JP4601769B2 - フォトマスク用保護膜転写シート及び保護膜転写方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は転写可能なフォトマスク用保護膜転写シートに関するものであり、特に表面が傷つきやすい写真製版用原稿あるいはプリント配線板用原稿等のフォトマスクを保護するのに好適な保護膜を転写可能なフォトマスク用保護膜転写シートとその保護膜転写方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、表面が傷つきやすい写真製版用原稿あるいはプリント配線板用原稿等のフォトマスクを保護するには、ポリエチレンテレフタレート等の薄いプラスチックフィルムを支持体とし、該プラスチックフィルム上に粘着剤あるいは接着剤を積層し、該粘着剤あるいは接着剤上に離型フィルムを積層してなる表面保護フィルムが使用されている。この表面保護フィルムの使用方法としては、まず離型フィルムを剥離し、粘着剤あるいは接着剤面をフォトマスクの画像面に積層して使用する。
【0003】
ところで、最近写真製版やプリント配線基板に用いる原稿であるフォトマスクは、作成するパターンが複雑化し、高い解像力が要求されるようになってきた。このため、保護フィルムの厚みはさらに薄いものが要求されている。しかしながら、前記のような構造を有する表面保護フィルムでは、プラスチックフィルムをさらに薄くすると、フォトマスクに積層する際の作業性が悪くなり、シワ、気泡等が発生しやすくなるという問題があった。
【0004】
このようなものを改善する物として、例えば、実公平6-20601号公報では、プラスチックフィルム凹凸面上に耐磨耗性皮膜を設け、さらに耐磨耗性皮膜上に粘着剤層と離型処理層を設けた易剥離性シートとを順次積層した保護膜形成用多層シートについて記述されている。また、離型性シートの離型性面に紫外線硬化性または電子線硬化性の樹脂が硬化した硬化樹脂層と電離放射線硬化性樹脂からなる接着剤層とを順に積層してなる転写シートも一般に知られている(特開昭63-132097号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した実公平6-20601号公報に記載されているような通常使用される一般の粘着剤を使用する場合には、粘着剤層が柔らかいため、保護層自体に硬度があっても、転写後の保護層としては耐擦傷性が弱いという問題があった。また、プリント配線基板に用いるフォトマスクの保護として用いた場合、保護層表面にフォトレジストなどが付着する場合があり、これを洗浄するために有機溶剤を用いるが、保護膜としての耐溶剤性が低いため、耐久性が劣るという問題点があった。
【0006】
また、特開昭63-132097号公報に記載されているような電離放射線硬化性樹脂からなる接着剤層は、層厚が薄くなると被転写体に対する接着性が極端に低下するという問題がある。このように被転写体に対する接着性が極端に低下すると、プリント配線基板に用いるフォトマスクの保護として用いた場合、基板上のフォトレジストからフォトマスクを剥離する際に、接着剤層とフォトマスクの画像面との界面で剥がれが生じてしまい、保護膜自体の耐久性が得られないものとなってしまう。また、電離放射線硬化性樹脂のみで接着剤層を形成した場合、接着剤層の流動性が高すぎて、貼着の際に接着剤層がはみ出し、作業性の悪いものとなってしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、フォトマスク用の保護膜として転写した際に、フォトマスクの画像面に対する接着性並びに耐擦傷性及び耐溶剤性に優れた保護膜を転写可能なフォトマスク用保護膜転写シートを提供すると共に、そのフォトマスク用保護膜転写シートによりフォトマスクの画像面に対する接着性並びに耐擦傷性及び耐溶剤性に優れた保護膜を転写することができる保護膜転写方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のフォトマスク用保護膜転写シートは、剥離可能な支持体上に保護膜を設けた保護膜転写シートであって、前記保護膜は、前記支持体側から保護層、電離放射線硬化型樹脂及び熱反応性樹脂を含む接着層を順次積層してなり、且つ前記接着層は、感圧接着性を有し、フォトマスクの画像面への貼着後の加熱により前記フォトマスクの画像面に対する接着性が上昇し、電離放射線の照射により硬化するものであり、さらに、前記熱反応性樹脂としてヒドロキシル基含有モノマーをモノマー成分として含むアクリル系共重合体を含有することを特徴とするものである。
【0012】
また本発明のフォトマスク用保護膜転写シートは、前記ヒドロキシル基含有モノマーがN-メチロールアクリルアミドモノマーであることを特徴とするものである。
【0013】
また本発明のフォトマスク用保護膜転写シートは、前記電離放射線硬化型樹脂が、電離放射線の照射によって架橋硬化することができる光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーの1種又は2種以上を混合した塗料から形成されるものであって、前記光重合性プレポリマー及び前記光重合性モノマーの少なくとも1種がヒドロキシル基を含有するものであることを特徴とするものである。
