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JP4692118B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、可変動弁機構の制御を通じてエンジンバルブの開閉特性を変更するエンジンの制御装置に関する。
可変動弁機構を備えたエンジンにおいては、エンジンバルブであるインテークバルブやエキゾーストバルブの開閉特性を変更することができる。特許文献1には、エンジンバルブのバルブ作用角及び最大バルブリフト量を変更する可変動弁機構が提案されている。
特開平2001−263015号公報
ところで、近年では、環境問題やユーザーからの要求の多様化に対応するため、燃費や運転性(車両の乗り心地)のさらなる向上を図ることのできるエンジンが望まれている。
可変動弁機構を備えたエンジンの制御装置として、燃費や出力の向上を図ることを目的としたものは種々提案されているが、運転性の向上を図ることを目的としたものについては未だ適当な提案がなされていない。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、可変動弁機構の制御を通じて運転性の向上を図ることのできるエンジンの制御装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、カムシャフトにより開弁されるエンジンバルブ、及び同バルブの開閉特性を変更する可変動弁機構を含む車載型のエンジンに適用されるものであり、前記可変動弁機構の制御を通じて前記エンジンバルブの開閉特性を変更するエンジンの制御装置において、エンジンの停止中かつ所定の条件が成立しているとき、前記エンジンバルブの開閉特性を変更し、エンジンの停止中にイグニッションスイッチがオン位置に切り替えられてからスタータモータの駆動が開始されるまでの間、前記エンジンバルブの開閉特性の変更を禁止し、前記スタータモータの駆動が開始された後に前記エンジンバルブの開閉特性の変更を開始する制御手段を備えたことを要旨としている。
エンジンの始動前は車内が比較的静かな状態にあるため、こうした状況でエンジンバルブの開閉特性の変更を行った場合、運転者等が可変動弁機構の作動音を不快に感じることも考えられる。
上記の発明では、こうしたことを考慮して、エンジンの停止中にイグニッションスイッチがオン位置に切り替えられてからスタータモータの駆動が開始されるまでの間、エンジンバルブの開閉特性の変更を行わないようにしている。これにより、エンジンの始動前において、可変動弁機構の作動音に起因する運転性の悪化を抑制することができるようになる。
(2)請求項2に記載の発明は、カムシャフトにより開弁されるエンジンバルブ、及び同バルブの開閉特性を変更する可変動弁機構を含む車載型のエンジンに適用されるものであり、前記可変動弁機構の制御を通じて前記エンジンバルブの開閉特性を変更するエンジンの制御装置において、エンジンの停止中かつ所定の条件が成立しているとき、前記エンジンバルブの開閉特性を変更し、エンジンストールの発生が検出されてからエンジンの再始動の開始が検出されるまでの間、前記エンジンバルブの開閉特性の変更を禁止し、前記エンジンの再始動が開始された後に前記エンジンバルブの開閉特性の変更を開始する制御手段を備えたことを要旨としている。
エンジンストールによりエンジンが停止しているときは車内が比較的静かな状態にあるため、こうした状況でエンジンバルブの開閉特性の変更を行った場合、運転者等が可変動弁機構の作動音を不快に感じることも考えられる。
上記の発明では、こうしたことを考慮して、エンジンストールの発生が検出されてからエンジンの再始動の開始が検出されるまでの間、エンジンバルブの開閉特性の変更を行わないようにしている。これにより、エンジンの再始動前において、可変動弁機構の作動音に起因する運転性の悪化を抑制することができるようになる。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のエンジンの制御装置において、前記制御手段は、前記エンジンバルブの開閉特性の変更を禁止しているとき、前記エンジンバルブの開閉特性を前記エンジンストールの発生が検出される直前の開閉特性に維持するものであることを要旨としている。
エンジンバルブの開閉特性の変更が行われている状態においてエンジンストールが生じたとき、それにともなって開閉特性の変更が中断されるため、エンジンの再始動後は開閉特性の変更を速やかに再開することが要求される。
上記の発明では、こうしたことを考慮して、エンジンストールによりエンジンが停止しているとき、エンジンバルブの開閉特性を前記エンジンストールの発生が検出される直前の開閉特性に維持するようにしている。これにより、エンジンの再始動後において速やかに開閉特性の変更を再開することができるようになる。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置において、前記可変動弁機構は、軸方向へ移動可能な状態でシリンダヘッドに配置されるコントロールシャフトと、該コントロールシャフトの周囲に組み付けられて前記エンジンバルブを運動させるバルブリフト機構と、前記コントロールシャフトを移動させるアクチュエータとを備えて構成されるものであり、前記バルブリフト機構は、前記コントロールシャフトと連動して移動可能なスライダギアと、該スライダギアに組み付けられてカムシャフトのカムを通じて運動する入力ギアと、前記スライダギアに組み付けられて前記エンジンバルブを運動させる出力ギアとを備えて構成されるものであり、前記アクチュエータは、前記コントロールシャフトの移動を通じて前記入力ギアと前記出力ギアとを相対回転させることで前記エンジンバルブの開弁期間を変更するものであることを要旨としている。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のエンジンの制御装置において、前記アクチュエータは、電力を通じて駆動するものであることを要旨としている。
本発明の実施形態について、図1〜図36を参照して説明する。
本実施形態では、インテークバルブの開閉特性(バルブ作用角及び最大バルブリフト量)を変更する可変動弁機構として本発明を具体化している。
<エンジンの構造>
図1に、本発明にかかる可変動弁機構を備えたエンジンの概略構造を示す。
図2に、上記エンジンにおけるシリンダヘッドの平面構造を示す。
エンジン1は、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とを備えて構成されている。
シリンダブロック2には、複数のシリンダ21が備えられている。
シリンダ21の周囲には、ウォータージャケット22が形成されている。
各シリンダ21内には、ピストン23が配置されている。また、シリンダ21の内周面とピストン23の頂面とシリンダヘッド3とに囲まれて燃焼室24が形成されている。
ピストン23は、コネクティングロッド25を介してクランクシャフト26と連結されている。
シリンダヘッド3には、燃焼室24とインテークパイプ31とをつなぐインテークポート32及び燃焼室24とエキゾーストパイプ35とをつなぐエキゾーストポート36が設けられている。
インテークポート32は、インテークバルブ33を通じて開閉される。
インテークバルブ33は、インテークカムシャフト34のカム34Cを通じて開弁される一方で、バルブスプリングを通じて閉弁される。
エキゾーストポート36は、エキゾーストバルブ37を通じて開閉される。
エキゾーストバルブ37は、エキゾーストカムシャフト38のカム38Cを通じて開弁される一方で、バルブスプリングを通じて閉弁される。
スロットルバルブ39は、インテークパイプ31内において空気が通過することのできる面積を変更する。
インジェクタ41は、燃焼室24へ燃料を噴射する。
イグニッションプラグ42は、燃焼室24の混合気に点火する。
可変動弁機構5は、インテークバルブ33の開弁期間(バルブ作用角INCAM)を変更する。
スタータモータ11は、エンジン1の始動時にクランクシャフト26を回転させる。
バッテリ12は、スタータモータ11、イグニッションプラグ42、可変動弁機構5及び電子制御装置9等へ電力を供給する。図1においては、バッテリ12からこれら各装置への電力の供給経路が一点鎖線にて示されている。なお、バッテリ12は、エンジン1を搭載した車両に備えられている。以降の説明において、「車両」はエンジン1を搭載した車両を示す。
エンジン1は、電子制御装置9を通じて統括的に制御される。
電子制御装置9は、エンジン制御にかかる演算処理を実行する中央演算処理装置、エンジン制御に必要なプログラムやマップが予め記憶された読み出し専用メモリ、中央演算処理装置の計算結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ、外部の信号を入力するための入力ポート、及び外部へ信号を出力するための出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置9の入力ポートには、回転速度センサ91、冷却水温度センサ92、吸気温度センサ93、エアフローメータ94、アクセルポジションセンサ95、車速センサ96及びイグニッションスイッチ97等が接続されている。
回転速度センサ91は、クランクシャフト26の近傍に設けられており、クランクシャフト26の回転速度(エンジン回転速度NE)に応じた電気信号を出力する。回転速度センサ91の出力信号は、電子制御装置9へ入力された後、エンジン回転速度計測値NEMとして各種制御に用いられる。
冷却水温度センサ92は、シリンダ21の周囲に設けられており、ウォータージャケット22内の冷却水の温度(冷却水温度THW)に応じた電気信号を出力する。冷却水温度センサ92の出力信号は、電子制御装置9へ入力された後、冷却水温度計測値THWMとして各種制御に用いられる。
吸気温度センサ93は、エアクリーナの下流の吸気通路に設けられており、インテークパイプ31内の空気の温度(吸気温度THA)に応じた電気信号を出力する。吸気温度センサ93の出力信号は、電子制御装置9へ入力された後、吸気温度計測値THAMとして各種制御に用いられる。
エアフローメータ94は、エアクリーナの下流の吸気通路に設けられており、インテークパイプ31内の空気の流量(吸気流量GA)に応じた電気信号を出力する。エアフローメータ94の出力信号は、電子制御装置9へ入力された後、吸気流量計測値GAMとして各種制御に用いられる。なお、吸気流量GAは、燃焼室24内へ供給される空気の量(吸入空気量)に相当する。
アクセルポジションセンサ95は、車両のアクセルペダルの近傍に設けられており、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル操作量ACP)に応じた電気信号を出力する。アクセルポジションセンサ95の出力信号は、電子制御装置9へ入力された後、アクセル操作量計測値ACPMとして各種制御に用いられる。
車速センサ96は、車両のホイールの近傍に設けられており、ホイールの回転速度(車速SPD)に応じた電気信号を出力する。車速センサ96の出力信号は、電子制御装置9へ入力された後、車速計測値SPDMとして各種制御に用いられる。
イグニッションスイッチ97は、車両の運転席に設けられており、「OFF」、「ACC」、「ON」及び「START」のいずれかの位置に切り替えられる。イグニッションスイッチ97が「ON」位置にあるとき、イグニッション信号IGが電子制御装置9へ入力される。イグニッションスイッチ97が「START」位置にあるとき、イグニッション信号IGとともにスタータ信号STAが電子制御装置9へ入力される。なお、本実施形態においては、イグニッションスイッチ97が「ACC」位置にある状態をイグニッションスイッチ97が「OFF」位置にある状態と同じものとして取り扱う。
電子制御装置9の出力ポートには、インジェクタ41、イグニッションプラグ42、スタータモータ11及び可変動弁機構5等の駆動回路が接続されている。
電子制御装置9は、上記各センサの出力信号等から把握されるエンジン運転状態に基づいて、スロットルバルブ39の開度(スロットル開度THR)を調整するスロットル制御、インジェクタ41の燃料噴射量を調整する燃料噴射制御、イグニッションプラグ42の点火時期を調整する点火時期制御、並びにバルブ作用角INCAMを調整する可変動弁機構制御等の各種制御を行う。なお、制御手段は電子制御装置9を含めて構成されている。
<バルブ作用角の変更態様>
図3を参照して、可変動弁機構5によるバルブ作用角INCAMの変更態様について説明する。
可変動弁機構5は、バルブ作用角INCAMを最も大きいバルブ作用角(最大バルブ作用角INCAMmax)から最も小さいバルブ作用角(最小バルブ作用角INCAMmin)までの間で連続的に変更する。また、バルブ作用角INCAMの変化に同期して、インテークバルブ33の最大バルブリフト量INVL(インテークバルブ33が最も閉弁側の位置から最も開弁側の位置までに移動する量)が変更する。
最大バルブリフト量INVLは、バルブ作用角INCAMが最大バルブ作用角INCAMmaxのときに最も大きい最大バルブリフト量(上限最大バルブリフト量INVLmax)となる。また、バルブ作用角INCAMが最小バルブ作用角INCAMminのときに最も小さい最大バルブリフト量(下限最大バルブリフト量INVLmin)となる。即ち、バルブ作用角INCAMの変化に同期して、最大バルブリフト量INVLが上限最大バルブリフト量INVLmaxから下限最大バルブリフト量INVLminの間で連続的に変化する。
<可変動弁機構の構造>
図4〜図11を参照して、可変動弁機構5の詳細な構造について説明する。なお、可変動弁機構5においては、各シリンダ21に対応した箇所の構造が共通しているため、図4、図5、図8、図9及び図10では、1つのシリンダ21に対応した箇所の構造のみを示している。
〔1〕「可変動弁機構の全体構造」
図4に、可変動弁機構5の斜視構造を示す。
可変動弁機構5は、電動アクチュエータ5Aと動弁機構本体5Bとを備えて構成されている。
動弁機構本体5Bは、ロッカーシャフト51、コントロールシャフト52及びバルブリフト機構53を備えて構成されている。また、シリンダ21毎にバルブリフト機構53が備えられている。
ロッカーシャフト51は、シリンダヘッド3においてシリンダ配列方向(矢印FR方向)へ延びるように配置される。また、回転及び軸方向への移動ができないように固定される。なお、矢印Fは電動アクチュエータ5Aから離れる方向を、矢印Rは電動アクチュエータ5Aに近づく方向をそれぞれ示す。
ロッカーシャフト51内には、軸方向へ移動することのできる状態でコントロールシャフト52が配置されている。また、ロッカーシャフト51上には、各シリンダ21と対応する位置にバルブリフト機構53が設けられている。即ち、全てのバルブリフト機構53は、共通する1本のロッカーシャフト51により支持されている。
コントロールシャフト52は、電動アクチュエータ5Aと連結されている。
電動アクチュエータ5Aは、電動モータ5A1と運動変換機構5A2とを備えて構成されている。電動モータ5A1は、バッテリ12から供給された電力を通じて駆動する。運動変換機構5A2は、電動モータ5A1の回転運動を直線運動に変換してコントロールシャフト52に伝達する。即ち、可変動弁機構5においては、電動アクチュエータ5Aの電動モータ5A1を通じてコントロールシャフト52が駆動される。
電子制御装置9は、電動アクチュエータ5Aの制御を通じてコントロールシャフト52を軸方向へ変位させることにより、インテークバルブ33のバルブ作用角INCAM及び最大バルブリフト量INVLの変更を行う。コントロールシャフト52が矢印F方向へ向けて変位された場合、インテークバルブ33のバルブ作用角INCAM及び最大バルブリフト量INVLは大きくなる方向へ変更される。反対に、コントロールシャフト52が矢印R方向へ向けて変位された場合、インテークバルブ33のバルブ作用角INCAM及び最大バルブリフト量INVLは小さくなる方向へ変更される。なお、コントロールシャフト52の移動方向とバルブ作用角INCAM及び最大バルブリフト量INVLの変化方向との関係は、上記関係と反対に設定することもできる。
〔2〕「動弁機構本体の構造」
図5に、動弁機構本体5Bの分解斜視構造を示す。
図6に、スライダギア6の斜視構造を示す。
図7に、軸線に沿ったスライダギア6の断面構造を示す。
バルブリフト機構53は、スライダギア6、入力ギア7及び出力ギア8を備えて構成されている。
スライダギア6は、ロッカーシャフト51上に設けられている。また、ロッカーシャフト51上において、コントロールシャフト52と連動して軸方向へ移動することができるように設けられている。
スライダギア6と入力ギア7及び出力ギア8とは、ヘリカルスプラインを通じて噛み合わされている。また、入力ギア7及び出力ギア8は、これらギア7,8の間に位置する側面が接触した状態でそれぞれスライダギア6に組み付けられている。
〔3〕「スライダギアの構造」
スライダギア6には、スライダギア入力スプライン61及びスライダギア出力スプライン62が設けられている。
