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JP4682629B2 - 固体高分子型燃料電池用電解質膜、および固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用電解質膜、および固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体 Download PDF

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Description

本発明は、初期の出力電圧が高く、長期にわたって出力電圧が高い、固体高分子型燃料電池用電解質膜、および固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体に関する。
燃料電池は、原料となるガスの反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電池である。燃料電池のうち、水素・酸素燃料電池は、その反応生成物が原理的に水のみであるために、地球環境への影響がほとんどない。また、水素・酸素燃料電池のうち、固体高分子型燃料電池は、電解質として高分子電解質膜が用いられているが、近年高いイオン導電性を有する高分子電解質膜が開発されているために、この高分子電解質膜を用いることによって、常温でも作動でき高出力密度が得られる。
以上の理由により、固体高分子型燃料電池には、近年のエネルギー問題、地球環境問題への社会的要請の高まりとともに、電気自動車等の移動車両や、小型コージェネレーションシステム等の電源として、大きな期待が寄せられている。
固体高分子型燃料電池では、通常、高分子電解質膜としてプロトン伝導性のイオン交換膜が用いられる。固体高分子型燃料電池は、このイオン交換膜を用いた高分子電解質膜と、高分子電解質膜の一方の面に形成されたアノードの触媒層および他方の面に形成されたカソードの触媒層と、各触媒層上に形成されたガス拡散層とを備える。固体高分子型燃料電池では、燃料である水素を含むガスをアノード側に供給し、酸化剤となる酸素を含むガス(例えば空気等)をカソード側に供給することによって、発電が行われる。
ところで、固体高分子型燃料電池のカソードでは過酸化水素(H22)を経由した酸素の還元反応が進行する。したがって、固体高分子型燃料電池では、触媒層中で生成する過酸化水素又は過酸化物ラジカルによって、高分子電解質膜が劣化する可能性が懸念されている。
また、アノードにはカソードの反応によって生成した酸素分子が膜内を透過してくるため、アノードでも水素分子と酸素分子が反応を引き起こすことによりラジカルが生成されるので、このラジカルによって高分子電解質膜が劣化することも考えられる。
特に炭化水素樹脂重合体は、ラジカルに対する安定性が乏しいため、高分子電解質膜として炭化水素樹脂重合体からなる膜を用いた固体高分子型燃料電池は、長期間にわたる運転を行うにあたって大きな問題を抱えている。
例えば、固体高分子型燃料電池が初めて実用化されたのは、米国のジェミニ宇宙船の電源として採用された時であり、この時にはスチレン−ジビニルベンゼン重合体をスルホン化した膜が高分子電解質膜として使用されたが、この固体高分子型燃料電池は、長期間にわたる耐久性に問題があった。
このような問題を改善する技術として、高分子電解質膜内に触媒金属粒子を担持させ、過酸化水素を分解する技術(特許文献1)や、高分子電解質膜中に過酸化物ラジカルを接触分解できる遷移金属酸化物又はフェノール性水酸基を有する化合物を添加する技術(特許文献2)、スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜に含まれるスルホン酸基の水素(水素イオン)の一部を、Mg、Ca等で置換する技術(特許文献3)が開示されている。
しかし、特許文献1および2に開示されている技術は、生成する過酸化水素を分解したり、過酸化物ラジカルによる酸化を低減したりする技術であり、初期的には改善の効果があるものの、高分子電解質膜自体の分解を大きく抑制する技術ではない。
したがって、これらの技術を用いて作製された固体高分子型燃料電池は、長期間にわたる耐久性の改善が不十分な可能性があった。またコスト的にも高くなるという問題があった。
また、特許文献3に開示されている技術では、スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜に含まれるスルホン酸基の水素の一部を、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cu、Al、Ga、In、Y、La、Ti、ZrおよびHfのうち少なくとも1種類の金属で置換されているが、長期間運転した場合の耐久性については不十分であった。
一方、ラジカルに対する安定性に優れる重合体として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜が知られている。
近年、このようなイオン交換膜を高分子電解質膜として用いた固体高分子型燃料電池は、自動車用、住宅用市場等の電源として期待され、実用化への要望が高まり開発が加速している。これらの用途では、特に高い効率での運転が要求されるため、より高い電圧での運転が望まれると同時に低コスト化が望まれている。
また、固体高分子型燃料電池は、高分子電解質膜の導電性を確保するために、加湿して運転される場合が多いが、システム全体の効率の点から低加湿又は無加湿での運転が要求されることも多い。
