JP4682436B2 - 微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置 - Google Patents
微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置 Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、例えば、トロイダル式CVTの転動体の外周面に円周方向に沿って切り込み深さが10μm以下の微細溝を形成するのに利用される微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ワークの被加工面に微細凹凸(例えば、切り込み深さが10μm以下の微細連続らせん溝)を形成するに際しては、まず、精密旋盤によってワークの被加工面に微細凹部分を形成した後、超仕上盤によりこの微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工(例えば、プラトー加工)を行うことによって、切り込み深さが10μm以下の微細連続らせん溝を形成するようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来にあっては、上記したように、微細凹部分の形成加工と微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工とを別工程で行っていたため、加工精度に限界があった。すなわち、精密旋盤にセットしたワークを超仕上盤にセットし直す際に、ワークの加工中心がずれることで、微細連続らせん溝の深さがばらつくなどといった不具合が生じる可能性があるという問題を有していた。
【0004】
上記したように、微細凹部分の形成加工と微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工とを別工程で行ったとしても、ワークが単純な形状(例えば、単一な円柱形状)をなしている場合には、加工基準となる部分の前加工精度を高めることで、ある程度対応することはできるものの、加工コストが高くついてしまうという問題があった。
【0005】
一方、トロイダル式CVTの転動体などのように、ワークが精度を確保し難い複雑な形状をなしている場合には、前加工精度の向上による対応そのものが困難なものとなっており、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、ワークの掴み替えによる精度の悪化をなくすことができ、加えて、同じ工具保持部にてワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具とワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具とを保持することで、加工精度を確保することが可能であり、その結果、従来のように前加工精度を高めることなく簡単かつ安価に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成することができる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載した微細凹凸加工方法は、ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具と、そのワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具とを同じ工具保持部にて保持し、回転する上記ワークの被加工面に対して凹部分加工工具を切り込みながら相対移動させて微細凹部分を形成する加工を行った後、上記ワークの保持状態を維持したまま、工具保持部をスライドもしくは旋回させて上記ワークとの相対位置を移動させることにより、凹部分加工工具が加工を行っていた位置と同じ位置に仕上げ加工工具を移動させて、凹部分加工工具が加工を行った回転する上記ワークの被加工面に対して切り込みながら相対移動させて仕上げ加工を行うことにより、高低差が10μm以下の微細凹凸を上記ワークの被加工面に形成する内容のものであり、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として凹部分加工工具を動作させて前記ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有する上記ワークの被加工面への微細凹部分の形成と、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として仕上げ加工工具を動作させて上記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工とを互いに独立して行なうことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の微細凹凸加工方法は、ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具と、そのワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具とを同じ工具保持部にて保持し、回転する上記ワークの被加工面に対して凹部分加工工具を切り込みながら相対移動させて微細凹部分を形成する加工を行った後、上記ワークの保持状態を維持したまま、工具保持部をスライドもしくは旋回させて上記ワークとの相対位置を移動させることにより、凹部分加工工具が加工を行っていた位置と異なる位置に仕上げ加工工具を移動させて、凹部分加工工具が加工を行った回転する上記ワークの被加工面に対して切り込みながら相対移動させて仕上げ加工を行うことにより、高低差が10μm以下の微細凹凸を上記ワークの被加工面に形成する内容のものであり、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として凹部分加工工具を動作させて上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有する上記ワークの被加工面への微細凹部分の形成と、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として仕上げ加工工具を動作させて前記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工とを互いに独立して行なうことを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の微細凹凸加工装置は、ワークを回転させつつ加工終了まで保持するワーク保持部と、そのワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具と、上記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具を備え、凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を各々の加工時期に各々の所定の加工開始部位に移動可能に保持しかつ凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を回転する上記ワークの被加工面に対してそれぞれ切り込ませながら送り移動可能に保持して、上記ワークの被加工面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成するものであり、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として凹部分加工工具を動作させて上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有する上記ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具駆動機構と、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として仕上げ加工工具を動作させて前記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具駆動機構とを互いに独立して設けたことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の微細凹凸加工装置は、ワークを回転させつつ加工終了まで保持するワーク保持部と、そのワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具と、上記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具と、凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を各々の加工時期に各々の所定の加工開始部位に移動させると共に回転する上記ワークの被加工面に対してそれぞれ切り込ませながら送り移動可能に保持する工具保持部とを備え、高低差が10μm以下の微細凹凸を上記ワークの被加工面に形成するものであり、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として凹部分加工工具を動作させて上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有する上記ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具駆動機構と、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として仕上げ加工工具を動作させて上記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具駆動機構とを互いに独立して設けたことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の微細凹凸加工装置は、請求項3又は4に記載した凹部分加工工具及び仕上げ加工工具の各々の所定の加工開始部位を同じ位置に設定している。