スライダギア入力スプライン61は、スライダギア6の軸方向中央に設けられている。また、入力ギア7のヘリカルスプライン(入力ギアスプライン71)とかみ合うように形成されている。
スライダギア出力スプライン62は、スライダギア入力スプライン61の両側に設けられている。また、出力ギア8のヘリカルスプライン(出力ギアスプライン81)とかみ合うように形成されている。
スライダギア入力スプライン61とスライダギア出力スプライン62とは、歯すじの傾斜方向が反対となるように形成されている。また、スライダギア出力スプライン62の外径は、スライダギア入力スプライン61の溝部分の径よりも小さく設定されている。
スライダギア6の内部には、軸方向へ延びるシャフト挿入孔63が形成されている。また、スライダギア入力スプライン61の内部には、周方向へ延びるピン溝64が形成されている。
スライダギア6には、コネクトピン54を内部空間へ挿入させることができるようにピン挿入孔61Hが形成されている。ピン挿入孔61Hは、スライダギア入力スプライン61の外周側からピン溝64までを連通する孔として形成されている。なお、コネクトピン54は、コントロールシャフト52とスライダギア6とを連動して移動させるためにスライダギア6に取り付けられる。
〔4〕「入力ギアの構造」
入力ギア7は、その本体となる入力ギアハウジング72を備えて構成されている。
入力ギアハウジング72の内部には、ロッカーシャフト51の軸方向へ延びる空間が形成されている。また、入力ギアハウジング72の内周側には、スライダギア6のスライダギア入力スプライン61とかみ合うヘリカルスプライン(入力ギアスプライン71)が形成されている。
入力ギアハウジング72の外周側には、インテークカムシャフト34のカム34Cと接触する入力アーム73が設けられている。入力アーム73は、一対の支持アーム73L,73R、シャフト73A及びローラ73Bを備えて構成されている。
入力アーム73を構成する上記各要素は、次のように構成されている。
・支持アーム73L,73Rは、入力ギアハウジング72の外周から径方向へ突出して形成されている。また、互いに平行となるように形成されている。
・シャフト73Aは、ロッカーシャフト51の軸線と平行となるように支持アーム73Lと支持アーム73Rとの間に設けられている。
・ローラ73Bは、シャフト73Aに回転可能な状態で取り付けられている。
〔5〕「出力ギアの構造」
出力ギア8は、その本体となる出力ギアハウジング82を備えて構成されている。
出力ギアハウジング82の内部には、ロッカーシャフト51の軸方向に延びた空間が形成されている。また、出力ギアハウジング82の内周側には、スライダギア6のスライダギア出力スプライン62とかみ合うヘリカルスプライン(出力ギアスプライン81)が形成されている。なお、出力ギアスプライン81の歯すじの傾斜方向は、入力ギアスプライン71の歯すじの傾斜方向と反対に形成されている。
出力ギアハウジング82のベース円部分(ベース部82A)の外周側には、径方向へ突出した出力アーム83が形成されている。この出力アーム83の一辺には、凹状に湾曲したカム面83Aが設けられている。
〔6〕「ロッカーシャフト及びコントロールシャフトの構造」
図8に、ロッカーシャフト51及びコントロールシャフト52の斜視構造を示す。
コントロールシャフト52において、バルブリフト機構53が取り付けられる箇所には、ピン挿入穴52Hが形成されている。即ち、本実施形態においては、コントロールシャフト52に4つのピン挿入穴52Hが形成されている。
ピン挿入穴52Hには、コントロールシャフト52とスライダギア6とを連動して軸方向へ移動させるためのコネクトピン54がはめ込まれる。
ロッカーシャフト51において、コントロールシャフト52のピン挿入穴52Hと対応する箇所には、ピン移動孔51Hが形成されている。ピン移動孔51Hは、ロッカーシャフト51上おけるコネクトピン54の移動を許容できるように軸方向へ延びる長孔として形成されている。
コネクトピン54には、ブッシュ55が取り付けられる。
ブッシュ55は、コントロールシャフト52の軸方向と略直交する面(支持端面55F)がスライダギア6のピン溝64に対して面接触するように形成されている。また、コネクトピン54をはめ込むためのピン挿入孔55Hが形成されている。
ブッシュ55におけるコントロールシャフト52の軸方向の長さは、スライダギア6のピン溝64の幅と略同じ大きさに設定されている。従って、コネクトピン54にブッシュ55を取り付けることにより、コントロールシャフト52とスライダギア6との軸方向の相対位置が固定される。
〔7〕「動弁機構本体の組み付け態様」
図9に、動弁機構本体5Bの分解斜視構造を示す。
動弁機構本体5Bの各部材は、次の手順をもって組み付けることができる。
・コントロールシャフト52をロッカーシャフト51内に挿入する。
・ブッシュ55をスライダギア6のピン溝64に配置する。
・ロッカーシャフト51をスライダギア6内に挿入される。
・コネクトピン54の後端部をスライダギア6、ブッシュ55、及びロッカーシャフト51を介してコントロールシャフト52にはめ込む。
〔8〕「バルブリフト機構の内部構造」
図10に、バルブリフト機構53の内部構造を示す。
コネクトピン54は、その先端部がスライダギア6の内周面と接触しない状態でピン溝64に配置されている。また、ブッシュ55は、支持端面55Fがスライダギア6と面接触した状態でピン溝64に配置されている。
これにより、コントロールシャフト52が軸方向へ移動したとき、その移動量と同じ量だけスライダギア6が軸方向へ移動する。即ち、スライダギア6がコントロールシャフト52と連動して軸方向へ移動する。このとき、軸方向へ作用する力がブッシュ55とピン溝64との接触面全体で受けられるため、コネクトピン54によるスライダギア6の移動が安定して行われるようになる。
コネクトピン54及びブッシュ55は、スライダギア6との相対移動が可能な状態でピン溝64に配置されている。
これにより、インテークカムシャフト34のトルクが入力ギア7へ伝達されたとき、スライダギア6がロッカーシャフト51を軸として揺動する。即ち、ピン溝64がコネクトピン54及びブッシュ55に対して周方向へ相対移動する。このとき、ブッシュ55の支持端面55Fとピン溝64とが面接触した状態で摺動するため、相対移動が安定して行われるようになる。
〔9〕「バルブ作用角及び最大バルブリフト量の変更態様」
可変動弁機構5においては、コントロールシャフト52の軸方向への移動を通じてスライダギア6と入力ギア7及び出力ギア8との軸方向の相対位置を変更した場合、入力ギア7と出力ギア8とに対して互いに逆方向のねじり力が付与されるようになる。
これにより、入力ギア7と出力ギア8とが相対回転するため、入力ギア7(入力アーム73)と出力ギア8(出力アーム83)との相対位相差が変更される。なお、可変動弁機構5においては、共通する1本のコントロールシャフト52に全てのスライダギア6が固定されているため、コントロールシャフト52の移動にともない全てのバルブリフト機構53の相対位相差が同時に変更される。
インテークバルブ33のバルブ作用角INCAM及び最大バルブリフト量INVLは、上記相対位相差の変更を通じて次のように変化する。
(a)上記相対位相差が小さくなるにつれて、即ち周方向において入力アーム73と出力アーム83とが接近するにつれて、インテークバルブ33のバルブ作用角INCAM及び最大バルブリフト量INVLは小さくなる。
(b)上記相対位相差が大きくなるにつれて、即ち周方向において入力アーム73と出力アーム83とが離間するにつれて、インテークバルブ33のバルブ作用角INCAM及び最大バルブリフト量INVLは大きくなる。
〔10〕「エンジンのバルブリフト構造」
図11に、シリンダヘッド3における可変動弁機構5周辺の構造を示す。
シリンダヘッド3において、インテークバルブ33の上方にはインテークローラロッカーアーム43が配置されている。また、インテークカムシャフト34とインテークローラロッカーアーム43との間には、可変動弁機構5のバルブリフト機構53が配置されている。
インテークローラロッカーアーム43の一方の端部は、ラッシュアジャスタ44により支持されている。また、他方の端部は、インテークバルブ33のステムエンドに当接している。
インテークローラロッカーアーム43は、インテークバルブ33のバルブスプリング45によって可変動弁機構5側へ付勢されている。これにより、ローラ43Rは、常にバルブリフト機構53の出力ギア8と当接した状態に維持される。
入力ギア7のローラ73Bは、シリンダヘッド3に圧縮状態で配置されたスプリングによって、インテークカムシャフト34側へ付勢されている。これにより、ローラ73Bは、常にインテークカムシャフト34のカム34Cと当接した状態に維持される。
出力ギア8において、ハウジング82のベース部82Aと出力アーム83のカム面83Aとのいずれかは、常にインテークローラロッカーアーム43のローラ43Rと当接した状態にある。
エンジン1においては、インテークカムシャフト34の回転にともなって入力ギア7が押される。このとき、インテークカムシャフト34のトルクが入力ギア7及びスライダギア6を介して出力ギア8へ伝達されることにより出力ギア8が揺動する。そして、出力ギア8の揺動を通じて対応するインテークローラロッカーアーム43が押されるため、これにともなってインテークバルブ33が開弁方向へリフトされる。
エンジン1においては、入力アーム73と出力アーム83との相対位相差に応じて、出力ギア8によるインテークローラロッカーアーム43の押し下げ量(最も閉弁側の位置から最も開弁側の位置までの移動量)が変化するため、これにともなってインテークバルブ33のバルブ作用角INCAM及び最大バルブリフト量INVLが変更される。
<可変動弁機構の制御態様>
図12を参照して、電子制御装置9により切り替えられる可変動弁機構5の駆動モードについて説明する。
〔1〕「駆動モードの選択態様」
電子制御装置9は、基本的には次の(a)及び(b)の態様をもって可変動弁機構5の駆動モードを選択する。
(a)電子制御装置9は、イグニッション信号IGがオンの状態(電子制御装置9へイグニッション信号IGが入力されている状態)において可変動弁機構5を駆動させるとき、可変動弁機構5の駆動モードとして「第1モード」、「第2モード」、「第3モード」及び「第4モード」のいずれかを選択する。
(b)電子制御装置9は、イグニッション信号IGがオフの状態(電子制御装置9へイグニッション信号IGが入力されていない状態)において可変動弁機構5を駆動させるとき、可変動弁機構5の駆動モードとして「第5モード」及び「第6モード」のいずれかを選択する。
〔2〕「可変動弁機構駆動処理」
電子制御装置9は、「可変動弁機構駆動処理」を通じて各駆動モードの切り替えを行う。「可変動弁機構駆動処理」は、次の(a)〜(f)の処理により構成されている。
(a)「第1可変動弁機構駆動処理」(図14及び図15)。
(b)「第2可変動弁機構駆動処理」(図17及び図18)。
(c)「第3可変動弁機構駆動処理」(図22及び図23)。
(d)「第4可変動弁機構駆動処理」(図25及び図26)。
(e)「第5可変動弁機構駆動処理」(図29)。
(f)「第6可変動弁機構駆動処理」(図32)。
〔3〕「可変動弁機構駆動処理の実行態様」
電子制御装置9は、次の(a)〜(c)の態様をもって「可変動弁機構駆動処理」を実行する。なお、本実施形態の車両においては、イグニッションスイッチ97が「OFF」、「ACC」、「ON」及び「START」のいずれの位置にあるときも電子制御装置9の駆動が継続されるようになっている。
(a)電子制御装置9の駆動開始にともなって「第1可変動弁機構駆動処理」を開始する。
(b)「第1可変動弁機構駆動処理」を開始した後、各処理に流れに従って適宜の可変動弁機構駆動処理を実行する。
(c)「第5可変動弁機構駆動処理」の終了時に「第6可変動弁機構駆動処理」を開始していないとき、または「第6可変動弁機構駆動」の終了時に「第4可変動弁機構駆動処理」を開始していないとき、再度「第1可変動弁機構駆動処理」を開始する。
〔4〕「駆動モードと可変動弁機構駆動処理との関係」
可変動弁機構5の駆動モードと各可変動弁機構駆動処理との関係を以下に示す。
(a)可変動弁機構5の駆動モードが「第1モード」に設定されているとき、「第1可変動弁機構駆動処理」(図14及び図15)が実行される。また、「第1可変動弁機構駆動処理」の一環として実行される「第1アクチュエータ駆動処理」(図16)を通じて電動アクチュエータ5Aの制御が行われる。
(b)可変動弁機構5の駆動モードが「第2モード」に設定されているとき、「第2可変動弁機構駆動処理」(図17及び図18)が実行される。また、「第2可変動弁機構駆動処理」の一環として実行される「第2アクチュエータ駆動処理」(図19〜図21)を通じて電動アクチュエータ5Aの制御が行われる。
(c)可変動弁機構5の駆動モードが「第3モード」に設定されているとき、「第3可変動弁機構駆動処理」(図22及び図23)が実行される。また、「第3可変動弁機構駆動処理」の一環として実行される「第3アクチュエータ駆動処理」(図24)を通じて電動アクチュエータ5Aの制御が行われる。
(d)可変動弁機構5の駆動モードが「第4モード」に設定されているとき、「第4可変動弁機構駆動処理」(図25及び図26)が実行される。また、「第4可変動弁機構駆動処理」の一環として実行される「第4アクチュエータ駆動処理」(図27及び図28)を通じて電動アクチュエータ5Aの制御が行われる。
(e)可変動弁機構5の駆動モードが「第5モード」に設定されているとき、「第5可変動弁機構駆動処理」(図29)が実行される。また、「第5可変動弁機構駆動処理」の一環として実行される「第5アクチュエータ駆動処理」(図30及び図31)を通じて電動アクチュエータ5Aの制御が行われる。
(f)可変動弁機構5の駆動モードが「第6モード」に設定されているとき、「第6可変動弁機構駆動処理」(図32)が実行される。また、「第6可変動弁機構駆動処理」の一環として実行される「第6アクチュエータ駆動処理」(図33)を通じて電動アクチュエータ5Aの制御が行われる。
〔5〕「駆動モードの切り替え態様」
電子制御装置9は、基本的には次の(a)〜(h)の態様をもって駆動モードの切り替えを行う。なお、以下では切り替えにおける代表的な条件のみを示している。
(a)電子制御装置9は、可変動弁機構5が停止している状態において、イグニッションスイッチ97が「OFF」(または「ACC」)位置から「ON」位置へ切り替えられたことを検出したとき、可変動弁機構5の駆動モードを「第1モード」へ切り替える。
(b)電子制御装置9は、可変動弁機構5の駆動モードとして「第1モード」を選択している状態において、エンジン1が始動されたことを検出したとき、可変動弁機構5の駆動モードを「第1モード」から「第2モード」へ切り替える。
(c)電子制御装置9は、可変動弁機構5の駆動モードとして「第2モード」を選択している状態において、可変動弁機構5の暖機が完了したことを検出したとき、可変動弁機構5の駆動モードを「第2モード」から「第3モード」へ切り替える。
(d)電子制御装置9は、可変動弁機構5の駆動モードとして「第2モード」または「第3モード」を選択している状態において、エンジンストールが生じたことを検出したとき、可変動弁機構5の駆動モードを「第2モード」または「第3モード」から「第4モード」へ切り替える。
(e)電子制御装置9は、可変動弁機構5の駆動モードとして「第4モード」を選択している状態において、エンジン1が始動されたことを検出したとき、可変動弁機構5の駆動モードを「第4モード」からエンジンストールが生じる前に選択されていた駆動モード(「第2モード」または「第3モード」)へ切り替える。
(f)電子制御装置9は、可変動弁機構5の駆動モードとして「第4モード」を選択している状態において、エンジン1の停止期間が所定の期間を超えたとき、可変動弁機構5の駆動モードを「第4モード」から「第1モード」へ切り替える。
(g)電子制御装置9は、可変動弁機構5の駆動モードとして「第1モード」、「第2モード」、「第3モード」及び「第4モード」のいずれかを選択している状態において、イグニッションスイッチ97が「OFF」(または「ACC」)位置へ切り替えられたことを検出したとき、可変動弁機構5の駆動モードを上記いずれかの駆動モードから「第5モード」へ切り替える。
(h)電子制御装置9は、可変動弁機構5の駆動モードとして「第5モード」を選択している状態において、イグニッションスイッチ97が「ON」位置に切り替えられてから「OFF」位置へ切り替えられるまでの間にエンジン1の始動が一度も完了していないことを検出したとき、可変動弁機構5の駆動モードを「第5モード」から「第6モード」へ切り替える。
<電動アクチュエータの制御態様>
電子制御装置9による電動アクチュエータ5Aの制御態様の概略について説明する。
電子制御装置9は、エンジン運転中、実際のバルブ作用角INCAMを監視する。そして、制御上で把握しているバルブ作用角INCAM(監視バルブ作用角INCAMmnt)と目標のバルブ作用角INCAM(目標バルブ作用角INCAMtrg)とが異なるとき、監視バルブ作用角INCAMmntと目標バルブ作用角INCAMtrgとが一致するように電動アクチュエータ5Aを制御する。