【0014】
また本発明の保護膜転写方法は、前記記載のフォトマスク用保護膜転写シートを用いてフォトマスクの画像面に前記保護膜を転写する保護膜転写方法であって、以下の(1)から(4)の工程を包含することを特徴とするものである。
(1)前記フォトマスク用保護膜転写シートの前記接着層を前記フォトマスクの画像面に貼着する。
(2)前記接着層に熱を加える。
(3)前記接着層に電離放射線を照射する。
(4)前記保護膜から前記支持体を剥離する。
【0015】
また本発明の保護膜転写方法は、前記記載の(1)から(4)の工程を、(1)及び(2)の工程を同時に行った後、(3)、(4)の工程をこの順に行うことを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のフォトマスク用保護膜転写シート1について、図1を用いて説明する。
本発明のフォトマスク用保護膜転写シート1は、剥離可能な支持体2上に保護層31、接着層32からなる保護膜3及び必要に応じて設けるセパレータ4からなる構造を有する。
【0017】
本発明の支持体2は、保護層31、接着層32をそれぞれ順次積層する際に基材となるものであり、薄い保護膜3を作業性良くフォトマスクの画像面に転写させる機能を担うものである。
【0018】
このような支持体2としては、特に限定されるものではないが、支持体2を通して接着層32に電離放射線を照射して接着層32を硬化させることができるようにするためには、電離放射線透過性を有するものであることが望ましい。このような支持体2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン等の透明なプラスチックフィルムが用いられる。特に二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが強度、耐熱性、寸法安定性に優れているため、好適に用いられる。支持体2の厚みは、取り扱い性を考慮して、6〜125μmが好ましい。
【0019】
さらに、支持体2と保護層31との剥離性を向上するために、支持体2としてプラスチックフィルム21の表面に離型層22等の離型処理を施したものを用いても良い。
【0020】
この場合の離型層22は、転写後もプラスチックフィルム21の表面に残留し、保護層31との剥離を容易ならしめる層である。このような離型層22は、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アミノアルキッド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体などの中から保護層31との組み合わせにより、適宜選択できる。好ましくは、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体などの水溶性樹脂が、剥離力及び積層性の点から好適に用いられる。また、転写後の表面を凹凸にしたい場合は、離型層22にマット剤を含有してもよい。また、離型層22を設ける場合、離型層22とプラスチックフィルム21との間に、接着性を向上させるための易接着層を設けても構わない。
【0021】
次に本発明の保護層31は、保護膜3がフォトマスクの画像面に転写したあと最表面にくるため、保護膜3の耐擦傷性及び耐溶剤性に影響を及ぼす。そのため、保護層31は、高い耐擦傷性及び耐溶剤性が要求される。
【0022】
保護層31の耐擦傷性及び耐溶剤性を高くする方法としては、熱硬化性樹脂若しくは電離放射線硬化型樹脂からなる組成物を従来公知のコーティング方法によりコーティングした後、硬化させることにより得られる。
【0023】
ここでいう従来公知のコーティング方法としては、ナイフコーティング、ドクターコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、キスコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等が挙げられる。
【0024】
熱硬化性樹脂としては、シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アミノアルキッド系、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、フェノール系等の架橋性樹脂を熱によって架橋硬化させるものが使用できる。これらは単独でも使用可能であるが、架橋性、架橋硬化塗膜の硬度をより向上させるためには、硬化剤を加えることが望ましい。
【0025】
電離放射線硬化型樹脂としては、少なくとも電離放射線(紫外線若しくは電子線)の照射によって架橋硬化することができる塗料から形成されるものである。このような電離放射線硬化塗料としては、光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーなどの1種又は2種以上を混合したものを使用することができる。
【0026】
ここで、光重合性プレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリレート類などを用いることができる。
【0027】