しかし、このパーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換膜を高分子電解質膜として用いた固体高分子型燃料電池においても、高加湿での運転では安定性が非常に高いものの、低加湿または無加湿での運転においては、電圧劣化が大きいことが報告されている(非特許文献1参照)。
特開平06−103992号公報 特開2001−118591号公報 特開2004−018573号公報 新エネルギー・産業技術総合開発機構主催 平成12年度固体高分子燃料電池研究開発成果報告会要旨集、56頁16〜24行
そこで、本発明は、固体高分子型燃料電池に用いられた場合に、固体高分子型燃料電池の出力電圧が、初期から長期にわたって十分に高くなり、また、低加湿や無加湿で運転した場合にも十分に高くなる電解質膜およびその製造方法、ならびに膜・電極接合体を提供することを目的とする。
本発明者らは、固体高分子型燃料電池用電解質膜としてスルホン酸基を有する高分子化合物からなるイオン交換膜を用いた固体高分子型燃料電池において、低加湿又は無加湿で長期間運転した場合における固体高分子型燃料電池用電解質膜の劣化を防止することを目的に鋭意検討した結果、コバルトイオンを含有させることにより、固体高分子型燃料電池用電解質膜の劣化を格段に抑制できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)を提供する。
(1)スルホン酸基を有する高分子化合物を用いた陽イオン交換膜からなり、コバルトイオンを、前記陽イオン交換膜中の−SO3 -基のモル数の0.5〜30%含むことを特徴とする、固体高分子型燃料電池用電解質膜。
(2)スルホン酸基を有する高分子化合物を用いて形成された層が2層以上積層された積層膜からなり、前記積層膜に含まれる層のうち少なくとも1層にはコバルトイオンが含まれており、前記積層膜全体で、前記積層膜中の−SO3 -基のモル数の0.5〜30%のコバルトイオンを含むことを特徴とする、固体高分子型燃料電池用電解質膜。
(3)前記スルホン酸基を有する高分子化合物は、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体である、前記(1)または(2)に記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜。
(4)前記パーフルオロカーボン重合体は、CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(ただし、mは0〜3の整数を示し、nは0〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、nが0のときはp=0かつm≠0であり、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく繰り返し単位と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とを含む共重合体である、前記(3)に記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜。
(5)触媒粉末と、スルホン酸基を有するイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するアノード及びカソードと、前記アノードの触媒層と前記カソードの触媒層との間に配置された電解質膜とを有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体であって、前記アノードの触媒層および前記カソードの触媒層の少なくとも一方に、当該触媒層中に含まれる−SO3 -基の0.5〜30%のコバルトイオンが含まれることを特徴とする、固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体。
(6)触媒粉末と、陽イオン交換基を有するイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するアノード及びカソードと、前記アノードの触媒層と前記カソードの触媒層との間に配置された電解質膜とを有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体であって、前記電解質膜が、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜からなることを特徴とする、固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体。
本発明の固体高分子型燃料電池用電解質膜および膜・電極接合体は、固体高分子型燃料電池の発電により生成される過酸化水素又はラジカルに対する耐久性が極めて優れている。
したがって、本発明によれば、初期の出力電圧が高く、長期にわたって高い出力電圧を得ることが可能な固体高分子型燃料電池を提供できる。また、高加湿条件下だけではなく低加湿条件下でも、高い出力電圧を得ることが可能な固体高分子型燃料電池を提供できる。
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
最初に、図1を用いて、本発明が適用される固体高分子型燃料電池の一態様について説明する。
図1に示すように、固体高分子型燃料電池は、固体高分子型燃料電池用電解質膜(以下、高分子電解質膜という。)1と、高分子電解質膜1の一方主面上に形成されたアノード触媒層2と、高分子電解質膜1の他方主面上に形成されたカソード触媒層3と、を有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体(以下、膜・電極接合体という)7を備える。また、固体高分子型燃料電池は、膜・電極接合体7を収納するセパレータ5と、セパレータ5内を密封するガスシール体6とを備える。