請求項6に記載の微細凹凸加工装置は、請求項3又は4に記載した凹部分加工工具仕上げ及び加工工具の各々の所定の加工開始部位を互いに異なる位置に設定している。
請求項7に記載の微細凹凸加工装置は、請求項4〜6のいずれか1項に記載した工具保持部が、ワークの回転軸と平行な平面上で互いに直交する2つの軸方向に移動可能としている。
【0012】
請求項8に記載の微細凹凸加工装置は、請求項4〜6のいずれか1項に記載した工具保持部が、ワークの回転軸と平行な平面上で互いに直交する2つの軸方向及びワークの回転軸と平行な平面に垂直な回転軸回りに回転する方向のうちの少なくとも2つの方向に移動可能としている。
請求項9に記載の微細凹凸加工装置は、請求項4〜8のいずれか1項に記載したワーク保持部が、複数のワークを保持しかつ凹部分加工工具による加工部位及び仕上げ加工工具による加工部位において各ワークの位置決めを順次行うべく作動するものである。
【0013】
請求項10に記載の微細凹凸加工装置は、請求項4〜9のいずれか1項に記載した工具保持部が、ワークの被加工面に対する切り込み方向あるいは押し付け方向を同じ向きにして凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を保持している。
請求項11に記載の微細凹凸加工装置は、請求項4〜9のいずれか1項に記載した工具保持部が、ワークの回転軸と平行な平面で回動可能に支持されかつワークの被加工面に対する切り込み方向あるいは押し付け方向を異なる向きにして凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を保持していると共に割り出し位置決め回動により凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を各々の所定の加工開始部位に移動させるようになっている。
【0014】
請求項12に記載の微細凹凸加工装置は、請求項3〜11のいずれか1項に記載した凹部分加工工具が所定の加工部位に位置した状態において凹部分加工工具駆動機構が作動し、仕上げ加工工具が所定の加工部位に位置した状態において仕上げ加工工具駆動機構が切り替わって作動する。
請求項13に記載の微細凹凸加工装置は、請求項4〜12のいずれか1項に記載した工具保持部には、保持部側係合部を設けると共に、凹部分加工工具駆動機構及び仕上げ加工工具駆動機構には駆動機構側係合部をそれぞれ設け、工具保持部の保持部側係合部と凹部分加工工具駆動機構の駆動機構側係合部とを係合した状態において凹部分加工工具駆動機構から工具保持部を介して凹部分加工工具に駆動力を伝達し、工具保持部の保持部側係合部と仕上げ加工工具駆動機構の駆動機構側係合部とを係合した状態において仕上げ加工工具駆動機構から工具保持部を介して仕上げ加工工具に駆動力を伝達するようになっている。
【0015】
請求項14に記載の微細凹凸加工装置は、請求項13に記載した工具保持部の保持部側係合部をスプラインあるいはセレーションとすると共に、凹部分加工工具駆動機構および仕上げ加工工具駆動機構の各駆動機構側係合部をスプラインあるいはセレーションとし、工具保持部をスライドさせてその保持部側係合部を凹部分加工工具駆動機構の駆動機構側係合部及び仕上げ加工工具駆動機構の駆動機構側係合部のうちのいずれかの駆動機構側係合部に係合させることで駆動力の伝達系統が切り替わるようになっている。
【0016】
請求項15に記載の微細凹凸加工装置は、請求項4〜14のいずれか1項に記載した凹部分加工工具の切り込み力付与手段あるいは押圧力付与手段と、仕上げ加工工具の切り込み力付与手段あるいは押圧力付与手段とを工具保持部上にそれぞれ独立して配置されている。
【0017】
請求項16に記載の微細凹凸加工装置は、請求項3〜15のいずれか1項に記載した凹部分加工工具として、研削,切削,転造,超仕上,ラップ及びこれらに電気的作用あるいは化学的作用を付加した工具のいずれかを採用している。
【0018】
請求項17に記載の微細凹凸加工装置は、請求項3〜16のいずれか1項に記載した仕上げ加工工具として、研削,切削,超仕上,ラップおよびこれらに電気的作用あるいは化学的作用を付加した工具のいずれかを採用している。
【0019】
請求項18に記載の微細凹凸加工装置は、請求項3〜17のいずれか1項に記載した凹部分加工工具によりワークの被加工面に微細凹部分を形成する段階で用いるクーラントと、仕上げ加工工具によりワークの被加工面の微細凹部分以外の凸部分に仕上げ加工を行う段階で用いるクーラントとを違えてある。
【0020】
請求項19に記載の微細凹凸加工装置は、請求項3〜18のいずれか1項に記載した凹部分加工工具として、研削,切削及び転造の工具を用いる場合に、ミスト状のクーラント供給がなされるようになっている。
【0021】
請求項20に記載の微細凹凸加工装置は、請求項3〜19のいずれか1項に記載した凹部分加工工具による加工位置において被加工面に微細凹部分の形成加工が施されているワークと、仕上げ加工工具による加工位置において被加工面の微細凹部分以外の凸部分に仕上げ加工が施されているワークとの間に、相互に生じる切屑や加工に用いるクーラントが相手側に飛散するのを阻止する仕切り板を配置している。
【0022】
【発明の作用】
請求項1及び2に記載の微細凹凸加工方法では、ワークの被加工面に微細凹部分を形成する加工からこのワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工に移る間において、一旦セットしたワークをセットし直す必要がないので、その分だけ精度の悪化が回避され、加えて、同じ工具保持部上の工具で加工することから、加工精度が加工装置の位置決め精度のみに依存することとなって、高い加工精度を確保し得ることとなり、したがって、前加工精度を高める必要がなくなって、高低差が10μm以下の所望する微細凹凸の形成が簡単かつ安価になされることとなり、とくに、請求項2に係わる微細凹凸加工方法では、微細凹部分形成加工および仕上げ加工の違いやワークの形状による装置レイアウトの制約を受けることがないので、意図する微細凹凸の形状に応じた最適な加工を選択し得ることとなり、その結果、最もリーズナブルな微細凹凸加工がなされることとなる。
ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有するワークの被加工面に、微細凹凸を精度良く形成し得ることとなり、加えて、ワークの被加工面への微細凹部分の形成と、ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工とを互いに独立させているので、微細凹部分形成加工及び仕上げ加工の各々に適した加工送りや作動がなされることとなり、従って、意図する微細凹凸形状に最適な加工を選択し得ることとなって、加工面品質が良好なものとなる。
【0023】
請求項3〜6に記載の微細凹凸加工装置では、微細凹部分形成加工と仕上げ加工との間におけるワークの掴み替えによる精度の悪化が阻止されることとなるうえ、加工精度が装置自体の位置決め精度のみに依存することで高い加工精度が確保されて、前加工精度を高める必要がなくなり、その結果、簡単かつ安価に高低差が10μm以下の微細凹凸の形成がなされることとなり、とくに、請求項6に記載の微細凹凸加工装置では、加工の違いやワークの形状による装置レイアウトの制約を受けることがない分だけ、所望の微細凹凸の形状に最も適した微細凹凸加工がなされることとなる。
また、ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有するワークの被加工面に、微細凹凸を精度良く形成し得ることとなり、加えて、ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具駆動機構と、ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具駆動機構とが互いに独立しているので、微細凹部分形成加工および仕上げ加工の各々に適した加工送りや作動がなされることとなり、従って、意図する微細凹凸形状に最適な加工を選択し得ることとなって、加工面品質が良好なものとなる。
【0024】
本発明の請求項7に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としているので、加工点がワークの回転軸を含む平面上に必ず位置することとなり、2軸を同時制御して工具保持部を動作させることで、複雑な形状のワークにも対応し得ることとなり、本発明の請求項8に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としているので、ワークの球面形状をなす被加工面に対してより精度の高い加工がなされることとなる。
【0025】