また、光重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系モノマー類、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド、(メタ)アクリル酸-2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(N,N-ジベンジルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(N,N-ジエチルアミノ)プロピルなどの不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス-(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-(アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、3-フェノキシ-2-プロパノイルアクリレート、1,6-ビス(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-ヘキシルエーテルなどの多官能性化合物、およびトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレートなどの分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、などを用いることができる。
【0028】
この他、このような電離放射線硬化塗料には、種々の添加剤を添加しうるが、硬化の際に紫外線を用いる場合には、光重合開始剤、紫外線増感剤等を添加することが好ましい。この光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α-アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられ、紫外線増感剤としては、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0029】
本発明における接着層32とは、常温で感圧接着性を有することでフォトマスクの画像面に貼着することができ、当該貼着後の加熱により当該フォトマスクの画像面に対する接着性が上昇し、且つ電離放射線の照射による硬化によっても当該画像面に対する接着性が上昇すると共に接着層32自体の硬度が上昇するものである。
【0030】
このような接着層32としては、電離放射線硬化型樹脂及び熱反応性樹脂とを含有するものである。
【0031】
この電離放射線硬化型樹脂としては、上記同様の電離放射線(紫外線もしくは電子線)の照射によって架橋硬化することができる塗料から形成されるものである。この場合、このような電離放射線硬化塗料として用いられる光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーとしては、ヒドロキシル基を含有するものを使用することが望ましい。このようにヒドロキシル基を含有する光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーを使用した電離放射線硬化塗料から形成される電離放射線硬化型樹脂に、後述する熱反応性官能基含有モノマーとしてN-メチロールアクリルアミドモノマーなどのヒドロキシル基含有モノマーをモノマー成分として含むアクリル系共重合体からなる熱反応性樹脂を、混合したものによって接着層32を形成することにより、電離放射線硬化型樹脂と熱反応性樹脂とが反応し、接着層32自体の硬度がより向上すると共に、フォトマスクの画像面との接着性がより上昇することになる。このようなヒドロキシル基を含有する光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1,6-ビス(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-ヘキシルエーテルなどが挙げられる。また、前記同様に電離放射線硬化塗料には光重合開始剤、紫外線増感剤等を添加したものが使用できる。
【0032】
本発明における熱反応性樹脂とは、これを含有する接着層32のフォトマスクの画像面への貼着後の加熱によって、接着層32と当該画像面及び保護層31との界面において熱反応を生じて、当該界面の接着性を上昇させる機能を担うものである。このような機能を担う熱反応性樹脂は、一般に熱反応によって接着層32自体の硬度をも上昇させる。
【0033】
このような熱反応性樹脂は、熱反応性官能基含有モノマーをモノマー成分として含むアクリル系共重合体からなる。このようなアクリル系共重合体とは、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと熱反応性官能基含有モノマーとの共重合体である。
【0034】
このような(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられ、これらのものを1種若しくは2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
