活性剤を用いず,水若しくは水を主体とする分散媒への,固体顔料の安定分散を行うのに好適である。
【0065】
上記した様な,酸価を有する樹脂と塩基とを組み合わせて用いることにより,界面活性剤を用いずに,固体顔料の分散を行うことが出来,分散安定性に優れた顔料分散液を得ることが出来る。
【0066】
本発明の顔料分散方法では,本発明の分散装置によって,固体顔料を含む混合物がメジアミルによる分散中に減圧下にあると,少なくとも酸価を有する樹脂と水と,塩基からなる分散媒が,固体顔料の磨砕と共に生じる新たな顔料表面に極めて効率良く浸透し,その結果,固体顔料表面が濡れる。この時,より高い減圧度で分散を行う場合には,水などの沸点の低い分散媒成分の揮発を押さえて顔料分散液の組成が変化しないように,減圧度に応じた冷却を行うことが好ましい。
【0067】
本発明の顔料分散装置を用いて,少なくとも固体顔料と水のみ或いは水を主体とする液媒体からなる混合物の分散を行うと,顔料微粒子は分散媒を構成し得る,例えば酸価を有する樹脂・有機溶剤・塩基等によって極めて効率良く濡れることになる。
【0068】
その結果,得られた顔料分散液中の顔料微粒子は分散媒と完全に濡れることによって,より分散安定性に優れる。この顔料分散液は,例えばインクジェット記録用インクに用いると,安定したインクの吐出と鮮やかで優れた印刷品質が可能となる。
【0069】
液媒体として,少なくとも,酸価を有する樹脂と,水と,塩基を含む液媒体を用いて,前記した操作を行うと,一部の樹脂は固体顔料の微粒子に吸着せず,分散媒中に溶解している場合が多いが,樹脂に対する貧溶媒を加えることによって,液媒体中の固体顔料の微粒子表面を,前記樹脂で被覆することが出来る。
【0070】
尚,樹脂に対する貧溶媒としては,水及び/または樹脂を溶解しない水溶性有機溶剤を用いるのが好ましい。これは水のみであっても,前記水溶性有機溶剤の水溶液であっても良い。
【0071】
本発明の顔料分散方法において,樹脂に対して貧溶媒として作用する有機溶剤は,水の他に,例えばエチレングリコール,プロピレングリコール,ジエチレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール類またはそれらのアルキルエーテル類等の水溶性有機溶剤及びそれらの水溶液がある。
【0072】
本発明の顔料分散方法での水と,水溶性有機溶剤の比率は,本発明における効果を達成すれば特に規定されないが,水/有機溶媒の重量比が10/1〜1/1となるような量が好ましい。
【0073】
上記した操作の結果,得られた顔料分散液中の顔料微粒子は分散媒との完全な濡れに加えて,樹脂による被覆が完全に行われることによって,極めて分散安定性に優れる。この顔料分散液はインクジェット記録用インクに用いると,より安定したインクの吐出と,より鮮やかでより優れた印刷品質を可能にする。
【0074】
特に,少なくとも,樹脂が酸価を有する樹脂と,水と,樹脂が自己水分散性になるように添加量をコントロールした,樹脂を溶解可能な水溶性有機溶剤と,塩基を含む液媒体は,本発明の顔料分散装置と顔料分散方法によって,自己水分散性となった樹脂が顔料微粒子表面を強力に被覆し,かつ,貧溶媒として,水のみ,または,樹脂を溶解しない水溶性有機溶剤の水溶液の様な,水を主体とする液媒体を加えることにより,液媒体に一部溶解している樹脂が,更に顔料微粒子表面を被覆し,いわゆるマイクロカプセルとなり極めて安定した着色樹脂粒子分散液となる。本発明では,このマイクロカプセルからなる着色樹脂粒子分散液も,顔料分散液と呼ぶ。
【0075】
この着色樹脂粒子分散液は,インクジェット記録用インクに用いると,最も優れた特性を発揮し,安定したインクの吐出と鮮やかで優れた印刷品質が,更に一層可能となる。
【0076】
本発明の顔料分散方法において,本発明の顔料分散装置による分散の前後に,固体顔料と液媒体との混合物や,顔料分散液について,他の分散手段による予備分散や後処理分散を行うことができる。
【0077】
上記の顔料分散方法における固体顔料と液媒体との混合物や,顔料分散液について,添加剤として,必要に応じて分散剤,可塑剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤等を用いても良いし,これらは,本発明の顔料分散方法の任意の工程で加えても良い。