また、アノード触媒層2とセパレータ5との間にはガス拡散層4が備えられることが好ましく、カソード触媒層3とセパレータ5との間にはガス拡散層4´が備えられることが好ましい。ガス拡散層4、4´を備える場合には、ガス拡散層4、4´も含めて膜・電極接合体7という。
高分子電解質膜1は、スルホン酸基を有する高分子化合物を用いた陽イオン交換膜からなる。
高分子電解質膜1は、アノード触媒層2中で生成するプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3へ選択的に透過させる役割を有する。また、高分子電解質膜1は、アノードに供給される水素とカソードに供給される酸素が混じり合わないようにするための隔膜としての機能も有する。
アノード触媒層2は、アノードの触媒層であって、アノードで進行する反応の触媒を含有する。
アノード触媒層2は、例えば、白金とルテニウムの合金をカーボン担体に担持した触媒粉末と、イオン交換樹脂とを用いて形成される。
また、カソード触媒層3は、カソードの触媒層であって、カソードで進行する反応の触媒を含有する。
カソード触媒層3は、例えば、白金又は白金合金をカーボン担体に担持した触媒粉末と、イオン交換樹脂とを用いて形成される。
アノード触媒層2およびカソード触媒層3に用いられるイオン交換樹脂としては、陽イオン交換基を有する、炭化水素系重合体、含フッ素重合体を挙げることができ、特にパーフルオロカーボン重合体がより好ましい。
ガス拡散層4、4´は、通常多孔性の導電性材料からなり、必ずしも備えられていなくてもよいが、アノード触媒層2およびカソード触媒層3へのガスの拡散を促進し、集電体の機能も有するので、通常は備えられていることが好ましい。
ガス拡散層4、4´は、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス、カーボンフェルト等の導電性の多孔質シートを用いて形成される。また、ガス拡散層4、4´は、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト上にフッ素樹脂で撥水処理を行った材料を用いて形成されることが好ましい。このような材料を用いて形成されることにより、カソード触媒層3中で発生する水などがガス拡散層4、4´に形成されている孔を塞いで、ガスの拡散が抑制されることを回避することができる。
なお、ガス拡散層4、4´が備えられている場合には、アノード触媒層2と、カソード触媒層3と、ガス拡散層4、4´とを合わせて電極という。また、ガス拡散層4とアノード触媒層2とを合わせてアノードといい、ガス拡散層4´とカソード触媒層3とを合わせてカソードという。
セパレータ5は、膜・電極接合体7との対向面にガスが通過するための溝(以下、ガス流路という)5aが形成されている。セパレータ5は、固体高分子型燃料電池の外部から供給される水素や酸素などのガスを、アノード触媒層2とカソード触媒層3とに供給する。
セパレータ5は、金属製、カーボン製のもののほか、黒鉛と樹脂を混合した材料からなるものもあり、各種導電性材料を幅広く使用できる。
以上説明した固体高分子型燃料電池は、アノード側には、ガス流路5aを介して、例えばメタノールや天然ガス等の燃料を改質して得られる水素ガスが供給される。また、カソード側には、ガス流路5aを介して酸素ガスが供給される。
水素ガスが供給されることにより、アノードでは以下の式1に示す反応がおこる。また、酸素ガスが供給されることにより、カソードでは以下の式2に示す反応がおこる。
2→2H++2e-・・・式1
1/2O2+2H++2e-→H2O・・・式2
なお、アノード触媒層2側にメタノールを供給する電池は、直接メタノール燃料電池とよばれているが、本発明は、直接メタノール燃料電池にも適用することができる。
本発明では、高分子電解質膜1、アノード触媒層2、およびカソード触媒層3からなる群から選ばれるいずれか1以上に、コバルトイオンが含有される。なお、コバルトイオンは+2価又は+3価の状態を取り得るが、どちらのコバルトイオンが含有されていてもよい。
第1の形態
最初に、本発明を実施するための第1の形態として、高分子電解質膜1にコバルトイオンが含有されている場合について説明する。
高分子電解質膜1を用いた固体高分子型燃料電池は、初期の出力電圧、長時間運転した後の出力電圧、および低加湿で運転した場合の出力電圧が良好である。
この理由は、必ずしも明確ではないが、コバルトイオンがスルホン酸基の水素原子と置換され、過酸化水素またはラジカルによる劣化が生じにくくなっているためと考えられる。
なお、低加湿とは、アノード側に供給するガスの露点と、カソード側に供給するガスの露点とが、セル温度より低い状態をいう。
高分子電解質膜1に含まれるコバルトイオンは、陽イオン交換膜に含まれる−SO3 -のモル数の0.5〜30%であることが好ましい。なお、以下では、高分子電解質膜1中における−SO3 -のモル数に対するコバルトイオンのモル数を、「コバルトイオンの含有率」という。
高分子電解質膜1中のコバルトイオンの含有率は、1〜25%であることがより好ましく、1.5〜20%であることがさらに好ましい。
高分子電解質膜1におけるコバルトイオンの含有率が上記範囲内であれば、高分子電解質膜1は、過酸化水素又は過酸化物ラジカルに対する安定性を十分に確保できる。また、コバルトイオンの含有率が上記範囲内であれば、高分子電解質膜1は、水素イオンの十分な伝導性を確保することができるので、膜抵抗の増大による発電特性の低下を回避できる。