監視バルブ作用角INCAMmntは、例えば次のように算出することができる。
(1)電動アクチュエータ5A(電動モータ5A1)の制御量に基づいて現在のコントロールシャフト52の位置を把握する。
(2)コントロールシャフト52の位置とバルブ作用角INCAMとの関係が予め設定されたマップに上記(1)にて把握したコントロールシャフト52の位置を適用することで、監視バルブ作用角INCAMmntを算出する。
電動アクチュエータ5Aの駆動状態は、電子制御装置9を通じて次の(a)〜(c)のいずれかに切り替えられる。なお、「待機状態」は、電動アクチュエータ5Aが停止している状態に相当する。また、「可変状態」及び「保持状態」は、電動アクチュエータ5Aが駆動している状態に相当する。
(a)「待機状態」:バッテリ12から電力が供給されない状態。
(b)「可変状態」:バッテリ12から供給された電力によりコントロールシャフト52の位置を変更する状態。
(c)「保持状態」:バッテリ12から供給された電力によりコントロールシャフト52の位置を固定する状態。
電動アクチュエータ5Aには、コントロールシャフト52の位置を機械的に固定するロック機構が内蔵されている。本実施形態では、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」または「保持状態」から「待機状態」に切り替えられたとき、上記ロック機構を通じてコントロールシャフト52の位置(バルブ作用角INCAM)が固定される。また、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「待機状態」から「可変状態」または「保持状態」に切り替えられたとき、上記ロック機構によるコントロールシャフト52の位置の固定が解除される。
電子制御装置9は、基本的には次のように電動アクチュエータ5Aの駆動状態を切り替える。
(a)監視バルブ作用角INCAMmntが目標バルブ作用角INCAMtrgと異なるとき、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」に設定してバルブ作用角INCAMの変更を行う。
(b)監視バルブ作用角INCAMmntが目標バルブ作用角INCAMtrgと一致したとき、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「保持状態」に設定してバルブ作用角INCAMをそのときの大きさに維持する。
<吸気流量の調整>
エンジン1においては、可変動弁機構5によるバルブ作用角INCAMの変更を通じて吸気流量GAの調整を行うことで、低負荷運転状態での燃費の向上や高負荷運転状態での出力の向上を図ることが可能となる。一方で、可変動弁機構5が十分に暖機されていない状態(コントロールシャフト52等のフリクションが大きい状態)においては、バルブ作用角INCAMの変更を行うときに電動アクチュエータ5Aの負荷が過度に大きくなる傾向にある。
そこで、エンジン1においては、こうしたことを考慮して次のように吸気流量GAの調整を行うようにしている。
(a)可変動弁機構5の暖機が完了していないとき(可変動弁機構5の駆動モードが「第2モード」に設定されているとき)、スロットル開度THRの変更を通じて吸気流量GAの調整を行う。即ち、吸気流量計測値GAMが吸気流量GAの目標値(目標吸気流量GAtrg)へ収束するようにスロットル開度THRを制御する。なお、目標吸気流量GAtrgは、アクセル操作量ACP及びエンジン回転速度NE等に基づいて算出することができる。
(b)可変動弁機構5の暖機が完了しているとき(可変動弁機構5の駆動モードが「第3モード」に設定されているとき)、可変動弁機構5によるバルブ作用角INCAMの変更を通じて吸気流量GAの調整を行う。即ち、吸気流量計測値GAMが目標吸気流量GAtrgへ収束するように可変動弁機構5を制御する。なお、このとき、スロットル開度THRは比較的大きい開度に保持される。そして、電子制御装置9を通じて実行されているその他の制御からの要求(例えば、インテークパイプ31内の負圧を調整する等)があるとき、そうした要求に応じてスロットル開度THRが変更される。
<エンジン始動処理>
「可変動弁機構駆動処理」の説明に先立ち、エンジン1を始動させるための「エンジン始動処理」について説明する。
図13に、「エンジン始動処理」の処理手順を示す。
本処理は、電子制御装置9を通じて行われる。また、イグニッション信号IGがオフからオンへ切り替わったことを条件に開始される。
[ステップS10]スタータ信号STAがオフからオンに切り替わったか否かを判定する。
・オフからオンに切り替わったとき、ステップS12の処理を行う。
・オフからオンに切り替わっていないとき、再度ステップS10の処理を行う。
[ステップS12]スタータモータ11の駆動を開始する。
[ステップS14]気筒判別が完了したことに基づいて、燃料噴射制御及び点火制御の実行を許可する。
[ステップS20]エンジン1が初爆状態から完爆状態へ移行したか否かを判定する。
ステップS20の処理では、エンジン回転速度計測値NEMが判定値以上であることをもって初爆状態から完爆状態へ移行したと判定するようにしている。なお、初爆状態は、混合気の燃焼が行われているもののエンジン1が自立運転できない状態(スタータモータ11によるトルクの補助がないとクランクシャフト26の回転が継続されない状態)を示す。また、完爆状態は、エンジン1が自立運転できる状態(スタータモータ11によるトルクの補助がなくともクランクシャフト26の回転が継続される状態)を示す。
・エンジン1が完爆状態へ移行しているとき、ステップS22の処理を行う。
・エンジン1が完爆状態へ移行していないとき、再度ステップS20の処理を行う。
[ステップS22]スタータモータ11を停止する。
[ステップS24]エンジン1の始動が完了したことを示す始動完了フラグeSTをオンに設定する。
このように、「エンジン始動処理」ではスタータ信号STAのオンにともなってスタータモータ11の駆動を開始する。即ち、エンジン1の始動を開始する。そして、エンジン1が完爆状態へ移行したときにスタータモータ11の駆動を停止する。即ち、エンジン1の始動を完了する。
<第1可変動弁機構駆動処理>
図14及び図15を参照して、「第1可変動弁機構駆動処理」について説明する。
[ステップS110]イグニッション信号IGがオフからオンに切り替わったか否かを判定する。
・オフからオンに切り替わったとき、ステップS112の処理を行う。
・オフからオンに切り替わっていないとき、再度ステップS110の処理を行う。
[ステップS112]「第1アクチュエータ駆動処理」(図16)を開始する。なお、「第1アクチュエータ駆動処理」の詳細な処理手順については後述する。
[ステップS120]イグニッション信号IGがオンからオフへ切り替わったか否かを判定する。
・オンからオフへ切り替わったとき、ステップS122(図15)の処理を行う。
・オンからオフへ切り替わっていないとき、ステップS130の処理を行う。
[ステップS122]現在実行されている電動アクチュエータ5Aの駆動処理、即ち「第1アクチュエータ駆動処理」を中断する。
[ステップS124]「第5可変動弁機構駆動処理」(図29)を開始するとともに「第1可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第1モード」から「第5モード」へ切り替える。
[ステップS130]「第1アクチュエータ駆動処理」が終了しているか否かを判定する。
・上記駆動処理が終了しているとき、ステップS132の処理を行う。
・上記駆動処理が終了していないとき、再度ステップS120の処理を行う。
[ステップS132]「第2可変動弁機構駆動処理」(図17)を開始するとともに「第1可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第1モード」から「第2モード」へ切り替える。
<第1アクチュエータ駆動処理>
図16を参照して、「第1アクチュエータ駆動処理」について説明する。
[ステップT102]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定する。即ち、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」及び「保持状態」のいずれかに切り替えることを禁止する。
[ステップT110]スタータモータ11の駆動期間(スタータモータ11の駆動が開始されてからの経過時間(モータ駆動期間TM))がマスク期間TMX以上か否かを判定する。
マスク期間TMXは、スタータモータ11の駆動開始にともないバッテリ12の電圧(バッテリ電圧BV)が過度に低下している状態を検出するための値として予め設定されている。
電子制御装置9は、ステップT110の処理を通じてバッテリ12の状態について次のように判断する。
(a)モータ駆動期間TMがマスク期間TMX未満のとき、スタータモータ11の駆動によりバッテリ電圧BVが過度に低下していると判断する。この判定結果が得られたときは、再度ステップT110の処理を行う。
(b)モータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上のとき、バッテリ電圧BVがスタータモータ11の駆動により過度に低下した状態を脱したと判断する。この判定結果が得られたときは、「第1アクチュエータ駆動処理」を終了する。
このように、「第1アクチュエータ駆動処理」では、イグニッションスイッチ97が「ON」位置へ切り替えられてからモータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となるまでの間、ステップT110の処理が繰り返して行われる。即ち、電動アクチュエータ5Aの「待機状態」が継続される。
運転者やその他の乗員(運転者等)が車両に乗車してからエンジン1の始動が開始されるまでは、車内が比較的静かな状態にあるため、こうした状況で可変動弁機構5(電動アクチュエータ5A)を駆動させた場合、運転者等が可変動弁機構5(電動アクチュエータ5A)の作動音を不快に感じることも考えられる。
そこで、「第1アクチュエータ駆動処理」では、少なくともエンジン1の始動が開始されるまで、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定することで、運転者等に対して不快感が与えられることを抑制するようにしている。また、モータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となるまで、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定することで、バッテリ電圧BVの低下に起因するエンジン1の始動不良が抑制されるようにしている。
<第2可変動弁機構駆動処理>
図17及び図18を参照して、「第2可変動弁機構駆動処理」について説明する。
[ステップS202]「第2アクチュエータ駆動処理」(図19)を開始する。なお、「第2アクチュエータ駆動処理」の詳細な処理手順については後述する。
[ステップS210]エンジンストールが発生したか否かを判定する。
・エンジンストールが発生したとき、ステップS212(図18)の処理を行う。
・エンジンストールが発生していないとき、ステップS220の処理を行う。
[ステップS212]現在実行されている電動アクチュエータ5Aの駆動処理、即ち「第2アクチュエータ駆動処理」を中断する。
[ステップS214]「第4可変動弁機構駆動処理」(図25)を開始するとともに「第2可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第2モード」から「第4モード」へ切り替える。
[ステップS220]イグニッション信号IGがオンからオフへ切り替わったか否かを判定する。
・オンからオフへ切り替わっているとき、ステップS222(図18)の処理を行う。
・オンからオフへ切り替わっていないとき、ステップS230の処理を行う。
[ステップS222]現在実行されている電動アクチュエータ5Aの駆動処理、即ち「第2アクチュエータ駆動処理」を中断する。
[ステップS224]「第5可変動弁機構駆動処理」(図29)を開始するとともに「第2可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第2モード」から「第5モード」へ切り替える。
[ステップS230]「第2アクチュエータ駆動処理」が終了しているか否かを判定する。
・上記駆動処理が終了しているとき、ステップS232の処理を行う。
・上記駆動処理が終了していないとき、再度ステップS210の処理を行う。
[ステップS232]「第3可変動弁機構駆動処理」(図22)を開始するとともに「第2可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第2モード」から「第3モード」へ切り替える。
<第2アクチュエータ駆動処理>
図19〜図21を参照して、「第2アクチュエータ駆動処理」について説明する。
[ステップT210]吸気温度計測値THAMが基準吸気温度THAX以上か否かを判定する。
エンジン1の始動直後は、スロットルバルブ39が吸気絞りとして適切に機能しないため、始動開始からしばらくの間(エンジン1の始動開始からの経過時間(始動後期間TE)が基準始動後期間TEXとなるまでの間)は多量の空気が燃焼室24へ流れ込むようになる。従って、エンジン1の始動直後は、実圧縮比がスロットル開度THRに対応した実圧縮比を上回るようになる。一方で、実圧縮比は吸気温度THAの上昇にともなって増加するようになる。こうしたことから、吸気温度THAが比較的高い状態でエンジン1が始動されたとき、始動後期間TEが基準始動後期間TEXに達するまでの間においてノッキングをまねく可能性が高くなる。
そこで、ステップT210の処理では、吸気温度計測値THAMと基準吸気温度THAXとの比較を行うことで、吸気温度THAがノッキングをまねく領域にあるか否かを判定するようにしている。なお、基準吸気温度THAXは、試験等を通じて予め設定されている。
電子制御装置9は、ステップT210の判定処理を通じて、エンジン1の始動直後のノッキングについて次のように判断する。
(a)吸気温度計測値THAMが基準吸気温度THAX以上のとき、実圧縮比が過度に大きくなることによりノッキングの発生をまねくおそれがあると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT212の処理を行う。
(b)吸気温度計測値THAMが基準吸気温度THAX未満のとき、ノッキングをまねくおそれはないと判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT232(図20)の処理を行う。
[ステップT212]第1バルブ作用角INCAMfstを目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定する。第1バルブ作用角INCAMfstは、インテークバルブ33の閉弁時期が下死点及びその近傍から離れた時期となるバルブ作用角INCAMを示す。
ちなみに、インテークバルブ33の閉弁時期が下死点またはその近傍の時期に設定されているとき、インテークバルブ33の閉弁時期がその他の時期に設定されている場合に比べて実圧縮比が大きくなる。従って、バルブ作用角INCAMを第1バルブ作用角INCAMfstに設定することで、実圧縮比とバルブ作用角INCAMとの関係においてより小さい実圧縮比を得ることができるようになる。
[ステップT214]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」に設定する。そして、バルブ作用角INCAMが第1バルブ作用角INCAMfstとなるように電動アクチュエータ5Aを制御する。
[ステップT220]監視バルブ作用角INCAMmntが目標バルブ作用角INCAMtrg(第1バルブ作用角INCAMfst)と一致しているか否かを判定する。
・監視バルブ作用角INCAMmntが第1バルブ作用角INCAMfstと一致しているとき、ステップT222の処理を行う。
・監視バルブ作用角INCAMmntが第1バルブ作用角INCAMfstと一致していないとき、再度ステップT220の処理を行う。即ち、監視バルブ作用角INCAMmntが第1バルブ作用角INCAMfstと一致するまで電動アクチュエータ5Aの「可変状態」を継続する。
[ステップT222]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」から「保持状態」へ切り替える。これにより、バルブ作用角INCAMが第1バルブ作用角INCAMfstに設定された状態が維持される。
[ステップT230]エンジン1の始動開始からの経過時間(始動後期間TE)が基準始動後期間TEX以上か否かを判定する。
電子制御装置9は、ステップT230の判定処理を通じて、バルブ作用角INCAMの大きさについて次のように判断する。
(a)始動後期間TEが基準始動後期間TEX以上のとき、スロットルバルブ39が吸気絞りとして適切に機能するため、バルブ作用角INCAMを第1バルブ作用角INCAMfst以外の作用角に設定してもノッキングの発生を抑制することができると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT232の処理を行う。