熱反応性官能基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ヒドロキシブチル、N-メチロールアクリルアミド、アリルアルコール等のヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル等の三級アミノ基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アミド等のアミド基含有モノマー、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド等のN-置換アミド基含有モノマー、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー等が挙げられ、特に本発明の接着層32の被転写体であるフォトマスクの画像面に対する接着性をより上昇させる上では、N-メチロールアクリルアミドモノマーなどのヒドロキシル基含有モノマーを採用することが望ましい。このヒドロキシル基含有モノマーを用いると、接着層32を加熱することによりフォトマスクの画像面に存在するヒドロキシル基とも良く反応することで接着性がより上昇するものと考えられる。このように保護膜3とフォトマスクの画像面とが強固に接着することによって、作業中の保護膜3の剥がれなどを防止し、作業性が極めて向上することになる。
【0036】
これらアクリル系共重合体を構成するこれら(メタ)アクリル酸エステルモノマーと熱反応性官能基含有モノマーとの重合割合は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー100重量部に対して、熱反応性官能基含有モノマーが1〜25重量部、好ましくは5〜15重量部であることが望ましい。
【0037】
このアクリル系共重合体は、重量平均分子量が5〜200万であり、10〜100万が好ましい。
【0038】
なお、このアクリル系共重合体には、アクリル系共重合体の特性を損なわない範囲内で、他の単量体を共重合しても良い。
【0039】
ここで、共重合することができる他の単量体としては、酢酸ビニル、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、及び、N-メチルアクリルアミド等を挙げることができる。この単量体の重合割合は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと熱反応性官能基含有モノマーとの合計100重量部に対して、通常0〜30重量部、好ましくは0〜15重量部である。
【0040】
接着層32を構成する電離放射線硬化型樹脂及び熱反応性樹脂の混合割合は、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、熱反応性樹脂が50〜200重量部であることが好ましい。50重量部以上とすることにより、貼着時の接着層のはみ出しを防止し、フォトマスクの画像面に対する高い接着性が得られ、作業性を向上することができる。また、200重量部以下にすることによって電離放射線を照射した後、接着層32自体の硬度が得られ、保護膜3の耐擦傷性及び耐溶剤性が向上する。
【0041】
本発明の熱反応性樹脂は、接着層32のフォトマスクの画像面に対する貼着時の初期接着力及び転写後の保護膜3の接着性に寄与し、また、電離放射線硬化型樹脂は、フォトマスクの画像面に対する転写後の保護膜3の接着性及び硬度の向上に寄与し、保護膜3としての耐擦傷性及び耐溶剤性を向上することになる。
【0042】
保護膜3の膜厚としては、1〜20μmであることが好ましい。1μm以上とすることにより、十分な耐擦傷性および耐溶剤性が得られ、20μm以下とすることによって、フォトマスクの保護として使用した際に、高解像のパターンの現像においても問題なく使用することが可能となる。保護層31及び接着層32の層厚は、それぞれ0.5〜15μmであることが好ましく、保護膜3の膜厚の上限を超えない範囲で適宜の層厚を選択できる。接着層32の層厚を0.5μm以上とすることで、フォトマスクの画像面に対する接着性と耐擦傷性が得られ、15μm以下にすることによって、保護膜3の膜厚を薄くすることが可能になることで、解像度の高いパターンへの対応を可能にする。
【0043】
セパレータ4は接着層32の接着性によって作業性を低下させないためのものである。セパレータ4の材質としてはポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムや紙等の表面をシリコーン系離型剤等の離型処理を施したものが使用できる。
【0044】
フォトマスク用保護膜転写シート1の作製方法の一例としては、離型層22を設けたポリエチレンテレフタレートフィルム21などの電離放射線透過性を有する支持体2上に、保護層31、接着層32を順次積層して形成し、セパレータ4を接着層32の上に貼り合わせることにより得られる。
【0045】
次に、本発明の保護膜転写方法について説明する。
本発明の保護膜転写方法は、上記記載のフォトマスク用保護膜転写シートを用いてフォトマスクの画像面に保護膜を転写する保護膜転写方法であって、以下の(1)から(4)の工程を包含するものである。