本発明の請求項9に係わる微細凹凸加工装置では、複数のワークを保持したワーク保持部を作動させると、凹部分加工工具による加工部位および仕上げ加工工具による加工部位において各ワークの位置決めがなされて、凹部分加工工具による微細凹部分の形成加工および仕上げ加工工具による仕上げ加工が順次行われることとなり、すなわち、複数個のワークの加工が一つの設備上においてなされることとなり、この際、一方で加工を行っているときに他方で加工を行わないようになせば、他方においてワークの交換を行い得ることとなって、ワークの交換に要する時間の短縮が図られることとなり、加えて、凹部分加工工具および仕上げ加工工具の配置の仕方によっては、一つの工具保持部の移動により同時加工をなし得ることとなり、生産性の向上が図られることとなる。
【0026】
本発明の請求項10に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としているので、ワークの被加工面に微細凹凸を形成するにあたって、凹部分加工工具および仕上げ加工工具の被加工面への切り込み方向が同じになり、凹凸の高低差の精度が向上することとなり、本発明の請求項11に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としているので、請求項6および9と同様に、所望の微細凹凸の形状に最も適した微細凹凸加工がなされると共に、ワークの交換時間の短縮および生産性の向上が図られることとなる。
【0028】
請求項12に記載の微細凹凸加工装置では、上記した構成としたから、一度に凹部分加工工具駆動機構及び仕上げ加工工具駆動機構の2つの機構の切り替えが可能となって、時間の短縮が図られるうえ、例えば、凹部分加工工具駆動機構および仕上げ加工工具駆動機構が回転中心あるいは揺動中心を有している場合において、両駆動機構を同一軸上で切り替わるようになせば、各々の回転中心あるいは揺動中心の位置が微細凹部分形成加工および仕上げ加工の双方でずれることがなくなるので、良好な加工精度が得られることとなる。
【0029】
請求項13に記載の微細凹凸加工装置では、工具保持部の保持部側係合部を凹部分加工工具駆動機構の駆動機構側係合部あるいは仕上げ加工工具駆動機構の駆動機構側係合部に係合すると、いずれかの工具駆動機構から工具保持部を介して凹部分加工工具あるいは仕上げ加工工具に駆動力が伝達されることから、確実な動力伝達および位置合わせがなされることとなり、本発明の請求項14に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としたため、駆動力の伝達系統の切り替えや、位置合わせが確実かつ簡単になされることとなる。
【0030】
請求項15に係わる微細凹凸加工装置では、工具の位置合わせが容易になると共に、工具の摩耗に対して適切に補正を行い得ることとなり、加えて、凹部分加工工具及び仕上げ加工工具の各々の加工部位における加工条件を緻密に補正できるので、最適な加工条件でそれぞれの加工がなされることとなる。
【0031】
本発明の請求項16及び17に係わる微細凹凸加工装置では、意図する微細凹凸形状に合わせて工具を選択すれば、最適な加工条件での加工がなされることとなり、砥石や砥粒を固定した工具を用いる場合には、被加工面の凹凸の高低差によって微粒の砥粒を用いることになるが、この際、電気的作用あるいは化学的作用を付与して抑制すれば、目詰まりによる加工不良の発生が回避されることとなる。
【0032】
本発明の請求項18に記載の微細凹凸加工装置では、微細凹部分形成加工および仕上げ加工の各々の加工に適したクーラントを用いるようにすることで、良好に加工を行い得ることとなる。
【0033】
本発明の請求項19に記載の微細凹凸加工装置では、凹部分加工工具として、研削,切削および転造の工具を用いて加工を実施するのに適切なものとなる。
【0034】
本発明の請求項20に係わる微細凹凸加工装置は、凹部分加工工具による微細凹部分の形成加工で生じた切屑が、仕上げ加工工具による仕上げ加工が施されているワーク側に飛散するのを仕切り板が阻止することとなって、加工不良が発生することが回避され、とくに、両加工において異なるクーラントを用いている場合には、仕切り板によってクーラントの混入が阻まれるので、クーラント性能の低下が抑えられると共に、クーラント交換頻度の短期間化が抑制されることとなる。
【0035】
【発明の効果】
請求項1及び2に記載の微細凹凸加工方法では、ワークの被加工面に微細凹部分を形成する加工とこの微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工との間にワークをセットし直す必要がない分だけ、精度の悪化を阻止することができ、加えて、高い加工精度を確保することが可能であり、その結果、高低差が10μm以下の所望する微細凹凸を簡単でしかも低コストで形成することができ、とくに、請求項2に係わる微細凹凸加工方法では、意図する微細凹凸の形状に応じた最適な加工を選択することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有するワークの被加工面に対して、微細凹凸を精度良く形成することができるうえ、微細凹部分形成加工及び仕上げ加工の各々に適した加工送りや動作を行わせることが可能であり、その結果、意図する微細凹凸形状に最適な加工を選択して、良好な加工面品質を得ることができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0036】
請求項3〜6に記載の微細凹凸加工装置では、微細凹部分形成加工と仕上げ加工との間にワークを掴み替える必要がなくなって、その分だけ精度の悪化を阻止することが可能であり、加えて、高い加工精度を確保することができるようになって、高低差が10μm以下の微細凹凸を簡単かつ安価に形成することが可能であり、とくに、請求項6に係わる微細凹凸加工装置では、所望の微細凹凸の形状に最も適した微細凹凸加工を行うことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有するワークの被加工面に対して、微細凹凸を精度良く形成することができるうえ、微細凹部分形成加工および仕上げ加工の各々に適した加工送りや動作を行わせることが可能であり、その結果、意図する微細凹凸形状に最適な加工を選択して、良好な加工面品質を得ることができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0037】
本発明の請求項7に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としているので、2軸を同時制御して工具保持部を動作させることで、複雑な形状のワークにも対応することが可能であり、本発明の請求項8に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としているため、ワークの球面形状をなす被加工面に対してより精度の高い加工を行うことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0038】
本発明の請求項9に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としたから、複数個のワークの加工を一つの設備上において行うことができ、一方で加工を行っているときに他方でワークの交換を行うようにすることで、ワークの交換時間の短縮を実現することが可能であり、加えて、一つの工具保持部の移動によって同時加工をなし得るように凹部分加工工具および仕上げ加工工具を配置することで、生産性を大幅に向上させることができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0039】
本発明の請求項10に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としているので、ワークの被加工面により一層精度の高い高低差を有する微細凹凸を形成することができ、本発明の請求項11に係わる微細凹凸加工装置では、上記した構成としているので、請求項6および9と同様に、所望の微細凹凸の形状に最も適した微細凹凸加工を施すことができると共に、ワークの交換時間の短縮および生産性の向上をも実現することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0041】
請求項12に記載の微細凹凸加工装置では、一度に凹部分加工工具駆動機構及び仕上げ加工工具駆動機構の2つの機構の切り替えが可能となって、加工時間の短縮を実現でき、例えば、凹部分加工工具駆動機構及び仕上げ加工工具駆動機構が回転中心あるいは揺動中心を有している場合において、両駆動機構を同一軸上で切り替わるようにすることで、各々の回転中心あるいは揺動中心の位置が微細凹部分形成加工および仕上げ加工の双方でずれてしまうのを防ぐことができ、従って、高い加工精度を確保することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0042】
請求項13に記載の微細凹凸加工装置では、確実に動力を伝達することができると共に、精度の良い位置合わせを行うことが可能であり、請求項14に記載した微細凹凸加工装置では、駆動力の伝達系統の切り替えや、位置合わせを確実かつ簡単に行うことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0043】
本発明の請求項15に係わる微細凹凸加工装置では、工具の位置合わせを簡単に行うことができると共に、工具の摩耗に対して適切な補正を行うことができ、加えて、凹部分加工工具および仕上げ加工工具の各々の加工部位における加工条件を緻密に補正することで、常に最適な加工条件で加工することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0044】