(b)始動後期間TEが基準始動後期間TEX未満のとき、スロットルバルブ39が吸気絞りとして適切に機能しないため、バルブ作用角INCAMを第1バルブ作用角INCAMfstに設定する必要があると判断する。この判定結果が得られたときは、再度ステップT230の処理を行う。
[ステップT232]第2バルブ作用角INCAMscdを目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定する。なお、第2バルブ作用角INCAMscdは、吸気効率が最適となるバルブ作用角INCAMに相当する。
ステップT232の処理では、エンジン回転速度NEと第2バルブ作用角INCAMscdとの関係が予め設定されたマップにエンジン回転速度計測値NEMを適用することで、現在のエンジン回転速度NEに適合した第2バルブ作用角INCAMscdを算出するようにしている。
[ステップT234]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」に設定する。そして、バルブ作用角INCAMが第2バルブ作用角INCAMscdとなるように電動アクチュエータ5Aを制御する。
[ステップT240]監視バルブ作用角INCAMmntが目標バルブ作用角INCAMtrg(第2バルブ作用角INCAMscd)と一致しているか否かを判定する。
・監視バルブ作用角INCAMmntが第2バルブ作用角INCAMscdと一致しているとき、ステップT242の処理を行う。
・監視バルブ作用角INCAMmntが第2バルブ作用角INCAMscdと一致していないとき、再度ステップT240の処理を行う。即ち、監視バルブ作用角INCAMmntが第2バルブ作用角INCAMscdと一致するまで電動アクチュエータ5Aの「可変状態」を継続する。
[ステップT242]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」から「保持状態」へ切り替える。これにより、バルブ作用角INCAMが第2バルブ作用角INCAMscdに設定された状態が維持される。
[ステップT250]可変動弁機構5の暖機が完了しているか否かを判定する。
ステップT250の処理では、可変動弁機構5の暖機状態の指標値として冷却水温度THWを採用するとともに、冷却水温度計測値THWMと基準冷却水温度THWXとを比較することで、可変動弁機構5の暖機が完了したか否かを判定するようにしている。なお、基準冷却水温度THWXは、試験等を通じて予め設定されている。
電子制御装置9は、ステップT250の判定処理を通じて、可変動弁機構5の暖機状態について次のように判断する。
(a)冷却水温度計測値THWMが基準冷却水温度THWX以上のとき、可変動弁機構5の暖機が完了していると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT260の処理を行う。
(b)冷却水温度計測値THWMが基準冷却水温度THWX未満のとき、可変動弁機構5の暖機が完了していないと判断する。この判定結果が得られたときは、再度ステップT232の処理を行う。
[ステップT260]運転性の悪化を抑制しつつ可変動弁機構5の駆動モードを「第2モード」から「第3モード」へ切り替えることのできる条件(モード移行条件)が成立しているか否かを判定する。
エンジン1においては、可変動弁機構5の駆動モードが「第2モード」に設定されているとき、スロットルバルブ39の制御(スロットル開度THRの変更)を通じて吸気流量GAの調整が行われる。一方で、可変動弁機構5の駆動モードが「第3モード」に設定されているとき、可変動弁機構5の制御(バルブ作用角INCAMの変更)を通じて吸気流量GAの調整が行われる。また、いずれの状態においても、実際の吸気流量GAが目標吸気流量GAtrgとなるようにスロットル開度THRやバルブ作用角INCAMの変更が行われる。
しかし、駆動モードの移行に際しては、吸気流量GAを調整するための制御対象がスロットルバルブ39から可変動弁機構5へ変更されるため、上述のように吸気流量GAの調整が行われていても実際の吸気流量GAと目標吸気流量GAtrgとの乖離が一時的に大きくなることもある。また、実際の吸気流量GAと目標吸気流量GAtrgとの乖離度合いは、駆動モードの移行時におけるバルブ作用角INCAMの変化量(駆動モードの変更開始時における実際のバルブ作用角INCAMと目標バルブ作用角INCAMtrgとの差)が大きくなるにつれて増大する傾向にある。
そした、こうした実際の吸気流量GAと目標吸気流量GAtrgとの乖離度合いの増大が生じた場合には、エンジン1のトルクが急激に変化するため、運転性の悪化をまねくようになる。ちなみに、駆動モードの移行中は、スロットルバルブ39や可変動弁機構5の個体差等に起因する制御精度の低下度合いが駆動モードの移行前後(駆動モードが固定されているとき)に比べて大きくなることにより、上記乖離の増大が生じると考えられる。
「第2アクチュエータ駆動処理」では、こうした駆動モードの移行にともなう運転性の悪化を抑制するために、ステップT260の処理を通じてモード移行条件が成立していることが判定されたとき、「第2モード」から「第3モード」への移行を許可する(「第2アクチュエータ駆動処理」を終了する)ようにしている。
ステップT260の処理では、下記[条件1][条件2]及び[条件3]の少なくとも1つと下記[条件4]とが成立していることをもってモード移行条件が成立していると判定するようにしている。即ち、上記[条件1][条件2]及び[条件3]の少なくとも1つと[条件4]とが成立しているとき、「第2モード」から「第3モード」への移行を許可する。
[条件1]:車両の走行状態が低速走行状態でない。
[条件2]:エンジン1の運転状態が過渡運転状態である。
[条件3]:エンジン1の運転状態が高負荷運転状態である。
[条件4]:エンジン1の運転状態が低負荷運転状態でない。
本実施形態では、エンジン1の負荷の指標値として吸気率GAPを採用している。即ち、吸気率GAPを通じてエンジン1の負荷を把握するようにしている。
吸気率GAPは、エンジン1において得られる最大の吸気流量GA(最大吸気流量GAmax)と吸気流量計測値GAMとの比率を示す。即ち、「GAP←GAM/GAmax」を通じて算出される。なお、最大吸気流量GAmaxは、試験等を通じて予め把握されている値が採用される。
以下、上記[条件1]から[条件4]までの条件に基づいて駆動モードの切り替えを行う理由について説明する。
〔1〕「[条件1]について」
車両の走行速度(車速SPD)が比較的大きい状態においては、エンジン1や車両の振動も大きいため、トルクの変動が運転者に伝わりにくい。従って、車速SPDがそうした領域(トルク変動許容領域)にあるときに「第2モード」から「第3モード」への移行を許可することで、駆動モードの移行に起因する運転性の悪化を抑制することが可能となる。
そこで、本実施形態では、駆動モードの切り替えに際して[条件1]が成立しているか否か(車速SPDがトルク変動許容領域にあるか否か)を判定するようにしている。具体的には、ステップT260の処理において、車速計測値SPDMと下限車速SPDULとの比較を通じて[条件1]の成否を判定するようにしている。
下限車速SPDULは、トルク変動許容領域に属する車速SPDのうちの最も小さい車速SPDに相当する。即ち、車速SPDが下限車速SPDUL未満のとき、車速SPDがトルク変動許容領域に属していない状態とある。一方で、車速SPDが下限車速SPDUL以上のとき、車速SPDがトルク変動許容領域に属している状態となる。なお、本実施形態においては、試験等を通じて予め下限車速SPDULが設定されている。
電子制御装置9は、ステップT260における[条件1]の判定処理を通じて、駆動モードの移行について次のように判断する。
(a)車速計測値SPDMが下限車速SPDUL以上のとき、エンジン1や車両の振動が比較的大きいため、「第2モード」から「第3モード」への移行にともなってトルク変動が生じたとしても運転性の悪化を抑制することができると判断する。
(b)車速計測値SPDMが下限車速SPDUL未満のとき、「第2モード」から「第3モード」への移行にともなうトルク変動に起因して運転性の悪化をまねくおそれがあると判断する。
〔2〕「[条件2]について」
エンジン1の運転状態が過渡運転状態のときは、エンジン1や車両の振動が大きいため、トルクの変動が運転者に伝わりにくい。従って、過渡運転状態のときに「第2モード」から「第3モード」への移行を行うことで、駆動モードの移行に起因する運転性の悪化を抑制することが可能となる。
そこで、本実施形態では、駆動モードの切り替えに際して、[条件2]が成立しているか否かを判定するようにしている。具体的には、ステップT260の処理において、吸気率GAPの変化量(吸気率変化量△GAP)と基準変化量△GAPXとの比較を通じて[条件2]の成否を判定するようにしている。
基準変化量△GAPXは、エンジン1の運転状態が過渡運転状態となる吸気率変化量△GAPのうちの最も小さい吸気率変化量△GAPに相当する。即ち、吸気率変化量△GAPが基準変化量△GAPX未満のとき、エンジン1の運転状態は定常運転状態に属する。一方で、吸気率変化量△GAPが基準変化量△GAPX以上のとき、エンジン1の運転状態は過渡運転状態に属する。なお、本実施形態においては、試験等を通じて予め基準変化量△GAPXが設定されている。
電子制御装置9は、ステップT260における[条件2]の判定処理を通じて、駆動モードの移行について次のように判断する。
(a)吸気率GAPが基準変化量△GAPX以上のとき、エンジン1や車両の振動が比較的大きいため、「第2モード」から「第3モード」への移行にともなってトルク変動が生じたとしても運転性の悪化を抑制することができると判断する。
(b)吸気率GAPが基準変化量△GAPX未満のとき、「第2モード」から「第3モード」への移行にともなうトルク変動に起因して運転性の悪化をまねくおそれがあると判断する。
〔3〕「[条件3]について」
エンジン1の運転状態が高負荷運転状態のときは、バルブ作用角INCAMがより大きい作用角に設定される。一方で、「第2モード」が選択されているとき、バルブ作用角INCAMは、基本的にはエンジン1の運転状態が中負荷運転状態や低負荷運転状態のときに設定される作用角よりも大きい作用角に設定される。従って、エンジン1の運転状態が高負荷運転状態のときに「第2モード」から「第3モード」への移行を行うことで、駆動モードの移行にともなうバルブ作用角INCAMの変化量が小さくなるため、駆動モードの移行に起因する運転性の悪化を抑制することが可能となる。
そこで、本実施形態では、駆動モードの切り替えに際して、[条件3]が成立しているか否かを判定するようにしている。具体的には、ステップT260の処理において、吸気率GAPと第1吸気率GAPX1との比較を通じて[条件3]の成否を判定するようにしている。
第1吸気率GAPX1は、エンジン1の運転状態が高負荷運転状態となる吸気率GAPのうちの最も小さい吸気率GAPに相当する。即ち、吸気率GAPが第1吸気率GAPX1未満のとき、エンジン1の運転状態は高負荷運転状態に属さない。一方で、吸気率GAPが第1吸気率GAPX1以上のとき、エンジン1の運転状態は高負荷運転状態に属する。なお、本実施形態においては、試験等を通じて予め第1吸気率GAPX1が設定されている。
電子制御装置9は、ステップT260における[条件3]の判定処理を通じて、駆動モードの移行について次のように判断する。
(a)吸気率GAPが基準変化量△GAPX以上のとき、駆動モードの移行時におけるバルブ作用角INCAMの変化量が比較的小さいため、「第2モード」から「第3モード」への移行にともなってトルク変動が生じたとしても運転性の悪化を抑制することができると判断する。
(b)吸気率GAPが基準変化量△GAPX未満のとき、「第2モード」から「第3モード」への移行にともなうトルク変動に起因して運転性の悪化をまねくおそれがあると判断する。
〔4〕「[条件4]について」
駆動モードの移行に際しては、実際の吸気流量GAと目標吸気流量GAtrgとの乖離が増大するとともに実際の吸気流量GAが目標吸気流量GAtrgを大きく下回ることによりエンジンストールをまねくおそれもある。一方で、エンジン1の負荷が比較的大きい状態(低負荷運転状態でないとき)では、吸気流量GAが一時的に小さくなったとしてもエンジンストールの発生が回避されるようになる。なお、低負荷運転状態としては、例えばアイドル運転状態が挙げられる。
そこで、本実施形態では、駆動モードの切り替えに際して、[条件4]が成立しているか否かを判定するようにしている。具体的には、ステップT260の処理において、吸気率GAPと第2吸気率GAPX2との比較を通じて[条件4]の成否を判定するようにしている。
第2吸気率GAPX2は、エンジン1の運転状態が低負荷運転状態となる吸気率GAPのうちの最も大きい吸気率GAPに相当する。即ち、吸気率GAPが第2吸気率GAPX2以下のとき、エンジン1の運転状態は低負荷運転状態に属する。一方で、吸気率GAPが第2吸気率GAPX2よりも大きいとき、エンジン1の運転状態は低負荷運転状態に属さない。なお、本実施形態においては、試験等を通じて予め第2吸気率GAPX2が設定されている。また、第2吸気率GAPX2は第1吸気率GAPX1よりも小さい値に設定される。
電子制御装置9は、ステップT260における[条件4]の判定処理を通じて、駆動モードの移行について次のように判断する。
(a)吸気率GAPが第2吸気率GAPX2以下のとき、「第2モード」から「第3モード」への移行にともなって実際の吸気流量GAが目標吸気流量GAtrgを大きく下回ったときにエンジンストールをまねくおそれがあると判断する。
(b)吸気率GAPが第2吸気率GAPX2よりも大きいとき、「第2モード」から「第3モード」への移行にともなって実際の吸気流量GAが目標吸気流量GAtrgを大きく下回ったとしてもエンジンストールをまねくおそれはないと判断する。
<第3可変動弁機構駆動処理>
図22及び図23を参照して、「第3可変動弁機構駆動処理」について説明する。
[ステップS302]「第3アクチュエータ駆動処理」(図24)を開始する。なお、「第3アクチュエータ駆動処理」の詳細な処理手順については後述する。
[ステップS310]エンジンストールが発生したか否かを判定する。
・エンジンストールが発生したとき、ステップS312(図23)の処理を行う。
・エンジンストールが発生していないとき、ステップS320の処理を行う。
[ステップS312]現在実行されている電動アクチュエータ5Aの駆動処理、即ち「第3アクチュエータ駆動処理」を中断する。
[ステップS314]「第4可変動弁機構駆動処理」(図25)を開始するとともに「第3可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第3モード」から「第4モード」へ切り替える。
[ステップS320]「第3アクチュエータ駆動処理」が終了しているか否かを判定する。
・上記駆動処理が終了しているとき、ステップS322の処理を行う。
・上記駆動処理が終了していないとき、再度ステップS310の処理を行う。
[ステップS322]「第5可変動弁機構駆動処理」(図29)を開始するとともに「第3可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第3モード」から「第5モード」へ切り替える。
<第3アクチュエータ駆動処理>
図24を参照して、「第3アクチュエータ駆動処理」について説明する。
[ステップT302]現在のエンジン1の運転状態に適合したバルブ作用角INCAM(第3バルブ作用角INCAMthd)を算出する。
ステップT302の処理では、吸気流量計測値GAMを目標吸気流量GAtrgへ収束させるために必要となるバルブ作用角INCAMを第3バルブ作用角INCAMthdとして算出するようにしている。
[ステップT304]第3バルブ作用角INCAMthdを目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定する。
[ステップT306]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」に設定する。そして、バルブ作用角INCAMが第3バルブ作用角INCAMthdとなるように電動アクチュエータ5Aを制御する。
[ステップT310]監視バルブ作用角INCAMmntが目標バルブ作用角INCAMtrg(第3バルブ作用角INCAMthd)と一致しているか否かを判定する。
・監視バルブ作用角INCAMmntが第3バルブ作用角INCAMthdと一致しているとき、ステップT312の処理を行う。
・監視バルブ作用角INCAMmntが第3バルブ作用角INCAMthdと一致していないとき、ステップT320の処理を行う。
[ステップT312]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」から「保持状態」へ切り替える。これにより、バルブ作用角INCAMが第3バルブ作用角INCAMthdに設定された状態が維持される。