(1)前記フォトマスク用保護膜転写シートの前記接着層を前記フォトマスクの画像面に貼着する。
(2)前記接着層に熱を加える。
(3)前記接着層に電離放射線を照射する。
(4)前記保護膜から前記支持体を剥離する。
【0046】
尚、本発明の目的であるフォトマスクの画像面に対する接着性並びに耐擦傷性及び耐溶剤性に優れた保護膜を転写することができるようにするためには(1)の工程が最初に行われる必要があり、転写方法の作業性を向上させる観点からは(2)の工程と同時に行われることが好ましい。
【0047】
従って(2)の工程は、転写後の保護膜の性能を重視する観点からは、必ずしも(1)の工程と同時に初めに行われる必要はなく、(3)、(4)の工程との関係では任意の順番で行い得るが、フォトマスクの画像面に対する接着性を上昇させるなどの観点からは(3)、(4)の工程より先に行われることが好ましい。
【0048】
また、(3)の工程と(4)との工程との関係においては任意の順番で行い得るが、接着層の硬度が十分に高くなるまで保護膜を支持体によって保護する観点からは(3)の工程が(4)の工程よりも先に行われることが好ましい。
【0049】
ここで(1)の工程であるフォトマスク用保護膜転写シートの接着層をフォトマスクの画像面に貼着する方法としては、必要に応じて設けられているセパレータを剥離した後、例えばラミネーター方式等の適当な方式を用いて、フォトマスクの画像面に接着層を対向するようにして貼り合わせる方法が採用できる。
【0050】
また(2)の工程である接着層に熱を加える方法としては、ラミネーターロールとして熱を加えたヒートロールを採用して、支持体若しくはフォトマスクから熱伝導させることにより(1)の工程と同時に行うことができ、また、熱を加えていないラミネーターロールによって一旦貼着した後、再度熱を加えたヒートロールによって熱を加えたり、貼着したものを循環熱風式オーブン等の環境下に保持して熱を加えたり、遠赤外線を照射して熱を加えることにより、熱伝導させることで接着層に熱を加える方法が採用できる。例えばヒートロールの温度としては、ロールのニップ圧や搬送速度によって接着層32に加えられる熱量が変化するため一概にはいえないが、表面温度で40〜150℃、好ましくは60〜120℃の範囲で適宜選択することができる。
【0051】
このようにして接着層は、フォトマスクの画像面への貼着後の加熱によって当該画像面に対する接着性が上昇することになる。
【0052】
また(3)の工程である接着層に電離放射線(紫外線若しくは電子線)を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等を用いて紫外線を照射したり、コックロフトワルトン型、バンデルグラフ型、共変圧器型、絶縁コア変圧器型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子加速器を用いて電子線を照射したりする方法が採用できる。
【0053】
このようにして電離放射線の照射によって接着層自体の硬度を上昇させることにより、保護膜の耐擦傷性及び耐溶剤性を向上させることができるようになる。
【0054】
また(4)の工程である保護膜から支持体を剥離することにより、フォトマスクの画像面に保護膜3を転写することができる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。尚、「部」「%」は特記しない限り重量基準である。
【0056】
1.熱反応性樹脂の合成
攪拌機、コンデンサー、温度計および窒素導入管を備えた反応容器に N-メチロールアクリルアミドモノマー 3.0 g、アクリル酸-n-ブチルエステルモノマー 84.0 g、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチルエステルモノマー 5.0 g、アクリル酸モノマー 3.0 g、アクリル酸エチルエステルモノマー 5.0 g、酢酸エチル 36.0 g、トルエン 12.0 g、イソプロピルアルコール 12.0 g、α、α’−アゾビス(イソブチロニトリル) 0.10 g を入れ窒素を通じて攪拌しながら 75 ℃ に加熱した。その後さらに8時間反応溶液を 75.0 ℃に保ちつつ攪拌しながら反応を完結させ、アクリル系共重合体である熱反応性樹脂を合成した。この反応溶液に酢酸エチル 45.0 g、イソプロピルアルコール 45.0 g を加え不揮発分が 40.0 % の熱反応性樹脂溶液Aを調整した。
【0057】
2.フォトマスク用保護膜転写シートの作製
[実施例1]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム21(T−600E:三菱化学ポリエステルフィルム社)の一方の表面に、以下の組成の離型層用塗工液を塗布し、乾燥させることにより、厚み約1μmの離型層22を設けた支持体2を作製した。
<離型層用塗工液>
・ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合
体(GANTREZ AN119:ISP社) 50部
・蒸留水 414部
・メタ変性アルコール 36部
【0058】