【0078】
この様にして本発明によって,所望の粒子径の顔料分散液が得られるが,通常その平均粒子径範囲は,0.01〜1μmである。尚,分散液を最終的に,例えばインクジェット用記録液として用いる場合には,平均粒子径をサブミクロンオーダー(1μm未満)とすればよい。
【0079】
この様にして得られた顔料分散液はそのまま用いることもできるが,共存している有機溶媒の影響で顔料粒子や着色樹脂粒子の分散安定性が悪い場合には,保存安定性をより向上させるためや,或いはより火災や公害に対する安全性を高めるために,更に脱溶媒を行うことが好ましい。
【0080】
この操作は,液媒体が,酸価を有する樹脂と,水と,樹脂溶解可能な水溶性有機溶剤と,塩基からなり,かつ,水及び/又は樹脂を溶解しない水溶性有機溶剤からなる前記樹脂に対する貧溶媒を加えて,液媒体中の固体顔料を前記樹脂で被覆して,固体顔料を被覆して液媒体に安定分散させた後に,少なくとも樹脂溶解可能な水溶性有機溶剤を液媒体から除去することにより実施できる。
【0081】
本発明の顔料分散方法によって得られる,サブミクロンオーダーの顔料マイクロカプセルを含む着色樹脂粒子分散液は,インクジェット記録用水性インクとして用いると,分散安定性,噴射特性に優れたインクジェット適性を示す。
【0082】
最終的に得られる着色樹脂粒子分散液をインクジェット記録用水性インクとして用いる場合には,本発明の各工程或い付加的に行われる工程の全てにおいて,液媒体は,イオン交換水以上の純度を有することが好ましい。
【0083】
また上記で得られた分散液を,インクジェット記録用インクとして用いる場合には,インクの乾燥を防止するために,乾燥防止剤を当該インク中に存在させておくのが好ましい。当該乾燥防止剤は,顔料分散液あるいは着色樹脂粒子分散液に直接添加すれば良い。
【0084】
かかる乾燥防止剤は,インクジェットの噴射ノズル口でのインクの乾燥を防止する効果を与えるものであり,通常水の沸点以上の沸点を有するものが使用される。このような乾燥防止剤としては,従来知られている公知慣用のものがいずれも使用できるが,例えばエチレングリコール,プロピレングリコール,ジエチレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール類またはそれらのアルキルエーテル類,等がある。
【0085】
乾燥防止剤の使用量は,種類によって異なるが,通常,水100重量部に対して1〜150重量部の範囲から適宜選択される。
【0086】
特に本発明の方法を,インクジェット記録用水性インクの製造方法に適用する場合においては,必要に応じて,インクを紙によりよく浸透させるための浸透性付与剤として,浸透性付与効果を示す水溶性有機溶媒,水溶性樹脂,pH調整剤,分散・消泡・紙への浸透のための界面活性剤,防腐剤,キレート剤等の添加剤を加えることができる。
【0087】
特に本発明の方法を,インクジェット記録用水性インクの製造方法に適用する場合においては,得られた分散液はそのまま水性インクとして用いることが出来るが,通常は,所望の粒径のフィルターに通過させ濾過して,インクジェット記録装置のノズル径よりも小さい粒子のみが液媒体に分散したインクジェット記録用水性インクとして使用に供される。従って,この用途の場合には,好ましくは最終濾過後に添加剤を添加するのは,避けたほうがよい。
【0088】
本発明の顔料分散方法によって得られる顔料マイクロカプセルからなる着色樹脂粒子は,分散液の状態で,或いは乾燥した固体及び粉体の状態で,発色性,分散安定性に優れていることから,インクジェット記録用水性インクの他,筆記具用インク,塗料,カラーフィルター,トナーへの応用が可能である。
【0089】
【発明の実施の形態】
本発明は次の実施形態を含む。
1. 少なくとも減圧可能な構造を有する容器と,固体顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する,固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした,固体顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含み,固体顔料が液媒体に安定分散するまで,当該容器と分散機構との間に,当該混合物を連続的に循環させる機構を設けたことを特徴とするメジアミルからなる顔料分散装置。