[ステップT320]イグニッション信号IGがオンからオフへ切り替わったか否かを判定する。
・オンからオフへ切り替わったとき、「第3アクチュエータ駆動処理」を終了する。
・オンからオフへ切り替わっていないとき、再度ステップT302の処理を実行する。
<第4可変動弁機構駆動処理>
図25及び図26を参照して、「第4可変動弁機構駆動処理」について説明する。
[ステップS402]「第4アクチュエータ駆動処理」(図27)を開始する。なお、「第4アクチュエータ駆動処理」の詳細な処理手順については後述する。
[ステップS410]イグニッション信号IGがオンからオフへ切り替わったか否かを判定する。
・オンからオフへ切り替わったとき、ステップS412(図26)の処理を行う。
・オンからオフへ切り替わっていないとき、ステップS420の処理を行う。
[ステップS412]現在実行されている電動アクチュエータ5Aの駆動処理、即ち「第4アクチュエータ駆動処理」を中断する。
[ステップS414]「第5可変動弁機構駆動処理」(図29)を開始するとともに「第4可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第4モード」から「第5モード」へ切り替える。
[ステップS420]「第4アクチュエータ駆動処理」が終了しているか否かを判定する。
・上記駆動処理が終了しているとき、ステップS430の処理を行う。
・上記駆動処理が終了していないとき、再度ステップS410の処理を行う。
[ステップS430]「第4アクチュエータ駆動処理」を通じて「第2モード」への移行が指定されているか否かを判定する。
・移行が指定されているとき、ステップS432の処理を行う。
・移行が指定されていないとき、ステップS440(図26)の処理を行う。
[ステップS432]「第2可変動弁機構駆動処理」(図17)を開始するとともに「第4可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第4モード」から「第2モード」へ切り替える。
[ステップS440]「第4アクチュエータ駆動処理」を通じて「第3モード」への移行が指定されているか否かを判定する。
・移行が指定されているとき、ステップS442の処理を行う。
・移行が指定されていないとき、ステップS444の処理を行う。
[ステップS442]「第3可変動弁機構駆動処理」(図22)を開始するとともに「第4可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第4モード」から「第3モード」へ切り替える。
[ステップS444]「第1可変動弁機構駆動処理」(図14)を開始するとともに「第4可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第4モード」から「第1モード」へ切り替える。
<第4アクチュエータ駆動処理>
図27及び図28を参照して、「第4アクチュエータ駆動処理」について説明する。
[ステップT402]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「保持状態」に設定する。
バルブ作用角INCAMの変更が行われている状態においてエンジンストールが生じたとき、それにともなってバルブ作用角INCAMの変更が中断されるため、エンジン1の再始動後はバルブ作用角INCAMの変更を速やかに再開することが要求される。
ステップT402では、エンジンストールによりエンジン1が停止しているとき、電動アクチュエータ5Aを「保持状態」に設定することで、エンジン1の再始動後において速やかにバルブ作用角INCAMの変更を行うことができるようにしている。
なお、「第4アクチュエータ駆動処理」はエンジン1が停止している状態において実行されるため、ステップT402の処理によれば、電動アクチュエータ5Aの作動音が比較的運転者等に伝わりやすい状況下で電動アクチュエータ5Aが「保持状態」に設定されることになる。一方で、エンジンストールが生じたときは、エンジン1が駆動している状態(電動アクチュエータ5Aの作動音よりも十分に大きいエンジン1の作動音が生じている状態)からエンジン1が停止した状態(エンジン1の作動音が生じなくなった状態)へ移行した直後であるため、比較的小さい音が生じていても運転者等はそうした音を不快に感じにくい状態にある。「第4アクチュエータ駆動処理」では、こうしたことを考慮して、エンジン1の停止中に電動アクチュエータ5Aを「保持状態」に設定することを許容するようにしている。
[ステップT410]エンジン1の再始動が開始されたか(スタータモータ11の駆動が開始されたか)否かを判定する。
・再始動が開始されたとき、ステップT420の処理を行う。
・再始動が開始されていないとき、ステップT430(図28)の処理を行う。
[ステップT420]スタータモータ11の駆動期間(駆動が開始されてからの経過時間(モータ駆動期間TM))がマスク期間TMX以上か否かを判定する。
・マスク期間TMX以上のとき、ステップT422の処理を行う。
・マスク期間TMX未満のとき、再度ステップT420の処理を行う。
[ステップT422]「第4アクチュエータ駆動処理」の終了後において移行する駆動モードを設定する。
(a)エンジンストールが生じる前(「第4可変動弁機構駆動処理」の開始前)に「第2モード」が選択されていたときは、「第2モード」を「第4アクチュエータ駆動処理」の終了後に移行する駆動モードとして設定する。
(b)エンジンストールが生じる前(「第4可変動弁機構駆動処理」の開始前)に「第3モード」が選択されていたときは、「第3モード」を「第4アクチュエータ駆動処理」の終了後に移行する駆動モードとして設定する。
[ステップT430]エンジンストールが生じてからの経過時間(始動待機期間TS)が基準待機期間TSX以上か否かを判定する。
エンジンストールが生じたとき、通常であればしばらくした後にエンジン1が再始動されるものの、場合によっては長期にわたってエンジン1の再始動が行われないこともある。この場合は、エンジン1の再始動に備えて電動アクチュエータ5Aの「保持状態」を継続するよりも、電動アクチュエータ5Aを「待機状態」に設定してバッテリ12の電力の消費を抑制することが望ましいといえる。
そこで、ステップT430の処理では、始動待機期間TSと基準待機期間TSXとの比較を行うことで、エンジン1の再始動がすぐに行われる状態にあるか否かを判定するようにしている。なお、基準待機期間TSXは、エンジンストールが生じた後にエンジン1の再始動が開始されるまでの標準的な期間として予め設定されている。
電子制御装置9は、ステップT430の判定処理を通じて、エンジン1の再始動について次のように判断する。
(a)始動待機期間TSが基準待機期間TSX以上のとき、エンジン1の再始動がすぐに行われる可能性は小さいと判断する。即ち、電動アクチュエータ5Aを「待機状態」に設定することが望ましいと判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT432の処理を行う。
(b)始動待機期間TSが基準待機期間TSX以上のとき、エンジン1の再始動がすぐに行われる可能性が大きいと判断する。即ち、電動アクチュエータ5Aの「保持状態」を継続することが望ましいと判断する。この判定結果が得られたときは、再度ステップT410の処理を行う。
[ステップT432]「第1モード」を「第4アクチュエータ駆動処理」の終了後に移行する駆動モードとして設定する。これにより、以降の処理において、「第1アクチュエータ駆動処理」を通じて電動アクチュエータ5Aが「待機状態」に設定される。
<第5可変動弁機構駆動処理>
図29を参照して、「第5可変動弁機構駆動処理」について説明する。
[ステップS502]「第5アクチュエータ駆動処理」(図30)を開始する。なお、「第5アクチュエータ駆動処理」の詳細な処理手順については後述する。
[ステップS510]「第5アクチュエータ駆動処理」が終了しているか否かを判定する。
・上記駆動処理が終了しているとき、ステップS520の処理を行う。
・上記駆動処理が終了していないとき、再度ステップS510の処理を行う。
[ステップS520]「第5アクチュエータ駆動処理」を通じて「第6モード」への移行が指定されているか否かを判定する。
・移行が指定されているとき、ステップS522の処理を行う。
・移行が指定されていないとき、「第5可変動弁機構駆動処理」を終了する。
なお、電子制御装置9の駆動が継続されている状態においては、ステップS520の処理を通じて「第5可変動弁機構駆動処理」が終了された後、「第1可変動弁機構駆動処理」が開始される。
[ステップS522]「第6可変動弁機構駆動処理」(図32)を開始するとともに「第5可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第5モード」から「第6モード」へ切り替える。
<第5アクチュエータ駆動処理>
図30及び図31を参照して、「第5アクチュエータ駆動処理」について説明する。
当該車両においては、エンジン1の停止中に電動アクチュエータ5Aの異常が生じたことにより、エンジン1の始動時にバルブ作用角INCAMの変更を行うことができなくなることもある。この場合、バルブ作用角INCAMが最小バルブ作用角INCAMminまたはその近傍の作用角に設定されているとすると、エンジン1の始動時において燃焼室24へ供給される空気の量が不足することにより始動不良をまねくことが想定される。
そこで、本実施形態では、電動アクチュエータ5Aに異常が生じている場合にもエンジン1を始動させることができるようにするために、「第5モード」を選択しているときに「第5アクチュエータ駆動処理」を行うようにしている。
「第5アクチュエータ駆動処理」では、車両の運転が終了したときに次回の運転に備えてバルブ作用角INCAMを最大バルブ作用角INCAMmaxに設定する。これにより、電動アクチュエータ5Aの異常が生じた場合においてもエンジン1の始動時に際して空気の不足が抑制されるため、始動性の向上が図られるようになる。
[ステップT510]イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられるまでにおいて、エンジン1が始動完了の状態となったことがあるか(運転履歴があるか)否かを判定する。
ステップT510の処理では、始動完了フラグeSTがオンに設定されていることをもって運転履歴があると判定するようにしている。
イグニッションスイッチ97は、通常であれば運転者が車両の運転を終了する意図のもとに「ON」位置から「OFF」位置へ切り替えられるものの、場合によっては運転者が運転の終了を意図していない状態で「OFF」位置へ切り替えられることもある。
後者の場合、比較的短期間のうちにエンジン1の始動が行われるため、イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられてからエンジン1が再始動されるまでに電動アクチュエータ5Aの異常が生じるおそれは極めて小さいといえる。即ち、イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたことに基づいてバルブ作用角INCAMを最大バルブ作用角INCAMmaxへ変更しなくとも、空気の不足に起因する始動不良をまねくおそれはないと考えられる。一方で、バルブ作用角INCAMが最大バルブ作用角INCAMmaxに変更された場合には、エンジン1の始動後、すぐにバルブ作用角INCAMが運転状態に適合した目標バルブ作用角INCAMtrgへ変更されることになるため、バッテリ12の電力が不要に消費されるようになる。
こうしたことから、運転者が運転の終了を意図していない状態でイグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたときは、バルブ作用角INCAMを最大バルブ作用角INCAMmaxへ変更しないことが望ましいといえる。
そこで、ステップT510の処理では、エンジン1の運転履歴に基づいて、イグニッションスイッチ97の「OFF」位置への切り替えが車両の運転を終了する意図のもとに行われた操作か否かを判定するようにしている。
電子制御装置9は、ステップT510の判定処理を通じて、イグニッションスイッチ97の操作について次のように判断する。
(a)始動完了フラグeSTがオンのとき、運転者が車両の運転を終了するためにイグニッションスイッチ97を「OFF」位置へ切り替えたと判断する。即ち、短期間のうちにエンジン1が始動される可能性はないと判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT520の判定処理を行う。
(b)始動完了フラグeSTがオフのとき、運転者が車両の運転の終了を意図していない状態でイグニッションスイッチ97が「OFF」へ切り替えられたと判断する。即ち、短期間のうちにエンジン1が始動される可能性があると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT514の処理を行う。
[ステップT512]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「保持状態」に設定する。
[ステップT514]「第5モード」から「第6モード」への移行を指定して「第5アクチュエータ駆動処理」を終了する。
[ステップT520]エンジン1の状態がバルブ作用角INCAMの増大側への変更を許容することのできる状態(変更許容状態)にあるか否かを判定する。
ステップT520の処理では、車速計測値SPDMが基準車速SPDX未満であることをもってエンジン1の状態が変更許容状態にあると判定するようにしている。
エンジン回転速度NEが過度に大きい状態でバルブ作用角INCAMが最大バルブ作用角INCAMmaxへ向けて変更されると、吸気流量GAが増大することにより、燃焼室24内に残留している燃料が燃焼されることもある。この場合、運転者が車両の停止を要求しているにもかかわらずエンジン回転速度NEが上昇するため、運転者に違和感を与えるおそれがある。
そこで、ステップT520の処理では、車速計測値SPDMと基準車速SPDXとの比較を行うことで、エンジン1の状態が上記変更許容状態にあるか否かを判定するようにしている。なお、基準車速SPDXは、試験等を通じて予め設定されている。
電子制御装置9は、ステップT520の判定処理を通じて、バルブ作用角INCAMの変更について次のように判断する。
(a)車速計測値SPDMが基準車速SPDX未満のとき、バルブ作用角INCAMを増大側へ変更してもエンジン回転速度NEの上昇をまねくおそれはないと判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT522の処理を行う。
(b)車速計測値SPDMが基準車速SPDX以上のとき、バルブ作用角INCAMを増大側へ変更することによりエンジン回転速度NEの上昇をまねくおそれがあると判断する。この判定結果が得られたときは、再度ステップT520の処理を行う。
[ステップT522]最大バルブ作用角INCAMmaxを目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定する。
[ステップT524]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」に設定する。そして、バルブ作用角INCAMが最大バルブ作用角INCAMmaxとなるように電動アクチュエータ5Aを制御する。
[ステップT530]監視バルブ作用角INCAMmntが目標バルブ作用角INCAMtrg(最大バルブ作用角INCAMmax)と一致しているか否かを判定する。
・監視バルブ作用角INCAMmntが最大バルブ作用角INCAMmaxと一致しているとき、ステップT542の処理を行う。
・監視バルブ作用角INCAMmntが最大バルブ作用角INCAMmaxと一致していないとき、ステップT540の処理を行う。
[ステップT540]イグニッション信号IGがオフとなってからの経過時間(IGオフ期間Toff)が基準オフ期間ToffXを超えたか否かを判定する。
エンジン回転速度NEが極めて小さい状態(「0」またはそれに近い状態)でバルブ作用角INCAMの変更が行われた場合、コントロールシャフト52を移動させる際の電動アクチュエータ5Aの負荷が過度に大きくなることにより、バルブ作用角INCAMの変更に起因して電動アクチュエータ5Aの損傷をまねくこともある。
従って、イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたことに基づいてバルブ作用角INCAMを最大バルブ作用角INCAMmaxへ変更する場合、エンジン回転速度NEが限界値(下限回転速度NEUL)未満となって以降はバルブ作用角INCAMの大きさにかかわらずバルブ作用角INCAMの変更を停止することが望ましい。