請求項16及び17に記載の微細凹凸加工装置では、意図する微細凹凸形状に合わせた工具の選択により、常に最適な加工条件での加工を行うことができ、砥石や砥粒を固定した工具を用いたとしても、電気的作用あるいは化学的作用を付与して目詰まりを抑制することによって、この目詰まりによる加工不良の発生を防ぐことが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0045】
請求項18に記載の微細凹凸加工装置では、微細凹部分形成加工及び仕上げ加工をいずれも良好に行うことができるという非常に優れた効果がもたらされ、請求項19に記載の微細凹凸加工装置では、上記した構成としたから、凹部分加工工具として、研削,切削および転造の工具を用いた場合に、微細凹部分形成加工をより一層良好に行うことが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0046】
請求項20に記載の微細凹凸加工装置は、加工不良の発生を防止することができ、とくに、両加工において異なるクーラントを用いている場合であったとしても、クーラント性能の低下を少なく抑えることが可能であるとともに、クーラントの交換頻度を減らすことができるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。
【0048】
[第1実施例]
図1(a)および図2は、本発明の一実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置を説明する図であり、この実施例では、SCM420Hを浸炭焼き入れ焼戻しして硬化させた円筒形状をなすワークの外周面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する場合を示す。
【0049】
図1(a)に示すように、この微細凹凸加工装置1は、ワークWを回転させつつ加工終了まで保持するチャック(ワーク保持部)2と、ワークWの外周面(被加工面)WSに微細凹部分を形成する凹部分加工工具としての切削工具3と、ワークWの外周面WSに形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具としての超仕上げ砥石4と、切削工具3および超仕上げ砥石4を保持する工具保持部10を備えており、この実施例において、切削工具3に多結晶CBN工具を用いていると共に、超仕上げ砥石4にWAセラミックボンド砥石を用いている(本発明に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置において、凹部分加工工具および仕上げ加工工具は、本実施例で示した工具に限定されるものではない)。
【0050】
工具保持部10は、ワークWの回転軸WLと平行な平面上に位置するX軸方向に沿うX軸テーブル11と、前記平面上においてX軸テーブル11と直交するZ軸方向に沿うZ軸テーブル12と、これらのX軸テーブル11およびZ軸テーブル12の各々に対してスライド可能に取付けられかつ回動可能とした工具台13を具備しており、切削工具3および超仕上げ砥石4は、工具台13の回動中心Pを間にして180°の間隔をおいて背面合わせに取り付けてある。
【0051】
この場合、切削工具3および超仕上げ砥石4の各々の所定の加工開始部位を同じ位置に設定してあり、したがって、工具保持部10では、切削工具3および超仕上げ砥石4の各々の加工時期に同じ所定の加工開始部位に移動させると共に、回転するワークWの外周面WSに対してそれぞれ切り込ませながら送り移動させることができるようになっている。
【0052】
なお、この微細凹凸加工装置1は、油性のクーラントを加工点に供給する図示しないクーラント供給機構を備えている。
【0053】
次に、上記微細凹凸加工装置1によって円筒形状をなすワークWに高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する要領を説明する。
【0054】
まず、工具保持部10の工具台13をX軸テーブル11およびZ軸テーブル12の各々に対してスライドさせて、切削工具3を所定の加工開始部位に移動させる。
【0055】
次いで、切削工具3をワークWの外周面WSに10μmの深さで切り込ませつつ工具保持部10の工具台13とともにZ軸テーブル12に対してスライドさせて、すなわち、切削工具3をワークWの回転軸WLに沿って平行に移動させて、乾式切削により加工を行う。
【0056】
この間、工具保持部10の工具台13に適切な送りを与えれば、ネジ状の連続した微細らせん溝(微細凹凸)が、ワークWの外周面WSに創成されることとなる。
【0057】
そして、上記切削工具3による微細凹部分の形成加工が終了した後、工具台13をX軸テーブル11に対してスライドさせて一旦ワークWから遠ざけ、この工具台13をワークWに干渉しないようにして180°回動させて、超仕上げ砥石4を所定の加工開始部位に移動させる。
【0058】
このとき、切削工具3および超仕上げ砥石4の各々の所定の加工開始部位を同じ位置に設定しているので、切削工具3が加工開始時にワークWに対峙していた部位に超仕上げ砥石4が位置することとなり、加えて、超仕上げ砥石4は、あらかじめ工具台13上で所定の押し付け力が得られるようにして取り付けてあるので、切削工具3があった部位に位置するのと同時に、適切な押し付け力が得られるようになっている。
【0059】
この状態で、図外のクーラント供給機構から加工点に油性のクーラントを供給しながら、超仕上げ砥石4を工具保持部10の工具台13とともにZ軸テーブル12に対してスライドさせて、すなわち、超仕上げ砥石4をワークWの外周面WSに沿って移動させて、図2に示すように、外周面WSに均一にプラトー加工を施すと、ワークWの外周面WSに切削工具3によって形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げがなされることとなり、したがって、ワークWの外周面WSに、高低差が10μm以下の微細らせん溝d1が形成されることとなる。
【0060】
このように、上記実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置1では、切削工具3によってワークWの外周面WSに微細凹部分を形成する加工から、超仕上げ砥石4による微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工に移る間において、一旦チャック2にセットしたワークWを掴み替える必要がないので、その分だけ精度の悪化が抑えられ、加えて、同じ工具保持部10上に取り付けた切削工具3および超仕上げ砥石4で加工することから、加工精度が装置1自体の位置決め精度のみに依存することで高い加工精度が確保されて、前加工精度を高める必要がなくなり、その結果、簡単かつ安価に高低差が10μm以下の微細らせん溝d1の形成がなされることとなる。
【0061】
上記した実施例では、円筒形状をなすワークWの外周面WSに高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する場合を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、図3に示すように、略椀形状をなすワークWの湾曲状外周面WSに高低差が10μm以下の微細凹凸を形成するのに本発明を採用してもよく、この際、上記実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置1では、加工点がワークWの回転軸WLを含む平面上に必ず位置するので、X軸テーブル11およびZ軸テーブル12に対する工具台13の動作を同時制御して、切削工具3および超仕上げ砥石4をそれぞれ円弧を描かせるようにして動作させれば、上記湾曲状外周面WSのような複雑な形状の被加工面にも対応し得ることとなる。
【0062】
また、第1実施例の他の形態を図1(b)に示す。図1(b)に示すように、回動中心Pがこのような位置であっても、上記実施例と同様の加工が可能であり、したがって、同様の効果が得られるものとなる。
【0063】
[第2実施例]
図4は、本発明の他の実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置を説明する図であり、この実施例では、略椀形状をなすワークの湾曲状外周面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する場合を示す。
【0064】
図4に示すように、この微細凹凸加工装置21は、ワークWを回転させつつ加工終了まで保持するチャック(ワーク保持部)22と、ワークWの湾曲状外周面(被加工面)WSaに微細溝を形成する凹部分加工工具としての微細溝研削砥石(この実施例ではJISメッシュサイズ#3000のCBN砥粒を金属のボンドで焼き固めた砥石)23と、ワークWの湾曲状外周面WSaに形成された微細溝以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具としてのプラトー面研削砥石(この実施例ではJISメッシュサイズ#6000のCBN砥粒を金属のボンドで焼き固めた砥石)24と、微細溝研削砥石23およびプラトー面研削砥石24を保持する工具保持部30を備えている(本発明に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置において、凹部分加工工具および仕上げ加工工具は、本実施例で示した工具に限定されるものではない)。