【0090】
2. 固体顔料と液媒体との混合物が通過する,運動するメジア群を含む前記分散機構が,ベッセルの内壁に微小間隙を介して,外壁を有する回転可能なロータを有し,その微小間隙にメジアが運動可能となる様に充填されており,ロータを回転させるとともに,固体顔料と液媒体との混合物を,分散機構中で略栓流となる様にして通過させる上記1記載の顔料分散装置。
【0091】
3. 固体顔料と液媒体との混合物を略栓流とするために,ロータ表面に,メジアに回転と衝撃力を与える突起と,当該混合物の流れ方向とは逆方向にメジアが戻される様に溝を形成した上記2記載の顔料分散装置。
【0092】
4. 固体顔料と液媒体との混合物を供給する供給容器,及び/又は,固体顔料が液媒体に安定分散した顔料分散液を回収する回収容器を有し,すくなくともいずれか一方から減圧を行う様にした上記1〜3記載の顔料分散装置。
【0093】
5. 供給容器と回収容器とを同一とした上記4記載の顔料分散装置。
【0094】
6. 供給容器と回収容器とを別々に両方有し,供給容器の圧力に対して,回収容器の圧力が負圧になるようにした上記4記載の顔料分散装置。
【0095】
7. 容器の一部に超音波発信機構を設けた上記1〜6記載の顔料分散装置。
【0096】
8. 分散液を冷却可能なように,少なくとも装置の一部が冷却構造を設けた上記1〜7記載の顔料分散装置。
【0097】
9. 少なくとも減圧可能な構造を有する容器と,固体顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する,固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした,固体顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含む顔料分散装置を用いて,固体顔料を液媒体に安定分散させるに当たり,当該混合物を循環させて,減圧下で,固体顔料を液媒体に安定分散させることを特徴とする顔料分散方法。
【0098】
10. 液媒体として,少なくとも,酸価を有する樹脂と,水と,塩基を含む液媒体を用いる上記9記載の顔料分散方法。
【0099】
11. 液媒体として,少なくとも,酸価を有する樹脂と,水と,塩基を含む液媒体を用い,前記樹脂に対する貧溶媒を加えて,液媒体中の固体顔料を前記樹脂で被覆して,固体顔料の微粒子表面を被覆して液媒体に安定分散させる上記9記載の顔料分散方法。
【0100】
12. 液媒体が,酸価を有する樹脂と,水と,樹脂溶解可能な水溶性有機溶剤と,塩基からなり,かつ,樹脂に対する貧溶媒が,水または樹脂を溶解しない水溶性有機溶剤である上記10または11記載の顔料分散方法。
【0101】
13.液媒体が,酸価を有する樹脂と,水と,樹脂溶解可能な水溶性有機溶剤と,塩基からなり,かつ,水または樹脂を溶解しない水溶性有機溶剤の水溶液からなる前記樹脂に対する貧溶媒を加えて,液媒体中の固体顔料を前記樹脂で被覆して,固体顔料を被覆して液媒体に安定分散させた後に,少なくとも樹脂溶解可能な水溶性有機溶剤を液媒体から除去する上記10または11記載の顔料分散方法。
【0102】
本発明は次の好ましい実施形態を含む。
(1)少なくとも分散が行われる部分が減圧構造を有し,かつ分散液が連続的に通過するメジアミルである顔料分散装置で,好ましくは,分散液の供給及び/又は回収タンクから減圧を行う。供給タンクと回収タンクを同一の供給兼回収タンクとして,減圧ラインを該タンクに設置するか,供給タンクと回収タンクを個別に設置する場合には,供給タンク側を常圧か減圧に設定し,さらに供給タンクの圧力に対して,回収タンクの圧力を負圧になるようにする。
【0103】
(2)顔料分散方法
少なくとも分散が行われる分散部分が,減圧構造を有するメジアミル(好適には,スパイクミルの供給兼回収タンクに減圧ライン)を用いて減圧しながら,顔料と,酸価を有する樹脂の塩基(好適にはカセイソーダ)を含む水溶液を用いて顔料分散を行う。
【0104】
(3)着色樹脂粒子分散液製造方法
少なくとも分散が行われる分散部分が,減圧構造を有するメジアミル(好適にはスパイクミルの供給兼回収タンクから減圧)を用いて減圧しながら,顔料と酸価を有する樹脂の塩基(好適には,樹脂の酸価に対して当量未満相当量のカセイソーダ)とメチルエチルケトンを含む水溶液を用いて顔料分散を行う。得られた顔料分散液に減圧下で撹拌しながら貧溶媒である水を滴下した後,メチルエチルケトンを留去して,顔料分散液のなかでも好適な着色樹脂粒子分散液を得る。