なお、下限回転速度NEULは、エンジン1の停止時において、電動アクチュエータ5Aの負荷が過度に大きくならない状態でバルブ作用角INCAMの変更を行うことができるエンジン回転速度NEのうちの最も小さい回転速度に相当する。即ち、エンジン回転速度NEが下限回転速度NEUL未満のときにバルブ作用角INCAMの変更が行われた場合、電動アクチュエータ5Aの負荷が過度に大きくなるおそれがある。一方で、エンジン回転速度NEが下限回転速度NEUL以上のときにバルブ作用角INCAMの変更が行われた場合、電動アクチュエータ5Aの負荷が過度に大きくなるおそれはない。
ステップT540の処理では、こうしたことを考慮して、IGオフ期間Toffと基準オフ期間ToffXとの比較を通じてエンジン回転速度NEが下限回転速度NEUL未満か否かを判定するようにしている。なお、基準オフ期間ToffXは、イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられてからエンジン回転速度NEが下限回転速度NEUL未満となるまでの標準的な期間として予め設定されている。
電子制御装置9は、ステップT540の判定処理を通じて、バルブ作用角INCAMの変更について次のように判断する。
(a)IGオフ期間Toffが基準オフ期間ToffX以上のとき、エンジン回転速度NEが下限回転速度NEUL以上であると判断する。即ち、バルブ作用角INCAMの変更を継続することにより電動アクチュエータ5Aの損傷をまねくおそれがあると判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT542の処理を行う。
(b)IGオフ期間Toffが基準オフ期間ToffX未満のとき、エンジン回転速度NEが下限回転速度NEUL未満であると判断する。即ち、バルブ作用角INCAMの変更を継続しても電動アクチュエータ5Aの損傷をまねくおそれはないと判断する。この判定結果が得られたときは、再度ステップT530の処理を行う。
[ステップT542]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「可変状態」から「待機状態」へ切り替える。これにより、電動アクチュエータ5Aへの電力の供給が停止される。また、ロック機構を通じてコントロールシャフト52の位置が機械的に固定されるため、エンジン1の停止中におけるコントロールシャフト52の移動(バルブ作用角INCAMの変更)が防止される。
<第6可変動弁機構駆動処理>
図32を参照して、「第6可変動弁機構駆動処理」について説明する。
[ステップS602]「第6アクチュエータ駆動処理」(図33)を開始する。なお、「第6アクチュエータ駆動処理」の詳細な処理手順については後述する。
[ステップS610]「第6アクチュエータ駆動処理」が終了しているか否かを判定する。
・上記駆動処理が終了しているとき、ステップS620の処理を行う。
・上記駆動処理が終了していないとき、再度ステップS610の処理を行う。
[ステップS620]「第6アクチュエータ駆動処理」を通じて「第4モード」への移行が指定されているか否かを判定する。
・移行が指定されているとき、ステップS622の処理を行う。
・移行が指定されていないとき、「第6可変動弁機構駆動処理」を終了する。
なお、電子制御装置9の駆動が継続されている状態においては、ステップS620の処理を通じて「第6可変動弁機構駆動処理」が終了された後、「第1可変動弁機構駆動処理」が開始される。
[ステップS622]「第4可変動弁機構駆動処理」(図25)を開始するとともに「第6可変動弁機構駆動処理」を終了する。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第6モード」から「第4モード」へ切り替える。
<第6アクチュエータ駆動処理>
図33を参照して、「第6アクチュエータ駆動処理」について説明する。
[ステップT602]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「保持状態」に設定する。
「第6アクチュエータ駆動処理」が開始されたときは、エンジン1の始動が短期間のうちに開始されることが予測される状況下にある。
そこで、ステップT602では、電動アクチュエータ5Aを「保持状態」に設定することでエンジン1の始動後においてバルブ作用角INCAMの変更を速やかに行うことができるようにしている。
なお、「第6アクチュエータ駆動処理」はエンジン1が停止している状態において実行されるため、ステップT602の処理によれば、電動アクチュエータ5Aの作動音が比較的運転者等に伝わりやすい状況下で電動アクチュエータ5Aが「保持状態」に設定されることになる。一方で、「第6モード」が選択されているときは、スタータモータ11が駆動された状態(電動アクチュエータ5Aの作動音よりも十分に大きいエンジン1の作動音が生じている状態)からスタータモータ11が停止した状態(エンジン1の作動音が生じなくなった状態)へ移行した直後であるため、比較的小さい音が生じていても運転者等はそうした音を不快に感じにくい状態にある。そこで、「第6アクチュエータ駆動処理」では、エンジン1の停止中に電動アクチュエータ5Aを「保持状態」に設定することを許容するようにしている。
[ステップT610]イグニッション信号IGがオフからオンに切り替わったか否かを判定する。
・オフからオンに切り替わったとき、ステップT612の処理を行う。
・オフからオンに切り替わっていないとき、ステップT620の処理を行う。
[ステップT612]「第6アクチュエータ駆動処理」の終了後において移行する駆動モードとして「第1モード」を設定する。
[ステップT620]イグニッション信号IGがオフとなってからの経過時間(IGオフ期間Toff)が再始動期間ToffY以上か否かを判定する。
イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたときに運転履歴が検出されない場合、上述のように運転者が運転の終了を意図していない、即ち短期間のうちにエンジン1の始動が開始されると予測される。しかし、実際の運転者の意図がそうした予測と異なる(運転者が車両の停止を要求している)にもかかわらず電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「保持状態」または「可変状態」に設定されている場合、電動アクチュエータ5Aや可変動弁機構5の作動音が運転者等に違和感を与えることも考えられる。
そこで、ステップT620の処理では、IGオフ期間Toffと再始動期間ToffYとを比較することで、エンジン1の始動がすぐに行われるとの予測が適切であるか否かを検証するようにしている。なお、再始動期間ToffYは、運転者が車両の停止を意図していない状態でイグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられた後にエンジン1の始動が開始されるまでの標準的な期間として予め設定されている。
電子制御装置9は、ステップT620の判定処理を通じて、エンジン1の始動について次のように判断する。
(a)IGオフ期間Toffが再始動期間ToffY以上のとき、運転者が車両の停止を意図していない状態でイグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたとの予測は適切でなかったと判断する。即ち、短期間のうちにエンジン1が始動される可能性はないと判断する。この判定結果が得られたときは、ステップT622の処理を行う。
(b)IGオフ期間Toffが再始動期間ToffY未満のとき、運転者が車両の停止を意図していない状態でイグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたと予測することに問題はないと判断する。即ち、短期間のうちにエンジン1が始動される可能性があると判断する。この判定結果が得られたときは、再度ステップT610の処理を行う。
[ステップT622]電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「保持状態」から「待機状態」へ切り替える。これにより、電動アクチュエータ5Aへの電力の供給が停止される。また、ロック機構を通じてコントロールシャフト52の位置が機械的に固定されるため、エンジン1の停止中におけるコントロールシャフト52の移動(バルブ作用角INCAMの変更)が防止される。
<可変動弁機構の制御態様>
図34〜図36を参照して、次の[a]〜[c]の状態における可変動弁機構5の制御態様について説明する。
[a]エンジン1が正常に運転されたとき。
[b]エンジンストールが生じたとき。
[c]エンジン1の始動不良が生じたとき。
〔1〕「正常運転時の制御態様」
図34に、上記[a]の状況におけるタイミングチャートを示す。
[A]時刻t11:イグニッション信号IGがオフからオンへ切り替わったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第1モード」に設定される。これにともなって、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「保持状態」及び「可変状態」のいずれかへ変更することが禁止される。
[B]時刻t12:スタータ信号STAがオフからオンへ切り替わったことにより、スタータモータ11の駆動が開始される。電動アクチュエータ5Aは、イグニッション信号IGがオンとなってからモータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となるまでの間、「待機状態」に設定される。
[C]時刻t13:モータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第2モード」に設定される。これにともなって、目標バルブ作用角INCAMtrgが更新される(ここでは、第2バルブ作用角INCAMscdが目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定されたとする)。そして、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」に設定されてバルブ作用角INCAMの変更が行われる。
[D]時刻t14:監視バルブ作用角INCAMmntが第2バルブ作用角INCAMscdと一致したことにより、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」から「保持状態」へ切り替えられる。なお、時刻t14から「第3モード」への移行が許可されるまでの間、エンジン回転速度NEに応じて第2バルブ作用角INCAMscdが更新される毎に電動アクチュエータ5Aが「可変状態」に設定される。
[E]時刻t15:可変動弁機構5の暖機完了した状態においてモード移行条件が成立したことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第3モード」に設定される。これにともなって、第3バルブ作用角INCAMthdが目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定される。そして、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」に設定されてバルブ作用角INCAMの変更が行われる。なお、時刻t15以降においては、可変動弁機構5の駆動モードが「第3モード」に設定されている間、目標吸気流量GAtrg及び吸気流量計測値GAMに基づいて第3バルブ作用角INCAMthdが更新される毎に電動アクチュエータ5Aが「可変状態」に設定される。
[F]時刻t16:イグニッション信号IGがオンからオフへ切り替わったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第5モード」に設定される。これにともなって、最大バルブ作用角INCAMmaxが目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定される。そして、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」に設定されてバルブ作用角INCAMの変更が行われる。
[G]時刻t17:監視バルブ作用角INCAMmntが最大バルブ作用角INCAMmaxと一致したことにより(またはIGオフ期間Toffが基準オフ期間ToffX以上となったことにより)電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」から「待機状態」へ切り替えられる。
〔2〕「エンスト時の制御態様」
図35に、上記[b]の状況におけるタイミングチャートを示す。
[A]時刻t21:エンジン1の運転中にエンジンストールが生じたことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第4モード」に設定される。これにともなって、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「保持状態」に設定される。
[B]時刻t22:スタータ信号STAがオフからオンへ切り替わったことにより、スタータモータ11の駆動が開始される。電動アクチュエータ5Aは、エンジンストールが生じてからモータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となるまでの間、「保持状態」に設定される。
[C]時刻t23:モータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第3モード」に設定される。なお、時刻t23以降においては、可変動弁機構5の駆動モードが「第3モード」に設定されている間、目標吸気流量GAtrg及び吸気流量計測値GAMに基づいて第3バルブ作用角INCAMthdが更新される毎に電動アクチュエータ5Aが「可変状態」に設定される。
[D]時刻t24:エンジン1の運転中に再度エンジンストールが生じたことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第4モード」に設定される。これにともなって、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「保持状態」に設定される。
[E]時刻t25:イグニッション信号IGがオンからオフへ切り替わったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第5モード」に設定される。これにともなって、最大バルブ作用角INCAMmaxが目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定される。そして、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」に設定されてバルブ作用角INCAMの変更が行われる。
[F]時刻t26:監視バルブ作用角INCAMmntが最大バルブ作用角INCAMmaxと一致したことにより(またはIGオフ期間Toffが基準オフ期間ToffX以上となったことにより)電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」から「待機状態」へ切り替えられる。
〔3〕「始動不良時の制御態様」
図36に、上記[c]の状況におけるタイミングチャートを示す。
[A]時刻t31:イグニッション信号IGがオフからオンへ切り替わったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第1モード」に設定される。これにともなって、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「保持状態」及び「可変状態」のいずれかへ変更することが禁止される。
[B]時刻t32:スタータ信号STAがオフからオンへ切り替わったことにより、スタータモータ11の駆動が開始される。電動アクチュエータ5Aは、イグニッション信号IGがオンとなってからモータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となるまでの間、「待機状態」に設定される。
[C]時刻t33:モータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第2モード」に設定される。これにともなって、目標バルブ作用角INCAMtrgが更新される(ここでは、第2バルブ作用角INCAMscdが目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定されたとする)。そして、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」に設定されてバルブ作用角INCAMの変更が行われる。
[D]時刻t34:エンジン1の始動が完了する前にエンジン1が停止したことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第4モード」に設定される。これにともなって、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「保持状態」に設定される。