【0065】
工具保持部30は、ワークWの回転軸WLと平行な平面上に位置するX軸方向に沿うX軸テーブル31と、前記平面上においてX軸テーブル31と直交するZ軸方向に沿うZ軸テーブル32と、これらのX軸テーブル31およびZ軸テーブル32の各々に対してスライド可能に取付けられかつ回動して位置割出し可能とした工具台33を具備しており、微細溝研削砥石23およびプラトー面研削砥石24は、工具台33に互いに平行でかつ相反する方向を向いて配置した工具装置である微細溝研削スピンドル34の回転軸34aおよび同じく工具装置であるプラトー面研削スピンドル35の回転軸35aにそれぞれ取り付けてある。
【0066】
この微細凹凸加工装置21を用いてワークWの湾曲状外周面WSaに高低差が10μm以下の微細溝を形成する場合、微細溝研削砥石23には、意図する微細溝の断面形状に合わせてあらかじめ成形された砥石(例えば、砥石外周先端をV字状としかつ先端に50μmの丸み(R)を付けた砥石)を用い、砥石外周先端形状の精度および切れ味を確保すると共に工具台33での砥石先端位置を確保するために、装置上においてツルーイングおよびドレッシングを行った後、X軸テーブル31およびZ軸テーブル32に対する工具台33の移動を同時制御しながら、微細溝研削砥石23を湾曲状外周面WSaに沿って所定の切り込み量(例えば3μm)で移動させて、微細らせん溝(微細凹凸)を創成する。
【0067】
そして、工具台33を移動させて微細溝研削砥石23を湾曲状外周面WSaから離間させた後、この工具台33を回動させてプラトー面研削砥石24による仕上げ加工を行う。
【0068】
この際、微細溝研削砥石23と同様にプラトー面研削砥石24も、あらかじめ成形された砥石(例えば、砥石外周面を湾曲状外周面WSaの曲率に合わせた総型砥石)を用い、砥石外周先端形状の精度および切れ味を確保すると共に工具台33での砥石先端位置を確保するために、装置上においてツルーイングおよびドレッシングを行った後に、例えば0.1μmの切り込みを与えつつ所定の溝深さとなるように加工すると、ワークWの湾曲状外周面WSaに微細溝研削砥石23によって形成された微細溝以外の凸部分の仕上げがなされることとなって、ワークWの湾曲状外周面WSaに、高低差が10μm以下の微細溝が形成されることとなる。
【0069】
このように、上記実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置21では、微細溝研削砥石23による微細溝形成加工およびプラトー面研削砥石24によるプラトー加工をワークWに対して同じ位置で行うため、本実施例に示すように、スピンドル34,35によって砥石23,24を回転させて加工する場合は、ワークWと回転する砥石23,24との各々の回転方向を同じに設定し得る(例えば、いずれもアップカットに設定し得る)というメリットがある。
【0070】
なお、この実施例では、微細溝形成加工およびプラトー加工の各加工に類似する砥石23,24を用いているため、いずれも水溶性のクーラント液を供給しながら加工を行う。
【0071】
また、微細溝研削砥石23およびプラトー面研削砥石24の各々のスピンドル34,35と工具台33との間に、砥石23,24を切り込む方向に、例えば、スピンドル34,35の回転軸34a,35aに直交する方向に、砥石23,24の減耗補正機構としてのスライドテーブルを設けることがあるが、この実施例では、工具台33のX軸テーブル31およびZ軸テーブル32に対する移動量を変えることで補正するようにしている。
【0072】
[第3実施例]
図5は、本発明のさらに他の実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置を説明する図であり、この実施例においても、略椀形状をなすワークの湾曲状外周面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する場合を示す。
【0073】
図5に示すように、この実施例に係わる微細凹凸加工装置41が、先の第2実施例と相違するところは、先の第2実施例に係わる微細凹凸加工装置21において、微細溝研削砥石23およびプラトー面研削砥石24を取り付けた微細溝研削スピンドル34およびプラトー面研削スピンドル35をいずれも工具台33上に配置しているのに対して、この実施例に係わる微細凹凸加工装置41では、微細溝研削スピンドル34およびプラトー面研削スピンドル35をいずれもX軸テーブル31に直接取り付けている点にあり、他の構成は、先の第2実施例に係わる微細凹凸加工装置21と同じである。
【0074】
つまり、先の第2実施例に係わる微細凹凸加工装置21では、工具台33の回動により微細溝研削砥石23およびプラトー面研削砥石24を切り替えるようにしているのに対して、この実施例に係わる微細凹凸加工装置41では、X軸テーブル31のスライドによって微細溝研削砥石23およびプラトー面研削砥石24を切り替えて、ワークWの湾曲状外周面WSaに対して回転軸WLを挟んでそれぞれ反対側から加工するようにしており、これにより同じ位置で加工するようにした先の第2実施例と比較して構成がシンプルとなり、その分だけ、安価になるというメリットがある。
【0075】
[第4実施例]
図6は、本発明のさらに他の実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置を説明する図である。
【0076】
図6に示すように、この実施例に係わる微細凹凸加工装置51は、ワークWの回転軸WLと直交する方向の軸Lを曲率中心とする単一の曲率半径を有するワークWの凹面状外周面WSbに高低差が10μm以下の微細凹部分を形成するものであって、この微細凹凸加工装置51は、ワークWを回転させつつ加工終了まで保持するチャック(ワーク保持部)52と、凹部分加工工具としての切削工具53と、仕上げ加工工具としての超仕上げ砥石54と、切削工具53および超仕上げ砥石54を保持する工具保持部60と、上記軸Lを回転中心軸として切削工具53を動作させてワークWの凹面状外周面WSbに微細凹部分を形成する凹部分加工工具駆動機構55と、上記軸Lを揺動中心軸として超仕上げ砥石54を動作させてワークWの凹面状外周面WSbに形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具駆動機構56を備えており、両機構55,56は互いに独立して設けてある。
【0077】
工具保持部60は、ワークWの回転軸WLと直交する方向の軸Lに沿って移動可能でかつ軸L回りに回動可能に設けた工具台61と、この工具台61に設けられて切削工具53および超仕上げ砥石54を軸L方向に互いに平行をなすようにして並べて配置した工具ホルダ62を具備している。このように、本実施例では、切削工具53および超仕上げ砥石54をいずれも同じ工具ホルダ62に支持させているので、構造がシンプルで工具交換を容易に行うことができ、低コスト化を実現できるというメリットを有しているが、本実施例以外の方法を採用して加工を行う場合、例えば、より高精度の加工を行う場合には、切削工具53および超仕上げ砥石54を互いに別個の工具ホルダで支持することが望ましい。
【0078】
凹部分加工工具駆動機構55は、図6(a)に示すように、第1モータ55aと、この第1モータ55aの出力軸55bに固定したウォームギア55cと、上記軸L上に設けられてウォームギア55cと噛み合う平歯車55dを具備しており、一方、仕上げ加工工具駆動機構56は、図6(c)に示すように、第2モータ56aと、この第2モータ56aの出力軸56bに固定した円板56cと、上記軸L上に設けた揺動円板56dと、一端を円板56cの周縁部に枢着連結すると共に他端を揺動円板56dの周縁部に枢着連結したロッド56eを具備している。
【0079】
この場合、工具保持部60の工具台61の両端外周面には、保持部側係合部としてのスプライン61aがそれぞれ設けてあると共に、凹部分加工工具駆動機構55の平歯車55dおよび仕上げ加工工具駆動機構56の揺動円板56dの各軸孔内周面には、駆動機構側係合部としてのスプライン55f,56fがそれぞれ設けてある。
【0080】
工具台61,平歯車55dおよび揺動円板56dは、工具台61の両端のスプライン61a,61aのうちの一方のスプライン61aが駆動機構側のスプライン55f,56fのいずれかと嵌合しているときには、他方のスプライン61aがフリーな状態となるように配置されており、平歯車55dおよび揺動円板56dにそれぞれ設けた加減圧供給口55g,56gを通して供給される流体圧(例えば、油圧)により、工具保持部60の工具台61を軸Lに沿ってスライドさせてそのスプライン61aを凹部分加工工具駆動機構55の平歯車55dおよび仕上げ加工工具駆動機構56の揺動円板56dの各スプライン55f,56fのうちのいずれかのスプライン55f(56f)に嵌合させることで、駆動力の伝達系統を切り替えるようにしている。
【0081】
この際、図6(b)に示すように、工具台61の上方のスプライン61aが凹部分加工工具駆動機構55側のスプライン55fと嵌合している状態において、すなわち、凹部分加工工具駆動機構55から工具台61を介して切削工具53に駆動力が伝達される状態において、切削工具53の刃先がワークWの回転軸WLと同じ高さになるように設定し、工具台61の下方のスプライン61aが仕上げ加工工具駆動機構56側のスプライン56fと嵌合している状態において、すなわち、仕上げ加工工具駆動機構56から工具台61を介して超仕上げ砥石54に駆動力が伝達される状態において、超仕上げ砥石54の中心がワークWの回転軸WLと同じ高さになるように設定してある。