高分子電解質膜1に含まれるコバルトイオンが2価である場合には、スルホン酸基の水素(水素イオン)がコバルトイオンによりイオン置換されると、Co2+が2個の−SO3 -と結合する。
コバルトイオンが完全に2個の−SO3 -と結合している場合には、高分子電解質膜1では、高分子電解質膜1中の全ての−SO3 -のモル数に対するコバルトイオンと結合している−SO3 -のモル数の割合(以下、スルホン酸基の置換率という)が、高分子電解質膜1中のコバルトイオンの含有率の2倍となる。
また、コバルトイオンが全て2価であると仮定すると、高分子電解質膜1中のスルホン酸基の置換率は、高分子電解質膜1中のコバルトイオンの含有率が0.5〜30%である場合には、1〜60当量%となる。
また、高分子電解質膜1に含まれるコバルトイオンが3価である場合には、スルホン酸基の水素がコバルトイオンによりイオン置換されると、Co3+が3個の−SO3 -と結合する。
コバルトイオンが完全に3個の−SO3 -と結合している場合には、高分子電解質膜1では、高分子電解質膜1中のスルホン酸基の置換率が、高分子電解質膜1中のコバルトイオンの含有率の3倍となる。
なお、高分子電解質膜1中のコバルトイオンの含有率を測定する方法としては、酸−塩基滴定によるスルホン酸基の水素(水素イオン)に由来するイオン交換容量の測定を金属置換前後で行う方法や、触媒層中に含まれる金属置換量を、原子吸光分析法およびICP発光分析法などにより定量分析する方法が例示できるが、これらに限定されるものではない。
高分子電解質膜1を構成する高分子化合物は、特に限定されないが、イオン交換容量が0.5〜3.0ミリ当量/g乾燥樹脂であることが好ましく、0.7〜2.5ミリ当量/g乾燥樹脂であることがより好ましい。
また、耐久性の観点から、上記高分子化合物は含フッ素重合体であることが好ましく、特にパーフルオロカーボン重合体(エーテル結合性の酸素原子を含んでいてもよい)が好ましい。
パーフルオロカーボン重合体としては、CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(ただし、mは0〜3の整数を示し、nは0〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、nが0のときはp=0かつm≠0であり、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく繰り返し単位と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とを含む共重合体を用いることが好ましく、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位と、下記式(i)〜(iii)で表される化合物に基づく繰り返し単位との共重合体を用いることがより好ましい。なお、下記式(i)〜(iii)中、qは1〜8の整数、rは1〜8の整数、tは1〜3の整数を示す。
Figure 0004682629
高分子電解質膜1に、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体を用いる場合、重合後にフッ素化することによって重合体の末端がフッ素化処理されたものを用いてもよい。重合体の末端がフッ素化されていると、より過酸化水素や過酸化物ラジカルに対する安定性が優れるため耐久性が向上する。
また、高分子化合物としては、上述のスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体以外のものも使用でき、例えば高分子の主鎖に、又は主鎖と側鎖に芳香環を有しており、この芳香環にスルホン酸基が導入された構造を有する高分子化合物であって、イオン交換容量が0.8〜3.0ミリ当量/g乾燥樹脂である高分子化合物が好ましく使用できる。具体的には、例えば下記の高分子化合物が使用できる。
スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリベンゾオキサゾール、スルホン化ポリベンゾチアゾール、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリフェニレンスルホン、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリフェニレンスルホキシド、スルホン化ポリフェニレンサルファイド、スルホン化ポリフェニレンスルフィドスルホン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトンケトン、スルホン化ポリイミド等。
なお、高分子電解質膜1は、コバルトイオンを含有し、スルホン酸基を有する陽イオン交換膜のみからなる膜であってもよいが、他の成分を含んでいてもよく、ポリテトラフルオロエチレンやパーフルオロアルキルエーテル等、スルホン酸基を有する陽イオン交換膜以外の樹脂等の繊維、織布、不織布、多孔体等により補強されている膜であってもよい。
高分子電解質膜1にコバルトイオンを含有させる方法は、特に限定されないが、具体的な方法としては、例えば以下の(1)〜(3)に説明する方法が挙げられる。
(1)コバルトイオンが含まれる溶液中に、スルホン酸基を有する高分子化合物からなる膜を浸漬してイオン交換により置換する方法。
(2)スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体の分散液中にコバルトイオンを含む塩を添加してスルホン酸基の一部をコバルトイオンでイオン交換した後、又はコバルトイオンを含む溶液とスルホン酸基を有する高分子化合物との分散液を混合してスルホン酸基の一部をコバルトイオンでイオン交換した後、得られた液を用いてキャスト法等により製膜する方法。