[E]時刻t35:イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたときにエンジン1の運転履歴がないことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第6モード」に設定される。また、電動アクチュエータ5Aの「保持状態」が継続される。
[F]時刻t36:イグニッション信号IGがオフからオンへ切り替わったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第4モード」に設定される。なお、イグニッション信号IGがオフからオンへ切り替わる前にIGオフ期間Toffが再始動期間ToffY以上となったときは、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「保持状態」から「待機状態」へ切り替えられる。
[G]時刻t37:スタータ信号STAがオフからオンへ切り替わったことにより、スタータモータ11の駆動が開始される。電動アクチュエータ5Aは、エンジンストールが生じてからモータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となるまでの間、「保持状態」に設定される。
[H]時刻t38:モータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となったことにより、可変動弁機構5の駆動モードが「第2モード」に設定される。これにともなって、目標バルブ作用角INCAMtrgが更新される(ここでは、第2バルブ作用角INCAMscdが目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定されたとする)。そして、電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「可変状態」に設定されてバルブ作用角INCAMの変更が行われる。
<実施形態の効果>
以上詳述したように、この実施形態にかかるエンジンの制御装置によれば、以下に示すような効果が得られるようになる。
(1)エンジン1の停止中は車内が比較的静かな状態にあるため、こうした状況でバルブ作用角INCAMの変更を行った場合、運転者等がバルブ作用角INCAMの変更にともなって生じる音を不快に感じることも考えられる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、エンジン1の停止中、バルブ作用角INCAMの変更を行わないようにしている。これにより、バルブ作用角INCAMの変更に起因する運転性の悪化を抑制することができるようになる。
(2)運転者等が車両に乗車してからエンジン1の始動が開始されるまでは、車内が比較的静かな状態にあるため、こうした状況で可変動弁機構5や電動アクチュエータ5Aを駆動させた場合、運転者等が可変動弁機構5や電動アクチュエータ5Aの作動音を不快に感じることも考えられる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、少なくともエンジン1の始動が開始されるまで、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定するようにしている。これにより、エンジン1の始動前において、可変動弁機構5や電動アクチュエータ5Aの作動音に起因する運転性の悪化を抑制することができるようになる。
(3)本実施形態の制御装置では、モータ駆動期間TMがマスク期間TMX以上となるまで、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定するようにしている。これにより、バッテリ電圧BVの低下に起因するエンジン1の始動不良が生じることを抑制することができるようになる。
(4)本実施形態の制御装置では、吸気温度THAが基準吸気温度THAX以上のとき、始動後期間TEが基準始動後期間TEX以上となるまで第1バルブ作用角INCAMfstを目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定するようにしている。これにより、吸気温度THAが比較的高い状態でエンジン1が始動された場合においても、ノッキングの発生を抑制することができるようになる。
(5)駆動モードの移行に際しては、実際の吸気流量GAと目標吸気流量GAtrgとの乖離が増大するとともに実際の吸気流量GAが目標吸気流量GAtrgを大きく下回ることによりエンジンストールをまねくおそれもある。一方で、エンジン1の運転状態が低負荷運転状態でないときは、吸気流量GAが一時的に小さくなったとしてもエンジンストールの発生が回避されるようになる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、[条件4](吸気率GAPが第2吸気率GAPX2よりも大きい)が成立していないとき、「第2モード」から「第3モード」への切り替えを禁止するようにしている。これにより、駆動モードの切り替えに起因するエンジンストールの発生を抑制することができるようになる。
(6)車両やエンジン1が次のような状態にあるとき、駆動モードの移行にともなう運転性の悪化を抑制することができる。
・車両の走行速度(車速SPD)が比較的大きい状態においては、エンジン1や車両の振動が大きいため、トルクの変動が運転者に伝わりにくい。従って、車速SPDがそうした領域(トルク変動許容領域)にあるときに「第2モード」から「第3モード」への移行を許可することで、駆動モードの移行に起因する運転性の悪化を抑制することが可能となる。
・エンジン1の運転状態が過渡運転状態のときは、エンジン1や車両の振動が大きいため、トルクの変動が運転者に伝わりにくい。従って、過渡運転状態のときに「第2モード」から「第3モード」への移行を行うことで、駆動モードの移行に起因する運転性の悪化を抑制することが可能となる。
・エンジン1の運転状態が高負荷運転状態のときは、バルブ作用角INCAMがより大きい作用角に設定される。一方で、「第2モード」が選択されているとき、バルブ作用角INCAMは、基本的にはエンジン1の運転状態が中負荷運転状態や低負荷運転状態のときに設定される作用角よりも大きい作用角に設定される。従って、エンジン1の運転状態が高負荷運転状態のときに「第2モード」から「第3モード」への移行を行うことで、駆動モードの移行にともなうバルブ作用角INCAMの変化量が小さくなるため、駆動モードの移行に起因する運転性の悪化を抑制することが可能となる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、[条件1](車速計測値SPDMが下限車速SPDUL以上)、[条件2](吸気率変化量△GAPが基準変化量△GAPX以上)及び[条件3](吸気率GAPが第1吸気率GAPX1以上)の全ての条件が成立していないとき、「第2モード」から「第3モード」への切り替えを禁止するようにしている。即ち、駆動モードの切り替えは、[条件1]、[条件2]及び[条件3]の少なくとも1つが成立している状態において許可される。これにより、駆動モードの切り替えに起因する運転性の悪化を抑制することができるようになる。
(7)バルブ作用角INCAMの変更が行われている状態においてエンジンストールが生じたとき、それにともなってバルブ作用角INCAMの変更が中断されるため、エンジン1の再始動後はバルブ作用角INCAMの変更を速やかに再開することが要求される。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、エンジンストールによりエンジン1が停止しているとき、電動アクチュエータ5Aを「保持状態」に設定するようにしている。これにより、エンジン1の再始動後において速やかにバルブ作用角INCAMの変更を行うことができるようになる。
(8)電動アクチュエータ5Aが「可変状態」に設定されているとき(可変動弁機構5によるバルブ作用角INCAMの変更中)、電動アクチュエータ5Aが「保持状態」に設定されているときよりも電動アクチュエータ5Aの作動音が大きくなる。また、可変動弁機構5の作動音があわせて生じるようになる。従って、エンジンストールによりエンジン1が停止しているときに電動アクチュエータ5Aを「可変状態」に設定した場合には、可変動弁機構5や電動アクチュエータ5Aの作動音が運転者等に不快感を与えることも考えられる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、エンジンストールによりエンジン1が停止しているとき、電動アクチュエータ5Aを「可変状態」に設定しないようにしている。これにより、エンジンストールが生じた場合において、可変動弁機構5や電動アクチュエータ5Aの作動音に起因する運転性の悪化を抑制することができるようになる。
(9)エンジンストールが生じたとき、通常であればしばらくした後にエンジン1が再始動されるものの、場合によっては長期にわたってエンジン1の再始動が行われないこともある。この場合は、エンジン1の再始動に備えて電動アクチュエータ5Aの「保持状態」を継続するよりも、電動アクチュエータ5Aを「待機状態」に設定してバッテリ12の電力の消費を抑制することが望ましいといえる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、始動待機期間TSが基準待機期間TSX以上のとき、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定するようにしている。これにより、バッテリ12の電力の消費を抑制することができるようになる。
(10)当該車両においては、エンジン1の停止中に電動アクチュエータ5Aの異常が生じたことにより、エンジン1の始動時にバルブ作用角INCAMの変更を行うことができなくなることもある。この場合、バルブ作用角INCAMが最小バルブ作用角INCAMminまたはその近傍の作用角に設定されているとすると、エンジン1の始動時において燃焼室24へ供給される空気の量が不足することにより始動不良をまねくことが想定される。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、車両の運転が終了したときに次回の運転に備えてバルブ作用角INCAMを最大バルブ作用角INCAMmaxに設定するようにしている。これにより、電動アクチュエータ5Aの異常が生じた場合においてもエンジン1の始動時に際して空気の不足が抑制されるため、始動性の向上を図ることができるようになる。
(11)イグニッションスイッチ97は、通常であれば運転者が車両の運転を終了する意図のもとに「ON」位置から「OFF」位置へ切り替えられるものの、場合によっては運転者が運転の終了を意図していない状態で「OFF」位置へ切り替えられることもある。後者の場合、比較的短期間のうちにエンジン1の始動が行われるため、イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられてからエンジン1が再始動されるまでに電動アクチュエータ5Aの異常が生じるおそれは極めて小さいといえる。即ち、イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたことに基づいてバルブ作用角INCAMを最大バルブ作用角INCAMmaxへ変更しなくとも、空気の不足に起因する始動不良をまねくおそれはないと考えられる。一方で、バルブ作用角INCAMが最大バルブ作用角INCAMmaxに変更された場合には、エンジン1の始動後、すぐにバルブ作用角INCAMが運転状態に適合した目標バルブ作用角INCAMtrgへ変更されることになるため、バッテリ12の電力が不要に消費されるようになる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、イグニッションスイッチ97の「OFF」位置への切り替えられたときに運転履歴がない場合、バルブ作用角INCAMの変更を禁止するようにしている。これにより、不要な可変動弁機構5の動作を少なくすることができるようになる。また、バッテリ12の電力の消費を抑制することができるようになる。
(12)エンジン回転速度NEが過度に大きい状態でバルブ作用角INCAMが最大バルブ作用角INCAMmaxへ向けて変更されると、吸気流量GAが増大することにより、燃焼室24内に残留している燃料が燃焼されることもある。この場合、運転者が車両の停止を要求しているにもかかわらずエンジン回転速度NEが上昇するため、運転者に違和感を与えるおそれがある。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、車速計測値SPDMが基準車速SPDX以上のとき、バルブ作用角INCAMを増大側へ向けて変更することを禁止するようにしている。これにより、運転者が車両の停止を要求しているにもかかわらずエンジン回転速度NEの上昇が生じることを抑制することができるようになる。
(13)エンジン回転速度NEが極めて小さい状態(「0」またはそれに近い状態)でバルブ作用角INCAMの変更が行われた場合、コントロールシャフト52を移動させる際の電動アクチュエータ5Aの負荷が過度に大きくなることにより、バルブ作用角INCAMの変更に起因して電動アクチュエータ5Aの損傷をまねくこともある。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、IGオフ期間Toffが基準オフ期間ToffX以上のとき、バルブ作用角INCAMの変更を禁止するようにしている。これにより、バルブ作用角INCAMの変更に起因して電動アクチュエータ5Aの損傷が生じることを抑制することができるようになる。
(14)本実施形態の制御装置では、可変動弁機構5の駆動モードを「第6モード」に設定しているとき、電動アクチュエータ5Aを「保持状態」に設定するようにしている。これにより、エンジン1の始動後においてバルブ作用角INCAMの変更を速やかに行うことができるようになる。
(15)電動アクチュエータ5Aが「可変状態」に設定されているとき(可変動弁機構5によるバルブ作用角INCAMの変更中)、電動アクチュエータ5Aが「保持状態」に設定されているときよりも電動アクチュエータ5Aの作動音が大きくなる。また、可変動弁機構5の作動音があわせて生じるようになる。従って、始動不良によりエンジン1が停止しているときに電動アクチュエータ5Aを「可変状態」に設定した場合には、可変動弁機構5や電動アクチュエータ5Aの作動音が運転者等に不快感を与えることも考えられる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、始動不良によりエンジン1が停止しているとき、電動アクチュエータ5Aを「可変状態」に設定しないようにしている。これにより、エンジン1の始動不良が生じた場合において、可変動弁機構5や電動アクチュエータ5Aの作動音に起因する運転性の悪化を抑制することができるようになる。
(16)イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられたときに運転履歴が検出されない場合、運転者が運転の終了を意図していない、即ち短期間のうちにエンジン1の始動が開始されると予測される。しかし、実際の運転者の意図がそうした予測と異なる(運転者が車両の停止を要求している)にもかかわらず電動アクチュエータ5Aの駆動状態が「保持状態」または「可変状態」に設定されている場合、電動アクチュエータ5Aや可変動弁機構5の作動音が運転者等に違和感を与えることも考えられる。
本実施形態の制御装置では、こうしたことを考慮して、IGオフ期間Toffが再始動期間ToffY以上のとき、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定するようにしている。これにより、電動アクチュエータ5Aや可変動弁機構5の作動音が運転者等に違和感を与えることを抑制することができるようになる。
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した、例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記実施形態では、「第2アクチュエータ駆動処理」のステップT260の処理において、[条件1][条件2]及び[条件3]の少なくとも1つと[条件4]とが成立していることをもってモード移行条件が成立していると判定するようにしたが、例えば次のように変更することもできる。
(a)[条件1]から[条件4]までの少なくと1つが成立していることをもってモード移行条件が成立していると判定する。
(b)[条件1]から[条件4]までの全てが成立していることをもってモード移行条件が成立していると判定する。
・上記実施形態では、可変動弁機構5の駆動モードを「第2モード」に設定した後、「第2アクチュエータ駆動処理」におけるステップT250の条件及びステップT260の条件が成立するまで「第3モード」への切り替えを行わないことで運転性の悪化を抑制するようにしたが、例えば次のように変更することもできる。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第2モード」に設定した後、「第2アクチュエータ駆動処理」におけるステップT250の条件が成立したことに基づいて「第3モード」への切り替えを開始するとともに、駆動モードの移行中にバルブ作用角INCAMを緩やかに変化させることで運転性の悪化を抑制することもできる。この場合のバルブ作用角INCAMの変更態様としては、例えば、単位時間あたりのバルブ作用角INCAMの変化量を所定値以下に設定するといったものが挙げられる。