【0082】
また、工具ホルダ62の背面には、砥石押付圧力供給口(押圧力付与手段)62aが設けてあり、超仕上げ加工を行う際に、この砥石押付圧力供給口62aから空気圧を供給して超仕上げ砥石54をワークWの凹面状外周面WSbに押し付けることができるようになっている(砥石押付圧力供給口62aとは別に、工具ホルダ62に凹部分加工工具の切り込み力付与手段あるいは押圧力付与手段を設けることも可能である)。
【0083】
この微細凹凸加工装置51を用いてワークWの回転軸WLと直交する方向の軸Lを曲率中心とする単一の曲率半径を有するワークWの凹面状外周面WSbに高低差が10μm以下の微細溝を形成する場合、まず、工具台61の上方のスプライン61aを凹部分加工工具駆動機構55側のスプライン55fに嵌合させた状態(図6(b)に示す状態)にして加工を開始すると、凹部分加工工具駆動機構55から駆動力が伝達された切削工具53が工具台61とともに軸L回りに回動して、すなわち、切削工具53が回転するワークWの凹面状外周面WSbに沿って移動して、凹面状外周面WSbに微細溝を形成する。
【0084】
次いで、平歯車55dおよび揺動円板56dの各加減圧供給口55g,56gを通して流体を供給排出することで、工具保持部60の工具台61を軸Lに沿ってスライドさせて、上方のスプライン61aを凹部分加工工具駆動機構55側のスプライン55fから離間させると共に、下方のスプライン61aを仕上げ加工工具駆動機構56の揺動円板56dのスプライン56fに嵌合させて駆動力の伝達系統を仕上げ加工側に切り替える。
【0085】
このとき、超仕上げ砥石54の中心はワークWの回転軸WLと同じ高さになっており、この状態で油性のクーラントを供給しつつ仕上げ加工を開始すると、仕上げ加工工具駆動機構56から駆動力が伝達された超仕上げ砥石54が工具台61とともに軸L回りに揺動して、すなわち、砥石押付圧力供給口62aから空気圧が付与されている超仕上げ砥石54が回転するワークWの凹面状外周面WSbを押圧しつつこの凹面状外周面WSbに沿って移動して、微細溝の凸部を除去するので、ワークWの凹面状外周面WSbに高低差が10μm以下の微細溝が形成されることとなる。
【0086】
上記した微細凹凸加工装置51およびこの微細凹凸加工装置51を用いた微細凹凸加工方法では、ワークWの回転軸WLと直交する方向の軸Lを曲率中心とする単一の曲率半径を有するワークWの凹面状外周面WSbに、微細溝を精度良く形成し得ることとなり、加えて、凹部分加工工具駆動機構55と、仕上げ加工工具駆動機構56とを独立させているので、微細凹部分形成加工および仕上げ加工の各々に適した加工送りや回動や揺動がなされることとなって、意図する微細溝に最適な加工を選択し得ることとなる。
【0087】
また、上記微細凹凸加工装置51では、工具保持部60の工具台61を軸Lに沿ってスライドさせてそのスプライン61aを凹部分加工工具駆動機構55の平歯車55dおよび仕上げ加工工具駆動機構56の揺動円板56dの各スプライン55f,56fのうちのいずれかのスプライン55f(56f)に嵌合させることで、駆動力の伝達系統を切り替えるようにしていることから、一度に凹部分加工工具駆動機構55および仕上げ加工工具駆動機構56の2つの機構の切り替えが可能となって、時間の短縮が図られるうえ、両駆動機構55,56を同一軸上で切り替えるようにしているので、各々の回転中心および揺動中心の位置が微細凹部分形成加工および仕上げ加工の双方でずれることがなくなり、良好な加工精度が得られることとなる。
【0088】
さらに、上記微細凹凸加工装置51では、工具ホルダ62の背面に砥石押付圧力供給口62aを設けることで、超仕上げ加工を行う際に、超仕上げ砥石54をワークWの凹面状外周面WSbに押し付けるようにしているので、超仕上げ砥石54の摩耗に対して適切に補正を行い得ることとなり、加えて、超仕上げ砥石54の加工部位における加工条件を緻密に補正できるので、最適な加工条件でそれぞれの加工がなされることとなる。
【0089】
この実施例において、工具保持部60の工具台61がワークWの回転軸WLと直交する方向の軸Lに沿って移動しそしてこの軸L回りに回動する場合を示したが、これに限定されるものではなく、図7に示すように、工具台61Aに支持される工具ホルダ62AがワークWの回転軸WLと直交する方向の軸Lに沿って移動し(図7(a)に示す状態から図7(b)に示す状態に移動し)、そして、この軸L回りに回動するようにしてもよい。
【0090】
[第5実施例]
図8は、本発明のさらに他の実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置を説明する図であり、この実施例では、ワーク保持部が複数のワークを保持している場合を示す。
【0091】
図8に示すように、この微細凹凸加工装置71は、複数(この実施例では2個)の円筒形状をなすワークWを回転させつつ加工終了まで保持するワーク保持部としての主軸台72と、ワークWの外周面(被加工面)WSに微細溝を形成する凹部分加工工具としての微細溝研削砥石73と、ワークWの外周面WSに形成された微細溝以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具としてのプラトー面研削砥石74と、微細溝研削砥石73およびプラトー面研削砥石74を保持する工具保持部80を備えている。
【0092】
主軸台72は主軸72a回りに回動可能となっており、この主軸台72の図示上下端部に突出する回転軸WLの両端部にワークWを固定している。そして、この主軸台72は、微細溝研削砥石73による加工部位およびプラトー面研削砥石74による加工部位において各ワークWの位置決めを順次行うべく作動するようになっている、すなわち、主軸台72は、180°の間隔で位置決め可能に回動するようになっている。この実施例では、2個のワークWを主軸台72の上下端部において同一の回転軸WL上で保持するようにしているが、これはワークWが円筒形状をなしているためであり、ワークWの形状によっては保持状態を変える必要がある。
【0093】
工具保持部80は、ベース81と、このベース81に支持された可動テーブル82を具備しており、微細溝研削砥石73およびプラトー面研削砥石74は、ワークWの回転軸WLと平行をなしかつ互いに対向するようにして可動テーブル82に固定した工具装置である微細溝研削スピンドル84の回転軸84aおよび同じく工具装置であるプラトー面研削スピンドル85の回転軸85aにそれぞれ取り付けてある。
【0094】
この場合、可動テーブル82は、ワークWの回転軸WLに対して平行移動可能でかつ接近離間可能としてあり、2つのスピンドル84,85の間隔は、可動テーブル82を図示Z軸方向へスライドさせて微細溝研削砥石73およびプラトー面研削砥石74のうちのいずれか一方の砥石73(74)で2個のワークW,Wのうちのいずれか一方のワークWに対して加工を行う際に、いずれか他方のワークWにいずれか他方の砥石74(73)が干渉しない距離に設定してある。
【0095】
また、微細溝研削砥石73およびプラトー面研削砥石74の各切り込み量は、可動テーブル82を図示X軸方向へスライドさせることによってセットするようにしてある。
【0096】
この微細凹凸加工装置71を用いてワークWの外周面WSに高低差が10μm以下の微細溝を形成する場合、まず、回転する一方のワークW(図示上側のワークW)に対して、可動テーブル82のX軸方向への移動による微細溝研削砥石73の切り込みを与えつつ、可動テーブル82をZ軸方向に移動させて、ワークWの外周面WSの全面に微細らせん溝(微細凹凸)を創成する。
【0097】
次に、可動テーブル82をX軸方向に移動させて微細溝研削砥石73をワークWから離した後、主軸台72を回動させて微細らせん溝が形成されたワークWを微細溝研削砥石73と対向しているプラトー面研削砥石74側に移動させると共に、可動テーブル82をZ軸方向にスライドさせて、プラトー面研削砥石74をワークWの加工位置に移動させ、この状態で、微細溝研削の時と同様にしてプラトー面の仕上げ加工を行う。
【0098】
そして、プラトー面の仕上げ研削を行った後、可動テーブル82を上記とは逆方向(図示下方向)へスライドさせて、微細溝研削砥石73を回転する他方のワークWの加工位置に移動させる。
【0099】
このとき、加工後のワークWはプラトー面研削砥石74によるプラトー面研削が行われる部位に位置していないことから、この状態で加工後のワークWを未加工のワークWと交換すると、次のワークWに対する微細溝加工のセッティングが完了することとなる。
【0100】
このように、上記した実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置71では、2個のワークWの加工が一つの設備上においてなされることとなり、また、一方で加工を行っているときに他方においてワークWの交換を行い得ることから、ワークWの交換に要する時間が大幅に短縮することとなり、加えて、微細溝研削砥石73およびプラトー面研削砥石74の配置の仕方によっては、可動テーブル82のスライドによって同時加工をもなし得ることとなり、生産性の向上が図られることとなる。
【0101】
[第6実施例]
図9は、本発明のさらに他の実施例に係わる微細凹凸加工方法および微細凹凸加工装置を説明する図であり、この実施例においても、ワーク保持部が複数のワークを保持している場合を示す。
【0102】