(3)コバルトの有機金属錯塩を、スルホン酸基を有する高分子化合物からなる陽イオン交換膜と接触させて、スルホン酸基の一部をコバルトイオンでイオン交換する方法。
上述した方法で用いられるコバルトイオンを含む塩としては、コバルトの硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酢酸塩、アセチルアセナート塩など幅広く利用できるが、これらに限定されるものではない。
なお、高分子電解質膜1には、スルホン酸基を有する高分子化合物からなる層が2層以上積層された積層膜が用いられてもよい。この場合、積層膜を構成する層のうち少なくとも1層にコバルトイオンが含有されていればよい。
例えば、陽イオン交換膜以外の樹脂等の繊維、織布、不織布、多孔体などで補強する場合には、スルホン酸基を有する高分子化合物を用いて形成された層を積層すること等によって高分子電解質膜1が得られる。この場合には、必要に応じて1層にコバルトイオンを含有させてもよく、複数の層にコバルトイオンを含有させてもよい。
高分子電解質膜1が上述した積層膜からなる場合は、コバルトイオンの含有率は、高分子電解質膜1の全体で0.5〜30%の範囲内であればよい。したがって、コバルトイオンが全ての層に含まれていない場合には、コバルトイオンが含まれている層におけるコバルトイオンの含有率は、上述の範囲より高くてもよい。
また、上述した積層膜の作製方法としては、特に限定されないが、例えば以下の(i)または(ii)に示される方法が挙げられる。
(i)上述の(1)〜(3)のいずれかの方法によってコバルトイオンが含有されている陽イオン交換膜を作製しておき、コバルトイオンが含有されていない陽イオン交換膜と積層する方法。
(ii)上述の(1)〜(3)のいずれかの方法によってコバルトイオンが含有されている陽イオン交換膜を複数作製しておき、得られた複数の陽イオン交換膜を積層する方法。
第2の形態
つぎに、本発明を実施するための第2の形態として、膜・電極接合体7に備えられるアノード触媒層2またはカソード触媒層3の少なくとも一方に、コバルトイオンが含有されている場合について説明する。
なお、この場合には、高分子電解質膜1には、コバルトイオンが含まれていてもよく、含まれていなくてもよいが、含まれていることが好ましい。
本発明の第2の形態では、アノード触媒層2またはカソード触媒層3の一方または両方に、コバルトイオンが含有されている。なお、以下の説明では、アノード触媒層2とカソード触媒層3とを総称する場合には、単に触媒層2、3という。
触媒層2、3を用いた膜・電極接合体7を備える固体高分子型燃料電池は、初期の出力電圧、長時間運転した後の出力電圧、低加湿で運転した場合の出力電圧が良好なものとなる。
また、高分子電解質膜1と触媒層2、3にコバルトイオンが含有されている場合は、過酸化水素や過酸化物ラジカルがいずれの場所で発生しても、これらによる膜・電極接合体7の劣化を抑制でき、好ましい。
触媒層2、3は、後述した触媒金属、好ましくはカーボン担体に担持された触媒金属とイオン交換樹脂とを用いて形成される。
本発明では、イオン交換樹脂として、スルホン酸基を有する炭化水素系重合体、含フッ素重合体を使用することができる。また、高分子電解質膜1に用いられる陽イオン交換膜の繰り返し単位と同じ繰り返し単位からなる重合体を用いることが好ましい。
アノード触媒層2またはカソード触媒層3のうち少なくとも一方にコバルトイオンが含有される場合、コバルトイオンの含有率は、1.5〜30%であることが好ましい。
コバルトイオンの含有率がこの範囲である場合は、過酸化水素による劣化を十分に抑制できる。また、抵抗値の増大によって結果的に生じる出力電圧の低下を低減できる。
コバルトイオンが2価である場合には、スルホン酸基の水素がコバルトイオンによりイオン交換されると、Co2+が2個のSO3 -と結合する。また、3価である場合には、Co2+が3個のSO3 -と結合する。
なお、触媒層2、3中のコバルトイオンの含有率は、高分子電解質膜1中のコバルトイオンの含有率と同じ方法で測定できる。
カソード触媒層3にコバルトイオンを含有させた場合には、酸素還元反応が起きるカソードの電位付近で、中間体である過酸化水素によって生じる劣化を抑制することができると考えられる。
また、アノードの電位付近でも過酸化水素が電気化学的に生成することが知られているため、カソード触媒層3とアノード触媒層2との両方にコバルトイオンを含有させることによって、固体高分子型燃料電池では、よりいっそう過酸化水素によって生じる劣化を抑制することが可能である。
また、触媒層2、3にコバルトイオンを含有させることにより、アノードまたはカソードで生成する過酸化水素、過酸化物ラジカルによって生じる劣化を抑制できるので、これらに対する陽イオン交換樹脂の分解耐性そのものも向上させることが可能である。
さらに、カソードにおいて生成する水による陽イオン交換樹脂の膨潤を抑制する効果も同時に期待できる。
以上説明したように、アノード触媒層2および/またはカソード触媒層3にコバルトイオンを含有させた膜・電極接合体7を備える固体高分子型燃料電池は、長期間にわたって運転した場合にも、出力電圧の低下などの性能低下が起こりにくくなると考えられる。
触媒層2、3に用いられる触媒粉末は、触媒金属の微粒子そのままでもよいが、触媒金属微粒子をカーボンの担体上で担持した担持触媒であることが好ましい。この担持触媒は、触媒金属をより分散性よく担持しており、燃料電池の発電において反応面積が大きくなり結果としてより高い発電特性を出すことができるため、好ましい。