【0105】
本発明の好適な実施の形態を,インクジェット記録用インクに適用した場合を例にして説明すると,以下の通りである。
【0106】
得られた顔料分散液(好適には着色樹脂粒子分散液)に,インク調整用薬剤を加え,濃度・物性を調整した後,ろ過を行いインクジェット記録用水性インクとする。以上の操作は減圧下で行うことが好ましい。
【0107】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚,以下の実施例中における「部」は『質量部』を表わす。
【0108】
(実施例1)
カ−ボンブラック20部とスチレン−アクリル酸−メタクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13;分子量7400・酸価160)10部を,水200部,カセイソーダ1部,の混合溶液に入れ,室温で分散撹拌機を用いて3時間撹拌し予備分散液を得た。
【0109】
直径0.3mmのジルコニアビーズを分散メヂアとした,井上製作所製のスパイクミルを準備し,上記で得られた予備分散液を,供給兼回収タンクに入れ,タンク及び配管全体を5℃に冷却しながら,30mmHgに減圧して8時間連続分散を行い,顔料分散液として,顔料マイクロカプセルを含む黒色着色樹脂粒子分散液を得た。尚,顔料分散に当たり,装置は図1に示す通りに構成した。
【0110】
得られた黒色分散液100部を,ジエチレングリコール20部,プロピレングリコールプロピルエーテル5部,水75部からなる水溶液に,撹拌しながら少しずつ加え,30mmHgで4時間撹拌を行い,0.5μmフィルターを用いて減圧ろ過を行い,インクジェット記録用水性インクとした。
【0111】
得られた水性インク中のマイクロカプセルは0.09μmの平均粒子径を有しており,凝集物もなく長期にわたって安定な分散を示し,サーマルジェット式インクジェットプリンターを用いた印字は安定しており,得られた印刷物は滲みもなく高い黒色度を示した。得られた印刷物は文字が乱れもなく,印刷濃度も高かった。
【0112】
(実施例2)
カ−ボンブラック20部とスチレン−アクリル酸−メタクリル酸樹脂(スチレン/アクリル酸/メタクリル酸=77/10/13;分子量5万・酸価160)20部を,水210部,グリセリン35部,トリエタノールアミン8部,メチルエチルケトン90部,イソプロピルアルコール40部の混合溶液に入れ,室温で分散撹拌機を用いて4時間撹拌し予備分散液を得た。
【0113】
直径0.3mmのジルコニアビーズを分散メヂアとした,井上製作所製のスパイクミルを準備し,上記で得られた予備分散液を,供給兼回収タンクに入れ,タンク及び配管全体を5℃に冷却しながら,30mmHgに減圧して8時間連続分散を行い,顔料分散液として,顔料マイクロカプセルを含む黒色着色樹脂粒子分散液を得た。尚,顔料分散に当たり,装置は図1に示す通りに構成した。
【0114】
得られた黒色分散液に30mmHgで減圧撹拌しながら,グリセリン30部と水210部の混合液を毎分5mlの速度で滴下し,その後ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンとイソプロピルアルコールを留去し,さらに濃縮を行い,カーボンブラック含有量8%の最終の黒色着色樹脂粒子分散液を得た。
【0115】
得られた水分散物100部を,グリセリン20部,プロピレングリコールプロピルエーテル5部,水75部を加え30mmHgで4時間撹拌を行い,0.5μmフィルターを用いて減圧ろ過を行い,インクジェット記録用水性インクとした。
【0116】
得られた水性インク中のマイクロカプセルは0.09μmの平均粒子径を有しており,凝集物もなく長期にわたって安定な分散を示し,ピエゾ式インクジェットプリンターを用いた連続印字は安定しており,得られた印刷物は滲みもなく高い黒色度を示し,しかも耐水耐光性に優れていた。
【0117】
【発明の効果】