図9に示すように、この微細凹凸加工装置91は、複数(この実施例では2個)の略椀形状をなすワークWを回転させつつ加工終了まで保持するワーク保持部としての主軸テーブル92と、ワークWの湾曲状外周面(被加工面)WSaに微細溝を形成する凹部分加工工具としての転造工具93と、ワークWの湾曲状外周面WSaに形成された微細溝以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具としてのラッピングフィルム94と、転造工具93およびラッピングフィルム94を保持する工具保持部としての工具台100を備えている。
【0103】
主軸テーブル92は、主軸92a回りに回動可能となっており、この主軸テーブル92の主軸92aの両側対称部位に位置する互いに平行をなす2本の回転軸WLにそれぞれワークWを固定している。2個のワークWの間には、ワークWの軸心間を結ぶ線に垂直ではなくかついずれのワークWにも干渉しないようにして仕切板92bが取り付けてある。
【0104】
また、微細溝を形成する転造工具93および仕上げ加工を行うラッピングフィルム94を取り付けた工具台100は、ワークWの回転軸WLと直交する方向の軸L回りに回動するようになっており、すなわち、湾曲状外周面WSaの曲率中心回りに回動するようになっており、転造工具93およびラッピングフィルム94は、2個のワークWに対してそれぞれ同時に加工可能に配置してある。
【0105】
この微細凹凸加工装置91を用いてワークWの湾曲状外周面WSaに高低差が10μm以下の微細溝を形成する場合、まず、回転する2個のワークW(ラッピングフィルム94側に位置するワークWは既に微細溝が形成されたもの)に転造工具93およびラッピングフィルム94を押し付けつつ工具台100を回動させると、転造工具93側では微細溝の形成加工が行われ、一方、ラッピングフィルム94側では仕上げ加工が行われる。
【0106】
次いで、主軸テーブル92を回動させてもワークWが転造工具93およびラッピングフィルム94に干渉しないように工具台100と主軸テーブル92との距離を確保するのに続いて、ラッピングされた側のワークWを微細溝が未形成の新たなワークWと交換する。
【0107】
この状態において、主軸テーブル92を180°回動させると、微細溝が形成されたワークWがラッピングフィルム94側に移動すると共に、新たにセットした未加工のワークWが転造工具93側に移動し、この後、回転させた2個のワークWに対して、上記と同様にして転造工具93およびラッピングフィルム94を押し付けつつ工具台100を回動させて、転造工具93側およびラッピングフィルム94側でそれぞれ微細溝の形成加工および仕上げ加工を施し、以降同様にして微細溝形成加工およびプラトー加工を同時に行う。
【0108】
この際、転造工具93による転造加工では、油性のクーラントをミスト状に吹き付けながら行う。
【0109】
また、微細溝の形成加工および仕上げ加工の各々に用いるクーラントが異なる場合であったとしても、主軸テーブル92には仕切板92bが取り付けてあるので、この仕切板92bによりクーラントの他方への飛散や混入が阻止されることとなり、加えて、加工中に切屑が飛散するような場合であったとしても、この仕切板92bが切屑の他方へ飛散を阻止する。
【0110】
ここで、図10に本発明の第5実施例に係わる微細凹凸加工装置を用いた微細凹凸加工方法により得られたトラクションドライブ転動体表面の断面曲線モデルを示す。
【0111】
図10に示すように、本発明の第5実施例に係わる微細凹凸加工装置を用いた微細凹凸加工方法では、0.1〜1.7μmの深さdを有する微細凹部Aと、超仕上げ加工面(プラトー面)sの表面粗さfが0.05μm程度に平坦化された微細凸部Bを有する外周面WSを創成することができる、すなわち、優れたトラクション性能を発揮する転動体表面を得ることができる。
【0112】
したがって、上記外周面WSに形成した微細凹凸(微細溝)をトロイダル式CVTの転動体に用いられる転動体表面に創成すれば、従来と同等のサイズの転動体で、従来以上の高トルクの伝達を行うことが可能となり、言い換えれば、転動体の小型化を実現し得ることとなる。
【0113】
なお、表面同士が相互に滑り合う摺動部材に対しても、その表面に上記微細溝と類似する微細溝を形成する加工を施すこと可能であり、この際、優れたフリクション性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) 本発明の第1実施例による微細凹凸加工装置で円筒形状をなすワークに高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する状況を示す正面方向からの動作説明図である。(b) 第1実施例による微細凹凸加工装置の他の形態を示す正面方向からの動作説明図である。
【図2】図1における微細凹凸加工装置の超仕上げ砥石で仕上げ加工を行っている状況を示す部分断面説明図である。
【図3】図1における微細凹凸加工装置により略椀形状をなすワークの湾曲状外周面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する状況を示す正面方向からの動作説明図である。
【図4】本発明の第2実施例による微細凹凸加工装置で略椀形状をなすワークの湾曲状外周面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する状況を示す正面方向からの動作説明図である。
【図5】本発明の第3実施例による微細凹凸加工装置で略椀形状をなすワークの湾曲状外周面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する状況を示す正面方向からの動作説明図である。
【図6】本発明の第4実施例による微細凹凸加工装置でワークの凹面状外周面に高低差が10μm以下の微細凹部分を形成する状況を示す平面方向からの動作説明図(a),正面方向からの動作説明図(b)および底面方向からの動作説明図(c)である。
【図7】図6における微細凹凸加工装置の他の構成例を示す動作説明図(a)および(b)である。
【図8】本発明の第5実施例による微細凹凸加工装置で円筒形状をなすワークに高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する状況を示す正面方向からの動作説明図である。
【図9】本発明の第6実施例による微細凹凸加工装置で略椀形状をなすワークの湾曲状外周面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する状況を示す平面方向からの動作説明図(a)および正面方向からの動作説明図(b)である。
【図10】第5実施例に係わる微細凹凸加工装置を用いた微細凹凸加工方法により得られたトラクションドライブ転動体表面の断面曲線モデル説明図である。
【符号の説明】
3,53 切削工具(凹部分加工工具)
4,54 超仕上げ砥石(仕上げ加工工具)
10,30,60,80,100 工具保持部
23,73 微細溝研削砥石(凹部分加工工具)
24,74 プラトー面研削砥石(仕上げ加工工具)
93 転造工具(凹部分加工工具)
94 ラッピングフィルム(仕上げ加工工具)
W ワーク
WS 外周面(被加工面)
WSa 湾曲状外周面
WSb 凹面状外周面
Claims (20)
- ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具と、そのワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具とを同じ工具保持部にて保持し、回転する上記ワークの被加工面に対して凹部分加工工具を切り込みながら相対移動させて微細凹部分を形成する加工を行った後、上記ワークの保持状態を維持したまま、工具保持部をスライドもしくは旋回させて上記ワークとの相対位置を移動させることにより、
凹部分加工工具が加工を行っていた位置と同じ位置に仕上げ加工工具を移動させて、凹部分加工工具が加工を行った回転する上記ワークの被加工面に対して切り込みながら相対移動させて仕上げ加工を行うことにより、高低差が10μm以下の微細凹凸を上記ワークの被加工面に形成する微細凹凸加工方法において、
上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として凹部分加工工具を動作させて前記ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有する上記ワークの被加工面への微細凹部分の形成と、
上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として仕上げ加工工具を動作させて上記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工とを互いに独立して行なうことを特徴とする微細凹凸加工方法。 - ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具と、そのワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具とを同じ工具保持部にて保持し、回転する上記ワークの被加工面に対して凹部分加工工具を切り込みながら相対移動させて微細凹部分を形成する加工を行った後、上記ワークの保持状態を維持したまま、工具保持部をスライドもしくは旋回させて上記ワークとの相対位置を移動させることにより、