カーボンの担体となるカーボン材料としては、細孔の発達したカーボンブラック、活性炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等、種々の炭素材料が好ましく用いられる。
固体高分子型燃料電池では、通常カーボンブラックが使用されることが多く、カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。また、活性炭としては、種々の炭素原子を含む材料を炭化、賦活処理して得られる種々の活性炭も使用できる。
触媒金属をカーボン担体に担持させる場合、触媒金属とカーボン担体とは、質量比(触媒金属:カーボン担体)で2:8〜7:3であることが好ましく、特に4:6〜6:4であることが好ましい。
この範囲であれば、アノード触媒層2およびカソード触媒層3の厚さを薄くすることが可能であり、アノードおよびカソードに対するガスの拡散性を高め、優れた出力特性を得ることができる。また、反応に必要な触媒金属の量も十分となる。また、触媒金属の含有量が多すぎることによって、カーボン担体上で触媒金属粒子同士の凝集が起こり、性能が低下することを防ぐことができる。
触媒層2、3は、触媒金属とイオン交換樹脂とを含む塗工液、好ましくは、担持触媒とイオン交換樹脂とを含む塗工液を、基材上に塗布して加熱することによって、形成される。基材としては、具体的には、別途用意したプラスチックフィルム(以下、ポリマーフィルムともいう)や、高分子電解質膜1、ガス拡散層4、4´などが用いられる。
ポリマーフィルムとしては、触媒層形成用塗工液中に含まれる分散媒に対して安定なフィルムを好ましく使用でき、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンのシート等が挙げられる。
また、触媒層2、3にコバルトイオンが含有されている膜・電極積層体7を作製する方法としては、例えば以下の(1)〜(3)に説明する方法が挙げられる。
(1)最初に、別途用意したポリマーフィルム上に、それぞれアノード触媒層2と、カソード触媒層3とを形成して、所定の濃度のコバルトイオンを含む溶液に浸漬する。
次いで、アノード触媒層2と、高分子電解質膜1と、カソード触媒層3とを積層して、ホットプレスすることにより、アノード触媒層2とカソード触媒層3とを高分子電解質膜1に熱転写し、ポリマーフィルムを剥離することにより、膜・電極接合体7を得る。
なお、コバルトイオンとしては、硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酢酸塩、アセチルアセナート塩に含まれるコバルトイオンなどを、幅広く利用できる。
(2)最初に、スルホン酸基を有するイオン交換樹脂の溶液中に、直接所定量の上記コバルトの塩を添加して、この溶液を触媒粉末と混合して触媒層形成用塗工液を調製し、この塗工液を基材上に塗工し、乾燥させることにより触媒層2、3を形成する。
次いで、基材としてポリマーフィルムを用いた場合には、乾燥により形成された触媒層2、3を高分子電解質膜1と積層して、ホットプレスして高分子電解質膜1に熱転写することによって、膜・電極接合体7を得る。また、基材としてガス拡散層4、4´を用いた場合には、乾燥により形成された触媒層2、3を高分子電解質膜1と積層して、ホットプレスして高分子電解質膜1に接合させることによって、膜・電極接合体7を得る。
なお、この方法で基材として高分子電解質膜1を用いた場合には、触媒層2、3を形成することによって膜・電極接合体7が得られる。
(3)膜・電極接合体7を、直接上記のコバルトイオンを含む溶液に浸漬する方法。
この場合、コバルトイオンを含む溶液に浸漬させる前の膜・電極接合体7は、例えば以下の(a)〜(c)に示す方法によって形成される。
(a)ポリマーフィルム上に、触媒金属とイオン交換樹脂とを含む塗工液を塗布して乾燥することによって触媒層2、3を形成した後に、得られた触媒層2、3を高分子電解質膜1と積層して、ホットプレスして高分子電解質膜1に熱転写する方法。
(b)高分子電解質膜1上に、直接触媒金属とイオン交換樹脂とを含む塗工液を塗布して乾燥する方法。
(c)ガス拡散層4、4´上に、触媒金属とイオン交換樹脂とを含む塗工液を塗布して乾燥させ、触媒層2、3が形成されているガス拡散層4、4´を得る。そして、触媒層2、3が形成されているガス拡散層4、4´を、高分子電解質膜1と、触媒層2、3が高分子電解質膜1と接触するように積層して、ホットプレスして、触媒層2、3を高分子電解質膜1に接合させる方法。
上述の触媒層形成用塗工液の塗工方法としては、アプリケータ、バーコータ、ダイコータ等を使用する方法や、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等を適用できる。
なお、触媒層形成用塗工液中には、必要に応じて撥水剤、造孔剤、増粘剤、希釈溶媒等を添加し、電極反応で生成する水の排出性を高めること、触媒層自体の形状安定性を保持すること、塗工時の塗工むらの改善や塗工安定性等を高めることも可能である。
以下、本発明を具体的に実施例(例1、2、4)及び比較例(例3、5〜7)によって説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[例1]
CF2=CF2に基づく繰り返し単位とCF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22SO3Hに基づく繰り返し単位とからなる共重合体からなる厚さ50μmの膜(商品名:フレミオン、旭硝子株式会社製、イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)を、大きさ6cm×6cm(面積36cm)に切り出した。