本発明の分散装置を用いた顔料分散方法によって得られる顔料分散液,着色樹脂粒子製造方法によって得られる着色樹脂粒子分散液は,微粒子径で,極めて分散安定性に優れており,インクジェット記録用水性インクに適用すると,分散安定性に優れ,安定したインクジェット吐出特性と優れた印刷品質を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の供給タンクと回収タンクが同一である,減圧構造を有するメジアミル。
【図2】 本発明の供給タンクの圧力に対して,回収タンクの圧力が負圧になるような減圧構造を有するメジアミル。
【符号の説明】
1A 分散装置A
1B 分散装置B
2 ベッセルの壁
3 ローター
4 タンク
5 超音波発振器
6 脱気口
7 管
8 圧力調節弁
9 切替弁

Claims (10)

  1. 少なくとも減圧可能な構造を有する容器と,固体顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する,固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした,固体顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含み,固体顔料が液媒体に安定分散するまで,当該容器と分散機構との間に,当該混合物を連続的に循環させる機構を設け、前記減圧可能な容器として、固体顔料と液媒体との混合物を供給する供給容器,及び固体顔料が液媒体に安定分散した顔料分散液を回収する回収容器を別々に両方有し、すくなくともいずれか一方から減圧を行い、供給容器の圧力に対して,回収容器の圧力が負圧になるようにしたことを特徴とするメジアミルからなる顔料分散装置。
  2. 固体顔料と液媒体との混合物が通過する,運動するメジア群を含む前記分散機構が,ベッセルの内壁に微小間隙を介して,外壁を有する回転可能なロータを有し,その微小間隙にメジアが運動可能となる様に充填されており,ロータを回転させるとともに,固体顔料と液媒体との混合物を,分散機構中で略栓流となる様にして通過させる請求項1記載の顔料分散装置。
  3. 固体顔料と液媒体との混合物を略栓流とするために,ロータ表面に,メジアに回転と衝撃力を与える突起と,当該混合物の流れ方向とは逆方向にメジアが戻される様に溝を形成した請求項2記載の顔料分散装置。
  4. 容器の一部に超音波発信機構を設けた請求項1〜記載の顔料分散装置。
  5. 分散液を冷却可能なように,少なくとも装置の一部が冷却構造を設けた請求項1〜記載の顔料分散装置。
  6. 少なくとも減圧可能な構造を有する容器と,固体顔料と液媒体との混合物を運動するメジア群間を通過させ分散させる分散機構を有する,固体顔料の液媒体への分散が行われる部分を減圧可能とした,固体顔料を液媒体に分散させるメジアミルとを含む顔料分散装置を用いて,固体顔料を液媒体に安定分散させるに当たり,当該混合物を循環させて,減圧下で,固体顔料を液媒体に安定分散させ、前記減圧可能な容器として、固体顔料と液媒体との混合物を供給する供給容器,及び固体顔料が液媒体に安定分散した顔料分散液を回収する回収容器を別々に両方有し、すくなくともいずれか一方から減圧を行い、供給容器の圧力に対して,回収容器の圧力が負圧になるようにすることを特徴とする顔料分散方法。
  7. 液媒体として,少なくとも,酸価を有する樹脂と,水と,塩基を含む液媒体を用いる請求項記載の顔料分散方法。
  8. 液媒体として,少なくとも,酸価を有する樹脂と,水と,塩基を含む液媒体を用い,前記樹脂に対する貧溶媒を加えて,液媒体中の固体顔料を前記樹脂で被覆して,固体顔料の微粒子表面を被覆して液媒体に安定分散させる請求項記載の顔料分散方法。
  9. 液媒体が,酸価を有する樹脂と,水と,樹脂溶解可能な水溶性有機溶剤と,塩基からなり,かつ,樹脂に対する貧溶媒が,水または樹脂を溶解しない水溶性有機溶剤である請求項または記載の顔料分散方法。
  10. 液媒体が,酸価を有する樹脂と,水と,樹脂溶解可能な水溶性有機溶剤と,塩基からなり,かつ,水または樹脂を溶解しない水溶性有機溶剤の水溶液からなる前記樹脂に対する貧溶媒を加えて,液媒体中の固体顔料を前記樹脂で被覆して,固体顔料を被覆して液媒体に安定分散させた後に,少なくとも樹脂溶解可能な水溶性有機溶剤を液媒体から除去する請求項または記載の顔料分散方法。
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