次いで、当該支持体2の離型層22上に、以下の組成の保護層用塗工液及び接着層用塗工液aを順次塗布、乾燥することにより、厚み約2μmの保護層31及び厚み約2μmの接着層32を積層形成した。その際、保護層31については、乾燥後、高圧水銀灯により紫外線照射を行って硬化させた。さらに、当該接着層32上に厚み38μmのセパレータ4(E7006:東洋紡績社)の離型処理面を貼り合わせて、図1のフォトマスク用保護膜転写シート1を得た。
<保護層用塗工液>
・ウレタンアクリレート(ユニディックV4005〈固形分64
%〉:大日本インキ化学工業社) 125部
・光重合開始剤(イルガキュア184:チバスペシャ
リティケミカルズ社) 2.4部
・トルエン 275部
<接着層用塗工液a>
・1,6-ビス(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル
)-ヘキシルエーテル 16部
・光重合開始剤(イルガキュア907:チバスペシャ
リティケミカルズ社) 1.2部
・熱反応性樹脂溶液A 80部
・酢酸エチル 232部
・トルエン 232部
【0059】
得られたフォトマスク用保護膜転写シート1のセパレータ4を剥離し、接着層32を、銀塩フィルム(AGX−7:Kodak社)に回路配線パターンを形成したフォトマスクの画像面に、ラミネーターを用いて100℃に加熱したヒートロールによって貼着し、次いで高圧水銀灯にて紫外線を600mJ/cm2露光して接着層32を硬化させた後、保護膜3から支持体2を剥離して、保護膜3をフォトマスクの画像面に転写させた。
【0060】
[実施例2]
実施例1の接着層用塗工液aの代わりに、下記の接着層用塗工液bを使用した以外は、実施例1と同様にしてフォトマスク用保護膜転写シート1を得て、フォトマスクの画像面に保護膜3を転写させた。
<接着層用塗工液b>
・ヒドロピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリ
レート 16部
・光重合開始剤(イルガキュア907:チバスペシャ
リティケミカルズ社) 1.2部
・熱反応性樹脂溶液A 80部
・酢酸エチル 232部
・トルエン 232部
【0061】
[比較例1]
実施例1の接着層用塗工液aの代わりに、下記の粘着層用塗工液を使用した以外は、実施例1と同様にしてフォトマスク用保護膜転写シートを得た。
<粘着層用塗工液>
・アクリル系粘着性樹脂(SKダイン1102〈固形
分40%〉:綜研化学社) 30部
・イソプロピルアルコール 75部
得られたフォトマスク用保護膜転写シートのセパレータを剥離し、粘着層を、銀塩フィルム(AGX−7:Kodak社)に回路配線パターンを形成したフォトマスクの画像面に、ラミネーターを用いて貼着した後、保護層から支持体を剥離して、保護層と粘着層をフォトマスクの画像面に転写させた。
【0062】
[比較例2]
実施例1の接着層用塗工液aの代わりに、下記の接着層用塗工液cを使用した以外は、実施例1と同様にしてフォトマスク用保護膜転写シートを得た。
<接着層用塗工液c>
・ウレタンアクリレート(ユニディックV4005〈固形分64
%〉:大日本インキ化学工業社) 20部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(カヤ
ラッドPDHA:日本化薬社) 8部
・光重合開始剤(イルガキュア651:チバスペシャ
リティケミカルズ社) 1部
・メチルエチルケトン 35部
・トルエン 35部
得られたフォトマスク用保護膜転写シートのセパレータを剥離し、接着層を、銀塩フィルム(AGX−7:Kodak社)に回路配線パターンを形成したフォトマスクの画像面に、ラミネーターを用いて貼着し、次いで高圧水銀灯にて600mJ/cm2の紫外線を露光して接着層を硬化させた後、保護層から支持体を剥離して、保護層と接着層をフォトマスクの画像面に転写させた。
【0063】
実施例1,2及び比較例1,2で得られたフォトマスク用保護膜転写シートについて、フォトマスクの画像面に転写させた保護膜等の耐擦傷性、鉛筆硬度、接着性、耐溶剤性を評価した結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
[耐擦傷性]
150g及び300gの荷重においてスチールウール#0000で保護層31表面を10往復擦った後、その表面の傷の有無を目視観察した。評価基準は以下の通りとした。
◎:全く傷がつかない
○:ほとんど傷はつかない
△:傷がつく
×:全面に傷がつく
【0066】
[鉛筆硬度]
JIS−K5400の鉛筆引っかき値の試験機法に基づいて評価を行った。転写した保護膜の破れで評価して、濃度記号が互いに隣り合う二つの鉛筆について、破れが2回以上と2回未満とになる一組を求め、2回未満となる鉛筆の濃度記号を塗膜の鉛筆硬度とした。
【0067】
[接着性]
JIS−K5400の碁盤目テープ法に準じて評価を行った。隙間間隔1mmのマス目が100個できるように切れ目を入れ、JIS−Z1522に規定するセロハン粘着テープを貼り、剥がした後の塗膜の状態を目視によって観察し、剥がれなかったマス目の数を記録した。
【0068】
[耐溶剤性]
メチルエチルケトンをウエスに染み込ませ、往復で20回擦り、擦った後の塗膜の状態を観察した。評価基準は以下の通りとした。