凹部分加工工具が加工を行っていた位置と異なる位置に仕上げ加工工具を移動させて、凹部分加工工具が加工を行った回転する上記ワークの被加工面に対して切り込みながら相対移動させて仕上げ加工を行うことにより、高低差が10μm以下の微細凹凸を上記ワークの被加工面に形成する微細凹凸加工方法において、
上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として凹部分加工工具を動作させて上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有する上記ワークの被加工面への微細凹部分の形成と、
上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として仕上げ加工工具を動作させて前記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工とを互いに独立して行なうことを特徴とする微細凹凸加工方法。 - ワークを回転させつつ加工終了まで保持するワーク保持部と、そのワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具と、上記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具を備え、凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を各々の加工時期に各々の所定の加工開始部位に移動可能に保持しかつ凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を回転する上記ワークの被加工面に対してそれぞれ切り込ませながら送り移動可能に保持して、上記ワークの被加工面に高低差が10μm以下の微細凹凸を形成する微細凹凸加工装置において、
上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として凹部分加工工具を動作させて上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有する上記ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具駆動機構と、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として仕上げ加工工具を動作させて前記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具駆動機構とを互いに独立して設けたことを特徴とする微細凹凸加工装置。 - ワークを回転させつつ加工終了まで保持するワーク保持部と、そのワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具と、上記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具と、凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を各々の加工時期に各々の所定の加工開始部位に移動させると共に回転する上記ワークの被加工面に対してそれぞれ切り込ませながら送り移動可能に保持する工具保持部とを備え、高低差が10μm以下の微細凹凸を上記ワークの被加工面に形成する微細凹凸加工装置において、
上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として凹部分加工工具を動作させて上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を曲率中心とする単一の曲率半径を有する上記ワークの被加工面に微細凹部分を形成する凹部分加工工具駆動機構と、上記ワークの回転軸と直交する方向の軸を回転中心軸あるいは揺動中心軸として仕上げ加工工具を動作させて上記ワークの被加工面に形成された微細凹部分以外の凸部分の仕上げ加工を行う仕上げ加工工具駆動機構とを互いに独立して設けたことを特徴とする微細凹凸加工装置。 - 凹部分加工工具及び仕上げ加工工具の各々の所定の加工開始部位を同じ位置に設定した請求項3又は4に記載の微細凹凸加工装置。
- 凹部分加工工具仕上げ及び加工工具の各々の所定の加工開始部位を互いに異なる位置に設定した請求項3又は4に記載の微細凹凸加工装置。
- 工具保持部は、ワークの回転軸と平行な平面上で互いに直交する2つの軸方向に移動可能としてある請求項4〜6のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 工具保持部は、ワークの回転軸と平行な平面上で互いに直交する2つの軸方向及びワークの回転軸と平行な平面に垂直な回転軸回りに回転する方向のうちの少なくとも2つの方向に移動可能としてある請求項4〜6のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- ワーク保持部は、複数のワークを保持しかつ凹部分加工工具による加工部位及び仕上げ加工工具による加工部位において各ワークの位置決めを順次行うべく作動する請求項4〜8のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 工具保持部は、ワークの被加工面に対する切り込み方向あるいは押し付け方向を同じ向きにして凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を保持している請求項4〜9のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 工具保持部は、ワークの回転軸と平行な平面で回動可能に支持されかつワークの被加工面に対する切り込み方向あるいは押し付け方向を異なる向きにして凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を保持していると共に割り出し位置決め回動により凹部分加工工具及び仕上げ加工工具を各々の所定の加工開始部位に移動させる請求項4〜9のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 凹部分加工工具が所定の加工部位に位置した状態において凹部分加工工具駆動機構が作動し、仕上げ加工工具が所定の加工部位に位置した状態において仕上げ加工工具駆動機構が切り替わって作動する請求項3〜11のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 工具保持部には保持部側係合部を設けると共に、凹部分加工工具駆動機構及び仕上げ加工工具駆動機構には駆動機構側係合部をそれぞれ設け、工具保持部の保持部側係合部と凹部分加工工具駆動機構の駆動機構側係合部とを係合した状態において凹部分加工工具駆動機構から工具保持部を介して凹部分加工工具に駆動力を伝達し、工具保持部の保持部側係合部と仕上げ加工工具駆動機構の駆動機構側係合部とを係合した状態において仕上げ加工工具駆動機構から工具保持部を介して仕上げ加工工具に駆動力を伝達する請求項4〜12のいずれか1項に微細凹凸加工装置。
- 工具保持部の保持部側係合部をスプラインあるいはセレーションとすると共に、凹部分加工工具駆動機構および仕上げ加工工具駆動機構の各駆動機構側係合部をスプラインあるいはセレーションとし、工具保持部をスライドさせてその保持部側係合部を凹部分加工工具駆動機構の駆動機構側係合部および仕上げ加工工具駆動機構の駆動機構側係合部のうちのいずれかの駆動機構側係合部に係合させることで駆動力の伝達系統が切り替わる請求項13に記載の微細凹凸加工装置。
- 凹部分加工工具の切り込み力付与手段あるいは押圧力付与手段と、仕上げ加工工具の切り込み力付与手段あるいは押圧力付与手段とを工具保持部上にそれぞれ独立して配置した請求項4〜14のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 凹部分加工工具として、研削,切削,転造,超仕上,ラップ及びこれらに電気的作用あるいは化学的作用を付加した工具のいずれかを採用した請求項3〜15のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 仕上げ加工工具として、研削,切削,超仕上,ラップおよびこれらに電気的作用あるいは化学的作用を付加した工具のいずれかを採用した請求項3〜16のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 凹部分加工工具によりワークの被加工面に微細凹部分を形成する段階で用いるクーラントと、仕上げ加工工具によりワークの被加工面の微細凹部分以外の凸部分に仕上げ加工を行う段階で用いるクーラントとを違えてある請求項3〜17のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 凹部分加工工具として、研削,切削及び転造の工具を用いる場合に、ミスト状のクーラント供給がなされる請求項3〜18のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
- 凹部分加工工具による加工位置において被加工面に微細凹部分の形成加工が施されているワークと、仕上げ加工工具による加工位置において被加工面の微細凹部分以外の凸部分に仕上げ加工が施されているワークとの間に、相互に生じる切屑や加工に用いるクーラントが相手側に飛散するのを阻止する仕切り板を配置した請求項3〜19のいずれか1項に記載の微細凹凸加工装置。
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