・上記実施形態では、「第2アクチュエータ駆動処理」のステップT250の処理において、冷却水温度THWを可変動弁機構5の暖機状態の指標値として採用したが、その他のパラメータを暖機状態の指標値として採用することもできる。例えば、エンジン1の潤滑油の温度やエンジン1の始動からの経過時間等に基づいて、可変動弁機構5の暖機が完了したか否かを判定することもできる。また、可変動弁機構5の温度を直接計測して暖機状態を把握することもできる。
・上記実施形態では、可変動弁機構5の駆動モードを「第4モード」に設定しているとき、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「保持状態」に設定する構成としたが、次のように変更することもできる。即ち、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定する(「第4アクチュエータ駆動処理」のステップT402の処理において電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定する)こともできる。
・上記実施形態では、「第5アクチュエータ駆動処理」のステップT520の処理において、車速計測値SPDMが基準車速SPDX未満であることをもってエンジン1の状態が変更許容状態にあると判定するようにしたが、例えば次のように変更することもできる。即ち、エンジン回転速度NEが判定値未満であることをもってエンジン1の状態が変更許容状態にあると判定することもできる。なお、上記判定値は、下限回転速度NEULよりも大きい値として設定される。
・上記実施形態では、「第5アクチュエータ駆動処理」のステップT522の処理において、最大バルブ作用角INCAMmaxを目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定するようにしたが、最大バルブ作用角INCAMmax以外の作用角を目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定することもできる。要するに、エンジン1の始動時における空気量の不足を抑制することのできるバルブ作用角INCAMであれば、最大バルブ作用角INCAMmax以外の適宜の作用角を目標バルブ作用角INCAMtrgとして設定することができる。
・上記実施形態では、「第5アクチュエータ駆動処理」のステップT540の処理において、予め設定された基準オフ期間ToffXを採用する構成としたが、例えば次のように変更することもできる。即ち、イグニッションスイッチ97が「OFF」位置へ切り替えられる毎に、そのときのエンジン回転速度NEに基づいて基準オフ期間ToffXを設定することもできる。
・上記実施形態では、「第5アクチュエータ駆動処理」のステップT540の処理において、IGオフ期間Toffと基準オフ期間ToffXとの比較結果に基づいてバルブ作用角INCAMの変更を継続するか否か判定するようにしたが、例えば次のように変更することもできる。即ち、エンジン回転速度計測値NEMと下限回転速度NEULとの比較結果に基づいてバルブ作用角INCAMの変更を継続するか否かを判定することもできる。こうした構成を採用する場合、「第5アクチュエータ駆動処理」のステップT540の処理は次のように構成される。
(a)「NEM≧NEUL」のとき、ステップT530の処理を行う。
(b)「NEM<NEUL」のとき、ステップT542の処理を行う。
・上記実施形態では、可変動弁機構5の駆動モードを「第5モード」に設定した後、「第5アクチュエータ駆動処理」におけるステップT530の条件またはステップT540の条件が成立するまでの間、バルブ作用角INCAMの変更を継続する構成としたが、例えば次のように変更することもできる。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第5モード」に設定した後、バルブ作用角INCAMを最大バルブ作用角INCAMmaxへ向けて変更するとともに、監視バルブ作用角INCAMmntが最大バルブ作用角INCAMmaxと一致するまでエンジン1の運転を継続することもできる。
・上記実施形態では、可変動弁機構5の駆動モードを「第6モード」に設定しているとき、「第6アクチュエータ駆動処理」におけるステップT620の条件が成立したことに基づいて、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定する構成としたが、例えば次のように変更することもできる。即ち、可変動弁機構5の駆動モードを「第6モード」に設定しているとき、電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定する(「第6アクチュエータ駆動処理」のステップT602の処理において電動アクチュエータ5Aの駆動状態を「待機状態」に設定する)こともできる。
・上記実施形態では、「第1可変動弁機構駆動処理」〜「第6可変動弁機構駆動処理」により「可変動弁機構駆動処理」を構成するようにしたが、「可変動弁機構駆動処理」の構成を次のように変更することもできる。即ち、「第1可変動弁機構駆動処理」〜「第5可変動弁機構駆動処理」の少なくと1つの処理により「可変動弁機構駆動処理」を構成することもできる。
・上記実施形態では、ロック機構を有する構造の電動アクチュエータ5Aを採用したが、ロック機構を有していない構造の電動アクチュエータを採用することもできる。
・上記実施形態では、電動アクチュエータ5Aとして、「待機状態」のときにロック機構を通じてコントロールシャフト52の位置を固定する一方で「保持状態」のときにバッテリ12からの電力を通じてコントロールシャフト52の位置を保持する構造のものを採用したが、次のような電動アクチュエータを採用することもできる。即ち、「待機状態」及び「保持状態」のときにロック機構を通じてコントロールシャフト52の位置を固定する構造の電動アクチュエータを採用することもできる。
・上記実施形態では、可変動弁機構5の暖機が完了するまでの間、スロットルバルブ39を通じて吸気流量GAの調整を行うエンジン1を想定したが、本発明の可変動弁機構を適用することのできるエンジンは実施形態にて例示したエンジンに限られるものではない。例えば、エンジンの始動から停止までにわたって可変動弁機構を通じて吸気流量GAの調整を行うエンジンに対して本発明の可変動弁機構を適用することもできる。また、エンジンの始動から停止までにわたって可変動弁機構とスロットルバルブとの協調制御を通じて吸気流量GAを調整するエンジンに対して本発明の可変動弁機構を適用することもできる。
・上記実施形態では、インテークバルブ33の開閉特性(バルブ作用角及び最大バルブリフト量)を変更する可変動弁機構5に対して本発明を適用したが、エキゾーストバルブ37の開閉特性を変更する可変動弁機構に対して本発明を適用することもできる。
・上記実施形態では、図4〜図11に例示した構造の可変動弁機構に本発明を適用したが、本発明の適用対象となる可変動弁機構は実施形態にて例示した可変動弁機構に限られるものではない。要するに、電動アクチュエータの駆動を通じてバルブ作用角及び最大バルブリフト量の少なくとも一方を変更する構造の可変動弁機構であれば、いずれの可変動弁機構に対しても上記実施形態に準じた態様をもって本発明を適用することができる。また、そうした場合においても上記実施形態の作用効果に準じた作用効果が奏せられるようになる。
本発明にかかるエンジンの制御装置を具体化した実施形態について、該可変動弁機構を搭載したエンジンの全体構成を示す構成図。 同実施形態のエンジンについて、シリンダヘッドの平面構造を示す平面図。 同実施形態の可変動弁機構によるインテークバルブのバルブ作用角及び最大バルブリフト量の変更態様を示すグラフ。 同実施形態の可変動弁機構について、電動アクチュエータ及び動弁機構本体の斜視構造を示す斜視図。 同実施形態の可変動弁機構について、動弁機構本体の分解斜視構造を示す斜視図。 同実施形態の可変動弁機構について、スライダギア(入力スプライン及び出力スプライン)の斜視構造を示す斜視図。 同実施形態の可変動弁機構について、スライダギア(入力スプライン及び出力スプライン)の断面構造を示す断面図。 同実施形態の可変動弁機構について、コントロールシャフト及びその周辺の部材の斜視構造を示す斜視図。 同実施形態の可変動弁機構について、動弁機構本体の分解斜視構造を示す斜視図。 同実施形態の可変動弁機構について、バルブリフト機構の内部構造を示す斜視図。 同実施形態のエンジンについて、シリンダヘッドにおける可変動弁機構及びその周辺の構造を示す断面図。 同実施形態の可変動弁機構について、電子制御装置による駆動モードの切り替え態様の概略を示す図。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「エンジン始動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第1可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第1可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第1アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第2可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第2可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第2アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第2アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第2アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第3可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第3可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第3アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第4可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第4可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第4アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第4アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第5可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第5アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第5アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第6可変動弁機構駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態において電子制御装置を通じて実行される「第6アクチュエータ駆動処理」の処理手順を示すフローチャート。 同実施形態の電子制御装置による可変動弁機構の制御態様の一例を示すタイミングチャート。 同実施形態の電子制御装置による可変動弁機構の制御態様の一例を示すタイミングチャート。 同実施形態の電子制御装置による可変動弁機構の制御態様の一例を示すタイミングチャート。
符号の説明
1…エンジン、11…スタータモータ、12…バッテリ。
2…シリンダブロック、21…シリンダ、22…ウォータージャケット、23…ピストン、24…燃焼室、25…コネクティングロッド、26…クランクシャフト。
3…シリンダヘッド、31…インテークパイプ、32…インテークポート、33…インテークバルブ、34…インテークカムシャフト、34C…カム、35…エキゾーストパイプ、36…エキゾーストポート、37…エキゾーストバルブ、38…エキゾーストカムシャフト、38C…カム、39…スロットルバルブ。
41…インジェクタ、42…イグニッションプラグ、43…インテークローラロッカーアーム、43R…ローラ、44…ラッシュアジャスタ、45…バルブスプリング。
5…可変動弁機構、5A…電動アクチュエータ、5A1…電動モータ、5A2…運動変換機構、5B…動弁機構本体、51…ロッカーシャフト、51H…ピン移動孔、52…コンロトールシャフト、52H…ピン挿入穴、53…バルブリフト機構、54…コネクトピン、55…ブッシュ、55F…支持端面、55H…ピン挿入孔。
6…スライダギア、61…スライダギア入力スプライン、61H…ピン挿入孔、62…スライダギア出力スプライン、63…シャフト挿入孔、64…ピン溝。
7…入力ギア、71…入力ギアスプライン、72…入力ギアハウジング、73…入力アーム、73A…シャフト、73B…ローラ、73R,73L…支持アーム。
8…出力ギア、81…出力ギアスプライン、82…出力ギアハウジング、82A…ベース部、83…出力アーム、83A…カム面。
9…電子制御装置、91…回転速度センサ、92…冷却水温度センサ、93…吸気温度センサ、94…エアフローメータ、95…アクセルポジションセンサ、96…車速センサ、97…イグニッションスイッチ。

Claims (5)

  1. カムシャフトにより開弁されるエンジンバルブ、及び同バルブの開閉特性を変更する可変動弁機構を含む車載型のエンジンに適用されるものであり、前記可変動弁機構の制御を通じて前記エンジンバルブの開閉特性を変更するエンジンの制御装置において、
    エンジンの停止中かつ所定の条件が成立しているとき、前記エンジンバルブの開閉特性を変更し、エンジンの停止中にイグニッションスイッチがオン位置に切り替えられてからスタータモータの駆動が開始されるまでの間、前記エンジンバルブの開閉特性の変更を禁止し、前記スタータモータの駆動が開始された後に前記エンジンバルブの開閉特性の変更を開始する制御手段を備えた
    ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. カムシャフトにより開弁されるエンジンバルブ、及び同バルブの開閉特性を変更する可変動弁機構を含む車載型のエンジンに適用されるものであり、前記可変動弁機構の制御を通じて前記エンジンバルブの開閉特性を変更するエンジンの制御装置において、
    エンジンの停止中かつ所定の条件が成立しているとき、前記エンジンバルブの開閉特性を変更し、エンジンストールの発生が検出されてからエンジンの再始動の開始が検出されるまでの間、前記エンジンバルブの開閉特性の変更を禁止し、前記エンジンの再始動が開始された後に前記エンジンバルブの開閉特性の変更を開始する制御手段を備えた
    ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  3. 請求項2に記載のエンジンの制御装置において、
    前記制御手段は、前記エンジンバルブの開閉特性の変更を禁止しているとき、前記エンジンバルブの開閉特性を前記エンジンストールの発生が検出される直前の開閉特性に維持するものである
    ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置において、
    前記可変動弁機構は、軸方向へ移動可能な状態でシリンダヘッドに配置されるコントロールシャフトと、該コントロールシャフトの周囲に組み付けられて前記エンジンバルブを運動させるバルブリフト機構と、前記コントロールシャフトを移動させるアクチュエータとを備えて構成されるものであり、
    前記バルブリフト機構は、前記コントロールシャフトと連動して移動可能なスライダギアと、該スライダギアに組み付けられてカムシャフトのカムを通じて運動する入力ギアと、前記スライダギアに組み付けられて前記エンジンバルブを運動させる出力ギアとを備えて構成されるものであり、
    前記アクチュエータは、前記コントロールシャフトの移動を通じて前記入力ギアと前記出力ギアとを相対回転させることで前記エンジンバルブの開弁期間を変更するものである
    ことを特徴とするエンジンの制御装置。
  5. 請求項4に記載のエンジンの制御装置において、
    前記アクチュエータは、電力を通じて駆動するものである
    ことを特徴とするエンジンの制御装置。
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