○:塗膜が変化しない
×:塗膜が剥がれた
【0069】
実施例1、2のフォトマスク用保護膜転写シート1は、フォトマスクの画像面に転写させた保護膜3の耐擦傷性、鉛筆硬度、接着性、耐溶剤性のいずれにおいても良好であった。
【0070】
特に、実施例1のフォトマスク用保護膜転写シート1は、ヒドロキシル基を含有する光重合性モノマーからなる電離放射線硬化塗料から形成される電離放射線硬化型樹脂を、熱反応性官能基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有モノマーであるN−メチロールアクリルアミドモノマーをモノマー成分として含むアクリル系共重合体からなる熱反応性樹脂と混合して接着層32を形成したために、フォトマスクの画像面に存在するヒドロキシル基と良く反応して、フォトマスクの画像面と接着層32との接着性がより上昇し、更に接着層32自体の硬度もより上昇したために、保護膜3としての性能が極めて向上した。
【0071】
一方、比較例1のフォトマスク用保護膜転写シートは、接着層に代えて粘着層を使用したために、粘着層に積層した保護層の耐擦傷性及び鉛筆硬度が弱いものとなってしまった。また、比較例2のフォトマスク用保護膜転写シートにおいては、熱反応性樹脂を含有しない電離放射線硬化型樹脂のみからなる接着層を使用したために、フォトマスクの画像面に対して転写させた接着層の接着性が全くないものとなってしまった。
【0072】
【発明の効果】
本発明のフォトマスク用保護膜転写シートは、剥離可能な支持体上に保護膜を設けた保護膜転写シートであって、前記保護膜が、前記支持体側から保護層、接着層を順次積層してなり、且つ前記接着層が、感圧接着性を有し、フォトマスクの画像面への貼着後の加熱により前記フォトマスクの画像面に対する接着性が上昇し、電離放射線の照射により硬化するものとすることにより、フォトマスク用の保護膜として転写した際に、フォトマスクの画像面に対する接着性並びに耐擦傷性及び耐溶剤性に優れた保護膜を転写可能なフォトマスク用保護膜転写シートを提供することができる。
【0073】
また本発明の保護膜転写方法によれば、このようなフォトマスク用保護膜転写シートを用いることによりフォトマスクの画像面に対する接着性並びに耐擦傷性及び耐溶剤性に優れた保護膜を転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のフォトマスク用保護膜転写シートの一実施例を示す断面図。
【符号の説明】
1・・・・フォトマスク用保護膜転写シート
2・・・・支持体
21・・・プラスチックフィルム
22・・・離型層
3・・・・保護膜
31・・・保護層
32・・・接着層
4・・・・セパレータ
Claims (6)
- 剥離可能な支持体上に保護膜を設けた保護膜転写シートであって、前記保護膜は、前記支持体側から保護層、電離放射線硬化型樹脂及び熱反応性樹脂を含む接着層を順次積層してなり、且つ前記接着層は、感圧接着性を有し、フォトマスクの画像面への貼着後の加熱により前記フォトマスクの画像面に対する接着性が上昇し、電離放射線の照射により硬化するものであり、さらに、前記熱反応性樹脂としてヒドロキシル基含有モノマーをモノマー成分として含むアクリル系共重合体を含有することを特徴とするフォトマスク用保護膜転写シート。
- 前記ヒドロキシル基含有モノマーが、N-メチロールアクリルアミドモノマーであることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜転写シート。
- 前記電離放射線硬化型樹脂が、電離放射線の照射によって架橋硬化することができる光重合性プレポリマー若しくは光重合性モノマーの1種又は2種以上を混合した塗料から形成されるものであって、前記光重合性プレポリマー及び前記光重合性モノマーの少なくとも1種がヒドロキシル基を含有するものであることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜転写シート。
- 前記電離放射線硬化型樹脂と熱反応性樹脂との混合割合が、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、熱反応性樹脂50〜200重量部であることを特徴とする請求項1記載のフォトマスク用保護膜転写シート。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフォトマスク用保護膜転写シートを用いてフォトマスクの画像面に前記保護膜を転写する保護膜転写方法であって、以下の(1)から(4)の工程を包含することを特徴とする保護膜転写方法。
(1)前記フォトマスク用保護膜転写シートの前記接着層を前記フォトマスクの画像面に貼着する。
(2)前記接着層に熱を加える。
(3)前記接着層に電離放射線を照射する。
(4)前記保護膜から前記支持体を剥離する。 - 請求項5記載の(1)から(4)の工程を、(1)及び(2)の工程を同時に行った後、(3)、(4)の工程をこの順に行うことを特徴とする保護膜転写方法。
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