この陽イオン交換膜全体の重さを、乾燥窒素中で16時間放置した後、乾燥窒素中で測定したところ、0.362gであった。また、この陽イオン交換膜のイオン交換容量は、1.1ミリ当量/g乾燥樹脂であるため、このイオン交換膜のスルホン酸基の量は、以下の式から、0.398ミリ当量であることが算出された。
0.362×1.1=0.398(ミリ当量)
次に、この陽イオン交換膜に、スルホン酸基のモル数の約15%に相当するコバルトイオン(+2価)を含むように、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)17.3mgを500mLの蒸留水に溶解し、この中に上記イオン交換膜を浸漬し、室温で40時間、スターラーを用いて撹拌を行った。
なお、イオン交換膜の浸漬前後の硝酸コバルト溶液をイオンクロマトグラフィーにより分析した結果から、このイオン交換膜のコバルトイオンの含有率は13%であった。
次に、白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に触媒全質量の50質量%含まれるように担持された触媒粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製)10gに、蒸留水51gを混合して混合液を得た。
この混合液に、CF2=CF2/CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF22SO3H共重合体(イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、以下「共重合体A」という)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液56gを混合して混合物を得た。この混合物をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕して、触媒層形成用塗工液を作製した。
次に、得られた触媒層形成用塗工液を、ポリプロピレン製の基材上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。
なお、触媒層形成前の基材のみの質量と触媒層形成後の基材の質量を測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.5mg/cm2であった。
次に、上述のコバルトイオンの含有率が13%のイオン交換膜を用い、この膜の両面に、基材上に形成された触媒層をそれぞれ配置し、ホットプレス法により熱転写することで、アノード触媒層及びカソード触媒層をイオン交換膜の両面にそれぞれ接合して、膜・電極接合体を得た。
なお、電極面積は25cm2であった。
[例2]
白金がカーボン担体(比表面積800m2/g)に触媒全質量の46.5質量%含まれるように担持された触媒(田中貴金属工業株式会社製:TEC10E50E)7.0gに蒸留水63.7gとエタノール38.8gを混合して混合液を得た。次に、この混合液に共重合体Aをエタノールに分散させた固形分濃度9.8質量%の液26.4gを混合した。この混合液をホモジナイザー(商品名:ポリトロン、キネマチカ社製)を使用して混合、粉砕させ、これを触媒層形成用塗工液とした。
この触媒層形成用塗工液を、ポリプロピレン製の基材上にバーコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で30分間乾燥させて触媒層を作製した。
なお、触媒層を形成する前の基材の質量と触媒層を形成した後の基材の質量を測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出したところ、0.6mg/cmであった。触媒層の面積は6cm×6cmであった。
次に硝酸コバルト・六水和物(Co(NO32・6H2O)5.8mg(0.02mmol)を300mLのイオン交換水中に投入した後、スターラーで攪拌させ、ここに上記電極を4枚浸漬させ、1時間ゆっくりと撹拌させた後、70℃の乾燥機内で30分間乾燥させた。
イオン交換水中に残存するコバルトイオンの残存量をICP発光分析法により定量分析を実施し、触媒層におけるコバルトイオンの含有率を算出したところ、20%であった。
次に、高分子電解質膜として、例1で用いたものと同じスルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる厚さ50μmのイオン交換膜を用意し、この膜の両面に上記触媒層をそれぞれ配置し、ホットプレス法により転写してアノード触媒層及びカソード触媒層を形成して、電極面積が25cm2であり、高分子電解質膜と触媒層からなる膜・電極接合体を得た。
[例3]
高分子電解質膜として、例1で用いたものと同じ市販のイオン交換膜に対して何も処理を施さないものを準備し、次に、この高分子電解質膜を用いて、例1と同様にして膜・電極接合体を得る。
[例4]
例1で用いた硝酸コバルト水溶液のかわりに、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)34mgを500mLの蒸留水に溶解した水溶液を用いた以外は例1と同様にして、コバルトイオンの含有率が29%の高分子電解質膜を得る。次に、この高分子電解質膜を用いて、例1と同様にして高分子電解質膜と触媒層からなる膜・電極接合体を得る。
[例5]
例1で用いた硝酸コバルト水溶液のかわりに、硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)40mgを500mLの蒸留水に溶解した水溶液を用いた以外は例1と同様にして、コバルトイオンの含有率が32.5%の高分子電解質膜を得る。次に、この高分子電解質膜を用いて、例1と同様にして高分子電解質膜と触媒層からなる膜・電極接合体を得る。
[例6]
硝酸コバルト(Co(NO32・6H2O)の量を10mgとしてコバルトイオンの含有率が36.5%となるように電極を作製した以外は例2と同様に、高分子電解質膜と触媒層からなる膜・電極接合体を得る。
[例7]
特開2004−18573号の実施例1に開示されている方法で合成して得られる酢酸マグネシウム四水和物を使用して、スルホン化ポリフェニレンサルファイド膜にマグネシウムイオン(+2価)を含有させる。このマグネシウムイオンで置換するポリフェニレンサルファイド膜を灰化させた王水で抽出して、ICP発光分析を行うと、−SO3 -基のモル数に対するマグネシウムイオンのモル数は、25%となる。
次に、上記マグネシウムイオンを含有させたポリフェニレンサルファイド膜からなる高分子電解質膜を用いて、例1と同様に、電極面積が25cm2である高分子電解質膜と触媒層からなる膜・電極接合体を得る。
(評価)
例1〜7で得られた各膜・電極接合体を用いて固体高分子型燃料電池を作製し、常圧にて水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度70℃、電流密度0.2A/cm2における固体高分子型燃料電池の初期特性評価及び耐久性評価を実施する。
最初に、アノード側に供給するガスの露点を50℃、カソード側に供給するガスの露点を50℃として、それぞれ水素及び空気を加湿してセル内に供給し、運転初期の出力電圧、500時間運転した後の出力電圧、1000時間運転した後の出力電圧を測定する。測定した結果を表1に示す。
また、上記の評価条件において、カソード側に供給するガスの露点を70℃に変更した以外は同様にして、運転初期の出力電圧、500時間運転した後の出力電圧、1000時間運転した後の出力電圧を測定する。評価結果を表2に示す。
Figure 0004682629
Figure 0004682629
本発明が適用される固体高分子型燃料電池を示す断面図である。
符号の説明
1:高分子電解質膜
2:アノード触媒層
3:カソード触媒層
4、4´:ガス拡散層
5:セパレータ
5a:ガス流路
6:ガスシール体
7:膜・電極接合体

Claims (6)

  1. スルホン酸基を有する高分子化合物を用いた陽イオン交換膜からなり、コバルトイオンを、前記陽イオン交換膜中の−SO3 -基のモル数の0.5〜30%含むことを特徴とする、固体高分子型燃料電池用電解質膜。
  2. スルホン酸基を有する高分子化合物を用いて形成された層が2層以上積層された積層膜からなり、前記積層膜に含まれる層のうち少なくとも1層にはコバルトイオンが含まれており、前記積層膜全体で、前記積層膜中の−SO3 -基のモル数の0.5〜30%のコバルトイオンを含むことを特徴とする、固体高分子型燃料電池用電解質膜。
  3. 前記スルホン酸基を有する高分子化合物は、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体である、請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜。
  4. 前記パーフルオロカーボン重合体は、CF2=CF−(OCF2CFX)m−Op−(CF2n−SO3Hで表されるパーフルオロビニル化合物(ただし、mは0〜3の整数を示し、nは0〜12の整数を示し、pは0又は1を示し、nが0のときはp=0かつm≠0であり、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基を示す。)に基づく繰り返し単位と、テトラフルオロエチレンに基づく繰り返し単位とを含む共重合体である、請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜。
  5. 触媒粉末と、スルホン酸基を有するイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するアノード及びカソードと、
    前記アノードの触媒層と前記カソードの触媒層との間に配置された電解質膜とを有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体であって、
    前記アノードの触媒層および前記カソードの触媒層の少なくとも一方に、当該触媒層中に含まれる−SO3 -基の0.5〜30%のコバルトイオンが含まれることを特徴とする、固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体。
  6. 触媒粉末と、陽イオン交換基を有するイオン交換樹脂とを含む触媒層を有するアノード及びカソードと、
    前記アノードの触媒層と前記カソードの触媒層との間に配置された電解質膜とを有する固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体であって、
    前記電解質膜が、請求項1〜4のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜からなることを特徴とする、固体高分子型燃料電池用膜・電極接合体。
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